説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】リーク電流を改善した高誘電率絶縁膜を電極間絶縁膜として使用する半導体装置及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】半導体装置は、半導体基板上に形成された第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜上に形成された第1のゲート電極と、前記第1のゲート電極の上方に形成された第2のゲート電極と、前記第1のゲート電極と第2のゲート電極との間に挟まれた結晶化した第2の絶縁膜を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に係わり、例えば、2層に形成した電極間に高誘電率絶縁膜を使用する不揮発性メモリを含む半導体装置及びその製造方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路において、高集積化及び高性能化を実現するために、素子の微細化にともなって種々の問題が生じている。
【0003】
不揮発性メモリである、例えば、フラッシュメモリにおいては、メモリセルトランジスタのフローティングゲート(FG)と第2のゲートであるコントロールゲート(CG)との間の電極間絶縁膜に関する問題がある。これまで電極間絶縁膜として、シリコン酸化(SiO)膜、シリコン窒化(SiN)膜、シリコン酸窒化(SiON)膜若しくはこれらの積層膜が、広く用いられている。これらの膜を使用した構造は、トンネル絶縁膜と電極間絶縁膜との誘電率が近い値であることから、カップリング比を大きくするために、電極間絶縁膜の面積を大きくしなければならず、微細化の限界に近づいている。このような問題を解決するために、スタック型DRAM(dynamic random access memory)で使用されている高誘電率絶縁膜、例えば、酸化タンタル(Ta)膜、を電極間絶縁膜として使用することが検討されている。
【0004】
高誘電率絶縁膜は、上記のSiO膜等に比べて誘電率が大きいため、同じ容量を有する電極間絶縁膜を形成する場合に、絶縁膜の膜厚を厚くできるためである。膜厚を厚くすることによってリーク特性の改善が期待されているが、現実には、高誘電率絶縁膜、例えば、Ta膜は、SiO膜よりも厚い膜厚を有しながらリーク電流が大きく、フラッシュメモリの電極間絶縁膜として使用されるに至っていない。リーク電流が大きくなる1つの原因として、Ta膜が結晶化することによって、結晶粒界がリーク経路として働くことが考えられている。
【0005】
高誘電率絶縁膜のリーク電流を減少させる技術が、例えば、特許文献1に開示されている。この技術では、シリケート界面膜を介して形成した高誘電率絶縁膜をゲート絶縁膜として使用する。シリケート界面膜は、結晶化温度が高いため、高誘電率絶縁膜の結晶化温度を実質的に高めている。したがって、高温の熱処理を経ても高誘電率絶縁膜は結晶化せず、その結果、リーク電流を減少できる。
【0006】
リーク電流を増加させる他の原因として、高誘電率絶縁膜の膜組成が、化学量論的な組成(stoichiometric composition)から外れているため、膜中にはダングリングボンド(未結合手)を有するTa原子が多数存在することが考えられている。絶縁膜中のダングリングボンドは、膜中に準位を形成し、その準位を介してリーク電流が流れることが知られている。そこで、Ta膜の形成後に、別途後酸化を行いTa原子のダングリングボンドを酸素で固定することによって、リーク電流を小さくすることが検討されている。しかし、追加の後酸化工程が必要になり、工程増となる。
【0007】
また、スタックDRAMでは、電極間絶縁膜のリーク電流を低減するために、高誘電率絶縁膜である酸化ハフニウム膜(HfO膜)と酸化アルミニウム膜(Al膜)の積層膜を使用する技術が発表されている。(例えば、非特許文献1参照)この技術では、非晶質の積層膜を使用することを前提にしている。一方、フラッシュメモリでは、高誘電率膜形成後にMOS(metal oxide semiconductor)トランジスタを形成するための熱処理を回避できない。そのため高誘電率膜は結晶化し、そのままではフラッシュメモリに応用できない。
【特許文献1】特開2002−319583公報
【非特許文献1】Jong-Ho Lee, Jung-Hyoung Lee, Yun-Seok Kim, Hyung-Seoc Jung, Nac-In Lee, Ho-Kyu Kang, and Kwang-Pyuk Suh; 2002 Symposium On VLSI Technology Digest of Technical Paper, pp. 114-115, 2002.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記のように、リーク電流を改善した高誘電率絶縁膜を電極間絶縁膜として使用する半導体装置及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題は、以下の本発明に係る半導体装置及びその製造方法によって解決される。
【0010】
本発明の1態様による半導体装置は、半導体基板上に形成された第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜上に形成された第1のゲート電極と、前記第1のゲート電極の上方に形成された第2のゲート電極と、前記第1のゲート電極と第2のゲート電極との間に形成された結晶化した第2の絶縁膜を具備することを特徴とする。
【0011】
他の態様による半導体装置の製造方法、半導体基板上に第1の絶縁膜を形成することと、
前記第1の絶縁膜上に第1の導電性膜を堆積することと、前記第1の導電性膜上に非晶質の第2の絶縁膜を堆積することと、前記第2の絶縁膜を結晶化することと、前記第2の絶縁膜上に第2の導電性膜を堆積することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施の形態によれば、リーク電流を改善した高誘電率絶縁膜を電極間絶縁膜として使用する半導体装置及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態を、添付した図面を参照して以下に詳細に説明する。図では、対応する部分は、対応する参照符号で示している。
【0014】
(第1の実施形態)
第1の実施形態は、電極間絶縁膜として使用する高誘電率絶縁膜のリーク電流を増加させる重大な原因の一つと考えられている結晶粒界に起因するリーク電流を抑制する例である。
【0015】
高誘電率絶縁膜を電極間絶縁膜として使用することは、前述したようにDRAMにおいても検討されている。しかしながら、フラッシュメモリとDRAMとでは、電極間絶縁膜を形成した後の熱処理が異なるため、同様に取り扱えない。すなわち、フラッシュメモリでは、電極間絶縁膜を形成した後でMOSトランジスタを形成するため、高温の熱処理が必要である。これに対して、DRAMでは、MOSトランジスタを形成した後で電極間絶縁膜を形成するため、このような高温の熱処理を回避できる。この高温の熱処理によって、電極間絶縁膜は結晶化する。結晶化をすると多数の結晶粒が高誘電率膜中に形成される。これらの結晶粒界では隣り合う結晶粒同士の結晶方位が異なっているため、結合していない結合手、すなわちダングリングボンドを有する原子が多数存在する。このような結晶粒界が高誘電率絶縁膜を貫通すると、これらのダングリングボンドを介してリーク電流が流れ、前述したように結晶粒界がリーク電流経路として働くと考えられている。そこで、本実施形態では、結晶化しても結晶粒界が高誘電率膜を貫通しないようにすることによって、リーク電流を抑制する。
【0016】
本実施形態の一例を図1に示す。図1(a)は、第1の実施形態の半導体装置の一例を示す断面図であり、図1(b)は、図1(a)にAで囲った部分の電極間絶縁膜の拡大図である。図1(a)に示したように、この半導体装置は、フローティングゲート(FG)12とコントロールゲート(CG)30と、このゲート電極間に設けられた電極間絶縁膜22とを有する、いわゆるフローティングゲート構造の不揮発性メモリ、例えば、フラッシュメモリである。この電極間絶縁膜22は、図1(a),(b)に示したように、多層、例えば、3層の結晶化した絶縁膜(24,26,28)からなる積層膜22である。さらに、その結晶粒界GBは、図1(b)に太線で示したように、電極間絶縁膜22全体を貫通しない構造であることを特徴とする。このような構造とすることで、電極間絶縁膜22のリーク電流のリークパスとなる結晶粒界GBを分断することができ、リーク電流を低減することができる。
【0017】
以下に、図2(a)から図2(c)にしたがって、この実施形態の半導体装置の製造プロセスを説明する。
【0018】
図2(a)に示したように、まず、半導体基板1、例えば、シリコン(Si)基板1の全面に第1の絶縁膜10を形成する。この第1の絶縁膜10は、トンネル絶縁膜として使用され、例えば、熱酸化により形成したシリコン酸化(SiO)膜、SiOを窒化したシリコン酸窒化(SiON)膜若しくはシリコン窒化(SiN)膜を酸化したSiON膜を使用できる。次に、第1の絶縁膜10上の全面に不純物を添加した第1のポリシリコン膜12を、例えば、LPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法により堆積する。添加する不純物として、例えば、リンがあげられる。この第1のポリシリコン膜は、その後加工され、FGとして働く。さらに、第1のポリシリコン膜12上に全面にSiN膜14を、例えば、PCVD(Plasma-assisted Chemical Vapor Deposition)法により堆積する。
【0019】
次に、リソグラフィによりSiN膜14に素子分離領域を設けるためのパターンを形成し、SiN膜14をマスクとして、RIE(Reactive Ion Etching)により第1のポリシリコン膜12、第1の絶縁膜10を順次除去し、さらにSi基板1に溝を掘って素子分離用のトレンチ16を形成する。トレンチ16の内壁を熱酸化して第2の絶縁膜(SiO膜)18を形成した後、素子分離膜となる第3の絶縁膜20を、例えば、CVD法によりSiO膜を全面に堆積する。その後、SiN膜14をストッパとしてCMP(Chemical Mechanical Planarization)を行い、素子分離溝16以外のSiO膜20を除去すると図2(b)に示した構造が得られる。
【0020】
さらに、素子分離SiO2膜である第3の絶縁膜20をわずかに除去し、SiN膜14を除去して平坦にし、全面に電極間絶縁膜22を堆積する。電極間絶縁膜22は、結晶化する温度が異なる少なくとも2種類の高誘電率絶縁膜を使用することが好ましい。例えば、結晶化温度が低い材料の間に結晶化温度が高い材料を挟む構造とすることができる。ここでは、結晶化温度が低い材料として周期律表の4A族遷移金属の酸化物、例えば、ハフニウム酸化(HfO)膜、結晶化温度が高い材料としてアルミニウム酸化(Al)膜を使用した。周期律表の4A族遷移金属の酸化物としては、HfOの他に、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)を使用することができる。電極間絶縁膜22は、3層のHfO膜28/Al膜26/HfO膜24をALD(Atomic Layer Deposition)法でそれぞれの厚さを、例えば、4nm/10nm/4nmとして堆積した。その後、後で詳しく述べる電極間絶縁膜22の結晶化の後に、コントロールゲート(CG)にする、例えば、リンを添加した第2のポリシリコン膜30を堆積し、図2(c)に示した構造を形成できる。
【0021】
さらに、ゲート、ソース・ドレイン形成等のMOSトランジスタの製造プロセス、及び多層配線等のプロセスを経て、フローティングゲート構造を有する、例えば、フラッシュメモリ半導体装置を形成する。
【0022】
次に、電極間絶縁膜22の結晶化について説明する。ALD法で堆積した直後のHfO膜24,28及びAl膜26は、いずれも結晶化していない非晶質の状態である。非晶質のHfO膜とAl膜の結晶化温度は、それぞれ約500℃以上と約800℃以上であるとされている。そこで、電極間絶縁膜22の結晶化のアニールを2段階で行う。すなわち、第1のアニールをHfO膜の結晶化開始温度より高くAl膜のそれより低い温度、すなわち、500℃と800℃との間の温度、例えば、750℃で行い、HfO膜24,28だけを先に結晶化させる。次に、Al膜26の結晶化温度、すなわち、800℃より高い温度、例えば、900℃で第2のアニールを行い、Al膜26を結晶化させる。HfO膜とAl膜とは、結晶化したときの結晶構造がそれぞれ異なる。そのため、一方が結晶化した状態(この場合、HfO膜24,28)でこれと接する他の非晶質膜(この場合、Al膜26)を結晶化させても、後から結晶化する膜(Al膜26)は、先に結晶化した膜の結晶構造の影響をほとんど受けずに結晶化すると考えられる。すなわち、後から結晶化するAl膜26は、先に結晶化したHfO膜24,28とは独立に結晶化をする。そのため、HfO膜24,28の結晶粒界は、Al膜26中には原理的に伝播しない。したがって、結晶粒界GBが、HfO膜24,28とAl膜26との間で不連続になり、積層した絶縁膜22全体を貫通することがない。
【0023】
上記のモデルを確認するために、透過電子顕微鏡(TEM)による断面観察(以下、断面TEM観察と呼ぶ)を行った。HfO膜28/Al膜26/HfO膜24の積層膜22では、図1(b)に模式的に示したように、下層及び上層のHfO膜24,28の結晶粒界GBは、これらに挟まれたAl膜26にはほとんど伝播しないことが確認された。また、たとえAl膜26に結晶粒界が伝播したとしても、反対側のHfO膜は既に結晶化が完了しているために、これには結晶粒界が伝播することはなく、結晶粒界が、積層した電極間絶縁膜22全体を貫通しないことを確認できた。一方、同じ温度で結晶化したAl膜の単層膜を断面TEM観察した結果、結晶粒界は、表面から裏面までAl膜を突き抜けていた。
【0024】
上記のように作成した3層の電極間絶縁膜22を有する半導体装置の電極間絶縁膜22のリーク電流を測定した。比較のために、電極間絶縁膜22が、単層のHfO膜及び単層のAl膜である場合のリーク電流も測定した。リーク電流の測定結果を図3に示す。図3において、実線は本実施形態の3層積層膜のリーク特性、点線は、単層のHfO膜のリーク特性、破線は、単層のAl膜のリーク特性を示す。本実施形態の3層積層膜は、単層のHfO膜と比較すると12MV/cm以下の電界ではリーク電流がはるかに小さい。また、単層のAl膜と比較しても5MV/cm以上の電界ではリーク電流が小さくなっている。フラッシュメモリの電極間絶縁膜22に印加される電界は、データ保持時には4MV/cm程度、データ読み出し時には9MV/cm程度、データ書き込み時には18MV/cmである。これらのデバイス動作時のいずれの電界においても本実施形態の積層した電極間絶縁膜22のリーク電流が小さく、電極間絶縁膜として適していることが示された。
【0025】
このようにして、電極間絶縁膜22の結晶粒界GBが、電極間絶縁膜絶縁膜22を貫通しないように電極間絶縁膜22を結晶化することによってFGとCGとの間のリーク電流を小さくすることができる。
【0026】
本実施形態は、結晶化温度の高いAl膜を結晶化温度の低いHfO膜で挟んだ構造で説明したが、この構造及び材料に限定されることはなく、種々の変形をして実施することができる。例えば、結晶化温度の低い高誘電率絶縁膜を結晶化温度の高い高誘電率絶縁膜で挟んだ構造とすることができる。また、結晶粒界が貫通しない構造であれば、3層でなく、例えば、HfO膜/Al膜/HfO膜の上部にさらにAl膜を設けた4層若しくはそれ以上の多層積層構造とすることができる。さらに、高誘電率膜の材料は、同じ材料の組み合わせで説明したが、それぞれ異なった材料を組み合わせることも可能である。例えば、HfO、ZrO、TiO、酸化タンタル(Ta)、Al及びこれらの混合物を使用することができる。さらに、電極間絶縁膜とFGとの界面、電極間絶縁膜とCGとの界面、あるいは両方の界面に一般に高誘電率絶縁膜とは呼ばれないシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜のような材料の膜を設けることもできる。
【0027】
ここに説明したように、本実施形態によって、リーク電流を低減した高誘電率絶縁膜を電極間絶縁膜として使用する半導体装置及びその製造方法を提供することができる。
【0028】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、電極間絶縁膜の酸素欠損によって生じるリーク電流を低減する例である。図4は、第2の実施形態の半導体装置の一例を示す断面図である。図4に示したように、フローティングゲート(FG)12とコントロールゲート(CG)30と、これらのゲート電極間に設けられた電極間絶縁膜32とを具備する、いわゆるフローティングゲート構造を有する不揮発性メモリである。この電極間絶縁膜32は、2層の結晶化した絶縁膜34,36からなる積層膜であり、上層の絶縁膜36を介して供給される酸素によって下層の絶縁膜34中の酸素欠損を修復した構造であることを特徴とする。このような構造とすることで、電極間絶縁膜32のリーク電流のリークパスとなる酸素欠損の密度を減少させることによって、電極間絶縁膜32のリーク電流を低減することができる。
【0029】
本実施形態の製造プロセスは、第1の実施形態と概ね同じであるが、電極間絶縁膜32の形成プロセスが異なる。以下に、図5(a)、(b)を用いて、本実施形態の製造プロセスを説明する。
【0030】
図5(a)は、図2(b)と同じ構造であり、Si基板1上に第1の絶縁膜(トンネル絶縁膜)10、第1のポリシリコン膜12及びSiN膜14を順に堆積した後、パターニングして第2の絶縁膜(素子分離SiO2膜)20を形成し、平坦化した後にSiN膜14を除去した図である。
【0031】
次に、電極間絶縁膜32をALD法によって形成する。下層の高誘電率絶縁膜として、比較的リーク特性の優れたAl膜34を形成し、上層に周期律表の4A族遷移金属の酸化物である、例えば、HfO膜36を形成する。それぞれの膜厚は、例えば10nmと4nmとした。その後、結晶化のアニールを酸素を含む雰囲気中で、例えば、酸素濃度1%で、温度、例えば、900℃で行う。このアニールにおいて、Al膜34とHfO膜36とが同時に結晶化すると同時に、Al膜中の酸素欠損が、雰囲気からHfO膜を介して供給される酸素によって修復される。その後、CGにする、例えば、リンを添加したポリシリコン膜30を堆積し、図5(b)に示した構造を形成できる。
【0032】
さらに、ゲート加工、ソース・ドレイン形成等のMOSFETの製造プロセス、及び多層配線等のプロセスを経て、フローティングゲート構造を有する、例えば、フラッシュメモリ半導体装置を形成する。
【0033】
上記のように作成した電極間絶縁膜32を有する半導体装置の電極間絶縁膜32のリーク電流を測定した。比較のために、電極間絶縁膜32を、酸素を含まない雰囲気中で結晶化させた場合のリーク電流も測定した。リーク電流の測定結果を図6に示す。図6において、実線は本実施形態の酸素を含む雰囲気中で結晶化した2層の電極間絶縁膜のリーク特性、破線は、酸素を含まない雰囲気中で結晶化した2層の電極間絶縁膜のリーク特性を示す。本実施形態の酸素を含む雰囲気中で結晶化した電極間絶縁膜32のリーク電流は、酸素を含まない雰囲気中で結晶化した電極間絶縁膜のリーク電流に比べて、特に4MV/cm以上の高電界側で小さいことが確認された。このリーク電流特性は、前述したフラッシュメモリの動作において使用される4MV/cmから19MV/cm程度の電界範囲で改善されている。すなわち、酸素を含む雰囲気中で結晶化させることにより、積層した電極間絶縁膜のリーク電流を低減できることが示された。
【0034】
本実施形態によって電極間絶縁膜32のリーク電流を低減できる理由は、以下のように考えられる。単層のAl膜34のリーク電流は、4MV/cm以下の低電界では良好であるが、それ以上の高電界になると急激にリーク電流が増加する。これは、Al膜中の酸素欠損に起因するダングリングボンドがバンドギャップ中に準位を形成し、Al膜に高電界が印加されると、この準位を介してリーク電流が流れると考えられる。したがって、Al膜中の酸素欠損を修復し、ダングリングボンド密度を低減することによって、高誘電率絶縁膜のリーク電流を低減できる。
【0035】
しかし、Al膜中の酸素の拡散は遅いため、通常の酸素を含む雰囲気中でのアニールでは、酸素欠損を十分に修復することが困難である。一方、HfO膜中では酸素の拡散が容易であるばかりでなく、HfO膜中に拡散した分子状の酸素は、膜中で活性な原子状の酸素に分解される。この原子状の酸素は、分子状の酸素より拡散しやすく、反応しやすいため、Al膜中に早く拡散し、酸素欠損を修復すると考えられる。
【0036】
過剰なアニール条件、例えば、高温のアニール、長時間のアニール、高い酸素濃度、では、酸素がAl膜を通過し、下地のポリシリコン(FG)との界面で酸化膜を形成する可能性がある。このような問題が発生することを避けるために、適切なアニール条件、例えば、アニール温度を800℃から950℃、アニール時間を5秒から60秒、酸素濃度を0.1%から90%の範囲に設定することが好ましい。また、Al膜とFGとの間にFG膜の酸化を防止するSiN膜を挿入することもできる。
【0037】
本実施形態では、Al膜上にHfO膜を形成する場合を例に説明したが、Al膜上に形成する膜は、HfO膜に限定されるものではなく、酸素を分解すること等によって、Al膜に活性な酸素を供給することができる膜であれば、他の高誘電率膜、例えば、ZrO膜、を使用することができる。
【0038】
本実施形態では、2層の積層膜を例に説明したが、第1の実施形態と同様に、HfO膜/Al膜/HfO膜等の3層構造、若しくはそれ以上の多層積層構造とすることができる。
【0039】
ここに説明したように、本実施形態によって、リーク電流を低減した高誘電率絶縁膜を電極間絶縁膜として使用する半導体装置及びその製造方法を提供することができる。
【0040】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、電極間絶縁膜の歪みによって生じるリーク電流を抑制する例である。図7に示したように、フローティングゲート(FG)12とコントロールゲート(CG)30と、このゲート電極間に設けられた電極間絶縁膜42とを有する、いわゆるフローティングゲート構造を有する不揮発性メモリである。この電極間絶縁膜42は、2層の結晶化した絶縁膜44,46からなる積層膜42であり、下層の絶縁膜44は、上層の絶縁膜46より小さなヤング率を有し、絶縁膜44,46が結晶化する時に発生する上層の絶縁膜46の収縮歪みを下層の絶縁膜44が吸収する構造であることを特徴とする。このような構造とすることで、電極間絶縁膜42のリーク電流の原因となる絶縁膜全体の歪みを緩和することによって、リーク電流を低減することができる。
【0041】
本実施形態の製造プロセスは、第1及び第2の実施形態と概ね同じであるが、電極間絶縁膜42の形成プロセスが異なる。以下に、図8(a)、(b)を用いて、本実施形態の製造プロセスを説明する。
【0042】
図8(a)は、図2(b)と同じであり、Si基板1上にトンネル絶縁膜10、第1のポリシリコン膜12及びSiN膜14を順に堆積した後、パターニングして素子分離SiO2膜20を形成し、平坦化した後にSiN膜14を除去した図である。
【0043】
次に、非晶質の電極間絶縁膜42をALD法によって形成する。下層の高誘電率絶縁膜として、上層に形成するAl膜46よりヤング率が小さい周期律表の4A族遷移金属の酸化物である、例えば、HfO膜44を形成する。HfO膜44及びAl膜46それぞれの膜厚は、例えば、4nm及び10nmとした。その後、結晶化のアニールを、例えば、900℃で行う。このアニールによってHfO膜44とAl膜46は、ほぼ同時に結晶化する。その後、CGにする、例えば、リンを添加したポリシリコン膜30を堆積し、図8(b)に示した構造を形成できる。
【0044】
さらに、ゲート加工、ソース・ドレイン形成等のMOSFETの製造プロセス、及び多層配線等のプロセスを経て、フローティングゲート構造を有する、例えば、フラッシュメモリ半導体装置を形成する。
【0045】
上記のように作成した電極間絶縁膜42を有する半導体装置の電極間絶縁膜42のリーク電流を測定した。比較のために、電極間絶縁膜が、Al膜単層である場合のリーク電流も測定した。リーク電流の測定結果を図9に示す。図9において、実線は本実施形態の2層の電極間絶縁膜のリーク特性、破線は、単層のAl膜のリーク特性を示す。本実施形態の2層の電極間絶縁膜42のリーク電流は、単層のAl膜と比べて電界が5MV/cm以上では小さく、5MV/cm以下ではほぼ同等であった。このリーク電流特性は、前述したフラッシュメモリの動作において使用される4MV/cmから19MV/cm程度の電界範囲で改善されている。
【0046】
本実施形態のAl膜46/HfO膜44の2層の電極間絶縁膜42でリーク電流が減少した理由は、以下のように考えられる。ALD法で堆積した非晶質絶縁膜を結晶化すると、一般に約10%の体積収縮が生じる。すなわち、HfO膜44、Al膜46はともに収縮し、下地のポリシリコン膜12との間に歪みが発生する。HfO膜44とAl膜46のヤング率は、それぞれ240GPa及び400GPaであり、ポリシリコン膜12と接する下層のHfO膜44の方が、上層のAl膜46よりヤング率が小さい。ヤング率が小さい膜ほど柔らかく、その膜に接する下地の膜との間に発生する歪みが小さいと考えられる。したがって、ヤング率の大きなAl膜46を直接ポリシリコン膜12上に形成する場合より、ヤング率の小さな、例えば、HfO膜44を挟んでAl膜46を形成する方が、結晶化による収縮歪みを緩和できる。その結果、電極間絶縁膜42のリーク電流を低減できることが示された。
【0047】
本実施形態では、電極間絶縁膜42を結晶化した後で、CGにするポリシリコン膜30を形成した。しかし、ポリシリコン膜30を形成した後に、電極間絶縁膜42の結晶化を行う場合には、電極間絶縁膜42がポリシリコン膜30と接する部分にヤング率が小さい材料を用いた、例えば、HfO膜/Al膜/HfO膜、のような3層構造とすることが、結晶化による歪を緩和するために効果的である。
【0048】
ここに説明したように、本実施形態によって、リーク電流を低減した高誘電率絶縁膜を電極間絶縁膜として使用する半導体装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1(a)は、第1の実施形態による半導体装置の一例を説明するための断面図である。図1(b)は、(a)においてAで示した電極間絶縁膜の部分を拡大した模式図であり、電極間絶縁膜中の結晶粒界の状態を示す。
【図2】図2(a)から(c)は、第1の実施形態による半導体装置の製造工程の一例を説明するために示す断面図である。
【図3】図3は、第1の実施形態による半導体装置の電極間絶縁膜のリーク特性を説明するための図である。
【図4】図4は、第2の実施形態による半導体装置の一例を説明するための断面図である。
【図5】図5(a)、(b)は、第2の実施形態による半導体装置の製造工程の一例を説明するために示す断面図である。
【図6】図6は、第2の実施形態による半導体装置の電極間絶縁膜のリーク特性を説明するための図である。
【図7】図7は、第3の実施形態による半導体装置の一例を説明するための断面図である。
【図8】図8(a)、(b)は、第3の実施形態による半導体装置の製造工程の一例を説明するために示す断面図である。
【図9】図9は、第3の実施形態による半導体装置の電極間絶縁膜のリーク特性を説明するための図である。
【符号の説明】
【0050】
1…半導体基板、10…第1の絶縁膜(トンネル絶縁膜)、12…第1のポリシリコン膜、14…SiN膜、18…SiO2膜、20…素子分離絶縁膜、22,32,42…電極間絶縁膜、24,28,36,44…HfO膜、26,34,46…Al膜、30…第2のポリシリコン膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に形成された第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上に形成された第1のゲート電極と、
前記第1のゲート電極の上方に形成された第2のゲート電極と、
前記第1のゲート電極と第2のゲート電極との間に形成された結晶化した第2の絶縁膜を具備することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第2の絶縁膜は、複数の高誘電率絶縁材料からなる結晶化した積層膜であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2の絶縁膜の結晶粒界は、この第2の絶縁膜を貫通しないことを特徴とする請求項1若しくは2に記載の半導体装置。
【請求項4】
半導体基板上に第1の絶縁膜を形成することと、
前記第1の絶縁膜上に第1の導電性膜を堆積することと、
前記第1の導電性膜上に非晶質の複数の高誘電率絶縁膜からなる第2の絶縁膜を堆積することと、
前記第2の絶縁膜を結晶化することと、
前記第2の絶縁膜上に第2の導電性膜を堆積することを具備すること特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2の絶縁膜を結晶化する工程は、酸素を含む雰囲気中で行われることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−5313(P2006−5313A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182864(P2004−182864)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】