説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】III-V族窒化物半導体を有する半導体装置において、熱による出力低下を低減する。
【解決手段】半導体装置は、基板101上に設けられ、III-V族窒化物半導体からなるバッファ層102と、バッファ層102上に設けられ、III-V族窒化物半導体からなる第1の半導体層103と、第1の半導体層103上に設けられ、III-V族窒化物半導体からなる第2の半導体層104と、基板101の裏面上に設けられ、接地に接続された裏面電極111と、第2の半導体層104上に互いに離間して設けられたソース電極132及びドレイン電極134と、第2の半導体層104上に設けられたゲート電極136とと、第2の半導体層104、第1の半導体層103、及びバッファ層102を貫通し、少なくとも基板101に達し、ソース電極132と裏面電極111とを電気的に接続させるプラグ109とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III-V族窒化物半導体からなる電界効果型の半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
III-V族窒化物半導体、すなわち窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)及び窒化インジウム(InN)等の、一般式がAlGa1−x−yInN(但し、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)で表わされる混晶物は、その物理的特徴である広いバンドギャップと直接遷移型のバンド構造とを利用して短波長光学素子へ応用することのみならず、高い破壊電界と飽和電子速度という特徴から電子デバイスへ応用することも検討されている。
【0003】
特に、半絶縁性基板の上に順次エピタキシャル成長したAlGa1−xN層(但し、0<x≦1)とGaN層との界面に現れる二次元電子ガス(Two Dimensional Electron Gas:以下、2DEGと呼ぶ)を利用するヘテロ接合電界効果トランジスタ(Hetero-junction Field Effect Transistor:以下、HFETと呼ぶ)は、高出力デバイスや高周波デバイスとして開発が進められている。このHFETでは、キャリア供給層(N型AlGaNショットキー層)からの電子の供給に加え、自発分極及びピエゾ分極の分極効果による電荷の供給がある。その電子密度は1013cm−2を超え、AlGaAs/GaAs系HFETと比べて1桁程度も大きい。
【0004】
このように、III-V族窒化物半導体を用いたHFETでは、GaAs系HFETと比べて高いドレイン電流密度を期待でき、最大ドレイン電流が1A/mmを超える素子が報告されている(非特許文献1参照)。さらに、III-V族窒化物半導体は広いバンドギャップ(例えばGaNのバンドギャップは3.4eV)を有するため高い耐圧特性を示し、III-V族窒化物半導体を用いたHFETではゲート−ドレイン電極間の耐圧を100V以上とすることが可能である(非特許文献1参照)。このように、高耐圧且つ高電流密度を示す電気的特性を期待できることから、III-V族窒化物半導体を用いたHFETを中心とする電子デバイスは、高周波素子として、また従来よりも小さい設計寸法で大電力を扱える素子として応用が検討されている。
【0005】
しかしながら、III-V族窒化物半導体からなる電子デバイスは、高周波、高出力又は大電力素子として有望とされるが、その実現のためには様々な工夫が必要である。このような高周波特性、高出力特性及び大電力特性を持つ素子を実現するための工夫の1つとして、ビアホール構造を用いる技術が知られている。(特許文献1参照)
以下、このような従来のビアホール構造を用いたFETについて図5を参照しながら説明する。図5は、ビアホール構造を有する従来のFETの構造を示す断面図である。
【0006】
図5に示ように、従来のFETは、シリコン(Si)からなる高抵抗基板1の上に形成されたIII-V族窒化物半導体からなるチャネル層3と、チャネル層3の上に形成され、III-V族窒化物半導体からなるショットキー層5とを備えている。
【0007】
ショットキー層5の上には、ショットキー電極7と、その両側方に位置するオーミック性のソース電極11及びドレイン電極13とが形成されている。高抵抗基板1、バッファ層、チャネル層3、及びショットキー層5におけるソース電極の下に位置する部分の一部にはビアホール25が選択的に形成されており、このビアホール25内には、裏面電極15へと接続するプラグ9が埋め込まれている。FETのソース電極11は、プラグ9及び裏面電極15を介して接地電源と接続されている。
【0008】
従来のFETでは、ソース電極がワイヤにより接地される構成のFETと比べてソースインダクタンスを低減できるため、線形利得で約2dBの改善が見られることが報告されている(非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】安藤祐二、岡本康宏、宮本広信、中山達峰、井上隆、葛原正明著「高耐圧AlGaN/GaNヘテロ接合FETの評価」信学技報、ED2002-214, CPM2002-105(2002-10), pp.29-34
【非特許文献2】福田益美、平地康剛著「GaAs電界効果トランジスタの基礎」電子情報通信学会、1992年、p.214
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ビアホールを用いる従来の半導体装置では、次のような不具合が生じていた。安価なSi基板を用いた半導体装置においては、熱伝導性がSiC基板に比べて劣っているために、SiC基板を用いた半導体素子に比べて出力が低下してしまう。
【0011】
前記課題に鑑み、本発明は、III-V族窒化物半導体を有する半導体装置において、熱による出力低下を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
図6は、通常モードとパルスモードのそれぞれで駆動した場合の従来の半導体装置の出力の比較を示す図である。同図に示す結果から、パルス駆動の場合には出力の低下が抑えられていることが分かる。これは、パルス駆動では通常駆動に比べて基板温度の上昇が低減されるためと考えられる。
【0013】
また、図7は、動作時の半導体装置内の温度分布を示す図である。同図において、色の濃い部分、すなわち温度の高い部分は活性領域(主にソース−ドレイン間の領域)であり、熱は活性領域内で発生することが分かる。以上のことを鑑みて、本願発明者らは独自に検討を重ねた結果、本願発明に想到するに至った。
【0014】
本発明の一例に係る半導体装置は、基板と、前記基板の上面上または上方に設けられ、III-V族窒化物半導体からなる第1の半導体層と、前記第1の半導体層上に設けられ、III-V族窒化物半導体からなる第2の半導体層と、前記基板の裏面上に設けられ、接地に接続された裏面電極と、前記第2の半導体層上に互いに離間して設けられたソース電極及びドレイン電極と、前記第2の半導体層上であって、前記ソース電極とドレイン電極との間の位置に設けられ、前記第2の半導体層とショットキー接触するゲート電極と、前記第2の半導体層及び前記第1の半導体層を貫通し、少なくとも前記基板に達し、前記ソース電極と前記裏面電極とを電気的に接続させるプラグとを備えている。
【0015】
この構成によれば、ソース電極が第2の半導体層上方の配線を介さずにプラグを介して裏面電極及び接地に接続されるので、ソース電極が配線を介して接地される場合に比べてソースインダクタンスを低減することができる。
【0016】
また、ソース電極とドレイン電極との間では動作時に熱が発生するところ、ソース電極下にプラグが設けられているので、プラグを介して熱が裏面電極へと伝達され、動作時の温度上昇を緩和することができる。このため、上記構成の半導体装置では、従来の半導体装置に比べて出力の低下を抑えることが可能となる。
【0017】
本発明の一例に係る半導体装置の製造方法は、基板と、前記基板の上面上または上方に設けられ、III-V族窒化物半導体からなる第1の半導体層と、前記第1の半導体層上に設けられ、III-V族窒化物半導体からなる第2の半導体層と、前記基板の裏面上に設けられ、接地に接続された裏面電極と、前記第2の半導体層上に互いに離間して設けられたソース電極及びドレイン電極と、前記第2の半導体層上であって、前記ソース電極とドレイン電極との間の位置に設けられ、前記第2の半導体層とショットキー接触するゲート電極と、前記第2の半導体層及び前記第1の半導体層を貫通し、少なくとも前記基板に達し、前記ソース電極と前記裏面電極とを電気的に接続させるプラグとを備えている。
【0018】
この方法によれば、プラグを介して動作時に生じる熱を裏面電極へと放熱しやすい構造を作製することができる。また、ソースインダクタンスが低減された半導体装置を製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一例に係る半導体装置では、従来の半導体装置に比べて熱による出力低下を低減することが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)、(b)は、それぞれ本発明の第1の実施形態に係るヘテロ接合電界効果トランジスタ(HFET)の構造を模式的に示す断面図及びレイアウト図であり、(c)、(d)は、それぞれソース電極とプラグとの接続部分の例を示す拡大断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るHFETの構造を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係るHFETの構造を模式的に示す断面図である。
【図4】(a)、(b)は、本発明の第4の実施形態に係るHFETの構造を模式的に示す断面図である。
【図5】ビアホール構造を有する従来のFETの構造を示す断面図である。
【図6】通常モードとパルスモードのそれぞれで駆動した場合の従来の半導体装置の出力の比較を示す図である。
【図7】動作時の半導体装置内の温度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
図1(a)、(b)は、それぞれ本発明の第1の実施形態に係るヘテロ接合電界効果トランジスタ(HFET)の構造を模式的に示す断面図及びレイアウト図であり、(c)、(d)は、それぞれソース電極とプラグとの接続部分の例を示す拡大断面図である。図1(a)は、図1(b)においてプラグ109を通る横方向の断面を示している。
【0023】
図1(a)、(b)に示すように、本実施形態のHFETは、例えばシリコン(Si)からなる高抵抗基板101と、高抵抗基板101上に設けられ、高抵抗の窒化アルミニウムガリウム(AlGa1−xN(0<x≦1))からなるバッファ層102と、バッファ層102上に設けられ、アンドープの窒化ガリウム(GaN)からなるチャネル層(第1の半導体層)103と、チャネル層103上に設けられ、N型の窒化アルミニウムガリウム(AlGa1−yN(0<y≦1))からなるショットキー層(第2の半導体層)104とを備えている。
【0024】
高抵抗基板101の厚さは例えば500μmであり、バッファ層102の膜厚は例えば500nmであり、チャネル層103の膜厚は例えば1000nmであり、ショットキー層104の膜厚は例えば25nmである。
【0025】
バッファ層102は、高抵抗基板101とチャネル層103及びショットキー層104との格子不整合を緩和するために形成されている。また、ショットキー層104とヘテロ接合するチャネル層103において、ショットキー層104との界面近傍には、2DEGからなるチャネルが形成される。なお、基板及びバッファ層が「高抵抗」である、とは、HFETの通常動作時にほとんど電流が流れないという意味であり、いわゆる半絶縁性層も高抵抗層と呼ぶ。
【0026】
ショットキー層104の上には、窒化珪素(SiN)からなる厚さ100nmの第1絶縁膜105が設けられ、第1絶縁膜105には、開口121、122、123が互いに離間して設けられている。
【0027】
開口121内におけるショットキー層104上及び第1絶縁膜105の一部上には、ソース電極132が設けられている。なお、ソース電極132は一部ビアホール150内に埋め込まれる場合がある。例えば、図1(c)に示すように、ソース電極132の一部がビアホール150のうちショットキー層104に形成された部分に埋め込まれていてもよいし、図1(d)に示すように、ソース電極132がビアホール150内に埋め込まれていなくてもよい。これは、後に説明する図2、図3、図4(a)、(b)に示すHFETについても同様である。なお、より詳細には、ソース電極132とビアホール150内のプラグ109とは、金(Au)等の金属を介して接続されていてもよい。
【0028】
N型のAlGa1−yNからなるショットキー層104に対してオーミック性を示すように、ソース電極132は例えばチタン(Ti)とアルミニウム(Al)との積層体で構成される。ソース電極132のうちショットキー層104上に設けられた部分の、ショットキー層104の上面からの膜厚は例えば200nmである。
【0029】
開口122内におけるショットキー層104上及び第1絶縁膜105の一部上には、ゲート電極136が設けられている。ゲート電極136のうちショットキー層104上に設けられた部分の膜厚は例えば400nmである。ショットキー層104に対してショットキー性を示すように、ゲート電極108は例えばニッケル(Ni)と金(Au)との積層体からなる。
【0030】
開口123内におけるショットキー層104上及び第1絶縁膜105の一部上には、ドレイン電極134が設けられている。ドレイン電極134はソース電極132と同様にショットキー層104とオーミック接触するために、例えばTiとAlとの積層体で構成される。ドレイン電極134のうちショットキー層104上に設けられた部分の膜厚は例えば200nmである。
【0031】
高抵抗基板101の裏面上にはクロム(Cr)/金(Au)などからなる厚さが例えば200nm程度の裏面電極111が設けられている。ソース電極132と裏面電極111とは、ショットキー層104、チャネル層103、バッファ層102及び高抵抗基板101を貫通するプラグ109によって接続されている。また、裏面電極111は接地配線に接続される。プラグ109は、例えばCrとAuとの積層体によって構成される。図1(b)に示すように、プラグ109は1つのソース電極132に対して複数個設けられていてもよい。
【0032】
第1絶縁膜105上、ゲート電極136上、ソース電極132上、及びドレイン電極134上には、例えばSiNからなる厚さ500nmの第2絶縁膜130が設けられている。第2絶縁膜130上には、コンタクトプラグを介してソース電極132に接続されたソース配線120と、コンタクトプラグを介してゲート電極136に接続されたゲート配線(図示せず)と、コンタクトプラグを介してドレイン電極134に接続されたドレイン配線124とが設けられている。ゲート配線、ソース配線120、及びドレイン配線124はいずれも互いに接続しないように配置されている。また、ゲート配線、ソース配線120、及びドレイン配線124が2層以上の配線層内に設けられる場合には、寄生容量の低減を図るため、各配線は互いに交差しないことが好ましい。
【0033】
第2絶縁膜130上には、例えば膜厚が400nmの第3絶縁膜140が設けられている。
【0034】
本実施形態のHFETでは、2DEGが生じるチャネル層103とショットキー層104との界面を通ってソース電極132とドレイン電極134の間に電流が流れる。また、ゲート電極136に電圧が印加されることで、ソース−ドレイン間を流れる電流量が制御される。
【0035】
本実施形態のHFETでは、ソース電極132が第2絶縁膜130上の配線を介することなくプラグ109を介して裏面電極111及び接地配線に接続されているので、ソース電極132が配線を介して接地される場合に比べてソース配線長を短くすることができ、ソースインダクタンスが低減されている。このため、線形利得を向上させることができる。また、プラグ109がソース電極132の直下に設けられているので、動作時に生じた熱はプラグ109を介して裏面電極111に伝達され、効率的に放熱される。このように、動作時に熱が発生する領域にプラグ109を設けることで、効果的に放熱することが可能となるので、本実施形態のHFETでは、従来のHFETに比べて出力低下が大幅に抑えられている。
【0036】
なお、本実施形態のHFETではプラグ109が高抵抗基板101を貫通しているが、導電性の基板を用いる場合には、プラグ109が基板に接していればよく、基板を貫通している必要はない。
【0037】
また、Siからなる高抵抗基板101に代えて導電性基板やGaN基板等の半絶縁性の基板、サファイア基板などの絶縁性基板を用いてもよい。GaN基板を用いる場合には、バッファ層は必ずしも必要ない。
【0038】
本実施形態のHFETを製造する際には、高抵抗基板101の裏面上にchemical vapor deposition(CVD)法等により金属からなる裏面電極111を形成する。次に、高抵抗基板101上にmetal-organicCVD(MOCVD)法等によりAlGa1−xN(0<x≦1)等のIII-V族窒化物半導体からなるバッファ層102、GaN等のIII-V族窒化物半導体からなるチャネル層103、N型のAlGa1−yN(0<y≦1)等のIII-V族窒化物半導体からなるショットキー層104を順次形成する。
【0039】
次いで、ショットキー層104上にSiN等からなる第1絶縁膜を形成した後にリソグラフィ及びエッチングにより開口121、122、123を形成する。その後、開口121内におけるショットキー層104上にソース電極132を形成するとともに、開口123内におけるショットキー層104上にドレイン電極134を形成する。次いで、開口122内におけるショットキー層104上にゲート電極136を形成する。
【0040】
次に、ソース電極132の一部及びソース電極132下に位置するショットキー層104、チャネル層103、バッファ層102及び高抵抗基板101を除去して裏面電極111に達するビアホール150を形成する。次いで、ビアホール150内にプラグ109を形成する。
【0041】
次いで、第1絶縁膜105上に第2絶縁膜130を形成した後、第2絶縁膜130上に、ソース電極132に接続されたソース配線120、ドレイン電極134に接続されたドレイン配線124、ゲート電極136に接続されたゲート配線をそれぞれ形成する。
【0042】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態に係るHFETの構造を模式的に示す断面図である。本実施形態のHFETは、ショットキー層104のうち開口121下方のビアホール150が形成された部分に高抵抗領域212が設けられている点が第1の実施形態に係るHFETと異なっている。高抵抗領域212以外の構成は、第1の実施形態に係るHFETと同様である。
【0043】
すなわち、図2に示すように、本実施形態のHFETは、高抵抗基板101と、高抵抗基板101上に設けられたバッファ層102と、バッファ層102上に設けられたチャネル層103と、チャネル層103上に設けられたショットキー層104とを備えている。
【0044】
ショットキー層104の上には、開口121、122、123が互いに離間して設けられた第1絶縁膜105が形成されている。
【0045】
開口121内におけるショットキー層104上及び第1絶縁膜105の一部上には、ソース電極132が設けられている。開口122内におけるショットキー層104上及び第1絶縁膜105の一部上には、ゲート電極136が設けられている。開口123内におけるショットキー層上及び第1絶縁膜105の一部上には、ドレイン電極134が設けられている。
【0046】
高抵抗基板101の裏面上には裏面電極111が設けられている。ソース電極132と裏面電極111とは、ショットキー層104、チャネル層103、バッファ層102及び高抵抗基板101を貫通するプラグ109によって接続されている。
【0047】
第1絶縁膜105上、ゲート電極136上、ソース電極132上、及びドレイン電極134上には、第2絶縁膜130が設けられている。第2絶縁膜130上には、コンタクトプラグを介してソース電極132に接続されたソース配線120と、コンタクトプラグを介してゲート電極136に接続されたゲート配線(図示せず)と、コンタクトプラグを介してドレイン電極134に接続されたドレイン配線124とが設けられている。ゲート配線、ソース配線120、及びドレイン配線124が2層以上の配線層内に配置されている場合、これらの配線は、いずれも互いに交差しないように配置されている。
【0048】
また、ショットキー層104のうち、プラグ109と接する部分(コンタクトホールが形成された領域の近傍部分)の少なくとも一部は、その他の部分よりも抵抗が高い高抵抗領域212となっている。
【0049】
この高抵抗領域212は、第1の実施形態で説明したHFETの製造方法において、開口121を形成後、ボロン(B)等のイオンをショットキー層104に注入することや、ビアホール150を形成するためのドライエッチングをショットキー層104に施すことにより形成される。
【0050】
本実施形態のHFETでは、ソース電極132が第2絶縁膜130上の配線を介することなくプラグ109を介して裏面電極111及び接地配線に接続されているので、ソース電極132が配線を介して接地される場合に比べてソースインダクタンスが低減されている。また、プラグ109がソース電極132の直下に設けられているので、動作時に生じた熱はプラグ109を介して裏面電極111に伝達され、効率的に放熱される。このように、動作時に熱が発生する領域にプラグ109を設けることで、効果的に放熱することが可能となるので、本実施形態のHFETでは、従来のHFETに比べて出力低下が大幅に抑えられている。さらに、プラグ109のうちショットキー層104を貫通する部分の周囲に高抵抗領域212が設けられているので、半導体層を介したリーク電流の増加が抑えらえている。
【0051】
(第3の実施形態)
図3は、本発明の第3の実施形態に係るHFETの構造を模式的に示す断面図である。本実施形態のHFETは、ソース配線120及びドレイン配線124の上に基板の反りを相殺する反り緩和層312を備えている点が第1の実施形態に係るHFETと異なっている。反り緩和層312以外の構成は、第1の実施形態に係るHFETと同様である。
【0052】
すなわち、図3に示すように、本実施形態のHFETは、高抵抗基板101と、高抵抗基板101上に設けられたバッファ層102と、バッファ層102上に設けられたチャネル層103と、チャネル層103上に設けられたショットキー層104とを備えている。
【0053】
ショットキー層104の上には、開口121、122、123が互いに離間して設けられた第1絶縁膜105が形成されている。
【0054】
開口121内におけるショットキー層104上及び第1絶縁膜105の一部上には、ソース電極132が設けられている。開口122内におけるショットキー層104上及び第1絶縁膜105の一部上には、ゲート電極136が設けられている。開口123内におけるショットキー層上及び第1絶縁膜105の一部上には、ドレイン電極134が設けられている。
【0055】
高抵抗基板101の裏面上には裏面電極111が設けられている。ソース電極132と裏面電極111とは、ショットキー層104、チャネル層103、バッファ層102及び高抵抗基板101を貫通するプラグ109によって接続されている。
【0056】
第1絶縁膜105上、ゲート電極136上、ソース電極132上、及びドレイン電極134上には、第2絶縁膜130が設けられている。第2絶縁膜130上には、コンタクトプラグを介してソース電極132に接続されたソース配線120と、コンタクトプラグを介してゲート電極136に接続されたゲート配線(図示せず)と、コンタクトプラグを介してドレイン電極134に接続されたドレイン配線124とが設けられている。ゲート配線、ソース配線120、及びドレイン配線124はいずれも互いに接続しないように配置されている。
【0057】
さらに、本実施形態のHFETでは、ソース配線120上及びドレイン配線124上に、基板の反りを相殺する大きなストレスを有する材料からなる反り緩和層312が設けられている。反り緩和層312は、少なくとも高抵抗基板101やチャネル層103、ショットキー層104などよりも大きな応力を有しており、高抵抗基板101の反りを緩和する方向の応力を印加できればよい。反り緩和層312の数、膜厚、及び面積は適宜調整すればよく、特に限定はされない。反り緩和層312の構成材料は、例えばWSi等である。
【0058】
HFETにおいて、高抵抗基板101の裏面が内側を向く方向に反る場合がある。これに対し、本実施形態のHFETでは、反り緩和層312が設けられているので、基板の反りが効果的に低減されており、他の電子機器等に本実施形態のHFETを用いる場合等に高い接続信頼性を確保することができる。
【0059】
(第4の実施形態)
図4(a)、(b)は、本発明の第4の実施形態に係るHFETの構造を模式的に示す断面図である。本実施形態のHFETは、ドレイン配線124上に設けられたエアーブリッジ412を備えている点が第1の実施形態に係るHFETと異なっている。エアーブリッジ412以外の構成は、第1の実施形態に係るHFETと同様である。なお、図4(a)において、実際には図4(b)に示すようにドレイン配線124よりエアーブリッジ412が伸びているが、煩雑さを避けるために該エアーブリッジ412を図示していない。
【0060】
すなわち、図4に示すように、本実施形態のHFETは、高抵抗基板101と、高抵抗基板101上に設けられたバッファ層102と、バッファ層102上に設けられたチャネル層103と、チャネル層103上に設けられたショットキー層104とを備えている。
【0061】
ショットキー層104の上には、開口121、122、123が互いに離間して設けられた第1絶縁膜105が形成されている。
【0062】
開口121内におけるショットキー層104上及び第1絶縁膜105の一部上には、ソース電極132が設けられている。開口122内におけるショットキー層104上及び第1絶縁膜105の一部上には、ゲート電極136が設けられている。開口123内におけるショットキー層上及び第1絶縁膜105の一部上には、ドレイン電極134が設けられている。
【0063】
高抵抗基板101の裏面上には裏面電極111が設けられている。ソース電極132と裏面電極111とは、ショットキー層104、チャネル層103、バッファ層102及び高抵抗基板101を貫通するプラグ109によって接続されている。
【0064】
第1絶縁膜105上、ゲート電極136上、ソース電極132上、及びドレイン電極134上には、第2絶縁膜130が設けられている。第2絶縁膜130上には、コンタクトプラグを介してソース電極132に接続されたソース配線120と、コンタクトプラグを介してゲート電極136に接続されたゲート配線(図示せず)と、コンタクトプラグを介してドレイン電極134に接続されたドレイン配線124とが設けられている。ゲート配線、ソース配線120、及びドレイン配線124はいずれも互いに接続しないように配置されている。
【0065】
さらに、本実施形態のHFETには、ドレイン配線124上からこれと離れたドレイン配線124上へと延び、導電体からなるエアーブリッジ412が設けられている。これにより、複数のドレイン配線124同士がエアーブリッジ412によって互いに接続されている。エアーブリッジ412の下は中空となっており、エアーブリッジ412はソース配線120に接続されることなくソース配線120上を跨いでいる。
【0066】
本実施形態のHFETによれば、ドレイン配線124同士がエアーブリッジ412を介して互いに接続されているので、放熱性がより向上している。このため、動作時に発生する熱による出力低下をより効果的に抑えることができる。
【0067】
なお、エアーブリッジ412に代えて通常のコンタクト及び金属配線を介してドレイン配線同士が接続されていてもよい。
【0068】
以上で説明した内容は実施形態の一例であって、各部材の形状、構成材料、膜厚等は発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。また、各実施形態で説明した構成を組み合わせてもよい。また、基板としてサファイアなどからなる絶縁基板を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のHFETは、優れた高周波特性を有し、種々の電子機器に利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
101 高抵抗基板
102 バッファ層
103 チャネル層
104 ショットキー層
105 第1絶縁膜
108 ゲート電極
109 プラグ
111 裏面電極
120 ソース配線
121、122、123 開口
124 ドレイン配線
130 第2絶縁膜
132 ソース電極
134 ドレイン電極
136 ゲート電極
140 第3絶縁膜
150 ビアホール
212 高抵抗領域
312 反り緩和層
412 エアーブリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上面上または上方に設けられ、III-V族窒化物半導体からなる第1の半導体層と、
前記第1の半導体層上に設けられ、III-V族窒化物半導体からなる第2の半導体層と、
前記基板の裏面上に設けられ、接地に接続された裏面電極と、
前記第2の半導体層上に互いに離間して設けられたソース電極及びドレイン電極と、
前記第2の半導体層上であって、前記ソース電極とドレイン電極との間の位置に設けられ、前記第2の半導体層とショットキー接触するゲート電極と、
前記第2の半導体層及び前記第1の半導体層を貫通し、少なくとも前記基板に達し、前記ソース電極と前記裏面電極とを電気的に接続させるプラグとを備えている半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1の半導体層はGaNからなり、
前記第2の半導体層はN型のAlGa1−xN(0<x≦1)からなる半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体装置において、
前記第2の半導体層の上方に設けられ、前記ソース電極に接続されたソース配線と、
前記第2の半導体層の上方に設けられ、前記ドレイン電極に接続されたドレイン配線と、
前記第2の半導体層の上方に設けられ、前記ゲート電極に接続されたゲート配線とをさらに備え、
前記ソース配線、前記ドレイン配線、及び前記ゲート配線は、互いに交差しないように配置されている半導体装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか1つに記載の半導体装置において、
前記第2の半導体層のうち前記プラグに接する部分は、前記第2の半導体層の他の部分よりも高抵抗である半導体装置。
【請求項5】
請求項3に記載の半導体装置において、
前記ソース配線上及び前記ドレイン配線上の少なくとも一方に、前記基板の反りを緩和する方向の応力を前記ソース配線または前記ドレイン配線に印加する反り緩和層をさらに備えている半導体装置。
【請求項6】
請求項3に記載の半導体装置において、
前記ドレイン配線は複数本配置されており、
互いに離れて設けられた前記ドレイン配線同士を接続させるエアーブリッジをさらに備えている半導体装置。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれか1つに記載の半導体装置において、
前記プラグは前記基板をさらに貫通している半導体装置。
【請求項8】
請求項1〜6のうちいずれか1つに記載の半導体装置において、
前記基板は導電性であり、前記プラグは前記基板の一部にまで達している半導体装置。
【請求項9】
請求項1〜8のうちいずれか1つに記載の半導体装置において、
前記基板の上面上に設けられ、III-V族窒化物半導体からなるバッファ層をさらに備え、
前記第1の半導体層は前記バッファ層の上に設けられており、
前記プラグは前記バッファ層を貫通している半導体装置。
【請求項10】
基板の裏面上に裏面電極を形成する工程と、
前記基板の上面上または上方にIII-V族窒化物半導体からなる第1の半導体層を形成する工程と、
前記第1の半導体層の上にIII-V族窒化物半導体からなる第2の半導体層を形成する工程と、
前記第2の半導体層上の互いに離れた位置にソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、
前記第2の半導体層上にゲート電極を形成する工程と、
前記ソース電極に接続されるとともに、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層を貫通し、少なくとも前記基板の一部に達するプラグを形成する工程とを備えている半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の半導体装置の製造方法において、
前記基板の上面上に、III-V族窒化物半導体からなるバッファ層を形成する工程をさらに備え、
前記第1の半導体層は前記バッファ層上に形成され、
前記プラグは前記バッファ層を貫通している半導体装置の製造方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−38885(P2012−38885A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177105(P2010−177105)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】