説明

半導体装置

【課題】シリコン酸化膜を用いた層間絶縁膜の膜厚がウェハ面内でばらついたとしても、また、ウエットエッチング時間がウェハ面内で差が生じたとしても、多層配線のための層間絶縁膜に対する開口を安定した形状で形成することが可能な構造を提供する。
【解決手段】表面に素子領域を有する半導体基板と、半導体基板上に絶縁膜を介して設けられた第1の配線層と、第1の配線層上に設けられたプラズマシリコン窒化膜と、プラズマシリコン窒化膜上に形成されたシリコン酸化膜と、プラズマシリコン窒化膜およびシリコン酸化膜を貫通するエッチングによって形成された開口と、少なくとも開口を埋めて形成された第2の配線層とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の構造に関し、特に多層配線構造を有し、上下の配線層間に位置する層間絶縁膜の一部にシリコン酸化膜を用いた半導体装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の高集積化に伴い、多層配線化が進められている。この多層配線技術では、配線層の信頼性から下地膜の表面が出来るだけ平坦であることが要求され、そのための平坦化技術として、例えば層間絶縁膜にSOG(Spin On Glass)膜が使用される。SOG膜は、シリコン化合物を有機溶剤に溶かしたSOG溶液をウェハに塗布して得られるシリコン酸化膜である。
【0003】
次に、このSOG膜を層間絶縁膜の一部として用いた半導体装置の構造およびその製造方法について説明する。図2(a)乃至(c)は、従来の半導体装置における多層配線構造に係わる製造方法を示す工程図である。まず、図2(a)に示すように、拡散層等により素子構造が形成されたシリコン基板11上に絶縁膜12が設けられ、この絶縁膜12上に下層の配線層となるアルミニウム配線層13が形成される。そして、アルミニウム配線層13を含む全面にプラズマCVD法によりシリコン酸化膜(p−SiO膜)14を形成し、次に表面の段差部での平坦性向上のためにSOG膜15を形成する。SOG膜15は、例えば回転塗布法によりウェハ全面にSOG溶液を塗布し、これを熱処理し、無機化することにより形成される酸化膜である。
【0004】
その後、図2(b)に示すような、レジスト層16によるマスクパターンを形成する。そして、図2(c)に示すように、このレジスト層16のマスクを用いてコンタクト形成領域に露出するSOG膜15に対してフッ酸系のエッチング液によりウエットエッチングを行ってp−SiO膜14に達する開口を形成する。続いてSOG膜15がエッチングされた部分に露出するp−SiO膜14に対してドライエッチングを行うことにより、図2(d)のようにアルミニウム配線層13に達する開口17を形成し、そして、SOG膜15およびp−SiO膜14に対する開口17を埋めるよう上層の配線層(図示せず)を形成して多層配線構造とする。前述のような半導体装置の製造方法は、例えば特開平6−310505号公報に記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平6−310505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の半導体装置に係わる多層配線構造は、上述のようにアルミニウム配線層13、p−SiO膜14、SOG膜15及び上層の配線層で形成されているので、設計通りの半導体装置構造を得るためには、開口部7を形成するプロセス、特にSOG膜15のウエットエッチングに際して、そのエッチング時間の制御に高い正確性が要求された。
【0007】
これは、p−SiO膜14とSOG膜15は、ウエットエッチング工程においてほぼ同じエッチングレートを有することに起因する。つまり、SOG膜15に対するエッチングは、その形成予定膜厚を基に予めエッチング工程における処理時間が決められているため、ウェハ面内で膜厚のばらつきがあれば処理後の状態もばらつく。更に、SOG膜15がウェハ面内で均一な状態で形成されたとしても、エッチング液の入った液槽に対して出し入れする工程があるため、ウェハ自体の直径の大きさに依存してその面内で全て同じエッチング時間とすることは物理的に困難な状況にある。
【0008】
エッチングが期待時間に対して変化した場合の開口部の構造を図3及び図4を用いて説明する。図3(a)、(b)は、SOG膜15に対するウエットエッチング時間が長かった場合の開口部の断面構造を示している。ウエットエッチングでは、図3(a)のように開口部の下端はp−SiO膜14の途中まで進行し、その後のドライエッチングがアルミニウム配線層の表面まで達し、削られ、コンタクト抵抗が安定しなくなるという問題が発生する。(図3(b))更に、複数の配線が互いに接近して設けられている場合には、ウエットエッチング時にSOG膜15の表面で隣接する開口がつながり、パターン不良となることもある。
【0009】
図4は、SOG膜15に対するウエットエッチング時間が短かった場合の開口部の断面構造を示している。ウエットエッチングによる開口は、図4(a)のようにp−SiO膜14まで進行せずにSOG膜が残り、続いて初期設定された時間でドライエッチングを行っても、アルミニウム配線層13まで達しない開口19となってしまう。(図4(b))この状態で開口19を埋めて上層の配線層を形成したとしても、p−SiO膜の残膜20があるために、コンタクトが取れないという問題が発生する。
【0010】
本発明は、SOG膜15の膜厚がウェハ面内でばらついたとしても、また、SOG膜15に対するウエットエッチング時間がウェハ面内で差が生じたとしても、多層配線のための層間絶縁膜に対する開口を安定した形状で形成することが可能な構造を有する半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係わる半導体装置は、表面に素子領域を有する半導体基板と、半導体基板上に絶縁膜を介して設けられた第1の配線層と、第1の配線層上に設けられたプラズマシリコン窒化膜と、プラズマシリコン窒化膜上に形成されたシリコン酸化膜と、プラズマシリコン窒化膜およびシリコン酸化膜を貫通するエッチングによって形成された開口と、少なくとも開口を埋めて形成された第2の配線層とを有する。
【0012】
また、請求項2に係わる半導体装置は、シリコン酸化膜およびプラズマシリコン窒化膜を貫通する開口は、ウエットエッチングにより形成されたシリコン酸化膜に対する第1の開口と、ドライエッチングにより形成されたプラズマシリコン窒化膜に対する第2の開口とから構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
プラズマシリコン窒化膜はシリコン酸化膜に対してウエットエッチングに対する選択比が大きいので、シリコン酸化膜の膜厚およびエッチング時間のウェハ面内でのバラツキを考慮し、余裕をみて多めにエッチング時間を設定することができる。そして、それが必要以上の時間であったとしても、ウエットエッチングが進行し過ぎることはない。従って、その後、通常のドライエッチングを行うことで、ショートもなくオーバーもなく良好な開口の形成ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1(a)乃至(d)は、本発明の実施の形態である半導体装置に係わる製造方法を示す工程図であり、図1(d)が該製造方法により製造された本発明に係わる半導体装置を表す断面図である。
【0015】
本発明の実施の形態に係わる半導体装置は、図1(d)に示されるように、表面に素子領域を有するシリコン基板1と、シリコン基板1上に絶縁膜2を介して設けられたアルミニウム配線層3からなる第1の配線層と、アルミニウム配線層3上に設けられたプラズマシリコン窒化膜4と、プラズマシリコン窒化膜4上に形成されたSOG膜5と、プラズマシリコン窒化膜4およびSOG膜5を貫通する開口を埋めて形成された上層の配線層9とを有する。本実施の形態では、シリコン酸化膜としてSOG膜を用いた例で説明するが、このシリコン酸化膜としては、NSG膜(Natural silicate glass)やBPSG膜(Boro-phospho silicate glass)でも同様に用いることもできる。
【0016】
製造工程は、まず図1(a)に示すように、拡散層等により素子構造が形成されたシリコン基板1上にBPSG膜などの絶縁膜2が設けられ、この絶縁膜2上に下層の配線層となるアルミニウム配線層3が形成される。そして、アルミニウム配線層3を含む全面にプラズマCVD法によりシリコン窒化膜4(プラズマシリコン窒化膜)を形成し、続いて表面の段差部での平坦性向上のためにSOG膜5を形成する。SOG膜5は、例えば回転塗布法によりウェハ全面にSOG溶液を塗布し、これを熱処理し無機化することにより形成される。
【0017】
その後、図1(c)に示すような、レジスト層6によるマスクパターンを形成する。そして、図1(d)に示すように、このレジスト層6のマスクを用いてコンタクト形成領域に露出するSOG膜5に対してフッ酸系のエッチング液によりウエットエッチングを行ってプラズマシリコン窒化膜4に達する第1の開口7を形成し、続いてSOG膜5がエッチングされた部分に露出するp−SiO膜4に対してドライエッチングを行うことにより、アルミニウム配線層3に達する第2の開口8を形成する。そして、SOG膜5およびプラズマシリコン窒化膜4に対する第1の開口7及び第2の開口8を埋めるよう上層配線層9を形成して多層配線構造とする。
【0018】
上述のような半導体装置では、プラズマシリコン窒化膜4はSOG膜5に対してウエットエッチングの選択比が大きいので、SOG膜5の膜厚およびエッチング時間のウェハ面内でのバラツキを考慮し、余裕をみて多めにエッチングエッチング時間を設定することができる。そして、それが必要以上の時間であったとしても、ウエットエッチングが進行し過ぎることはない。従って、その後、通常のドライエッチングを行うことで、ショートもなくオーバーもなく良好な開口を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の半導体装置に係わる製造方法を示す工程図である。
【図2】従来の半導体装置に係わる製造方法を示す工程図である。
【図3】ウエットエッチング時間が長かった場合の開口部を表す断面構造図である。
【図4】ウエットエッチング時間が短かった場合の開口部を表す断面構造図である。
【符号の説明】
【0020】
1、11 シリコン基板
2、12 絶縁膜
3、13 アルミニウム配線
4 プラズマシリコン窒化膜
5、15 SOG膜
6、16 レジスト層
14 プラズマシリコン酸化膜
7 第1の開口
8 第2の開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に素子領域を有する半導体基板と、前記半導体基板上に絶縁膜を介して設けられた第1の配線層と、前記第1の配線層上に設けられたプラズマシリコン窒化膜と、前記プラズマシリコン窒化膜上に形成されたシリコン酸化膜と、前記プラズマシリコン窒化膜および前記シリコン酸化膜を貫通する、エッチングによって形成された開口と、少なくとも前記開口を埋めて形成された第2の配線層とを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記シリコン酸化膜および前記プラズマシリコン窒化膜を貫通する開口は、ウエットエッチングにより形成された前記シリコン酸化膜に対する第1の開口と、ドライエッチングにより形成された前記プラズマシリコン窒化膜に対する第2の開口とから構成されることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−131013(P2008−131013A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−317876(P2006−317876)
【出願日】平成18年11月25日(2006.11.25)
【出願人】(390009667)セイコーNPC株式会社 (161)
【Fターム(参考)】