説明

半導体装置

【課題】ポーラスLow−k膜の信頼性を向上させる。
【解決手段】ポーラスLow−k膜からなる第2ファイン層の層間絶縁膜IL2内の空孔10および空孔11の平均径を1.0nm以上1.45nm未満とすることで、プロセスダメージによって層間絶縁膜IL2の表面に変質層CLが形成されることを防ぐ。また、水分を含む変質層CLの形成を抑えることで、各配線を構成するバリア膜および主導体膜の酸化を防ぎ、各配線間の耐圧の劣化を防ぐ。これにより、層間絶縁膜IL2に隣接して形成される配線のEM寿命および前記配線の線間TDDB寿命の劣化を防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に、低い比誘電率膜を有する半導体装置に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2008−263105号公報)には、ポーラスLow−k膜を複数の絶縁層からなる積層構造とし、前記複数の絶縁層のそれぞれを、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等で成膜した後、ポロジェン脱離処理を施して内部に空孔を設けることで形成することが開示されている。前記ポーラスLow−k膜を構成するそれぞれの絶縁層の膜厚を薄くすることで、ポーラスLow−k膜内に形成する複数の空孔同士が接触して連続的に接続されることを防ぐことが開示されている。すなわち、ここでは絶縁層の膜厚を薄くすることで、空孔同士が繋がることに起因するポーラスLow−k膜の機械的強度の低下およびポーラスLow−k膜の膜質の低下を防ぐことができるとしている。
【0003】
特許文献2(特開2007−318067号公報)には、ポロジェン(Porogen)を用いて、Low−k膜をCVD法により形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−263105号公報
【特許文献2】特開2007−318067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先端のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)においては、素子の微細化が進むにつれて、配線抵抗と配線の寄生容量との積に比例する配線遅延(RC(Resistance-Capacitance)遅延)の増大が問題となる。この問題への対策として、銅(Cu)を配線に用いることで配線抵抗を低減するとともに、比誘電率kが2.5以上3.1以下の低い比誘電率を有する絶縁膜(Low−k膜)を層間絶縁膜に用いることで寄生容量を低減する手法が盛んに取り入れられている。近年では、さらに比誘電率が低い材料として、Low−k膜中に空孔を導入したポーラスLow−k膜などが開発されている。
【0006】
なお、前記特許文献1ではポーラスLow−k膜内に空孔を形成するためのポロジェンの量を加減することで、ポーラスLow−k膜の機械的強度の低下を防ぎ、ポーラスLow−k膜の比誘電率を低下させることができるとしているが、ポロジェンの流量を加減して形成する空孔の具体的な大きさに関する数値については記載されていない。
【0007】
しかし、ポーラスLow−k膜は、エッチング、アッシング、CMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)、成膜または洗浄などによるプロセスダメージに対する耐性が低いため、ダメージを受けた領域が変質し、ポーラスLow−k膜の信頼性が低下する。ダメージを受けたポーラスLow−k膜が変質した場合、ポーラスLow−k膜の電気特性が劣化する。すなわち、エッチングまたはアッシングなどの処理を行うと、プラズマまたは薬液などに曝されたポーラスLow−k膜の膜質が低下する。
【0008】
このとき、ダメージを受けたポーラスLow−k膜は親水性が高くなることで水分が吸着して比誘電率が高くなるため、ポーラスLow−k膜内に含まれる水分によってポーラスLow−k膜と隣接するダマシン配線の表面が酸化し、ダマシン配線内の銅がポーラスLow−k膜内に拡散するおそれがある。このことにより、ポーラスLow−k膜内に並んで配置された配線間の線間TDDB(Time Dependent Dielectric Breakdown:経時絶縁破壊)寿命が短くなる。また、ポーラスLow−k膜内に含まれる水分によってポーラスLow−k膜と隣接するダマシン配線の表面が酸化することにより、ダマシン配線と、当該ダマシン配線に接するポーラスLow−k膜またはその他の絶縁膜との密着性が低下するおそれがある。この場合、ポーラスLow−k膜内に形成されたダマシン配線の配線EM(Electro Migration)寿命が短くなり、ポーラスLow−k膜の信頼性が低下する。また、ポーラスLow−k膜が水分を含みやすくなること、および、ポーラスLow−k膜内に銅が拡散することは、ポーラスLow−k膜を介して配置された配線間の耐圧が低下する原因となり、ポーラスLow−k膜の電気特性の低下に繋がる。
【0009】
本発明の目的は、半導体装置の信頼性を向上させることにある。特に、層間絶縁膜のダメージ耐性を向上させる。
【0010】
また、本発明の他の目的は、半導体装置の性能を向上させることにある。特に、層間絶縁膜の電気特性を向上させる。
【0011】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0013】
本発明の好ましい一実施の形態である半導体装置は、
半導体基板上に形成され、内部に複数の空孔を有する層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜に接して形成された配線と、
を有し、
前記複数の空孔は、絶縁膜が形成されることにより前記絶縁膜内に形成される複数の第1空孔と、前記絶縁膜がキュア工程を経ることで前記層間絶縁膜が形成されることにより、前記絶縁膜内に設けられたポロジェンが脱離した箇所に形成される複数の第2空孔とで構成され、
前記複数の空孔の平均径は1.0nm以上1.45nm未満とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0015】
上記した本発明の好ましい一実施の形態によれば、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態である半導体装置の断面図である。
【図2】図1に示す半導体装置の一部を拡大して示す断面図である。
【図3】図2に示す半導体装置の一部を拡大して示す断面図である。
【図4】図1に示す半導体装置の一部を拡大して示す断面図である。
【図5】空孔の平均径に対する層間絶縁膜の比誘電率の上昇率を示すグラフである。
【図6】空孔の平均径に対する層間絶縁膜の比誘電率を示すグラフである。
【図7】空孔の平均径に対する層間絶縁膜の配線間耐圧を示すグラフである。
【図8】空孔の平均径に対する線間TDDB寿命と累積分布との関係を示すグラフである。
【図9】空孔の平均径に対する配線EM寿命と累積分布との関係を示すグラフである。
【図10】本発明の一実施の形態である半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図11】図10に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図12】図11に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図13】図12に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図14】図11に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図15】図14に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図16】図15に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図17】図16に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図18】図17に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図19】図18に示す製造工程中の半導体装置の一部を拡大して示す断面図である。
【図20】図19に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図21】図18に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図22】図21に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図23】図22に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図24】図23に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図25】図24に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図26】図25に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図27】図26に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図28】図27に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図29】図28に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図30】図29に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図31】図30に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図32】図31に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図33】図32に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図34】図33に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図35】図34に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図36】図35に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図37】図36に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図38】図37に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図39】図38に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図40】図39に続く半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図41】図3の変形例として示す半導体装置の一部を拡大して示す断面図である。
【図42】比較例として示す半導体装置の一部を拡大して示す断面図である。
【図43】比較例として示す半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なときを除き、同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0018】
本発明の実施の形態による半導体装置の一例を図1を用いて説明する。図1は半導体基板上に電界効果トランジスタであるMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)と、MISFET上に形成された複数の配線層とを有する半導体装置の一部を示す断面図である。
【0019】
図1において、シリコン単結晶からなる半導体基板1S上に複数のMISFETQnが形成されている。複数のMISFETQnは、素子分離領域で分離された活性領域に形成されており、例えば、以下に示す構成をしている。具体的には、素子分離領域で分離された活性領域にはウェルが形成されており、このウェル上にMISFETQnが形成されている。MISFETQnは、半導体基板1Sの主面上に、例えば、酸化シリコン膜からなるゲート絶縁膜を有し、このゲート絶縁膜上にポリシリコン膜とこのポリシリコン膜上に設けられたシリサイド膜(ニッケルシリサイド膜など)の積層膜からなるゲート電極を有している。ゲート電極の両側の側壁には、例えば、酸化シリコン膜からなるサイドウォールが形成されており、このサイドウォール下の半導体基板内に浅い不純物拡散領域がゲート電極に整合して形成されている。そして、浅い不純物拡散領域の外側に深い不純物拡散領域がサイドウォールに整合して形成されている。一対の浅い不純物拡散領域と一対の深い不純物拡散領域によって、それぞれMISFETQnのソース領域とドレイン領域が形成されている。以上のようにして半導体基板1S上にMISFETQnが形成されている。
【0020】
続いて、図1に示すように、複数のMISFETQnを形成した半導体基板1S上にはコンタクト層間絶縁膜CILが形成されている。このコンタクト層間絶縁膜CILは、例えば、オゾンとTEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)とを原料に使用した熱CVD法により形成されるオゾンTEOS膜と、このオゾンTEOS膜上に設けられたTEOSを原料に使用したプラズマCVD法により形成されるプラズマTEOS膜との積層膜から形成されている。そして、このコンタクト層間絶縁膜CILを貫通してMISFETQnのソース領域やドレイン領域に達する複数のプラグPLG1が形成されている。このプラグPLG1は、例えば、チタン/窒化チタン膜(以下、チタン/窒化チタン膜はチタンとこのチタン上に設けられた窒化チタンで形成される膜を示す)よりなるバリア導体膜と、このバリア導体膜上に形成されたタングステン膜とをコンタクトホールに埋め込むことにより形成されている。チタン/窒化チタン膜は、タングステン膜を構成するタングステンがシリコン中へ拡散することを防止するために設けられている膜であり、このタングステン膜が構成される際のWF(フッ化タングステン)を還元処理するCVD法において、フッ素アタックがコンタクト層間絶縁膜CILや半導体基板1Sになされてダメージを与えることを防ぐためのものである。なお、コンタクト層間絶縁膜CILは、酸化シリコン膜(SiO膜)、SiOF膜、あるいは、窒化シリコン膜のいずれかの膜により形成されていてもよい。
【0021】
次に、コンタクト層間絶縁膜CIL上には複数の第1層配線L1が形成されている。具体的に、第1層配線L1は、プラグPLG1を形成したコンタクト層間絶縁膜CIL上に形成された層間絶縁膜IL1に埋め込まれるように形成されており、第1層配線L1は層間絶縁膜IL1と接して形成されている。層間絶縁膜IL1は、例えば半導体基板1Sの上層に形成されたパッシベーション膜PASよりも比誘電率が低いLow−k膜により構成されており、例えば、SiOC膜から構成されている。つまり、層間絶縁膜IL1を貫通して底部でプラグPLG1が露出する配線溝に銅を主体とする膜(以下、銅膜と記載する)を埋め込むことにより、第1層配線L1が形成されている。ここで、第1層配線L1および第1層配線L1と同層の層間絶縁膜IL1を含む層は、本明細書で第1ファイン層と呼ぶこともある。
【0022】
続いて、第1層配線L1を形成した層間絶縁膜IL1上には、層間絶縁膜IL2および層間絶縁膜IL2と接する複数の第2層配線L2が形成されている。具体的には、第1層配線L1を形成した層間絶縁膜IL1上にバリア絶縁膜BI1が形成され、このバリア絶縁膜BI1上に層間絶縁膜IL2が形成されている。バリア絶縁膜BI1は、例えば、SiCN膜と前記SiCN膜上に設けられたSiOC膜との積層膜、SiC膜、アモルファスカーボン膜、フッ化ホウ素(BN)膜またはSiN膜からなり、層間絶縁膜IL2は、例えば、内部に複数の空孔を有するSiOC膜から形成されている。この空孔の大きさ(径)に関しては、図3を用いて後述する。バリア絶縁膜BI1および層間絶縁膜IL2には、ダマシン配線である複数の第2層配線L2および複数のプラグPLG2が埋め込まれるように形成されている。第2層配線L2は、プラグPLG2を介して第1層配線L1と電気的に接続されている。プラグ第2層配線L2およびプラグPLG2は、例えば、銅を主体とする金属膜から形成されている。バリア絶縁膜は銅を主体とする金属配線(例えば第1層配線L1)と層間絶縁膜(例えば層間絶縁膜IL2)との間に形成され、前記金属配線内の金属イオンが前記層間絶縁膜内に拡散することを防ぐ機能を有する膜である。
【0023】
そして、第2層配線L2と同様にして、第2層配線L2上に第3層配線L3〜第5層配線L5が形成されている。第3層配線L3〜第5層配線L5のそれぞれは、層間絶縁膜IL3〜IL5のそれぞれと接して形成されている。具体的に、層間絶縁膜IL2上および第2層配線L2上には層間絶縁膜IL2および第2層配線と接してバリア絶縁膜BI2が形成され、このバリア絶縁膜BI2上に層間絶縁膜IL3が形成されており、第2層配線および層間絶縁膜IL2のそれぞれの上面はバリア絶縁膜BI2と接している。
【0024】
バリア絶縁膜BI2は、例えば、SiCN膜とこのSiCN膜上に設けられたSiOC膜の積層膜、SiC膜、または、SiN膜のうちのいずれか1つから形成されており、層間絶縁膜IL3は、例えば、空孔を有するSiOC膜から形成されている。このバリア絶縁膜BI2および層間絶縁膜IL3には、第2層配線L3およびプラグPLG3が埋め込まれるように形成されている。第3層配線L3は、プラグPLG3を介して第2層配線L2と電気的に接続されている。第2層配線L3およびプラグPLG3は、例えば、銅膜から形成されている。
【0025】
次に、層間絶縁膜IL3上および第3層配線L3上には層間絶縁膜IL3および第3層配線L3と接してバリア絶縁膜BI3が形成され、このバリア絶縁膜BI3上に層間絶縁膜IL4が形成されている。バリア絶縁膜BI3は、例えば、SiCN膜とこのSiCN膜上に設けられたSiOC膜の積層膜、SiC膜、または、SiN膜のうちのいずれか1つから形成されており、層間絶縁膜IL4は、例えば、空孔を有するSiOC膜から形成されている。このバリア絶縁膜BI3および層間絶縁膜IL4には、第4層配線L4およびプラグPLG4が埋め込むように形成されている。第4層配線L4は、プラグPLG4を介して第3層配線L3と電気的に接続されている。第4層配線L4およびプラグPLG4は、例えば、銅膜から形成されている。
【0026】
さらに、層間絶縁膜IL4上および第4層配線L4上には層間絶縁膜IL4および第4層配線L4と接してバリア絶縁膜BI4が形成され、このバリア絶縁膜BI4上に層間絶縁膜IL5が形成されている。バリア絶縁膜BI4は、例えば、SiCN膜とこのSiCN膜上に設けられたSiOC膜の積層膜、SiC膜、または、SiN膜のうちのいずれか1つから形成されており、層間絶縁膜IL5は、例えば、空孔を有するSiOC膜から形成されている。このバリア絶縁膜BI4および層間絶縁膜IL5には、第5層配線L5およびプラグPLG5が埋め込まれるように形成されている。第5層配線L5は、プラグPLG5を介して第4層配線L4と電気的に接続されている。第5層配線L5およびプラグPLG5は、例えば、銅膜から形成されている。ここで、第2層配線L2〜第5層配線L5およびそれらの同層に形成された層間絶縁膜IL2〜IL5をまとめて、本明細書では第2ファイン層と呼ぶこともある。第2ファイン層である層間絶縁膜IL2〜IL5内には、それぞれ複数の配線が形成されている。
【0027】
続いて、層間絶縁膜IL5上および第5層配線L5上には層間絶縁膜IL5および第5層配線L5と接してバリア絶縁膜BI5が形成され、このバリア絶縁膜BI5上に層間絶縁膜IL6が形成されている。バリア絶縁膜BI5は、例えば、SiCN膜とこのSiCN膜上に設けられたSiOC膜の積層膜、SiC膜、または、SiN膜のうちのいずれか1つから形成されており、層間絶縁膜IL6は、例えば、SiOC膜から形成されている。このバリア絶縁膜BI5、層間絶縁膜IL6には、第6層配線L6およびプラグPLG6が埋め込まれるように形成されている。第6層配線L6は、プラグPLG6を介して第5層配線L5と電気的に接続されている。この第6層配線L6およびプラグPLG6は、例えば、銅膜から形成されている。
【0028】
次に、層間絶縁膜IL6上にバリア絶縁膜BI6が形成され、このバリア絶縁膜BI6上に層間絶縁膜IL7が形成されている。バリア絶縁膜BI6は、例えば、SiCN膜とこのSiCN膜上に設けられたSiOC膜の積層膜、SiC膜、または、SiN膜のうちのいずれか1つから形成されており、層間絶縁膜IL7は、例えばSiOC膜から形成されている。このバリア絶縁膜BI6、層間絶縁膜IL7には、第7層配線L7およびプラグPLG7が埋め込まれるように形成されている。第7層配線L7は、プラグPLG7を介して第6層配線L6と電気的に接続されている。第7層配線L7およびプラグPLG7は、例えば、銅膜から形成されている。ここで、第6層配線L6と第7層配線L7をまとめて、本明細書ではセミグローバル層と呼ぶこともある。
【0029】
さらに、層間絶縁膜IL7上にバリア絶縁膜BI7aが形成され、このバリア絶縁膜BI7a上に層間絶縁膜IL8aが形成されている。そして、層間絶縁膜IL8a上にエッチングストップ絶縁膜BI7bが形成され、このエッチングストップ絶縁膜BI7b上に層間絶縁膜IL8bが形成されている。バリア絶縁膜BI7aは、例えば、SiCN膜とSiOC膜の積層膜、SiC膜、または、SiN膜のうちのいずれか1つから形成されており、エッチングストップ絶縁膜BI7bは、例えば、SiCN膜、SiC膜、または、SiN膜のうちのいずれか1つから形成されており、層間絶縁膜IL8aおよび層間絶縁膜IL8bは、例えば、酸化シリコン膜(SiO膜)、SiOF膜、TEOS膜から形成されている。バリア絶縁膜BI7aおよび層間絶縁膜IL8aには、プラグPLG8が埋め込まれるように形成されており、エッチングストップ絶縁膜BI7bおよび層間絶縁膜IL8bには、第8層配線L8が埋め込まれるように形成されている。第8層配線L8は、プラグPLG8を介して第7層配線L7と電気的に接続されている。第8層配線L8およびプラグPLG8は、例えば、銅膜から形成されている。ここで、第8層配線L8を本明細書ではグローバル層と呼ぶこともある。
【0030】
続いて、層間絶縁膜IL8b上にバリア絶縁膜BI8が形成され、このバリア絶縁膜BI8上に層間絶縁膜IL9が形成されている。バリア絶縁膜BI8は、例えば、SiCN膜とSiOC膜の積層膜、SiC膜、または、SiN膜のうちのいずれか1つから形成されており、層間絶縁膜IL9は、例えば、酸化シリコン膜(SiO膜)、SiOF膜、TEOS膜から形成されている。バリア絶縁膜BI8および層間絶縁膜IL9には、プラグPLG9が埋め込まれるように形成されている。そして、層間絶縁膜IL9上には第9層配線L9が形成されている。第9層配線L9は、プラグPLG9を介して第8層配線L8と電気的に接続されている。プラグPLG9と第9層配線L9は、例えば、アルミニウム膜から形成されている。
【0031】
第9層配線L9上には、表面保護膜となるパッシベーション膜PASが形成されており、このパッシベーション膜PASに形成された開口部から第9層配線L9の一部が露出している。この第9層配線L9のうち露出している領域がパッドPDとなる。パッシベーション膜PASは、半導体装置を不純物の侵入から保護する機能を有し、例えば、酸化シリコン膜とこの酸化シリコン膜上に設けられた窒化シリコン膜から形成されている。そして、パッシベーション膜PAS上にはポリイミド膜PIが形成されている。このポリイミド膜PIもパッドPDの形成されている領域を開口している。パッドPDは、図1に示す半導体装置を含む半導体チップの電極となる領域であり、前記半導体チップがマウントされるパッケージ内において他の導電部材と金属ワイヤなどを介して電気的に接続される領域である。
【0032】
バリア絶縁膜BI1〜BI8は、それぞれのバリア絶縁膜の下面に接する銅膜内のCu(銅)がそれぞれのバリア絶縁膜上の層間絶縁膜などに拡散することを防ぐ働きを有するライナー膜であり、それぞれのバリア絶縁膜上の層間絶縁膜にビアホールを形成する際のエッチングストッパ膜としても機能する。
【0033】
次に、図1に示す複数の第1層配線L1、複数の第2層配線L2および複数の第3層配線L3を含む第1〜第3の配線層を拡大した断面図を図2に示す。図2には、第1ファイン層である第1層配線L1と、この第1層配線L1上に形成されている第2ファイン層である第2層配線L2および第3層配線L3を示している。図2において、第1層配線L1は、例えば、SiOC膜からなる層間絶縁膜IL1を貫く配線溝WD1内に形成されている。具体的に、第1層配線L1は、配線溝WD1の内壁に形成されたタンタル/窒化タンタル膜(以下タンタル/窒化タンタル膜は、窒化タンタルとこの窒化タンタル上に形成されたタンタルで構成された膜を示す)またはチタン/窒化チタン膜などからなるバリア導体膜BM1と、このバリア導体膜BM1上に形成され、配線溝を埋め込むように形成された銅膜Cu1から構成されている。
【0034】
このように層間絶縁膜IL1に形成された複数の配線溝WD1に直接銅膜を形成せずにバリア導体膜BM1を形成しているのは、銅膜を構成する銅が熱処理などによって半導体基板1Sを構成するシリコンまたは層間絶縁膜IL1などの層間絶縁膜へ拡散することを防止するためである。銅原子のシリコンへの拡散定数は比較的大きいので、層間絶縁膜に拡散した銅原子は容易に半導体基板1Sを構成するシリコン中へも拡散する。この場合、半導体基板1SにはMISFETQnなどの半導体素子が形成されており、これらの形成領域に銅原子が拡散すると耐圧不良などに代表される半導体素子の特性劣化を引き起こす。すなわち、層間絶縁膜へ銅原子は高い拡散定数で拡散するために、線間TDDB特性の劣化を引き起こす。このことから、第1層配線を構成する銅膜から銅原子が拡散しないようにバリア導体膜BM1が設けられている。つまり、バリア導体膜BM1は、銅原子の拡散を防止する機能を有する膜である。なお、バリア導体膜の部材としては、チタンまたはタンタルの他に、ルテニウム(Ru)、マンガン(Mn)またはそれらの化合物などを用いてもよい。
【0035】
そして、図2に示すように、第1層配線L1を形成した層間絶縁膜IL1上にバリア絶縁膜BI1が形成されており、このバリア絶縁膜BI1上に層間絶縁膜IL2が形成されている。このとき、バリア絶縁膜BI1は、SiCN膜とSiOC膜の積層膜から構成されており、層間絶縁膜IL2は、例えば、内部に複数の空孔を有するSiOC膜から構成されている。層間絶縁膜IL2の途中深さまで達する配線溝WD2内、および、バリア絶縁膜BI1と層間絶縁膜IL2とを貫通して第1層配線L1の上面に達するビアホールV1内には、それぞれ第2層配線L2およびプラグPLG2が埋め込まれている。第2層配線L2およびプラグPLG2も、第1層配線L1と同様にバリア導体膜BM2と銅膜Cu2の積層膜から形成されている。第2層配線L2は層間絶縁膜IL2の上面に形成された複数の配線溝WD2のそれぞれの内部に埋め込まれた複数のダマシン配線であり、第1層配線L1と同様に、第2層配線L2と層間絶縁膜IL2との間にはバリア導体膜BM2が形成されている。
【0036】
また、バリア絶縁膜BI1と同様に層間絶縁膜IL2上にバリア絶縁膜BI2が形成されており、このバリア絶縁膜BI2上に層間絶縁膜IL3が形成されている。このとき、バリア絶縁膜BI3は、SiCN膜とSiOC膜の積層膜から構成されており、層間絶縁膜IL3は、例えば、空孔を有するSiOC膜から構成されている。層間絶縁膜IL3の途中深さまで達する複数の配線溝WD3内、および、バリア絶縁膜BI2と層間絶縁膜IL3とを貫通して第2層配線L2の上面に達するビアホールV2内には、それぞれ複数の第3層配線L3および複数のプラグPLG3が埋め込まれている。第3層配線L3およびプラグPLG3もバリア導体膜BM3と銅膜Cu3の積層膜から形成されている。
【0037】
なお、ここでは図1に示す複数の第2層配線L2同士の最小の間隔(配線ピッチ)、複数の第3層配線L3同士の最小の間隔、複数の第4層配線L4同士の最小の間隔および複数の第5層配線L5同士の最小の間隔よりも広い最小の間隔(配線ピッチ)で配線が配置された複数の第6層配線L6および第7層配線L7を有する層をセミグローバル層と呼び、セミグローバル層より狭い配線ピッチを有する第1層配線L1〜第5層配線L5を有する層をファイン層と呼んでいる。特に、複数の第1層配線L1を有する層を第1ファイン層とし、第2層配線L2〜第5層配線L5を有する層を第2ファイン層としている。セミグローバル層に比べ、第2ファイン層内の配線ピッチは狭いため、第2ファイン層内の層間絶縁膜はセミグローバル層内の層間絶縁膜よりも低い比誘電率を有することが重要となる。また、セミグローバル層に比べて第2ファイン層内の配線ピッチが狭いことにより、第2ファイン層内においては、層間絶縁膜の比誘電率のばらつきを抑えたり、プロセスダメージにる層間絶縁膜の比誘電率の上昇を抑制するなどして層間絶縁膜の信頼性の低下を防ぐ必要がある。
【0038】
ここで、図2の層間絶縁膜IL2を拡大した断面図を図3に示す。また、図1に示す層間絶縁膜IL6を拡大した断面図を図4に示す。図3に示すように、層間絶縁膜IL2内には、空孔10が複数形成されており、また、空孔10よりも平均径が小さい空孔11が複数形成されている。また、図4に示すように、層間絶縁膜IL6内には、空孔10(図3参照)よりも平均径が小さい空孔11が多数形成されているが、層間絶縁膜IL2(図3参照)と違い、層間絶縁膜IL6内には空孔10(図3参照)は形成されていない。
【0039】
図3に示す空孔10は、後述するプラズマCVD法などにより、ポロジェンガスを内包する複数の空孔を有する絶縁膜を形成した後、ポロジェンを絶縁膜内から脱離させることにより、ポロジェンが形成されていた箇所に形成する空隙である。一方、空孔11は、ポロジェンの使用の有無に関係なく、CVD法などによりSiOC膜などの絶縁膜を形成する際に形成される空隙である。
【0040】
本実施の形態では、内部に空孔11(図4参照)が形成され、空孔10(図3参照)が形成されていない層間絶縁膜(例えば図4に示す層間絶縁膜IL6)をLow−k膜と定義し、内部に空孔11および空孔10が形成されており、Low−k膜よりも低い比誘電率を有する層間絶縁膜(例えば図3に示す層間絶縁膜IL2)をポーラスLow−k膜と定義して説明する。Low−k膜は、例えば図1に示す第2ファイン層である層間絶縁膜IL5上に積層された層間絶縁膜を構成しており、ポーラスLow−k膜は、第2ファイン層である層間絶縁膜IL2〜IL5を構成している。これは、第2ファイン層内の配線が第6層配線L6または第7層配線L7のようなセミグローバル層内の配線ピッチ(配線同士の最小の間隔)よりも狭い配線ピッチで配置されており、第2ファイン層内の層間絶縁膜は、セミグローバル層内の層間絶縁膜よりも低い比誘電率を有することが好ましいためである。ファイン層およびセミグローバル層では、低い比誘電率を有する層間絶縁膜を用いることにより、半導体装置内の配線の抵抗と配線の寄生容量との積に比例する配線遅延の発生を防ぐことができる。また、比誘電率が低い層間絶縁膜を用いることで、例えば第2層配線L2同士の間の耐圧を高めることができる。
【0041】
また、図1に示す層間絶縁膜IL3、層間絶縁膜IL4およびIL5は図3に示すポーラスLow−k膜である層間絶縁膜IL2と同様の構造を有しており、図1に示す層間絶縁膜IL1およびIL7は、図4に示すLow−k膜である層間絶縁膜IL6と同様の構造を有している。すなわち、第2ファイン層である層間絶縁膜IL3、層間絶縁膜IL4およびIL5内には、それぞれ図3に示す空孔10および空孔11が形成されている。また、第1ファイン層である層間絶縁膜IL1内およびセミグローバル層である層間絶縁膜IL7内には、それぞれ空孔11は形成されているが、空孔10は形成されていない。
【0042】
なお、層間絶縁膜内では、複数の空孔同士が接触し、一つのいびつな形状を有する空孔が多数形成されている可能性がある。そのため、本願で言う空孔の平均径とは、層間絶縁膜内の複数の空孔のそれぞれの体積を球体とみなした場合の前記球体の直径の平均値を指すものとする。
【0043】
ここで、図3に示す空孔10の平均径は1.0nm以上1.7nm未満であり、空孔11の平均径は0.6以上1.0nm未満である。空孔10および空孔11の平均径は1.0nm以上1.45nm未満である。
【0044】
例えば、空孔10の平均径は1.68nm、空孔11の平均径は0.9nmであり、この場合、空孔10および空孔11の平均径は1.29nmであり、前述した1.0nm以上1.45nm未満の範囲内の平均径となる。
【0045】
空孔の平均径の計測方法としては、低速陽電子ビームを用いた陽電子・ポジトロニウム寿命計測システムを用いる方法がある。この計測方法は、層間絶縁膜内の空孔に陽電子ビームを照射してポジトロニウムを形成し、このポジトロニウムが消滅するまでにかかる時間を計測することで空孔の直径を計測するものであり、空孔の直径が長いほどポジトロニウムが消滅するまでの時間は長くなる。上記の計測装置については、例えば特開2008−232759号公報に低速陽電子ビームを用いた計測装置が開示されている。
【0046】
次に、本実施の形態の半導体装置の効果について説明する。
【0047】
まず、図3の変形例として、CVD法によりポロジェンを用いてポーラスLow−k膜を形成する場合の成膜工程において、後述するポロジェンの流量を本実施の形態よりも多くし、内部に比較的平均径が大きい空孔を複数形成した層間絶縁膜を拡大した断面図を図41に示す。図41に示すように、層間絶縁膜IL2a内には、図3に示す空孔10よりも平均径が大きい空孔12と、図3に示す空孔10よりも平均径が小さい空孔11とが形成されている。すなわち、空孔12の平均径は、1.7nm以上である。例えば、空孔11の平均径は0.9nmであり、空孔12の平均径は2.4nmである。したがって、空孔11および空孔12の平均径は1.65nmであり、図3に示す空孔10および空孔11の平均径である1.0nm以上1.45nm未満の範囲内の値(例えば1.29nm)よりも大きい。
【0048】
ここで、ポーラスLow−k膜は、エッチング工程、アッシング工程、洗浄工程、成膜工程およびCMPによる研磨工程などにおいてプラズマまたは薬液などに曝されることにより、プラズマまたは薬液などに曝された表面の膜質が変化する性質を有している。具体的には、図1に示す層間絶縁膜IL2〜IL5は、後に示す図21、図23および図24を用いて説明するエッチング工程、図22および図23を用いて説明するアッシング工程ならびにアッシング工程の後の洗浄工程において、その表面にダメージを受ける。また、後に示す図27および図28を用いて説明する洗浄工程、図26を用いて説明するCMP工程、ならびに、図18、図25および図27を用いて説明する層間絶縁膜上のバリア導体膜またはバリア絶縁膜BI2などの成膜工程において、その表面にダメージを受ける。
【0049】
上記の工程の中では、CMP工程または洗浄工程などによる層間絶縁膜に対するダメージよりも、層間絶縁膜に配線溝またはビアホールなどを形成するエッチング工程またはアッシング工程による層間絶縁膜へのダメージの方が特に大きい。比較例として図41に示す変質層CLaは、ダメージを受けて膜質が変化した層間絶縁膜IL2aの表面に形成された層である。
【0050】
プラズマまたは薬液などに曝された(ダメージを受けた)層間絶縁膜は、その表面の材質が変化して親水性が高まり、水を含みやすい状態となる。なお、ダメージを受けた層間絶縁膜の親水性が高まるのは、層間絶縁膜に結合している疎水性の高いメチル基(CH基)が、プラズマまたは薬液などに曝されることにより、親水性の高いOH基と置き換わるためである。OH基が結合している層間絶縁膜の変質層には、半導体基板が大気に曝露された際に水分が吸着しやすい。
【0051】
ここで、図41に示す層間絶縁膜IL2aを用いた配線層を拡大した断面図を図42に比較例として示す。図42に示すバリア絶縁膜BI2a、第2層配線L2a、銅膜Cu2a、バリア導体膜B2aおよび層間絶縁膜IL2aは、それぞれ図2に示すバリア絶縁膜BI2、第2層配線L2、銅膜Cu2、バリア導体膜B2および層間絶縁膜IL2に対応する。図41に示す層間絶縁膜IL2aと同様に、層間絶縁膜IL2の上面および配線溝WD2の内壁および底面には変質層CLaが形成されており、変質層CLa内には層間絶縁膜IL2aよりも多くの水分が含まれている。銅膜Cu2aの上面に形成された酸化銅膜CuOは、変質層CLa内の水分によって酸化された酸化銅を含む層である。
【0052】
変質層CLaが層間絶縁膜IL2aの上面からより深い領域に渡って形成されている場合に酸化銅膜CuOは形成されやすくなる。酸化銅膜CuOが形成されていると、酸化銅膜CuOと酸化銅膜CuO上のバリア絶縁膜BI2aとの密着性が低下し、第2層配線L2aの配線EM寿命が低下する。なお、EMとは、電界の影響で金属配線を構成する金属成分が非金属媒体の上や中を横切って移動するエレクトロマイグレーションのことであり、このエレクトロマイグレーションにより金属配線内に空隙(ボイド)が形成され、金属配線の抵抗値の上昇または断線などが起こる。
【0053】
また、変質層CLaから脱離した水分によってバリア導体膜B2aが酸化されることにより、バリア導体膜のバリア膜としての機能が低下し、銅膜Cu2a内の銅イオンが第2層配線L2aを囲む層間絶縁膜IL2a内に拡散しやすくなる。このように、層間絶縁膜IL2a内にダメージを受けた変質層CLが形成され、変質層CLに水分が吸着し、また、層間絶縁膜IL2a内に銅が拡散することにより、第2層配線L2a間の線間TDDB寿命が低下する。また、同様の原因により、第2層配線L2間の耐圧が低下する問題がある。なお、線間TDDBとは、酸化膜(本実施の形態の図1に示す層間絶縁膜IL2〜IL5に相当)に電圧を継続的に印加したとき、時間が経つにつれて前記酸化膜の破壊の割合が増加する性質のことを言う。
【0054】
また、上記したようにバリア導体膜B2aが酸化された場合、バリア導体膜B2aと接する層間絶縁膜IL2aと第2層配線L2aとの密着性が低下する問題がある。
【0055】
これらの問題は、変質層CLaが形成される領域を低減することで防ぐことができる。図41に示すように、変質層CLaは層間絶縁膜IL2aの上面に露出し、層間絶縁膜IL2aの表面の一部となっている空孔12の内壁に沿って層間絶縁膜IL2aの上面から深い領域に形成されており、層間絶縁膜IL2aの上面に形成された空孔12によって変質層CLaの形成される領域が増加していることがわかる。また、層間絶縁膜IL2aの上面に形成された空孔12に接触して一体となっている他の空孔12が形成されている場合、変質層CLaが形成される領域はさらに拡大する。
【0056】
そこで、層間絶縁膜IL2aの上面に露出する空孔12およびそれに繋がる空孔12が形成されることを防ぐために、本実施の形態では、第2ファイン層に形成する層間絶縁膜内の空孔の平均径を1.45nm未満にすることにより、比較例の半導体装置と比べて層間絶縁膜内に形成される空孔の平均径を小さくしている。すなわち、図3に示すように、層間絶縁膜IL2内には図41に示す空孔12よりも平均径が小さい空孔10が形成されている。なお、図3に示す空孔11の平均径は0.6以上1.0nm未満であり、空孔10の平均径は1.0nm以上1.7nm未満であるため、空孔10および空孔11の平均径は1.45nm未満となる。
【0057】
ここで空孔10の平均径を1.0nm以上1.7nm未満とするのは、層間絶縁膜内の空孔10の平均径が1.0nm未満の場合、層間絶縁膜の誘電率が高くなり、ファイン層の層間絶縁膜として不適切となるからである。また、1.7nm以上の平均径を有する複数の空孔同士は層間絶縁膜内で繋がりやすく、変質層の形成領域を拡大させる要因となるためである。
【0058】
平均径が図41に示す空孔12より小さい空孔10(図3参照)は、層間絶縁膜IL2の上面に露出する可能性が低く、また、空孔10が層間絶縁膜IL2の上面に露出したとしても、それによって空孔10の内壁に沿って層間絶縁膜IL2の表面に形成される変質層CLの深さは、図41に示すように平均径が大きい空孔12の内壁に沿って形成される場合よりも浅いため、変質層CLが形成される領域を低減することができる。また、空孔10は図41に示す空孔12よりも平均径が小さいため、図3に示す複数の空孔10同士が互いに接触して一体になることが少なく、層間絶縁膜IL2の上面から連なって深い領域にまで変質層CLを広げる可能性が低い。
【0059】
ここで、図3に示す本実施の形態における空孔10の平均径は、例えば1.68nmであり、空孔11の平均径は例えば0.9nmである。この場合、空孔10および空孔11の平均径は1.29nmである。
【0060】
本実施の形態では、ポーラスLow−k膜である層間絶縁膜内の空孔の平均径を1.45nm未満にすることで、層間絶縁膜の表面から深い領域にかけて変質層が形成されることを防ぐことができる。すなわち、水分を含む変質層CLの形成を抑えることで、各配線を構成するバリア膜および主導体膜の酸化を防ぎ、各配線間の耐圧の劣化を防ぐことができる。これにより、層間絶縁膜に隣接して形成される配線のEM寿命および前記配線の線間TDDB寿命を延ばすことができる。
【0061】
よって、本実施の形態における半導体装置では、層間絶縁膜に隣接して形成される配線のEM寿命を延ばすことにより、層間絶縁膜の信頼性を向上することがでる。また、層間絶縁膜に隣接して形成される配線の線間TDDB寿命を延ばすことにより、層間絶縁膜の信頼性を向上することができる。これにより、半導体装置の信頼性を向上することができる。
【0062】
また、本実施の形態における半導体装置では、層間絶縁膜の比誘電率がプロセスダメージによって上昇することを防ぐことで、層間絶縁膜の電気特性を向上させることを可能としている。また、本実施の形態における半導体装置では、層間絶縁膜内に配線内の金属が拡散することを防ぐことで配線間の耐圧を向上させ、層間絶縁膜の電気特性を向上させることを可能としている。これにより、半導体装置の性能を向上することができる。
【0063】
ところで、図41に示す層間絶縁膜IL2aの表面へのダメージを軽減する方法として、層間絶縁膜を形成した後に、当該層間絶縁膜を保護するためのダメージ保護膜(キャップ膜)を当該層間絶縁膜上に形成する方法が考えられる。ここで、比較例として、図43にポーラスLow−k膜である層間絶縁膜上にダメージ保護膜を形成している半導体装置の断面図を示す。図43に示すように、半導体基板1S上に形成されたMISFETQnに電気的に接続された第1層配線L1上の層間絶縁膜IL2上には、ダメージ保護膜DP2が形成されている。
【0064】
すなわち、半導体基板1S上にはゲート絶縁膜1を介してゲート電極2が形成され、ゲート絶縁膜1およびゲート電極2の両側面には絶縁膜からなるサイドウォール3が形成され、サイドウォール3の下部の半導体基板1Sの主面には不純物拡散領域4が形成され、ゲート電極2およびサイドウォール3の下部を除く半導体基板1Sの主面には、不純物拡散領域4よりも深い不純物拡散領域5が形成されている。不純物拡散領域5およびゲート電極2の上面にはシリサイド層6が形成されており、ゲート電極2、サイドウォール3およびシリサイド層6を含む半導体基板1Sの主面は、順に堆積されたエッチングストッパ膜7および絶縁膜8からなるコンタクト層間絶縁膜CILにより覆われている。コンタクト層間絶縁膜CILには、コンタクト層間絶縁膜CILを貫きシリサイド層6の上面を露出させるコンタクトホールCHが開口しており、コンタクトホールCH内にはコンタクトプラグPLG1が形成されている。
【0065】
コンタクト層間絶縁膜CIL上には層間絶縁膜IL1、バリア絶縁膜BI1、層間絶縁膜IL2、ダメージ保護膜DP2およびバリア絶縁膜BI2が順に形成されている。層間絶縁膜IL1を貫通する配線溝WD1内には、バリア導体膜BM1を介して銅膜Cu1が埋め込まれており、バリア導体膜BM1および銅膜Cu1は第1層配線L1を構成している。また、ダメージ保護膜DP2の上面から層間絶縁膜IL2の途中深さまで達する配線溝WD2内にはバリア導体膜BM2を介して銅膜Cu2が埋め込まれており、バリア導体膜BM2および銅膜Cu2は第2層配線L2を構成している。また、第2層配線L2の下面から第1層配線L1の上面に達するビアホールV1内にはバリア導体膜BM2を介して銅膜Cu2が埋め込まれており、バリア導体膜BM2および銅膜Cu2は第2層配線L2を構成している。
【0066】
ダメージ保護膜DP2は層間絶縁膜IL2を形成した後に層間絶縁膜IL2上にCVD法により形成されるSiOC膜からなり、ポーラスLow−k膜である層間絶縁膜IL2よりも高い機械的強度と高い比誘電率とを有する。ダメージ保護膜DP2および層間絶縁膜IL2には、ダメージ保護膜DP2の上面から層間絶縁膜IL2の途中深さにまで達する配線溝WD2が形成され、配線溝WD2内には第2層配線L2が形成されている。
【0067】
ダメージ保護膜DP2は層間絶縁膜IL2に含まれるような大きな空孔10または12(図3または図41参照)を含まない比誘電率が高い膜であり、層間絶縁膜IL2がエッチング、洗浄、アッシングまたは成膜工程によってダメージを受けることを防ぐ機能を有している。
【0068】
図43に示す比較例の半導体装置では、ダメージ保護膜DP2をポーラスLow−k膜上に形成することにより、ダメージ保護膜の下部の層間絶縁膜がダメージを受けることを防ぎ、線間TDDB寿命もしくは配線EM寿命の低下または配線間の耐圧の低下を防いでいる。しかし、ダメージ保護膜は比誘電率が高い膜であるため、ダメージ保護膜を形成することにより半導体装置全体の比誘電率が上がり、比誘電率が低いポーラスLow−k膜を使用する効果が薄れ、半導体装置の高速化の妨げとなる。
【0069】
これに対し、本実施の形態ではポーラスLow−k膜内の空孔の大きさを抑えることにより、ポーラスLow−k膜がダメージを受けることを防ぐことが可能であるため、ダメージ保護膜を形成していない。言い換えれば、ポーラスLow−k膜からなる層間絶縁膜上および層間絶縁膜の上面の配線溝内に形成された配線上にはバリア絶縁膜が形成され、前記層間絶縁膜および前記配線のそれぞれの上面は前記バリア絶縁膜に接している。
【0070】
本実施の形態では、ダメージ保護膜をポーラスLow−k膜上に形成しないことにより、ポーラスLow−k膜よりも比誘電率が高いダメージ保護膜の存在によって半導体装置の全体の比誘電率が増加することを防いでいる。また、本実施の形態では、ダメージ保護膜を形成する工程を減らすことができるため、半導体装置の製造工程を簡略化することができる。
【0071】
なお、本実施の形態では第2ファイン層にポーラスLow−k膜を用いる場合について説明したが、第1ファイン層または第2ファイン層上に形成されたセミグローバル層などの層間絶縁膜をポーラスLow−k膜により形成しても構わない。
【0072】
また、第2ファイン層上のセミグローバル層を構成する層間絶縁膜内には、第2ファイン層の層間絶縁膜内の空孔よりもさらに平均径が大きい空孔を形成することが考えられる。この場合、セミグローバル層は第2ファイン層内の空孔よりも平均径が大きい空孔を有することになるため、層間絶縁膜の表面にプロセスダメージによる変質層が形成されやすい。本実施の形態では層間絶縁膜の上面にダメージ保護膜を形成しない半導体装置について説明したが、上記の理由から、第2ファイン層上のセミグローバル層などでは、Low−k膜またはポーラスLow−k膜からなる層間絶縁膜上にダメージ保護膜を形成してもよい。
【0073】
次に、ポーラスLow−k膜内の空孔の平均径を1.0nm以上1.45nm未満としている理由について、図5〜図9を用いて説明する。
【0074】
図5は、横軸をポーラスLow−k膜内の空孔の平均径とし、縦軸をポーラスLow−k膜が前述したプロセスによってダメージを受けることによって上昇するポーラスLow−k膜の比誘電率kの上昇率とするグラフであり、空孔の平均径を変化させることによって、形成されるポーラスLow−k膜のダメージ耐性が変化することを示している。つまり、ポーラスLow−k膜のダメージ耐性の程度を、比誘電率の上昇率を指標として評価している。図5から、空孔の平均径が1.45nm以上であると、特に比誘電率の上昇率が高くなり、プロセスダメージに弱いポーラスLow−k膜が形成されてしまうことがわかる。すなわち、ポーラスLow−k膜のダメージ耐性を向上させる観点から、空孔の平均径は1.45nm未満であることが好ましいことが図5からわかる。
【0075】
図6は、横軸をポーラスLow−k膜内の空孔の平均径とし、縦軸をポーラスLow−k膜の比誘電率kの値とするグラフであり、空孔の平均径を変化させることによって、形成されるポーラスLow−k膜の比誘電率が変化することを示している。図6では、空孔の平均径が小さくなるほど比誘電率が高くなることがわかる。比誘電率が高いポーラスLow−k膜は配線遅延を起こす原因となるため、ポーラスLow−k膜として使用することはできない。
【0076】
なお、図6のグラフから、空孔の平均径を小さくしていくと、直線的にポーラスLow−k膜の誘電率が上昇していくことがわかる。空孔の平均径が1.0nm未満になると、層間絶縁膜内には図3に示す空孔10が殆ど形成されておらず、当該層間絶縁膜は図4に示すような、空孔11のみを有するLow−k膜と同等の高い比誘電率を有することになり、当該層間絶縁膜を図1に示す第2ファイン層である層間絶縁膜IL2〜IL5に使用することができない。したがって、ポーラスLow−k膜内の空孔の平均径は、1.0nm以上である必要がある。
【0077】
また、半導体装置の微細化に伴い、図1に示す複数の第2層配線L2同士の最小の間隔(配線ピッチ)が例えば90nm以下になった場合、複数の第2層配線L2同士の間に形成される層間絶縁膜IL2の比誘電率は2.55以下であることが望ましい。したがって、図6に示すように、ポーラスLow−k膜内の空孔の平均径が1.29nmよりも小さくなると、ポーラスLow−k膜の比誘電率が2.55よりも高くなり、層間絶縁膜として使用できなくなるため、ポーラスLow−k膜内の全体の空孔の平均径は、特に1.29nm以上であることが好ましい。
【0078】
したがって、本実施の形態では、空孔の平均径を1.0nm以上1.45nm未満とすることで、プロセスダメージによってポーラスLow−k膜の比誘電率の上昇を抑えることを可能としているが、特に空孔の平均径を1.29nm以上とすることで、比誘電率の低いポーラスLow−k膜を実現し、層間絶縁膜の電気特性を向上させることができる。
【0079】
図7は、横軸をポーラスLow−k膜内の空孔の平均径とし、縦軸を、前記ポーラスLow−k膜を介して形成された配線間の耐圧とするグラフであり、空孔の平均径を変化させることによって、配線間耐圧が変化することを示している。ここで、配線間の耐圧が低下することを防ぐ観点から、空孔の平均径を抑えることで、ポーラスLow−k膜がプロセスダメージを受けることを防ぐ必要がある。図7では、空孔の平均径が1.45nm以上になると、配線間耐圧が急激に低下することがわかる。これは、図41および図42を用いて説明したように、大きい平均径を有する空孔を含むポーラスLow−k膜は、その表面から深い領域にかけて変質層が形成されることで、層間絶縁膜内に水分を含む領域が形成され、配線内から層間絶縁膜内に金属イオンが拡散するためである。空孔の平均径を1.45nm未満とすることで、配線間の耐圧を向上させ、層間絶縁膜の電気特性を向上させることができる。
【0080】
図8および図9は、横軸をそれぞれ線間TDDB寿命の時間および配線EM寿命の時間とし、縦軸を累積分布とするグラフであり、ポーラスLow−k膜内の空孔の平均径を変化させることによって、形成されるポーラスLow−k膜の線間TDDB寿命および配線EM寿命が変化することを示している。
【0081】
図8では、空孔の平均径が1.45nm以上になると、グラフにおけるプロットが縦軸よりも横軸に沿う方向に近い傾きをもつ直線状に分布していることがわかる。すなわち、空孔の平均径が1.45nm以上になると、短い時間で配線間の絶縁破壊が起こる可能性が高くなる。逆に、図8に示すグラフでは、空孔の平均径が1.45nm未満の場合、グラフのプロットは縦軸に沿う方向に近い傾きをもつ直線状に分布するため、線間TDDB寿命が短くなる可能性が低くなる。線間TDDB寿命が短くなることを防ぐ観点から、グラフのプロットは縦軸に沿うような方向に近い傾きをもつことが好ましいため、ポーラスLow−k膜内の空孔の平均径は1.45nm未満であることが好ましい。したがって、空孔の平均径を1.45nm未満とし、線間TDDB寿命を向上させることにより、層間絶縁膜の信頼性を向上することができる。
【0082】
図9では、空孔の平均径が1.45nmより大きい場合より、空孔の平均径が1.45nmより小さい場合の方が配線EM寿命が長くなることがわかる。配線EM寿命が短くなることを防ぐ観点から、空孔の平均径を1.45nmより小さくすることが好ましい。したがって、空孔の平均径を1.45nm未満とし、配線EM寿命を向上させることにより、層間絶縁膜の信頼性を向上することができる。
【0083】
以上に示した図5〜図9のグラフから、本実施の形態ではポーラスLow−k膜(第2ファイン層の層間絶縁膜)内の空孔の平均径を1.0nm以上1.45nm未満としており、好ましくは1.29nm以上1.45nm未満としている。これにより、プロセスダメージに対するダメージ耐性が高く、線間TDDB寿命および配線EM寿命が長く、比誘電率が低い層間絶縁膜を形成することができる。
【0084】
次に、上述した平均径を有する空孔を実現するための本実施の形態の半導体装置の製造方法について、図10〜図40を用いて説明する。図10〜図18および図21〜図40はMISFETQnを含む本実施の形態の半導体装置の製造方法を示す断面図であり、図19および図20は第2層目の配線と同層に形成される絶縁膜の形成工程を示す断面図である。なお、本発明は金属配線に隣接する層間絶縁膜に関する発明であるため、ここではMISFETを形成する詳しい工程の説明は省略する。
【0085】
まず、通常の半導体製造技術を使用することにより、図10に示すように、半導体基板1S上に複数のMISFETQnを形成する。続いて、図11に示すように、複数のMISFETQnを形成した半導体基板1S上にコンタクト層間絶縁膜CILを形成する。このコンタクト層間絶縁膜CILは、複数のMISFETQnを覆うように形成される。具体的に、コンタクト層間絶縁膜CILは、例えば、オゾンとTEOSとを原料に使用した熱CVD法により形成されるオゾンTEOS膜と、このオゾンTEOS膜上に配置され、TEOSを原料に使用したプラズマCVD法により形成されるプラズマTEOS膜との積層膜から形成されている。なお、オゾンTEOS膜の下層に、例えば、窒化シリコン膜よりなるエッチングストッパ膜を形成してもよい。
【0086】
次に、図12に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、コンタクト層間絶縁膜CILにコンタクトホールCHを形成する。このコンタクトホールCHは、コンタクト層間絶縁膜CILを貫通して、半導体基板1Sに形成されているMISFETQnのソース領域あるいはドレイン領域に達するように加工される。
【0087】
続いて、図13に示すように、コンタクト層間絶縁膜CILに形成したコンタクトホールCHに金属膜を埋め込むことによりプラグPLG1を形成する。具体的には、コンタクトホールCHを形成したコンタクト層間絶縁膜CIL上に、例えば、スパッタリング法を使用してバリア導体膜となるチタン/窒化チタン膜を形成する。そして、チタン/窒化チタン膜上にタングステン膜を形成する。これにより、コンタクトホールCHの内壁(側壁および底面)にチタン/窒化チタン膜が形成され、このチタン/窒化チタン膜上でコンタクトホールCHを埋め込むようにタングステン膜が形成される。その後、コンタクト層間絶縁膜CIL上に形成されている不要なチタン/窒化チタン膜およびタングステン膜を、CMP法で除去する。これにより、コンタクトホールCH内にだけ、チタン/窒化チタン膜とタングステン膜を埋め込んだプラグPLG1を形成することができる。
【0088】
次に、図14に示すように、プラグPLG1を形成したコンタクト層間絶縁膜CIL上に層間絶縁膜IL1を形成する。この層間絶縁膜IL1は、例えば、図1に示すパッシベーション膜PASよりも比誘電率が低いLow−k膜であるSiOC膜により形成され、例えば、プラズマCVD法を使用することにより形成される。
【0089】
そして、図15に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、層間絶縁膜IL1に配線溝WD1を形成する。この配線溝WD1は、SiOC膜からなる層間絶縁膜IL1を貫通して底面がコンタクト層間絶縁膜CILに達するように形成される。これにより、配線溝WD1の底部でプラグPLG1の表面が露出することになる。
【0090】
その後、図16に示すように、配線溝WD1を形成した層間絶縁膜IL1上にバリア導体膜(銅拡散防止膜)(図示しない)を形成する。このバリア膜は、図2に示すバリア導体膜BM1に相当する。具体的に、バリア導体膜は、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ルテニウム(Ru)、タングステン(W)、マンガン(Mn)およびこれらの窒化物や窒化珪化物、または、これらの積層膜から構成され、例えば、スパッタリング法を使用することにより形成する。
【0091】
続いて、配線溝WD1の内部および層間絶縁膜IL1上に形成されたバリア導体膜上に、例えば、薄い銅膜からなるシード膜をスパッタリング法により形成する。そして、このシード膜を電極とした電解メッキ法により銅膜Cu1を形成する。この銅膜Cu1は、配線溝WD1を埋め込むように形成される。この銅膜Cu1は、例えば、銅を主体とする膜から形成される。具体的には、銅(Cu)または銅合金(銅(Cu)とアルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、In(インジウム)、ランタノイド系金属、アクチノイド系金属などの合金)から形成される。また、銅膜Cu1の代わりに、銀または金を主体とする金属配線を形成しても構わない。なお、ここでは銅膜Cu1を電解メッキ法を用いて形成しているが、CVD法を用いて銅膜Cu1を形成しても構わない。
【0092】
次に、図17に示すように、層間絶縁膜IL1上に形成された不要なバリア導体膜および銅膜Cu1をCMP法で除去する。これにより、配線溝WD1内にバリア導体膜および銅膜Cu1を埋め込んだ第1層配線L1を含む層(第1ファイン層)を形成することができる。
【0093】
その後、第1層配線L1を形成した層間絶縁膜IL1の表面に対してアンモニアプラズマ処理を実施して、第1層配線L1の表面および層間絶縁膜IL1の表面を清浄化する。続いて、図18に示すように、第1層配線L1を形成した層間絶縁膜IL1上にバリア絶縁膜BI1を形成する。このバリア絶縁膜BI1は、例えば、SiCN膜とSiOC膜の積層膜から構成され、例えば、この積層膜はCVD法により形成することができる。なお、本実施の形態では、第1層配線L1を形成した層間絶縁膜IL1の表面に対してアンモニアプラズマ処理による清浄化処理を実施した後に、バリア絶縁膜BI1を形成しているので、層間絶縁膜IL1とバリア絶縁膜BI1の密着性が向上する。
【0094】
そして、バリア絶縁膜BI1上に層間絶縁膜IL2を形成する。さらに、層間絶縁膜IL2上にCMP保護膜CMP1を形成する。具体的に、層間絶縁膜IL2は、後述するポロジェンを用いて形成した複数の空孔を有するポーラスなSiOC膜から形成されている。したがって、層間絶縁膜IL2は、例えば層間絶縁膜IL1を構成するLow−k膜よりも低い比誘電率を有する絶縁膜である。この空孔を有するSiOC膜は、例えば、プラズマCVD法を使用することにより形成することができる。また、CMP保護膜CMP1は、例えば、TEOS膜、あるいは、酸化シリコン膜から構成される。
【0095】
ここで、図19および図20を用いて、層間絶縁膜IL2の形成方法について詳しく説明する。層間絶縁膜IL2は、プラズマCVD装置内においてSiOC膜を堆積することにより形成する。このSiOC膜は内部に複数の空孔を有するポーラスLow−k膜であり、プラズマCVD法によりポロジェンを含む絶縁膜を形成した後に、当該絶縁膜からポロジェンを脱離させることで形成することができる。
【0096】
なお、ポロジェンは図18に示す層間絶縁膜IL2内に多数の空孔を形成するための空孔形成剤であり、ポロジェンガスを内包する複数の空孔を有する絶縁膜を形成した後、ポロジェンを当該絶縁膜内から脱離(排出)させるキュア工程を行うことで、ポロジェンが含まれない複数の空孔を形成し、層間絶縁膜IL2を形成する。
【0097】
半導体基板(半導体ウエハ)の直径を200mmとした場合の成膜条件としては、プラズマ励起のためのRFパワーを200〜600W、プラズマCVD装置内の気圧を600〜1000Pa、半導体基板1Sの温度を100〜300℃とする。この条件下においてプラズマCVD装置内に、ポロジェンを含む層間絶縁膜IL2(図12参照)を形成するための原料ガスであるO(酸素)、He(ヘリウム)、C14Si(メチルジエトキシシラン)およびポロジェンを供給することで層間絶縁膜IL2を成膜する。ここでは、O(酸素)を0〜50sccm(standard cc/min)、He(ヘリウム)を0〜5000sccm、C14Si(メチルジエトキシシラン)を0.2g/min、ポロジェンを0.05〜0.08g/minずつそれぞれ供給する。なお、酸素およびヘリウムの流量を示す単位であるsccmは、1気圧、0℃の条件下において単位時間当たりに流れる物質の体積を表わすものである。
【0098】
具体的には、本実施の形態ではプラズマ励起のためのRFパワーを380W、プラズマCVD装置内の気圧を800Pa、半導体基板1Sの温度を250℃とする。そして、プラズマCVD装置内にO(酸素)を12sccm(standard cc/min)、He(ヘリウム)を470sccm、C14Si(メチルジエトキシシラン)を0.2g/min、ポロジェンを0.08g/minずつそれぞれ供給する。
【0099】
なお、上述したCVD装置内に供給するガスのうち、ポロジェンを含む層間絶縁膜IL2を構成する主な原料となるのはメチルジエトキシシランおよびポロジェンだが、酸素もポロジェンを含んだ層間絶縁膜IL2を構成する原料ガスである。ヘリウムはプラズマを発生させるために供給するものであるが、ここではプラズマCVD装置に供給するヘリウムを含む全てのガスを原料ガスと定義する。酸素の流量12sccmは約0.017g/minに換算でき、また、ヘリウムの流量470sccmは、約0.042g/minに換算できる。
【0100】
本実施の形態では、上記成膜工程におけるポロジェンの流量を、原料ガスである酸素、ヘリウム、ポロジェンおよびメチルジエトキシシランの合計の流量の20%以上30%未満の流量とする。上記の具体的な条件の場合、原料ガスの全体の流量は0.34g/minであり、そのうちのポロジェンの流量は0.08g/minであるので、ポロジェンの流量は原料ガスの全体の流量の23.5%程度となる。
【0101】
ポロジェンの材料としては、分子量が80以上150以下のC(炭化水素)であって、例えばα−テルピネン(C1016)、リモネン(C1016)またはシクロオクタなどを用いることができる。また、ポロジェンを層間絶縁膜IL2から脱離させるキュア工程としては、UV(Ultraviolet:紫外線)照射、EB(Electron Beam:電子ビーム)照射、ランプなどを用いた熱処理またはプラズマなどによるキュア方法がある。なお、ここで言うキュアとは、前述したUV照射またはEB照射などによって、層間絶縁膜内のポロジェンにエネルギーを印加することで、ポロジェンを層間絶縁膜の外に排出する工程のことを指す。また、このキュア工程には、層間絶縁膜IL2の強度を高める役割もある。
【0102】
すなわち、図19に示すように、上記のプラズマCVD法による成膜工程によってバリア導体膜BM1(図示しない)上にポロジェンPGのガスが満たされた空孔および空孔11をそれぞれ多数含む層間絶縁膜IL2を形成する。その後、例えば半導体基板1S(図示しない)の主面に向かって電子ビーム(EB)を照射し、ポロジェンPGを層間絶縁膜IL2から排出する(キュアする)ことで、図20に示すように、ポロジェンを有していた複数の空孔は、ポロジェンが含まれない空孔10となり、空孔10および11を有するポーラスな層間絶縁膜IL2を形成することができる。
【0103】
また、図20を用いて説明したキュア工程ではポロジェンが層間絶縁膜IL2の内部から層間絶縁膜IL2の最表面まで抜けていくが、ポロジェンが抜ける際の通り道に沿って延在するような空隙が連続的に形成されるわけではなく、図20に示すようにポロジェンが脱離した跡には空隙が点在するように複数形成される。例えば、上記の条件で形成された空孔10の平均径は1.68nm、空孔11の平均径は0.9nmであり、この場合、空孔10および空孔11の平均径は1.29nmである。したがって、空孔10の平均径は前述した1.7nm未満の値となり、また、空孔11の平均径は前述した0.6以上1.0nm未満の範囲内の値となるため、空孔10および空孔11の平均径は、前述した1.0nm以上1.0nm以上1.45nm未満の範囲内の値となる。
【0104】
続いて、図21に示すように、CMP保護膜CMP1上にフォトレジスト膜FR1を形成する。そして、このフォトレジスト膜FR1に対して、露光・現像処理を施すことにより、フォトレジスト膜FR1をパターニングする。パターニングは、ビアホールを形成する領域を開口するように行なわれる。その後、パターニングしたフォトレジスト膜FR1をマスクにして、CMP保護膜CMP1および層間絶縁膜IL2をエッチングする。これにより、CMP保護膜CMP1および層間絶縁膜IL2を貫通して、バリア絶縁膜BI1を露出するビアホールV1を形成することができる。このようにバリア絶縁膜BI1は、エッチングの際にエッチングストッパとして機能する。
【0105】
次に、図22に示すように、パターニングしたフォトレジスト膜FR1をプラズマアッシング処理により除去した後、半導体基板1Sの主面を洗浄する。その後、CMP保護膜CMP1上にフォトレジスト膜FR2を形成し、このフォトレジスト膜FR2に対して露光・現像処理を施すことにより、フォトレジスト膜FR2をパターニングする。フォトレジスト膜FR2のパターニングは、配線溝を形成する領域を開口するように行なわれる。
【0106】
その後、図23に示すように、パターニングしたフォトレジスト膜FR2をマスクとした異方性エッチングにより、CMP保護膜CMP1をエッチングする。そして、パターニングしたフォトレジスト膜FR2をプラズマアッシング処理により除去した後、半導体基板1Sの主面を洗浄する。
【0107】
続いて、図24に示すように、エッチバック法により、ビアホールV1の底部に露出するバリア絶縁膜BI1を除去する。これにより、ビアホールV1の底部に第1層配線L1の表面が露出することになる。このときのエッチバック工程により、パターニングされたCMP保護膜CMP1から露出している層間絶縁膜IL2の一部もエッチングされて配線溝WD2が形成される。
【0108】
次に、図25に示すように、配線溝WD2およびビアホールV1を形成した層間絶縁膜IL2上およびCMP保護膜CMP1上に、バリア導体膜BM1(図2参照)と同様の構造を有するバリア導体膜BM2(図示しない)を形成する。
【0109】
続いて、配線溝WD2の内部およびCMP保護膜CMP1上に形成されたバリア導体膜上に、例えば、薄い銅膜からなるシード膜をスパッタリング法により形成する。そして、このシード膜を電極とした電解メッキ法により銅膜Cu2を形成する。この銅膜Cu2は、配線溝WD2を埋め込むように形成される。この銅膜Cu2は、例えば、銅を主体とする膜から形成される。
【0110】
続いて、図26に示すように、CMP保護膜CMP1上に形成されている不要なバリア導体膜および銅膜Cu2をCMP法で除去する。これにより、層間絶縁膜IL2が露出し、かつ、配線溝WD2内にバリア導体膜および銅膜Cu2を埋め込んだ第2層配線L2と、ビアホールV1内にバリア導体膜および銅膜Cu2を埋め込んだプラグPLG2とを形成することができる。CMP保護膜CMP1は、このときのCMP法による研磨圧力やスクラッチダメージから、製造工程中の半導体装置を保護するために設けられている。
【0111】
なお、本実施の形態では図21〜図26を用いて説明したように、第2層配線L2およびプラグPLG2を形成する工程では層間絶縁膜IL2にビアホールV1を形成してから配線溝WD2を形成するビアファーストの製法を用いているが、層間絶縁膜IL2に配線溝WD2を形成してからビアホールV1を形成するトレンチファーストの製法を用いても構わない。
【0112】
その後、図27に示すように、第2層配線L2を形成した層間絶縁膜IL2の表面に対してアンモニアプラズマ処理を実施して、第2層配線L2の表面および層間絶縁膜IL2の表面を洗浄化する。続いて、第2層配線L2を形成した層間絶縁膜IL2上にバリア絶縁膜BI2を形成する。このバリア絶縁膜BI2は、例えば、SiCN膜とSiOC膜の積層膜から構成され、例えば、この積層膜はCVD法により形成することができる。このような製造工程を繰り返すことにより、第3層配線L3〜第5層配線L5を形成する。これにより、第2ファイン層(第2層配線L2〜第5層配線L5)を形成することができる。このとき、層間絶縁膜IL2〜IL5は、いずれも図3に示すように、平均径が1.0nm以上1.45nm未満の空孔10および11を有するポーラスLow−k膜である。
【0113】
続いて、第2ファイン層上にセミグローバル層を形成する工程について説明する。図28に示すように、第5層配線L5を形成した層間絶縁膜IL5上の表面に対してアンモニアプラズマ処理を実施して、第5層配線L5の表面および層間絶縁膜IL5の表面を洗浄化する。続いて、第5層配線L5を形成した層間絶縁膜IL5上にバリア絶縁膜BI5を形成する。このバリア絶縁膜BI5は、例えば、SiCN膜とSiOC膜の積層膜から構成され、例えば、この積層膜はCVD法により形成することができる。
【0114】
次に、バリア絶縁膜BI5上に層間絶縁膜IL6を形成する。この層間絶縁膜IL6は、例えば、SiOC膜から形成され、例えば、プラズマCVD法を使用することにより形成される。層間絶縁膜IL6は図4に示すLow−k膜であり、層間絶縁膜IL6内に空孔11は形成されているが、空孔10(図3参照)は形成されていない。
【0115】
そして、図29に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、層間絶縁膜IL6に配線溝WD4およびビアホールV3を形成する。このビアホールV3は、SiOC膜からなる層間絶縁膜IL6を貫通して底面が第5層配線L5に達するように形成される。これにより、ビアホールV3の底部で第5層配線L5の表面が露出することになる。
【0116】
その後、図30に示すように、配線溝WD4およびビアホールV3を形成した層間絶縁膜IL6上にバリア導体膜(銅拡散防止膜)(図示しない)を形成する。具体的に、バリア導体膜は、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ルテニウム(Ru)、タングステン(W)、マンガン(Mn)およびこれらの窒化物や窒化珪化物、または、これらの積層膜から構成され、例えば、スパッタリング法を使用することにより形成する。
【0117】
続いて、配線溝WD4とビアホールV3の内部および層間絶縁膜IL6上に形成されたバリア導体膜上に、例えば、薄い銅膜からなるシード膜をスパッタリング法により形成する。そして、このシード膜を電極とした電解メッキ法により銅膜Cu3を形成する。この銅膜Cu3は、配線溝WD4およびビアホールV3を埋め込むように形成される。この銅膜Cu3は、例えば、銅を主体とする膜から形成される。具体的には、銅(Cu)または銅合金(銅(Cu)とアルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、In(インジウム)、ランタノイド系金属、アクチノイド系金属などの合金)から形成される。
【0118】
次に、図31に示すように、層間絶縁膜IL6上に形成された不要なバリア導体膜および銅膜Cu3をCMP法で除去する。これにより、配線溝WD4内にバリア導体膜および銅膜Cu3を埋め込んだ第6層配線L6と、ビアホールV3内にバリア導体膜および銅膜Cu3を埋め込んだプラグPLG6とを形成することができる。以上のようにして、第6層配線L6を形成することができる。このような製造工程を繰り返すことにより、図32に示すような第7層配線L7も形成する。これにより、セミグローバル層(第6層配線L6〜第7層配線L7)を形成することができる。層間絶縁膜IL6は図4に示す層間絶縁膜IL6と同様の構造を有しており、層間絶縁膜IL7内に空孔11は形成されているが、空孔10(図3参照)は形成されていない。
【0119】
続いて、セミグローバル層上にグローバル層を形成する工程について説明する。図33に示すように、第7層配線L7を形成した層間絶縁膜IL7の表面に対してアンモニアプラズマ処理を実施して、第7層配線L7の表面および層間絶縁膜IL7の表面を清浄化する。続いて、第7層配線L7を形成した層間絶縁膜IL7上にバリア絶縁膜BI7aを形成する。このバリア絶縁膜BI7aは、例えば、SiCN膜とSiOC膜の積層膜から構成され、例えば、この積層膜はCVD法により形成することができる。
【0120】
次に、バリア絶縁膜BI7a上に層間絶縁膜IL8aを形成する。この層間絶縁膜IL8aは、例えば、TEOS膜または酸化シリコン膜などから形成され、例えば、プラズマCVD法を使用することにより形成される。さらに、層間絶縁膜IL8a上に、エッチングストップ絶縁膜BI7bを形成し、このエッチングストップ絶縁膜BI7b上に層間絶縁膜IL8bを形成する。このエッチングストップ絶縁膜BI7bは、例えば、SiCN膜から形成され、例えば、この積層膜はCVD法により形成することができる。また、この層間絶縁膜IL8bは、例えば、TEOS膜または酸化シリコン膜などから形成され、例えば、プラズマCVD法を使用することにより形成される。
【0121】
そして、図34に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、層間絶縁膜IL8bおよびエッチングストップ絶縁膜BI7bに配線溝WD5を形成し、かつ、層間絶縁膜IL8aおよびバリア絶縁膜BI7aにビアホールV4を形成する。このビアホールV4は、TEOS膜または酸化シリコン膜などからなる層間絶縁膜IL8aを貫通して底面が第7層配線L7に達するように形成される。これにより、ビアホールV4の底部で第7層配線L7の表面が露出することになる。
【0122】
その後、図35に示すように、配線溝WD5を形成した層間絶縁膜IL8b上およびビアホールV4を形成した層間絶縁膜IL8a上にバリア導体膜(銅拡散防止膜)(図示しない)を形成する。具体的に、バリア導体膜は、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ルテニウム(Ru)、タングステン(W)、マンガン(Mn)およびこれらの窒化物や窒化珪化物、または、これらの積層膜から構成され、例えば、スパッタリング法を使用することにより形成する。
【0123】
続いて、配線溝WD5とビアホールV4の内部および層間絶縁膜IL8b上に形成されたバリア導体膜上に、例えば、薄い銅膜からなるシード膜をスパッタリング法により形成する。そして、このシード膜を電極とした電解メッキ法により銅膜Cu4を形成する。この銅膜Cu4は、配線溝WD5およびビアホールV4を埋め込むように形成される。この銅膜Cu4は、例えば、銅を主体とする膜から形成される。具体的には、銅(Cu)または銅合金(銅(Cu)とアルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、In(インジウム)、ランタノイド系金属、アクチノイド系金属などの合金)から形成される。
【0124】
次に、図36に示すように、層間絶縁膜IL8b上に形成された不要なバリア導体膜および銅膜Cu4をCMP法で除去する。これにより、配線溝WD5内にバリア導体膜および銅膜Cu4を埋め込んだ第8層配線L8と、ビアホールV4内にバリア導体膜および銅膜Cu4を埋め込んだプラグPLG8とを形成することができる。以上のようにして、第8層配線L8を形成することができる。これにより、グローバル層(第8層配線L8)を形成することができる。
【0125】
続いて、図37に示すように、第8層配線L8を形成した層間絶縁膜IL8b上にバリア絶縁膜BI8を形成し、このバリア絶縁膜BI8上に層間絶縁膜IL9を形成する。このバリア絶縁膜BI8は、例えば、SiCN膜とSiOC膜の積層膜から構成され、例えば、この積層膜はCVD法により形成することができる。また、層間絶縁膜IL9は、例えば、TEOS膜または酸化シリコン膜などから形成され、例えば、プラズマCVD法を使用することにより形成される。そして、この層間絶縁膜IL9およびバリア絶縁膜BI8を貫通するビアホールを形成する。
【0126】
次に、ビアホールの側壁と底面、および層間絶縁膜IL9上にチタン/窒化チタン膜、アルミニウム膜、チタン/窒化チタン膜を順次積層した積層膜を形成し、この積層膜をパターニングすることにより、プラグPLG9と最上層配線である第9層配線L9とを形成する。
【0127】
その後、図38に示すように、第9層配線L9を形成した層間絶縁膜IL9上に表面保護膜となるパッシベーション膜PASを形成する。このパッシベーション膜PASは、例えば、酸化シリコン膜とこの酸化シリコン膜上に配置された窒化シリコン膜から形成され、例えば、CVD法により形成することができる。そして、図39に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、パッシベーション膜PASに開口部を形成して、第9層配線L9の一部を露出してパッドPDを形成する。
【0128】
次に、図40に示すように、パッドPDが露出したパッシベーション膜PAS上にポリイミド膜PIを形成する。そして、このポリイミド膜PIをパターニングすることにより、パッドPDを露出させる。以上のようにして、半導体基板1S上に、MISFETおよび多層配線を形成することで、図1に示す本実施の形態の半導体装置が完成する。
【0129】
なお、本実施の形態において説明したポーラスLow−k膜は、ポロジェン脱離により図3に示す空孔10がポーラスLow−k膜内に形成されるものであれば特に制限されるものではなく、SiOCの他に、材料として例えば空孔10を有するMSQ膜またはHSQ膜を用いてもよい。ポーラスLow−k膜の製造方法としては、塗布法によりポロジェンガスを内包する複数の空孔を有する絶縁膜を形成した後、ポロジェンを当該絶縁膜内から脱離(排出)させるキュア工程を行ってポーラスLow−k膜を形成してもよい。
【0130】
さらに、CVD法によってポーラスLow−k膜を形成する際、原料ガスであるO(酸素)、He(ヘリウム)、C14Si(メチルジエトキシシラン)およびポロジェンを供給することで図1に示す層間絶縁膜IL2を成膜するが、これらの原料ガス全体に占めるポロジェンの流量は24〜53%としても本発明のポーラスLow−k膜が形成可能であることは実験により判明している。直径が300mmのウエハを用いた場合でもこの条件が有効である。
【0131】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0132】
例えば、前記実施の形態では図1に示す第2ファイン層内の層間絶縁膜IL2〜IL5を、内部に1.0nm以上1.45nm未満の平均径を有する複数の空孔を有するポーラスLow−k膜により構成する半導体装置について説明したが、第1ファイン層内の層間絶縁膜IL1またはセミグローバル層内の層間絶縁膜IL6およびIL7に、層間絶縁膜IL2〜IL5と同様のポーラスLow−k膜を用いても構わない。これは、半導体装置の微細化に伴い、第1ファイン層またはセミグローバル層においても層間絶縁膜の信頼性をさらに高める必要が生じることが考えられるためである。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、ポーラスLow−k膜を有する半導体装置に幅広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0134】
1 ゲート絶縁膜
2 ゲート電極
3 サイドウォール
4、5 不純物拡散領域
6 シリサイド層
7 エッチングストッパ膜
8 絶縁膜
1S 半導体基板
10 空孔
11 空孔
12 空孔
B2a バリア導体膜
BI1〜BI8 バリア絶縁膜
BI2a、BI7a バリア絶縁膜
BI7b エッチングストップ絶縁膜
BM1〜BM3 バリア導体膜
CH コンタクトホール
CIL コンタクト層間絶縁膜
CL 変質層
CLa 変質層
CMP1 CMP保護膜
Cu1〜Cu4 銅膜
Cu2a 銅膜
CuO 酸化銅膜
DP2 ダメージ保護膜
FR1 フォトレジスト膜
FR2 フォトレジスト膜
IL1〜IL7 層間絶縁膜
IL2a 層間絶縁膜
IL8a 層間絶縁膜
IL8b 層間絶縁膜
IL9 層間絶縁膜
L1 第1層配線
L2 第2層配線
L2a 第2層配線
L3 第3層配線
L4 第4層配線
L5 第5層配線
L6 第6層配線
L7 第7層配線
L8 第8層配線
L9 第9層配線
PAS パッシベーション膜
PD パッド
PG ポロジェン
PI ポリイミド膜
PLG1〜PLG9 プラグ
Qn MISFET
V1〜V4 ビアホール
WD1〜WD5 配線溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に形成され、内部に複数の空孔を有する層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜に接して形成された配線と、
を有し、
前記複数の空孔は、絶縁膜が形成されることにより前記絶縁膜内に形成される複数の第1空孔と、前記絶縁膜がキュア工程を経ることで前記層間絶縁膜が形成されることにより、前記絶縁膜内に設けられたポロジェンが脱離した箇所に形成される複数の第2空孔とで構成され、
前記複数の空孔の平均径は1.0nm以上1.45nm未満であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記複数の第2空孔の平均径は、前記複数の第1空孔の平均径よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記複数の空孔の平均径は1.29nm以上であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記複数の第2空孔の平均径は1.7nm未満であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
前記配線は前記層間絶縁膜の上面に形成された配線溝内に埋め込まれたダマシン配線であり、
前記配線と前記層間絶縁膜との界面にはバリア導体膜が形成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
前記配線はCuを主体とする金属膜からなることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項7】
前記層間絶縁膜上および前記配線上にはバリア絶縁膜が形成され、前記層間絶縁膜および前記配線のそれぞれの上面は前記バリア絶縁膜に接していることを特徴とする請求項5記載の半導体装置。
【請求項8】
前記複数の第2の空孔は、1.0nm以上の平均径を有することを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項9】
前記半導体基板と、
前記半導体基板に設けられた半導体素子と、
前記半導体素子を覆う前記半導体基板上に設けられたコンタクト層間絶縁膜と、
前記コンタクト層間絶縁膜を貫通して前記半導体素子と電気的に接続された第1プラグと、
前記第1プラグが設けられた前記コンタクト層間絶縁膜上に設けられた第1層間絶縁膜と、
前記第1層間絶縁膜内に設けられ、前記第1プラグと電気的に接続された第1配線と、
前記第1配線が設けられた前記第1層間絶縁膜上に設けられ、内部に複数の空孔を有する第2層間絶縁膜と、
前記第2層間絶縁膜内に設けられ、前記第1配線と電気的に接続された第2プラグと、
前記第2層間絶縁膜内に設けられ、前記第2プラグと電気的に接続された第2配線と、
前記第2配線が設けられた前記第2層間絶縁膜上に設けられた第3層間絶縁膜と、
前記第3層間絶縁膜内に設けられ、前記第2配線と電気的に接続された第3プラグと、
前記第3層間絶縁膜内に設けられ、前記第3プラグと電気的に接続された第3配線と、
を有し、
前記複数の空孔は、絶縁膜が形成されることにより前記絶縁膜内に形成される複数の第1空孔と、前記絶縁膜がキュア工程を経ることで前記第2層間絶縁膜が形成されることにより、前記絶縁膜内に設けられたポロジェンが脱離した箇所に形成される複数の第2空孔とで構成され、
前記複数の空孔の平均径は1.0nm以上1.45nm未満であることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
前記複数の第2空孔の平均径は前記複数の第1空孔の平均径よりも大きく、
前記第3層間絶縁膜内には、前記複数の第2空孔よりも平均径が小さい複数の第3空孔が形成されていることを特徴とする請求項9記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第3層間絶縁膜内には前記複数の第1空孔が形成され、前記複数の第2空孔は形成されていないことを特徴とする請求項9記載の半導体装置。
【請求項12】
前記複数の空孔の平均径は1.29nm以上であることを特徴とする請求項9記載の半導体装置。
【請求項13】
前記複数の第2空孔の平均径は1.7nm未満であることを特徴とする請求項10記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第2配線は前記第2層間絶縁膜の上面に形成された配線溝内に埋め込まれたダマシン配線であり、
前記第2配線のそれぞれと前記第2層間絶縁膜との界面にはバリア導体膜が形成されていることを特徴とする請求項9記載の半導体装置。
【請求項15】
前記第2配線はCuを主体とする金属膜からなることを特徴とする請求項9記載の半導体装置。
【請求項16】
前記第2層間絶縁膜上および前記第2配線上にバリア絶縁膜が形成され、前記第2層間絶縁膜および前記第2配線のそれぞれの上面は前記バリア絶縁膜に接していることを特徴とする請求項14記載の半導体装置。
【請求項17】
前記複数の第2の空孔は、1.0nm以上の平均径を有することを特徴とする請求項9記載の半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図40】
image rotate

【図41】
image rotate

【図42】
image rotate

【図43】
image rotate


【公開番号】特開2011−254041(P2011−254041A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128678(P2010−128678)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】