説明

半導体装置

【課題】逆方向耐圧を向上させることができる半導体装置を提供する。
【解決手段】一導電型の半導体層100と、絶縁体層130と、絶縁体層中に設けられた半導体層210と、半導体層210に設けられた能動素子20と、半導体層100の前記一主面201に設けられた他の導電型の半導体領域112と、半導体領域112内に設けられた他の導電型であって半導体領域112よりも高不純物濃度の半導体領域114と、絶縁体層130に設けられたスルーホール144内に半導体領域144に接続して設けられた導電体154と、絶縁体層130上または中に設けられた導電体214であって、導電体154の周囲に設けられ、外側端部が半導体領域114よりも外側にある導電体214と、導電体154と導電体214とを接続して設けられた導電体192と、半導体層100に接続して設けられた導電体152,120と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に、同一のSOI(Silicon On Insulator)基板上にダイオードとトランジスタを混在させたX線センサに関する。
【背景技術】
【0002】
SOI構造のセンサとしては、SOI(Silicon On Insulator)基板上に、フォトダイオードと、このフォトダイオードにシリコン基板で光電変換され蓄積された信号電荷を増幅する増幅用トランジスタを有するCMOSイメージセンサが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−124657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
X線センサにおいては、X線入射時の検出感度を高くするため、基板に低濃度高抵抗基板を使用したり、基板裏面に数百Vのバイアスを印加する等の方法により、基板全体を空乏化することが行われる。図17は、従来のX線センサ9を説明するための概略縦断面図である。一般に、従来の装置では、N型基板100を空乏化する場合に、低濃度N型基板100内に形成したダイオードのアノード電極である高濃度P型拡散層114を接地180に接続し、ダイオードのカソードである高濃度N型拡散層102とN型基板100の裏面の電極120とを電源170の陽極172に接続し、ダイオードに逆方向電圧を印加する。この時、アノード電極である高濃度P型拡散層114側に広がる空乏層内の電界集中を緩和するために、高濃度P型拡散層114を覆うように低濃度のP型ウェル拡散層112を形成することによってダイオードの逆方向耐圧を向上させている。
【0005】
しかしながら、P低濃度のP型ウェル拡散層112による電界緩和の効果にも限界があり、PNジャンクションに電圧を印加した際に、低濃度のP型ウェル拡散層112側に広がった空乏層が高濃度P型拡散層114に到達した場合には、高濃度P型拡散層114端で電界が強くなることによってブレークダウンしてしまう。また、低濃度のP型ウェル拡散層112内でも電位差が大きく、耐圧上問題があった。
【0006】
本発明の主な目的は、逆方向耐圧を向上させることができる半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
一導電型の第1の半導体層と、
前記第1の半導体層の一主面上に設けられた絶縁体層と、
前記絶縁体層中に設けられた第2の半導体層と、
前記第2の半導体層に設けられた能動素子と、
前記第1の半導体層の前記一主面に設けられた前記一導電型とは反対導電型の他の導電型の第1の半導体領域と、
前記第1の半導体領域内に設けられた前記他の導電型であって前記第1の半導体領域よりも高不純物濃度の第2の半導体領域と、
前記絶縁体層に設けられたスルーホール内に前記第2の半導体領域に接続して設けられた第1の導電体と、
前記絶縁体層上または前記絶縁体層中に設けられた第2の導電体であって、前記第1の導電体の周囲に設けられ、前記一主面に対して垂直な方向から見たときに、外側端部が前記第2の半導体領域よりも外側にある前記第2の導電体と、
前記第1の導電体と前記第2の導電体とを接続して設けられた第3の導電体と、
前記第1の半導体層に電気的に接続して設けられた第4の導電体と、
を備える半導体装置が提供される。
【0008】
好ましくは、前記第2の導電体の前記外側端部が、前記一主面に対して垂直な方向から見たときに、前記第1の半導体領域よりも外側にある。
【0009】
また、好ましくは、前記第2の導電体が前記第2の半導体層により構成されている。
【0010】
また、好ましくは、前記能動素子が絶縁ゲート型電界効果トランジスタであって、前記第2の導電体が絶縁ゲート型電界効果トランジスタのゲート電極と同じ層の導電体で構成されている。
【0011】
また、好ましくは、前記第2の導電体が前記絶縁体層上に形成されている。
【0012】
また、好ましくは、前記絶縁体層上に、前記第1の導電体と接続して設けられた第5の導電体をさらに備え、前記第5の導電体と前記第2の導電体は同じ層であって連続して設けられている。
【0013】
また、好ましくは、前記第1の導電体と前記第2の導電体とが同電位になるように接続されている。
【0014】
また、好ましくは、前記第4の導電体は前記第1の半導体層の前記一主面および前記一主面とは反対側の主面で前記第1の半導体層に電気的に接続される。
【0015】
また、好ましくは、前記第1の半導体層と前記第1の半導体領域が逆方向接続される。
【0016】
また、本発明によれば、
一導電型の第1の半導体層と、
前記第1の半導体層の一主面上に設けられた絶縁体層と、
前記第1の半導体層の前記一主面に設けられた前記一導電型とは反対導電型の他の導電型の第1の半導体領域と、
前記第1の半導体領域内に設けられた前記他の導電型であって前記第1の半導体領域よりも高不純物濃度の第2の半導体領域と、
前記絶縁体層に設けられたスルーホール内に前記第2の半導体領域に接続して設けられた第1の導電体と、
前記絶縁体層上または前記絶縁体層中に設けられた第2の導電体であって、前記第1の導電体の周囲に設けられ、前記一主面に対して垂直な方向から見たときに、外側端部が前記第2の半導体領域よりも外側にある前記第2の導電体と、
前記第1の導電体と前記第2の導電体とを接続して設けられた第3の導電体と、
前記第1の半導体層に電気的に接続して設けられた第4の導電体と、
を備える半導体装置が提供される。
【0017】
好ましくは、前記第2の導電体の前記外側端部が、前記一主面に対して垂直な方向から見たときに、前記第1の半導体領域よりも外側にある。
【0018】
また、好ましくは、上記各半導体装置はX線センサである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、逆方向耐圧を向上させることができる半導体装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態のX線センサを説明するための概略縦断面図である。
【図2】図2は、図1の平面図である。
【図3】図3は、本発明の第2の実施の形態のX線センサを説明するための概略平面図である。
【図4】図4は、本発明の第3の実施の形態のX線センサを説明するための概略縦断面図である。
【図5】図5は、本発明の第4の実施の形態のX線センサを説明するための概略縦断面図である。
【図6】図6は、本発明の第4の実施の形態のX線センサの製造方法を説明するための概略縦断面図である。
【図7】図7は、本発明の第4の実施の形態のX線センサの製造方法を説明するための概略縦断面図である。
【図8】図8は、本発明の第4の実施の形態のX線センサの製造方法を説明するための概略縦断面図である。
【図9】図9は、本発明の第4の実施の形態のX線センサの製造方法を説明するための概略縦断面図である。
【図10】図10は、本発明の第4の実施の形態のX線センサの製造方法を説明するための概略縦断面図である。
【図11】図11は、本発明の第4の実施の形態のX線センサの製造方法を説明するための概略縦断面図である。
【図12】図12は、本発明の第5の実施の形態のX線センサを説明するための概略縦断面図である。
【図13】図13は、本発明の第6の実施の形態のX線センサを説明するための概略縦断面図である。
【図14】図14は、本発明の第4、第5、第6の実施の形態および従来のX線センサのダイオード部の逆方向電圧印加時の耐圧を示す図である。
【図15】図15は、従来のX線センサのダイオード部の電位分布を示す図である。
【図16】図16は、本発明の第1の実施の形態のX線センサのダイオード部の電位分布を示す図である。
【図17】図17は、従来のX線センサを説明するための概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態のX線センサを説明するための概略縦断面図である。図2は、図1の平面図であるが、理解の容易のために、導電体162、164、絶縁体層130は省略している。また、図1は図2のX1−X1線に沿った概略縦断面図である。
【0023】
図1、2を参照すれば、本発明の第1の実施の形態のX線センサ1は、N型基板100と、N型基板100の一主面101に設けられたP型ウエル拡散層112と、P型ウエル拡散層112内に設けられた高濃度P型拡散層114と、N型基板100の一主面101に設けられた高濃度N型拡散層102と、N型基板100の一主面101とは反対側の主面である裏面103に設けられた電極120と、N型基板100の一主面101上に設けられた絶縁体層130と、絶縁体層130に設けられたスルーホール142、144と、スルーホール142に埋め込こまれ、高濃度N型拡散層102に接続して設けられた埋込導電体152と、スルーホール144に埋め込まれ、高濃度P型拡散層114に接続して設けられた埋込導電体154と、埋込導電体152に接続して絶縁体層130上に設けられた導電体162と、埋込導電体154に接続して絶縁体層130上に設けられた導電体164と、埋込導電体154の周囲であって、絶縁体層130上に設けられた導電体166と、導電体164と導電体166とを接続して設けられた導電体192と、を備えている。
【0024】
図2を参照して、N型基板100の一主面101に対して垂直な方向からみた場合の、各構成部分の配置について説明する。埋込導電体154は、正方形であり、高濃度P型拡散層114の内側に設けられている。高濃度P型拡散層114は、正方形であり、P型ウエル拡散層112の内側に設けられている。P型ウエル拡散層112は、正方形である。導電体166は導電体154の周囲に設けられ、導電体166は、正方形であり、その外側端部166aは、高濃度P型拡散層114の一主面101における端部114aよりも外側に位置し、P型ウエル拡散層112の一主面101における端部112aよりも外側に位置している。さらに、導電体166の内側端部166bも、P型ウエル拡散層112の一主面101における端部112aよりも外側に位置している。高濃度N型拡散層102は、正方形であり、P型ウエル拡散層112の外側の周囲に、P型ウエル拡散層112とは離間して、P型ウエル拡散層112を囲うように設けられている。埋込導電体152は、正方形であり、高濃度N型拡散層102内に位置している。
【0025】
さらに具体的な構造を一例として説明すると、高濃度P型拡散層114は、一辺が10μmの正方形であり、P型ウエル拡散層112は、一辺が20μmの正方形であり、高濃度P型拡散層114の一主面101における端部114aとP型ウエル拡散層112の一主面101における端部112aとの距離は5μmである。P型ウエル拡散層112の一主面101における端部112aと高濃度N型拡散層102の一主面101における内側端部102bとの距離は50μmである。導電体166の内側端部166bと、P型ウエル拡散層112の一主面101における端部112aとの距離は1μmであり、導電体166の外側端部166aと内側端部166bとの距離は3μmである。
【0026】
絶縁体層130は、例えばTEOS(テトラエトキシシラン)膜からなっており、その厚さは、例えば、10000Åである。N型基板100の不純物濃度は1.0×1013cm−3程度であり、高濃度N型拡散層102の不純物濃度は1.0×1021cm−3程度であり、P型ウエル拡散層112の不純物濃度は1.0×1017cm−3程度であり、高濃度P型拡散層114の不純物濃度は1.0×1021cm−3程度である。
【0027】
埋込導電体152、154、導電体162、164、166はWからなり、電極120はAlからなっている。
【0028】
高濃度P型拡散層114は導電体144、164、192、193を介して電源170の陰極174および接地180に接続される。導電体166は導電体192、193を介して電源170の陰極174および接地180に接続される。高濃度P型拡散層114と導電体166は同電位となる。高濃度N型拡散層102は、埋込導電体152、導電体162、194を介して電源170の陽極172に接続される。N型基板1の裏面103に設けられた電極120は、導電体194を介して電源170の陽極172に接続される。
【0029】
本実施の形態のX線センサにおいては、X線入射時の検出感度を高くするため、N型基板100に低濃度高抵抗基板を使用し、N型基板100に数百Vのバイアスを印加する等の方法により、N型基板100全体を空乏化する。N型基板100を空乏化する場合に、低濃度N型基板100内に形成したダイオードのアノード電極である高濃度P型拡散層114を接地180に接続し、ダイオードのカソードである高濃度N型拡散層102とN型基板100の裏面の電極120とを電源170の陽極172に接続し、ダイオードに逆方向電圧を印加する。この時、アノード電極である高濃度P型拡散層114側に広がる空乏層内の電界集中を緩和するために、高濃度P型拡散層114を覆うように低濃度のP型ウエル拡散層112を形成して、ダイオードの逆方向耐圧を向上させている。
【0030】
本実施の形態のX線センサにおいては、さらに、高濃度P型拡散層114および低濃度のP型ウエル拡散層112を囲うように導電体166を形成し、導電体166を接地180に接続している。この時、導電体166はフィールドプレートとして働き、P型ウエル拡散層112側の電位の上昇を抑制することによってP型ウエル拡散層112内での電位差を小さくする。
【0031】
図16は、本発明の第1の実施の形態のX線センサのダイオード部の電位分布を示す図である。電源170により、X線センサのダイオード部に300Vの逆方向電圧をかけた場合に、P型ウエル拡散層112とN型基板100とで形成されるPNジャンクション113付近の電位は約25Vである。これに対して、図17に示した、P型ウエル拡散層112を設けるが、導電体166を設けないX線センサ9では、図15に示すように、P型ウエル拡散層112とN型基板100とで形成されるPNジャンクション113付近の電位は約80Vである。
【0032】
このように、導電体166を設け、導電体166を高濃度P型拡散層114と導電体192によって接続することで、P型ウエル拡散層112側の電位の上昇を抑制することによってP型ウエル拡散層112内での電位差を小さくすることができる。導電体166の外側端部166aは、少なくとも、高濃度P型拡散層114の端部114aよりも外側にあることが好ましい。これにより、高濃度P型拡散層114の端部114aでの電界を緩和することができ、ダイオードの逆方向耐圧を向上させることができる。より好ましくは、導電体166の外側端部166aは、P型ウエル拡散層112の端部112aよりも外側にあることが好ましい。これにより、P型ウエル拡散層112とN型基板100とで形成されるPNジャンクション113付近の電位の上昇を抑制することができ、P型ウエル拡散層112内での電位差を小さくすることができ、ダイオードの逆方向耐圧を向上させることができる。
【0033】
次に、本実施の形態のX線センサ1の製造方法について説明する。
まず、N型基板100を準備し、N型基板100の一主面101にイオン注入等によりP型ウエル拡散層112を形成し、その後、イオン注入等によりP型ウエル拡散層112内にP型ウエル拡散層112よりも浅く高不純物濃度の高濃度P型拡散層114を形成する。次に、N型基板100の一主面101にイオン注入等によりN型基板100よりも高不純物濃度の高濃度N型拡散層102を形成する。
【0034】
次に、N型基板100の一主面101上にTEOSにより、絶縁体層130を形成する。その後、絶縁体層130にスルーホール142、144を形成する。その後、スルーホール142、144をそれぞれWの埋込導電体152、154を埋め込む。その後、絶縁体層130上にWの導電体162、164、166を選択的に形成する。その後、N型基板100の裏面103にAlにより電極120を形成する。
【0035】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、高濃度P型拡散層114、P型ウエル拡散層112、導電体166、高濃度N型拡散層102、埋込導電体152等は、正方形であったが、更に頂点の数の多い多角形や、図3のように円状の構造にすることによって、P型ウエル拡散層112内の電界を更に緩和することが可能となるため、耐圧向上が見込める。本実施の形態は、これらの構成要素の平面的な形状以外については、第1の実施の形態と同じである。
【0036】
(第3の実施の形態)
第1、2の実施の形態では、導電体166と、高濃度P型拡散層114に接続されている導電体164とを互いに分離された別々のものとして構成し、導電体166と導電体164とを導電体192で接続しているが、本実施の形態では、同じ配線層の導電体166と導電体164とを一体化して連続した構造の導電体168とした点が第1、2の実施の形態と異なるが、他の点は同じである。
【0037】
導電体168の外側端部168aは、P型ウエル拡散層112の端部112aよりも外側にあることが好ましい。これにより、P型ウエル拡散層112とN型基板100とで形成されるPNジャンクション付近の電位の上昇を抑制することができ、P型ウエル拡散層112内での電位差を小さくすることができ、ダイオードの逆方向耐圧を向上させることができる。
【0038】
なお、導電体168の外側端部168aは、P型ウエル拡散層112の端部112aよりも内側に位置していても、電界緩和の効果は低くなるが、耐圧向上が見込める。この場合には、導電体168の外側端部168aは、少なくとも、高濃度P型拡散層114の端部114aよりも外側にあることが好ましい。これにより、高濃度P型拡散層114の端部114aでの電界を緩和することができ、ダイオードの逆方向耐圧を向上させることができる。
【0039】
(第4の実施の形態)
上記第1〜第3の実施の形態では、低不純物濃度高抵抗のN型基板100を用いてダイオードを形成していたが、同じ基板内100に回路動作用のMOS等を形成するには不都合である。これを解決するために、第4の実施の形態としては、図5のように、例えば、下側の700μm程度の厚さで比抵抗10kΩ・cmの低不純物濃度高抵抗のN型基板100と、N型基板100の一主面101上に設けられた、例えば2000Å程度の厚さの埋込酸化膜132と、埋込酸化膜132上に設けられた、例えば、880Å程度の厚さで比抵抗10Ω・cmのP型の半導体層210と、を有するSOI(Silicon On Insulator)基板を用いる。
【0040】
また、上記第1、2の実施の形態では、絶縁体層130上に設けられた導電体166と高濃度P型拡散層114に接続されている導電体164とを導電体192で接続して、電界を緩和させたが、本実施の形態では、半導体層210を上記第1、2の実施の形態の導電体166と同形状にし、半導体層210を例えばN型の不純物の注入などで不純物濃度を1.0×1021cm−3に設定した半導体領域214とした上で、絶縁体層130に設けられたスルーホール145に埋め込まれた埋込導電体155を介して半導体領域214に接続されている絶縁体層130上に設けられた導電体165と、高濃度P型拡散層114に接続されている導電体164とを、導電体192で接続して、電界を緩和させる。
【0041】
このように、本実施の形態においては、X線を検出するダイオード10に関しては、第1、2の実施の形態の絶縁体層130上に設けられた導電体166を、絶縁体層130中の半導体領域214とした点が第1、2の実施の形態と異なるが、他の点は同様である。図1、3に示した平面図的な形状も同様である。
【0042】
半導体領域214の外側端部214aと、P型ウエル拡散層112の端部112aや高濃度P型拡散層114の端部114aとの関係も、導電体166の外側端部166aと、P型ウエル拡散層112の端部112aや高濃度P型拡散層114の端部114aとの関係と同じである。すなわち、半導体領域214の外側端部214aは、少なくとも、高濃度P型拡散層114の端部114aよりも外側にあることが好ましい。これにより、高濃度P型拡散層114の端部114aでの電界を緩和することができ、ダイオードの逆方向耐圧を向上させることができる。より好ましくは、半導体領域214の外側端部214aは、P型ウエル拡散層112の端部112aよりも外側にあることが好ましい。これにより、P型ウエル拡散層112とN型基板100とで形成されるPNジャンクション113付近の電位の上昇を抑制することができ、P型ウエル拡散層112内での電位差を小さくすることができ、ダイオードの逆方向耐圧を向上させることができる。
【0043】
ダイオード10と離間した領域の半導体層210には、MOSトランジスタ20が設けられている。MOSトランジスタ20は、半導体層210のダイオード10と離間した半導体領域212と、半導体領域212上に設けられたゲート絶縁膜230と、ゲート絶縁膜230上に設けられたゲート電極240と、ゲート電極240の両側の半導体領域212に設けられたソース222とドレイン224とを備えている。ソース222は絶縁体層130に設けられたスルーホール147に埋め込まれた埋込導電体157によって絶縁体層130上に設けられた導電体167に接続され、ドレイン224は絶縁体層130に設けられたスルーホール149に埋め込まれた埋込導電体159によって絶縁体層130上に設けられた導電体169に接続されている。
【0044】
図5のように、埋込酸化膜132上側の半導体層210を回路動作用のMOSトランジスタ20等の能動素子形成用の高濃度低抵抗半導体層、埋込酸化膜132の下側のN型基板をダイオード10形成用の低濃度高抵抗基板とすることによって、1枚のウエハで周辺回路を含めたX線センサを構成することが可能となる。
【0045】
N型基板100を空乏化するために、低濃度N型基板100内に形成したダイオードのアノード電極である高濃度P型拡散層114を接地180に接続し、ダイオードのカソードである高濃度N型拡散層102とN型基板100の裏面の電極120とを電源170の陽極172に接続し、ダイオードに逆方向電圧を印加する。この時、アノード電極である高濃度P型拡散層114側に広がる空乏層内の電界集中を緩和するために、高濃度P型拡散層114を覆うように低濃度のP型ウエル拡散層112を形成して、ダイオードの逆方向耐圧を向上させている。さらに、高濃度P型拡散層114および低濃度のP型ウエル拡散層112を囲うように半導体領域214を形成し、半導体領域214を接地180に接続している。この時、半導体領域214はフィールドプレートとして働き、P型ウエル拡散層112側の電位の上昇を抑制することによってP型ウエル拡散層112内での電位差を小さくする。
【0046】
このように、第4の実施の形態によれば、1枚のウエハ上で周辺回路を含めたX線センサを構成することでコストの削減、チップサイズの縮小化が可能となる。また、半導体領域214を形成し、ダイオードのアノード電極である高濃度P型拡散層114と同電位に設定することによって、ダイオードに逆方向電圧を印加した際に半導体領域214がフィールドプレートとして働き、P型ウエル拡散層112内の電位差を小さくすることによってP型ウエル拡散層112内での電界を緩和することになり、逆方向耐圧を上昇させることが可能となる。
【0047】
次に、本実施の形態のX線センサ2の製造方法を説明する。
まず、図6に示すように、埋込酸化膜132を挟んで、上側に半導体層210、下側にN型基板100が積層されたSOI基板を用意する。本実施の形態では、一例として、N型基板100は、厚さ700μm程度の比抵抗10kΩ・cmであり、埋込酸化膜132は、厚さ2000Å程度のSiO酸化膜を用いており、半導体層210は、P型で、厚さ880Å程度、比抵抗10Ω・cmである。
【0048】
次に、図7に示すように、半導体層210の上表面に、窒化膜(Si)(図示せず)をCVD等により選択的に形成し、LOCOS(Local Oxidization of Silicon)法により窒化膜をマスクとして、フィールド酸化膜133を形成し、半導体層210を半導体領域212、214に分離する。
【0049】
次に、図8に示すように、選択的に形成したレジスト等(図示せず)をマスクにして、N型基板100の一主面101にイオン注入等によりP型ウエル拡散層112を形成し、その後、イオン注入等によりP型ウエル拡散層112内にP型ウエル拡散層112よりも浅く高不純物濃度の高濃度P型拡散層114を形成する。次に、N型基板100の一主面101にイオン注入等によりN型基板100よりも高不純物濃度の高濃度N型拡散層102を形成する。
【0050】
その後、半導体領域212上にゲート絶縁膜230を形成し、ゲート絶縁膜230上にゲート電極240を形成し、ゲート電極240をマスクとして、N型不純物をイオン注入して、ソース222およびドレイン224をゲート電極240の両側の半導体領域212に形成する。この際、半導体領域214にもN型不純物をイオン注入して1.0×1021cm−3程度の不純物濃度とする。
【0051】
次に、図9に示すように、TEOSを用いて絶縁膜135を全面に形成する。埋込酸化膜132、フィールド酸化膜133および絶縁膜135により絶縁体層130が形成される。
【0052】
次に、図10に示すように、絶縁体層130にスルーホール142、144、145、147、149を形成する。
【0053】
次に、図11に示すように、スルーホール142、144、145、147、149にそれぞれWの埋込導電体152、154、155、157、159を埋め込む。その後、絶縁体層130上にWの導電体162、164、166、167、169を選択的に形成する。その後、N型基板100の裏面103にAlにより電極120を形成する。
【0054】
(第5の実施の形態)
上記第4の実施の形態では、半導体層210を例えばN型の不純物の注入などで不純物濃度を1.0×1021cm−3に設定した半導体領域214とし、絶縁体層130に設けられたスルーホール145に埋め込まれた埋込導電体155を介して半導体領域214に接続され、絶縁体層130上に設けられた導電体165と、高濃度P型拡散層114に接続されている導電体164とを、導電体192で接続して、電界を緩和させたが、本実施の形態では、MOSトランジスタ20のゲート電極240と同じ層の導電体242を上記第4の実施の形態の半導体領域214と同形状にし、絶縁体層130に設けられたスルーホール146に埋め込まれた埋込導電体156を介して導電体242に接続され、絶縁体層130上に設けられた導電体165と、高濃度P型拡散層114に接続されている導電体164とを、導電体192で接続して、電界を緩和させた点が第4の実施の形態と異なるが、他の点は同じである。
【0055】
(第6の実施の形態)
上記第4の実施の形態では、半導体層210を例えばN型の不純物の注入などで不純物濃度を1.0×1021cm−3に設定した半導体領域214とし、絶縁体層130に設けられたスルーホール145に埋め込まれた埋込導電体155を介して半導体領域214に接続され、絶縁体層130上に設けられた導電体165と、高濃度P型拡散層114に接続されている導電体164とを、導電体192で接続して、電界を緩和させたが、本実施の形態では、絶縁体層130上に、上記第4の実施の形態の半導体領域214と同形状の導電体167を形成し、導電体167と、高濃度P型拡散層114に接続されている導電体164とを、導電体192で接続して、電界を緩和させた点が第4の実施の形態と異なるが、他の点は同じである。
【0056】
なお、本実施の形態では、導電体167と、高濃度P型拡散層114に接続されている導電体164とを互いに分離された別々のものとして構成し、導電体167と導電体164とを導電体192で接続しているが、第3の実施の形態と同様に、同じ配線層の導電体167と導電体164とを一体化して連続した構造の導電体として形成することもできる。
【0057】
図14は、本発明の第4、第5、第6の実施の形態および従来のX線センサのダイオード10の逆方向電圧印加時の耐圧を示す図である。ここで従来のX線センサとは、ダイオード10が図17に示す構造のものをいう。図14によれば、本発明の第4、第5、第6の実施の形態は従来のX線センサに比べて逆方向電圧印加時の耐圧が向上していることがわかる。
【0058】
なお、上記各実施の形態において、P型とN型とし、N型をP型とした構造としてもよい。
【0059】
以上、本発明の種々の典型的な実施の形態を説明してきたが、本発明はそれらの実施の形態に限定されない。従って、本発明の範囲は、次の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0060】
1、2、9 X線センサ
10 ダイオード
20 MOSトランジスタ
100 N型基板
101 主面
102 高濃度N型拡散層
102b 内側端部
103 裏面
112 P型ウエル拡散層
112a 端部
113 PNジャンクション
114 高濃度P型拡散層
114a 端部
120 電極
130 絶縁体層
132 埋込酸化膜
133 フィールド酸化膜
135 絶縁膜
142、144、145、146、147、149 スルーホール
152、154、155、156、157、159 埋込導電体
162、164、165、166、167、168、169 導電体
165a、166a、168a 外側端部
166b 内側端部
170 電源
172 陽極
174 陰極
180 接地
192、194 導電体
210 半導体層
212、214 半導体領域
222 ソース
224 ドレイン
230 ゲート絶縁膜
240 ゲート電極
242 導電体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一導電型の第1の半導体層と、
前記第1の半導体層の一主面上に設けられた絶縁体層と、
前記絶縁体層中に設けられた第2の半導体層と、
前記第2の半導体層に設けられた能動素子と、
前記第1の半導体層の前記一主面に設けられた前記一導電型とは反対導電型の他の導電型の第1の半導体領域と、
前記第1の半導体領域内に設けられた前記他の導電型であって前記第1の半導体領域よりも高不純物濃度の第2の半導体領域と、
前記絶縁体層に設けられたスルーホール内に前記第2の半導体領域に接続して設けられた第1の導電体と、
前記絶縁体層上または前記絶縁体層中に設けられた第2の導電体であって、前記第1の導電体の周囲に設けられ、前記一主面に対して垂直な方向から見たときに、外側端部が前記第2の半導体領域よりも外側にある前記第2の導電体と、
前記第1の導電体と前記第2の導電体とを接続して設けられた第3の導電体と、
前記第1の半導体層に電気的に接続して設けられた第4の導電体と、
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記第2の導電体の前記外側端部が、前記一主面に対して垂直な方向から見たときに、前記第1の半導体領域よりも外側にある請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2の導電体が前記第2の半導体層により構成されている請求項1または2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記能動素子が絶縁ゲート型電界効果トランジスタであって、前記第2の導電体が絶縁ゲート型電界効果トランジスタのゲート電極と同じ層の導電体で構成されている請求項1または2記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2の導電体が前記絶縁体層上に形成されている請求項1または2記載の半導体装置。
【請求項6】
前記絶縁体層上に、前記第1の導電体と接続して設けられた第5の導電体をさらに備え、前記第5の導電体と前記第2の導電体は同じ層であって連続して設けられている請求項5記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1の導電体と前記第2の導電体とが同電位になるように接続されている請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第4の導電体は前記第1の半導体層の前記一主面および前記一主面とは反対側の主面で前記第1の半導体層に電気的に接続される請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1の半導体層と前記第1の半導体領域が逆方向接続される請求項1〜8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
一導電型の第1の半導体層と、
前記第1の半導体層の一主面上に設けられた絶縁体層と、
前記第1の半導体層の前記一主面に設けられた前記一導電型とは反対導電型の他の導電型の第1の半導体領域と、
前記第1の半導体領域内に設けられた前記他の導電型であって前記第1の半導体領域よりも高不純物濃度の第2の半導体領域と、
前記絶縁体層に設けられたスルーホール内に前記第2の半導体領域に接続して設けられた第1の導電体と、
前記絶縁体層上または前記絶縁体層中に設けられた第2の導電体であって、前記第1の導電体の周囲に設けられ、前記一主面に対して垂直な方向から見たときに、外側端部が前記第2の半導体領域よりも外側にある前記第2の導電体と、
前記第1の導電体と前記第2の導電体とを接続して設けられた第3の導電体と、
前記第1の半導体層に電気的に接続して設けられた第4の導電体と、
を備える半導体装置。
【請求項11】
前記第2の導電体の前記外側端部が、前記一主面に対して垂直な方向から見たときに、前記第1の半導体領域よりも外側にある請求項10記載の半導体装置。
【請求項12】
前記半導体装置はX線センサである請求項1〜11のいずれか一項に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−80045(P2012−80045A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226717(P2010−226717)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、文部科学省、先端計測分析技術・機器開発事業に係る委託業務、開発課題名「SOI技術による時間・空間X線イメージセンサー」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(308033711)ラピスセミコンダクタ株式会社 (898)
【出願人】(504151365)大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構 (125)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】