説明

半導体記憶装置

【課題】消費電力の低減又は回路面積を縮小することができる半導体記憶装置を提供することを課題とする。
【解決手段】チャネル形成領域を具備する半導体膜と、半導体膜のチャネル形成領域上に絶縁膜を介して設けられた浮遊ゲートとを形成し、浮遊ゲートを半導体膜と仕事関数が異なる材料で設け、チャネル形成領域に不純物元素を導入することによって、書き込み電圧と消去電圧を概略同一とする。浮遊ゲートとして半導体膜より仕事関数が高い材料で設ける場合には、チャネル形成領域にn型の不純物元素を導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体記憶装置に関し、特にメモリトランジスタを有する半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯型コンピュータ、携帯電話といった携帯機器に代表される、多機能かつ高機能な小型の半導体装置が急速に普及している。そしてこれに伴い、半導体装置を構成するメモリとしてトランジスタ型の半導体記憶素子(以下、「メモリトランジスタ」とも記す)が注目されている。
【0003】
半導体記憶素子の一つとして、データを電気的に書き換え可能であり、電源を切ってもデータを記憶しておくことのできる不揮発性メモリ等の半導体記憶装置の市場が拡大している。不揮発性メモリは、MOSトランジスタと類似の構造を有し、電荷を長期間蓄積することのできる領域がチャネル形成領域上に設けられているところに特徴がある。フローティングゲート型の不揮発性メモリは、チャネル形成領域上のトンネル絶縁膜を通して電荷蓄積層(フローティングゲート、浮遊ゲートともいう)に電荷を注入して保持させるものである。
【0004】
一般的に、シリコン基板上にゲート絶縁膜を介して設けられる浮遊ゲートは半導体膜と同一の材料(シリコン)で設けられるが、近年浮遊ゲートとしてシリコン以外の材料を用いた構成が提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平10−233505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、チャネル形成領域となる半導体と浮遊ゲートの材料が異なり、Fowler−Nordheim(F−N)トンネル電流を用いた書き込み、消去を行う場合、仕事関数等の材料の物性により書き込み電圧と消去電圧が異なる。例えば、半導体としてシリコンを用い、浮遊ゲートとしてシリコンより仕事関数が大きいタングステン等の金属を用いた場合、書き込み電圧に対して消去電圧が高くなる。
【0006】
書き込み電圧と消去電圧が異なると、書き込み電圧を生成する回路と消去電圧を生成する電源回路をそれぞれ設ける必要があり、回路面積が増大する問題がある。また、電圧の大きい消去電圧に合わせて書き込みを行うことにより、電源回路を共通化することも可能であるが、電源回路を個別に設けた場合よりも消費電力が増大する問題がある。
【0007】
また、ホットエレクトロン注入による書き込み、F−Nトンネル電流による消去を行う場合も書き込み電圧と消去電圧が異なることが多く問題となる。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑み、消費電力の低減又は回路面積を縮小することができる半導体記憶装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の半導体記憶装置の一は、チャネル形成領域を具備する半導体膜と、半導体膜のチャネル形成領域上に絶縁膜を介して設けられた浮遊ゲートとを有し、浮遊ゲートは、半導体膜と仕事関数が異なる材料で設けられ、チャネル形成領域は不純物元素を含み、書き込み電圧と消去電圧が概略同一であることを特徴としている。なお、書き込み電圧と消去電圧が概略同一とは、完全に一致する場合はもちろん、製造バラツキによる誤差を含むものをいう。従って、5%以内、より望ましくは3%以内の誤差を有するものとする。
【0010】
本発明の半導体記憶装置の一は、チャネル形成領域を具備する半導体膜と、半導体膜のチャネル形成領域上に絶縁膜を介して設けられた浮遊ゲートとを有し、浮遊ゲートは、半導体膜より仕事関数が高い材料で設けられ、チャネル形成領域はn型の不純物元素を含み、書き込み電圧と消去電圧が概略一致することを特徴としている。
【0011】
本発明の半導体記憶装置の一は、同一基板上に設けられた薄膜トランジスタ及びメモリトランジスタを有し、薄膜トランジスタは、チャネル形成領域を具備する第1の半導体膜と、第1の半導体膜のチャネル形成領域上にゲート絶縁膜を介して設けられた第1のゲート電極とを有し、メモリトランジスタは、チャネル形成領域を具備する第2の半導体膜と、第2の半導体膜のチャネル形成領域上に第1の絶縁膜を介して設けられた浮遊ゲートと、浮遊ゲート上に第2の絶縁膜を介して設けられた第2のゲート電極とを有し、浮遊ゲートは、第2の半導体膜と仕事関数が異なる材料で設けられ、第2の半導体膜のチャネル形成領域は不純物元素を含み、メモリトランジスタの書き込み電圧と消去電圧が概略同一であることを特徴としている。
【0012】
本発明の半導体記憶装置の一は、同一基板上に設けられた薄膜トランジスタ及びメモリトランジスタを有し、薄膜トランジスタは、チャネル形成領域を具備する第1の半導体膜と、第1の半導体膜のチャネル形成領域上にゲート絶縁膜を介して設けられた第1のゲート電極とを有し、メモリトランジスタは、チャネル形成領域を具備する第2の半導体膜と、第2の半導体膜のチャネル形成領域上に第1の絶縁膜を介して設けられた浮遊ゲートと、浮遊ゲート上に第2の絶縁膜を介して設けられた第2のゲート電極とを有し、浮遊ゲートは、第2の半導体膜より仕事関数が高い材料で設けられ、第2の半導体膜のチャネル形成領域はn型の不純物元素を含み、メモリトランジスタの書き込み電圧と消去電圧が概略同一であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
半導体膜と浮遊ゲートに異なる材料を用いた場合であっても、書き込み電圧と消去電圧を概略同一とすることによって、低消費電力化を達成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。したがって、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本明細書中の図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する場合がある。
【0015】
(実施の形態1)
本実施の形態では、トランジスタ型の半導体記憶素子(以下、「メモリトランジスタ」とも記す)を具備する半導体記憶装置及びその作製方法に関して図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、「書き込み電圧」と「消去電圧」とは、特に断らない限り電圧の絶対値のことをさすものとする。
【0016】
本実施の形態で示す半導体記憶装置は、チャネル形成領域102aを具備する半導体膜102と、半導体膜102のチャネル形成領域102a上に形成された第1の絶縁膜103、浮遊ゲート104、第2の絶縁膜105及びゲート電極106から構成されるメモリトランジスタを有している(図1(A)、(B)参照)。また、図1のメモリトランジスタにおいて、浮遊ゲート104は半導体膜102と異なる材料で設けられており、半導体膜102のチャネル形成領域102aには不純物元素が含まれている。
【0017】
半導体膜102をシリコン(Si)を主成分とする材料で設けた場合、浮遊ゲート104を半導体膜102と異なる材料、例えば、タングステン、窒化タンタル、窒化チタン等のメタルで設けることによって、低温プロセス(600℃以下)で作製しやすい等の効果がある。
【0018】
しかし、その一方で、F−Nトンネル電流を用いた書き込み、消去方法において浮遊ゲート104と半導体膜102の仕事関数が異なる場合には、半導体記憶装置の書き込み電圧と消去電圧に差が生じてしまう。例えば、n型のメモリトランジスタにおいて、浮遊ゲート104を半導体膜102より仕事関数が高い材料で設けた場合には、浮遊ゲート側のトンネル絶縁膜の障壁高さが半導体膜側と比較して高くなるため書き込み電圧に対して消去電圧が高くなる。その結果、書き込み電圧と消去電圧を同一の回路で生成する場合には、高い方の電圧(ここでは、消去するための電圧)を生成する必要があるため、電力の浪費が生じる。一方、書き込み電圧を生成する回路と、消去電圧を生成する回路をそれぞれ設ける場合には、回路面積が増大し消費電力が増大する。
【0019】
そのため、本実施の形態では、半導体膜102のチャネル形成領域102aに不純物元素を導入し、メモリトランジスタのしきい値を制御する構成とする。その結果、浮遊ゲート104を半導体膜102と仕事関数が異なる材料で設けた場合であっても、半導体記憶装置において書き込み電圧と消去電圧をそれぞれ制御し、概略同一とすることができる。なお、書き込み電圧と消去電圧が概略同一とは、完全に一致する場合はもちろん、製造バラツキによる誤差を含むものをいう。従って、5%以内、より望ましくは3%以内の誤差を有するものとする。
【0020】
浮遊ゲート104を半導体膜102と仕事関数が異なる材料で設ける場合であっても、チャネル形成領域に不純物元素を導入し、書き込み電圧と消去電圧を概略同一とすることによって、書き込み電圧を生成する回路と消去電圧を生成する回路を共通に設けても、電力の浪費を抑制することが可能となる。また、書き込み電圧を生成する回路と消去電圧を生成する回路を共通に設けることにより回路面積の低減や低消費電力化を達成することができる。
【0021】
次に、半導体記憶装置のメモリトランジスタの作製方法に関して図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、n型のメモリトランジスタを形成する場合について説明する。
【0022】
まず、基板100上に絶縁膜101を介して半導体膜102を形成する(図2(A)参照)。
【0023】
基板100は、ガラス基板、金属基板やステンレス基板、本工程の処理温度に耐えうる耐熱性があるプラスチック基板等を用いるとよい。このような基板であれば、その面積や形状に大きな制限はないため、例えば、1辺が1メートル以上であって、矩形状のものを用いれば、生産性を格段に向上させることができる。
【0024】
半導体膜102は、半導体膜102は、スパッタ法、LPCVD法、プラズマCVD法等により、25〜200nm(好ましくは30〜150nm)の厚さで形成する。半導体膜102としては、例えば、非晶質半導体膜(例えば、非晶質シリコン膜)又は多結晶半導体膜(例えば、多結晶シリコン膜)を形成すればよい。多結晶半導体膜は、非晶質半導体膜にレーザー光の照射やRTA又はファーネスアニール炉を用いる熱結晶化法等を行うことにより形成することができる。
【0025】
また、SOI(Silicon on Insulator)基板を用いてもよい。SOI基板を用いることによって、半導体膜102として単結晶半導体膜(例えば、単結晶シリコン膜)を用いることができる。例えば、スマートカット法、ELTRAN(Epitaxial Layer Transfer)法等の貼り合わせ法を用いて、単結晶半導体膜を基板100に貼り合わせて設けることができる。
【0026】
ここでは、半導体膜102として、非晶質シリコン膜を形成した後、当該非晶質シリコン膜にレーザー光を照射して多結晶シリコン膜を形成する。
【0027】
次に、半導体膜に不純物元素を導入する(図2(B)参照)。
【0028】
導入する不純物元素は、n型の不純物元素又はp型の不純物元素を用いる。n型の不純物元素としては、リン(P)やヒ素(As)等を用いることができる。p型の不純物元素としては、ボロン(B)やアルミニウム(Al)やガリウム(Ga)等を用いることができる。
【0029】
後に形成される浮遊ゲートを半導体膜102(多結晶シリコン膜)より仕事関数が高い材料で設ける場合にはn型の不純物元素を用いる。これはn型のメモリトランジスタにおいて、浮遊ゲートを半導体膜102より仕事関数が高い材料で設ける場合に、チャネル形成領域にn型の不純物元素を導入することによって、半導体膜102と第1の絶縁膜103と浮遊ゲート104間のフラットバンド電圧をマイナス側に操作することができるからである。フラットバンド電圧をマイナス側に操作することで、浮遊ゲートへ電子を注入して書き込みを行う際にゲート電極に印加する電圧が高くなるものの、浮遊ゲートから電子を放出して消去を行う際にゲート電極に印加する電圧を下げることができる。
【0030】
一方、後に形成される浮遊ゲートを半導体膜102(多結晶シリコン膜)より仕事関数が低い材料で設ける場合にはp型の不純物元素を用いる。これは、n型のメモリトランジスタにおいて、浮遊ゲートを半導体膜102より仕事関数が低い材料で設ける場合にチャネル形成領域にp型の不純物元素を導入することにより上述のフラットバンド電圧をプラス側に操作することができるからである。
【0031】
次に、半導体膜102上に第1の絶縁膜103を形成する(図2(C)参照)。第1の絶縁膜103は、メモリトランジスタにおいてトンネル絶縁膜として機能しうる。
【0032】
第1の絶縁膜103は、珪素の酸化物または珪素の窒化物を含む膜(例えば、酸化珪素(SiOx)膜、酸化窒化珪素(SiOxNy)(x>y)膜、窒化珪素(SiNx)膜、窒化酸化珪素(SiNxOy)(x>y)膜等)を単層又は積層で形成する。
【0033】
次に、第1の絶縁膜103上に浮遊ゲート204、第2の絶縁膜205及び導電膜206を順に形成する(図2(D)参照)。
【0034】
浮遊ゲート204は、タングステン(W)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、から選ばれた元素でなる膜、または前記元素の窒化物でなる膜(代表的には、窒化タングステン膜、窒化タンタル膜、窒化チタン膜)を単層又は積層させて用いることができる。また、本実施の形態では、浮遊ゲート204として多結晶シリコンより仕事関数が高いタングステンを用いる。従って、上記図2(B)において半導体膜にはn型の不純物元素を導入する。
【0035】
第2の絶縁膜205は、スパッタ法やプラズマCVD法等により、珪素の酸化物または珪素の窒化物を含む膜(例えば、酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜、窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜等)を、単層又は積層で形成する。例えば、酸化窒化珪素膜と窒化珪素膜と酸化窒化珪素膜を順に積層させた構造で設けることができる。
【0036】
導電膜206は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等から選択された元素でなる膜、またはこれらの元素の窒化物でなる膜(代表的には、窒化タンタル、窒化タングステン膜、窒化チタン膜)を単層又は積層させて用いることができる。
【0037】
次に、第1の絶縁膜103、浮遊ゲート204、第2の絶縁膜205及び導電膜206を選択的にエッチングする(図2(E)参照)。なお、第1の絶縁膜103のエッチングを行わず残存させてもよい(図1(B)参照)。
【0038】
次に、残存した浮遊ゲート104、第2の絶縁膜105及び残存した導電膜206(ゲート電極106)の積層構造をマスクとして半導体膜102に不純物元素を導入してチャネル形成領域102a及び不純物領域102bを形成する(図3(A)参照)。
【0039】
導入する不純物元素は、n型の不純物元素又はp型の不純物元素を用いる。n型の不純物元素としては、リン(P)やヒ素(As)等を用いることができる。p型の不純物元素としては、ボロン(B)やアルミニウム(Al)やガリウム(Ga)等を用いることができる。本実施の形態では、n型のメモリトランジスタを作製するため、n型の不純物元素(例えば、リン(P))を半導体膜102に導入する。
【0040】
なお、不純物領域102bはメモリトランジスタのソース領域又はドレイン領域として機能し、不純物領域102bに含まれる不純物元素の濃度はチャネル形成領域102aに含まれる不純物元素の濃度より高くする。
【0041】
その後、層間絶縁膜107を形成した後、不純物領域102bに電気的に接続するように導電膜108を形成する(図3(B)参照)。導電膜108は、メモリトランジスタにおいて、ソース電極又はドレイン電極として機能する。
【0042】
以上の工程により、半導体記憶装置を構成するメモリトランジスタが得られる。
【0043】
なお、本実施の形態で示す半導体記憶装置を構成するメモリトランジスタは上述した構成に限られず、チャネル形成領域102aと不純物領域102bとの間にLDD領域102cを設けた構成としてもよい(図4参照)。
【0044】
本実施の形態で示したように、浮遊ゲートを半導体膜と仕事関数が異なる材料で設けた場合であっても、チャネル形成領域に不純物元素を導入し、書き込み電圧の絶対値と消去電圧の絶対値を概略同一とすることによって、電力の浪費の抑制、回路面積の低減又は低消費電力化を達成することができる。
【0045】
本実施の形態では、n型のメモリトランジスタの形成に関して説明したが、これに限られずp型のメモリトランジスタも同様に形成することができる。
【0046】
なお、本実施の形態は、本明細書の他の実施の形態で示した半導体記憶装置の構成と適宜組み合わせることができる。
【0047】
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態で示したメモリトランジスタと薄膜トランジスタ(TFT)を同一工程で作製する場合について図面を参照して説明する。
【0048】
まず、基板100の一表面に絶縁膜101を形成し、当該絶縁膜101上に非晶質半導体膜202(例えば、非晶質珪素を含む膜)を形成する(図5(A)参照)。絶縁膜101と非晶質半導体膜202は、真空中において連続して形成することができる。連続して形成することにより大気に曝されないため不純物元素の混入を防止することができる。
【0049】
絶縁膜101は、スパッタ法やプラズマCVD法等により、珪素の酸化物または珪素の窒化物を含む膜(例えば、酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜、窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜等)を、単層又は積層で形成する。下地となる絶縁膜が2層構造の場合、例えば、1層目として窒化酸化珪素膜を形成し、2層目として酸化窒化珪素膜を形成するとよい。下地となる絶縁膜が3層構造の場合、1層目の絶縁膜として酸化珪素膜を形成し、2層目の絶縁膜として窒化酸化珪素膜を形成し、3層目の絶縁膜として酸化窒化珪素膜を形成するとよい。または、1層目の絶縁膜として酸化窒化珪素膜を形成し、2層目の絶縁膜として窒化酸化珪素膜を形成し、3層目の絶縁膜として酸化窒化珪素膜を形成するとよい。下地となる絶縁膜は、基板100からの不純物の侵入を防止するブロッキング膜として機能する。
【0050】
半導体膜202は、スパッタ法、LPCVD法、プラズマCVD法等により、25〜200nm(好ましくは30〜150nm)の厚さで形成する。半導体膜202としては、例えば、非晶質珪素膜を形成すればよい。
【0051】
次に、非晶質半導体膜202にレーザー光を照射して結晶化を行う。なお、レーザー光の照射と、RTA又はファーネスアニール炉を用いる熱結晶化法、結晶化を助長する金属元素を用いる熱結晶化法とを組み合わせた方法等により非晶質半導体膜202の結晶化を行ってもよい。その後、得られた結晶質半導体膜を所望の形状にエッチングして、結晶質半導体膜202a、202bを形成する(図5(B)参照)。
【0052】
半導体膜202aは後に完成する薄膜トランジスタの一部となり、半導体膜202bは後に完成するメモリトランジスタの一部となる。
【0053】
結晶質半導体膜202a、202bの作製工程の一例を以下に簡単に説明すると、まず、プラズマCVD法を用いて、膜厚50〜60nmの非晶質半導体膜202(例えば、非晶質珪素膜)を形成する。次に、結晶化を助長する金属元素であるニッケルを含む溶液を非晶質半導体膜上に保持させた後、非晶質半導体膜に脱水素化の処理(500℃、1時間)と、熱結晶化の処理(550℃、4時間)を行って結晶質半導体膜を形成する。その後、レーザー発振器から発振されたレーザー光を照射し、フォトリソグラフィ法を用いることよって結晶質半導体膜103a、103bを形成する。なお、結晶化を助長する金属元素を用いる熱結晶化を行わずに、レーザー光の照射だけで非晶質半導体膜の結晶化を行ってもよい。
【0054】
次に、半導体膜202aを覆ってレジストマスク221を形成し、半導体膜202bに選択的に不純物元素を導入する(図5(C)参照)。導入する不純物元素は、n型の不純物元素又はp型の不純物元素を用いる。本実施の形態では、メモリトランジスタをn型で設け、後に形成される浮遊ゲートを半導体膜202bより仕事関数が高い材料で設ける。従って、半導体膜202bにリンをドーピング方又はイオン注入法により導入する。
【0055】
次に、半導体膜202a、202b上に第1の絶縁膜203を形成し、当該第1の絶縁膜203上に浮遊ゲート204を形成する(図5(D)参照)。
【0056】
第1の絶縁膜203は、CVD法やスパッタ法等により、珪素の酸化物又は珪素の窒化物を含む膜を、単層又は積層して形成する。具体的には、酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜、窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜を、単層又は積層して形成する。
【0057】
また、第1の絶縁膜203は、半導体膜202a、202bに対しプラズマ処理を行い、表面を酸化又は窒化することで形成しても良い。例えば、He、Ar、Kr、Xeなどの希ガスと、酸素、酸化窒素(NO)、アンモニア、窒素、水素などの混合ガスを導入したプラズマ処理で形成する。この場合のプラズマの励起は、マイクロ波の導入により行うと、低電子温度で高密度のプラズマを生成することができる。この高密度プラズマで生成された酸素ラジカル(OHラジカルを含む場合もある)や窒素ラジカル(NHラジカルを含む場合もある)によって、半導体膜の表面を酸化又は窒化することができる。
【0058】
このような高密度プラズマを用いた処理により、1〜20nm、代表的には5〜10nmの絶縁膜が半導体膜に形成される。この場合の反応は、固相反応であるため、当該絶縁膜と半導体膜との界面準位密度はきわめて低くすることができる。このような、高密度プラズマ処理は、半導体膜(結晶性シリコン、或いは多結晶シリコン)を直接酸化(若しくは窒化)するため、形成される絶縁膜の厚さのばらつきをきわめて小さくすることができる。加えて、結晶性シリコンの結晶粒界でも酸化が強くされることがないため、非常に好ましい状態となる。すなわち、ここで示す高密度プラズマ処理で半導体膜の表面を固相酸化することにより、結晶粒界において異常に酸化反応をさせることなく、均一性が良く、界面準位密度が低い絶縁膜を形成することができる。
【0059】
また、第1の絶縁膜203は、高密度プラズマ処理によって形成される絶縁膜のみを用いても良いし、それに加えてCVD法やスパッタ法等で酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコンなどの絶縁膜を堆積し、積層させても良い。又は、CVD法やスパッタ法等で酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコンなどの絶縁膜を堆積した後に高密度プラズマ処理を行ってもよい。いずれにしても、高密度プラズマで形成した絶縁膜をゲート絶縁膜の一部又は全部に含んで形成されるトランジスタは、特性のばらつきを小さくすることができる。
【0060】
浮遊ゲート204は、タングステン(W)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、から選ばれた元素でなる膜、または前記元素の窒化物でなる膜(代表的には、窒化タングステン膜、窒化タンタル膜、窒化チタン膜)を単層又は積層させて用いることができる。また、本実施の形態では、浮遊ゲート204として、半導体膜202bより仕事関数が高いタングステンで設ける。タングステンで設けることによって、低温プロセスで作製しやすい等の利点がある。
【0061】
次に、半導体膜202a上に形成された第1の絶縁膜203及び浮遊ゲート204を除去し、半導体膜202b上に形成された浮遊ゲート204の一部を除去することによって、半導体膜202b上に第1の絶縁膜103及び浮遊ゲート104を残存させる(図5(E)参照)。第1の絶縁膜103はメモリトランジスタにおいてトンネル絶縁膜として機能し、浮遊ゲート104はメモリトランジスタにおいて電荷蓄積層として機能する。
【0062】
次に、半導体膜202a、第1の絶縁膜103及び浮遊ゲート104上に第2の絶縁膜105を形成する(図6(A)参照)。第2の絶縁膜105は薄膜トランジスタにおいてゲート絶縁膜として機能し、メモリトランジスタにおいて浮遊ゲートとゲート電極間の層間絶縁膜として機能する。
【0063】
次に、半導体膜202bの上方にレジストマスク222を形成し、半導体膜202bに浮遊ゲート104をマスクとして不純物元素を導入し、不純物領域223を形成する(図6(B)参照)。不純物領域223の一部は、メモリトランジスタのLDD領域となる。
【0064】
次に、第2の絶縁膜105上に導電膜206を形成する(図6(C)参照)。
【0065】
導電膜206は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等から選択された元素でなる膜、またはこれらの元素の窒化物でなる膜(代表的には、窒化タンタル、窒化タングステン膜、窒化チタン膜)を単層又は積層させて用いることができる。本実施の形態では、膜厚が20nm〜100nmの窒化タンタル膜と、膜厚が100nm〜400nmのタングステン膜を順に積層させた構造で設ける。タングステンや窒化タンタルは、耐熱性が高いため、導電膜を形成した後に、熱活性化を目的とした加熱処理を行うことができる。
【0066】
次に、導電膜206をエッチングして、半導体膜202a上にゲート電極106aを形成し、半導体膜202b上にゲート電極106bを形成した後、当該ゲート電極106a、106bをマスクとして半導体膜202a、202bに不純物元素を導入することによって、半導体膜202aにチャネル形成領域250a及び不純物領域250bが形成され、半導体膜202bにチャネル形成領域260a、高濃度不純物領域260b及び低濃度不純物領域260cが形成される(図6(D)参照)。
【0067】
その結果、半導体膜202a、第2の絶縁膜105及びゲート電極106aを少なくとも具備する薄膜トランジスタ250と、半導体膜202a、第1の絶縁膜103、浮遊ゲート104、第2の絶縁膜105及びゲート電極106bを少なくとも具備するメモリトランジスタ260が得られる。
【0068】
なお、不純物領域250b、高濃度不純物領域260b及び低濃度不純物領域260cに含まれる不純物元素の濃度はチャネル形成領域260aに含まれる不純物元素の濃度より高くし、高濃度不純物領域260bに含まれる不純物元素の濃度は低濃度不純物領域260cに含まれる不純物元素の濃度より高くする。
【0069】
その後、薄膜トランジスタ250及びメモリトランジスタ260を覆うように層間絶縁膜107を形成した後、半導体膜202aの不純物領域250b、半導体膜202bの高濃度不純物領域260bに電気的に接続するように導電膜108を形成する(図6(E)参照)。導電膜108は、薄膜トランジスタ250、メモリトランジスタ260において、ソース電極又はドレイン電極として機能する。
【0070】
以上の工程により、薄膜トランジスタ及びメモリトランジスタを具備する半導体記憶装置が得られる。
【0071】
なお、本実施の形態において薄膜トランジスタ250やメモリトランジスタ260の構成は図に示したものに限られず、様々な形態をとることができる。特定の構成に限定されない。例えば、ゲート電極が2個以上になっているマルチゲート構造を用いてもよい。薄膜トランジスタにおいてマルチゲート構造にすると、チャネル領域が直列に接続されるような構成となるため、複数のトランジスタが直列に接続されたような構成となる。マルチゲート構造にすることにより、オフ電流の低減や、トランジスタの耐圧を向上させることによる信頼性の向上や、飽和領域で動作する時に、ドレインとソース間電圧が変化しても、ドレインとソース間電流があまり変化せず、フラットな特性にすることなどができる。また、チャネルの上下にゲート電極が配置されている構造でもよい。チャネルの上下にゲート電極が配置されている構造にすることにより、チャネル領域が増えるため、電流値を大きくすることや、空乏層ができやすくなってS値を小さくすることができる。チャネルの上下にゲート電極が配置されると、複数のトランジスタが並列に接続されたような構成となる。
【0072】
また、チャネルの上にゲート電極が配置されている構造でもよいし、チャネルの下にゲート電極が配置されている構造でもよいし、正スタガ構造であってもよいし、逆スタガ構造でもよいし、チャネル領域が複数の領域に分かれていてもよいし、並列に接続されていてもよいし、直列に接続されていてもよい。また、チャネル(もしくはその一部)にソース電極やドレイン電極が重なっていてもよい。チャネル(もしくはその一部)にソース電極やドレイン電極が重なっている構造にすることにより、チャネルの一部に電荷がたまって、動作が不安定になることを防ぐことができる。また、LDD領域があってもよい。LDD領域を設けることにより、オフ電流の低減や、トランジスタの耐圧を向上させることによる信頼性の向上や、飽和領域で動作する時に、ドレインとソース間電圧が変化しても、ドレインとソース間電流があまり変化せず、フラットな特性にすることができる。
【0073】
なお、本実施の形態は、本明細書の他の実施の形態で示した半導体記憶装置の構成と適宜組み合わせることができる。
【0074】
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態で示した半導体記憶装置の使用形態に関して図面を参照して説明する。
【0075】
まず、図7を参照して、上記実施の形態で示した半導体記憶装置を具備し非接触でデータの入出力が可能である半導体装置の適用例に関して図面を参照して以下に説明する。非接触でデータの入出力が可能である半導体装置は利用の形態によっては、RFIDタグ、IDタグ、ICタグ、ICチップ、RFタグ、無線タグ、電子タグまたは無線チップともよばれる。
【0076】
半導体装置80は、非接触でデータを交信する機能を有し、電源回路82、リセット回路83、クロック発生回路84、復調回路85及び変調回路86から構成されるRF及びアナログ回路81、制御論理回路87、記憶回路88およびアンテナ89を有している(図7(A))。記憶回路88には、上記実施の形態で示したメモリトランジスタを設けた構成とすることができる。
【0077】
電源回路82は受信信号から電源電位を生成する回路であり、リセット回路83はリセット信号を生成する回路であり、クロック発生回路84はクロック信号を生成する回路であり、復調回路85は受信信号を復調して制御論理回路87に出力する回路であり、変調回路86は制御論理回路87から受信した信号を変調する回路である。また、制御論理回路87としては、例えばコード抽出回路91、コード判定回路92、CRC判定回路93、メモリ制御回路94及び出力制御回路95が設けられている。
【0078】
なお、コード抽出回路91は制御論理回路87に送られてきた復調信号をデコードする回路であり、コード判定回路92はデコードされた信号から命令の内容を判定する回路であり、CRC判定回路93は送受信データの誤りを検出するチェックサム方式の一つであるCRC判定を行う回路である。
【0079】
次に、上述した半導体装置の動作の一例について説明する。まず、アンテナ89が無線信号を受信し、変調された交流信号がRF及びアナログ回路81に送られる。電源回路82は、電源電位VDDを生成し各回路へ供給する。リセット回路83は、電源が立ち上がるときにリセット信号を発生し、制御論理回路87内の各種レジスタのリセットを行う。クロック発生回路84はクロック信号を出力し、復調回路85は復調信号を出力する。制御論理回路87は、クロック信号及び復調信号が入力されると、コード抽出回路91にて復調信号をデコードし、デコードされた信号はコード判定回路92にて命令の内容を判定し、命令に従った各種制御信号を出力する。例えば、メモリ制御回路94が記憶回路88からデータを読み出して、出力制御回路95へ送る。また、復調信号が正しく送られてきたかどうかをCRC判定回路93によって判定する。一連の判定においてエラーがなければ、出力制御回路95は入力されたメモリデータにSOF(Start Of File)やEOF(ENd Of File)、或いはCRC(Cyclic Redundancy Check)コードといった必要なデータを追加し、符号化を行った信号を出力する。変調回路86は制御論理回路87の出力信号に基づいて、半導体装置80のインピーダンスを変化させるための負荷変調を行い、アンテナ89を介してデータを送信する。
【0080】
このように、リーダ/ライタから半導体装置80に信号を送り、当該半導体装置80から送られてきた信号をリーダ/ライタで受信することによって、半導体装置のデータを読み取ることが可能となる。
【0081】
また、半導体装置80は、各回路への電源電圧の供給を電源(バッテリー)を搭載せず電磁波により行うタイプとしてもよいし、電源(バッテリー)を搭載して電磁波と電源(バッテリー)により各回路に電源電圧を供給するタイプとしてもよい。
【0082】
次に、非接触でデータの入出力が可能な半導体装置の使用形態の一例について説明する。表示部3210を含む携帯端末の側面には、リーダ/ライタ3200が設けられ、品物3220の側面には半導体装置3230が設けられる(図7(B))。品物3220が含む半導体装置3230にリーダ/ライタ3200をかざすと、表示部3210に品物の原材料や原産地、生産工程ごとの検査結果や流通過程の履歴等、更に商品の説明等の商品に関する情報が表示される。また、商品3260をベルトコンベアにより搬送する際に、リーダ/ライタ3240と、商品3260に設けられた半導体装置3250を用いて、該商品3260の検品を行うことができる(図7(C))。このように、システムに半導体装置を活用することで、情報の取得を簡単に行うことができ、高機能化と高付加価値化を実現する。
【0083】
また、上記実施の形態で示した半導体記憶装置を具備する半導体装置は、メモリを具備したあらゆる分野の電子機器に用いることが可能である。例えば、上記実施の形態で示した半導体記憶装置を適用した電子機器として、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDVD(digital versatile disc)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを備えた装置)などが挙げられる。それら電子機器の具体例を図8に示す。
【0084】
図8(A)、(B)は、デジタルカメラを示している。図8(B)は、図8(A)の裏側を示す図である。このデジタルカメラは、筐体2111、表示部2112、レンズ2113、操作キー2114、シャッターボタン2115などを有する。また、取り出し可能な不揮発性のメモリ2116を備えており、当該デジタルカメラで撮影したデータをメモリ2116に記憶させておく構成となっている。上記実施の形態で示した半導体記憶装置をメモリ2116に適用することができる。
【0085】
また、図8(C)は、携帯電話を示しており、携帯端末の1つの代表例である。この携帯電話は筐体2121、表示部2122、操作キー2123などを含む。また、携帯電話は、取り出し可能な不揮発性のメモリ2125を備えており、当該携帯電話の電話番号等のデータ、映像、音楽データ等をメモリ2125に記憶させ再生することができる。上記実施の形態で示した半導体記憶装置をメモリ2125に適用することができる。
【0086】
また、図8(D)は、デジタルプレーヤーを示しており、オーディオ装置の1つの代表例である。図8(D)に示すデジタルプレーヤーは、本体2130、表示部2131、メモリ部2132、操作部2133、イヤホン2134等を含んでいる。なお、イヤホン2134の代わりにヘッドホンや無線式イヤホンを用いることができる。メモリ部2132は、上記実施の形態で示した半導体記憶装置を用いることができる。例えば、記録容量が20〜200ギガバイト(GB)のNAND型不揮発性メモリを用い、操作部2133を操作することにより、映像や音声(音楽)を記録、再生することができる。なお、表示部2131は黒色の背景に白色の文字を表示することで消費電力を抑えられる。これは携帯型のオーディオ装置において特に有効である。
【0087】
また、図8(E)は、電子ブック(電子ペーパーともいう)を示している。この電子ブックは、本体2141、表示部2142、操作キー2143、メモリ部2144を含んでいる。またモデムが本体2141に内蔵されていてもよいし、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。メモリ部2144は、上記実施の形態で示した半導体記憶装置を用いることができる。例えば、上記実施の形態で示した半導体記憶装置を利用して記録容量が20〜200ギガバイト(GB)のNAND型不揮発性メモリを用い、操作キー2143を操作することにより、映像や音声(音楽)を記録、再生することができる。
【0088】
以上の様に、上記実施の形態で示した半導体記憶装置の適用範囲は極めて広く、メモリを有するものであればあらゆる分野の電子機器に用いることが可能である。
【0089】
なお、本実施の形態は、本明細書の他の実施の形態と自由に組み合わせて行うことができる。
【実施例1】
【0090】
本実施例では、メモリトランジスタを構成する半導体膜のチャネル形成領域に不純物元素を導入したときの書き込み電圧と消去電圧の関係について説明する。
【0091】
まず、図9に示すように、上記実施の形態2で示したメモリトランジスタを作製した。
【0092】
基板100としてはガラス基板を用い、ガラス基板上に絶縁膜101として50nmの窒化酸化珪素膜と100nmの酸化窒化珪素膜を順に積層して形成した。また、半導体膜202bはCVD法により非晶質シリコン膜を膜厚60nmで形成した後、レーザー光を照射して結晶化させた。第1の絶縁膜103は、半導体膜202bに高密度プラズマ処理を行い酸化した後、CVD法により酸化窒化珪素膜を形成し、再度高密度プラズマ処理により酸化することにより膜厚10nmで形成した。浮遊ゲート104は、膜厚30nmのタングステンを用いて形成し、第2の絶縁膜105は、膜厚50nmの酸化窒化珪素膜で形成した。ゲート電極106bは、30nmの窒化タンタルと170nmのタングステンを順に積層して形成した。層間絶縁膜107は、50nmの酸化窒化珪素膜と100nmの窒化酸化珪素膜と600nmの酸化窒化珪素膜を順に積層して形成した。導電膜108は、60nmのチタンと40nmの窒化チタンと500nmのアルミニウムと100nmのチタンを順に積層して形成した。
【0093】
高濃度不純物領域262bは、半導体膜202bに加速電圧は50keV、ドーズ量を3×1015cm−2としリン(P)を導入した。また、低濃度不純物領域262cは、半導体膜202bに加速電圧は40keV、ドーズ量を1×1014cm−2としリン(P)を導入した。
【0094】
次に、図9に示したメモリトランジスタにおいて、チャネル形成領域262aに加速電圧35keVで不純物元素(リン)のドープするドーズ量を変化させた場合の書き込み電圧及び消去電圧の測定結果を図10に示す。
【0095】
図10においては、横軸はリン(P)のチャネルドープドーズ量を示し、縦軸は書き込み電圧と消去電圧を示している。リンのチャネルドープドを行わない場合(チャネルドープドーズ量がゼロの場合)には、書き込み電圧が約14.3V〜14.7Vであり、消去電圧が約−16.3V〜−17Vであった。リンのチャネルドープドーズ量を増やしていくと、書き込み電圧の絶対値が上昇し、消去電圧の絶対値が減少する変化がみられた。また、リンのチャネルドープドーズ量が約1.85×1013/cmのときに書き込み電圧と消去電圧の絶対値を概略同一とすることができた。
【0096】
また、さらにリンのチャネルドープドーズ量を増やすと、書き込み電圧が消去電圧の絶対値より大きくなった。
【0097】
このように、メモリトランジスタにおいて、浮遊ゲートを半導体膜と仕事関数が異なる材料で設けた場合であっても、チャネル形成領域に不純物元素を導入することによって、書き込み電圧と消去電圧を制御できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の半導体記憶装置の一例を示す図。
【図2】本発明の半導体記憶装置の作製方法の一例を示す図。
【図3】本発明の半導体記憶装置の作製方法の一例を示す図。
【図4】本発明の半導体記憶装置の一例を示す図。
【図5】本発明の半導体記憶装置の作製方法の一例を示す図。
【図6】本発明の半導体記憶装置の作製方法の一例を示す図。
【図7】本発明の半導体記憶装置の使用形態の一例を示す図。
【図8】本発明の半導体記憶装置の使用形態の一例を示す図。
【図9】本発明の半導体記憶装置の一例を示す図。
【図10】本発明の半導体記憶装置のメモリトランジスタにおいてチャネルドープに対する書き込み電圧と消去電圧との関係を示す図。
【符号の説明】
【0099】
80 半導体装置
81 RF及びアナログ回路
82 電源回路
83 リセット回路
84 クロック発生回路
85 復調回路
86 変調回路
87 制御論理回路
88 記憶回路
89 アンテナ
91 コード抽出回路
92 コード判定回路
93 CRC判定回路
94 メモリ制御回路
95 出力制御回路
100 基板
101 絶縁膜
102 半導体膜
103 絶縁膜
104 浮遊ゲート
105 絶縁膜
106 ゲート電極
107 層間絶縁膜
108 導電膜
202 半導体膜
203 絶縁膜
204 浮遊ゲート
205 絶縁膜
206 導電膜
221 レジストマスク
222 レジストマスク
223 不純物領域
250 薄膜トランジスタ
260 メモリトランジスタ
102a チャネル形成領域
102b 不純物領域
103a 結晶質半導体膜
106a ゲート電極
106b ゲート電極
202a 半導体膜
202b 半導体膜
2111 筐体
2112 表示部
2113 レンズ
2114 操作キー
2115 シャッターボタン
2116 メモリ
2121 筐体
2122 表示部
2123 操作キー
2125 メモリ
2130 本体
2131 表示部
2132 メモリ部
2133 操作部
2134 イヤホン
2141 本体
2142 表示部
2143 操作キー
2144 メモリ部
250a チャネル形成領域
250b 不純物領域
260a チャネル形成領域
260b 高濃度不純物領域
260c 低濃度不純物領域
262a チャネル形成領域
262b 高濃度不純物領域
262c 低濃度不純物領域
3200 リーダ/ライタ
3210 表示部
3220 品物
3230 半導体装置
3240 リーダ/ライタ
3250 半導体装置
3260 商品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャネル形成領域を具備する半導体膜と、
前記半導体膜のチャネル形成領域上に絶縁膜を介して設けられた浮遊ゲートとを有し、
前記浮遊ゲートは、前記半導体膜と仕事関数が異なる材料で設けられ、
前記チャネル形成領域は不純物元素を含み、
書き込み電圧と消去電圧が概略同一であることを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項2】
チャネル形成領域を具備する半導体膜と、
前記半導体膜のチャネル形成領域上に絶縁膜を介して設けられた浮遊ゲートとを有し、
前記浮遊ゲートは、前記半導体膜より仕事関数が高い材料で設けられ、
前記チャネル形成領域はn型の不純物元素を含み、
書き込み電圧と消去電圧が概略一致することを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記半導体膜は、シリコンを主成分とする膜であり、
前記浮遊ゲートは、タングステン、タンタル、チタン、モリブデン、窒化タングステン、窒化タンタル、窒化チタン又は窒化モリブデンのいずれか一であることを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3において、
前記不純物元素は、リンであることを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項5】
同一基板上に設けられた薄膜トランジスタ及びメモリトランジスタを有し、
前記薄膜トランジスタは、
チャネル形成領域を具備する第1の半導体膜と、
前記第1の半導体膜のチャネル形成領域上にゲート絶縁膜を介して設けられた第1のゲート電極とを有し、
前記メモリトランジスタは、
チャネル形成領域を具備する第2の半導体膜と、
前記第2の半導体膜のチャネル形成領域上に第1の絶縁膜を介して設けられた浮遊ゲートと、
前記浮遊ゲート上に第2の絶縁膜を介して設けられた第2のゲート電極とを有し、
前記浮遊ゲートは、前記第2の半導体膜と仕事関数が異なる材料で設けられ、
前記第2の半導体膜のチャネル形成領域は不純物元素を含み、
前記メモリトランジスタの書き込み電圧と消去電圧が概略同一であることを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項6】
同一基板上に設けられた薄膜トランジスタ及びメモリトランジスタを有し、
前記薄膜トランジスタは、
チャネル形成領域を具備する第1の半導体膜と、
前記第1の半導体膜のチャネル形成領域上にゲート絶縁膜を介して設けられた第1のゲート電極とを有し、
前記メモリトランジスタは、
チャネル形成領域を具備する第2の半導体膜と、
前記第2の半導体膜のチャネル形成領域上に第1の絶縁膜を介して設けられた浮遊ゲートと、
前記浮遊ゲート上に第2の絶縁膜を介して設けられた第2のゲート電極とを有し、
前記浮遊ゲートは、前記第2の半導体膜より仕事関数が高い材料で設けられ、
前記第2の半導体膜のチャネル形成領域はn型の不純物元素を含み、
前記メモリトランジスタの書き込み電圧と消去電圧が概略同一であることを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記第1の半導体膜及び前記第2の半導体膜は、シリコンを主成分とする膜であり、
前記浮遊ゲートは、タングステン、タンタル、チタン、モリブデン、窒化タングステン、窒化タンタル、窒化チタン又は窒化モリブデンのいずれか一であることを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7において、
前記不純物元素は、リンであることを特徴とする半導体記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−44063(P2009−44063A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209639(P2007−209639)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】