説明

半導体集積回路

【課題】電源ノイズ耐性の優れた低消費電流の増幅器を提供する。
【解決手段】トランジスタ対(MN1,MN2)を用いて電流/電圧変換容量素子(CL1,CL2)を第1の電源(VSS)レベルにプリチャージする。このプリチャージ完了後、第2の電源から、差動トランジスタ対(MP1,MP2)を介して定電流を入力信号(VIP,VIN)に応じて振り分けて容量素子に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体集積回路に関し、特に、消費電流を低減しつつ電源ノイズの影響を低減する電圧増幅機能を有する半導体集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOS(相補金属−絶縁膜−半導体)プロセスのデジタル集積回路においては、アナログ回路をも集積するアナログ/デジタル混載集積回路が一般に用いられている。このアナログ回路およびデジタル回路間を接続するインターフェイス部として、アナログ/デジタルコンバータ(ADC)が用いられており、そのADCの重要性が増大している。
【0003】
ADCには、逐次比較型、パイプライン型、フラッシュ型、ΔΣ型および二重積分型等さまざまな方式がある。しかしながら、いずれの方式であっても、電圧比較を行なうコンパレータが必要とされる。また、このような半導体集積回路においては、電池を電源として動作し、また安定動作のための発熱の低減などの要因から、コンパレータなどに低消費電流動作が求められる。
【0004】
また、このような半導体集積回路は、車載機器においても広く用いられており、この車載機器における動作環境には、大きな電源ノイズが存在する。したがって、このような車載機器においても正確に動作させるために、電源ノイズ耐性の大きなコンパレータ等の構成部品が、極めて重要となる。
【0005】
低消費電流動作を実現することを意図するコンパレータの一例が、特許文献(特開2001−94425号公報)に示されている。この特許文献1に示されるコンパレータは、入力信号と基準信号とを比較するチョッパ型コンパレータであり、以下の構成を備える。すなわち、特許文献1のコンパレータは、第1および第2の電源の間に直列に接続されるPチャネルMOSトランジスタ(絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)およびNチャネルMOSトランジスタで構成されるリニアアンプを備える。このリニアアンプのPチャネルMOSトランジスタおよびNチャネルMOSトランジスタのゲート(制御電極)に、それぞれ異なるゲートバイアス電圧を印加する。これらのリニアアンプのPおよびNチャネルMOSトランジスタのゲートと入力端子のとの間には、それぞれ第1および第2の容量素子が配置される。このトランジスタのゲートにバイアス電圧で印加した状態で、基準電圧を容量素子に印加し、容量素子を、この基準電圧よりプリチャージする。この後、ゲートバイアス電圧および基準電圧の供給を停止した後、入力信号を、これらの第1および第2の容量素子に伝達する。リニアアンプのPおよびNチャネルMOSトランジスタのゲート電位は、入力電圧と基準電圧の差に応じた電圧レベルとなり、この差電圧に応じてリニアアンプの出力電圧を生成する。
【0006】
この特許文献1においては、リニアアンプのトランジスタのゲート電位をそれぞれ異なるバイアス電圧により設定し、第1および第2の容量素子のプリチャージ時のリニアアンプのPおよびNチャネルMOSトランジスタを流れる貫通電流量を低減して消費電流の低減を図る。また、その増幅動作時においては、入力信号と基準電圧の差分に応じて出力信号を生成しており、この1段のチョッパ型コンパレータの出力電圧振幅が小さくなる。この特許文献1においては、この出力電圧振幅の小さいことを補償するため、このチョッパ型コンパレータの出力電圧を容量結合によりさらに増幅する第2のチョッパ型コンパレータを設ける構成を示している。この第2のチョッパ型コンパレータは、プリチャージ時、その入出力が短絡され、増幅動作時、入力段の容量素子を介して第1段のチョッパ型コンパレータの出力電圧を受けて増幅する。
【0007】
また、低消費電流動作を実現することを図る別の構成のコンパレータが、特許文献2(特開平10−107600号公報)に示されている。この特許文献2に示されるコンパレータは、差動入力電圧と差動入力基準電圧とを受け、これらの入力電圧の電圧レベルを比較照合する全差動チョッパ型比較手段と、全差動チョッパ型比較手段から出力される差動出力を容量結合を介して受ける全差動型増幅手段とを備える。このコンパレータは、リセット動作期間および比較動作期間を有しており、全差動型増幅手段は、比較動作期間においてオフセット補償された出力ラッチ手段として動作し、差動デジタル電圧を生成して出力する。
【0008】
特許文献2は、全差動チョッパ型比較器の正相入力端子および逆相入力端子をそれぞれ正相出力端子および逆相出力端子に接続することにより、このコンパレータ回路の素子数を低減するとともに、比較動作期間において全差動型増幅手段における貫通電流量を抑制して、このコンパレータ回路全体の消費電力を低減することを図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−94425号公報
【特許文献2】特開平10−107600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の特許文献1に示されるコンパレータの構成においては、入力信号および基準電圧が、それぞれ容量素子を介して出力段のリニアアンプのMOSトランジスタのゲートに伝達される。この容量結合により、差分信号を生成している。しかしながら、相補的に動作するトランジスタで構成する差動段で、入力信号と基準電圧を受ける構成と異なっており、基準電圧および入力信号伝搬経路における寄生容量などの影響により、高精度で入力信号と基準電圧とを比較することができなくなるという問題が生じる。また、増幅動作中においては、リニアアンプのMOSトランジスタのゲートに、入力信号と基準電圧の差分信号が与えられており、これがMOSトランジスタとともに導通し、ハイ側電源ノードからロー側電源ノードに貫通電流が流れ、消費電流が増大するという問題が生じる。
【0011】
また、このリニアアンプのトランジスタには、同じ入力電圧と基準電圧の差分信号が与えられており、単相(シングルエント)の信号でリニアアンプが駆動されるのと等価であり、この増幅動作期間中に、ハイ側電源ノードおよびロー側電源ノードに電源ノイズが発生した場合、この電源ノイズを相殺することができず、出力電圧に電源ノイズの影響が現れるという問題が生じる。
【0012】
また、特許文献2に示される構成においては、入力部の全差動チョッパ型比較手段においては、差動入力電圧および差動入力基準電圧が与えられており、入力部が差動構成となっている。したがって、この差動対により、電源ノイズの影響を低減することは可能である。しかしながら、増幅時には、ハイ側電源およびロー側電源間の電圧を用いて増幅するため、この電源ノイズの影響の度合いは、差動対のトランジスタの電源ノイズの除去能力に依存する。しかしながら、実際に、MOSトランジスタにおいては製造ばらつきが存在し、差動トランジスタにおいてオフセット電圧が存在し、差動対に対し、高い電源ノイズ除去能力を期待するのは困難であり、確実に、電源ノイズを除去することはできないという問題が生じる。
【0013】
また、この特許文献2に示される構成においては、出力段の全差動型増幅手段においては、差動段において常時電流が供給され、また全差動チョッパ型比較手段の出力が、ダイオード接続されるトランジスタのゲートへ与えられており、この経路においても常時電流が流れ、定量的に電流が消費され、消費電流を低減するのは困難であるという問題が生じる。
【0014】
それゆえ、この発明の目的は、電源ノイズ耐性に優れた低消費電流で増幅動作を行なう半導体集積回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明に係る半導体集積回路は、第1および第2の入力電圧を受け、差動的に増幅して出力する増幅回路を少なくとも1段備える。この増幅回路は、第1および第2の入力電圧をそれぞれの制御電極に受ける1対の差動トランジスタと、この1対の差動トランジスタと第1の電源との間に結合される定電流段とを含む。この定電流段は、第1の制御信号に応答して導通して1対の差動トランジスタと第1の電源との間に一定の電流を流す。
【0016】
この増幅回路は、さらに、1対の差動トランジスタそれぞれに電気的に接続される1対の容量素子と、この1対の容量素子と第2の電源との間に結合される1対のプリチャージトランジスタとを備える。1対の容量素子は、それぞれが、1対の差動トランジスタの対応トランジスタを流れる電流量に応じて充電または放電される。また、1対のプリチャージトランジスタは、第2の制御信号に応答して1対の容量素子の差動トランジスタに電気的に結合される電極を第2の電源に電気的に結合する。
【発明の効果】
【0017】
増幅動作は、定電流段が結合される第1の電源の電圧を用いて行なわれ、第2の電源の電圧は利用されない。したがって、第1および第2の電源の電圧の一方の電圧を用いているだけであり、第1および第2の電源間にノイズが生じても、そのノイズの影響を抑制することができ、電源ノイズ耐性を高くすることができる。
【0018】
また、第1および第2の容量素子のプリチャージ電圧を第1および第2の電源電圧を利用して定電流段により放電しているだけであり、消費電流は十分に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施の形態1に従う電荷放電型増幅器の構成を示す図である。
【図2】図1に示す増幅器の動作を示すタイミング図である。
【図3】この発明の実施の形態2に従う電荷放電型増幅器の構成を示す図である。
【図4】図3に示す増幅器の動作を示すタイミング図である。
【図5】この発明の実施の形態3に従う増幅器の構成を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態3の変更例の増幅器の構成を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態4に従う半導体集積回路の構成を概略的に示す図である。
【図8】図7に示す半導体集積回路(コンパレータ)の動作を示すタイミング図である。
【図9】図7に示すラッチの構成の一例を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態5に従う半導体集積回路(コンパレータ)の構成を概略的に示す図である。
【図11】図10に示すコンパレータの動作を示すタイミング図である。
【図12】この発明の実施の形態6に従う半導体集積回路(逐次比較ADC)の構成を概略的に示す図である。
【図13】図12に示すADCの変換動作を示すフロー図である。
【図14】図12に示すADCの変換動作を示すタイミング図である。
【図15】この発明の実施の形態6の変更例のADCの容量アレイの容量素子の接続態様を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1に従う半導体集積回路に含まれる増幅器の構成を示す図である。この図1に示す増幅器は、電荷放電型増幅器の構成を有し、容量素子の充放電により、差動入力信号の増幅結果を生成する。
【0021】
図1において、増幅器は、入力信号VIPおよびVINをそれぞれのゲート(制御電極)に受けるPチャネルMOSトランジスタ(絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)MP1およびMP2と、制御信号(第1の制御信号)ZVP0に従って、これらのMOSトランジスタMP1およびMP2の共通ソースノード2に一定の電流Ibを供給する定電流段4と、各々の第1電極がハイ側電源ノード(VDD)に結合される電流/電圧変換用容量素子CL1およびCL2と、プリチャージ制御信号(第2の制御信号)VP1に従って容量素子CL1およびCL2を充電するNチャネルMOSトランジスタMN1およびMN2を含む。
【0022】
定電流段4は、ハイ側電源ノード(以下、単に電源ノードと称す)VDDと共通ソースノード2の間に直列に接続されるPチャネルMOSトランジスタMPC1およびMPC2と、MOSトランジスタMPC1とカレントミラー段を構成するPチャネルMOSトランジスタMPC3を含む。MOSトランジスタMPC2のゲートに、比較制御信号ZVP0が与えられる。MOSトランジスタMPC3は、ゲートおよびドレインが相互接続され、カレントミラー段のマスタとして動作し、動作時、MOSトランジスタMPC1には、MOSトランジスタMPC3を流れる電流Ibのミラー電流Ib1が流れる。MOSトランジスタMPC1およびMPC3のサイズ(チャネル幅Wとチャネル長Lの比、W/L)が等しい場合には、MOSトランジスタMPC1およびMPC3には、同じ大きさの電流Ibが流れる。MOSトランジスタMPC3のドレインノードは、図示しない定電流駆動部に結合される。この定電流駆動部の構成は、定電流Ibを吸収する回路であれば任意である。消費電流低減化のためには、この定電流駆動部が、比較動作時においてのみ定電流Ibを供給する構成が用いられればよい。
【0023】
容量素子CL1およびCL2は、それぞれの第1電極が電源ノードVDDに結合され、各々の第2電極が、それぞれ、出力ノード1aおよび1bに結合される。MOSトランジスタMP1およびMP2のドレインノードは、それぞれ、出力ノード1aおよび1bに電気的に接続され、入力信号VIPおよびVINに応じて電流を供給する。
【0024】
MOSトランジスタMN1およびMN2は、出力ノード1aおよび1bとロー側電源ノード(以下、接地ノードと称す)VSSの間にそれぞれ接続され、プリチャージ制御信号VP1に従って出力ノード1aおよび1bを接地ノードへ電気的に結合し、出力ノード1aおよび1bをロー側電源電圧(以下、接地電圧と称す)VSSにプリチャージする。
【0025】
これらの出力ノード1aおよび1bに、出力電圧VOPおよびVONがそれぞれ生成される。
【0026】
図2は、図1に示す増幅器の動作を示すタイミング図である。以下、図2を参照して、図1に示す増幅器の動作について説明する。
【0027】
時刻t0においてプリチャージ制御信号VP1がHレベルになると、MOSトランジスタMN1およびMN2が導通状態となる。このとき、比較増幅制御信号ZVP0がHレベルであり、MOSトランジスタMPC2が非導通状態であり、定電流段4は、出力ハイインピーダンス状態にある。
【0028】
したがって、出力ノード1aおよび1bが、接地電圧VSSレベルに駆動され、容量素子CL1およびCL2の第1電極および第2電極(対向電極)がそれぞれ電源電圧VDDおよび接地電圧VSSに設定される。
【0029】
時刻t0から時刻t1の間の期間PR1において、プリチャージ制御信号VP1がHレベルであり、電源ノードVDD(電源ノードとその電圧を同一符号で示す)から容量素子CL1およびCL2に電流が供給され、電流が消費される。このプリチャージ期間PR1において、先の増幅サイクルにおける出力ノード1aおよび1bの電圧VOPおよびVONが、それぞれ接地電圧VSSレベルにプリチャージされる。
【0030】
プリチャージ制御信号VP1がLレベルとなり、MOSトランジスタMN1およびMN2がともに非導通状態となると、時刻t1において、比較増幅制御信号ZVP0がLレベルに立下がる。応じて、定電流段4のMOSトランジスタMPC2が導通し、定電流Ibのミラー電流Ib1がMOSトランジスタMP1およびMP2の共通ソースノード2へ与えられる。
【0031】
これらのMOSトランジスタMP1およびMP2は、それぞれゲートに入力信号VIPおよびVINを受けており、定電流段4から供給される電流Ib1が、MOSトランジスタMP1およびMP2に振り分けられた後、出力ノード1aおよび1bに供給され、この出力ノード1aおよび1bの出力電圧VOPおよびVONの電圧レベルが上昇する。
【0032】
MOSトランジスタMP1およびMP2それぞれから供給される電流量は、入力信号VIPおよびVINの電圧レベルに応じて異なる。入力信号VIPが入力信号VINよりも低いときには、MOSトランジスタMP1を介して流れる電流量が、MOSトランジスタMP2を介して流れる電流量よりも多くなり、出力電圧VOPの電圧レベルは、出力電圧VONの電圧レベルよりも高くなる。逆に、入力信号VIPが入力信号VINよりも高い場合には、MOSトランジスタMP2を介して流れる電流がMOSトランジスタMP1を介して流れる電流量よりも多くなり、出力電圧VONの電圧レベルが出力電圧VOPよりも高くなる。このMOSトランジスタMP1およびMP2により、入力信号VIPおよびVINの電圧レベルの差に応じて、電流が出力ノード1aおよび1bに流れ、容量素子CL1およびCL2の蓄積電荷により電圧信号に変換される。この場合、出力ノード1aおよび1bに正電荷が充電される(負電荷が放電される)。
【0033】
出力電圧VOPおよびVONの電圧差が十分に拡大されると、時刻t2において比較増幅制御信号ZVP0がHレベルとなり、定電流段4においてMOSトランジスタMPC2が非導通状態となり、定電流Ib1の供給が停止される。この出力電圧VOPおよびVONの差動出力電圧信号に対して、図示しない次段回路において必要な処理が行なわれ、入力信号VIPおよびVINに応じた最終出力電圧が生成される。
【0034】
時刻t0から時刻t3の間のプリチャージ、比較(充電)期間PR1およびPR2およびその後の保持期間が1つの増幅動作の周期となる。
【0035】
容量Cと蓄積電荷Qの関係、Q=C・Vから、出力電圧VOPおよびVONは、次式で表わされる:
VOP=(CL1に充電された正電荷量)/C1、
VON=(CL2に充電された正電荷量)/C2
ここで、C1およびC2は容量素子CL1およびCL2の容量値を示し、充電電荷は、正電荷であり、出力ノード1aおよび1bに供給される電流量が多ければ、この正電荷の充電量が大きくなり、その電圧レベルが高くなる。
【0036】
この図1に示す増幅器の構成において、期間PR2においては、定電流段4を介して電流Ib1が出力ノード1aおよび1bに分散して供給され、この間、接地電圧VSSは何ら使用されない(MOSトランジスタMN1およびMN2が非導通状態のため)。したがって、電源VDDおよびVSS間にノイズが発生しても、片側の電源電圧VDDのみが利用されるため、この電源ノイズの影響は出力ノード1aおよび1bの電圧VOPおよびVONの増幅動作には影響を及ぼさず、電源ノイズ耐性を高くすることができる。
【0037】
また、プリチャージ期間PR1においては、容量素子CL1およびCL2各々の対向電極(第1および第2電極)は、それぞれ電源電圧VDDおよび接地電圧VSSレベルまで充放電されるだけであり、プリチャージ期間中の電源ノイズが発生しても、出力ノード1aおよび1bの電圧VOPおよびVONに同じ電源ノイズの影響が現れ、増幅動作期間PR2においては、そのノイズの影響は相殺されるため、増幅結果に対して、この電源ノイズは何ら影響を及ぼさない。
【0038】
なお、プリチャージ期間PR1において、出力ノード1aおよび1bから放電される正電荷量については、比較増幅期間PR2において定電流段4から供給される電流Ib1により供給される電荷量とほぼ同じである。この比較増幅期間PR2においては、定電流段4の電源ノードVDDから定電流Ibのミラー電流Ib1(=Ib)が、出力ノード1aおよび1bに入力信号VIPおよびVINに応じて分離して供給される。したがって、この比較増幅期間PR2においては、電流Ib1は、図2に示すように、ほぼ一定の値に維持される。ここで、出力ノード1aおよび1bの電圧VOPおよびVONのレベルの上昇に応じて、容量素子CL1およびCL2の第1電極から電源ノードVDDに正電荷が放電され、この第1電極の電圧は、電源電圧VDDに維持される。
【0039】
入力電圧VIPおよびVINの範囲は、0V(ボルト)から(VDD−Odv+Vthp)Vである。ここで、Odvは、オーバードライブ電圧であり、MOSトランジスタMP1およびMP2を正常に動作させるために必要とされるドレイン−ソース電圧の最小値である。また、Vthpは、MOSトランジスタMP1およびMP2のしきい値電圧を示し、負の値である。
【0040】
なお、定電流段4においては、MOSトランジスタMPC1−MPC3が用いられている。しかしながら、この定電流段4は、カレントミラー段の構成ではなく、単に、所定のタイミングで、定電流Ib1を、MOSトランジスタMP1およびMP2へ供給する構成であれば任意の構成を利用することができる。また、電流を制御するMOSトランジスタMPC2としては、相補スイッチなどの他の素子を用いてもよい。また、MOSトランジスタMN1およびMN2に対しても、相補スイッチ(CMOSトランスミッションゲート)などの素子が用いられてもよい。
【0041】
以上のように、この発明の実施の形態1に従えば、第1および第2の入力信号を差動トランジスタで受け、容量素子のプリチャージノードへ、この差動入力信号の電圧差に応じた電流を第1電源から供給し、容量素子を用いて電流/電圧変換を行なって出力電圧を生成している。したがって、増幅動作時においては、一方の電源(ハイ側電源電圧)のみが使用されており、電源ノイズ耐性を改善することができる。また、プリチャージ動作時には、ロー側電源ノードへ正電荷が放電されるだけであり、その放電電荷量は、比較増幅動作時の供給電流量と同じであり、消費電流は十分に抑制することができる。また、比較増幅動作時において、出力電圧VOPおよびVONの電圧レベルの上昇に応じて、正電荷が電源ノードに放電され、容量素子CL1およびCL2の電源ノードに接続される電極(第1電極)の電圧レベルは電源電圧VDDに維持される。この容量素子CL1およびCL2を介して電源ノードVDDに放電される正電荷量により、定電流段4から電源ノードから供給される正電荷量が補償され、消費電流を低減することができる。
【0042】
[実施の形態2]
図3は、この発明の実施の形態2に従う電荷放電型増幅器の構成を示す図である。この図3に示す増幅器は、図1に示す実施の形態1に従う電荷放電型増幅器のPチャネルMOSトランジスタおよびNチャネルMOSトランジスタを、それぞれNチャネルMOSトランジスタおよびPチャネルMOSトランジスタで置換えた構成と等価である。
【0043】
図3において、増幅器は、入力信号VIPおよびVINをそれぞれのゲートに受けるNチャネルMOSトランジスタMN3およびMN4と、MOSトランジスタMN3およびMN4の共通ソースノード14と接地ノードの間で、プリチャージ制御信号VP0に従って一定の電流を流す定電流段10と、MOSトランジスタMN3およびMN4の放電電流を電圧に変換する容量素子CL3およびCL4と、比較増幅制御信号ZVP1に従って容量素子CL3およびCL4の第2電極ノード(出力ノード1a、1b)を電源電圧VDDレベルにプリチャージするPチャネルMOSトランジスタMP3およびMP4を含む。MOSトランジスタMN3およびMN4は、それぞれ、出力ノード1bおよび1aを、入力信号VIPおよびVINに従って放電する。
【0044】
定電流段10は、共通ソースノード14と接地ノードとの間に直列に接続されるNチャネルMOSトランジスタMNC2およびMNC1と、定電流Ibを流すNチャネルMOSトランジスタMNC3を含む。NチャネルMOSトランジスタMNC2のゲートに、比較増幅制御信号VP0が与えられる。MOSトランジスタMNC1およびMNC3は、それぞれのゲートが相互接続され、かつMOSトランジスタMNC3は、ゲートおよびドレインが相互接続される。したがって、MOSトランジスタMNC3およびMNC1はカレントミラー段を構成し、動作時、MOSトランジスタMNC1には、MNC3を流れる定電流Ibのミラー電流Ib1が流れる。定電流Ibは、図示しない定電流供給部から与えられる。
【0045】
図4は、図3に示す増幅器の動作を示すタイミング図である。以下、図4を参照して、図3に示す増幅器の動作について説明する。
【0046】
時刻t10において1つのサイクルが始まると、プリチャージ制御信号ZVP1がLレベルに立下がり、MOSトランジスタMP3およびMP4が導通状態となる。このとき、比較増幅制御信号VP0はLレベルであり、MOSトランジスタMNC2は非導通状態であり、MOSトランジスタMN3およびMN4の放電経路は遮断される。したがって、容量素子CL3およびCL4の第2電極(出力ノード1aおよび1b)が、MOSトランジスタMP3およびMP4を介して電源電圧VDDレベルにまで充電される。プリチャージ動作が完了すると、プリチャージ制御信号ZVP1がHレベルとなり、MOSトランジスタMP3およびMP4が非導通状態とされ、出力ノード1aおよび1bを介して容量素子CL3およびCL4のプリチャージ動作が停止し、出力ノード1aおよび1bは電源電圧レベルに維持される。
【0047】
次いで、時刻t11において、比較増幅制御信号VP0がHレベルに立上がり、MOSトランジスタMNC2が導通状態となり、共通ソースノード14と接地ノードの間に定電流Ib1(=Ib)が流れる。この定電流Ib1は、入力信号VIPおよびVINの電圧レベルに従って、MOSトランジスタMN3およびMN4に振り分けられる。これらのMOSトランジスタMN3およびMN4により、容量素子CL4およびCL3の充電電荷が放電され、出力ノード1bおよび1aの電圧レベルは、入力信号VIPおよびVINに従って低下する。図4においては、入力信号VIPよりも入力信号VINが高い電圧レベルであり、出力ノード1aの出力電圧VOPの放電量は、出力ノード1bの出力電圧VONの放電量よりも小さい状態が、一例として示される。
【0048】
入力信号VIPおよびVINに従って、出力電圧VONおよびVOPの電圧レベルが確定すると、時刻t12において比較増幅制御信号VP0がLレベルとなり、MOSトランジスタMNC2が非導通状態となり、定電流段10の定電流駆動動作が停止される。これにより、出力ノード1aおよび1bの出力電圧VOPおよびVONは、それぞれ、入力信号VINおよびVIPに応じた電圧レベルに設定される。この場合、出力電圧VOPおよびVONは、容量素子CL3およびCL4の容量値をC3およびC4として表わすと次式で表わされる。
【0049】
VOP=VDD−(CL3から放電された正電荷量)/C3、
VON=VDD−(CL4から放電された正電荷量)/C4
入力信号VIPおよびVINの電圧範囲は、(Odvn+Vthn)VからVDDである。ここで、Odvnは、MOSトランジスタMN3およびMN4のオーバードライブ電圧を示し、Vthnは、MOSトランジスタMN3およびMN4のしきい値電圧を示す。
【0050】
この図3に示す増幅器においても、プリチャージ期間PR1に電源ノードVDDから容量素子CL3およびCL4に供給される電荷量は、比較増幅期間PR2において、接地ノードへ定電流段10を介して電流Ibが流れることにより放電される電荷量とほぼ同じである(プリチャージ期間は前のサイクルにおける出力ノードの電圧を電源電圧レベルに充電するだけである)。比較増幅期間PR2においては、一定の電流Ib1が、容量素子CL3およびCL4の蓄積電荷に応じて放電される。
【0051】
この図3に示す増幅器においては、比較増幅期間PR2においては、電源ノードから分離した状態で、接地ノードVSSに対し放電を行なって、増幅および出力電圧生成を行なっている。したがって、電源電圧VDDの電圧変化の影響を受けにくく、電源ノイズに対する耐性を大きくすることができる。
【0052】
この図3に示す増幅器において、定電流段10としては、一定の電流Ib1を、比較増幅動作時、MOSトランジスタMN3およびMN4に流すことのできる構成であれば任意の構成を利用することができる。また、MOSトランジスタMP3、MP4、MNC2は、相補スイッチなどを用いて構成してもよい。
【0053】
この図3に示す増幅器は、接地電圧VSSを比較増幅動作時に主として用いて出力電圧の生成を行なため、電源電圧VDDの電圧変化の影響は受けにくい。したがって、図1に示す実施の形態1に従う増幅器とこの図3に示す増幅器の使い分けは、一例として、以下のように行なう。すなわち、電源電圧VDDの変動が少ない場合には、接地電圧にノイズが発生する可能性が高く、実施の形態1に示される増幅器を利用し、接地電圧VSSの変動が小さい場合には、電源電圧にノイズが発生する可能性が高く、図3に示す実施の形態2に従う増幅器を用いる。この使い分けにより、電源ノイズの影響を低減することができる。
【0054】
以上のように、この発明の実施の形態2に従えば、容量素子をプリチャージした後、この容量素子の充電電荷を放電している。したがって、比較増幅動作時、すなわち容量素子のプリチャージ電荷の放電動作時においては、ロー側電源電圧(接地電圧)を利用するだけであり、電源電圧VDDの電圧変化の影響が少なく、電源ノイズに対する耐性を大きくすることができる。また、プリチャージ時においては、電源ノードからは、先のサイクルで放電された電荷量を補償する電流が供給されるだけであり、消費電流を低減することができる。
【0055】
[実施の形態3]
図5は、この発明の実施の形態3に従う増幅器の構成を示す図である。図5に示す増幅器は、増幅器本体20と、増幅器本体20の比較増幅動作時の充電電流を制御するバイアス回路25を含む。この増幅器本体20の構成は、PチャネルMOSトランジスタMPC1を除いて図1に示す増幅器の構成と同じであり、対応する部分には同一参照番号を付し、その詳細説明は省略する。このPチャネルMOSトランジスタMPC1およびバイアス回路25により、定電流段が構成される。PチャネルMOSトランジスタMPC1は、MOSトランジスタMP1およびMP2の共通ソースノード2と電源ノードVDDの間に接続される。
【0056】
バイアス回路25は、MOSトランジスタMPC1とカレントミラー段を構成するPチャネルMOSトランジスタPMC3と、MOSトランジスタMPC1およびMPC3のゲートと電源ノードVDDの間に接続され、ゲートに比較増幅制御信号ZVP0を受けるPチャネルMOSトランジスタMPC4と、PチャネルMOSトランジスタMPC3と図示しない定電流駆動部との間に接続され、そのゲートに比較増幅制御信号ZVP0を受けるNチャネルMOSトランジスタMNC4を含む。
【0057】
この図5に示すバイアス回路25の構成において、プリチャージ期間PR1においては、比較増幅制御信号VP0はLレベルであり、MOSトランジスタMPC4が導通状態、MOSトランジスタMNC4が非導通状態である。したがって、MOSトランジスタMPC3のゲートが電源ノードに結合され、これらのMOSトランジスタMPC1およびMPC3は非導通状態に維持され、MOSトランジスタMP1およびMP2への定電流供給は停止される。
【0058】
一方、比較増幅期間において、比較増幅制御信号VP0がHレベルとされると、MOSトランジスタMPC4が非導通状態となり、またMOSトランジスタMNC4がオン状態となる。したがって、定電流IbがMOSトランジスタMPC3およびMNC4を流れ、この定電流Ibのミラー電流が、MOSトランジスタMPC1を介して流れる。
【0059】
この増幅器本体20の増幅動作は、実施の形態1の増幅器の動作と同様であり、その詳細説明は繰返さない。
【0060】
この実施の形態3の構成の場合、比較増幅動作期間中においてのみ、MOSトランジスタMPC1を介して比較増幅電流が電源ノードVDDから供給される。MOSトランジスタMP1およびMP2の共通ソースノード2と電源ノードとの間には、1つのMOSトランジスタMPC1が接続されるだけであり、電源ノードVDDと共通ソースノード2の間に直列に接続されるMOSトランジスタの数を低減することができる。これにより、図1に示す実施の形態1に従う増幅回路におけるMOSトランジスタMPC2における電圧降下を削減することができ、電源電圧VDDが低下しても、確実に、MOSトランジスタMPC1を導通状態に維持して定電流を共通ソースノード2に供給することができ、低電源電圧下においても、安定に増幅動作を行なうことができる。
【0061】
なお、この図5に示す増幅器において、入力信号VIPおよびVINの電圧範囲は、0Vから(VDD−Odv+Vthp)Vである。
【0062】
[変更例]
図6は、この発明の実施の形態3の変更例の構成を示す図である。図6において、増幅器は、増幅器本体30と、増幅器本体30の比較増幅動作時の電流を制御するバイアス回路35とを含む。増幅器本体30のMOSトランジスタMNC1を除いた構成は、図3に示す増幅器の構成と同じであり、対応する部分には同一参照符号を付して、その詳細説明は省略する。MOSトランジスタMNC1は、MOSトランジスタMN3およびMN4の共通ソースノード14と接地ノードVSSとの間に接続される。
【0063】
バイアス回路35は、MOSトランジスタMNC1とカレントミラー段を構成するNチャネルMOSトランジスタMNC5と、このMOSトランジスタMNC5と図示しない定電流供給部との間に直列に接続されるPチャネルMOSトランジスタMPC4と、比較増幅制御信号ZVP0に従って、MOSトランジスタMNC1およびMNC5のゲートを接地ノードに結合するNチャネルMOSトランジスタMNC6とを含む。
【0064】
MOSトランジスタMNC5は、ゲートおよびドレインが相互接続され、動作時、MOSトランジスタMNC5を流れる電流のミラー電流がMOSトランジスタMNC1を介して流れる。
【0065】
プリチャージ動作期間時においては、比較増幅制御信号ZVP0がHレベルであり、MOSトランジスタMNC6が導通状態、MOSトランジスタMPC4が非導通状態である。従って、MOSトランジスタMPC4、MNC5およびMNC6は、全て非導通状態となり、定電流駆動動作が停止される。このとき、増幅器本体30において、MOSトランジスタMP3およびMP4のプリチャージ制御信号ZVP1がLレベルであり、出力ノード1aおよび1bが、電源電圧レベルにプリチャージされる。
【0066】
比較増幅動作時においては、比較増幅制御信号ZVP0がLレベル、プリチャージ制御信号ZVP1がHレベルとなる。この状態においては、MOSトランジスタMPC4、MNC5およびMNC6により共通ソースノード14と接地ノードとの間に定電流Ibのミラー電流が流れ、出力ノード1aおよび1bが放電され、出力ノード1aおよび1bの出力電圧VOPおよびVONが、入力信号VIPおよびVINに応じた電圧レベルに設定される。
【0067】
この図6に示す増幅器の構成は、図5に示す増幅器のMOSトランジスタの導電型を逆にし、また、電源ノードの電圧極性を逆にしたものと同じであり、図5に示す増幅器と同様の効果を得ることができる。この場合、入力信号VIPおよびVINの電圧範囲は、(Odvn+Vthn)VからVDDに設定することができる。
【0068】
以上のように、この発明の実施の形態3に従えば、増幅器の比較増幅動作時の定電流を供給するトランジスタを、カレントミラー段で構成し、比較増幅制御信号に従ってカレントミラー動作を選択的に活性化している。したがって、共通ソースノードと電源ノードまたは接地ノードの間のトランジスタの数を低減でき、低電源電圧下においても確実に比較増幅動作を行なうことができる。また、実施の形態1および2と同様の効果を得ることができる。
【0069】
[実施の形態4]
図7は、この発明の実施の形態4に従う半導体集積回路の構成を概略的に示す図である。図7に示す半導体集積回路は、増幅器50と、増幅器50の出力電圧VOPおよびVONをラッチ制御信号VLTに従ってラッチするラッチ60を含む。この増幅器50としては、先の図1、図3、図5および図6に示される増幅器のいずれが用いられてもよい。この増幅器50は、電荷放電動作により入力信号VIPおよびVINを差動増幅して、出力電圧VOPおよびVONを生成する。ラッチ60が、ラッチ制御信号VLTに従って増幅器50の出力信号をラッチして出力信号DOUTを生成する。このラッチ60の出力信号は、相補信号VOUTPおよびVOUTNであってもよい。
【0070】
このラッチ60の出力信号DOUT(または、VOUTPVOUTVOUTN)により、入力信号VIPおよびVINの大小比較結果を示すことができ、増幅器50およびラッチ60により、入力信号を比較するコンパレータを構成することができる。
【0071】
図8は、図7に示すコンパレータの動作タイミングを示す図である。図7および図8においては、プリチャージ制御信号VPC1および比較増幅制御信号VPC0を示す。これらの制御信号VPC1およびVPC0は、それぞれ、実施の形態1から3において示した制御信号に対応する。
【0072】
図8に示すように、期間PR1においてプリチャージ制御信号VPC1を活性化し、増幅器50において内部ノードをプリチャージする。次いで、プリチャージ完了後、時刻t21から始まる期間PR2において比較増幅制御信号VPC0を活性化し、増幅器50において入力信号VIPおよびVINに従って内部電荷の放電(充電)を行ない、出力電圧信号VOPおよびVONを生成する。
【0073】
この増幅器50における比較増幅動作完了後、時刻t22においてラッチ制御信号VLTを活性化し、期間PR3において、ラッチ60に、増幅器50の出力電圧信号VOPおよびVONをラッチさせ、判定結果を示す信号DOUT(VOUTP,VOUTN)を生成する。
【0074】
すなわち、増幅器50における比較増幅動作完了後にラッチ制御信号VLTを活性状態に駆動することにより、増幅器50の増幅信号を確実にラッチして、正確な電圧比較結果をCMSレベルの信号として得ることができる。
【0075】
図9は、図7に示すラッチ60の構成の一例を示す図である。図9において、ラッチ60は、増幅器50の出力信号VOPおよびVONを増幅してラッチするラッチ型センス増幅器70と、このラッチ型センス増幅器70の出力信号をバッファ処理するバッファ回路75と、バッファ回路75の出力信号をラッチして、判定結果信号DOUTとして、相補出力信号VOUTPおよびVOUTNを生成するセット/リセットフリップフロップ(RSフリップフロップ)80とを含む。
【0076】
ラッチ型センス増幅器70は、入力用NチャネルMOSトランジスタMN11およびMN12と、これらのMOSトランジスタMN11およびMN12それぞれと並列に接続される正帰還用NチャネルMOSトランジスタMN13およびMN14と、ラッチ動作制御用NチャネルMOSトランジスタMN15およびMN16と、内部ノードのプリチャージ制御用のPチャネルMOSトランジスタMP11およびMP12と、これらのMOSトランジスタMP11およびMP12とそれぞれ並列に接続される正帰還用のPチャネルMOSトランジスタMP13およびMP14を含む。
【0077】
MOSトランジスタMN11およびMN13は、内部ノード72aと接地ノードの間に並列に接続され、MOSトランジスタMN12およびMN14は、内部ノード72bと接地ノードの間に並列に接続される。MOSトランジスタMN11およびMN12はそれぞれのゲートに増幅器50の出力信号VOPおよびVONを受け、MOSトランジスタMN13およびMN14は、それぞれのゲートが、内部ノード72bおよび72aに電気的に接続される。
【0078】
MOSトランジスタMP11およびMP13は、電源ノードと内部ノード74aの間に互いに並列に接続され、MOSトランジスタMP12およびMP14が電源ノードと内部ノード74bの間に互いに並列に接続される。MOSトランジスタMP11およびMP12はそれぞれのゲートにラッチ制御信号VLTを受け、MOSトランジスタMP13およびMP14は、それぞれのゲートが内部ノード74bおよび74aに接続される。
【0079】
MOSトランジスタMN15および内部ノード72aおよび74aの間に接続され、そのゲートにラッチ制御信号VLTを受ける。MOSトランジスタMN16は、内部ノード72bおよび74bの間に接続され、そのゲートにラッチ制御信号VLTを受ける。
【0080】
バッファ回路75は、ラッチ型センス増幅器70の内部ノード74a上の信号を受ける複数段(本実施例においては3段)の縦続接続されるインバータバッファIV1−IV3と、内部ノード74b上の信号を受ける複数段(本実施例では3段)の縦続接続されるインバータバッファIV4−IV6を含む。
【0081】
RSフリップフロップ80は、インバータバッファIV3およびIV6の出力信号をそれぞれの第1入力に受けるNANDゲートG1およびG2を含む。NANDゲートG1の出力ノードがNANDゲートG2の第2入力に結合され、NANDゲートG2の出力ノードがNANDゲートG1の第2入力ノードに結合される。NANDゲートG1およびG2から出力信号VOUTPおよびVOUTNが判定結果データDOUTとして出力される。
【0082】
次に、図9に示すラッチ回路の動作について説明する。ラッチ制御信号VLTが非活性状態のLレベルのときには、MOSトランジスタMP11およびMP12が導通状態であり、またMOSトランジスタMN15およびMN16が非導通状態である。したがって、内部ノード74aおよび74bが、MOSトランジスタMP11およびMP12により電源電圧VDDレベルに維持される。一方、内部ノード72aおよび72bは、内部ノード74aおよび74bと分離されており、MOSトランジスタMN13およびMN14の出力である内部ノード72aおよび72bではLレベルとなる。
【0083】
内部ノード74aおよび74bが電源電圧レベルであり、バッファ回路75のインバータバッファIV3およびIV6の出力信号はLレベルであり、RSフリップフロップ80の出力信号VOUTPおよびVOUTNはともにHレベル(電源電圧VDDレベル)に維持される。
【0084】
次いで、前段の増幅器50における比較増幅動作が完了すると、ラッチ制御信号VLTがHレベルに設定される(活性化される)。応じて、MOSトランジスタMP11およびMP12が非導通状態、MOSトランジスタMN15およびMN16が導通状態となり、内部ノード74aおよび72aが電気的に接続され、また、内部ノード74bおよび72bが電気的に接続される。このときには、増幅器50の出力電圧信号VOPおよびVONは確定状態にあり、MOSトランジスタMN11およびMN12のコンダクタンスが、これらの出力電圧信号VOPおよびVONに応じた値に設定される。
【0085】
今、電圧信号VOPが電圧信号VONよりも高い状態を考える。この状態においては、MOSトランジスタMN11のコンダクタンスがMOSトランジスタMN12のコンダクタンスより大きく、内部ノード72aおよび74aの電位が、内部ノード72bおよび74bの電位よりも早く低下する。内部ノード72aの電位が低下するとMOSトランジスタMN14のコンダクタンスが低下し、内部ノード72bの電位低下速度がより低減され、一方、MOSトランジスタMN13は、内部ノード72bの電位に応じて内部ノード72aを放電する。
【0086】
内部ノード72aおよび72bの電位は、内部ノード74aおよび74bの電位に反映され、内部ノード74aの電位低下に応じてMOSトランジスタMP14のコンダクタンスが増大し、内部ノード74bの電位を上昇させ、この内部ノード74bの電位上昇に従ってMOSトランジスタMP13のコンダクタンスが低下する。したがって、このMOSトランジスタMN13およびMN14の正帰還により、内部ノード72aおよび72bのうち電位の低いほうの内部ノード、すなわち内部ノード72aが、接地電圧レベルに放電され、一方、内部ノード74aおよび74bのうち電位の高い方の内部ノード74bは、MOSトランジスタMP13およびMP14の正帰還動作により、電源電圧VDDレベルに駆動される。最終的に、内部ノード74aおよび74bは、それぞれ接地電圧レベルおよび電源電圧レベルに駆動されてラッチされる。
【0087】
内部ノード74aおよび74bのハイレベルおよびローレベルは、バッファ回路75により増幅かつ反転され、LレベルおよびHレベルの信号が生成され、RSフリップフロップ80によりラッチされ、出力信号VOUTPおよびVOUTNが、それぞれHレベルおよびLレベルに駆動されて維持される。
【0088】
このラッチ動作期間が完了すると、再びラッチ制御信号VLTがLレベルとなり、内部ノード74aおよび74bが、MOSトランジスタMP13およびMP14により電源電圧VDDレベルにプリチャージされる。一方、内部ノード72aおよび72bは、接地電圧レベルまたは電圧信号VOPおよびVONの状態に応じた不定状態となる。
【0089】
したがって、図7に示すように、増幅器50およびラッチ60を用いて、入力信号VIPおよびVINの電圧レベルを比較するコンパレータを構成することにより、増幅器50において電源ノイズ耐性の大きな比較増幅動作を行なって入力信号VIPおよびVINの比較結果を示す信号を生成することができる。ラッチ60においても、ラッチ型センス増幅器70は差動増幅を行なっており、電源ノイズを相殺することができ、電源ノイズの影響は十分に抑制される。また、ラッチ60において電流が流れるのは、ラッチ制御信号VLTが活性状態(Hレベル)の増幅ラッチ動作期間(期間PR3)の間だけであり、また、正帰還用MOSトランジスタMN13およびMN14、MP13およびMP14により高速で増幅/ラッチ動作が行われるため、電源ノードから接地ノードに電流が流れる期間が短く、消費電流は、十分に抑制される。
【0090】
[実施の形態5]
図10は、この発明の実施の形態5に従う半導体集積回路の構成を概略的に示す図である。図10において、この半導体集積回路は、複数段(図10においては2段)の縦続接続される電荷放電型増幅器50Aおよび50Bと、電荷放電型増幅器50Bの出力信号をラッチするラッチ60とを含む。
【0091】
この図10に示す半導体集積回路は、入力信号VIPおよびVINの電圧レベルを比較し、その比較結果を示す信号DOUT(VOUTP,VOUTN)を生成するコンパレータである。電荷放電型増幅器50Aおよび50Bは、これまでの実施の形態1から3において説明した増幅器の構成のいずれかを有する。したがって、増幅器50Aおよび50Bには、それぞれ、比較増幅制御信号VPC01およびVPC02が個々に与えられ、かつ共通にプリチャージ制御信号VPC1が与えられる。ラッチ60は、図9に示す構成と同様の構成を有し、ラッチ制御信号VLTに従ってラッチ動作を行なう。
【0092】
図11は、図10に示すコンパレータの動作タイミングを示す図である。図11に示すように、時刻t30から始まる期間PR1において、プリチャージ制御信号VPC1が活性化され(図11においてはHレベルで示す)、増幅器50Aおよび50Bは内部のプリチャージ動作を共通に実行する。プリチャージ期間PR1の経過後、時刻t31から始まる期間PR2Aにおいて比較増幅制御信号VPC01が活性化され(図11においてLレベルで示す)、増幅器50Aが、入力信号VIPおよびVINの増幅動作を実行する。この増幅器50Aの比較増幅期間PR2Aの終了と並行して、時刻t32から始まる期間PR2Bにおいて比較増幅制御信号VPC02が活性化され(図11においてはLレベルに設定され)、増幅器50Bが、増幅器50Aの出力信号の増幅およびラッチを行なう。
【0093】
この増幅器50Bの比較増幅期間PR2Bの終了と並行して、時刻t33においてラッチ制御信号VLTが活性化され、ラッチ60が増幅器50Bの出力信号をラッチして、比較結果信号DOUTを生成する。
【0094】
この図10に示すコンパレータにおいて時刻t30から時刻t34が入力信号VIPおよびVINを比較する動作期間の一周期となる。
【0095】
なお、図11において、制御信号VPC01、VPC02およびVLTは、それぞれ活性および非活性タイミングが同一タイミングで行なわれるように示している。しかしながら、この制御信号VPC01、VPC02およびVLTは、それぞれ前段の回路動作完了後、それぞれ活性化されてもよい。また、これらの制御信号VPC01、VPC02およびVPC1は、実施の形態1から3に示す増幅器のいずれの制御信号の組合わせを用いられてもよい。
【0096】
この図10および図11に示すように、この発明の実施の形態1から3のいずれかに従う電荷放電型増幅器を複数段縦続接続することにより、増幅における利得が向上し、電圧比較精度が向上する。また、実施の形態1から4と同様の効果を得ることができる。
【0097】
[実施の形態6]
図12は、この発明の実施の形態6に従う半導体集積回路の構成を概略的に示す図である。この図12に示す半導体集積回路は、容量アレイを利用する逐次比較型ADC(アナログ/デジタル変換器)である。図12において、逐次比較型ADCは、比較基準電圧VCOMMと基準電圧VREF1とを比較する比較器90と、比較器90の出力信号DOUTに従って比較基準電圧を生成する動作および比較結果を示すデータを生成する逐次比較レジスタ/ロジック95と、この逐次比較レジスタ/ロジック95からの出力データ信号に従って接続経路を切換えるスイッチアレイ100と、スイッチアレイ100の接続経路に従って容量結合により比較基準電圧VCOMMの電圧レベルを調整する容量アレイ110を含む。
【0098】
比較器90は、図10に示す比較器(コンパレータ)の構成を有し、比較基準電圧VCOMMおよび基準電圧VREF1をそれぞれ入力信号VIPおよびVINとして受け、内部の縦続接続される複数段の増幅器を用いて増幅した後、内部のラッチによりラッチして出力信号DOUTを生成する。
【0099】
逐次比較レジスタ/ロジック95は、比較器90の出力信号DOUTに従って、その出力ノードD00、D0−D11に対する内部の変換結果データビットの設定および比較対象ビットの設定を実行する。なお、この図12に示すADCにおいては、出力データは12ビットであり、出力ビットD0−D11とダミー出力ビットD00を有する構成を一例として示す。しかしながら、ADCは、12ビットADCではなく、他のビットのADCであってもよい。
【0100】
スイッチアレイ100は、逐次比較レジスタ/ロジック95の出力ノードD00、D0−D11それぞれに対して設けられるスイッチSb0、Sa0−Sa11を含む。これらのスイッチSb0、Sa0−Sa11は、3入力端子を有し、接地電圧VSS、変換対象入力電圧VIPおよび基準電圧VRF2のいずれかを、逐次比較レジスタ/ロジック95の対応の出力ノードからの制御信号に従って選択する。
【0101】
容量アレイ110は、スイッチSb0、Sa0−Sa11それぞれに対応して設けられる容量素子C00、C0−C11と、比較対象電圧線112aおよび112bの間に接続される結合容量素子Ccを有する。この比較対象電圧線112aおよび112bには、それぞれスイッチS2およびS1が設けられ、比較対象電圧線112aおよび112bは、プリチャージ時、基準電圧VREF0にプリチャージされる。
【0102】
容量素子C6−C11が比較対象電圧線112aに結合され、容量素子C00およびC0−C5が比較対象電圧線112bに結合される。この比較対象電圧線112aおよび112bに分割し、間に結合容量素子Ccを配置する。
【0103】
一般に、容量素子C11−C0は、それぞれの容量値が対応のビット位置に応じて重み付けされる。容量素子Cn(n=0−11)は、2^n・C0の容量値を有するが、10ビット以上の分解能を持つ場合、容量アレイが巨大となる。そこで、容量素子Ccを用いて容量素子C0からC11の総容量を削減する。容量素子は、それぞれCn(n=0−5)=C2n+1=2^n・C0の容量値を有することができる。ここで、記号“^”は、べき乗を示す。Cc=64/63・C0とすることにより、容量素子Ccによって分割された容量アレイは、容量素子Cn(n=0−11)は2^n・C0の容量値を有する容量アレイと同等の機能を有する。従って、以下においては、説明の簡単化のために、Cn(n=0−11)=2^n・C0として説明を行う。ダミー出力ビットD00に対して設けられる容量素子C00は、ダミー容量であり、容量素子C0と同じ容量値を有する。このダミー容量によりC00により、2進探索法による比較基準電圧を生成することができる。
【0104】
図13は、図12に示す逐次比較型ADCの1つの変換対象入力電圧VIPについてのアナログ/デジタル変換動作を示すフロー図である。以下、図13を参照して、図12に示す逐次比較型ADCのA/D変換動作について説明する。ここで、基準電圧VREF0、VREF1およびVREF2は、全て同一電圧レベルとする。
【0105】
アナログ入力電圧VIPに対する変換サイクルが始まると、逐次比較レジスタ/ロジック95は、変換後のデジタルデータの最上位ビットを指定するため、nを11に設定する(ステップST1)。
【0106】
次いで、逐次比較レジスタ/ロジック95は、スイッチS1およびS2をオン(ON)状態に設定し、比較対象電圧線112aおよび112bを、基準電圧VREF0に充電する。また、このとき、逐次比較レジスタ/ロジック95は、その出力ノードD00、D0−D11からの出力データビットdd0、d0−d11の状態を設定し、スイッチSb0およびSa0−Sa11に、アナログ入力電圧VIPを選択させる(ステップST2)。これにより、容量素子C00およびC0−C11には、アナログ入力電圧VIPの電圧レベルに応じた電荷が蓄積される。前述のように、容量素子C0−C11は、そのビット位置に対応しており、その容量値は、ビット位置に応じた重みを有しており、また、ダミー容量素子C00は、1LSBに対応する容量値を有する容量素子C0と同じ容量値を有する。これらの容量素子C00およびC0の容量値をCとすると、容量素子Ciは、容量値C・2^iを有する。
【0107】
次いで、逐次比較レジスタ/ロジック95は、スイッチS1およびS2を非導通状態(OFF状態)に設定し、比較対象電圧線112aおよび112bの基準電圧VREF0からの充電を停止させる。また、スイッチSb0は、対応のビットdd0が“0”に設定され、接地電圧VSSを選択する状態に維持される(ステップST3)。このステップST1−ST3により、比較対象電圧線112a−112bのプリチャージが完了する。なお、スイッチSb0が接地電圧VSSを選択するため、比較対象電圧線112aおよび112bへの電圧VCOMは、ダミー容量素子C00の容量結合により、その電圧レベルがLSB/2に相当する電圧レベル分低下する。なお、この状態は、実際には容量素子C11の比較動作の最初のシーケンスに含まれる。
【0108】
次いで、スイッチアレイ100および容量アレイ110および逐次比較レジスタ/ロジックで構成されるDAC(デジタル/アナログ変換器)においてスイッチSanを基準電圧VREF2を選択する状態に設定し(ビットdnを“1”に設定する)、残りのスイッチSa(n−1)−Sa0を、ビットd(n−1)−d0を“0”に設定して、接地電圧VSSを選択する状態に設定する(ステップST4)。
【0109】
このスイッチの接続経路の設定により、接地ノードに結合される容量素子により比較基準電圧線112aおよび112bの電圧レベルが低下し、また基準電圧源VREF2に接続される容量素子により比較基準電圧線112aおよび112bの電圧レベルが上昇し、これらの容量素子の間で電荷が再配分される。今、nが最上位ビットを示す11であるため、基準電圧源VREF2と接地ノードの間で、容量素子C11が、容量素子C00およびC0−C10の合成容量と直列に接続され、電荷の再配分が行なわれる。この場合、容量素子C11の容量値は、(2^11)・Cであり、残りの容量素子C00およびC0−C10の容量値の和と等しく、比較対象電圧線112aおよび112bの電圧VCOMMは、次式で表わされる:
VCOMM=VREF0−VIP+(VREF2/2).
上式の右辺第1および第2項によりスイッチSb0およびSa0−Sa11が全て接地電圧を選択する状態に設定されたときの比較対象電圧を示す、上式右辺第3項が、この状態で、スイッチSa11が基準電圧VREF2を選択する状態に設定されたときの比較基準電圧VCOMMを示す。
【0110】
次いで、比較器90において、この比較対象電圧VCOMMと基準電圧VREF1の比較を行い、比較結果を示す信号DOUTが生成される。逐次比較レジスタ/ロジック95に含まれるロジックは、この比較器90の出力信号DOUTの論理値が“0”および“1”のいずれであるかに基づいて、比較対象電圧VCOMMが基準電圧VREF1よりも高いかを判定する(ステップST5)。比較対象電圧VCOMMが基準電圧VREF1よりも高いときには、このスイッチSanの状態が基準電圧VREF2を選択する状態に維持され、すなわち、対応の出力データビットdnが“0”に維持される。一方、比較基準電圧VCOMMが、基準電圧VREF1よりも低い場合には、このスイッチSanは、対応のデータビットdnが“1”に設定され、接地電圧VSSを選択する状態に設定される(ステップST6)。
【0111】
次いで、変換対象ビットを1ビット下位側にずらせるため、nを(n−1)で置換する(ステップST7)。次いで、このビット位置nが0以上であるかの判定が行なわれる(ステップST8)。ビット位置を示す値nが、0以上のときには、まだ最下位ビットの変換動作が実行されていないため、再びステップST4へ戻り、上述の比較基準電圧VCOMMの変換および比較動作が実行される。
【0112】
一方、ステップST8において、ビット位置を示す値nが非正の値のときには、最下位ビットの変換が完了しているため、スイッチSa0−San(=Sa11)のスイッチの状態を出力する(ステップST9)。すなわち、逐次比較レジスタ/ロジック95に含まれる逐次比較レジスタのラッチデータd0−d11がアナログ入力電圧VIPのデジタル変換値として出力される。
【0113】
図14は、図12に示す逐次比較型ADCの変換時の比較対象電圧VCOMMの変化シーケンスの一例を示す図である。
【0114】
この図14においても、基準電圧VREF0、VREF1およびVREF2はすべて同じ電圧レベルに設定されている。
【0115】
先ず、初期化時、比較基準電圧VCOMMは、図12に示すスイッチS1およびS2により基準電圧VREF0にプリチャージされる。次いで、図12に示すスイッチSb0、Sa0−Sa11を、すべて、アナログ入力電圧VIPを選択する状態から接地電圧VSSを選択する状態に設定する。応じて、比較基準電圧VCOMMは、プリチャージ電圧VREF0からアナログ入力電圧VIPの電圧レベルだけ低下する。
【0116】
ここで、図13に示すように初期化シーケンスにおいては、スイッチSb0が接地電圧VSSを選択する状態に設定されるだけであり、この場合、比較対象電圧VCOMMは、図14において一点鎖線で示すように、このプリチャージ電圧VREF0から、少し低下するだけである。この状態は、実際の動作においては容量素子C12の比較シーケンスに含まれ、実際には出力されない。
【0117】
次いで、比較動作開始時、スイッチSa0−Sa(n−1)がすべて接地電圧を選択する状態に設定されるとともに、スイッチSanが基準電圧VREF2(=VREF0)を選択する状態に設定される。このときの比較対象電圧VCOMMは、VREF0−VIP+VREF0/2である。この1回目の比較動作時において比較対象電圧VCOMMと基準電圧VREF1(=VREF0)の大小比較が行なわれる。この比較動作時、VCOMM−VREF0=VREF0−VIPであり、基準電圧とアナログ入力電圧との比較が行われており、変換後の最上位ビットが“1”であるかの識別が行われる。
【0118】
図14においては、比較対象電圧VCOMMの電圧レベルは、基準電圧VREF1(=VREF0)よりも低いため、最上位ビットd11は“1”に維持された状態で、次のビットd10が“1”に設定され、残りのビットd9−d0、およびdd0がすべて“0”に維持される。
【0119】
次いで2回目の比較動作時において、上位ビットd11およびd10がともに“1”であり、残りのビットd9−d0が“0”である。この状態においては、基準電圧源VREF0(=VREF2;電源ノードと対応の電圧を同一参照符号で示す)と比較対象電圧線の間に、容量素子C11およびC10が並列に接続され、また比較対象電圧線と接地ノードの間に、残りの容量素子C9−C0およびC00が並列に接続される。この容量素子C10の容量結合および電荷再配分により、比較基準電圧VCOMMが、電圧VREF0/4だけ上昇し、基準電圧VREF1との比較動作が行なわれる。
【0120】
図14に示す比較シーケンスにおいては、この2回目の比較動作時においては、比較対象電圧VCOMMが、基準電圧VREF1よりも高いため、ビットd10が“0”に設定され、次いで、ビットd9を“1”に設定して比較動作が行われる。この3回目の比較動作(3ビット目の変換動作)の場合、ビットd10に対する容量素子C10が接地ノードに結合され、次の容量素子C9が比較対象電圧線と比較対象電圧線の間に接続されるため比較対象電圧VCOMMは、電圧VREF0/4低下するとともに、電圧VREF0/8上昇し、したがって、2回目の比較動作時の比較対象電圧VCOMMから、電圧VREF0/8だけ低下した電圧レベルに設定される。この状態で、3回目の比較動作が行なわれ、この比較結果に応じてビットd9が“0”に設定され、次のビットd8が“1”に設定されて4回目の比較動作が行なわれる。このときには、電圧−VREF0/8+VREF0/16の電圧変化が比較対象電圧VCOMMに生じ、3回目の比較動作時よりも、比較基準電圧VCOMMは、VREF0/16だけ電圧レベルが低下する。
【0121】
次いで、この4回目の比較結果に従ってビットd8が“1”に維持されたまま、次のビットd7が“1”に設定されて5回目の比較動作が行なわれる。
【0122】
したがって、この比較動作時においては、比較対象電圧VCOMMは、次式で表わされる電圧レベルとなる。
【0123】
【数1】

【0124】
図14に示す比較動作が、必要な分解能(本実施例では12ビット分)の回数繰返し実行される。
【0125】
最終的に、必要な分解能の変換動作が完了すると、すなわち最下位ビットの変換動作が完了すると、各スイッチの状態は、アナログ入力電圧VINをデジタル変換した値に対応しており、逐次比較レジスタ/ロジック95に含まれるレジスタに格納されるデータビットd0−d11がデジタル変換値として出力される。
【0126】
[変更例]
図15は、この発明の実施の形態6に従う逐次比較型ADCの変換シーケンスの変更例を概略的に示す図である。図15においては、A/D変換シーケンスにおける初期化シーケンス時の比較対象電圧線に対する容量素子の接続態様を示す。この比較対象電圧線112に対し、基準電圧VREF0をプリチャージされるとき、容量素子Caは、アナログ入力電圧VIPを受け、一方容量素子Cbは、接地ノードに結合される。ここで容量CaおよびCbは、図12に示すキャパシタアレイの容量素子の合成容量を示す。この比較対象電圧線112のプリチャージ後、スイッチングアレイ(100)により、容量素子Caの対応のスイッチをアナログ入力電圧VIPから接地電圧VSS(=0V)を選択する状態に設定する。この場合、比較対象電圧線112の比較対象電圧VCOMMの電圧レベルは、容量素子CaおよびCbの電荷再配分により、Ca・VIP/(Ca+Cb)だけ低下する。このときの比較基準電圧VCOMMは、次式で表わされる:
VREF0−Ca・VIP/(Ca+Cb)
この比較基準電圧VCOMMを、正の電圧レベルに維持するため、アナログ入力電圧VIPの最大電圧VIP_MAXは、次式で表わされる。
【0127】
VIP_MAX=VREF0・(Ca+Cb)/Ca
したがって、容量素子CaおよびCbのサンプリング時のスイッチ制御情報をa0−a11で表わし、ビットaiが“1”のとき、対応のスイッチSaiがアナログ入力電圧VIPを選択し、ビットaiが“0”のとき、対応のスイッチSaiが、接地電圧VSSを選択すると、このアナログ入力電圧VIPの最大電圧VIP_MAXは、次式で表わされる:
【0128】
【数2】

【0129】
したがって、この状態において、サンプリング可能なアナログ入力電圧の電圧範囲を大きくすることができる。
【0130】
なお、上述のA/D変換シーケンスにおいて、基準電圧VREF0、VREF1およびVREF2は、すべて同じ電圧レベルに設定している。しかしながら、基準電圧として、次の関係を満たす基準電圧VREF0−VREF2が用いられてもよい。
【0131】

VREF0=VREF1=VDD/2、
VREF2=VDD
以上のように、この発明の実施の形態6に従えば、この発明の実施の形態1から3に示す増幅器を用いてコンパレータを構成し、このコンパレータを用いてアナログ入力電圧をデジタル信号に変換している。したがって、電源ノイズ(VDDS−VSSに重畳する電源電圧)に対するノイズ耐性に優れた正確にデジタル変換を行なうことのできる逐次比較型ADCを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0132】
この発明に係る増幅器は、単に、半導体集積回路における増幅器に適用することにより、電源ノイズ耐性の優れた増幅機能を有する半導体集積回路を実現することができ、車載機器のような電源ノイズの大きな環境に適用することにより、安定に動作する半導体集積回路を実現することができる。
【0133】
また、この発明に係る増幅器を逐次比較型ADCのコンパレータに適用することにより、電源ノイズ耐性に優れた逐次比較型ADCを実現することができる。この逐次比較型ADCを、アナログ回路とデジタル回路が混載される集積回路のアナログ/デジタルインターフェイス部に適用することにより、電源ノイズ耐性に優れたアナログ/デジタル混載集積回路を実現することができる。
【0134】
また、この発明に使用する増幅器および逐次比較ADCは、それぞれ個別部品として利用されてもよい。
【0135】
なお、発明の実施の形態6に示す逐次比較ADCにおいては、容量アレイを利用する電荷再配分型ADCを利用している。しかしながら、他の抵抗素子アレイを利用する逐次比較型ADCであっても、コンパレータ(80)が利用されるため、このコンパレータに、この発明の実施の形態1から5に従う増幅器および/またはコンパレータが適用されてもよい。
【符号の説明】
【0136】
1a,1b 入力ノード、4 定電流段、MP1,MP2 PチャネルMOSトランジスタ(差動トランジスタ対)、MPC1−MPC3 PチャネルMOSトランジスタ(電流制御トランジスタ)、MN1,MN2 NチャネルMOSトランジスタ(プリチャージトランジスタ)、10 定電流段、AP3,AP4 PチャネルMOSトランジスタ(プリチャージトランジスタ)、CL3,CL4 容量素子、NM3,NM4 NチャネルMOSトランジスタ(差動トランジスタ対)、NMC1−NMC3 NチャネルMOSトランジスタ(伝熱制御トランジスタ)、20 増幅器本体、25 バイアス回路、APC3,APC4 PチャネルMOSトランジスタ、NMC4 NチャネルMOSトランジスタ、NPC4 PチャネルMOSトランジスタ、50 増幅器、60 ラッチ、50A,50B 電荷放電型増幅器、70 ラッチ型増幅器、75 バッファ回路、80 RSフリップフロップ、90 コンパレータ、95 逐次比較レジスタ/ロジック、100 スイッチアレイ、110 容量アレイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の入力電圧を受けて相補的に増幅して出力する増幅回路を少なくとも1段備え、
前記増幅回路は、
前記第1および第2の入力電圧をそれぞれの制御電極に受ける1対の差動トランジスタと、
前記1対の差動トランジスタと第1の電源との間に結合され、第1の制御信号に応答して導通して前記1対の差動トランジスタと前記第1電源との間に一定の電流を流す定電流段と、
前記1対の差動トランジスタそれぞれに電気的に接続され、それぞれが、前記1対の差動トランジスタの対応のトランジスタを流れる電流量に応じて充電または放電される1対の容量素子と、
前記1対の容量素子と第2の電源との間に結合され、第2の制御信号に応答して、前記1対の容量素子の前記差動トランジスタに電気的に結合される電極を前記第2の電源に電気的に結合する1対のプリチャージトランジスタとを備える、半導体集積回路。
【請求項2】
前記定電流段は、
前記1対の差動トランジスタと前記第1の電源との間に直列に接続される第1および第2のトランジスタを備え、
前記第1のトランジスタは、前記第1の制御信号に応答して選択的に導通し、前記第2のトランジスタは前記一定の電流を流す、請求項1記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記定電流段は、
前記第1の電源と前記1対の差動トランジスタとの間に結合され、制御電極の電圧レベルが前記第1の電源の電圧レベルのとき非導通状態となる第1のトランジスタと、
前記第1の制御信号に従って前記第1のトランジスタの制御電極の電位を制御する制御トランジスタを備え、前記制御トランジスタは、前記第1の制御信号に従って前記第1のトランジスタの制御電極を前記第1の電源の電圧レベルおよび定電流バイアス電圧レベルのいずれかに設定する、請求項1記載の半導体集積回路。
【請求項4】
前記1対の容量素子の前記プリチャージトランジスタに結合される電極は、前記増幅回路の出力ノードに結合され、
前記半導体集積回路は、さらに、
前記増幅回路の出力ノードの電圧をラッチするラッチ回路をさらに備える、請求項1から3のいずれかに記載の半導体集積回路。
【請求項5】
前記増幅回路は、複数段配置され、前記複数段の増幅回路は互いに縦続接続され、
前記半導体集積回路は、さらに、
前記複数段の増幅回路の最終段の増幅回路の出力ノードからの電圧信号をラッチするラッチ回路を備える、請求項1記載の半導体集積回路。
【請求項6】
少なくとも1ビットのデータを出力する逐次比較レジスタ回路と、
アナログ入力電圧および前記逐次比較レジスタ回路の出力データに基づいて比較対象電圧を生成するデジタル/アナログ変換部をさらに備え、
前記増幅回路は、
前記1対の差動トランジスタの制御電極に前記第1および第2の入力電圧として前記比較対象電圧および基準電圧をそれぞれ受け、
前記逐次比較レジスタ回路は、前記ラッチ回路から与えられた信号に基づいて前記データを生成して、前記アナログ入力電圧のデジタル変換結果を示すデータを生成する、請求項5記載の半導体集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−157950(P2010−157950A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49(P2009−49)
【出願日】平成21年1月5日(2009.1.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】