説明

反射基材の評価装置、反射基材の評価方法

【課題】 反射基材の製造工程においてインラインでも評価可能であり、簡易な方法で確実に輝度ムラの発生原因となる基材表面性状を評価することが可能な反射基材の評価装置および反射基材を提供する。
【解決手段】 レーザ変位計3により反射基材の7の表面形状情報を取得する。次に、得られた凹凸情報をフーリエ変換し、反射基材の表面凹凸形状について、周波数と強度との関係を得る。次に、算出された周波数と強度との関係と、あらかじめ設定された基準データとを比較する。所定範囲の周波数領域において、強度が0.6を超える場合には不合格判定を行い、当該判断領域において0.6を超えるデータがなければ合格判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に液晶テレビなどのバックライトユニットに用いられる反射基材において、輝度ムラの発生原因となる基材表面性状を評価することが可能な反射基材の評価装置および反射基材の評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶テレビのディスプレイ等に用いられるバックライトユニットには、導光板に対して光を反射するシート状、フィルム状、板状等の反射基材が用いられる。この場合、反射基材を導光板の後方に配置し、例えばエッジライト方式によって導光板側方から光を照射することで、導光板の表面全体(すなわちディスプレイ全面)に対して光が均一に出射される。
【0003】
一方、用いられる部材(例えば反射基材)に問題等があると、ディスプレイに輝度ムラが生じる場合がある。輝度ムラとは、本来ディスプレイ全面で均一な輝度で視認されるべき場合においても、部分的に輝度が高いまたは輝度が低い部分が生じるものである。このような輝度ムラが生じると、正確な画像を再現することができず、当該ディスプレイの視認者に対しても不快感を与えることとなる。
【0004】
このようなディスプレイの輝度ムラに対しては、ディスプレイの表示画面の輝度分布情報を取得し、この輝度分布情報と該輝度分布情報の背景輝度との差分から求めた輝度変化量に対する背景輝度との比を表すコントラスト画像を生成し、コントラスト画像を2次元フーリエ変換した2次元フーリエスペクトルに、背景輝度または表示画面のサイズの少なくともいずれかに応じて設定され人間の視覚特性に準じたコントラスト感度関数を乗算し、その結果を2次元フーリエ逆変換して輝度ムラ成分の強度が輝度情報に含まれる評価用2次元画像を生成し、この評価用2次元画像の輝度情報に基づいて輝度ムラを定量評価するディスプレイの評価方法がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−180583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法は、そもそも反射基材を製造後、バックライトユニットとして組み立てた後に、輝度ムラを定量評価するものである。したがって、反射基材に異常がある場合においては、反射基材をバックライトユニットとして組み立てて、初めてこれに起因する輝度ムラを評価することができるものである。
【0007】
一方で、反射基材の表面にしわなどが形成されると、この「しわ」などの表面の凹凸形状により輝度ムラが発生する可能性がある。すなわち、表面にある程度以上の凹凸形状を有する反射基材を用いてバックライトユニットを組み立てると、輝度ムラが確認される場合がある。
【0008】
例えば、図8は、従来の反射基材30と、これを用いたディスプレイ33を示す図である。図8(a)に示すように、反射基材30は、製造工程で生じる凹凸31が表面に形成される場合がある。特に、発泡体基材では、加熱工程などもあるため、反射基材30の表面にしわ状の凹凸31が形成される場合がある。このような凹凸31は、例えば反射基材30の製造工程において、長手方向に沿って形成される場合が多い。
【0009】
このような凹凸31がある程度以上の大きさとなると、輝度ムラの要因となる。たとえば、このような反射基材30を用いてバックライトユニットを構成し、これに光を照射してディスプレイの前面より確認すると、凹凸31の形態に対応した範囲に、輝度ムラ35が発生する場合がある。したがって、バックライトユニットとして組み立てる前に、反射基材の表面凹凸量を測定して、反射基材の評価を行うことで、所定値以上の大きな凹凸を有する反射基材を廃棄することで、輝度ムラの発生を防止することができる。
【0010】
しかしながら、上述のように、一律に凹凸量のみによって反射基材の合否判定を行うと、波うちの周期等によっては実際には輝度ムラの生じない反射基材も不合格と判定される場合がある。すなわち、単なる表面の凹凸量のみによる合否判定では、過剰品質となる可能性がある。したがって、より確実な評価方法が望まれている。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、反射基材の製造工程においてインラインでも評価可能であり、簡易な方法で確実に輝度ムラの発生原因となる基材表面性状を評価することが可能な反射基材の評価装置および反射基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達するために本発明は、反射基材の評価装置であって、変位センサを反射基材の表面に対して移動させて、前記反射基材の表面凹凸形状を検出する凹凸量検出手段と、前記凹凸量検出手段で検出された凹凸情報をフーリエ変換し、周波数と強度との関係を取得する周波数演算手段と、前記周波数演算手段により得られた波情報を、あらかじめ設定された基準データと比較し、前記波情報において基準データを超える強度を有するものを不合格とし、基準データを超える強度を有さないものを合格とする合否判定手段と、を具備することを特徴とする反射基材の評価装置である。
【0013】
前記反射基材は、バックライトユニット用の発泡体基材であり、前記凹凸量検出手段は、前記変位センサを前記反射基材の幅方向に対して往復移動可能であり、前記合否判定では、前記波情報において所定範囲の周波数または周波数から算出される所定範囲の波長の強度に対して、基準データとの比較を行うことが望ましい。
【0014】
第1の発明によれば、変位センサにより得られた反射基材の表面形状を取得し、これをフーリエ変換することで、反射基材の表面凹凸形状に対する波情報(周波数と強度との関係)を得ることができる。また、この波情報を基準データと比較して、この基準を超えるものを不合格と判定することで、単なる最大凹凸量のみではなく、より詳細な凹凸形状の情報による合否判定を行うことができる。
【0015】
より詳細には、得られた波情報から、周波数(またはこれから得られる波長)の所定の範囲において、その範囲における強度が基準データよりも大きいか否かで合否判定を行うことができる。このため、輝度ムラに特に悪影響を及ぼす凹凸形状のみを抜きだして評価を行うことができる。したがって、より確実に輝度ムラの原因となる凹凸形状を検出して、適格な合否判定を行うことができる。
【0016】
第2の発明は、反射基材の評価方法であって、反射基材の表面に対して変位センサを移動させて、前記反射基材の表面凹凸情報を検出する工程(a)と、検出された凹凸情報をフーリエ変換して周波数と強度との関係である波情報を取得する工程(b)と、前記波情報における強度を、あらかじめ設定された基準データと比較する工程(c)と、を具備し、前記波情報において、前記基準データを超える強度を有するものを不合格とし、前記基準データを超える強度を有さないものを合格と判断することを特徴とする反射基材の評価方法。
【0017】
前記工程(c)は、
測定点数をN点としたとき、波長128mm以下に対応する周波数に対する強度が、0.6N/128を超える場合には不合格とし、0.6N/128以下であれば合格と判断してもよい。
【0018】
前記工程(a)の後、前記工程(a)によって得られた前記凹凸情報から、最大凹凸量を算出する工程(d)を更に有し、前記最大凹凸量が規定値以下であれば評価を終了し、前記最大凹凸量が規定値以上の場合にのみ、前記工程(b)以下を行うこともできる。
【0019】
この場合、前記工程(d)で得られた最大凹凸量が50μm以下であれば合格とし、50μmを超える場合にのみ、前記工程(b)以下を行えばよい。
【0020】
第2の発明によれば、反射基材の表面の凹凸情報から波情報を得ることができるため、前述の通り、より確実に輝度ムラの要因となる表面形状を検出することができる。
【0021】
なお、合否判定の基準データとしては、波長が128mm以下(に対応する周波数)範囲における強度を、測定点数をN点としたとき、0.6N/128以下とすることで、輝度ムラの発生要因を確実に検出することができる。すなわち、前述した範囲の強度が0.6N/128を超える場合には、輝度ムラの発生する確率が高くなるため、これを超える反射基板を不合格判定とすればよい。
【0022】
また、波情報を得る前に、凹凸情報から、最大凹凸量を算出し、この値が所定の基準値以下であれば合格とし、これに不合格となったもののみについて、本発明の方法を適用することで、より確実に反射基材の評価を行うことができる。すなわち、ほとんど凹凸のない平滑な反射基材であれば、輝度ムラの要因とはならないが、凹凸量が所定値を超えた場合については、より詳細に波情報を解析することで、凹凸量のみでは不合格となるものの輝度ムラを生じないような反射基材を救済することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、反射基材の製造工程においてインラインでも評価可能であり、簡易な方法で確実に輝度ムラの発生原因となる基材表面性状を評価することが可能な反射基材の評価装置および反射基材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】反射基材評価装置1の構成図。
【図2】解析装置5のハードウェア構成図。
【図3】反射基材評価装置1の流れを示すフローチャート。
【図4】反射基材7に対するレーザ変位計3の測定部を示す図。
【図5】反射基材7に対するレーザ変位計の動作を示す図。
【図6】凹凸情報を示す図。
【図7】波情報を示す図。
【図8】従来の反射基材と輝度ムラの発生を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は本発明にかかる反射基材評価装置1を示す構成図である。反射基材評価装置1は主に、凹凸量検出手段であるレーザ変位計3と、解析装置5等から構成される。
【0026】
反射基材7は、例えば発泡体などの樹脂基材であり、シート状、フィルム状、板状などで形成される。より詳細には、平均気泡径が50nm以上で50μm以下の微細な気泡または気孔を内部に有する熱可塑性樹脂シートに好適に用いることができる。このようなシートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートの押出シートに炭酸ガスを高圧下で含浸させた後、加熱し発泡させたシートで、内部の気泡径が50μm以下である発泡プラスチック製光反射シートがある(例えば古河電気工業製のMCPET(登録商標)等)。また、反射基材7の好ましい他の例として、フィラーを含有する熱可塑性樹脂フィルムであって、フィラーを核として多数のボイドが成形されているフィルムを複数積層したもの、あるいは該フィルムをポリエチレンテレフタレート等の樹脂シートに貼合したものが挙げられる。上記フィラーを含有する熱可塑性樹脂はフィルム、フィラーを含有する未延伸フィルムを成形し、この未廷伸フィルムを延伸することにより、フィラーを核として多数のボイドを成形した多孔性延伸フィルムであることが好ましい。なお、前記シート、フィルムに用いられる樹脂中には、酸化防止剤、紫外線防止剤、滑剤、顔料、強化剤などの添加剤を適宜添加することができる。また、これら添加剤を含有する塗布層をシート、フィルム上に成形してもよい。なお、図1で示す例では、ロール状に巻かれた長尺の反射基材7に対して発泡処理等を施すための製造ラインに反射基材評価装置1が設置される例を示すが、反射基材評価装置1を反射基材7の製造工程とは別個に配置して評価を行ってもよい。
【0027】
レーザ変位計3は、反射基材7の表面から所定の距離に配置され、反射基材7の表面に対して一定距離を保ちつつ、反射基材7の進行方向とは垂直な方向(すなわち反射基材7の幅方向)に移動可能である。したがって、レーザ変位計3によって、対象となる反射基材7の表面の凹凸(「しわ」および厚み変化などをすべて含む反射基材全体の表面方向の凹凸量)を検出可能である。なお、反射基材7の凹凸情報を検出可能であれば、レーザ変位計3でなくてもよく、他の検出手段を用いてもよい。
【0028】
解析装置5は、レーザ変位計3からの情報を取得し、種々の解析および合否判定を行うことができるとともに、レーザ変位計3の動作を制御することができる。解析装置としては一般のコンピュータを用いることができる。
【0029】
図2は、解析装置5を実現するコンピュータのハードウェア構成図である。解析装置5は、制御部9、記憶部11、メディア入出力部13、通信制御部15、入力部17、表示部19、周辺機器I/F部21等が、バス23を介して接続される。
【0030】
制御部9は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成される。CPUは、記憶部11、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス23を介して接続された各装置を駆動制御し、レーザ変位計3の動作を制御することができる。
【0031】
ROMは、不揮発性メモリであり、コンピュータのブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。RAMは、揮発性メモリであり、記憶部11、ROM、記録媒体等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部9が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
【0032】
記憶部11は、HDD(ハードディスクドライブ)であり、制御部9が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティングシステム)等が格納される。プログラムに関しては、OS(オペレーティングシステム)に相当する制御プログラムや、後述の処理に相当するアプリケーションプログラムが格納されている。これらの各プログラムコードは、制御部9により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて各種の手段として実行される。
【0033】
メディア入出力部13は、データの入出力を行い、例えば、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、CDドライブ(−ROM、−R、RW等)、DVDドライブ(−ROM、−R、−RW等)、MOドライブ等のメディア入出力装置を有する。
【0034】
通信制御部15は、通信制御装置、通信ポート等を有し、コンピュータとネットワーク間等の通信を媒介する通信インタフェースであり、レーザ変位計3等との通信制御等を行う。
【0035】
入力部17は、データの入力を行い、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、テンキー等の入力装置を有する。入力部17を介して、コンピュータに対して、操作指示、動作指示、データ入力等を行うことができる。
【0036】
表示部19は、CRTモニタ、液晶パネル等のディスプレイ装置、ディスプレイ装置と連携してコンピュータのビデオ機能を実現するための論理回路等(ビデオアダプタ等)を有する。
【0037】
周辺機器I/F(インタフェース)部21は、コンピュータに周辺機器を接続させるためのポートであり、周辺機器I/F部21を介してコンピュータは周辺機器とのデータの送受信を行う。周辺機器I/F部21は、USBやIEEE1394やRS−232C等で構成されており、通常複数の周辺機器I/Fを有する。周辺機器との接続形態は有線、無線を問わない。バス23は、各装置間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。なお、解析装置5としては、後述する機能を奏することができれば、上記の構成をすべて要するものではない。
【0038】
次に、反射基材評価装置1によって、反射基材7の評価を行う方法について説明する。図3は、反射基材評価装置1の流れを示すフローチャートを示す図である。
【0039】
まず、図4に示すように、反射基材7の幅方向に対してレーザ変位計3を移動させ、または往復動作させて、反射基材7の表面凹凸量を検出する(ステップ101)。なお、表面凹凸量とは、単なる反射基材7の厚み変化ではなく、反射基材自体に生じるしわや変形等を含むものである。なお、反射基材7の製造方向ではなく幅方向に対して検査するのは、製造工程との関係で、反射基材7の表面凹凸(しわなど)は、幅方向に対して大きく生じるためである。
【0040】
具体的には、前述した制御部9により、図示を省略した駆動部等によりレーザ変位計3を駆動させて反射基材7上を移動させながら、レーザ変位計3により反射基材の7の表面形状情報(凹凸情報)を取得する。なお、レーザ変位計3の移動速度は、反射基材7の製造速度等に応じて設定され、例えば入力部17により条件(製造速度)を入力することでこれに対応した検出条件を記憶部11より読みだして、制御部9で制御すれば良い。なお、上述した制御部9およびレーザ変位計3による反射基材7の表面凹凸量の検出する手段を、表面凹凸量検出手段と称する。
【0041】
次に、得られた凹凸情報から最大凹凸量を算出し、これが規定値である50μmを超えるか否かを判断する(ステップ102)。なお、規定値としては、製品に要求される品質に応じて適宜設定される。図5は、得られた凹凸情報を示す概念図である。検査範囲(例えば反射基材7の幅方向への移動範囲)において得られた凹凸情報から、最大値および最小値を得て、この差を最大凹凸量とする。
【0042】
具体的には、前述した制御部9により凹凸情報の最大値と最小値から最大凹凸量を算出し、あらかじめ設定された基準値を記憶部11より読みだすとともにこれらを比較し、最大凹凸量が基準値を超えるか否かを判断する。なお、当該最大凹凸量の基準値は、あらかじめ対象製品毎の最大凹凸量と輝度ムラの発生傾向を調査し、輝度ムラが発生しない最大凹凸量の最大値を基準値として設定すればよい。
【0043】
算出された最大凹凸量が基準値(例えば50μm)以下であれば、合格判定を行う(ステップ107)。従来の凹凸量のみでの判断では、この判断で終了し、基準値を超える反射基材7が廃棄される。
【0044】
本発明では、ステップ102で最大凹凸量が基準値を超えたものについて、凹凸情報をフーリエ変換し、反射基材の表面凹凸形状について、周波数と強度との関係を得る(ステップ103)。なお、上記ステップ102を省略し、全ての被検物に対してステップ103以降の評価を行ってもよい。
【0045】
ここで、周波数は、反射基材7の凹凸形状のみならず反射基材7に対するレーザ変位計3の移動速度(凹凸形状の測定速度)にも依存する。このため、レーザ変位計3の移動速度はあらかじめ設定される。レーザ変位計3の移動速度としては、例えば200mm/s程度以下である。
【0046】
具体的には、周波数演算手段により、制御部において得られた凹凸情報をフーリエ変換し、周波数と強度との関係を得る。なお、得られた周波数は、レーザ変位計3の測定条件等を加味して波長に換算してもよい。以下の例では、周波数を取り扱う例を示すが、当然に波長に換算して評価をおこなってもよい。
【0047】
なお、図6(a)に示すように、反射基材7が進行方向(図中矢印B方向)に移動しながらレーザ変位計を反射基材7の幅方向に往復移動させると、レーザ変位計による測定部(測定方向)は、反射基材7の幅方向に一致せず、反射基材7の移動速度に応じて斜めに測定することとなる(図中C方向)。一方で、図6(b)に示すように、反射基材7aを固定した状態で、同様に測定を行うと、測定部は反射基材7aの幅方向に一致する(図中D方向)。
【0048】
しかしながら、本発明においては、前述の通り、反射基材7が移動しながらレーザ変位計3を幅方向に移動させた場合において、実際には斜めに測定されて得られた凹凸情報も、反射基材7の幅方向の凹凸情報であると定義する。すなわち、検出された凹凸情報は、必ずしも反射基材7の幅方向に厳密に垂直な方向の情報である必要はなく、反射基材7の幅方向から多少斜めに測定された凹凸情報も、反射基材7の幅方向の凹凸情報として取り扱うものとする。
【0049】
次に、周波数演算手段により算出された周波数(波長)と強度との関係(波情報)と、あらかじめ設定された基準データとを比較する(ステップ104)。すなわち、所定範囲の周波数(波長)領域における最大強度を、基準データにおける数値と比較する。基準データは、幅方向における凹凸の測定点数に依存するが、測定点を128点とした場合には、基準データとしては、例えば、所定範囲の周波数(波長)の強度が0.6以下であることとする。なお、測定点が128、256、512、・・・と増す毎に、基準データの数値(所定範囲の周波数(波長)の強度)を、0.6、1.2、2.4・・・と大きく設定すれば良い(例えば、測定点数Nとすれば、基準データ=0.6N/128)。この基準データは、あらかじめ対象製品毎に測定条件に応じた強度と輝度ムラの発生傾向を調査し、所定周波数において輝度ムラが発生しない強度を求めておけばよい。なお、以下の例では、測定点を128点とし、基準データが強度0.6である場合について説明する。次に、当該領域の強度として0.6を超えるデータがあるか否かを判断する(ステップ105)。強度が0.6を超える場合には、不合格判定を行い、当該判断領域において0.6を超えるデータがなければ合格判定を行う(ステップ106、ステップ107)。
【0050】
具体的には、合否判定手段により、制御部9においてフーリエ変換された波情報(周波数と強度との関係)に対し、記憶部11等から読みだされた基準データ(判断するための周波数領域(波長領域)の基準強度が前述した方法であらかじめ定義される)を比較し、当該周波数領域(波長領域)において基準データを超えるデータがあるかないかを判断する。
【0051】
さらに合否判定手段によって、制御部9は、上記判断により基準データを超えるデータがあれば不合格と判定し、なければ合格と判定する。
【0052】
図7は、合否判定を行う波情報と基準データとの比較を表す概念図である。前述の通り、周波数演算手段により得られた波情報は、波長(または周波数)と強度との関係で示される。合否判定手段は、評価を行う波長範囲(周波数範囲)である評価範囲25において、基準値(図中F)を超えるデータがあるか否かを判断する。すなわち、評価範囲25において、基準値を超えるデータがあれば不合格とし、なければ合格となる。すなわち、評価範囲25以外については、強度について判定を行う必要はない。なお、評価範囲25は、あらかじめ各波長(周波数)と強度、および輝度ムラの発生傾向を調査し、輝度ムラが発生しない波長(周波数)の範囲を設定すれば良い。たとえば、評価範囲としては所定波長を設定すれば、それ以上の長波長の凹凸形状は輝度ムラには影響が小さいため、評価範囲から外すことができる。評価範囲としては、例えば波長128mm以下とすればよい。
【0053】
得られた判定データは、表示部19等に表示させてもよく、記憶部11に評価データとして保存することもできる。また、ネットワーク等を介して製造工程にフィードバックされて、後工程において不合格品を廃棄するように指示することもできる。以上により、反射基材7の評価が終了する。なお、評価は所定間隔で繰り返し行ってもよく、連続して行ってもよい。
【0054】
なお、前述の通り、基準データは、様々な周期、大きさの凸凹形状を有する反射基材のサンプルを用意し、バックライトユニット組み込み、目視で輝度ムラの発生の有無を確認し、輝度ムラを生じる周波数(波長)と測定点の数に応じた強度を特定して、予め定めておく。
【0055】
なお、上述の実施の形態では、1つのレーザ変位計3により得た情報から、最大凸凹量および輝度ムラを生じる特定波長の判定を行ったが、レーザ変位計3より上流側に、別途最大凸凹量の判定に用いるための最大凸凹量測定器を別途設けてもよい。
【0056】
本発明によれば、輝度ムラの原因となる反射基材7の表面凹凸の合否を確実に評価することができる。特に、単なる最大凹凸量のみの評価では過剰品質となるところ、輝度ムラに悪影響を及ぼしやすい周波数(波長)領域の凹凸成分の強度を判定することにより、例えば、輝度ムラには影響しないような凹凸形状については合格として扱うことができる。
【実施例】
【0057】
次に、本発明による評価方法を用いた評価例について説明する。被検体である反射基材は、以下のように製造した。
【0058】
まず、ポリエチレンテレフタレート(日本ユニペット株式会社製、RT―553C)100重量部に、ポリエステル系エラストマー(三菱化学株式会社製、プリマロイ(登録商標)B1942N)2重量部を添加して混練した後、0.48mm厚×540mm幅×355m長さのシートに成形した。この樹脂シートと、オレフィン系不織布のセパレータを重ねて、樹脂シートの表面同士が接触する部分がないように巻いてロール状にした。
【0059】
その後、上記ロールを圧力容器に入れ、炭酸ガスで5.2MPaに加圧し、樹脂シートに炭酸ガスを浸透させた。樹脂シートへの炭酸ガスの浸透時間は35時間とした。次に、圧力容器からロールを取り出し、セパレータを取り除きながら樹脂シートだけを220℃に設定した熱風循環式発泡炉に連続的に供給して発泡させた。得られた発泡体は均一に発泡しており、平均気泡径が0.9μmと非常に微細であった発泡体の厚さは0.7mmとなり、発泡体シートの全反射率は99.9%であった。
【0060】
得られた反射基材から、幅520mmにカットした複数のサンプルを取り出し、レーザ変位計を所定高さの位置で幅方向(製造工程における長手方向に垂直な方向)に、50mm/sの速度、約4mmピッチで移動させて、測定点数128点での反射基材の表面凹凸量を検出し、前述した方法でそれぞれ評価を行った。
【0061】
さらに、評価後の反射基材に対して、バックライトユニットを仮組し、ディスプレイの表面における輝度を評価した。バックライトユニットの構成としては、反射基材上に順に、導光板、第1拡散フィルム、プリズムシート、第2拡散フィルムを組み立てた。導光板の側方には、エッジライト方式としてLED(Light Emitting Diode)光源を設けた。なお、プリズムシートは0.30mm厚の材質PETであり、第1拡散フィルムは0.31mm厚の材質PETであり、第2拡散フィルムは0.38mm厚の材質PETであり、導光板は4.0mm厚の材質アクリルのものを用いた。
【0062】
導光板の表面側には、導光板に垂直な方向に2次元色彩輝度計(コニカミノルタセンシング株式会社製CA2000)を設置し、導光板表面全体の輝度を測定した。得られた輝度に対して色調画像処理を行い、画像に基づき、目視により輝度ムラの発生を評価した。たとえば、周囲と不連続な輝度の変化や、部分的な輝度変化などがないかを目視で評価した。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
表1の「最大凹凸量50μm以下」とは、各被検体の最大凹凸量を調査し、50μmを超えたものを「×」とした。上記例では、最大凹凸量が50μmを超えたもののみを対象とした。なお、前述の通り、最大凹凸量が50μm以下であれば、全て輝度ムラは発生しなかった。また、「最大強度/最大強度波長」は、前述の方法で取得した凹凸形状の波情報に基づいて、フーリエ変換された波の最大強度と、最大強度となる波長を示したものである(波長は周波数および測定条件より求めた)。また、「本評価」は、本発明の評価方法において、基準データを0.6として、波長が128mm以下の領域において0.6を超える強度が認められれば「×」とし、当該領域で0.6以下であれば「○」とした。また、「輝度ムラ」は、実際にバックライトユニットを仮組し、ディスプレイの表面における輝度を評価して、目視で輝度ムラが認められたものを「×」とし、輝度ムラが確認されなかったものを「○」とした。
【0065】
表1に示すように、最大凹凸量が50μmを超える場合でも、凹凸の性状によっては輝度ムラが発生しない例があった。たとえば、No.2、No.3では、強度が0.6以下であり、輝度ムラは発生しなかった。また、No.6は、強度が0.6を超えるが、波長が128mmを超えているため、輝度ムラは発生しなかった。すなわち、輝度ムラはある程度以上の波長成分の凹凸では発生しない。
【0066】
一方、No.1、No.4、No.5は波長128mm以下の範囲の強度が0.6を超えるため、輝度ムラが発生した。
【0067】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0068】
1………反射基材評価装置
3………レーザ変位計
5………解析装置
7………反射基材
30………反射基材
31………凹凸
33………ディスプレイ
35………輝度ムラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射基材の評価装置であって、
変位センサを反射基材の表面に対して移動させて、前記反射基材の表面凹凸形状を検出する凹凸量検出手段と、
前記凹凸量検出手段で検出された凹凸情報をフーリエ変換し、周波数と強度との関係を取得する周波数演算手段と、
前記周波数演算手段により得られた波情報を、あらかじめ設定された基準データと比較し、前記波情報において基準データを超える強度を有するものを不合格とし、基準データを超える強度を有さないものを合格とする合否判定手段と、
を具備することを特徴とする反射基材の評価装置。
【請求項2】
前記反射基材は、バックライトユニット用の発泡体基材であり、
前記凹凸量検出手段は、前記変位センサを前記反射基材の幅方向に対して往復移動可能であり、
前記合否判定では、前記波情報において所定範囲の周波数または周波数から算出される所定範囲の波長の強度に対して、基準データとの比較を行うことを特徴とする請求項1記載の反射基材の評価装置。
【請求項3】
反射基材の評価方法であって、
反射基材の表面に対して変位センサを移動させて、前記反射基材の表面凹凸情報を検出する工程(a)と、
検出された凹凸情報をフーリエ変換して周波数と強度との関係である波情報を取得する工程(b)と、
前記波情報における強度を、あらかじめ設定された基準データと比較する工程(c)と、
を具備し、
前記波情報において、前記基準データを超える強度を有するものを不合格とし、前記基準データを超える強度を有さないものを合格と判断することを特徴とする反射基材の評価方法。
【請求項4】
前記工程(c)は、
測定点数をN点としたとき、波長128mm以下に対応する周波数に対する強度が、0.6N/128を超える場合には不合格とし、0.6N/128以下であれば合格と判断することを特徴とする請求項3記載の反射基材の評価方法。
【請求項5】
前記工程(a)の後、前記工程(a)によって得られた前記凹凸情報から、最大凹凸量を算出する工程(d)を更に有し、
前記最大凹凸量が規定値以下であれば評価を終了し、前記最大凹凸量が規定値以上の場合にのみ、前記工程(b)以下を行うことを特徴とする請求項3または請求項4記載の反射基材の評価方法。
【請求項6】
前記工程(d)で得られた最大凹凸量が50μm以下であれば合格とし、50μmを超える場合にのみ、前記工程(b)以下を行うことを特徴とする請求項5記載の反射基材の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−52900(P2012−52900A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195318(P2010−195318)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】