説明

可変のガイド・ベーンのシーリング

タービンのガイド・デバイスは、タービン・ハウジング(22,23)の中に回転可能に取り付けられたガイド・ベーン(31)を有している。シーリング・スリーブ(80)が、タービン・ハウジング(22)とガイド・ベーン・ステム(32)の間に、配置される。更なる軸方向の圧縮スプリング(90)が、シーリング・スリーブ(80)がガイド・ベーンの接合面(34)の上に連続的に押し付けられることを確保し、その結果として、軸方向の間隙、従って漏洩による流れが防止されることを確保する(図3)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ・マシンの分野に係る。本発明は、回転可能に取り付けられた可変のガイド・ベーンを備えたターボ・マシンのガイド・デバイス、例えば、排ガス・ターボ・チャージャのタービンのガイド・デバイスに係り、また、そのようなガイド・デバイスを備えたタービンを備えた排ガス・ターボ・チャージャにも係る。
【背景技術】
【0002】
排ガス・タービン、例えばターボ・チャージャの排ガス・タービンは、内燃エンジンとともに使用される。この場合、内燃エンジンからの排ガスが、タービン・ホイールを駆動するため推進手段として使用される。タービン・ホイールが、シャフトによりコンプレッサ・ホイールに接続され、このタービン・ホイールにより、内燃エンジンに供給するための吸入エアが圧縮される。
【0003】
現代のエンジンの可変の運転条件に対処するため、固定された流れのカスケード(ノズル・リング)に代わって、排ガス・タービンにおいて、可変のタービン形状(VTG:variable turbine geometries)が使用されることが可能である。この場合には、タービン・ガイド・ベーンの入射の角度が、調整機構により、それぞれの運転ポイントに適合されることが可能である。
【0004】
VTGデバイスは、原則として、軸受ハウジングの中に取り付けられた複数のガイド・ベーン、及びこれらのガイド・ベーンを回転させるための調整機構を有している。VTGデバイスが、例えば、EP 0 226 444 または DE 43 09 636 に記載されている。
【0005】
排ガス・タービンのガイド・ベーンは、運転の間に非常に強く加熱されるので、高温の運転状態において、それらが軸受ブッシュの中に焼き付くことがないように、軸受ブッシュの中に、適切な径方向のクリアランスを備えて取り付けられなければならない。軸受ブッシュとガイド・ベーン・ステムの間の、径方向のクリアランスのために、小量の高温ガスが、常に、ガイド・ベーンの周りの領域から環境中に漏洩する。軸受クリアランスが増大するのに伴い、軸受ブッシュを通るこの漏洩による流れも増大する。これは、タービン効率の損失をもたらし、また、ノイズの増大をもたらし、それは、原則として、ホイッスリングがより強くなる形態でもたらされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第 EP 0 226 444 号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第 DE 43 09 636 号明細書
【発明の概要】
【0007】
従って、本発明の目的は、ターボ・マシンのガイド・デバイスのための調整デバイスを改善することにあり、それによって、運転のために必要なガイド・デバイスの移動部分の間のクリアランスにも拘わらず、漏洩による流れが、ガイド・ベーンの軸受を通って流出することがないか、あるいは、僅かな流れしか漏洩しないようにすることにある。
【0008】
本発明によれば、この目的は、ガイド・ベーンがその中に回転可能に取り付けられるハウジングと、それぞれのガイド・ベーンとの間に配置されたシーリング・スリーブ(シーリング・ダイアフラムまたはシーリング要素とも呼ばれる)により実現される。
【0009】
この場合、シーリング・スリーブは、ガイド・ベーン・ステムを支持するために使用されるガイド・ブッシュの円筒形の外径または内径により、好ましくは、軸方向にガイドされる。径方向の残された間隙が、恐らくはシーリング・スリーブとガイド・ブッシュの間に残るが、この間隙は、僅かな残されたマスフローのみが嵌め合い部を介して漏洩するように、最小のクリアランスに抑えられる。
【0010】
本発明によれば、更なる軸方向の圧縮スプリングが、シーリング・スリーブがガイド・ベーンの接合面の上に連続的に押し付けられることを確保し、その結果として、軸方向の間隙、従って漏洩による流れが防止されることを確保する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、可変のガイド・ベーンを備えたガイド・デバイスを備えた排ガス・ターボ・チャージャの、タービン側の、部分の断面を示す。
【図2】図2は、シールされないガイド・ベーンを備えた、図1に基づくガイド・デバイスの一部の断面を示す。
【図3】図3は、本発明に基づきシールされたガイド・ベーンを備えた、図2に基づく装置の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明が、図面を参照しながら、より詳細に説明される。
【0013】
本発明に基づく可変のガイド・ベーンのシーリングは、ガイド・デバイスを備えた全てのターボ・マシンで使用されることが可能であり、それは、可変のガイド・ベーンを備えた、例えば、排ガス・ターボ・チャージャ、パワー・タービン、ガス・タービンまたはコンプレッサなどである。
【0014】
図1は、タービン・ハウジングの中に配置された、タービン・ホイール10を備えた排ガス・ターボ・チャージャのタービン側を示す。タービン・ホイールは、ハブ11及びロータ・ブレード12を有し、ロータ・ブレードは、ハブ上に固定され、または、ハブと一体的に製造されている。タービン・ハウジングは、ガス入口ハウジング21、軸受ハウジング22を有し、また、タービン・ホイールのハブの背後に、隔壁23を有している。隔壁は、高温のタービン・ホイールからの、軸受ハウジングの熱的な遮蔽のために用いられる。隔壁は、その代わりに、軸受ハウジングまたはガス入口ハウジングの一部により形成されることも可能である。
【0015】
ガイド・デバイスは、ロータ・ブレードに通じる流れの経路の中に配置される。ガイド・デバイスは、排ガスの流れ70をコントロールするための、可変のガイド・ベーン31を有している。ガイド・ベーンは、タービン・ハウジングの中に、ガイド・ベーン・ステム32により、回転可能に取り付けられている。ガイド・ベーン31は、ガイド・ベーン・ステム32の軸の周りで、調整レバー41により、回転されることが可能である。調整レバーは、ガイド・ベーン31を、規定された設定角度に位置させるために、調整リング42により駆動される。
【0016】
ガイド・ベーン・ステム32は、小さなクリアランスを備えたタービン・ハウジングの中に取り付けられている。タービン・ハウジングは、ガイド・ベーン・ステムの軸受の領域内で、高い磨耗抵抗及び良好な摺動性を有するガイド・ブッシュ50を、好ましくは、有している。ガイド・ブッシュは、タービン・ハウジングの中に押し込まれて、固定される。
【0017】
図2及び図3から明らかなように、ガイド・ベーン・ステムは、軸受33を有し、この軸受は、ガイド・ブッシュ50の内側に、摺動可能な状態で取り付けられている。それに加えて、ガイド・ベーン・ステムは、更なる軸受を、好ましくは、ガイド・ベーンの反対側の端部に、有することが可能である。ガイド・ベーンの軸方向の支持は、原則として、一つまたは二つの軸方向の停止部により行われ、または、一方の側で、ガイド・ベーン・ステムの端部により、もう一方の側で、ガイド・ベーンの輪郭により行われる。ガイド・ベーンの軸方向の固定は、圧縮スプリングにより確保されることが可能である。
【0018】
ガイド・ベーンは、運転の間に非常に強く加熱されるので、高温の運転状態において、それらが軸受ブッシュの中に焼き付くことがないように、軸受ブッシュの中に、適切な径方向のクリアランスを備えて取り付けられなければならない。結果として、軸受33の領域の中、及びガイド・ベーンの接合面34の径方向外側の両方に、漏洩による流れが流出することが可能な小さな間隙が、生ずる。
【0019】
タービン効率の漏洩に起因する損失を、できる限り防止することを可能にするため、そして、ターボ・チャージャの軸受(可能な限り低い温度に維持されなければならない)の中への高温の排ガスの浸入を防止するために、シーリング・エアが隔壁の背後にあるキャビティ61の中に導入されることが可能である。この圧縮されたエアは、排ガスと比べて大幅に温度が低く、外側に供給されることが可能であり、あるいは、図1に示されているように、コンプレッサ出口で分岐され、シーリング・エアの経路62により、タービン側へガイドされることが可能である。シーリング・エアは、キャビティ61の中にガイドされ、タービンの全周に沿って分配される。シーリング・エアは、好ましくは、排ガスの流れ70と比べて、少なくとも僅かに高い圧力を有している。
【0020】
図2による、従来のガイド・デバイスの場合には、ガイド・ブッシュ50とガイド・ベーン・ステムの軸受33の間の径方向のクリアランスのために、高温ガス、あるいは、もしそれがある場合にはシーリング・エアが、キャビティ61から環境の中へ漏洩することが可能である。その結果、漏洩による流れ63が生ずる。
【0021】
この漏洩による流れは、本発明により、シーリング・スリーブ80が、図3によるガイド・ブッシュ50の上にはめ込まれることにより防止される。本発明に基づくシーリング・スリーブは、好ましくは、耐熱鋼から製造され、好ましくは、鋳造され、旋盤加工されまたは圧延される。シーリング・スリーブにより埋められることになる軸方向の間隙の軸方向の長さに依存して、シーリング・スリーブは、より長くそしてより管状に、あるいは、より短くそしてより環状に、軸方向に形成されることが可能である。シーリング・スリーブは、円筒形のカラー、軸方向の停止部を備え、径方向に突出し、少なくとも部分的に取り囲むカラーを有している。シーリング・スリーブ80は、図に示されていない実施形態において、ガイド・ブッシュ50の円筒形の外径により支持される。
【0022】
シーリング・スリーブ80とガイド・ブッシュ50の間の、可能性のある径方向の間隙は、最小のクリアランスに抑えられる。パーツの間のこの径方向のクリアランスは、運転の間、互いに対して動くことがないか、あるいはほとんど動くことがなく、軸受33のガイド・ベーン・ステムとガイド・ブッシュの間のクリアランスと比べて大幅に小さく維持されることが可能である。それ故に、仮に存在するとしても、僅かな残されたマスフローのみが、嵌め合い部を通って漏洩する。更なる軸方向の圧縮スプリング90が、シーリング・スリーブがガイド・ベーンの接合面34の上に連続的に押し付けられることを確保し、その結果として、軸方向の間隙、従って漏洩による流れが防止される。
【0023】
圧縮スプリング90が、タービン・ハウジング22の軸方向の停止部と、シーリング・スリーブ80の円筒形のカラーの軸方向の停止部の間に固定される。この圧縮スプリング90は、ガイド・ベーンを軸方向に確保することを、更にまた引き受けることが可能であり、それは、ガイド・ベーンの輪郭が、圧縮スプリングにより流れの経路の反対側の壁に対して押し付けられること、または、タービン・ハウジング上のもう一方の軸方向の停止部に対して押し付けられることによる。
【0024】
図に示されていない更なる実施形態において、例えば、もし、ガイド・ベーン軸受のガイド・ブッシュが、アクセス可能な状態で、配置されていない場合、または、全く存在しない場合には、シーリング・スリーブは、タービン・ハウジングの一部の上に直接はめ込まれることも可能である。この場合には、シーリング・スリーブは、ハウジング・コンポーネントの円筒形の外径により支持されることになる。その代わりに、シーリング・スリーブが、ガイド・ブッシュの内側で、または、タービン・ハウジングの円筒形のリセスの内側で、径方向にガイドされることも可能である。
【0025】
本発明に基づくシーリング・スリーブは、それ故に、回転可能に取り付けられた可変のガイド・ベーンを備えた排ガス・タービンにおいて、または、その以外の何れかのターボ・マシンにおいて、シーリング・エアの供給の有無に拘わらず、ガイド・ベーンの軸受を通るエアまたはガスの放出を防止する。
【符号の説明】
【0026】
10…タービン・ホイール、11…ハブ、12…ロータ・ブレード、13…シャフト、21…ガス入口ハウジング、22…軸受ハウジング、23…隔壁、31…ガイド・ベーン、32…ガイド・ベーン・ステム、33…軸受、34…接合面、41…調整レバー、42…調整リング、調整要素、50…ガイド・ブッシュ、60…シーリング・エアの流れ、61…キャビティ、62…シーリング・エアの経路、63…漏洩、70…高温ガスの流れ、80…シーリング・スリーブ、90…圧縮スプリング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイド・デバイスであって、ハウジングの中に回転可能に取り付けられたガイド・ベーン・ステムを備えた少なくとも一つのガイド・ベーンを有するガイド・デバイスにおいて、
シーリング・スリーブが、軸方向の間隙を埋めるために、ハウジングとガイド・ベーン・ステムの間に配置されていることを特徴とするガイド・デバイス。
【請求項2】
下記特徴を有する請求項1に記載のガイド・デバイス:
前記シーリング・スリーブは、軸方向の停止部を備えた径方向に突出するカラーを有している。
【請求項3】
下記特徴を有する請求項1に記載のガイド・デバイス:
前記シーリング・スリーブは、圧縮スプリングにより、前記ガイド・ベーンの接合面に対して押し付けられている。
【請求項4】
下記特徴を有する請求項3に記載のガイド・デバイス:
前記シーリング・スリーブは、軸方向の停止部を備えた径方向に突出するカラーを有している。
【請求項5】
下記特徴を有する請求項1から4の何れか1項に記載のガイド・デバイス:
前記ハウジングは、前記ガイド・ベーン・ステムを支持するためのガイド・ブッシュを有し、前記シーリング・スリーブは、前記ガイド・ブッシュと前記ガイド・ベーン・ステムの間の間隙を埋めている。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載のガイド・デバイスを備えたターボ・マシン。
【請求項7】
下記特徴を有する請求項6に記載のターボ・マシン:
前記ハウジングは、前記ガイド・ベーン・ステムを支持するためのガイド・ブッシュを有し、
前記シーリング・スリーブは、前記ガイド・ブッシュと前記ガイド・ベーン・ステムの間の間隙を埋めている。
【請求項8】
請求項1から4のいずれか1項に記載のガイド・デバイスを備えた排ガス・ターボ・チャージャ。
【請求項9】
下記特徴を有する請求項8に記載の排ガス・ターボ・チャージャ:
前記ハウジングは、前記ガイド・ベーン・ステムを支持するためのガイド・ブッシュを有し、
前記シーリング・スリーブは、前記ガイド・ブッシュと前記ガイド・ベーン・ステムの間の間隙を埋めている。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−501786(P2010−501786A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526069(P2009−526069)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058888
【国際公開番号】WO2008/025749
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(501405177)アーベーベー ターボ システムズ アクチエンゲゼルシャフト (37)
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 71a, CH−5400 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】