説明

吸着装置及びロボットシステム

【課題】吸着パッドの摩耗を検出することが可能な吸着装置及びロボットシステムを提供する。
【解決手段】ロボットシステム10は、搬送物Gを吸着する吸着パッド76及び吸着パッド76の吸着圧力を検出する圧力センサ66a〜66dが設けられたエンドエフェクタ48a、48bを有するロボット20と、吸着パッド76が搬送物Gを吸着してから吸着パッド76の吸着圧力が安定するまでの間に圧力センサ66a〜66dが検出した吸着圧力の過渡データDに基づいて、吸着パッド76の摩耗を判断する判断部86を有する制御装置30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着装置及びロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、移送ロボットが記載されている。移送ロボットは、搬送物を載置するハンド部と、ハンド部を回動可能に支持する第2アームと、第2アームを回転可能に支持する第1アームと、を少なくとも備え、ハンド部が一方向に移動するようにアームが回転する水平アーム機構と、水平アーム機構を上下に移動させる昇降機構とを備えている。
この移送ロボットのハンド部には、搬送物をエア吸着する吸着パッドが設けられている場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4466785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで一般に、吸着パッドは使用頻度に応じて摩耗する。この吸着パッドの摩耗は、吸着パッドに吸着された搬送物がずれることにより初めて発見される。
本発明は、吸着パッドの摩耗を検出することが可能な吸着装置及びロボットシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う第1の発明に係るロボットシステムは、搬送物を吸着する吸着パッド及び該吸着パッドの吸着圧力を検出する圧力センサが設けられたエンドエフェクタを有するロボットと、
前記吸着パッドが前記搬送物を吸着してから該吸着パッドに吸着された該搬送物が移動を開始するまでの間に前記圧力センサが検出した前記吸着圧力の過渡データに基づいて、前記吸着パッドの摩耗を判断する判断部を有する制御装置とを備える。
【0006】
第1の発明に係るロボットシステムにおいて、前記判断部は、前記過渡データに基づいて、前記吸着パッドの吸着圧力が第1の大きさから第2の大きさまで変化するために必要な時間が、予め決められた時間を超えたことである第1の条件を満たしたと判断した場合に、第1のアラームを出力することができる。
【0007】
第1の発明に係るロボットシステムにおいて、前記第1の大きさを、前記吸着パッドが前記搬送物を吸着した際の前記吸着圧力の大きさとし、
前記第2の大きさを、前記吸着パッドに吸着された前記搬送物が移動を開始する際の前記吸着圧力の大きさとすることができる。
【0008】
第1の発明に係るロボットシステムにおいて、前記判断部は、前記吸着パッドが摩耗していない場合に該吸着パッドが前記搬送物を吸着してから該吸着パッドの吸着圧力が安定するまでの間に前記圧力センサから取得された、前記過渡データに対応する基準過渡データと、前記過渡データとの不一致度合いを求め、
該不一致度合いが予め決められた大きさを超えたことである第2の条件を満たしたと判断した場合に、第2のアラームを出力することができる。
【0009】
第1の発明に係るロボットシステムにおいて、前記判断部は、前記過渡データと、該過渡データと相関のある相関データとの不一致度合いを求め、
該不一致度合いが予め決められた大きさを超えたことである第3の条件を満たしたと判断した場合に、第3のアラームを出力することができる。
【0010】
第1の発明に係るロボットシステムにおいて、前記相関データは、前記過渡データの移動平均のデータであることが好ましい。
【0011】
第1の発明に係るロボットシステムにおいて、前記判断部は、前記第1〜第3のアラームのうちいずれかのアラームを出力するたびにその出力回数をカウントし、該出力回数が予め決められた値を超えたことである第4の条件を満たしたと判断した場合に第4のアラームを出力することができる。
【0012】
第1の発明に係るロボットシステムにおいて、前記吸着パッドは、該吸着パッドの吸着圧力を制御する圧力配管系統毎に設けられ、
前記圧力センサは、前記各圧力配管系統に設けられることが好ましい。
【0013】
第1の発明に係るロボットシステムにおいて、前記エンドエフェクタは、前記各圧力センサが出力するアナログ信号をデジタル信号に変換して出力するA/D変換器と、
前記A/D変換器の出力をパラレル信号からシリアル信号に変換して出力するパラレル/シリアル変換器と、
前記パラレル/シリアル変換器が出力したシリアル信号を伝送する送信器とを有し、
前記制御装置は、前記送信器が伝送した前記シリアル信号を受信する受信器を有することが好ましい。
【0014】
第1の発明に係るロボットシステムにおいて、前記エンドエフェクタは、フレームと、前記フレームから延びるフォーク部材とを有し、
前記A/D変換器、前記パラレル/シリアル変換器、及び前記送信器が、前記フレームに設けられ、
前記吸着パッドが、前記フォーク部材に設けられることが好ましい。
【0015】
前記目的に沿う第2の発明に係る吸着装置は、物品を吸着する吸着パッドと、
前記吸着パッドの吸着圧力を検出する圧力センサと、
前記吸着パッドが前記物品を吸着してから該吸着パッドの吸着圧力が安定するまでの間に前記圧力センサが検出した前記吸着圧力の過渡データに基づいて、前記吸着パッドの摩耗を判断する判断部とを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る吸着装置及びロボットシステムにおいては、吸着パッドの摩耗を検出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係るロボットシステムが有するロボットの背面図である。
【図2】同ロボットシステムが有するロボットの右側面図である。
【図3】同ロボットシステムが有するロボットのエンドエフェクタの平面図である。
【図4】図3のY方向矢視図である。
【図5】同ロボットシステムが有するロボットのエンドエフェクタに設けられた吸着パッドの圧力配管系統図である。
【図6】同ロボットシステムが有するロボットの吸着パッドの圧力信号を伝送するための構成を示す説明図である。
【図7】同ロボットシステムの機能ブロック図である。
【図8】同ロボットシステムが吸着パッドの摩耗を検出する動作を示すフローチャートである。
【図9】同ロボットシステムが有する制御装置のデータ記憶部に記憶された過渡データを示すグラフである。
【図10】同ロボットシステムが有する制御装置の基準データ記憶部に記憶された基準過渡データを示すグラフである。
【図11】同ロボットシステムが有する制御装置のデータ記憶部に記憶された過渡データの移動平均のデータを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。なお、各図において、説明に関連しない部分は図示を省略する場合がある。
【0019】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係るロボットシステム10は、基板搬送ロボット(ロボットの一例)20と、基板搬送ロボット20の動作を制御する制御装置30とを備えている。
基板搬送ロボット20は、走行機構42、昇降機構44、並びに第1及び第2のアーム部46a、46bを有し、第1及び第2のアーム部46a、46bの先端部にそれぞれ設けられた第1及び第2のエンドエフェクタ48a、48bを用いて図3に示す液晶ガラス基板G(搬送物及び物品の一例)を搬送することができる。
走行機構42は、液晶ガラス基板Gの搬送方向と交差する走行方向(図1に示す矢印参照)に昇降機構44を移動させることができる。
昇降機構44は、基板搬送ロボット20の設置面と交差する軸S1回りに旋回することができる。昇降機構44は、複数の左脚部52a、52a、52a及び右脚部52b、52b、52bを略水平方向に延びる各関節軸J1回りに回転させ、支持ベース54を昇降させることができる(図1に示す矢印参照)。
【0020】
第1及び第2のアーム部46a、46bは、それぞれ、支持ベース54に設けられている。第1のアーム部46aは、第2のアーム部46bの上方に設けられている。第1のアーム部46aは、第1のアーム56a及び第2のアーム57aを有している。基板搬送ロボット20は、これら第1及び第2のアーム56a、57aが関節軸J2(図1及び図2参照)回りに回転して第1のアーム部46a、46bが伸縮することにより、第1のアーム56aの先端部に設けられた第1のエンドエフェクタ48aを搬送方向に移動させることができる。
第2のアーム部46bは、第1のアーム部46aと同様に構成される。従って、基板搬送ロボット20は、第2のエンドエフェクタ48bを搬送方向に移動させることができる。
このように、基板搬送ロボット20は、第1及び第2のエンドエフェクタ48a、48bにそれぞれ載った液晶ガラス基板Gを搬送することができる。
【0021】
第1のエンドエフェクタ48aは、図3に示すように、第2のアーム57aの先端部に取り付けられるフレーム60と、フレーム60からフレーム60の長手方向に交差する方向に間隔をあけて延びる、例えば4本のフォーク部材62a〜62dとを有している。第2のエンドエフェクタ48bは、第1のエンドエフェクタ48aと同様の構成であるため、以下、その詳細な説明は省略する。
【0022】
図4に示すように、フレーム60には、ソレノイドバルブ64a〜64d、圧力センサ66a〜66d、A/D変換器68、パラレル/シリアル変換器72、及び送信器74が設けられている。
各フォーク部材62a〜62dの液晶ガラス基板Gが載せられる側の面には、例えば4つの吸着パッド76が設けられている。基板搬送ロボット20は、これら吸着パッド76にて液晶ガラス基板Gをエア吸着し、液晶ガラス基板Gを保持して搬送することができる。
【0023】
吸着パッド76の圧力配管系統(以下、単に「系統」という。)は、図5に示すように、例えば、フォーク部材62a〜62d毎に分かれて構成されている。具体的には、第1のフォーク部材62aに設けられた4つの吸着パッド76は、系統1、第2のフォーク部材62bに設けられた4つの吸着パッド76は、系統2、第3のフォーク部材62cに設けられた4つの吸着パッド76は、系統3、第4のフォーク部材62dに設けられた4つの吸着パッド76は、系統4に分けて設けられる。
なお、図5に示した「ロボット本体」とは、基板搬送ロボット20から第1及び第2のエンドエフェクタ48a、48bを除いたものをいう(以下、同様)。
【0024】
各系統に設けられたソレノイドバルブ64a〜64dは、吸着パッド76の吸着及び非吸着を制御することができる。従って、液晶ガラス基板Gの吸着及び非吸着は、系統ごとに制御される。
【0025】
各系統に設けられた圧力センサ66a〜66dは、吸着パッド76の吸着圧力を検出することができる。圧力センサ66a〜66dは、検出した吸着圧力をアナログ信号にて出力することができる。
各圧力センサ66a〜66dが出力するアナログ信号は、例えば4チャンネルのA/D変換器68(図4及び図6参照)によってデジタル信号に変換されて出力される。A/D変換器68の各出力は、パラレル/シリアル変換器72によって、パラレル信号からシリアル信号に変換され出力される。パラレル/シリアル変換器72の出力は、送信器74によって伝送される。なお、信号の伝送方式は、時分割サイクリック伝送方式とすることができる。
【0026】
送信器74によって伝送されたシリアル信号は、信号ケーブルを介して制御装置30の内部に設けられた受信器82に伝送される(図6及び図7参照)。なお、信号ケーブルは、図1に示した第1のエンドエフェクタ48aから第1のアーム部46aの内部、昇降機構44、走行機構42、制御装置30へと配線されている。
このように、吸着圧力のデータがデジタル変換されて伝送されるので、アナログ信号のまま伝送される場合よりも信号の耐ノイズ性能が向上する。また、吸着圧力の信号がシリアル変換されて伝送されるので、基板搬送ロボット20に配線される信号ケーブルの本数が低減される。
【0027】
制御装置30は、図6に示すように、前述の受信器82と、データ取得部84と、判断部86とを有している。データ取得部84及び判断部86は、例えば、CPUにより実行されるソフトウェアにより実現される。
受信器82は、前述の通り、第1及び第2のエンドエフェクタ48a、48bにそれぞれ設けられた送信器74から伝送されたシリアル信号をそれぞれ受信する。
【0028】
データ取得部84は、第1及び第2のエンドエフェクタ48a、48bの各系統について、受信器82から吸着圧力のデータ(図9参照)を取得することができる。データ取得部84は、取得したデータを、例えばフラッシュメモリやハードディスクにより構成されるデータ記憶部88に記憶することができる。この吸着圧力のデータは、吸着パッド76が液晶ガラス基板Gを吸着してから、吸着パッド76の吸着圧力が安定して吸着パッド76に吸着されたガラス基板Gが移動を開始するまでの間に各圧力センサ66a〜66dが検出した吸着圧力のデータ(過渡データD)を含んでいる。
ここで、吸着パッド76が液晶ガラス基板Gを吸着した瞬間を、吸着圧力に基づいて厳密に特定することは困難である。吸着パッド76が液晶ガラス基板Gを吸着したことは、図9記載のA部に示すように吸着圧力の変化率が急激に乱れることにより判断され、例えば、上昇する吸着圧力が更に上昇する変化点C(時刻t1)にて、吸着パッド76が液晶ガラス基板Gを吸着したと判断(定義)することができる。また、吸着圧力が安定したこと(吸着圧力100%)は、吸着圧力の変動が予め決められた範囲内に収まることにより判断される。
【0029】
判断部86は、データ記憶部88に記憶された各系統についての過渡データDに基づいて、吸着パッド76が摩耗したか否かの判断基準となる第1〜第3の条件の成否を、系統毎に判断する。
【0030】
第1の条件は、過渡データDに基づいて、吸着パッド76の吸着圧力が第1の大きさから第2の大きさまで変化するために必要な時間が、予め決められた時間を超えたことである。
この第1の大きさは、例えば、吸着パッド76が液晶ガラス基板Gに接触した際の吸着圧力の大きさとすることができる。また、第2の大きさは、吸着パッド76の吸着圧力が安定し、吸着パッド76に吸着されたガラス基板Gが移動を開始した際の吸着圧力の大きさとすることができる。即ち、第1の条件は、例えば、図9に示す時刻t1から時刻t2(吸着圧力が安定した時刻)までの時間T1が予め決められた時間を超えたこととすることができる。
判断部86は、第1の条件を満たしたと判断した場合には、吸着パッド76が摩耗したとして第1のアラームを出力する。
【0031】
第2の条件は、過渡データDと、過渡データDに対応する基準過渡データDとの不一致度合いが予め決められた大きさを超えたことである。ここで、基準過渡データDは、吸着パッド76が摩耗していない場合に吸着パッド76が液晶ガラス基板Gを吸着してから吸着パッド76の吸着圧力が安定するまでの間に各圧力センサ66a〜66dが検出した吸着圧力のデータである。基準過渡データDは、事前に取得され、基準データ記憶部90(図6参照)に記憶される。第2の条件の予め決められた大きさは、基準過渡データDの例えば±10%(図10に示す境界RL1、RU1)とすることができる。
判断部86は、過渡データDと、基準過渡データDとの不一致度合いを求める。判断部86は、第2の条件を満たしたと判断した場合には、吸着パッド76が摩耗したとして第2のアラームを出力する。
【0032】
第3の条件は、過渡データDと、過渡データDの移動平均のデータD1(相関データの一例)との不一致度合いが予め決められた大きさを超えたことである。この予め決められた大きさは、移動平均のデータD1の例えば±10%(図11に示す境界RL2、RU2)とすることができる。
判断部86は、過渡データDと、過渡データDの移動平均のデータD1との不一致度合いを求める。判断部86は、第3の条件を満たしたと判断した場合には、吸着パッド76が摩耗したとして第3のアラームを出力する。
【0033】
第4の条件は、第1〜第3のアラームの出力回数が予め決められた値を超えたことである。
判断部86は、第1〜第3のアラームのうちいずれかのアラームを出力するたびにその出力回数を累積してカウントする。判断部86は、第4の条件を満たしたと判断した場合には、吸着パッド76が摩耗したとして第4のアラームを出力する。
【0034】
次に、ロボットシステム10が吸着パッド76の摩耗を検出する動作について図8に基づいて説明する。この摩耗検出動作は、基板搬送ロボット20が液晶ガラス基板Gを吸着するたびに、実行される。
まず、事前準備として、前述の基準過渡データDを基準データ記憶部90に記憶しておく。
【0035】
(ステップS1)
基板搬送ロボット20が、第1のエンドエフェクタ48aを液晶ガラス基板Gの下方へ移動させる。各ソレノイドバルブ64a〜64dを開き、吸着パッド76に吸着圧力を発生させる。
【0036】
(ステップS2)
データ取得部84が、吸着圧力のデータの取得を開始する。データ取得部84が取得するデータは、データ記憶部88に記憶される。基板搬送ロボット20が、第1のエンドエフェクタ48aを液晶ガラス基板Gの下方から上方へと移動させる。
次に、第1のエンドエフェクタ48aの吸着パッド76が液晶ガラス基板Gに接触する。吸着パッド76が液晶ガラス基板Gを吸着する際、データ取得部84が取得するデータに、図9記載のA部に示す変動が現れる。基板搬送ロボット20は、第1のエンドエフェクタ48aを更に上方へと移動する。
【0037】
(ステップS3)
基吸着圧力のデータが安定した場合には、次のステップS4へ進む。吸着圧力のデータが安定していない場合には、データ取得部84は、ステップS2に示したデータ取得を継続する。
【0038】
(ステップS4)
データ取得部84が、データの取得を終了する。
【0039】
(ステップS5)
判断部86は、前述の第1〜第3の条件を満たすか否かを判断する。第1〜第3の条件を満たす場合には、次ステップS6を実行する。第1〜第3の条件を満たしていない場合には、動作を終了する。
【0040】
(ステップS6)
判断部86は、対応する第1〜第3のアラームを出力する。
【0041】
(ステップS7)
判断部86は、アラームの出力回数を1回増やす。なお、本ステップにて、例えば第1及び第2のアラーム(合計2つのアラーム)を出力した場合には、アラームの出力回数を2回増やす。
【0042】
(ステップS8)
判断部86は、更に、第4の条件を満たすか否かを判断する。第1〜第3のアラームの出力回数が累積し、第4の条件を満たしている場合には、次ステップS9を実行する。第4の条件を満たしていない場合には、吸着パッド76の摩耗の検出動作を終了する。
【0043】
(ステップS9)
判断部86は、第4のアラームを出力する。
なお、判断部86は第1〜第3のアラームは外部に出力せずに、第4のアラームのみを出力することも可能である。搬送する液晶ガラス基板Gの平面度に大きなばらつきがあると、液晶ガラス基板Gによっては、吸着がうまくいかず、吸着パッド76の摩耗と誤検出される場合がある。第4のアラームのみを出力することで、液晶ガラス基板Gの平面度に大きなばらつきがあっても、誤検出が抑制される。
【0044】
以降、ロボットシステム10は、液晶ガラス基板Gを吸着するたびに、前述のステップS1〜S9を繰り返し、吸着パッド76の摩耗を検出する。
本実施の形態によれば、吸着パッド76の摩耗が事前に検出される。特に、吸着パッド76が各系統に分かれて設けられているので、摩耗した吸着パッド76が容易に特定される。
【0045】
前述の実施の形態について、別の観点から見ると、1)物品を吸着する吸着パッド、2)吸着パッドの吸着圧力を検出する圧力センサ、及び3)吸着パッドが物品を吸着してから吸着パッドの吸着圧力が安定するまでの間に圧力センサが検出した吸着圧力の過渡データに基づいて、吸着パッドの摩耗を判断する判断部は、物品を吸着する吸着装置と捉えることもできる。この吸着装置は、例えばピッキング装置等、ロボットシステム以外の装置に適用することができる。
【0046】
なお、本発明は、前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能である。例えば、前述の実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて発明を構成する場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
ロボットの形態は任意でよい。例えば、アームの軸数は任意でよい。また、ダブルアームでなく、シングルアームであってもよい。更に言えば、ロボットは、例えば、アームの先端にエンドエフェクタを有する6軸(又は7軸の)の産業用ロボットであってもよい。
系統は、フォーク部材毎に分けなくてもよい。例えば、大きさの異なる搬送物を搬送する場合に、各搬送物に接触する吸着パッドに応じて系統を分けることができる。
判断部は、第1〜第4のアラームのうち、一部のアラームだけを出力することもできる。
相関データは、移動平均のデータD1に限定されるものではない。相関データの他の例として、過渡データDに何らかの処理をして得られた新たなデータが挙げられる。
【符号の説明】
【0047】
10:ロボットシステム、20:基板搬送ロボット、30:制御装置、42:走行機構、44:昇降機構、46a:第1のアーム部、46b:第2のアーム部、48a:第1のエンドエフェクタ、48b:第2のエンドエフェクタ、52a、52a、52a:左脚部、52b、52b、52b:右脚部、54:支持ベース、56a:第1のアーム、57a:第2のアーム、60:フレーム、62a、62b、62c、62d:フォーク部材、64a、64b、64c、64d:ソレノイドバルブ、66a、66b、66c、66d:圧力センサ、68:A/D変換器、72:パラレル/シリアル変換器、74:送信器、76:吸着パッド、82:受信器、84:データ取得部、86:判断部、88:データ記憶部、90:基準データ記憶部、G:液晶ガラス基板




【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物を吸着する吸着パッド及び該吸着パッドの吸着圧力を検出する圧力センサが設けられたエンドエフェクタを有するロボットと、
前記吸着パッドが前記搬送物を吸着してから該吸着パッドに吸着された該搬送物が移動を開始するまでの間に前記圧力センサが検出した前記吸着圧力の過渡データに基づいて、前記吸着パッドの摩耗を判断する判断部を有する制御装置とを備えたロボットシステム。
【請求項2】
請求項1記載のロボットシステムにおいて、前記判断部は、前記過渡データに基づいて、前記吸着パッドの吸着圧力が第1の大きさから第2の大きさまで変化するために必要な時間が、予め決められた時間を超えたことである第1の条件を満たしたと判断した場合に、第1のアラームを出力するロボットシステム。
【請求項3】
請求項2記載のロボットシステムにおいて、前記第1の大きさは、前記吸着パッドが前記搬送物を吸着した際の前記吸着圧力の大きさであり、
前記第2の大きさは、前記吸着パッドに吸着された前記搬送物が移動を開始する際の前記吸着圧力の大きさであるロボットシステム。
【請求項4】
請求項2又は3記載のロボットシステムにおいて、前記判断部は、前記吸着パッドが摩耗していない場合に該吸着パッドが前記搬送物を吸着してから該吸着パッドの吸着圧力が安定するまでの間に前記圧力センサから取得された、前記過渡データに対応する基準過渡データと、前記過渡データとの不一致度合いを求め、
該不一致度合いが予め決められた大きさを超えたことである第2の条件を満たしたと判断した場合に、第2のアラームを出力するロボットシステム。
【請求項5】
請求項4記載のロボットシステムにおいて、前記判断部は、前記過渡データと、該過渡データと相関のある相関データとの不一致度合いを求め、
該不一致度合いが予め決められた大きさを超えたことである第3の条件を満たしたと判断した場合に、第3のアラームを出力するロボットシステム。
【請求項6】
請求項5記載のロボットシステムにおいて、前記相関データは、前記過渡データの移動平均のデータであるロボットシステム。
【請求項7】
請求項5記載のロボットシステムにおいて、前記判断部は、前記第1〜第3のアラームのうちいずれかのアラームを出力するたびにその出力回数をカウントし、該出力回数が予め決められた値を超えたことである第4の条件を満たしたと判断した場合に第4のアラームを出力するロボットシステム。
【請求項8】
請求項7記載のロボットシステムにおいて、前記吸着パッドは、該吸着パッドの吸着圧力を制御する圧力配管系統毎に設けられ、
前記圧力センサは、前記各圧力配管系統に設けられるロボットシステム。
【請求項9】
請求項8記載のロボットシステムにおいて、前記エンドエフェクタは、前記各圧力センサが出力するアナログ信号をデジタル信号に変換して出力するA/D変換器と、
前記A/D変換器の出力をパラレル信号からシリアル信号に変換して出力するパラレル/シリアル変換器と、
前記パラレル/シリアル変換器が出力したシリアル信号を伝送する送信器とを有し、
前記制御装置は、前記送信器が伝送した前記シリアル信号を受信する受信器を有するロボットシステム。
【請求項10】
請求項9記載のロボットシステムにおいて、前記エンドエフェクタは、フレームと、前記フレームから延びるフォーク部材とを有し、
前記A/D変換器、前記パラレル/シリアル変換器、及び前記送信器が、前記フレームに設けられ、
前記吸着パッドが、前記フォーク部材に設けられるロボットシステム。
【請求項11】
物品を吸着する吸着パッドと、
前記吸着パッドの吸着圧力を検出する圧力センサと、
前記吸着パッドが前記物品を吸着してから該吸着パッドの吸着圧力が安定するまでの間に前記圧力センサが検出した前記吸着圧力の過渡データに基づいて、前記吸着パッドの摩耗を判断する判断部とを備えた吸着装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−152843(P2012−152843A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13103(P2011−13103)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】