説明

回生制動を持つ車両の独立制動及び操縦性の制御方法及びシステム

【課題】エネルギー回収と車両操縦性とを最適化する。
【解決手段】当初回生制動を行なう車両における操縦性を維持するために、前後の制動トルクを監視そして動的に調整する、フィードバック制御アルゴリズムを用いる、制御が提供される。単比例・積分・導関数フィードバック制御器を用いることが出来る。制御器46は、少なくとも一つの実際の車両操縦性値と少なくとも一つの所定の操縦性目標値とに基づき、様々な割合で、各車輪42,64の非回生制動を独立して、そして回生制動を、選択的に作動させるために、車輪速、横加速度、ヨーレート及びブレーキ位置、を監視することが出来る。操縦性要素が、所定の縦スリップ率、スリップ角又はヨーレートの比較を含むことが出来る。後輪駆動構成については、非回生制動を、旋回外側のフロント・アクスル68の車輪にのみ行い、前輪駆動構成については、非回生制動を、旋回内側のリア・アクスルの車輪にのみ行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には、一般的にスタビリティ・コントロール・システムと呼ばれる車両の制動及び操縦性制御システムに関し、具体的には、ここの非回生制動輪の制動制御を行なうことにより、車両のオーバーステアとアンダーステアを低減しながらエネルギー回収を最適化する回生制動を持つ車両の制動及び操縦性制御方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車など主に内燃機関(internal combustion engine: ICE)により駆動される車両化石燃料消費量と排出量を低減する必要性は良く知られている。電気モーターにより駆動される車両は、このような必要性に対処するものである。他の解決策は、一つの車両において小型のICEに電気モーターを組合せる、というものである。そのような車両は、内燃機関車両と電気車両の利点を組合せるものであり、一般的にハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle: HEV)と呼ばれている(例えば特許文献1を参照)。
HEVは、各種組合せで記載されてきた。多くのHEV特許は、電気動作と内燃機関動作との間で選択することをドライバーに要求するシステムを開示する。他の構成においては、電気モーターが一組の車輪を駆動し、内燃機関が別の組の車輪を駆動する。
【0003】
他のより有用な構成も開発されてきた。例えば、シリーズ・ハイブリッド電気自動車(series hybrid electric vehicle: SHEV)構成は、発電機と呼ばれる電気モーターに接続されたエンジン(最も一般的にはICE)を持つ車両である。発電機はそして、電気を、バッテリーと、推進モーターと呼ばれるもう一つのモーターとへ、供給する。SHEVにおいて、推進モーターは、車輪トルクの唯一の供給源である。エンジンと駆動輪との間には、機械的接続はない。パラレル・ハイブリッド電気自動車(parallel hybrid electric vehicle: PHEV)構成は、エンジン(最も一般的にはICE)と電気モーターを持ち、両者が、様々な程度に協働して、車両を駆動するのに必要なトルクを供給する。加えて、PHEV構成においては、モーターをICEが発生したエネルギーによりバッテリーを充電するための発電機として用いることが出来る。
【0004】
パラレル/シリーズ・ハイブリッド電気自動車(parallel/series hybrid electric vehicle: PSHEV)は、PHEV構成とSHEV構成両方の特性を持ち、「スプリット(split)」構成と呼ばれる場合がある。いくつかのPSHEV構成のうちの一つにおいて、ICEは遊星歯車機構のトランスアクスルにおいて2つの電気モーターへ機械的に結合される。第1電気モーターである発電機が、サンギアに結合される。ICEはキャリアに結合される。第2の電気モーターである推進モーターが、トランスアクスルの別の歯車を介してリング(出力)ギアに結合される。エンジン・トルクが、バッテリーを充電するために発電機を駆動することが出来る。発電機はまた、システムがワンウェイ・クラッチを持つ場合には、必要な車輪(出力軸)トルクに寄与することが出来る。推進モーターは、車輪トルクに寄与するためと、バッテリーを充電するために制動エネルギーを回収するために、用いられる。この構成において、発電機は、エンジン速度を制御するために用いることの出来る反作用トルクを選択的に供給することが出来る。事実、エンジン、発電機モーター及び推進モーターは、無段変速機(continuous variable transmission: CVT)の作用をすることが出来る。更に、HEVは、エンジン速度を制御するために発電機を用いることにより、通常の車両よりも良好にエンジン・アイドル速度を制御する機会を提供する。
【0005】
ICEを電気モーターと組合わせることが望ましいというのは、明らかである。車両の性能や運転性の低下を示すことなしに、車両の燃料消費量と排出量を低下させる大きな可能性がある。HEVは、小型エンジン、回生制動、電気ブースト、そしてエンジンを停止させての車両の運転さえも、可能とする。そうではあるが、HEVの潜在的な利益を最適化する新たな方法が開発されなければならない。
【0006】
HEVの開発の余地のある領域の一つに、回生制動技術を用いての、HEVなどの形式の車両の制動及び安定性システムの最適化がある。回生制動は、車両が減速する際に、それの慣性エネルギーを捕捉する。一般的な車両において、慣性エネルギーは、減速中、車両のブレーキ又はエンジンにおいて、熱として放散するのが普通である。回生制動は、発電機を用いて、捕捉した慣性エネルギーを、車両のバッテリーにおける蓄積電荷の形態の電気エネルギーへと変換する。この蓄積エネルギーは、後で電気モーターを駆動するのに用いられる。結果として、回生制動はまた、燃料使用量と排出物発生量を低減する。車両構成のあるものにおいては、エンジンをパワートレインの残りの部分から遮断して、それにより、蓄積電気エネルギーに変換される慣性エネルギーをより大きくすることが出来る。
【0007】
回生制動を行なう殆どの車両において、一つのアクスルの車輪にのみ、又は主にそこへ、回生制動トルクが加えられる。回生制動トルクが一つのアクスルの車輪にのみ加えられるとき、非回生制動手段を、他のアクスルの車輪において用いることが出来る。回生制動を通じてエネルギーを回収したいという要求の結果、異なるアクスルの車輪には異なる制動トルクが加えられることになる。制動トルクの間の差は、不平衡制動を生じる可能性があり、それが車両の操縦性を低下し得る。操縦性の低下は、安定性の低下又は操舵性の低下のいずれかの形として表われ得る。前輪駆動車両におけるように、不釣合いな大きさの回生制動トルクがフロント・アクスルに加えられると、前輪が持つ車両を操舵する能力が低下し得る。この操舵性の低下が、アンダーステアと呼ばれる状態である。後輪駆動車両におけるように、不釣合いな大きさの回生制動トルクがリア・アクスルに加えられると、リア・タイヤの横摩擦が低下し得る。この安定性の低下が、オーバーステアと呼ばれる状態である。これらの作用、すなわちフロント・アクスルにおける不釣合いな大きさの回生制動によるアンダーステアと、リア・アクスルにおける不釣合いな大きさの回生制動によるオーバーステアは、氷及び雪など低摩擦面において、より大きなものとなり得る。低摩擦面上の操縦性要件は、回生制動のレベルを減じさせるのが一般的で、その結果、エネルギー回収量の損失を招く。
【0008】
各種運転状態での回生制動機能を制御することに関するHEV特許がある。特許文献2は、車両の傾斜の関数として回生制動が変化する電気自動車用回生制動制御システムについて記載する。特許文献3は、電気駆動車両用制御システムについて記載する。この発明は、車両のスリップ周波数に基づき、誘導モーターの回転の周波数を調整することにより、タイヤ・グリップ性能を向上することを意図するが、回生制動については考慮していない。
【0009】
特許文献4はまた、機械式アンチロック・ブレーキと回生制動との協働により、制動性能を向上させる取組みをするものである。この発明は、過剰な制動力とスリップを、所定のスリップ率を用いて、制御器で抑制するものである。他の発明もまた、過剰なスリップを抑制する取組みをしている(例えば、特許文献5及び6を参照)。これらの発明は、過剰なスリップを抑制はするが、直進制動性の最大化に主に焦点を当てるので、適正レベルの安定性を提供するものではない。
【0010】
特許文献7は、回生制動モード又は摩擦制動モードからの切換えモードについて記載する。しかしながら、この発明は、モード切換えの誤作動に影響を受け易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5343970号明細書
【特許文献2】米国特許第6033041号明細書
【特許文献3】米国特許第4335337号明細書
【特許文献4】米国特許第5476310号明細書
【特許文献5】米国特許第5654887号明細書
【特許文献6】米国特許第5615933号明細書
【特許文献7】米国特許第5318355号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
エネルギー回収と車両操縦性とを最適化しながら、回生制動と非回生制動との間で制動トルクを分配する能力が、この分野では必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、回生制動機能を備えた車両の制動を制御し、その操縦性を向上させる方法及びシステム、を提供する。本発明は、低摩擦面上においてさえも、エネルギー回収量を大幅に低下させることなしにアンダーステアとオーバーステアを低減しながら、回生制動を提供することが出来る。本発明は、オーバーステアとアンダーステアを検出し、対応して、安定性が低下しているときに、回生制動トルクを通常の非回生制動トルクと釣合わせる。
【0014】
本発明の重要な観点によれば、回生制動が、フロント・アクスルまたはリア・アクスルのいずれかである少なくとも一つのアクスルの車輪に対して行なわれる。また、機械式摩擦形またはこの分野で公知の形式の他の非回生ブレーキが、少なくとも一つのアクスルの車輪に接続され、回生制動と非回生制動は、異なるアクスルに配置される。車両は、ブレーキ位置及び各車輪の車輪速のセンサー入力を受けて評価し、発電機モーターを作動させるために、マイクロプロセッサーのハードウェアとソフトウェアを持ち、最大エネルギー回収量と車両操縦性のために、前アクスルと後アクスルとの間の理想的な割合で非回生制動力と回生制動力とを変化させる、制御器を持つ。更に制御器は、少なくとも一つの実際の車両操縦性値と少なくとも一つの目標値とに基づき、車両操縦性を判定する。制御器は、実際の車両操縦性値を所定の目標値内に維持するために、非回生制動量を低減する機能をする発電機モーターを作動させる。回生制動量は、実際の車両操縦性値を所定目標値内に維持するように、調整される。
【0015】
本発明の関連する観点によれば、制御器を単比例・積分・導関数フィードバック形(simple proportional-integral-derivative feedback type)の制御器とすることが出来る。
【0016】
本発明は、フロント・アクスル車輪が操舵可能である車両構成において、オーバーステアを減ずることが出来る。好ましい構成において、発電機モーターは、リア・アクスルの車輪に回生制動を行ない、一方が非回生ブレーキがフロント・アクスルの車輪に接続される。センサー入力は、死点(dead center)の左または右への操舵角を示すデータを含む。
【0017】
センサーはまた、横加速度又はヨーレートに関連したデータを提供する。
【0018】
オーバーステアなどの車両操縦性の判定には、縦車輪スリップ率、タイヤ・スリップ角そしてヨーレートの計測とフィードバックが含まれ得る。操舵角を、ステアリング・ホイール位置、操舵輪位置又は操舵角の時間フィルター処理値から、求めることが出来る。本発明はまた、前輪駆動車両におけるアンダーステアを低減するように構成することが出来る。回生制動量が低減されるとき、非回生制動量が増大される。
【0019】
非回生制動が前輪に行なわれる後輪駆動車両については、後輪での回生制動量が減じられ、車両がドライバーに命令された旋回途中にあるとき、旋回外輪への非回生制動量がオーバーステアを低減するために、増大させられる。非回生制動が一つの車輪においてのみ増大されるので、必要とされる回生制動の低下量は、比較的小さい。同様の制御を、前輪駆動車両に用いることが出来る。ここで、アンダーステアを低減するために前輪での回生制動量が減じられるとき、制御は旋回内側の後輪の非回生制動量を比例して増大する。このような制御がエネルギー回収量を最大化する。
【0020】
本発明の他の目的及び構成が、本発明が属する分野の当業者には、添付の図面と関連させて以下の説明及び請求項によれば、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ハイブリッド電気自動車(HEV)の全体構成を示す図である。
【図2】本発明の制動及び操縦性制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、電気自動車(electric vehicle: EV)、ハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle: HEV)及び燃料電池電気自動車(fuel cell electric vehicle: FCEV)など回生制動システムを持つ電気推進車両に関する。本発明は、回生制動を持つ車両の制動及び操縦性を連続的に制御するシステムである。図1は、可能な構成のうち一つだけを示している。具体的には後輪駆動部を持つパラレル/シリーズ・ハイブリッド電気自動車(スプリット式)の構成である。本発明は、前輪駆動車輪へ適応するように容易に変形することが出来る。
【0023】
基本的なHEVにおいて、遊星歯車機構20が、ワンウェイ・クラッチ26を介してキャリア・ギア22をエンジン24へ機械的に結合する。遊星歯車機構20はまた、サン・ギア28を発電機モーター30とリング(出力)ギア32へ接続する。発電機モーター30はまた、発電機ブレーキ34に機械的に結合し、そしてバッテリー36へ電気的に結合される。推進モーター38が、第2歯車機構40を介して遊星歯車機構20のリング・ギア32へ機械的に接続され、バッテリー36へ電気的に結合される。遊星歯車機構20のリング・ギア32と推進モーター38は、後輪42を持つリア・アクスル66に機械的に結合される出力軸44を介して、機械的に接続される。車両はまた、別の対の前輪64を持ち、それらは、非駆動輪であり操舵可能でありフロント・アクスル68により結合される。非駆動操舵輪64は、車両の前方に向けて配置され、駆動輪42は車両の後方に向けて配置される。
【0024】
遊星歯車機構20は、エンジン24の出力エネルギーを、エンジン24から発電機モーター30へのシリーズ経路と、エンジン24から後輪42へのパラレル経路とへ、分配する。エンジン24の速度は、パラレル経路を介しての機械的結合を維持しながら、シリーズ経路への分配量を変更することにより、制御することが出来る。推進モーター38は、第2歯車機構40を用いてパラレル経路上で後輪42へのエンジン24の動力を補佐する。推進モーター38はまた、シリーズ経路から直接、本質的に発電機モーター30により生成される流出電力である、エネルギーを用いる機会を提供する。これは、バッテリー36における化学エネルギーとの間でエネルギーを変換することに伴う損失を低減し、そして、エンジン24のエネルギーから変換損失を差引いたものが、後輪42へ到達するのを可能とする。
【0025】
車両システム制御器(vehicle system controller: VSC)46が、各構成部品の制御器に結合することにより、このHEV構成における多くの構成部品を制御する。エンジン制御ユニット(engine control unit: ECU)48が、配線インターフェースを介してエンジン24に結合する。全ての車両制御器は、いかなる組合わせでも物理的に組合わせることが出来、若しくは別個のユニットとすることも出来る。それらは、別個の機能を持つので、ここでは別のユニットとして記載されている。車両制御器は、センサー入力を受けそして評価して、その入力に従い応答するように、マイクロプロセッサーのハードウェア及びソフトウェアを持つ。VSC 46は、制御器エリア・ネットワーク(controller area network: CAN)54のような通信ネットワークを介して、ECU 48、そしてバッテリー制御ユニット(battery control unit: BCU)50及びトランスアクスル管理ユニット(transaxle management unit: TMU)52と通信する。BCU 50は、配線インターフェースを介してバッテリー36へ結合する。TMU 52は、配線インターフェースを介して、発電機モーター30と推進モーター38を制御する。
【0026】
更に、VSC 46は、CAN 54を介して電気油圧制動ユニット(electric hydraulic braking unit: EHBU)56と通信することが出来る。EHBU 56は、最終的に従動操舵輪64に接続される非回生ブレーキ58(例えば機械式ブレーキ)に接続される。EHBU 56は、アンチロック・ブレーキ・システム(ABS)(不図示)、回生制動、トラクション・コントロール及び非回生制動、を制御することが出来る。本発明において、駆動輪42と非駆動操舵輪64のそれぞれに対する制動制御は、独立して行なうことが出来る。
【0027】
VSC 46は、各種車両部品センサーからの入力を受けることが出来る。本発明の実施形態によれば、入力が、ブレーキ位置センサー(例えばブレーキ・ペダル位置センサー)62、車輪速センサー70、操舵輪位置センサー72及びイナーシャ・センサー74、により提供される。イナーシャ・センサー74は、例えば、横加速度及び/又はヨーレートを計測することが出来る。ブレーキ位置センサー62の出力は、車両構成に応じて、VSC 46へ送ることも、EHBU 56へ送ることも出来る。図1においては、ブレーキ位置センサー62の出力は、EHBU 56へ送られる。車速センサー70が、各車輪に配置される。操舵輪位置センサー72は、左右の車輪の位置を死点からのずれの度合で検出することが出来る。言い換えると、センサーは、操舵角の車両の直進方向からの右又は左へのずれの程度を検出することが出来る。
上述のように、回生制動を行なう殆どの車両構成は、一つのアクスルの車輪に(又は主に一つのアクスルの車輪に)制動トルクを加える。回生制動が一つのアクスルの車輪だけに加えられるとき、車両全体の制動トルクを釣合わせるために、他のアクスルの車輪において通常の非回生制動方法を用いることが出来る。図1の車両構成においてこれを示すと、EHBU 56が、リア・アクスル66の駆動輪42における回生制動の作動を命令することが出来る(つまり、後輪駆動構成)。同時にEHBU 56は、フロント・アクスル68の従動操舵輪64に通常の非回生ブレーキの作用を命令することが出来る。この例においては、通常の非回生ブレーキ58を用いた制動トルクの結果、運動エネルギーが熱として消費されるので、理想的なエネルギー回生は実現されない。理想的には、回生制動が完全であれば、最大エネルギー回収が起こることになる。
【0028】
回生制動による最大エネルギー回収を得るには、車両操縦性に影響する可能性がある前輪と後輪との間の制動トルクの不釣合いが課題である。例えば前輪駆動(FWD)車両において、エネルギー回収量を最大化しようとしてフロント・アクスルの前操舵輪に加えられる制動トルクが過剰な場合(つまり、リア・アクスルの車輪に加えられる通常の非回生制動力は比較的小さい場合)、操舵輪64の操舵性が低下する(アンダーステア)。後輪駆動(RWD)車両において、エネルギー回収量を最大化しようとしてリア・アクスル66の駆動輪42に過剰な制動力が加えられるとき(例えば、フロントの従動操舵輪64に加えられる通常の非回生制動力が比較的小さいとき)、駆動輪42の横摩擦が低下する(オーバーステア)。これら操縦性の問題は、氷及び雪のような、低摩擦面上で、より深刻となり得る。
【0029】
本発明はそれで、図1に示された構成のような回生制動を備えた車両において、非回生制動用に構成された各車輪のための制動及び操縦性制御システムが設けられる、方法及び装置を提供する。
【0030】
FWD車両(不図示)の場合、回生制動が通常フロント・アクスルに行なわれるが、操舵応答性を減少させる傾向を持つことになる。タイヤ・スリップ角、ヨーレート及び縦車輪スリップ率である計測値のいずれかの組合せにより判定される目標レベルを操舵応答性が下回るとき、回生制動トルクが本発明に従い減じられ、閉ループ制御器の動作に基づき、後輪での非回生制動トルクにより置き換えられることになる。この制動トルクの移動は、前輪に偏った制動不平衡を低減し、対応して操舵応答性を向上させることになる。リア・アクスルに移動されなければならない制動トルクの大きさは、移動される非回生トルクの全てを、車両が追従する曲線路の内側を進む後輪に加えることにより、最小にすることが出来る。後内輪のみへ制動トルクを加えることは、旋回方向に車両を回転させる傾向をもつモーメントを生成し、それでアンダーステアを低減する。RWD車両の場合、回生制動が通常リア・アクスル66に行なわれるが、操舵応答性を減少させる傾向を持つことになる。タイヤ・スリップ角、ヨーレート及び縦車輪スリップ率である計測値のいずれかの組合せにより判定される目標レベルを操舵応答性が下回るとき、回生制動トルクが本発明に従い減じられ、閉ループ制御器の動作に基づき、フロントの従動操舵輪64での非回生制動トルクにより置き換えられることになる。この制動トルクの移動は、後輪に偏った制動不平衡を低減し、対応して車両安定性を向上させることになる。フロント・アクスル68に移動されなければならない制動トルクの大きさは、移動される非回生トルクの全てを、車両が追従する曲線路の外側を進む従動操舵輪に加えることにより、最小にすることが出来る。外側の従動操舵輪64のみへ制動トルクを加えることは、車両の回転に対抗する傾向をもつモーメントを生成し、それでオーバーステアを低減する。本発明は、低摩擦路面上でさえも車両のアンダーステア及びオーバーステアを低減し、そして高摩擦路面上でのエネルギー回収量を大幅に低下することなしに、回生制動を提供することが出来る。本発明の制御器は、VSC 46内部に配置しても、EHBU 56のようにスタンドアローン(stand-alone)ユニットとして配置しても良い。制御器は、車両の操縦性を連続的に監視し、車両の操縦性が低下したときには、対応してリアル・タイムで回生制動の変化を命令する。
【0031】
制動動作中に、本発明は、最初、連続的に車両操縦性を監視しそれに従い制動力を調整しながら、回生制動に依存することになる。システムは、車両操縦性を所定の目標値に維持することにより、操縦性の問題を修正しようとする。これは、通常の車両スタビリティ・コントロール・システムが作動する前に、本発明のシステムが反応するはずである、ということを意味する。
【0032】
車両操縦性目標を達成するために、本発明の目的は、従来の制動平衡を得るために、横方向の不安定(例えば、オーバーステアや、大きめの縦方向の車輪スリップ率)を監視して、回生制動力を低減する、ということである。縦方向の車輪スリップ率は、車輪速センサー70を用いて、前輪の速度と後輪の速度を計測することにより、判定される。縦車輪スリップ率の数式は、以下のとおりである。
【0033】
(縦車輪スリップ率)=1−{(車速)−(車輪速)}/(車速)
車速の第1近似値として、後輪駆動車両については前輪の車輪速を用いることが出来、そして前輪駆動車両については後輪の車輪速を用いることが出来る。後輪ブレーキが作動するとき、車両減速は後輪から始まる。例えば、10%の縦車輪スリップ率は、後輪が車両よりも10%だけ遅く進んでいる、ということを意味する。後輪駆動車両の縦車輪スリップ率が増大するとき、横安定性が低下する。
【0034】
本発明は、ドライバー要求に基づき制動を行なうように前後の相対的な制動トルクを監視そして動的に変更するために、最初に、通常の制動平衡が示すであろうよりも大きく回生制動に依存しながら、車両操縦性を監視そして維持する、フィードバック制御アルゴリズムを用いる。後輪駆動車両については、オーバーステアを低減することが出来、前輪駆動車両については、アンダーステアを低減することが出来る。
【0035】
図2は、本発明の構成を用いる回生制動制御器の制御フローチャートにより、本発明の構成の一つを示している。上述のように、この制御器は、VSC 46内に収容されても、EHBU 56のような別個の制御器に収容されても良い。この制御器は、一般的に単比例・積分・導関数フィードバック(simple proportional-integral-derivative feedback)制御器を含んでも良い。図2に示された制御は、オーバーステア状態を低減するために、回生制動力が後輪に加えられる又は主に後輪に加えられる二輪駆動の後輪駆動車両に用いることが出来る。わずかな変更により、当業者であれば、この制御を前輪駆動車両用に容易に適応することが出来る。オーバーステアとアンダーステアのような車両操縦性の問題の判定と軽減のために、この制御は、車輪スリップ率、タイヤ・スリップ角そしてヨーレートを個別に又は組合わせて、連続的に監視することが出来る。図示目的で、図2に示された制御は、車両オーバーステアとアンダーステアを監視する三つの方法の全てを用いている。図2の制御はまた、実際の車両操縦性を所定の操縦性目標値内に維持しながら、エネルギー回収量を最適化するために、回生制動と非回生制動の割合を連続的に調整することが出来る。これは、非回生制動輪のそれぞれの制動力を増大するのに別個の制御器を用いても、行なうことが出来る。
【0036】
図2において、制御は、「キー・オン」動作でスタートし、「キー・オフ」動作で終了する。制御は、ステップ90において、車輪速センサー70、操舵輪位置センサー72及びブレーキ位置センサー62からの複数の車両入力を監視することが出来る。
【0037】
ステップ90の後で、制御はステップ92へ進み、車両ドライバーが死点の右又は左にずれた操舵角(つまり旋回)を望んだか否かを判定する。この図示の制御については、操舵角の死点からのずれの判定は、操舵輪位置センサー72からの入力を用いてなされる。別の実施形態において、操舵輪位置センサー(不図示)をこの判定に用いることも出来る。操舵角はまた、操舵角の時間フィルター処理された値を用いることが出来る。ステップ92の結果がNOのとき、制御はステップ88へ進み、目標タイヤ・スリップ角とヨー・レートをゼロに設定し、そしてステップ96へ進む。ステップ92の結果がYESのとき、制御はステップ94へ進む。ステップ94において、制御は操舵角と車輪速センサー70からの車速入力を用いて目標タイヤ・スリップ角と目標ヨーレート(旋回率)を計算し、ステップ96へ進む。
【0038】
ステップ96において、制御は、制動力が命令されたか否かを判定する。制動力命令は、車両ドライバ−又はVSC 46から来る可能性がある。車輪に加えられるべき制動力は、ブレーキ位置センサー62からの入力を用いて、判定され、車両が、ブレーキ位置センサー62の位置と関連させて制動力を付加する場合に、制動力は、車両ドライバーにより要求され得る。制動力はまた、通常のICEのみの車両のコーストダウン(coast-down)中のエンジン・ブレーキを模擬するように、VSC 46によっても要求され得る。ステップ96の結果がNOのとき、制御はステップ90へ戻る。YESのとき、制御はステップ98へ進む。
【0039】
ステップ98において、制御は、制動命令に従い、回生制動を用いて、又は主に回生制動を用いて、制動トルクを命令する。図示の実施形態では、回生制動がリア・アクスルの駆動輪42へ加えられることになる。前輪駆動構成を持つ別の実施形態においては、制御が回生制動を前輪に加えることになる。次に、制御はステップ100へ進み、リア・アクスル66の駆動輪42と、フロント・アクスル68の従動操舵輪64の車輪速、横加速度及びヨーレートを判定する。これらの判定は、車速センサー70及び、この分野で公知の形式のイナーシャ・センサーから得られるものなどの、各種車両入力を用いて、得られる。
【0040】
制御は次に、ステップ102へ進む。
【0041】
ステップ102において、制御は、車輪速と車速との差から(上述のように)縦車輪スリップ率を計算し、そしてステップ104へ進んで、車両操縦性の表示が所定の閾値内にあるか否かの判断を行なう。
【0042】
ステップ104において、制御は、ステップ102で計算された縦車輪スリップ率が、所定の縦車輪スリップ率値を越えるか否か判断する。この例においては、縦車輪スリップ率値として10%が用いられるが、好ましい縦車輪スリップ率は5%である。所定の縦車輪スリップ率値はまた、車両動作状態に応じた動変数とすることが出来る。
【0043】
ステップ104の結果がYESのとき、制御はステップ106へ進み、操舵輪位置センサー72及びイナーシャ・センサー74のような車両センサーからの入力及びドライバー要求を用いて、車両が旋回中であるか否かを判定する。その結果がYESのとき、制御はステップ112へ進み、車両が所定の操縦性閾値内に入るまで、制動トルクを釣合わせるために、旋回外側に位置するフロント・アクスル68の従動操舵輪64の非回生ブレーキ58の作動と、それに比例した、リア・アクスル66の駆動輪42での回生制動力の減少と、を命令する。制動力全体は、同じまま、又は制動命令に対応したままである。回生制動の部分だけが低減されるだけである。
【0044】
本発明を用いる代替のFWD構成においては、制御は、車両が所定の操縦性閾値内に入るまで、制動トルクを釣合わせるために、旋回内側に位置するリア・アクスルの車輪の非回生ブレーキ58の作動と、それに比例した、フロント・アクスルの車輪での回生制動力の減少と、を命令する。
【0045】
ステップ106の判断結果がNOのとき、制御はステップ114へ進み、車両が操縦性に関する所定の閾値内に入るまで制動トルクを釣合わせるために、フロント・アクスル68の車輪への非回生制動58の適用と、それに比例したリア・アクスル66の車輪への回生制動の減少、を命令する。全体の制動力は、同じ若しくは、命令された制動力に一致したものとなる。回生制動のうち比例分のみが減少させられる。
【0046】
ステップ104へ戻ると、制御が、縦車輪スリップ率が所定値よりも大きくないと判定するとき、制御はステップ108へ進む。ステップ108において、制御は、実際のタイヤ・スリップ率が目標タイヤ・スリップ率を越えるか否かを判断する。YESのとき、制御はステップ106へ進み、NOのときには、制御はステップ110へ進む。
【0047】
ステップ110において、制御は、実際のヨーレートが目標ヨーレートを超えるか否かについて判断する。YESのとき、制御はステップ106へ進み、NOのとき、制御はステップ90へ戻る。
【0048】
図2に示された制御において説明したように、本発明を実施するには、縦車輪スリップ率、タイヤ・スリップ角又はヨーレートの目標値と実際値を得るために、具体的な計算方法を開発する必要がある。第1の計算については、縦車輪スリップ率についての上記式を用いることが出来る。
【0049】
第2の計算については、タイヤ・スリップ率が、修正タイヤ・スリップ角を判定するための要素とされる。修正タイヤ・スリップ率はまた、タイヤ・スリップ角alpha及び、その変化速度を推定し、タイヤ・スリップ角からalphaの目標値を判定し、そして回生制動レベルを必要量まで低減するように閉ループ制御を用いることにより、許容範囲の車両操縦性を判定するのに用いられ得る。
【0050】
alpha及びその時間導関数alpha_dotは、イナーシャ・センサー74を用いた、既知の計算方法により推定され得る。グローバル・ポジショニング・システム(Global Positioning System)のセンサー(不図示)、光学センサー(不図示)、レーダー(不図示)など、この分野で公知の他の方法を用いることが出来る。回生制動トルクがリア・アクスル66の車輪に(又は主に後輪42に)加えられるべきで、それでオーバーステアが問題となるならば、リア・アクスル66の車輪についてのalphaとそれの導関数が推定されることになる。
回生制動トルクがフロント・アクスル68の車輪に(又は主に前従動操舵輪64に)加えられるべきで、それでアンダーステアが問題となるならば、フロント・アクスル68の車輪についてalphaとそれの導関数が推定されることになる。フロント・アクスル68の車輪は操舵可能であるので、alpha推定値の計算は、操舵輪位置も含むことになる。これはまた、リア・アクスル66の車輪が操舵されるならば、リア・アクスル66の車輪についても当てはまる。
【0051】
車両の横加速度Ayは、alphaの位置に対応する位置で計測又は推定することが出来る。alphaの目標値alpha_targetは、以下の数式に従い、Ayの絶対値に比例して計算される。
alpha_target = CC * abs(Ay) + alpha_offset
ここで、CCは、alpha推定の位置におけるタイヤのコーナリング・コンプライアンス(cornering compliance)であり、alpha_offsetはalphaの推定誤差に対する修正定数である。数式は、常に正である値alpha_targetを生じる。上記式において、Ayの計測値は、別の態様で判定される路面摩擦に対応する横加速度の限界値を表す値により、置き換えることも出来る。
【0052】
回生制動トルクT_regenを用いて、スリップ角alphaの閉ループ制御を、以下の様に実行することが出来る。
T_correction_r =max(kp*(alpha-alpha_target)+kd*alpha_dot, 0)
ここで、KpとKdは校正可能な値である。
T_correction_l =max(-kp*(alpha+alpha_target)-kd*alpha_dot, 0)
T_correction =max(T_correction_r, T_correction_l)
T_regen = T_desired_regen - T_correction
上述の式は、T_regenとT_desired_regenが常に正の値であるという仮定に基づく、単純な比例・積分・導関数フィードバック制御器により実現される。トルク修正T_correction_rは、ある方向(右旋回)のスリップ角に対応し、T_correction_lは他の方向に対応する。これらの式は、タイヤ・スリップ角が目標レベルを越えるときに、回生制動トルクのレベルを減少する作用をすることになる。
【0053】
第3の方法については、車両ヨーレートYRが、車両の操縦性の表示として用いられる。ヨーレートが目標値を越えないことを確実なものとするのに要求されるように、回生制動レベルを減少させるために、ヨーレートを計測し、目標値を計算し、閉ループ制御を用いることにより、許容可能な車両操縦性が維持される。
【0054】
車両ヨーレートYRは正負の値となることになる。目標ヨーレートYR_targetは、車両スタビリティ・コントロールで実際に確立された方法を用いて計算される、正負の値となることになる。ヨーレートYRの閉ループ制御は、回生制動トルクを修正項T_correctionで減じることにより、以下のように実現されることになる。
T_correction_r=max(kp*(YR-YR_target)+kd*YR_dot+ki*YR_int, 0)
T_correction_l=max(-kp*(YR-YR_target)-kd*YR_dot-ki*YR_int, 0)
T_correction = max(T_correction_r, T_correction_l)
T_regen = T_desired_regen - T_correction
ここで、kp, kd及びkiは校正可能な値であり、YR_dotはYR又は(YR-YR_target)の導関数であり、そしてYR_intは(YR-YR_target)の積分である。
【0055】
上記式は、単比例・積分・導関数フィードバック制御器により実現される。
【0056】
本発明の上述の実施形態は、純粋に例示目的のものである。本発明については、他に多くの、変形、改良そして応用がなされ得る。変形には、限定されるものではないが、本発明を、前輪駆動車両、後輪駆動車両そして全輪駆動車両に適用するものが、含まれ得る。加えて変形には、限定されるものではないが、本発明を、全輪操舵車両、後輪操舵車両そして全輪操舵車両に適用するものが、含まれ得る。
【符号の説明】
【0057】
30 発電機モーター
46 制御器
58 非回生ブレーキ
66 リア・アクスル
68 フロント・アクスル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の第1アクスルに取り付けられた車輪に接続された回生ブレーキ、
上記第1アクスルとは異なる上記車両の第2アクスルに取り付けられた車輪に接続された非回生ブレーキ、
車両入力を監視するために計測し電子信号を発生する複数のセンサー、
上記信号を継続的に受信そして処理する様にされた制御器、及び
上記制御器により作動させられて、車両操縦性値を予め選択された目標範囲に維持するために、上記第1アクスルの各車輪へ独立して回生制動トルクを調整的に加える、発電機モーター、
を有する、車両制動制御システム。
【請求項2】
上記複数のセンサーが、ブレーキ・ペダル位置、上記車両の各車輪の車輪速、及び、上記車両の直進方向の右又は左への操舵角のずれの程度を、検出する、請求項1のシステム。
【請求項3】
上記制御器が、単比例・積分・導関数フィードバック制御器である、請求項1のシステム。
【請求項4】
フロント・アクスルの車輪が操舵可能であり、
上記発電機モーターが、リア・アクスルの車輪へ回生制動トルクを与え、
上記複数のセンサーが更に、操舵角、横加速度及びヨーレートを検出し、そして
上記制御器が車輪の一つの非回生制動を上記制御器が比例的に増大させる際に、上記車両の旋回外側の車輪の制動力を増大させる、
請求項2のシステム。
【請求項5】
フロント・アクスルの車輪が操舵可能であり、
上記発電機モーターが、フロント・アクスルの車輪へ回生制動トルクを与え、
非回生ブレーキがリア・アクスルの車輪に接続され、
上記制御器への入力が更に横加速度とヨーレートを有し、そして
上記制御器が、上記車両の旋回内側の車輪の制動力を増大させる、
請求項2のシステム。
【請求項6】
縦車輪スリップ率値の判定を用いて、車両操縦性が最適化される、請求項1のシステム。
【請求項7】
目標タイヤ・スリップ角と実際に計測されたタイヤ・スリップ角の判定を用いて、車両操縦性が最適化される、請求項1のシステム。
【請求項8】
目標ヨーレートと実際に計測されたヨーレートの判定を用いて、車両操縦性が最適化される、請求項1のシステム。
【請求項9】
ステアリング・ホイール位置の検出から、左又は右への操舵角が判定される、請求項2のシステム。
【請求項10】
操舵輪位置の検出から、操舵角が判定される、請求項2のシステム。
【請求項11】
操舵角の時間フィルター処理された判定から、操舵角が導かれる、請求項2のシステム。
【請求項12】
上記縦車輪スリップ率値が10%よりも大きいとき、上記制御器が、車両操縦性を維持する
ために、回生制動力を低減し、比例して非回生制動力を増大させる、請求項6のシステム。
【請求項13】
上記縦車輪スリップ率値が5%よりも大きいとき、上記制御器が、車両操縦性を維持するために、回生制動力を低減し、比例して非回生制動力を増大させる、請求項6のシステム。
【請求項14】
上記縦車輪スリップ率値が車両動作状態に応じた値よりも大きいとき、上記制御器が、車両操縦性を維持するために、回生制動力を低減し、比例して非回生制動力を増大させる、請求項6のシステム。
【請求項15】
第1アクスルの車輪に独立して回生制動トルクを調整的に加えるように適応された発電機モーターと、第2アクスルの車輪に接続された非回生ブレーキ、を持つ車両の制動を制御し、操縦性を最適化する方法であって、
ブレーキ位置、各車輪の車輪速、及び、直進方向の左右への操舵角のずれの程度の少なくとも一つを含む車両状態を検出することにより、上記車両を制御する工程、
上記第1と第2のアクスルの車輪において独立的に、様々な割合で非回生制動と回生制動を作動させる工程、
少なくとも一つの所定の目標値に対する少なくとも一つの計測された車両操縦性値の比較に基づき車両操縦性を判定する工程、及び
実際の車両操縦性値を所定目標値内に維持するために、回生制動力を低減しながら、選択された車輪への非回生制動力を増大する工程、
を有する方法。
【請求項16】
上記車両を制御する上記工程が、単比例・積分・導関数フィードバック制御器を用いる工程、を有する、請求項15の方法。
【請求項17】
フロント・アクスルの車輪が操舵可能であり、
上記発電機モーターが、リア・アクスルの車輪に加えれる回生制動トルクを制御し、
非回生ブレーキがフロント・アクスルの車輪に接続され、
車両状態を検出する上記工程が更に、上記車両の横加速度とヨーレートを判定する工程を有し、そして
実際の車両操縦性値を所定目標値内に維持するために、回生制動力を低減しながら、選択された車輪への非回生制動力を増大する上記工程が、旋回外側を進行する車輪に加えられる非回生制動トルクを比例的に増大させる工程、を有する、
請求項15の方法。
【請求項18】
フロント・アクスルの車輪が操舵可能であり、
上記発電機モーターが、フロント・アクスルの車輪に加えられる回生制動トルクを制御し、
非回生ブレーキがリア・アクスルの車輪に接続され、
車両状態を検出する上記工程が更に、上記車両の横加速度とヨーレートを判定する工程を有し、そして
実際の車両操縦性値を所定目標値内に維持するために、回生制動力を低減しながら、選択された車輪への非回生制動力を増大する上記工程が、旋回内側を進行する車輪に加えられる非回生制動トルクを比例的に増大させる工程、を有する、
請求項15の方法。
【請求項19】
上記車両操縦性判定工程が、縦車輪スリップ率値の計測工程を含む、請求項15の方法。
【請求項20】
上記車両操縦性判定が、目標と実際の車両タイヤ・スリップ角の判定及び比較工程を含む、請求項15の方法。
【請求項21】
上記車両操縦性判定が、目標と実際のヨーレートの判定及び比較工程を含む、請求項15の方法。
【請求項22】
上記回生制動力低減工程が、縦車輪スリップ率値が10%よりも大きいときに、作動される
、請求項19の方法。
【請求項23】
上記回生制動力低減工程が、縦車輪スリップ率値が5%よりも大きいときに、作動される、請求項19の方法。
【請求項24】
上記回生制動力低減工程が、縦車輪スリップ率値が車両動作状態に応じた値よりも大きいときに、作動される、請求項19の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−273540(P2010−273540A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162012(P2010−162012)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【分割の表示】特願2003−314306(P2003−314306)の分割
【原出願日】平成15年9月5日(2003.9.5)
【出願人】(500493207)フォード モーター カンパニー (22)
【Fターム(参考)】