回路基板およびその製造方法並びに電子装置
【課題】高容量で、漏れ電流が低く、且つ容量の温度依存性・バイアス電圧依存性が小さいコンデンサ内臓回路基板を提供する。
【解決手段】ベース基板または絶縁層上にチタンまたはチタン合金からなる金属層を形成し、過酸化水素を含む温度3℃以下の電解液中で陽極酸化して金属層表面をアモルファス二酸化チタン層に化成し、該アモルファス二酸化チタン層上に金属層を形成することによって、回路基板中または回路基板上に第一電極層と誘電体膜と第二電極層とからなるコンデンサを組み込んだ回路基板を得た。
【解決手段】ベース基板または絶縁層上にチタンまたはチタン合金からなる金属層を形成し、過酸化水素を含む温度3℃以下の電解液中で陽極酸化して金属層表面をアモルファス二酸化チタン層に化成し、該アモルファス二酸化チタン層上に金属層を形成することによって、回路基板中または回路基板上に第一電極層と誘電体膜と第二電極層とからなるコンデンサを組み込んだ回路基板を得た。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサが回路基板上または回路基板中に組み込まれた回路基板およびその製造方法、並びに該回路基板に電子部品が実装された電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータや、携帯電話や、モバイル機器等の電子機器は、小型化・高性能化が急速に進んでいる。このような電子機器の小型化のために、回路基板中または回路基板上にコンデンサ、レジスタ、インダクタ、アンテナ、フィルタなどの受動素子を組み込むことによって実装電子部品の高密度化・高集積化が図られている。
【0003】
GHzオーダーの高周波電流が使用される電子機器では、コンデンサにおける漏れ電流の増大が問題となっている。
回路基板中または回路基板上に組み込まれるコンデンサとして、特許文献1に、シリコンウエハ(ベース基板)上に、クロムのスパッタリングに形成された下部電極と、テトラエトキシシランをプラズマCVDして形成されたSiO2層と、スパッタリングによって形成されたTiNの上部電極とからなるものが記載されている。
【0004】
特許文献2には、第一電極層と、エアロゾルデポジション法によって形成された誘電体膜と、第二電極層とからなるコンデンサを組み込んだ回路基板が記載されている。該誘電体膜に用いられる微粒子材料としてAl2O3、TiO2などの酸化物セラミックス、ペロブスカイト構造を有する酸化物セラミックスが開示されている。さらにアルミニウム系化合物、鉛系化合物を上記微粒子に添加または被覆することが提案されている。
また、特許文献3には、誘電体層にSrTiO3、(Ba,Sr)TiO3、BaTiO3、(Pb、La)(Zr,Ti)O3、Pb(Zr,Ti)O3、PbTiO3、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3等のペロブスカイト構造複合酸化物を用い、導電体層にクロム、チタン、ニッケル、タングステン、タンタル、モリブデンなどの高融点金属を用いたコンデンサを組み込んだ回路基板が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−221036号公報
【特許文献2】特開2004−342831号公報
【特許文献3】特開2001−250885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献に記載のコンデンサ内臓回路基板では、コンデンサの耐電圧が低く、漏れ電流が未だ高い。
本発明の目的は、高容量密度で、漏れ電流が低く、且つ容量の温度依存性・バイアス電圧依存性が小さいコンデンサ内臓回路基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために検討した結果、ベース基板または絶縁層上にチタンまたはチタン合金からなる金属層を形成し、過酸化水素を含む温度3℃以下の電解液中で陽極酸化して金属層表面をアモルファス二酸化チタン層に化成し、該アモルファス二酸化チタン層上に金属層を形成することによって、回路基板中または回路基板上に第一電極層と誘電体膜と第二電極層とからなるコンデンサを組み込んだ回路基板を製造したところ、該回路基板は容量が高く、漏れ電流が低く、且つ容量の温度依存性・バイアス電圧依存性が小さくなることを見出した。本発明は、この知見に基づきさらに検討した結果、完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のものである。
(1)ベース基板と絶縁層とが積層された構造を有する回路基板であって、該回路基板中または回路基板上に第一電極層とアモルファス二酸化チタン層を有する誘電体膜と第二電極層とからなるコンデンサが組み込まれた回路基板。
(2)誘電体膜がさらにペロブスカイト構造の複合酸化物層を有するものである前記(1)に記載の回路基板。
(3)ペロブスカイト構造の複合酸化物が、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも一種の金属とTiとの複合酸化物である前記(2)に記載の回路基板。
(4)コンデンサが、第一電極層と第二電極層とを誘電体膜を挟んで複数交互に積層させたものである前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の回路基板。
(5)ベース基板が樹脂材料からなる前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の回路基板。
(6)ベース基板が、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系共重合体及びファイバガラスからなる群から選ばれる少なくとも一つの材料からなる前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の回路基板。
【0009】
(7)前記(1)〜(6)のうちいずれか1項に記載の回路基板と電子部品とを備えた電子装置。
(8)チタンまたはチタン合金からなる金属層を形成する工程、
過酸化水素を含む温度3℃以下の電解液中で陽極酸化して金属層表面をアモルファス二酸化チタン層に化成する工程、および
アモルファス二酸化チタン層上に金属層を形成する工程を含む、前記(1)〜(6)に記載の回路基板の製造方法。
(9)チタンまたはチタン合金からなる金属層を形成する工程、
過酸化水素を含む温度3℃以下の電解液中で陽極酸化して金属層表面をアモルファス二酸化チタン層に化成する工程、
アモルファス二酸化チタン層上にペロブスカイト構造の複合酸化物層を形成する工程、および
ペロブスカイト構造の複合酸化物層の上に金属層を形成する工程を含む、前記(1)〜(6)に記載の回路基板の製造方法。
(10)アモルファス二酸化チタン層またはペロブスカイト構造の複合酸化物層の上に金属層を形成する工程において、金属層がチタンまたはチタン合金からなるものである前記(8)または(9)に記載の回路基板の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の回路基板は、容量密度が高く、漏れ電流が低く、且つ容量の温度依存性・バイアス電圧依存性が低く、可撓性にも優れるので、GHzオーダーの高周波電流が使用されるパーソナルコンピュータや、携帯電話や、モバイル機器等の電子機器に好適である。本発明の回路基板によれば、回路基板中または回路基板上にコンデンサ、レジスタ、インダクタ、アンテナ、フィルタなどの受動素子を組み込み、実装電子部品の高密度化・高集積化を図ることができる。
【0011】
本発明の回路基板の製法は、基板を高温にさらすことなくコンデンサを多数形成することができ、多層化が容易である。表面に形成するコンデンサを低減することができ、他の素子を近接して配置することができるので高集積化・小型化を図ることができる。
また、アモルファス二酸化チタン層に更にチタン酸バリウムなどのペロブスカイト構造の複合酸化物層を積層することにより、ほとんど容量を低下させずに耐電圧を高くすることができる。
【0012】
本発明によれば、回路基板表面にLSI等の電子部品を高集積化して搭載することができる。その結果、電子部品間の距離が短くなるので伝送時間を短縮することができ、高速動作が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に本発明を図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る回路基板の要部断面図である。
本発明に係る回路基板10は、ベース基板11と絶縁層16とが積層されてなるものである。図1では絶縁層16の上に絶縁層17が積層されているが、所望に応じて、絶縁層17が無くてもよいし、また絶縁層17の上にさら別の絶縁層(図示せず)が1以上積層されていてもよい。また、ベース基板11の下側に絶縁層があってもよい。
【0014】
ベース基板11は、従来の回路基板用のベース基板として公知のものである。ベース基板には、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フッ素系共重合体など樹脂材料、ファイバガラスなどの無機繊維や有機繊維に熱硬化性樹脂を含浸させてなるプリプレグなどが用いられる。もちろん、ベース基板11と第一電極層12との間に絶縁層を設けることにより、ベース基板11にはFe、Ni、Ti、Mo、W、Al、Cu、Ag、Au等の金属単体またはそれらを含む合金よりなる金属材料を用いることができる。また、ベース基板として半導体基板を用いると本発明の回路基板は半導体パッケージとして用いることができる。
【0015】
絶縁層は、電気絶縁性材料で構成される層であれば特に制限されず、例えば、エポキシ樹脂系絶縁層、ポリイミド樹脂系絶縁層、ポリベンゾオキサゾール系絶縁層等を用いることができる。
【0016】
図1に示す回路基板10にはコンデンサ15が組み込まれている。コンデンサ15は、第一電極層12と誘電体膜13と第二電極層14とから構成され、第一電極層12と第二電極層14によって誘電体膜13が挟さまれている。図1では、コンデンサをベース基板11と絶縁層16の間に設けているが、所望に応じて、コンデンサを絶縁層16と絶縁層17の間や回路基板の最外層に設けることができる。また、ベース基板を挟んで両面にそれぞれコンデンサを設けることができる。
【0017】
第一電極層および第二電極層は、導電性材料で構成される層であれば特に制限されない。導電性材料としては、Fe、Ni、Ti、Mo、W、Al、Cu、At、Pd、Ag、Auなどの金属単体またはそれらを含む合金などが挙げられる。これらのうち、後述する誘電体膜を形成しやすいという観点から、チタンまたはチタン合金が好ましい。第一電極層および第二電極層の厚さは、0.1μm〜100μmであることが好ましく、0.5μm〜50μmであることがより好ましく、1μm〜30μmであることが特に好ましい。
【0018】
本発明の回路基板に用いられる誘電体膜は、アモルファス二酸化チタン層を有するものである。二酸化チタンは、通常、ルチル型またはアナターゼ型の結晶構造をなしているが、本発明ではアモルファス二酸化チタンを用いる。アモルファス二酸化チタン層は透過型電子顕微鏡による観察で確認することができる。アモルファス二酸化チタン層の632.8nmの光に対する屈折率は、通常1.90〜2.35である。また、アモルファス二酸化チタン層の比誘電率は、通常30以上である。
【0019】
アモルファス二酸化チタン層は、チタンまたはチタン合金を陽極酸化することによって得られる。
前記の陽極酸化では、第一電極層の最表面がチタンまたはチタン合金で形成されていることが必要である。第一電極層をチタンおよびチタン合金以外の金属、例えば銅で形成した場合には、該金属表面にスパッタ法などを用いてチタンまたはチタン合金膜を形成すればよい。第一電極層をチタンまたはチタン合金で形成した場合は、そのまま次の工程を行うことができる。なお、チタン合金はチタンを70質量%以上含むものが好ましい。好ましいチタン合金として、β−チタンが挙げられる。チタンまたはチタン合金の表面に自然酸化物膜や汚れや傷などがある場合は、それらを陽極酸化の前にエッチング処理等によって除去しておくことが好ましい。陽極酸化の前処理に用いられるエッチング法としては、フッ酸などを用いた化学エッチング法や、電解エッチング法が挙げられる。また、陽極酸化を望まない部位はマスキング材で覆うことができる。マスキング材としては、耐熱性樹脂またはその前駆体、無機微粒子とセルロースからなる組成物(例えば、特開平11−80596号公報参照)などが挙げられる。
【0020】
次に、陽極酸化を行う。陽極酸化によって、チタンまたはチタン合金がアモルファス二酸化チタンに化成する。本発明では、過酸化水素を含む温度3℃以下の電解液中で陽極酸化することが好ましい。電解液中の過酸化水素の濃度は、0.1質量%以上50質量%未満が好ましく、0.1質量%以上40質量%以下がより好ましく、0.2質量%以上20質量%以下が特に好ましい。電解液中に含まれる電解質としては、リン酸、硫酸、シュウ酸、ホウ酸、アジピン酸などの酸およびそれらの塩が挙げられる。これらのうち、生成するアモルファス二酸化チタン層の抵抗がより高くなるので、リン酸またはその塩を含む水溶液からなる電解液が好ましい。電解液には、さらに凍結防止剤が少量含まれていても良い。凍結防止剤としてはエチレングリコール、イソプロパノール、エタノール、ジエチレングリコールなどが挙げられる。
【0021】
陽極酸化時の電解液の温度は、好ましくは3℃以下、より好ましくは0℃以下である。3℃以下とすることによって安定してアモルファス二酸化チタン層が得られやすくなる。電解液温度の下限は電解液の凍結の観点から好ましくは−30℃である。
陽極酸化における電流密度は好ましくは0.1〜1000mA/cm2、より好ましくは0.1〜100mA/cm2である。また電圧は好ましくは2〜400V、より好ましくは5〜90Vである。陽極酸化時間は適宜選択できるが、好ましくは1ミリ秒間〜400分間、より好ましくは1秒間〜300分間である。
【0022】
本発明の回路基板に用いられる誘電体膜は、耐電圧の向上および漏れ電流の低減の観点から、さらにペロブスカイト構造の複合酸化物層を有するものであることが好ましい。ペロブスカイト構造の複合酸化物としては、SrTiO3、(Ba,Sr)TiO3、BaTiO3、(Pb、La)(Zr,Ti)O3、Pb(Zr,Ti)O3、PbTiO3、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3等が挙げられる。これらのうち、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも一種の金属とTiとの複合酸化物が好ましい。Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも一種の金属とTiとの複合酸化物層は、例えば、上記二酸化チタン層にCa、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素を含むpH11以上の水溶液を80℃〜沸点の範囲で反応させることによって得られる。
【0023】
本発明の回路基板に用いられる誘電体膜は、耐電圧や容量密度などの観点から、厚さが1nm〜300nmであることが好ましい。誘電体膜の厚さは陽極酸化条件などを調整することによって制御できる。
【0024】
本発明の回路基板は、前記のコンデンサ以外に、レジスタ、インダクタ、アンテナ、フィルタ、電池、水晶発振子、バリスタ、圧電素子などの受動素子が組み込まれていてもよい。本発明の回路基板の製造方法によれば、基板を高温にさらすことなくコンデンサを多数形成することができるので、他の受動素子を近接して配置することができ、高集積化・小型化を容易に図ることができる。また、回路基板上に、LSI、VLSI、ULSI、GSIのごとき集積回路や発光ダイオードなどの能動素子、または前記のような受動素子を実装することによって、電子装置を構成することができる。
【実施例】
【0025】
次に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
[第一実施例]
図3は、第一実施例に係る回路基板を備えた電子装置の概略構成を示す断面図である。回路基板50Aは、スルーホール52A及び導電体層52Bが形成された両面銅張り板FR−4基板よりなるベース基板51と、ベース基板51の一方の主面上に形成された絶縁層53−1〜53−4と、絶縁層53−1〜53−4間に配置された誘電体膜54−1〜54−3を下側電極層56−1〜56−3と上側電極層58−1〜58−3により挟んで形成されたコンデンサ57−1〜57−3と、ベース基板51の他方の主面上に形成された、第一電極層66/誘電体膜64/第二電極層68/誘電体膜64が交互に繰り返されて形成されたコンデンサ67と、回路基板50Aの表面に形成された抵抗体膜61を有する抵抗素子62などから構成され、電子装置50は回路基板50Aと、回路基板50Aの表面に搭載されたLSI70とから構成されている。
【0026】
本実施例に係る回路基板を備えた電子装置50では誘電体膜54−1〜54−3がアモルファス二酸化チタン層である。
図2A〜図2Hは、本実施例にかかる回路基板の製造工程を示す図である。まず、ベース基板51として両面銅張り板FR−4基板を用意した(図2A)。ベース基板51には表裏面の通電を可能にするスルーホール52Aが設けられ、両面に配線となる導電体層52Bが設けられている。
【0027】
次に、ベース基板51の両面に、絶縁層53−1および63−1としてのエポキシ樹脂シート(味の素社製ABF−SH−9K(厚さ50μm))を接着した(図2B)。
【0028】
絶縁層53−1の表面に、膜厚40μmのデスミア保護膜(ニチゴー・モートン社製NIT215)を、密着ロール温度105℃、線圧4kg/cmにてラミネートした。ラミネートされたデスミア保護膜を介して絶縁層53−1表面にUV−YAGレーザを3mWのエネルギーで照射し、直径約50μmの穴を穿った。酸素プラズマ装置を用いて、酸素圧力0.15mPa、500Wの出力で5分間処理した。次いで、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)5%溶液に浸漬しデスミア保護膜を剥離し、水洗乾燥してビアホール73を得た。
さらに、ビアホール73が形成された絶縁層53−1の表面に、無電解めっき法よりなるCuを鍍金し、めっきシード層74を形成した。めっきシード層74表面に膜厚40μmのドライフィルムレジスト(ニチゴー・モートン社製NIT215)を、密着ロール温度105℃、線圧4kg/cmにてラミネートした。次いで配線パターンを全波長使用の平行光紫外線を用いて露光し、炭酸ナトリウム1質量%水溶液を用いてスプレー法により現像し、配線パターンが形成されたレジスト膜75を得た(図2C)。
【0029】
電解めっき法により金属層を積層した。次いで、レジスト膜75を剥離して、レジスト膜75で覆われていた部分のめっきシード層をパネルエッチングにより除去した。エッチング液としては過酸化水素水と硫酸の混合液を用いた。これにより配線パターニングされた金属層56−1’が形成された(図2D)。
【0030】
金属層56−1’のパターンに合わせてマスキングをし、チタンをスパッタ法で金属層56−1’に500nm積層して、下側電極層(チタン層)56−1を形成させた(図2E)。
【0031】
3質量%過酸化水素、0.1質量%リン酸、及び25体積%エチレングリコールを含む水溶液を電解液として用い、下側電極層56−1の表面を−10℃、60Vで陽極酸化して誘電体膜54−1を形成した。誘電体膜54−1は、厚さ約140nmのアモルファス二酸化チタン層であった(図2F)。
【0032】
なお、チタンを積層後、できるだけ速やかに陽極酸化をすることが望ましい。これは、チタン表面の酸化膜は非晶質の陽極酸化膜だけであることが望ましいため、チタン表面で結晶性の自然酸化膜が成長することをできるだけ避けるためである。結晶性の酸化膜はコンデンサを形成したときに漏れ電流を増加させる。通常、チタン表面が空気中にさらされる時間が5分間程度以内であれば、作成されるコンデンサの性能にほとんど影響ない。
【0033】
誘電体膜54−1のパターンに合わせたマスクを用い、銅を誘電体膜54−1上に蒸着し、さらに電解めっき法により上側電極層58−1を5μm積層した(図2G)。下側電極層56−1、誘電体膜54−1および上側電極層58−1によってコンデンサが形成された。
【0034】
次いで、構造体の表面に絶縁層53−2としてのエポキシ樹脂シート(味の素社製ABF−SH−9K(厚さ50μm))を接着した(図2H)。
【0035】
上記の操作を繰り返すことによって、図3に示すような、絶縁層53−1〜53−4と誘電体膜54−11〜54−3とがそれぞれ交互に積層された多層構造を形成させた。なお、各下側電極層56及び上側電極層58間にはビアなどの配線59が形成されている。
【0036】
ベース基板51の他方の主面上に形成された絶縁層63−1上に、無電解めっき法によるめっきシード層(図示せず)と電解メッキ法による第一電極層66を形成した。次いで第一電極層66上に、上記誘電体膜54−1と同様に誘電体膜64を形成した。次いで第一電極層と同様にして第二電極層68を形成し、さらに誘電体膜64を形成した。さらに第一電極層66/誘電体膜54−1/第二電極層68/誘電体膜54−1/第一電極層66を形成し、第一電極層66同士、または第二電極層68同士を接続するビア69Aおよび69Bを形成し大容量のコンデンサ67を形成した。
【0037】
さらに、回路基板50Aの表面には電極79を形成した。次いで真空積層プレスにより回路基板50Aの構造体全体を一体化・貼り合わせた。具体的には60Torr以下の圧力で、温度180℃の状態で70分間に亘り線圧30kg/cmの条件を用いた。これを断面観察により確認したところ良好な多層からなる回路基板を得た。さらに、表面のオーバーコート層をスクリーン印刷とフォトリソ法を併用して形成した。次いで、回路基板50Aの表面にLSI70等の電子部品を半田付けした。以上により、図3に示す第一実施例に係る回路基板及び電子装置が形成された。
【0038】
本実施例によれば、コンデンサ57−1〜57−3および67を絶縁層間に形成することにより多層化が容易であり、また、大容量のコンデンサを形成することができる。したがって、回路基板50Aの表面に実装されるコンデンサの数を低減し、LSI70等の能動素子の実装可能な数を増加すると共に回路基板を小型化することができる。ひいては、能動素子間を近接することにより電子装置の動作速度の高速化することができる。
【0039】
[第二実施例]
第二実施例は、第一実施例の誘電体膜54−1〜54−3および64として、アモルファス二酸化チタン層とチタン酸バリウム層とが積層されたものを用いた以外は第一実施例と同じである。
アモルファス二酸化チタン層とチタン酸バリウム層とが積層された誘電体膜は以下の方法で得た。
まず、20%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液1Lに水酸化バリウム八水和物10gを溶解して処理液を得た。
第一実施例と同様にして誘電体膜(アモルファス二酸化チタン層)を形成し、次いで、該二酸化チタン層表面を前記処理液に4時間接触させた。次に0.1N硝酸で付着している炭酸バリウムを溶解除去し、さらに水洗した。水洗後、乾燥した。アモルファス二酸化チタン層の表面から平均して約20nmの深さの部分までがチタン酸バリウムに化成された。
【0040】
[第三実施例]
第三実施例は、第一実施例で行ったチタンの陽極酸化を5Vで行い、誘電体膜54−1〜54−3の厚さを12nmにした以外は第一実施例と同じである。
【0041】
[第四実施例]
第四実施例は、第一実施例で行ったチタンの陽極酸化を90Vで行い、誘電体膜54−1〜54−3の厚さを210nmにした以外は第一実施例と同じである。
【0042】
[第五実施例]
図4は、第五実施例に係る回路基板を備えた電子装置80の概略構成を示す断面図である。回路基板80Aは、絶縁層81−1〜81−4とプリプレグ85−1〜85−4が交互に積層され、且つスルーホール86が設けられたベース基板80Bと、ベース基板80B上に形成された絶縁層53−1〜53−4と、回路基板80A表面に形成された抵抗素子92などから構成されている。さらに電子装置80は回路基板80Aと、回路基板80Aの表面に搭載されたLSI70とから構成されている。
【0043】
コンデンサ87は、絶縁層81−1〜81−4上に選択的に形成された下側電極層82−1〜82−4と、絶縁層81−1〜81−4及び下側電極層82−1〜82−4を覆う誘電体膜83−1〜83−4と、誘電体膜83−1〜83−4上に下側電極層82−1〜82−4に対向して形成された上側電極層84−1〜84−4とから構成されている。下側電極層82−1〜82−4および上側電極層84−1〜84−4はスルーホール86によってそれぞれが並列に接続されている。誘電体膜83−1〜83−4はアモルファス二酸化チタンで形成されている。
【0044】
回路基板80Aは以下の方法で製造した。まず、絶縁層81及び下側電極層82用の導電層が形成された片面銅張り板FR−4基板を用意し、基板表面の銅膜をエッチングして下側電極層82を形成した。次いで、第一実施例と同様に、下側電極層82上にチタンを積層し、陽極酸化により誘電体膜83を形成した。誘電体膜83上に第一実施例において説明した方法と同様の方法で下側電極層82に対向する上側電極層84を形成した。以上によりコンデンサ87が形成された。
コンデンサ87が形成された絶縁層81を4枚用意し、絶縁層81間にプレプリグ85を配置し、加熱温度80℃、線圧4kg/cmにてラミネートして密着させた。ドリル穿孔および電気めっき法によりスルーホールを形成した。コンデンサ87を並列接続させて内蔵するビルドアップ基板用のベース基板が形成された。
【0045】
次いで、ベース基板の両側に絶縁層53−1〜53−4としてのエポキシ樹脂シート(味の素社製ABF−SH−9K(厚さ50μm))を接着し、配線89〜91及び回路基板80A表面に電極79を形成した。次いで、回路基板80Aの表面にLSI70等の電子部品を半田付けした。以上により、図4に示す本実施例に係る回路基板80Aを備えた電子装置80が形成された。
【0046】
本実施例によれば、ベース基板80A中に大容量のコンデンサを形成することができる。また、ベース基板80A上にもコンデンサを形成することができるので、第一〜第四実施例と比較して、回路基板の単位面積当たりの静電容量、いわゆる静電容量密度を増加することができる。さらに、第一〜第四実施例と比較して、ベース基板80A上に形成される配線の自由度を高めることができる。
【0047】
[第六実施例]
第六実施例に係る回路基板は、ポリイミド樹脂からなる絶縁層が積層されたフレキシブル基板に係るものであり、絶縁層間に形成されたコンデンサがアモルファス二酸化チタン層を有する誘電体膜を有するものである。
図5は、第六実施例に係る回路基板を備えた電子装置100の概略構成を示す断面図である。回路基板100Aは、ポリイミド樹脂よりなる絶縁層101−1〜101−4間あるいは絶縁層111−1〜111−2間に形成されたコンデンサ105、115と、回路基板100A表面に形成された抵抗素子108などから構成されている。電子装置100は回路基板100Aと、回路基板100Aの表面に搭載されたLSI70などから構成されている。
【0048】
コンデンサ105は、絶縁層101−1〜101−3を覆うようにまたは選択的に形成された下側電極層102−1〜102−3と、絶縁層101−1〜101−3及び下側電極層102−1〜102−3を覆う誘電体膜103−1〜103−3と、誘電体膜上に選択的に形成された上側電極層104−1〜104−3より構成され、ビア106により電気的に接続されている。
【0049】
また、コンデンサ115は、絶縁層111−1を覆うようにまたは選択的に形成された下側電極層112と、絶縁層111及び下側電極層112を覆う誘電体膜113と、誘電体膜113上に選択的に形成された上側電極層114より構成され、ビア116等により他の配線に電気的に接続されている。
本実施例に係る回路基板100Aを備えた電子装置100は、絶縁層がポリイミド樹脂により形成され、誘電体膜103−1〜103−3、113がアモルファス二酸化チタンにより形成されている。
【0050】
回路基板100Aは以下の方法で製造した。図6(A)〜(C)は第六実施例に係る回路基板の製造工程の一部を示す図である。
まず、パイレックス(登録商標)ガラスのプロセス用基板PSの表面に、非感光性のポリイミド樹脂膜111−1をスピンコート法により約10μmの厚さで形成した。なお、塗布方法としては、スピンコート法の替わりにスクリーン印刷法,スプレー法,カーテンコート法,ロールコート法,ディップ法を用いてもよい。
プロセス用基板上に形成されたポリイミド樹脂膜を温度80℃で30分間の乾燥、そして350℃で30分間の加熱を行って硬化させ絶縁層111−1を形成した。次いで、CMP(化学機械研磨)法によりこの絶縁層111−1を研磨・平坦化した。
絶縁層111−1表面にスパッタ法により厚さ1μmのチタン層112を形成し、下側電極層102とした。
チタン層形成後速やかに、下側電極層112の表面を、1質量%過酸化水素、0.3質量%アジピン酸、及び25体積%エチレングリコールを含む水溶液を電解液として用い、−10℃、60Vで陽極酸化し、厚さ約140nmのアモルファス二酸化チタン層113を形成させた(図6(A))。
【0051】
次に、誘電体膜113上にスパッタ法でCr/Cuよりなる積層導電体(図示せず)を成膜し、その上に電解めっき法により厚さ約5μmのCu膜(上側電極層)114を形成した。さらに、上側電極層114の表面に厚さ約10μmのレジスト膜118を塗布し、ガラスマスクを重ねて水銀ランプにて400MmJ/cm2の露光を行い、アルカリを含む現像液にて露光部分を溶解除去した(図6(B))。
【0052】
レジスト膜118をマスクとして、上側電極層114のエッチングを行ない、パターン化された上側電極層114を形成した。以上により下側電極層112と上側電極層114とそれらに挟まれた誘電体膜113とからなるコンデンサ115が形成された。次いで絶縁層111−2を形成した(図6(C))。さらに、同様の方法により、誘電体膜103−1〜103−3を有するコンデンサ105を同様にして形成した。
【0053】
誘電体膜103中のビア107は、誘電体膜103上にレジスト膜を形成し、レジスト膜をパターニングして、フッ化水素酸等により誘電体膜103をエッチングしてビアホール(図示せず)を形成し、さらに、上述した無電解めっき法によるメッキシード層を形成し、次いで電解メッキ法によりメッキシード層上にめっき膜を成長させて形成した。なお、誘電体膜103上に上側電極層104および絶縁層101を形成後に、これらの層を貫通して誘電体膜を露出させるビアホールを予め形成し、次いで誘電体膜104をエッチングしてもよい。以上により形成された回路基板をパイレックス(登録商標)ガラスから剥離してフィルム化した。
【0054】
本実施例によれば、従来のようにプロセス基板PSの直上にコンデンサ115を形成できるだけでなく、ポリイミド樹脂からなる積層された絶縁層101−1〜101−4間にコンデンサ105を形成することが可能である。したがって、従来と比較して大容量のコンデンサを形成することができる。また、本実施例の回路基板を曲率半径1mmで180度に曲げてもコンデンサの性能に影響は無かった。これは、誘電体のアモルファス二酸化チタンが可撓性に優れているからであると考えられる。
【0055】
[第七実施例]
第七実施例に係る回路基板は、電子装置の筐体をベース基板としたものである。本実施例では、エポキシ系樹脂コートマグネシウムよりなる筐体を用いた。
図7は、第七実施例に係る回路基板を備えた電子装置の概略構成を示す断面図である。
回路基板140Aは、電子装置の筐体であるベース基板141と、ベース基板141上に形成されたコンデンサ147と、ベース基板141及びコンデンサ147を覆う絶縁層145と、回路基板140A表面に形成された抵抗素子148などから構成されている。電子装置140は、回路基板140Aと、回路基板140A表面に搭載されたLSI70などから構成されている。
【0056】
回路基板140Aは以下の方法で製造した。まず、ベース基板上にパターニングしたメタルマスクを設置し、スパッタ法を用いて厚さ1.2μmのチタン膜を形成して下側電極層142とした。
その後速やかに、下側電極層142の表面を、1質量%過酸化水素、0.1質量%リン酸、及び25体積%エチレングリコールを含む水溶液を電解液として用い、−10℃、60Vで陽極酸化し、厚さ約140nmのアモルファス二酸化チタンからなる誘電体膜143を形成した。
誘電体膜143上にスパッタ法でCr/Cuよりなる積層導電体(図示せず)を成膜し、その上に電解めっき法により厚さ約5μmのCu膜(上側電極層)144を形成した。さらにその上に、絶縁層145としてエポキシ樹脂シート(味の素社製ABF−SH−9K(厚さ50μm))を接着した。
【0057】
アモルファス二酸化チタンを誘電体膜143とするコンデンサは、高容量密度で漏れ電流が少なく、電子装置の筐体であるベース基板141を損傷させることなく、かつ高い付着強度を有するので、信頼性の高い回路を形成することができる。さらに、筐体上に回路基板140A及び電子部品を備えた電子装置140を形成することが可能であるので、一層の電子装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態に係る回路基板の要部断面図である。
【図2】(A)〜(H)は第一実施例に係る回路基板の製造工程を示す図である。
【図3】本発明の第一実施例に係る回路基板を備えた電子装置の要部断面図である。
【図4】本発明の第五四実施例に係る回路基板を備えた電子装置の要部断面図である。
【図5】本発明の第六実施例に係る回路基板を備えた電子装置の要部断面図である。
【図6】(A)〜(C)は第六実施例に係る回路基板の製造工程の一部を示す図である。
【図7】本発明の第七実施例に係る回路基板を備えた電子装置の要部断面図である。
【符号の説明】
【0059】
10、50A、80A、100A、140A:回路基板
11:ベース基板
12:第一電極層
13:誘電体膜
14:第二電極層
15:コンデンサ
16:絶縁層
50、80、100、140:電子装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサが回路基板上または回路基板中に組み込まれた回路基板およびその製造方法、並びに該回路基板に電子部品が実装された電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータや、携帯電話や、モバイル機器等の電子機器は、小型化・高性能化が急速に進んでいる。このような電子機器の小型化のために、回路基板中または回路基板上にコンデンサ、レジスタ、インダクタ、アンテナ、フィルタなどの受動素子を組み込むことによって実装電子部品の高密度化・高集積化が図られている。
【0003】
GHzオーダーの高周波電流が使用される電子機器では、コンデンサにおける漏れ電流の増大が問題となっている。
回路基板中または回路基板上に組み込まれるコンデンサとして、特許文献1に、シリコンウエハ(ベース基板)上に、クロムのスパッタリングに形成された下部電極と、テトラエトキシシランをプラズマCVDして形成されたSiO2層と、スパッタリングによって形成されたTiNの上部電極とからなるものが記載されている。
【0004】
特許文献2には、第一電極層と、エアロゾルデポジション法によって形成された誘電体膜と、第二電極層とからなるコンデンサを組み込んだ回路基板が記載されている。該誘電体膜に用いられる微粒子材料としてAl2O3、TiO2などの酸化物セラミックス、ペロブスカイト構造を有する酸化物セラミックスが開示されている。さらにアルミニウム系化合物、鉛系化合物を上記微粒子に添加または被覆することが提案されている。
また、特許文献3には、誘電体層にSrTiO3、(Ba,Sr)TiO3、BaTiO3、(Pb、La)(Zr,Ti)O3、Pb(Zr,Ti)O3、PbTiO3、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3等のペロブスカイト構造複合酸化物を用い、導電体層にクロム、チタン、ニッケル、タングステン、タンタル、モリブデンなどの高融点金属を用いたコンデンサを組み込んだ回路基板が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−221036号公報
【特許文献2】特開2004−342831号公報
【特許文献3】特開2001−250885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献に記載のコンデンサ内臓回路基板では、コンデンサの耐電圧が低く、漏れ電流が未だ高い。
本発明の目的は、高容量密度で、漏れ電流が低く、且つ容量の温度依存性・バイアス電圧依存性が小さいコンデンサ内臓回路基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために検討した結果、ベース基板または絶縁層上にチタンまたはチタン合金からなる金属層を形成し、過酸化水素を含む温度3℃以下の電解液中で陽極酸化して金属層表面をアモルファス二酸化チタン層に化成し、該アモルファス二酸化チタン層上に金属層を形成することによって、回路基板中または回路基板上に第一電極層と誘電体膜と第二電極層とからなるコンデンサを組み込んだ回路基板を製造したところ、該回路基板は容量が高く、漏れ電流が低く、且つ容量の温度依存性・バイアス電圧依存性が小さくなることを見出した。本発明は、この知見に基づきさらに検討した結果、完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のものである。
(1)ベース基板と絶縁層とが積層された構造を有する回路基板であって、該回路基板中または回路基板上に第一電極層とアモルファス二酸化チタン層を有する誘電体膜と第二電極層とからなるコンデンサが組み込まれた回路基板。
(2)誘電体膜がさらにペロブスカイト構造の複合酸化物層を有するものである前記(1)に記載の回路基板。
(3)ペロブスカイト構造の複合酸化物が、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも一種の金属とTiとの複合酸化物である前記(2)に記載の回路基板。
(4)コンデンサが、第一電極層と第二電極層とを誘電体膜を挟んで複数交互に積層させたものである前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の回路基板。
(5)ベース基板が樹脂材料からなる前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の回路基板。
(6)ベース基板が、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系共重合体及びファイバガラスからなる群から選ばれる少なくとも一つの材料からなる前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の回路基板。
【0009】
(7)前記(1)〜(6)のうちいずれか1項に記載の回路基板と電子部品とを備えた電子装置。
(8)チタンまたはチタン合金からなる金属層を形成する工程、
過酸化水素を含む温度3℃以下の電解液中で陽極酸化して金属層表面をアモルファス二酸化チタン層に化成する工程、および
アモルファス二酸化チタン層上に金属層を形成する工程を含む、前記(1)〜(6)に記載の回路基板の製造方法。
(9)チタンまたはチタン合金からなる金属層を形成する工程、
過酸化水素を含む温度3℃以下の電解液中で陽極酸化して金属層表面をアモルファス二酸化チタン層に化成する工程、
アモルファス二酸化チタン層上にペロブスカイト構造の複合酸化物層を形成する工程、および
ペロブスカイト構造の複合酸化物層の上に金属層を形成する工程を含む、前記(1)〜(6)に記載の回路基板の製造方法。
(10)アモルファス二酸化チタン層またはペロブスカイト構造の複合酸化物層の上に金属層を形成する工程において、金属層がチタンまたはチタン合金からなるものである前記(8)または(9)に記載の回路基板の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の回路基板は、容量密度が高く、漏れ電流が低く、且つ容量の温度依存性・バイアス電圧依存性が低く、可撓性にも優れるので、GHzオーダーの高周波電流が使用されるパーソナルコンピュータや、携帯電話や、モバイル機器等の電子機器に好適である。本発明の回路基板によれば、回路基板中または回路基板上にコンデンサ、レジスタ、インダクタ、アンテナ、フィルタなどの受動素子を組み込み、実装電子部品の高密度化・高集積化を図ることができる。
【0011】
本発明の回路基板の製法は、基板を高温にさらすことなくコンデンサを多数形成することができ、多層化が容易である。表面に形成するコンデンサを低減することができ、他の素子を近接して配置することができるので高集積化・小型化を図ることができる。
また、アモルファス二酸化チタン層に更にチタン酸バリウムなどのペロブスカイト構造の複合酸化物層を積層することにより、ほとんど容量を低下させずに耐電圧を高くすることができる。
【0012】
本発明によれば、回路基板表面にLSI等の電子部品を高集積化して搭載することができる。その結果、電子部品間の距離が短くなるので伝送時間を短縮することができ、高速動作が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に本発明を図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る回路基板の要部断面図である。
本発明に係る回路基板10は、ベース基板11と絶縁層16とが積層されてなるものである。図1では絶縁層16の上に絶縁層17が積層されているが、所望に応じて、絶縁層17が無くてもよいし、また絶縁層17の上にさら別の絶縁層(図示せず)が1以上積層されていてもよい。また、ベース基板11の下側に絶縁層があってもよい。
【0014】
ベース基板11は、従来の回路基板用のベース基板として公知のものである。ベース基板には、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フッ素系共重合体など樹脂材料、ファイバガラスなどの無機繊維や有機繊維に熱硬化性樹脂を含浸させてなるプリプレグなどが用いられる。もちろん、ベース基板11と第一電極層12との間に絶縁層を設けることにより、ベース基板11にはFe、Ni、Ti、Mo、W、Al、Cu、Ag、Au等の金属単体またはそれらを含む合金よりなる金属材料を用いることができる。また、ベース基板として半導体基板を用いると本発明の回路基板は半導体パッケージとして用いることができる。
【0015】
絶縁層は、電気絶縁性材料で構成される層であれば特に制限されず、例えば、エポキシ樹脂系絶縁層、ポリイミド樹脂系絶縁層、ポリベンゾオキサゾール系絶縁層等を用いることができる。
【0016】
図1に示す回路基板10にはコンデンサ15が組み込まれている。コンデンサ15は、第一電極層12と誘電体膜13と第二電極層14とから構成され、第一電極層12と第二電極層14によって誘電体膜13が挟さまれている。図1では、コンデンサをベース基板11と絶縁層16の間に設けているが、所望に応じて、コンデンサを絶縁層16と絶縁層17の間や回路基板の最外層に設けることができる。また、ベース基板を挟んで両面にそれぞれコンデンサを設けることができる。
【0017】
第一電極層および第二電極層は、導電性材料で構成される層であれば特に制限されない。導電性材料としては、Fe、Ni、Ti、Mo、W、Al、Cu、At、Pd、Ag、Auなどの金属単体またはそれらを含む合金などが挙げられる。これらのうち、後述する誘電体膜を形成しやすいという観点から、チタンまたはチタン合金が好ましい。第一電極層および第二電極層の厚さは、0.1μm〜100μmであることが好ましく、0.5μm〜50μmであることがより好ましく、1μm〜30μmであることが特に好ましい。
【0018】
本発明の回路基板に用いられる誘電体膜は、アモルファス二酸化チタン層を有するものである。二酸化チタンは、通常、ルチル型またはアナターゼ型の結晶構造をなしているが、本発明ではアモルファス二酸化チタンを用いる。アモルファス二酸化チタン層は透過型電子顕微鏡による観察で確認することができる。アモルファス二酸化チタン層の632.8nmの光に対する屈折率は、通常1.90〜2.35である。また、アモルファス二酸化チタン層の比誘電率は、通常30以上である。
【0019】
アモルファス二酸化チタン層は、チタンまたはチタン合金を陽極酸化することによって得られる。
前記の陽極酸化では、第一電極層の最表面がチタンまたはチタン合金で形成されていることが必要である。第一電極層をチタンおよびチタン合金以外の金属、例えば銅で形成した場合には、該金属表面にスパッタ法などを用いてチタンまたはチタン合金膜を形成すればよい。第一電極層をチタンまたはチタン合金で形成した場合は、そのまま次の工程を行うことができる。なお、チタン合金はチタンを70質量%以上含むものが好ましい。好ましいチタン合金として、β−チタンが挙げられる。チタンまたはチタン合金の表面に自然酸化物膜や汚れや傷などがある場合は、それらを陽極酸化の前にエッチング処理等によって除去しておくことが好ましい。陽極酸化の前処理に用いられるエッチング法としては、フッ酸などを用いた化学エッチング法や、電解エッチング法が挙げられる。また、陽極酸化を望まない部位はマスキング材で覆うことができる。マスキング材としては、耐熱性樹脂またはその前駆体、無機微粒子とセルロースからなる組成物(例えば、特開平11−80596号公報参照)などが挙げられる。
【0020】
次に、陽極酸化を行う。陽極酸化によって、チタンまたはチタン合金がアモルファス二酸化チタンに化成する。本発明では、過酸化水素を含む温度3℃以下の電解液中で陽極酸化することが好ましい。電解液中の過酸化水素の濃度は、0.1質量%以上50質量%未満が好ましく、0.1質量%以上40質量%以下がより好ましく、0.2質量%以上20質量%以下が特に好ましい。電解液中に含まれる電解質としては、リン酸、硫酸、シュウ酸、ホウ酸、アジピン酸などの酸およびそれらの塩が挙げられる。これらのうち、生成するアモルファス二酸化チタン層の抵抗がより高くなるので、リン酸またはその塩を含む水溶液からなる電解液が好ましい。電解液には、さらに凍結防止剤が少量含まれていても良い。凍結防止剤としてはエチレングリコール、イソプロパノール、エタノール、ジエチレングリコールなどが挙げられる。
【0021】
陽極酸化時の電解液の温度は、好ましくは3℃以下、より好ましくは0℃以下である。3℃以下とすることによって安定してアモルファス二酸化チタン層が得られやすくなる。電解液温度の下限は電解液の凍結の観点から好ましくは−30℃である。
陽極酸化における電流密度は好ましくは0.1〜1000mA/cm2、より好ましくは0.1〜100mA/cm2である。また電圧は好ましくは2〜400V、より好ましくは5〜90Vである。陽極酸化時間は適宜選択できるが、好ましくは1ミリ秒間〜400分間、より好ましくは1秒間〜300分間である。
【0022】
本発明の回路基板に用いられる誘電体膜は、耐電圧の向上および漏れ電流の低減の観点から、さらにペロブスカイト構造の複合酸化物層を有するものであることが好ましい。ペロブスカイト構造の複合酸化物としては、SrTiO3、(Ba,Sr)TiO3、BaTiO3、(Pb、La)(Zr,Ti)O3、Pb(Zr,Ti)O3、PbTiO3、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3等が挙げられる。これらのうち、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも一種の金属とTiとの複合酸化物が好ましい。Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも一種の金属とTiとの複合酸化物層は、例えば、上記二酸化チタン層にCa、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素を含むpH11以上の水溶液を80℃〜沸点の範囲で反応させることによって得られる。
【0023】
本発明の回路基板に用いられる誘電体膜は、耐電圧や容量密度などの観点から、厚さが1nm〜300nmであることが好ましい。誘電体膜の厚さは陽極酸化条件などを調整することによって制御できる。
【0024】
本発明の回路基板は、前記のコンデンサ以外に、レジスタ、インダクタ、アンテナ、フィルタ、電池、水晶発振子、バリスタ、圧電素子などの受動素子が組み込まれていてもよい。本発明の回路基板の製造方法によれば、基板を高温にさらすことなくコンデンサを多数形成することができるので、他の受動素子を近接して配置することができ、高集積化・小型化を容易に図ることができる。また、回路基板上に、LSI、VLSI、ULSI、GSIのごとき集積回路や発光ダイオードなどの能動素子、または前記のような受動素子を実装することによって、電子装置を構成することができる。
【実施例】
【0025】
次に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
[第一実施例]
図3は、第一実施例に係る回路基板を備えた電子装置の概略構成を示す断面図である。回路基板50Aは、スルーホール52A及び導電体層52Bが形成された両面銅張り板FR−4基板よりなるベース基板51と、ベース基板51の一方の主面上に形成された絶縁層53−1〜53−4と、絶縁層53−1〜53−4間に配置された誘電体膜54−1〜54−3を下側電極層56−1〜56−3と上側電極層58−1〜58−3により挟んで形成されたコンデンサ57−1〜57−3と、ベース基板51の他方の主面上に形成された、第一電極層66/誘電体膜64/第二電極層68/誘電体膜64が交互に繰り返されて形成されたコンデンサ67と、回路基板50Aの表面に形成された抵抗体膜61を有する抵抗素子62などから構成され、電子装置50は回路基板50Aと、回路基板50Aの表面に搭載されたLSI70とから構成されている。
【0026】
本実施例に係る回路基板を備えた電子装置50では誘電体膜54−1〜54−3がアモルファス二酸化チタン層である。
図2A〜図2Hは、本実施例にかかる回路基板の製造工程を示す図である。まず、ベース基板51として両面銅張り板FR−4基板を用意した(図2A)。ベース基板51には表裏面の通電を可能にするスルーホール52Aが設けられ、両面に配線となる導電体層52Bが設けられている。
【0027】
次に、ベース基板51の両面に、絶縁層53−1および63−1としてのエポキシ樹脂シート(味の素社製ABF−SH−9K(厚さ50μm))を接着した(図2B)。
【0028】
絶縁層53−1の表面に、膜厚40μmのデスミア保護膜(ニチゴー・モートン社製NIT215)を、密着ロール温度105℃、線圧4kg/cmにてラミネートした。ラミネートされたデスミア保護膜を介して絶縁層53−1表面にUV−YAGレーザを3mWのエネルギーで照射し、直径約50μmの穴を穿った。酸素プラズマ装置を用いて、酸素圧力0.15mPa、500Wの出力で5分間処理した。次いで、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)5%溶液に浸漬しデスミア保護膜を剥離し、水洗乾燥してビアホール73を得た。
さらに、ビアホール73が形成された絶縁層53−1の表面に、無電解めっき法よりなるCuを鍍金し、めっきシード層74を形成した。めっきシード層74表面に膜厚40μmのドライフィルムレジスト(ニチゴー・モートン社製NIT215)を、密着ロール温度105℃、線圧4kg/cmにてラミネートした。次いで配線パターンを全波長使用の平行光紫外線を用いて露光し、炭酸ナトリウム1質量%水溶液を用いてスプレー法により現像し、配線パターンが形成されたレジスト膜75を得た(図2C)。
【0029】
電解めっき法により金属層を積層した。次いで、レジスト膜75を剥離して、レジスト膜75で覆われていた部分のめっきシード層をパネルエッチングにより除去した。エッチング液としては過酸化水素水と硫酸の混合液を用いた。これにより配線パターニングされた金属層56−1’が形成された(図2D)。
【0030】
金属層56−1’のパターンに合わせてマスキングをし、チタンをスパッタ法で金属層56−1’に500nm積層して、下側電極層(チタン層)56−1を形成させた(図2E)。
【0031】
3質量%過酸化水素、0.1質量%リン酸、及び25体積%エチレングリコールを含む水溶液を電解液として用い、下側電極層56−1の表面を−10℃、60Vで陽極酸化して誘電体膜54−1を形成した。誘電体膜54−1は、厚さ約140nmのアモルファス二酸化チタン層であった(図2F)。
【0032】
なお、チタンを積層後、できるだけ速やかに陽極酸化をすることが望ましい。これは、チタン表面の酸化膜は非晶質の陽極酸化膜だけであることが望ましいため、チタン表面で結晶性の自然酸化膜が成長することをできるだけ避けるためである。結晶性の酸化膜はコンデンサを形成したときに漏れ電流を増加させる。通常、チタン表面が空気中にさらされる時間が5分間程度以内であれば、作成されるコンデンサの性能にほとんど影響ない。
【0033】
誘電体膜54−1のパターンに合わせたマスクを用い、銅を誘電体膜54−1上に蒸着し、さらに電解めっき法により上側電極層58−1を5μm積層した(図2G)。下側電極層56−1、誘電体膜54−1および上側電極層58−1によってコンデンサが形成された。
【0034】
次いで、構造体の表面に絶縁層53−2としてのエポキシ樹脂シート(味の素社製ABF−SH−9K(厚さ50μm))を接着した(図2H)。
【0035】
上記の操作を繰り返すことによって、図3に示すような、絶縁層53−1〜53−4と誘電体膜54−11〜54−3とがそれぞれ交互に積層された多層構造を形成させた。なお、各下側電極層56及び上側電極層58間にはビアなどの配線59が形成されている。
【0036】
ベース基板51の他方の主面上に形成された絶縁層63−1上に、無電解めっき法によるめっきシード層(図示せず)と電解メッキ法による第一電極層66を形成した。次いで第一電極層66上に、上記誘電体膜54−1と同様に誘電体膜64を形成した。次いで第一電極層と同様にして第二電極層68を形成し、さらに誘電体膜64を形成した。さらに第一電極層66/誘電体膜54−1/第二電極層68/誘電体膜54−1/第一電極層66を形成し、第一電極層66同士、または第二電極層68同士を接続するビア69Aおよび69Bを形成し大容量のコンデンサ67を形成した。
【0037】
さらに、回路基板50Aの表面には電極79を形成した。次いで真空積層プレスにより回路基板50Aの構造体全体を一体化・貼り合わせた。具体的には60Torr以下の圧力で、温度180℃の状態で70分間に亘り線圧30kg/cmの条件を用いた。これを断面観察により確認したところ良好な多層からなる回路基板を得た。さらに、表面のオーバーコート層をスクリーン印刷とフォトリソ法を併用して形成した。次いで、回路基板50Aの表面にLSI70等の電子部品を半田付けした。以上により、図3に示す第一実施例に係る回路基板及び電子装置が形成された。
【0038】
本実施例によれば、コンデンサ57−1〜57−3および67を絶縁層間に形成することにより多層化が容易であり、また、大容量のコンデンサを形成することができる。したがって、回路基板50Aの表面に実装されるコンデンサの数を低減し、LSI70等の能動素子の実装可能な数を増加すると共に回路基板を小型化することができる。ひいては、能動素子間を近接することにより電子装置の動作速度の高速化することができる。
【0039】
[第二実施例]
第二実施例は、第一実施例の誘電体膜54−1〜54−3および64として、アモルファス二酸化チタン層とチタン酸バリウム層とが積層されたものを用いた以外は第一実施例と同じである。
アモルファス二酸化チタン層とチタン酸バリウム層とが積層された誘電体膜は以下の方法で得た。
まず、20%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液1Lに水酸化バリウム八水和物10gを溶解して処理液を得た。
第一実施例と同様にして誘電体膜(アモルファス二酸化チタン層)を形成し、次いで、該二酸化チタン層表面を前記処理液に4時間接触させた。次に0.1N硝酸で付着している炭酸バリウムを溶解除去し、さらに水洗した。水洗後、乾燥した。アモルファス二酸化チタン層の表面から平均して約20nmの深さの部分までがチタン酸バリウムに化成された。
【0040】
[第三実施例]
第三実施例は、第一実施例で行ったチタンの陽極酸化を5Vで行い、誘電体膜54−1〜54−3の厚さを12nmにした以外は第一実施例と同じである。
【0041】
[第四実施例]
第四実施例は、第一実施例で行ったチタンの陽極酸化を90Vで行い、誘電体膜54−1〜54−3の厚さを210nmにした以外は第一実施例と同じである。
【0042】
[第五実施例]
図4は、第五実施例に係る回路基板を備えた電子装置80の概略構成を示す断面図である。回路基板80Aは、絶縁層81−1〜81−4とプリプレグ85−1〜85−4が交互に積層され、且つスルーホール86が設けられたベース基板80Bと、ベース基板80B上に形成された絶縁層53−1〜53−4と、回路基板80A表面に形成された抵抗素子92などから構成されている。さらに電子装置80は回路基板80Aと、回路基板80Aの表面に搭載されたLSI70とから構成されている。
【0043】
コンデンサ87は、絶縁層81−1〜81−4上に選択的に形成された下側電極層82−1〜82−4と、絶縁層81−1〜81−4及び下側電極層82−1〜82−4を覆う誘電体膜83−1〜83−4と、誘電体膜83−1〜83−4上に下側電極層82−1〜82−4に対向して形成された上側電極層84−1〜84−4とから構成されている。下側電極層82−1〜82−4および上側電極層84−1〜84−4はスルーホール86によってそれぞれが並列に接続されている。誘電体膜83−1〜83−4はアモルファス二酸化チタンで形成されている。
【0044】
回路基板80Aは以下の方法で製造した。まず、絶縁層81及び下側電極層82用の導電層が形成された片面銅張り板FR−4基板を用意し、基板表面の銅膜をエッチングして下側電極層82を形成した。次いで、第一実施例と同様に、下側電極層82上にチタンを積層し、陽極酸化により誘電体膜83を形成した。誘電体膜83上に第一実施例において説明した方法と同様の方法で下側電極層82に対向する上側電極層84を形成した。以上によりコンデンサ87が形成された。
コンデンサ87が形成された絶縁層81を4枚用意し、絶縁層81間にプレプリグ85を配置し、加熱温度80℃、線圧4kg/cmにてラミネートして密着させた。ドリル穿孔および電気めっき法によりスルーホールを形成した。コンデンサ87を並列接続させて内蔵するビルドアップ基板用のベース基板が形成された。
【0045】
次いで、ベース基板の両側に絶縁層53−1〜53−4としてのエポキシ樹脂シート(味の素社製ABF−SH−9K(厚さ50μm))を接着し、配線89〜91及び回路基板80A表面に電極79を形成した。次いで、回路基板80Aの表面にLSI70等の電子部品を半田付けした。以上により、図4に示す本実施例に係る回路基板80Aを備えた電子装置80が形成された。
【0046】
本実施例によれば、ベース基板80A中に大容量のコンデンサを形成することができる。また、ベース基板80A上にもコンデンサを形成することができるので、第一〜第四実施例と比較して、回路基板の単位面積当たりの静電容量、いわゆる静電容量密度を増加することができる。さらに、第一〜第四実施例と比較して、ベース基板80A上に形成される配線の自由度を高めることができる。
【0047】
[第六実施例]
第六実施例に係る回路基板は、ポリイミド樹脂からなる絶縁層が積層されたフレキシブル基板に係るものであり、絶縁層間に形成されたコンデンサがアモルファス二酸化チタン層を有する誘電体膜を有するものである。
図5は、第六実施例に係る回路基板を備えた電子装置100の概略構成を示す断面図である。回路基板100Aは、ポリイミド樹脂よりなる絶縁層101−1〜101−4間あるいは絶縁層111−1〜111−2間に形成されたコンデンサ105、115と、回路基板100A表面に形成された抵抗素子108などから構成されている。電子装置100は回路基板100Aと、回路基板100Aの表面に搭載されたLSI70などから構成されている。
【0048】
コンデンサ105は、絶縁層101−1〜101−3を覆うようにまたは選択的に形成された下側電極層102−1〜102−3と、絶縁層101−1〜101−3及び下側電極層102−1〜102−3を覆う誘電体膜103−1〜103−3と、誘電体膜上に選択的に形成された上側電極層104−1〜104−3より構成され、ビア106により電気的に接続されている。
【0049】
また、コンデンサ115は、絶縁層111−1を覆うようにまたは選択的に形成された下側電極層112と、絶縁層111及び下側電極層112を覆う誘電体膜113と、誘電体膜113上に選択的に形成された上側電極層114より構成され、ビア116等により他の配線に電気的に接続されている。
本実施例に係る回路基板100Aを備えた電子装置100は、絶縁層がポリイミド樹脂により形成され、誘電体膜103−1〜103−3、113がアモルファス二酸化チタンにより形成されている。
【0050】
回路基板100Aは以下の方法で製造した。図6(A)〜(C)は第六実施例に係る回路基板の製造工程の一部を示す図である。
まず、パイレックス(登録商標)ガラスのプロセス用基板PSの表面に、非感光性のポリイミド樹脂膜111−1をスピンコート法により約10μmの厚さで形成した。なお、塗布方法としては、スピンコート法の替わりにスクリーン印刷法,スプレー法,カーテンコート法,ロールコート法,ディップ法を用いてもよい。
プロセス用基板上に形成されたポリイミド樹脂膜を温度80℃で30分間の乾燥、そして350℃で30分間の加熱を行って硬化させ絶縁層111−1を形成した。次いで、CMP(化学機械研磨)法によりこの絶縁層111−1を研磨・平坦化した。
絶縁層111−1表面にスパッタ法により厚さ1μmのチタン層112を形成し、下側電極層102とした。
チタン層形成後速やかに、下側電極層112の表面を、1質量%過酸化水素、0.3質量%アジピン酸、及び25体積%エチレングリコールを含む水溶液を電解液として用い、−10℃、60Vで陽極酸化し、厚さ約140nmのアモルファス二酸化チタン層113を形成させた(図6(A))。
【0051】
次に、誘電体膜113上にスパッタ法でCr/Cuよりなる積層導電体(図示せず)を成膜し、その上に電解めっき法により厚さ約5μmのCu膜(上側電極層)114を形成した。さらに、上側電極層114の表面に厚さ約10μmのレジスト膜118を塗布し、ガラスマスクを重ねて水銀ランプにて400MmJ/cm2の露光を行い、アルカリを含む現像液にて露光部分を溶解除去した(図6(B))。
【0052】
レジスト膜118をマスクとして、上側電極層114のエッチングを行ない、パターン化された上側電極層114を形成した。以上により下側電極層112と上側電極層114とそれらに挟まれた誘電体膜113とからなるコンデンサ115が形成された。次いで絶縁層111−2を形成した(図6(C))。さらに、同様の方法により、誘電体膜103−1〜103−3を有するコンデンサ105を同様にして形成した。
【0053】
誘電体膜103中のビア107は、誘電体膜103上にレジスト膜を形成し、レジスト膜をパターニングして、フッ化水素酸等により誘電体膜103をエッチングしてビアホール(図示せず)を形成し、さらに、上述した無電解めっき法によるメッキシード層を形成し、次いで電解メッキ法によりメッキシード層上にめっき膜を成長させて形成した。なお、誘電体膜103上に上側電極層104および絶縁層101を形成後に、これらの層を貫通して誘電体膜を露出させるビアホールを予め形成し、次いで誘電体膜104をエッチングしてもよい。以上により形成された回路基板をパイレックス(登録商標)ガラスから剥離してフィルム化した。
【0054】
本実施例によれば、従来のようにプロセス基板PSの直上にコンデンサ115を形成できるだけでなく、ポリイミド樹脂からなる積層された絶縁層101−1〜101−4間にコンデンサ105を形成することが可能である。したがって、従来と比較して大容量のコンデンサを形成することができる。また、本実施例の回路基板を曲率半径1mmで180度に曲げてもコンデンサの性能に影響は無かった。これは、誘電体のアモルファス二酸化チタンが可撓性に優れているからであると考えられる。
【0055】
[第七実施例]
第七実施例に係る回路基板は、電子装置の筐体をベース基板としたものである。本実施例では、エポキシ系樹脂コートマグネシウムよりなる筐体を用いた。
図7は、第七実施例に係る回路基板を備えた電子装置の概略構成を示す断面図である。
回路基板140Aは、電子装置の筐体であるベース基板141と、ベース基板141上に形成されたコンデンサ147と、ベース基板141及びコンデンサ147を覆う絶縁層145と、回路基板140A表面に形成された抵抗素子148などから構成されている。電子装置140は、回路基板140Aと、回路基板140A表面に搭載されたLSI70などから構成されている。
【0056】
回路基板140Aは以下の方法で製造した。まず、ベース基板上にパターニングしたメタルマスクを設置し、スパッタ法を用いて厚さ1.2μmのチタン膜を形成して下側電極層142とした。
その後速やかに、下側電極層142の表面を、1質量%過酸化水素、0.1質量%リン酸、及び25体積%エチレングリコールを含む水溶液を電解液として用い、−10℃、60Vで陽極酸化し、厚さ約140nmのアモルファス二酸化チタンからなる誘電体膜143を形成した。
誘電体膜143上にスパッタ法でCr/Cuよりなる積層導電体(図示せず)を成膜し、その上に電解めっき法により厚さ約5μmのCu膜(上側電極層)144を形成した。さらにその上に、絶縁層145としてエポキシ樹脂シート(味の素社製ABF−SH−9K(厚さ50μm))を接着した。
【0057】
アモルファス二酸化チタンを誘電体膜143とするコンデンサは、高容量密度で漏れ電流が少なく、電子装置の筐体であるベース基板141を損傷させることなく、かつ高い付着強度を有するので、信頼性の高い回路を形成することができる。さらに、筐体上に回路基板140A及び電子部品を備えた電子装置140を形成することが可能であるので、一層の電子装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態に係る回路基板の要部断面図である。
【図2】(A)〜(H)は第一実施例に係る回路基板の製造工程を示す図である。
【図3】本発明の第一実施例に係る回路基板を備えた電子装置の要部断面図である。
【図4】本発明の第五四実施例に係る回路基板を備えた電子装置の要部断面図である。
【図5】本発明の第六実施例に係る回路基板を備えた電子装置の要部断面図である。
【図6】(A)〜(C)は第六実施例に係る回路基板の製造工程の一部を示す図である。
【図7】本発明の第七実施例に係る回路基板を備えた電子装置の要部断面図である。
【符号の説明】
【0059】
10、50A、80A、100A、140A:回路基板
11:ベース基板
12:第一電極層
13:誘電体膜
14:第二電極層
15:コンデンサ
16:絶縁層
50、80、100、140:電子装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板と絶縁層とが積層された構造を有する回路基板であって、該回路基板中または回路基板上に第一電極層とアモルファス二酸化チタン層を有する誘電体膜と第二電極層とからなるコンデンサが組み込まれた回路基板。
【請求項2】
誘電体膜がさらにペロブスカイト構造の複合酸化物層を有するものである請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
ペロブスカイト構造の複合酸化物が、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも一種の金属とTiとの複合酸化物である請求項2に記載の回路基板。
【請求項4】
コンデンサが、第一電極層と第二電極層とを誘電体膜を挟んで複数交互に積層させたものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の回路基板。
【請求項5】
ベース基板が樹脂材料からなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の回路基板。
【請求項6】
ベース基板が、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系共重合体及びファイバガラスからなる群から選ばれる少なくとも一つの材料からなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の回路基板。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の回路基板と電子部品とを備えた電子装置。
【請求項8】
チタンまたはチタン合金からなる金属層を形成する工程、
過酸化水素を含む温度3℃以下の電解液中で陽極酸化して金属層表面をアモルファス二酸化チタン層に化成する工程、および
アモルファス二酸化チタン層上に金属層を形成する工程 を含む、請求項1〜6に記載の回路基板の製造方法。
【請求項9】
チタンまたはチタン合金からなる金属層を形成する工程、
過酸化水素を含む温度3℃以下の電解液中で陽極酸化して金属層表面をアモルファス二酸化チタン層に化成する工程、
アモルファス二酸化チタン層上にペロブスカイト構造の複合酸化物層を形成する工程、および
ペロブスカイト構造の複合酸化物層の上に金属層を形成する工程を含む、請求項1〜6に記載の回路基板の製造方法。
【請求項10】
アモルファス二酸化チタン層またはペロブスカイト構造の複合酸化物層の上に金属層を形成する工程において、金属層がチタンまたはチタン合金からなるものである請求項8または9に記載の回路基板の製造方法。
【請求項1】
ベース基板と絶縁層とが積層された構造を有する回路基板であって、該回路基板中または回路基板上に第一電極層とアモルファス二酸化チタン層を有する誘電体膜と第二電極層とからなるコンデンサが組み込まれた回路基板。
【請求項2】
誘電体膜がさらにペロブスカイト構造の複合酸化物層を有するものである請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
ペロブスカイト構造の複合酸化物が、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも一種の金属とTiとの複合酸化物である請求項2に記載の回路基板。
【請求項4】
コンデンサが、第一電極層と第二電極層とを誘電体膜を挟んで複数交互に積層させたものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の回路基板。
【請求項5】
ベース基板が樹脂材料からなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の回路基板。
【請求項6】
ベース基板が、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系共重合体及びファイバガラスからなる群から選ばれる少なくとも一つの材料からなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の回路基板。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の回路基板と電子部品とを備えた電子装置。
【請求項8】
チタンまたはチタン合金からなる金属層を形成する工程、
過酸化水素を含む温度3℃以下の電解液中で陽極酸化して金属層表面をアモルファス二酸化チタン層に化成する工程、および
アモルファス二酸化チタン層上に金属層を形成する工程 を含む、請求項1〜6に記載の回路基板の製造方法。
【請求項9】
チタンまたはチタン合金からなる金属層を形成する工程、
過酸化水素を含む温度3℃以下の電解液中で陽極酸化して金属層表面をアモルファス二酸化チタン層に化成する工程、
アモルファス二酸化チタン層上にペロブスカイト構造の複合酸化物層を形成する工程、および
ペロブスカイト構造の複合酸化物層の上に金属層を形成する工程を含む、請求項1〜6に記載の回路基板の製造方法。
【請求項10】
アモルファス二酸化チタン層またはペロブスカイト構造の複合酸化物層の上に金属層を形成する工程において、金属層がチタンまたはチタン合金からなるものである請求項8または9に記載の回路基板の製造方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2009−295843(P2009−295843A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149018(P2008−149018)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]