回転角検出装置及び電動パワーステアリング装置
【課題】高い検出精度を有するとともに、構成簡素且つ省電力にて、連続的に検出対象の絶対角を検出することのできる回転角検出装置を提供すること。
【解決手段】ECU11(マイコン21)は、ステアリングセンサが出力する正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づいて、絶対角である操舵角θsを検出する。また、ECU11は、正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づいて、所定の回転角(電気角)に対応したエッジを有するとともにそれぞれの各エッジに対応する所定の回転角が互いに重複することなく且つ均等間隔となるように設定された三相のパルス信号P1,P2,P3を生成する三相パルス生成器30を備える。そして、マイコン21は、これらの各パルス信号P1,P2,P3に基づいて操舵角(第2操舵角θs´)を演算する第2の回転角検出手段としての機能を備える。
【解決手段】ECU11(マイコン21)は、ステアリングセンサが出力する正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づいて、絶対角である操舵角θsを検出する。また、ECU11は、正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づいて、所定の回転角(電気角)に対応したエッジを有するとともにそれぞれの各エッジに対応する所定の回転角が互いに重複することなく且つ均等間隔となるように設定された三相のパルス信号P1,P2,P3を生成する三相パルス生成器30を備える。そして、マイコン21は、これらの各パルス信号P1,P2,P3に基づいて操舵角(第2操舵角θs´)を演算する第2の回転角検出手段としての機能を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転角検出装置及び電動パワーステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用パワーステアリング装置には、ステアリングに生じた操舵角に基づいて、そのパワーアシスト制御を実行するものがある。尚、操舵角(操舵速度)を用いたパワーアシスト制御の態様としては、例えば、ステアリングを中立位置に復帰させるステアリング戻し制御や操舵角の急変を抑制するダンピング補償制御等が挙げられる。そして、従来、その操舵角の検出は、例えば、特許文献1に示されるようなABZ相のパルス信号を出力する回転角センサをステアリングセンサに用いて行なうのが一般的となっていた。
【0003】
しかしながら、このようなパルス式の回転角センサには、その検出精度の向上とサイズの小型化との両立が難しいという問題がある。そこで、近年では、例えば、特許文献2に示されるように、磁気検出素子を用いることにより、その検出対象の回転角に応じて出力レベルが変化する正弦信号及び余弦信号を出力可能な回転角センサが提案されている。そして、このような磁気式の回転角センサをステアリングセンサに用いることにより、サイズの小型化を図りつつ、高精度に操舵角を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−127417号公報
【特許文献2】特開2007−256250号公報
【特許文献3】特表2007−533975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、回転角センサの出力信号に基づき検出される回転角は、基本的に、その検出対象となる回転軸の機械角360°の範囲内での相対角(電気角)であるのに対し、ステアリングの回転により生ずる操舵角は、その機械角360°を超えた範囲を含む絶対角である。このため、多くの場合、操舵角の検出は、そのステアリングセンサの出力信号に基づき検出される相対角の変化をカウントすることにより行なわれる。
【0006】
ところが、上記のような正弦信号及び余弦信号に基づく回転角検出は、従来のようなパルス信号に基づく回転角検出では必要のなかったA/D変換や複雑な演算処理が不可欠である。このため、イグニッションオフ(IGオフ)から再始動までの間における操舵角検出の連続性(再現性)を担保すべく、IGオフ後においても上記のような相対角変化のカウントを継続するとすれば、その消費電力の増大により、車載電源(バッテリ)の消耗を早める結果となってしまう。
【0007】
この点、上記特許文献2、或いは特許文献3等に記載の回転角検出装置は、絶対角に応じて回転角センサを構成する磁石回転子と磁気検出素子との軸方向距離を変化させる。そして、その磁気検出素子を通過する磁束密度のベクトル長を絶対角に応じて連続的に変化させることにより、上記のような回転角変化のカウントを行なうことなく、その絶対角の検出が可能となっている。
【0008】
しかしながら、このように軸方向距離を変更する機械的構成を設けることで構造が複雑化し、これにより製造コストが上昇する。そして、更には、その可動部の存在が信頼性の低下を招く要因となるおそれがあり、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、高い検出精度を有するとともに、構成簡素且つ省電力にて、連続的に検出対象の絶対角を検出することのできる回転角検出装置、及び電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、検出対象の回転角に応じて出力レベルが変化する正弦信号及び余弦信号を出力する回転角センサと、前記正弦信号及び余弦信号に基づいて前記回転角を検出する第1の回転角検出手段と、前記正弦信号及び余弦信号に基づいて、所定の前記回転角に対応したエッジを有するとともに、それぞれの前記所定の回転角が互いに重複することなく且つ均等間隔となるように設定された三相のパルス信号を生成するパルス信号生成手段と、前記各パルス信号に基づいて前記回転角を検出する第2の回転角検出手段と、を備えた回転角検出装置であること、を要旨とする。
【0011】
即ち、このような三相のパルス信号のエッジ(立ち下がり及び立ち上がり)を検出することで、検出対象の回転角変化を電気角360°で生ずるエッジ数に対応した電気角精度(例えば、エッジ数が「6」である場合は電気角60°の精度)で検出することが可能であり、その累計をカウントすることで絶対角を検出することができる。そして、パルス信号に基づく回転角検出では、正弦信号及び余弦信号に基づく回転角検出のようなA/D変換や複雑な演算処理が不要である。
【0012】
従って、上記構成によれば、その第1の回転角検出手段により、正弦信号及び余弦信号に基づく高精度な絶対角検出を行うとともに、当該第1の回転角検出手段の停止時には、その第2の回転角検出手段による三相のパルス信号に基づく検出により、消費電力を抑えつつ、その絶対角検出を継続することができる。その結果、構成簡素且つ省電力にて、連続的に検出対象の絶対角を検出することができるようになる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記パルス信号生成手段は、抵抗値の等しい4つの抵抗を直列接続してなるとともに前記正弦信号及び余弦信号の最大値に相当する電圧が印加される分圧回路と、前記分圧回路が出力する各分圧信号のうちの高電位信号と前記余弦信号とを入力とする第1のコンパレータと、前記分圧回路が出力する各分圧信号のうちの中電位信号と前記正弦信号とを入力とする第2のコンパレータと、前記分圧回路が出力する各分圧信号のうちの低電位信号と前記余弦信号とを入力とする第3のコンパレータと、を備えてなること、を要旨とする。
【0014】
上記構成によれば、構成簡素且つ省電力にて、所定の回転角(電気角)に対応したエッジを有するとともにそれぞれの各エッジに対応する所定の回転角が互いに重複することなく且つ均等間隔となるように設定された三相のパルス信号を生成することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記第1の回転角検出手段は、該第1の回転角検出手段の停止時に前記第2の回転角検出手段が検出を継続した前記各パルス信号に基づく第2の回転角により、その起動時に演算する前記回転角の初期値を補正すること、を要旨とする。
【0016】
上記構成によれば、第1の回転角検出手段の起動直後から、高精度に絶対角を検出することができる。
請求項4に記載の発明は、前記エッジを検出して前記第2の回転角検出手段を起動する起動手段を備えること、を要旨とする。
【0017】
即ち、各パルス信号に基づく回転角検出は、そのエッジの検出に基づくものであり、非エッジ検出時には、特段、演算処理も発生しない。従って、上記構成によれば、継続的に絶対角検出を行いつつ、大幅に消費電力を抑えることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、前記第1の回転角検出手段が取得する前記正弦信号及び余弦信号の異常を判定する第1の異常判定手段と、前記第2の回転角検出手段が取得する前記各パルス信号の異常を判定する第2の異常判定手段とを備えること、を要旨とする。
【0019】
上記構成によれば、より精度よく、その回転角検出に生じた障害を検知することができる。そして、その障害が発生した要因の推定も可能になる。具体的には、例えば、第1の回転角検出手段がデジタル処理装置により構成される場合、その正弦信号及び余弦信号が異常であるにも関わらず、各パルス信号が正常である場合には、同第1の回転角検出手段が正弦信号及び余弦信号を取得する際に行なうA/D変換(A/D変換器(回路))に問題があると推定することができる。また、パルスのみが異常である場合には、そのパルス信号生成手段に問題があると推定することができる。そして、正弦信号及び余弦信号、並びに各パルス信号が異常である場合には、その回転角センサが故障したものと推定することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の回転角検出装置を用いてステアリングに生じた操舵角を検出する電動パワーステアリング装置であること、を要旨とする。
【0021】
上記構成によれば、IGオフから再始動までの間における操舵角検出の連続性(再現性)を担保することができる。その結果、再始動直後からの良好なステアリング特性及び操舵フィーリングを実現することができる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の回転角検出装置を用いてステアリングに生じた操舵角を検出する電動パワーステアリング装置であって、前記正弦信号及び余弦信号に基づき検出される第1の操舵角を用いてパワーアシスト制御を実行するとともに、前記第1の回転角検出手段が取得する前記正弦信号及び余弦信号が異常である場合において、前記第2の回転角検出手段が取得する前記各パルス信号が正常である場合には、該各パルス信号に基づき検出される第2の操舵角を用いて前記パワーアシスト制御を継続すること、を要旨とする。
【0023】
上記構成によれば、その操舵角検出に生じた障害の要因が、デジタル処理装置により構成された第1の回転検出手段が正弦信号及び余弦信号を取得する際に行なうA/D変換にあるならば、各パルス信号に基づく第2の操舵角の検出については、何らの障害も存在しない。従って、上記構成によれば、その優れたステアリング特性及び操舵フィーリングを継続的に維持することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、高い検出精度を有するとともに、構成簡素且つ省電力にて、連続的に検出対象の絶対角を検出することが可能な回転角検出装置、及び電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】電動パワーステアリング装置(EPS)の概略構成図。
【図2】EPSの電気的構成を模式的に示すブロック図。
【図3】正弦信号及び余弦信号に基づく操舵角検出の処理手順を示すフローチャート。
【図4】正弦信号及び余弦信号の波形と各分圧信号の出力レベルとの関係を示す説明図。
【図5】正弦信号及び余弦信号に基づき生成される三相のパルス信号の波形とその各エッジに対応する所定の回転角により区画された各領域(第1領域〜第6領域)を示す説明図。
【図6】三相のパルス信号の出力レベルに基づく3bit信号の合計値(二進数)と各領域との対応を示す説明図。
【図7】三相パルス生成器の回路図。
【図8】イグニッションオフ(IGオフ)時における継続的な三相のパルス信号に基づく操舵角検出の処理手順を示すフローチャート。
【図9】IGオンによる起動時における三相のパルス信号に基づく第2操舵角の検出、及び当該第2操舵角を用いた正弦信号及び余弦信号に基づく操舵角初期値の補正の処理手順を示すフローチャート。
【図10】第2の実施形態におけるIGオン後の三相のパルス信号に基づく第2操舵角の検出の処理手順を示すフローチャート。
【図11】正弦信号及び余弦信号の異常判定の処理手順を示すフローチャート。
【図12】三相のパルス信号の異常判定の処理手順を示すフローチャート。
【図13】正弦信号及び余弦信号、並びに三相のパルス信号についての異常判定結果に基づく制御変更の処理手順を示すフローチャート。
【図14】別例のEPSの概略構成図。
【図15】別例のEPSの電気的構成を模式的に示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1の実施形態]
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の電動パワーステアリング装置(EPS)1において、ステアリング2が固定されたステアリングシャフト3は、ラックアンドピニオン機構4を介してラック軸5と連結されており、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラックアンドピニオン機構4によりラック軸5の往復直線運動に変換される。尚、本実施形態のステアリングシャフト3は、コラムシャフト3a、インターミディエイトシャフト3b、及びピニオンシャフト3cを連結してなる。そして、このステアリングシャフト3の回転に伴うラック軸5の直線運動が、同ラック軸5の両端に連結されたタイロッド6を介して図示しないナックルに伝達されることにより、転舵輪7の舵角、即ち車両の進行方向が変更される。
【0027】
また、EPS1は、操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する操舵力補助装置としてのEPSアクチュエータ10と、該EPSアクチュエータ10の作動を制御する制御手段としてのECU11とを備えている。
【0028】
本実施形態のEPSアクチュエータ10は、駆動源であるモータ12が減速機構13を介してコラムシャフト3aと駆動連結された所謂コラム型のEPSアクチュエータとして構成されている。尚、本実施形態では、モータ12にはブラシ付の直流モータが採用されている。そして、EPSアクチュエータ10は、モータ12の回転を減速してコラムシャフト3aに伝達することにより、そのモータトルクをアシスト力として操舵系に付与する構成となっている。
【0029】
一方、ECU11には、トルクセンサ14、車速センサ15及びステアリングセンサ(操舵角センサ)16が接続されており、ECU11は、これら各センサが出力するセンサ信号に基づいて、操舵トルクτ及び車速V、並びに操舵角θsを検出する。そして、本実施形態のECU11は、これらの各状態量に基づいて、その駆動源であるモータ12に対する駆動電力の供給を通じて上記EPSアクチュエータ10の作動を制御することにより、その操舵系に付与するアシスト力を制御する(パワーアシスト制御)。
【0030】
詳述すると、図2に示すように、ECU11には、マイコン21と、同マイコン21の出力するモータ制御信号に基づいてモータ12に駆動電力を供給する駆動回路22とが設けられており、上記各センサが出力するセンサ信号は、そのマイコン21に入力される。そして、マイコン21は、これら各センサ信号により検出される操舵トルクτ及び車速V、並びに操舵角θsに基づいて、上記パワーアシスト制御を実行するためのモータ制御信号を出力する構成となっている。
【0031】
さらに詳述すると、本実施形態のマイコン21は、検出される操舵トルクτ及び車速Vに基づいて、操舵系に付与すべき目標アシスト力の基礎成分を演算する。また、マイコン21は、検出される操舵角θsに基づいて各種の補償成分を演算する。尚、この操舵角θsに基づく補償成分としては、例えば、ステアリングを中立位置に復帰させるためのステアリング戻し補償成分や操舵角の急変を抑制するためのダンピング補償成分等が該当する。そして、マイコン21は、上記目標アシスト力の基礎成分及び補償成分に対応する電流指令値を演算する。
【0032】
また、マイコン21は、電流センサ23の出力信号に基づいてモータ12の実電流Iを検出し、その実電流Iを上記の電流指令値に追従させるべく電流フィードバック制御を実行することにより、駆動回路22に出力するモータ制御信号を生成する。そして、本実施形態のECU11では、このモータ制御信号に基づく駆動電力がモータ12に供給されることにより、そのパワーアシスト制御が実行されるようになっている。
【0033】
(操舵角検出)
次に、本実施形態における操舵角検出の態様について説明する。
図1に示すように、本実施形態のステアリングセンサ16には、ステアリング2が固定されたコラムシャフト3aとともに一体回転する磁石回転子25と、同磁石回転子25の回転により生ずる磁束変化に応じたセンサ信号を出力する二つの磁気検出素子(ホールIC)26a,26bとを備えた磁気式の回転角センサが採用されている。
【0034】
具体的には、本実施形態では、これらの各磁気検出素子26a,26bは、それぞれ、上記磁石回転子25が設けられたコラムシャフト3aの回転角、即ちステアリング2に生じた操舵角θsに応じて出力レベルが変化するとともに、互いの位相が1/4周期(電気角90°)ずれたセンサ信号を出力するように構成されている。
【0035】
本実施形態のステアリングセンサ16は、これら各磁気検出素子26a,26bが出力する二つのセンサ信号を、正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosとして、ECU11に出力する。そして、第1の回転角検出手段を構成するECU11(マイコン21)は、その入力される正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づいて、絶対角としての操舵角θsを検出する。
【0036】
詳述すると、図3のフローチャートに示すように、マイコン21は、ステアリングセンサ16の出力する正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosの各値V1,V2を取得すると(ステップ101)、次の(1)式に基づいて、これらの各値V1,V2に対応する電気角θeを演算する(ステップ102)。尚、次式において、「arctan」は「アークタンジェント」を示す。
【0037】
θe=arctan(V1/V2) ・・・(1)
次に、マイコン21は、前回の演算周期において求めた電気角の値、即ち電気角前回値θe_mをメモリ(図示略)から読み出すと(ステップ103)、この電気角前回値θe_mと上記ステップ102において演算した電気角θeとの比較に基づいて、その電気角θeの値が「電気角一周(電気角360°の一周)」を示すものであるか否かを判定する(ステップ104)。
【0038】
即ち、電気角θeは、相対角であるため、その値が「359°」を超えて増加した場合(「+」方向)における次の値は「0°」となり、同様に「0°」を超えて減少した場合(「−」方向)における次の値は「359°」となる。本実施形態では、この変化点である「0°(360°)」を通過して電気角θeが変化することを「電気角一周」と定義し、上記ステップ104においては、今回の演算周期で得られた電気角θeが、この「電気角一周」を示すものであるか否かを判定する。そして、その周回数を計測(カウント)することにより、検出対象であるステアリング2とともに一体回転する回転軸、即ちステアリングセンサ16が設けられたコラムシャフト3aの電気角換算での絶対角(電気角換算絶対角θe_ab)を演算する。
【0039】
具体的には、マイコン21は、電気角θeの値が「電気角一周」を示し(ステップ104:YES)、且つその変化方向が「+」である場合、即ち電気角θeの値が「0°」であって電気角前回値θe_mが「359°」である場合(ステップ105:YES)には、その周回数計測用のカウンタをインクリメントする(N=N+1、ステップ106)。また、その変化方向が「−」である場合、即ち電気角θeの値が「359°」であり電気角前回値θe_mが「0°」である場合(ステップ105:NO)には、そのカウンタをデクリメントする(N=N−1、ステップ107)。尚、上記ステップ104において、電気角θeの値が「電気角一周」を示すものではない場合(ステップ104:NO)には、上記ステップ105〜ステップ107の処理は実行されない。そして、本実施形態のマイコン21は、このように計測した電気角360°の周回数を示すカウント値N、及び電気角θeに基づいて、ステアリングセンサ16が設けられたコラムシャフト3aの電気角換算絶対角θe_abを演算する(θe_ab=(360×N)+θe、ステップ108)。
【0040】
次に、マイコン21は、このステップ108において演算された電気角換算絶対角θe_abを機械角に換算する、即ち、その電気角倍率αで除することにより、機械角の絶対角である操舵角θsを演算する(θs=θe_ab/α、ステップ109)。尚、本実施形態では、この操舵角θsの演算後、電気角前回値θe_mが更新される(θe=θe_m、ステップ120)。
【0041】
そして、本実施形態のマイコン21は、このようにして上記ステアリングセンサ16の出力する正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づき検出(演算)される操舵角θsを、そのパワーアシスト制御に用いる構成となっている。
【0042】
また、図2に示すように、本実施形態のECU11は、図4に示されるように正弦波状(余弦波状)に出力レベルが変化する正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づいて、それぞれ図5に示されるような所定の回転角(電気角)に対応したエッジを有する三相のパルス信号P1,P2,P3を生成する三相パルス生成器30を備えている。
【0043】
具体的には、パルス信号P1は「60°」「300°」、パルス信号P2は「180°」「0°(360°)」、そしてパルス信号P3は「120°」「240°」に、それぞれ立ち下がりエッジ及び立ち上がりのエッジを有するものとなっている。そして、本実施形態のマイコン21は、このように、それぞれの各エッジに対応する所定の回転角が互いに重複することなく且つ均等間隔となるように設定された三相のパルス信号P1,P2,P3に基づいて、ステアリング2に生じた操舵角(第2操舵角θs´)を演算する第2の回転角検出手段としての機能を備えている。
【0044】
詳述すると、図5及び図6に示すように、本実施形態のマイコン21は、三相パルス生成器30の出力する各パルス信号P1,P2,P3について、その出力レベルが「Hi」である場合を「1」、「Lo」である場合を「0」とする3bit信号として認識する。具体的には、本実施形態では、パルス信号P1は「bit2」、パルス信号P2は「bit1」、そしてパルス信号P3は「bit0」に対応するものとなっている。そして、マイコン21は、その3bit信号の合計値(3bit合計値Vsum:二進数)に基づいて、その検出対象であるステアリング2とともに一体回転する回転軸、即ちステアリングセンサ16が設けられたコラムシャフト3aの電気角換算での絶対角(第2電気角換算絶対角θe_ab´)を演算する。
【0045】
即ち、上記のように、各パルス信号P1,P2,P3のエッジ(立ち下がり及び立ち上がり)に対応する所定の回転角は、互いに重複することなく且つ均等間隔となるように設定されている(図5参照)。従って、各パルス信号P1,P2,P3の上記3bit合計値Vsumは、これら各エッジに対応する所定の回転角により区画された各領域(第1領域〜第6領域)に対応した固有の値を示すものとなる。
【0046】
具体的には、図6に示すように、3bit合計値Vsumは、「第1領域(0°(360°)〜60°)」では「7」、「第2領域(60°〜120°)」では「3」、「第3領域(120°〜180°)」では「2」となる。同様に、「第4領域(180°〜240°)」では「0」、「第5領域(240°〜300°)」では「1」、「第6領域(300°〜360°)」では「5」となる。
【0047】
本実施形態のマイコン21は、これを利用して、ステアリングセンサ16が設けられたコラムシャフト3aの回転角、即ちステアリング2に生じた操舵角(第2操舵角θs´)を電気角60°の精度で検出し、その回転角変化を計測(カウント)することにより、上記第2電気角換算絶対角θe_ab´を演算する。そして、更に、その第2電気角換算絶対角θe_ab´を機械角に換算することにより、上記各パルス信号P1,P2,P3に基づき検出される操舵角として、第2操舵角θs´を演算する構成となっている。
【0048】
さらに詳述すると、図7に示すように、本実施形態の三相パルス生成器30は、抵抗値の等しい4つの抵抗R1〜R4を直列接続してなる分圧回路31と、その各抵抗R1〜R4間の各分圧に等しい出力レベルを有して同分圧回路31が出力する各分圧信号(Vh,Vm,Vl)をそれぞれ入力とする3つのコンパレータ32,33,34を備えている。
【0049】
本実施形態では、分圧回路31には、上記正弦信号S_sin及び余弦信号S_cos(の出力レベルを示す各値V1,V2)の最大値に相当する電圧Vbが印加される(図4参照)。また、各コンパレータ32,33,34には、それぞれ、対応する正弦信号S_sin又は余弦信号S_cosが入力される。具体的には、コンパレータ32には、分圧回路31において最も高電位側(電源側)に配置された抵抗R1,R2間の分圧(3/4×Vb)に等しい出力レベルを有する分圧信号である高電位信号Vh、及び余弦信号S_cosが入力される。また、コンパレータ33には、抵抗R2,R3間の分圧(1/2×Vb)に等しい出力レベルを有する中電位信号Vm及び正弦信号S_sinが入力され、コンパレータ34には、最も低電位側(接地側)に配置された抵抗R3,R4間の分圧(1/4×Vb)に等しい出力レベルを有する低電位信号Vl及び余弦信号S_cosが入力される。そして、本実施形態の三相パルス生成器30は、これら各コンパレータ32,33,34が、その比較に基づき出力する信号を、それぞれ、上記の各パルス信号P1,P2,P3として出力する。
【0050】
即ち、図4に示すように、余弦信号S_cosの出力レベル(値V2)が上記高電位信号Vhの出力レベル(3/4×Vb)を超える範囲は上記「第1領域」「第6領域」であり、上記低電位信号Vlの出力レベル(1/4×Vb)を超える範囲は上記「第1領域」「第2領域」「第5領域」「第6領域」である。また、正弦信号S_sinの出力レベル(値V1)が上記中電位信号Vmの出力レベル(1/2×Vb)を超える範囲は上記「第1領域」「第2領域」「第3領域」である。そして、本実施形態では、このように、それぞれ対応する「第1領域」「第6領域」、「第1領域」「第2領域」「第5領域」「第6領域」、「第1領域」「第2領域」「第3領域」において「Hi」となるコンパレータ32,33,34の出力が、上記各パルス信号P1,P2,P3としてマイコン21に入力されるようになっている(図5参照)。
【0051】
本実施形態のマイコン21は、IGオフ時、これら各パルス信号P1,P2,P3を用いて、その検出対象であるステアリング2に生じた回転角変化を監視することにより、当該各パルス信号P1,P2,P3に基づく操舵角検出を継続する。
【0052】
詳述すると、本実施形態のマイコン21は、IGオフにより、主たる演算処理を停止してスリープ状態となる。そして、同マイコン21には、このようなスリープ状態において、その入力される各パルス信号P1,P2,P3のエッジを検出することにより、自動的に起動する機能が備えられている。
【0053】
本実施形態では、マイコン21は、この起動手段としての機能を利用して、スリープ時、各パルス信号P1,P2,P3の何れかのエッジを検出した場合には、省電力モードにより起動する。そして、その各パルス信号P1,P2,P3に基づく操舵角検出を継続、詳しくは、その検出対象であるステアリング2に生じた回転角変化の計測(カウント)を続行する構成となっている。
【0054】
さらに詳述すると、図8のフローチャートに示すように、本実施形態のマイコン21は、上記のように三相パルス生成器30から入力される各パルス信号P1,P2,P3の何れかにエッジを検出すると(ステップ201:YES)、当該各パルス信号P1,P2,P3に基づく操舵角検出を実行すべく省電力モードで起動する(省電力起動、ステップ202)。
【0055】
ここで、本実施形態のマイコン21における「省電力モード」は、その各パルス信号P1,P2,P3に基づく操舵角検出を実行するために必要な最小構成のみに電力を供給する構成となっている。このため、正弦波状(余弦波状)のアナログ信号として入力される正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosの各値V1,V2(出力レベル)を取得すべくマイコン21に内蔵されたA/D変化器等、当該正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づく操舵角検出を実行するための第1の操舵角検出手段を構成する部分への電力供給は停止したままとなっている。
【0056】
尚、上記ステップ201において、各パルス信号P1,P2,P3のエッジが検出されない場合(ステップ201:NO)には、ステップ202以降の処理は実行されない。
次に、マイコン21は、各パルス信号P1,P2,P3の3bit合計値Vsumを取得し(ステップ203)、前回の省電力起動時に求めた3bit合計値の前回値Vsum_mをメモリ(図示略)から読み出すと(ステップ204)、これら3bit合計値Vsum及び前回値Vsum_mに基づいて、その回転角変化の方向を判定する。
【0057】
即ち、各パルス信号P1,P2,P3の何れかにおけるエッジの発生は、当該各パルス信号P1,P2,P3に基づき特定可能な電気角60°の範囲を有する上記各領域(図4〜図6参照、第1領域〜第6領域)の移行、つまり検出対象であるステアリング2(ステアリングセンサ16が設けられたコラムシャフト3a)の回転角変化を示している。従って、上記のように3bit合計値Vsum及び前回値Vsum_mから、その回転方向を特定することができる。
【0058】
例えば、今回の演算により求めた3bit合計値Vsumが「2」である場合(図6参照)、前回値Vsum_mが「3」であれば、その変化方向は「+」であり、前回値Vsum_mが「0」であれば、その変化方向は「−」である。そして、マイコン21は、このように、その変化方向を特定することにより、その各パルス信号P1,P2,P3におけるエッジの発生により検出した回転角変化を計測(カウント)する。
【0059】
具体的には、マイコン21は、その変化方向が「+」である場合(ステップ205:YES)には、その電気角60°の精度での回転角変化を計測する第2カウンタをインクリメントし(n=n+1、ステップ206)、その変化方向が「−」である場合(ステップ205:NO)には、デクリメントする(n=n−1、ステップ207)。
【0060】
尚、本実施形態のマイコン21は、上記ステップ206又はステップ207において回転角変化をカウントした後、今回の演算において取得した3bit合計値Vsumにより、その前回値Vsum_mを更新する(Vsum_m=Vsum、ステップ208)。そして、再び、スリープ状態へと移行することにより(ステップ209)、極めて省電力にて、各パルス信号P1,P2,P3におけるエッジの発生を監視することが可能となっている。
【0061】
また、本実施形態では、IGオンによる起動時、このようにしてIGオフ時において継続的に更新された第2カウンタの値、即ち回転角変化の累計を電気角60°の精度で示す第2カウント値nを用いることにより、各パルス信号P1,P2,P3に基づく第2操舵角θs´を演算する。そして、この第2操舵角θs´を用いて上記正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づき検出する操舵角θsの初期値を補正することにより、そのIGオフから再始動までの間における操舵角検出の連続性(再現性)を担保する構成となっている。
【0062】
詳述すると、図9に示すように、マイコン21は、IGオンにより起動すると(ステップ301)、上記のようにIGオフ時、その更新を継続した第2カウント値nを取得する(ステップ302)。
【0063】
続いて、マイコン21は、その回転角変化の累計を電気角60°の精度で示す第2カウント値nを用いることにより、その検出対象であるステアリング2(ステアリングセンサ16が設けられたコラムシャフト3a)の電気角換算での絶対角として、第2電気角換算絶対角θe_ab´を演算する(θe_ab´=60×n、ステップ303)。そして、この第2電気角換算絶対角θe_ab´を機械角に換算、即ち電気角倍率αで除することにより、上記各パルス信号P1,P2,P3に基づき検出される操舵角としての第2操舵角θs´を演算する(θs´=θe_ab´/α、ステップ304)。
【0064】
次に、マイコン21は、上記正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づき検出する操舵角θsの初期値として、操舵角初期値θ0を演算する(ステップ305)。尚、この操舵角初期値θ0は、通常の正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づく操舵角θsの検出と同様の処理手順により演算される(図3参照)。そして、マイコン21は、この操舵角初期値θ0と上記ステップ304において検出(演算)された上記三相のパルス信号P1,P2,P3に基づく第2操舵角θs´とを比較することにより、当該操舵角初期値θ0を補正する必要があるか否かを判定する(ステップ306)。
【0065】
本実施形態では、この操舵角初期値θ0についての補正の必要性に関する判定は、その比較対象である第2操舵角θs´との間に電気角で360°以上の差があるか否かにより行なわれる。そして、本実施形態では、その補正の必要があると判定した場合(ステップ306:YES)においてのみ、第2操舵角θs´との比較に基づいて、その操舵角初期値θ0の演算と基礎となったカウント値Nを更新、即ち電気角360°の周回数を更新することにより、当該操舵角初期値θ0の補正を実行する(ステップ307)。
【0066】
以上、本実施形態によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
(1)ECU11(マイコン21)は、磁気式の回転角センサにより構成されたステアリングセンサ16が出力する正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づいて、絶対角である操舵角θsを検出する。また、ECU11は、正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づいて、所定の回転角(電気角)に対応したエッジを有するとともにそれぞれの各エッジに対応する所定の回転角が互いに重複することなく且つ均等間隔となるように設定された三相のパルス信号P1,P2,P3を生成する三相パルス生成器30を備える。そして、マイコン21は、これらの各パルス信号P1,P2,P3に基づいて操舵角(第2操舵角θs´)を演算する第2の回転角検出手段としての機能を備える。
【0067】
即ち、各パルス信号P1,P2,P3のエッジ(立ち下がり及び立ち上がり)を検出することで、ステアリングセンサ16が設けられたコラムシャフト3aの回転角変化を電気角60°の精度で検出することが可能であり、その累計をカウントすることで、絶対角であるステアリング2の操舵角(第2操舵角θs´)を検出することができる。そして、このようなパルス信号に基づく回転角検出では、正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づく回転角検出のようなA/D変換や複雑な演算処理が不要である。
【0068】
従って、上記構成によれば、正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づく検出により、高精度に操舵角θsを検出するとともに、IGオフ時には、その三相のパルス信号P1,P2,P3に基づく検出により、消費電力を抑えつつ、その操舵角検出(第2操舵角θs´)を継続することができる。その結果、構成簡素且つ省電力にて、そのIGオフから再始動までの間における操舵角検出の連続性(再現性)を担保することができる。
【0069】
(2)マイコン21は、IGオンによる起動時、その各パルス信号P1,P2,P3に基づき検出された第2の回転角としての第2操舵角θs´を用いて上記正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づき検出する操舵角θsの初期値を補正する。これにより、再始動直後から、高精度に操舵角θsを検出することができる。
【0070】
(3)マイコン21は、IGオフ時のスリープ状態において、その入力される各パルス信号P1,P2,P3のエッジを検出することにより、自動的に起動する起動手段としての機能を備える。
【0071】
即ち、各パルス信号に基づく回転角検出は、そのエッジの検出に基づくものであり、非エッジ検出時には、特段、演算処理も発生しない。従って、上記構成によれば、継続的に操舵角検出を実行しつつ、大幅に消費電力を抑えることができる。
【0072】
(4)三相パルス生成器30は、抵抗値の等しい4つの抵抗R1〜R4を直列接続してなる分圧回路31と、その各抵抗R1〜R4間の各分圧に等しい出力レベルを有した各分圧信号(Vh,Vm,Vl)をそれぞれ入力とする3つのコンパレータ32,33,34を備える。分圧回路31には、上記正弦信号S_sin及び余弦信号S_cos(の出力レベルを示す各値V1,V2)の最大値に相当する電圧Vbが印加される。また、コンパレータ32には、分圧回路31が分圧信号として出力する高電位信号Vh及び余弦信号S_cosが、コンパレータ33には、分圧信号としての中電位信号Vm及び正弦信号S_sinが、コンパレータ34には、分圧信号としての低電位信号Vl及び余弦信号S_cosが入力される。そして、パルス信号生成手段としての三相パルス生成器30は、これら各コンパレータ32,33,34が、その比較に基づき出力する信号を、それぞれ、上記の各パルス信号P1,P2,P3として出力する。
【0073】
上記構成によれば、構成簡素且つ省電力にて、所定の回転角(電気角)に対応したエッジを有するとともにそれぞれの各エッジに対応する所定の回転角が互いに重複することなく且つ均等間隔となるように設定された三相のパルス信号P1,P2,P3を生成することができる。
【0074】
[第2の実施形態]
以下、本発明を具体化した第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜のため、上記第1の実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0075】
本実施形態のマイコン21は、IGオンによる起動後、ステアリングセンサ16の出力する正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づく操舵角θsの検出(図3参照)とともに、三相パルス生成器30が生成する三相のパルス信号P1,P2,P3に基づく第2操舵角θs´の検出を実行する。
【0076】
具体的には、図10のフローチャートに示すように、マイコン21は、三相パルス生成器30から入力される各パルス信号P1,P2,P3の何れかにエッジを検出すると(ステップ401:YES)、先ず、その3bit合計値Vsumを取得する(ステップ402)。マイコン21は、続いて各パルス信号P1,P2,P3の前回値Vsum_mをメモリ(図示略)から読み出し(ステップ403)、そのエッジを発生させた回転角変化の方向が「+」であるか否かを判定する(ステップ404)。そして、その変化方向が「+」である場合(ステップ404:YES)には、その電気角60°の精度での回転角変化を計測する第2カウンタをインクリメントし(n=n+1、ステップ405)、その変化方向が「−」である場合(ステップ404:NO)には、デクリメントする(n=n−1、ステップ406)。
【0077】
次に、マイコン21は、その第2カウント値nを用いて第2電気角換算絶対角θe_ab´を演算する(θe_ab´=60×n、ステップ407)。そして、この第2電気角換算絶対角θe_ab´を機械角に換算することにより、上記各パルス信号P1,P2,P3に基づき検出される操舵角として、第2操舵角θs´を演算する(θs´=θe_ab´/α、ステップ408)。
【0078】
尚、本実施形態では、マイコン21は、このように第2操舵角θs´を演算した後、今回の演算において取得した3bit合計値Vsumにより、その前回値Vsum_mを更新する(Vsum_m=Vsum、ステップ409)。そして、上記ステップ401において、各パルス信号P1,P2,P3にエッジが検出されない場合(ステップ401:NO)には、ステップ402以降の処理は実行されない。
【0079】
また、本実施形態のマイコン21は、そのステアリングセンサ16から取得する正弦信号S_sin及び余弦信号S_cos、並びに三相パルス生成器30から取得する三相のパルス信号P1,P2,P3についての異常判定機能を備えている。
【0080】
詳述すると、第1の異常判定手段としてのマイコン21は、その取得する正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosの何れか一方のみが変化する状態にある場合には、これら正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosは異常であると判定する。
【0081】
具体的には、図11のフローチャートに示すように、マイコン21は、正弦信号S_sin(の値V1)に変化があるか否かを判定し(ステップ501)、変化のある場合(ステップ501:YES)には、余弦信号S_cos(の値V2)にも変化があるか否かを判定する(ステップ502)。そして、余弦信号S_cosに変化がある場合(ステップ502:YES)には正常であると判定し(ステップ503)、変化のない場合(ステップ502:NO)には異常であると判定する(ステップ504)。
【0082】
一方、上記ステップ501において、正弦信号S_sinが一定である場合(ステップ501:NO)には、続いて余弦信号S_cosも一定であるか否かを判定する(ステップ505)。そして、余弦信号S_cosが一定である場合(ステップ505:YES)には正常であると判定し(ステップ503)、一定ではない場合(ステップ505:NO)には異常であると判定する(ステップ504)。
【0083】
一方、第2の異常判定手段としてのマイコン21は、三相のパルス信号P1,P2,P3の各出力レベルを示す上記3bit合計値Vsumに基づいて、その異常を判定する。
具体的には、図12のフローチャートに示すように、マイコン21は、3bit合計値Vsumを取得すると(ステップ601)、その値が「4」又は「6」であるか否かを判定する(ステップ602)。そして、3bit合計値Vsumが「4」又は「6」である場合(ステップ602:YES)には、各パルス信号P1,P2,P3は異常であると判定し(ステップ603)、それ以外の値である場合(ステップ602:NO)には、正常であると判定する(ステップ604)。
【0084】
即ち、図6に示すように、3bit合計値Vsumは、三相のパルス信号P1,P2,P3の各エッジに対応する所定の回転角間の各領域(第1領域〜第6領域)にそれぞれ対応する固有の値として「7」「3」「2」「0」「1」「5」の6つの値をとる。つまり、パルス信号P1,P2,P3が正常であるならば、その3bitの二進数により表現される「0」〜「7」のうちの残る二つの値、即ち「4」又は「6」を示すことはない。従って、3bit合計値Vsumが「4」又は「6」である場合には、各パルス信号P1,P2,P3が異常であると判定することができる。
【0085】
本実施形態のECU11(マイコン21)は、基本的には、上記正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づき検出される第1の操舵角としての操舵角θsを用いて、そのパワーアシスト制御、詳しくは、その各種補償制御を実行する。そして、上記異常判定により、マイコン21が取得する正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosが異常であると判定された場合において、三相のパルス信号P1,P2,P3が正常である場合には、これら各パルス信号P1,P2,P3に基づき検出される第2の操舵角としての第2操舵角θs´に用いることにより、そのパワーアシスト制御を継続する。
【0086】
即ち、マイコン21による正弦信号S_sin及び余弦信号S_cos(の出力レベル)の取得は、必然的にA/D変換を介したものとなる。従って、ステアリングセンサ16からの出力段階では異常がない場合でも、そのA/D変換の際に異常が生ずることがあり得る(例えばA/D変換器(回路)の故障等)。
【0087】
しかしながら、各パルス信号P1,P2,P3の取得に際してA/D変換は不要である。そのため、正常な正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosが取得できない場合であっても、各パルス信号P1,P2,P3については正常に取得できる場合がある。そして、本実施形態では、このような場合、上記のように、そのパワーアシスト制御に用いる操舵角(θs,θs´)を切替えてパワーアシスト制御(の各種補償制御)を継続することによって、その優れたステアリング特性及び操舵フィーリングの維持を図る構成となっている。
【0088】
次に、本実施形態における正弦信号S_sin及び余弦信号S_cos、並びに三相のパルス信号P1,P2,P3についての異常判定、及びその判定結果に基づくパワーアシスト制御に用いる操舵角(θs,θs´)の切換えの処理手順について説明する。
【0089】
図13のフローチャートに示すように、マイコン21は、先ず正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosについての異常判定を実行し(ステップ701)、続いて三相のパルス信号P1,P2,P3についての異常判定を実行すると(ステップ702)、次に正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosが異常であるか否かを判定する(ステップ703)。そして、正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに異常のない場合(ステップ703:NO)には、当該正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づき検出される第1の操舵角としての操舵角θsを用いてパワーアシスト制御を実行する(通常制御、ステップ704)。
【0090】
一方、上記ステップ703において、正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosは異常であると判定した場合(ステップ703:YES)には、続いて三相のパルス信号P1,P2,P3が異常であるか否かを判定する(ステップ705)。そして、これらの各パルス信号P1,P2,P3に異常のない場合(ステップ705:NO)には、当該各パルス信号P1,P2,P3に基づき検出される第2の操舵角としての第2操舵角θs´を用いてパワーアシスト制御を継続する(通常制御、ステップ706)。
【0091】
そして、上記ステップ705において、各パルス信号P1,P2,P3は異常であると判定した場合(ステップ705:YES)には、そのパワーアシスト制御における操舵角(θs,θs´の両方)の使用を停止する(ステップ707)。
【0092】
以上、本実施形態によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
(1)マイコン21は、そのステアリングセンサ16から取得する正弦信号S_sin及び余弦信号S_cos、並びに三相パルス生成器30から取得する三相のパルス信号P1,P2,P3についての異常判定機能を備える。
【0093】
上記構成によれば、より精度よく、その操舵角検出に生じた障害を検知することができる。そして、その障害が発生した要因の推定も可能になる。具体的には、例えば、正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosが異常である場合において、各パルス信号P1,P2,P3が正常である場合には、デジタル処理装置であるマイコン21が、その正弦信号S_sin及び余弦信号S_cos(の出力レベル)を取得する際に行なうA/D変換(A/D変換器(回路))に問題があると推定することができる。また、パルス信号P1,P2,P3のみが異常である場合には、その三相パルス生成器30が故障したと推定することができる。そして、正弦信号S_sin及び余弦信号S_cos、並びに各パルス信号P1,P2,P3がともに異常である場合には、ステアリングセンサ16が故障したものと推定することができる。
【0094】
(2)マイコン21は、3bit合計値Vsumの値が「4」又は「6」である場合には、各パルス信号P1,P2,P3が異常であると判定する。
即ち、各パルス信号P1,P2,P3が正常である場合、その3bit合計値Vsumが取り得る値は、各パルス信号P1,P2,P3の各エッジに対応する所定の回転角間の各領域(第1領域〜第6領域)にそれぞれ対応した6つの値であり、残る二つの値、即ち「4」又は「6」となることはない。従って、上記構成によれば、簡素な構成にて、容易に各パルス信号P1,P2,P3の異常を判定することができる。
【0095】
(3)ECU11(マイコン21)は、基本的に正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づき検出される第1の操舵角としての操舵角θsを用いて、そのパワーアシスト制御を実行する。そして、正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosが異常であると判定された場合において、三相のパルス信号P1,P2,P3が正常である場合には、これら各パルス信号P1,P2,P3に基づき検出される第2の操舵角としての第2操舵角θs´に用いることにより、そのパワーアシスト制御を継続する。
【0096】
即ち、その操舵角検出に生じた障害の要因が、デジタル処理装置であるマイコン21が、その正弦信号S_sin及び余弦信号S_cos(の出力レベル)を取得する際に行なうA/D変換にあるならば、各パルス信号P1,P2,P3に基づく第2操舵角θs´の検出については、何らの障害もない。従って、上記構成によれば、その優れたステアリング特性及び操舵フィーリングを継続的に維持することができる。
【0097】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、本発明を所謂コラム型のEPS1に具体化したが、本発明は、所謂ピニオン型やラックアシスト型のEPSに適用してもよい。
【0098】
・上記各実施形態では、本発明をステアリングセンサ16としてコラムシャフト3aに設けられた回転角センサが出力する正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づいて、ステアリング2に生じた操舵角θsを検出する構成に具体化した。しかし、これに限らず、本発明は、図14及び図15に示すEPS40のように、そのEPSアクチュエータ41の駆動源であるモータ42の回転角θmを換算することにより操舵角θsを検出する構成に適用してもよい。
【0099】
即ち、このEPS40では、モータ42にブラシレスモータが採用されており、第1の回転角検出手段としてのECU43(マイコン44)は、そのモータ42に設けられた回転角センサ(モータレゾルバ)45が出力する正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づいて同モータ42の回転角θmを検出する。尚、マイコン44は、回転角θmとともに、各電流センサ46u,46v,46wによりモータ42の実電流である各相電流値Iu,Iv,Iwを検出する。そして、マイコン44は、EPSアクチュエータ41を構成する減速機構13の減速比に基づいて、そのモータ42の回転角θmを、ステアリング2が設けられたステアリングシャフト3(コラムシャフト3a)の回転角に換算することにより、そのステアリング2に生じた操舵角θsを検出する。
【0100】
このような構成では、そのモータレゾルバを構成する回転角センサ45が出力する正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosを、その三相パルス生成器30の入力とするとよい。これにより、上記各実施形態と同様の三相のパルス信号P1,P2,P3を生成し、及び当該各パルス信号P1,P2,P3に基づく操舵角検出を行なうことができる。尚、この場合、第2の操舵角としての第2操舵角θs´を演算する際にも、減速機構13の減速比を考慮した換算処理が必要となることは言うまでもない。
【0101】
・上記各実施形態では、マイコン21は、三相パルス生成器30の出力する各パルス信号P1,P2,P3について、その出力レベルが「Hi」である場合を「1」、「Lo」である場合を「0」とする3bit信号として認識する。そして、3bit合計値Vsumが、三相のパルス信号P1,P2,P3の各エッジに対応する所定の回転角間の各領域(第1領域〜第6領域)にそれぞれ対応する固有の値として「7」「3」「2」「0」「1」「5」の6つの値をとるようにした(図6参照)。しかし、これに限らず、その3bit信号の「0」「1」が反対となるように、マイコン21及び三相パルス生成器30を構成してもよい。尚、この場合、上記第2の実施形態における各パルス信号P1,P2,P3の異常判定において異常値として使用する値、即ち「4」「6」は、それぞれ「3」「1」となる。
【0102】
・上記各実施形態では、三相パルス生成器30は、抵抗値の等しい4つの抵抗R1〜R4を直列接続してなる分圧回路31と、その各抵抗R1〜R4間の各分圧に等しい出力レベルを有した各分圧信号(Vh,Vm,Vl)をそれぞれ入力とする3つのコンパレータ32,33,34とを備えてなることしたが、その構成はこれに限るものではない。
【0103】
・また、分圧回路を構成する抵抗、及びそれに対応コンパレータを変更することにより、2相、又は4相以上のパルス信号を出力可能なパルス生成器を設けてもよい。但し、4相を超えるパルス信号の多重化は、構成の複雑化、並びに演算負荷及び消費電力の増大を伴う一方、二相化した場合には、その異常判定が困難となることを考慮すべきである。
【0104】
・上記第2の実施形態では、正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosの何れか一方のみが変化する状態にある場合に、当該正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosは異常であると判定したが、その異常判定の方法はこれに限るものではない。
【0105】
・また、上記第2の実施形態では、3bit合計値Vsumの値が「4」又は「6」である場合には、各パルス信号P1,P2,P3が異常であると判定したが、この各パルス信号P1,P2,P3の異常判定についてもまた、これに限るものではない。
【符号の説明】
【0106】
1,40…電動パワーステアリング装置(EPS)、2…ステアリング、3…ステアリングシャフト、3a…コラムシャフト、10,41…EPSアクチュエータ、11,43…ECU、12,42…モータ、13…減速機構、16…ステアリングセンサ、21,44…マイコン、22…駆動回路、30…三相パルス生成器、31…分圧回路、32,33,34…コンパレータ、45…回転角センサ、S_sin…正弦信号、V1…値、S_cos…余弦信号、V2…値、P1,P2,P3…パルス信号、θs…操舵角、θs´…第2操舵角、θe…電気角、θe_m…電気角前回値、N…カウント値、n…第2カウント値、θe_ab…電気角換算絶対角、θe_ab´…第2電気角換算絶対角、α…電気角倍率、θ0…操舵角初期値、R1〜R4…抵抗、Vb…電圧、Vh…高電位信号、Vm…中電位信号、Vl…低電位信号、θm…回転角。
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転角検出装置及び電動パワーステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用パワーステアリング装置には、ステアリングに生じた操舵角に基づいて、そのパワーアシスト制御を実行するものがある。尚、操舵角(操舵速度)を用いたパワーアシスト制御の態様としては、例えば、ステアリングを中立位置に復帰させるステアリング戻し制御や操舵角の急変を抑制するダンピング補償制御等が挙げられる。そして、従来、その操舵角の検出は、例えば、特許文献1に示されるようなABZ相のパルス信号を出力する回転角センサをステアリングセンサに用いて行なうのが一般的となっていた。
【0003】
しかしながら、このようなパルス式の回転角センサには、その検出精度の向上とサイズの小型化との両立が難しいという問題がある。そこで、近年では、例えば、特許文献2に示されるように、磁気検出素子を用いることにより、その検出対象の回転角に応じて出力レベルが変化する正弦信号及び余弦信号を出力可能な回転角センサが提案されている。そして、このような磁気式の回転角センサをステアリングセンサに用いることにより、サイズの小型化を図りつつ、高精度に操舵角を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−127417号公報
【特許文献2】特開2007−256250号公報
【特許文献3】特表2007−533975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、回転角センサの出力信号に基づき検出される回転角は、基本的に、その検出対象となる回転軸の機械角360°の範囲内での相対角(電気角)であるのに対し、ステアリングの回転により生ずる操舵角は、その機械角360°を超えた範囲を含む絶対角である。このため、多くの場合、操舵角の検出は、そのステアリングセンサの出力信号に基づき検出される相対角の変化をカウントすることにより行なわれる。
【0006】
ところが、上記のような正弦信号及び余弦信号に基づく回転角検出は、従来のようなパルス信号に基づく回転角検出では必要のなかったA/D変換や複雑な演算処理が不可欠である。このため、イグニッションオフ(IGオフ)から再始動までの間における操舵角検出の連続性(再現性)を担保すべく、IGオフ後においても上記のような相対角変化のカウントを継続するとすれば、その消費電力の増大により、車載電源(バッテリ)の消耗を早める結果となってしまう。
【0007】
この点、上記特許文献2、或いは特許文献3等に記載の回転角検出装置は、絶対角に応じて回転角センサを構成する磁石回転子と磁気検出素子との軸方向距離を変化させる。そして、その磁気検出素子を通過する磁束密度のベクトル長を絶対角に応じて連続的に変化させることにより、上記のような回転角変化のカウントを行なうことなく、その絶対角の検出が可能となっている。
【0008】
しかしながら、このように軸方向距離を変更する機械的構成を設けることで構造が複雑化し、これにより製造コストが上昇する。そして、更には、その可動部の存在が信頼性の低下を招く要因となるおそれがあり、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、高い検出精度を有するとともに、構成簡素且つ省電力にて、連続的に検出対象の絶対角を検出することのできる回転角検出装置、及び電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、検出対象の回転角に応じて出力レベルが変化する正弦信号及び余弦信号を出力する回転角センサと、前記正弦信号及び余弦信号に基づいて前記回転角を検出する第1の回転角検出手段と、前記正弦信号及び余弦信号に基づいて、所定の前記回転角に対応したエッジを有するとともに、それぞれの前記所定の回転角が互いに重複することなく且つ均等間隔となるように設定された三相のパルス信号を生成するパルス信号生成手段と、前記各パルス信号に基づいて前記回転角を検出する第2の回転角検出手段と、を備えた回転角検出装置であること、を要旨とする。
【0011】
即ち、このような三相のパルス信号のエッジ(立ち下がり及び立ち上がり)を検出することで、検出対象の回転角変化を電気角360°で生ずるエッジ数に対応した電気角精度(例えば、エッジ数が「6」である場合は電気角60°の精度)で検出することが可能であり、その累計をカウントすることで絶対角を検出することができる。そして、パルス信号に基づく回転角検出では、正弦信号及び余弦信号に基づく回転角検出のようなA/D変換や複雑な演算処理が不要である。
【0012】
従って、上記構成によれば、その第1の回転角検出手段により、正弦信号及び余弦信号に基づく高精度な絶対角検出を行うとともに、当該第1の回転角検出手段の停止時には、その第2の回転角検出手段による三相のパルス信号に基づく検出により、消費電力を抑えつつ、その絶対角検出を継続することができる。その結果、構成簡素且つ省電力にて、連続的に検出対象の絶対角を検出することができるようになる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記パルス信号生成手段は、抵抗値の等しい4つの抵抗を直列接続してなるとともに前記正弦信号及び余弦信号の最大値に相当する電圧が印加される分圧回路と、前記分圧回路が出力する各分圧信号のうちの高電位信号と前記余弦信号とを入力とする第1のコンパレータと、前記分圧回路が出力する各分圧信号のうちの中電位信号と前記正弦信号とを入力とする第2のコンパレータと、前記分圧回路が出力する各分圧信号のうちの低電位信号と前記余弦信号とを入力とする第3のコンパレータと、を備えてなること、を要旨とする。
【0014】
上記構成によれば、構成簡素且つ省電力にて、所定の回転角(電気角)に対応したエッジを有するとともにそれぞれの各エッジに対応する所定の回転角が互いに重複することなく且つ均等間隔となるように設定された三相のパルス信号を生成することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記第1の回転角検出手段は、該第1の回転角検出手段の停止時に前記第2の回転角検出手段が検出を継続した前記各パルス信号に基づく第2の回転角により、その起動時に演算する前記回転角の初期値を補正すること、を要旨とする。
【0016】
上記構成によれば、第1の回転角検出手段の起動直後から、高精度に絶対角を検出することができる。
請求項4に記載の発明は、前記エッジを検出して前記第2の回転角検出手段を起動する起動手段を備えること、を要旨とする。
【0017】
即ち、各パルス信号に基づく回転角検出は、そのエッジの検出に基づくものであり、非エッジ検出時には、特段、演算処理も発生しない。従って、上記構成によれば、継続的に絶対角検出を行いつつ、大幅に消費電力を抑えることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、前記第1の回転角検出手段が取得する前記正弦信号及び余弦信号の異常を判定する第1の異常判定手段と、前記第2の回転角検出手段が取得する前記各パルス信号の異常を判定する第2の異常判定手段とを備えること、を要旨とする。
【0019】
上記構成によれば、より精度よく、その回転角検出に生じた障害を検知することができる。そして、その障害が発生した要因の推定も可能になる。具体的には、例えば、第1の回転角検出手段がデジタル処理装置により構成される場合、その正弦信号及び余弦信号が異常であるにも関わらず、各パルス信号が正常である場合には、同第1の回転角検出手段が正弦信号及び余弦信号を取得する際に行なうA/D変換(A/D変換器(回路))に問題があると推定することができる。また、パルスのみが異常である場合には、そのパルス信号生成手段に問題があると推定することができる。そして、正弦信号及び余弦信号、並びに各パルス信号が異常である場合には、その回転角センサが故障したものと推定することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の回転角検出装置を用いてステアリングに生じた操舵角を検出する電動パワーステアリング装置であること、を要旨とする。
【0021】
上記構成によれば、IGオフから再始動までの間における操舵角検出の連続性(再現性)を担保することができる。その結果、再始動直後からの良好なステアリング特性及び操舵フィーリングを実現することができる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の回転角検出装置を用いてステアリングに生じた操舵角を検出する電動パワーステアリング装置であって、前記正弦信号及び余弦信号に基づき検出される第1の操舵角を用いてパワーアシスト制御を実行するとともに、前記第1の回転角検出手段が取得する前記正弦信号及び余弦信号が異常である場合において、前記第2の回転角検出手段が取得する前記各パルス信号が正常である場合には、該各パルス信号に基づき検出される第2の操舵角を用いて前記パワーアシスト制御を継続すること、を要旨とする。
【0023】
上記構成によれば、その操舵角検出に生じた障害の要因が、デジタル処理装置により構成された第1の回転検出手段が正弦信号及び余弦信号を取得する際に行なうA/D変換にあるならば、各パルス信号に基づく第2の操舵角の検出については、何らの障害も存在しない。従って、上記構成によれば、その優れたステアリング特性及び操舵フィーリングを継続的に維持することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、高い検出精度を有するとともに、構成簡素且つ省電力にて、連続的に検出対象の絶対角を検出することが可能な回転角検出装置、及び電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】電動パワーステアリング装置(EPS)の概略構成図。
【図2】EPSの電気的構成を模式的に示すブロック図。
【図3】正弦信号及び余弦信号に基づく操舵角検出の処理手順を示すフローチャート。
【図4】正弦信号及び余弦信号の波形と各分圧信号の出力レベルとの関係を示す説明図。
【図5】正弦信号及び余弦信号に基づき生成される三相のパルス信号の波形とその各エッジに対応する所定の回転角により区画された各領域(第1領域〜第6領域)を示す説明図。
【図6】三相のパルス信号の出力レベルに基づく3bit信号の合計値(二進数)と各領域との対応を示す説明図。
【図7】三相パルス生成器の回路図。
【図8】イグニッションオフ(IGオフ)時における継続的な三相のパルス信号に基づく操舵角検出の処理手順を示すフローチャート。
【図9】IGオンによる起動時における三相のパルス信号に基づく第2操舵角の検出、及び当該第2操舵角を用いた正弦信号及び余弦信号に基づく操舵角初期値の補正の処理手順を示すフローチャート。
【図10】第2の実施形態におけるIGオン後の三相のパルス信号に基づく第2操舵角の検出の処理手順を示すフローチャート。
【図11】正弦信号及び余弦信号の異常判定の処理手順を示すフローチャート。
【図12】三相のパルス信号の異常判定の処理手順を示すフローチャート。
【図13】正弦信号及び余弦信号、並びに三相のパルス信号についての異常判定結果に基づく制御変更の処理手順を示すフローチャート。
【図14】別例のEPSの概略構成図。
【図15】別例のEPSの電気的構成を模式的に示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1の実施形態]
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の電動パワーステアリング装置(EPS)1において、ステアリング2が固定されたステアリングシャフト3は、ラックアンドピニオン機構4を介してラック軸5と連結されており、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラックアンドピニオン機構4によりラック軸5の往復直線運動に変換される。尚、本実施形態のステアリングシャフト3は、コラムシャフト3a、インターミディエイトシャフト3b、及びピニオンシャフト3cを連結してなる。そして、このステアリングシャフト3の回転に伴うラック軸5の直線運動が、同ラック軸5の両端に連結されたタイロッド6を介して図示しないナックルに伝達されることにより、転舵輪7の舵角、即ち車両の進行方向が変更される。
【0027】
また、EPS1は、操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する操舵力補助装置としてのEPSアクチュエータ10と、該EPSアクチュエータ10の作動を制御する制御手段としてのECU11とを備えている。
【0028】
本実施形態のEPSアクチュエータ10は、駆動源であるモータ12が減速機構13を介してコラムシャフト3aと駆動連結された所謂コラム型のEPSアクチュエータとして構成されている。尚、本実施形態では、モータ12にはブラシ付の直流モータが採用されている。そして、EPSアクチュエータ10は、モータ12の回転を減速してコラムシャフト3aに伝達することにより、そのモータトルクをアシスト力として操舵系に付与する構成となっている。
【0029】
一方、ECU11には、トルクセンサ14、車速センサ15及びステアリングセンサ(操舵角センサ)16が接続されており、ECU11は、これら各センサが出力するセンサ信号に基づいて、操舵トルクτ及び車速V、並びに操舵角θsを検出する。そして、本実施形態のECU11は、これらの各状態量に基づいて、その駆動源であるモータ12に対する駆動電力の供給を通じて上記EPSアクチュエータ10の作動を制御することにより、その操舵系に付与するアシスト力を制御する(パワーアシスト制御)。
【0030】
詳述すると、図2に示すように、ECU11には、マイコン21と、同マイコン21の出力するモータ制御信号に基づいてモータ12に駆動電力を供給する駆動回路22とが設けられており、上記各センサが出力するセンサ信号は、そのマイコン21に入力される。そして、マイコン21は、これら各センサ信号により検出される操舵トルクτ及び車速V、並びに操舵角θsに基づいて、上記パワーアシスト制御を実行するためのモータ制御信号を出力する構成となっている。
【0031】
さらに詳述すると、本実施形態のマイコン21は、検出される操舵トルクτ及び車速Vに基づいて、操舵系に付与すべき目標アシスト力の基礎成分を演算する。また、マイコン21は、検出される操舵角θsに基づいて各種の補償成分を演算する。尚、この操舵角θsに基づく補償成分としては、例えば、ステアリングを中立位置に復帰させるためのステアリング戻し補償成分や操舵角の急変を抑制するためのダンピング補償成分等が該当する。そして、マイコン21は、上記目標アシスト力の基礎成分及び補償成分に対応する電流指令値を演算する。
【0032】
また、マイコン21は、電流センサ23の出力信号に基づいてモータ12の実電流Iを検出し、その実電流Iを上記の電流指令値に追従させるべく電流フィードバック制御を実行することにより、駆動回路22に出力するモータ制御信号を生成する。そして、本実施形態のECU11では、このモータ制御信号に基づく駆動電力がモータ12に供給されることにより、そのパワーアシスト制御が実行されるようになっている。
【0033】
(操舵角検出)
次に、本実施形態における操舵角検出の態様について説明する。
図1に示すように、本実施形態のステアリングセンサ16には、ステアリング2が固定されたコラムシャフト3aとともに一体回転する磁石回転子25と、同磁石回転子25の回転により生ずる磁束変化に応じたセンサ信号を出力する二つの磁気検出素子(ホールIC)26a,26bとを備えた磁気式の回転角センサが採用されている。
【0034】
具体的には、本実施形態では、これらの各磁気検出素子26a,26bは、それぞれ、上記磁石回転子25が設けられたコラムシャフト3aの回転角、即ちステアリング2に生じた操舵角θsに応じて出力レベルが変化するとともに、互いの位相が1/4周期(電気角90°)ずれたセンサ信号を出力するように構成されている。
【0035】
本実施形態のステアリングセンサ16は、これら各磁気検出素子26a,26bが出力する二つのセンサ信号を、正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosとして、ECU11に出力する。そして、第1の回転角検出手段を構成するECU11(マイコン21)は、その入力される正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づいて、絶対角としての操舵角θsを検出する。
【0036】
詳述すると、図3のフローチャートに示すように、マイコン21は、ステアリングセンサ16の出力する正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosの各値V1,V2を取得すると(ステップ101)、次の(1)式に基づいて、これらの各値V1,V2に対応する電気角θeを演算する(ステップ102)。尚、次式において、「arctan」は「アークタンジェント」を示す。
【0037】
θe=arctan(V1/V2) ・・・(1)
次に、マイコン21は、前回の演算周期において求めた電気角の値、即ち電気角前回値θe_mをメモリ(図示略)から読み出すと(ステップ103)、この電気角前回値θe_mと上記ステップ102において演算した電気角θeとの比較に基づいて、その電気角θeの値が「電気角一周(電気角360°の一周)」を示すものであるか否かを判定する(ステップ104)。
【0038】
即ち、電気角θeは、相対角であるため、その値が「359°」を超えて増加した場合(「+」方向)における次の値は「0°」となり、同様に「0°」を超えて減少した場合(「−」方向)における次の値は「359°」となる。本実施形態では、この変化点である「0°(360°)」を通過して電気角θeが変化することを「電気角一周」と定義し、上記ステップ104においては、今回の演算周期で得られた電気角θeが、この「電気角一周」を示すものであるか否かを判定する。そして、その周回数を計測(カウント)することにより、検出対象であるステアリング2とともに一体回転する回転軸、即ちステアリングセンサ16が設けられたコラムシャフト3aの電気角換算での絶対角(電気角換算絶対角θe_ab)を演算する。
【0039】
具体的には、マイコン21は、電気角θeの値が「電気角一周」を示し(ステップ104:YES)、且つその変化方向が「+」である場合、即ち電気角θeの値が「0°」であって電気角前回値θe_mが「359°」である場合(ステップ105:YES)には、その周回数計測用のカウンタをインクリメントする(N=N+1、ステップ106)。また、その変化方向が「−」である場合、即ち電気角θeの値が「359°」であり電気角前回値θe_mが「0°」である場合(ステップ105:NO)には、そのカウンタをデクリメントする(N=N−1、ステップ107)。尚、上記ステップ104において、電気角θeの値が「電気角一周」を示すものではない場合(ステップ104:NO)には、上記ステップ105〜ステップ107の処理は実行されない。そして、本実施形態のマイコン21は、このように計測した電気角360°の周回数を示すカウント値N、及び電気角θeに基づいて、ステアリングセンサ16が設けられたコラムシャフト3aの電気角換算絶対角θe_abを演算する(θe_ab=(360×N)+θe、ステップ108)。
【0040】
次に、マイコン21は、このステップ108において演算された電気角換算絶対角θe_abを機械角に換算する、即ち、その電気角倍率αで除することにより、機械角の絶対角である操舵角θsを演算する(θs=θe_ab/α、ステップ109)。尚、本実施形態では、この操舵角θsの演算後、電気角前回値θe_mが更新される(θe=θe_m、ステップ120)。
【0041】
そして、本実施形態のマイコン21は、このようにして上記ステアリングセンサ16の出力する正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づき検出(演算)される操舵角θsを、そのパワーアシスト制御に用いる構成となっている。
【0042】
また、図2に示すように、本実施形態のECU11は、図4に示されるように正弦波状(余弦波状)に出力レベルが変化する正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づいて、それぞれ図5に示されるような所定の回転角(電気角)に対応したエッジを有する三相のパルス信号P1,P2,P3を生成する三相パルス生成器30を備えている。
【0043】
具体的には、パルス信号P1は「60°」「300°」、パルス信号P2は「180°」「0°(360°)」、そしてパルス信号P3は「120°」「240°」に、それぞれ立ち下がりエッジ及び立ち上がりのエッジを有するものとなっている。そして、本実施形態のマイコン21は、このように、それぞれの各エッジに対応する所定の回転角が互いに重複することなく且つ均等間隔となるように設定された三相のパルス信号P1,P2,P3に基づいて、ステアリング2に生じた操舵角(第2操舵角θs´)を演算する第2の回転角検出手段としての機能を備えている。
【0044】
詳述すると、図5及び図6に示すように、本実施形態のマイコン21は、三相パルス生成器30の出力する各パルス信号P1,P2,P3について、その出力レベルが「Hi」である場合を「1」、「Lo」である場合を「0」とする3bit信号として認識する。具体的には、本実施形態では、パルス信号P1は「bit2」、パルス信号P2は「bit1」、そしてパルス信号P3は「bit0」に対応するものとなっている。そして、マイコン21は、その3bit信号の合計値(3bit合計値Vsum:二進数)に基づいて、その検出対象であるステアリング2とともに一体回転する回転軸、即ちステアリングセンサ16が設けられたコラムシャフト3aの電気角換算での絶対角(第2電気角換算絶対角θe_ab´)を演算する。
【0045】
即ち、上記のように、各パルス信号P1,P2,P3のエッジ(立ち下がり及び立ち上がり)に対応する所定の回転角は、互いに重複することなく且つ均等間隔となるように設定されている(図5参照)。従って、各パルス信号P1,P2,P3の上記3bit合計値Vsumは、これら各エッジに対応する所定の回転角により区画された各領域(第1領域〜第6領域)に対応した固有の値を示すものとなる。
【0046】
具体的には、図6に示すように、3bit合計値Vsumは、「第1領域(0°(360°)〜60°)」では「7」、「第2領域(60°〜120°)」では「3」、「第3領域(120°〜180°)」では「2」となる。同様に、「第4領域(180°〜240°)」では「0」、「第5領域(240°〜300°)」では「1」、「第6領域(300°〜360°)」では「5」となる。
【0047】
本実施形態のマイコン21は、これを利用して、ステアリングセンサ16が設けられたコラムシャフト3aの回転角、即ちステアリング2に生じた操舵角(第2操舵角θs´)を電気角60°の精度で検出し、その回転角変化を計測(カウント)することにより、上記第2電気角換算絶対角θe_ab´を演算する。そして、更に、その第2電気角換算絶対角θe_ab´を機械角に換算することにより、上記各パルス信号P1,P2,P3に基づき検出される操舵角として、第2操舵角θs´を演算する構成となっている。
【0048】
さらに詳述すると、図7に示すように、本実施形態の三相パルス生成器30は、抵抗値の等しい4つの抵抗R1〜R4を直列接続してなる分圧回路31と、その各抵抗R1〜R4間の各分圧に等しい出力レベルを有して同分圧回路31が出力する各分圧信号(Vh,Vm,Vl)をそれぞれ入力とする3つのコンパレータ32,33,34を備えている。
【0049】
本実施形態では、分圧回路31には、上記正弦信号S_sin及び余弦信号S_cos(の出力レベルを示す各値V1,V2)の最大値に相当する電圧Vbが印加される(図4参照)。また、各コンパレータ32,33,34には、それぞれ、対応する正弦信号S_sin又は余弦信号S_cosが入力される。具体的には、コンパレータ32には、分圧回路31において最も高電位側(電源側)に配置された抵抗R1,R2間の分圧(3/4×Vb)に等しい出力レベルを有する分圧信号である高電位信号Vh、及び余弦信号S_cosが入力される。また、コンパレータ33には、抵抗R2,R3間の分圧(1/2×Vb)に等しい出力レベルを有する中電位信号Vm及び正弦信号S_sinが入力され、コンパレータ34には、最も低電位側(接地側)に配置された抵抗R3,R4間の分圧(1/4×Vb)に等しい出力レベルを有する低電位信号Vl及び余弦信号S_cosが入力される。そして、本実施形態の三相パルス生成器30は、これら各コンパレータ32,33,34が、その比較に基づき出力する信号を、それぞれ、上記の各パルス信号P1,P2,P3として出力する。
【0050】
即ち、図4に示すように、余弦信号S_cosの出力レベル(値V2)が上記高電位信号Vhの出力レベル(3/4×Vb)を超える範囲は上記「第1領域」「第6領域」であり、上記低電位信号Vlの出力レベル(1/4×Vb)を超える範囲は上記「第1領域」「第2領域」「第5領域」「第6領域」である。また、正弦信号S_sinの出力レベル(値V1)が上記中電位信号Vmの出力レベル(1/2×Vb)を超える範囲は上記「第1領域」「第2領域」「第3領域」である。そして、本実施形態では、このように、それぞれ対応する「第1領域」「第6領域」、「第1領域」「第2領域」「第5領域」「第6領域」、「第1領域」「第2領域」「第3領域」において「Hi」となるコンパレータ32,33,34の出力が、上記各パルス信号P1,P2,P3としてマイコン21に入力されるようになっている(図5参照)。
【0051】
本実施形態のマイコン21は、IGオフ時、これら各パルス信号P1,P2,P3を用いて、その検出対象であるステアリング2に生じた回転角変化を監視することにより、当該各パルス信号P1,P2,P3に基づく操舵角検出を継続する。
【0052】
詳述すると、本実施形態のマイコン21は、IGオフにより、主たる演算処理を停止してスリープ状態となる。そして、同マイコン21には、このようなスリープ状態において、その入力される各パルス信号P1,P2,P3のエッジを検出することにより、自動的に起動する機能が備えられている。
【0053】
本実施形態では、マイコン21は、この起動手段としての機能を利用して、スリープ時、各パルス信号P1,P2,P3の何れかのエッジを検出した場合には、省電力モードにより起動する。そして、その各パルス信号P1,P2,P3に基づく操舵角検出を継続、詳しくは、その検出対象であるステアリング2に生じた回転角変化の計測(カウント)を続行する構成となっている。
【0054】
さらに詳述すると、図8のフローチャートに示すように、本実施形態のマイコン21は、上記のように三相パルス生成器30から入力される各パルス信号P1,P2,P3の何れかにエッジを検出すると(ステップ201:YES)、当該各パルス信号P1,P2,P3に基づく操舵角検出を実行すべく省電力モードで起動する(省電力起動、ステップ202)。
【0055】
ここで、本実施形態のマイコン21における「省電力モード」は、その各パルス信号P1,P2,P3に基づく操舵角検出を実行するために必要な最小構成のみに電力を供給する構成となっている。このため、正弦波状(余弦波状)のアナログ信号として入力される正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosの各値V1,V2(出力レベル)を取得すべくマイコン21に内蔵されたA/D変化器等、当該正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づく操舵角検出を実行するための第1の操舵角検出手段を構成する部分への電力供給は停止したままとなっている。
【0056】
尚、上記ステップ201において、各パルス信号P1,P2,P3のエッジが検出されない場合(ステップ201:NO)には、ステップ202以降の処理は実行されない。
次に、マイコン21は、各パルス信号P1,P2,P3の3bit合計値Vsumを取得し(ステップ203)、前回の省電力起動時に求めた3bit合計値の前回値Vsum_mをメモリ(図示略)から読み出すと(ステップ204)、これら3bit合計値Vsum及び前回値Vsum_mに基づいて、その回転角変化の方向を判定する。
【0057】
即ち、各パルス信号P1,P2,P3の何れかにおけるエッジの発生は、当該各パルス信号P1,P2,P3に基づき特定可能な電気角60°の範囲を有する上記各領域(図4〜図6参照、第1領域〜第6領域)の移行、つまり検出対象であるステアリング2(ステアリングセンサ16が設けられたコラムシャフト3a)の回転角変化を示している。従って、上記のように3bit合計値Vsum及び前回値Vsum_mから、その回転方向を特定することができる。
【0058】
例えば、今回の演算により求めた3bit合計値Vsumが「2」である場合(図6参照)、前回値Vsum_mが「3」であれば、その変化方向は「+」であり、前回値Vsum_mが「0」であれば、その変化方向は「−」である。そして、マイコン21は、このように、その変化方向を特定することにより、その各パルス信号P1,P2,P3におけるエッジの発生により検出した回転角変化を計測(カウント)する。
【0059】
具体的には、マイコン21は、その変化方向が「+」である場合(ステップ205:YES)には、その電気角60°の精度での回転角変化を計測する第2カウンタをインクリメントし(n=n+1、ステップ206)、その変化方向が「−」である場合(ステップ205:NO)には、デクリメントする(n=n−1、ステップ207)。
【0060】
尚、本実施形態のマイコン21は、上記ステップ206又はステップ207において回転角変化をカウントした後、今回の演算において取得した3bit合計値Vsumにより、その前回値Vsum_mを更新する(Vsum_m=Vsum、ステップ208)。そして、再び、スリープ状態へと移行することにより(ステップ209)、極めて省電力にて、各パルス信号P1,P2,P3におけるエッジの発生を監視することが可能となっている。
【0061】
また、本実施形態では、IGオンによる起動時、このようにしてIGオフ時において継続的に更新された第2カウンタの値、即ち回転角変化の累計を電気角60°の精度で示す第2カウント値nを用いることにより、各パルス信号P1,P2,P3に基づく第2操舵角θs´を演算する。そして、この第2操舵角θs´を用いて上記正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づき検出する操舵角θsの初期値を補正することにより、そのIGオフから再始動までの間における操舵角検出の連続性(再現性)を担保する構成となっている。
【0062】
詳述すると、図9に示すように、マイコン21は、IGオンにより起動すると(ステップ301)、上記のようにIGオフ時、その更新を継続した第2カウント値nを取得する(ステップ302)。
【0063】
続いて、マイコン21は、その回転角変化の累計を電気角60°の精度で示す第2カウント値nを用いることにより、その検出対象であるステアリング2(ステアリングセンサ16が設けられたコラムシャフト3a)の電気角換算での絶対角として、第2電気角換算絶対角θe_ab´を演算する(θe_ab´=60×n、ステップ303)。そして、この第2電気角換算絶対角θe_ab´を機械角に換算、即ち電気角倍率αで除することにより、上記各パルス信号P1,P2,P3に基づき検出される操舵角としての第2操舵角θs´を演算する(θs´=θe_ab´/α、ステップ304)。
【0064】
次に、マイコン21は、上記正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づき検出する操舵角θsの初期値として、操舵角初期値θ0を演算する(ステップ305)。尚、この操舵角初期値θ0は、通常の正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づく操舵角θsの検出と同様の処理手順により演算される(図3参照)。そして、マイコン21は、この操舵角初期値θ0と上記ステップ304において検出(演算)された上記三相のパルス信号P1,P2,P3に基づく第2操舵角θs´とを比較することにより、当該操舵角初期値θ0を補正する必要があるか否かを判定する(ステップ306)。
【0065】
本実施形態では、この操舵角初期値θ0についての補正の必要性に関する判定は、その比較対象である第2操舵角θs´との間に電気角で360°以上の差があるか否かにより行なわれる。そして、本実施形態では、その補正の必要があると判定した場合(ステップ306:YES)においてのみ、第2操舵角θs´との比較に基づいて、その操舵角初期値θ0の演算と基礎となったカウント値Nを更新、即ち電気角360°の周回数を更新することにより、当該操舵角初期値θ0の補正を実行する(ステップ307)。
【0066】
以上、本実施形態によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
(1)ECU11(マイコン21)は、磁気式の回転角センサにより構成されたステアリングセンサ16が出力する正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づいて、絶対角である操舵角θsを検出する。また、ECU11は、正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づいて、所定の回転角(電気角)に対応したエッジを有するとともにそれぞれの各エッジに対応する所定の回転角が互いに重複することなく且つ均等間隔となるように設定された三相のパルス信号P1,P2,P3を生成する三相パルス生成器30を備える。そして、マイコン21は、これらの各パルス信号P1,P2,P3に基づいて操舵角(第2操舵角θs´)を演算する第2の回転角検出手段としての機能を備える。
【0067】
即ち、各パルス信号P1,P2,P3のエッジ(立ち下がり及び立ち上がり)を検出することで、ステアリングセンサ16が設けられたコラムシャフト3aの回転角変化を電気角60°の精度で検出することが可能であり、その累計をカウントすることで、絶対角であるステアリング2の操舵角(第2操舵角θs´)を検出することができる。そして、このようなパルス信号に基づく回転角検出では、正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づく回転角検出のようなA/D変換や複雑な演算処理が不要である。
【0068】
従って、上記構成によれば、正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づく検出により、高精度に操舵角θsを検出するとともに、IGオフ時には、その三相のパルス信号P1,P2,P3に基づく検出により、消費電力を抑えつつ、その操舵角検出(第2操舵角θs´)を継続することができる。その結果、構成簡素且つ省電力にて、そのIGオフから再始動までの間における操舵角検出の連続性(再現性)を担保することができる。
【0069】
(2)マイコン21は、IGオンによる起動時、その各パルス信号P1,P2,P3に基づき検出された第2の回転角としての第2操舵角θs´を用いて上記正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づき検出する操舵角θsの初期値を補正する。これにより、再始動直後から、高精度に操舵角θsを検出することができる。
【0070】
(3)マイコン21は、IGオフ時のスリープ状態において、その入力される各パルス信号P1,P2,P3のエッジを検出することにより、自動的に起動する起動手段としての機能を備える。
【0071】
即ち、各パルス信号に基づく回転角検出は、そのエッジの検出に基づくものであり、非エッジ検出時には、特段、演算処理も発生しない。従って、上記構成によれば、継続的に操舵角検出を実行しつつ、大幅に消費電力を抑えることができる。
【0072】
(4)三相パルス生成器30は、抵抗値の等しい4つの抵抗R1〜R4を直列接続してなる分圧回路31と、その各抵抗R1〜R4間の各分圧に等しい出力レベルを有した各分圧信号(Vh,Vm,Vl)をそれぞれ入力とする3つのコンパレータ32,33,34を備える。分圧回路31には、上記正弦信号S_sin及び余弦信号S_cos(の出力レベルを示す各値V1,V2)の最大値に相当する電圧Vbが印加される。また、コンパレータ32には、分圧回路31が分圧信号として出力する高電位信号Vh及び余弦信号S_cosが、コンパレータ33には、分圧信号としての中電位信号Vm及び正弦信号S_sinが、コンパレータ34には、分圧信号としての低電位信号Vl及び余弦信号S_cosが入力される。そして、パルス信号生成手段としての三相パルス生成器30は、これら各コンパレータ32,33,34が、その比較に基づき出力する信号を、それぞれ、上記の各パルス信号P1,P2,P3として出力する。
【0073】
上記構成によれば、構成簡素且つ省電力にて、所定の回転角(電気角)に対応したエッジを有するとともにそれぞれの各エッジに対応する所定の回転角が互いに重複することなく且つ均等間隔となるように設定された三相のパルス信号P1,P2,P3を生成することができる。
【0074】
[第2の実施形態]
以下、本発明を具体化した第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜のため、上記第1の実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0075】
本実施形態のマイコン21は、IGオンによる起動後、ステアリングセンサ16の出力する正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づく操舵角θsの検出(図3参照)とともに、三相パルス生成器30が生成する三相のパルス信号P1,P2,P3に基づく第2操舵角θs´の検出を実行する。
【0076】
具体的には、図10のフローチャートに示すように、マイコン21は、三相パルス生成器30から入力される各パルス信号P1,P2,P3の何れかにエッジを検出すると(ステップ401:YES)、先ず、その3bit合計値Vsumを取得する(ステップ402)。マイコン21は、続いて各パルス信号P1,P2,P3の前回値Vsum_mをメモリ(図示略)から読み出し(ステップ403)、そのエッジを発生させた回転角変化の方向が「+」であるか否かを判定する(ステップ404)。そして、その変化方向が「+」である場合(ステップ404:YES)には、その電気角60°の精度での回転角変化を計測する第2カウンタをインクリメントし(n=n+1、ステップ405)、その変化方向が「−」である場合(ステップ404:NO)には、デクリメントする(n=n−1、ステップ406)。
【0077】
次に、マイコン21は、その第2カウント値nを用いて第2電気角換算絶対角θe_ab´を演算する(θe_ab´=60×n、ステップ407)。そして、この第2電気角換算絶対角θe_ab´を機械角に換算することにより、上記各パルス信号P1,P2,P3に基づき検出される操舵角として、第2操舵角θs´を演算する(θs´=θe_ab´/α、ステップ408)。
【0078】
尚、本実施形態では、マイコン21は、このように第2操舵角θs´を演算した後、今回の演算において取得した3bit合計値Vsumにより、その前回値Vsum_mを更新する(Vsum_m=Vsum、ステップ409)。そして、上記ステップ401において、各パルス信号P1,P2,P3にエッジが検出されない場合(ステップ401:NO)には、ステップ402以降の処理は実行されない。
【0079】
また、本実施形態のマイコン21は、そのステアリングセンサ16から取得する正弦信号S_sin及び余弦信号S_cos、並びに三相パルス生成器30から取得する三相のパルス信号P1,P2,P3についての異常判定機能を備えている。
【0080】
詳述すると、第1の異常判定手段としてのマイコン21は、その取得する正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosの何れか一方のみが変化する状態にある場合には、これら正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosは異常であると判定する。
【0081】
具体的には、図11のフローチャートに示すように、マイコン21は、正弦信号S_sin(の値V1)に変化があるか否かを判定し(ステップ501)、変化のある場合(ステップ501:YES)には、余弦信号S_cos(の値V2)にも変化があるか否かを判定する(ステップ502)。そして、余弦信号S_cosに変化がある場合(ステップ502:YES)には正常であると判定し(ステップ503)、変化のない場合(ステップ502:NO)には異常であると判定する(ステップ504)。
【0082】
一方、上記ステップ501において、正弦信号S_sinが一定である場合(ステップ501:NO)には、続いて余弦信号S_cosも一定であるか否かを判定する(ステップ505)。そして、余弦信号S_cosが一定である場合(ステップ505:YES)には正常であると判定し(ステップ503)、一定ではない場合(ステップ505:NO)には異常であると判定する(ステップ504)。
【0083】
一方、第2の異常判定手段としてのマイコン21は、三相のパルス信号P1,P2,P3の各出力レベルを示す上記3bit合計値Vsumに基づいて、その異常を判定する。
具体的には、図12のフローチャートに示すように、マイコン21は、3bit合計値Vsumを取得すると(ステップ601)、その値が「4」又は「6」であるか否かを判定する(ステップ602)。そして、3bit合計値Vsumが「4」又は「6」である場合(ステップ602:YES)には、各パルス信号P1,P2,P3は異常であると判定し(ステップ603)、それ以外の値である場合(ステップ602:NO)には、正常であると判定する(ステップ604)。
【0084】
即ち、図6に示すように、3bit合計値Vsumは、三相のパルス信号P1,P2,P3の各エッジに対応する所定の回転角間の各領域(第1領域〜第6領域)にそれぞれ対応する固有の値として「7」「3」「2」「0」「1」「5」の6つの値をとる。つまり、パルス信号P1,P2,P3が正常であるならば、その3bitの二進数により表現される「0」〜「7」のうちの残る二つの値、即ち「4」又は「6」を示すことはない。従って、3bit合計値Vsumが「4」又は「6」である場合には、各パルス信号P1,P2,P3が異常であると判定することができる。
【0085】
本実施形態のECU11(マイコン21)は、基本的には、上記正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づき検出される第1の操舵角としての操舵角θsを用いて、そのパワーアシスト制御、詳しくは、その各種補償制御を実行する。そして、上記異常判定により、マイコン21が取得する正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosが異常であると判定された場合において、三相のパルス信号P1,P2,P3が正常である場合には、これら各パルス信号P1,P2,P3に基づき検出される第2の操舵角としての第2操舵角θs´に用いることにより、そのパワーアシスト制御を継続する。
【0086】
即ち、マイコン21による正弦信号S_sin及び余弦信号S_cos(の出力レベル)の取得は、必然的にA/D変換を介したものとなる。従って、ステアリングセンサ16からの出力段階では異常がない場合でも、そのA/D変換の際に異常が生ずることがあり得る(例えばA/D変換器(回路)の故障等)。
【0087】
しかしながら、各パルス信号P1,P2,P3の取得に際してA/D変換は不要である。そのため、正常な正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosが取得できない場合であっても、各パルス信号P1,P2,P3については正常に取得できる場合がある。そして、本実施形態では、このような場合、上記のように、そのパワーアシスト制御に用いる操舵角(θs,θs´)を切替えてパワーアシスト制御(の各種補償制御)を継続することによって、その優れたステアリング特性及び操舵フィーリングの維持を図る構成となっている。
【0088】
次に、本実施形態における正弦信号S_sin及び余弦信号S_cos、並びに三相のパルス信号P1,P2,P3についての異常判定、及びその判定結果に基づくパワーアシスト制御に用いる操舵角(θs,θs´)の切換えの処理手順について説明する。
【0089】
図13のフローチャートに示すように、マイコン21は、先ず正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosについての異常判定を実行し(ステップ701)、続いて三相のパルス信号P1,P2,P3についての異常判定を実行すると(ステップ702)、次に正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosが異常であるか否かを判定する(ステップ703)。そして、正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに異常のない場合(ステップ703:NO)には、当該正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づき検出される第1の操舵角としての操舵角θsを用いてパワーアシスト制御を実行する(通常制御、ステップ704)。
【0090】
一方、上記ステップ703において、正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosは異常であると判定した場合(ステップ703:YES)には、続いて三相のパルス信号P1,P2,P3が異常であるか否かを判定する(ステップ705)。そして、これらの各パルス信号P1,P2,P3に異常のない場合(ステップ705:NO)には、当該各パルス信号P1,P2,P3に基づき検出される第2の操舵角としての第2操舵角θs´を用いてパワーアシスト制御を継続する(通常制御、ステップ706)。
【0091】
そして、上記ステップ705において、各パルス信号P1,P2,P3は異常であると判定した場合(ステップ705:YES)には、そのパワーアシスト制御における操舵角(θs,θs´の両方)の使用を停止する(ステップ707)。
【0092】
以上、本実施形態によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
(1)マイコン21は、そのステアリングセンサ16から取得する正弦信号S_sin及び余弦信号S_cos、並びに三相パルス生成器30から取得する三相のパルス信号P1,P2,P3についての異常判定機能を備える。
【0093】
上記構成によれば、より精度よく、その操舵角検出に生じた障害を検知することができる。そして、その障害が発生した要因の推定も可能になる。具体的には、例えば、正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosが異常である場合において、各パルス信号P1,P2,P3が正常である場合には、デジタル処理装置であるマイコン21が、その正弦信号S_sin及び余弦信号S_cos(の出力レベル)を取得する際に行なうA/D変換(A/D変換器(回路))に問題があると推定することができる。また、パルス信号P1,P2,P3のみが異常である場合には、その三相パルス生成器30が故障したと推定することができる。そして、正弦信号S_sin及び余弦信号S_cos、並びに各パルス信号P1,P2,P3がともに異常である場合には、ステアリングセンサ16が故障したものと推定することができる。
【0094】
(2)マイコン21は、3bit合計値Vsumの値が「4」又は「6」である場合には、各パルス信号P1,P2,P3が異常であると判定する。
即ち、各パルス信号P1,P2,P3が正常である場合、その3bit合計値Vsumが取り得る値は、各パルス信号P1,P2,P3の各エッジに対応する所定の回転角間の各領域(第1領域〜第6領域)にそれぞれ対応した6つの値であり、残る二つの値、即ち「4」又は「6」となることはない。従って、上記構成によれば、簡素な構成にて、容易に各パルス信号P1,P2,P3の異常を判定することができる。
【0095】
(3)ECU11(マイコン21)は、基本的に正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づき検出される第1の操舵角としての操舵角θsを用いて、そのパワーアシスト制御を実行する。そして、正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosが異常であると判定された場合において、三相のパルス信号P1,P2,P3が正常である場合には、これら各パルス信号P1,P2,P3に基づき検出される第2の操舵角としての第2操舵角θs´に用いることにより、そのパワーアシスト制御を継続する。
【0096】
即ち、その操舵角検出に生じた障害の要因が、デジタル処理装置であるマイコン21が、その正弦信号S_sin及び余弦信号S_cos(の出力レベル)を取得する際に行なうA/D変換にあるならば、各パルス信号P1,P2,P3に基づく第2操舵角θs´の検出については、何らの障害もない。従って、上記構成によれば、その優れたステアリング特性及び操舵フィーリングを継続的に維持することができる。
【0097】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、本発明を所謂コラム型のEPS1に具体化したが、本発明は、所謂ピニオン型やラックアシスト型のEPSに適用してもよい。
【0098】
・上記各実施形態では、本発明をステアリングセンサ16としてコラムシャフト3aに設けられた回転角センサが出力する正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づいて、ステアリング2に生じた操舵角θsを検出する構成に具体化した。しかし、これに限らず、本発明は、図14及び図15に示すEPS40のように、そのEPSアクチュエータ41の駆動源であるモータ42の回転角θmを換算することにより操舵角θsを検出する構成に適用してもよい。
【0099】
即ち、このEPS40では、モータ42にブラシレスモータが採用されており、第1の回転角検出手段としてのECU43(マイコン44)は、そのモータ42に設けられた回転角センサ(モータレゾルバ)45が出力する正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosに基づいて同モータ42の回転角θmを検出する。尚、マイコン44は、回転角θmとともに、各電流センサ46u,46v,46wによりモータ42の実電流である各相電流値Iu,Iv,Iwを検出する。そして、マイコン44は、EPSアクチュエータ41を構成する減速機構13の減速比に基づいて、そのモータ42の回転角θmを、ステアリング2が設けられたステアリングシャフト3(コラムシャフト3a)の回転角に換算することにより、そのステアリング2に生じた操舵角θsを検出する。
【0100】
このような構成では、そのモータレゾルバを構成する回転角センサ45が出力する正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosを、その三相パルス生成器30の入力とするとよい。これにより、上記各実施形態と同様の三相のパルス信号P1,P2,P3を生成し、及び当該各パルス信号P1,P2,P3に基づく操舵角検出を行なうことができる。尚、この場合、第2の操舵角としての第2操舵角θs´を演算する際にも、減速機構13の減速比を考慮した換算処理が必要となることは言うまでもない。
【0101】
・上記各実施形態では、マイコン21は、三相パルス生成器30の出力する各パルス信号P1,P2,P3について、その出力レベルが「Hi」である場合を「1」、「Lo」である場合を「0」とする3bit信号として認識する。そして、3bit合計値Vsumが、三相のパルス信号P1,P2,P3の各エッジに対応する所定の回転角間の各領域(第1領域〜第6領域)にそれぞれ対応する固有の値として「7」「3」「2」「0」「1」「5」の6つの値をとるようにした(図6参照)。しかし、これに限らず、その3bit信号の「0」「1」が反対となるように、マイコン21及び三相パルス生成器30を構成してもよい。尚、この場合、上記第2の実施形態における各パルス信号P1,P2,P3の異常判定において異常値として使用する値、即ち「4」「6」は、それぞれ「3」「1」となる。
【0102】
・上記各実施形態では、三相パルス生成器30は、抵抗値の等しい4つの抵抗R1〜R4を直列接続してなる分圧回路31と、その各抵抗R1〜R4間の各分圧に等しい出力レベルを有した各分圧信号(Vh,Vm,Vl)をそれぞれ入力とする3つのコンパレータ32,33,34とを備えてなることしたが、その構成はこれに限るものではない。
【0103】
・また、分圧回路を構成する抵抗、及びそれに対応コンパレータを変更することにより、2相、又は4相以上のパルス信号を出力可能なパルス生成器を設けてもよい。但し、4相を超えるパルス信号の多重化は、構成の複雑化、並びに演算負荷及び消費電力の増大を伴う一方、二相化した場合には、その異常判定が困難となることを考慮すべきである。
【0104】
・上記第2の実施形態では、正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosの何れか一方のみが変化する状態にある場合に、当該正弦信号S_sin及び余弦信号S_cosは異常であると判定したが、その異常判定の方法はこれに限るものではない。
【0105】
・また、上記第2の実施形態では、3bit合計値Vsumの値が「4」又は「6」である場合には、各パルス信号P1,P2,P3が異常であると判定したが、この各パルス信号P1,P2,P3の異常判定についてもまた、これに限るものではない。
【符号の説明】
【0106】
1,40…電動パワーステアリング装置(EPS)、2…ステアリング、3…ステアリングシャフト、3a…コラムシャフト、10,41…EPSアクチュエータ、11,43…ECU、12,42…モータ、13…減速機構、16…ステアリングセンサ、21,44…マイコン、22…駆動回路、30…三相パルス生成器、31…分圧回路、32,33,34…コンパレータ、45…回転角センサ、S_sin…正弦信号、V1…値、S_cos…余弦信号、V2…値、P1,P2,P3…パルス信号、θs…操舵角、θs´…第2操舵角、θe…電気角、θe_m…電気角前回値、N…カウント値、n…第2カウント値、θe_ab…電気角換算絶対角、θe_ab´…第2電気角換算絶対角、α…電気角倍率、θ0…操舵角初期値、R1〜R4…抵抗、Vb…電圧、Vh…高電位信号、Vm…中電位信号、Vl…低電位信号、θm…回転角。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の回転角に応じて出力レベルが変化する正弦信号及び余弦信号を出力する回転角センサと、
前記正弦信号及び余弦信号に基づいて前記回転角を検出する第1の回転角検出手段と、
前記正弦信号及び余弦信号に基づいて、所定の前記回転角に対応したエッジを有するとともに、それぞれの前記所定の回転角が互いに重複することなく且つ均等間隔となるように設定された三相のパルス信号を生成するパルス信号生成手段と、
前記各パルス信号に基づいて前記回転角を検出する第2の回転角検出手段と、
を備えた回転角検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転角検出装置において、
前記パルス信号生成手段は、
抵抗値の等しい4つの抵抗を直列接続してなるとともに前記正弦信号及び余弦信号の最大値に相当する電圧が印加される分圧回路と、
前記分圧回路が出力する各分圧信号のうちの高電位信号と前記余弦信号とを入力とする第1のコンパレータと、
前記分圧回路が出力する各分圧信号のうちの中電位信号と前記正弦信号とを入力とする第2のコンパレータと、
前記分圧回路が出力する各分圧信号のうちの低電位信号と前記余弦信号とを入力とする第3のコンパレータと、を備えてなること、を特徴とする回転角検出装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の回転角検出装置において、
前記第1の回転角検出手段は、該第1の回転角検出手段の停止時に前記第2の回転角検出手段が検出を継続した前記各パルス信号に基づく第2の回転角により、その起動時に演算する前記回転角の初期値を補正すること、を特徴とする回転角検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の回転角検出装置において、
前記エッジを検出して前記第2の回転角検出手段を起動する起動手段を備えること、
を特徴とする回転角検出装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の回転角検出装置において、
前記第1の回転角検出手段が取得する前記正弦信号及び余弦信号の異常を判定する第1の異常判定手段と、
前記第2の回転角検出手段が取得する前記各パルス信号の異常を判定する第2の異常判定手段とを備えること、を特徴とする回転角検出装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の回転角検出装置を用いてステアリングに生じた操舵角を検出する電動パワーステアリング装置。
【請求項7】
請求項5に記載の回転角検出装置を用いてステアリングに生じた操舵角を検出する電動パワーステアリング装置であって、
前記正弦信号及び余弦信号に基づき検出される第1の操舵角を用いてパワーアシスト制御を実行するとともに、
前記第1の回転角検出手段が取得する前記正弦信号及び余弦信号が異常である場合において、前記第2の回転角検出手段が取得する前記各パルス信号が正常である場合には、該各パルス信号に基づき検出される第2の操舵角を用いて前記パワーアシスト制御を継続すること、を特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項1】
検出対象の回転角に応じて出力レベルが変化する正弦信号及び余弦信号を出力する回転角センサと、
前記正弦信号及び余弦信号に基づいて前記回転角を検出する第1の回転角検出手段と、
前記正弦信号及び余弦信号に基づいて、所定の前記回転角に対応したエッジを有するとともに、それぞれの前記所定の回転角が互いに重複することなく且つ均等間隔となるように設定された三相のパルス信号を生成するパルス信号生成手段と、
前記各パルス信号に基づいて前記回転角を検出する第2の回転角検出手段と、
を備えた回転角検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転角検出装置において、
前記パルス信号生成手段は、
抵抗値の等しい4つの抵抗を直列接続してなるとともに前記正弦信号及び余弦信号の最大値に相当する電圧が印加される分圧回路と、
前記分圧回路が出力する各分圧信号のうちの高電位信号と前記余弦信号とを入力とする第1のコンパレータと、
前記分圧回路が出力する各分圧信号のうちの中電位信号と前記正弦信号とを入力とする第2のコンパレータと、
前記分圧回路が出力する各分圧信号のうちの低電位信号と前記余弦信号とを入力とする第3のコンパレータと、を備えてなること、を特徴とする回転角検出装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の回転角検出装置において、
前記第1の回転角検出手段は、該第1の回転角検出手段の停止時に前記第2の回転角検出手段が検出を継続した前記各パルス信号に基づく第2の回転角により、その起動時に演算する前記回転角の初期値を補正すること、を特徴とする回転角検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の回転角検出装置において、
前記エッジを検出して前記第2の回転角検出手段を起動する起動手段を備えること、
を特徴とする回転角検出装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の回転角検出装置において、
前記第1の回転角検出手段が取得する前記正弦信号及び余弦信号の異常を判定する第1の異常判定手段と、
前記第2の回転角検出手段が取得する前記各パルス信号の異常を判定する第2の異常判定手段とを備えること、を特徴とする回転角検出装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の回転角検出装置を用いてステアリングに生じた操舵角を検出する電動パワーステアリング装置。
【請求項7】
請求項5に記載の回転角検出装置を用いてステアリングに生じた操舵角を検出する電動パワーステアリング装置であって、
前記正弦信号及び余弦信号に基づき検出される第1の操舵角を用いてパワーアシスト制御を実行するとともに、
前記第1の回転角検出手段が取得する前記正弦信号及び余弦信号が異常である場合において、前記第2の回転角検出手段が取得する前記各パルス信号が正常である場合には、該各パルス信号に基づき検出される第2の操舵角を用いて前記パワーアシスト制御を継続すること、を特徴とする電動パワーステアリング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−80841(P2011−80841A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232616(P2009−232616)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
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