説明

圧電振動デバイス

【課題】 電気的特性が安定し、かつ実用的な機械的接合を行うことのできる、超小型化に対応した圧電振動デバイスを提供する。
【解決手段】 表面実装型水晶振動子は、水晶振動板(圧電振動板)1と当該水晶振動板を収納するパッケージ2と、当該パッケージを気密封止するリッド3とからなる。水晶振動板2は金属微粒子ペースト接合材Sによりセラミックパッケージの接続電極12,13に接合される。金属微粒子ペースト接合材は加熱により、表面にある分散剤が除去される金属微粒子とバインダ樹脂を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動体無線機器等に用いられる水晶振動子等の圧電振動デバイスに関し、特に圧電振動板の電気的機械的接合に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在汎用されている圧電振動子は圧電振動板の表裏面に励振電極が形成された構成であり、例えばATカット水晶振動板を用いた厚みすべり振動子がよく用いられている。周知のとおり、ATカット水晶振動板は高周波数に対応させることができ、その板厚で共振周波数が決定され、板厚と共振周波数は反比例する。従って、近年の移動体無線機器等において要求される高周波数化に対応する場合、高度な研磨技術を駆使した超薄の圧電振動板が用いられている。
【0003】
このような極薄の圧電振動板をパッケージに搭載する際は、例えば導電フィラー を添加したシリコーン樹脂系接合材を用いる。このようなシリコーン樹脂接合材は硬化後の硬度が比較的柔らかく、パッケージとの導電接合に用いた場合、外的要因による衝撃を効率よく緩和し、圧電振動デバイスの耐衝撃性向上に寄与していた。例えば、WO01/67600(特許文献1)は、このようなシリコーン系樹脂の耐衝撃性に着目してなされた発明であり、水晶振動板とパッケージとをシリコーン系樹脂接合材により接合した構成が開示されている。
【0004】
しかしながら圧電振動デバイスが用いられる電子機器の小型化により、圧電振動デバイスも超小型化が要求され、従って圧電振動板とパッケージとの接合領域も極めて小さくなっている。このような接合領域の狭小化は機械的な接合強度が低下するとともに、樹脂比率が高くなる、いわゆる樹脂リッチの問題により導電性能が低下する問題があった。一般的には機械的な接合強度を確保しようとする場合、樹脂比率を増加させ、導電フィラーを相対的に減少させることになる。この場合接合材の抵抗値が高くなり、導電フィラーを添加した樹脂接着剤においては機械的接合性と電気的接合性はトレードオフの関係となる問題があった。特に樹脂リッチになった場合、高温環境化において抵抗値が増加するという問題があった。これは環境温度上昇により樹脂が膨張し内部の導電フィラー間の接触機会が低下するためであると考えられ、このような抵抗値の変動は圧電振動デバイスの特性を低下させ、要求仕様を満たさないことがあった。
【0005】
このような問題を解決するために、微小領域で確実な導電接合を行う方法として接合材として金または半田等の金属バンプを用いる方法がある。これは圧電振動板の引出電極とパッケージの接続電極とを金属バンプを介して金属間接合するものであり、微小領域で電気的機械的接合を行うことができる。例えば特開2000−68777(特許文献2)には接続電極に金属バンプを形成し、圧電振動板の引出電極とを超音波溶着により電気的機械的接合する構成が開示されている。
【0006】
ところがこのような金属バンプを用いた構成は、前述のように機械的に強固な接合を行うために緩衝性が低く、外部衝撃や周辺部材との温度膨張係数との差による熱歪みの影響を受け、圧電振動デバイスとしての特性が低下することがあった。
【0007】
ところで近年金属微粒子の低温焼結(融着)性および焼結後の緻密性(導電性)に着目して、当該金属微粒子を用いた導電性ペーストが開発されている。例えば特開2001−225180(特許文献3)には、金属の接合方法として表面に有機系の物質が被覆された金属微粒子を有機溶媒中に分散させたペーストを用いて導電接合する方法が開示されている。
【特許文献1】WO01/67600
【特許文献2】特開2000−68777
【特許文献3】特開2001−225180
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは圧電振動板とパッケージとの接合において、電気的特性が安定し、かつ実用的な機械的接合を行うことのできる、超小型化に対応した圧電振動デバイスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は圧電振動板のパッケージ(ベース)への接合について鋭意検討した結果、上述のような金属微粒子を用いた導電ペーストを圧電振動板とパッケージ(ベース)との接合に適用することを発意したものであり、次の構成により上記問題点を解決した。
【0010】
すなわち、請求項1に示すように、少なくとも一表面に励振電極および当該励振電極を外部に導出する引出電極が形成された圧電振動板と、当該圧電振動板を気密収納し、前記引出電極と導電接合される接続電極を有するパッケージと、当該パッケージの開口部分と気密接合されるリッドとからなる圧電振動デバイスであって、前記圧電振動板の引出電極と前記接続電極とは、平均粒径が1〜100nmで、表面には有機系被膜により被覆され、加熱により当該有機系被膜が除去される金属微粒子を有機溶媒中に分散させた金属微粒子ペースト接合材により接合したことを特徴とする構成である。
【0011】
また本発明はリード端子付きの圧電振動デバイスにも適用することができる。請求項2に示すように、少なくとも一表面に励振電極および当該励振電極を外部に導出する引出電極が形成された圧電振動板と、当該圧電振動板の引出電極と導電接合される複数の独立したリード端子が貫通形成されたベースと、当該ベースと気密接合され前記圧電振動板を気密封止するキャップとからなる圧電振動デバイスであって、前記圧電振動板の引出電極と前記リード端子とは、平均粒径が1〜100nmで、表面には有機系被膜により被覆され、加熱により当該有機系被膜が除去される金属微粒子を有機溶媒中に分散させた金属微粒子ペースト接合材により接合したことを特徴とする構成である。リード端子は例えば金属線からなる導電端子であり、その表面には金、銀、ニッケル等の金属膜が形成されていることが好ましい。
【0012】
また本発明は、圧電振動板のみならず他の電子部品素子をパッケージに接合する場合にも適用することができる。すなわち、請求項3に示すように、少なくとも一表面に励振電極および当該励振電極を外部に導出する引出電極が形成された圧電振動板と、当該圧電振動板と回路を構成する電子部品素子と、これら圧電振動板と電子部品素子とを気密収納し、前記引出電極および電子部品素子の電極と各々導電接合される接続電極を有するパッケージと、当該パッケージの開口部分と気密接合されるリッドとからなる圧電振動デバイスであって、前記各々の導電接合は、平均粒径が1〜100nmで、表面には有機系被膜により被覆され、加熱により当該有機系被膜が除去される金属微粒子を有機溶媒中に分散させた金属微粒子ペースト接合材により接行うことを特徴とする構成である。
【0013】
この場合、当該接合材の複数箇所への塗布を一度に行い、順次電子部品素子、圧電振動板を搭載して加熱接合を行ってもよい。また最初に一部の素子(圧電振動デバイスや電子部品素子)を金属微粒子ペースト接合材により加熱接合した後、他の残りの素子について金属微粒子ペースト接合材を塗布し、加熱接合するようにしてもよい。
【0014】
なお、請求項1や請求項3の構成において、矩形状の圧電振動板を長辺方向の一端で片持ち支持する場合に圧電振動板の水平搭載を確保する補助支持材(枕材)を同他端に形成することがあるが、このような補助支持材を本発明に開示した金属微粒子ペースト接合材により形成してもよい。当該補助支持材の形成は圧電振動板の他端に対応する位置、例えばパッケージの一部あるいは電子部品素子上部に金属微粒子ペースト接合材を塗布し、加熱により固化させればよい。このような補助支持材にはバインダ樹脂を含む金属微粒子ペースト接合材を適用すると緩衝機能を有するので好ましい。
【0015】
上述の金属微粒子ペースト接合材に含有される金属微粒子は例えば、金、銀、銅、ニッケル、チタン等の金属材料を例示することができるが、その微細形状が球状やだ円形状または多角形状等の多面あるいは曲率面を有する構成であると好ましい。これは多面または曲率を持った表面であると原始的な拡散すなわち融着が各方向に均一に生じるためであり、接合時において好ましい融着状態を得ることができる。
【0016】
なお、特許文献3にも開示されているように、当該金属微粒子の直径は小さいほうが融着が進みやすいが、金属微粒子表面への有機系被膜の形成作業を考慮すると必要以上に微粒子化する必要はなく、1〜100nmの直径を有するもので有ればよい。1nm以下であると金属微粒子間の融着が激しいため取り扱いが難しくなり、また100nm以上であると金属微粒子間の融着性が低下する。なお、導電接合領域は狭小化した場合、微小領域での確実な電気的な接合が行われることが必要であるので、粒子径は小さい方が好ましい。金属および有機系被膜の種類にもよるが、平均粒径が2〜30nmの金属微粒子であると圧電振動デバイスの接合においては、有機系被膜を形成した金属微粒子の取り扱いと加熱時の接合性(微小領域での接合性の確保)のバランスがとれ好ましい。
【0017】
本発明に用いる金属微粒子ペースト接合材は、金属微粒子の表面に有機系被膜が形成され、当該有機系皮膜は金属微粒子の融着を抑制する分散剤としての役割を担っており、当該分散剤が金属微粒子を被覆している状態となっている。また当該有機系被膜は所定の温度環境下におくことで蒸散等により除去される構成であり、当該有機系被膜が除去されることにより、抑制されていた金属微粒子同士の融着が起こり、これが加速される。また金属微粒子の融着は前記圧電振動板の引出電極と前記接続電極との間でも起こり、最終的には両電極が融着し凝集した金属微粒子により金属間接合がなされる。従って微小領域で強固な導電接合を行うことができ、小型化した圧電振動デバイスに形成された複数の電極が相互に干渉することなく信頼性の高い接合を行うことができる。
【0018】
当該金属微粒子ペースト接合材は有機溶媒中に分散された構成であり、当該溶媒の粘度やチクソ性等を選択することによりペーストのぬれ性を調整することができる。また前記有機系被膜は加熱により蒸散等により除去されるとともに、当該有機溶媒についても加熱により除去される材料を用いることにより良好な金属間接合状態を得ることができる。また後述するように、前記有機溶媒に代えてあるいは有機溶媒に加えてバインダ樹脂を添加することにより硬化後において、当該バインダ樹脂が接合材として残ることにより、緩衝性能を向上させる構成としてもよい。
【0019】
金属微粒子ペースト接合材は、上述したとおり融着した後は金属微粒子による金属間接合を得ることができるので、従来の導電フィラーを添加した樹脂接合材を用いた樹脂による機械的接合に比べて接合材の占める厚さを極めて薄くすることができ、またその厚さの制御も比較的容易である。
【0020】
従って、請求項4に示すように、圧電振動板には複数の励振電極および当該励振電極に対応した引出電極が形成され、少なくともこれら引出電極の一つと接続電極との接続を、前記金属微粒子ペースト接合材によりに接合した構成とすることにより、当該金属微粒子ペースト接合材により接合した領域においては、圧電振動板の機械的接合が安定しかつ電気抵抗の小さい導電接合をすることができる。
【0021】
さらに、請求項5に示すように、上述の各構成において、圧電振動板には複数の励振電極および当該励振電極に対応した引出電極が形成され、これら引出電極と接続電極との接続を、前記金属微粒子ペースト接合材により接合した構成としてもよい。
【0022】
請求項5の構成によれば、圧電振動板と引出電極と接続電極との複数の接続を、前記金属微粒子ペースト接合材により接合した構成であるので、接合領域への金属微粒子ペースト接合材の供給作業が容易で、また圧電振動板の機械的接合がより安定しかつ電気抵抗のより小さい導電接合をすることができる。
【0023】
本発明は複数の引出電極と接続電極の接合点がある場合、金属微粒子ペースト接合材による接合と他の接合方法を組みあわせることについても開示している。例えば、請求項6に示すように、圧電振動板には複数の励振電極および当該励振電極に対応した引出電極が形成され、少なくともこれら励振電極の一つと接続電極との接続を、前記金属微粒子ペースト接合材により接合し、他の励振電極と接続電極との接続を、金属バンプによる金属間接合を行ったことを特徴とする構成としてもよい。
【0024】
金属バンプによる接合は各電極間にバンプ(小金属塊)を介在させて金属間接合により両電極を導電接合する構成であり、小領域で強固な機械的接合並びに電気的接合を行うことができる。しかしながら背景技術の項でも記載したように緩衝性能が低く、環境温度変動による熱歪みを吸収することはできない。請求項6によれば、上述のように緩衝性を有する金属微粒子ペースト接合材と金属バンプによる接合を組みあわせることにより、電気的機械的接合性を向上させ、また緩衝性も良好な圧電振動デバイスを得ることができる。
【0025】
また請求項7に示すように、上述の各構成において、前記金属微粒子ペースト接合材の金属微粒子と、前記引出電極および接続電極の接合面の金属膜とが同種金属であることを特徴とする構成としてもよい。
【0026】
金属微粒子を引出電極および接続電極の接合面の金属膜と同種金属とすることにより、加熱接合時に両者の融着性を促進することができ、両者の接合性を向上させることができる。また、接合後も両者の熱膨張係数が等しいために、接合後の雰囲気温度変動による接合領域の損傷事故をなくすることができる。
【0027】
さらに請求項8に示すように、上述の各構成において、前記金属微粒子ペースト接合材は複数層からなり、当該層の一部は銅を金属微粒子として用いた金属微粒子ペーストであることを特徴とする構成としてもよい。
【0028】
銅は延性に優れ熱緩衝性能が高い。従って金属微粒子の一部層に熱緩衝性が高い銅を用いることにより、接合後の雰囲気温度が変動しても、銅による緩衝性能により接合領域の損傷事故をなくすることができる。
【0029】
さらに本発明は請求項9に示すように、前記金属微粒子ペースト接合材には前記圧電振動板の引出電極と前記接続電極とを機械的接合するバインダ樹脂が含まれていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の圧電振動デバイスについても開示している。このような構成は圧電振動板の接合や電子部品素子の接合、あるいは前述の補助支持材に適用することができる。
【0030】
当該バインダ樹脂を含む金属微粒子ペースト接合材は金属微粒子がバインダ樹脂内に分散され、加熱により金属微粒子同士が融着する。この各粒子が融着した状態は微視的にみて各粒子が鎖状につながった状態になりやすい。従って、樹脂中に鎖状の粒子が存在する構成であるので、機械的には緩衝性のある接合状態となっており、電気的にも実用的な導通性を得ることができる。
【0031】
ところで本発明は金属微粒子の融着性を制御する他の方法についても開示している。例えば請求項10には、前記金属微粒子ペースト接合材には金属微粒子に対する還元剤が添加されていることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の圧電振動デバイスについて開示しており、当該還元剤の例として、請求項11に示すように、金属微粒子ペースト接合材に対して1〜10重量%添加したパラジウムを例示している。
【0032】
金属微粒子は例えば金、銀、銅、ニッケル、チタン等の金属材料を例示することができるが、これら金属に対して還元剤を添加することにより、融着性を向上させることができる。パラジウムはこれら金属に対して還元剤として機能する。すなわち各金属微粒子表面の融着の防げとなる酸化被膜を除去し、金属微粒子の表面を活性化させ融着性を向上させる。
【0033】
なお、パラジウムの粒径を微小とすることにより、その還元剤としての活性をあげることができ、請求項12に示すように、前記パラジウムの平均粒径を1〜60nmにするとよい。平均粒径が60nm以下とすることにより還元剤としての活性を高めることができるとともに、1nm以上とすることにより融着性が高くなりすぎる等の問題を抑制し、その取り扱いを実用的にすることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、電気的特性が安定し、かつ実用的な機械的接合を行うことのできる、超小型化に対応した圧電振動デバイスを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明による好ましい実施の形態について図面に基づいて説明する。
本発明による第1の実施の形態を表面実装型の水晶振動子を例にとり、図1および図2とともに説明する。図1は本実施の形態を示す断面図、図2は本実施の形態を示す平面図である。表面実装型水晶振動子は、水晶振動板(圧電振動板)1と当該水晶振動板を収納するパッケージ2と、当該パッケージを気密封止するリッド3とからなる。
【0036】
水晶振動板2は平板で矩形状のATカット水晶振動板であり、その表裏面には励振電極21,31(31は図示せず)が形成されている。当該各励振電極21,31は矩形形状であり、各励振電極から引出電極21a,31a(31aは図示せず)が水晶振動板の長辺方向一端の外縁に引き出されている。なお、当該水晶振動板2は電極形成前に大きなウェハを所定の厚さまで研磨し、その後多数個に分割したり、あるいは多数個の個片に分割した後、個々に研磨を行うことにより得ることができる。ウェハからの分割、切り出しはワイヤーソーによる切断やダイシング法あるいはレーザービームによる切断を行えばよい。また水晶振動板に形成された各電極材料は、例えば水晶振動板に接してクロムが形成され、その上部に金あるいは銀が形成された構成である。
【0037】
水晶振動板2を搭載するパッケージ1は、電極配線の施されたセラミックパッケージである。当該パッケージはアルミナ等を用い、上方が開口した箱形構成であり、パッケージ内部に形成された段差部には接続電極12,13が形成されている。また当該接続電極12,13は図示しない連結電極を介してパッケージ1の外部底面に形成された外部接続電極14,15に各々電気的接続されている。当該パッケージ1の各電極および開口部分にある金属膜層11の構成は、セラミック面にタングステンやモリブデンの厚膜層が形成され、その上面にニッケル層、さらにその上部に金層がそれぞれメッキ等の手法により形成されている。
【0038】
水晶振動板2は金属微粒子ペースト接合材Sによりセラミックパッケージの接続電極12,13に接合される。本実施の形態においては、金属微粒子ペースト接合材として、バインダ樹脂にハリマ化成社製ナノペースト(商品名)を含んだ構成のものを用いている。当該接合材に用いる金属微粒子は銀の金属微粒子を用いており、その平均粒径は7μmである。また当該銀の金属微粒子の表面には加熱により除去される有機系被膜(分散剤)が形成されており、当該金属微粒子ペースト接合材はこれら有機系被膜を有する金属微粒子がエポキシ系樹脂からなる熱硬化性有機溶媒(バインダ)中に分散された構成である。
【0039】
なお、本実施の形態においては、バインダ樹脂の硬化温度と、金属微粒子の融着温度がほぼ同じになるよう調整しており、例えばこれら温度を約200℃に設定した場合は、当該温度まで加熱することにより、電気的機械的接合を同時にスムーズに行うことができる。
【0040】
接続電極12,13上に予め上記金属微粒子ペースト接合材Sを適量塗布し、その上部に水晶振動板の引出電極21a,31aが重なるように搭載する。必要に応じて引出電極21a,31a上にさらに塗布してもよい。この状態で加熱し金属微粒子ペースト接合材を硬化させかつ内部の金属微粒子を融着させる。この加熱は、真空雰囲気あるいは窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で行えばよい。これにより前述の金属微粒子表面に形成された有機系被膜は溶融し、隣接する金属微粒子との相互融着(焼結)が起こり、これが加速することにより、金属微粒子間および励振電極、接続電極に用いられる金属膜間で金属間結合が行われる。本実施の形態においては、有機溶媒が熱硬化して残るので補助的な接合を行うことができる。
【0041】
ところで、金属微粒子に金を用い、接続電極および引出電極の表面金属にも金を用いることにより、金どうしの同種金属の融着によって、金属間接合をスムーズに行わしめることができ、接合性が向上する。なお、他の同種金属の組み合わせであってもよい。
【0042】
接合が完了した後は、必要な安定化作業および洗浄作業を行い、真空雰囲気あるいは不活性ガス雰囲気中でリッド3と金属膜層11とを接合し、パッケージを気密封止する。気密封止方法は公知のシーム溶接、ビーム溶接あるいはろう材を用いた接合を用いればよい。
【0043】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、圧電振動板の接合あるいは電子部品素子の接合等について様々な変形例に適用することができる。図3は表面実装型の水晶振動子に関する第2の実施形態を示す断面図であり、水晶振動板2が長辺方向の両端で保持される両持ち構成を示している。なお、第1の実施の形態と同じ構造部分については同番号を用いて説明するとともに、一部説明を割愛している。
【0044】
水晶振動板2は平板で矩形状のATカット水晶振動板であり、その表裏面には励振電極(図示せず)が形成されている。当該各励振電極は矩形形状であり、水晶振動板の表面に形成された励振電極は引出電極により水晶振動板の長辺方向一端の外縁に引き出され、水晶振動板の裏面に形成された励振電極は引出電極により水晶振動板の長辺方向他端の外縁に引き出されている。なお水晶振動板に形成された各電極材料は、例えば水晶振動板に接してクロムが形成され、その上部に金あるいは銀が形成された構成である。
【0045】
水晶振動板2を搭載するパッケージ1は、電極配線の施されたセラミックパッケージである。当該パッケージはアルミナ等を用い、上方が開口した箱形構成であり、パッケージ内部に形成された長辺方向に対向して形成された段差部には接続電極16,17が形成されている。また当該接続電極16,17は図示しない連結電極を介してパッケージの外部底面に形成された外部接続電極18,19に各々電気的接続されている。当該パッケージの各電極および開口部分にある金属膜層11の構成は、セラミック面にタングステンやモリブデンの厚膜層が形成され、その上面にニッケル層、さらにその上部に金層がそれぞれメッキ等の手法により形成されている。
【0046】
本実施の形態においては、水晶振動板2の一方の引出電極が金属微粒子ペースト接合材Sにより導電接合され、他方は金属バンプBにより接合されている。従って、金属バンプにて導電接合する接続電極17上には予め1つまたは複数の金属バンプが形成されている。当該金属バンプは例えば金からなり、ワイヤボンディング技術を応用したワイヤバンプにより形成したり、金層を積層形成する等の手法により形成すればよい。
【0047】
また金属微粒子ペースト接合材Sは還元剤が添加された構成である。より詳しくは金属微粒子に銀を用い、還元剤として3重量%の割合でパラジウムを添加した金属微粒子ペースト接合材を用いている。当該パラジウムはその平均粒径が30nmと微小であり、融着時の活性を上げ、加熱接合時の接合強度を向上させることができる。
【0048】
なお、粒子径は1〜60nm程度のサイズを選択すると接合性と取り扱いのバランスがとれて好ましい。また添加量は1〜10重量%が好ましく1重量%以下であると還元剤としての能力が低下し、導電性が低下する可能性がある。また10重量%以上になると還元性能が過度になり、接合剤の早期硬化あるいは粘性が高くなり接合材供給時に不都合が生じる等、取り扱いが面倒になる可能性がある。
【0049】
そして、接続電極16上に予め上記金属微粒子ペースト接合材Sを適量塗布し、その上部に水晶振動板の引出電極が接続電極16,17に重なるように搭載する。この状態でまず接続電極17側の水晶振動板に対し超音波を印加することにより前記金属バンプを融着させ、導電接合を行う。超音波の印加は周知の超音波接合機を用いればよい。
【0050】
その後加熱し金属微粒子ペースト接合材を硬化させかつ内部の金属微粒子を融着させる。この加熱は、真空雰囲気あるいは窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で行えばよい。これにより前述の金属微粒子表面に形成された有機系被膜は溶融し、隣接する金属微粒子との相互融着(焼結)が起こり、これが加速することにより、還元剤による酸化抑制効果と相まって金属微粒子間および励振電極、接続電極に用いられる金属膜間で金属間結合が行われる。本実施の形態においては、バインダ樹脂を含有している金属微粒子ペースト接合材を用いているので、補助的な接合を行うことができる。また金属バンプによる強固な接合に対し樹脂による緩衝作用により各種歪みを緩和することができるので、表面実装型水晶振動子の特性を良好に保つことができる。
【0051】
本発明による第3の実施の形態について、表面実装型の水晶発振器を例にとり、図4とともに説明する。図4は表面実装型の水晶発振器を示す内部断面図であり、必要な内部配線の形成されたセラミックパッケージ4に水晶振動板と、当該水晶振動板2と発振回路を構成する集積回路素子(電子部品素子)Pを収納した構成である。
【0052】
セラミックパッケージ4は集積回路素子Pを収納する領域4aとその上方に水晶振動板2を収納する領域4bを有しており、これら各領域は空間的につながっている。領域4aの底部には複数の微小電極パッド44が形成されている。これら微小電極パッド44は集積回路素子Pを導電接合するもので、セラミックパッケージ内で適宜配線されている。領域4bには段差部上に接続電極42,43(43は図示せず)が形成されている。また堤部の上面には金属膜層41がパッケージの開口部分に周状に形成されている。
【0053】
水晶振動板2は第1の実施形態に示した構成と同様、平板で矩形状のATカット水晶振動板であり、その表裏面には励振電極21,31(31は図示せず)が形成されている。当該各励振電極21,31は矩形形状であり、各励振電極から引出電極21a,31a(31aは図示せず)が水晶振動板の長辺方向一端の外縁に引き出されている。
【0054】
また集積回路素子Pは直方体のチップ型であり、下面に複数の引出電極(図示せず)が形成されている。これら引出電極とセラミックパッケージの微小電極パッドが導電接合されることにより、パッケージ内に形成された配線により一部が水晶振動板2と電気的に接続され、水晶振動板2とともに発振回路等が形成される。
【0055】
集積回路素子Pを接合する際は、まず前記各微小電極パッド44上に金属微粒子ペースト接合材Sを塗布し、集積回路素子Pを搭載する。そして、当該金属微粒子ペースト接合材Sを所定温度に加熱することにより、電気的機械的接合を行う。なお、ここで用いる金属微粒子ペースト接合材は例えばエポキシ樹脂等の熱硬化型バインダ樹脂が入っているものでもよい。またバインダ樹脂にはエポキシ樹脂以外にシリコーン系樹脂やウレタン系樹脂あるいはポリイミド系樹脂を用いることができる。特にシリコーン系樹脂やウレタン系樹脂は比較的柔軟性に優れているので、緩衝性能を得ることができ、圧電振動デバイスとしての耐衝撃性向上に寄与する。
【0056】
また集積回路素子Pの接合においてはバインダ樹脂の入っていない金属微粒子ペースト接合材を用い、水晶振動板の接合においてはバインダ樹脂の入っているものを用いてもよいし、また接合条件によってはその逆の組み合わせを適用してもよい。
【0057】
さらに集積回路素子Pと水晶振動板2の金属微粒子ペースト接合材による加熱接合を同時に行ってもよい。すなわち、金属微粒子ペースト接合材を微小電極パッド44と接続電極42,43上に塗布し、集積回路素子Pと水晶振動板2をそれぞれの電極に搭載し、一括加熱により電気的機械的接合を行ってもよい。
【0058】
なお、図4においては、集積回路素子Pの上面に補助支持材S1が形成されている。この補助支持材S1は水晶振動板の支持側とは反対側に対応する位置に配置するもので、予め集積回路素子上に形成したシリコーン樹脂からなる緩衝支持体であってもよいし、上述の金属微粒子ペースト接合材を用いてもよい。この場合、集積回路素子Pを微小電極パッド44に搭載後、集積回路素子Pの上面の所定位置に金属微粒子ペースト接合材を塗布し、集積回路素子接合時の加熱により硬化させてもよい。
【0059】
接合が完了した後は、必要な安定化作業および洗浄作業を行い、真空雰囲気あるいは不活性ガス雰囲気中でリッド3と金属膜層11とを接合し、パッケージを気密封止する。気密封止方法は公知のシーム溶接、ビーム溶接あるいはろう材を用いた接合を用いればよい。
【0060】
本発明はリード端子を有するベースに圧電振動板を接合した構成についても適用することができる。第4の実施の形態はこのリード端子を有するベースに適用した例を示すもので、図5(a)(b)を例にとり説明する。図5各図はリード端子を有するベースに水晶振動板を金属微粒子ペースト接合材により接合した例を示す図であり、図5(a)は正面から、図5(b)は側面から見た図である。
【0061】
ベース6は中央部分が上下に貫通したシェル61内に絶縁ガラス62を充填し、このガラス62に線状のリード端子63,64を上下に貫通させた構成である。これによりインナーリード部631,641がベース上面に突出した構成となっている。当該インナーリード部は後述の水晶振動板と面接触させるために平板形状に加工する等、水晶振動板との接触部分を平面加工してもよい。
【0062】
ベースに接する水晶振動板5は屈曲モードで振動する音叉型水晶振動板であり、図示していないが音叉部の表裏および側面には一対の励振電極が形成され、基部の一面にそれぞれ引き出されている。
【0063】
水晶振動板5のベースとの接合部分あるいはベースのインナーリード部631,641に金属微粒子ペースト接合材Sを塗布し、両者を接触させた状態で加熱接合する。当該構成においてはリード端子が緩衝機能を有しているので、バインダ樹脂による緩衝作用をさほど必要としない。よって、当該接合に用いる金属微粒子ペースト接合材はバインダ樹脂を含有しないものであってもよい。
【0064】
なお、図示していないが、水晶振動板6とリード端子を導電接合した後は、有底筒状のキャップをベースに圧入することにより、水晶振動板を被覆し、気密封止することができる。
【0065】
なお、金属微粒子ペースト接合材の接続電極等への塗布をインクジェット印刷法により行ってもよい。ンクジェット印刷法は例えば圧電素子による機械的な振動によりノズル内のインクを微小吐出させ、所定のパターンを描画する印刷方法であるが、接合材の粘度を低くする等、微小吐出に適した液状に特性調整する必要がある。インクジェット印刷法を用いると所望の塗布パターンを微細にし、かつ高速に塗布することができる利点を有している。特に第1乃至第3の実施の形態に示したセラミックパッケージ上の接続電極等に接合材を供給する場合、当該インクジェット印刷法が適している。
【0066】
なお、上記各実施形態の例示においては、ATカット水晶振動板を用いた表面実装型の水晶振動子を例示したが、水晶フィルタ素子に適用することが可能である。また圧電振動板もATカット水晶振動板以外にSCカット水晶振動板や圧電セラミック振動板等、他の圧電材料を用いてもよい。
【0067】
また各実施の形態に用いた金属微粒子ペースト接合材に用いる金属微粒子は、金を例示したが、銀、銅等の単一微粒子を用いてもよい。また、ペースト層を複数複数の金属微粒子を用いてもよい。なお、金属微粒子に銅を用いた場合は、銅の高い延性により熱緩衝性能を高くすることができる。
【0068】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形
で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎ
ず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであ
って、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属す
る変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0069】
水晶振動子、水晶フィルタ、水晶発振器等の圧電振動デバイスの量産に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明による第1の実施形態を示す内部断面図。
【図2】本発明による第1の実施形態を示す平面図。
【図3】本発明による第2の実施形態を示す内部断面図。
【図4】本発明による第3の実施形態を示す内部断面図。
【図5】本発明による第4の実施形態を示す図。
【符号の説明】
【0071】
セラミックパッケージ
2,5 水晶振動板(圧電振動板)
3 リッド
S、S1 金属微粒子ペースト接合材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一表面に励振電極および当該励振電極を外部に導出する引出電極が形成された圧電振動板と、当該圧電振動板を気密収納し、前記引出電極と導電接合される接続電極を有するパッケージと、当該パッケージの開口部分と気密接合されるリッドとからなる圧電振動デバイスであって、
前記圧電振動板の引出電極と前記接続電極とは、平均粒径が1〜100nmで、表面には有機系被膜により被覆され、加熱により当該有機系被膜が除去される金属微粒子を有機溶媒中に分散させた金属微粒子ペースト接合材により接合したことを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項2】
少なくとも一表面に励振電極および当該励振電極を外部に導出する引出電極が形成された圧電振動板と、当該圧電振動板の引出電極と導電接合される複数の独立したリード端子が貫通形成されたベースと、当該ベースと気密接合され前記圧電振動板を気密封止するキャップとからなる圧電振動デバイスであって、
前記圧電振動板の引出電極と前記リード端子とは、平均粒径が1〜100nmで、表面には有機系被膜により被覆され、加熱により当該有機系被膜が除去される金属微粒子を有機溶媒中に分散させた金属微粒子ペースト接合材により接合したことを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項3】
少なくとも一表面に励振電極および当該励振電極を外部に導出する引出電極が形成された圧電振動板と、当該圧電振動板と回路を構成する電子部品素子と、これら圧電振動板と電子部品素子とを気密収納し、前記引出電極および電子部品素子の電極と各々導電接合される接続電極を有するパッケージと、当該パッケージの開口部分と気密接合されるリッドとからなる圧電振動デバイスであって、
前記各々の導電接合は、平均粒径が1〜100nmで、表面には有機系被膜により被覆され、加熱により当該有機系被膜が除去される金属微粒子を有機溶媒中に分散させた金属微粒子ペースト接合材により行うことを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項4】
圧電振動板には複数の励振電極および当該励振電極に対応した引出電極が形成され、少なくともこれら引出電極の一つと接続電極との接続を、前記金属微粒子ペースト接合材により接合したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の圧電振動デバイス。
【請求項5】
圧電振動板には複数の励振電極および当該励振電極に対応した引出電極が形成され、これら引出電極と接続電極との接続を、前記金属微粒子ペースト接合材により接合したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の圧電振動デバイス。
【請求項6】
圧電振動板には複数の励振電極および当該励振電極に対応した引出電極が形成され、少なくともこれら引出電極の一つと接続電極との接続を、前記金属微粒子ペースト接合材により接合し、他の引出電極と接続電極との接続を、金属バンプによる金属間接合を行ったことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の圧電振動デバイス。
【請求項7】
前記金属微粒子ペースト接合材の金属微粒子と、前記引出電極および接続電極の接合面の金属膜とが同種金属であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の圧電振動デバイス。
【請求項8】
前記金属微粒子ペースト接合材は複数層からなり、当該層の一部は銅を金属微粒子として用いた金属微粒子ペーストであることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の圧電振動デバイス。
【請求項9】
前記金属微粒子ペースト接合材には前記圧電振動板の引出電極と前記接続電極とを機械的接合するバインダ樹脂が含まれていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の圧電振動デバイス。
【請求項10】
前記金属微粒子ペースト接合材には金属微粒子に対する還元剤が添加されていることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の圧電振動デバイス。
【請求項11】
前記還元剤が金属微粒子ペースト接合材に対して1〜10重量%のパラジウムであることを特徴とする請求項10に記載の圧電振動デバイス。
【請求項12】
前記パラジウムの平均粒径が1〜60nmであることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の圧電振動デバイス。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−211089(P2006−211089A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−17990(P2005−17990)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】