説明

地図配信サーバおよび地図配信システム

【課題】不必要な地図データ配信を抑制する技術において、過去に車両がある道路を走行してその走行履歴を送信した後に、当該道路に関連する地図データの更新があった場合に、車両が再度同じ道路を走行せずとも、当該道路に関連する地図データの更新を受けることができるようにする。
【解決手段】地図配信サーバは、車両用ナビゲーション装置から送信された走行履歴を受信し(ステップ103)、受信した走行履歴を、その後の新規地図データの取得(ステップ203)以降も記録し続け、当該新規地図データの更新部分のうち、当該記録し続けた走行履歴に関連する走行道路についてのデータを、車両用ナビゲーション装置に送信する(ステップ205)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図配信サーバおよび地図配信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された地図配信システムでは、車両が走行した道路の履歴が、当該車両の車載通信機から地図配信サーバに送信され、地図配信サーバは、受信した走行履歴に含まれる道路に接続する新設道路を、地図データの更新データベースから検索し、そのような新設道路があれば、当該新設道路のデータを当該車載通信機に送信するようになっている。このようになっていることで、新たな地図データをすべて配信する必要がなくなるので、不必要な地図データ配信が抑制される。
【0003】
この特許文献1の地図配信システムにおいては、更新データに基づいた車載通信機への配信は、地図配信サーバが車載通信機から走行履歴を受信したタイミングで、その受信した走行履歴についてのみ、行われるようになっている。
【特許文献1】特開2007−78481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、過去に車両が走行した道路Aについては、車載通信機が当該道路Aを走行履歴として過去に送信していたとしても、その後に当該道路Aに新設道路Bが接続された場合には、再度自車両が当該道路Aを走行しない限り、当該新設道路Bのデータが配信されることはない。つまり、その道路Aを走行した時点における新設道路しか、配信を受けることができない。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、不必要な地図データ配信を抑制する技術において、過去に車両がある道路を走行してその走行履歴を送信した後に、当該道路に関連する地図データの更新があった場合に、車両が再度同じ道路を走行せずとも、当該道路に関連する地図データの更新を受けることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、地図配信サーバ(5)が、車両(1)に搭載された車載通信機(2)から送信された車両(1)の走行道路の履歴(以下、走行履歴という)を受信して記録する。そして、地図配信サーバ(5)は、当該走行履歴を記録した後に、新たな地図データ(30)を取得し、取得した新たな地図データ(30)の更新部分を特定する。
【0007】
また地図配信サーバ(5)は、特定された更新部分のうち、新たな地図データ(30)の取得前に記録された走行履歴に関連する走行道路(例えば、走行履歴に含まれる道路、走行履歴に含まれる道路に接続する道路)についてのデータを、車載通信機(2)に送信する。
【0008】
このように、地図配信サーバ(5)は、受信した走行履歴を、その後の新規地図データ(30)の取得以降も記録し続け、当該新規地図データ(30)の更新部分のうち、当該記録し続けた走行履歴に関連する走行道路についてのデータを、車載通信機(2)に送信する。
【0009】
したがって、過去に車両(1)がある道路を走行してその走行履歴を送信した後に、当該道路に関連する地図データの更新があった場合に、車両(1)が再度同じ道路を走行せずとも、当該道路に関連する地図データの更新を受けることができるようになる。
【0010】
また、請求項2に記載のように、地図配信サーバ(5)は、新たな地図データ(30)を取得したことをトリガ(すなわち開始条件)として、特定された更新部分のうち、新たな地図データ(30)の取得前に記録した走行履歴に関連する走行道路についてのデータを、車載通信機(2)に送信するようになっていてもよい。
【0011】
このようになっていることで、新規地図データ(30)の取得に対応して、当該新規地図データ(30)および過去に取得して記録し続けた走行履歴に基づいた地図データ配信を、効率的なタイミングで行うことができる。
【0012】
また、請求項3に記載のように、地図配信サーバ(5)は、更新部分のうち走行履歴に関連する走行道路が複数ある場合、当該複数の走行道路のうち、走行回数が多いものを、優先的に車載通信機(2)に送信するようになっていてもよい。
【0013】
このようになっていることで、より必要性の高いデータを優先して配信することができるので、地図配信の効率が高まる。
【0014】
また、請求項4に記載のように、地図配信サーバ(5)と、車載通信機(2)と、を備えた地図配信システムとして、本発明を捉えることもできる。
【0015】
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る地図配信システムの構成を概略的に示す。この地図配信システムは、道路を走行する車両1に搭載された車両用ナビゲーション装置2、および、無線基地局3および通信ネットワーク4を介してこの車両用ナビゲーション装置2と通信する地図配信サーバ5とを含んでいる。
【0017】
車両1に搭載されている車両用ナビゲーション装置2は、車両1の走行した道路の履歴を走行履歴として記録し、記録した走行履歴を、無線基地局3、通信ネットワーク4を介して地図配信サーバ5に送信する。地図配信サーバ5は、受信した走行履歴と、更新された地図データとを比較し、更新された地図データのうち、走行履歴に関連する道路(走行履歴に含まれる道路、当該道路に接続する道路等)のデータを抽出し、通信ネットワーク4、無線基地局3を介して当該車両用ナビゲーション装置2に送信する。
【0018】
ただし、データの抽出に用いる走行履歴としては、更新された当該新規地図データの取得前に受信した走行履歴をも含むようになっている。また、抽出および送信は、当該新規地図データの取得のタイミングで実行するようになっている。
【0019】
なお、図1においては、車両1および車両用ナビゲーション装置2は一組しか記載されていないが、地図配信サーバ5は、複数の車両にそれぞれ搭載され、車両用ナビゲーション装置2と同等の構成・機能を有する複数の車両用ナビゲーション装置に対しても、車両用ナビゲーション装置2と同等の処理および通信を行う。
【0020】
以下、このような地図配信システムの構成および作動について詳述する。図2に、車両用ナビゲーション装置2のハードウェア構成を示す。車両用ナビゲーション装置2は、位置検出器11、画像表示装置12、操作部13、スピーカ14、無線機15、地図データ取得部16、および制御回路17を有している。
【0021】
位置検出器11は、いずれも周知の図示しない地磁気センサ、ジャイロスコープ、車速センサ、およびGPS受信機等のセンサを有しており、これらセンサの各々の性質に基づいた、車両の現在位置、向き、および速度を特定するための情報を制御回路17に出力する。
【0022】
画像表示装置12は、制御回路17から出力された映像信号に基づいた映像をユーザに表示する。操作部13は、ユーザの操作を受け付け、受け付けた操作に応じた信号を制御回路17に出力する。
【0023】
無線機15は、無線基地局3と無線接続することで、通信ネットワーク4上の通信機器(具体的には地図配信サーバ5)と通信するための、周波数変換、変調、復調、増幅等を行う装置である。
【0024】
地図データ取得部16は、HDD等の書き込み可能な不揮発性の記憶媒体およびそれら記憶媒体を有している。当該記憶媒体は、制御回路17が実行するプログラム、経路案内用の地図データ、および車両1の走行履歴等を記憶している。
【0025】
地図データは、道路データおよび施設データを有している。道路データは、リンクの位置情報、種別情報、ノードの位置情報、種別情報、および、ノードとリンクとの接続関係の情報等を含んでいる。施設データは、施設毎の名称、所在位置、施設種類等の情報を有している。また、地図データは、自らのバージョン情報も含んでいる。
【0026】
制御回路(コンピュータに相当する)17は、CPU、RAM、ROM、I/O等を有するマイコンである。CPUは、ROMまたは地図データ取得部16から読み出した車両用ナビゲーション装置1の動作のためのプログラムを実行し、その実行の際には外部メディア読取器50、RAM、ROM、および地図データ取得部16から情報を読み出し、RAMおよび(可能であれば)地図データ取得部16の記憶媒体に対して情報の書き込みを行い、位置検出器11、画像表示装置12、操作部13、およびスピーカ14と信号の授受を行う。
【0027】
制御回路17がプログラムを実行することによって行う具体的な処理としては、地図表示処理、ナビゲーション処理、走行履歴記録処理、走行履歴送信処理、地図更新処理等がある。
【0028】
地図表示処理は、地図データの一部を読み出し、その地図データの示す地図を画像表示装置12に表示させる処理である。表示対象の領域としては、位置検出器11からの情報に基づいて特定した車両1の現在位置の周辺、操作部13を介してユーザによって指定された位置の周辺等がある。
【0029】
ナビゲーション処理は、操作部13等を介してユーザによって指定された目的地までの最適な誘導経路を、地図データに基づいて決定し、決定した誘導経路に沿った車両1の走行を案内するための報知を行う処理である。案内用の報知としては、画像表示装置12を用いた交差点における拡大図地図表示、スピーカ14を用いた誘導経路に沿った右左折の音声案内等がある。走行履歴記録処理、走行履歴送信処理、地図更新処理については後述する。
【0030】
図3に、地図配信サーバ5のハードウェア構成を示す。地図配信サーバ5は、外部メディア読取器50、通信インターフェース51、メモリ52、および制御部53を有している。
【0031】
外部メディア読取器50は、DVDメディア、CDメディア、リムーバブルハードディスクドライブ、USBメモリ等、着脱可能な記録メディアからのデータを読み取る装置である。
【0032】
通信インターフェース51は、通信ネットワーク4に接続し、通信ネットワーク4上の通信装置または無線基地局3に無線接続した通信機器(具体的には車両用ナビゲーション装置2)と通信するための回路である。
【0033】
メモリ52は、例えばHDD等の書き込み可能な記憶媒体である。このメモリ52には、複数のバージョンの地図データを格納するための領域である地図DB52a、および、車両用ナビゲーション装置2および他の車両用ナビゲーション装置から受信した走行履歴を記録して保持するための領域である走行履歴DB52bが割り当てられている。
【0034】
なお、地図DB52aには、既に過去のバージョンの地図データが1つ以上記録されているものとする。そして、この地図データには、当該地図データのバージョン情報が含まれている。
【0035】
制御部(コンピュータに相当する)53は、CPU、RAM、ROM、I/O等を有し、CPUは、ROM、メモリ52等から読み出した地図配信サーバ5の動作のためのプログラムを実行し、その実行の際にはRAM、ROM、およびメモリ52から情報を読み出し、RAMおよびメモリ52に対して情報の書き込みを行い、通信インターフェース51と信号の授受を行う。
【0036】
以下、これら車両用ナビゲーション装置2および地図配信サーバ5の作動について説明する。図4に、車両用ナビゲーション装置2と地図配信サーバ5との通信処理手順のシーケンス図を示す。
【0037】
この図に示すように、車両用ナビゲーション装置2の制御回路17は、車両1の走行時に、位置検出器11からの情報に基づいて車両1の位置を逐次特定し、この特定した位置および地図データに基づいて、車両1が地図のどのリンク上にあるかを、マップマッチング等によって特定し、特定した走行道路の情報を走行履歴として地図データ取得部16に記録する(ステップ101)。
【0038】
走行履歴の記録は一定距離の走行毎に、あるいは一定時間の経過毎に繰り返し行うようになっていてもよい。各回に記録する走行履歴の内容は、特定したリンクに関する情報、当該リンクを走行した時に使用していた地図データのバージョン、および、車両用ナビゲーション装置2を他の車両用ナビゲーション装置から識別する車載器IDを含む。車載器IDは、例えば制御回路17のROM等に記録されている。
【0039】
特定したリンクに関する情報は、例えば、当該リンクのリンクID、当該リンク上の走行方向、当該リンクに接続するリンクのリンクID、当該リンクの道路種別、当該リンクの道路名称である。
【0040】
なお、制御回路17は、同じリンクを複数回走行した場合には、それら複数回分の走行履歴のデータを1つの走行履歴データにまとめ、重複する情報を削除した状態で記録するようになっていてもよい。
【0041】
あるいは、制御回路17は、道路名称毎に走行履歴をまとめて記録するようになっていてもよい。すなわち、異なるリンクについての走行履歴であっても、同じ名称の道路を走行したものであるなら、それらを1つの走行履歴データにまとめ、重複する情報を削除した状態で記録するようになっていてもよい。
【0042】
複数回分の走行履歴をリンクでまとめる場合も道路名称でまとめる場合も、そのまとめたデータには、当該リンクまたは当該名称の道路の走行回数の情報を記録するようになっていてもよい。
【0043】
そして制御回路17は、記録した走行履歴を、無線機15を用いて地図配信サーバ5宛に送信する(ステップ103)。なお、この送信は繰り返し行われる。具体的には、履歴情報を記録する度に送信を実行してもよいし、あるいは、ある一定時間の経過毎に送信を実行してもよいし、一定距離の走行毎に送信を実行してもよい。
【0044】
また、各回の送信機会に送信する走行履歴は、前回の送信機会から今回の送信機会までに記録された走行履歴であってもよい。この場合は、送信される走行履歴は常に新規取得分のみとなり、過去に送信したことのある走行履歴は送信しないことになる。したがって、無駄なデータ送信が抑制される。なお、既に送信した走行履歴の記録は、削除するようになっていてもよいし、保持したままでもよい。
【0045】
また、無線環境によっては、無線基地局3との接続が切れる場合がある。その場合、制御回路17は、再度無線接続が確立されるまで走行履歴を保持しておき、無線接続が確立した時にその保持しているデータを送信するようになっていてもよい。
【0046】
また、地図配信サーバ5の制御部53は、通信インターフェース51を介して当該走行履歴を受信し、受信した走行履歴を、送信元の車両用ナビゲーション装置別に、メモリ52の走行履歴DB52bに追加記録する(ステップ201)。
【0047】
ただしこのとき、受信した走行履歴と送信元が同じであり、かつ走行したリンク(または道路名称)同じ走行履歴Xが既に走行履歴DB52bに記録されている場合、受信した走行履歴は走行履歴DB52bに追記せず、当該走行履歴X中の走行回数を1回分増加させてもよい。このようにする場合でも、受信した走行履歴の情報が実質的に追加記録されることになり、かつ、走行履歴DB52bの記憶量の節約になる。
【0048】
このようにして記録した走行履歴は、その後も保持するようになっている。したがって、その後に地図配信サーバ5において新規地図データ30が登録されても、当該走行履歴は保持されたままである。
【0049】
ここで、制御部53が、受信した走行履歴を記録した後、新たなバージョンの地図データ30を取得して地図DB52aに追加記録する場合(ステップ203)について説明する。新たな地図データ30の取得は、通信インターフェース51を介して通信ネットワーク4中の他の装置から受信することで実現してもよいし、当該新規地図データ30が記録された外部メディアを外部メディア読取器50から読み出すことで実現してもよい。
【0050】
なお、この新規地図データ30には、当該新規地図データ30のバージョン情報が含まれている。また、この新規地図データ30には、過去の各バージョンからの段階的な改変履歴が含まれていてもよい。改変履歴とは、過去のバージョンの地図データと比較して、新規地図データ30中のどのデータがどのように追加、変更、削除となったかを示す情報をいう。
【0051】
新規地図データ30を地図DB52aに追加登録すると、制御部53は、その追加登録を行ったことをトリガとして、新規地図データ30の一部を車両用ナビゲーション装置2に送信するための処理を行う(ステップ205)。
【0052】
図5に、ステップ205の処理の詳細をフローチャートで示す。この図に示すように、制御部53は、まずステップ310で、走行履歴DB52b中に走行履歴が記録されているか否かを判定し、記録されていなければ新規地図データ30の送信は行わずにステップ205の処理を終了する。
【0053】
走行履歴DB52bに走行履歴が記録されている場合は、続いてステップ320で、記録されているすべての走行履歴の1つ1つについて、新規地図データ30と旧地図データとの差分を特定する。なお、差分とは、新規地図データ30が、旧地図データに対してどのような改変が適用されたかを示す情報、すなわち地図データの更新部分である。
【0054】
具体的には、制御部53は、走行履歴DB52b中のすべての走行履歴の1つ1つについて、当該走行履歴に記録されている地図バージョンを特定し、そのバージョンの地図データを、当該当該走行履歴に対応する地図データとして特定する。そして制御部53は、当該特定した旧バージョン地図データを地図DB52aから読み出し、新規地図データ30と、当該読み出した旧バージョン地図データを比較することで、それらの差分を特定する。
【0055】
なお、新規地図データ30に過去の各バージョンからの改変履歴が含まれている場合、その改変履歴に基づいて、新規地図データ30と特定した旧バージョン地図データとの差分を特定するようになっていてもよい。
【0056】
続いてステップ330では、走行履歴の1つ1つについて、上述のように特定した地図データの差分と、当該走行履歴とを比較して、当該走行履歴中のリンクに関連するリンク(例えば、当該リンク、および、当該リンクに接続するリンク)と、当該差分中のリンクとで、重複するもの(以下、重複リンクという)があるか否かを判定する。そして、すべての走行履歴について否定的な判定となると、新規地図データ30の送信は行わずにステップ205の処理を終了する。しかし、1つ以上の走行履歴について肯定的な判定があると、続いてステップ340を実行する。
【0057】
続いてステップ340では、ステップ330で肯定的判定の対象となった走行履歴(以下、対象走行履歴という)のそれぞれについて、新規地図データ30から配信データを抽出する。具体的には、対象走行履歴の1つ1つについて、当該対象走行履歴に対応する重複リンクのデータを、新規地図データ30から抽出し、それを当該対象走行履歴用の配信データとして特定する。
【0058】
そして続いてステップ350で、その抽出順に、配信データを送信する。配信データの送信先は、当該配信データの抽出に用いた対象走行履歴中の車載器IDから特定する。また、配信データには、新規地図データ30のバージョン情報を含める。このようにすることで、新規地図データ30の登録前に受信した対象走行履歴に基づいて、各車両の車両用ナビゲーション装置に、当該車両が走行したことのあるリンクに関連した地図配信を行うことができる。
【0059】
なお、ステップ340における抽出の順序は、抽出に用いる対象走行履歴の優先度が高いほど早くする。ここで、対象走行履歴の優先度は、当該対象走行履歴に含まれる走行回数が多いほど高いものとする。履歴情報が多くなると配信するデータの量も増えることが考えられるが、このように優先度を使用することで、車両が頻繁に走行する優先度の高いリンクについての更新情報が、いち早く優先的に配信される。
【0060】
あるいは、ある基準以上高い優先度を有する対象走行履歴だけ抽出に用い、当該基準より低い優先度を有する対象走行履歴は抽出に用いないようにしてもよい。具体的には、基準回数(例えば3回)以上の走行回数を含む対象対象走行履歴のみを、抽出に用いるようにしてもよい。このようにすることで、車両が頻繁に走行する優先度の高いリンクについての更新情報が確実に配信される一方、必要度の低い更新情報は配信されないので、通信量を減らしながらも、地図配信の効果を高く保つことができる。
【0061】
また、地図配信サーバ5から車両用ナビゲーション装置2に配信される地図データ(具体的には新規地図データ30の重複リンク部分)を、車両用ナビゲーション装置2の制御回路17は、無線機15を介して受信し、受信したデータを、地図データ取得部16中の地図データに反映する(ステップ105)。
【0062】
ここで、反映するデータは、受信したデータすべてであってもよいし、受信したデータのうち、優先度が基準以上高いもののみを反映させ、それ以外の受信データを破棄するようになっていてもよい。ここで、優先度については、以下のように決定する。すなわち、受信した重複リンクのそれぞれについて、当該重複リンクと関連する地図データ取得部16中の走行履歴を特定し、特定した走行履歴中の走行回数が多いほど、優先度が高いものとする。
【0063】
また制御回路17は、地図データ取得部16に記録している走行履歴中の地図バージョンを、新規地図データ30のバージョンに書き換える。なお、新規地図データ30のバージョン情報は、受信したデータから読み出す。
【0064】
また制御回路17は、受信したデータを地図データに反映させた後、地図更新完了通知を、地図配信サーバ5に送信する(ステップ107)。この地図更新完了通知には、車両用ナビゲーション装置2の車載器IDを含める。
【0065】
地図配信サーバ5の制御部53は、この地図更新完了通知を受信すると、メモリ52にこの完了通知を反映させる。すなわち、この地図更新完了通知の送信元を当該地図更新完了通知中の車載器IDから特定し、走行履歴DB52b中の走行履歴のうち、特定した送信元の走行履歴中の地図バージョンを、新規地図データ30の地図バージョンに書き換える。
【0066】
このようにすることで、車両用ナビゲーション装置2中の地図データの地図バージョンと、走行履歴DB52b中の地図バージョンとの整合性が維持される。これにより、一度車両用ナビゲーション装置2において更新されたデータを地図配信サーバ5が再度抽出して配信することがなくなるため、地図配信サーバ5から車両用ナビゲーション装置2へ無駄なデータが送信される可能性が低減される。
【0067】
以上説明したとおり、地図配信サーバ5が、車両用ナビゲーション装置2から受信した走行履歴を、その後の新規地図データ30の取得以降も記録し続け、当該新規地図データ30の更新部分のうち、当該記録し続けた走行履歴に関連するリンクについてのデータを、車両用ナビゲーション装置2に送信する。
【0068】
したがって、過去に車両1がある道路を走行してその走行履歴を送信した後に、当該道路に関連する地図データの更新があった場合に、車両1が再度同じ道路を走行せずとも、当該道路に関連する地図データの更新を受けることができるようになる。
【0069】
また、地図配信サーバ5は、新たな地図データ30を取得したことをトリガとして、特定された更新部分のうち、新たな地図データ30の取得前に記録した走行履歴に関連する走行道路についてのデータを、車両用ナビゲーション装置2に送信するようになっている。
【0070】
このようになっていることで、新規地図データ30の取得に対応して、当該新規地図データ30および過去に取得して記録し続けた走行履歴に基づいた地図データ配信を、効率的なタイミングで行うことができる。
【0071】
また、地図配信サーバ5は、更新部分のうち走行履歴に関連する走行道路が複数ある場合、当該複数の走行道路のうち、走行回数が多いものを、優先的に車両用ナビゲーション装置2に送信するようになっている。このようになっていることで、より必要性の高いデータを優先して配信することができるので、地図配信の効率が高まる。
【0072】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。
【0073】
例えば、上記実施形態においては、車載通信機の例として、車両用ナビゲーション装置2が用いられているが、本発明は、車両用ナビゲーション装置2に限らず、地図データを記録し、当該地図データを地図配信サーバ5から受信して更新するような装置であれば、どのようなものにでも適用可能である。
【0074】
また、上記実施形態においては、地図データの更新部分の配信は、地図配信サーバ5における新規地図データ30の登録をトリガとして、その登録のタイミングにおいて、行われている。しかし、新規地図データ30の登録をトリガとせず、例えば定期的な配信であっても、その間に新規地図データ30の登録がある場合には、本発明の効果が達成される。
【0075】
また、上記の実施形態において、制御回路17、制御部53がプログラムを実行することで実現している各機能は、それらの機能を有するハードウェア(例えば回路構成をプログラムすることが可能なFPGA)を用いて実現するようになっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施形態に係る地図配信システムの概略図である。
【図2】車両用ナビゲーション装置2の構成を示すブロック図である。
【図3】地図配信サーバ5の構成を示すブロック図である。
【図4】車両用ナビゲーション装置2と地図配信サーバ5との通信処理手順を示すシーケンス図である。
【図5】地図配信サーバ5が実行する送信処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0077】
1 車両
2 車両用ナビゲーション装置
5 地図配信サーバ
30 新規地図データ
52a 地図DB
52b 走行履歴DB
53 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)に搭載された車載通信機(2)から送信された前記車両(1)の走行道路の履歴を受信して記録する記録手段(201)と、
前記履歴が記録された後に、新たな地図データ(30)を取得する新規取得手段(203)と、
取得された前記新たな地図データ(30)の更新部分を特定する特定手段(320)と、
特定された前記更新部分のうち、前記新たな地図データ(30)の取得前に記録された前記履歴に関連する走行道路についてのデータを、前記車載通信機(2)に送信する送信手段(350)と、を備えた地図配信サーバ。
【請求項2】
前記送信手段(350)は、前記新規取得手段(203)が前記新たな地図データ(30)を取得したことをトリガとして、特定された前記更新部分のうち、前記新たな地図データ(30)の取得前に記録された前記履歴に関連する走行道路についてのデータを、前記車載通信機(2)に送信することを特徴とする請求項1に記載の地図配信サーバ。
【請求項3】
前記送信手段(350)は、前記更新部分のうち前記履歴に関連する走行道路が複数ある場合、当該複数の走行道路のうち、走行回数が多いものを、優先的に前記車載通信機(2)に送信することを特徴とする請求項1または2に記載の地図配信サーバ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の地図配信サーバ(5)と、前記車載通信機(2)と、を備えた地図配信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−168956(P2009−168956A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5112(P2008−5112)
【出願日】平成20年1月14日(2008.1.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】