説明

基板保持装置及び基板の保持方法

【課題】 浮上させたガラス基板の移動を規制して、所定の位置に確実に保持できるようにすることである。
【解決手段】 ガラス基板Wを吸着して保持しつつ搬送する吸着搬送ユニット17のユニット本体20には貫通孔26が設けられており、この貫通孔26に吸着保持機構25が設けられている。吸着保持機構25は、圧搾エアー供給部30に接続された筒状の弾性部材31を有し、弾性部材31の上端部32には、吸着パッド33が装着されている。吸着パッド33には弾性部材31に連通する吸引孔36が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮上している基板の移動を規制し、保持する基板保持装置及び、基板の保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレィ(LCD)や、プラズマディスプレィ(PDP)などのフラットパネルディスプレィ(FPD)の製造過程でガラス基板の検査を行う際には、ガラス基板を基準位置に位置決めして保持する位置決め保持装置が用いられている。
ここで、従来の位置決め保持装置としては、XYステージの最上層のXステージ上にボールキャスタを介して保持ステージを移動自在に設け、この保持ステージにガラス基板を吸着保持させ、突き当てシリンダで保持ステージを移動させて、Xステージに固定されている基準ピンにガラス基板を直接押し当てて位置決めするものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところが、特許文献1に開示されているような位置決め保持装置では、XYステージがXY方向に移動するためにガラス基板の面積の4倍の移動スペースが必要となり、ガラス基板の大型化に伴って装置全体が大型化してしまうという問題があった。さらに、ガラス基板の大型化に伴って、XYステージの重量が増すために、XYステージ上のガラス基板の側面を基準ピンに直接押し当てる際に、XYステージの慣性モーメントが非常に大きくなり、ガラス基板が基準ピンに当接した際に破損するおそれがあり、これを防止するための複雑な機構が必要になる。
この大型化したガラス基板を複数のころが回転自在に設けられたころ搬送部上に載置させ、このガラス基板にシリンダを突き当てて、ガラス基板の側面を位置決めピンに当接させて位置決めをする装置が開発されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平8−313815号公報
【特許文献2】特開2000−9661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に開示されている装置では、多数のころでガラス基板を支えるために、ガラス基板がころの回転方向と直交する方向に押されると、ガラス基板はころ上を摺りながら移動することになるので、ころとガラス基板との間の摩擦抵抗によりガラス基板の裏面にころの摩擦痕が生じるおそれがあった。
ここで、ガラス基板の移動時の摩擦抵抗を低減させるために、浮上ステージを用いてガラス基板をエアーで浮上させつつガラス基板の位置決めを行う方法が考えられる。このようにガラス基板をエアー浮上させた場合には、浮上ステージとガラス基板との間の摩擦抵抗が非常に小さくなるため、わずかな外力が加わった場合でも大きく移動してしまうと共に、ガラス基板が基準ピンに当たって跳ね返るなど、位置決めの安定性に欠けるという問題が生じる。また、浮上したガラス基板の端部を保持して強制的に搬送する搬送機構を備えることが考えられるが、このガラス基板を搬送途中で、一方の搬送機構から他方の搬送機構に受け渡す際に、ガラス基板が小さな外力や、ガラス基板自身の慣性力によって移動してしまう問題が生じる。
この発明は、これらの事情を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、浮上させたガラス基板の移動を規制して、所定の位置に確実に保持できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決する本発明は、浮上ステージから基板を浮上させつつ、前記基板を位置決めして保持する基板保持装置であって、前記基板の裏面に当接可能な接触部材と、浮上している前記基板の裏面に前記接触部材を当接させて前記基板の移動を規制した状態で、前記基板を所定位置に位置決めする位置決め機構と、前記位置決め機構により位置決めされた前記基板を吸着保持させる吸引機構と、を具備したことを特徴とする基板保持装置とした。
この基板保持装置では、ガラス等からなる基板を自由に移動可能な状態に浮上させ、接触部材を基板の裏面に当接させてから、位置決め機構で基板の位置決めを行う。基板と接触部材との間の小さな摩擦力により浮上した基板は、基板と接触部材との間の小さな摩擦力により基板の移動が規制される。このようにして、基板の移動を規制しつつ位置決めを行ったら、基板を吸着保持する。なお、接触部材と基板との接触面積は、基板の面積に比べて十分に小さくなるように設定される。
【0006】
また、本発明は、基板を浮上させる工程と、浮上した前記基板の裏面に接触部材を当接させて前記基板の移動を規制する工程と、前記接触部材と前記基板との当接状態を維持しつつ前記基板を移動させて、前記基板の位置決めをする工程と、位置決め後に前記基板を吸着保持する工程と、と備えることを特徴とする基板の保持方法とした。
この基板の保持方法では、接触部材と基板裏面との間の小さな摩擦力によって基板の移動を規制しつつ位置決めを行い、吸着保持するので、基板の位置決めを確実に、かつ速やかに行える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基板を浮上させた状態で、その裏面に接触部材を押し当ててから位置決め機構で基板を基準位置に移動させ、その後に吸着保持するようにしたので、基板と接触部材との間の小さな摩擦力によって、基板の移動を規制しつつ基板の位置決めを行うことができる。したがって、自由に移動可能な状態に浮上させた基板の裏面に基板が移動しない程度の小さな摩擦力を発生させることにより、基板の移動を規制することができ、基板の位置決めを安定して確実に、かつ効率良く行える。このようにして基板の移動を規制することで、小さな押圧力で基板を移動させることが可能になり、位置決め時における基板の破損が防止される。また、このとき接触部材との間に発生する摩擦力は、基板の全面を接触支持させた場合に比べて十分に小さいので、位置決め機構が基板を押圧する力が小さくて済み、位置決め機構の簡略化、小型化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
発明を実施するための第1の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、第1の実施の形態における基板保持装置は、FPD用のガラス基板を浮上させて搬送する浮上搬送装置に適用されており、図1及び図2には浮上搬送装置の概略構成図が示されている。
図1に示すように、浮上搬送装置1は、床面に設置される図示しない除振台上にベース部2が設置され、このベース部2の上には、浮上ステージ3が固定されている。図2に示すように、浮上ステージ3の上面には、複数のエアー吹き出し孔4が規則的に配設されている。また、浮上ステージ3のガラス基板搬入側(基端部3a側)には、ワークであるガラス基板Wを機械的に昇降させる複数のリフター5が、浮上ステージ3に形成された貫通孔6内に突没自在に配設されている。ここで、リフター5の一例を図3に示す。リフター5は、貫通孔6の下面側に設けられたU字形状の支持部材7と、支持部材7の底部に固定された空気圧シリンダ8とを備え、空気圧シリンダ8の伸縮ロッド9の先端には、連結部材10を介して棒状のリフトピン11が取り付けられている。リフトピン11は、空気圧シリンダ8によって、貫通孔6内に没入した待機位置から、図3に破線で示すような、浮上ステージ3の上面から突出した支持位置まで移動可能になっている。
【0009】
図1及び図2に示すように、ベース部2の長手方向に沿った側面のそれぞれには、ガイドレール15,16が各側面に沿って設けられている。このガイドレール15,16には、吸着搬送ユニット17,18が往復移動自在に取り付けられている。両吸着搬送ユニット17,18は、不図示の制御装置によって同期して移動するように制御される。
【0010】
図2に示すように、吸着搬送ユニット17は、不図示のリニアモータなどの駆動源によってガイドレール15に沿って移動するユニット本体20を有し、ユニット本体20の上面には、位置決め機構を構成する複数の基準ピン21,22,23と、複数の押し付けピン24とが配設されている。基準ピン21と基準ピン22とは、ガラス基板Wの一方の長辺Waを位置決めするために、ガイドレール15に平行に所定の間隔をおいてユニット本体20上に固定されている。基準ピン23は、ガラス基板Wの一方の短辺Wbを位置決めするために、ユニット本体20上で基準ピン21,22よりも搬送路側に寄った位置に固定されている。押し付けピン24は、ガラス基板Wを挟んで基準ピン23に対峙するようにユニット本体20上に配置され、不図示のエアーシリンダなどに連結されており、対峙する基準ピン23に向けて動可能になっている。さらに、押し付けピン24から基準ピン23に至るまでの間には、ガラス基板Wの一方の長辺Waの側縁部をエアー吸着して保持する6つの吸着保持機構25が等間隔に配設されている。
【0011】
図4に示すように、吸着保持機構25は、ユニット本体20を上下に貫通する貫通孔26内に設けられており、ユニット本体20の下面の開口を覆う支持部材27を介して固定される吸引機構を備えている。吸引機構は、配管28を備え、配管28には、バルブ29が設けられており、配管28の下端部には、圧搾エアー供給部30が接続されている。また、配管28の上端部には、略筒状の弾性部材31が連結されている。弾性部材31の上端部32は、蛇腹状になっており、上下方向に伸縮自在になっている。弾性部材31の先端には、接触部材である吸着パッド33が気密に装着され、かつ首振り自在に貫通孔26内に嵌め込まれている。弾性部材31は、自然状態(吸引停止状態)で吸着パッド33の上部(吸着面34a)が所定位置にくるような長さに設定されている。ここで、所定位置とは、吸着パッド33の上面が、浮上ステージ3の上面から浮上したガラス基板Wの浮上高さより若干高い位置である。
【0012】
吸着パッド33は、耐摩耗性を有する樹脂から製造されており、ガラス基板Wに当接する吸着面34aと、吸着部34から下方に延設される湾曲部35とが一体に形成されている。吸着部34の外径は、ユニット本体20の貫通孔26の径に略等しく、その上面にはガラス基板Wに押し当てられる吸着面34aが形成されている。ここで、吸着部34の中心には、吸着部34を上下に貫通する吸引孔36が形成されているので、吸着面34aは、環状になっている。吸引孔36は、吸着面34aから吸着部34の下面34bに至る間に段差部38を有し、この段差部38によって下面34b側が縮径されている。さらに、吸引孔36の縮径された部分36aは、下面34bに向かって縮径するようなテーパ状に成形されており、ここに弾性部材31の上端部32の縮径部分が係止されている。このため、弾性部材31の内部と、吸引孔36とは、連通している。
【0013】
また、図2に示すような吸着搬送ユニット18は、吸着搬送ユニット17と略対称な構成になっている。すなわち、ユニット本体40に基準ピン41と、押し付けピン42,43,44と、吸着保持機構25とが設けられ、不図示のリニアモータなどの駆動源によってガイドレール16に沿って往復移動可能に構成されている。基準ピン41と、これに対峙する押し付けピン42とは、吸着搬送ユニット17と同様の配置及び構成になっている。押し付けピン43及び、押し付けピン44は、吸着搬送ユニット17の基準ピン21及び、基準ピン22にそれぞれ対峙して配置され、それぞれが、不図示のシリンダなどに接続されており、対峙する基準ピン21,22に向けて移動自在に構成されている。吸着保持機構25の構成及び配置は、吸着搬送ユニット17の吸着保持機構25と同一である。
【0014】
なお、この浮上搬送装置1は、浮上ステージ3の上方に、不図示の顕微鏡などが設けられており、ガラス基板Wの表面の欠陥検査などが可能になっている。
また、基準ピン21,22,23,41と押し付けピン24,42,43は、ガラス基板Wを所定の基準位置に位置決めする位置決め機構として機能し、吸着保持機構25は、位置決め機構により位置決めされたガラス基板Wを吸着保持する吸引機構として機能する。
【0015】
次に、この実施の形態の作用について説明する。
まず、図1に示すように、吸着搬送ユニット17,18を浮上ステージ3の基端部3aに配置し、リフトピン11を、図3に破線で示すように、浮上ステージ3の上面から上向きに突出させる。また、エアー吹き出し孔4からは、エアーを吹き出させておく。このとき、吸着保持機構25は、稼動しておらず、吸着面34a(図4参照)は、浮上ステージ3の上面よりも高い位置にある。ガラス基板Wを搬入する際には、搬入ロボットがガラス基板Wをリフトピン11に移載する。
【0016】
ガラス基板Wを搬入したら、リフトピン11を下げ、ガラス基板Wを吸着保持機構25の吸着パッド33に当接させる。吸着面34aは、ガラス基板Wの裏面に密着し、吸着パッド33の吸引孔36は、ガラス基板Wによって密閉される。ガラス基板Wが反ったり、傾斜していたりした場合には、吸着パッド33の湾曲部35と貫通孔26との接触位置がずれて、吸着パッド33が首振りすることにより、ガラス基板Wと吸着面34aとの密着状態が形成される。
図2に示すように、吸着保持機構25は、搬送方向Fに平行に、ガラス基板Wの左右に6つずつ振り分けられて配置されており、各吸着面34aの面積は、ガラス基板Wの裏面全体の面積に比べて十分に小さい、したがって、ガラス基板Wを吸着パッド33上に置くことにより、ガラス基板Wと吸着面34aとの間には小さな摩擦力が発生し、この小さな摩擦力によってガラス基板Wの移動が規制される。この状態で、押し付けピン24,42,43,44を移動させ、ガラス基板Wのそれぞれの側面に小さな摩擦力よりも大きな押圧力で押し付けさせると、ガラス基板Wは、各押し付けピン24,42,43,44からの押圧力を受けて、吸着パッド33上を滑るようにして移動し、その側面が基準ピン21,22,23,41に当接させられ、これによって基準位置に位置決めされる。
【0017】
ガラス基板Wの位置決めが終了したら、図4に示す吸着保持機構25の圧搾エアー供給部30を稼動させ、バルブ29を開く。配管28内及び、弾性部材31内の圧力が次第に下がり、吸引孔36を介してガラス基板Wが吸着パッド33に吸着される。さらに、配管28内及び、弾性部材31内並びに、吸引孔36の圧力が下がると、弾性部材31が縮んで、ガラス基板Wがさらに確実に吸着保持される。これによって、ガラス基板Wは、位置決めされた状態で両側部が吸着保持され、浮上ステージ3上にエアー浮上させられる。
【0018】
そして、図2に示す両吸着搬送ユニット17,18を、同期して浮上ステージ3の先端部3b側に向かってスライド移動させ、両吸着搬送ユニット17,18に吸着保持されているガラス基板Wを搬送する。この間、浮上ステージ3の上方に設けられた顕微鏡で欠陥検査が行われる。
欠陥検査が終了したら、ガラス基板Wを浮上ステージ3の先端部3bから搬出する。搬出にあたっては、吸着保持機構25による吸着を解除し、ガラス基板Wと吸着パッド33との間に生じる小さな摩擦力でガラス基板Wを保持した状態で、不図示の搬出ロボットを用いて、ガラス基板Wを搬出させる。なお、吸着を解除する方法としては、圧搾エアーを弾性部材31内に供給したり、弾性部材31内を大気開放したりすることがあげられる。
【0019】
この実施の形態によれば、エアー浮上するガラス基板Wの裏面に、吸着保持機構25を設け、吸着保持機構25を弾性部材31などからなる吸引機構と、吸着パッド33とから構成し、この吸着パッド33を、エアー浮上させられているガラス基板Wの面積に比べて十分に小さい接触面積でガラス基板Wを支持させるようにしたので、ガラス基板Wと吸着パッド33との間に発生する小さな摩擦力でガラス基板Wの移動を規制することができ、押し付けピン24,42,43,44で押し付けた際のガラス基板Wの移動を容易にコントロールすることができる。したがって、位置決め時の安定性が向上し、ガラス基板Wの損傷等を防止できる。さらに、位置決めに要する時間を短縮でき、作業効率が向上する。
【0020】
また、吸着保持機構25は、位置決めが終了した後のガラス基板Wをそのまま吸着保持することができるので、簡単な構成で、速やかに位置決めされた状態を保持することができる。この際に、吸着パッド33は、弾性部材31によって弾力性が付与されるので、ガラス基板Wに対して柔軟性を持たせつつ当接させることが可能で、ガラス基板Wの裏面に損傷等を与えることがない。
さらに、吸着保持機構25を2つの吸着搬送ユニット17,18のそれぞれに設けたので、ガラス基板Wを位置決め及び、吸着保持した状態で浮上ステージ3に沿って搬送することが可能になる。ガラス基板Wは位置決めされた状態で搬送されるので、顕微鏡による欠陥観察などを行った際に、正しい検査結果を得ることができる。この際に、ガラス基板Wの他の部分は、エアー浮上させているので、ガラス基板Wの移動時に、ガラス基板Wの裏面を傷付けることはない。
【0021】
また、浮上ステージ3でエアー浮上させつつ吸着保持機構25による吸着を解除するようにしたので、ガラス基板Wと吸着パッド33の吸着面34aとの間の小さな摩擦力により、ガラス基板Wの移動が規制されるため、ガラス基板Wを安定して搬出することができる。
さらに、ガラス基板Wの位置決め時に、ガラス基板Wを支持した状態で吸着保持機構25でガラス基板Wを吸着保持するようにしたので、簡単な構成でガラス基板Wの位置決めと吸着保持とを連続して行うことができ、この間の位置ずれを防止することができる。
また、浮上ステージ3を挟むように2つの吸着搬送ユニット17,18を設けたので、ガラス基板Wの吸着保持を精度良く行うことができると共に、搬送時の位置ずれを防止できる。
【0022】
ここで、浮上ステージ3は、リフトピン11を備えずに、吸着保持機構25を上昇させてガラス基板Wを浮上ステージ3から持ち上げた状態で搬入ロボットによりガラス基板Wの搬入出を行っても良い。この場合には、簡単な構成で、前記と同様の作用及び、効果が得られる。
【0023】
さらに、リフトピン11で浮上したガラス基板Wを保持した状態で位置決めを行うことも可能である。具体的には、ガラス基板Wを支持した状態でリフトピン11を下降させ、ガラス基板Wがエアーによって浮上する高さより若干高い位置でリフトピン11を停止させる。このとき、ガラス基板Wは、エアーにより上方に持ち上げられるため、リフトピン11に加わるガラス基板Wの荷重が軽減され、リフトピン11との間に生じる摩擦力が小さくなる。このようにリフトピン11とガラス基板Wとの間に生じる摩擦力を小さくした状態で、ガラス基板Wを押し付けピン24,42,43,44により押し付けることで、ガラス基板Wがリフトピン11上を滑るようにして移動して基準位置に位置決めされる。そして、位置決めの後には、吸着保持機構25でガラス基板Wを吸着保持すると同時にリフトピン11を下降させる。
【0024】
次に、本発明の第2の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構成要素には同一の符号を付してある。また、重複する説明は省略する。
図5及び図6に示すように、この実施の形態は、基板保持装置をFPD用のガラス基板Wを載置するステージに適用したものである。
ステージ51の基板載置面には、ガラス基板Wを浮上させる不図示のエアー吹き出し孔が複数配設されており、ガラス基板Wの載置位置の下方の所定箇所には、基板保持機構50が4つ配設されている。このステージ51は、ガラス基板Wを位置決め保持するもので、位置決め機構を構成する基準ピン52,53,54,55及び、押し付けピン56,57,58,59がガラス基板Wを挟んでそれぞれ対峙するように複数配設されている。
【0025】
図6に示すように、基板保持機構50は、ステージ51に形成された貫通孔60の下面側の開口を覆う支持部材61を有し、支持部材61の中央に形成されている孔には、配管62の上端部が挿入され、固定されている。配管62には、エアー圧力調整弁63が設けられており、さらに配管62の下端部には、圧搾エアー供給部64が接続されている。エアー圧力調整弁63は、弁の開閉動作によって、貫通孔60に供給されるエアーの流量を調整したり、エアー供給を断続させたりする。また、貫通孔60の上面側の開口部には、耐摩耗性を有する樹脂製の接触部材65が上下方向に摺動可能に挿入されている。接触部材65は、その上面が閉塞された筒形状を有し、この上面がガラス基板Wに当接する当接部66になる。接触部材65の外周は、貫通孔60の径に略等しく、接触部材65を挿入することで貫通孔60の気密が確保される。さらに、接触部材65の下縁部には、ストッパ67が径方向外側に向かって環状に延設されている。そして、このストッパ67を収容するように、貫通孔60の内周面に環状溝68が形成されている。
【0026】
環状溝68は、貫通孔60の高さ方向に平行に、かつ貫通孔60の径を増大させるように形成されており、環状溝68の上端はステージ51の上面よりも下側で止まっており、環状溝68の高さの分だけ接触部材65を上下に移動させることができる。ここにおいて、ストッパ67の他の形態としては、周方向の1箇所に突設されたストッパや、例えば、周方向に半周分ずらした位置に1つずつ設けるなど、複数突設されたストッパなどがあげられる。これらの場合には、ストッパの数及び、形成位置に応じて、ストッパ67を遊嵌させる溝が形成される。
【0027】
また、ステージ51には、ガラス基板Wの周縁部に相当する位置に、位置決めされたガラス基板Wをステージ51の載置面上に保持する吸引機構69が配設されている。この吸引機構69は、例えば、不図示の吸引ポンプに配管で接続された吸着パッドから構成されている。
【0028】
この実施の形態の作用について説明する。
まず、エアー吹き出し孔からエアーを吹き出してガラス基板Wを浮上させた状態で、圧搾エアー供給部64及びエアー圧力調整弁63を駆動させ、所定圧力の圧搾エアーを配管62を通して貫通孔60に供給する。なお、このときのエアーの流量は、エアー圧力調整弁63の弁開度によって調整される。
前記したように、貫通孔60は、気密構造になっているので、貫通孔60の内圧が徐々に高くなり、接触部材65に作用する圧力も徐々に高くなる。これにより、接触部材65は、上方に押し上げられて、ガラス基板Wの裏面に当接し、これによってガラス基板Wが接触部材に支持される。このとき、接触部材65は、圧搾エアーの弾力性によってガラス基板Wに対して柔軟性を持って当接する。
【0029】
ここで、圧搾エアーの供給量及び、圧力を制御することで、接触部材65と、ガラス基板Wの裏面との間に生じる摩擦力が小さくなるように調整することができるので、そのような状態で押し付けピン56,57,58,59をガラス基板Wに押し付けると、ガラス基板Wが接触部材65上を滑るようにして移動し、基準ピン52,53,54,55に当接し、基準位置に位置決めされる。
その後、エアー圧力調整弁63を閉じ、貫通孔60内の圧搾エアーを排気して接触部材65を下降させると共に、ステージ51のエアー吹き出し孔からのエアー吹き出しを停止させ、ガラス基板Wをステージ51上に載置する。この状態でガラス基板Wの周縁部の裏面を吸引機構69により吸着保持する。
【0030】
この実施の形態によれば、ガラス基板Wをエアーでステージ51上に浮上させると共に、接触部材65を空気圧によって昇降させることで、ガラス基板Wとステージ51との間の摩擦を小さくし、接触部材65との間の摩擦力を利用してガラス基板Wの移動を規制しつつ押し付けピン56,57,58,59による移動が可能になる。これにより、ガラス基板Wの大きさに関係なく、簡単な構成でガラス基板Wを確実に、かつ安定して位置決めし、保持することが可能になる。特に、このように空気圧を利用した基板保持機構50は、小型化が可能であるので、顕微鏡などを備えるLCD等の基板検査装置に容易に組み込むことが可能である。
また、圧搾エアーの供給量や圧力を制御したり、圧搾エアーの弾性力を利用したりすることで、接触部材65からの力がガラス基板Wに過度に作用することを防止できるので、ガラス基板Wの裏面に損傷等が生じなくなる。
さらに、接触部材65にストッパ67を設けたので、接触部材65が貫通孔60から抜け出ることが防止され、基板保持機構50を安定して駆動させることが可能になる。
【0031】
なお、本発明は、上記の各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変形することが可能である。
例えば、図5において、基板保持機構50は、方形の各頂点に相当する位置に4つ配設されているが、基板保持機構50は、浮上しているガラス基板Wを裏面から支持でき、かつ摩擦力が不必要に増大しないものであれば、配置や、数は任意に設定することができる。同様に、図2に示す吸着保持機構25の数及び、配置も実施の形態に限定されない。
また、図2において吸着搬送ユニット17,18は、浮上ステージ3の一方の側部のみに設けても良い。機構を簡略化することができる。
さらに、位置決めされて吸着保持される対象となるワークは、ガラス基板Wに限定されずに、種々の基板を適用することができる。また、ガラス基板Wの浮上に用いる気体は、エアーに限定されない。
【0032】
また、基板保持装置は、図7に示すような吸着保持機構70を用いることも可能である。吸着保持機構70は、支持部材27と、バルブ29を備える配管28と、エアー吸排気部71と、吸着パッド72とからなる吸引機構を備えている。エアー吸排気部71は、エアーの吸気と排気とを行うことが可能な構成になっている。吸着パッド72は、吸着部73と、湾曲部35とからなる接触部材である。吸着部73は、中央に円形の凹部74が設けられた環状の吸着面73aを有し、凹部74の底部には、逆支弁76が設けられている。逆支弁76は、凹部74から吸着部73の下面73bに貫通する孔77と、この孔77を下面73b側から覆う弁体78とから構成されている。弁体78は、孔77の径よりも大きく、その一部が下面73bに固着されている。さらに、弁体78は、自然状態では孔77を塞ぎ、エアー吸排気部71によって貫通孔26内の空気が吸引された場合には、変形して孔77を開放するように、材質や、厚さが設定されている。このような吸着保持機構70は、エアー吸排気部71から貫通孔26に圧搾エアーを供給すると、吸着パッド72が貫通孔26に沿って上昇し、ガラス基板Wに当接する。したがって、吸着パッド72との間に発生する摩擦力を利用して、第1の実施の形態と同様にして位置決めをすることができる。その後、エアー吸排気部71で貫通孔26内のエアーを吸引すると、破線で示すように逆支弁76が開いて、凹部74が貫通孔26と連通し、その結果、ガラス基板Wが吸着保持される。このように、吸着保持機構70では、上下移動と、吸着保持と行うことが可能になる。なお、湾曲部35の下端部に、図6に示すようなストッパ67を設け、これに対応する環状溝68を貫通孔26に形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態における基板保持装置である浮上搬送装置の概略構成を示す側面図である。
【図2】浮上搬送装置の概略構成を示す平面図である。
【図3】浮上搬送装置の断面図であって、リフトピンの構成を示す図である。
【図4】浮上搬送装置の断面図であって、基板保持装置である吸着保持機構の構成を示す図である。
【図5】浮上搬送装置の構成を示す図である。
【図6】浮上搬送装置の断面図であって、基板保持装置の構成を示す図である。
【図7】浮上搬送装置の断面図であって、基板保持装置である吸着保持機構の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 浮上搬送装置
3 浮上ステージ
11 リフトピン(接触部材)
17,18 吸着搬送ユニット
25 吸着保持機構
21,22,23,41,52,53,54,55 基準ピン(位置決め機構)
24,42,43,44,56,57,58,59 押し付けピン(位置決め機構)
28 配管(吸引機構)
29 バルブ(吸引機構)
30 圧搾エアー供給部(吸引機構)
31 弾性部材(吸引機構)
33,72 吸着パッド(接触部材)
50 基板保持機構
51 ステージ(基板保持装置)
65 接触部材
69 吸引機構
W ガラス基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮上ステージから基板を浮上させつつ、前記基板を位置決めして保持する基板保持装置であって、
前記基板の裏面に当接可能な接触部材と、
浮上している前記基板の裏面に前記接触部材を当接させて前記基板の移動を規制した状態で、前記基板を所定位置に位置決めする位置決め機構と、
前記位置決め機構により位置決めされた前記基板を吸着保持させる吸引機構と、
を具備したことを特徴とする基板保持装置。
【請求項2】
前記接触部材は、前記吸引機構に接続された吸着パッドであることを特徴とする請求項1に記載の基板保持装置。
【請求項3】
前記接触部材と、前記吸引機構と、前記位置決め機構とを、前記浮上ステージに沿って往復移動自在な搬送ユニットに設けたことを特徴とする請求項1に記載の基板保持装置。
【請求項4】
基板を浮上させる工程と、
浮上した前記基板の裏面に接触部材を当接させて前記基板の移動を規制する工程と、
前記接触部材と前記基板との当接状態を維持しつつ前記基板を移動させて、前記基板の位置決めをする工程と、
位置決め後に前記基板を吸着保持する工程と、
を備えることを特徴とする基板の保持方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−269498(P2006−269498A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−81608(P2005−81608)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】