説明

基板処理装置

【課題】処理槽内の処理液の温度分布を略均一にすることにより、良好な基板処理を可能とする基板処理装置を提供する。
【解決手段】薬液調合槽50のヒータ53および処理槽20のヒータ29によってエッチング液の液温をエッチング温度に加温して維持する。また、エッチング温度以上のガス吐出温度に維持された窒素ガスを窒素ガス供給ノズル12から処理槽20の上部付近に向けて供給する。これにより、エッチング液21からの熱移動を補償でき、エッチング液21の各部分における温度分布を略均一に維持できるため、良好なエッチング処理を実行できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板、液晶表示装置用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板等(以下、単に「基板」と称する)を加熱された処理液に浸漬して所定の処理を施す基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、処理液の貯留された処理槽に複数毎の基板を同時に浸漬させて所定の処理を施す装置が知られている。このような基板処理装置において、例えば、基板上に層間絶縁膜として形成されたSi3N4層をリン酸によって選択的に除去するエッチング処理が施される場合、エッチング処理の進行速度を高めることを目的として、室温より高い温度に加温されたリン酸液(エッチング液)が使用される。そして、リン酸の加温は、例えば、処理槽内に設けられた投げ込みヒータ等によって行われる(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−154665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、従来のエッチング処理では、層間絶縁膜のエッチング量は数100nm程度まで許容されていた。しかし、システムLSIに代表されるように、近年の配線パターンのさらなる微細化の要求により、エッチング処理におけるエッチング量のさらなる高精度化が求められている。そのため、エッチング処理においても、基板全面を数nm程度で均一にエッチングすることが求められる。その結果、処理槽に貯留された熱リン酸の温度分布に不均一が生ずると、基板全面にわたって数nm程度に均一にエッチング処理を施すことができないといった問題が生じていた。
【0005】
また、リン酸によるエッチング処理が完了した後に純水による洗浄処理を施すために、処理槽からリンス槽に基板を搬送する場合、処理槽からリンス槽に搬送する期間にもエッチング処理が進行する。すなわち、エッチング処理中、リン酸は加温されており、基板も同様に加熱されることになる。そのため、加熱された基板をリン酸が付着した状態で搬送すると、付着部分でエッチング処理がさらに進行し、基板全面にわたってエッチング量の均一性を維持できないという問題も生ずる。
【0006】
そして、以上の問題は、エッチング処理に限定されず、加熱された処理液によって所定の基板処理を施す場合にも同様に生ずる。
【0007】
そこで、本発明では、処理槽内の処理液の温度分布を略均一にすることにより、良好な基板処理を可能とする基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、処理液により基板に所定の処理を行う基板処理装置であって、処理液を貯留する処理槽と、前記処理槽内の処理液に基板を保持する基板保持機構と、前記処理槽に処理液を供給する処理液供給部と、処理液を加熱する処理液加熱部と、前記処理槽に貯留され、前記処理液加熱部により加熱された処理液の液面に加熱された気体を供給する気体供給部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の基板処理装置において、前記気体供給部は、処理液の液面へ気体を供給するための気体供給ノズルと、気体を加熱するための気体加熱部と、一端が前記気体供給ノズルに、他端が前記気体加熱部に連通接続され、前記気体加熱部により加熱された気体を前記気体供給ノズルへ供給するための気体供給配管と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項2に記載の基板処理装置において、前記気体供給配管に設けられ、前記気体供給配管に流れる気体を加熱するための帯状のヒータ、をさらに備えたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項1に記載の基板処理装置において、前記処理槽から排出された処理液を再び前記処理液供給部から処理液を供給するための循環路、をさらに備え、前記処理液加熱部は、前記循環路の途中に設けられ、処理液を貯留するための貯留部と、前記貯留部内の処理液を加熱するための貯留部用ヒータと、を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項5の発明は、請求項4に記載の基板処理装置において、前記気体供給部は、処理液の液面へ気体を供給するための気体供給ノズルと、一端が前記気体供給ノズルに連通接続され、気体を前記気体供給ノズルへ供給するための気体供給配管と、を備え、前記気体供給配管の一部は、前記貯留部の周囲に配置されていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項6の発明は、請求項5に記載の基板処理装置において、前記気体供給配管は、前記貯留部の周囲に配置されている部分と前記気体供給ノズルとの間の少なくとも一部に前記気体供給配管に流れる気体を加熱するための帯状のヒータ、をさらに備えたことを特徴とする。
【0014】
また、請求項7の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の基板処理装置において、前記処理液加熱部は、処理槽の外部に設けられ、前記処理槽内に貯留された処理液を加熱する処理槽用ヒータ、を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【発明の効果】
【0015】
請求項1から請求項7に記載の発明によれば、処理液加熱部により加熱された処理液の液面に気体供給部から加熱された気体を供給しているので、液面の温度の低下を抑制でき、その結果、処理槽内における処理液による基板に対するエッチング等の処理を均一に行うことができる。
【0016】
特に、請求項2に記載の発明によれば、気体供給部から処理槽内へ供給される気体の加熱を簡易な構成で行うことができる。
【0017】
特に、請求項3に記載の発明によれば、帯状のヒータにより気体供給配管途中での気体の温度低下を抑制できる。
【0018】
特に、請求項4に記載の発明によれば、処理槽に貯留される処理液を簡易な構成で加熱することができる。
【0019】
特に、請求項5に記載の発明によれば、貯留用ヒータが処理液を加熱するとともに、気体も加熱するので、1つのヒータで液体・気体の加熱を行うことができる。
【0020】
特に、請求項6に記載の発明によれば、帯状のヒータにより気体供給配管途中での気体の温度低下を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
<1.第1の実施の形態>
<1.1.基板処理装置の構成>
図1は、本発明の第1の実施の形態における基板処理装置1の全体構成の一例を示す図である。ここで、基板処理装置1は、いわゆるバッチ式の装置であり、複数枚の基板を同時にリン酸等の薬液や純水(以下、これらを総称して「処理液」とも呼ぶ)に浸漬させてエッチング処理やリンス処理等を施す。図1に示すように、基板処理装置1は、主として、処理チャンバ10、処理槽20、リフタ40、および薬液調合槽50を備える。
【0023】
処理チャンバ10は、その内部に処理槽20、窒素ガス供給ノズル12、リフタ40等を収容する筐体である。処理チャンバ10の上部は図示を省略するスライド式開閉機構によって開閉可能とされる。処理チャンバ10の上部を開放した状態では、その開放部分から基板の搬出入ができる。一方、処理チャンバ10の上部を閉鎖した状態では、その内部を密閉空間にできる。
【0024】
また、処理チャンバ10の下部は、排気管36を介してポンプ35と連通接続されてる。そのため、ポンプ35を駆動させることにより、処理チャンバ10内の雰囲気を排気管36を介して処理チャンバ10外に排気する。
【0025】
処理槽20は、石英によって形成されており、エッチング液として使用されるリン酸を貯留する槽である。処理槽20では、貯留されたエッチング液によって基板Wに形成されたSi3N4層等を選択的に除去するエッチング処理が施される。図1に示すように、処理槽20は、主として、ヒータ29、温度検出器26、処理液供給ノズル22、および回収部25を備える。
【0026】
ヒータ29は、処理槽20の底部付近の外壁に設けられた加熱部であり、フィルム状のヒータを耐熱接着剤により接着したものである。また、温度検出器26は、処理槽20内に配置されており、貯留されるエッチング液21の液温を検出する。これにより、温度検出器26で検出された温度に基づき、ヒータ29の出力を制御するため、処理槽20内のエッチング液21は、加温され、150〜180度(好ましくは、150〜165度)の範囲内の所定の温度(以下、「エッチング温度」とも呼ぶ)に維持される。
【0027】
2本の処理液供給ノズル22(22a、22b)は、処理槽20内の底部付近に配置され、紙面鉛直方向に延伸するノズルであり、処理槽20内にエッチング液を供給する。
【0028】
また、処理槽20の上端部付近には、処理槽20から溢れ出るエッチング液を回収する回収部25が設けられる。すなわち、エッチング処理中において、エッチング液は2本の処理液供給ノズル22から処理槽20内に供給され続ける。そのため、エッチング液の一部は処理槽20の上端部から溢れ出て回収部25で回収される。そして、回収されたエッチング液は、回収配管37を介して気水分離部38に供給される。
【0029】
気水分離部38は、エッチング処理中に回収部25で回収されたエッチング液および気体を回収するとともに、回収したエッチング液および気体を液相と気相とに分離する。また、処理槽20でエッチング処理が施されない場合には、処理チャンバ10内の雰囲気を回収部25から処理チャンバ10外部に排気するために使用される。そして、分離された液相に含まれるエッチング液は、気水分離部38から回収配管37を介して薬液調合槽50に再投入される。すなわち、回収部25で回収されたエッチング液は、回収配管37および気水分離部38を介して薬液調合槽50に貯留される。
【0030】
薬液調合槽50は、石英によって形成された槽であり、エッチング処理に未使用のエッチング液、および回収部25で回収されたエッチング液を一時的に貯留するとともに、加温して所定の温度に維持する。図1に示すように、薬液調合槽50は、主として、排気管54、およびヒータ53を備える。
【0031】
ここで、エッチング処理に未使用のエッチング液は、エッチング液供給源61から供給されるリン酸と、純水供給源71から供給される純水とが、ミキシングバルブ63によって所定の割合で混合されることによって得られる。そして、未使用のエッチング液は、配管64および回収配管37を介して薬液調合槽50に供給される。すなわち、本実施の形態において、エッチング液供給源61、純水供給源71およびミキシングバルブ63は処理液の供給部として使用される。
【0032】
排気管54は、薬液調合槽50内の上部雰囲気と連通接続されており、薬液調合槽50内の雰囲気を外部に排気することができる。
【0033】
ヒータ53は、薬液調合槽50の底部付近の外壁に設けられた加熱部である。これにより、不図示の温度検出器による液温に基づいてヒータ53の出力を制御できるため、薬液調合槽50内に貯留されるエッチング液51は、加温されてエッチング温度に維持される。
【0034】
そして、所定の温度に加温されたエッチング液は、共通配管31の途中に設けられたポンプ34を駆動することにより、共通配管31、および、各処理液供給ノズル22(22a、22b)に対応した分岐配管32(32a、32b)を介して、各処理液供給ノズル22(22a、22b)から処理槽20内に供給される。
【0035】
また、共通配管31の途中には、図1に示すように、フィルタ33が設けられる。フィルタ33は、エッチング処理に使用されて回収された使用済みのエッチングに含まれる不純物を除去する。そのため、回収されたエッチング液を再利用しても良好にエッチング処理を実行できる。
【0036】
このように、処理槽20から溢れ出て回収部25で回収されたエッチング液は、回収配管37、共通配管31、および分岐配管32を介して、再度、処理槽20内に供給されて再利用される。すなわち、本実施の形態において、回収配管37、共通配管31、および分岐配管32は、エッチング液の循環路として使用される。また、この循環路の途中に設けられた薬液調合槽50により、回収部25で回収したエッチング液は、加熱されて所定の温度に維持される。
【0037】
また、本実施の形態において、処理槽20に貯留されて所定の温度に加温・維持されたエッチング液21の上部付近には、窒素ガス供給ノズル12から加熱された不活性ガス(本実施の形態では窒素ガス)が供給される。
【0038】
窒素ガス供給ノズル12は、紙面鉛直方向に延伸するノズルであり、処理槽20の上方に配設される。図1に示すように、窒素ガス供給ノズル12は、ガス供給配管56、ガス導入管55、配管82、およびバルブ83を介して窒素ガス供給源81と連通接続される。
【0039】
ガス導入管55は、石英によって形成された細管であり、薬液調合槽50の周囲に近接させてらせん状に配設される。なお、本実施の形態において、ガス導入管55は薬液調合槽50の周囲に溶着される。
【0040】
これにより、ガス導入管55を流通する窒素ガスは、薬液調合槽50内の加温されたエッチング液からの熱移動によって加温される。すなわち、ガス導入管55を流通する窒素ガスは薬液調合槽50内のエッチング液51と熱交換することによって加温される。そのため、ガス導入管55自身に加熱部等の余分な設備を設ける必要がなく、窒素ガスの加熱を簡易な構成でできるとともに、基板処理装置1の製造コストを低減できる。
【0041】
図2は、ガス供給配管56付近の構成の一例を示す図である。図3は、ガス供給配管56を流通する窒素ガスを加温する帯ヒータ58を説明するための図である。図1に示すように、ガス導入管55にて加温された窒素ガスはガス供給配管56に導入される。
【0042】
ガス供給配管56は、その周囲に帯ヒータ58aがらせん状に巻かれる。ここで、帯ヒータ58aは、ヒータ素線がガラス繊維で絶縁されたものであり、図3に示すように、帯状の形状を有する。したがって、ガス供給配管56の周囲に巻きつけて、ガス供給配管56の内部を流通する窒素ガスを加温することができる。また、ガス供給配管56の窒素ガス供給ノズル12側の端部付近には、ガス供給配管56内を流通する窒素ガスの温度を測定する熱電対13が設けられる(図1参照)。
【0043】
これにより、熱電対13によって検出された窒素ガスの温度に基づき、帯ヒータ58の出力を制御できるため、窒素ガス供給ノズル12から吐出される窒素ガスは、加温されて150〜180度(好ましくは、150〜170度であって、かつ、処理槽20に貯留されるエッチング液21の液温以上)の範囲内の所定の温度(以下、「ガス吐出温度」とも呼ぶ)に維持される。なお、ガス吐出温度は、ポンプ35による排気量等を考慮して実験等により予め求められる。
【0044】
また、ガス導入管55を流通する窒素ガスは、加熱されたエッチング液51からの熱移動によって加温されるため、ガス導入管55を流通する窒素ガスの温度は、エッチング液51液温と略同一、または、室温より高温となる。その結果、帯ヒータ58では、窒素ガスの温度を室温からガス吐出温度まで昇温させる必要がなく、帯ヒータ58の電力を低減できる。
【0045】
また、ガス導入管55にて窒素ガスをガス吐出温度まで加温できる場合であっても、ポンプ35によって処理チャンバ10内の雰囲気が排気されると、ガス供給配管56内の窒素ガスからガス供給配管56外部に向かって熱移動が生ずることにより、窒素ガスの温度が低下する。しかし、本実施の形態では、帯ヒータ58に電力供給することにより、窒素ガスの温度をガス吐出温度に維持しつつ窒素ガス供給ノズル12まで到達させられる。そのため、少量の電力供給により、窒素ガスの温度の低下を防止できる。
【0046】
そして、バルブ83が開放されると、窒素ガス供給ノズル12からは、吐出方向AR1の向きにエッチング液21の液温以上に加温された窒素ガスが吐出され、処理槽20に貯留されたエッチング液21の上部付近に供給される。これにより、処理槽20に貯留されたエッチング液21の上部付近から処理チャンバ10の雰囲気に向けて熱移動が生じて、エッチング液21の上部付近の液温がエッチング温度から低下することを防止できる。
【0047】
すなわち、加温された窒素ガスを供給しない場合、処理槽20内のエッチング液21は、処理槽20の底部外壁に設けられたヒータ29によって加温される。一方、処理槽20の上部付近から処理チャンバ10の雰囲気に向けて熱移動が生ずる。これにより、エッチング液21の温度は、処理槽20の底部付近の方が処理槽20の上部付近より高くなり、エッチング液21の温度分布が均一とならない。そのため、処理槽20底部付近の方が処理槽20上部付近よりもエッチング量が多くなり、基板W上の各部分でエッチング量が相違することになる。
【0048】
これに対して、加温された窒素ガスを供給する場合、エッチング液21からの熱移動をガス吐出温度に加温した窒素ガスによって補償できる。そのため、処理槽20に貯留されたエッチング液21の各部分における温度分布を略均一に維持でき、エッチング液21に浸漬される角基板の全面にわたって数nm程度に均一に良好なエッチング処理をすることができる。
【0049】
リフタ40は、処理槽20に貯留されるエッチング液21に一組の複数(本実施の形態では25枚または50枚)の基板Wを浸漬させる機構である。図1に示すように、リフタ40は、3本の保持棒41を備える。3本の保持棒41のそれぞれには、基板Wの外縁部がはまり込んで基板Wを起立姿勢にて保持する複数の保持溝(図示省略)が所定間隔にて紙面垂直方向に配列して設けられる。これにより、リフタ40は、各基板Wを3本の保持棒41によって起立姿勢で保持しつつ上下方向に昇降する。
【0050】
制御部90は、プログラムや変数等を格納するメモリ91と、メモリ91に格納されたプログラムに従った制御を実行するCPU92とを備える。CPU92は、メモリ91に格納されているプログラムに従って、ヒータ29、53の出力制御、リフタ40の昇降制御、およびミキシングバルブ63、バルブ83の開閉制御等を所定のタイミングで行う。
【0051】
<1.2.基板処理のシーケンス>
ここでは、基板処理装置1の処理チャンバ10内で施される基板処理のシーケンスについて説明する。まず、処理チャンバ10のスライド開閉機構(図示省略)が開放されて、リフタ40がこのスライド開閉機構を介して処理チャンバ10の外部まで上昇する。続いて、リフタ40は、搬送ロボット(図示省略)から一組の複数の基板Wを受取る。
【0052】
次に、リフタ40を下降させ、スライド開閉機構(図示省略)が閉鎖されるとともに、複数の基板Wが処理槽20に貯留されたエッチング液に浸漬されることにより、各基板Wに対してエッチング処理が施される。
【0053】
ここで、エッチング処理中において、ヒータ29、35のそれぞれには電力が供給され続けるとともにポンプ34が駆動し続けるため、液温がエッチング温度に設定されたエッチング液は処理槽20内に供給されて、処理槽20の上部からはエッチング液が溢れ出る。そして、溢れ出たエッチング液は回収部25で回収され再度薬液調合槽50に供給される。すなわち、エッチング液は、処理槽20に循環供給される。
【0054】
さらに、エッチング処理中には、窒素ガス供給ノズル12からガス吐出温度に維持された窒素ガスが供給され続ける。すなわち、エッチング処理中において帯ヒータ58には電力が供給され続けるため、窒素ガスは、薬液調合槽50および帯ヒータ58によって加温されて、窒素ガス供給ノズル12から処理槽20のエッチング液21の上部付近に向けてガス吐出温度に維持された窒素ガスが供給され続ける。
【0055】
これにより、エッチング液21から処理チャンバ10の雰囲気中に向かって移動する熱をガス吐出温度に加温した窒素ガスの熱によって補償できる。そのため、処理槽20に貯留されたエッチング液21の各部分における温度分布を略均一に維持でき、エッチング液21に浸漬される基板Wの全面にわたって数nm程度に均一に良好なエッチング処理をすることができる。
【0056】
そして、エッチング処理が完了した後に、スライド開閉機構(図示省略)を開放し、リフタ40を処理チャンバ10の上方まで上昇させ、一組の複数の処理済み基板Wをリフタ40から搬送ロボット(図示省略)に受け渡すことにより、処理チャンバ10での処理を終了する。
【0057】
<1.3.第1の実施の形態の基板処理装置の利点>
以上のように、第1の実施の形態の基板処理装置1は、薬液調合槽50のヒータ53および処理槽20のヒータ29によってエッチング液の液温をエッチング温度に加温して維持できる。また、エッチング温度以上のガス吐出温度に維持された窒素ガスを窒素ガス供給ノズル12から処理槽20の上部付近に供給することにより、エッチング液21から処理チャンバ10内の雰囲気への熱移動を補償できる。そのため、エッチング液21の各部分における温度分布を略均一に維持でき、良好なエッチング処理を実行できる。
【0058】
<2.第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図5は、本実施の形態の基板処理装置100の全体構成の一例を示す図である。図5に示すように、第2の実施の形態における基板処理装置100は、第1の実施の形態の基板処理装置1と比較して、
(1)純水の供給方法が異なる点と、
(2)比重検出器127を有する点と、
を除いては、第1の実施の形態の基板処理装置1とハードウェア構成において同様である。そこで、以下ではこの相違点を中心に説明する。
【0059】
なお、以下の説明において、第1の実施の形態の基板処理装置1における構成要素と同様な構成要素については同一符号を付している。これら同一符号の構成要素は、第1の実施の形態において説明済みであるため、本実施形態では説明を省略する。
【0060】
<2.1.基板処理装置の構成>
純水供給ノズル175は、紙面鉛直方向に延伸するノズルであり、処理槽20の上方に窒素ガス供給ノズル12と隣接して配設される。また、純水供給ノズル175は、供給配管172およびバルブ173を介して純水供給源171に連通接続される。これにより、バルブ173が開放されると、純水供給ノズル175から処理槽20の上方に向けて略室温の純水を供給できる。
【0061】
また、エッチング処理中においては、処理槽20に貯留されるエッチング液21は沸点付近まで加温される。この液温状態において、少量の純水をエッチング液21に供給することにより、エッチング液21が突沸することを防止できる。
【0062】
比重検出器127は、処理槽20内に配置されており、貯留されたエッチング液21の比重を検出する。ここで、エッチング処理において、エッチング液の比重は、エッチング液の液温とともに、単位時間当りのエッチング量を規定する重要なパラメータである。
【0063】
したがって、制御部90は、比重検出器127によって検出されるエッチング液の比重値に基づいてバルブ173およびバルブ163の開閉制御してエッチング液または純水を供給することにより、エッチング液の比重値が所定範囲となるように調整する。なお、エッチング液が満たすべき比重値の所定範囲は、実験等によって予め求めても良い。
【0064】
<2.2.基板の引上げ動作のシーケンス>
ここで、基板処理装置100にてエッチング処理が完了すると、一組の複数の基板Wは、リフタ40によって処理チャンバ10の外部に上昇させられるとともに、搬送ロボット(図示省略)によって純水洗浄を施すリンス槽(図示省略)に搬送される。
【0065】
しかし、エッチング処理が完了した時点において、各基板Wはエッチング温度に加温されたエッチング液21によって加温されている。そのため、エッチング液が付着したままの状態で各基板Wを処理槽20からリンス槽まで搬送すると、エッチング液が付着した部分でエッチング処理が進行し、その結果、基板W全面にわたって均一なエッチング処理できないという問題が生ずる。
【0066】
そこで、以下では、上記問題の発生を防止しつつ、処理槽20のエッチング液21から基板Wを引上げる手順について説明する。なお、処理チャンバ10内で施される基板処理については、第1の実施の形態で説明済みであるため、ここでは省略する。
【0067】
エッチング液21に浸漬することによって施されるエッチング処理が完了すると、一組の複数の基板Wは、リフタ40によって上昇させられる。また、リフタ40が上昇し始める時点、または上昇直前の時点において、バルブ173が開放されて処理槽20の上方に向けて純水が供給される。すなわち、リフタ40によって上昇させ続けられる各基板Wに向けて純水が供給される。
【0068】
これにより、エッチング液21から引上げられる各基板Wの表面に付着したエッチング液は、純水によって取り除かれる。また、エッチング液21によって加温された各基板Wは、略室温の純水によって冷却されて、各基板Wの温度はエッチング処理可能な温度より低い温度まで降温される。そのため、各基板Wでのエッチング処理の進行が停止し、基板W上の各部分におけるエッチング量が不均一となる問題を防止できる。
【0069】
続いて、純水供給源171からの純水による冷却および洗浄処理が完了した基板は、リフタ40によってさらに上昇させ続けられ、スライド開閉機構(図示省略)を介して処理チャンバ10の上方に到達する。そして、各基板Wは、リフタ40から搬送ロボット(図示省略)に受け渡されることにより、基板の引上げ動作が終了する。
【0070】
<2.3.第2の実施の形態の基板処理装置の利点>
以上のように、第2の実施の形態の基板処理装置100は、エッチング処理が完了した後に、エッチング液21から各基板Wを引き上げる際に、各基板Wに向けて純水を供給できる。これにより、各基板Wに付着したエッチング液を除去しつつ、各基板Wの温度をエッチング温度から降温できる。そのため、エッチング処理の進行を確実に停止でき、基板W上の各部分におけるエッチング量が不均一となる問題を防止できる。
【0071】
<3.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明は上記の例に限定されるものではない。
【0072】
(1)第1および第2の実施の形態において、ガス供給配管56には帯状の帯ヒータ58がらせん状に巻かれているがこれに限定されるものでない。例えば、図4に示すように、ガス供給配管56の外側を筒状に覆う発熱体であってもよい。
【0073】
(2)第1および第2の実施の形態において、エッチング液供給源61、純水供給源71、窒素ガス供給源81および純水供給源171は、基板処理装置の構成要素として説明されているが、これに限定されるものでなく、例えば、半導体製造工場の共通配管からリン酸、純水および窒素ガスの供給を受けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1の実施の形態における基板処理装置の全体構成の一例を示す図である。
【図2】ガス供給配管56付近の構成の一例を示す図である。
【図3】帯ヒータ58を説明するための図である。
【図4】ガス供給配管56付近の構成の他の例を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態における基板処理装置の全体構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
1、100 基板処理装置
10 処理チャンバ
12 窒素ガス供給ノズル
13 熱電対
20 処理槽
25 回収部
26 温度検出器
29、53 ヒータ
34、35 ポンプ
38 気水分離部
50 薬液調合槽
55 ガス導入管
56 ガス供給配管
58(58a、58b) 帯ヒータ
61 エッチング液供給源
63 ミキシングバルブ
71、171 純水供給源
81 窒素ガス供給源
90 制御部
127 比重検出器
175 純水供給ノズル
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液により基板に所定の処理を行う基板処理装置であって、
処理液を貯留する処理槽と、
前記処理槽内の処理液に基板を保持する基板保持機構と、
前記処理槽に処理液を供給する処理液供給部と、
処理液を加熱する処理液加熱部と、
前記処理槽に貯留され、前記処理液加熱部により加熱された処理液の液面に加熱された気体を供給する気体供給部と、
を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記気体供給部は、
処理液の液面へ気体を供給するための気体供給ノズルと、
気体を加熱するための気体加熱部と、
一端が前記気体供給ノズルに、他端が前記気体加熱部に連通接続され、前記気体加熱部により加熱された気体を前記気体供給ノズルへ供給するための気体供給配管と、
を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置において、
前記気体供給配管に設けられ、前記気体供給配管に流れる気体を加熱するための帯状のヒータ、
をさらに備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記処理槽から排出された処理液を再び前記処理液供給部から処理液を供給するための循環路、
をさらに備え、
前記処理液加熱部は、
前記循環路の途中に設けられ、処理液を貯留するための貯留部と、
前記貯留部内の処理液を加熱するための貯留部用ヒータと、
を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の基板処理装置において、
前記気体供給部は、
処理液の液面へ気体を供給するための気体供給ノズルと、
一端が前記気体供給ノズルに連通接続され、気体を前記気体供給ノズルへ供給するための気体供給配管
と、を備え、
前記気体供給配管の一部は、前記貯留部の周囲に配置されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の基板処理装置において、
前記気体供給配管は、
前記貯留部の周囲に配置されている部分と前記気体供給ノズルとの間の少なくとも一部に前記気体供給配管に流れる気体を加熱するための帯状のヒータ、
をさらに備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の基板処理装置において、
前記処理液加熱部は、
処理槽の外部に設けられ、前記処理槽内に貯留された処理液を加熱する処理槽用ヒータ、
を備えたことを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−32673(P2006−32673A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−209682(P2004−209682)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】