説明

基板処理装置

【課題】基板のダメージを抑制または防止しつつ、不要になった膜を基板から除去することができる基板処理装置を提供すること。
【解決手段】基板処理装置1は、ウエハWを保持するスピンチャック7と、光を照射することで活性化する光活性化成分を含む処理液をスピンチャック7に保持されたウエハWに供給する薬液供給ユニット22と、スピンチャック7に保持されたウエハWに供給される光活性化成分を含む処理液に光を照射する照射ユニット4とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する基板処理装置に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、半導体ウエハなどの基板から不要になったレジストを除去するレジスト除去処理が行われる(たとえば特許文献1、2参照)。特許文献1に係るレジスト除去処理では、基板の表面にプラズマが照射されて、基板上のレジストがアッシングされる(アッシング処理)。そして、基板の表面にポリマー除去液が供給されてアッシングされたレジストが除去される。これにより、基板の表面から不要となったレジストが除去される。また、特許文献2に係るレジスト除去処理では、硫酸と過酸化水素水との混合液であるSPM(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:硫酸過酸化水素水混合液)が高温状態で基板の表面に供給される。基板上のレジストは、高温のSPMによる強酸化力によって基板の表面から除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−191511号公報
【特許文献2】特開2008−235341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、レジストのアッシングのためのプラズマの照射は、基板の表面のレジストで覆われていない部分(たとえば酸化膜や金属膜)にダメージを与えてしまう。そのため、FEOL(Front End of the Line:半導体製造プロセスにおける第1層目のメタル配線までの工程)では、アッシング処理による基板のダメージを回避するために、高温のSPMを基板に供給してレジストを除去する場合がある。しかしながら、高温のSPMを用いた場合でも、基板におけるレジストの下地となる部分が金属や有機物によって構成されている場合には、高温のSPMによる強酸化力によって基板にダメージ(たとえば、金属や有機物の腐食)が生じるおそれがある。さらに、高温のSPMを用いる場合には、耐熱性を有する部品を用いる必要があり、基板処理装置の部品の選定が困難になる。
【0005】
一方、BEOL(Back End of the Line:前工程の後に多層配線を形成する工程)では、BEOLにおいて形成されるパターンの大きさが相対的に大きいから、アッシング処理によるダメージが半導体装置の特性に与える影響は大きくなかった。より具体的には、たとえば、アッシング処理によるダメージによって、絶縁されるべき部分が絶縁不良になるなどの問題が生じることはなかった。しかしながら、今後、パターンが微細化していくと、アッシング処理によるダメージが半導体装置の特性に与える影響が大きくなってしまう。そのため、高温のSPMを用いてレジストを除去するなどの他の方法を用いて、アッシング処理によるダメージを回避する必要がある。しかしながら、高温のSPMを用いる場合には、FEOLにおける場合と同様に、高温のSPMによる強酸化力によって基板にダメージが生じるおそれがあり、かつ、耐熱性を有する部品で基板処理装置を構成する必要がある。
【0006】
そこで、この発明の目的は、基板のダメージを抑制または防止しつつ、不要になった膜を基板から除去することができる基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)を保持する基板保持手段(7、61)と、光を照射することで活性化する光活性化成分を含む処理液を前記基板保持手段に保持された基板に供給する処理液供給手段(22、222、322、422)と、前記基板保持手段に保持された基板に供給される前記光活性化成分を含む処理液に光を照射する照射手段(4、204、304)とを含む、基板処理装置(1、201、301、401)である。なお、この項において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すものとする。
【0008】
この発明によれば、光を照射することで活性化する光活性化成分を含む処理液を処理液供給手段によって基板保持手段に保持された基板に供給することができる。また、照射手段によって、基板に供給される光活性化成分を含む処理液に光を照射することができる。したがって、処理液に含まれる光活性化成分を照射手段からの光によって活性化させて、活性化した状態の光活性化成分を含む処理液を基板に供給することができる。これにより、除去することが比較的困難な不要な膜(たとえば、レジストや反射防止膜)が基板に形成されている場合でも、この活性化した光活性化成分を含む処理液によって当該不要な膜を基板から除去することができる。
【0009】
また、アッシング処理を行わずに基板から不要な膜を除去できるので、アッシング処理によるダメージが基板に生じることを防止することができる。さらに、高温のSPMを用いて基板からレジストを除去する場合と異なり、処理液を高温にしなくてもよいので、耐熱性を有する部品を用いる必要がない。そのため、基板処理装置の部品の選定が容易である。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記処理液供給手段は、前記光活性化成分を含む処理液を貯留する処理液貯留部(26)と、処理液貯留部に貯留された処理液を前記基板保持手段に保持された基板に導くための処理液供給配管(27)とを含むものであり、前記照射手段は、前記処理液供給配管を流通する処理液に光を照射するものである、請求項1記載の基板処理装置である。
【0011】
この発明によれば、処理液貯留部に貯留された前記光活性化成分を含む処理液が処理液供給配管を介して基板保持手段に保持された基板に導かれる。したがって、照射手段からの光が処理液供給配管を流通する処理液に照射されることにより、基板に供給される処理液に確実に光を照射することができる。これにより、活性化した状態の光活性化成分を含む処理液を確実に基板に供給することができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、前記処理液供給手段は、前記光活性化成分を含む処理液を貯留する処理液貯留部と、処理液貯留部に貯留された処理液を前記基板保持手段に保持された基板に導くための処理液供給配管とを含むものであり、前記照射手段は、前記処理液貯留部に貯留された処理液に光を照射するものである、請求項1または2記載の基板処理装置である。
【0013】
この発明によれば、処理液貯留部に貯留された処理液に光が照射されるので、配管内を流れる処理液に光を照射する場合に比べて、処理液への光の照射時間を増加させることができる。したがって、光活性化成分が照射時間の増加に伴ってより活性化する場合には、より活性度の高い光活性化成分を含む処理液を基板に供給することができる。これにより、不要になった膜を基板から確実に除去することができる。
【0014】
請求項4記載の発明は、前記処理液供給手段は、前記光活性化成分を含む処理液を貯留する処理液貯留部と、処理液貯留部に貯留された処理液を前記基板保持手段に保持された基板に導くための処理液供給配管と、前記処理液貯留部および前記処理液供給配管に連結され、前記処理液貯留部に貯留された処理液を循環させるための循環配管(28)とを含むものであり、前記照射手段は、前記循環配管を流通する処理液に光を照射するものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0015】
この発明によれば、循環配管を流通する処理液に光が照射されるので、処理液貯留部に貯留された処理液を循環させることにより、処理液に繰り返し光が照射されて、処理液への光の照射時間を増加させることができる。また、処理液貯留部に貯留された処理液に光が照射される場合に比べて、処理液に均一に光を照射することができる。これにより、処理液に含まれる光活性化成分を確実に活性化させることができる。
【0016】
請求項5記載の発明は、前記処理液供給手段は、前記光活性化成分を含む処理液を吐出する処理液ノズル(41、59)を含むものであり、前記照射手段は、前記処理液ノズル内を流通する処理液、または前記処理液ノズルから吐出された処理液に光を照射するものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置である。前記照射手段は、前記処理液ノズルから吐出され、前記基板保持手段に保持された基板に達する前の処理液に光を照射するものであってもよいし、前記処理液ノズルから吐出され、前記基板保持手段に保持された基板に保持された処理液に光を照射するものであってもよい。
【0017】
この発明によれば、照射手段からの光が、処理液ノズル内を流通する処理液、または処理液ノズルから吐出された処理液に照射されるので、たとえば、光の照射後活性状態が短時間しか維持されない光活性化成分を含む処理液を基板に供給する場合であっても、活性化した状態の光活性化成分を含む処理液を確実に基板に供給することができる。また、処理液ノズル内を流通する処理液、または基板保持手段に保持された基板に達する前の処理液に光を照射することにより、基板に光を直接照射することなく、活性化した状態の光活性化成分を含む処理液を確実に基板に供給することができる。これにより、光の照射を避けたい基板を処理する場合でも、基板に対する光の照射を防止しつつ、活性化した状態の光活性化成分を含む処理液を確実に基板に供給することができる。
【0018】
請求項6記載の発明は、前記基板保持手段は、一枚の基板を保持するものであり、前記基板保持手段に保持された基板の一方の主面に対向する対向部材(9)と、前記一方の主面と前記対向部材との間に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段(15、16、17、18)とをさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この発明によれば、不活性ガス供給手段によって、基板の一方の主面と対向部材との間に不活性ガスを供給することにより、基板の一方の主面と対向部材との間の雰囲気を窒素ガス雰囲気に置換することができる。これにより、基板の一方の主面近傍の酸素濃度を低下させた状態で、前記光活性化成分を含む処理液を基板の一方の主面に供給することができる。したがって、たとえば、処理液の作用によって酸化され易い膜や配線(たとえば、銅膜や銅配線)が基板の一方の主面に形成されている場合でも、この膜と酸素との反応を抑制または防止して、当該膜の酸化を抑制または防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】照射ユニットの構造を説明するための模式図である。
【図3】基板処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【図4】第1実施形態に係る基板処理装置によるウエハの処理の一例を説明するための工程図である。
【図5】第2実施形態に係る照射ユニットの他の配置例について説明するための模式図である。
【図6】第2実施形態に係る照射ユニットのさらに他の配置例について説明するための模式図である。
【図7】第2実施形態に係る照射ユニットのさらに他の配置例について説明するための模式図である。
【図8】第2実施形態に係る照射ユニットのさらに他の配置例について説明するための模式図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す模式図である。
【図10】二流体ノズルおよび照射ユニットの断面図である。
【図11】図10におけるXI−XI線に沿う照射ユニットの要部の部分断面図である。
【図12】第2実施形態に係る照射ユニットの他の配置例について説明するための模式図である。
【図13】本発明の第3実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す模式図である。
【図14】本発明の第4実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1の概略構成を示す模式図である。この基板処理装置1は、基板の一例である半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」という。)からレジストや反射防止膜などの不要になった膜その他の不要物を除去する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、ウエハWを処理するための処理ユニット2と、ウエハWに処理液を供給する処理液供給ユニット3と、ウエハWに供給される処理液に光を照射する照射ユニット4(照射手段)とを備えている。
【0021】
処理ユニット2は、隔壁5で区画された処理室6内に、ウエハWを水平に保持して回転させるスピンチャック7(基板保持手段)と、スピンチャック7に保持されたウエハWから排出される処理液を受け止めて捕獲するためのカップ8と、スピンチャック7の上方に配置された遮断板9(対向部材)とを備えている。
スピンチャック7は、一枚のウエハWを水平に保持してウエハWの中央部を通る鉛直軸線まわりに回転させるものである。スピンチャック7は、図1に示すように、ウエハWの周端面を挟持して当該ウエハWを保持する挟持式のチャックであってもよいし、ウエハWの下面(裏面)を吸着して当該ウエハWを保持するバキューム式のチャックであってもよい。
【0022】
カップ8は、スピンチャック7を取り囲んでいる。カップ8は、スピンチャック7に保持されたウエハWから排出される処理液を捕獲するための2つの処理液捕獲部(リンス液捕獲部10および薬液捕獲部11)を有している。カップ8は、内部の経路を切り替えることにより、ウエハWから排出されるリンス液および薬液を、それぞれ、リンス液捕獲部10および薬液捕獲部11に導くことができる。
【0023】
遮断板9は、ウエハWとほぼ同じ直径(あるいはウエハWよりも少し大きい直径)を有する円板状の部材である。遮断板9の下面は水平な平坦面である。遮断板9の下面は、スピンチャック7に保持されたウエハWの上面に対向する基板対向面に相当する。遮断板9は、支軸12の下端に連結されており、遮断板9の中心軸線は、スピンチャック7の回転軸線を通る鉛直な軸線上に位置している。
【0024】
また、遮断板9の中央部には、遮断板9を鉛直方向に貫通する貫通孔が形成されている。貫通孔の下端は、遮断板9の下面中央部に位置する開口となっている。支軸12は中空軸であり、その内部空間は貫通孔に連通されている。支軸12の内周には、処理液供給管13が非接触状態で挿通している。処理液供給管13の下端は遮断板9の貫通孔内に達しており、処理液供給管13の下端には、処理液を吐出する処理液吐出口14が形成されている。後述するように、処理液供給管13は、処理液供給ユニット3の一部である。
【0025】
また、処理液供給管13の周囲には、気体が流通する筒状の気体流通路15が形成されている。また、支軸12の上端部には、気体バルブ16が介装された気体供給管17が接続されている。気体流通路15には、この気体供給管17を介して不活性ガスの一例である窒素ガスが供給される。気体流通路15に供給される気体は、窒素ガスに限らず、ヘリウムガスや、アルゴンガスなどのその他の不活性ガスであってもよい。
【0026】
気体流通路15に供給された窒素ガスは、気体流通路15内を下方に向かって流れ、遮断板9の内周面(貫通孔を区画する面)と処理液供給管13の下端との間から下方に向けて吐出される。遮断板9の内周面と処理液供給管13の下端との間の空間は、気体を吐出する気体吐出口18として機能する。この実施形態では、気体流通路15、気体バルブ16、気体供給管17、および気体吐出口18によって、不活性ガス供給手段が構成されている。
【0027】
また、遮断板9および支軸12は、遮断板9の中心軸線まわりに回転可能とされている。また、遮断板9および支軸12は、鉛直方向に昇降可能とされている。支軸12には、遮断板昇降機構19および遮断板回転機構20が結合されている。遮断板昇降機構19の駆動力を支軸12に入力させることにより、遮断板9の下面がスピンチャック7に保持されたウエハWの上面に近接する近接位置(図1において二点鎖線で示す位置)と、スピンチャック7の上方に大きく退避した退避位置との間で支軸12および遮断板9を一体的に昇降させることができる。また、遮断板回転機構20の駆動力を支軸12に入力させることにより、スピンチャック7と共通の鉛直な回転軸線まわりに支軸12および遮断板9を一体的に回転させることができる。
【0028】
処理液供給ユニット3は、スピンチャック7に保持されたウエハWにリンス液を供給するためのリンス液供給ユニット21と、スピンチャック7に保持されたウエハWに薬液を供給するための薬液供給ユニット22(処理液供給手段)とを備えている。
リンス液供給ユニット21は、リンス液を吐出するリンス液ノズル23と、リンス液ノズル23にリンス液を供給するリンス液供給管24とを備えている。リンス液ノズル23は、たとえば、連続流の状態でリンス液を吐出する、いわゆるストレートノズルである。リンス液ノズル23は、吐出したリンス液がスピンチャック7に保持されたウエハWの上面中央部に着液するように配置されている。また、リンス液供給管24には、リンス液ノズル23へのリンス液の供給および供給停止を切り替えるためのリンス液バルブ25が介装されている。リンス液としては、純水(脱イオン水)、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水や、希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水などを例示することができる。
【0029】
薬液供給ユニット22は、前述の処理液供給管13と、薬液を貯留する薬液タンク26(処理液貯留部)と、薬液タンク26に貯留された薬液を処理液供給管13に導く薬液供給配管27(処理液供給配管)と、薬液タンク26に貯留された薬液を循環させる循環配管28と、カップ8により捕獲された薬液を薬液タンク26に回収する回収配管29とを備えている。
【0030】
薬液供給配管27の一端は、薬液タンク26に連結されており、薬液供給配管27の他端は、処理液供給管13に連結されている。また、薬液供給配管27には、ポンプ30、フィルタ31、および供給バルブ32が介装されている。薬液タンク26内の薬液は、ポンプ30の吸引力によって薬液供給配管27に取り込まれる。ポンプ30は、たとえば常時駆動されており、薬液タンク26内の薬液は、常時、薬液供給配管27に取り込まれている。また、フィルタ31は、薬液供給配管27内を流通する薬液から異物を除去することができる。照射ユニット4は、たとえば、薬液供給配管27における供給バルブ32よりも下流側の位置に介装されている。
【0031】
循環配管28の一端は、薬液タンク26に連結されており、循環配管28の他端は、薬液供給配管27における供給バルブ32が介装された位置よりも上流側に連結されている。循環配管28には、循環バルブ33が介装されている。供給バルブ32が開かれ、循環バルブ33が閉じられることにより、ポンプ30の吸引力によって薬液供給配管27に取り込まれた薬液が、処理液供給管13に供給される。また、供給バルブ32が閉じられ、循環バルブ33が開かれることにより、ポンプ30の吸引力によって薬液供給配管27に取り込まれた薬液が、循環配管28を通って薬液タンク26に帰還する。これにより、薬液タンク26内の薬液が、薬液供給配管27の一部および循環配管28によって構成された循環経路C1を循環する。この実施形態では、処理液供給管13に薬液を供給しないときは、供給バルブ32が閉じられ、循環バルブ33が開かれて、薬液タンク26内の薬液が循環経路C1を常時循環する。
【0032】
また、回収配管29の一端は、薬液タンク26に連結されており、回収配管29の他端は、カップ8に設けられた薬液捕獲部11に連結されている。薬液捕獲部11に捕獲された薬液は、回収配管29を通じて薬液タンク26に導かれる。これにより、薬液捕獲部11に捕獲された薬液が薬液タンク26に回収される。
薬液タンク26には、光を照射することで活性化する光活性化成分を含む薬液が貯留されている。光活性化成分を含む薬液とは、光が照射されることにより、ウエハWから除去される膜(たとえばレジストや反射防止膜)の分子間の結合を切断する作用を有するようになる添加剤を含んだ薬液である。この添加剤の作用により、ウエハW上の不要な膜が分子レベルで分解され、薬液に溶解されることにより、ウエハW上から容易に剥離される。
【0033】
図2は、照射ユニット4の構造を説明するための模式図である。
照射ユニット4は、本体34および光源35を備えている。本体34は、処理液に光を照射するための照射室36と、この照射室36内に挿入された筒状部材37とを含む。照射室36には、入口38および出口39が連通されており、入口38および出口39には、それぞれ、薬液供給配管27が接続されている。薬液供給配管27から供給される薬液は、入口38を通って照射室36に入り、出口39を通って照射室36から出ていく。このとき、薬液供給配管27から供給された薬液は、照射室36に入った後にすぐに出口39に向かうのではなく、照射室36内で一定時間貯留された後に出口39に向かう。より具体的には、照射室36内の流路面積は、薬液供給配管27の流路面積よりも大きい。そのため、入口38から照射室36内に入った薬液は、一旦、照射室36内に貯留されてゆっくりと出口39に達する。これにより、照射室36に供給された薬液に光を照射する時間が確保されている。
【0034】
また、筒状部材37は、たとえば石英ガラス製であり、薬液に対する耐性を有し、さらに、光を透過させることができる。また、光源35としては、たとえばキセノンランプが用いられている。光源35から発せられる光の波長は、たとえば紫外線領域〜500nmの範囲内にある。光源35は、たとえば棒状に形成され、筒状部材37内に挿入されている。したがって、光活性化成分を含む薬液が照射室36に貯留された状態で光源35が光を発すると、光源35からの光が筒状部材37を透過して、照射室36内の薬液に光が照射される。これにより、薬液に含まれる光活性化成分が活性化する。また、前述のように、入口38から照射室36内に入った薬液は、一旦、照射室36内に貯留されてゆっくりと出口39に達するので、その間に、光源35からの光によって薬液を充分に照射することができ、薬液中の光活性化成分を充分に活性化させることができる。
【0035】
図3は、基板処理装置1の電気的構成を説明するためのブロック図である。
基板処理装置1は、マイクロコンピュータを含む構成の制御部40を備えている。制御部40は、遮断板昇降機構19、遮断板回転機構20、およびポンプ30などの動作を制御する。また、基板処理装置1に備えられたバルブの開閉は、制御部40によって制御される。
【0036】
図4は、基板処理装置1によるウエハWの処理の一例を説明するための工程図である。
以下では、図1および図4を参照して、不要になったレジストおよび反射防止膜のマスクをウエハWから除去するときのウエハWの処理の一例について説明する。処理対象のウエハWは、金属配線の一例である銅配線、および絶縁材料の一例である有機系のLow−k材料(比誘電率が酸化シリコンよりも小さな材料)により形成された絶縁膜を含む下地の上に、反射防止膜およびレジストのマスクが形成されたものである。銅配線および絶縁膜の一部は、反射防止膜およびレジストによって覆われておらず露出されている。
【0037】
未処理のウエハWは、図示しない搬送ロボットによって処理室6に搬入され、デバイス形成面である表面を上に向けてスピンチャック7に渡される(ステップS1)。ウエハWが処理室6に搬入されるとき、処理室6内の構成は、搬送ロボットやウエハWとの衝突を避けるためにスピンチャック7の上方から退避されている。
次に、光活性化成分を含む薬液によってレジストを除去するレジスト除去処理が行われる(ステップS2)。具体的には、制御部40によりスピンチャック7が制御されて、ウエハWが所定の回転速度で回転させられる。また、制御部40により遮断板昇降機構19が制御されて、遮断板9の下面がスピンチャック7に保持されたウエハWの上面に近接する近接位置に遮断板9が移動させられる。そして、制御部40により気体バルブ16、供給バルブ32、循環バルブ33が制御されて、気体吐出口18および処理液吐出口14からそれぞれ窒素ガスおよび薬液がウエハWの上面中央部に向けて吐出される。このとき、遮断板9は、制御部40により遮断板回転機構20が制御されて、スピンチャック7によるウエハWの回転にほぼ同期して(あるいは若干異なる回転速度で)回転していてもよい。また、遮断板9は、非回転状態とされていてもよい。
【0038】
気体吐出口18から吐出された窒素ガスは、スピンチャック7に保持されたウエハWの上面と遮断板9の下面との間の空間を外方(ウエハWの回転軸線から離れる方向)に向かって広がっていく。したがって、ウエハWの上面と遮断板9の下面との間の空間に存在する空気は、窒素ガスによって外方に押されて、当該空間から排出される。これにより、ウエハWの上面と遮断板9の下面との間の雰囲気が窒素ガス雰囲気に置換され、ウエハWの上面近傍の酸素濃度が低下する(酸素濃度がたとえば2%以下に低下する。)。
【0039】
また、処理液吐出口14から吐出された薬液は、ウエハWの上面中央部に着液し、ウエハWの回転による遠心力を受けてウエハW上を外方に広がっていく。これにより、ウエハWの上面全域に薬液が供給される。また、ウエハWの上面に供給され、ウエハWの上面周縁部に達した薬液は、ウエハWの回転による遠心力によってウエハWの周囲に振り切られる。そして、振り切られた薬液は、カップ8によって捕獲され、回収配管29を介して薬液タンク26に回収される。
【0040】
処理液吐出口14から吐出され、ウエハWの上面に供給された薬液は、薬液タンク26から処理液吐出口14に至る過程で、照射ユニット4による光の照射を受けている。したがって、ウエハWに供給された薬液に含まれる光活性化成分は、照射ユニット4による光の照射を受けて活性化している。そのため、ウエハWの上面には、活性化した状態の光活性化成分を含む薬液が供給される。これにより、反射防止膜およびレジストにおける分子間の強固な結合が断ち切られ、反射防止膜およびレジストが薬液に溶解する。これにより、不要になった反射防止膜およびレジストをウエハWから剥離させて除去することができる。(レジスト除去処理)。レジスト除去処理が所定時間にわたって行われると、気体吐出口18からの窒素ガスの吐出、および処理液吐出口14からの薬液の吐出が停止される。そして、制御部40により遮断板昇降機構19が制御されて、遮断板9がスピンチャック7の上方に退避させられる。また、遮断板9が回転している場合には、制御部40により遮断板回転機構20が制御されて、遮断板9の回転が停止される。
【0041】
次に、リンス液の一例である純水によってウエハWを洗い流すリンス処理が行われる(ステップS3)。具体的には、制御部40によりリンス液バルブ25が開かれて、回転状態のウエハWの上面中央部に向けてリンス液ノズル23から純水が吐出される。リンス液ノズル23から吐出された純水は、ウエハWの上面中央部に着液し、ウエハWの回転による遠心力を受けてウエハW上を外方に広がっていく。これにより、ウエハWの上面全域にリンス液が供給され、ウエハW上の薬液が純水によって洗い流される。このようにして、ウエハW上から薬液が除去され、ウエハWの上面に対するリンス処理が行われる。また、ウエハWの上面に供給され、ウエハWの上面周縁部に達した純水は、ウエハWの回転による遠心力によってウエハWの周囲に振り切られる。そして、振り切られた純水は、カップ8によって捕獲され、リンス液捕獲部10に導かれる。リンス処理が所定時間にわたって行われると、制御部40によりリンス液バルブ25が閉じられて、リンス液ノズル23からの純水の吐出が停止される。
【0042】
次に、ウエハWを乾燥させる乾燥処理(スピンドライ)が行われる(ステップS4)。具体的には、制御部40によりスピンチャック7が制御されて、ウエハWが高回転速度(たとえば数千rpm)で回転させられる。これにより、ウエハWに付着している純水に大きな遠心力が作用して、純水がウエハWの周囲に振り切られる。このようにして、ウエハWから純水が除去され、ウエハWに対する乾燥処理が行われる。乾燥処理が所定時間にわたって行われた後は、スピンチャック7によるウエハWの回転が停止される。その後、処理済みのウエハWが搬送ロボットによって処理室6から搬出される(ステップS5)。
【0043】
以上のように本実施形態では、ウエハWに供給される薬液に光を照射することにより、活性化した状態の光活性化成分を含む薬液をウエハWの上面に供給することができる。これにより、不要になった反射防止膜およびレジストをウエハWから確実に除去することができる。また、光活性化成分の作用を用いてウエハWから反射防止膜およびレジストを除去するので、レジスト除去液として高温のSPMを用いた場合に比べて、反射防止膜およびレジストの下地となる部分にダメージが生じることを抑制または防止することができる。さらに、光活性化成分に光を照射して光活性化成分を活性化させるので、光活性化成分を含む薬液を高温にしなくてもよい。したがって、基板処理装置1において薬液に接する部分に耐熱性を持たせる必要がなく、基板処理装置1の部品の選定を容易にすることができる。
【0044】
さらにまた、前述のウエハWの処理例では、ウエハWの上面近傍の酸素濃度を低下させた状態でレジスト除去処理が行われる。したがって、配線材料として銅のように酸化され易い材料が用いられている場合でも、レジスト除去処理中に銅配線と雰囲気中の酸素とが反応して、銅配線が酸化されることを抑制または防止することができる。しかも、前述の実施形態では、薬液供給配管27の途中部において薬液に光が照射されるので、光源35からの光は、ウエハWに照射されない。すなわち、この第1実施形態に係る基板処理装置1では、ウエハWに直接光を照射することなく、薬液に含まれる光活性化成分を活性化させることができる。したがって、銅のように光の照射によって腐食され易い材料で配線が形成されており、光の照射を避けたいウエハWを処理する場合でも、光源35の光によって銅配線が腐食されることを防止することができる。したがって、ウエハWに形成されるデバイスの特性が低下することを抑制または防止することができる。
【0045】
なお、前述の第1実施形態に係る基板処理装置1の説明では、照射ユニット4が薬液供給配管27における供給バルブ32よりも下流側の位置に介装されているが、照射ユニット4の位置は、前述の位置に限定されない。具体的には、照射ユニット4は、図5に示すように、薬液供給配管27における循環配管28が連結された位置よりも上流側に介装されていてもよいし、図6に示すように、循環配管28に介装されていてもよい。すなわち、照射ユニット4は、循環経路C1の途中部に配置されていてもよい。また、図7に示すように、照射ユニット4は回収配管29に介装されていてもよいし、図8に示すように、照射ユニット4の光源35を薬液タンク26内に配置して、薬液タンク26内に貯留された薬液に光を照射してもよい。さらに、照射ユニット4を複数設けて、前述の位置の2箇所以上に照射ユニット4を配置してもよい。
【0046】
図8に示すように、薬液タンク26内に貯留された薬液に光を照射することにより、配管内を流れる薬液に光を照射する場合に比べて、薬液に対する光の照射時間を増加させることができる。したがって、光活性化成分が照射時間の増加に伴ってより活性化する場合には、より活性度の高い光活性化成分を含む薬液をウエハWに供給することができる。
また、図5および図6に示すように、循環経路C1の途中部に照射ユニット4を配置することにより、循環経路C1を循環する薬液に光を照射することができる。したがって、ウエハWに供給される薬液に対して繰り返し光を照射することができるので、薬液に対する光の照射時間を増加させることができる。さらに、配管を流れる薬液に光を照射するので、薬液タンク26に貯留された薬液に光を照射する場合に比べて、薬液に均一に光を照射することができる。これにより、薬液中に含まれる光活性化成分を確実に活性化させることができる。
【0047】
図9は、本発明の第2実施形態に係る基板処理装置201の概略構成を示す模式図である。また、図10は、二流体ノズル41および照射ユニット204の断面図であり、図11は、図10におけるXI−XI線に沿う照射ユニット204の要部の部分断面図である。この図9〜図11において、前述の図1〜8に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0048】
この第2実施形態と前述の第1実施形態との主要な相違点は、ウエハWに処理液を供給するための構成と、照射ユニットの配置である。すなわち、第1実施形態では、遮断板9の下面中央部から処理液が吐出されるように構成されているのに対し、この第2実施形態では、処理液の液滴を生成することができる二流体ノズル41(処理液ノズル)によってウエハWに処理液が供給されるように構成されている。また、第1実施形態では、照射ユニット4が配管27〜29の途中部または薬液タンク26内に配置されているのに対し、この第2実施形態では、照射ユニット204(照射手段)が二流体ノズル41の吐出口の近傍に配置されている。以下では、図9を参照して、薬液供給ユニット222(処理液供給手段)について説明する。
【0049】
薬液供給ユニット222は、二流体ノズル41を備えている。二流体ノズル41は、たとえば、ケーシング外で処理液と気体とを混合させて処理液の液滴を生成する外部混合型の二流体ノズル41である。二流体ノズル41は、吐出口が下方に向けられた状態で、スピンチャック7の上方に配置されている。二流体ノズル41は、水平に延びるノズルアーム42に連結されている。ノズルアーム42には、鉛直方向に延びる支持軸43が結合されている。支持軸43は、その中心軸線まわりに揺動可能とされている。
【0050】
支持軸43には、ノズル揺動機構44が結合されている。ノズル揺動機構44の駆動力が支持軸43に入力されることにより、二流体ノズル41およびノズルアーム42が、支持軸43の中心軸線まわりに一体的に水平移動する。これにより、スピンチャック7に保持されたウエハWの上方に二流体ノズル41を配置したり、スピンチャック7の上方から二流体ノズル41を退避させたりすることができる。また、ウエハWの上方で、二流体ノズル41を水平移動させることができる。
【0051】
また、二流体ノズル41には、処理液供給管45および気体供給管46が接続されている。二流体ノズル41には、処理液供給管45を介して光活性化成分を含む薬液が供給される。また、二流体ノズル41には、気体供給管46を介して気体の一例である窒素ガスが供給される。処理液供給管45には、二流体ノズル41への薬液の供給および供給停止を切り換えるための処理液バルブ47が介装されている。また、気体供給管46には、二流体ノズル41への気体の供給および供給停止を切り換えるための気体バルブ48が介装されている。
【0052】
次に図10を参照して、二流体ノズル41の構造について説明する。
二流体ノズル41は、円柱状であり、ケーシングを構成する外筒49と、外筒49の内部に嵌め込まれた内筒50とを有している。内筒50および外筒49は、それぞれ共通の中心軸線L1上に同軸配置されており、互いに連結されている。内筒50の内部空間は、処理液供給管45(図9参照)からの薬液が流通する直線状の処理液流路51となっており、内筒50と外筒49との間には、気体供給管46からの窒素ガスが流通する円筒状の気体流路52が形成されている。
【0053】
処理液流路51は、内筒50の上端で処理液導入口53として開口しており、内筒50の下端で中心軸線L1上に中心を有する円状の処理液吐出口54として開口している。処理液流路51には、処理液導入口53を介して処理液供給管45からの薬液が導入される。また、処理液流路51に導入された薬液は、処理液吐出口54から下方に向けて吐出される。
【0054】
一方、気体流路52は、内筒50および外筒49の上端部で閉塞されており、内筒50および外筒49の下端で処理液吐出口54を取り囲む円環状の気体吐出口55として開口している。気体流路52の下端部は、気体流路52の長さ方向における中間部よりも流路面積が小さくされている。気体流路52の下端部は下方に向かって小径となっている。気体流路52は、円筒状の間隙であり、気体吐出口55の中心は、中心軸線L1上に位置している。
【0055】
外筒49には、気体供給管46が接続されている。気体供給管46の内部空間は、気体流路52に連通されている。気体供給管46を流通する窒素ガスは、気体流路52に供給され、気体吐出口55から下方に向けて吐出される。処理液吐出口54から薬液を吐出させつつ、気体吐出口55から窒素ガスを吐出させることにより、二流体ノズル41の近傍で薬液に窒素ガスを衝突させて薬液の液滴を生成することができる。
【0056】
次に、図10および図11を参照して、照射ユニット204について説明する。
照射ユニット204は、光源35と、筒状体56と、光伝達部材の一例である光ファイバ57とを備えている。光源35および筒状体56は、光ファイバ57によって連結されている。また、図10に示すように、筒状体56は、二流体ノズル41の吐出口54、55の近傍に配置されている。二流体ノズル41により生成された薬液の液滴は、筒状体56の内周を通って、スピンチャック7に保持されたウエハWの上面に供給される。筒状体56の内周面は円筒状に形成されており、光を全反射することができる。筒状体56の内周面は光を反射することができる反射面である。また、筒状体56は、たとえば連結部材58によって二流体ノズル41に連結されている。筒状体56は、二流体ノズル41とともに一体的に水平移動する。
【0057】
光源35の発する光は、光ファイバ57によって筒状体56の内側の空間に伝達される。筒状体56の内側の空間に伝達された光は、図11に示すように、筒状体56の内周面に当たって全反射を繰り返しながら、筒状体56の内側の空間に拡散する。したがって、二流体ノズル41により生成された薬液の液滴が、筒状体56の内側の空間を通過することにより、当該薬液の液滴に光が均一に照射され、液滴に含まれる光活性化成分が活性化する。
【0058】
次に、図9および図10を参照して、この第2実施形態に係る基板処理装置201によるレジスト除去処理について説明する。なお、その他の処理工程は第1実施形態と同様である。
この第2実施形態に係る基板処理装置201によるレジスト除去処理では、回転状態のウエハWの上面(ウエハWの表面)に向けて、処理液吐出口54および気体吐出口55からそれぞれ光活性化成分を含む薬液および窒素ガスが吐出される。処理液吐出口54から吐出された薬液は、気体吐出口55から吐出された窒素ガスに衝突して液滴になる。そして、薬液の液滴が回転状態のウエハWの上面に衝突する。また、処理液吐出口54および気体吐出口55からそれぞれ薬液および窒素ガスが吐出されている間、二流体ノズル41がウエハWの上方で水平移動させられる。これにより、ウエハWの上面に対する薬液の衝突位置が、ウエハWの上面における回転中心とウエハWの上面周縁部との間で移動して、ウエハWの上面が薬液の液滴によってスキャンされる。これにより、ウエハWの上面全域に薬液が供給される。
【0059】
このように、この第2実施形態に係る基板処理装置201によるレジスト除去処理では、薬液の液滴をウエハWの上面に衝突させながら、当該ウエハWの上面全域に薬液が供給される。したがって、ウエハW上に形成された反射防止膜およびレジストには、薬液の液滴の衝突による物理的な力が作用する。また、二流体ノズル41により生成された薬液の液滴は、照射ユニット204による光の照射を受けて活性化している。したがって、ウエハW上に保持された反射防止膜およびレジストは、液滴の衝突による物理的な力、および薬液による化学的な力によってウエハWから除去される。これにより、不要になった反射防止膜およびレジストをウエハWから短時間で容易に除去することができる。
【0060】
さらに、二流体ノズル41により生成された薬液の液滴は、照射ユニット204による光の照射を受けた後すぐにウエハWの上面に供給されるので、たとえば、光活性化成分の活性化した状態が光の照射後短時間しか維持されない場合でも、活性化した状態の光活性化成分を含む薬液を確実にウエハWの上面に供給することができる。これにより、反射防止膜およびレジストをウエハWから確実に除去することができる。さらにまた、薬液に対する光の照射は、薬液がウエハWに達する前に行われるので、光源35からの光がウエハWに照射されることを防止することができる。したがって、光の照射を避けたいウエハWを処理する場合でも、ウエハWに対する光の照射を防止しつつ、反射防止膜およびレジストをウエハWから確実に除去することができる。なお、前述の第2実施形態に係る基板処理装置201の説明では、処理液ノズルとして二流体ノズル41が用いられているが、処理液ノズルの構成はこれに限定されない。具体的には、二流体ノズル41に代えて、連続流の状態で処理液を吐出する、いわゆるストレートノズルを処理液ノズルとして用いてもよい。この場合、ストレートノズルは、スピンチャック7の斜め上方に固定的に配置されて、ウエハWの上面に対して斜め上方から処理液を供給する構成であってもよく、また、スピンチャック7によるウエハWの回転軸線上に固定的に配置されて、ウエハWの上面に対して鉛直上方から処理液を供給する構成であってもよい。また、ストレートノズルは、スピンチャック7の上方において水平面内で揺動可能なアームに取り付けられて、アームの揺動によりウエハWの上面における処理液の着液位置が面内で移動するように構成されていてもよい。さらに、二流体ノズル41およびストレートノズルのいずれのノズルを処理液ノズルとして用いる場合でも、超音波付与装置を設けて、ノズル内を流通する薬液、またはノズルから吐出された薬液に超音波が付与されてもよい。
【0061】
また、前述の第2実施形態に係る基板処理装置201の説明では、照射ユニット204が二流体ノズル41の吐出口の近傍に配置されているが、照射ユニット204の位置はこれに限定されない。具体的には、たとえば、二流体ノズル41の外筒49および内筒50を石英ガラスなどの光を透過させることができる材料で形成して、図12に示すように、二流体ノズル41の周囲に筒状体56を配置してもよい。この場合、外筒49および内筒50が光を透過させることができるので、筒状体56の内側の空間で光を拡散させることにより、光源35からの光が外筒49および内筒50を透過して、二流体ノズル41内を流通する薬液に照射される。これにより、薬液に含まれる光活性化成分を活性化させることができる。また、二流体ノズルに代えてストレートノズルを用いて、ストレートノズル本体を石英ガラスなどの光を透過させることができる材料で形成することにより、二流体ノズル同様、ノズル内を流通する薬液に光が照射されるように構成されてもよい。
【0062】
図13は、本発明の第3実施形態に係る基板処理装置301の概略構成を示す模式図である。この図13において、前述の図1〜図12に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
この第3実施形態と前述の第2実施形態との主要な相違点は、前述の第2実施形態では、二流体ノズル41から吐出された直後の処理液、または二流体ノズル41内を流通する処理液に光が照射されるのに対し、この第3実施形態では、ウエハW上に保持された処理液に光が照射されることにある。すなわち、スピンチャック7の上方に複数の光源35が配置されており、これらの光源35によって照射ユニット304(照射手段)が構成されている。薬液供給ユニット322(処理液供給手段)は、光活性化成分を含む薬液をウエハWの上面に供給するための薬液ノズル59(処理液ノズル)を備えており、スピンチャック7に保持されたウエハWの上面には、薬液ノズル59から吐出された薬液が供給される。そして、ウエハWの上面に供給された薬液に含まれる光活性化成分は、ウエハW上で照射ユニット304からの光の照射を受けて活性化する。したがって、ウエハWの上面には活性化した直後の光活性化成分を含む薬液が供給される。
【0063】
図14は、本発明の第4実施形態に係る基板処理装置401の概略構成を示す模式図である。この図14において、前述の図1〜図13に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
この第4実施形態と前述の第1〜3実施形態との主要な相違点は、前述の第1〜3実施形態に係る基板処理装置1、201、301は、ウエハWを一枚ずつ処理する枚葉式の装置であるのに対し、この第4実施形態に係る基板処理装置401は、複数枚のウエハWを一括して処理することができるバッチ式の装置であることにある。
【0064】
基板処理装置401は、複数枚のウエハWを一括して処理するための処理槽60と、処理槽60内で複数枚のウエハWを一括して保持するウエハ保持部材61(基板保持手段)と、光活性化成分を含む薬液を処理槽60に供給する薬液供給ユニット422(処理液供給手段)と、照射ユニット4とを備えている。
処理槽60は、内部に薬液を貯留することができ、内部に貯留された薬液に複数枚のウエハWを一括して浸漬させることができる。また、ウエハ保持部材61は、処理槽60の内部に配置されており、複数枚のウエハWを垂直姿勢で一括して保持することができる。ウエハ保持部材61は、たとえば複数の棒状部材からなるものであり、各ウエハWの周端面の複数箇所を下方から支持して保持することができる。
【0065】
薬液供給ユニット422は、薬液タンク26と、薬液供給配管27と、循環配管28と、回収配管29とを備えている。薬液供給配管27の一端は、薬液タンク26に連結されており、薬液供給配管27の他端は、処理槽60に連結されている。また、回収配管29の一端は、薬液タンク26に連結されており、回収配管29の他端は、処理槽60に連結されている。回収配管29には、処理槽60から薬液タンク26への薬液の回収および回収停止を切り替えるための回収バルブ62が介装されている。
【0066】
照射ユニット4は、たとえば、薬液供給配管27における供給バルブ32よりも下流側の位置に介装されている。照射ユニット4の位置は、前述の位置に限らず、図14において二点鎖線で示すように、循環経路C1の途中部に設けられていてもよいし、回収配管29に介装されていてもよい。また、同じく二点鎖線で示すように、光源35を処理槽60内に配置して、処理槽60内に貯留された薬液に光を照射してもよい。
【0067】
この発明の実施の形態の説明は以上であるが、この発明は、前述の第1〜第4実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。たとえば、前述の第2実施形態では、二流体ノズル41から吐出された薬液、または二流体ノズル41内を流通する薬液に光が照射される場合について説明したが、これに限らない。たとえば、二流体ノズル41内を流通する薬液、および二流体ノズル41から吐出された薬液の両方に光を照射してもよい。また、二流体ノズル41内を流通する薬液、および二流体ノズル41から吐出された薬液の少なくとも一方への光の照射に加えて、二流体ノズル41に供給される薬液に光を照射してもよい。
【0068】
同様に、前述の第3実施形態では、ウエハW上に保持された薬液に光が照射される場合について説明したが、薬液ノズル59(図13参照)に供給される薬液、および薬液ノズル59内を流通する薬液に光を照射してもよい。
また、前述の第1〜第4実施形態において、ウエハWに供給される光活性化成分を含む薬液、またはウエハW上に保持された光活性化成分を含む薬液を加熱して当該薬液を昇温させてもよい。より具体的には、たとえば、第1実施形態に係る基板処理装置1において、循環経路C1にヒータを設けて、循環経路C1を流れる薬液を加熱してもよい。この場合、光活性化成分が温度上昇に伴ってより活性化する場合には、薬液を加熱することによって、より活性度の高い光活性化成分を含む薬液をウエハWに供給することができる。
【0069】
また、前述の第1〜第4実施形態では、処理対象となる基板としてウエハWを取り上げたが、ウエハWに限らず、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などの他の種類の基板が処理対象とされてもよい。その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 基板処理装置
4 照射ユニット(照射手段)
7 スピンチャック(基板保持手段)
9 遮断板(対向部材)
14 処理液吐出口
15 気体流通路(不活性ガス供給手段)
16 気体バルブ(不活性ガス供給手段)
17 気体供給管(不活性ガス供給手段)
18 気体吐出口(不活性ガス供給手段)
22 薬液供給ユニット(処理液供給手段)
26 薬液タンク(処理液貯留部)
27 薬液供給配管(処理液供給配管)
28 循環配管
29 回収配管
35 光源
41 二流体ノズル(処理液ノズル)
61 ウエハ保持部材(基板保持手段)
201 基板処理装置
204 照射ユニット(照射手段)
222 薬液供給ユニット(処理液供給手段)
301 基板処理装置
304 照射ユニット(照射手段)
322 薬液供給ユニット(処理液供給手段)
401 基板処理装置
422 薬液供給ユニット(処理液供給手段)
W ウエハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持手段と、
光を照射することで活性化する光活性化成分を含む処理液を前記基板保持手段に保持された基板に供給する処理液供給手段と、
前記基板保持手段に保持された基板に供給される前記光活性化成分を含む処理液に光を照射する照射手段とを含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記処理液供給手段は、前記光活性化成分を含む処理液を貯留する処理液貯留部と、処理液貯留部に貯留された処理液を前記基板保持手段に保持された基板に導くための処理液供給配管とを含むものであり、
前記照射手段は、前記処理液供給配管を流通する処理液に光を照射するものである、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記処理液供給手段は、前記光活性化成分を含む処理液を貯留する処理液貯留部と、処理液貯留部に貯留された処理液を前記基板保持手段に保持された基板に導くための処理液供給配管とを含むものであり、
前記照射手段は、前記処理液貯留部に貯留された処理液に光を照射するものである、請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記処理液供給手段は、前記光活性化成分を含む処理液を貯留する処理液貯留部と、処理液貯留部に貯留された処理液を前記基板保持手段に保持された基板に導くための処理液供給配管と、前記処理液貯留部および前記処理液供給配管に連結され、前記処理液貯留部に貯留された処理液を循環させるための循環配管とを含むものであり、
前記照射手段は、前記循環配管を流通する処理液に光を照射するものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記処理液供給手段は、前記光活性化成分を含む処理液を吐出する処理液ノズルを含むものであり、
前記照射手段は、前記処理液ノズル内を流通する処理液、または前記処理液ノズルから吐出された処理液に光を照射するものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記基板保持手段は、一枚の基板を保持するものであり、
前記基板保持手段に保持された基板の一方の主面に対向する対向部材と、
前記一方の主面と前記対向部材との間に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段とをさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−61034(P2011−61034A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209638(P2009−209638)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】