説明

基板受け渡し方法

【課題】基板を載置台にフラットに載置することが可能であり、かつ、静電チャックによる吸着を解除して基板を載置台から持ち上げる際、基板に異常放電を発生し難くすることができる基板受け渡し方法を提供すること。
【解決手段】基板Gを基板載置面4cの上方にて、第1の昇降ピン8aと、第1の昇降ピン8aよりも低い位置の第2の昇降ピン8bとにより支持した基板Gを下降させ、基板Gを、基板Gの中央部から基板載置面4cに載置させる基板載置工程と、基板載置面4cに載置された基板Gを静電チャック41により吸着して、基板Gにプラズマ処理を行う工程と、プラズマ処理終了後、静電チャック41による吸着を解除し、第1の昇降ピン8aと第2の昇降ピン8bとを同じ高さとして基板Gを支持し、基板Gを基板載置面4cから離脱させる基板離脱工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、載置台に基板を受け渡す基板受け渡し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
FPD製造装置や太陽電池製造装置などにおいては処理室内にて大型のガラス基板にエッチングや成膜等のプラズマ処理を施すが、そのために、ガラス基板を処理室内に搬入及び処理室内から搬出を行うための搬送装置を備えている。この搬送装置は、通常、進退可能なアームによりガラス基板を支持し、処理室内と処理室外との間の搬入出が可能なようになっている。処理室内にはガラス基板を載置する載置台が備えられ、載置台の基板載置面から出没可能なリフトピンによって、処理室内に侵入したアームと載置台との間の基板の受け渡しを行っている。
【0003】
アームからリフトピンで受け取ったガラス基板を載置台に載置する際、周辺部と中央部とでリフトピンを同じ高さにして支持すると、ガラス基板が可撓性を有するために中央部のリフトピンにより支持された部分が窪み、ガラス基板を載置台に載置した際に、載置台の基板載置面とガラス基板との間に空間が形成されてしまう。
【0004】
このような空間の形成を抑制し、基板を載置台に均一に接触させて載置するために、中央部のリフトピンよりも周辺部のリフトピンの高さが高くなるようにしてガラス基板を支持し、ガラス基板が基板載置面に向かって凸に撓ませた状態で、載置台の基板載置面に載せる、という技術が特許文献1に記載されている。
【0005】
また、特許文献1では、反対に載置台からリフトアップする際にも、周辺部のリフトピンを先に突出させて、ガラス基板が基板載置面に向かって凸になるように撓んだ状態でガラス基板を持ち上げる。ガラス基板の揺れを抑制するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−60285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ガラス基板を載置台に載置してプラズマ処理を行っている間、ガラス基板は、載置台に備えられた静電チャックにより吸着され、プラズマ処理後、静電吸着を解除した後も除電が十分でない場合にはガラス基板が帯電していることがある。このため、吸着を解除してガラス基板を載置台から持ち上げる際、ガラス基板を基板載置面に向かって凸になるように撓んだ状態で持ち上げると、ガラス基板全体に帯電していた電荷がまだ接触している部分に移動していき、最終的に接触面積が小さくなってしまうガラス基板の中央部分に電荷が集中してガラス基板と基板載置面との間に大きな電界を形成し、異常放電が発生することがある、という事情がある。
【0008】
この発明は、可撓性のある基板を載置台に均一に接触させて載置することが可能であり、かつ、静電チャックによる吸着を解除して基板を載置台から持ち上げる際、基板に異常放電を発生し難くすることができる基板受け渡し方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の一態様に係る基板受け渡し方法は、可撓性のある基板にプラズマ処理を行う処理チャンバー内に設置され、前記基板を静電吸着により吸着する静電チャックを備えた載置台に、前記基板を受け渡す基板受け渡し方法であって、前記載置台は、前記基板を載置する基板載置面と、該基板載置面に対して突没可能であり、前記基板の周縁部を支持する第1の昇降ピンと、前記基板載置面に対して突没可能であり、前記基板の中央部を支持する第2の昇降ピンとを備え、前記基板を前記基板載置面の上方にて、前記第1の昇降ピンと、前記第1の昇降ピンよりも低い位置の第2の昇降ピンとにより支持した前記基板を下降させ、前記基板を、該基板の中央部から前記基板載置面に載置させる基板載置工程と、前記基板載置面に載置された前記基板を前記静電チャックにより吸着して、前記基板にプラズマ処理を行う工程と、前記プラズマ処理終了後、前記静電チャックによる吸着を解除し、前記第1の昇降ピンと前記第2の昇降ピンとを同じ高さとして前記基板を支持し、前記基板を前記基板載置面から離脱させる基板離脱工程と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、可撓性のある基板を載置台に均一に接触させて載置することが可能であり、かつ、静電チャックによる吸着を解除して基板を載置台から持ち上げる際、基板に異常放電を発生し難くすることができる基板受け渡し方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の一実施形態に係る基板載置機構を備えた基板処理装置の一例を示す概略断面図
【図2】図1に示す基板処理装置の平面方向の概略断面図
【図3】基板載置機構を概略的に示す断面図
【図4】一実施形態に係る基板受け渡し方法の一例を示す概略断面図
【図5】参考例に係る基板Gの撓みを模式的に示す模式図
【図6】一実施形態に係る基板Gの撓みを模式的に示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。参照する図面全てにわたり、同一の部分については同一の参照符号を付す。
【0013】
図1はこの発明の一実施形態に係る基板受け渡し方法を実施することが可能な基板処理装置の一例を示す概略断面図、図2はその平面方向の概略断面図である。本例では、基板処理装置の一例としてプラズマエッチング装置を示す。
【0014】
図1に示すように、プラズマエッチング装置1は、可撓性のある基板として、例えばFPDの製造に用いられるガラス基板(以下、基板と略す)Gに対してエッチングを行う容量結合型平行平板プラズマエッチング装置として構成されている。FPDとしては、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネセンス(Electro Luminescence:EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)等が例示される。
【0015】
プラズマエッチング装置1は、基板Gを収容する処理容器としての処理チャンバー(以下チャンバーという)2を備えている。チャンバー2は、例えば、表面がアルマイト処理(陽極酸化処理)されたアルミニウムからなり、基板Gの形状に対応して四角筒形状に形成されている。
【0016】
チャンバー2内の底壁には、基板Gを載置する載置台としてのサセプタ4が設けられている。サセプタ4は、基板Gの形状に対応して四角板状または柱状に形成されており、金属等の導電性材料からなる基材4aと、基材4aの底部とチャンバー2の底面との間に設けられた絶縁部材4bとを有している。基材4aには、高周波電力を供給するための給電線23が接続されており、この給電線23には整合器24および高周波電源25が接続されている。高周波電源25からは、例えば、13.56MHzの高周波電力がサセプタ4に印加され、これにより、サセプタ4が下部電極として機能するように構成されている。
【0017】
また、サセプタ4には、載置された基板Gを静電吸着により吸着する静電チャック41が設けられている。静電チャック41は、基材4aの上部に設けられ、誘電体と誘電体の内部に備えられた内部電極42とで構成されている。内部電極42には、内部電極42に電圧を印加する電源43が、電圧の印加をオン・オフさせるスイッチ44を介して接続されている。
【0018】
チャンバー2の上部または上壁には、チャンバー2内に処理ガスを供給するとともに上部電極として機能するシャワーヘッド11が、サセプタ4と対向するように設けられている。シャワーヘッド11は、内部に処理ガスを拡散させるガス拡散空間12が形成されているとともに、下面またはサセプタ4との対向面に処理ガスを吐出する複数の吐出孔13が形成されている。このシャワーヘッド11は接地されており、サセプタ4とともに一対の平行平板電極を構成している。
【0019】
シャワーヘッド11の上面にはガス導入口14が設けられ、このガス導入口14には、処理ガス供給管15が接続されており、この処理ガス供給管15には、バルブ16およびマスフローコントローラ17を介して、処理ガス供給源18が接続されている。処理ガス供給源18からは、エッチングのための処理ガスが供給される。処理ガスとしては、ハロゲン系のガス、Oガス、Arガス等、通常この分野で用いられるガスを用いることができる。
【0020】
チャンバー2の底壁には排気管19が接続されており、この排気管19には排気装置20が接続されている。排気装置20はターボ分子ポンプなどの真空ポンプを備えており、これによりチャンバー2内を所定の減圧雰囲気まで真空引き可能なように構成されている。チャンバー2の側壁には、基板Gを搬入出するための搬入出口21(図2参照)が形成されているとともに、この搬入出口21を開閉するゲートバルブ22が設けられており、搬入出口21の開放時に、基板Gが、搬送部材としての搬送アーム40(図2、図4参照)により下方から支持された状態で搬入出口21及びゲートバルブ22を介して隣接する図示しないロードロック室との間で搬送されるように構成されている。
【0021】
チャンバー2の底壁およびサセプタ4には、これらを貫通する挿通孔7a、7bが、サセプタ4の周縁部位置および中央部位置(周縁部位置よりも内側または中央寄り位置)にそれぞれ形成されている。挿通孔7aは、例えば、各辺部に所定の間隔をあけて2箇所ずつの計8箇所形成され、挿通孔7bは、例えば、サセプタ4の対向する一対の辺と平行に配列されるように所定の間隔をあけて2箇所形成されている。挿通孔7a、7bにはそれぞれ、基板Gを下方から支持して昇降させるリフターピン8a(第1の昇降ピン)、8b(第2の昇降ピン)がサセプタ4の基板載置面4cに対して突没可能に挿入されている。リフターピン8a、8bはそれぞれ、突出時に基板Gの周縁部および中央部に当接するように設けられており、図示しない位置決め用ブッシュによって径方向または幅方向に位置決めされて挿通孔7a、7b内に挿入されている。
【0022】
図3は基板載置機構を概略的に示す断面図である。
【0023】
リフターピン8a、8bはそれぞれ、図3に示すように、下部がチャンバー2の外側に突出しており、下端部が駆動部9a、9bに接続され、この駆動部9a、9bの駆動によって昇降することによりサセプタ4の基板載置面4cに対して突出および没入するように構成されている。駆動部9a、9bはそれぞれ、例えばステッピングモータを用いて構成される。
【0024】
リフターピン8a、8bの下部にはそれぞれ、フランジ26が形成されており、各フランジ26には、リフターピン8a、8bを囲繞するように設けられた伸縮可能なベローズ27の一端部(下端部)が接続され、このベローズ27の他端部(上端部)は、チャンバー2の底壁に接続されている。これにより、ベローズ27は、リフターピン8a、8bの昇降に追従して伸縮するとともに、挿通孔7a、7bとリフターピン8a、8bとの隙間を密封している。
【0025】
駆動部9a、9bの駆動は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)を備えたコントローラ31によって別個に制御される構成となっており、これにより、リフターピン8aとリフターピン8bとは独立して昇降可能に構成されている。コントローラ31には、工程管理者が駆動部9a、9bの駆動を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、駆動部9a、9bの駆動状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェイス32と、駆動部9a、9bの駆動をコントローラ31の制御にて実現するための制御プログラムや駆動条件データ等が記録されたレシピが格納された記憶部33とが接続されている。そして、必要に応じて、ユーザーインターフェイス32からの指示等にて任意のレシピを記憶部33から呼び出してコントローラ31に実行させることで、コントローラ31の制御下で駆動部9a、9bの駆動および停止が行われる。前記レシピは、例えば、CD−ROM、ハードディスク、フラッシュメモリなどのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納された状態のものを利用したり、あるいは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させて利用したりすることも可能である。
【0026】
コントローラ31、ユーザーインターフェイス32および記憶部33は、駆動部9a、9bによるリフターピン8a、8bの昇降を制御する制御部を構成し、サセプタ4、リフターピン8a、8b、駆動部9a、9bおよび制御部は基板載置機構を構成する。
【0027】
次に、一実施形態に係る基板受け渡し方法を説明する。
【0028】
図4A〜図4Fは、一実施形態に係る基板受け渡し方法の一例を示す概略断面図である。
【0029】
まず、図2に示したゲートバルブ22によって搬入出口21を開放し、搬送アーム40によって基板Gを搬入出口21から搬入し、サセプタ4の上方まで搬送する。次いで、各リフターピン8a、8bを上昇させて搬送アーム40よりも高く突出させる。これにより、基板Gを、搬送アーム40上からリフターピン8a、8b上に移し換える。なお、各リフターピン8a、8bは、搬送アーム40に接触しないように配置されている。
【0030】
この際、基板Gの中央部を支持するリフターピン8bの先端の位置については、基板Gの周縁部を支持するリフターピン8aの先端の位置よりも低くする。例えば、図4Aに示す例では、リフターピン8bの先端の基板載置面4cからの高さHは、リフターピン8aの先端の基板載置面4cからの高さHよりも低くなっている。このようにして、基板載置面4cの上方にて、基板Gを下に凸状に撓ませた状態で、各リフターピン8a、8bによって支持させる。
【0031】
次に、リフターピン8a、8bの先端の位置関係は変えずに、リフターピン8a、8bを降下させ、リフターピン8b、リフターピン8aの順で、サセプタ4の基板載置面4cに没入させる。これにより、図4Bから図4Cにかけて示すように、基板Gは、この基板Gの中央部から基板Gの周縁部に向かって基板載置面4cに載置される。この際、基板Gの荷重は各リフターピン8a、8bにバランスよく分散されているので、基板Gは、リフターピン8a、8bの支持反力による変形、特にリフターピン8bによる中央部の変形が抑止され、全面またはほぼ全面にわたってサセプタ4の基板載置面4cに接触することができる。
【0032】
次に、ゲートバルブ22によって搬入出口21を閉塞し、サセプタ4に基板Gを載置したら、静電チャック41のスイッチ44をオンし、電源43から直流電圧を内部電極42に印加し、基板Gをサセプタ4に吸着させる。これとともに、排気装置20によってチャンバー2内を所定の真空度まで真空引きする。次いで、処理ガス供給源18から処理ガスを、マスフローコントローラ17によって流量調整しつつ、処理ガス供給管15、ガス導入口14およびシャワーヘッド11を介してチャンバー2内に供給する。次いで、高周波電源25から整合器24を介してサセプタ4に高周波電力を印加し、下部電極としてのサセプタ4と上部電極としてのシャワーヘッド11との間に高周波電界を生じさせてチャンバー2内の処理ガスをプラズマ化させる。基板Gには、処理ガスのプラズマによって、例えば、エッチング処理が施される(図4D参照)。
【0033】
次に、基板Gのエッチング処理が終了したら、スイッチ44をオフし、内部電極42への直流電圧の印加を停止し、静電チャック41による吸着を解除する(図4E参照)。
【0034】
次に、リフターピン8aの先端の基板載置面4cからの高さHと、リフターピン8bの先端の基板載置面4cからの高さHとが同じになるようにしてそれぞれ挿通孔7a、7bから突出させ、基板Gを支持して基板載置面4cから離脱させる。この後、特に、図示しないが、基板Gの下方に、搬送アーム40を挿入し、リフターピン8a、8bを下降させる。これにより、基板Gを、リフターピン8a、8b上から搬送アーム40に移し換えることで、基板Gの受け渡しが完了する。
【0035】
このような一実施形態に係る基板受け渡し方法であると、基板Gをリフターピン8a、8bから基板載置面4cに受け渡す際には、基板Gの中央部を支持するリフターピン8bの先端の高さHを、基板Gの周縁部を支持するリフターピン8aの先端の高さHよりも低くする。このようにすることで、基板Gは、重力で基板載置面4cに向かって凸となるように撓んだ状態でリフターピン8a、8bに支持される。基板Gは、基板載置面4cの中央部分から周縁部分に向かって載置されていくため、基板中央部を支持するリフターピン8bにより形成された基板中央部の窪みが残存して基板Gと基板載置面4cの間に空間が発生することにより基板Gと基板載置面4cとが非接触となる部分が生じるのを防ぐことができ、基板Gを、その全面またはほぼ全面にわたって基板載置面4cに均一に接触した状態で基板載置面4cに受け渡すことができる。
【0036】
さらに、静電チャック41により吸着を解除して、基板Gを基板載置面4cからリフターピン8a、8bに受け渡す際には、基板Gの中央部を支持するリフターピン8bの先端の高さHと、基板Gの周縁部を支持するリフターピン8aの先端の高さHとを同じ高さとする。このようにすることで、基板Gは、基板Gの全面またはほぼ全面を均等に、基板載置面4cから離脱させることができる。このため、リフターピン8aにより基板Gの周縁部分から中央部分に向かって、基板載置面4cから離脱させていく場合に比較して、基板載置面4cとの最終的な接触面積が局部的に小さくなってしまうことを抑制することができる。最終的な接触面積が局部的に小さくなってしまうことを抑制することが可能となる結果、基板Gに帯電した電荷が接触部に集まって基板Gに異常放電が発生すること、特に、最後まで基板載置面4cと接触し帯電していた電荷が移動してきて集中する基板Gの中央部分で異常放電が発生することを抑制することができる。
【0037】
よって、一実施形態に係る基板受け渡し方法によれば、可撓性のある基板Gをサセプタ4の静電チャック41に均一に接触するように載置することが可能であり、かつ、静電チャック41による吸着を解除して基板Gをサセプタ4の静電チャック41から持ち上げる際、基板Gに異常放電を発生し難くすることができる基板受け渡し方法を得ることができる。
【0038】
また、静電吸着解除後の基板Gを持ち上げた際の異常放電が発生する可能性は、基板Gのサイズが大きくなるにつれて高まる。これは、基板Gのサイズが大きくなるほど、除電しきれなかった電荷の基板Gの裏面への存在する絶対量が多くなり、最終接触箇所に電荷が集中した際に発生する電界が大きくなるためである。
【0039】
例えば、図5の参考例に係る基板Gの撓みを模式的に示す模式図のように、基板Gを周縁部分から持ち上げる場合には、基板Gの最も窪んだ中央部分の一箇所が最終接触箇所Cとなる。このため、もしも、除電しきれずに基板Gの表面裏面に残留した残留電荷e、hが存在した場合には、この残留電荷e、hは最終接触箇所Cに移動し溜まる。最終接触箇所Cに溜まった残留電荷の絶対量が多く、放電するに十分な量となっていれば、ほぼ確実に放電を起こすと予想される。
【0040】
この点、一実施形態によれば、図6の模式図に示すように、リフターピン8a、8bの先端の高さを同じとして基板Gを持ち上げる。このため、リフターピン8a、8bの支持反力により基板Gは、リフターピン8aと8bとの間それぞれで撓む。つまり、一実施形態では、基板Gの一箇所を撓ませるのではなく、基板Gの複数箇所を撓ませる。基板Gの複数箇所を撓ませる結果、最終接触箇所Cは、複数の箇所に分散することが可能となる。このため、もしも、除電しきれずに残留した残留電荷が存在した場合であっても、残留電荷は、複数の最終接触箇所Cに分散されて溜まる。残留電荷が溜まる箇所を複数に分散できる結果、最終接触箇所Cに溜まる残留電荷の絶対量は、最終接触箇所Cが一箇所の場合に比較して少なくすることができる。よって、一実施形態によれば、最終接触箇所Cに溜まる残留電荷の絶対量を少なくすることができ、残留電荷の量が、放電するに十分な量に達してしまう確率を低く抑えることができる。
【0041】
このように、残留電荷が存在した場合であっても、残留電荷を複数の最終接触箇所Cに分散することができる一実施形態は、基板Gのサイズが大きいほど、異常放電を抑制する効果が高いといえる。基板Gのサイズとしては、1320mm×1500mm以上であれば十分な効果を期待することができる。サイズの上限は、この発明の本質に鑑みれば特には存在せず、実施上の上限として、その時代時代における基板Gの製造技術、及びプラズマ処理技術等の他の要因によって定まる。
【0042】
また、前述の通り従来技術においては基板Gを持ち上げる際にも基板Gが下に凸となるように撓ませて支持することにより基板の揺れを防いでいたので、基板Gを、リフターピン8a、8bの先端の高さを同じにして基板Gを持ち上げると、リフターピン8aの先端の高さをリフターピン8bよりも高くして基板Gを持ち上げる場合に比較して、基板Gが基板載置面4cから持ち上がった際に、基板Gの揺れが大きくなる可能性がある。
【0043】
このような基板Gの揺れが大きくなる可能性は、リフターピン8a、8bの上昇速度を遅く抑えることで解消することができる。
【0044】
以上、この発明を一実施形態に従って説明したが、この発明は、上記一実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、この発明の実施形態は、上記一実施形態が唯一の実施形態でもない。
【0045】
例えば、上記一実施形態では、基板Gの中央部を支持するリフターピン8bについては複数本、例えば図2に示したように2本設けたが、このリフターピン8bは1本であってもよい。
【0046】
また、上記一実施形態では、下部電極に高周波電力を印加するRIEタイプの容量結合型平行平板プラズマエッチング装置に適用した例について説明したが、これに限らず、アッシング、CVD成膜等の他のプラズマ処理装置に適用可能であり、基板を載置台に載置して処理する、プラズマ処理装置以外の基板処理装置全般にも適用可能である。
【0047】
さらに、上記実施形態ではFPD用のガラス基板に適用した例について説明したが、FPD用のガラス基板以外の可撓性を有する基板全般に適用可能である。
その他、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0048】
G…基板、2…処理チャンバー、4…サセプタ、4c…基板載置面、8a…周縁部を支持するリフターピン、8b…中央部を支持するリフターピン、41…静電チャック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のある基板にプラズマ処理を行う処理チャンバー内に設置され、前記基板を静電吸着により吸着する静電チャックを備えた載置台に、前記基板を受け渡す基板受け渡し方法であって、
前記載置台は、前記基板を載置する基板載置面と、該基板載置面に対して突没可能であり、前記基板の周縁部を支持する第1の昇降ピンと、前記基板載置面に対して突没可能であり、前記基板の中央部を支持する第2の昇降ピンとを備え、
前記基板を前記基板載置面の上方にて、前記第1の昇降ピンと、前記第1の昇降ピンよりも低い位置の第2の昇降ピンとにより支持した前記基板を下降させ、前記基板を、該基板の中央部から前記基板載置面に載置させる基板載置工程と、
前記基板載置面に載置された前記基板を前記静電チャックにより吸着して、前記基板にプラズマ処理を行う工程と、
前記プラズマ処理終了後、前記静電チャックによる吸着を解除し、前記第1の昇降ピンと前記第2の昇降ピンとを同じ高さとして前記基板を支持し、前記基板を前記基板載置面から離脱させる基板離脱工程と、
を含むことを特徴とする基板受け渡し方法。
【請求項2】
前記基板離脱工程は、前記第1の昇降ピンと前記第2の昇降ピンとを同じ高さとし、前記可撓性のある前記基板を複数箇所で下に凸に撓ませて、前記基板を前記基板載置面から離脱させることを特徴とする請求項1に記載の基板受け渡し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−33847(P2013−33847A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169069(P2011−169069)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】