説明

基板搬送装置および基板の偏心補正方法

【課題】ウェーハの偏心を解消し、搬送ロボットのハンドと搬送先の基板載置台との干渉を防止する。
【解決手段】
プリアライメント装置13は、ウェーハ31を載置した回転載置部131を回転させたとき、ラインセンサ132から得られるウェーハ31のエッジ位置情報に基づき、ウェーハ31の偏心ベクトルを検出し、さらに、回転載置部131をその偏心ベクトルの方向がハンド141のプリアライメント装置13に対する挿抜方向と同じになるまで回転させる。搬送ロボット14は、そのウェーハ31をハンド141で保持して、いったん、プリアライメント装置13から引き抜き、再度、プリアライメント装置13へ挿入して、回転載置部131へ載置する。このとき、搬送ロボット14は、ハンド141を前に挿入したときよりも、偏心ベクトルの大きさの分だけ、前進または後退した位置まで挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハなど薄板状の基板を基板処理装置に搬送するとともに、その搬送の途上で基板の位置合わせをする基板搬送装置、および、その位置合わせで用いられる基板の偏心補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路などの半導体素子は、シリコンなどからなるウェーハ(基板)に不純物注入、成膜、エッチングなどの様々な処理が施されて製造され、その製造には、処理に応じた基板処理装置が用いられる。ウェーハは、基板処理装置で処理されるとき、そのウェーハの向きや中心位置を揃えておくことが求められる場合がある。そのウェーハの向きや中心位置を揃える工程は、一般には、アライメントと呼ばれる。アライメントには、基板処理装置内でその処理の内容に応じて行われる高精度アライメントと、ウェーハを基板処理装置に搬入する際に行うラフなアライメントがある。後者は、しばしば、プリアライメントと呼ばれる。
【0003】
プリアライメントは、その性格上、搬送ロボットを利用して行われることが多い。例えば、特許文献1には、スカラ型の搬送ロボットを用いてアライメントを行うアライメント装置の例が開示されている。特許文献1によれば、搬送ロボットは、搬送の途上で、基板をアライメント装置に移載した上で、アライメント装置で中心位置のずれの量(偏心量)を検出し、その検出された偏心量に応じて、アライメント装置から搬送ロボットに移載するときに、搬送ロボットのハンドの挿入の方向や位置を調整することによって、偏心を補正するとしている。
【0004】
また、アライメント装置で中心位置の偏心量のX軸成分およびY軸成分(以下、本明細書では、搬送ロボットのハンドの挿抜方向をX軸とし、水平面内でそのX軸に直交する軸をY軸とする)を求め、搬送先において、その偏心量のX成分およびY成分を打ち消す位置で搬送先の基板載置台に移載することは、従来から行われている周知技術である。
【特許文献1】特開2003−110004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているアライメント装置における偏心補正方法の場合や、前記の周知技術による偏心補正方法の場合には、偏心量が大きくなった場合、アライメント装置や搬送先の基板載置台の構造によっては、搬送ロボットのハンドとその載置台との間で、移載を行うことができない場合がある。
【0006】
すなわち、搬送ロボットのハンドは、通常、移載先の基板載置台を挟み込むような構造であるため、例えば、偏心量のY軸成分が大きい場合には、その偏心を補正しようとして、その偏心量のY軸成分だけ、ハンドを挿入する位置をY軸方向にずらしたとすると、ハンドが移載先の基板載置台とぶつかるような場合が生じる。そのような場合には、基板をハンドから移載先の基板載置台へ移載できないばかりか、ハンドや基板などを破損することになる。なお、このように複数の装置が互いの装置の構造や動作のために、連携した動作ができなくなることを装置の干渉という。
【0007】
以上のような従来技術の問題点に鑑み、本発明は、搬送ロボットを用いて基板のプリアライメントするとき、搬送ロボットのハンドと、搬送先の基板載置台とが干渉することを防止した基板搬送装置および基板の偏心補正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の従来技術の問題点を解決するために、本発明においては、基板搬送装置を、基板を保持するハンドを備えた搬送ロボットと、基板を載置・回転させる回転載置部および基板の偏心ベクトルを検出する偏心検出部を備えたアライメント装置を含んで構成する。そして、その基搬送装置において、搬送ロボットは、基板を保持したハンドをアライメント装置の所定の位置まで挿入させ、そのハンドに保持した基板を、アライメント装置の回転載置部に載置する。次に、アライメント装置は、偏心検出部により、基板の偏心ベクトルを検出する。そして、それにより検出された偏心ベクトルの大きさが所定の閾値よりも大きい場合には、アライメント装置は、回転載置部を駆動して、その回転載置部に載置された基板を、その基板の偏心ベクトルの方向と、ハンドがアライメント装置に対し挿抜される方向と、が略同じになるように回転させる。次に、搬送ロボットは、回転載置部に載置された基板をハンドに保持させて、その基板を保持したハンドをアライメント装置から抜き出し、その後、再度、ハンドをアライメント装置の中の前回挿入したときの所定の位置よりも前記検出された偏心ベクトルの大きさの分だけ前進または後退した位置まで挿入させ、そのハンドに保持した基板を回転載置部に載置する。
【0009】
本発明においては、アライメント装置の回転載置部により、その回転載置部に載置された基板が回転され、その偏心ベクトルの方向と、ハンドがアライメント装置に対し挿抜される方向と、を略同じにすることができるので、ハンドをアライメント装置に対し挿入する場合のY軸方向の位置を変える必要がない。従って、搬送ロボットのハンドと搬送先の基板載置台との干渉を避けることができる。
【0010】
また、搬送ロボットは、偏心ベクトルの方向がハンドの挿抜方向と略同じになった基板を、ハンドで保持し、いったん引き抜いた後、再度、その基板を保持したハンドを偏心ベクトルの大きさの分だけ前進または後退した位置まで挿入させ、そのハンドが保持した基板を回転載置部に載置するので、基板の中心と回転載置部の回転中心とは、略同じ位置になる。従って、基板の偏心が解消されたことになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、搬送ロボットを用いて基板のプリアライメントするとき、搬送ロボットのハンドと搬送先の基板載置台とが干渉することを防止した基板搬送装置および基板の偏心補正方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、適宜、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
まず、図1〜図3を用いて、本実施形態に係る基板搬送装置の概略構造について説明する。ここで、図1は、本実施形態に係る基板搬送装置の概略構造の例を外観斜視図で示した図、図2は、同基板搬送装置の内部の概略構造の例を上面図で示した図、図3は、同基板搬送装置の内部の概略構造の例を正面図で示した図ある。
【0014】
図1、図2および図3に示すように、基板搬送装置1は、その筐体11の一方の面が基板処理装置2に接するようにして設けられる。ここで、基板処理装置2は、集積回路を製造する過程にあるウェーハ31に対し、不純物注入、成膜、エッチング、洗浄、検査などの処理を施す装置である。
【0015】
基板搬送装置1の筐体11の内部には、ファンフィルタユニット12(図2では図示省略)、プリアライメント装置13、搬送ロボット14(図1では図示省略)および制御装置15(図2では図示省略)が設けられている。また、筐体11の外側には、筐体11の側壁の一部を構成するようにして、ロードポート10が設けられている(図では、3つのロードポート10が描かれている)。
【0016】
ここで、送風ファン121と高性能の塵埃フィルタ(図示省略)とを含んで構成されたファンフィルタユニット12は、筐体11の天井部に設けられ、所定のクリーン度を確保した清浄なダウンフローのエアを筐体11の内部に供給する。従って、本実施形態の基板搬送装置1は、いわゆるミニエンバイロメントの基板搬送装置である。
【0017】
ロードポート10は、ウェーハ31を密閉収納して搬送するのに用いられる搬送容器3の内部空間と筐体11の内部空間とを連通させるための装置であり、容器装着台100、固定プレート101、側板102、連通開口部103などにより構成される。ロードポート10は、ロードポート10の取り付け部位として筐体11の側壁にあらかじめ用意された開口部を塞ぐように、筐体11の側壁に取り付けられる。
【0018】
ここで、側板102は、筐体11の側壁に設けられた前記開口部を塞ぐとともに、筐体11の側壁の一部を構成する。また、容器装着台100は、搬送容器3を載置する載置台であり、搬送容器3は、その容器装着台100の上に、その容器横蓋30を有する側面が側板102に対向する面となるように載置される。そして、搬送容器3は、容器装着台100の表面部に設けられた固定プレート101により、側板102に圧接するように固定される。
【0019】
側板102の搬送容器3が圧接される部分には、連通開口部103が形成されており、その連通開口部103は、搬送容器3がロードポート10に装着されていないときには、ポートドア104によって塞がれている。また、そのポートドア104には、図示しないポートドア開閉器機構が付属し、さらに、ポートドア104およびポートドア開閉器機構には、ポートドア104が開放されるときに、搬送容器3の容器横蓋30を併せて開放する機構が付属している。このようなポートドア開閉器機構により、ポートドア104および容器横蓋30が開放されると、連通開口部103を通して搬送容器3の内部空間と筐体11の内部空間とが連通する。
【0020】
なお、ロードポート10に装着される搬送容器3としては、通常、半導体製造装置の標準化団体であるSEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)により規格化されたFOUP(Front Opening Unified Pod)が用いられる。FOUPは、その内部にウェーハ31を複数枚(例えば、25枚)収納するためのスロットを備えるとともに、その一の側面には、ウェーハ31を出し入れするための開口部とその開口部を塞ぐための横蓋(容器横蓋30)とが設けられている。
【0021】
一方、搬送ロボット14は、水平面内で回転および伸縮が自在で、かつ、上下方向に昇降自在に構成されたアーム140を備えている。また、アーム140は、その先端部にウェーハ31を保持する(例えば、裏面から吸着する、または、周縁部を把持する)ハンド141を備えている。
【0022】
さらに、搬送ロボット14は、ロードポート10が取付けられた筐体11の壁面に平行に、筐体11の床に設けられた走行軸142を備え、アーム140の支持体は、走行軸142上を自在に移動することができる。ここで、走行軸142は、直線状のレールなどで構成され、その走行軸142の一方の終端部の先には、プリアライメント装置13が設けられている。
【0023】
プリアライメント装置13は、搬送ロボット14によって搬送されるウェーハ31の偏心を補正するための装置であり、回転載置部131、ラインセンサ132、回転駆動部133などを含んで構成される。
【0024】
ここで、回転載置部131は、その上面が円形平板のいわゆるターンテーブルによって構成され、そのターンテーブルの上面にウェーハ31を載置して、回転駆動部133により駆動されて自在に回転する。このとき、回転駆動部133は、そのターンテーブルの回転位置(すなわち、回転量)を検出するためのロータリエンコーダなどを備えたモータによって構成される。また、ラインセンサ132は、CCD(Charge Coupled Device)撮像素子などによって構成され、ウェーハ31のエッジ(外縁)位置を検出する。
【0025】
なお、このとき、エッジ位置は、回転駆動部133の回転中心からの距離などで表される。また、エッジ位置の検出を容易にするためは、好ましくは、ラインセンサ132の下方、ウェーハ31を挟んだ位置に蛍光灯や発光ダイオードなどの光源(図示省略)を設けておくとよい。
【0026】
続いて、以上のように構成されたミニエンバイロメントの基板搬送装置1において、搬送ロボット14がウェーハ31を搬送容器3から基板処理装置2へ搬送する動作について説明する。
【0027】
搬送容器3がロードポート10に装着されると、ポートドア104および容器横蓋30が開放され、搬送容器3の内部空間と筐体11の内部空間とが連通する。そこで、搬送ロボット14は、まず、走行軸142上を移動し、ポートドア104および容器横蓋30が開放されたロードポート10の前面で停止する。そして、搬送ロボット14は、アーム140を伸ばして、ハンド141を搬送容器3に挿入して、収納されているウェーハ31を保持する。
【0028】
次に、搬送ロボット14は、アーム140を縮めて、ハンド141に保持したウェーハ31を搬送容器3から抜き出し、走行軸142上を移動して、プリアライメント装置13の前面で停止する。次に、搬送ロボット14は、アーム140の伸縮方向をプリアライメント装置13の方向に変え、アーム140を伸ばして、ハンド141で保持したウェーハ31を回転載置部131の上部の所定の位置まで移動させ、さらに、アーム140およびハンド141を下降させ、ウェーハ31の保持を解除することにより、ウェーハ31を回転載置部131に載置する。
【0029】
次に、プリアライメント装置13が回転載置部131に載置されたウェーハ31の偏心を補正すると(偏心補正時の動作については、後記する)、搬送ロボット14は、偏心が補正されたウェーハ31をハンド141で保持し、アーム140を縮めて、そのウェーハ31をプリアライメント装置13から抜き出す。その後、搬送ロボット14は、ウェーハ31をハンド141で保持したまま、基板処理装置2に設けられた基板受渡台21の前面の位置まで走行軸142上を移動し、アーム140の伸縮方向を基板受渡台21の方向に変え、アーム140を伸ばして、ハンド141に保持していたウェーハ31を基板受渡台21に載置する。
【0030】
続いて、図4〜図7を参照して、プリアライメント装置13におけるウェーハ31の偏心補正の動作について説明する。ここで、図4は、搬送ロボット14およびプリアライメント装置13の動作フローを示した図、図5は、偏心して回転載置部131上に載置されたウェーハ31の配置状態を示した図、図6は、偏心方向がハンド141の挿抜方向と同じになるように回転させられた後に、回転載置部131上に載置されたウェーハ31の配置状態を示した図、図7は、ハンド141によりいったん持ち上げられ、偏心補正後に回転載置部131上に再載置されたウェーハ31の配置状態を示した図である。
【0031】
図4に示すように、搬送ロボット14は、搬送容器3からウェーハ31を保持して取り出し、走行軸142上を移動し、プリアライメント装置13の前面の所定の位置に停止する(ステップS11)。次に、搬送ロボット14は、アーム140を伸ばし、ハンド141をプリアライメント装置13へ挿入させ、ウェーハ31のハンド141による保持を解除して、そのウェーハ31を回転載置部131上に載置する(ステップS12)。次に、搬送ロボット14は、プリアライメント装置13に対し、回転載置部131上に載置されたウェーハ31の偏心ベクトルの検出を指示する(ステップS13)。
【0032】
プリアライメント装置13は、偏心ベクトル検出の指示を受けると、回転載置部131を回転させ、そのときラインセンサ132から得られるウェーハ31のエッジ位置と、回転駆動部133から得られる回転角のデータに基づき、公知の方法に従って、ウェーハ31の偏心ベクトルを検出する(ステップS13a)。
【0033】
ここで、偏心ベクトルとは、図5に示すように、回転載置部131上に載置されたウェーハ31の中心Qの、回転載置部131の回転中心Pからの変位量と方向を表すベクトル(すなわち、P→Qが表すベクトル)であり、通常、そのX軸成分とY軸成分とによって表される。なお、本実施形態では、X軸は、搬送ロボット14がハンド141をプリアライメント装置13に対して挿抜する水平面内で、その挿抜方向と同じ方向の軸であり、Y軸は、その水平面内で、そのX軸と直交する軸であるとする。また、図5において、2点鎖線の円31aは、ウェーハ31の中心Qと回転載置部131の回転中心Pとが一致したときのウェーハ31の外形を示したものである。
【0034】
次に、搬送ロボット14は、プリアライメント装置13からプリアライメント装置13により検出されたウェーハ31の偏心ベクトルを取得し(ステップS14)、その取得した偏心ベクトルから最大偏心量(R)と偏心角(θ)を算出する(ステップS15)。ここで、最大偏心量(R)は、偏心ベクトルの大きさ、つまり、偏心ベクトル(P→Q)の絶対値である。また、偏心角(θ)は、偏心ベクトル(P→Q)がX軸となす角である。
【0035】
次に、搬送ロボット14は、最大偏心量(R)が所定の閾値よりも大きいか否かを判定し(ステップS16)、最大偏心量(R)が所定の閾値よりも大きい場合には(ステップS16でYes)、プリアライメント装置13に、ウェーハ31の偏心角(θ)が0になるように、ウェーハ31の回転を指示する(ステップS17)。
【0036】
プリアライメント装置13は、搬送ロボット14からウェーハ31の回転の指示を受けると、回転載置部131を回転させることにより、ウェーハ31を偏心角(θ)の分、逆方向に回転させる(ステップS17a)。その結果、偏心ベクトル(P→Q)は、図6に示すように、X軸、つまり、搬送ロボット14がハンド141をプリアライメント装置13に対して挿抜する方向と同じ方向を向くことになる。なお、図6で、白抜きの矢印は、ウェーハ31を回転させた方向を示している。
【0037】
そこで、搬送ロボット14は、そのとき回転載置部131に載置されているウェーハ31をハンド141により保持して、いったん、プリアライメント装置13から、ウェーハ31を抜き出す(ステップS18)。そして、搬送ロボット14は、ステップS15で算出した最大偏心量(R)の分、走行軸142上を移動し、つまり、プリアライメント装置13の方に向かって前進または後退する(ステップS19)。
【0038】
その後、搬送ロボット14は、その動作をステップS12に戻し、そのときハンド141で保持していたウェーハ31を回転載置部131上に載置する(ステップS12)。その結果は、図7に示すように、ウェーハ31の中心Qは、回転載置部131の回転中心Pに略一致(原理的には、一致)することになる。以下、搬送ロボット14は、ステップS13以降の動作を繰り返す。
【0039】
一方、ステップS16の判定で、最大偏心量(R)が所定の閾値以下であった場合には(ステップS16でNo)、ウェーハ31の中心Qと回転載置部131の回転中心Pとが略一致した状態(図7参照)になるので、搬送ロボット14およびプリアライメント装置13は、ウェーハ31の偏心補正の動作を終える。
【0040】
ただし、プリアライメントといえば、ノッチ311の位置合わせも行われるのが一般的であり、ここでは、その動作をステップS20およびステップS20aの動作により表している。なお、ノッチ311は、ウェーハ31の周縁部に形成された小さな切り欠き部であり、ノッチ311によって、ウェーハ31上に形成される集積回路などの配列方向などが識別可能となる。
【0041】
搬送ロボット14は、プリアライメント装置13にノッチ311の位置合わせを指示する(ステップS20)。プリアライメント装置13は、その指示を受けると、回転載置部131を回転させることによって、ウェーハ31を、適宜、回転させ、ノッチ311の位置をあらかじめ定められた基準位置に合わせる(ステップS20a)。
【0042】
ここで、ノッチ311の位置合わせの基準位置は、ラインセンサ132との相対角度によって定めることができ(例えば、その相対角度をφとする)、また、ラインセンサ132によりノッチ311を容易に検出することができる。従って、ステップS20aでは、ウェーハ31を回転させ、ノッチ311を検出したら、その後、ウェーハ31を角度φだけ回転させれば、ノッチ311は、あらかじめ定められた位置合わせの基準位置に合わせられることになる。
【0043】
なお、ノッチ311の位置合わせの基準位置は、あらかじめ定められた位置であれば、どこでもよいが、例えば、図7で白抜きの矢印を付した位置、つまり、ハンド141がプリアライメント装置13に挿抜されるときの中心線が、搬送ロボット14に近い側で、偏心補正されたウェーハ31の周縁部と交わる位置など、分かりやすい位置に設定される。
【0044】
以上までの搬送ロボット14およびプリアライメント装置13の動作により、ウェーハ31の偏心が補正され、ノッチ311が所定の基準位置に合わせられたことになる。そこで、搬送ロボット14は、回転載置部131に載置されているウェーハ31をハンド141に保持させて、プリアライメント装置13から取り出し(ステップS21)、その取り出したウェーハ31を基板処理装置2へ搬送する(ステップS22)。
【0045】
以上に説明した搬送ロボット14およびプリアライメント装置13の動作は、制御装置15(図1、図3参照)によって制御される。制御装置15は、図示を省略するが、CPU(Central Processing Unit)と記憶装置とを備えたコンピュータにより構成される。なお、記憶装置は、集積回路のRAM(Random Access Memory)やハードディスク装置などによって構成される。
【0046】
一方、搬送ロボット14は、アーム140やハンド141の動作、走行軸142上での走行などを実現するために、モータなどのアクチュエータ、各種センサなどを備え、さらに、それらを制御する制御回路を備える。また、プリアライメント装置13は、ラインセンサ132、回転駆動部133などを制御する制御回路を備える。
【0047】
制御装置15は、さらに、CPUとこれらの制御回路とを接続するインタフェース回路または通信回路を備える。従って、制御装置15は、そのCPUが記憶装置に格納されている所定のプログラムを実行することによって、そのインタフェース回路または通信回路を介して、搬送ロボット14やプリアライメント装置13の制御回路にそれらの動作を制御する制御情報を送信することができる。
【0048】
例えば、制御装置15は、そのプログラムに従って、そのインタフェース回路または通信回路を介して、搬送ロボット14から位置情報などのセンサ情報を取得しつつ、所定のフォーマットの制御情報を搬送ロボット14の制御回路へ送信することにより、そのアーム140やハンド141の動作、走行軸142上での走行などを制御する。また、同様に、制御装置15は、そのインタフェース回路または通信回路を介して、プリアライメント装置13の制御回路に所定のフォーマットの制御情報を送信することにより、ラインセンサ132を駆動させ、また、回転載置部131を回転させ、そのラインセンサ132からウェーハ31のエッジ位置データを取得することができる。
【0049】
以上のように、制御装置15のCPUが記憶装置に格納されている所定のプログラムを実行することによって、図4に示した搬送ロボット14の動作およびプリアライメント装置13の動作が実現される。なお、制御装置15において、CPUは、1つであってもよいが、制御装置15が複数のCPUを備え、搬送ロボット14を制御するCPUと、プリアライメント装置13を制御するCPUと、が異なるCPUであってもよい。
【0050】
以上、本実施形態においては、プリアライメント装置13の回転載置部131は、自らがその上部に載置しているウェーハ31を、そのウェーハ31の偏心ベクトルの方向と、ハンド141がプリアライメント装置13に対し挿抜される方向(X軸方向)と、が略同じになるまで回転させるので、Y軸方向の偏心が解消される。また、その後、そのウェーハ31は、ハンド141により保持されて、いったん、プリアライメント装置13から引き抜かれた後、再度、プリアライメント装置13へ挿入されて、回転載置部131へ載置される。その場合、ハンド141は、前に挿入されたときよりも、偏心ベクトルの大きさの分だけ、前進または後退した位置まで挿入される。従って、その位置で、ウェーハ31が回転載置部131へ載置されると、X軸方向の偏心も解消されることになる。
【0051】
本実施形態では、以上のように、プリアライメント装置13の回転載置部131上でウェーハ31の偏心を解消することができるので、そのウェーハ31を基板処理装置2の基板受渡台21へ搬送したとき、ハンド141が基板受渡台21と干渉することはない。
【0052】
なお、本実施形態では、X軸方向の偏心を解消するために、搬送ロボット14がハンド141を再度プリアライメント装置13に挿入するとき、その挿入量を、アーム140の伸長量により調節するのではなく、搬送ロボット14に走行軸142上を前後に移動させ、その移動量によって調節している(図4ステップS19参照)。その結果、ハンド141を挿入したときのX軸方向の位置合わせの精度を向上させることができる。
【0053】
すなわち、アーム140による位置制御は、その間接の自由度が多いほど精度を向上させるのが難しいとされているのに対し、本実施形態のように走行軸142上における直線の位置制御の場合には、より容易にその精度向上を図ることができる。
【0054】
以下、以上に説明した実施形態について、その一部を変更した変更例について、以下、説明する。
【0055】
以上に説明した実施形態では、X軸方向の偏心を解消するとき、回転載置部131上のウェーハ31は、ハンド141に保持された上で、いったん、プリアライメント装置13から引き抜かれた後、再度、プリアライメント装置13へ挿入されるとしているが、ウェーハ31を保持したハンド141の引き抜きおよび再挿入を省略し、ハンド141を回転載置部131の上方に持ち上げただけであってもよい。
【0056】
その場合には、搬送ロボット14は、ウェーハ31を保持したハンド141を回転載置部131の上方に持ち上げた状態で、走行軸142上をプリアライメント装置13の方へ偏心ベクトルの大きさの分だけ前進または後退し、その後、ハンド141に保持したウェーハ31を回転載置部131に載置するようにすればよい。
【0057】
また、以上に説明した実施形態では、X軸方向の偏心を解消するために、搬送ロボット14がハンド141を再度プリアライメント装置13に挿入するとき、その挿入量の調節を、搬送ロボット14の走行軸142上での移動量によって調節しているが、その挿入量の調節をアーム140の伸長量で調節してもよい。
【0058】
この場合には、前記したように、ハンド141を挿入したときの位置合わせの精度が、搬送ロボット14の走行軸142上での移動量によって調節する場合よりも低下するが、プリアライメントがラフな位置合わせであることを考慮すれば、その低下は許容される。また、高価になるが、高精度のアーム140を採用すれば、その低下を回避することができる。
【0059】
また、以上に説明した実施形態では、基板搬送装置1は、筐体11などを有するミニエンバイロメントの基板搬送装置であるとしているが、必ずしも、ミニエンバイロメントである必要はない。
【0060】
また、以上に説明した実施形態では、基板搬送装置1の搬送ロボット14の搬送対象の基板は、集積回路などを製造する過程にあるシリコンのウェーハであるとしているが、搬送対象の基板は、それに限定されるものではなく、例えば、製造途上にある液晶表示基板や有機EL(Electro-Luminescence)表示基板などであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態に係る基板搬送装置の概略構造の例を外観斜視図で示した図。
【図2】本発明の実施形態に係る基板搬送装置の内部の概略構造の例を上面図で示した図。
【図3】本発明の実施形態に係る基板搬送装置の内部の概略構造の例を正面図で示した図。
【図4】本発明の実施形態に係る搬送ロボットおよびプリアライメント装置の動作フローを示した図。
【図5】偏心して回転載置部上に載置されたウェーハの配置状態を示した図。
【図6】偏心方向がハンドの挿抜方向と同じになるように回転させられた後に、回転載置部上に載置されたウェーハの配置状態を示した図。
【図7】ハンドによりいったん持ち上げられ、偏心補正後に回転載置部上に再載置されたウェーハの配置状態を示した図。
【符号の説明】
【0062】
1 基板搬送装置
2 基板処理装置
3 搬送容器
10 ロードポート
11 筐体
12 ファンフィルタユニット
13 プリアライメント装置
14 搬送ロボット
15 制御装置
21 基板受渡台
30 容器横蓋
31 ウェーハ
100 容器装着台
101 固定プレート
102 側板
103 連通開口部
104 ポートドア
121 送風ファン
131 回転載置部
132 ラインセンサ
133 回転駆動部
140 アーム
141 ハンド
142 走行軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板をハンドに保持して搬送する搬送ロボットと、
前記搬送ロボットにより搬送された基板を載置・回転させる回転載置部および前記基板の偏心ベクトルを検出する偏心検出部を有するアライメント装置と、
前記搬送ロボットおよび前記アライメント装置を制御する制御装置と、
を備えてなる基板搬送装置であって、
前記制御装置は、
前記搬送ロボットに、前記ハンドを前記アライメント装置の所定の位置まで挿入させ、前記保持した基板を前記回転載置部に載置させ、
前記アライメント装置に、前記偏心検出部により、前記載置された基板の偏心ベクトルを検出させ、その結果、検出された前記偏心ベクトルの大きさが所定の閾値よりも大きい場合には、前記回転載置部に載置された前記基板を、その基板の偏心ベクトルの方向と、前記ハンドが前記アライメント装置に対し挿抜される方向と、が略同じになるように回転させ、
前記搬送ロボットに、前記回転載置部に載置された前記基板を前記ハンドに保持させて、前記アライメント装置から前記ハンドを抜き出させた後、前記ハンドを、前記アライメント装置の中の、前回挿入したときの位置よりも前記偏心ベクトルの大きさの分だけ前進または後退した位置まで、再度、挿入させ、前記ハンドに保持した前記基板を前記回転載置部に載置させること
を特徴とする基板搬送装置。
【請求項2】
前記搬送ロボットは、前記ハンドが前記アライメント装置に挿抜される方向と略平行な直線に沿って設けられた走行軸を、さらに、備え、
前記制御装置は、
前記搬送ロボットが、前記抜き出したハンドを前記アライメント装置に、再度、挿入する場合には、その前に、前記搬送ロボットにその搬送ロボットの前記走行軸上における位置を、前記偏心ベクトルの大きさの分だけ前記アライメント装置側に前進または後退させること
を特徴とする請求項1に記載の基板搬送装置。
【請求項3】
基板をハンドに保持して搬送する搬送ロボットと、
前記搬送ロボットにより搬送された基板を載置・回転させる回転載置部および前記基板の偏心ベクトルを検出する偏心検出部を有するアライメント装置と、
前記搬送ロボットおよび前記アライメント装置を制御する制御装置と、
を備えてなる基板搬送装置における基板の偏心補正方法であって、
前記制御装置は、
前記搬送ロボットに、前記ハンドを前記アライメント装置の所定の位置まで挿入させ、前記保持した基板を前記回転載置部に載置させ、
前記アライメント装置に、前記偏心検出部により、前記載置された基板の偏心ベクトルを検出させ、その結果、検出された前記偏心ベクトルの大きさが所定の閾値よりも大きい場合には、前記回転載置部に載置された前記基板を、その基板の偏心ベクトルの方向と、前記ハンドが前記アライメント装置に対し挿抜される方向と、が略同じになるように回転させ、
前記搬送ロボットに、前記回転載置部に載置された前記基板を前記ハンドに保持させて、前記アライメント装置から前記ハンドを抜き出させた後、前記ハンドを、前記アライメント装置の中の、前回挿入したときの位置よりも前記偏心ベクトルの大きさの分だけ前進または後退した位置まで、再度、挿入させ、前記ハンドに保持した前記基板を前記回転載置部に載置させること
を特徴とする基板の偏心補正方法。
【請求項4】
前記搬送ロボットは、前記ハンドが前記アライメント装置に挿抜される方向と略平行な直線に沿って設けられた走行軸を、さらに、備え、
前記制御装置は、
前記搬送ロボットが、前記抜き出したハンドを前記アライメント装置に、再度、挿入する場合には、その前に、前記搬送ロボットにその搬送ロボットの前記走行軸上における位置を、前記偏心ベクトルの大きさの分だけ前記アライメント装置側に前進または後退させること
を特徴とする請求項3に記載の基板の偏心補正方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−194046(P2009−194046A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31238(P2008−31238)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000233549)株式会社日立ハイテクコントロールシステムズ (130)
【Fターム(参考)】