説明

変性シアネートエステル系樹脂組成物、それを用いる樹脂フィルム、多層プリント配線板およびそれらの製造方法

【課題】耐湿性、耐熱性、耐溶媒性および耐薬品性が良好で、ビルドアップ積層方式に適し、高周波回路の低損失を実現でき、しかも回路充填性などの成形性が良好な樹脂組成物、ならびにそれをを用いた樹脂フィルムおよび多層プリント配線板を提供する。
【解決手段】(A)シアネートエステル化合物、(B)フェノール類、(C)ポリフェニレンオキシド、(D)金属化合物触媒および(E)エポキシ樹脂を含み;または(A)を(B)で変性した(A′)変性シアネートエステル樹脂、(C)、(D)および(E)を含む変性シアネートエステル系樹脂組成物;それを用いる樹脂フィルムおよび多層プリント配線板、ならびにそれらの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷配線板における絶縁層の形成に用いられる変性シアネートエステル系樹脂組成物に関し、また、該樹脂組成物から得られる樹脂フィルムおよび多層プリント配線板に関する。さらに、本発明は、それらの樹脂フィルムおよび多層プリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型・高機能化に伴い、印刷配線板に用いるための、薄型・軽量で、かつ高密度配線が可能な基板材料が求められられるようになってきた。また、近年、小径でかつ必要な層間のみを非貫通穴で接続するIVH構造のビルドアップ積層方式の印刷配線板が開発され、急速に普及が進んでいる。ビルドアップ積層方式の印刷配線板の絶縁層には、ガラス布のような基材を含まない耐熱性樹脂が用いられ、IVH用の穴は、感光性樹脂を利用したホトリソグラフィーによるか、または熱硬化性樹脂をレーザ加工機によって熱分解するなどの方法によって形成されている。
【0003】
さらに近年では、大量のデータを高速で処理するために、コンピュータや情報機器端末などで、信号の高周波化が進んでいる。用いる周波数が高くなるにつれて、電気信号の伝送損失が大きくなる。それに対応するために、高周波化に対応した誘電特性を有する印刷配線板の開発が、強く求められている。
【0004】
高周波回路における伝送損失は、配線まわりの絶縁層(誘電体)の誘電特性で決まる誘電体損の影響が大きく、印刷配線板用基板(特に絶縁樹脂)の誘電率および誘電正接(tanδ)を低くすることが必要となる。たとえば移動体通信関連の機器では、信号の高周波化に伴い、準マイクロ波帯(1〜3GHz)における伝送損失を少なくするために、誘電正接の低い基板が強く望まれるようになっている。
【0005】
さらにコンピュータなどの電子情報機器では、動作周波数が1GHzを越える高速マイクロプロセッサが搭載されるようになり、印刷配線板における高速パルス信号の遅延が問題になってきた。印刷配線板では、信号の遅延時間が、配線まわりの絶縁物の比誘電率εrの平方根に比例して長くなるため、高速コンピュータなどでは、誘電率の低い配線板用基板が求められている。
【0006】
さらにこれらの配線板には、使用される環境の温度および湿度に影響を受けにくいこと、すなわち耐熱性および耐湿性が必要である。これらの特性に関して、プレッシャークッカ試験(PCT)の恒温恒湿槽を利用した耐湿試験、ならびに耐湿試験を行った試験片の耐熱性試験が課せられる場合がある。
【0007】
以上のような印刷配線板の技術動向に対応して、高周波帯域における誘電率と誘電正接が低いばかりでなく、前述のビルドアップ積層方式印刷配線板の製造に適し、かつ耐熱性および耐湿性に優れた絶縁フィルムが必要となってきた。
【0008】
従来から、誘電特性が良好なフィルム材料として、耐熱性熱可塑性樹脂(エンジニアリング・プラスチック)であるポリフェニレンオキシド(PPOまたはPPE)系樹脂が知られている。しかしながら、印刷配線板用の絶縁材料に適用するためには、実装時のはんだ接続工程に耐えられる耐熱性と、印刷配線板製造その他の工程に耐えられる耐溶媒性・耐薬品性などの改善が必要である。
【0009】
そこで、耐熱性や耐溶媒性を改善する方法として、ポリフェニレンオキシドを熱硬化性樹脂で変性する方法が提案されている。たとえば、そのような樹脂フィルムとして、特公平1-53700号公報に開示されているように、ポリフェニレンオキシドに、熱硬化性樹脂の中では最も誘電率が低いシアネートエステル樹脂を配合した硬化性樹脂組成物を用いるポリフェニレンオキシド系フィルムがある。
【0010】
しかしながら、このような樹脂組成物からなるフィルムは、樹脂同士の相溶性が悪いという問題点があり、硬化性樹脂としてシアネートエステル樹脂を単独で用いているため、樹脂硬化物の誘電特性は、誘電率が後述の他の組成物よりは比較的良好ではあるものの、誘電正接が誘電率の値の割に高いという傾向があり、高周波特性(特に伝送損失の低減)が不十分である。
【0011】
同様にシアネートエステル系の変性樹脂を用いる樹脂組成物としては、特公昭63-33506号公報に開示されているビスマレイミド/シアネートエステル変性樹脂とポリフェニレンオキシドとの樹脂組成物、および特開平5-311071号公報に開示されている変性フェノール樹脂/シアネートエステル系樹脂とポリフェニレンオキシドとの樹脂組成物などがある。
【0012】
しかしながら、このような方法による樹脂組成物は、ポリフェニレンオキシドを変性する熱硬化性樹脂が、ビスマレイミド/シアネートエステル変性樹脂や変性フェノール樹脂/シアネートエステル系樹脂であるため、ポリフェニレンオキシドに対する相溶性が若干良好になるものの、シアネートエステル樹脂以外の他の熱硬化性樹脂を含有しているため、樹脂硬化物の誘電特性は、シアネートエステル樹脂単独で変性された樹脂よりも悪く、その結果、総合的には高周波特性がさらに不十分である。
【0013】
また、熱可塑性樹脂であるポリフェニレンオキシド系樹脂に、熱硬化性を付与して耐熱性や耐溶媒性を改善するものとしては、特開平3−166225号公報に開示されている、ポリフェニレンオキシドと架橋性ポリマーおよび/またはモノマーとの樹脂組成物を流延して得られるフィルム、および特開平7-188362号公報に開示されている、不飽和基を有する特定の硬化性ポリフェニレンオキシドを適度に架橋させて得られるフィルムなどがある。
【0014】
しかしながら、特開平3−166255号公報に開示されている方法は、ポリトリアリルイソシアヌラートやスチレンブタジエン共重合体のような架橋性ポリマーおよび/またはトリアリルイソシアヌラートのような架橋性モノマーを、ポリフェニレンオキシドに配合することにより、熱硬化性(ラジカル重合性)を付与しているが、配合する架橋性のポリマーおよびモノマーが極性の高い化合物であるため、未反応で残存する少量成分のために、樹脂硬化物の誘電特性が悪い。
【0015】
また、特開平7-188362号公報に開示されている方法は、ポリフェニレンオキシド自身にアリル基などの不飽和基を導入したポリマーを用いるものである。該ポリマーは、本来、熱可塑性樹脂であるポリフェニレンオキシドの誘導体が主体となっているために溶融粘度が高いことに加えて、不飽和基のラジカル重合性を利用しているので連鎖反応的に一気に硬化が進むために、硬化時の最低溶融粘度が高く、かつ溶融粘度の上昇率も大きい。そのため、プレス成形の際に樹脂が充分に流動化できない。その結果、ボイドが発生して、回路充填性が不充分となり、また、多層化接着工程でのプレス条件の管理幅が狭くなるため、成形性が悪い。
【0016】
このような状況を解決するために、本発明者らは、先に印刷配線板用樹脂組成物として、特定のシアネートエステル樹脂を1価フェノール類で変性した組成物を用いる方法(特開平10−273532号公報、特開平11−124452号公報および特開平11−124453号公報参照)を提案した。この方法によれば、特定のシアネートエステル樹脂を1価フェノール類で変性することにより、高周波(GHz)帯域における誘電特性に優れ、特に誘電正接が低い樹脂組成物を得ることができる。しかしながら、これら樹脂組成物を多層配線板材料として用いた場合に、厳しい環境下における耐湿性試験で、剥離を生じる傾向があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の課題は、以上の状況に対応して、耐熱性、耐湿性、耐溶媒性および耐薬品性が良好で、かつ印刷配線板の薄形・軽量化と高密度化に有効なビルドアップ積層方式に適した絶縁フィルムを形成して、高周波帯域での誘電率および誘電正接が低く、高周波回路の低損失性を実現でき、しかも耐熱性、耐湿性および回路充填性などの成形性が良好な硬化性樹脂組成物、ならびにそれを用いた樹脂フィルムおよび多層プリント配線板、およびそれらの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、
(A)1分子中に少なくとも2個のシアナト基を有するシアネートエステル化合物;
(B)フェノール類;
(C)熱可塑性樹脂;および
(D)エポキシ樹脂
を含むことを特徴とする変性シアネートエステル系樹脂組成物に関する。特に、
(A)が、一般式〔1〕:
【0019】
【化1】

【0020】
(式中、R1は、
【0021】
【化2】

【0022】
を表し;そして
2およびR3は、たがいに同一でも異なっていてもよく、水素またはメチル基を表す);
で示されるシアネートエステル化合物である、変性シアネートエステル系樹脂組成物に関し;また、
(B)が、一般式〔2〕:
【0023】
【化3】

【0024】
(式中、R4およびR5は、たがいに同一でも異なっていてもよく、水素原子またはメチル基を表し;そして
nは1または2である)
で示される1価フェノール類である、変性シアネートエステル系樹脂組成物に関し;さらに、
(C)が、ポリフェニレンオキシドである、変性シアネートエステル系樹脂組成物に関する。
【0025】
また、本発明は、(A)1分子中に少なくとも2個のシアナト基を有するシアネートエステル化合物と、(B)フェノール類とを反応させて得られる(A′)変性シアネートエステル樹脂シアネートエステル化合物を、(C)、(D)および(E)とともに含む変性シアネートエステル系樹脂組成物に関する。
【0026】
さらに、本発明は、これらの変性シアネートエステル系樹脂組成物を用いて得られる樹脂フィルムおよび多層プリント配線板、ならびにそれらの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の樹脂組成物を用いることにより、フィルム単独での取扱が可能な樹脂フィルムを作製することが可能である。この樹脂フィルムは、耐溶媒性が優れ、かつその硬化物は、高周波帯域での誘電率や誘電正接が低く、さらに多層配線板材料として用いた場合には、耐湿性、成形性、はんだ耐熱性および銅箔ピール強さなどが良好であるので、高速デジタル信号や無線通信関連の高周波信号を扱う機器に用いられる印刷配線板の、特にビルドアップ積層方式による製造に好適である。本発明の樹脂フィルムを用いることにより、コンピュータの高速化や高周波関連機器の低損失化に適した多層プリント配線板を容易に製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の変性シアネートエステル系樹脂組成物は、(A)1分子中に少なくとも2個のシアナト基を有するシアネートエステル化合物、好ましくは前記の一般式〔1〕で示されるシアネートエステル化合物;(B)フェノール類、好ましくは前記の一般式〔2〕で示される1価フェノール類;(C)熱可塑性樹脂、好ましくはポリフェニレンオキシド;(D)金属化合物触媒;および(E)エポキシ樹脂を必須成分として含むことを特徴とする。
【0029】
本発明のもう一つのタイプの変性シアネートエステル系樹脂組成物は、(A)1分子中に少なくとも2個のシアナト基を有するシアネートエステル化合物、好ましくは一般式〔1〕で示されるシアネートエステル化合物と;(B)フェノール類、好ましくは一般式〔2〕で示される1価フェノール類とを反応させて得られる(A′)変性シアネートエステル樹脂シアネートエステル化合物を、(C)、(D)および(E)とともに含み、場合によっては、さらに(B)フェノール類を含む樹脂組成物である。
【0030】
本発明に用いられる(A)シアネートエステル化合物は、1分子中に少なくとも2個のシアナト基を有し、好ましくは一般式〔1〕で示されるように、1分子中にシアナト基を2個有する、特定の構造のシアネートエステル化合物である。式〔1〕で示される化合物としては、たとえば、ビス(4−シアナトフェニル)エタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、α,α′−ビス(4−シアナトフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、フェノール付加ジシクロペンタジエン重合体のシアネートエステル化物などが挙げられる。その中でも、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタンなどが、硬化物の誘電特性と硬化性のバランスが良好なことから特に好ましい。一般式〔1〕で示される以外のシアネートエステル化合物としては、これらのシアネートエステル化合物のシアナト基が環化してトリアジン環を形成した三量体または五量体、ノボラック構造を有するトリシアナト化合物などを挙げることができる。これらの(A)シアネートエステル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
本発明に用いられる(B)は、フェノール類であり、(A)成分に由来する未反応のシアナト基と反応して、誘電率と誘電正接を下げる機能を有する。該フェノール類としては、p−t−ブチルフェノール、p−t−アミルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−t−ノニルフェノールのような1価フェノール類;カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ビスフェノールF、ビスフェノールAのような2価フェノール類;およびピロガロールのような3個以上のフェノール性水酸基を有する多価フェノールが例示されるが、誘電率および誘電正接を下げる効果から、1価フェノール類が好ましく、シアナト基との反応性が高く、また単官能で比較的低分子量であり、かつシアネートエステル樹脂との相溶性が優れていること、および耐熱性が良好なことから、一般式〔2〕で示される1価フェノール類がさらに好ましい。一般式〔2〕で示される化合物としては、たとえば、p−ベンジルフェノール、p−(α−クミル)フェノールなどが挙げられる。このような(B)フェノール類は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
本発明における(B)フェノール類の配合量は、十分な誘電特性を有する硬化物が得られ、特に高周波帯域において十分に低い誘電正接が得られることから、(A)シアネートエステル化合物100重量部に対して2〜40重量部が好ましく、5〜30重量部がより好ましく、5〜25重量部が特に好ましい。
【0033】
本発明においては、(A)シアネートエステル化合物と(B)1価フェノール類またはフェノール樹脂とは、両者を反応させて得られる(A′)変性シアネートエステル樹脂として用いることができる。すなわち、(A)シアネートエステル化合物のプレポリマー化とともに、(B)1価フェノール類を付加させた変性樹脂として用いられる。この反応は、本発明の樹脂組成物を調製する前にあらかじめ行ってもよく、樹脂組成物の溶液中で、または後述のように、樹脂組成物を硬化させるいずれかの工程で行ってもよい。
【0034】
(A)シアネートエステル化合物と(B)フェノール類を反応させる際には、反応の初期から、上記の適正配合量の(B)フェノール類の全量を投入して反応させて、(A′)変性シアネートエステル樹脂としてもよいし、反応の初期には上記の適正配合量の一部を反応させ、冷却後、残りの(B)1価フェノール類またはフェノール樹脂を添加して、Bステージ化または硬化の段階で反応させて、(A′)変性シアネートエステル樹脂を形成させてもよい。反応条件は、通常、温度40〜140℃である。
【0035】
本発明は、誘電特性の良好な変性シアネートエステル樹脂に(C)熱可塑性樹脂、特に誘電特性が良好なポリフェニレンオキシドを配合することにより、誘電特性が向上すること、ならびに本来非相溶系であって均一な樹脂を得ることが困難であるシアネートエステル樹脂とポリフェニレンオキシドとを、本発明者らが見出した方法、すなわち(C)熱可塑性樹脂、特にポリフェニレンオキシドの溶媒溶液中で、(A)シアネートエステル化合物と(B)フェノール類の反応を行う、いわゆる“セミIPN”化の方法によって、硬化性フィルム用の均一な樹脂ワニスを製造し、さらにそれを銅箔やキャリヤフィルムの片面に流延塗布し、加熱乾燥により溶媒を除去することにより、相溶化樹脂フィルムが得られることに、大きな特徴がある。
【0036】
本発明に用いられる(C)は、熱可塑性樹脂であり、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンナフタラート、ポリエーテルイミドなどが例示され、誘電特性に優れることから、ポリフェニレンオキシドが好ましい。ここでポリフェニレンオキシドとは、アルキル基のような置換基を有していてもよいベンゼン環がエーテル結合によって結合しているポリマーであり、ポリスチレン、スチレン−ブタジエンコポリマー、ABSなどによって変成したものを包含する。上記置換基としては、メチル基が好ましい。該ポリフェニレンオキシドとしては、たとえば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)オキシド、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)オキシドとポリスチレンのポリマーアロイ、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)オキシドとスチレン−ブタジエンコポリマーのポリマーロイなどが挙げられ、その中でも、ポリ(2、6−ジメチル−1,4−フェニレン)オキシドとポリスチレンのポリマーアロイ、およびポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)オキシドとスチレン−ブタジエンコポリマーのポリマーアロイなどがより好ましい。ポリマーアロイ中のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)オキシドの量は、硬化物の誘電特性が良好であることから、50重量%以上であることがさらに好ましく、65重量%以上であることが特に好ましい。
【0037】
本発明における(C)熱可塑性樹脂、特にポリフェニレンオキシドの配合量は、熱硬化成分である(A)シアネートエステル樹脂の十分な反応性および硬化性が得られ、かつ十分な誘電特性を有する硬化物、特に耐熱性および耐溶媒性に優れた樹脂フィルムが得られることから、(A)シアネートエステル化合物100重量部に対して5〜500重量部が好ましく、10〜300重量部がより好ましく、10〜200重量部が特に好ましい。
【0038】
本発明に用いられる(D)エポキシ樹脂は、分子中に2個以上のエポキシ基を有する低〜高分子量の化合物であり、たとえば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂およびイソシアヌラート型エポキシ樹脂;それらの水素添加物およびハロゲン化物;ならびに前記樹脂から選ばれた2種以上の混合物などが挙げられる。脂環式エポキシ樹脂としては、ビス(ジシクロペンタジエン)型をはじめとするジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シクロヘキセンオキシド型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのうち、分子骨格の対称性に優れ、誘電特性に優れた樹脂硬化物が得られることから、ビス(ジシクロペンタジエン)型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などが好ましい。
【0039】
本発明における(D)エポキシ樹脂の配合量は、耐湿性に優れた硬化物が得られ、かつ硬化物の誘電特性、特に誘電正接の上昇が抑制されることから、(A)シアネートエステル化合物100重量部に対して10〜600重量部が好ましく、30〜500重量部がより好ましい。また、本発明において(E)エポキシ樹脂を配合する段階は、変性シアネート系樹脂組成物を製造する際に、添加剤として必要な量をまとめて配合してもよいし、変性シアネート系樹脂組成物を製造する変性反応が終了した後に添加してもよい。特に、変性反応が終了した後に添加することにより、優れた誘電特性が得られる傾向がある。
【0040】
本発明において、(A)シアネートエステル化合物と(B)フェノール類、特に1価フェノール類との反応を促進するために、(E)金属化合物触媒を用いることができる。該(E)金属化合物触媒は、変性シアネート系樹脂を含む樹脂組成物を製造する際に、反応触媒として用いてもよく、また該樹脂組成物から得られる樹脂フィルムが硬化する際に、硬化促進剤として用いてもよい。金属化合物触媒としては、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛などの金属原子を含有する有機化合物が用いられ、具体的には、オクタン酸塩、2−エチルヘキサン酸塩およびナフテン酸塩などの有機酸金属塩;ならびにアセチルアセトン錯体などの有機リガンドを有する金属錯体が例示される。変性シアネート系樹脂組成物を製造する際の反応促進剤と、積層板を製造する際の硬化促進剤とは、同一の金属化合物触媒を単独で用いてもよく、またはそれぞれ別の2種以上を用いてもよい。
【0041】
本発明における(E)金属化合物触媒の配合量は、十分な反応性および適切な硬化速度が得られ、また反応の制御が容易であって、成形、硬化の際に、流動性の不足により成形性が悪くなることがないことから、(A)シアネートエステル化合物に対して1〜300重量ppmが好ましく、1〜200重量ppmがさらに好ましい。また、本発明において(E)金属化合物触媒を配合する段階は、変性シアネート系樹脂組成物を製造する際に、反応促進剤および硬化促進剤として必要な量をまとめて配合してもよいし、変性シアネート系樹脂組成物を製造する際には変性反応の促進に必要な量を用い、該反応の終了後に、硬化促進剤として同一の触媒、または別の金属化合物触媒を添加してもよい。
【0042】
本発明の変性シアネート系樹脂組成物に、上記の必須成分以外に、必要に応じて、難燃剤、無機および有機の充填剤、硬化促進剤ならびにその他の添加剤を配合することができる。難燃剤の例としては、トリブロモフェノール、テトラブロモビスフェノールAのような臭素化フェノール化合物;デカブロモジフェニルエーテルに代表されるポリブロモジフェニルエーテル;1,2−ジブロモ−4−(1,2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロヘキサン、ヘキサブロモシクロドデカンのような臭素化炭化水素;テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ノボラック型エポキシ樹脂のような臭素化エポキシ樹脂;臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネートのような臭素化熱可塑性樹脂;2,4,6−トリス(トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジンのような臭素化トリフェニルシアヌラートなどが挙げられる。その中でも、1,2−ジブロモ−4−(1,2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカンおよび2,4,6−トリス(トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジンなどの難燃剤が、シアネートエステル化合物と反応性を有しないため、得られる硬化物の誘電特性が良好なことから好ましい。
【0043】
本発明における難燃剤の配合量は、十分な耐燃性および耐熱性を有する硬化物が得られることから、(A)シアネートエステル化合物、(B)1価フェノール類またはフェノール樹脂および(C)ポリフェニレンオキシドの総量に対して5〜300重量%が好ましく、5〜200重量%がより好ましい。
【0044】
無機充填剤としては、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、クレイ、タルク、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ストロンチウムなどを使用することができる。また有機充填剤としては、シリコーン樹脂、アクリルゴム、ブタジエンゴム、ポリブタジエン型コアシェルゴム、パルプなどを使用することができる。充填剤の配合量は、均一でかつ良好な取扱性を有する成形材料、特に硬化性フィルムを得るために、本発明の樹脂組成物の総量に対して、300重量%以下が好ましい。
【0045】
エポキシ樹脂の硬化促進剤として、イミダゾール化合物、有機リン化合物、第三級アミン、第四級アンモニウム塩などを使用することができる。
【0046】
該硬化促進剤の配合量は、十分な硬化促進作用が発現し、かつ反応の制御が容易であって、適切な硬化速度が得ら例、流動性が十分で良好な成形性が得られることから、エポキシ樹脂に対して、0.01〜25重量%の範囲が好ましく、0.01〜20重量%の範囲がより好ましい。
【0047】
本発明の樹脂組成物は、上記の各成分を、通常の方法により混合して調製することができる。各成分を、有機溶媒に溶解ないし分散させて、ワニスの形態に調製することが好ましい。また、本発明の樹脂組成物の各成分を、溶媒に溶解ないし分散させて、有効成分10〜70重量%の樹脂ワニスとし、キャリヤフィルムの片面に、バーコータやロールコータなどを用いて塗布した後、加熱乾燥により溶媒を除去して、半硬化状か、または通常、150〜250℃に加熱することにより、硬化状の樹脂フィルムを形成させること(製膜)ができる。
【0048】
上記の樹脂ワニスを製造する場合に用いられる溶媒の例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類;トリクロロエチレン、クロロベンゼンのようなハロゲン化炭化水素類;N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミドのようなアミド類;N−メチルピロリドンのような窒素含有溶媒などが用いられる。特にベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類が好ましい。これらの溶媒類は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。芳香族炭化水素類を溶媒として用いる場合の配合量は、樹脂組成物の全体量に対して25〜900重量%が好ましく、40〜600重量%がより好ましく、40〜400重量%が特に好ましい。
【0049】
また、上記の芳香族炭化水素系溶媒に、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン系溶媒を併用すると、ワニスが懸濁溶液にはなるが、より高濃度の溶液が得られるという利点がある。しかし、ケトン系溶媒の配合量が多すぎると、樹脂組成物が分離沈降するおそれがあるので、ケトン系溶媒の配合量は、芳香族炭化水素系溶媒に対して250重量%以下が好ましい。
【0050】
樹脂フィルムを形成する際に用いるキャリヤフィルムは、銅、アルミニウムのような金属箔;ポリエステル、ポリイミドのような樹脂フィルム;またはこれらのキャリヤフィルムの表面に離型剤を塗布したものなどを用いることができる。キャリアフィルムに離型剤処理を施すことは、キャリヤフィルムから硬化性フィルムを引き剥がす際や、キャリア付きフィルムを基板に積層した後キャリヤフィルムを剥離する際の、作業性を向上させるうえで好ましい。
【0051】
以下、金属箔として銅箔、金属張積層板として銅張積層板を例として記述する。これらの記述は、銅以外の金属、たとえばアルミニウムを用いる場合にも適用される。
【0052】
このようにキャリヤフィルムの片面に絶縁性の樹脂層を形成した硬化性フィルムは、たとえば、キャリヤフィルムを除去したシート状の樹脂を、1枚用いるか、複数枚積層し、その上下に銅箔を積層してプレス成形することにより、印刷配線板用の銅張積層板を製造することができる。プレス成形条件は、通常、温度150〜250℃、圧力0.1〜5MPa、時間0.5〜5時間である。
【0053】
また、銅箔の片面に、バーコータやロールコータなどを用いて樹脂ワニスを塗布した後、加熱乾燥により溶媒を除去し、銅箔付き樹脂フィルムとすることもできる。樹脂層の厚さは、通常1〜300μmである。該銅箔付き樹脂フィルムは、絶縁層上に回路形成をする際に、銅箔をそのまま回路導体として使用できるという利点がある。
【0054】
銅箔付き樹脂フィルムを、たとえば、樹脂層を合わせるように貼り合わせ、さらに必要ならばその間にキャリヤフィルムを除去した樹脂フィルムを1枚以上介在させてプレス成形することにより、印刷配線板用の銅張積層板を製造することができる。
【0055】
また、従来のガラス布基材の銅張積層板または上記の銅張積層板に回路を形成した後、キャリヤフィルムを除去した樹脂フィルムを1枚以上積層し、さらにその上に銅箔もしくは銅箔付き樹脂フィルムを配置してプレス成形するか、または銅箔付き樹脂フィルムを配置してプレス成形することにより、多層配線板用の基板を製造することができる。
【0056】
また、従来のガラス布基材の銅張積層板、または上記の銅張積層板に回路を形成した後、前記の樹脂ワニスを塗布・加熱乾燥し、その上に銅箔を配置してプレス成形することにより、多層配線板用の基板を製造することもできる。さらには、従来のガラス布基材の銅張積層板、または上記の銅張積層板に回路を形成した後、前記樹脂フィルムを1枚以上積層して、めっきを施すことにより、多層配線板用の基板を製造することもできる。
【0057】
なお、回路の形成には、従来の方法を適用することができる。たとえば、銅張積層板または多層配線板用基板に必要に応じて貫通孔もしくは非貫通孔を明け、ついで無電解めっきまたは電気めっきを施して孔内壁を導体化した後、導通孔部の保護、エッチングレジストの形成、およびエッチングによる非配線部分の銅の除去などの工程により、回路を形成することができる。
【0058】
さらに本発明の硬化性樹脂フィルムでは、貫通孔または非貫通孔を明ける方法として、ドリル孔明けまたはレーザ加工を採用することができる。レーザ加工の場合には、レーザショットにより直に孔を形成するダイレクト・イメージング法や、金属製マスクなどを用いるコンフォーマル・マスク法により、レーザ孔明けが可能である。本発明で得られる硬化性フィルムの一例である、銅箔をキャリアフィルムとした樹脂付き金属箔は、貫通孔または非貫通孔を形成すべき場所をあらかじめエッチングによって除去した銅箔をマスクとして用いて、レーザ孔明けを行うことができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明する。本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。表1に示す原料および配合量により、フィルム成形用ワニスを調製し、半硬化状の樹脂フィルムを作製して、それぞれの評価を行った。
【0060】
実施例1
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた4つ口セパラブルフラスコに、トルエン270gとポリフェニレンオキシド(ノニルPKN4752、日本ジーイープラスチックス株式会社商品名)70gを仕込み、攪拌しつつ80℃に加熱して溶解した。次に2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン(ArocyB−10、旭チバ株式会社商品名)140gおよびp−(α−クミル)フェノール(サンテクノケミカル株式会社商品名)8gを添加して溶解した後、ナフテン酸マンガン(Mn含有量6重量%、日本化学産業株式会社商品名)をトルエンでMn分0.6重量%に希釈した溶液0.4gを添加し、還流温度で3時間反応させた。この後、室温まで冷却し、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(HP−7200H、大日本インキ化学工業株式会社商品名)を140gおよびイミダゾール系硬化促進剤(キュアゾール2MZ−CNS、四国化成株式会社商品名)を6g添加して1時間攪拌することにより、フィルム成形用樹脂ワニス(固形分濃度45重量%)を調製した。
【0061】
この樹脂ワニスを、バーコータの一種であるコンマコータ(株式会社ヒラノテクシード製)を用いて、厚さ50μmの離型剤付きのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ピューレックスA−63,株式会社帝人商品名)に塗工して乾燥(140℃)し、樹脂層厚さ30〜33μmのキャリヤフィルム付樹脂フィルムを作製した。得られた樹脂フィルムは、カッタナイフで切断しても樹脂割れや粉落ちがなく、取扱性に優れていた。
【0062】
実施例2
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた4つ口セパラブルフラスコに、トルエン300gとポリフェニレンオキシド(ノニルPKN4752、日本ジーイープラスチックス株式会社商品名)70gを仕込み、攪拌しつつ80℃に加熱して溶解した。次に2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン(ArocyB−10、旭チバ株式会社商品名)230gおよびp−(α−クミル)フェノール(サンテクノケミカル株式会社商品名)5gを添加して溶解した後、ナフテン酸マンガン(Mn含有量6重量%、日本化学産業株式会社商品名)をトルエンでMn分0.6重量%に希釈した溶液0.5gを添加し、還流温度で6時間反応させた。さらに室温まで冷却した後、p−(α−クミル)フェノール(サンテクノケミカル株式会社商品名)21gおよび多官能エポキシ樹脂(エピコート1031、油化シェルエポキシ株式会社商品名)230gを添加して溶解することにより、フィルム成形用樹脂ワニス(固形分濃度36重量%)を調製した。
【0063】
このワニスを用い、実施例1と同様にして、樹脂層厚さ30〜33μmのキャリヤフィルム付樹脂フィルムを作製した。得られた樹脂フィルムは、カッタナイフで切断しても樹脂割れや粉落ちがなく、取扱性に優れていた。
【0064】
実施例3
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた4つ口セパラブルフラスコに、トルエン400gとポリフェニレンオキシド(ノニルPKN4752、日本ジーイープラスチックス株式会社商品名)100gを仕込み、攪拌しつつ80℃に加熱して溶解した。次に2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン(ArocyB−10、旭チバ株式会社商品名)67gおよびp−(α−クミル)フェノール(サンテクノケミカル株式会社商品名)8gを添加して溶解した後、ナフテン酸コバルト(Co含有量8重量%、日本化学産業株式会社商品名)をトルエンでCo分0.8重量%に希釈した溶液0.3gを添加し、還流温度で2時間反応させた。反応液を室温まで冷却した後、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(ESCN−190−3、住友化学工業株式会社商品名)60gを添加し、攪拌して溶解することにより、フィルム成形用樹脂ワニス(固形分濃度37重量%)を調製した。
【0065】
このワニスを用い、実施例1と同様にして、樹脂層厚さ30〜33μmのキャリヤフィルム付樹脂フィルムを作製した。得られた樹脂フィルムは、カッタナイフで切断しても樹脂割れや粉落ちがなく、取扱性に優れていた。
【0066】
実施例4
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた4つ口セパラブルフラスコに、トルエン230gとポリフェニレンオキシド(ノニルPKN4752、日本ジーイープラスチックス株式会社商品名)75gを仕込み、攪拌しつつ80℃に加熱して溶解した。次に2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン(ArocyB−10、旭チバ株式会社商品名)75gおよびp−(α−クミル)フェノール(サンテクノケミカル株式会社製)5gを添加して溶解した後、ナフテン酸マンガン(Mn含有量6重量%、日本化学産業株式会社商品名)をトルエンでMn分0.6重量%に希釈した溶液0.2gを添加し、還流温度で6時間反応させた。さらに室温まで冷却した後、トルエン200g、p−(α−クミル)フェノール(サンテクノケミカル株式会社商品名)3g、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(HP−7200、大日本インキ化学工業株式会社商品名)80gおよびイミダゾール系硬化触媒4gを投入して溶解することにより、フィルム成形用樹脂ワニス(固形分濃度40重量%)を調製した。
【0067】
このワニスを用い、実施例1と同様にして、樹脂層厚さ30〜33μmのキャリヤフィルム付樹脂フィルムを作製した。得られた樹脂フィルムは、カッタナイフで切断しても樹脂割れや粉落ちがなく、取扱性に優れていた。
【0068】
実施例5
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた4つ口セパラブルフラスコに、トルエン200gとポリフェニレンオキシド(ノニルPKN4752、日本ジーイープラスチックス株式会社商品名)30gを仕込み、攪拌しつつ80℃に加熱して溶解した。次にビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン(ArocyM−10、旭チバ株式会社商品名)100gおよびp−(α−クミル)フェノール(サンテクノケミカル株式会社商品名)2gを添加して溶解した後、ナフテン酸マンガン(Mn含有量6重量%、日本化学産業株式会社商品名)をトルエンでMn分0.6重量%に希釈した溶液0.2gを添加し、還流温度で5時間反応させた。ついで反応液を冷却し、内温が90℃になったときに、攪拌しながらメチルエチルケトン(MEK)100gを投入して懸濁化させた。反応液を室温まで冷却した後、p−(α−クミル)フェノール(サンテクノケミカル株式会社商品名)2g、ナフテン酸コバルト(Co含有量8重量%、日本化学産業株式会社商品名)トルエンでCo分0.8重量%に希釈した溶液0.2gを添加し、ついでサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂(EPPN502、日本化薬株式会社商品名)110gおよびイミダゾール1gを添加し、攪拌して溶解することにより、フィルム成形用樹脂ワニス(固形分濃度45重量%)を調製した。
【0069】
このワニスを用い、実施例1と同様にして、樹脂層厚さ30〜33μmキャリヤフィルム付樹脂フィルムを作製した。得られた樹脂フィルムは、カッタナイフで切断しても樹脂割れや粉落ちがなく、取扱性に優れていた。
【0070】
比較例1
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた4つ口セパラブルフラスコに、トルエン360gとポリフェニレンオキシド(ノニルPKN4752、日本ジーイープラスチックス株式会社商品名)120gを仕込み、攪拌しつつ80℃に加熱して溶解し、フィルム成形用樹脂ワニス(固形分濃度25重量%)を調製した。このワニスを用いて、実施例1と同様にして、樹脂層厚さ30〜33μmのキャリヤフィルム付樹脂フィルムを作製した。得られた樹脂フィルムは、カッタナイフで切断しても樹脂割れや粉落ちがなく、取扱性に優れていた。
【0071】
比較例2
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた4つ口セパラブルフラスコに、メチルエチルケトン240g、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン(ArocyB−10、旭チバ株式会社商品名)120gおよびp−(α−クミル)フェノール(サンテクノケミカル株式会社商品名)2gを仕込み、攪拌して溶解した後、ナフテン酸コバルト(Co含有量8重量%、日本化学産業株式会社製)をトルエンでCo分0.8重量%に希釈した溶液1.2gを添加し、還流温度で2時間反応させた。室温まで冷却した後、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(HP−7200、大日本インキ化学工業株式会社商品名)10gおよびイミダゾール系硬化触媒1gを添加し、攪拌して溶解することにより、フィルム成形用樹脂ワニス(固形分濃度36重量%)を調製した。このワニスを用いて、実施例1と同様にして、樹脂層厚さ30〜33μmのキャリヤフィルム付樹脂フィルムを作製した。得られた樹脂フィルムは、カッタナイフで切断した際に樹脂割れや粉落ちが発生し、キャリヤフィルムを剥離すると、樹脂フィルムを単独で取扱うことができなかった。
【0072】
比較例3
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた4つ口セパラブルフラスコに、トルエン300gとポリフェニレンオキシド(ノニルPKN4752、日本ジーイープラスチックス株式会社商品名)70gを仕込み、攪拌しつつ80℃に加熱して溶解した。次に2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン(ArocyB−10、旭チバ株式会社商品名)230gおよびp−(α−クミル)フェノール(サンテクノケミカル株式会社商品名)5gを投入して溶解した後、ナフテン酸マンガン(Mn含有量6重量%、日本化学産業株式会社商品名)をトルエンでMn分0.6重量部に希釈した溶液0.5gを添加し還流温度で6時間反応させた。さらに室温まで冷却した後、p−(α−クミル)フェノール(サンテクノケミカル株式会社商品名)21g、およびナフテン酸コバルト(Co含有量8重量%、日本化学産業株式会社商品名)をトルエンでCo分0.8重量%に希釈した溶液1.2gおよびトルエン300gを投入して溶解することにより、フィルム成形用樹脂ワニス(固形分濃度=35重量%)を調製した。このワニスを用いて、実施例1と同様にして、樹脂層厚さ30〜33μmのキャリヤフィルム付樹脂フィルムを作製した。得られた樹脂フィルムは、カッタナイフで切断しても樹脂割れや粉落ちがなく、取扱性に優れていた。
【0073】
比較例4
温度計、冷却管、攪拌装置を備えた4つ口セパラブルフラスコに、トルエン100g、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(HP−7200、大日本インキ化学工業株式会社商品名)400gおよびイミダゾール系硬化触媒5gを仕込み、攪拌しつつ80℃に加熱して溶解することにより、フィルム成形用樹脂ワニス(固形分濃度80重量%)を調製した。このワニスを用いて、実施例1と同様にして、樹脂層厚さ30〜33μmのキャリヤフィルム付樹脂フィルムを作製した。得られた樹脂フィルムは、カッタナイフで切断した際に樹脂割れや粉落ちが発生し、キャリヤフィルムを剥離すると、樹脂フィルムを単独で取扱うことができなかった。
【0074】
実施例1〜5および比較例1〜4に用いた原料を、まとめて表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
表1において略号で示した原料の内容は、次のとおりである。
(A)B−10:2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン(旭チバ株式会社商品名);
M−10:ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン(旭チバ株式会社商品名);
B−30:2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンのオリゴマー(旭チバ株式会社商品名);
(B)PCP:p−(α−クミル)フェノール(サンテクノケミカル株式会社製)(旭チバ株式会社商品名);
(C)PPO:ポリフェニレンオキシド(ノニルPKN4752、日本ジーイープラスチックス株式会社商品名);
(D)HP:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(HP−7200、大日本インキ化学工業株式会社商品名);
HP−H:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(HP−7200H、大日本インキ化学工業株式会社商品名);
1031:多官能エポキシ樹脂(エピコート1031、油化シェルエポキシ株式会社商品名);
ESCN:o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(ESCN−190−3、住友化学工業株式会社商品名);
502:サリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂(EPPN502、日本化薬株式会社商品名);
(E)Co:ナフテン酸コバルト(Co分8重量%、日本化学産業株式会社商品名)を、Co分0.8重量%のトルエン希釈溶液として使用;
Mn:ナフテン酸マンガン(Mn分6重量%、日本化学産業株式会社商品名)を、Mn分0.6重量%のトルエン希釈溶液として使用。
【0077】
次に、実施例1〜5のキャリヤフィルム付き樹脂フィルムについて、樹脂フィルム単独での取扱性と、硬化後のフィルムの耐溶媒性の評価を行った。
【0078】
取扱性の評価
実施例1〜5で得られたキャリヤフィルム付き樹脂フィルムから、それぞれキャリヤフィルムを剥離し、得られた樹脂フィルム12枚を重ね、さらにその上下に、電解銅箔の鏡面を剥離面として用いて重ね、200℃、1.5MPaで1時間プレス成形を行い、厚さ約0.4mmの樹脂硬化フィルムを作製した。
【0079】
比較例1で得られたキャリヤフィルム付き樹脂フィルムから、実施例1〜5のキャリヤフィルム付き樹脂フィルムと同様にして、樹脂成形フィルムを作製した。同様にして比較例2〜4の樹脂フィルムをプレス成形して、それぞれの樹脂硬化フィルムを作製した。しかしながら、比較例2のキャリヤフィルム付き樹脂フィルムは、樹脂フィルム層がシアネートエステル樹脂単独のフィルムであるため、キャリヤフィルムを剥離しようとすると、樹脂フィルム自体が脆いため割れてしまい、フィルム単独で扱うことができなかった。その結果、樹脂硬化フィルムを作製することができなかった。また、比較例4のキャリアフィルム付き樹脂フィルムは、樹脂フィルム層がエポキシ樹脂単独のフィルムのため、同様に樹脂フィルム自体が脆いため割れてしまい、フィルム単独で扱うことができず、樹脂硬化フィルムを作製することができなかった。
【0080】
耐溶媒性の評価
上記のようにして得られた樹脂硬化フィルムを、50mm角に切断して、トルエン中に浸漬し、室温で60分間放置した。実施例1〜5の樹脂硬化フィルムは、膨潤および外観変化が見られなかった。また、別に用意した実施例1〜5の樹脂硬化フィルムの表面を、トルエンまたはメチルエチルケトンを含ませた布で数回擦ってフィルム表面の異常の有無を観察したが、いずれの樹脂硬化フィルムも、フィルム表面の異常は見られなかった。以上のことから、実施例1〜5の樹脂硬化フィルムは、耐溶媒性が良好であることが確認できた。
【0081】
しかしながら、比較例1の樹脂成形フィルムを50mm角に切断して、トルエン中に浸漬し、室温で60分間放置したところ、ポリフェニレンオキシド単独の樹脂成形フィルムであるため膨潤し、一部は溶解してしまった。また別の樹脂成形フィルムの表面をトルエンを含ませた布で数回擦ったところ、フィルムの表面が溶けてべたつきが発生した。また別の樹脂成形フィルムの表面をメチルエチルケトンを含ませた布で数回擦ったところ、フィルムにひびわれ(亀裂)が生じ、遂には穴が明いて切断してしまった。
【0082】
以上の結果から、本発明のポリフェニレンオキシド変性シアネートエステル系樹脂フィルムは、フィルムとして単独での取扱が可能であり、かつ耐溶媒性も良好であることが確認できた。
【0083】
誘電特性、ガラス転移温度および引張弾性率の評価
次に、実施例1〜5および比較例3で得られた硬化性フィルム用樹脂ワニスを用いた樹脂フィルムの硬化物について、ギガヘルツ帯での誘電特性、ガラス転移温度および引張弾性率を評価した。
【0084】
銅箔を化学エッチングで完全に除去した樹脂硬化物を、RFインピーダンス/マテリアルアナライザ(アジレントテクノロジー社製、HP 4291B)を用いて、1GHzにおける誘電率および誘電正接を測定した。また、銅箔を化学エッチングで完全に除去した樹脂の硬化物から、試験片を切出し、広域粘弾性測定装置(株式会社レオロジー製DVE)を用いて、引張モード(周波数;10Hz、昇温;5℃/min)でガラス転移温度(Tg)および40℃における引張弾性率を測定した。それらの結果を表2に示す。
【0085】
【表2】

【0086】
表2より、本発明の変性シアネートエステル系樹脂を用いた樹脂フィルムは、シアネートエステル類を特定の1価フェノール類と反応させているために、ギガヘルツ帯の誘電特性、特に誘電正接が低いことが確認できた。
【0087】
多層配線板の作成と評価
次に、実施例1〜5および比較例3で得られた樹脂ワニスをそれぞれ用いて、銅箔付き樹脂フィルムを作製し、印刷配線板用多層材料としての特性を評価した。
【0088】
実施例1〜5および比較例3で得られた樹脂ワニスを、バーコータの一種であるコンマコータ(株式会社ヒラノテクシード製)を用いて、厚さ18μmの電解銅箔の粗化面に塗工し、140℃で2分間乾燥して、樹脂層厚さ;60〜70μmの銅箔付樹脂フィルムを作製した。得られた樹脂フィルムは、いずれもカッタナイフで切断しても樹脂割れや粉落ちがなく、取扱性に優れていた。
【0089】
ついで、表面処理を施した導体回路(回路用銅箔厚さ;18μm)を形成したガラス布基材の内層回路板(基材厚さ;0.1mm)の両面に、前記銅箔付き樹脂フィルムを、樹脂層が内層回路に接するように重ね、200℃、2.5MPaの条件で60分プレス成形して、4層配線板を作製した。
【0090】
このようにして得られた4層印刷配線板について、以下に示す方法により、耐湿性、はんだ耐熱性および銅箔ピール強さを評価した。その結果を表3に示す。
<特性評価方法>
・成形性;4層配線板の外層銅を化学エッチングによって完全に除去し、目視により、内層回路への樹脂の充填性(ボイドやカスレの有無)を判定した。
・耐湿性:4層配線板の外層の銅箔を、化学エッチングによって完全に除去し、121℃、2.1気圧のプレッシャークッカ試験器に装入して、192時間経過後の、樹脂硬化物と内層銅箔面との接着性を観察した。
・はんだ耐熱性:外層銅箔付きの25mm角4層板を、260℃の溶融はんだに浮かべ、ふくれが発生するまでの時間を測定した。
・銅箔ピール強さ:JIS C6481に準拠して測定した。
【0091】
【表3】

【0092】
表3に示したように、実施例1〜5の樹脂ワニスから得られた銅箔付き樹脂フィルムを用いた4層配線板は、プレッシャークッカ試験によって剥がれを生ずることなく、耐湿性が高かった。それに対して、比較例3の樹脂ワニスから得られた樹脂フィルムを用いた配線板は、プレッシャークッカ試験において剥がれが認められ、耐湿性が劣っていた。この結果、本発明の銅箔付き樹脂フィルムは、配線板とした際の耐湿性が高いことが確認できた。また、これらの樹脂フィルムは、多層配線板材料として成形性が良好であった。さらに、本発明の樹脂組成物がシアネートエステル樹脂を特定の1価フェノール化合物と反応させたことにより、それを硬化して得られた本発明の銅箔付き樹脂フィルムを用いた4層配線板は、はんだ耐熱性が良好であり、従来のガラス布を基材に用いた接着用プリプレグと同様の特性を有することが確認できた。
【0093】
高分子材料などの誘電特性は、双極子の配向分極による影響が大きい。したがって分子内の極性基を少なくすることにより低誘電率化が図れ、また極性基の運動性を抑えることにより誘電正接を低くすることが可能になる。シアネートエステル樹脂は、極性の強いシアナト基を有していながら、硬化の際に、対称性かつ剛直なトリアジン構造を生成するので、熱硬化性樹脂としては最も低い誘電率および誘電正接を有する硬化物が得られる。
【0094】
しかしながら、実際の硬化反応においては、シアネートエステル樹脂中のすべてのシアナト基が反応してトリアジン構造を生成するということは不可能であり、硬化反応の進行に伴い、反応系が流動性を失って、未反応のシアナト基として系内に残存することになる。その結果、これまでのシアネートエステル樹脂では、本来の硬化物が示すはずの特性よりは、誘電率や誘電正接が高い硬化物しか得られなかった。
【0095】
これに対して、本発明の樹脂組成物では、(B)フェノール類、特に一般式〔2〕で示される1価フェノール類を、(A)シアネートエステル樹脂に対して適正量配合することで、未反応で残るシアナト基をイミドカーボネート化してその極性を減じることにより、硬化物の誘電率と誘電正接を本来の値まで低下させることができた。
【0096】
従来、シアネートエステルの三量化反応(トリアジン環の生成)の助触媒として、ノニルフェノール等のフェノール化合物が、シアネートエステル100重量部に対して1〜2重量部程度用いられる場合があった。しかし、配合量が触媒量であったため、上記のような未反応のシアナト基と反応し極性を下げるという効果は認められなかった。それに対して、本発明者らがフェノール化合物の配合量について検討した結果、フェノール化合物を従来の触媒量よりも多量に配合した場合に、硬化物の誘電率と誘電正接が低下することを認め、かつ特定の1価フェノール類を用いれば、配合量が増えることによる耐熱性の低下も抑制できることを見出した。そのため、本発明の方法によれば、これまでのシアネートエステル樹脂単独の硬化物、ならびに従来のエポキシ樹脂および多価フェノール類(これらは、一部の水酸基が未反応基として残り易いため、誘電特性をかえって悪化させる傾向がある)、あるいはビスマレイミドなどを配合した樹脂の硬化物よりも、誘電率と誘電正接の低い硬化物が得られる。
【0097】
ところで、配線板用絶縁材料には、樹脂材料の吸水率が低いことが望まれ、さらに加湿後にも接着力が維持される必要がある。これは、電子機器の製造工程および使用環境を考慮した特性であり、耐湿性試験としてプレッシャクッカ等の恒湿恒温層を使用した加速試験等に代表されるように、高い耐湿性が必要となる。本発明では、エポキシ樹脂を変性シアネートエステル系樹脂に添加することにより、耐湿性が高く、誘電率や誘電正接が低い新規樹脂組成物を提供することが可能である。これを銅箔やキャリアフィルムの片面に流延塗布し、加熱乾燥により溶媒を除去して相溶性樹脂フィルムを得ることができる。
【0098】
本発明の変性シアネートエステル系硬化性樹脂組成物から得られるフィルムは、特に高周波特性に優れているので、無線通信関連の端末機器やアンテナおよび高クロック周波数のマイクロプロセッサを搭載する高速コンピュータなどの印刷配線板用の製造に適している。
【0099】
さらに、本発明のフィルムより、配線板にガラス布などの基材を含まないことによって、印刷配線板の薄形化や軽量化が可能で、かつビルドアップ積層方式によってIVH(インタスティシャル・バイアホール)構造の接続孔が容易に形成でき、配線の高密度化にも有効な、耐熱性絶縁ワニスおよびフィルムが提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に少なくとも2個のシアナト基を有するシアネートエステル化合物;
(B)フェノール類;
(C)熱可塑性樹脂;および
(D)エポキシ樹脂
を含むことを特徴とする変性シアネートエステル系樹脂組成物。
【請求項2】
(A)が、一般式〔1〕:
【化4】


(式中、R1は、
【化5】


を表し;そして
2およびR3は、たがいに同一でも異なっていてもよく、水素またはメチル基を表す);
で示されるシアネートエステル化合物である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(B)が、一般式〔2〕:
【化6】


(式中、R4およびR5は、たがいに同一でも異なっていてもよく、水素原子またはメチル基を表し;そして
nは1または2である)
で示される1価フェノール類である、請求項1または2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(C)が、ポリフェニレンオキシドである、請求項1〜3のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(A)シアネートエステル化合物100重量部に対して、(B)フェノール類の量が4〜30重量部である、請求項1〜4のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項6】
(A)シアネートエステル化合物が、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンもしくは2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタンのいずれか1種またはこれらの混合物である、請求項1〜5のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項7】
(A′)1分子中に少なくとも2個のシアナト基を有するシアネートエステル化合物と、フェノール類とを反応させて得られる変性シアネートエステル樹脂;
(C)熱可塑性樹脂;および
(D)エポキシ樹脂
を含み、場合によっては、さらに(B)フェノール類を含むことを特徴とする変性シアネートエステル系樹脂組成物。
【請求項8】
(B)フェノール類が、p−(α−クミル)フェノールである、請求項1〜7のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項9】
(C)ポリフェニレンオキシドが、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルと、ポリスチレンまたはスチレン−ブタジエンコポリマーとを含むポリマーアロイであり、うちポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが50重量%以上である、請求項1〜8のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項10】
(D)エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂およびイソシアヌラート型エポキシ樹脂;ならびにそれらの水素添加物およびハロゲン化物からなる群より選ばれる1種または2種以上である、請求項1〜9のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項11】
さらに、(E)金属化合物触媒を含む、請求項1〜10のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項12】
(E)金属化合物触媒が、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅および亜鉛のオクタン酸塩、2−エチルヘキサン酸塩、ナフテン酸塩およびアセチルアセトン錯体から選ばれる1種または2種以上である、請求項11記載の樹脂組成物。
【請求項13】
(A)シアネートエステル化合物100重量部に対して、(D)エポキシ樹脂の量が10〜600重量部である、請求項1〜11のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項記載の樹脂組成物を含む絶縁ワニスを、半硬化もしくは硬化して得られる変性シアネートエステル系樹脂フィルム。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか1項記載の樹脂組成物を含むワニスを、金属箔の片面に流延塗布する工程を含む方法によって作成された金属箔付き樹脂フィルム。
【請求項16】
請求項14記載の樹脂フィルムまたは請求項15記載の金属箔付き樹脂フィルムを、あらかじめ内層回路を形成した配線板と積層した後、外層面に回路を形成し、該回路と内層回路とを電気的に導通させて作製した多層プリント配線板。
【請求項17】
請求項1〜13のいずれか1項記載の樹脂組成物を含むワニスを、キャリヤフィルムの片面に流延塗布する工程を含む方法によって製膜することを含む、樹脂フィルムの製造方法。
【請求項18】
請求項1〜13のいずれか1項記載の樹脂組成物を含むワニスを、金属箔の片面に流延塗布する工程を含む方法によって製膜することを含む、樹脂フィルムの製造方法。
【請求項19】
請求項1〜13のいずれか1項記載の樹脂組成物を含むワニスを、あらかじめ内層回路を形成した配線板に塗布する工程を含む方法によって製膜・硬化し、外層面の回路を形成して、該回路を内層回路と電気的に導通させることを含む、多層プリント配線板の製造方法。

【公開番号】特開2011−208150(P2011−208150A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119229(P2011−119229)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【分割の表示】特願2001−152903(P2001−152903)の分割
【原出願日】平成13年5月22日(2001.5.22)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】