説明

微細フェノール樹脂系繊維を用いたプリント配線基板用樹脂積層板

【課題】本発明の課題は薄板化、軽量化、耐クラック性及びレーザー加工性に優れた多層プリント配線基板用樹脂積層板を提供することにある。
【解決手段】本発明は繊維直径が0.1μm以上5μm未満の微細フェノール樹脂系繊維を主体として構成される不織布に熱硬化性樹脂を含浸させてなるプリプレグを積層することにより達成される。従来に比して著しく薄型化した不織布を補強材として用いるため積層板そのものも薄型で軽量化、高剛性化及びレーザー加工性に優れたプリント配線基板用樹脂積層板を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多層プリント配線基板に関するものであって、更に詳しくは繊維直径が0.1μm以上5μm未満の微細フェノール樹脂系繊維で構成される不織布を補強材と用いるため従来に比して薄型であって且つ、軽量化、耐クラック性及びレーザー加工性に優れた多層プリント配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器における高性能化は留まることなく進展しており、このうち多機能化、携帯性は今後とも益々重要視される。このため、電子機器内部で用いられるプリント配線板においてはビルトアップ方式による多層プリント配線板が採用されて久しい。
【0003】
従来のビルトアップ方式による多層プリント配線板の製造においては層間絶縁材料として樹脂単体あるいはガラス織布基材エポキシ樹脂プリプレグ等を用いている。樹脂単体による絶縁層は樹脂付銅箔をコアプリント配線板表面に加熱加圧成形により一体化することにより成形するか、熱硬化樹脂をコアプリント配線板表面に塗布し金属箔を載置して加熱加圧成形により一体化して成形する。ガラス織布基材エポキシ樹脂プリプレグによる絶縁層は前記プリプレグをコアプリント配線板表面に載置し、更に金属箔を重ねて加熱加圧成形により一体成形する。その後、成形した絶縁層に炭酸ガスレーザーで開けたビア孔内を銅メッキしてプリント配線の層間接続をとる構造が一般的である。
【0004】
ところでこの従来の多層プリント配線板に多く使われてきたガラス繊維は強度面や樹脂との密着性の面で優れているものの、誘電率が高いという電気的欠点と、比重が重いという物理的欠点を有してきた。また、ガラス繊維そのものが太いため多層プリント配線板を薄くすることが出来ない欠点もあった。
【0005】
これら欠点に対して、低誘電率、低比重、低吸湿性のポリエステル繊維から成る織布を基材とするプリント配線基板が開示されている。しかしながらこの方法では低比重、非吸水性のプリント配線基板が得られるものの、使用する繊維そのものが太いため薄いプリント配線基板を得ることは不可能であった(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
薄型化と高密度実装化は密接なる繋がりがあり、従来のプリント配線基板では基板そのものが厚いため、いわゆる軽薄短小の電子機器を作ることには限界があった。ところで、今後のプリント配線基板の動向としてはよりファインライン化、よりマイクロビア化そしてより緻密で均一な薄型基板となるであろうことは間違いない。このため、この目的のためにいくつかの手法も開示されている。繊維直径や収縮率を厳しく規定した溶融液晶性ポリエステル繊維を補強材料に使用する方法(例えば、特許文献2参照。)や、単糸断面が扁平化されたアラミド繊維からなる布帛や不織布を用いる方法(例えば、特許文献3参照。)などが示されている。しかしながらこれらの方法で用いられる繊維素材はせいぜいシングルミクロンクラスであるため自ずと薄板化には限界がありその効果は限定的であった。繊維の密度を下げることで僅かながらでも薄板化は可能ではあるが、この場合にはプリント配線基板の剛性が不足し、製造時や部品実装時に基板の折れが発生し重大な欠点となる。また多層プリント配線板においては繊維径が太い場合、プリプレグの表面平滑性が不十分でこのために発生する凹凸が高密度ファインライン化を妨げる結果となる。更に繊維径が太いとレーザーによる穴あけ加工で孔壁に繊維の断片が突出したような状況となり層間接続のためのメッキ析出が不完全となるばかりか、金属片脱落による誤動作発生など重大なる欠陥を招いていた。
【0007】
従来の如くシングルミクロンクラスの繊維では要望される特性を得ることが難しく、サブミクロンクラス以下の繊維を用いた多層プリント配線板が熱望されているのが現状である。
【特許文献1】特開昭62−36892号公報
【特許文献2】特開2002−64254号公報
【特許文献3】特開2003−49388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年の電子機器の小型化、軽量化に伴う基板の高密度実装のために薄型かつ軽量・高剛性のビルトアップ方式による多層プリント配線板は切望されているものの、従来のいずれの方式でも解決し得ない問題がある。基板の薄型化のためにはプリプレグ製造の際、補強材として用いる不織布の繊維径を充分に細くする必要があるが全てを満足するに足りる繊維素材が無いことが実情であった点に鑑み本発明者らは鋭意検討を進めてきた結果、遂に本発明を完成させることができたものである。即ち、その課題とするところは、薄型化、軽量化、耐クラック性及びレーザー加工性に優れた多層プリント配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るビルトアップ方式による多層プリント配線板は、耐熱性に優れ、その繊維径が著しく微細なフェノール樹脂系繊維を必須成分とする少なくとも1種類以上の繊維からなる不織布に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグ層を加熱加圧成形してなるプリント配線基板用樹脂積層板であるが、本発明における微細フェノール樹脂系繊維はフェノール類とアルデヒド類を反応させて得られるフェノール樹脂と、少なくとも1種類以上の繊維形成性を有する水溶性高分子化合物との乳化混合物を該水溶性高分子化合物に対して固化能を有する浴中に湿式あるいは乾湿式で紡糸して形成される糸條を延伸、乾燥、熱処理した後、水溶性高分子のみを溶解除去することにより得られる直径が0.1μm以上5μm未満の微細繊維であることが特徴である。
【0010】
この目的のためには、微細フェノール樹脂繊維を工業的に作ることが必要となる。フェノール樹脂繊維は一般的には熱可塑性のノボラック樹脂を溶融紡糸し、その後、酸性触媒下、アルデヒド類と反応させることにより三次元架橋を行い、熱不融化する方法で作られている。しかしながら、この方法では原料となるノボラック樹脂は完全非晶質であるうえ、重合度が低く、繊維製造に供される他の熱可塑性樹脂に比べ溶融紡糸が困難である。しかも、このようにして得られた架橋反応前の繊維は脆弱なるが故に従来からの熱可塑性繊維のように延伸を加えることが不可能であり、細孔より溶融したノボラック樹脂を吐出させ、可塑変形領域にて一気に引き伸ばす高速ドラフトによる直接紡糸法が採られている。このような紡糸方法では、実用上の微細化の限界はせいぜい直径10μm程度であって、本発明で用いるには太過ぎるものである。
【0011】
そこで本発明者らは、以下の方法により生産し得る微細繊維を用いる。即ち、酸性触媒の存在下にフェノール類とアルデヒド類とを反応させて得られるノボラック型フェノール樹脂、あるいは塩基性触媒の存在下にフェノール類とアルデヒド類とを反応させて得られるレゾール型フェノール樹脂あるいはホウ素変性、ケイ素変性、リン変性、重金属変性、窒素変性、イオウ変性、油変性、ロジン変性等、公知の技法による各種変性フェノール樹脂またはこれらの混合物を水或いはその他の溶媒に溶解せしめ、少なくとも1種類以上の繊維形成性を有する水溶性高分子化合物と乳化混合し、該水溶性高分子化合物に対して固化能を有する浴中に湿式あるいは乾湿式で紡糸して形成される糸條を延伸、乾燥、熱処理した後、水溶性高分子のみを適切なる方法で溶解除去することで直径0.1μm以上5μm未満の微細フェノール樹脂系繊維のみが残留するのである。
【0012】
本発明では、上記の微細フェノール樹脂系繊維で構成される不織布を基材としてプリプレグを作成するため、50μm以下の厚さの絶縁層形成を可能にするのである。更に微細フェノール樹脂系繊維で形成した不織布表面は繊維の太さによる凹凸が抑制され、極めて平滑性に富むためこれをプリプレグとして加熱加圧成形した後の絶縁層の表面も同様に平滑である。このことからプリント配線のファインライン化に有利に働くのである。微細フェノール樹脂系繊維は絶縁層の樹脂中に緻密に分散するのでビア孔のレーザー加工性も孔壁の平滑性も良好となり、このため層間接続のためのメッキ析出が均一化し、金属片脱落による重大欠陥も防ぐことが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
以上のごとく本発明によれば、微細フェノール樹脂系繊維からなる不織布に熱硬化性樹脂を含浸させてなるプリプレグを積層することで薄板化が可能であり且つ軽量・高剛性であって更に耐クラック性及びレーザー加工性に優れた多層プリント配線基板を提供できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明に係るビルトアップ方式による多層プリント配線板について詳細に説明する。本発明で用いるフェノール樹脂を得るために使用されるフェノール類としては、アルデヒド類と酸性あるいは塩基性触媒下で反応させてフェノール樹脂が得られるフェノール類であれば以下に例示したフェノール類に限定されるものではないが、例えばフェノール、m−クレゾール、m−エチルフェノール、m−プロピルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、o−ブチルフェノール、レゾルシノール、ハイドロキノン、カテコール、3−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、3−メチルカテコール、4−メチルカテコール、メチルハイドロキノン、2−メチルレゾルシノール、2,3−ジメチルハイドロキノン、2,5−ジメチルレゾルシノール、2−エトキシフェノール、4−エトキシフェノール、4−エチルレゾルシノール、3−エトキシ−4−メトキシフェノール、2−プロペニルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2−イソプロポキシフェノール、4−ピロポキシフェノール、2−アリルフェノール、3,4,5−トリメトキシフェノール、4−イソプロピル−3−メチルフェノール、ピロガロール、フロログリシノール、1,2,4−ベンゼントリオール、5−イソプロピル−3−メチルフェノール、4−ブトキシフェノール、4−t−ブチルカテコール、t−ブチルハイドロキノン、4−t−ペンチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、3−フェノキシフェノール、4−フェノキシフェノール、4−へキシルオキシフェノール、4−ヘキサノイルレゾルシノール、3,5−ジイソプロピルカテコール、4−ヘキシルレゾルシノール、4−ヘプチルオキシフェノール、3,5−ジ−t−ブチルフェノール、3,5−ジ−t−ブチルカテコール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、ジ−sec−ブチルフェノール、4−クミルフェノール、ノニルフェノール、2−シクロペンチルフェノール、4−シクロペンチルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどが使用可能であり、また使用にあたっても該フェノール類単体でも混合物でも良い。このうちフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、ビスフェノールA、2,3−キシレノール、3,5−キシレノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、o−ブチルフェノール、4−フェニルフェノール、レゾルシノールが好ましく、更にフェノールは最も好ましい。
【0015】
次に本発明で用いるフェノール樹脂を得るために使用されるアルデヒド類としては以下に例示したアルデヒド類に限定されるものではないが、例えばホルムアルデヒド、トリオキサン、フルフラール、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、メチルヘミホルマール、エチルへミホルマール、プロピルへミホルマール、ブチルヘミホルマール、フェニルへミホルマール、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α−フェニルプロピルアルデヒド、β−フェニルプロピルアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、o−ニトロベンズアルデヒド、m−ニトロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、o―メチルベンズアルデヒド、m−メチルベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、p−エチルベンズアルデヒド、p−n−ブチルベンズアルデヒド或いはこれらの混合物等が挙げられる。このうち、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒドが好ましく、特にホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドが最も好ましい。
【0016】
更に本発明で用いるフェノール樹脂を得るために使用される酸性触媒としては以下の例示に限定されるものではないが、例えば塩酸、硫酸、リン酸、蟻酸、酢酸、蓚酸、酪酸、乳酸、ベンゼンスルフォン酸、p−トルエンスルフォン酸、硼酸または塩化亜鉛や酢酸亜鉛のような金属との塩あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0017】
また、本発明で用いるフェノール樹脂を得るために使用される塩基性触媒としては以下の例示に限定されるものではないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化リチウムのようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物や水酸化アンモニウム、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミンのようなアミン類或いはこれらの混合物等が挙げられる。
【0018】
次に本発明で言うところの繊維形成性を有する水溶性高分子化合物について説明する。該高分子化合物としては以下に例示した物質に限定されるものではないが、例えば、カルボキシメチルセルロースアンモニウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、カゼイン等またはメチルセルロース、エチルセルロース等の繊維素誘導体、デキストリンを代表としたα化澱粉、ソリブルスターチを代表とする酸化澱粉或いは酢酸化或いはエステル化或いはエーテル化した澱粉誘導体、またはポリ酢酸ビニル系、ポリ塩化ビニル系、ポリビニルエーテル系の高分子、或いはポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル部分鹸化物、ポリアクリル酸エステル共重合体の部分鹸化物、アクリル酸アミド共重合体或いはスチレン−マレイン酸共重合物、酢酸ビニル−マレイン酸共重合物、或いはニカワ、フィブロイン等の動・植物性タンパク質等、或いはこれらの混合物が使用できる。
【0019】
これら高分子化合物を溶解せしめる溶媒、そして凝固せしめる凝固浴の組成は使用する高分子化合物に応じて適宜決定すれば良い。例えば、ポリビニルアルコールを使用する場合では水、水とアルコール類との混合物、エチレングリコール等を溶解のための溶媒として使用し、凝固浴としては硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム等の無機塩類単独或いはこれら無機塩類の混合使用が挙げられる。
【0020】
また例えばカゼイン等のタンパク質については水酸化ナトリウムのようなアルカリ性水溶液へ溶解させ、凝固浴としては硫酸と硫酸ナトリウムを含む水溶液等が挙げられる。
【0021】
次に繊維化の具体的方法について説明する。
【0022】
先ず、前述のフェノール樹脂と前述の水溶性高分子化合物を混合させ均一な乳化液を調整する。この際、フェノール樹脂は高分子化合物と混合し易いよう、水,あるいはその他の溶剤に希釈させるなどして粘調な液状としておくことが望ましい。次にこの乳化液を該高分子化合物を凝固せしめる凝固浴中に細孔を通して押出すことにより、特別な口金を用いることなく繊維断面が海島構造となる繊維糸條を形成させることができる。乳化液中のフェノール樹脂と高分子化合物の割合はフェノール樹脂が海島構造のうちの島成分となるよう、高分子化合物を1〜90重量%の範囲で適宜選択すれば良い。凝固浴中で繊維化した糸條は湿熱或いは乾熱にて所定の太さになるよう延伸する。
【0023】
次いでフェノール樹脂を硬化させる。用いたフェノール樹脂が、例えばレゾール型フェノール樹脂の様に加熱することで硬化する場合、延伸に引き続き湿熱あるいは乾熱法で加熱処理を行なうことで硬化処理することができる。熱処理条件は100℃〜220℃、好ましくは120℃〜180℃で5分から120分、好ましくは20分から60分行なう方法が良い。
【0024】
一方、用いたフェノール樹脂が、例えばノボラック型フェノール樹脂の様に触媒の存在下、アルデヒド類で硬化処理を施す必要のあるものについては、例えば、塩酸等酸性触媒とホルムアルデヒドの存在下、液相にて加熱して硬化させることが一般的であるが、気相下で加熱して行っても良い。更には、一旦酸性触媒の存在下アルデヒド類で処理した後、引き続きアンモニア等の塩基性触媒の存在下アルデヒド類で硬化処理を行なう方法や、更には前述した通常硬化反応の後、水洗乾燥後、窒素・ヘリウム・炭酸ガス等の不活性ガス中100℃〜300℃の温度で加熱することにより硬化させる等、公知の硬化処理を行なうことができる。この硬化処理が終了した時点で島成分のフェノール樹脂が充分な強度を持った微細繊維となる。
【0025】
フェノール樹脂としてはノボラック型、レゾール型いずれもが使用可能であるが、前述の様にノボラック型はレゾール型に比べて時間を要する硬化処理工程が必要になること、更にこの硬化反応中に酸あるいは塩基により変質を受け難く、且つ反応液を内部のフェノール樹脂まで供給できる海成分用高分子化合物を選択しなければならない等の制限がある。工業的に製造する場合の工程の容易さ、汎用性を勘案するとレゾール型を用いることが望ましい。
【0026】
続いて最終的に海成分の高分子化合物のみを選択的に溶解する溶媒に浸漬する等の溶解処理を行なうことにより直径が0.1μm以上5μm未満の微細フェノール樹脂系繊維を得ることができる。
【0027】
前述したように微細フェノール樹脂系繊維を用いて不織布を形成する方法は従来からの公知の手法に従えば良い。不織布は繊維素材を化学的あるいは機械的な手法で交絡させたり接着させてシート状にしたものであるが、その一形態としてはペーパー状であっても良い。その製造には各種の方式があるが、本発明の目的を損なわない限り、いずれの方法も可能である。
【0028】
一例として湿式法による不織布製造の実施の形態として以下の方法が挙げられる。先に製造した微細フェノール樹脂系繊維を水中で叩解し、水中に均一に分散させ、金網上(長網もしくは丸網)に流下させて脱水し、乾燥させることで不織布を得ることができる。この際、不織布の強度を上げる等の目的で微細フェノール樹脂系繊維以外の繊維素材を混ぜることも可能である。この目的には例えばアラミド繊維、ガラス繊維、ポリエーテルケトン繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリイミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維あるいはポリエステル系繊維などが挙げられるが、本目的に合致するように5μm以下の極力細い繊維であることが好ましく、その配合量も本発明の効果を阻害しない範囲に留めるべきであって、使用する繊維素材全体の30重量%以下、好ましくは10重量%以下が適切である。また後に多層プリント配線板とした場合の電気的特性を考慮して、特に構造中に大きな極性基を有したり、吸水性が極端に高い繊維は誘電率、誘電正接等が大きくなり過ぎる可能性があるので使用には注意が必要である。
【0029】
このようにして作成した不織布の厚さ斑を補正し、より平滑性を高める目的でカレンダー処理などの平滑加工を行うことは本発明においても有効である。
【0030】
次に上記の様に得た微細フェノール樹脂系繊維で構成される不織布を用いて樹脂含浸プリプレグを製造する好ましい形態としては自体が公知の方法で良く、例えば熱硬化性樹脂を含む組成物を不織布に含浸させて130℃〜170℃程度の温度で5〜10分程の乾熱処理を施すこと等が一般的である。熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂が一般的であるが、特に制限されるものではない。例えばエポキシ当量が170〜1000のビスフェノールA型エポキシ樹脂が好適である。ビスフェノールA型エポキシ樹脂は臭素化されたものでも良い。エポキシ当量に関しては1000を超えると含浸性が著しく低下するため望ましくない。
【0031】
これ以外にはノボラック型エポキシ樹脂としてフェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールAノボラック型が挙げられる。
【0032】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂とも単独使用でも良いが、二種類以上を混合使用しても良い。
【0033】
上記エポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤としては特別である必要は無く、通常、好適に用いられるジシアンジアミド、芳香族アミン等のアミン系硬化剤、あるいはフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂等のフェノール系硬化剤等が本発明においても使用可能である。
【0034】
また、従来からプリント配線基板用樹脂積層板において良く行われている様に、タルク、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の難燃剤を添加剤として用いることも本発明では可能である。
【0035】
続いて、得られた樹脂含浸プリプレグから多層プリント配線基板用樹脂積層板を製造する好ましい形態としては自体が公知の方法で良く、例えば樹脂含浸プリプレグを所望の枚数を積層し、150℃〜220℃程度で圧力2〜6MPa程度の圧力を加えながら40分〜120分程度の加熱加圧成形する方法が一般的である。またこの加熱加圧成形時に銅を代表とする金属箔を同時に積層することで、本発明で言うところの少なくとも一方の面に金属箔が一体に張り付けられているプリント配線基板用樹脂積層板を得ることができる。本発明の樹脂含浸プリプレグは加熱加圧成形後に5μm以上40μm以下、好ましくは10μm以上20μm以下である。
【0036】
本発明によるプリント配線基板用樹脂積層板は高耐熱性のフェノール樹脂系微細繊維が樹脂含浸プリプレグ内に均一、緻密に分布しているため低熱膨張性であるうえ機械加工による応力集中が少なく、故に耐クラック性に優れる。また従来のガラス繊維等に比べ極めて細い繊維であるため孔壁もきれいに仕上がる等、レーザー加工性にも優れる。樹脂含浸プリプレグそのものを薄板化できるため、積層板も薄く、この結果、軽量のプリント配線基板用樹脂積層板を提供することができるのである。
【実施例】
【0037】
以下に実施例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
〔微細フェノール樹脂系繊維の調整〕
フェノール4000g、50%ホルマリン4400gを反応容器に仕込み25%アンモニア水740gを加えて60℃にて3時間反応させた後、80mmHgの減圧下にて反応混合物内温が80℃に上昇するまで脱水濃縮反応を行い更にそのまま80℃、80mmHg下に保持して常温で透明液状のレゾール型フェノール樹脂(含水率20%)を得た。
次に市販試薬のアルギン酸ナトリウム1000gを9000gの水に入れ常温で約1時間攪拌した後1時間かけて80℃まで昇温し、更に80℃に保ったまま30分の攪拌を行い、完全に溶解したことを確認後冷却し、アルギン酸ナトリウム水溶液(固形分10%)を得た。このアルギン酸ナトリウム水溶液の中に前述のレゾール型フェノール樹脂を、固形分の重量比がアルギン酸ナトリウム:フェノール樹脂=10:90になるように加え、小型ホモジナイザーで攪拌し均一な乳化物を得た。
次にこれを孔径0.1mm、ホール数100の紡糸口金から一定吐出量を保ちながら40℃の10重量%塩化カルシウム水溶液中に押出した。凝固浴中の糸條引取り速度がノズル孔の吐出線速度の5倍になるよう巻取りローラーの回転数を調整した。尚、凝固浴中の浸漬時間は約40秒であった。巻き取った糸條は塩化カルシウム10重量%60℃の浴中で更に3倍の延伸を行い、その後緊張状態を保ったまま130℃で30分の熱処理を行った。
熱処理後、糸條を攪拌機を備えた溶解槽に入れ、60℃の0.5%炭酸ナトリウム水溶液中に1時間浸漬し海成分のアルギン酸ナトリウムを溶かした。槽の底に沈降した極細繊維を濾過して取り出し乾燥した。この繊維を顕微鏡にて観察したところ繊維直径0.8〜3μm、繊維長0.5mm〜20mmの微細繊維であることを確認した。
〔微細フェノール樹脂系繊維不織布の調整〕
前述の微細フェノール樹脂系繊維及びその他の繊維素材を叩解機を用いて水中でスラリーを調整した。このスラリーを丸網抄紙機にて抄紙し、これを110℃で熱風乾燥を行い、各種目付けの不織布を得た。
【0038】
〔実施例1〕
前述した不織布の調整方法で微細フェノール樹脂系繊維100%、目付け25g/mの不織布を調整した。この不織布を更に表面温度150℃、線圧100Kg/cmでカレンダー処理し平滑性向上を図った。
また、多官能エポキシ樹脂(東都化成製YDCN−704)35重量%、二官能エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製Ep−828)7.8重量%、ビスフェノール類ノボラック樹脂(ジャパンエポキシレジン製YLH−129)17重量%、テトラブロモビスフェノールA17重量%、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.2重量%、メチルエチルケトン23重量%の割合で混ぜ合わせて樹脂ワニスを作成した。
この樹脂ワニスを不織布に含浸し、150℃で7分間乾燥して樹脂含有量50重量%のプリプレグを得た。このプリプレグを5枚重ね、その両面に厚さ18μmの銅箔を積層した。この積層板を厚さ10mmのステンレス板(鏡面処理品)2枚の間に挟み、圧力4MPa、温度200℃の条件下100分間加熱加圧処理して厚さ0.20mm〜0.25mmのプリント配線基板を作成した。
【0039】
〔実施例2〕
微細フェノール樹脂系繊維90重量%、平均繊維径8μm繊維長3mmのパラアラミド繊維10重量%の割合で混合し、前述した不織布の調整方法で目付け25g/mの不織布を調整した。この不織布を更に表面温度180℃、線圧120Kg/cmでカレンダー処理し平滑性向上を図った。
この不織布に実施例1で使用した樹脂ワニスを含浸し、150℃で7分間乾燥して樹脂含有量50重量%のプリプレグを得た。このプリプレグを5枚重ね、その両面に厚さ18μmの銅箔を積層した。この積層板を厚さ10mmのステンレス板(鏡面処理品)2枚の間に挟み、圧力4MPa、温度200℃の条件下100分間加熱加圧処理して厚さ0.20mm〜0.25mmのプリント配線基板を作成した。
【0040】
〔実施例3〕
微細フェノール樹脂系繊維100%で、前述した不織布の調整方法で目付け18g/mの不織布を調整した。この不織布を更に表面温度160℃、線圧110Kg/cmでカレンダー処理し平滑性向上を図った。
この不織布に実施例1で使用した樹脂ワニスを含浸し、150℃で7分間乾燥して樹脂含有量45重量%のプリプレグを得た。このプリプレグを5枚重ね、その両面に厚さ18μmの銅箔を積層した。この積層板を厚さ50mmのステンレス板(鏡面処理品)2枚の間に挟み、圧力4MPa、温度200℃の条件下100分間加熱加圧処理して厚さ0.18mm〜0.20mmのプリント配線基板を作成した。
【0041】
〔比較例〕
タテ糸40本/25mm、ヨコ糸38本/25mmの織り密度、布重量214g/m2 、平均厚み0.19mmのガラスクロスに実施例1で使用した樹脂ワニスを含浸し、150℃で7分間乾燥して樹脂含有量50重量%のプリプレグを得た。このプリプレグを3枚重ね、その両面に厚さ18μmの銅箔を積層した。この積層板を厚さ50mmのステンレス板(鏡面処理品)2枚の間に挟み、圧力4MPa、温度180℃の条件下100分間加熱加圧処理して厚さ0.8mm〜0.85mmのプリント配線基板を作成した。
以上で得られたプリント配線基板の物性を評価した結果を表1に示す。
【0042】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細フェノール樹脂系繊維を必須成分とする少なくとも1種類以上の繊維からなる不織布に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグ層を加熱加圧成形してなるプリント配線基板用樹脂積層板。
【請求項2】
微細フェノール樹脂系繊維の直径が0.1μm以上5μm未満であることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線基板用樹脂積層板。
【請求項3】
微細フェノール樹脂系繊維がフェノール類とアルデヒド類を反応させて得られるフェノール樹脂と、少なくとも1種類以上の繊維形成性を有する水溶性高分子化合物との乳化混合物を該水溶性高分子化合物に対して固化能を有する浴中に湿式あるいは乾湿式で紡糸して形成される糸條を延伸、乾燥、熱処理した後、水溶性高分子のみを溶解除去することにより得られることを特徴とする請求項1、2に記載のプリント配線基板用樹脂積層板。
【請求項4】
少なくとも一方の面に金属箔が一体に張り付けられている請求項1乃至3に記載のプリント配線基板用樹脂積層板。

【公開番号】特開2006−5269(P2006−5269A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182097(P2004−182097)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000165000)群栄化学工業株式会社 (108)
【Fターム(参考)】