説明

微細凹凸構造体、およびその製造方法、ならびに光学素子

【課題】耐熱性を有する微細凹凸構造体、およびその製造方法であって、生産性が高く、樹脂の一部が原版に付着する原版汚れが発生し難く良品率が高い、微細凹凸構造体、およびその製造方法、ならびに微細凹凸構造体からなる光学素子、を提供すること。
【解決手段】微細凹凸構造形成層とシールド層との複層構成を有する微細凹凸構造体であって、前記微細凹凸構造形成層は樹脂の硬化物を含み、シールド層は珪酸化合物によって構成され、シールド層の厚さが、微細凹凸構造形成層の厚さの半分以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子に利用される微細凹凸パターンを有する微細凹凸構造体、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、微細凹凸パターンを有する微細凹凸構造体、及びその製造方法に関する。本発明を用いて成形される微細凹凸構造体の使用例としては、レリーフホログラム、回折格子、サブ波長格子、マイクロレンズ、偏光素子、スクリーンなどに用いられるフレネルレンズ板やレンチキュラー板、光ディスク、及び液晶装置のバックライト関連部品や拡散板、反射防止膜など各種の光学素子が挙げられる。特にホログラムを利用した偽造防止ラベル等には、精巧に作られた微細凹凸構造体が多様な環境で使われている。
【0003】
従来より、樹脂成形物を用いて微細凹凸パターンを連続的に大量複製するにあたり、代表的な手法としては、「プレス法」(特許文献1参照)、「キャスティング法」(特許文献2参照)、「フォトポリマー法」(特許文献3参照)、等が挙げられる。
中でも「フォトポリマー法」は、2P法、感光性樹脂法とも呼ばれており、紫外線や電子線等の広義の放射線照射により硬化する放射線硬化性樹脂を微細凹凸パターンの復製用型となるレリーフ型とプラスチックフィルム等の平担な基材との間に流し込み、前記広義の放射線で硬化させた後、この硬化膜をプラスチックフィルム等の平担な基材ごと、複製用型から剥離する方法により、高精細な微細凹凸パターンを得る事が出来る。また、この様な方法によって得られた微細凹凸構造体は、熱可塑性樹脂を使用する「プレス法」や「キャスティング法」に比べて、一般的に、凹凸パターンの成形精度が良く、耐熱性や耐薬品性に優れる。
【0004】
「プレス法」により微細凹凸構造を製造する場合には、微細凹凸構造を成形する側の樹脂層を軟化点以上に加熱しておき、レリーフ型(微細凹凸構造の複製用原版)を押し付けることによって微細凹凸構造を熱可塑性樹脂に形状転写することが可能である。また、別の方法としては、樹脂層の軟化点以上に加熱したレリーフ型自体を、樹脂層に押し当てて微細凹凸構造を形状転写させることも可能である。いずれの場合においても、平プレスまたはロールプレスの押圧手段により、凹凸を有するレリーフ型に熱可塑性樹脂を接触させて加熱および加圧するエンボス加工であって、微細凹凸構造を形成する側の樹脂層の軟化点以上の加工温度が必要となり、また、成形された微細凹凸構造体の耐熱温度は、最低加工温度とほぼ等しい。
このため、耐熱性の高い微細凹凸構造体を得るためには、所望する耐熱温度以上の軟化点を有する樹脂を使用し、所望する耐熱温度以上の高い加工温度で成形する必要があり、高い熱量が必要となり加工スピードは低く生産性が悪い。
また、軟化した樹脂の一部がレリーフ型に付着する、いわゆる「原版汚れ」が発生し、良品率の低下を招く。
【0005】
「キャスティング法」により微細凹凸構造を製造する場合には、微細凹凸構造を成形する樹脂を融点以上に加熱し、レリーフ型(微細凹凸構造の複製用原版)の上に溶融押し出しして微細凹凸構造の形状を転写し、樹脂を冷却して流動性を低下させた後に、レリーフ型より引き剥がして製造することが可能である。この場合においても、微細凹凸構造を形成する樹脂の融点以上の加工温度が必要となり、また、成形された微細凹凸構造体の耐熱温度は、最低加工温度とほぼ等しい。
「キャスティング法」により耐熱性の高い微細凹凸構造体を得るためには、所望する耐熱温度以上の高い融点を有する樹脂を使用し、所望する耐熱温度以上の高い加工温度で成形
する必要があり、高い熱量が必要となり加工スピードは低く生産性が悪い。
また、溶融した樹脂の一部がレリーフ型に付着する、いわゆる「原版汚れ」が発生し、良品率の低下を招く。
【0006】
「フォトポリマー法」では、液状の放射線硬化樹脂を使用するため、加工時の加熱は必須ではない。しかしながら、この様な方法によってでも、180℃以上の加熱によっても変形しない耐熱性を有する微細凹凸構造を作成するためには、充分な硬化性の得られる一定以上の放射線を照射する必要があるので、微細凹凸構造体を高速加工によって得ることは実用上困難であった。
また、放射線硬化樹脂の一部がレリーフ型に付着する、いわゆる「原版汚れ」が発生し、良品率の低下を招く。
【0007】
また、「フォトポリマー法」では、液状の放射線硬化樹脂を使用するため、版の歪みや版の継ぎ目など転写してほしくない大きな周期の凹凸欠陥までも忠実に転写され、微視的な品質は良好であるが、マクロでみると不良となる場合が生じる。また、液状の樹脂を使用するため、取り扱いが難しいことに加え、泡などで酸素阻害による未硬化部が残っていたりすると後工程でブロッキングやコンタミの原因となる。このような問題を解決する方法として、特許文献4、特許文献5、特許文献6では、常温で固体状若しくは高粘度状の光硬化性樹脂を使用して成形する方法や、離型材料を添加する方法を提案している。
しかしながら、この様な方法でも高速加工による微細凹凸パターンの成形加工を行った場合には、放射線硬化樹脂の一部が原版に付着する「原版汚れ」が発生するため、高品質の製品を生産性良く製造することが非常に困難であった。また、シリコン化合物やフッ素化合物などの離型材料を放射線硬化樹脂に添加すると相溶性の悪さの為に塗膜が白濁し、所望する光学効果を阻害することもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4194073号公報
【特許文献2】実用新案登録第2524092号公報
【特許文献3】特許第4088884号公報
【特許文献4】特開2001−310340号公報
【特許文献5】特許第3355308号公報
【特許文献6】特開2007−118563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記プレス法、キャスティング法、フォトポリマー法のいずれの方法においても、レリーフ型としての復製用原版の微細凹凸構造パターンを形状転写する対象となる樹脂が原版の表面と接触することにより、成形されるものであり、その過程で樹脂の一部が原版に付着する原版汚れという不具合が避けられないため、連続生産を続行する上で障害となるものであった。
【0010】
上記の問題を回避するために、従来より、原版の表面にフッ素加工等による剥離性を良くする処理を施す工夫がなされてきたが、原版の表面処理が大きな負荷を要するものである上、均一な表面処理が不完全であったり、効果の持続性にバラツキがあったりして、いずれも不充分なものであった。
【0011】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、耐熱性を有する微細凹凸構造体、およびその製造方法であって、生産性が高く、樹脂の一部が原版に付着する原版汚れが発生し難く良品率が高い、微細凹凸構造体、およびその製造方
法、ならびに微細凹凸構造体からなる光学素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明は、微細凹凸構造形成層とシールド層との複層構成を有する微細凹凸構造体であって、前記微細凹凸構造形成層は樹脂の硬化物を含み、シールド層は珪酸化合物によって構成されることを特徴とする微細凹凸構造体である。
【0013】
前記微細凹凸構造体を作製するためには、先ず、支持体となる平坦な基材の上に、塗工等の手段により均一に形成可能な未硬化状態の硬化性樹脂を設けて微細凹凸構造形成層とし、前記樹脂が完全硬化する前に珪酸化合物からなるシールド層を塗工によって設ける。次に、前記樹脂が完全硬化する前に、レリーフ型としての微細凹凸構造パターンを有する複製用原版を前記シールド層越しに前記微細凹凸構造体となる部分に押し付けて、前記微細凹凸構造形成層に微細凹凸パターンを転写形成して硬化することにより、前記微細凹凸構造体が製造できる。なお、前記複製用原版は微細凹凸構造パターンを金属ロール上に加工して形成されることが多い。
【0014】
前記シールド層が珪酸化合物によって構成されることにより、珪酸化合物の有する優れた耐熱性や金属表面との密着性の小さい性質が役立つ。すなわち、前記原版を前記微細凹凸構造体となる部分に押し付ける際の原版との接触面が珪酸化合物からなる表面となるので、熱や圧力に耐えることが容易となる。また、前記微細凹凸構造形成層を構成する樹脂の未硬化の温度領域におけるタック性や流動性が残る状態においても、前記シールド層の珪酸化合物の安定な層により、未硬化樹脂が原版の金属と密着し易い影響をブロックできるので、前記原版汚れを防止する効果が得られ易く、前記微細凹凸構造体の加工スピードを高めたり、正確な形状転写を行う上で有利である。
【0015】
第2の発明は、前記シールド層の厚さが、前記微細凹凸構造形成層の厚さの半分以下であることを特徴とする請求項1に記載の微細凹凸構造体である。
【0016】
シールド層越しに微細凹凸構造形成層に微細凹凸パターンを転写形成することからシールド層の厚さは極力薄い方が成形性を向上させることが可能であり好ましい。すなわち、シールド層は薄膜にするほどに成形圧力、及び成形温度が低くても高精細な成形が可能となり、生産性が良くなる。特に薄い薄膜のシールド層は、より微細な構造が必要な微細凹凸構造体、例えば、サブ波長格子などの構造を成形する場合においては更に重要である。但し、シールド層の厚さが薄すぎると、安定した製膜が出来ず、多孔質な塗膜や、塗液ハジキによる部分的な塗膜欠陥が生じる可能性が高くなるので、シールド層の有する機能、即ち、未硬化樹脂が複製用原版と密着し易い影響をブロックする機能が損なわれる。以上の理由により、一般的な微細凹凸構造体も含めて、前記シールド層の厚さが、前記微細凹凸構造形成層の厚さの半分以下であれば、成形可能であり、更に好ましいシールド層の厚さは前記微細凹凸構造形成層の厚さの1/10〜5/10である。また、所望する微細凹凸構造の深さに対しては、1/10〜3/1の範囲であることが望ましく、更に好ましいシールド層の厚さは所望する微細凹凸構造の深さの1/10〜5/10である方が成形性の点で更に好適である。このような膜厚構成であれば、深さの形状転写率が少なくとも70%以上、通常は80%以上の、精度の良い形状転写が可能である。なお、深さの形状転写率とは、レリーフ型としての微細凹凸構造パターンを有する複製用原版の平均深さに対する成形された微細凹凸構造体の平均深さの割合を指す。
【0017】
第3の発明は、前記シールド層の材料が、フッ素化合物と珪酸化合物の共重合物を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の微細凹凸構造体である。この様なシールド層の材料構成であれば、共重合されたフッ素化合物は防汚効果を有することから、前記原版汚れを防止する事が可能である。また、珪酸化合物と共重合されていることから、フッ素
化合物が単独で凝集固化して粉化する、いわゆるブリードアウトして白濁する現象や、耐熱性の低下が発生することは無い。
【0018】
第4の発明は、前記シールド層の材料が、シリコーン化合物と珪酸化合物の共重合物を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の微細凹凸構造体である。この様なシールド層の材料構成であれば、共重合されたシリコーン化合物は防汚効果を有することから、前記原版汚れを防止する事が可能である。また、珪酸化合物と共重合されていることから、シリコーン化合物が単独で凝集固化して粉化する、いわゆるブリードアウトして白濁する現象や、耐熱性の低下が無い。
【0019】
第5の発明は、前記微細凹凸構造形成層は、エポキシ樹脂またはウレタン樹脂の硬化物を主成分とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の微細凹凸構造体である。エポキシ樹脂やウレタン樹脂は、常温で徐々に硬化する特性があることから、微細凹凸構造形成層として未硬化状態で投入し、以後の加工工程を経て硬化物とすることができるので、製造上、使いやすい材料である。一方、エポキシ樹脂やウレタン樹脂は、金属との密着性が強いので、複製用原版との直接接触は原版汚れを多発する原因となるが、前記シールド層越しに押圧成形する本発明においては、高圧、高温条件下での押圧成形においても原版汚れが生じ難く、よって加工スピードの向上や、正確な形状転写が容易に可能となる。
【0020】
第6の発明は、前記微細凹凸構造形成層は、放射線により硬化する樹脂の硬化物を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の微細凹凸構造体である。未硬化状態の硬化性樹脂の硬化手段として各種の波長の紫外線や電子線等の広義の放射線を利用することは一般的であり、例えば、未硬化状態の樹脂が照射光により硬化を開始するための重合開始剤を材料に加えて使用することができる。前記シールド層越しに原版を押圧して微細凹凸構造形成層に原版の微細凹凸パターンを転写形成するまでは、未硬化状態を保持し、それ以後は随時、放射線照射により前記微細凹凸構造形成層を硬化するように制御できる。その結果、放射線硬化樹脂の特性である、高い耐熱性と耐薬品性を有する微細凹凸構造形成層を含む微細凹凸構造体を生産性良く製造することが可能である。なお、放射線硬化樹脂の感光波長は一定の広がりを有するが、狙いの感光波長領域での感度を高めるように重合開始剤等の組成を最適化すればよい。
【0021】
第7の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の微細凹凸構造体からなることを特徴とする光学素子である。前記微細凹凸構造体は、レリーフホログラム、回折格子、サブ波長格子、マイクロレンズ、偏光素子、スクリーンなどに用いられるフレネルレンズ板やレンチキュラー板、光ディスク、及び液晶装置のバックライトや拡散板、反射防止膜など各種の光学素子に使用可能である。個別の光学素子として要請される特性に応じて、微細凹凸構造の形状の仕様を決めればよい。また本発明で提案する微細凹凸構造形成層とシールド層との材料の光学特性も必要に応じて、例えば、透過率や屈折率、ヘイズ値等を随時設計して、望ましい光学素子の仕様に近付けることができる。
【0022】
第8の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の微細凹凸構造体を製造する方法であって、前記シールド層の形成にゾルゲル材料を使用し、ゾルゲルプロセスによって形成することを特徴とする微細凹凸構造体の製造方法である。
一般にゾルゲルプロセスは、アルコキシドなどの液体を出発原料とし、反応により固体質のゾルを合成し、さらにゾル同士を反応により生じた物質で架橋して流動性の無いゲル状物質を得るプロセスをいう。また、ゾルゲルプロセスに使用される材料をゾルゲル材料と称する。
【0023】
例えば珪酸化合物の塗膜をゾルゲル法で設ける場合には、水、及びアルコール等の溶媒
を用いてアルコキシシランを塗工し、乾燥させる事により得られる。
水溶液の塗工により塗膜が得られることから、未硬化の前記微細構造形成層の上に重ね塗りした際に、未硬化の微細構造形成層を再溶解させずに均一な薄膜を形成する事が可能である。また、得られる塗膜は、220℃を超える耐熱性を得ることも可能であり、膜厚が均一で、耐熱性が高く、原版汚れを防止するシールド層を得ることが可能となる。
【0024】
第9の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の微細凹凸構造体を製造する方法、または、請求項8に記載の微細凹凸構造体の製造方法であって、平滑な基材上に経時硬化する樹脂を塗工して微細凹凸構造形成層を設け、未硬化状態の該微細凹凸構造形成層に重ねて、塗工によりシールド層を設けた後に、微細凹凸パターンの原版を用いて押圧手段により、シールド層越しに微細凹凸構造形成層に微細凹凸パターンを形成した後に、経時硬化によって微細凹凸構造形成層を硬化させることを特徴とする微細凹凸構造体の製造方法である。なお、前記押圧手段とは、一般的に平プレスまたはロールプレスの形態を有し、金属加工された凹凸パターンを配置したレリーフ型の複製用原版を押し付けて加工する手段を指すが、限定されるものではない。
【0025】
第10の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の微細凹凸構造体を製造する方法、または、請求項8に記載の微細凹凸構造体の製造方法であって、平滑な基材上に放射線により硬化する樹脂を塗工して微細凹凸構造形成層を設け、放射線の未照射状態の該微細凹凸構造形成層に重ねて、塗工によりシールド層を設けた後に、微細凹凸パターンの原版を用いて押圧手段により、シールド層越しに微細凹凸構造形成層に微細凹凸パターンを形成した後に、放射線照射によって微細凹凸構造形成層を硬化させることを特徴とする微細凹凸構造体の製造方法である。なお、前記押圧手段とは、一般的に平プレスまたはロールプレスの形態を有し、金属加工された凹凸パターンを配置したレリーフ型の複製用原版を押し付けて加工する手段を指すが、限定されるものではない。
【0026】
第11の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の微細凹凸構造体を製造する方法、または、請求項8に記載の微細凹凸構造体の製造方法であって、平滑な基材上に放射線により硬化する樹脂を塗工して微細凹凸構造形成層を設け、放射線の未照射状態の該微細凹凸構造形成層に重ねて、塗工によりシールド層を設けた後に、微細凹凸パターンの原版を用いて押圧手段により、シールド層越しに微細凹凸構造形成層に微細凹凸パターンを形成すると同時に、放射線照射によって微細凹凸構造形成層を硬化させることを特徴とする微細凹凸構造体の製造方法である。なお、前記押圧手段とは、一般的に平プレスまたはロールプレスの形態を有し、金属加工された凹凸パターンを配置したレリーフ型の複製用原版を押し付けて加工する手段を指すが、限定されるものではない。本項の製造方法のように、放射線の照射は、押圧手段によるプレス成形と同時に行うことができ、プレス成形後の硬化までの時間を空けないことにより、更なる加工スピードの向上や、正確な形状転写を可能にすることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によると、耐熱性を有する微細凹凸構造体、およびその製造方法において、微細凹凸構造形成層に硬化性の樹脂を用い、シールド層に珪酸化合物を用いることにより、所望の耐熱温度以下の加工温度で高速加工による形成が可能となる。また、押圧成形のための複製用原版に特別の表面処理を施さなくても、樹脂の一部が原版に付着する原版汚れが発生し難い。従って、生産性が高く、良品率が高い、微細凹凸構造体、及びその製造方法を提供することが可能となる。また、本発明の微細凹凸構造体を用いる光学素子を提供することができる。しかも、得られた微細凹凸構造体またはそれを用いる光学素子は最表面にシールド層を有するので、製造後の環境による汚れに対しても防汚効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の微細凹凸構造体を説明するための断面模式図である。
【図2】本発明の微細凹凸構造体の成形前の状態を説明するための断面模式図である。
【図3】本発明の微細凹凸構造体の製造方法の一例を説明するための断面模式図である。
【図4】本発明の微細凹凸構造体の製造方法の第2の例を説明するための断面模式図である。
【図5】本発明の微細凹凸構造体の製造方法の第3の例を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る、微細凹凸構造体、およびその製造方法、ならびに光学素子についての実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の微細凹凸構造体を説明するための断面模式図である。この微細凹凸構造体1はフィルム状の基材2上に設けられた、微細凹凸構造形成層3と、シールド層4の複層構成である。微細凹凸構造形成層3は上層のシールド層4とともに微細凹凸パターンを転写形成されている。
なお、フィルム状の基材2は、微細凹凸構造体として必ずしもこの形態で必要とは限らず、他の形態の種々の基材に替わったり、前記微細凹凸構造形成層3とシールド層4との複層構成が自らを支持することも可能である。また、微細凹凸構造体のどちらかの最表層を保護するために、保護層を設置する事や、光学効果の効率向上の為に高屈折率層、反射層を設置する事や、層間密着を向上するためのアンカー層を追加したり、各層をコロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、する事も可能である。
【0030】
図2は、本発明の微細凹凸構造体の成形前の状態を説明するための断面模式図である。即ち、微細凹凸構造体に原版を押圧して微細凹凸パターンを転写形成する成型前の平坦な構造の断面を表す。この成型前の微細凹凸構造体5はフィルム状の基材2上に設けられた、微細凹凸構造形成層30と、シールド層40の複層構成である。
なお、フィルム状の基材2は、微細凹凸構造体として必ずしもこの形態で必要とは限らず、他の形態の種々の基材に替わったり、前記微細凹凸構造形成層3とシールド層4との複層構成が自らを支持することも可能である。また、微細凹凸構造体のどちらかの最表層を保護するために、保護層を設置する事や、光学効果の効率向上の為に高屈折率層、反射層を設置する事や、層間密着を向上するためのアンカー層を追加したり、各層をコロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、する事も可能である。
【0031】
図3は、本発明の微細凹凸構造体の製造方法の一例を説明するための断面模式図である。ここでは、原版を押圧する手段として、ロールプレスの機構を利用し、押圧形成された形状を経時硬化して安定化する例を示す。
プレス成形にかかる積層体10は、プレス成形前には、フィルム状基材2、微細凹凸構造形成層30、シールド層40の複層構成であって、前記成形前の微細凹凸構造体5の構成と同一である。プレス成形にかかる積層体10は、図中の左側から右側方向に搬送され、円筒状の微細凹凸パターンを有する複製用原版11とプレスロール12により挟まれて、加圧、また、必要により加熱されて、複製用原版11の微細凹凸パターンが積層体10に形状転写した後、図中右側に引き出され、前記図1に示した微細凹凸構造体1と同一の構成となって排出される。なお、図3に示した微細凹凸パターンの断面形状が図1とは異なるが、微細凹凸構造体1によって作られる光学素子の仕様設計に応じて、微細凹凸パターンの断面形状が決定されるものであり、微細凹凸パターンの断面形状を一般に特定するものではない。
【0032】
図3の中央部に表示される押圧手段として実施されるプレス成形では、プレス成形にかかる積層体10のシールド層40越しに、微細凹凸パターンを有する複製用原版11をプ
レスすることによって、原版汚れを生じること無く微細凹凸構造形成層30への形状転写が可能である。形状転写された後、経時によって硬化される微細凹凸構造形成層3とその上層のシールド層4を含む微細凹凸構造体1が得られる。なお、必要であれば、加熱機構(図示せず)を備えてエージング処理を行うことにより、微細凹凸構造形成層3の硬化を常温の経時処理によらずに、積極的に促進しても良い。
【0033】
本発明の製造方法によると、プレス成形(特にロールプレス)による高い生産性と、未硬化塗膜へのプレス成形による精密な成形性と、プレス成形による微細凹凸形状の形状転写後の経時硬化による耐熱性の全てを満足すことが可能であり、更には、耐熱性の高い薄膜のシールド層によって原版汚れを防止することが出来るために、高品質で高い生産性を有する微細凹凸構造体の製造方法を提供する事が可能である。
【0034】
図4は、本発明の微細凹凸構造体の製造方法の第2の例を説明するための断面模式図である。ここでは、原版を押圧する手段として、ロールプレスの機構を利用し、押圧形成された形状を放射線により硬化して安定化する例を示す。
プレス成形にかかる積層体10は、プレス成形前には、フィルム状基材2、微細凹凸構造形成層30、シールド層40の複層構成であって、前記成形前の微細凹凸構造体5の構成と同一であるが、ここでは、特に、微細凹凸構造形成層30が放射線により硬化する樹脂を含むことを特徴とする。プレス成形にかかる積層体10は、図中の左側から右側方向に搬送され、円筒状の微細凹凸パターンを有する複製用原版11とプレスロール12により挟まれて、加圧、また、必要により加熱されて、複製用原版11の微細凹凸パターンが積層体10に形状転写した後、図中右側に引き出され、前記図1に示した微細凹凸構造体1と同一の構成となって排出される。なお、図4に示した微細凹凸パターンの断面形状が図1とは異なるが、微細凹凸構造体1によって作られる光学素子の仕様設計に応じて、微細凹凸パターンの断面形状が決定されるものであり、微細凹凸パターンの断面形状を一般に特定するものではない。
【0035】
図4の中央部に表示される押圧手段として実施されるプレス成形では、プレス成形にかかる積層体10のシールド層40越しに、微細凹凸パターンを有する複製用原版11をプレスすることによって、原版汚れを生じること無く微細凹凸構造形成層30への形状転写が可能である。形状転写された後、放射線照射機13により放射線を照射することによって、放射線硬化樹脂で構成されている微細凹凸構造形成層3が硬化され、微細凹凸構造形成層3とその上層のシールド層4を含む微細凹凸構造体1が得られる。放射線照射機13は、一般に紫外線を照射する露光機であっても良いし、電子線照射機であっても良く、限定されない。また、加熱機構(図示せず)を備えてエージング処理を行うことにより、硬化をアシストすることもできる。
【0036】
図5は、本発明の微細凹凸構造体の製造方法の第3の例を説明するための断面模式図である。ここでは、原版を押圧する手段として、ロールプレスの機構を利用し、押圧形成された形状を放射線により硬化して安定化する例を示すが、図4に対して、放射線照射機13の設置位置が異なることを特徴としている。
図5に示すとおり、プレス成形と同時に放射線が照射され、微細凹凸構造形成層3が硬化されるため、プレス成形後の硬化までの時間を空けないことにより、更なる加工スピードの向上が図れるばかりでなく、プレス成形後に原版11から積層体10を剥離する際に生じる僅かな転写形状の崩れを抑制することもできるので、正確な形状転写が可能である。
【0037】
図4または図5で説明した本発明の製造方法によると、プレス成形(特にロールプレス)による高い生産性と、フォトポリマー法による精密な成形性と高い耐性の全てを満足すことが可能であり、更には、耐熱性の高い薄膜のシールド層によって原版汚れを防止することが出来るために、高品質で高い生産性を有する微細凹凸構造体の製造方法を提供する
事が可能である。
以下では、本発明に係わる各要素について詳細に説明する。
【0038】
(微細凹凸構造形成層)
微細凹凸構造形成層は、ウレタン樹脂またはエポキシ樹脂によって構成される。
これらの樹脂は常温でも徐々に硬化が進むために好ましい。
ウレタン樹脂は、通常、イソシアネート反応性の化合物と、主として2官能のイソシアネートである、ジイソシアネートを反応させて合成する。カルボキシ基、アミノ基などの官能基も併用することができ、非常に多様な性質の製品を作ることができる。
【0039】
ここに用いられる用語「イソシアネート反応性の化合物」は、活性水素成分を含有する化合物等の少なくとも2種のイソシアネート反応性部分を有する任意の有機化合物、またはイミノ官能性化合物を含む。本発明の目的に対し、活性水素含有部分は水素原子を含有する部分をいい、該水素分子は、分子内での位置によって、Wohlerが、Journal of the American Chemical Society,Vol.49,p.3181(1927)において記載するZerewitnoff試験に従った顕著な活性を示す。このような活性水素部分の実例は、-COOH、-OH、-NH2、-NH-、-CONH2、-SH、および-CONH-である。好ましい活性水素含有化合物としては、ポリオール,ポリアミン、ポリメルカプタンおよびポリ酸が挙げられる。好適なイミノ官能性化合物は、分子当たり少なくとも1つの末端イミノ基を有するものである。好ましくは、イソシアネート反応性化合物はポリオールであり、より好ましくはポリエーテルポリオールである。
好適なポリオールの例は、少なくとも2のヒドロキシル基を含んでいる化合物を含む。これらはモノマー、オリゴマー、ポリマー、およびこれらの混合物であることができる。ヒドロキシ官能性のオリゴマーおよびモノマーの例は、ヒマシ油、トリメチロールプロパン、およびジオールである。国際特許出願公開第98/053013号に記載されたような分枝鎖ジオール、たとえば2-ブチルエチル-1,3-プロパンジオールなども挙げられる。
好適なポリマーの例としては、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、メラミンポリオール、ならびにこれらの混合物および混成物を含む。このようなポリマーは一般に当業者に知られており、商業的に入手できる。好適なポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、およびこれらの混合物は、たとえば国際特許出願公開第96/20968号および欧州特許出願公開第0688840号に記載されている。好適なポリウレタンポリオールの例は国際特許出願公開第96/040813号に記載されている。
【0040】
さらなる例はヒドロキシ官能性エポキシ樹脂、アルキド、およびデンドリマー性ポリオール、たとえば国際特許出願公開第93/17060号に記載されたものを含む。潜在性ヒドロキシ官能性化合物、たとえば二環式オルトエステル、スピロオルトエステル、スピロオルトシリケートの基、または二環式アミドアセタールを含んでいる化合物を、コーティング組成物は含んでいることもできる。これらの化合物およびその使用方法は、それぞれ国際特許出願公開第97/31073号、国際特許出願公開第2004/031256号、および国際特許出願公開第2005/035613号に記載されている。
【0041】
本発明の微細凹凸構造形成層は、イソシアネート基とイソシアネート反応性の化合物との付加反応のための、金属に基づいた触媒を含んでよい。このような触媒は当業者に知られている。コーティング組成物の非揮発性物質当たりで計算されて、一般に0.001〜10重量%、好ましくは0.002〜5重量%の量で、より好ましくは0.01〜1重量%の量で、該触媒は使用される。金属に基づいた触媒中の好適な金属は亜鉛、コバルト、マンガン、ジルコニウム、ビスマス、およびスズを包含する。コーティング組成物がスズに基づいた触媒を含んでいることが好まれる。スズに基づいた触媒の周知の例は、ジメチルスズジラウレート、ジメチルスズジバーサテート、ジメチルスズジオレエート、ジブチル
スズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、およびスズオクトエートである。
【0042】
一方、エポキシ樹脂とは高分子内に残存させたエポキシ基でグラフト重合させることで硬化させることが可能な熱硬化性樹脂の総称である。グラフト重合前のプレポリマーと硬化剤を混合して熱硬化処理によって得られる。
プレポリマーの組成は種々のものがあるが、最も代表的なものはビスフェノールAとエピクロルヒドリンの共重合体である。また硬化剤としては種々のポリアミンや酸無水物が使用される。
脂環式エポキシ化合物の例は、2-(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-5,5-スピロ-(3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン、3,4-エポキシシクロヘキシル-3',4'-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(EECH)、3,4-エポキシシクロヘキシルアルキル-3',4'-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル、3',4-エポキシ-6'-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキサンジオキシド、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ-エキソビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、エンド-エキソビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、2,2-ビス(4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロヘキシル)プロパン、2,6-ビス(2,3-エポキシプロポキシシクロヘキシル-p-ジオキサン(dioxanc)、2,6-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)ノルボルネン(norbonene)、リノール酸ダイマーのジグリシジルエーテル、リモネンジオキシド、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロパン、ジシクロペンタジエンジオキシド、1,2-エポキシ-6-(2,3-エポキシプロポキシ)ヘキサヒドロ-4,7-メタノインダン、p-(2,3-エポキシ)シクロペンチルフェニル-2,3-エポキシプロピルエーテル、1-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル-5,6-エポキシヘキサヒドロ-4,7-メタノインダン、o-(2,3-エポキシ)シクロペンチルフェニル-2,3-エポキシプロピルエーテル)、1,2-ビス[5-(1,2-エポキシ)-4,7-ヘキサヒドロメタノインダノキシル]エタン、シクロペンテニルフェニルグリシジルエーテル、シクロヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、およびこれらの混合物を含むが、これらに制限されない。
また、芳香族エポキシ樹脂の例は、ビスフェノール-Aエポキシ樹脂、ビスフェノール-Fエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ビフェノールエポキシ樹脂、ビフェニルエポキシ樹脂、4,4'-ビフェニルエポキシ樹脂、ジビニルベンゼンジオキシド樹脂、2-グリシジルフェニルグリシジルエーテル樹脂等、およびこれらの混合物を含むが、これらに制限されない。
【0043】
エポキシプレポリマーと硬化する硬化剤としては、無水マレイン酸、無水マレイン酸共重合体等の酸無水物、ジシアノジアミド等のアミン化合物、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のフェノール化合物等が挙げられるがこの限りでない。また、エポキシ樹脂の硬化促進剤を使用しても良く、例えば、イミダゾール類及びその誘導体、第三級アミン類及び第四級アンモニウム塩等が挙げられるがこの限りでない。
【0044】
このような樹脂を用いることによってプレス成形時には、未硬化で成形性が良く、未硬化樹脂による原版汚れは、シールド層によって防止することが可能であり、微細凹凸構造の形状転写後の経時硬化によって、所望する耐熱性の高い微細凹凸構造を得ることが可能である。
【0045】
これら微細凹凸構造形成層の未硬化塗膜は、一般に有機溶剤に対して溶解しやすい傾向がある。このため、使用するシールド層の溶媒に対して再溶解しにくい微細凹凸構造形成層の未硬化塗膜とする必要がある。例えば未硬化樹脂の分子量や官能基を調整したり、経時硬化とは別の機構の反応基を設けておき、それらを架橋反応させるなどして調整することが好ましい。また、硬化時間をコントロールして、半硬化塗膜としたものをプレス成形しても良い。
本発明の一形態として、水を溶媒としたゾルゲルプロセスを利用したシールド層がある。この場合の微細凹凸構造形成層を構成する材料の要求品質は、微細凹凸構造形成層の未硬化塗膜が、ゾルゲルプロセスに使用される塗液(例えばアルコキシシランと水の混合物)に対して溶解性が無いことが必要とされる。
【0046】
また、別の要求特性としては、プレス成形時に成形可能な、ある程度の流動性を有すること。また、プレス成形後に経時硬化よって硬化した塗膜が、所望する耐熱性や耐薬品性が得られることが必要であり、これらの要求特性を満たす材料構成であれば使用して良い。
【0047】
微細凹凸構造形成層の厚みは、0.1〜10μmの範囲で適宜設ければよい。
未硬化塗膜の粘度(流動性)にも依るが、塗膜が厚すぎる場合にはプレス加工時に未硬化塗膜の樹脂のはみ出しや、シワの原因となり、厚みが極端に薄い場合には十分な成型が出来ない。
また、成形性は原版の微細凹凸パターンの形状によって変化するが、所望する深さの5〜10倍の膜厚の微細凹凸構造形成層を設けることで、所望するパターンの成形が可能である。
微細凹凸構造形成層を設ける際には、コーティング法を利用してよく、特にウェットコーティングであれば低コストで塗工できる。また、塗工膜厚を調整するために溶媒で希釈したものを塗布乾燥しても良い。
【0048】
(放射線硬化タイプの微細凹凸構造形成層)
微細凹凸構造形成層は、放射線により硬化する樹脂によっても構成される。
放射線硬化性樹脂の例としては、エチレン性不飽和結合をもつモノマー、オリゴマー、ポリマー等を使用することができる。モノマーとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。オリゴマーとしては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート等が挙げられる。ポリマーとしては、ウレタン変性アクリル樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂が挙げられる。
【0049】
また、別の光硬化性樹脂の例としては、特開昭61−98751号公報、特開昭63−23909号公報、特開昭63−23910号公報、特開2007−118563 号公報に記載されているような光硬化性樹脂を挙げることができる。また、微細凹凸パターン形状を正確に形成するため、及び放射線未照射の状況でシールド層を塗工した際に未硬化の放射線硬化樹脂が最溶解し、2層が混和しないようにする為に、反応性をもたないアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等のポリマーを添加することができる。
【0050】
また、光カチオン重合を利用する場合には、エポキシ基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマー、オキセタン骨格含有化合物、ビニルエーテル類を使用することができる。また、上記の電離放射線硬化性樹脂は、紫外線等の光によって硬化させる場合には、光重合開始剤を添加することができる。樹脂に応じて、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、その併用型(ハイブリッド型)を選定することができる。
【0051】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾイン系化合物、アントラキノン、メチルアントラキノン等のアントラキノン系化合物、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α-アミノアセトフェノン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン等のフェニルケトン系化合物、ベンジルジメチルケタール、チオキサントン、アシルホスフィンオキサイド、ミヒラーズケトン等を挙げることができる。
【0052】
光カチオン重合可能な化合物を使用する場合の光カチオン重合開始剤としては、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、混合配位子金属塩等を使用することができる。光ラジカル重合と光カチオン重合を併用する、いわゆるハイブリッド型材料の場合、それぞれの重合開始剤を混合して使用することができ、また、一種の開始剤で双方の重合を開始させる機能をもつ芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等を使用することができる。
【0053】
本発明の微細凹凸パターン形成層には、放射線硬化樹脂と光重合開始剤を0.1〜15質量%配合することにより得られる。樹脂組成物には、さらに、光重合開始剤と組み合わせて増感色素を併用してもよい。また、必要に応じて、染料、顔料、各種添加剤(重合禁止剤、レベリング剤、消泡剤、タレ止め剤、付着向上剤、塗面改質剤、可塑剤、含窒素化合物など)、架橋剤(例えば、エポキシ樹脂など)、などを含んでいてもよく、また、成形性向上のために非反応性の樹脂を添加しても良い。
【0054】
本発明の微細凹凸パターン形成層に使用される樹脂の要求特性は、放射線未照射の微細凹凸構造形成層の上に、シールド層を塗工した際に、シールド層の溶媒に再溶解しない事である。もしシールド層の溶媒に対して再溶解してしまった場合には、部分的に最表層に存在する未硬化の放射線硬化樹脂が、プレス成型時の原版に張付き、原版汚れを生じるためである。同様に微細凹凸構造形成層に対して何がしかの添加剤を使用する際にもシールド層の溶媒に対する再溶解性について考慮する必要がある。
【0055】
一般に、放射線硬化樹脂は、分子量の比較的小さい材料、例えば前述のモノマーやオリゴマー等が用いられるが、これら低分子量成分は、一般に有機溶剤に対して溶解しやすい傾向がある。このため、使用するシールド層の溶媒に対して再溶解しにくい微細凹凸構造形成層の未照射塗膜とする必要がある。例えば放射線硬化樹脂の分子量や官能基を調整したり、放射線硬化とは別の機構の反応基を設けておき、それらを架橋反応させるなどして調整することが好ましい。
本発明の一形態として、水を溶媒としたゾルゲルプロセスを利用したシールド層がある。この場合の微細凹凸構造形成層を構成する材料の要求品質は、放射線未照射の未硬化塗膜が、ゾルゲルプロセスに使用される塗液(例えばアルコキシシランと水の混合物)に対して溶解性が無いことが必要とされる。水に不溶な放射線硬化樹脂の例としては、分子量10,000〜40,000程度の多官能のウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の一部のオリゴマー樹脂であって、乾燥によってある程度タックフリーとなる樹脂の一部が該当する。
【0056】
また、別の要求特性としては、プレス成形時に成形可能な、ある程度の流動性を有すること、また、プレス成形後またはプレス成形と同時に放射線によって硬化した塗膜が、所望する耐熱性や耐薬品性が得られることが必要であり、これらの要求特性を満たす材料構成であれば使用して良い。
【0057】
微細凹凸構造形成層の厚みは、0.1〜10μmの範囲で適宜設ければよい。
未硬化塗膜の粘度(流動性)にも依るが、塗膜が厚すぎる場合にはプレス加工時に未硬化塗膜の樹脂のはみ出しや、シワの原因となり、厚みが極端に薄い場合には十分な成型が出来ない。
また、成形性は原版の微細凹凸パターンの形状によって変化するが、所望する深さの5〜10倍の膜厚の微細凹凸構造形成層を設けることで、所望するパターンの成形が可能であ
る。
微細凹凸構造形成層を設ける際には、コーティング法を利用してよく、特にウェットコーティングであれば低コストで塗工できる。また、塗工膜厚を調整するために溶媒で希釈したものを塗布乾燥しても良い。
【0058】
(シールド層)
本発明のシールド層は、微細凹凸構造形成層の未硬化塗膜の上に薄膜で設ける必要がある。また得られたシールド層は耐熱性を有しており、金属製、又は樹脂製の原版に対する密着性が無いことが必要とされる。
このような特性から、耐熱性の高い珪酸化合物をコーティングすることを想定している。例えば二酸化珪素等の珪酸化物を蒸着法やスパッタ法等の公知のドライコーティングをして設ける事や、アルコキシド等のゾルゲル材料を公知のウェットコーティング法により設ける事や、水性バインダーで分散した二酸化珪素(シリカ)のナノ粒子を公知のウェットコーティングによって設けても良い。
【0059】
このようにして得られた珪酸化合物によるシールド層は、220℃以上の耐熱性や、耐溶剤性などの高い耐性を有することから、原版汚れを防止する防汚層として、また微細凹凸構造体の部材としても有用である。
【0060】
ドライコーティング用のターゲット材料としては、SiO 一酸化珪素、SiO2 二酸化珪素、SiO2-GeO2 二酸化珪素・二酸化ゲルマニウム、SiO2-TiO2 二酸化珪素・二酸化チタン等が例として挙げられるがこの限りで無い。
【0061】
ウェトコーティング用のゾルゲル材料としては、Si (OCH3)4 テトラメトキシシラン、Si (OC2H5)4 テトラエトキシシラン、Si (O-i-C3H7)4 テトラ-i-プロポキシシラン、Si
(O-n-C3H7)4 テトラ-n-プロポキシシラン、Si (O-i-C4H9)4 テトラ-i-ブトキシシラン、Si (O-n-C4H9)4 テトラ-n-ブトキシシラン、Si (O-sec-C4H9)4 テトラ-sec-ブトキシシラン、Si (O-t-C4H9)4 テトラ-t-ブトキシシラン等のモノマーや、これらモノマーを少量重合したポリマー、また、シリカナノ粒子の表面にシラノールを有する粒子状材料や、前記材料の一部に官能基やポリマーを導入したことを特徴とする複合材料や、熱可塑ポリマー中にシリル基を導入した水分散系の自己架橋型材料などが挙げられるが、この限りではない。
特に、金属、又は樹脂で作成された原版への密着力を低下させ、原版汚れを防止するためには、疎水基、撥水基、撥油基等の機能を有する官能基やポリマーを導入すると良い。例えばアルキル基やパーフルオロ基、シリコーン基、フッ素化合物やシリコーン化合物(シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂など)が例として挙げられる。
【0062】
また、水性バインダーで分散した二酸化珪素(シリカ)のナノ粒子を塗工してシールド層を設けることも可能である。この場合のバインダーはアクリルやウレタンなどの水系エマルジョンや水系ディスパージョン、水溶性アクリル樹脂や、水溶性のポリビニルアルコール等を用いることが可能であり、二酸化珪素(シリカ)のナノ粒子は、平均粒径100nm未満のものを使用することが好ましい。二酸化珪素(シリカ)のナノ粒子の粒径が100nm以上となると塗膜表面の凹凸による散乱で塗膜が白濁する。また、バインダー樹脂と二酸化珪素(シリカ)のナノ粒子の重量比は、1/10〜5/10であることが好ましい。バインダーが少ないと多孔質の不連続膜となり、孔の部分より未硬化樹脂が顔を出すことから原版汚れとなる。一方、バインダー成分が多すぎると耐熱性が低下し、また、バインダー自体が原版汚れの原因物質なってしまうためである。
【0063】
シールド層の厚さは微細凹凸構造形成層の半分以下とする。珪酸化合物を有するシールド層は、耐熱性が高く、熱流動性が低いことから、その塗膜厚さが厚いほど成形性を阻害
する。一方、シールド層の厚さが薄すぎると、安定した製膜が出来ず、多孔質な塗膜や、塗液ハジキによる部分的な塗膜欠陥が生じる可能性が高くなる。このため、シールド層の厚さは、微細凹凸構造形成層の1/10〜5/10程度で、且つ所望する微細凹凸構造の深さの1/10〜3程度であることが好ましく、更に、所望する微細凹凸構造の深さの半分以下である方が成形性の点で更に好適である。
【0064】
(放射線)
上記の放射線硬化性樹脂は、微細凹凸パターンが転写形成された後、又は転写形成とほぼ同時に、放射線が照射されて硬化(反応)させることにより、微細凹凸構造体の要素としての硬化物となる。放射線としては、紫外線(UV)、可視光線、ガンマー線、X線、または電子線(EB)などが適用できるが、紫外線(UV)が好適である。放射線で硬化する放射線硬化性樹脂は、紫外線硬化の場合は光重合開始剤、及び/又は光重合促進剤を添加し、エネルギーの高い電子線硬化の場合は添加しないでも良い。また放射線と熱を併用することにより反応性が向上し、架橋密度の高い塗膜を得ることも可能である。
【0065】
(フィルム基材)
本発明の製造方法の図において、微細凹凸構造形成層、シールド層をコーティングにより設けるための支持基材としては、フィルム基材が好ましい。例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PP(ポリプロピレン)などのプラスチックフィルムを用いることができるが、プレス成形時にかかる熱量によって変形、変質のない耐熱性を有するものを用いることが望ましい。
【0066】
なお、本発明の微細凹凸構造体は、傷つき防止の為に最表面に保護膜を設ける事や、光学特性を向上させるために最表面に反射膜を設ける事も可能である。なお、保護膜や反射膜は、公知のコーティング方法を使用することが可能である。
また、微細凹凸構造体の利便性を向上するために、接着剤を塗布した微細凹凸構造体のシールや、フィルム基材から転写する機能を有する微細凹凸構造体の転写フィルムなどにも利用することが可能である。
【0067】
また、本発明の光学素子は、本発明の微細凹凸構造体からなるので、上述の保護膜、反射膜、接着剤付きシール、転写フィルム等を上述のように微細凹凸構造体に付加することは勿論であるが、それ以外に光学素子としての全体構成の中に包含させることも可能である。
【実施例1】
【0068】
本発明の微細凹凸構造体からなる偽造防止積層体を製造するために、下記に示すように、微細凹凸構造形成層のインキ組成物、及びシールド層のインキ組成物を用意した。

「微細凹凸構造形成層インキ組成物」
E1003(JER製エポキシ樹脂) 50.0重量部
トーマイドTXA445(富士化成製エポキシ硬化剤) 30.0重量部
酢酸エチル 20.0重量部

「シールド層インキ組成物」
アルキル変性アルコキシシラン(nv=10%) 50.0重量部
水 30.0重量部
エタノール 20.0重量部

厚み23μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる支持体上に、「微細凹凸構造形成層インキ組成物」を乾燥膜厚1μmとなるように塗布し、120℃、30secの条件で乾燥して微細凹凸構造形成層を製膜した。得られた塗膜はタックが無く、透明、平滑であった。
その後、微細凹凸構造形成層の乾燥塗膜上(未硬化塗膜)に、「シールド層インキ組成物」を乾燥膜厚0.1μmとなるように上塗りし、120℃、30secの条件で乾燥してシールド層を製膜した。得られた塗膜はタックが無く、透明、平滑であった。
得られた積層体を、プレス成形した。プレス成形に使用した原版には、周期700nm、深さ200nmのレンズアレイ構造の円筒型金属版を使用し、プレス圧力を0.2MPa、ロール温度を180℃、プレススピードを30m/minにて、ロールプレス成形した。
プレス成形時に原版汚れは発生せず、良好な形状転写が出来た。
その後、形状転写された微細凹凸構造形成層を40℃、2週間で経時硬化させた。
得られた微細凹凸構造体は、深さの形状転写率が80%以上であり、レンズアレイによる集光効果を確認することが出来た。
【実施例2】
【0069】
本発明の微細凹凸構造体からなる偽造防止積層体を製造するために、下記に示すように、微細凹凸構造形成層のインキ組成物、及びシールド層のインキ組成物を用意した。

「微細凹凸構造形成層インキ組成物」
E1003(JER製エポキシ樹脂) 50.0重量部
トーマイドTXA445(富士化成製エポキシ硬化剤) 30.0重量部
酢酸エチル 20.0重量部

「シールド層インキ組成物」
アルキル変性アルコキシシラン(nv=10%) 50.0重量部
水 30.0重量部
エタノール 20.0重量部

厚み23μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる支持体上に、「微細凹凸構造形成層インキ組成物」を乾燥膜厚1μmとなるように塗布し、120℃、30secの条件で乾燥して微細凹凸構造形成層を製膜した。得られた塗膜はタックが無く、透明、平滑であった。
その後、微細凹凸構造形成層の乾燥塗膜上(未硬化塗膜)に、「シールド層インキ組成物」を乾燥膜厚0.1μmとなるように上塗りし、120℃、30secの条件で乾燥してシールド層を製膜した。得られた塗膜はタックが無く、透明、平滑であった。
得られた積層体を、プレス成形した。プレス成形に使用した原版には、周期700nm、深さ200nmの回折格子構造の円筒型金属版を使用し、プレス圧力を0.2MPa、ロール温度を180℃、プレススピードを30m/minにて、ロールプレス成形した。
プレス成形時に原版汚れは発生せず、良好な形状転写が出来た。
その後、形状転写された微細凹凸構造形成層を40℃、2週間で経時硬化させた。
得られた微細凹凸構造体は、深さの形状転写率が80%以上であり、回折格子による鮮やかな回折光を確認することが出来た。
【実施例3】
【0070】
本発明の微細凹凸構造体からなる偽造防止積層体を製造するために、下記に示すように、微細凹凸構造形成層のインキ組成物、及びシールド層のインキ組成物を用意した。

「微細凹凸構造形成層インキ組成物」
E1003(JER製エポキシ樹脂) 50.0重量部
トーマイドTXA445(富士化成製エポキシ硬化剤) 30.0重量部
酢酸エチル 20.0重量部

「シールド層インキ組成物」
アルキル変性アルコキシシラン(nv=10%) 50.0重量部
水 30.0重量部
エタノール 20.0重量部

厚み23μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる支持体上に、「微細凹凸構造形成層インキ組成物」を乾燥膜厚1μmとなるように塗布し、120℃、30secの条件で乾燥して微細凹凸構造形成層を製膜した。得られた塗膜はタックが無く、透明、平滑であった。
その後、微細凹凸構造形成層の乾燥塗膜上(未硬化塗膜)に、「シールド層インキ組成物」を乾燥膜厚0.4μmとなるように上塗りし、120℃、30secの条件で乾燥してシールド層を製膜した。得られた塗膜はタックが無く、透明、平滑であった。
得られた積層体を、プレス成形した。プレス成形に使用した原版には、周期700nm、深さ200nmの回折格子構造の円筒型金属版を使用し、プレス圧力を0.2MPa、ロール温度を180℃、プレススピードを30m/minにて、ロールプレス成形した。
プレス成形時に原版汚れは発生せず、良好な形状転写が出来た。
その後、形状転写された微細凹凸構造形成層を40℃、2週間で経時硬化させた。
得られた偽造防止表示体は、深さの形状転写率が70%以上であり、回折格子による鮮やかな回折光を確認することが出来た。
【実施例4】
【0071】
〈比較例1〉
本発明の微細凹凸構造体からなる偽造防止積層体を製造するために、下記に示すように、微細凹凸構造形成層のインキ組成物、及びシールド層のインキ組成物を用意した。

「微細凹凸構造形成層インキ組成物」
E1003(JER製エポキシ樹脂) 50.0重量部
トーマイドTXA445(富士化成製エポキシ硬化剤) 30.0重量部
酢酸エチル 20.0重量部

「シールド層インキ組成物」
アルキル変性アルコキシシラン(nv=10%) 50.0重量部
水 30.0重量部
エタノール 20.0重量部

厚み23μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる支持体上に、「微細凹凸構造形成層インキ組成物」を乾燥膜厚1μmとなるように塗布し、120℃、30secの条件で乾燥して微細凹凸構造形成層を製膜した。得られた塗膜はタックが無く、透明、平滑であった。
その後、微細凹凸構造形成層の乾燥塗膜上(未硬化塗膜)に、「シールド層インキ組成物」を乾燥膜厚0.6μmとなるように上塗りし、120℃、30secの条件で乾燥してシールド層を製膜した。得られた塗膜はタックが無く、透明、平滑であった。
得られた積層体を、プレス成形した。プレス成形に使用した原版には、周期700nm、深さ200nmの回折格子構造の円筒型金属版を使用し、プレス圧力を0.2MPa、ロール温度を180℃、プレススピードを30m/minにて、ロールプレス成形した。
プレス成形時に原版汚れは発生せず、良好な形状転写が出来た。
その後、形状転写された微細凹凸構造形成層を40℃、2週間で経時硬化させた。
得られた偽造防止表示体は、深さの形状転写率が70%未満であり、回折格子による鮮や
かな回折光は確認出来なかった。
【実施例5】
【0072】
〈比較例2〉
本発明の微細凹凸構造体からなる偽造防止積層体を製造するために、下記に示すように、微細凹凸構造形成層のインキ組成物、及びシールド層のインキ組成物を用意した。

「微細凹凸構造形成層インキ組成物」
E1003(JER製エポキシ樹脂) 50.0重量部
トーマイドTXA445(富士化成製エポキシ硬化剤) 30.0重量部
酢酸エチル 20.0重量部

「シールド層インキ組成物」
アルキル変性アルコキシシラン(nv=10%) 50.0重量部
水 30.0重量部
エタノール 20.0重量部

厚み23μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる支持体上に、「微細凹凸構造形成層インキ組成物」を乾燥膜厚1μmとなるように塗布し、120℃、30secの条件で乾燥して微細凹凸構造形成層を製膜した。得られた塗膜はタックが無く、透明、平滑であった。
その後、微細凹凸構造形成層の乾燥塗膜上(未硬化樹脂)に、「シールド層インキ組成物」を乾燥膜厚1.0μmとなるように上塗りし、120℃、30secの条件で乾燥してシールド層を製膜した。得られた塗膜はタックが無く、透明、平滑であった。
得られた積層体を、プレス成形した。プレス成形に使用した原版には、周期700nm、深さ200nmの回折格子構造の円筒型金属版を使用し、プレス圧力を0.2MPa、ロール温度を180℃、プレススピードを30m/minにて、ロールプレス成形した。プレス成形時に原版汚れは発生せず、良好な形状転写が出来た。
その後、形状転写された微細凹凸構造形成層を40℃、2週間で経時硬化させた。
得られた偽造防止表示体は、深さの形状転写率が20%未満であり、回折格子による鮮やかな回折光は確認出来なかった。
【実施例6】
【0073】
本発明の微細凹凸構造体からなる偽造防止積層体を製造するために、下記に示すように、微細凹凸構造形成層のインキ組成物、及びシールド層のインキ組成物を用意した。

「微細凹凸構造形成層インキ組成物」
ウレタン(メタ)アクリレート(多官能、分子量20,000、nv=30%)50.0重量部
メチルエチルケトン 30.0重量部
酢酸エチル 20.0重量部
光開始剤(チバスペシャリティー製イルガキュア184) 1.5重量部

「シールド層インキ組成物」
アルキル変性アルコキシシラン(nv=10%) 50.0重量部
水 30.0重量部
エタノール 20.0重量部

厚み23μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる支持体上に、「微細凹凸構造形成層インキ組成物」を乾燥膜厚1μmとなるように塗布し、120℃、30secの条件で乾燥して微細凹凸構造形成層を製膜した。得られた塗膜はタックが無く、透明、平滑であった。
その後、微細凹凸構造形成層の乾燥塗膜上(放射線未照射)に、「シールド層インキ組成物」を乾燥膜厚0.1μmとなるように上塗りし、120℃、30secの条件で乾燥してシールド層を製膜した。得られた塗膜はタックが無く、透明、平滑であった。
得られた積層体を、プレス成形した。プレス成形に使用した原版には、周期700nm、深さ200nmのレンズアレイ構造の円筒型金属版を使用し、プレス圧力を0.2MPa、ロール温度を180℃、プレススピードを30m/minにて、ロールプレス成形した。
その後、エンボス面から窒素雰囲気下、高圧水銀灯で300mJ/cm露光を行い、形状転写された微細凹凸構造形成層を硬化させた。
得られた偽造防止表示体は、深さの形状転写率が90%以上であり、レンズアレイによる集光効果を確認することが出来た。
【実施例7】
【0074】
本発明の微細凹凸構造体からなる偽造防止積層体を製造するために、下記に示すように、微細凹凸構造形成層のインキ組成物、及びシールド層のインキ組成物を用意した。

「微細凹凸構造形成層インキ組成物」
エポキシ(メタ)アクリレート(多官能、分子量20,000、nv=30%)50.0重量部
メチルエチルケトン 30.0重量部
酢酸エチル 20.0重量部
光開始剤(チバスペシャリティー製イルガキュア184) 1.5重量部

「シールド層インキ組成物」
アルキル変性アルコキシシラン(nv=20%) 50.0重量部
水 30.0重量部
エタノール 20.0重量部

厚み23μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる支持体上に、「微細凹凸構造形成層インキ組成物」を乾燥膜厚1μmとなるように塗布し、120℃、30secの条件で乾燥して微細凹凸構造形成層を製膜した。得られた塗膜はタックが無く、透明、平滑であった。
その後、微細凹凸構造形成層の乾燥塗膜上(放射線未照射)に、「シールド層インキ組成物」を乾燥膜厚0.1μmとなるように上塗りし、120℃、30secの条件で乾燥してシールド層を製膜した。得られた塗膜はタックが無く、透明、平滑であった。
得られた積層体を、プレス成形した。プレス成形に使用した原版には、周期700nm、深さ200nmの回折格子構造の円筒型金属版を使用し、プレス圧力を0.2MPa、ロール温度を180℃、プレススピードを30m/minにて、ロールプレス成形した。
その後、エンボス面から窒素雰囲気下、高圧水銀灯で300mJ/cm露光を行い、形状転写された微細凹凸構造形成層を硬化させた。
得られた偽造防止表示体は、深さの形状転写率が90%以上であり、回折格子による鮮やかな回折光を確認することが出来た。
【実施例8】
【0075】
本発明の微細凹凸構造体からなる偽造防止積層体を製造するために、下記に示すように、微細凹凸構造形成層のインキ組成物、及びシールド層のインキ組成物を用意した。

「微細凹凸構造形成層インキ組成物」
ウレタン(メタ)アクリレート(多官能、分子量20,000、nv=30%)50.0重量部
メチルエチルケトン 30.0重量部
酢酸エチル 20.0重量部
光開始剤(チバスペシャリティー製イルガキュア184) 1.5重量部

「シールド層インキ組成物」
シラン変性コロイダルシリカ(nv=20%) 50.0重量部
水 30.0重量部
エタノール 20.0重量部

厚み23μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる支持体上に、「微細凹凸構造形成層インキ組成物」を乾燥膜厚1μmとなるように塗布し、120℃、30secの条件で乾燥して微細凹凸構造形成層を製膜した。得られた塗膜はタックが無く、透明、平滑であった。
その後、微細凹凸構造形成層の乾燥塗膜上(放射線未照射)に、「シールド層インキ組成物」を乾燥膜厚0.4μmとなるように上塗りし、120℃、30secの条件で乾燥してシールド層を製膜した。得られた塗膜はタックが無く、透明、平滑であった。
得られた積層体を、プレス成形した。プレス成形に使用した原版には、周期700nm、深さ200nmの回折格子構造の円筒型金属版を使用し、プレス圧力を0.2MPa、ロール温度を180℃、プレススピードを30m/minにて、ロールプレス成形した。
その後、エンボス面から窒素雰囲気下、高圧水銀灯で300mJ/cm露光を行い、形状転写された微細凹凸構造形成層を硬化させた。
得られた偽造防止表示体は、深さの形状転写率が70%以上であり、回折格子による鮮やかな回折光を確認することが出来た。
【実施例9】
【0076】
〈比較例3〉
本発明の微細凹凸構造体からなる偽造防止積層体を製造するために、下記に示すように、微細凹凸構造形成層のインキ組成物、及びシールド層のインキ組成物を用意した。

「微細凹凸構造形成層インキ組成物」
エポキシ(メタ)アクリレート(多官能、分子量20,000、nv=30%)50.0重量部
メチルエチルケトン 30.0重量部
酢酸エチル 20.0重量部
光開始剤(チバスペシャリティー製イルガキュア184) 1.5重量部

「シールド層インキ組成物」
アルキル変性アルコキシシラン(nv=10%) 50.0重量部
水 30.0重量部
エタノール 20.0重量部

厚み23μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる支持体上に、「微細凹凸構造形成層インキ組成物」を乾燥膜厚1μmとなるように塗布し、120℃、30secの条件で乾燥して微細凹凸構造形成層を製膜した。得られた塗膜はタックが無く、透明、平滑であった。
その後、微細凹凸構造形成層の乾燥塗膜上(放射線未照射)に、「シールド層インキ組成物」を乾燥膜厚0.6μmとなるように上塗りし、120℃、30secの条件で乾燥してシールド層を製膜した。得られた塗膜はタックが無く、透明、平滑であった。
得られた積層体を、プレス成形した。プレス成形に使用した原版には、周期700nm、深さ200nmの回折格子構造の円筒型金属版を使用し、プレス圧力を0.2MPa、ロール温度を180℃、プレススピードを30m/minにて、ロールプレス成形した。
その後、エンボス面から窒素雰囲気下、高圧水銀灯で300mJ/cm露光を行い、形状転写された微細凹凸構造形成層を硬化させた。
得られた偽造防止表示体は、深さの形状転写率が70%未満であり、回折格子による鮮やかな回折光は確認出来なかった。
【実施例10】
【0077】
〈比較例4〉
本発明の微細凹凸構造体からなる偽造防止積層体を製造するために、下記に示すように、微細凹凸構造形成層のインキ組成物、及びシールド層のインキ組成物を用意した。

「微細凹凸構造形成層インキ組成物」
エポキシ(メタ)アクリレート(多官能、分子量20,000、nv=30%)50.0重量部
メチルエチルケトン 30.0重量部
酢酸エチル 20.0重量部
光開始剤(チバスペシャリティー製イルガキュア184) 1.5重量部

「シールド層インキ組成物」
アルキル変性アルコキシシラン(nv=10%) 50.0重量部
水 30.0重量部
エタノール 20.0重量部

厚み23μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる支持体上に、「微細凹凸構造形成層インキ組成物」を乾燥膜厚1μmとなるように塗布し、120℃、30secの条件で乾燥して微細凹凸構造形成層を製膜した。得られた塗膜はタックが無く、透明、平滑であった。
その後、微細凹凸構造形成層の乾燥塗膜上(放射線未照射)に、「シールド層インキ組成物」を乾燥膜厚1.0μmとなるように上塗りし、120℃、30secの条件で乾燥してシールド層を製膜した。得られた塗膜はタックが無く、透明、平滑であった。
得られた積層体を、プレス成形した。プレス成形に使用した原版には、周期700nm、深さ200nmの回折格子構造の円筒型金属版を使用し、プレス圧力を0.2MPa、ロール温度を180℃、プレススピードを30m/minにて、ロールプレス成形した。
その後、エンボス面から窒素雰囲気下、高圧水銀灯で300mJ/cm露光を行い、形状転写された微細凹凸構造形成層を硬化させた。
得られた偽造防止表示体は、深さの形状転写率が20%未満であり、回折格子による鮮やかな回折光は確認出来なかった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の微細凹凸構造体は、レリーフホログラム、回折格子、サブ波長格子、マイクロレンズ、偏光素子、スクリーンなどに用いられるフレネルレンズ板やレンチキュラー板及び液晶装置のバックライトや拡散板、反射防止膜などに利用可能で有り、本発明の製造方法により製造された微細凹凸構造体は高品質で、生産性が高く、様々な産業向けの微細凹凸構造体として利用可能である。
【符号の説明】
【0079】
1・・・微細凹凸構造体
2・・・フィルム状基材
3、30・・・微細凹凸構造形成層
4、40・・・シールド層
5・・・成形前の微細凹凸構造体
10・・・プレス成形にかかる積層体
11・・・原版(複製用原版)
12・・・プレスロール
13・・・放射線照射機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細凹凸構造形成層とシールド層との複層構成を有する微細凹凸構造体であって、前記微細凹凸構造形成層は樹脂の硬化物を含み、シールド層は珪酸化合物によって構成されることを特徴とする微細凹凸構造体。
【請求項2】
前記シールド層の厚さが、前記微細凹凸構造形成層の厚さの半分以下であることを特徴とする請求項1に記載の微細凹凸構造体。
【請求項3】
前記シールド層の材料が、フッ素化合物と珪酸化合物の共重合物を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の微細凹凸構造体。
【請求項4】
前記シールド層の材料が、シリコーン化合物と珪酸化合物の共重合物を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の微細凹凸構造体。
【請求項5】
前記微細凹凸構造形成層は、エポキシ樹脂またはウレタン樹脂の硬化物を主成分とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の微細凹凸構造体。
【請求項6】
前記微細凹凸構造形成層は、放射線により硬化する樹脂の硬化物を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の微細凹凸構造体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の微細凹凸構造体からなることを特徴とする光学素子。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の微細凹凸構造体を製造する方法であって、前記シールド層の形成にゾルゲル材料を使用し、ゾルゲルプロセスによって形成することを特徴とする微細凹凸構造体の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の微細凹凸構造体を製造する方法、または、請求項8に記載の微細凹凸構造体の製造方法であって、平滑な基材上に経時硬化する樹脂を塗工して微細凹凸構造形成層を設け、未硬化状態の該微細凹凸構造形成層に重ねて、塗工によりシールド層を設けた後に、微細凹凸パターンの原版を用いて押圧手段により、シールド層越しに微細凹凸構造形成層に微細凹凸パターンを形成した後に、経時硬化によって微細凹凸構造形成層を硬化させることを特徴とする微細凹凸構造体の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載の微細凹凸構造体を製造する方法、または、請求項8に記載の微細凹凸構造体の製造方法であって、平滑な基材上に放射線により硬化する樹脂を塗工して微細凹凸構造形成層を設け、放射線の未照射状態の該微細凹凸構造形成層に重ねて、塗工によりシールド層を設けた後に、微細凹凸パターンの原版を用いて押圧手段により、シールド層越しに微細凹凸構造形成層に微細凹凸パターンを形成した後に、放射線照射によって微細凹凸構造形成層を硬化させることを特徴とする微細凹凸構造体の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれかに記載の微細凹凸構造体を製造する方法、または、請求項8に記載の微細凹凸構造体の製造方法であって、平滑な基材上に放射線により硬化する樹脂を塗工して微細凹凸構造形成層を設け、放射線の未照射状態の該微細凹凸構造形成層に重ねて、塗工によりシールド層を設けた後に、微細凹凸パターンの原版を用いて押圧手段により、シールド層越しに微細凹凸構造形成層に微細凹凸パターンを形成すると同時に、放射線照射によって微細凹凸構造形成層を硬化させることを特徴とする微細凹凸構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−269480(P2010−269480A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121968(P2009−121968)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】