説明

微結晶薄膜トランジスタを用いた画像表示装置

【課題】高移動度の微結晶薄膜を有する薄膜トランジスタを用いた画像表示装置を提供する。
【解決手段】画像表示装置は気相中で結合した場合に多数の原子が重合することによってポリマーを形成する元素を含有する第1原料気体と、気相中でポリマーを形成することのない第2原料とを用いてプラズマCVD法によって微結晶を成膜した薄膜トランジスタを備える。具体的には、特定の流量比rで第1原料気体および第2原料気体を供給する原料供給工程と、上記の第1原料気体の供給を停止して第2原料気体のみを供給し、原料供給工程において供給された原料を基板上に成膜させる原料堆積工程とを含み、これらの工程を交互に繰り返すことによって高品質のものに成膜する。図1において、実線で示すタイミングチャートはSiH4の供給量について示し、破線で示すタイミングチャートはH2の供給量について示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像表示装置に関し、特に微結晶薄膜の成膜技術による薄膜トランジスタを用いた画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば液晶を用いた画像表示装置のスイッチング素子として機能する薄膜トランジスタのチャネル層を形成する半導体層として、シリコン(Si)等を主成分とした薄膜構造が使用されている。かかる薄膜構造の例としては、例えば、結晶性を示さない非晶質のシリコンを用いたものが一般的に使用されている。非晶質シリコン薄膜は、低温プロセスによって比較的容易に形成することが可能であり、製造コストを低減することが可能なためである。しかし、非晶質シリコン薄膜は、移動度が0.6cm2/Vs程度と低いことが問題視されている。
【0003】
液晶を用いた画像表示装置は、スイッチング素子を介して画素に対応して設けられた画素電極に電荷を供給する構造を有する。従って、特に画素数の多い画像表示装置においては、スイッチング速度を向上させるため高移動度のチャネル層を備えた薄膜トランジスタが必要となり、高移動度を実現可能な薄膜構造の開発が行われている。
【0004】
非晶質シリコン薄膜以外の膜構造の一例として、微結晶薄膜を用いた構造が提案されている。かかる微結晶状態のシリコンを成膜するために、プラズマ化学気相成長法(Plasma Chemical Vapor Deposition:以下、「プラズマCVD法」と称する)を用いた成膜方法が知られている。
【0005】
プラズマCVD法は、半導体層の原料気体に対して高周波の電界を印加することによって、原料気体と電子とを衝突させることで原料気体を反応活性なプラズマ状態に変化させた上で基板上に成膜を行う。ここで、従来の成膜方法を用いる際には、原料気体に照射する電界強度密度を所定の値以下に抑制する必要がある。高エネルギーの電界を印加した場合にSiH4が分解されて生じるSiH2は反応性が非常に高く、基板表面に到達する前に互いに結合してポリマー化するためである。このため、プラズマCVD法を用いる場合には、原料気体のSiH4に対して低強度の電界を照射することによって比較的反応性の低いSiH3に分解した上で成膜を行っていた。しかし、かかる手法を用いた場合、微結晶薄膜を構成するシリコン原子のダングリングボンドが水素で終端する割合が高いため、高移動度の微結晶薄膜を得ることが困難である。
【0006】
これに対して、プラズマCVD法によって基板上に一度非晶質シリコンを堆積した後、非晶質シリコン薄膜に対して水素イオンまたは水素プラズマを照射することによって微結晶化する成膜方法が知られている。これによれば、SiH4と水素とを混合した原料気体を用いてプラズマCVD法によって基板表面上に非晶質シリコン膜を15nm程度成膜した後、水素のみを導入して水素放電を行う。かかる水素放電を行うことによって、成膜された非晶質シリコン膜は微結晶化されて微結晶シリコン膜に変換される(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特許第2762968号明細書
【特許文献2】特開平8−148690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、非晶質シリコン膜から微結晶シリコン膜を得る従来の成膜方法には、様々な問題点が存在し、実際には十分な移動度を実現することが困難であることが知られている。従って、微結晶シリコン膜を用いた薄膜トランジスタを実装した画像表示装置は未だ満足なものが実現されていない。以下、従来技術の問題点について説明する。
【0009】
まず、上記の成膜方法では、得られる微結晶シリコン膜の結晶構造が良好でないという問題を有する。上記の成膜方法では、一度成膜した非晶質シリコン膜の結晶構造を微結晶に変換することとしているが、すべての非晶質シリコン膜の結晶構造を変換することは容易ではなく、一定の割合で非晶質シリコン膜が残存する可能性が高い。非晶質シリコン膜は移動度が低いため、非晶質シリコン膜が残存する割合に応じてキャリア移動度が低下することとなる。
【0010】
また、非晶質シリコン膜に含まれるシリコン原子は、そのダングリングボンドが水素によって終端されている。従って、水素放電によって微結晶薄膜を得ることとした場合、シリコン原子のダングリングボンドの一部において水素が解離し、かかるダングリングボンドが他のシリコン原子と結合することによって微結晶が生成される。従って、シリコン原子同士の結合を増やすためには水素放電の強度を十分取る必要があるが、上記の成膜方法の場合、高強度の水素放電を用いることによって非晶質シリコン膜以外の結晶構造、例えば基板の結晶構造に損傷を与えることとなる。従って、上記の成膜方法を用いた場合には十分な強度の水素放電を行うことができず、多数のダングリングボンドが水素で終端したままとなり、微結晶薄膜の移動度を向上させることが困難である。
【0011】
実際に、本願発明者等が従来の成膜方法を用いて微結晶シリコン膜を成膜してキャリア移動度を測定したところ、0.7cm2/Vs程度と、非晶質シリコンよりは高い移動度が得られたものの、高解像度の画像表示装置におけるスイッチング素子として用いる薄膜トランジスタの移動度としては未だ不十分であることが明らかにされている。
【0012】
この発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、高移動度の微結晶薄膜を有する薄膜トランジスを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1にかかる画像表示装置は、少なくとも1つの薄膜トランジスタを備えた画像表示装置であって、前記少なくとも1つの薄膜トランジスタはそれぞれ、基板と、前記基板上のゲート電極と、前記基板および前記ゲート電極上に設けられた絶縁層と、前記絶縁層上に形成されたチャネル層と、前記チャネル層上に形成されたソース/ドレインとを備え、前記チャネル層は少なくともその一部の領域にわたって実質的に非晶質を含まない微結晶薄膜で構成され、前記チャネル層を構成する微結晶薄膜は、気相中で複数結合した場合にポリマーを形成する元素を含む第1原料気体を活性化して、成膜対象上に前記元素を主成分とする微結晶構造を成膜する微結晶薄膜の成膜方法であって、前記第1原料気体を供給する原料供給工程と、前記第1原料気体の供給を停止し、気相中の結合を抑制しつつ活性化された前記第1原料気体を成膜対象上に堆積させる原料堆積工程とを交互に繰り返すこと、前記原料供給工程および前記原料堆積工程において、気相中で互いに結合した場合にポリマーを形成しない第2原料気体を供給すること、および前記原料供給工程において、前記第1原料気体と前記第2原料気体との流量比rは、前記第1原料気体と前記第2原料気体に照射される電界強度密度P(mW/cm2)を用いた以下の不等式P≧60mW/cm2のとき、r≧−(7/12)×P+72.5、 P<60mW/cm2のとき、r≧−2×P+185を満たす微結晶薄膜の成膜方法により成膜されたものであることを特徴とする。
【0014】
この請求項1の発明によれば、成膜される微結晶薄膜の主成分となる元素を含む第1原料気体を供給する原料供給工程と、第1原料気体の供給を停止し、活性化された第1原料気体同士の気相中における結合を抑制しつつ成膜を行う原料堆積工程とを交互に繰り返すこととしたため、活性化された第1原料気体同士が気相中で遭遇することによってポリマーを形成することを抑制し、さらに、前記原料供給工程および前記原料堆積工程において、気相中で互いに結合した場合にポリマーを形成しない第2原料気体を供給することとし、しかも流量比rと電界強度密度PとがP≧60mW/cm2のとき、r≧−(7/12)×P+72.5、 P<60mW/cm2のとき、r≧−2×P+185の関係を満たすこととしたためたため、高移動度の微結晶薄膜を有する薄膜トランジスタを用いた画像表示装置とすることができる。
【0015】
また、請求項2にかかる画像表示装置は、上記の発明において、前記第2原料気体は、前記原料供給工程および前記原料堆積工程を通じて一定流量供給されることを特徴とする。
【0016】
この請求項2の発明によれば、前記第2原料気体の供給量が安定しているため、さらによい品質の微結晶薄膜を有する薄膜トランジスタを用いた画像表示装置とすることができる。
【0017】
また、請求項3にかかる画像表示装置は、上記の発明において、前記原料供給工程において、前記第1原料気体と前記第2原料気体に照射される電界強度密度P(mW/cm2)は、P=約50〜約135mW/cm2であることを特徴とする。
【0018】
この請求項3の発明によれば、前記第1原料気体と前記第2原料気体に照射される電界強度密度P(mW/cm2)は、P=約50〜約135mW/cm2であるため、成長室内の圧力、成膜温度等の他の条件の影響が少なく、安定して成膜された薄膜トランジスタを用いた画像表示装置とすることができる。
【0019】
また、請求項4にかかる画像表示装置は、上記の発明において、前記原料供給工程において、前記第1原料気体と前記第2原料気体に照射される電界強度密度P(mW/cm2)は、P≧0.1W/cm2であることを特徴とする。
【0020】
この請求項4の発明によれば、前記第1原料気体と前記第2原料気体に照射される電界強度密度P(mW/cm2)は、P≧0.1W/cm2であるため、反応性の高い原料プラズマを利用することが可能となり、高品質の微結晶薄膜を有する薄膜トランジスタを用いた画像表示装置とすることができる。
【0021】
また、請求項5にかかる微結晶薄膜の成膜方法は、上記の発明において、前記原料供給工程に要する時間は2秒以下であって、前記原料堆積工程に要する時間は、前記原料供給工程よりも長いことを特徴とする。
【0022】
この請求項5の発明によれば、原料供給工程を2秒以下としたことで、原料供給工程の際に、活性化した第1原料気体がポリマーを形成することをさらに抑制し、原料堆積工程に要する時間を長期化することで、原料堆積工程終了時において、活性化された第1原料気体の気相中における残存量を低減することができ、高品質の微結晶薄膜を有する薄膜トランジスタを用いた画像表示装置とすることができる。
【0023】
また、請求項6にかかる微結晶薄膜の成膜方法は、上記の発明において、前記第1原料気体はSiH4を含み、前記第2原料気体はH2を含むことを特徴とする。
【0024】
また、請求項7にかかる微結晶薄膜の成膜方法は、上記の発明において、前記第1原料気体に含まれるSiH4は、活性化の際にSiH2に分解されることを特徴とする。
【0025】
この請求項7の発明によれば、第1原料気体が気相中でポリマーを形成することを抑制できるため、高い反応性を有するSiH2を用いることが可能であり、SiH2を用いることによって、移動度が向上した微結晶薄膜を成膜することができ、高品質の微結晶薄膜を有する薄膜トランジスタを用いた画像表示装置とすることができる。
【0026】
また、請求項8にかかる画像表示装置は、上記の発明において、表示画素に対応して配置された画素電極と、画素電極に対応して配置され、すくなくとも1つの薄膜トランジスタを含むスイッチング素子と、前記スイッチング素子を介して前記画素電極に表示信号を供給する信号線と、前記スイッチング素子の駆動状態を制御する走査信号を供給する走査線と、を有するアレイ基板を備え、前記少なくとも1つの薄膜トランジスタはそれぞれ基板と、前記基板上のゲート電極と、前記基板および前記ゲート電極上に設けられた絶縁層と、前記絶縁層上に形成されたチャネル層と、前記チャネル層上に形成されたソース/ドレインとを備えることを特徴とする。
【0027】
また、請求項9にかかる画像表示装置は、表示信号を供給するための信号線と、走査信号を供給するための走査線と、所定の信号線から表示信号が供給される第1画素電極および第2画素電極と、前記所定の信号線と前記第1画素電極との間に配置され、かつ前記表示信号の供給を制御するゲート電極を備えた第1薄膜トランジスタを有する第1スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子の前記ゲート電極と所定の走査線との間に配置される第2薄膜トランジスタを有する第2スイッチング素子と、前記所定の信号線に接続され、前記第2画素電極への前記表示信号の供給を制御する第3薄膜トランジスタを有する第3スイッチング素子とを備え、前記第1薄膜トランジスタと前記第2薄膜トランジスタの少なくとも一方が請求項1〜7のいずれか一項に記載の薄膜トランジスタであることを有するアレイ基板を備えたことを特徴とする。
【0028】
また、請求項10にかかる画像表示装置は、表示画素に対応して配置され、注入電流によって発光状態が制御される発光素子と、前記発光素子に流入する電流値を制御する第1薄膜トランジスタと、前記第1薄膜トランジスタのゲート電位を制御する第2薄膜トランジスタと、前記第1薄膜トランジスタのゲート電位を保持するコンデンサと、前記表示画素に表示信号を供給する信号線と、前記第2薄膜トランジスタの駆動状態を制御する走査信号を供給する走査線と、前記第1薄膜トランジスタを介して前記発光素子に対して電流を供給する電源線と、を備え、前記第1薄膜トランジスタと前記第2薄膜トランジスタの少なくとも一方が請求項1〜7のいずれか一項に記載の薄膜トランジスタであることを特徴とする。
【0029】
また、請求項11にかかる画像表示装置は、上記発明において、前記発光素子は、発光層が有機材料によって形成された有機EL素子であって、前記発光素子は前記第1薄膜トランジスタのソース/ドレイン電極と接続されていることを特徴とする。
【0030】
また、請求項12にかかる画像表示装置は、上記の発明において、前記チャネル層は前記実質的に非晶質を含まない微結晶薄膜が少なくとも前記絶縁層との界面から層方向に1nmの膜厚を有してなることを特徴とする。
【0031】
また、請求項13にかかる画像表示装置は、表示画素に対応して配置された画素電極と、画素電極に対応して配置され、すくなくとも1つの薄膜トランジスタを含むスイッチング素子と、前記スイッチング素子を介して前記画素電極に表示信号を供給する信号線と、前記スイッチング素子の駆動状態を制御する走査信号を供給する走査線と、を有するアレイ基板を備えた画像表示装置であって、前記少なくとも1つの薄膜トランジスタの1つまたはそれ以上の薄膜トランジスタは基板と、前記基板上のゲート電極と、前記基板および前記ゲート電極上に設けられた絶縁層と、前記絶縁層上に形成されたチャネル層と、前記チャネル層上に形成されたソース/ドレインとを備え、前記チャネル層は前記絶縁層との界面から層方向に、実質的に非晶質を含まない、0.7cm2/Vsより高いキャリア移動度を有する微結晶薄膜で構成されることを特徴とする。
【0032】
また、請求項14にかかる画像表示装置は、上記の発明において、前記チャネル層を構成する前記微結晶薄膜は、約0.7cm2/Vs〜約0.95のキャリア移動度を有することを特徴とする。
【0033】
また、請求項15にかかる画像表示装置は、上記の発明において、前記チャネル層は前記実質的に非晶質を含まない微結晶薄膜を少なくとも前記絶縁層との界面から層方向に1nm離隔する領域まで形成してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように、この発明によれば、成膜される微結晶薄膜の主成分となる元素を含む第1原料気体を供給する原料供給工程と、第1原料気体の供給を停止し、活性化された第1原料気体同士の気相中における結合を抑制しつつ成膜を行う原料堆積工程とを交互に繰り返すこととしたため、活性化された第1原料気体同士が気相中で遭遇することによってポリマーを形成することを抑制し、さらに、原料供給工程および原料堆積工程において、気相中で互いに結合した場合にポリマーを形成しない第2原料気体を供給することとし、しかも流量比rと電界強度密度PとがP≧60mW/cm2のとき、r≧−(7/12)×P+72.5、 P<60mW/cm2のとき、r≧−2×P+185の関係を満たすこととしたためたため、高移動度の微結晶薄膜を有する薄膜トランジスタを用いた画像表示装置とすることができるという効果を奏する。
【0035】
また、この発明によれば、第2原料気体は、原料供給工程および原料堆積工程を通じて一定流量供給されるようにしたことで、第2原料気体の供給量が安定しているため、さらによい品質の微結晶薄膜を有する薄膜トランジスタを用いた画像表示装置とすることができるという効果を奏する。
【0036】
また、この発明によれば、第1原料気体と第2原料気体に照射される電界強度密度P(mW/cm2)を、P=約50〜約135mW/cm2としたことで、成長室内の圧力、成膜温度等の他の条件の影響が少なく、安定して成膜された薄膜トランジスタを用いた画像表示装置とすることができるという効果を奏する。
【0037】
また、この発明によれば、第1原料気体と第2原料気体に照射される電界強度密度P(mW/cm2)を、P≧0.1W/cm2としたことで、反応性の高い原料プラズマを利用することが可能となり、高品質の微結晶薄膜を有する薄膜トランジスタを用いた画像表示装置とすることができるという効果を奏する。
【0038】
また、この発明によれば、原料供給工程を2秒以下としたことで、原料供給工程の際に、活性化した第1原料気体がポリマーを形成することをさらに抑制し、原料堆積工程に要する時間を長期化することで、原料堆積工程終了時において、活性化された第1原料気体の気相中における残存量を低減することができ、高品質の微結晶薄膜を有する薄膜トランジスタを用いた画像表示装置とすることができるという効果を奏する。
【0039】
また、この発明によれば、第1原料気体が気相中でポリマーを形成することを抑制できるため、高い反応性を有するSiH2を用いることが可能であり、SiH2を用いることによって、移動度が向上した微結晶薄膜を成膜でき、高品質の微結晶薄膜を有する薄膜トランジスタを用いた画像表示装置とすることができるという効果を奏する。
【0040】
また、この発明によれば、上記方法によって微結晶薄膜を成膜することで高移動度の薄膜トランジスタを製造することが可能となり、かかる薄膜トランジスタを用いて画像表示装置を形成することで、高精細または/および大画面の画像表示装置を実現できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、図面を参照して、この発明に用いる微結晶薄膜の成膜方法、薄膜トランジスタの製造方法およびこの発明の画像表示装置について説明する。図面の記載において、同一または類似部分には同一あるいは類似の符号、名称を付している。なお、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意が必要である。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。また、薄膜トランジスタを構成する電極について、ソース電極とドレイン電極を区別する必要性に乏しいことから、以下では、ゲート電極を除いた2つの電極を共にソース/ドレイン電極と称する。
【0042】
(参考例)
<成膜方法>
まず、この発明において用いられる微結晶薄膜の成膜方法は、気相中で結合した場合に多数の原子が重合することによってポリマーを形成する元素を含有する第1原料気体と、気相中でポリマーを形成することのない第2原料とを用いてプラズマCVD法によって微結晶を成膜する方法である。具体的には、この微結晶薄膜の成膜方法は、第1原料気体および第2原料気体を供給する原料供給工程と、上記の第1原料気体の供給を停止して第2原料気体のみを供給し、原料供給工程において供給された原料を基板上に成膜させる原料堆積工程とを含み、これらの工程を交互に繰り返すことによって高品質の微結晶薄膜を成膜する。なお、以下においては、微結晶薄膜の主成分となる元素としてシリコンを想定し、第1原料気体としてSiH4を使用し、第2原料気体としてH2を使用した場合を例として微結晶薄膜の成膜方法について説明する。
【0043】
図1は、本発明において用いられる微結晶薄膜の成膜方法におけるSiH4の供給量とH2の供給量の時間変化を示すタイミングチャートである。図1において、実線で示すタイミングチャートはSiH4の供給量について示し、破線で示すタイミングチャートはH2の供給量について示す。図1に示すように、この微結晶薄膜の成膜方法では、SiH4の供給量はいわゆるパルス状に変化し、供給が離散的に行われている。図1においてSiH4が供給されている期間が原料供給工程に対応し、SiH4の供給が止められている期間が原料堆積工程に対応する。なお、H2の供給量は、SiH4の供給量の変化に関わらず、原料供給工程および原料堆積工程を通じて一定の値に維持されている。
【0044】
供給するSiH4およびH2の絶対量については特に制限はないが、基板上に形成される薄膜が非晶質化することを防ぐため、原料供給工程におけるSiH4とH2との流量比は所定の値に制限される。図2は、流量比と成膜される膜質との関係について示すグラフである(A.P.Constant, "Thin Film Transistors based on microcrystalline silicon on polyimide substrate", Mat. Res Soc. Symp. Proc. Vol. 557, p. 683 (1999) 参照)。図2に示すグラフは縦軸を流量比とし、横軸を原料気体に対して照射する電界の強度としており、領域Iは、非晶質シリコン膜が成膜される条件を示し、領域IIは、非晶質シリコンと微結晶シリコンとが混在した膜が成膜される条件を示す。一方、領域IIIは、微結晶シリコン膜のみが成膜される条件を示し、本発明において用いられる微結晶薄膜の成膜方法でも、原料供給工程において、かかる領域IIIに属する条件を満たす流量比でSiH4およびH2は供給される。具体的には、図2の領域IIと領域IIIの境界に基づいて、流量比rと電界強度密度P(mW/cm2)とが
P≧60mW/cm2のとき、r≧−(7/12)×P+72.5
P<60mW/cm2のとき、r≧−2×P+185
を満たすように流量比rを設定することが好ましい。
【0045】
また、SiH4およびH2を活性化する際に照射する電界の強度は、SiH4をSiH2に分解するのに十分な強度に設定する。例えば、この微結晶薄膜の成膜方法においては、原料供給工程および原料堆積工程を通じて電界強度密度を0.1W/cm2以上とすることが好ましい。なお、その他の成膜条件、例えば微結晶薄膜の成膜を行う成長室内部の気圧や、成膜温度等については、少なくとも図2に示す流量比および電界強度密度の範囲(r=約25〜約87、P=50〜約135mW/cm2)において上記電界の強度に比べて実質的に影響が小さいので、基板上に形成される薄膜が非晶質化しない限り、従来の成膜方法において採用されている成膜圧力、成膜温度等の条件の範囲から適宜選択して設定すればよい。例えば、成膜圧力として500mTorrの圧力、成膜温度として275℃の温度を使用することができる(A.P.Constant, "Thin Film Transistors based on microcrystalline silicon on polyimide substrate", Mat. Res Soc. Symp. Proc. Vol. 557, p. 683 (1999) 参照)。
【0046】
次に、原料供給工程および原料堆積工程についてそれぞれ詳細に説明する。図3(a)は、原料供給工程における成膜装置内部の状態を説明するための模式図であって、図3(b)は、原料堆積工程における成長室内部の状態を説明するための模式的な図である。
【0047】
まず、図3(a)に示すように、原料供給工程において、図2で示した条件を満たす所定の流量比となるようバルブ4およびバルブ6を制御して、SiH4供給源3とH2供給源5から、SiH4とH2が成長室1内部に供給される。成長室1内部には所定の強度を有する電界が照射されるため、成長室1内部に供給されたSiH4は活性化して、反応性の高いSiH2に分解される。同様に、H2についても活性化される。
【0048】
そして、図3(b)に示すように、原料堆積工程において、バルブ4を閉じることによってSiH4の供給が停止され、H2のみが成長室1内部に供給される。図3(b)に示す状態では、図3(a)に示す原料供給工程で得られたSiH2が基板2の表面に多数吸着して、Si原子同士が結合し、微結晶が生成される。ここで、基板2の表面に吸着する前にSiH2同士が遭遇した場合、SiH2の高い反応性に起因してSi結合が多数生成され、かかる結合が連鎖的に生じることによって気相中でポリマーが発生する。発生したポリマーが基板2の表面に付着した場合には膜質が悪化し、移動度が低下することとなると共に、基板2の表面以外に付着した場合にも、成長室内部が汚染されることとなり好ましくない。
【0049】
しかし、この微結晶薄膜の成膜方法では、図3(b)に示す原料堆積工程において、新たにSiH4を供給することなく成膜を行うこととしたため、基板表面に吸着される前にSiH2同士が遭遇する確率を低減することが可能となる。すなわち、一度原料供給工程で所定量のSiH4が供給された後一定期間SiH4の供給を停止しているため、気相中のSiH2またはSiH4が増加することがない。そのため、気相中でSiH2同士が遭遇する確率を低減することができ、Si原子同士の結合が抑制されることによってSiH2のポリマーの発生が防止される。従って、SiH2は活性化された状態を保ったまま基板2の表面に吸着され、シリコンを主成分とした微結晶薄膜が成膜される。
【0050】
ここで、原料供給工程に要する時間は2秒以内とし、原料堆積工程に要する時間は、少なくとも原料供給工程に要する時間よりも長いこととする。原料供給工程に要する時間を2秒以下とすることによって、成長室1内部に拡散されるSiH4の量を抑制して原料供給工程時におけるシリコン原子同士が遭遇する確率を低減し、ポリマーの発生が効果的に抑制できるためである。また、原料堆積工程に要する時間を原料供給工程に要する時間よりも長くすることによって、気相中に残存するSiH2の量を零(0)もしくは実質的に後の工程に影響を与えない程度にまで低減することが可能となる。
【0051】
そして、再び原料供給工程に移行して、図3(a)に示すように、SiH4およびH2が成長室1内部に供給される。本工程の前に供給されたSiH4については、既に原料堆積工程において大部分が結晶表面に吸着しているため、気相中の残存量は少なく、新たな原料供給工程においてもSiH2同士が結合することはない。以下、同様にして原料供給工程および原料堆積工程を繰り返すことによって、所望の膜厚を有する微結晶薄膜が成膜される。
【0052】
次に、本発明に用いる微結晶薄膜の成膜方法を用いた場合の利点について説明する。まず、上述のように微結晶薄膜の成膜を行った場合、気相中でシリコン原子が多重重合することによってポリマーが生成されることを抑制できるという利点を有する。
【0053】
上記したように、原料供給工程で所定の流量比でSiH4とH2を供給すると共に、原料堆積工程において、SiH2が基板表面上に吸着することによって気相中のSiH2の量は減少する。一方、H2は原料堆積工程においても供給され続けるため、原料堆積工程時において気相中に存在する粒子全体に対するSiH2の割合は急激に減少する。このため、SiH2同士が遭遇する確率はさらに減少し、ポリマーの発生をより効果的に抑制することができ、成膜される微結晶薄膜の膜質をさらに向上させることが可能となる。
【0054】
さらに、この微結晶薄膜の成膜方法では、気相中に存在するSiH2の大部分が基板表面に吸着するのに十分な期間だけ原料堆積工程に費やしている。従って、原料堆積工程終了後、再び原料供給工程に移行する際においても気相中にはSiH2がほとんど残存せず、新たにSiH4を供給してもシリコン原子が気相中で多重重合することを抑制することができる。従って、この微結晶薄膜の成膜方法を用いることによって、気相中におけるポリマーの発生を抑制しつつ、微結晶薄膜を成膜することが可能となる。
【0055】
また、この微結晶薄膜の成膜方法では、基板表面に吸着される物質がSiH2であって、SiH4およびSiH3と比較して、シリコン原子が非飽和結合を多く有する。従って、SiH2が基板表面に吸着して微結晶を形成する場合、シリコン原子同士が結合する割合が高くなり、高品質の微結晶薄膜を形成することが可能である。すなわち、シリコンを主成分とする微結晶薄膜においてはシリコン原子間の結合が多いほど移動度が向上することから、この微結晶薄膜の成膜方法を用いた場合、移動度の高い微結晶薄膜を得ることが可能となる。
【0056】
また、この微結晶薄膜の成膜方法では、基板表面上に直接微結晶薄膜を成膜するため、特許第2762968号明細書等で開示された技術のように成膜後に薄膜構造に対して水素放電を行う必要がない。このことは、薄膜トランジスタのような多層構造からなるデバイスの製造の際に特に利点を有する。すなわち、基板表面に対して水素放電を行った場合には、成膜したシリコン薄膜以外の膜の結晶構造にも影響を与える可能性があるが、この微結晶薄膜の成膜方法を用いた場合には、水素放電を行う必要がそもそもないために基板等に影響を与えるおそれがない。従って、この微結晶薄膜の成膜方法を用いて多層構造を実現した場合、他の層の電気的特性に影響を与えることなく微結晶薄膜を成膜することが可能である。
【0057】
なお、この微結晶薄膜の成膜方法において、SiH4の流量以外のパラメータについては、原料供給工程および原料堆積工程を通じて一定の値に維持することが好ましい。一定の値に維持することで、安定した膜成長が可能となるためである。また、SiH4の流量以外のパラメータについては、上述のように従来のプラズマCVD法において用いられた値の範囲から適宜選択した値を用いることが可能である。
【0058】
<薄膜トランジスタの製造>
次に、この微結晶薄膜の成膜方法を用いて薄膜トランジスタを製造する方法について説明する。ここで、成膜される微結晶薄膜は、薄膜トランジスタのチャネル層の少なくとも一部をこの微結晶薄膜の成膜方法によって形成するものとする。なお、以下においてはnチャネルの薄膜トランジスタの製造方法について説明するが、pチャネルの薄膜トランジスタについても同様の手法を用いて製造できるのはもちろんである。以下、図面を適宜参照して薄膜トランジスタの製造方法について説明する。
【0059】
まず、図4(a)に示すように、基板11上にゲート電極12を形成する。ゲート電極を構成する材料は所望のものを用いることが可能であるが、例えば、低抵抗のAl(アルミニウム)を積層した後、Al表面を保護するために安定なMo(モリブデン)を積層した構造とすることが好ましい。具体的には、スパッタリング等によって所望の形状のゲート電極12を形成している。
【0060】
そして、図4(b)に示すように、基板11上およびゲート電極12上にゲート絶縁層13を積層する。ゲート絶縁層13を構成する材料については、例えば、SiNx、SiO2を使用することが好ましい。これら以外の材料であっても、良好な絶縁性を示すものであればゲート絶縁層13を構成することが可能である。また、図4(b)等では、ゲート絶縁層13は単層構造となっているが、SiNxとSiO2を順次積層した多層構造としても良い。これらの材料をCVD法、プラズマCVD法等を用いて堆積することによって、ゲート絶縁層13が形成される。
【0061】
その後、図4(c)に示すように、後の工程によってチャネル層を形成する半導体層14を成膜する。半導体層14は、p型の導電性を有し、例えばシリコンを主成分とする微結晶薄膜14aと非晶質薄膜14bとが順次積層された構造を有する。微結晶薄膜14aは、1nm程度の膜厚を有し、上記した実施の形態1にかかる微結晶薄膜の成膜方法を用いて成膜が行われる。非晶質薄膜14bは、一般的に知られた手法を用いて成膜することができ、例えば、一般的なプラズマCVD法によって成膜することが可能である。なお、p型の導電性を示すために添加される不純物としては、B(ボロン)等のIII族元素を用いてもよい。しかし、微結晶薄膜14aおよび非晶質薄膜14bは、シリコン原子のダングリングボンドを終端させている水素が不純物として機能するため、新たに不純物を添加することを省略しても良い。
【0062】
そして、図4(d)に示すように、エッチングストップ層15を形成する。エッチングストップ層15は、後の工程でエッチングによってソース/ドレイン電極を形成する際にチャネル層が浸食されることを防ぐためのものである。エッチングストップ層15は、SiNx等によって構成され、プラズマCVD法、CVD法等によってSiNxが全体に渡って成膜された後、フォトリソグラフィ法等によって所望の形状に整形される。
【0063】
その後、図5(a)に示すように、後の工程でソース/ドレイン領域を形成するn+半導体層16を成膜する。n+半導体層16は、シリコン等を主成分として、高濃度の不純物を含有する半導体層によって形成されており、結晶構造としてはポリシリコン、非晶質シリコン等を用いることが好ましい。n+半導体層16に添加する不純物としては、ポリシリコンによって形成する場合にはP(燐)、As(砒素)等のV族元素を用いることが好ましい。もちろん、n+半導体層16として、上記微結晶の成膜方法を用いて微結晶薄膜を成膜しても良い。
【0064】
そして、図5(a)に示すように、n+半導体層16上に後の工程でソース/ドレイン電極を形成する導電層17を積層する。導電層17はスパッタリング法等によって積層されるのが一般的だが、CVD法等によって積層することとしても良い。
【0065】
その後、図5(b)に示すように、フォトリソグラフィ法等を用いてエッチングを行い、チャネル層18、ソース/ドレイン領域19、20およびソース/ドレイン電極21、22を形成する。具体的には、導電層17上にスピンコート法等によってフォトレジストを塗布した後に、フォトリソグラフィ法によって所定の開口部を有するレジストパターンを形成する。かかるレジストパターンをマスクとしてエッチングを行うことで、チャネル層18、ソース/ドレイン領域19、20およびソース/ドレイン電極21、22が形成される。
【0066】
その後、図5(c)に示すように、絶縁層23、平坦化層24およびITO層25を成膜する。絶縁層23はソース/ドレイン電極21、22等を保護するためのものであり、平坦化層24は、ソース/ドレイン電極22とITO層25との間に生じる寄生容量を低減するためのものである。ITO層25は、ソース/ドレイン電極21を他の回路素子と接続するためのものである。以上の工程を経ることによって、薄膜トランジスタが形成される。
【0067】
上記した薄膜トランジスタでは、チャネル層18は1nm程度の膜厚を有する微結晶薄膜18aと、非晶質薄膜18bとを順次積層した構造を有する。微結晶薄膜18aのみによってチャネル層18を構成することとしても良いが、この場合、十分な膜厚のチャネル層18を成膜するのに長時間要することとなるため好ましくない。一方、ゲート電極12に対して所定の電位を与えた際に誘起されるチャネルは、実際にはMIS界面から1nm程度の範囲にのみ存在することが明らかになっている。従って、チャネル層18を微結晶薄膜のみによって形成しなくとも、MIS界面から1nm程度の範囲において微結晶薄膜18aを成膜することによって、移動度の高い薄膜トランジスタを実現することが可能である。
【0068】
本願発明者等は、図4(a)〜図4(d)、図5(a)〜(c)に示した工程によって実際に薄膜トランジスタを製造し、移動度等の電気的特性について調べている。図6は、実際に製造した薄膜トランジスタのオン電流(チャネル層を流れる電流)およびオン電流の平方根のゲート電圧依存性を示すグラフである。また、図7は、オン電流の平方根の値に基づいて得られた移動度を従来の薄膜トランジスタと比較したグラフである。
【0069】
図6において、曲線l1は、上記微結晶薄膜の成膜方法を用いて製造した薄膜トランジスタのオン電流の測定値を示し、曲線l2は、曲線l1の値を1/2乗したものについて示す。
【0070】
かかる曲線l2をゲート電圧Vgを変数として微分することによって移動度を得ることが可能である。図7は、図6の曲線l2と同一の曲線l3と、曲線l3の値から導出した移動度のゲート電圧依存性を示す曲線l4とを有する。また、曲線l5、l6は比較のために示すグラフであって、曲線l5は従来の非晶質シリコン薄膜のみによってチャネル層を形成した薄膜トランジスタのオン電流の平方根の値を示し、曲線l6は、曲線l5から導出された移動度を示す。
【0071】
図7に示す曲線l4と曲線l6とを比較すれば明らかなように、従来の移動度が0.7cm2/Vs以下なのに対して、上記微結晶薄膜の成膜方法を用いて作製した薄膜トランジスタの移動度は0.95cm2/Vs程度と非常に高い値を有する。従って、上記微結晶薄膜の成膜方法を用いることで移動度の高い微結晶薄膜を成膜可能であることが実際の測定結果からも裏付けられるといえる。
【0072】
(実施の形態1)
次に、実施の形態1にかかる画像表示装置について説明する。実施の形態1にかかる画像表示装置は、上記微結晶薄膜の成膜方法を用いて形成した薄膜トランジスタを使用して構成されている。図8は、実施の形態1にかかる画像表示装置を構成するアレイ基板の主要構成を示す概略図であって、図9は、アレイ基板の回路構成を示す図である。なお、実施の形態1にかかる画像表示装置について、例えば液晶表示装置とした場合にはアレイ基板に対向して配置される対向基板、アレイ基板および対向基板の間に封入される液晶層および液晶層に対して白色光を入力するバックライト等が必要となるが、本発明に特徴的な部分ではないため、その説明を省略する。以下、図8および図9を適宜参照して実施の形態1にかかる画像表示装置について説明する。
【0073】
図8に示すように、アレイ基板は信号線30を介して表示領域31内に配置される画素電極に表示信号を供給、すなわち電圧を印加するための信号線駆動回路32と、走査線33を介して画素電極に対応して配置される薄膜トランジスタのオン・オフを制御する操作信号を供給する走査線駆動回路34とを備える。
【0074】
表示領域31には、図9に示すように、信号線30aを挟んで隣接する画素電極35a、35bについて、第1の薄膜トランジスタ36a、第2の薄膜トランジスタ36bおよび第3の薄膜トランジスタ36cが配置されている。具体的には、第1の薄膜トランジスタ36aは、一方のソース/ドレイン電極が信号線30aに接続され、他方のソース/ドレイン電極が画素電極35aに接続する。また、第1の薄膜トランジスタ36aのゲート電極は第2の薄膜トランジスタ36bの一方のソース/ドレイン電極に接続している。
【0075】
また、第2の薄膜トランジスタ36bは、一方のソース/ドレイン電極が第1の薄膜トランジスタ36aのゲート電極に接続すると共に、他方のソース/ドレイン電極が走査線33cに接続されている。従って、第1の薄膜トランジスタ36aのゲート電極は、第2の薄膜トランジスタ36bを介して走査線33cに接続されることとなる。また、第2の薄膜トランジスタ36bのゲート電極は走査線33bに接続されている。
【0076】
さらに、第3の薄膜トランジスタ36cは、一方のソース/ドレイン電極が信号線30aに接続され、他方のソース/ドレイン電極が画素電極35bに接続されている。また、第3の薄膜トランジスタ36cのゲート電極は、走査線33bに接続されている。
【0077】
かかる構造を有することにより、例えば第1の薄膜トランジスタ36aをオンするためには、走査線33bおよび走査線33cの双方が選択電位になっている必要がある。そして、双方が選択電位になった時点で信号線30aの電位が画素電極35aに対して供給される構造を有する。同様に、第3の薄膜トランジスタ36cをオンするためには、走査線33bが選択電位になっている必要があり、走査線33bが選択電位になる時点において画素電極35bに対して信号線30aの電位が供給される構造を有する。なお、かかる配線構造は、表示領域31内に存在する他の画素電極および対応して配置される薄膜トランジスタにおいても同様に成立する。
【0078】
次に、本実施の形態1にかかる画像表示装置において、図8および図9に示す構造のアレイ基板の動作について説明する。図10は、走査線から供給される走査信号および信号線から供給される表示信号の時間変化を示すタイミングチャートであり、以下では図9および図10を適宜参照して説明を行う。
【0079】
図10では、上から順に信号線30aによって供給される表示信号のタイミングチャートの一例(1)、表示信号のタイミングチャートの他の例(2)、走査線33a、走査線33b、走査線33cおよび走査線33dのタイミングチャートを示す。なお、ここで表示信号のタイミングチャートについては、極性および階調の変化を含んでいるものとする。表示信号のタイミングチャートを極性の変化として捉えれば、信号線30a(1)に従って信号線30aの電位が変化する場合には画素電極35aの極性と画素電極35bの極性は異なり、画素電極35aの極性と画素電極35cの極性は同一となる。一方、信号線30a(2)に従って電位が変化する場合には、画素電極35aの極性と画素電極35bの極性は同一となり、画素電極35aの極性と画素電極35cの極性は異なる。
【0080】
また、図10において、走査線33a〜33dのタイミングチャートは、選択、非選択を示している。具体的には、立ち上がっている部分は当該走査線が選択されていて、そうでない部分は当該走査線が非選択の状態を示している。
【0081】
走査線33bと走査線33cの両方が選択されてから走査線33cが非選択電位になるまでの期間t1には、第1の薄膜トランジスタ36a〜第3の薄膜トランジスタ36cがオンされる。この期間t1において、信号線30aから画素電極35aに与えるべき電位V1aが供給される。これにより画素電極35aの電位が決定される。
【0082】
そして、走査線33cが非選択電位になった後に、信号線30aから供給される電位がV1bに変化し、かかる電位が画素電極35bに与えられることで画素電極35bの電位が決定される。図10に示すように、走査線33cが非選択電位になった後の期間t2において、走査線33bを選択電位に維持することで、第1の薄膜トランジスタ36aがオフされ、かつ薄膜トランジスタM3がオンされた状態となる。そのため、画素電極35aに対する電位の供給は停止する一方、画素電極35bに対しては引き続き信号線30aから電位が供給され、画素電極35bの電位が決定される。
【0083】
そして、走査線33bが非選択電位になった後の期間t3に、信号線30aから供給される電位がV1cに変化し、走査線33cが再び選択電位になると共に、走査線33dが選択電位になる。これにより、画素電極35c、画素電極35d、および画素電極35fに対して信号線30aから電位V1cが供給され、画素電極35cの電位が決定される。以下、順次選択電位となる走査線の切り替えおよびこれに対応して信号線30aの電位を切り替えることによって、信号線30aを挟んで隣接する画素電極の電位が決定されていく。この後、信号線駆動回路32の制御によって表示信号の供給元を信号線30aから信号線30bに切り替え、上記と同様に走査線の電位を順次切り替えることで信号線30bを挟んで隣接する画素電極の電位を決定していく。以上の動作を繰り返すことによって表示領域31内に存在する画素電極すべての電位を決定し、TFTアレイ基板上に配設されている、例えば液晶層の電気光学効果によって画像を表示する。
【0084】
本実施の形態1にかかる画像表示装置は、単一の画素電極に対して複数の薄膜トランジスタを配置し、単一の信号線を介して複数の列に属する画素電極に対して電位を供給する構造を有する。かかる構造を有することによって、信号線の本数を従来よりも低減することが可能となり、上記の例では従来の1/2にすることが可能となる。信号線の本数の低減に対応して信号線駆動回路を構成する駆動ICを低減することが可能となり、製造コストが低減される。また、信号線の本数を低減することによってアレイ基板と信号線駆動回路とを接続するための電極パッドの個数を減少できると共に、個々の電極パッドの幅を拡大することが可能となり、電極パッドにおける断線の危険性を低減することができる。
【0085】
一方で、本実施の形態1にかかる画像表示装置は、個々の画素電極の電位を決定するために複数の薄膜トランジスタが動作する構成を有することから、個々の画素電極の電位決定に要する時間が薄膜トランジスタの移動度に大きく影響されることとなる。例えば、画素電極35aを例にすると、画素電極35aに電位を供給するためには第1の薄膜トランジスタ36aおよび第2の薄膜トランジスタ36bを駆動する必要がある。すなわち、第2の薄膜トランジスタ36bをオンするためには、第1の薄膜トランジスタ36aをオンした上で、第2の薄膜トランジスタ36bのゲート電極に対してオン電圧に対応した電荷を第1の薄膜トランジスタ36aのチャネル層を介して供給する必要がある。このため、第2の薄膜トランジスタ36bのオン電圧に対応した所定の電荷を供給するために必要な時間は第1の薄膜トランジスタ36aのチャネル層における移動度に依存する。また、画素電極35aの電位は、上記したように第2の薄膜トランジスタ36bのチャネル層を介して供給される電荷によって与えられる。このため、第2の薄膜トランジスタ36bがオンしてから画素電極35aを所定電位に設定するために必要な時間は、第2の薄膜トランジスタ36bのチャネル層における移動度に依存する。従って、走査線を選択してから実際に画素電極の電位を決定するまでには複数の薄膜トランジスタのチャネル層における移動度に起因した時間遅れが生じる。
【0086】
薄膜トランジスタのチャネル層に起因した時間遅れが大きい場合、表示領域に配置する画素数が制限され、高精細もしくは大画面の画像表示装置の実現が困難となる。例えば動画を表示する場合には、すべての画素電極の電位の決定に許容される時間は画素数に関わらず一定であり、画素数が増加するに従って個々の画素電極の電位を決定するのに許容される時間は短くなるためである。すなわち、所定の時間遅れが生じる場合には個々の画素電極の電位を決定するのに許容される時間を大きくする必要があり、その結果として画素数の増加を抑制する必要が生じる。
【0087】
本実施の形態1にかかる画像表示装置では、画素電極に電位を供給する第1の薄膜トランジスタ36aおよび第2の薄膜トランジスタ36bの少なくとも一方、好ましくは双方について、実施の形態1にかかる微結晶の成膜方法を用いてチャネル層の少なくとも一部を形成することとしている。このため、本実施の形態2にかかる画像表示装置では、個々の画素電極の電位を決定する際に生じる時間遅れを低減することが可能となり、高精細もしくは大画面の画像表示装置を実現することが可能である。なお、薄膜トランジスタ36cについても同様で、実施の形態1にかかる微結晶の成膜方法を用いてチャネル層の少なくとも一部を形成することが好ましい。
【0088】
なお、実施の形態1においては、薄膜トランジスタのチャネル層における移動度が特性に大きな影響を与える例として、図9に示すように個々の画素電極に対して複数の薄膜トランジスタを配置する構造の画像表示装置について説明している。しかし、上記微結晶薄膜の成膜方法を利用した薄膜トランジスタの用途が上記構造の画像表示装置に限定されるのではないことはもちろんである。例えば、通常のアクティブマトリックス方式を利用した液晶表示装置や、アレイ基板上に画素電極および共通電極を配置した構造を有する面内応答型(In-Plane Switching)の液晶表示装置においても、程度の差こそあれスイッチング素子として機能する薄膜トランジスタのチャネル層の移動度に起因した時間遅れが問題となる。また、個々の画素電極に対して複数の薄膜トランジスタを配置する構造として、特開平6−148680号公報、特開平11−2837号公報、特開平5−26504号公報、特開平5−188395号公報、特開平5−303114号公報等に記載されたものが挙げられ、これらに対して実施の形態1に示した薄膜トランジスタを適用することが可能である。すなわち、図9に示す構造以外であっても、薄膜トランジスタをスイッチング素子等として使用する画像表示装置であれば、上記微結晶薄膜の成膜方法を用いて形成した薄膜トランジスタを利用することが好ましい。
【0089】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる画像表示装置について説明する。実施の形態2にかかる画像表示装置は、電流駆動の発光素子を備え、発光素子に流す電流を薄膜トランジスタによって制御する構造を有する。図11は、実施の形態2にかかる画像表示装置における表示領域内の任意の画素に対応した配線構造について示す回路図である。以下、図11を適宜参照して本実施の形態2にかかる画像表示装置について説明を行う。なお、画素がマトリックス状に配置され、画素に対応して複数の信号線および走査線等が配置され、かかる信号線および走査線は信号線駆動回路および走査線駆動回路にそれぞれ接続されている等、全体構造に関しては実施の形態1にかかる画像表示装置のアレイ基板と同様であるため、以下では説明を省略する。
【0090】
本実施の形態2にかかる画像表示装置は、図11に示すように、電流駆動の発光素子として機能する有機EL素子41と、有機EL素子41に注入される電流値を制御するドライバ素子として機能する薄膜トランジスタ42とを備える。また、本実施の形態3にかかる画像表示装置は、薄膜トランジスタ42のオン・オフを制御し、スイッチング素子として機能する薄膜トランジスタ43を備える。ここで、薄膜トランジスタ42、43の少なくとも一方は実施の形態1にかかる微結晶薄膜の成膜方法を用いて形成されたチャネル層を有する。
【0091】
本実施の形態2にかかる画像表示装置は、具体的には、薄膜トランジスタ42の一方のソース/ドレイン電極は有機EL素子41に接続され、ゲート電極は、薄膜トランジスタ43の一方のソース/ドレイン電極と接続されている。また、薄膜トランジスタ42の他方のソース/ドレイン電極は蓄積容量44に接続され、蓄積容量44は、薄膜トランジスタ43から供給された電荷を蓄積する機能を有する。さらに、薄膜トランジスタ43の一方のソース/ドレイン電極は薄膜トランジスタ42のゲート電極に、他方のソース/ドレイン電極は信号線45に、ゲート電極は走査線46に接続された構造を有する。また、本実施の形態3にかかる画像表示装置は、有機EL素子41に電流を供給するための電源線47を配置した構造を有し、信号線45、走査線46および電源線47はそれぞれ信号線駆動回路48、走査線駆動回路49、電源線駆動回路50に接続されている。
【0092】
次に、本実施の形態2にかかる画像表示装置の動作について図11を参照しつつ説明する。本実施の形態2にかかる画像表示装置は、外部から入力された画像データに従って、選択する画素に対応した信号線45および走査線46に対して所定の電位を与える。走査線46に与えられた電位に基づいて薄膜トランジスタ43がオンされ、信号線45に与えられた電位に基づいて蓄積容量44に対して電荷が蓄積され、蓄積された電荷量に基づいて薄膜トランジスタ42のゲート電位が決定される。薄膜トランジスタ42は電源線47と電気的に接続されており、薄膜トランジスタ42のチャネル層に、移動度に対応した電流が流れる。そして、有機EL素子41は薄膜トランジスタ42と直列に接続されて配置されているため、薄膜トランジスタ42の移動度に対応した電流が流れる。
【0093】
本実施の形態2では、実施の形態2と同様に薄膜トランジスタ42、43の少なくとも一方について、上記微結晶の成膜方法を用いてチャネル層を形成することとしている。例えば、薄膜トランジスタ43のチャネル層を上記微結晶の成膜方法を用いて形成した場合、実施の形態1の場合と同様に高速動作可能なスイッチング素子を備えることとなるため、高精細もしくは大画面の画像表示装置を実現することができる。また、薄膜トランジスタ42のチャネル層を上記微結晶の成膜方法を用いて形成した場合、有機EL素子41の輝度を向上させることが可能となる。上記したように、有機EL素子41は薄膜トランジスタ42に接続された状態で配置されるため、有機EL素子41に流入する電流値は薄膜トランジスタ42のチャネル層の移動度に依存することとなるためである。従って、薄膜トランジスタ42のチャネル層を上記微結晶の成膜方法を用いて形成した場合、有機EL素子41に対して大電流を流すことが可能となり、電流駆動の有機EL素子41の輝度を向上させることが可能となる。
【0094】
なお、本実施の形態2にかかる画像表示装置は、電流駆動の発光素子を備えたあらゆる構造の画像表示装置に適用可能である。従って、発光素子についても有機EL素子に限定する必要はなく、無機EL素子等を発光素子として用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】第1原料気体と第2原料気体の流量の時間変化を示すタイミングチャートである。
【図2】第1原料気体と第2原料気体の流量比と電界強度密度との関係を示すグラフである。
【図3】成長室内部の状態を示す模式図であって、(a)は原料供給工程、(b)は原料堆積工程を示す。
【図4】微結晶薄膜の成膜方法を用いて薄膜トランジスタを製造する方法について説明するための工程図であり、(a)〜(d)は各段階を示す。
【図5】微結晶薄膜の成膜方法を用いて薄膜トランジスタを製造する方法について説明するための工程図であり、(a)〜(c)は各段階を示す。
【図6】参考例にかかる微結晶薄膜の成膜方法を用いて製造した薄膜トランジスタの電気的特性について示すグラフである。
【図7】参考例にかかる微結晶薄膜の成膜方法を用いて製造した薄膜トランジスタにおける移動度と、従来の薄膜トランジスタにおける移動度とを比較するためのグラフである。
【図8】実施の形態1にかかる画像表示装置を構成するアレイ基板の構造を示す模式図である。
【図9】アレイ基板上に設けられた回路構造について示す等価回路図である。
【図10】実施の形態1にかかる画像表示装置の駆動持における信号線等の電位変動を示すタイミングチャートである。
【図11】実施の形態2にかかる画像表示装置の一部の回路構造について示す等価回路図である。
【符号の説明】
【0096】
1 成長室
2 基板
3 SiH4供給源
4、6 バルブ
5 H2供給源
11 基板
12 ゲート電極
13 ゲート絶縁層
14 半導体層
14a 微結晶薄膜
14b 非晶質薄膜
15 エッチングストップ層
16 n+半導体層
17 導電層
18 チャネル層
18a 微結晶薄膜
18b 非晶質薄膜
19、20 ソース/ドレイン領域
21、22 ソース/ドレイン電極
23 絶縁層
24 平坦化層
25 ITO層
30、30a、30b 信号線
31 表示領域
32 信号線駆動回路
33、33a〜33d 走査線
34 走査線駆動回路
35a〜35f 画素電極
36a 第1の薄膜トランジスタ
36b 第2の薄膜トランジスタ
36c 第3の薄膜トランジスタ
41 有機EL素子
42、43 薄膜トランジスタ
44 蓄積容量
45 信号線
46 走査線
47 電源線
48 信号線駆動回路
49 走査線駆動回路
50 電源線駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの薄膜トランジスタを備えた画像表示装置であって、
前記少なくとも1つの薄膜トランジスタはそれぞれ、
基板と、前記基板上のゲート電極と、前記基板および前記ゲート電極上に設けられた絶縁層と、前記絶縁層上に形成されたチャネル層と、前記チャネル層上に形成されたソース/ドレインとを備え、
前記チャネル層は少なくともその一部の領域にわたって実質的に非晶質を含まない微結晶薄膜で構成され、
前記チャネル層を構成する微結晶薄膜は、気相中で複数結合した場合にポリマーを形成する元素を含む第1原料気体を活性化して、成膜対象上に前記元素を主成分とする微結晶構造を成膜する微結晶薄膜の成膜方法であって、
前記第1原料気体を供給する原料供給工程と、
前記第1原料気体の供給を停止し、気相中の結合を抑制しつつ活性化された前記第1原料気体を成膜対象上に堆積させる原料堆積工程と
を交互に繰り返すこと、
前記原料供給工程および前記原料堆積工程において、気相中で互いに結合した場合にポリマーを形成しない第2原料気体を供給すること、および
前記原料供給工程において、前記第1原料気体と前記第2原料気体との流量比rは、前記第1原料気体と前記第2原料気体に照射される電界強度密度P(mW/cm2)を用いた以下の不等式
P≧60mW/cm2のとき、r≧−(7/12)×P+72.5
P<60mW/cm2のとき、r≧−2×P+185
を満たす微結晶薄膜の成膜方法により成膜されたものであること
を特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記第2原料気体は、前記原料供給工程および前記原料堆積工程を通じて一定流量供給されることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記原料供給工程において、前記第1原料気体と前記第2原料気体に照射される電界強度密度P(mW/cm2)は、P=約50〜約135mW/cm2であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記原料供給工程において、前記第1原料気体と前記第2原料気体に照射される電界強度密度P(mW/cm2)は、P≧0.1W/cm2であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記原料供給工程に要する時間は2秒以下であって、前記原料堆積工程に要する時間は、前記原料供給工程よりも長いことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記第1原料気体はSiH4を含み、前記第2原料気体はH2を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記第1原料気体に含まれるSiH4は、活性化の際にSiH2に分解されることを特徴とする請求項6に記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記画像表示装置は、
表示画素に対応して配置された画素電極と、
画素電極に対応して配置され、すくなくとも1つの薄膜トランジスタを含むスイッチング素子と、
前記スイッチング素子を介して前記画素電極に表示信号を供給する信号線と、
前記スイッチング素子の駆動状態を制御する走査信号を供給する走査線と、
を有するアレイ基板を備え、
前記少なくとも1つの薄膜トランジスタはそれぞれ
基板と、前記基板上のゲート電極と、前記基板および前記ゲート電極上に設けられた絶縁層と、前記絶縁層上に形成されたチャネル層と、前記チャネル層上に形成されたソース/ドレインとを備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項9】
表示信号を供給するための信号線と、
走査信号を供給するための走査線と、
所定の信号線から表示信号が供給される第1画素電極および第2画素電極と、
前記所定の信号線と前記第1画素電極との間に配置され、かつ前記表示信号の供給を制御するゲート電極を備えた第1薄膜トランジスタを有する第1スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子の前記ゲート電極と所定の走査線との間に配置される第2薄膜トランジスタを有する第2スイッチング素子と、
前記所定の信号線に接続され、前記第2画素電極への前記表示信号の供給を制御する第3薄膜トランジスタを有する第3スイッチング素子とを有するアレイ基板を備え、
前記第1薄膜トランジスタと前記第2薄膜トランジスタの少なくとも一方が請求項1〜7のいずれか一項に記載の薄膜トランジスタである
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項10】
表示画素に対応して配置され、注入電流によって発光状態が制御される発光素子と、
前記発光素子に流入する電流値を制御する第1薄膜トランジスタと、
前記第1薄膜トランジスタのゲート電位を制御する第2薄膜トランジスタと、
前記第1薄膜トランジスタのゲート電位を保持するコンデンサと、
前記表示画素に表示信号を供給する信号線と、
前記第2薄膜トランジスタの駆動状態を制御する走査信号を供給する走査線と、
前記第1薄膜トランジスタを介して前記発光素子に対して電流を供給する電源線と、
を備え、
前記第1薄膜トランジスタと前記第2薄膜トランジスタの少なくとも一方が請求項1〜7のいずれか一項に記載の薄膜トランジスタであることを特徴とする画像表示装置。
【請求項11】
前記発光素子は、発光層が有機材料によって形成された有機EL素子であって、前記発光素子は前記第1薄膜トランジスタのソース/ドレイン電極と接続されていることを特徴とする請求項10に記載の画像表示装置。
【請求項12】
前記チャネル層は前記実質的に非晶質を含まない微結晶薄膜が少なくとも前記絶縁層との界面から層方向に1nmの膜厚を有してなることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項13】
表示画素に対応して配置された画素電極と、
画素電極に対応して配置され、すくなくとも1つの薄膜トランジスタを含むスイッチング素子と、
前記スイッチング素子を介して前記画素電極に表示信号を供給する信号線と、
前記スイッチング素子の駆動状態を制御する走査信号を供給する走査線と、
を有するアレイ基板を備えた画像表示装置であって、
前記少なくとも1つの薄膜トランジスタの1つまたはそれ以上の薄膜トランジスタは
基板と、前記基板上のゲート電極と、前記基板および前記ゲート電極上に設けられた絶縁層と、前記絶縁層上に形成されたチャネル層と、前記チャネル層上に形成されたソース/ドレインとを備え、
前記チャネル層は前記絶縁層との界面から層方向に、実質的に非晶質を含まない、0.7cm2/Vsより高いキャリア移動度を有する微結晶薄膜で構成される
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項14】
前記チャネル層を構成する前記微結晶薄膜は、約0.7cm2/Vs〜約0.95のキャリア移動度を有することを特徴とする請求項13に記載の画像表示装置。
【請求項15】
前記チャネル層は前記実質的に非晶質を含まない微結晶薄膜を少なくとも前記絶縁層との界面から層方向に1nm離隔する領域まで形成してなることを特徴とする請求項13〜14のいずれか一項に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−49171(P2007−49171A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234578(P2006−234578)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【分割の表示】特願2002−311558(P2002−311558)の分割
【原出願日】平成14年10月25日(2002.10.25)
【出願人】(599142729)奇美電子股▲ふん▼有限公司 (19)
【Fターム(参考)】