説明

情報提供システムおよび情報提供方法

【課題】本発明は、ユーザに省エネルギー運転を行わせる際に、ユーザの運転負荷を低減することが可能な情報提供システムを提供する。
【解決手段】車両の位置情報および走行情報を取得する車両情報取得手段と、車両の位置情報および走行情報に基づいて、車両の走行経路を予測する予測手段と、予測手段により予測された走行経路における道路情報を取得する道路情報取得手段と、道路情報を所定のパラメータで表し、パラメータの変化量が所定範囲内にある走行経路内の区間を、演算区間として設定する設定手段と、設定手段により設定された演算区間ごとに、車両の駆動力を制御するための制御情報を生成する生成手段と、を有することを特徴とする情報提供システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報提供システムおよび情報提供方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ユーザに省エネルギー運転を行わせるために、制限速度、理想平均速度、勾配などの省エネルギー運転情報を、ユーザに提示する情報提供システムが知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−292302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、省エネルギー運転情報が道路リンクごとに設定されており、車両の現在位置に対応する道路リンクの省エネルギー運転情報が、ユーザに提示される。そのため、車両の走行に伴って、車両の現在位置に対応する道路リンクが変わるたび、ユーザに提示される省エネルギー運転情報が更新されてしまい、このように、ユーザに提示される省エネルギー運転情報が頻繁に更新されることにより、ユーザの運転負荷が大きくなってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、ユーザに省エネルギー運転を行わせる際に、ユーザの運転負荷を低減することが可能な情報提供システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、走行経路における道路情報を所定のパラメータで表し、該パラメータの変化量が所定範囲内にある走行経路内の区間ごとに、車両の駆動力を制御するための制御情報を生成することにより上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両の駆動力を制御するための制御情報の生成を、道路情報を表す所定のパラメータの変化量が所定範囲内にある区間ごとに行うことで、車両の走行に伴ってユーザに提示される制御情報の更新頻度を低くすることができるため、ユーザの運転負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係る情報提供システムの構成図である。
【図2】演算区間の設定方法を説明するための図である。
【図3】車両の走行方向を予測する方法を説明するための図である。
【図4】車両の走行方向を予測する方法を説明するための図である。
【図5】車速メーターに表示された提示情報の一例を示す図である。
【図6】ディスプレイの画面上に提示された提示情報の一例を示す図である。
【図7】本実施形態に係る情報提供処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る情報提供システムを示すブロック図である。以下においては、電気自動車に搭載された情報提供システムを例示して説明するが、本発明の情報提供システムは、電気自動車に限定されず、例えば、燃料電池自動車、ハイブリッド自動車、エンジン車両などに搭載することができる。
【0011】
本実施形態に係る情報提供システムは、エネルギー消費量が最も少なくなる車両の走行速度を目標速度として算出し、ユーザに目標速度で運転を行わせるための情報を提示情報として生成し、ユーザに提示情報を提示するものである。図1に示すように、情報提供システムは、処理装置100と、通信装置110と、車両位置検出装置120と、車両コントローラ130と、車両データベース140と、地図データベース150と、入力装置160と、車速メーター170と、ディスプレイ180とを備える。これら各構成は、CAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続される。
【0012】
通信装置110は、車両外部に設置された図示しない交通情報サーバと通信し、該交通情報サーバから、現在の渋滞情報を現状交通情報として取得する。通信装置110により受信された現状交通情報は、処理装置100に送信される。
【0013】
車両位置検出装置120は、複数の衛星から送信される電波を検出してGPS(Global Positioning System)情報を算出する。GPS情報には、自車両の座標位置、すなわち、自車両の位置情報に加え、自車両の進行方向の情報が含まれる。車両位置検出装置120で取得された自車両の位置情報および進行方向情報は、処理装置100に送信される。
【0014】
車両コントローラ130は、各種車載装置と接続し、これら車載装置から走行情報を取得する。車両コントローラ130により取得される走行情報としては、例えば、車速情報、加速度情報、補器類の作動情報(例えば、エアコンの作動情報、ブレーキによる回生電力情報など)、乗員の重量情報などが挙げられる。また、車両がシリーズ型ハイブリッド車両である場合、車両コントローラ130は、上述した補器類の作動情報として、エンジンの作動情報や、オルタネーターによる回生電力情報も取得する。そして、車両コントローラ130により取得された走行情報は、処理装置100に送信される。
【0015】
車両データベース140には、車両に固有の情報である車両情報が予め記憶されている。ここで、車両データベース140に記憶される車両情報としては、動力のエネルギー変換効率、機械的損失、車体重量、抵抗係数(転がり摩擦係数、空気抵抗など)、加速時の回転部分相当質量などの情報が挙げられる。車両データベース140に記憶されているこれらの情報は、処理装置100により取得される。
【0016】
地図データベース150には、地図データに加えて、各道路リンクごとの道路情報が記憶されている。地図データ150に記憶されている道路情報としては、例えば、過去の渋滞情報を統計処理した統計交通情報、制限速度情報、勾配情報、標高情報、およびカーブ曲率情報が挙げられる。地図データベース150に格納されているこれらの情報は、処理装置100により取得される。
【0017】
入力装置160は、例えば、ユーザの手操作による入力が可能なディスプレイ画面上に配置されるタッチパネルまたはジョイスティックや、ユーザの音声による入力が可能なマイクなどの装置である。入力装置160により入力された情報は、処理装置100に送信される。
【0018】
処理装置100は、エネルギー消費量が最も小さくなる目標速度を算出し、算出された目標速度に基づいて、ユーザに提示するための提示情報を生成するプログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)とから構成される。なお、動作回路としては、CPU(Central Processing Unit)に代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。
【0019】
処理装置100は、ROMに格納されたプログラムをCPUにより実行することにより、車両情報を含む各種情報を取得する車両情報取得機能と、車両が走行する走行経路を予測する走行経路予測機能と、走行経路における道路情報を含む各種情報を取得する道路情報取得機能と、目標速度を算出するための演算区間を設定する演算区間設定機能と、目標速度を算出する目標速度算出機能と、演算区間を車両が走行する方向を予測する走行方向予測機能と、ユーザに提示するための提示情報を生成する提示情報生成機能とを実現する。以下に、処理装置100が備える各機能について説明する。
【0020】
処理装置100は、車両情報取得機能により、車両位置検出装置120から車両の現在位置情報および進行方向情報を取得する。さらに、処理装置100は、車両情報取得機能により、車両コントローラ130から、車速情報、加速度情報、補器類の作動情報、乗員の重量情報などの走行情報を取得する。加えて、処理装置100は、車両情報取得機能により、車両データベース140に記憶されている車両固有の情報である車両情報、すなわち、動力のエネルギー変換効率、機械的損失、車体重量、抵抗係数(転がり摩擦係数、空気抵抗など)、加速時の回転部分相当質量などの情報を取得する。
【0021】
そして、処理装置100は、走行経路予測機能により、車両の位置情報と進行方向情報とに基づいて、自車両が走行する経路を走行経路として予測する。なお、本実施形態において、処理装置100は、目的地が設定されておらず、車両の走行経路が決定されていない場合であっても、車両の位置情報と進行方向情報とに基づいて、車両が走行可能な経路を走行経路として予測する。なお、目的地が設定されており、車両の走行経路が決定されている場合には、決定された経路を、車両の走行経路として予測する。
【0022】
また、処理装置100は、道路情報取得機能により、通信装置110を介して、外部の交通情報サーバから送信された現在の渋滞情報を現状交通情報として取得する。さらに、処理装置100は、交通情報取得機能により、地図データベース150から、予測された走行経路における道路情報、すなわち、制限速度情報、統計交通情報、勾配情報、標高情報、およびカーブ曲率情報を取得する。
【0023】
次いで、処理装置100は、演算区間設定機能により、現状交通情報および道路情報に基づいて、予測された走行経路内の所定の区間を、演算区間として設定する。ここで、演算区間とは目標速度を算出する単位となる区間であり、この演算区間ごとに目標速度が算出されることとなる。演算区間の設定方法は、特に限定されず、本実施形態では、第1に、標高に基づく設定方法、第2に、制限速度に基づく設定方法、第3に、環境速度に基づく設定方法、第4に、渋滞度合に基づく設定方法、第5に、勾配に基づく設定方法、第6に、カーブ曲率に基づく設定方法のうち少なくとも1つの方法により設定される。以下において、各設定方法の詳細について説明する。
【0024】
第1に、標高に基づく設定方法では、処理装置100は、演算区間を設定する際に、標高情報を用いる。ここで、図2は、標高に基づいた演算区間の設定方法を説明するための図である。図2においては、走行経路内のノードN1〜N8を例示しており、縦軸は走行経路内のノードN1〜N8の標高を、横軸はノードN1〜N8までの走行距離をそれぞれ表している。また、図2に示す例では、ノードN1〜N8のうち、ノードN3およびノードN6において、標高が極大となっている一方、ノードN4において、標高が極小となっている。この場合、処理装置100は、標高が極大となっているノードN3およびノードN6と、標高が極小となっているノードN4とを、演算区間を設定するための基準点とし、走行経路を、ノードN1からノードN3までの第1区間、ノードN3からノードN4までの第2区間、ノードN4からノードN6までの第3区間、および、ノードN6からノードN8までの第4区間に設定することで、演算区間をそれぞれ設定することができる。
【0025】
第2に、制限速度に基づく設定方法では、処理装置100は、演算区間を設定する際に、制限速度情報を用いる。例えば、処理装置100は、制限速度の変化量が20Km/hの範囲内にある走行経路内の区間を、演算区間として設定することができる。この場合、処理装置100は、例えば、走行経路内の制限速度が40Km/hから60Km/hの連続する区間を、演算区間として設定することができる。
【0026】
第3に、環境速度に基づく設定方法では、処理装置100は、演算区間を設定する際に、現状交通情報および/または統計交通情報を用いて、渋滞などの要因による車両の走行速度を環境速度として算出する。そして、処理装置100は、例えば、算出した環境速度の変化量が20Km/hの範囲内にある走行経路内の連続する区間を、演算区間として設定することができる。
【0027】
第4に、渋滞度合に基づく設定方法では、処理装置100は、演算区間を設定する際に、現状交通情報および/または統計交通情報を用いて、走行経路を『順調』、『混雑』、『渋滞』の3段階の渋滞度合で分ける。そして、処理装置100は、渋滞度合が同じである走行経路内の連続する区間を、演算区間として設定することができる。
【0028】
第5に、勾配に基づく設定方法では、処理装置100は、演算区間を設定する際に、勾配情報を用いる。例えば、処理装置100は、勾配の変化量が3%の範囲内にある走行経路内の連続する区間を、演算区間として設定することができる。
【0029】
第6に、カーブ曲率に基づく設定方法では、処理装置100は、演算区間を設定する際に、カーブ曲率情報を用いる。例えば、処理装置100は、カーブ曲率の変化量が20mの範囲内にある走行経路内の区間を、演算区間として設定することができる。
【0030】
以上のように、処理装置100は、演算区間設定機能により、標高、制限速度、環境速度、渋滞度合、勾配、および、カーブ曲率に基づいて、走行経路内の所定の区間を演算区間として設定することができる。なお、処理装置100により演算区間を設定する際は、上述したいずれか1つの設定方法のみにより、演算区間を設定する構成に限定されず、上述した2つ以上の設定方法を組み合わせて、演算区間を設定する構成としてもよい。例えば、処理装置100は、『順調』、『混雑』、『渋滞』の渋滞度合により演算区間を設定した後、渋滞度合が『順調』である区間内において、さらに、標高に基づいた演算区間の設定を行ってもよい。
【0031】
次いで、処理装置100は、目標速度算出機能により、設定された演算区間ごとに、目標速度の算出が行われる。ここで、目標速度とは、演算区間を走行するのに要するエネルギー消費量が最も小さくなる車両の走行速度をいう。以下に、目標速度算出機能による目標速度の算出方法の一例を説明する。
【0032】
例えば、処理装置100は、目標速度算出機能により、下記式(1)に示すエネルギー消費量の推定モデル(例えば、土木学会論文集NO.695 「都市部道路交通における自動車の二酸化炭素排出量推定モデル:大口敬ら」の式17参照)を用いて、車両のエネルギー消費量Qが最も小さくなる車両の走行速度vを、目標速度として算出することができる。
【数1】

ここで、上記式(1)において、f(acc)は、補器類が消費するエネルギー消費量であり、補器類の作動情報に基づいて得られる。また、Tは走行時間である。さらに、εは動力のエネルギー変換効率、ηは機械的損失、μは転がり摩擦係数、κは空気抵抗、mは加速度の回転部分相当質量、Hは所定の定数であり、それぞれ車両情報として、車両データベース140から取得される。また、θは勾配の角度であり、道路情報として、地図データベース150から取得される。さらに、Mは乗員を含む車体重量であり、車体自体の重量は、車両情報として、車両データベース140から、乗員の重量は、走行情報として、車両コントローラ130から取得される。また、vjsおよびvjeは、所定の時刻における車速であり、車両コントローラ130から走行情報として取得される。
【0033】
上記式(1)のうち、第1項は補器類によるエネルギー消費量、第2項は勾配抵抗および路面抵抗によるエネルギー消費量、第3項は空気抵抗によるエネルギー消費量、および第4項は車両の加速によるエネルギー消費量をそれぞれ表しており、これらの第1項から第4項までのエネルギー消費量を積算したものが、車両のエネルギー消費量Qとなる。ここで、上記式(1)のうち、動力のエネルギー変換効率ε、機械的損失η、転がり摩擦係数μ、空気抵抗κ、加速度の回転部分相当質量m、乗員を含む車体重量M、および定数Hは一定の値であり、また、勾配の角度θも演算区間ごとに特定される一定の値である。そのため、第2項の勾配抵抗および路面抵抗によるエネルギー消費量、第3項の空気抵抗によるエネルギー消費量、および第4項の車両の加速によるエネルギー消費量は、それぞれ車両の走行速度vに依存することとなる。そのため、上記式(1)の車両のエネルギー消費量Qも車両の走行速度vに依存するものとなり、上記式(1)を用いることにより、車両のエネルギー消費量Qが最も小さくなる車両の走行速度vを算出することができる。なお、第1項の補器類によるエネルギー消費量は、走行時間Tに比例した特定の値となっている。また、本実施形態のように、情報提供システムを電気自動車に適用した場合は、上記式(1)の第1項において、アイドリング停止とエンジン始動直後の燃料噴射増量のバーター関係を考慮する必要がなく、補器類の電力消費量のみを考慮すればよい。
【0034】
さらに、処理装置100は、道路情報取得機能により取得した現状交通情報や統計交通情報、さらには、制限速度情報などを加味して、目標速度を算出することができる。例えば、処理装置100は、現状交通情報および/または統計交通情報に基づいて、演算区間が渋滞しているか否かを予測し、演算区間が渋滞していると予測された場合に、渋滞度合に応じた上限値を設定する。これにより、該演算区間においては、設定された上限値を超えない範囲で目標速度が算出されることとなる。また、処理装置100は、制限速度を目標速度の上限値として設定し、設定された上限値を超えない範囲で、目標速度を算出する構成としてもよい。
【0035】
また、勾配のある演算区間を自車両が走行する場合には、自車両の走行方向によって、上り坂である演算区間を上って走行する場合と、下り坂である演算区間を下って走行する場合とがある。上り坂である演算区間を上って走行する場合と、下り坂である演算区間を下って走行する場合とでは、演算区間を走行するのに要するエネルギー消費量Qは異なるため、算出される目標速度も異なってくる。そこで、処理装置100は、車両の走行方向に応じた目標速度を算出するために、走行方向予測機能により、車両が演算区間を走行する際の走行方向を予測する。ここで、図3および図4は、走行方向予測機能による走行方向の予測方法を説明するための図であり、どちらも同じ位置の地図を示している。図3および図4において、等高線A,B,Cは、等高線A<等高線B<等高線Cの順に高い標高を示しており、地点α,β,γは、地点α<地点β<地点γの順に、標高が高くなっている。そして、地点βを通過する地点αから地点γまでの区間においては、地点αから地点γへと向かって上り坂(地点γから地点αへと向かって下り坂)となっている。以下においては、図3および図4に示す例において、地点βが存在する地点αと地点γとの間の区間を、自車両が走行する際の走行方向を予測する方法について説明する。
【0036】
処理装置100は、自車両が演算区間を走行する際の走行方向を予測するために、例えば、ダイクストラ法を用いて、自車両の現在位置から、地点βを通過する最短の経路を探索する。具体的には、まず、処理装置100は、地点βを通過するまでに走行する道路リンクの数を、ブランチ数として算出する。例えば、図3においては、地点αまで最短経路で走行し、地点αから地点γへ向かって、地点βを通過する場面を示している。地点αから地点γへ向かって地点βを通過する場合、図3に示すように、自車両は最短で3つの道路リンクを通過することとなる。すなわち、地点αから地点γに向かって地点βを通過する場合のブランチ数は3となる。一方、図4においては、地点γまで最短経路で走行し、地点γから地点αに向かって、地点βを通過する場面を示している。地点γから地点αに向かって地点βを通過する場合、図4に示すように、自車両は最短で4つの道路リンクを通過することとなる。すなわち、地点γから地点αに向かって地点βを通過する場合のブランチ数は4となる。この結果、処理装置100は、ブランチ数が最も小さくなる経路で地点βを通過する方向、すなわち、図3に示すように、地点αから地点γに向かって、地点βが存在する区間を走行する方向を、自車両が、地点βが存在する区間を走行する際の走行方向として予測することができる。
【0037】
そして、自車両が演算区間を走行する際の走行方向を予測した後、処理装置100は、予測した走行方向に基づいて、目標速度を算出する。例えば、図3に示すように、地点αから地点γへと向かって上り坂となっている、地点βが存在する演算区間を、自車両が、地点αから地点γへと向かって走行するものと予測された場合、処理装置100は、自車両が上り坂を上って地点βが存在する演算区間を走行する際の目標速度を算出することで、地点βが存在する演算区間の目標速度を適切に算出することができる。なお、目的地が設定されており、目的地までの走行経路が決定されている場合は、自車両の現在位置から目的地に向かう方向に、自車両が演算区間を走行するものとして、目標速度を算出することができる。
【0038】
なお、処理装置100は、ユーザの嗜好を加味して、目標速度を算出する構成としてもよい。例えば、通常算出される目標速度よりも10Km/h速い速度に基づいた提示情報をユーザが所望しており、「+10Km/h」のように目標速度に対する設定値が、入力装置160を介してユーザにより入力された場合、処理装置100は、演算区間を走行するのに要するエネルギー消費量が最も小さくなる車両の走行速度vに、ユーザにより入力された設定値が示す速度を加えた速度を、目標速度として算出することができる。同様に、「−10Km/h」のように目標速度に対する設定値が、入力装置160を介してユーザにより入力された場合、処理装置100は、演算区間を走行するのに要するエネルギー消費量が最も小さくなる車両の走行速度vから、ユーザにより入力された設定値が示す速度を差し引いた速度を、目標速度として算出することができる。このように、目標速度をユーザの嗜好を反映したものとすることで、ユーザの運転負荷をより軽減することができる。
【0039】
また、入力装置160を介してユーザにより目標速度の上限値や下限値が設定された場合、処理装置100は、ユーザにより入力された上限値や下限値に基づいて、目標速度を算出してもよい。例えば、ユーザにより目標速度の下限値が入力された場合、ユーザにより入力された下限値が制限速度や環境速度などを上回らないことなどを条件に、ユーザにより入力された下限値よりも速い速度で目標速度を算出するようにしてもよい。これにより、ユーザが目的地に速く到達することを所望している場合など、状況に応じた適切な提示情報を提示することができる。
【0040】
そして、処理装置100は、提示情報生成機能により、算出した目標速度に基づいて、提示情報の生成を行う。処理装置100により生成された提示情報は、車速メーター170およびディスプレイ180に送信され、車速メーター170およびディスプレイ180を介して、ユーザに提示されることとなる。
【0041】
車速メーター170は、自車両の現在の車速を表示するとともに、処理装置100により生成された提示情報を表示する。ここで、図5は、車速メーター170により表示される提示情報の一例を示す図である。例えば、自車両が現在走行している演算区間の目標速度が「50Km/h」である場合、車速メーター170は、図5に示すように、「50Km/h」を示す速度帯151を点灯することで、提示情報をユーザに提示する。加えて、車速メーター170は、図5に示すように、車速メーター170の中央下部付近の表示部152に、目標速度が「50km/h」であることを示す文字情報を表示することで、提示情報をユーザに提示する。なお、車速メーター170は、自車両が現在走行している演算区間の提示情報を提示するものであり、自車両が、演算区間(n)を通過するたびに、ユーザに提示する提示情報を、新たな演算区間(n+1)の提示情報に更新する。
【0042】
ディスプレイ180は、ナビゲーション装置に設けられたディスプレイなどであり、処理装置100から送信された提示情報を、ディスプレイ180が備える画面上に表示する。ここで、図6は、ディスプレイ180により表示される提示情報の一例を示す図であり、図3および図4と同じ位置の地図を示している。例えば、図6に示す例において、演算区間1は渋滞しているため、ディスプレイ180は、演算区間1について、「渋滞です。車間距離をとり、クリープを活用してください。」との提示情報を提示することができる。また、演算区間2において自車両は上り坂を上って走行するものと予測されており、ディスプレイ180は、演算区間2について、「上りです。40Km/hを維持してください。」との提示情報を提示することができる。さらに、演算区間3において自車両は下り坂を下って走行するものと予測されており、演算区間3について、「下りです。回生ブレーキを活用してください。35Km/hを維持してください。」との提示情報を提示することができる。
【0043】
また、ディスプレイ180は、走行経路内に設定された演算区間のうち、目標速度と実際の車両の走行速度との差が大きくなりやすい演算区間のみについて、提示情報を提示することができる。ここで、目標速度と実際の車両の走行速度との差が大きくなりやすい演算区間とは、例えば、図6に示す演算区間1のように、渋滞などのため、車速の加速および減速が頻繁に行われやすい演算区間や、図6に示す演算区間2および演算区間3のように、ユーザが目標速度を維持して等速度で走行していると思っていても、勾配の影響により、車速の加速または減速が行われやすい演算区間などが挙げられる。このように、目標速度と実際の車両の走行速度との差が大きくなりやすい演算区間のみについて、提示情報を提示することで、画面上に表示される提示情報を減らすことができ、これにより、提示情報が画面上に数多く表示されることによる煩雑さを軽減するとともに、ユーザに提示情報をより容易に把握させることができる。
【0044】
なお、ディスプレイ180においては、提示情報を画面上に常に表示する構成としてもよいし、ユーザにより提示情報の提示が選択された演算区間についてのみ、提示情報を提示する構成としてもよい。さらに、車速メーター170および/またはディスプレイ180に提示情報を表示しないように、入力装置160を介してユーザにより指示が行われた場合は、提示情報の表示による煩雑さを低減するために、車速メーター170および/またはディスプレイ180に提示情報を表示しない構成としてもよい。
【0045】
次に、図7を参照して、本実施形態の情報提供処理について説明する。図7は、本実施形態に係る情報提供処理を示すフローチャートである。
【0046】
ステップS101では、処理装置100の車両情報取得機能により、車両データベース140に予め記憶された、動力のエネルギー変換効率、機械的損失、車体重量、抵抗係数(転がり摩擦係数、空気抵抗など)、および加速時の回転部分相当質量などの車両情報の取得が行われる。
【0047】
また、ステップS102では、処理装置100の車両情報取得機能により、車両位置検出装置120から、自車両の位置情報および進行方向情報の取得が行われるとともに、車両コントローラ130から、自車両の車速情報、加速度情報、補器類の作動情報、乗員重量情報などの走行情報の取得が行われる。
【0048】
そして、ステップS103では、処理装置100の走行経路予測機能により、ステップS102で取得された自車両の位置情報および進行方向情報に基づいて、自車両が走行する走行経路の予測が行われる。
【0049】
ステップS104では、処理装置100の道路情報取得機能により、通信装置110を介して、外部の交通情報サーバから、ステップS103で予測された走行経路における現在の渋滞情報である現状交通情報の取得が行われるとともに、地図データベース150から、予測された走行経路における統計交通情報、制限速度情報、勾配情報、標高情報、およびカーブ曲率情報などの道路情報が取得される。
【0050】
続くステップS105では、処理装置100の演算区間設定機能により、ステップS103で予測された走行経路内の所定の区間が、目標速度を算出するための演算区間として設定される。ここで、本実施形態において、処理装置100は、図2に示すように、標高に基づいて、走行経路内の所定の区間を、演算区間として設定してもよいし、あるいは、制限速度、環境速度、渋滞度合、道路の勾配、およびカーブ曲率のいずれか1以上に基づいて、演算区間を設定してもよい。例えば、処理装置100は、まず、『順調』、『混雑』、『渋滞』の渋滞度合により演算区間を設定した後、渋滞度合が『順調』である区間内において、さらに、図2に示すように、標高に基づいた演算区間を設定してもよい。
【0051】
そして、ステップS106では、処理装置100の目標速度算出機能により、ステップS105で設定された演算区間ごとに、目標速度の算出が行われる。例えば、処理装置100は、上記式(1)に示すエネルギー消費量の推定モデルを用いて、演算区間を走行するのに要するエネルギー消費量が最も小さくなる速度を、目標速度として算出することができる。なお、処理装置100は、車両が演算区間を走行する際の走行方向を予測することで、勾配のある演算区間においても、適切な目標速度を算出することができる。
【0052】
そして、ステップS107では、処理装置100の提示情報生成機能により、ステップS106で算出された目標速度に基づいて、提示情報の生成が行われる。続くステップS108では、車速メーター170およびディスプレイ180により、図5および図6に示すように、ステップS107で生成された提示情報の提示が行われる。
【0053】
ステップS108で提示情報が提示された後は、ステップS109に進み、イグニッションがオフか否かの判断が行われる。イグニッションがオフの場合は、この情報提供処理を終了し、一方、イグニッションがオンの場合は、ステップS110に進む。
【0054】
ステップS110では、提示情報生成機能により、自車両の走行に伴って、自車両が走行する演算区間が、ある演算区間(n)から、新たな演算区間(n+1)に変更されたか否かの判断が行われる。自車両が走行する演算区間が変更されたと判断された場合は、ステップS102に戻り、再度、演算区間における目標速度の算出処理が行われる。一方、自車両が走行する演算区間が変更されていないと判断された場合は、ステップS109に戻り、イグニッションがオフであるか否かの判断が行われる。このように、本実施形態に係る情報提供処理では、自車両の走行に伴って、自車両が走行する演算区間が変更される度に、目標速度を新たに算出することにより、現在の車両の走行状態や渋滞状況などに応じた適切な提示情報を、ユーザに提示することができる。
【0055】
以上のように、本実施形態に係る情報提供システムは、道路情報および現状交通情報をパラメータで表し、該パラメータの変化量が所定の範囲内にある走行経路内の区間を、演算区間として設定する。そして、設定された演算区間ごとに目標速度を算出し、算出した目標速度に基づいて提示情報を提示する。これにより、本実施形態では、演算区間ごとに目標速度が算出され、演算区間ごとに提示情報が提示されるため、例えば、ディスプレイ180に表示される提示情報の情報量が多くなり過ぎることや、車速メーター170に表示される提示情報が頻繁に変更されてしまうことを有効に防止することができ、その結果、ユーザの運転負荷を低減することができる。特に、本実施形態では、制限速度、環境速度、渋滞度合、標高、道路の勾配、およびカーブ曲率などに基づいて、演算区間を設定することにより、道路状況や走行状態の変化に応じた適切な頻度で提示情報を提示することができる。
【0056】
また、本実施形態に係る情報提供システムは、演算区間を走行するのに要するエネルギー消費量が最も小さくなる車両の走行速度を、目標速度として算出し、算出した目標速度に基づいた提示情報をユーザに提示するものである。これにより、本実施形態によれば、省エネルギー運転を行うための情報を自車両の走行速度に集約することができ、ユーザに提示する提示情報の量を少なくすることができるため、省エネルギー運転を行う際のユーザの運転負荷を低減することができる。一方、省エネルギー運転のために様々な情報(例えば、車線の変更、ギアシフトの変更など)が提示される場合、ユーザに、省エネルギー運転のための情報量が多くなり、また、提示情報に対応して様々な運転操作をユーザが行う必要があるため、ユーザの運転負荷が大きくなってしまう。これに対して、本実施形態では、省エネルギー運転を行うための情報を自車両の走行速度に集約することにより、このような問題を解決するものである。特に、本実施形態では、図5に示すように、車速メーター170により、自車両が走行している演算区間の目標速度を表示するとともに、図6に示すように、ディスプレイ180により、走行経路を目標速度で走行するための文字情報等を表示することで、どのように運転すれば省エネルギー運転を行えるのかを、ユーザにより容易に把握させることができる。
【0057】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0058】
例えば、上述した実施形態では、情報提供システムを車両が備える構成を例示したが、この構成に限定されるものではなく、情報提供システムを、車両外部に設置された情報センタが備える構成としてもよい。さらに、上述した情報提供システムの各構成のうち、例えば、処理装置100、通信装置110、および地図データベース150を、情報センタが備え、車両位置検出装置120、車両データベース140、入力装置160、車速メーター170、およびディスプレイ180を、車両が備える構成とすることで、情報センタおよび車両により、情報提供システムを構成するようにしてもよい。
【0059】
また、上述した実施形態では、算出した目標速度に基づいて提示情報を生成し、生成した提示情報をユーザに提示する構成としたが、この構成に限定されるものではなく、例えば、算出した目標速度に基づいて、自車両の車速を自動的に制御するための制御情報を生成し、生成した制御情報に基づいて、自車両の車速を自動制御する構成としてもよい。このように、制御情報に基づいて自車両の車速を自動制御することで、省エネルギー運転の際のユーザの運転負荷をより低減することができる。
【0060】
さらに、上述した実施形態では、車速メーター170およびディスプレイ180により、提示情報をユーザに提示する構成としたが、この構成に限定されるものではなく、例えば、スピーカにより、提示情報を、音声で出力する構成としてもよい。
【0061】
加えて、処理装置100は、上述した実施形態に限らず、自車両の現在の車速に基づいて、走行経路内の所定の区間を演算区間として設定する構成としてもよい。例えば、処理装置100は、演算区間設定機能により、目標速度が算出された際の車速を処理装置100のRAMに記憶しておくとともに、RAMに記憶された目標速度が算出された際の車速と、自車両の現在の車速とを比較し、自車両の現在の車速が、RAMに記憶された目標速度が算出された際の車速よりも20Km/hの範囲内にある区間を、演算区間とすることができる。この場合、自車両の現在の車速が、RAMに記憶された目標速度が算出された際の車速よりも20Km/hの範囲を超えた場合には、自車両が走行している演算区間が変更されたと判断し、新たな演算区間について目標速度を算出する構成としてもよい。
【0062】
なお、上述した実施形態の処理装置100の車両情報取得機能は本発明の車両情報取得手段に、処理装置100の走行経路予測機能は本発明の予測手段に、処理装置100の道路情報取得機能は本発明の道路情報取得手段に、処理装置100の演算区間設定機能は本発明の設定手段に、および処理装置100の提示情報生成機能および走行方向予測機能は本発明の生成手段に、入力装置160は本発明の入力手段に、車速メーター170およびディスプレイ180は本発明の提示手段にそれぞれ相当する。
【符号の説明】
【0063】
100…処理装置
110…通信装置
120…車両位置検出装置
130…車両コントローラ
140…車両データベース
150…地図データベース
160…入力装置
170…車速メーター
180…ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の位置情報および走行情報を取得する車両情報取得手段と、
前記車両の位置情報および走行情報に基づいて、車両の走行経路を予測する予測手段と、
前記予測手段により予測された前記走行経路における道路情報を取得する道路情報取得手段と、
前記道路情報を所定のパラメータで表し、前記パラメータの変化量が所定範囲内にある前記走行経路内の区間を、演算区間として設定する設定手段と、
前記設定手段により設定された前記演算区間ごとに、車両の駆動力を制御するための制御情報を生成する生成手段と、を有することを特徴とする情報提供システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報提供システムであって、
前記生成手段は、前記車両の位置情報および走行情報に基づいて、車両が前記演算区間を走行する際の走行方向を予測し、予測された前記走行方向に基づいて、前記制御情報を生成することを特徴とする情報提供システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の情報提供システムであって、
前記道路情報は、道路の勾配情報、制限速度情報、カーブ曲率情報、および渋滞度合情報のうち少なくとも1つの情報を含み、
前記設定手段は、前記勾配情報、前記制限速度情報、前記カーブ曲率情報、および前記渋滞度合情報のうち少なくとも1つの情報をパラメータで表し、該パラメータの変化量が所定範囲内にある区間を、前記演算区間として設定することを特徴とする情報提供システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の情報提供システムであって、
前記生成手段は、前記演算区間を走行するのに要するエネルギー消費量が最も小さくなるような速度を目標速度として算出し、算出した前記目標速度に基づいて、前記制御情報を生成することを特徴とする情報提供システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の情報提供システムであって、
前記制御情報をユーザに提示するための提示手段をさらに有し、
前記提示手段は、車両が前記演算区間を通過する度に、ユーザに提示する前記制御情報を更新することを特徴とする情報提供システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の情報提供システムであって、
前記生成手段は、前記設定手段により設定された演算区間のうち、前記演算区間を走行するのに要するエネルギー消費量と、実際のエネルギー消費量との差が大きくなりやすい演算区間についてのみ、前記制御情報を生成することを特徴とする情報提供システム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の情報提供システムであって、
ユーザに所定の入力を行わせるための入力手段をさらに有し、
前記生成手段は、前記入力手段により入力された情報に基づいて、前記制御情報を生成することを特徴とする情報提供システム。
【請求項8】
車両の位置情報および走行情報を取得し、
前記車両の位置情報および走行情報に基づいて、車両の走行経路を予測し、
前記予測された走行経路における道路情報を取得し、
前記道路情報を所定のパラメータで表し、前記パラメータの変化量が所定範囲内にある前記走行経路内の区間ごとに、車両の駆動力を制御するための制御情報を生成することを特徴とする情報提供方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−66705(P2012−66705A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213301(P2010−213301)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】