感染疾患の診断および治療のための使用方法と組成物
感染因子によって引き起こされる疾患、とりわけ結核を治療するための方法および組成物。とりわけ、感染疾患の治療のための置換ジアミンを含む方法および組成物が提供される。1つの実施態様において、これらの方法および組成物は、結核を限定はしないが含む、マイコバクテリア感染の治療のために使用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、微生物によって引き起こされる疾患、とりわけ結核を治療するための方法および組成物に関する。本発明はまた、改善された抗マイコバクテリア活性を持つ方法および組成物、すなわち、新規の置換エチレンジアミン化合物を含む組成物に関する。
【0002】
発明の背景
マイコバクテリア感染は、しばしば、結核のような疾患として現れる。マイコバクテリアによって引き起こされるヒト感染は、古くから広まっており、結核は、今日も、死亡の主要な原因のままである。19世紀中頃より、生活水準が上昇するのと平行して、疾患の発生率は下降しているが、マイコバクテリア疾患はまだ、医療物資が限られている国々で、疾病率および死亡率の主な原因であり続けている。さらに、マイコバクテリア疾患は、免疫無防備の患者における、重篤な播種性疾患を引き起こしうる。世界中の多くの保健機関の努力にも拘わらず、マイコバクテリア疾患の根絶は、達成されておらず、近々根絶されるとも考えられない。世界人工のほぼ三分の一がヒト型結核菌(mycobacterium tuberculosis)複合体、通常結核(TB)として呼ばれるものに感染しており、一年間に、およそ800万人が新しく感染し、200〜300万人がTBによって死亡している。結核(TB)は、単一の病原物によるヒトの死亡の一番大きな原因である(Dyeら,J.Am.Med.Association,282,677−686,(1999)、および2000 WHO/OMS Press Releaseを参照のこと)。
【0003】
減少して数十年後、現在TBは増加している。米国で、最大1000万人が感染していると信じられている。ほぼ28,000の新規患者が、1990年に報告され、1989年に比べて9.4パーセントの増加である。TB件数において、16パーセントの増加が、1985年〜1990年で観察された。過密な生活条件および共有空間が、TBの広がりにとりわけ関与し、これが、刑務所受刑者の間、およびより大きな米国都市におけるホームレスの間で観察された事例の増加に関与する。「後天性免疫不全症候群(Acquired Immune Deficiency Syndrome:AIDS)」の全ての患者のうちのおよそ半分が、マイコバクテリア感染を獲得し、TBがとりわけ打撃を与える合併症である。AIDS患者は、臨床TBを発症するより高いリスクにあり、抗−TB治療は、非AIDS患者におけるのと比べて効果が小さいように見える。したがって、感染がしばしば、致命的な播種性疾患へ進展する。
【0004】
結核菌(M.tuberculosis)以外のマイコバクテリアが、AIDS患者を悩ます日和見感染にてますます見られる。M.アヴィウム−イントラセルラ(M.avium−intracellulare)複合体(MAC)からの有機体、とりわけ第四および第八血細型(セロタイプ)が、マイコバクテリアの68%の量で、AIDS患者より単離される。多数のMACがみられ(組織グラムあたり最大1010抗酸菌)、したがって、感染AIDS患者に関する予後は悪い。
【0005】
世界保険機構(The World Health Organization:WHO)は、TBに対する戦いを奨励し続けており、「免役化における拡張プログラム(Expanded Program on Immunization:EPI)」のような予防イニシアチブ、および「直接観察治療短期コース(Directly Observed Treatment Short−Course:DOTS)」のような治療コンプライアンスイニシアチブを推奨している。TBの撲滅のために、診断、治療および予防が等しく重要である。活性TB患者の迅速な検出により、約90%の治癒が予測される早期治療を導かれうる。したがって、早期診断が、TBに対する戦いで重要である。さらに、治療コンプライアンスにより、感染の撲滅だけでなく、薬剤耐性株の出現の減少が確保されうる。
【0006】
薬物耐性結核菌の出現は、非常に心配な現象である。少なくとも1つの標準薬剤に耐性だと証明された新規TB患者の率は、1980年代初期の10パーセントから、1991年の23パーセントまで増加した。したがって、治療方法のコンプライアンスもまた、TBを撲滅させ、薬剤耐性株の出現を予防するための努力において、重大な要素である。マイコバクテリアの薬剤耐性株によって引き起こされる疾患のための、ワクチンとして、および治療として効果的な新規の治療薬剤の開発が等しく重要である。
【0007】
37以上のマイコバクテリア種が同定されているが、すべてのヒト感染の95%以上が、6つのマイコバクテリア種、すなわち結核菌、M.アヴィウム−イントラセルラ、M.カンサシ(M.kansasii)、M.ホルチュイタム(M.fortuitum)、M.ケロナエ(M.chelonae)、およびM.レプラエ(M.leprae)によって引き起こされる。ヒトで最も流行しているマイコバクテリア疾患は、結核菌、M.ボビス(M.bovis)またはM.アフリカナン(M.africanum)を含むマイコバクテリア種によって主に引き起こされる結核(TB)である(Merck Manual 1992)。感染は、典型的には、肺における末端経路に達することが可能な、感染性粒子の吸引によって開始される。肺胞マクロファージによる貪食ののち、ファゴサイトーシス細胞の最終的な破壊を伴って、桿菌が自由に複製可能である。ファゴサイトーシス細胞の破壊が、さらなるマクロファージ、およびリンパ球の、感染部位への移動を引き起こし、そこで、これらも最終的に除去される、カスケード効果が、結果として起こる。局所リンパ管、ならびに血流および、骨髄、脾臓、腎臓、骨および中枢神経系のような他の組織に移動する感染マクロファージによって初期ステージの間に、疾患がさらに広まる(Murrayら,Medical Microbiology,The C.V.Mosby Company 219−230(1990)を参照のこと)。
【0008】
マイコバクテリアの毒性に関与する因子のはっきりした理解はまだ存在しない。多くの治験責任者が、多くの細胞壁および細菌表面の脂質が、コロニー形態学および毒性への関与物として、関与していると見なした。証拠により、特定のマイコバクテリア細胞の表面上でのC−マイコシドが、マクロファージ内での有機体の生存を促進するために重要であることが示唆されている。トレハロース6,6’ジミクロラート、コード因子が、他のマイコバクテリアに関して関与している。
【0009】
コロニー形態および毒性の相互関係が、M.アヴィウムでとりわけ言明されている。M.アヴィウム桿菌は、種々の異なるコロニー形態でおこる。従来の研究室培地上で透明な、または荒いコロニーとして増殖する桿菌は、組織培地中のマクロファージ内で繁殖可能であり、感受性マウスに注入したときに、毒性であり、抗生物質に耐性である。研究室培養培地上で維持された荒いまたは透明桿菌はしばしば自発的に不透明なRコロニー形態を呈し、この時点ではマクロファージ内で増殖可能でなく、マウスで無毒性であり、抗生物質に非常に感受性である。M.アヴィウムの透明で荒い株と不透明株のコロニー形態における差は、ほとんどあきらかに、保護カプセルとして作用する、透明で荒い有機体の表面上をコートしている糖脂質の存在による。このカプセルまたはコーティングは、主にリソゾーマル酵素および抗生物質から、有害なM.avium有機体を明らかに保護する、C−マイコシドからなる。一方、非毒性の不透明形態のM.アヴィウムは、その表面にほとんどC−マイコシドを持たない。抗生物質への抵抗性と、マクロファージによる殺傷への抵抗性両方が、M.アヴィウムの表面上の糖脂質バリアによって寄与されてきた。
【0010】
マイコバクテリア感染の診断は、従来の診断が、唾液塗布標本、胸部X線検査(CXR)および臨床症状に基づいているが、病原体の単離および同定によって確認される。培地上でのマイコバクテリアの単離は、4〜8週間かかる。種同定は、さらに2週間かかる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、結核菌直接検査、または増幅結核菌直接検査(MTD)、および放射活性ラベルを用いた検出方法のような、マイコバクテリアを検出するための種々の他の手法が存在する。
【0011】
結核菌によって引き起こされる感染を検出するために広く使用されている1つの診断試験が、ツベルクリン皮膚試験である。多くの皮膚試験のバージョンが利用可能であるが、典型的には、古ツベルクリン(OT)または精製タンパク質誘導体(PPD)のツベルクリン抗原の2つの調製のうちの1つが使用される。抗原調製は、皮膚に皮膚内注射するか、または局所的に塗布し、その後、多面性イノキュレーター(Tine試験)を使用することで、皮膚内に浸潤性に運搬するかいずれかである。皮膚試験診断法に、いくつかの問題が存在する。たとえば、Tine試験は、内皮層に注入される抗原の量が、正確には制御出来ないので、一般的には勧められない(Murrayら,Medical Microbiology,The C.V.Mosby Company 219−230(1990)を参照のこと)。
【0012】
ツベルクリン皮膚試験が広く使用されてはいるが、これは、典型的には、結果を得るまでに2〜3日間必要であり、マイコバクテリアに暴露されても健康である被験者に偽陽性が時にみられるので、多くの場合、結果は不正確である。さらに、陽性の結果が、活性TB患者だけではなく、バシル カルメット−グレリン(Bacille Calmette−Guerin:BCG)でワクチン化したひと、およびマイコバクテリアに感染したが、疾患を発症していないひとでも観察されるので、間違った診断の頻度が高い。したがって、ツベルクリン皮膚試験によって、家庭TB接触のような、他の患者から、活性TB患者を区別することが難しい。さらに、ツベルクリン試験はしばしば、結核菌以外のマイコバクテリア(MOTT)で感染した個体で交差反応を生み出す。したがって、現在利用可能な皮膚試験を使用した診断は、よく誤りおよび間違いを起こす。
【0013】
薬物感受性有機体によって引き起こされる結核に対する標準治療は、4つの薬剤を2ヶ月間投与、続いて4ヶ月間2つの薬剤を投与、からなる6ヶ月計画である。6ヶ月の治療経過中にわたって投与される2つのもっとも重要な薬剤は、イソニアジドとリファンピンである。投与計画が比較的シンプルであるが、その投与は非常に複雑である。8〜9錠剤の日々の摂取が、治療の第一相の間にしばしば必要となり、見通しが困難で、わかりにくい。重度の疾患患者でさえ、しばしば数週間症状がなく、ほぼ全てが、数ヶ月内に治癒するように見える。しかしながら、治療を完了するまで続けない場合、患者は再発を経験する可能性があり、完了まで治療を続けない患者の再発率は高い。種々の形の患者中心ケアが、治療の遵守を促進するために使用される。患者が薬剤を服用することを確証することの最も効果的な方法は、直接観察治療を使用することであり、健康管理チームのメンバーが、患者がそれぞれの薬剤のそれぞれの用量を服用するかを観察することが含まれる。直接観察治療は、病院、患者住居または任意の相互に了解した場所で実施可能である。薬剤感受性有機体によって引き起こされた結核を有する患者、および治療を完了する患者のほぼすべては治癒し、再発のリスクが非常に低い(「Ending Neglet:The Elimination of Tuberculosis in the United States」L.Geiter Committee on the Elimination of Tuberculosis in the United States Division of Health Promotion and Disease Prevention, Institute of Medicine編.未発表)。
【0014】
必要なことは、予防接種および治療プロトコールの改善を含めた、効果的な治療投与計画である。現在可能な治療は、治療コンプライアンスの問題の結果として、もはや常に効果的ではなく、これらのコンプライアンスの問題が、薬剤耐性細菌株の発生に寄与している。
【0015】
エタンブトール(EMB)が、1988年に結核治療のために3億用量以上供給された、TBの治療のための広く使用されている抗生物質である。
【0016】
【化1】
1950年代にレデルレ ラボラトリーズ(Lederle Laboratories)によって開発されたエタンブトールは、非常に低毒性であり、よい薬物動態を持つ。しかしながら、エタンブトールは、約5μg/mlの比較的高い最小阻害濃度(MIC)を持ち、視神経炎を引き起こしうる。したがって、新規の、そしてより効果的な治療組成物の必要性が増加している(たとえば、米国特許第3,176,040号、米国特許第4,262,122号、米国特許第4,006,234号、米国特許第3,931,157号、米国特許第3,931,152号、米国再発行特許第29,358号、およびHauslerら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 11(2001)1679−1681を参照のこと)。エタンブトールの有用な効果の発見から数十年、TB治療における薬理学的進展はほとんどなかった。さらに、薬剤耐性株の複合発現、およびマイコバクテリア疾患のより流行拡散によって、新規治療組成物が、結核に対する戦いにおいて必須であることが、深刻に明らかになってきている。
【0017】
予防接種および治療プロトコールの改善を含む、明らかに効果的な治療処方計画が必要である。結核の発生を予防し、したがって、治療の必要性をなくす治療ワクチンが望ましい。エタンブトールのような現在可能な治療法が効果的ではあるが、薬剤耐性株の発現により、エタンブトールよりもより多目的である、新規の処方および組成物の必要性を生じている。現在可能な治療は、治療コンプライアンスを伴う問題の結果として、もはや常に効果的であるとはいえず、薬剤耐性マイコバクテリア菌株の発生につながる。必要なのは、高く効果的な治療を提供し、結核化学療法を短くするか、または簡便にする、新規の抗結核薬剤である。
【0018】
発明の概要
本発明は、感染疾患の治療のために効果的なエチレンジアミン化合物を含む方法および組成物を含む。本発明はまた、改善抗結核活性を持つ置換エチレンジアミンを含む、改善抗マイコバクテリア活性を持つ置換エチレンジアミンを含む方法および組成物も提供する。
【0019】
本発明は、種々のアミン化合物から誘導可能な、置換エチレンジアミン類を熟考する。本発明において、前記置換エチレンジアミン類は、以下の構造を基本とする。
【0020】
【化2】
本明細書で記述する置換エチレンジアミン化合物は、以下のように合成され、活性に関して選別される。置換エチレンジアミンの化学ライブラリーを、スプリットおよびプール技術を用いて、固体ポリスチレン支持体上で調製する。この技術により、異なる組の置換エチレンジアミンの合成が可能になる。これらのジアミンを、結核菌の最近完了したゲノム配列に基づく、ハイスループットスクリーニング(HTS)アッセイ、および最小阻害濃度(MIC)アッセイを含む、in vitro生物学的アッセイを用いて、抗−TB活性に関して選別する。
【0021】
本明細書で記述した方法および組成物は、細菌およびウイルスに限定はしないがこれを含む、感染性有機体によって引き起こされる疾患に対して効果的である、置換エチレンジアミンを含む。
【0022】
本発明の1つの実施態様は、マイコバクテリア疾患に対して効果的な、置換エチレンンジアミンを含む方法および組成物を提供する。
【0023】
本発明の他の実施態様は、マイコバクテリア疾患に対して、50μMまたはそれより低いMICを持つ、置換エチレンンジアミンを含む、方法および組成物を提供する。
【0024】
本発明の他の実施態様は、マイコバクテリア疾患に対して、25μMまたはそれより低いMICを持つ、置換エチレンンジアミンを含む。本発明のまた他の実施態様は、マイコバクテリア疾患に対して、12.5μMまたはそれより低いMICを持つ、置換エチレンンジアミンを含む。本発明のまた他の実施態様は、マイコバクテリア疾患に対して、5μMまたはそれより低いMICを持つ、置換エチレンンジアミンを含む。本発明の他の実施態様において、方法および組成物には、10%またはそれより大のHTS Luc活性を持つ、置換エチレンンジアミンが含まれる。
【0025】
本発明のまた他の実施態様において、方法および組成物には、1つのアミノ基が、一級アミンから誘導され、他のアミン基が、一級および二級アミンから誘導される、置換エチレンンジアミン類が含まれる。
【0026】
本発明は、置換エチレンジアミンの種々の塩複合体および他の置換誘導体を熟考する。本発明はまた、置換エチレンンジアミンのエナンチオマーおよび他の立体異性体、およびその置換誘導体も熟考する。本発明はさらに、ヒトに限定はしないがこれを含む動物に対する治療を熟考する。
【0027】
したがって、感染性物質によって引き起こされる疾患の治療および予防のための方法および組成物を提供することが、本発明の1つの目的である。
【0028】
したがって、感染性疾患の治療および予防のための方法および組成物を提供することが、本発明の1つの目的である。
【0029】
本発明の他の目的は、結核に限定はしないがこれを含む、マイコバクテリア疾患の治療および予防のための方法および組成物を提供することである。
【0030】
本発明のまた他の目的は、置換エチレンンジアミン類を含む組成物を用いる、感染疾患の治療および予防のための方法および組成物を提供することである。
【0031】
本発明の他の目的は、置換エチレンンジアミン類を含む組成物を用いる、マイコバクテリア疾患の治療および予防のための方法および組成物を提供することである。
【0032】
本発明のまた他の目的は、置換エチレンンジアミン類を含む組成物を用いる、結核の治療および予防のための方法および組成物を提供することである。
【0033】
本発明の他の目的は、ジアミンが、50μMまたはそれより低いMICを持つ、置換エチレンジアミンを含む組成物を用いる、結核の治療および予防のための方法および組成物を提供することである。
【0034】
本発明の他の目的は、ジアミンが、25μMまたはそれより低いMICを持つ、置換エチレンジアミンを含む組成物を用いる、結核の治療および予防のための方法および組成物を提供することである。
【0035】
本発明の他の目的は、ジアミンが、12.5μMまたはそれより低いMICを持つ、置換エチレンジアミンを含む組成物を用いる、結核の治療および予防のための方法および組成物を提供することである。
【0036】
本発明のまた他の目的は、ジアミンが、5μMまたはそれより低いMICを持つ、置換エチレンジアミンを含む組成物を用いる、結核の治療および予防のための方法および組成物を提供することである。
【0037】
本発明のまた他の目的は、ジアミンが、10%またはそれより大のHTS/Luc活性を持つ、置換エチレンジアミンを含む組成物を用いる、結核の治療および予防のための方法および組成物を提供することである。
【0038】
本発明のまた他の目的は、マイコバクテリア疾患の治療および予防のための、治療的処方のための組成物を提供することである。
【0039】
本発明の他の目的は、結核菌複合体、M.アヴィウム−イントラセルラ、M.カンサリ、M.ホルチュイタム、M.ケロナエ、M.レプラエ、M.アフリカナン、M.ミクロチ(M.microti)、M.アビウム パラツベルクロシス(M.avium paratuberculosis)またはM.ボビス(M.bovis)を含むマイコバクテリア種によって引き起こされるマイコバクテリア疾患の治療および予防のための治療的処方に関する組成物を提供することである。
【0040】
本発明のこれらの、そして他の目的、特徴および利点は、以下の開示実施態様の詳細な記述および付随する請求項の概説によって明らかになるであろう。
【0041】
詳細な記述
本発明は、本明細書に含まれる特定の実施態様の以下の詳細な記述に関連して、より簡単に理解されるであろう。しかしながら、本発明が、その特定の実施態様の特定の詳細に関連して記述されているが、そのような詳細が、本発明の目的における制限として認識されるべきであるとは意図していない。本明細書で言及した参考文献の全ての文章は、2002年5月17日に申請された米国特許仮出願明細書番号第60/381,244号、および2002年5月17日に申請された米国特許明細書第10/147,587号を含む参考文献によって、そのすべてが本明細書に組み込まれている。
【0042】
結核を引き起こすもののようなマイコバクテリア感染は、発生がいったん減少したと考えられても、リバウンドし、再び重篤な健康を脅かすものとなる。結核(TB)は、単一の病原物によって引き起こされる、多数のヒトの死亡の原因であり、毎年、結核に感染した200〜300万人が死亡している。ヒトが互いに密集している場所、または標準の住居で住んでいる場所で、マイコバクテリアによって感染したヒトが増加して見られる。免疫無防備状態の個体は、マイコバクテリアへの感染およびそのような感染からの死亡の大きなリスクを持つ。さらに、マイコバクテリアの薬剤耐性株の出現は、そのような感染個体の治療の問題を引き起こす。
【0043】
マイコバクテリアに感染している多くのヒトは貧しく、または、不適切な医療設備の場所で住んでいる。様々な障害(経済的、教育レベルなど)の結果として、これらの個体の多くが、処方治療計画を完了することが不可能である。結局、これらのおよび他の個体による持続した非コンプライアンスにより、疾患が流行する。この非コンプライアンスは、マイコバクテリア菌の薬剤耐性株の出現によって、しばしば、いっそう大きくなる。種々のマイコバクテリア菌株を標的にする、効果的な組成物およびワクチンが、増加する多くの結核患者を制御下におくために必要である。
【0044】
化学療法が、結核に対する標準の治療である。いくつかの現在の化学療法治療が、2ヶ月毎日投与、または4〜12ヶ月隔週投与で、3〜4薬剤の併用使用を必要とする。表1に、標準の結核薬剤投与計画に関する、いくつかの治療スケジュールを列記している。
【0045】
【表1】
数十年にわたり現存する抗生物質の誤使用、および長期および複雑な治療投与計画をともなう乏しいコンプライアンスよって、マイコバクテリア結核の突然変異が導かれ、世界中で、結核の制御を脅かす、薬剤耐性の蔓延がつくりだされた。イソニアジド、リファンピン、ピラジンアミド、エタンブトールおよびストレプトマイシンのような、第一線の(フロントライン)薬剤を含む、大多数の現在処方されている薬剤は、1950年代から1970年代に開発された。したがって、結核化学療法のこの初期の開発は、その処理において、結核菌のゲノム配列の関わり、ここ10年間の薬理学的薬剤発見の革新、および国家的薬剤試験および併用化学の使用を有していなかった。
【0046】
したがって、薬剤耐性結核菌株の治療、および潜在的結核感染の治療には、非常に効果的な治療を提供する新規抗結核薬剤、および短縮、簡便化結核化学治法が必要である。さらに、疾患の人口統計が、コストが有意な因子であることを示しているので、これらの薬剤が、低コスト合成によって調製されることが望ましい。
【0047】
本発明は、細菌を含むがこれに限定されない微生物によって引き起こされる疾患の治療および予防において効果的である、置換エチレンンジアミン化合物類のクラスを含む方法および組成物を提供する。とりわけ、本発明の方法および組成物は、微生物である結核菌の増殖を阻害することにおいて、効果的である。本発明の方法および組成物は、ヒトならびに他の動物におけるマイコバクテリウム感染の治療を意図している。たとえば、本発明は、M.ボビスに感染したウシの治療のためにとりわけ有用であり得る。
【0048】
本明細書で使用するところの語句「結核」は、結核菌複合体を含むマイコバクテリウム種によって引き起こされる感染に通常関連した疾病状態を含む。語句「結核」はまた、結核菌以外のマイコバクテリウム(MOTT)によって引き起こされるマイコバクテリウム感染にも関連している。他のマイコバクテリウム種には、M.アヴィウム−イントラセルラ、M.カンサリ、M.ホルチュイタム、M.ケロナエ、M.レプラエ、M.アフリカナン、およびM.ミクロチ、M.アビウム パラツベルクロシス、M.イントラセルラレ(M.intracellulare)、M.スクロフラセウム(M.scrofulaceum)、M.キセノピ(M.xenopi)、M.マリナム(M.marinum)、M.ウルセランス(M.ulcerans)が含まれる。
【0049】
本発明はさらに、細菌、菌群、寄生、およびウイルス因子によって引き起こされるものを、限定はしないが含む、感染性疾患の治療に効果的な方法および組成物を含む。そのような感染性因子の例には、以下の、ブドウ球菌属、連鎖球菌科、ナイセリア科、コックシ、腸内細菌科、シュードモナス科、ビブリオ科、カンピロバクター、パスツレラ科、ボルデテラ属、フランシセラ属、ブルセラ属、レジオネラ科、バクテロイデス科、グラム陰性桿菌、クロストリジウム属、コリネバクテリウム属、プロピオン好酸菌属、グラム陽性桿菌、炭疸(anthrax)、アクチノミセス属、ノカルジア属、マイコバクテリウム属、トレポネーマ属、ボレリア属、レプトスピラ属、マイコプラスマ属、ウレアプラスマ属、リケッチア属、クラミジア属、全身性真菌(systemic mycoses)、日和見性真菌(opportunistic mycoses)、原生動物門、線虫(nematodes)、吸虫綱(trematodes)、多節条虫亜綱(cestodes)、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、パポバウイルス、肝炎ウイルス、オルソミクソウイルス、パラミクソウイスル、コロナウイルス、ピコルナウイルス、レオウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、ブンヤウイルス科、ラプドウイルス、ヒト免疫欠損ウイルスおよびレトロウイルスが含まれる。
【0050】
本発明はさらに、結核、らい病、クローン病、獲得性免疫欠損症候群、ライム病、ネコ引っ掻き病、ロッキー山紅斑熱およびインフルエンザに限定はしないがこれを含む、感染性疾患の治療に有用な方法および組成物を提供する。
【0051】
エタンブトール由来の第二世代抗生物質
本発明はとりわけ、市販されているアミノアルコールを先に装填した樹脂から開始した、改変エチレンンリンカーを含む、エタンブトールファミリーのジアミン化合物類の新規ライブラリーを指向する。
【0052】
【化3】
エタンブトール類似体の本発明者らのライブラリーの構造多様性を増強させる、および結核菌に対する構造的に多様なジアミン類の活性における、改変リンカーの影響を査定するための努力において、アミノ酸を、2つのアミン部分間の結合リンカー内へ挿入する合成スキームが改変された。アミノ酸の使用は、(R4のように)リンカー内への他の多様性要素の導入を可能にし、同様にキラリティーを導入可能なので、特に興味深い。
【0053】
分子内にアミノアルコール部位をもつことによって、エタンブトールに緊密に関連するジアミン類のサブ−ライブラリを合成することは、本プロジェクトにとって、重要であるが、2つのアミン原子間の精巧なリンカーが存在することにより、また非常に異なる(代表的な例に関して、図1を参照のこと)。また、先にアミノアルコール類を装填した2−クロロトリチル樹脂は市販されており(図2)、提案された化学によく適用するという事実は非常に魅力的である。
【0054】
ライブラリー内の化合物を、ウェルあたり10化合物のプール中で、96ウェルフォーマットにて、mmolのスケールで調製した(プレートの大部分)。表1(図3)は、合成したプレートに関するデータをまとめている。
【0055】
アミノアルコールプレ装填樹脂を用いた固相合成. 20枚の96ウェルプレートを調製した。本発明者らの第一100,000化合物ライブラリーを作製するため(スキーム1、図4)に使用したのと同様に、市販されているアミノアルコールプレ装填樹脂から開始する4および5段階合成経路を適用して、標的ジアミン類を作製した(それぞれスキーム2および3、図5および6)。合成において、いくつかの違いがある。(1)スキーム1の2つの第一段階は、スキーム2および3では放棄される。(2)スキーム1において、リンカーのC1官能基の求核性置換を介して、全体のシントンとして、第二アミンを分子内に導入し、一方で、スキーム2および3では、カルボニル化合物による存在するアミノ部位の改変を介して進む。
【0056】
スキーム2. 購入した、アミノアルコールプレ装填2−クロロトリチル樹脂のアシル化を、室温にて、DCM/DMF混合液中のHATU(O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N,N−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)と、EtN(iso−Pr)2の存在下で、FMOC保護アミノ酸とのペプチド結合を介して実施した。反応を2回実施して、産物収率を改善した。このライブラリーを作製するために使用したアミノ酸のリストを、表2(図7)で示している。
【0057】
脱保護(FMOC基の除去)を、室温でのピペリジンとの反応によって実施した。アミノ基の誘導体化を、72〜96時間、室温にて、NaBCNH3の存在下、アルデヒド類、ケトン類およびカルボン酸類のような96の種々のカルボニル化合物との還元アルキル化によって実施した。カルボニル化合物の選別は、最終ジアミン産物が、エタンブトール類似体の先のライブラリーから合成されたヒット化合物にて見られた置換基と同様または類似の型を持ち、ならびに、構造多様性を持つように、実施した(図8)。使用したカルボニル化合物の完全リストを、表3にて示している(図8)。
【0058】
アミノエチレンンアミド類の相当するジアミン類への還元を、室温にて、可溶性還元剤65+w% Red−Alを用いて実施した。産物の樹脂からの開裂を、ジクロロメタン中のトリフルオロ酢酸10%溶液で実施して、結果として、ジアミン類のTFA塩を形成した。
【0059】
ライブラリー産出のために、合成スキームのアクリル化段階を、チューブあたり、0.1〜0.15gの樹脂のスケールで、Quest 210 Synthesizerを用いて実施した。この反応に続き、形成した樹脂を、入念に洗浄し、乾燥させ、ついで10樹脂のグループを一緒にプールした。再合成および活性物のデコンボルーション(deconvolution)を容易にするために、少量の各樹脂(〜0.05g)をプールする前に保管した。
【0060】
FMOC基の脱保護、カルボニル要素の添加、還元および開裂を、ワットマン ポリフィルトロニクス(Whatman Polyfiltronics)によるCombiclamps系、またはロビンス サイエンティフィック(Robbins Scientific)によるFlexChem系を用いて、96−ウェル反応ブロック中で実施した。DCM/THFの2:1混合液中にプールした樹脂の懸濁液を、1つの反応プレート中で均一に希釈し、ウェルあたりおよそ10mgの樹脂を得た。96の多様なカルボニル化合物を、ウェルあたり1つのカルボニル化合物、各個々の10樹脂プールに、1枚の96ウェルプレート鋳型中に並べて加え、予想されるプレートあたり960ジアミン類を産出した。還元を、同様の様式で実施し、開裂および保存プレートへの充填を実施し、続いて生物学的アッセイの前にTFAを蒸発させた。
【0061】
調製したジアミン類のライブラリーの特性評価を、プレートあたり2つの無作為に選択した列(16試料)、総数の17%を用いて、エレクトロスプレーイオン化質量分析によって実施した。化合物の好結果の産出が、計算した質量の分子イオンの出現に基づいた。合成のために使用したアミノ酸に依存して、予想したイオンのパーセンテージが観察され、したがって、予測した化合物が形成され、31〜96%の範囲であった(表1、図3)。MS解析に基づき、標的15,360化合物の中から、7,500ジアミン類が実際に形成された。アミノメチルシクロヘキシルカルボン酸、チエニルアラニン、またはフェニルアラニンのようなアミノ酸が、よい収率(88〜96%)で、所望の化合物を産出した。同時に、アルギニン、テトラヒドロイソキノリンカルボン酸およびチアゾリジンカルボン酸のようないくつかのアミノ酸は、相当する産物を生み出さなかった。
【0062】
スキーム3. 改変リンカーでの、エタンブトール類似体の調製が成功したことで、本発明者らは、市販のアミノ−アルコールプレ装填樹脂を用いた、ジアミンの他のサブライブラリーの合成を試みることを勇気づけられた(スキーム3、図6)。この経路により、(スキーム2、図5)によって産出されたものと同様であるが、第一窒素元素に所望の置換基を持つジアミン化合物が産出された。
【0063】
本発明者らは、市販されている1,4−アミノブタノールプレ装填樹脂から開始することで、この方法を例示した。本発明者らは、スクリーニングアッセイにて、もっとも良い予備結果を与えた、5つのアミノ酸Phe、Amc、Cha、TrpおよびInp(表1)を用いて、5つのプレートを調製した(表1中のヒットの数を参照のこと)。非常に初期の段階は、室温にて、NaBCNH3の存在下での、10カルボニル化合物(シクロオクタノン、4−ベンジルオキシベンズアルデヒド、(S)−シトロネラル、ミルテナル、テトラヒドロ−4H−ピラン−4−オン、ノルカンファー、4−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノン、ゼラニルラクトン、2−デカロン、2−アダマンタノン)による、還元アルキル化を介した、アミノ基の誘導体化であった。以下の段階は、スキーム2に関して本発明者らが先に報告したのと同様の様式で実施した。
【0064】
結核菌に対するライブラリーのスクリーニングと活性混合物のデコンヴォルーション. Rv0341ならびにMICsへのルシフェラーゼのプロモーター融合を含む、組換え体マイコバクテリアを用いたハイスループットアッセイを使用して、このエタンブトール類似体の新規化合物ライブラリーを選別した、図9。
【0065】
198個の化合物混合物が、抗TB活性を持つことが示され(HTS Lucアッセイ中、<12.5μMの活性、および/または<12.5μMのMIC)、表1、デコンヴォルーションのために選択した。全ての198個の化合物混合物のデコンヴォルーションを、(一緒にプールする前の)保管所に保存した樹脂を用いて、96ウェルフォーマットで、ジアミン化合物の不連続再合成、および同様の合成スキーム2および3によって実施した。同様のスクリーニング試験を、各デコンヴォルーションプレートに関して使用した。ほとんどのカルボニル化合物が、抗TB活性に関与する強力なシントンとしては同定されなかった(図5)。実施したデコンヴォルーションによって、新規の構造の118ヒットが、強力な抗TB化合物として明らかになり(表4)、これらの化合物のうち38個が、両方のアッセイで活性であることが証明された。図11は、ヒット化合物とそれらの構造のリストを提供している。
【0066】
処方
本発明の置換エチレンンジアミン化合物を含む組成物を含む、治療剤を、公知の技術を用いて、薬理学的に許容可能な担体中でのような、生理学的に許容可能な処方中で調製可能である。たとえば、置換エチレンンジアミン化合物を、薬理学的に許容可能な賦形剤と混合して、治療組成物を形成する。
【0067】
本発明の組成物は、固体、液体またはエアゾルの形態で投与しうる。固体組成物の例には、錠剤、クリーム、ソープおよび埋め込み可能用量ユニットが含まれる。錠剤は経口で投与しうる。治療クリームおよび抗マイコバクテリアソープは、局所で投与しうる。埋め込み可能用量ユニットは、局所、たとえば肺中に投与するか、または治療組成物の全身放出のために、たとえば皮下に埋め込みうる。液体組成物の例には、筋肉内、皮下、静脈内、動脈内注射に適合する処方、および、局所、眼球内投与のための処方が含まれる。エアゾル処方の例には、肺への投与のための吸入処方が含まれる。
【0068】
本明細書で使用するところの、持続放出マトリックスは、酵素的または酸/塩基加水分解によって、または溶解によって分解可能である、物質、通常はポリマーからできたマトリックスである。いったん体内に挿入されたならば、マトリックスは、酵素および体液によって作用する。持続放出マトリックスは、望ましくは、リポソーム、ポリラクチド、ポリグリコリド(グルコール酸のポリマー)、ポリアクチドコ−グリコリド(乳酸とグルコール酸のコポリマー)、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリペプチド、ヒアルロン酸、コラーゲン、コンドロイチン硫酸、カルボン酸、脂肪酸、リン脂質、多糖類、核酸、ポリアミノ酸、フェニルアラニン、チロシン、イソロイシンのようなアミノ酸、ポリヌクレオチド、ポリビニルプロピレン、ポリビニルピロリドンおよびシリコーンを限定はしないが含む、生物適合性物質から選択される。好ましい生物分解性マトリックスは、ポリラクチド、ポリグリコリドまたはポリラクチド コ−グリコリドいずれかのうちの1つのマトリックスである。
【0069】
組成物の用量は、治療する状態、使用する特定の組成物、および患者の体重や状態のような他の臨床因子、および投与経路に依存しうる。好適な用量は、100〜0.1mg/kgの範囲であり得る。より好ましい用量は、50〜0.2mg/kgの範囲であり得る。より好ましい用量は、25〜0.5mg/kgの範囲であり得る。錠剤または他の溶媒形態には、置換エチレンンジアミン1〜1000mgが含まれうる。エタンブトールまたは他の抗結核薬剤と同様の用量範囲および投与スケジュールを使用しうる。
【0070】
組成物は、マイコバクテリア疾患と組み合わせで起こる他の疾患の治療として、他の組成物および手順との組み合わせで投与しうる。たとえば、結核はしばしば、後天性免疫欠損症候群(AIDS)に関連した第二合併症として起こる。手術、放射線照射または化学療法のようなAIDS治療を受けている患者は、本明細書で記述した、治療方法および組成物から利益を得うる。
【0071】
以下の特定の実施例は、置換エチレンンジアミン化合物の特定の合成、および結核菌のコロニーの増殖のin vitroおよびin vivo抑制への適用として、本発明を例示している。さらに、R.Leeら、J.Comb.Chem 2003,5,172−187の教えが、そのすべてが参考文献にて本明細書に組み込まれている。化学的な手順での小さな変更を含む他の例が、当業者に明らかであり、本発明が、これらの特定の例示実施例に限定されないことが理解されるであろう。
【0072】
実施例I
1.市販アミノアルコールプレ装填樹脂からのジアミンライブラリーの作製
一般手順: 全ての試薬は、シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)から購入した。アミノアルコールプレ装填樹脂は、ノババイオケム(NovaBiochem)から購入した。溶媒、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、エチレンジクロライド、メタノールおよびテトラヒドロフランは、アルドリッチより購入し、受領したまま使用した。固相合成を、Quest 210 Synthesizer(アルゴノート テクノロジーズ(Argonaut Technologies))および結合化学器具(ワットマン ポリフィルトロニックス(Whatman Polyfiltronics)およびロビンス サイエンティフィック(Robbins Scientific))上で実施した。溶媒の蒸発は、SpeedVac AES(サバント(Savant))を用いて実施した。マススペクトルデータを、オートサンプラーを備えたパーキンエルマー(Perkin Elmer)/サイエックス(Sciex)、API−300、TQMS上の、エレクトロスプレーイオン化技術によって得た。
【0073】
スキーム2.工程の記述.
アシル化段階を、Quest 210 Synthesizerを用いて、5mlのチューブ内で実施した。FMOC基の除去、カルボニル化合物での還元アルキル化反応、Red−Alでの還元、固体支持体からの開裂を、96深(2ml)ウェル、化学的耐性なプレート中で実施した。
【0074】
段階1.アミノ酸での、アミノアルコールプレ装填樹脂のアシル化.
各チューブに、0.150gの相当する樹脂(0.3〜1.0mmol/g 範囲)を装填し、全ての樹脂を、1.5時間DCM中で先に膨張させ、濾過した。Fmoc保護樹脂を使用する場合、樹脂を2.5mlの、DMF中ピペリジン20%溶液とともに10分間撹拌し、濾過し、2.5mlのDMFで洗浄した。この手順を、撹拌時間を20分にして、繰り返した。全ての樹脂を濾過した後、DMF(1×2.5ml)およびDCM(2×3ml)で洗浄した。各チューブに、1mlのジクロロメタンをチャージした。アミノ酸、1mlのDMF中0.38mmol(装填樹脂に対して2.5mmol過剰)を、HATU、0.3mmol、0.5mlのDMF中0.11g(装填樹脂に対して2mol過剰)と混合し、15〜20分間放置した。ついで1.5mlの混合酸−HATUを各チューブに加えて、ついで、0.5mlのジクロロメタン中、1.5mmol、0.26mlのEtNiPr2の溶液(装填樹脂に対して10mol過剰)を加えた。反応を、45℃にて8時間、室温にて6〜8時間実施した。反応が完了した後、樹脂を濾過し、DMFおよびジクロロメタンの1:1混合液(1×3ml)、ジクロロメタン(1×3ml)で洗浄し、アシル化を、同量の薬剤で繰り返した。最後に、樹脂を濾過し、DMFとジクロロメタンの1:1混合液(1×3ml)、メタノール(3×3ml)で洗浄し、30分間(Quest上で)吸引し、バイアルに移し(バイアルあたり1つの樹脂)、1時間吸引下デシケータ内で乾燥させた。この段階の後、全ての樹脂を、MSスペクトルを用いた、品質管理に供した。
【0075】
段階2.アミノ基のアルキル化.
脱保護. 最初の3段階で調製した10個の樹脂を、一緒にプールし、全ての必要なデコンヴォルーションのためにおよそ各0.03gを個々のバイアルに残した。100mlのジクロロメタンとTHFの2:1混合液中の樹脂混合物(0.08〜1.0g)の懸濁液を、2枚の96ウェルフィルタープレート中に分配し、濾過多岐管(filtration manifold)を用いて濾過した。反応プレートをコンビクランプ内に移し、0.2mlの、DMF中のピペリジン20%溶液を加えて、Fmoc保護基を除去し、10分間放置した。10分後、プレートを濾過し、0.2mlのDMFで洗浄し、脱保護を、DMF中のピペリジン20%溶液、0.2mlで繰り返し、20分間静置した。その後、プレートを濾過し、DMF(ウェルあたり0.2ml)およびジクロロメタン(ウェルあたり2×0.5ml)で洗浄した。
【0076】
カルボニル化合物との反応. 反応プレート上の列Aの各ウェルに、0.1mlのジクロロメタン、0.08mlのマスタープレートからの、DMF中の適切な酸の〜1.0M溶液、0.05mlのPyBropのDMF溶液(0.012g、0.025mmol、装填樹脂に対して2.5mol過剰)および0.05mlのジクロロメタン中EtNiPr2(0.017ml、0.10mmol、装填樹脂に対して10mol過剰)をチャージした。列B〜Hの各ウェルに、0.1mlのTHF、0.160mlのマスタープレートからのDMF中の適切なアルデヒドまたはケトンの〜1.0M溶液をチャージし、30分間反応させた。30分後に、THF中のNaBCNH3の1.0M溶液、0.075ml(0.075mmol)を加えた。反応プレートを密封し、室温で72時間保存した。最後に、樹脂を濾過し、THF、DCM(1×1ml)、メタノール(2×1ml)で洗浄し、減圧下、デシケータ内で3時間乾燥させた。
【0077】
段階3.Red−Alとの反応.
反応プレートを、コンビクランプ内においた。Red−Al(トルエン中65+w%)とTHFの1:6混合液、ウェルあたり0.6ml(ウェルあたり0.28mmolのRed−Al)を加え、4時間反応させた。反応の完了後、樹脂を濾過し、THF(2×1ml)、メタノール(3×1ml)で洗浄し、濾過分岐管中で乾燥させた。
【0078】
段階4.開裂.
この段階は、開裂分岐管を用いて実施した。(本分岐管内の、回収プレートの上部に配置した)反応プレートに、TFA、ジクロロメタンおよびトリイソプロピルシランの10:88:2混合液、ウェルあたり0.5mlをチャージした。15分後、溶液を濾過し、回収プレートの適当なウェルに回収した。この手順を繰り返した。溶媒をシードバック上で蒸発させ、残余試料が試験のために準備された。
【0079】
スキーム3.処理の記述.
4−アミノブタン−1オール樹脂の還元アルキル化段階、およびアシル化段階を、Quest 210 Synthesizerを用いて、5mlチューブ中で実施した。FMOC基の除去、カルボニル化合物との還元アルキル化反応、Red−Alでの還元、および固体支持体からの開裂を、96−深(2ml)ウェル、化学的耐性プレート内で実施した。
【0080】
段階1.4−アミノブタン−1−オール樹脂の還元アルキル化.
ジクロロメタンとTHFの2:1混合液30ml中の、1.0g(1.0mmolまで)樹脂(0.3〜1.0mmol/gの範囲)の懸濁液を、10チューブ、チューブあたり3ml中に分配し、濾過し、ついで各チューブに、0.10gの樹脂をチャージした。樹脂は、DCM中で先に1.5時間膨張させ、濾過した。各チューブに、1.5mlの1,2−ジクロロエタン、0.3mmol(3mol過剰)の相当するアルデヒドまたはケトン(アルキル化剤)を装填し、30分間反応させた。0.3mmol(0.3ml)の、THF中NaBCNH3の1M溶液を加えた後、反応を、48時間室温にて実施した。反応が完了したら、すべてのチューブを濾過し、THF(2×3ml)、MeOH(3×3ml)で洗浄し、(〜30分間、Quest上で)吸引乾燥させた。
【0081】
段階2.アミノ酸でのアシル化.
全てのチューブを、DCMにて2回先洗浄した。各チューブに、1mlのジクロロメタンをチャージした。アミノ酸、1mlのDMF中0.25mmol(装填樹脂に対して2.5mol過剰)を、HATU、0.5mlのDMF中0.2mmol、0.076g(装填樹脂中2mol過剰)と混合し、15〜20分間そのままにした。ついで、1.5mlの酸−HATU混合物を各チューブに加え、ついで、0.5mlのジクロロメタン中の1.0mmol、0.17ml(装填樹脂に対して10mol過剰)のEtNiPr2の溶液を加えた。反応を45℃にて8時間、室温にて6〜8時間実施した。16時間後に、樹脂を濾過し、DMFとジクロロメタンの1:1混合液(1×3ml)、ジクロロメタン(1×3ml)で洗浄し、アシル化を、同量の薬剤で繰り返した。最後に、樹脂を濾過し、DMFとジクロロメタンの1:1混合液(1×3ml)、メタノール(3×3ml)で洗浄し、30分間(Quest上で)吸引乾燥させ、バイアル(バイアルあたり1樹脂)に移し、吸引下、デシケータ内で1時間乾燥させた。この段階の後、全ての樹脂を品質管理MSスペクトルにかけた。
【0082】
全ての続く反応段階−アミノ基のアルキル化(段階3)、Red−Alでの還元(段階4)および開裂(段階5)−は、本明細書のスキーム2に関して記述したのと同様に実施した。
【0083】
実施例2
デコンヴォルーション
活性ウェルのデコンヴォルーションを、プールする前に、アシル化段階の最後に分離して保存した、保管FMOC−保護化□−アミノアセトアミド樹脂(10樹脂、各0.05〜0.10g)からの、分離した化合物の再合成によって実施した。各樹脂を、96ウェルフィルタープレート中で分離したカラム(1または2または3など)に割り当て、X列(A、B、Cなど)の間で配分した。Xは、もとのスクリーニングプレート中で発見されたヒットの数である。列中の各ウェルに、選択したカルボニル化合物(ヒット中に存在する)を、他の必要な試薬と共に加え、最初に選択したカルボニル化合物を、列「A」の樹脂に加え、第二のカルボニル化合物を、列「B」の樹脂に加え、第三のカルボニル化合物を列「C」の樹脂に加えた、など。代表的な96ウェルデコンヴォルーションプレートのレイアウトを表3、図12に示している。
【0084】
反応プレートを密封し、室温にて72時間保持した。最後に、樹脂を濾過し、THF、DCM(1×1ml)、メタノール(2×1ml)で洗浄し、吸引下、デシケータ内で2時間乾燥させた。還元および開裂を、合成プロトコールの段階5および6にしたがって実施した。開裂からの産物ウェルを、ESI−MS(エレクトロスプレーイオン化質量分析)によって解析し、活性の同定を保証し、MICアッセイで試験した。
【0085】
Quest 210 Synthesizerを用いた、選択置換エチレンジアミンの固相合成
ジアミン化合物のライブラリーの合成のために上述した固相プロトコールを、選択した置換エチレンンジアミン化合物のスケールアップ合成に適用した。ここで、市販されているアミノアルコールプレ装填樹脂のアシル化から、最終産物の開裂までの全ての反応段階は、Quest器具のみを使用して実施し、これは20の平行した反応を可能にする。全ての未精製産物の精製は、CombiFlash(イスコ社(Isco,Inc,)上のフラッシュクロマトグラフィーにより実施し、90%より高い純度で、所望の産物を産出した。ここで、活性化合物の1つ、1−(2−{[3−(4−クロロフェノキシ)ベンジル]アミノ}−3−フェニルプロピル)ピペラジン−4−オールの合成を、例として以下で記述する。
【0086】
1−(2−{[3−(4−クロロフェノキシ)ベンジル]アミノ}−3−フェニルプロピル)ピペラジン−4−オール、化合物588の調製.
【0087】
【化4】
【0088】
【化5】
【0089】
活性化合物の代表的な合成.
FMOC保護基の除去. 市販されている樹脂(N−FMOC−ピペリジニル−4−オキシ)−(4−メトキシフェニル)メチルポリスチレン、範囲(リンカー)0.88mmol/g(0.4g、0.35mmol)を、Quest 210 Synthesizerの10mlチューブの1つに配置した。DMF(6ml)中のピペリジン(1.5ml)の溶液を加え、30分間撹拌し、濾過し、DMF(1×6ml)にて洗浄し、ピペリジンの添加を繰り返した。樹脂をDMF(1×8ml)およびDCM(2×8ml)で洗浄した。
【0090】
FMOC保護化L−フェニルアラニンでのアシル化. 樹脂を、20分間、5mlのDCMで先に洗浄した。1mlのDMF中のFMOC L−フェニルアラニン(0.0341g、0.88mmol)(装填樹脂に対して2.5mol過剰)を、3mlのDMF中のHATU(0.33g、0.88mmol)と混合し、チューブに加え、続いて、0.6mlのEtNiPr2の溶液を加えた。反応を室温で20時間実施した。反応が完了した後、樹脂を濾過し、DMFとジクロロメタンの1:1混合液(1×6ml)、ジクロロメタン(1×6ml)で洗浄し、同量の試薬で、アシル化を繰り返した。最後に、樹脂を濾過し、DMFとジクロロメタンの1:1混合液(2×6ml)で洗浄した。
【0091】
FMOC保護基の除去. DMF(6ml)中のピペリジンの溶液(1.5ml)を樹脂に加え、形成された懸濁液を30分間撹拌し、濾過し、DMF(1×6ml)で洗浄し、ピペリジンの添加を繰り返した。樹脂をDMF(1×8ml)およびメタノール(2×8ml)で洗浄し、Ar下20分間、吸引乾燥させた。
【0092】
カルボニル化合物との反応. 樹脂を、30分間、THFで先に洗浄し、濾過し、6mlのTHFをチャージした。3−(4−クロロフェノキシ)−ベンズアルデヒド(0.280ml、1.00mmol)を加え、ついで、30分後にTHF中(1ml,1mmol)のNaBCNH3の1.0M溶液を加えた。反応を、室温にて72時間続けた。最後に、樹脂を濾過し、THF(1×6ml)およびMeOH(2×6ml)で洗浄し、Ar下で30分間乾燥させた。
【0093】
Red−Alとの還元. チューブ内で得られた樹脂を、無水THF(2×6ml)で先に洗浄し、濾過した。チューブに、無水THF5mlをチャージし、続いて市販のRed−Alを攪拌しながら、トルエン中65+w%(1ml、3.2mmol)として加えた。4時間後、樹脂を濾過し、THF(2×1ml)およびMeOH(3×1ml)で洗浄し(MeOHの添加は、注意して進めるべきである)、Ar下で10分間乾燥させた。
【0094】
開裂. 合成のこの最後の段階のために、樹脂を含むチューブに、DCM(8ml)およびTFA(1ml)をチャージし、形成された明赤色懸濁液を、30分間撹拌した。樹脂を濾過し、濾液を回収チューブに回収した。この手順を繰り返した。DCMおよび過剰なTFAをシードバック上で蒸発させた。未精製1−(2−{[3−(4−クロロフェノキシ)ベンジル]アミノ}−3−フェニルプロピル)ピペリジン−4−オール(トリフルオロ酢酸塩の形態)を、以下の条件、プレ装填シリカゲルカラム、12g、流速15ml/分、25分間ラン、DCMで開始し、DCM/MeOH/NH4OH(600/400/10)で終了する勾配、を用いてCombiFlash(イスコ)上のFlash Chromatographyによって精製した。0.128mgの1−(2−{[3−(4−クロロフェノキシ)ベンジル]アミノ}−3−フェニルプロピル)ピペリジン−4−オール ジトリフルオロアセテート53%収率、少なくとも95%純度を得た。マススペクトル(ESI)m/z(MH)+451.2、453.2。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】図1は、アミノアルコールプレ装填樹脂から合成した、ジアミン産物の代表的な例を提供している。
【図2】図2は、市販されている、アミノアルコールプレ装填樹脂を提供している。
【図3】図3は、標的21,120個のエタンブトール類似体の調製したライブラリーを示している、表1を提供している。
【図4】図4は、エタンブトール類似体のもとの100,000化合物ライブラリーの合成を概略的に示している、スキーム1を提供している。
【図5】図5は、リンカーとしてアミノアルコールプレ装填樹脂とアミノ酸を使用することを概略的に示している、スキーム2を提供している。
【図6】図6は、アミノアルコールプレ装填樹脂で実施した、リンカーのさらなる改変を略図的に示している、スキーム3を提供している。
【図7】図7は、ライブラリー調製にて使用したアミノ酸を列記している、表2を提供している。
【図8】図8は、合成における試薬として使用した、代表的なカルボニル化合物を提供している。
【図9】図9は、MICおよびLuxデータの代表的な例を提供している。
【図10】図10は、活性分子中でのアルキル化モノマーの発生を示している。
【図11】図11は、ヒット化合物およびその構造のリストを提供している。
【図12】図12は、デコンヴォルーションのためのレイアウトを示している表3を提供している。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、微生物によって引き起こされる疾患、とりわけ結核を治療するための方法および組成物に関する。本発明はまた、改善された抗マイコバクテリア活性を持つ方法および組成物、すなわち、新規の置換エチレンジアミン化合物を含む組成物に関する。
【0002】
発明の背景
マイコバクテリア感染は、しばしば、結核のような疾患として現れる。マイコバクテリアによって引き起こされるヒト感染は、古くから広まっており、結核は、今日も、死亡の主要な原因のままである。19世紀中頃より、生活水準が上昇するのと平行して、疾患の発生率は下降しているが、マイコバクテリア疾患はまだ、医療物資が限られている国々で、疾病率および死亡率の主な原因であり続けている。さらに、マイコバクテリア疾患は、免疫無防備の患者における、重篤な播種性疾患を引き起こしうる。世界中の多くの保健機関の努力にも拘わらず、マイコバクテリア疾患の根絶は、達成されておらず、近々根絶されるとも考えられない。世界人工のほぼ三分の一がヒト型結核菌(mycobacterium tuberculosis)複合体、通常結核(TB)として呼ばれるものに感染しており、一年間に、およそ800万人が新しく感染し、200〜300万人がTBによって死亡している。結核(TB)は、単一の病原物によるヒトの死亡の一番大きな原因である(Dyeら,J.Am.Med.Association,282,677−686,(1999)、および2000 WHO/OMS Press Releaseを参照のこと)。
【0003】
減少して数十年後、現在TBは増加している。米国で、最大1000万人が感染していると信じられている。ほぼ28,000の新規患者が、1990年に報告され、1989年に比べて9.4パーセントの増加である。TB件数において、16パーセントの増加が、1985年〜1990年で観察された。過密な生活条件および共有空間が、TBの広がりにとりわけ関与し、これが、刑務所受刑者の間、およびより大きな米国都市におけるホームレスの間で観察された事例の増加に関与する。「後天性免疫不全症候群(Acquired Immune Deficiency Syndrome:AIDS)」の全ての患者のうちのおよそ半分が、マイコバクテリア感染を獲得し、TBがとりわけ打撃を与える合併症である。AIDS患者は、臨床TBを発症するより高いリスクにあり、抗−TB治療は、非AIDS患者におけるのと比べて効果が小さいように見える。したがって、感染がしばしば、致命的な播種性疾患へ進展する。
【0004】
結核菌(M.tuberculosis)以外のマイコバクテリアが、AIDS患者を悩ます日和見感染にてますます見られる。M.アヴィウム−イントラセルラ(M.avium−intracellulare)複合体(MAC)からの有機体、とりわけ第四および第八血細型(セロタイプ)が、マイコバクテリアの68%の量で、AIDS患者より単離される。多数のMACがみられ(組織グラムあたり最大1010抗酸菌)、したがって、感染AIDS患者に関する予後は悪い。
【0005】
世界保険機構(The World Health Organization:WHO)は、TBに対する戦いを奨励し続けており、「免役化における拡張プログラム(Expanded Program on Immunization:EPI)」のような予防イニシアチブ、および「直接観察治療短期コース(Directly Observed Treatment Short−Course:DOTS)」のような治療コンプライアンスイニシアチブを推奨している。TBの撲滅のために、診断、治療および予防が等しく重要である。活性TB患者の迅速な検出により、約90%の治癒が予測される早期治療を導かれうる。したがって、早期診断が、TBに対する戦いで重要である。さらに、治療コンプライアンスにより、感染の撲滅だけでなく、薬剤耐性株の出現の減少が確保されうる。
【0006】
薬物耐性結核菌の出現は、非常に心配な現象である。少なくとも1つの標準薬剤に耐性だと証明された新規TB患者の率は、1980年代初期の10パーセントから、1991年の23パーセントまで増加した。したがって、治療方法のコンプライアンスもまた、TBを撲滅させ、薬剤耐性株の出現を予防するための努力において、重大な要素である。マイコバクテリアの薬剤耐性株によって引き起こされる疾患のための、ワクチンとして、および治療として効果的な新規の治療薬剤の開発が等しく重要である。
【0007】
37以上のマイコバクテリア種が同定されているが、すべてのヒト感染の95%以上が、6つのマイコバクテリア種、すなわち結核菌、M.アヴィウム−イントラセルラ、M.カンサシ(M.kansasii)、M.ホルチュイタム(M.fortuitum)、M.ケロナエ(M.chelonae)、およびM.レプラエ(M.leprae)によって引き起こされる。ヒトで最も流行しているマイコバクテリア疾患は、結核菌、M.ボビス(M.bovis)またはM.アフリカナン(M.africanum)を含むマイコバクテリア種によって主に引き起こされる結核(TB)である(Merck Manual 1992)。感染は、典型的には、肺における末端経路に達することが可能な、感染性粒子の吸引によって開始される。肺胞マクロファージによる貪食ののち、ファゴサイトーシス細胞の最終的な破壊を伴って、桿菌が自由に複製可能である。ファゴサイトーシス細胞の破壊が、さらなるマクロファージ、およびリンパ球の、感染部位への移動を引き起こし、そこで、これらも最終的に除去される、カスケード効果が、結果として起こる。局所リンパ管、ならびに血流および、骨髄、脾臓、腎臓、骨および中枢神経系のような他の組織に移動する感染マクロファージによって初期ステージの間に、疾患がさらに広まる(Murrayら,Medical Microbiology,The C.V.Mosby Company 219−230(1990)を参照のこと)。
【0008】
マイコバクテリアの毒性に関与する因子のはっきりした理解はまだ存在しない。多くの治験責任者が、多くの細胞壁および細菌表面の脂質が、コロニー形態学および毒性への関与物として、関与していると見なした。証拠により、特定のマイコバクテリア細胞の表面上でのC−マイコシドが、マクロファージ内での有機体の生存を促進するために重要であることが示唆されている。トレハロース6,6’ジミクロラート、コード因子が、他のマイコバクテリアに関して関与している。
【0009】
コロニー形態および毒性の相互関係が、M.アヴィウムでとりわけ言明されている。M.アヴィウム桿菌は、種々の異なるコロニー形態でおこる。従来の研究室培地上で透明な、または荒いコロニーとして増殖する桿菌は、組織培地中のマクロファージ内で繁殖可能であり、感受性マウスに注入したときに、毒性であり、抗生物質に耐性である。研究室培養培地上で維持された荒いまたは透明桿菌はしばしば自発的に不透明なRコロニー形態を呈し、この時点ではマクロファージ内で増殖可能でなく、マウスで無毒性であり、抗生物質に非常に感受性である。M.アヴィウムの透明で荒い株と不透明株のコロニー形態における差は、ほとんどあきらかに、保護カプセルとして作用する、透明で荒い有機体の表面上をコートしている糖脂質の存在による。このカプセルまたはコーティングは、主にリソゾーマル酵素および抗生物質から、有害なM.avium有機体を明らかに保護する、C−マイコシドからなる。一方、非毒性の不透明形態のM.アヴィウムは、その表面にほとんどC−マイコシドを持たない。抗生物質への抵抗性と、マクロファージによる殺傷への抵抗性両方が、M.アヴィウムの表面上の糖脂質バリアによって寄与されてきた。
【0010】
マイコバクテリア感染の診断は、従来の診断が、唾液塗布標本、胸部X線検査(CXR)および臨床症状に基づいているが、病原体の単離および同定によって確認される。培地上でのマイコバクテリアの単離は、4〜8週間かかる。種同定は、さらに2週間かかる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、結核菌直接検査、または増幅結核菌直接検査(MTD)、および放射活性ラベルを用いた検出方法のような、マイコバクテリアを検出するための種々の他の手法が存在する。
【0011】
結核菌によって引き起こされる感染を検出するために広く使用されている1つの診断試験が、ツベルクリン皮膚試験である。多くの皮膚試験のバージョンが利用可能であるが、典型的には、古ツベルクリン(OT)または精製タンパク質誘導体(PPD)のツベルクリン抗原の2つの調製のうちの1つが使用される。抗原調製は、皮膚に皮膚内注射するか、または局所的に塗布し、その後、多面性イノキュレーター(Tine試験)を使用することで、皮膚内に浸潤性に運搬するかいずれかである。皮膚試験診断法に、いくつかの問題が存在する。たとえば、Tine試験は、内皮層に注入される抗原の量が、正確には制御出来ないので、一般的には勧められない(Murrayら,Medical Microbiology,The C.V.Mosby Company 219−230(1990)を参照のこと)。
【0012】
ツベルクリン皮膚試験が広く使用されてはいるが、これは、典型的には、結果を得るまでに2〜3日間必要であり、マイコバクテリアに暴露されても健康である被験者に偽陽性が時にみられるので、多くの場合、結果は不正確である。さらに、陽性の結果が、活性TB患者だけではなく、バシル カルメット−グレリン(Bacille Calmette−Guerin:BCG)でワクチン化したひと、およびマイコバクテリアに感染したが、疾患を発症していないひとでも観察されるので、間違った診断の頻度が高い。したがって、ツベルクリン皮膚試験によって、家庭TB接触のような、他の患者から、活性TB患者を区別することが難しい。さらに、ツベルクリン試験はしばしば、結核菌以外のマイコバクテリア(MOTT)で感染した個体で交差反応を生み出す。したがって、現在利用可能な皮膚試験を使用した診断は、よく誤りおよび間違いを起こす。
【0013】
薬物感受性有機体によって引き起こされる結核に対する標準治療は、4つの薬剤を2ヶ月間投与、続いて4ヶ月間2つの薬剤を投与、からなる6ヶ月計画である。6ヶ月の治療経過中にわたって投与される2つのもっとも重要な薬剤は、イソニアジドとリファンピンである。投与計画が比較的シンプルであるが、その投与は非常に複雑である。8〜9錠剤の日々の摂取が、治療の第一相の間にしばしば必要となり、見通しが困難で、わかりにくい。重度の疾患患者でさえ、しばしば数週間症状がなく、ほぼ全てが、数ヶ月内に治癒するように見える。しかしながら、治療を完了するまで続けない場合、患者は再発を経験する可能性があり、完了まで治療を続けない患者の再発率は高い。種々の形の患者中心ケアが、治療の遵守を促進するために使用される。患者が薬剤を服用することを確証することの最も効果的な方法は、直接観察治療を使用することであり、健康管理チームのメンバーが、患者がそれぞれの薬剤のそれぞれの用量を服用するかを観察することが含まれる。直接観察治療は、病院、患者住居または任意の相互に了解した場所で実施可能である。薬剤感受性有機体によって引き起こされた結核を有する患者、および治療を完了する患者のほぼすべては治癒し、再発のリスクが非常に低い(「Ending Neglet:The Elimination of Tuberculosis in the United States」L.Geiter Committee on the Elimination of Tuberculosis in the United States Division of Health Promotion and Disease Prevention, Institute of Medicine編.未発表)。
【0014】
必要なことは、予防接種および治療プロトコールの改善を含めた、効果的な治療投与計画である。現在可能な治療は、治療コンプライアンスの問題の結果として、もはや常に効果的ではなく、これらのコンプライアンスの問題が、薬剤耐性細菌株の発生に寄与している。
【0015】
エタンブトール(EMB)が、1988年に結核治療のために3億用量以上供給された、TBの治療のための広く使用されている抗生物質である。
【0016】
【化1】
1950年代にレデルレ ラボラトリーズ(Lederle Laboratories)によって開発されたエタンブトールは、非常に低毒性であり、よい薬物動態を持つ。しかしながら、エタンブトールは、約5μg/mlの比較的高い最小阻害濃度(MIC)を持ち、視神経炎を引き起こしうる。したがって、新規の、そしてより効果的な治療組成物の必要性が増加している(たとえば、米国特許第3,176,040号、米国特許第4,262,122号、米国特許第4,006,234号、米国特許第3,931,157号、米国特許第3,931,152号、米国再発行特許第29,358号、およびHauslerら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 11(2001)1679−1681を参照のこと)。エタンブトールの有用な効果の発見から数十年、TB治療における薬理学的進展はほとんどなかった。さらに、薬剤耐性株の複合発現、およびマイコバクテリア疾患のより流行拡散によって、新規治療組成物が、結核に対する戦いにおいて必須であることが、深刻に明らかになってきている。
【0017】
予防接種および治療プロトコールの改善を含む、明らかに効果的な治療処方計画が必要である。結核の発生を予防し、したがって、治療の必要性をなくす治療ワクチンが望ましい。エタンブトールのような現在可能な治療法が効果的ではあるが、薬剤耐性株の発現により、エタンブトールよりもより多目的である、新規の処方および組成物の必要性を生じている。現在可能な治療は、治療コンプライアンスを伴う問題の結果として、もはや常に効果的であるとはいえず、薬剤耐性マイコバクテリア菌株の発生につながる。必要なのは、高く効果的な治療を提供し、結核化学療法を短くするか、または簡便にする、新規の抗結核薬剤である。
【0018】
発明の概要
本発明は、感染疾患の治療のために効果的なエチレンジアミン化合物を含む方法および組成物を含む。本発明はまた、改善抗結核活性を持つ置換エチレンジアミンを含む、改善抗マイコバクテリア活性を持つ置換エチレンジアミンを含む方法および組成物も提供する。
【0019】
本発明は、種々のアミン化合物から誘導可能な、置換エチレンジアミン類を熟考する。本発明において、前記置換エチレンジアミン類は、以下の構造を基本とする。
【0020】
【化2】
本明細書で記述する置換エチレンジアミン化合物は、以下のように合成され、活性に関して選別される。置換エチレンジアミンの化学ライブラリーを、スプリットおよびプール技術を用いて、固体ポリスチレン支持体上で調製する。この技術により、異なる組の置換エチレンジアミンの合成が可能になる。これらのジアミンを、結核菌の最近完了したゲノム配列に基づく、ハイスループットスクリーニング(HTS)アッセイ、および最小阻害濃度(MIC)アッセイを含む、in vitro生物学的アッセイを用いて、抗−TB活性に関して選別する。
【0021】
本明細書で記述した方法および組成物は、細菌およびウイルスに限定はしないがこれを含む、感染性有機体によって引き起こされる疾患に対して効果的である、置換エチレンジアミンを含む。
【0022】
本発明の1つの実施態様は、マイコバクテリア疾患に対して効果的な、置換エチレンンジアミンを含む方法および組成物を提供する。
【0023】
本発明の他の実施態様は、マイコバクテリア疾患に対して、50μMまたはそれより低いMICを持つ、置換エチレンンジアミンを含む、方法および組成物を提供する。
【0024】
本発明の他の実施態様は、マイコバクテリア疾患に対して、25μMまたはそれより低いMICを持つ、置換エチレンンジアミンを含む。本発明のまた他の実施態様は、マイコバクテリア疾患に対して、12.5μMまたはそれより低いMICを持つ、置換エチレンンジアミンを含む。本発明のまた他の実施態様は、マイコバクテリア疾患に対して、5μMまたはそれより低いMICを持つ、置換エチレンンジアミンを含む。本発明の他の実施態様において、方法および組成物には、10%またはそれより大のHTS Luc活性を持つ、置換エチレンンジアミンが含まれる。
【0025】
本発明のまた他の実施態様において、方法および組成物には、1つのアミノ基が、一級アミンから誘導され、他のアミン基が、一級および二級アミンから誘導される、置換エチレンンジアミン類が含まれる。
【0026】
本発明は、置換エチレンジアミンの種々の塩複合体および他の置換誘導体を熟考する。本発明はまた、置換エチレンンジアミンのエナンチオマーおよび他の立体異性体、およびその置換誘導体も熟考する。本発明はさらに、ヒトに限定はしないがこれを含む動物に対する治療を熟考する。
【0027】
したがって、感染性物質によって引き起こされる疾患の治療および予防のための方法および組成物を提供することが、本発明の1つの目的である。
【0028】
したがって、感染性疾患の治療および予防のための方法および組成物を提供することが、本発明の1つの目的である。
【0029】
本発明の他の目的は、結核に限定はしないがこれを含む、マイコバクテリア疾患の治療および予防のための方法および組成物を提供することである。
【0030】
本発明のまた他の目的は、置換エチレンンジアミン類を含む組成物を用いる、感染疾患の治療および予防のための方法および組成物を提供することである。
【0031】
本発明の他の目的は、置換エチレンンジアミン類を含む組成物を用いる、マイコバクテリア疾患の治療および予防のための方法および組成物を提供することである。
【0032】
本発明のまた他の目的は、置換エチレンンジアミン類を含む組成物を用いる、結核の治療および予防のための方法および組成物を提供することである。
【0033】
本発明の他の目的は、ジアミンが、50μMまたはそれより低いMICを持つ、置換エチレンジアミンを含む組成物を用いる、結核の治療および予防のための方法および組成物を提供することである。
【0034】
本発明の他の目的は、ジアミンが、25μMまたはそれより低いMICを持つ、置換エチレンジアミンを含む組成物を用いる、結核の治療および予防のための方法および組成物を提供することである。
【0035】
本発明の他の目的は、ジアミンが、12.5μMまたはそれより低いMICを持つ、置換エチレンジアミンを含む組成物を用いる、結核の治療および予防のための方法および組成物を提供することである。
【0036】
本発明のまた他の目的は、ジアミンが、5μMまたはそれより低いMICを持つ、置換エチレンジアミンを含む組成物を用いる、結核の治療および予防のための方法および組成物を提供することである。
【0037】
本発明のまた他の目的は、ジアミンが、10%またはそれより大のHTS/Luc活性を持つ、置換エチレンジアミンを含む組成物を用いる、結核の治療および予防のための方法および組成物を提供することである。
【0038】
本発明のまた他の目的は、マイコバクテリア疾患の治療および予防のための、治療的処方のための組成物を提供することである。
【0039】
本発明の他の目的は、結核菌複合体、M.アヴィウム−イントラセルラ、M.カンサリ、M.ホルチュイタム、M.ケロナエ、M.レプラエ、M.アフリカナン、M.ミクロチ(M.microti)、M.アビウム パラツベルクロシス(M.avium paratuberculosis)またはM.ボビス(M.bovis)を含むマイコバクテリア種によって引き起こされるマイコバクテリア疾患の治療および予防のための治療的処方に関する組成物を提供することである。
【0040】
本発明のこれらの、そして他の目的、特徴および利点は、以下の開示実施態様の詳細な記述および付随する請求項の概説によって明らかになるであろう。
【0041】
詳細な記述
本発明は、本明細書に含まれる特定の実施態様の以下の詳細な記述に関連して、より簡単に理解されるであろう。しかしながら、本発明が、その特定の実施態様の特定の詳細に関連して記述されているが、そのような詳細が、本発明の目的における制限として認識されるべきであるとは意図していない。本明細書で言及した参考文献の全ての文章は、2002年5月17日に申請された米国特許仮出願明細書番号第60/381,244号、および2002年5月17日に申請された米国特許明細書第10/147,587号を含む参考文献によって、そのすべてが本明細書に組み込まれている。
【0042】
結核を引き起こすもののようなマイコバクテリア感染は、発生がいったん減少したと考えられても、リバウンドし、再び重篤な健康を脅かすものとなる。結核(TB)は、単一の病原物によって引き起こされる、多数のヒトの死亡の原因であり、毎年、結核に感染した200〜300万人が死亡している。ヒトが互いに密集している場所、または標準の住居で住んでいる場所で、マイコバクテリアによって感染したヒトが増加して見られる。免疫無防備状態の個体は、マイコバクテリアへの感染およびそのような感染からの死亡の大きなリスクを持つ。さらに、マイコバクテリアの薬剤耐性株の出現は、そのような感染個体の治療の問題を引き起こす。
【0043】
マイコバクテリアに感染している多くのヒトは貧しく、または、不適切な医療設備の場所で住んでいる。様々な障害(経済的、教育レベルなど)の結果として、これらの個体の多くが、処方治療計画を完了することが不可能である。結局、これらのおよび他の個体による持続した非コンプライアンスにより、疾患が流行する。この非コンプライアンスは、マイコバクテリア菌の薬剤耐性株の出現によって、しばしば、いっそう大きくなる。種々のマイコバクテリア菌株を標的にする、効果的な組成物およびワクチンが、増加する多くの結核患者を制御下におくために必要である。
【0044】
化学療法が、結核に対する標準の治療である。いくつかの現在の化学療法治療が、2ヶ月毎日投与、または4〜12ヶ月隔週投与で、3〜4薬剤の併用使用を必要とする。表1に、標準の結核薬剤投与計画に関する、いくつかの治療スケジュールを列記している。
【0045】
【表1】
数十年にわたり現存する抗生物質の誤使用、および長期および複雑な治療投与計画をともなう乏しいコンプライアンスよって、マイコバクテリア結核の突然変異が導かれ、世界中で、結核の制御を脅かす、薬剤耐性の蔓延がつくりだされた。イソニアジド、リファンピン、ピラジンアミド、エタンブトールおよびストレプトマイシンのような、第一線の(フロントライン)薬剤を含む、大多数の現在処方されている薬剤は、1950年代から1970年代に開発された。したがって、結核化学療法のこの初期の開発は、その処理において、結核菌のゲノム配列の関わり、ここ10年間の薬理学的薬剤発見の革新、および国家的薬剤試験および併用化学の使用を有していなかった。
【0046】
したがって、薬剤耐性結核菌株の治療、および潜在的結核感染の治療には、非常に効果的な治療を提供する新規抗結核薬剤、および短縮、簡便化結核化学治法が必要である。さらに、疾患の人口統計が、コストが有意な因子であることを示しているので、これらの薬剤が、低コスト合成によって調製されることが望ましい。
【0047】
本発明は、細菌を含むがこれに限定されない微生物によって引き起こされる疾患の治療および予防において効果的である、置換エチレンンジアミン化合物類のクラスを含む方法および組成物を提供する。とりわけ、本発明の方法および組成物は、微生物である結核菌の増殖を阻害することにおいて、効果的である。本発明の方法および組成物は、ヒトならびに他の動物におけるマイコバクテリウム感染の治療を意図している。たとえば、本発明は、M.ボビスに感染したウシの治療のためにとりわけ有用であり得る。
【0048】
本明細書で使用するところの語句「結核」は、結核菌複合体を含むマイコバクテリウム種によって引き起こされる感染に通常関連した疾病状態を含む。語句「結核」はまた、結核菌以外のマイコバクテリウム(MOTT)によって引き起こされるマイコバクテリウム感染にも関連している。他のマイコバクテリウム種には、M.アヴィウム−イントラセルラ、M.カンサリ、M.ホルチュイタム、M.ケロナエ、M.レプラエ、M.アフリカナン、およびM.ミクロチ、M.アビウム パラツベルクロシス、M.イントラセルラレ(M.intracellulare)、M.スクロフラセウム(M.scrofulaceum)、M.キセノピ(M.xenopi)、M.マリナム(M.marinum)、M.ウルセランス(M.ulcerans)が含まれる。
【0049】
本発明はさらに、細菌、菌群、寄生、およびウイルス因子によって引き起こされるものを、限定はしないが含む、感染性疾患の治療に効果的な方法および組成物を含む。そのような感染性因子の例には、以下の、ブドウ球菌属、連鎖球菌科、ナイセリア科、コックシ、腸内細菌科、シュードモナス科、ビブリオ科、カンピロバクター、パスツレラ科、ボルデテラ属、フランシセラ属、ブルセラ属、レジオネラ科、バクテロイデス科、グラム陰性桿菌、クロストリジウム属、コリネバクテリウム属、プロピオン好酸菌属、グラム陽性桿菌、炭疸(anthrax)、アクチノミセス属、ノカルジア属、マイコバクテリウム属、トレポネーマ属、ボレリア属、レプトスピラ属、マイコプラスマ属、ウレアプラスマ属、リケッチア属、クラミジア属、全身性真菌(systemic mycoses)、日和見性真菌(opportunistic mycoses)、原生動物門、線虫(nematodes)、吸虫綱(trematodes)、多節条虫亜綱(cestodes)、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、パポバウイルス、肝炎ウイルス、オルソミクソウイルス、パラミクソウイスル、コロナウイルス、ピコルナウイルス、レオウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、ブンヤウイルス科、ラプドウイルス、ヒト免疫欠損ウイルスおよびレトロウイルスが含まれる。
【0050】
本発明はさらに、結核、らい病、クローン病、獲得性免疫欠損症候群、ライム病、ネコ引っ掻き病、ロッキー山紅斑熱およびインフルエンザに限定はしないがこれを含む、感染性疾患の治療に有用な方法および組成物を提供する。
【0051】
エタンブトール由来の第二世代抗生物質
本発明はとりわけ、市販されているアミノアルコールを先に装填した樹脂から開始した、改変エチレンンリンカーを含む、エタンブトールファミリーのジアミン化合物類の新規ライブラリーを指向する。
【0052】
【化3】
エタンブトール類似体の本発明者らのライブラリーの構造多様性を増強させる、および結核菌に対する構造的に多様なジアミン類の活性における、改変リンカーの影響を査定するための努力において、アミノ酸を、2つのアミン部分間の結合リンカー内へ挿入する合成スキームが改変された。アミノ酸の使用は、(R4のように)リンカー内への他の多様性要素の導入を可能にし、同様にキラリティーを導入可能なので、特に興味深い。
【0053】
分子内にアミノアルコール部位をもつことによって、エタンブトールに緊密に関連するジアミン類のサブ−ライブラリを合成することは、本プロジェクトにとって、重要であるが、2つのアミン原子間の精巧なリンカーが存在することにより、また非常に異なる(代表的な例に関して、図1を参照のこと)。また、先にアミノアルコール類を装填した2−クロロトリチル樹脂は市販されており(図2)、提案された化学によく適用するという事実は非常に魅力的である。
【0054】
ライブラリー内の化合物を、ウェルあたり10化合物のプール中で、96ウェルフォーマットにて、mmolのスケールで調製した(プレートの大部分)。表1(図3)は、合成したプレートに関するデータをまとめている。
【0055】
アミノアルコールプレ装填樹脂を用いた固相合成. 20枚の96ウェルプレートを調製した。本発明者らの第一100,000化合物ライブラリーを作製するため(スキーム1、図4)に使用したのと同様に、市販されているアミノアルコールプレ装填樹脂から開始する4および5段階合成経路を適用して、標的ジアミン類を作製した(それぞれスキーム2および3、図5および6)。合成において、いくつかの違いがある。(1)スキーム1の2つの第一段階は、スキーム2および3では放棄される。(2)スキーム1において、リンカーのC1官能基の求核性置換を介して、全体のシントンとして、第二アミンを分子内に導入し、一方で、スキーム2および3では、カルボニル化合物による存在するアミノ部位の改変を介して進む。
【0056】
スキーム2. 購入した、アミノアルコールプレ装填2−クロロトリチル樹脂のアシル化を、室温にて、DCM/DMF混合液中のHATU(O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N,N−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)と、EtN(iso−Pr)2の存在下で、FMOC保護アミノ酸とのペプチド結合を介して実施した。反応を2回実施して、産物収率を改善した。このライブラリーを作製するために使用したアミノ酸のリストを、表2(図7)で示している。
【0057】
脱保護(FMOC基の除去)を、室温でのピペリジンとの反応によって実施した。アミノ基の誘導体化を、72〜96時間、室温にて、NaBCNH3の存在下、アルデヒド類、ケトン類およびカルボン酸類のような96の種々のカルボニル化合物との還元アルキル化によって実施した。カルボニル化合物の選別は、最終ジアミン産物が、エタンブトール類似体の先のライブラリーから合成されたヒット化合物にて見られた置換基と同様または類似の型を持ち、ならびに、構造多様性を持つように、実施した(図8)。使用したカルボニル化合物の完全リストを、表3にて示している(図8)。
【0058】
アミノエチレンンアミド類の相当するジアミン類への還元を、室温にて、可溶性還元剤65+w% Red−Alを用いて実施した。産物の樹脂からの開裂を、ジクロロメタン中のトリフルオロ酢酸10%溶液で実施して、結果として、ジアミン類のTFA塩を形成した。
【0059】
ライブラリー産出のために、合成スキームのアクリル化段階を、チューブあたり、0.1〜0.15gの樹脂のスケールで、Quest 210 Synthesizerを用いて実施した。この反応に続き、形成した樹脂を、入念に洗浄し、乾燥させ、ついで10樹脂のグループを一緒にプールした。再合成および活性物のデコンボルーション(deconvolution)を容易にするために、少量の各樹脂(〜0.05g)をプールする前に保管した。
【0060】
FMOC基の脱保護、カルボニル要素の添加、還元および開裂を、ワットマン ポリフィルトロニクス(Whatman Polyfiltronics)によるCombiclamps系、またはロビンス サイエンティフィック(Robbins Scientific)によるFlexChem系を用いて、96−ウェル反応ブロック中で実施した。DCM/THFの2:1混合液中にプールした樹脂の懸濁液を、1つの反応プレート中で均一に希釈し、ウェルあたりおよそ10mgの樹脂を得た。96の多様なカルボニル化合物を、ウェルあたり1つのカルボニル化合物、各個々の10樹脂プールに、1枚の96ウェルプレート鋳型中に並べて加え、予想されるプレートあたり960ジアミン類を産出した。還元を、同様の様式で実施し、開裂および保存プレートへの充填を実施し、続いて生物学的アッセイの前にTFAを蒸発させた。
【0061】
調製したジアミン類のライブラリーの特性評価を、プレートあたり2つの無作為に選択した列(16試料)、総数の17%を用いて、エレクトロスプレーイオン化質量分析によって実施した。化合物の好結果の産出が、計算した質量の分子イオンの出現に基づいた。合成のために使用したアミノ酸に依存して、予想したイオンのパーセンテージが観察され、したがって、予測した化合物が形成され、31〜96%の範囲であった(表1、図3)。MS解析に基づき、標的15,360化合物の中から、7,500ジアミン類が実際に形成された。アミノメチルシクロヘキシルカルボン酸、チエニルアラニン、またはフェニルアラニンのようなアミノ酸が、よい収率(88〜96%)で、所望の化合物を産出した。同時に、アルギニン、テトラヒドロイソキノリンカルボン酸およびチアゾリジンカルボン酸のようないくつかのアミノ酸は、相当する産物を生み出さなかった。
【0062】
スキーム3. 改変リンカーでの、エタンブトール類似体の調製が成功したことで、本発明者らは、市販のアミノ−アルコールプレ装填樹脂を用いた、ジアミンの他のサブライブラリーの合成を試みることを勇気づけられた(スキーム3、図6)。この経路により、(スキーム2、図5)によって産出されたものと同様であるが、第一窒素元素に所望の置換基を持つジアミン化合物が産出された。
【0063】
本発明者らは、市販されている1,4−アミノブタノールプレ装填樹脂から開始することで、この方法を例示した。本発明者らは、スクリーニングアッセイにて、もっとも良い予備結果を与えた、5つのアミノ酸Phe、Amc、Cha、TrpおよびInp(表1)を用いて、5つのプレートを調製した(表1中のヒットの数を参照のこと)。非常に初期の段階は、室温にて、NaBCNH3の存在下での、10カルボニル化合物(シクロオクタノン、4−ベンジルオキシベンズアルデヒド、(S)−シトロネラル、ミルテナル、テトラヒドロ−4H−ピラン−4−オン、ノルカンファー、4−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノン、ゼラニルラクトン、2−デカロン、2−アダマンタノン)による、還元アルキル化を介した、アミノ基の誘導体化であった。以下の段階は、スキーム2に関して本発明者らが先に報告したのと同様の様式で実施した。
【0064】
結核菌に対するライブラリーのスクリーニングと活性混合物のデコンヴォルーション. Rv0341ならびにMICsへのルシフェラーゼのプロモーター融合を含む、組換え体マイコバクテリアを用いたハイスループットアッセイを使用して、このエタンブトール類似体の新規化合物ライブラリーを選別した、図9。
【0065】
198個の化合物混合物が、抗TB活性を持つことが示され(HTS Lucアッセイ中、<12.5μMの活性、および/または<12.5μMのMIC)、表1、デコンヴォルーションのために選択した。全ての198個の化合物混合物のデコンヴォルーションを、(一緒にプールする前の)保管所に保存した樹脂を用いて、96ウェルフォーマットで、ジアミン化合物の不連続再合成、および同様の合成スキーム2および3によって実施した。同様のスクリーニング試験を、各デコンヴォルーションプレートに関して使用した。ほとんどのカルボニル化合物が、抗TB活性に関与する強力なシントンとしては同定されなかった(図5)。実施したデコンヴォルーションによって、新規の構造の118ヒットが、強力な抗TB化合物として明らかになり(表4)、これらの化合物のうち38個が、両方のアッセイで活性であることが証明された。図11は、ヒット化合物とそれらの構造のリストを提供している。
【0066】
処方
本発明の置換エチレンンジアミン化合物を含む組成物を含む、治療剤を、公知の技術を用いて、薬理学的に許容可能な担体中でのような、生理学的に許容可能な処方中で調製可能である。たとえば、置換エチレンンジアミン化合物を、薬理学的に許容可能な賦形剤と混合して、治療組成物を形成する。
【0067】
本発明の組成物は、固体、液体またはエアゾルの形態で投与しうる。固体組成物の例には、錠剤、クリーム、ソープおよび埋め込み可能用量ユニットが含まれる。錠剤は経口で投与しうる。治療クリームおよび抗マイコバクテリアソープは、局所で投与しうる。埋め込み可能用量ユニットは、局所、たとえば肺中に投与するか、または治療組成物の全身放出のために、たとえば皮下に埋め込みうる。液体組成物の例には、筋肉内、皮下、静脈内、動脈内注射に適合する処方、および、局所、眼球内投与のための処方が含まれる。エアゾル処方の例には、肺への投与のための吸入処方が含まれる。
【0068】
本明細書で使用するところの、持続放出マトリックスは、酵素的または酸/塩基加水分解によって、または溶解によって分解可能である、物質、通常はポリマーからできたマトリックスである。いったん体内に挿入されたならば、マトリックスは、酵素および体液によって作用する。持続放出マトリックスは、望ましくは、リポソーム、ポリラクチド、ポリグリコリド(グルコール酸のポリマー)、ポリアクチドコ−グリコリド(乳酸とグルコール酸のコポリマー)、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリペプチド、ヒアルロン酸、コラーゲン、コンドロイチン硫酸、カルボン酸、脂肪酸、リン脂質、多糖類、核酸、ポリアミノ酸、フェニルアラニン、チロシン、イソロイシンのようなアミノ酸、ポリヌクレオチド、ポリビニルプロピレン、ポリビニルピロリドンおよびシリコーンを限定はしないが含む、生物適合性物質から選択される。好ましい生物分解性マトリックスは、ポリラクチド、ポリグリコリドまたはポリラクチド コ−グリコリドいずれかのうちの1つのマトリックスである。
【0069】
組成物の用量は、治療する状態、使用する特定の組成物、および患者の体重や状態のような他の臨床因子、および投与経路に依存しうる。好適な用量は、100〜0.1mg/kgの範囲であり得る。より好ましい用量は、50〜0.2mg/kgの範囲であり得る。より好ましい用量は、25〜0.5mg/kgの範囲であり得る。錠剤または他の溶媒形態には、置換エチレンンジアミン1〜1000mgが含まれうる。エタンブトールまたは他の抗結核薬剤と同様の用量範囲および投与スケジュールを使用しうる。
【0070】
組成物は、マイコバクテリア疾患と組み合わせで起こる他の疾患の治療として、他の組成物および手順との組み合わせで投与しうる。たとえば、結核はしばしば、後天性免疫欠損症候群(AIDS)に関連した第二合併症として起こる。手術、放射線照射または化学療法のようなAIDS治療を受けている患者は、本明細書で記述した、治療方法および組成物から利益を得うる。
【0071】
以下の特定の実施例は、置換エチレンンジアミン化合物の特定の合成、および結核菌のコロニーの増殖のin vitroおよびin vivo抑制への適用として、本発明を例示している。さらに、R.Leeら、J.Comb.Chem 2003,5,172−187の教えが、そのすべてが参考文献にて本明細書に組み込まれている。化学的な手順での小さな変更を含む他の例が、当業者に明らかであり、本発明が、これらの特定の例示実施例に限定されないことが理解されるであろう。
【0072】
実施例I
1.市販アミノアルコールプレ装填樹脂からのジアミンライブラリーの作製
一般手順: 全ての試薬は、シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)から購入した。アミノアルコールプレ装填樹脂は、ノババイオケム(NovaBiochem)から購入した。溶媒、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、エチレンジクロライド、メタノールおよびテトラヒドロフランは、アルドリッチより購入し、受領したまま使用した。固相合成を、Quest 210 Synthesizer(アルゴノート テクノロジーズ(Argonaut Technologies))および結合化学器具(ワットマン ポリフィルトロニックス(Whatman Polyfiltronics)およびロビンス サイエンティフィック(Robbins Scientific))上で実施した。溶媒の蒸発は、SpeedVac AES(サバント(Savant))を用いて実施した。マススペクトルデータを、オートサンプラーを備えたパーキンエルマー(Perkin Elmer)/サイエックス(Sciex)、API−300、TQMS上の、エレクトロスプレーイオン化技術によって得た。
【0073】
スキーム2.工程の記述.
アシル化段階を、Quest 210 Synthesizerを用いて、5mlのチューブ内で実施した。FMOC基の除去、カルボニル化合物での還元アルキル化反応、Red−Alでの還元、固体支持体からの開裂を、96深(2ml)ウェル、化学的耐性なプレート中で実施した。
【0074】
段階1.アミノ酸での、アミノアルコールプレ装填樹脂のアシル化.
各チューブに、0.150gの相当する樹脂(0.3〜1.0mmol/g 範囲)を装填し、全ての樹脂を、1.5時間DCM中で先に膨張させ、濾過した。Fmoc保護樹脂を使用する場合、樹脂を2.5mlの、DMF中ピペリジン20%溶液とともに10分間撹拌し、濾過し、2.5mlのDMFで洗浄した。この手順を、撹拌時間を20分にして、繰り返した。全ての樹脂を濾過した後、DMF(1×2.5ml)およびDCM(2×3ml)で洗浄した。各チューブに、1mlのジクロロメタンをチャージした。アミノ酸、1mlのDMF中0.38mmol(装填樹脂に対して2.5mmol過剰)を、HATU、0.3mmol、0.5mlのDMF中0.11g(装填樹脂に対して2mol過剰)と混合し、15〜20分間放置した。ついで1.5mlの混合酸−HATUを各チューブに加えて、ついで、0.5mlのジクロロメタン中、1.5mmol、0.26mlのEtNiPr2の溶液(装填樹脂に対して10mol過剰)を加えた。反応を、45℃にて8時間、室温にて6〜8時間実施した。反応が完了した後、樹脂を濾過し、DMFおよびジクロロメタンの1:1混合液(1×3ml)、ジクロロメタン(1×3ml)で洗浄し、アシル化を、同量の薬剤で繰り返した。最後に、樹脂を濾過し、DMFとジクロロメタンの1:1混合液(1×3ml)、メタノール(3×3ml)で洗浄し、30分間(Quest上で)吸引し、バイアルに移し(バイアルあたり1つの樹脂)、1時間吸引下デシケータ内で乾燥させた。この段階の後、全ての樹脂を、MSスペクトルを用いた、品質管理に供した。
【0075】
段階2.アミノ基のアルキル化.
脱保護. 最初の3段階で調製した10個の樹脂を、一緒にプールし、全ての必要なデコンヴォルーションのためにおよそ各0.03gを個々のバイアルに残した。100mlのジクロロメタンとTHFの2:1混合液中の樹脂混合物(0.08〜1.0g)の懸濁液を、2枚の96ウェルフィルタープレート中に分配し、濾過多岐管(filtration manifold)を用いて濾過した。反応プレートをコンビクランプ内に移し、0.2mlの、DMF中のピペリジン20%溶液を加えて、Fmoc保護基を除去し、10分間放置した。10分後、プレートを濾過し、0.2mlのDMFで洗浄し、脱保護を、DMF中のピペリジン20%溶液、0.2mlで繰り返し、20分間静置した。その後、プレートを濾過し、DMF(ウェルあたり0.2ml)およびジクロロメタン(ウェルあたり2×0.5ml)で洗浄した。
【0076】
カルボニル化合物との反応. 反応プレート上の列Aの各ウェルに、0.1mlのジクロロメタン、0.08mlのマスタープレートからの、DMF中の適切な酸の〜1.0M溶液、0.05mlのPyBropのDMF溶液(0.012g、0.025mmol、装填樹脂に対して2.5mol過剰)および0.05mlのジクロロメタン中EtNiPr2(0.017ml、0.10mmol、装填樹脂に対して10mol過剰)をチャージした。列B〜Hの各ウェルに、0.1mlのTHF、0.160mlのマスタープレートからのDMF中の適切なアルデヒドまたはケトンの〜1.0M溶液をチャージし、30分間反応させた。30分後に、THF中のNaBCNH3の1.0M溶液、0.075ml(0.075mmol)を加えた。反応プレートを密封し、室温で72時間保存した。最後に、樹脂を濾過し、THF、DCM(1×1ml)、メタノール(2×1ml)で洗浄し、減圧下、デシケータ内で3時間乾燥させた。
【0077】
段階3.Red−Alとの反応.
反応プレートを、コンビクランプ内においた。Red−Al(トルエン中65+w%)とTHFの1:6混合液、ウェルあたり0.6ml(ウェルあたり0.28mmolのRed−Al)を加え、4時間反応させた。反応の完了後、樹脂を濾過し、THF(2×1ml)、メタノール(3×1ml)で洗浄し、濾過分岐管中で乾燥させた。
【0078】
段階4.開裂.
この段階は、開裂分岐管を用いて実施した。(本分岐管内の、回収プレートの上部に配置した)反応プレートに、TFA、ジクロロメタンおよびトリイソプロピルシランの10:88:2混合液、ウェルあたり0.5mlをチャージした。15分後、溶液を濾過し、回収プレートの適当なウェルに回収した。この手順を繰り返した。溶媒をシードバック上で蒸発させ、残余試料が試験のために準備された。
【0079】
スキーム3.処理の記述.
4−アミノブタン−1オール樹脂の還元アルキル化段階、およびアシル化段階を、Quest 210 Synthesizerを用いて、5mlチューブ中で実施した。FMOC基の除去、カルボニル化合物との還元アルキル化反応、Red−Alでの還元、および固体支持体からの開裂を、96−深(2ml)ウェル、化学的耐性プレート内で実施した。
【0080】
段階1.4−アミノブタン−1−オール樹脂の還元アルキル化.
ジクロロメタンとTHFの2:1混合液30ml中の、1.0g(1.0mmolまで)樹脂(0.3〜1.0mmol/gの範囲)の懸濁液を、10チューブ、チューブあたり3ml中に分配し、濾過し、ついで各チューブに、0.10gの樹脂をチャージした。樹脂は、DCM中で先に1.5時間膨張させ、濾過した。各チューブに、1.5mlの1,2−ジクロロエタン、0.3mmol(3mol過剰)の相当するアルデヒドまたはケトン(アルキル化剤)を装填し、30分間反応させた。0.3mmol(0.3ml)の、THF中NaBCNH3の1M溶液を加えた後、反応を、48時間室温にて実施した。反応が完了したら、すべてのチューブを濾過し、THF(2×3ml)、MeOH(3×3ml)で洗浄し、(〜30分間、Quest上で)吸引乾燥させた。
【0081】
段階2.アミノ酸でのアシル化.
全てのチューブを、DCMにて2回先洗浄した。各チューブに、1mlのジクロロメタンをチャージした。アミノ酸、1mlのDMF中0.25mmol(装填樹脂に対して2.5mol過剰)を、HATU、0.5mlのDMF中0.2mmol、0.076g(装填樹脂中2mol過剰)と混合し、15〜20分間そのままにした。ついで、1.5mlの酸−HATU混合物を各チューブに加え、ついで、0.5mlのジクロロメタン中の1.0mmol、0.17ml(装填樹脂に対して10mol過剰)のEtNiPr2の溶液を加えた。反応を45℃にて8時間、室温にて6〜8時間実施した。16時間後に、樹脂を濾過し、DMFとジクロロメタンの1:1混合液(1×3ml)、ジクロロメタン(1×3ml)で洗浄し、アシル化を、同量の薬剤で繰り返した。最後に、樹脂を濾過し、DMFとジクロロメタンの1:1混合液(1×3ml)、メタノール(3×3ml)で洗浄し、30分間(Quest上で)吸引乾燥させ、バイアル(バイアルあたり1樹脂)に移し、吸引下、デシケータ内で1時間乾燥させた。この段階の後、全ての樹脂を品質管理MSスペクトルにかけた。
【0082】
全ての続く反応段階−アミノ基のアルキル化(段階3)、Red−Alでの還元(段階4)および開裂(段階5)−は、本明細書のスキーム2に関して記述したのと同様に実施した。
【0083】
実施例2
デコンヴォルーション
活性ウェルのデコンヴォルーションを、プールする前に、アシル化段階の最後に分離して保存した、保管FMOC−保護化□−アミノアセトアミド樹脂(10樹脂、各0.05〜0.10g)からの、分離した化合物の再合成によって実施した。各樹脂を、96ウェルフィルタープレート中で分離したカラム(1または2または3など)に割り当て、X列(A、B、Cなど)の間で配分した。Xは、もとのスクリーニングプレート中で発見されたヒットの数である。列中の各ウェルに、選択したカルボニル化合物(ヒット中に存在する)を、他の必要な試薬と共に加え、最初に選択したカルボニル化合物を、列「A」の樹脂に加え、第二のカルボニル化合物を、列「B」の樹脂に加え、第三のカルボニル化合物を列「C」の樹脂に加えた、など。代表的な96ウェルデコンヴォルーションプレートのレイアウトを表3、図12に示している。
【0084】
反応プレートを密封し、室温にて72時間保持した。最後に、樹脂を濾過し、THF、DCM(1×1ml)、メタノール(2×1ml)で洗浄し、吸引下、デシケータ内で2時間乾燥させた。還元および開裂を、合成プロトコールの段階5および6にしたがって実施した。開裂からの産物ウェルを、ESI−MS(エレクトロスプレーイオン化質量分析)によって解析し、活性の同定を保証し、MICアッセイで試験した。
【0085】
Quest 210 Synthesizerを用いた、選択置換エチレンジアミンの固相合成
ジアミン化合物のライブラリーの合成のために上述した固相プロトコールを、選択した置換エチレンンジアミン化合物のスケールアップ合成に適用した。ここで、市販されているアミノアルコールプレ装填樹脂のアシル化から、最終産物の開裂までの全ての反応段階は、Quest器具のみを使用して実施し、これは20の平行した反応を可能にする。全ての未精製産物の精製は、CombiFlash(イスコ社(Isco,Inc,)上のフラッシュクロマトグラフィーにより実施し、90%より高い純度で、所望の産物を産出した。ここで、活性化合物の1つ、1−(2−{[3−(4−クロロフェノキシ)ベンジル]アミノ}−3−フェニルプロピル)ピペラジン−4−オールの合成を、例として以下で記述する。
【0086】
1−(2−{[3−(4−クロロフェノキシ)ベンジル]アミノ}−3−フェニルプロピル)ピペラジン−4−オール、化合物588の調製.
【0087】
【化4】
【0088】
【化5】
【0089】
活性化合物の代表的な合成.
FMOC保護基の除去. 市販されている樹脂(N−FMOC−ピペリジニル−4−オキシ)−(4−メトキシフェニル)メチルポリスチレン、範囲(リンカー)0.88mmol/g(0.4g、0.35mmol)を、Quest 210 Synthesizerの10mlチューブの1つに配置した。DMF(6ml)中のピペリジン(1.5ml)の溶液を加え、30分間撹拌し、濾過し、DMF(1×6ml)にて洗浄し、ピペリジンの添加を繰り返した。樹脂をDMF(1×8ml)およびDCM(2×8ml)で洗浄した。
【0090】
FMOC保護化L−フェニルアラニンでのアシル化. 樹脂を、20分間、5mlのDCMで先に洗浄した。1mlのDMF中のFMOC L−フェニルアラニン(0.0341g、0.88mmol)(装填樹脂に対して2.5mol過剰)を、3mlのDMF中のHATU(0.33g、0.88mmol)と混合し、チューブに加え、続いて、0.6mlのEtNiPr2の溶液を加えた。反応を室温で20時間実施した。反応が完了した後、樹脂を濾過し、DMFとジクロロメタンの1:1混合液(1×6ml)、ジクロロメタン(1×6ml)で洗浄し、同量の試薬で、アシル化を繰り返した。最後に、樹脂を濾過し、DMFとジクロロメタンの1:1混合液(2×6ml)で洗浄した。
【0091】
FMOC保護基の除去. DMF(6ml)中のピペリジンの溶液(1.5ml)を樹脂に加え、形成された懸濁液を30分間撹拌し、濾過し、DMF(1×6ml)で洗浄し、ピペリジンの添加を繰り返した。樹脂をDMF(1×8ml)およびメタノール(2×8ml)で洗浄し、Ar下20分間、吸引乾燥させた。
【0092】
カルボニル化合物との反応. 樹脂を、30分間、THFで先に洗浄し、濾過し、6mlのTHFをチャージした。3−(4−クロロフェノキシ)−ベンズアルデヒド(0.280ml、1.00mmol)を加え、ついで、30分後にTHF中(1ml,1mmol)のNaBCNH3の1.0M溶液を加えた。反応を、室温にて72時間続けた。最後に、樹脂を濾過し、THF(1×6ml)およびMeOH(2×6ml)で洗浄し、Ar下で30分間乾燥させた。
【0093】
Red−Alとの還元. チューブ内で得られた樹脂を、無水THF(2×6ml)で先に洗浄し、濾過した。チューブに、無水THF5mlをチャージし、続いて市販のRed−Alを攪拌しながら、トルエン中65+w%(1ml、3.2mmol)として加えた。4時間後、樹脂を濾過し、THF(2×1ml)およびMeOH(3×1ml)で洗浄し(MeOHの添加は、注意して進めるべきである)、Ar下で10分間乾燥させた。
【0094】
開裂. 合成のこの最後の段階のために、樹脂を含むチューブに、DCM(8ml)およびTFA(1ml)をチャージし、形成された明赤色懸濁液を、30分間撹拌した。樹脂を濾過し、濾液を回収チューブに回収した。この手順を繰り返した。DCMおよび過剰なTFAをシードバック上で蒸発させた。未精製1−(2−{[3−(4−クロロフェノキシ)ベンジル]アミノ}−3−フェニルプロピル)ピペリジン−4−オール(トリフルオロ酢酸塩の形態)を、以下の条件、プレ装填シリカゲルカラム、12g、流速15ml/分、25分間ラン、DCMで開始し、DCM/MeOH/NH4OH(600/400/10)で終了する勾配、を用いてCombiFlash(イスコ)上のFlash Chromatographyによって精製した。0.128mgの1−(2−{[3−(4−クロロフェノキシ)ベンジル]アミノ}−3−フェニルプロピル)ピペリジン−4−オール ジトリフルオロアセテート53%収率、少なくとも95%純度を得た。マススペクトル(ESI)m/z(MH)+451.2、453.2。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】図1は、アミノアルコールプレ装填樹脂から合成した、ジアミン産物の代表的な例を提供している。
【図2】図2は、市販されている、アミノアルコールプレ装填樹脂を提供している。
【図3】図3は、標的21,120個のエタンブトール類似体の調製したライブラリーを示している、表1を提供している。
【図4】図4は、エタンブトール類似体のもとの100,000化合物ライブラリーの合成を概略的に示している、スキーム1を提供している。
【図5】図5は、リンカーとしてアミノアルコールプレ装填樹脂とアミノ酸を使用することを概略的に示している、スキーム2を提供している。
【図6】図6は、アミノアルコールプレ装填樹脂で実施した、リンカーのさらなる改変を略図的に示している、スキーム3を提供している。
【図7】図7は、ライブラリー調製にて使用したアミノ酸を列記している、表2を提供している。
【図8】図8は、合成における試薬として使用した、代表的なカルボニル化合物を提供している。
【図9】図9は、MICおよびLuxデータの代表的な例を提供している。
【図10】図10は、活性分子中でのアルキル化モノマーの発生を示している。
【図11】図11は、ヒット化合物およびその構造のリストを提供している。
【図12】図12は、デコンヴォルーションのためのレイアウトを示している表3を提供している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下
【化1】
より選択された式の置換エチレンジアミン化合物を含む組成物であって、
式中R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8が、独立して、H、アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アラルケニル、アラルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ハロゲン化物、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、シリル、シロキシ、またはアミノから選択される、組成物。
【請求項2】
前記置換エチレンジアミン化合物が、
【化2】
である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記置換エチレンジアミン化合物が、
【化3】
である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記置換エチレンジアミン化合物が、
【化4】
である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記置換エチレンジアミン化合物が、
【化5】
である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記置換エチレンジアミン化合物が、
【化6】
である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記置換エチレンジアミン化合物が、
【化7】
である、請求項1に記載の組成物。
【請求項1】
以下
【化1】
より選択された式の置換エチレンジアミン化合物を含む組成物であって、
式中R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8が、独立して、H、アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アラルキル、アラルケニル、アラルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ハロゲン化物、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、シリル、シロキシ、またはアミノから選択される、組成物。
【請求項2】
前記置換エチレンジアミン化合物が、
【化2】
である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記置換エチレンジアミン化合物が、
【化3】
である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記置換エチレンジアミン化合物が、
【化4】
である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記置換エチレンジアミン化合物が、
【化5】
である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記置換エチレンジアミン化合物が、
【化6】
である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記置換エチレンジアミン化合物が、
【化7】
である、請求項1に記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11(a)】
【図11(b)】
【図11(c)】
【図11(d)】
【図11(e)】
【図11(f)】
【図11(g)】
【図11(h)】
【図11(i)】
【図11(j)】
【図11(k)】
【図11(l)】
【図11(m)】
【図11(n)】
【図11(o)】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11(a)】
【図11(b)】
【図11(c)】
【図11(d)】
【図11(e)】
【図11(f)】
【図11(g)】
【図11(h)】
【図11(i)】
【図11(j)】
【図11(k)】
【図11(l)】
【図11(m)】
【図11(n)】
【図11(o)】
【図12】
【公表番号】特表2006−504633(P2006−504633A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−504986(P2004−504986)
【出願日】平成15年5月19日(2003.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2003/015925
【国際公開番号】WO2003/096987
【国際公開日】平成15年11月27日(2003.11.27)
【出願人】(504423181)セケラ インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年5月19日(2003.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2003/015925
【国際公開番号】WO2003/096987
【国際公開日】平成15年11月27日(2003.11.27)
【出願人】(504423181)セケラ インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
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