説明

成膜方法及び成膜装置

【課題】シリコン酸化膜よりなる薄膜と、金属含有膜との界面に存在することになる金属酸化膜の厚さを抑制することが可能な成膜方法を提供する。
【解決手段】被処理体を収容する処理容器22と、原料ガスを供給する原料ガス供給系54と、反応ガスを供給する反応ガス供給系56と、処理容器内を真空引きする真空排気系とを備えた成膜装置20を用いて表面に金属含有膜が形成された被処理体にシリコン酸化膜の薄膜を形成する成膜方法において、真空排気系の開閉弁を閉じた状態で原料ガス供給系の開閉弁を最初は開状態にして原料ガスを一時的に供給した後に直ちに閉状態にして閉状態を所定の期間維持して原料ガスを被処理体に吸着させる吸着工程と、反応ガス供給系の開閉弁を開状態にして反応ガスを処理容器内へ供給して反応ガスを原料ガスと反応させて薄膜を形成する反応工程とを、間に間欠期間を挟んで交互に複数回繰り返すようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の被処理体の表面にシリコン酸化膜を堆積させる成膜方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体集積回路を製造するためにはシリコン基板等よりなる半導体ウエハに対して、成膜処理、エッチング処理、酸化処理、拡散処理、改質処理等の各種の処理が行われる。上記各種の処理の中で、例えば成膜処理を例にとれば、この種の成膜処理は、例えば特許文献1のような枚葉式の成膜装置や特許文献2に開示されているような例えばバッチ式の成膜装置内で行われる。具体的には、図8に示すように、縦型の処理容器2内に、被処理体である半導体ウエハWをウエハボート4に多段に支持させた状態でこれを収容し、上記処理容器2を囲むようにして設けた加熱手段6でウエハWを所定の温度、例えば600℃程度に加熱する。
【0003】
そして、例えばシリコン酸化膜を形成する場合には、ガス供給手段7より原料ガスとして例えばシリコン原料ガスを流し、反応ガスとして例えばオゾンを流し、これらのガスを処理容器2の高さ方向に沿って設けた分散ノズル8、10の多数のガス噴射孔8A、10Aより処理容器2内へ供給しつつ処理容器2の下部に設けた排気口12より圧力調整弁14B及び真空ポンプ16を有する真空排気系14で処理容器2内を真空引きし、所定の圧力に内部雰囲気を維持してシリコン酸化膜の成膜処理を行う。
【0004】
この場合、形成される膜質が比較的良好で、且つ低温でも成膜することができることから、ガス供給手段7の開閉弁8B及び開閉弁10Bを交互に開閉して上記ガスを交互に且つ間欠的に繰り返し供給して、酸化膜を積層成長させるようにした成膜方法が多く採用されている。具体的には、Si含有の原料ガスと、酸化性ガスであるオゾンとを交互に供給し、ウエハ表面上に吸着している原料ガスとオゾンとを反応させて薄いSiO 膜を繰り返し積層するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−077593号公報
【特許文献2】特開2009−246318号公報
【特許文献3】特開2006−054432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、半導体デバイスの製造工程には、配線構造等を構築するために配線となる金属含有膜上に絶縁膜として上記シリコン酸化膜を積層形成するような工程が行われる場合がある。上記工程を行うにあたって、前工程にてシリコン基板等の半導体ウエハ上に金属含有膜として、例えばタングステン膜等が形成されており、このウエハはクリーンルーム内の大気圧雰囲気に晒された状態で搬送されたり、或いは清浄な不活性ガス雰囲気の密閉された運搬容器に収納された状態で搬送されたりする。
【0007】
この際、上記金属含有膜であるタングステン膜の表面がクリーンルーム内の清浄雰囲気中の酸素や水分と反応したり、或いは運搬容器中に僅かに存在する酸素や水分と反応したりして、このタングステン膜の表面に僅かな厚さで自然に金属酸化膜が形成されてしまう。
【0008】
この自然に発生する金属酸化膜は、半導体デバイスの電気特性を劣化させる原因になるので、そのままの状態を維持するか、或いは好ましくは除去するのがよいが、この金属酸化膜を除去する工程を行うのは、その分、工程数が増加するので好ましくない。そのため、従来では一般に、上記金属酸化膜を除去することなくそのままの状態にして上述したようなCVD法を用いてその金属酸化膜上にシリコン酸化膜を形成していた。
【0009】
他方、従来用いていたCVD法を単に適用してシリコン酸化膜を積層した場合、一方の成膜ガスである酸化ガスにより逆に上記金属酸化膜の厚さが増加してしまう現象が発生し、この結果、半導体デバイスの電気特性を大幅に低下させてしまう、といった不都合があった(例えば特許文献3)。特に、この金属酸化膜が厚くなると、上述のように電気特性を更に低下させるのみならず、形成される針状結晶に起因して形状不良が発生する、といった不都合もあった。
【0010】
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明は、シリコン酸化膜よりなる薄膜と、この下地の金属含有膜との界面に存在することになる金属酸化膜の厚さをコントロールして、この厚さを抑制することが可能な成膜方法及び成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、シリコン酸化膜の形成について鋭意研究した結果、金属酸化膜の膜厚の増加には、反応ガスであるオゾンの拡散が関与していることを発見し、原料ガスを吸着させる吸着工程で原料ガスを処理容器内に閉じ込めることで半導体ウエハの表面に多くの原料ガスを吸着させることができ、これによりオゾンの関与を抑制することが可能になる、という知見を得ることにより、本発明に至ったものである。
【0012】
請求項1に係る発明は、被処理体を収容することができる処理容器と、開閉弁を有して前記処理容器内へ原料ガスを供給することができる原料ガス供給系と、開閉弁を有して前記処理容器内へ反応ガスを供給することができる反応ガス供給系と、開閉弁を有して前記処理容器内の雰囲気を真空引きすることができる真空排気系とを備えた成膜装置を用いて表面に金属含有膜が形成された前記被処理体にシリコン酸化膜よりなる薄膜を形成する成膜方法において、前記真空排気系の前記開閉弁を閉じた状態で前記原料ガス供給系の前記開閉弁を最初の所定の期間は開状態にして前記原料ガスを一時的に供給した後に直ちに閉状態にして該閉状態を所定の期間維持して前記原料ガスを前記被処理体の表面に吸着させる吸着工程と、前記反応ガス供給系の前記開閉弁を開状態にして前記反応ガスを前記処理容器内へ供給して前記反応ガスを前記原料ガスと反応させて薄膜を形成する反応工程とを、間に間欠期間を挟んで交互に複数回繰り返すようにしたことを特徴とする成膜方法である。
【0013】
これにより、シリコン酸化膜よりなる薄膜と、この下地の金属含有膜との界面に存在することになる金属酸化膜の厚さをコントロールして、この厚さを抑制することが可能となる。この結果、上記金属酸化膜の膜厚を抑制して電気的特性の低下を防止することが可能になると共に、形状不良の発生も防止することが可能となる。
【0014】
請求項15に係る発明は、被処理体を収容することができる処理容器と、前記被処理体を保持する保持手段と、前記被処理体を加熱する加熱手段と、開閉弁を有して前記処理容器内へ原料ガスを供給することができる原料ガス供給系と、開閉弁を有して前記処理容器内へ反応ガスを供給することができる反応ガス供給系と、開閉弁を有して前記処理容器内の雰囲気を真空引きすることができる真空排気系と、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の成膜方法を実行するように装置全体を制御する装置制御部と、を備えたことを特徴とする成膜装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る成膜方法及び成膜装置によれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
シリコン酸化膜よりなる薄膜と、この下地の金属含有膜との界面に存在することになる金属酸化膜の厚さをコントロールして、この厚さを抑制することができる。この結果、上記金属酸化膜の膜厚を抑制して電気的特性の低下を防止することが可能になると共に、形状不良の発生も防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る成膜装置の一例を示す構成図でる。
【図2】本発明の成膜方法を行う時の各開閉弁の動作を示すグラフである。
【図3】本発明方法で形成される薄膜の積層状態を示す拡大断面図である。
【図4】原料ガスのホールド期間と1サイクル当たりの成膜レートとの関係を示すグラフである。
【図5】1サイクル当たりの成膜レートとタングステンの金属酸化膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【図6】1サイクル当たりの成膜レートとチタン窒化膜の金属酸化膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【図7】金属含有膜とシリコン酸化膜との界面が酸化される時の状況を説明するための図である。
【図8】従来のバッチ式の成膜装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る成膜方法及び成膜装置の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。図1は本発明に係る成膜装置の一例を示す構成図、図2は本発明の成膜方法を行う時の各開閉弁の動作を示すグラフである。
【0018】
ここでは、原料ガスとしてSi含有の有機原料である3DMAS(Tris(dimethylamino)silane:SiH[N(CH )を用い、反応ガスとして酸化性ガスであるオゾンを用い、薄膜としてシリコン酸化膜(SiO )を成膜する場合を例にとって説明する。
【0019】
図1に示すように、この成膜装置20は、被処理体である半導体ウエハWを複数枚収容することができる処理容器22を有している。この処理容器22は有天井の円筒体状に成形された縦長の内筒24と、この内筒24の外側を所定の間隔を隔てて覆うようにして形成された有天井の円筒体状に成形された縦長の外筒26とにより主に構成されており、二重管構造になっている。
【0020】
これらの内筒24と外筒26とは共に石英により形成されると共に、下端部は開口されている。ここでこの処理容器22の直径は、例えば直径が300mmのウエハWを収容する場合には、400〜500mm程度に設定されており、この処理容器22の内部容量は収容できるウエハWの枚数に依存し、例えば最大150枚程度のウエハWを収容する場合には、200リットル程度に設定されている。
【0021】
上記外筒26の下端部は、円筒体状に成形された例えばステンレススチール製のマニホールド28がOリング等のシール部材30を介して気密に接続されており、このマニホールド28により上記外筒26の下端部が支持されている。尚、このマニホールド28は、図示しないベースプレートによって支持されている。また上記マニホールド28の内壁には、リング状の支持台32が設けられており、この支持台32上に上記内筒24の下端部を載置して支持するようになっている。そして、この処理容器22の内筒24内には、保持手段としてのウエハボート34が収容されている。
【0022】
具体的には、このウエハボート34には、複数枚の被処理体としての半導体ウエハWを複数段に亘って所定のピッチで載置するようになっている。そして、このウエハボート34は、後述するように昇降可能になされており、処理容器22の下方より上記内筒24内へ挿脱自在に収容できるようになっている。このウエハボート34は例えば石英よりなり、これには、例えば50〜100枚程度の直径が300mmのウエハWを略等ピッチで多段に支持できるようになっている。
【0023】
またウエハボート34の挿入時には、上記処理容器22の下端であるマニホールド28の開口部は、例えば石英やステンレス板よりなる蓋部36により塞がれて密閉される。この際、処理容器22の下端部と蓋部36との間には、気密性を維持するために例えばOリング等のシール部材38が介在される。このウエハボート34は、石英製の保温筒40を介してテーブル42上に載置されており、このテーブル42は、処理容器22の下端開口部を開閉する蓋部36を貫通する回転軸44の上端部に支持される。
【0024】
そして、この回転軸44の貫通部には、例えば磁性流体シール46が介設され、この回転軸44を気密にシールしつつ回転可能に支持している。上記した回転軸44は、例えばボートエレベータ等の昇降機構48に支持されたアーム50の先端に取り付けられており、ウエハボート34及び蓋部36等を一体的に昇降できるようになされている。尚、上記テーブル42を上記蓋部36側へ固定して設け、ウエハボート34を回転させることなくウエハWの処理を行うようにしてもよい。
【0025】
上記処理容器22の側部には、これを取り囲むようにしてた例えばカーボンワイヤ製のヒータよりなる加熱手段52が設けられており、この内側に位置する処理容器22及びこの中の上記半導体ウエハWを加熱し得るようになっている。そして、上記マニホールド28に原料ガスを供給する原料ガス供給系54と、反応ガスを供給する反応ガス供給系56と、パージガスとして不活性ガスを供給するパージガス供給系58とが設けられる。
【0026】
具体的には、上記原料ガス供給系54は、上記マニホールド28を内側へ気密に貫通するようにして取り付けられた石英よりなるL字状に屈曲されたガスノズル60を有している。このガスノズル60は、上記内筒24内を高さ方向の全域に亘って延びており、所定のピッチで多数のガス噴射孔60Aが形成されて、原料ガスをウエハボート34に支持された各ウエハWに対して横方向から供給できるようになっている。上記ガスノズル60には、ガス通路62が接続されている。
【0027】
そして、このガス通路62には、マスフローコントローラのような流量制御器62A及びガスの流通と遮断を行う開閉弁62Bが順次介設されており、必要に応じて流量制御しつつ原料ガスの供給と供給の停止(遮断)を行うようになっている。ここで原料ガスとしては、上述したようにSi含有の3DMASが用いられる。この液体原料である3DMASは、気化器63により気化されて原料ガスが形成されることになる。この時のキャリアガスとしてはN ガス等の他にArやHe等の希ガスを用いることができる。またキャリアガスを用いない場合もある。
【0028】
ここで上記気化器53としては2種類ある。1つはベーキング方式の気化器である。この気化器の特徴は、気化器63自体が3DMASを貯留する原料タンクを兼用しており、3DMASを処理容器22内に供給する工程で原料タンクを兼用する気化器63から加熱により気化させたガスを直接的に処理容器22内へ導入することができるようになっている。この場合には、キャリアガスは用いられない、すなわち気化器63には加熱ヒータ63Aや圧力計63Bが設けられており、上記気化器63は、上記液体原料の温度と圧力で決まる蒸気圧により発生量が制御されるようになっている。この制御は図示しない温度コントローラにより行われる。
【0029】
他方はインジェクション方式の気化器である。この気化器では処理容器22内へ気化ガスを供給するときに流量を安定化させるために5〜10秒程度だけ処理容器22内に通さずに原料ガスを廃棄する必要があるため、高価な有機金属材料ガスを無駄に捨てなければならない。従って、原料有効利用の観点からはベーキング方式の気化器を用いるのがよい。図1ではベーキング方式の気化器63を用いた場合の概略構成を図示している。
【0030】
また、上記反応ガス供給系56は、上記マニホールド28を内側へ気密に貫通するようにして取り付けられた石英よりなるL字状に屈曲されたガスノズル64を有している。このガスノズル64は、上記内筒24内を高さ方向の全域に亘って延びており、所定のピッチで多数のガス噴射孔64Aが形成されて、反応ガスをウエハボート34に支持された各ウエハWに対して横方向から供給できるようになっている。上記ガスノズル64には、ガス通路66が接続されている。そして、このガス通路66には、マスフローコントローラのような流量制御器66A及びガスの流通と遮断を行う開閉弁66Bが順次介設されており、必要に応じて流量制御しつつ反応ガスの供給と供給の停止(遮断)を行うようになっている。ここで反応ガスとしては、上述したようにオゾン(O )が用いられる。
【0031】
更に、上記パージガス供給系58は、上記マニホールド28を内側へ気密に貫通するようにして取り付けられた石英よりなるL字状に屈曲されたガスノズル68を有している。このガスノズル68は、上記内筒24内を高さ方向の全域に亘って延びており、所定のピッチで多数のガス噴射孔68Aが形成されて、パージガスをウエハボート34に支持された各ウエハWに対して横方向から供給できるようになっている。上記ガスノズル68には、ガス通路70が接続されている。そして、このガス通路70には、マスフローコントローラのような流量制御器70A及びガスの流通と遮断を行う開閉弁70Bが順次介設されており、必要に応じて流量制御しつつパージガスの供給と供給の停止(遮断)を行うようになっている。ここでパージガスとしては、上述したように窒素ガスが用いられる。このパージガスとしては、この窒素ガスに替えてAr、He等の希ガスを用いてもよい。
【0032】
そして、上記各ガスノズル60、64、68は、内筒24内の一側に集合させて設けられており(図示例ではスペースの関係よりガスノズル68を他のガスノズル60、64に対して反対側に記載している)、この各ガスノズル60、64、68に対して対向する内筒24の側壁に直径の大きな複数のガス流通孔72が上下方向に沿って配列させて形成されており、ウエハ間を通って水平方向に流れてきた各ガスを上記ガス流通孔72を介して内筒24と外筒26との間の間隙74に案内するようになっている。
【0033】
そして、上記マニホールド28の上部側には、上記内筒24と外筒26との間の間隙74に連通される排気口76が形成されており、この排気口76には処理容器22内の雰囲気を真空引きする真空排気系78が設けられている。具体的には、この真空排気系78は、上記排気口76に接続される排気通路80を有しており、この排気通路80の途中には、弁開度が調整可能になされてその弁開度を変化させることによって圧力調整をすることが可能な開閉弁80B及び真空ポンプ82が順次介設されており、上述したように処理容器22内の雰囲気を圧力調整しつつ真空引きできるようになっている。上記排気通路80に介設した開閉弁80Bは、上述したようにその弁開度が任意の値に調整可能になされると共に、全開及び全閉も行うことができ、排気を完全に遮断できるようになっている。
【0034】
そして、この装置全体の動作を制御するために例えばコンピュータよりなる装置制御部84を有しており、各ガスの供給の開始、供給の停止、真空排気系78の開閉弁80Bの弁開度調整を含む開閉動作、プロセス圧力、プロセス温度等をコントロールできるようになっている。そして、この装置制御部84は、この装置全体の動作を制御するためのコンピュータプログラムを記憶する記憶媒体86を有している。この記憶媒体86としては、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)、ハードディスク、フラッシュメモリ或いはDVD等を用いることができる。
【0035】
次に、以上のように構成された成膜装置20を用いて行なわれる成膜方法について図3乃至図7も参照して説明する。図3は本発明方法で形成される薄膜の積層状態を示す拡大断面図、図4は原料ガスのホールド期間と1サイクル当たりの成膜レートとの関係を示すグラフ、図5は1サイクル当たりの成膜レートと金属酸化膜の膜厚との関係を示すグラフ、図7は金属含有膜とシリコン酸化膜との界面が酸化される時の状況を説明するための図である。上述したように、以下に説明する動作は、上記記憶媒体86に記憶されたプログラムに基づいて行われる。
【0036】
まず、例えばシリコン基板よりなる半導体ウエハWがアンロード状態で成膜装置20が待機状態の時には、処理容器22はプロセス温度より低い温度に維持されており、常温の多数枚、例えば50枚のウエハWが載置された状態のウエハボート34をホットウォール状態になされた処理容器22内にその下方より上昇させてロードし、蓋部36で処理容器22の下端開口部を閉じることにより処理容器22内を密閉する。このウエハWの表面には、前工程にて金属含有膜として例えばタングステン膜が形成されており、このウエハが上記成膜装置20まで搬送されてくることになる。この搬送の際、このウエハはクリーンルーム内の大気圧雰囲気に晒された状態で搬送されたり、或いは清浄な不活性ガス雰囲気の密閉された運搬容器に収納された状態で搬送されたりする。
【0037】
この際、上記金属含有膜であるタングステン膜の表面がクリーンルーム内の清浄雰囲気中の酸素や水分と反応したり、或いは運搬容器中に僅かに存在する酸素や水分と反応したりして、このタングステン膜の表面に僅かな厚さで自然に金属酸化膜が形成された状態となっている。
【0038】
そして、成膜処理中にあっては、真空排気系78の真空ポンプ82は連続的に駆動されており、処理容器22内を真空引きして所定のプロセス圧力にすると共に、加熱手段52への供給電力を増大させることにより、ウエハ温度を上昇させて成膜処理用のプロセス温度まで昇温して安定させ、その後、成膜処理を行なうに必要とされる所定の処理ガスを以下に示すように流量制御しつつ成膜処理を行う。
【0039】
すなわち原料ガス供給系54のガスノズル60からはSi含有ガスである3DMASガスが供給され、反応ガス供給系56のガスノズル64からはオゾンが供給される。またパージガス供給系58のガスノズル68からはパージガスとしてN ガスが供給される。
【0040】
上記供給された各ガスは、ウエハボート34に多段に支持されているウエハ間を水平方向に流れて反対側に位置するガス流通孔72を介して内筒24と外筒26との間の間隙74に流れ込み、その後、このガスは外筒26の下端に設けた排気口76から真空排気系78により排気されることになる。
【0041】
次に、実際の各ガスの供給態様について図2も参照して説明する。前述したように、ここでは原料ガスと反応ガスとを交互に繰り返し供給して成膜する成膜方法が用いられる。図2(A)は原料ガスの開閉弁62Bの開閉動作を示し、図2(B)は反応ガスの開閉弁66Bの開閉動作を示し、図2(C)は真空排気系の開閉弁80Bの開閉動作(弁開度)を示している。
【0042】
すなわち、ここでは図2(A)に示すように、原料ガスの開閉弁62Bを所定の期間だけ開いてSi含有の原料ガスを一時的に流すことにより供給してこのガスをウエハWの表面に吸着させる吸着工程と、原料ガスの供給を停止して処理容器22内の雰囲気を排気する排気工程と、図2(B)に示すように反応ガスの開閉弁66Bを開いて反応ガスであるオゾンを供給してウエハ表面上に吸着している原料ガスと反応させて薄い膜厚のSiO 膜よりなる薄膜を形成する反応工程と、反応ガスの供給を停止して処理容器22内の雰囲気を排気する排気工程とを、この順序で複数回交互に繰り返して薄膜を積層するようになっている。
【0043】
ここで1つの吸着工程から次の吸着工程までの間が1サイクルとなり、1サイクルで上述したように厚さが極めて薄い膜厚の薄膜が形成される。上記1サイクル中の吸着工程の時間T1及び反応工程の時間T2はそれぞれ共に60sec程度、1サイクル中の前半の排気工程及び後半の排気工程の時間T3、T4は、それぞれ10sec程度である。尚、上記各排気工程では、同時にN パージガスを供給してもよい。この結果、図3に示すように薄膜が形成される。すなわち、図3(A)は成膜処理を行う前の状態であり、ウエハWの表面に、例えばタングステン膜よりなる金属含有膜100が形成されており、この金属含有膜100の表面は、前述したようにウエハ搬送途中に自然に形成された金属酸化膜102が付着している。
【0044】
この金属酸化膜102は、金属含有膜100がタングステン膜であることから例えばWOx(x:正の整数)である。そして、上記ウエハW上に成膜処理を施すと、図3(B)に示すように、上記金属酸化膜102上にシリコン酸化膜よりなる薄膜104が形成されることになる。この際、後述するように処理容器22内に原料ガスを密封してホールドすることで上記金属酸化膜102を還元して、この厚さをコントロールすることができる。
【0045】
ここで本発明の成膜方法で重要な点は、吸着工程の全体に亘って原料ガスを供給するような供給態様ではなく、図2(A)に示すように吸着工程の最初の所定の期間t1だけ原料ガスの開閉弁62Bを開状態にして原料ガスを流し、その後は直ちに閉状態にして所定の期間hだけ放置している点である。この際、図2(C)に示すように、この吸着工程の全体に亘って真空排気系の開閉弁80Bを閉じた状態に維持している。原料ガスは最初の期間t1だけ流されて、その後の処理の期間hは原料ガスの開閉弁62Bと真空排気系の開閉弁80Bは共に閉じられた状態になっているので、原料ガスは処理容器22内で密閉されて閉じ込められて外部へ流れないで滞留した状態、すなわち処理容器22内に閉じ込められた状態となっている。この結果、ウエハWの表面、すなわち金属酸化膜102の表面には、多量に原料ガスが吸着することになる。この時、後述するようにこの所定の期間(以下「ホールド期間」とも称す)hの長さを調整することにより上記金属酸化膜102の厚さをコントロールできるようになっている。
【0046】
この時の原料ガスの流量は、10〜500sccm程度である。また、この吸着工程における処理容器22内の圧力は、最初に急激に上昇した後に、原料ガスの開閉弁62Bを閉じたと同時に一定となり、この時の圧力は原料ガスの供給量にもよるが例えば667Pa程度である。
【0047】
次に、吸着工程が終了したら、前半の排気工程へ移行する。すなわち、全ガスの供給を停止すると共に真空排気系の開閉弁80Bを全開にして処理容器22内の残留雰囲気を急速に排気する。尚、この場合、パージガスであるN ガスを供給して残留ガスの排出を促進させるようにしてもよい。これにより、処理容器22内の原料ガス(3DMAS)の濃度が急激に低下する。
【0048】
次に、反応工程へ移行する。ここでは、図2(B)に示すように反応ガスの開閉弁66Bを開状態にして、反応工程の全期間に亘って反応ガスであるオゾンを供給する。この時の真空排気系の開閉弁80Bは全開でもよいし、ガスの排気量が十分ならば100%以下の弁開度でもよく、図示例では例えば弁開度50%で一定にしている。
【0049】
この時の反応ガスであるオゾンの供給量は、例えば6.5slmのO をオゾン発生器へ供給して200g/Nm 程度のオゾンを発生させ、これを供給している。この反応ガスであるオゾンの供給により、このオゾンが上記ウエハWの表面に吸着している原料ガスと反応してシリコン酸化膜である薄膜104が形成されることになる。この場合、従来の成膜方法では、オゾンがウエハ表面に吸着している原料ガスやシリコン酸化膜である薄膜104中を拡散して下層の金属含有膜100の表面を酸化して金属酸化膜102の厚さが増加してしまっていた。
【0050】
しかし、本発明の場合には、上述のように原料ガスのホールド期間hを設けて適正に原料ガスをウエハ表面に吸着させるようにしたので、上記オゾンの拡散が抑制され、金属酸化膜102の増加を抑制することができるのみならず、ホールド期間hの長さによっては金属酸化膜102の厚さを逆に減少させることができる。
【0051】
このように、反応工程が終了したなら、後半の排気工程へ移行する。すなわち、全ガスの供給を停止すると共に真空排気系の開閉弁80Bを全開にして処理容器22内の残留雰囲気を急速に排気する。尚、この場合、パージガスであるN ガスを供給して残留ガスの排出を促進させるようにしてもよい。以上により、1サイクルの成膜工程が終了し、上記1サイクルの各工程を必要に応じて複数回繰り返し行って必要とする膜厚の薄膜、すなわちシリコン酸化膜よりなる薄膜104を得ることになる。尚、成膜処理中は、プロセス圧力はベース圧(例えば13.3Pa程度)〜133.3Paの範囲内に維持されている。
【0052】
上述のように、本発明では原料ガスを供給する吸着工程において、原料ガスの開閉弁62Bと真空排気系78の開閉弁80Bとを共に閉状態にして処理容器22内に原料ガスを閉じ込めて外部へ流れ出ないようにしたホールド期間hを設けるようにして、原料ガスを適正にウエハWの表面に吸着させるようにしたので、自然に形成されていた金属酸化膜102の厚さを抑制することができる。特に、このホールド期間hの長さを調整することにより、上記金属酸化膜102を還元してこの金属酸化膜102の厚さをコントロールすることが可能となる。この結果、上記金属酸化膜102の膜厚を抑制して電気的特性の低下を防止することが可能になると共に、形状不良の発生も防止することが可能となる。
【0053】
<本発明方法の評価>
次に、先に説明した本発明方法を実施したので、その評価結果について説明する。図4はホールド期間と1サイクル当たりの成膜レートとの関係を示すグラフ、図5は1サイクル当たりの成膜レートと金属含有膜表面と金属酸化膜の膜厚との関係を示すグラフである。ここで評価した時の吸着工程の時間T1は変化させ、反応工程の時間T2は1〜30secの間で固定し、原料ガスの開閉弁62Bの開状態の所定の期間t1は1〜30secの間で固定した。そして、上述のように、吸着工程の時間T1を変化させることによって、吸着工程において原料ガスの開閉弁62Bが閉じられている時間、すなわちホールド期間h(=T1−t1)を変化させた。
【0054】
図4において、このホールド期間を横軸にとり、1サイクル当たりの成膜レートを縦軸にとっている。また、原料ガスとしてSi含有の原料である3DMASを流し、反応ガスとしてオゾン(酸素雰囲気中に10Vol%のオゾン濃度)を流した。また金属含有膜100としてはタングステン膜を用い、このタングステン膜の表面にはタングステンの自然発生の金属酸化膜102が付着しているシリコンウエハを用いた。ここで本発明では3DMASの供給総量を比較例(従来条件)の1/4に設定している。成膜時のプロセス温度は550℃、プロセス圧力(最大値)は1.2kPaで行った。また比較例として先に説明したように原料ガスと反応ガスとを交互に供給する成膜方法(ホールド期間は設けない)で行い、各開閉弁の動作以外のプロセス条件は本発明方法の場合と同じ条件で行った。すなわち、この比較例では、吸着工程の時間は30secとし、3DMASの供給総量は上述のように本発明の4倍とした。
【0055】
図4から明らかなように、本発明のように、ホールド期間hを10secから115sec程度まで長くすればする程、1サイクル当たりの成膜レートは1.0Å/cycleから2.1Å/cycle程度までほぼ直線的に大きくなっていることが判る。この理由は、ホールド期間hが長くなる程、ウエハWの表面に吸着する原料ガスが増加し、この結果、上記成膜レートも向上するからである、と考えられる。
【0056】
更に、副次的な効果としては、3DMASをXグラム供給した従来の条件では、成膜レートは1.3Å/cycle程度であったが、本発明の条件の場合には、供給する原料の量を1/4に減少させたにもかかわらず、ホールド期間を長くすることにより成膜レートが略直線的に上昇していることが判る。そして、ホールド期間が略40secの時に、成膜レートは従来の条件の場合と略同じになっている。すなわち、ここではホールド期間を40sec以上に設定すれば原料の供給総量を1/4に減少させたにもかからわらず従来の条件の場合と略同等の、或いはそれ以上の成膜レートを得られることが判る。換言すれば、本発明のように各開閉弁の操作を行なうことにより、従来の条件と同等の成膜レートを維持しつつ原料の供給総量を大幅に削減できることが判る。
【0057】
次に、上記成膜レートに対応したタングステンの金属酸化膜(WOx)の膜厚について測定した。この結果は、上記図5に示されている。この金属酸化膜の厚さはXPS(X線電子分光分析)により行った。この金属酸化膜は、前述したようにタングステン膜よりなる金属含有膜100とシリコン酸化膜(SiO )よりなる薄膜104との界面に存在する金属酸化膜(WOx)102である。
【0058】
上記成膜処理を行う前に自然に付着していたタングステン金属酸化膜102の初期値は1.1nmである。尚、図5の横軸において、代表的な部分にホールド期間hを併記してある。図5中の特性Aは原料に3DMASを用いてプロセス温度550℃にて成膜した時の特性を示す。図5から明らかなように、成膜レートが小さい場合には、金属酸化膜102の厚さは、初期値よりも大きくなっており、そして、成膜レートが大きくなるに従って、上記金属酸化膜102の厚さは急激に減少し、成膜レートが約1.15Å/cycleの時に金属酸化膜102の厚さは初期値とほぼ同じ値になっている。そして、更に成膜レートが大きくなると、これに従って金属酸化膜102の減少の程度は緩やかになっている。
【0059】
このように、原料ガスのホールド期間hを調整して成膜レートを変化させることにより、金属含有膜100と薄膜(SiO )104との界面に存在する金属酸化膜(例えばWOx)102の厚さをコントロールできることが判る。特に、成膜レートを1.15Å/cycle以上に設定することにより、金属酸化膜102の厚さをこの初期値以下に抑制して減少させることができることが判る。換言すれば、金属酸化膜102の厚さを、この初期の膜厚以下とするためには、ここではホールド期間hの長さを23sec以上(成膜レート:1.15Å/cycle以上)に設定すればよいことが判る。
【0060】
ここで1サイクル当たりの成膜レートが小さい場合に金属酸化膜の膜厚が、初期値よりも急激に増加する理由は以下のように考えられる。すなわち、図7(A)に示すように、金属含有膜100の表面に自然に形成された金属酸化膜102の表面に吸着したシリコンの原料ガスの分子110の量が少ない場合には、分子110間の隙間が多く、後に導入されるオゾン112が上記隙間を矢印に示すように通って拡散し易くなっている。この結果、上記隙間を容易に拡散したオゾンが金属酸化膜102及び金属含有膜100に到達して、これらを更に酸化して金属酸化膜102自体の厚さが急激に増加することになる。
【0061】
これに対して、1サイクル当たりの成膜レートがある程度よりも大きい場合には、図7(B)に示すように、金属酸化膜102上に吸着したシリコンの原料ガスの分子110の量が多くなり、分子110間の隙間が少なくなる。この結果、オゾン112が上記隙間を通り難くなって金属含有膜100の酸化が抑制されることになる。
【0062】
更に、成膜レートが1.15Å/cycle以上で金属酸化膜102の膜厚が初期値よりも減少する理由は以下のように考えられる。すなわち、シリコンを含有する原料ガス自体は、ここでのプロセス温度のような550℃程度の高温では還元作用を生ずるので、この還元作用により上記自然に発生した金属酸化膜102が還元されることになる。この結果、図3(A)に示すようなこの金属酸化膜102の初期値の厚さは、薄膜104の成膜後には、図3(B)に示すように上記金属酸化膜102が還元されることで薄くなっている。
【0063】
上記結果より原料が3DMASの場合には、各工程におけるプロセス温度は550℃以上であることがよく、特に金属酸化膜102の厚さを初期値以下にするためにはホールド期間hを少なくとも23sec以上に設定するのがよい。ただし、この温度の上限値は600℃程度であり、これよりも温度が高くなると、原料が熱分解してCVD反応が起こるので好ましくない。
【0064】
また、追加の実験として、原料は3DMASを用いてプロセス温度を450℃にした場合の実験について上記と同様な条件で行った。この時のホールド期間hは23secの一点だけである。この時の結果は、図5中のポイントBで示されており、この時の成膜レートは0.88Å/cycleであり、タングステンの金属酸化膜の膜厚は1.77nmであったので、初期値1.1nmよりかなり厚くてあまり好ましい結果ではなかった。
【0065】
更に、原料ガスを3DMASから同じアミノシラン系有機ソースであるDIPAS(ジイソプロピルアミノシラン)に変更し、上記と同じ条件で実験を行った。この時の結果を図5中のポイントC、Dに示す。ポイントCのプロセス条件は、ホールド期間hが23sec、プロセス温度が450℃である。また、ポイントDのプロセス条件は、ホールド期間hが23sec、プロセス温度が300℃である。
【0066】
図5に示すように、ポイントCは成膜レートは1.50Å/cycleであり、タングステン金属酸化膜の膜厚は初期値と同じ1.1nmであって増膜していなかった。また、ポイントDは成膜レートは1.85Å/cycleであり、タングステン金属酸化膜の膜厚は初期値と同じ1.1nmであって増膜していなかった。
【0067】
このように、ポイントC、Dに示すように、原料として3DMASに代えてDIPASを用いた場合には、プロセス温度が450℃以下、例えば300〜450℃の範囲の低い温度でも成膜レートは大きく、しかも、シリコンの吸着量が多いためにタングステン金属酸化膜の成長を抑制することができ、上記3DMASよりも優れた特性を示すことが判る。
【0068】
ちなみに、以上の各実験では金属含有膜100としてタングステン膜を用いたが、これに替えて金属含有膜100としてチタン窒化膜(TiN)を用いた場合についても実験を行った。図6は1サイクル当たりの成膜レートとチタン窒化膜の金属酸化膜の膜厚との関係を示すグラフである。この酸化膜の初期値は2.7nmであった。先の図5に示す場合と同様に、ホールド期間hを5secから113secまで変化させた。
【0069】
図6に示すように、ここではホールド期間を長くするに従って、成膜レートはほぼ直線的に増加しているのに対して、チタン金属酸化膜の膜厚は直線的に減少している。そして、成膜レートが小さい場合には、金属酸化膜の厚さは、初期値よりも大きくなっており、成膜レートが約1.1Å/cycleのときの金属酸化膜の厚さは初期値をほぼ同じになっている。そして、成膜レートが更に大きくなると、これに従って、金属酸化膜の膜厚は更に減少している。ここでは、金属酸化膜の厚さを1.7nmまで減少させることができた。
【0070】
尚、以上の実施例では、金属含有膜としてタングステン膜やチタン窒化膜を用いた場合を例にとって説明したが、この金属含有膜とは、金属膜及び金属の窒化膜を含むものであり、具体的には、上述した金属含有膜としては、タングステン膜、タングステン窒化膜、チタン膜、チタン窒化膜、タンタル膜、タンタル窒化膜よりなる群から選択される1の膜を用いることができる。
【0071】
また、上記実施例では、Si含有の原料として3DMASを用いたが、これに限定されず、アミノシラン系有機ソース(BTBAS、4DMAS、DIPAS)等を用いることができる。
【0072】
また、上記実施例では反応ガスとして酸化性ガスであるオゾンを用いたが、これに限定されず、O 、O 、O プラズマ、N O、NOよりなる群から選択される1以上のガスを用いることができ、更には、特開2005−175441号公報で開示されているように、133Pa以下の低圧力下で発生される酸素活性種と水酸基活性種とを用いるようにしてもよい。また、処理容器22の形状も単に一例を示したに過ぎず、ここで説明した二重管構造に限定されず、単管構造の処理容器でもよいのは勿論である。
【0073】
また、ここでは被処理体として半導体ウエハを例にとって説明したが、この半導体ウエハにはシリコン基板やGaAs、SiC、GaNなどの化合物半導体基板も含まれ、更にはこれらの基板に限定されず、液晶表示装置に用いるガラス基板やセラミック基板等にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
20 成膜装置
22 処理容器
24 内筒
26 外筒
34 ウエハボート(保持手段)
36 蓋部
52 加熱手段
54 原料ガス供給系
56 反応ガス供給系
58 パージガス供給系
60,64 ガスノズル
62,66,70 ガス通路
62B,66B 開閉弁
78 真空排気系
84 装置制御部
100 金属含有膜
102 金属酸化膜
104 薄膜(SiO
W 半導体ウエハ(被処理体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体を収容することができる処理容器と、
開閉弁を有して前記処理容器内へ原料ガスを供給することができる原料ガス供給系と、
開閉弁を有して前記処理容器内へ反応ガスを供給することができる反応ガス供給系と、
開閉弁を有して前記処理容器内の雰囲気を真空引きすることができる真空排気系とを備えた成膜装置を用いて表面に金属含有膜が形成された前記被処理体にシリコン酸化膜よりなる薄膜を形成する成膜方法において、
前記真空排気系の前記開閉弁を閉じた状態で前記原料ガス供給系の前記開閉弁を最初の所定の期間は開状態にして前記原料ガスを一時的に供給した後に直ちに閉状態にして該閉状態を所定の期間維持して前記原料ガスを前記被処理体の表面に吸着させる吸着工程と、
前記反応ガス供給系の前記開閉弁を開状態にして前記反応ガスを前記処理容器内へ供給して前記反応ガスを前記原料ガスと反応させて薄膜を形成する反応工程とを、間に間欠期間を挟んで交互に複数回繰り返すようにしたことを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
前記間欠期間には、前記真空排気系の前記開閉弁を開いた状態で前記処理容器内の雰囲気を排気する排気工程を行うようにしたことを特徴とする請求項1記載の成膜方法。
【請求項3】
前記排気工程では、前記処理容器内へ不活性ガスを供給した状態で真空引きすることを特徴とする請求項2記載の成膜方法。
【請求項4】
前記排気工程では、前記処理容器内への全てのガスの供給を停止した状態で真空引きすることを特徴とする請求項2記載の成膜方法。
【請求項5】
前記吸着工程における前記原料ガス供給系の前記開閉弁が閉状態となる前記所定の期間の長さを調整することにより前記金属含有膜と前記薄膜との界面に形成されている前記金属含有膜の金属酸化膜の厚さをコントロールするようにしたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記所定の期間の長さは、前記金属酸化膜が自然に形成されている時の初期の膜厚以下となるような長さであることを特徴とする請求項5記載の成膜方法。
【請求項7】
前記吸着工程と前記反応工程とを複数回繰り返す際の1回のサイクルにおける成膜レートは1.1Å/cycle以上であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記原料ガスは、アミノシラン系有機ソースよりなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項9】
前記アミノシラン系有機ソースは3DMASであり、前記吸着工程と前記反応工程のプロセス温度は550℃以上であることを特徴とする請求項8記載の成膜方法。
【請求項10】
前記アミノシラン系有機ソースはDIPASであり、前記吸着工程と前記反応工程のプロセス温度は450℃以下であることを特徴とする請求項8記載の成膜方法。
【請求項11】
前記金属含有膜は、タングステン膜、タングステン窒化膜、チタン膜、チタン窒化膜、タンタル膜、タンタル窒化膜よりなる群から選択される1の膜であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項12】
前記原料ガスは、液体の原料を気化器にて気化することにより形成されることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項13】
前記気化器は、前記液体の原料の温度と圧力で決まる蒸気圧により発生量が制御される原料タンクを兼用する気化器であることを特徴とする請求項12記載の成膜方法。
【請求項14】
前記反応ガスは、O 、O 、N O、NOよりなる群から選択される1以上のガスよりなることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項15】
被処理体を収容することができる処理容器と、
前記被処理体を保持する保持手段と、
前記被処理体を加熱する加熱手段と、
開閉弁を有して前記処理容器内へ原料ガスを供給することができる原料ガス供給系と、
開閉弁を有して前記処理容器内へ反応ガスを供給することができる反応ガス供給系と、
開閉弁を有して前記処理容器内の雰囲気を真空引きすることができる真空排気系と、
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の成膜方法を実行するように装置全体を制御する装置制御部と、
を備えたことを特徴とする成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−49506(P2012−49506A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105146(P2011−105146)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】