説明

搬送車システム

【課題】搬送車システムにおいて、下位のコントローラだけで運用試験を行うときに自動運転を可能にする。
【解決手段】搬送車システムは、搬送車を搬送させるための搬送車システムであって、複数のストッカ(51,53,55,57)と、搬送車(44,48)と、複数のコントローラ(52,54,56,58)とを備えている。ストッカは、内部で物品を搬送可能である。搬送車は、複数のストッカ間で物品を搬送可能である。複数のコントローラは、互いに通信可能であり、複数のストッカおよび搬送車を制御する。コントローラは、搬送制御部61と、シナリオ記憶部63と、搬送指令作成部62とを有している。搬送制御部61は、搬送指令を実行することで搬送制御を行う。シナリオ記憶部63は、複数の搬送指令作成情報を含む搬送パターンシナリオを記憶する。搬送指令作成部62は、搬送指令作成情報に対応する搬送指令を作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送車に物品を搬送させる搬送車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、周回軌道と、周回軌道の経路上に設けられた複数のステーションと、周回軌道に沿って一方向に走行して物品を搬送する複数の搬送車とを有する搬送車システムが知られている。ステーションと搬送車との間では、荷つかみ(搬送車にステーションから物品が積み込まれること)や、荷おろし(搬送車からステーションに物品が積み出されること)が行われる。
【0003】
一方、上述のステーションの一例として、半導体工場においてFOUP(Front Opening Unified Pod)を保管するストッカが知られている。ストッカは、自動倉庫であり、複数の棚と、棚に沿って走行するスタッカクレーンとを有している。ストッカでは、例えば、入庫時には、天井搬送車がFOUPを入庫ポートに搬入して、次にスタッカクレーンがFOUPを所定の棚にまで搬送する。出庫時には、スタッカクレーンがFOUPを所定の棚から出庫ポートに搬送し、次に、天井搬送車がFOUPを出庫ポートから搬出する。
【0004】
特許文献1に示す搬送車システムは、搬送車に搬送指令を割り付ける搬送車コントローラと、ストッカに入出庫指示を送信するストッカコントローラとを有している。さらに、搬送車システムは、搬送車コントローラおよびストッカコントローラより上位のコントローラとして、物流コントローラを有している。物流コントローラは、ストッカコントローラに入出庫指示を送信し、搬送車コントローラには搬送指令を送信する。
【0005】
物流コントローラは、製造コントローラから搬送要求を受信し、搬送コントローラに報告を送信する。製造コントローラは、処理装置からの搬送要求を受信する。
【0006】
以上の構成において、ストッカから処理装置に物品を搬送する場合について説明する。最初に、処理装置が製造コントローラに搬送要求を送信する。製造コントローラは、物流コントローラに搬送要求を送信する。物流コントローラは、ストッカコントローラに出庫指示を送信するとともに、搬送車コントローラに搬送指令を送信する。この結果、ストッカコントローラはストッカに出庫指示を送る。さらに、搬送車コントローラは、ストッカに最も近い搬送車に対してストッカに向かうように搬送指令を割り付ける。その結果、搬送車は、出庫準備ができたストッカに走行して、そこで物品を積み込む。搬送車は、さらに、処理装置まで物品を搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−281622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
搬送車システムを工場に新たに導入する際には、一般に、最初に下位のコントローラであるストッカコントローラおよび搬送車コントローラを用いてシステムの運用試験を行う。その後に、上位のコントローラである物流コントローラを組み込んで、物流コントローラを用いて工場全体の搬送車システムの運用試験を行う。しかし、上述したように、下位のコントローラである搬送車コントローラとストッカコントローラは、物流コントローラからの搬送指令に従って、自らがコントロールするシステム内で搬送物を搬送するだけである。つまり、下位のコントローラは自らのシステム内のロケーション情報のみを管理しており、物品を他のコントローラに受け渡す動作を管理していない。そのため、従来において下位コントローラのみによって運用試験を行う場合に、システム間で搬送物の受け渡しを自動的に行う方法がまだ確立されていない。
【0009】
本発明の課題は、搬送車システムを新たに導入する場合に下位のシステムが先に出来上がった場合に、上位コントローラの導入より前に下位のシステムのみで運用試験を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る搬送車システムは、搬送車を用いて物品を搬送させるための搬送車システムであって、複数のストッカと、搬送車と、複数のコントローラとを備えている。ストッカは、内部で物品を搬送可能である。搬送車は、複数のストッカ間で物品を搬送可能である。複数のコントローラは、互いに通信可能であり、複数のストッカおよび搬送車を制御する。コントローラは、搬送制御部と、シナリオ記憶部と、搬送指令作成部とを有している。搬送制御部は、搬送指令を実行することで、搬送制御を行う。シナリオ記憶部は、複数の搬送指令作成情報を含む搬送パターンシナリオを記憶する。搬送指令作成部は、搬送指令作成情報に対応する搬送指令を作成する。
なお、「搬送」とは、搬送車が物品をストッカ間で搬送する動作と、ストッカにおける入出庫・棚間移動動作とを含む。
このシステムでは、コントローラの搬送指令作成部は、シナリオ記憶部に含まれた搬送指令作成情報に対応する搬送指令を作成する。搬送制御部は、作成された搬送指令を実行する。このようにして、ストッカおよび搬送車を制御するコントローラ自らが搬送パターンシナリオに従って搬送指令を作成して、さらに作成された搬送指令を実行する。つまり、上位コントローラが組み込まれる前に、ストッカおよび搬送車を制御するコントローラ同士を協働させて、搬送テストを行うことができる。
【0011】
搬送制御部は、搬送指令を実行した後に、搬送パターンシナリオにある次の搬送指令作成情報を他のコントローラに送信してもよい。搬送制御部は、受信した搬送指令作成情報が搬送パターンシナリオに記憶された搬送指令作成情報に一致するか否かを判断する。搬送制御部は、一致する場合はさらに搬送指令作成情報の内容を実行可能か否かを判断し、実行可能な場合には受信した搬送指令作成情報に対応する搬送指令を搬送指令作成部に作成させる。
このシステムでは、コントローラの搬送制御部が他のコントローラに搬送指令作成情報を送信する。搬送指令作成情報を受信すれば、搬送制御部は、受信した搬送指令作成情報が搬送パターンシナリオに記憶された搬送指令作成情報に一致してかつ搬送指令作成情報の内容を実行可能であると判断すれば、搬送指令作成部に搬送指令を作成させる。搬送制御部は、さらに、作成された搬送指令を実行する。このようにして、搬送パターンシナリオにしたがって、搬送制御部が順番に物品搬送を実行していく。
【0012】
搬送指令作成情報には、1つ前の搬送指令作成情報に基づいて作成された搬送指令の実行後の物品状況、物品ID、搬送元、搬送先の情報が含まれていてもよい。
このシステムでは、簡単な情報からなる搬送指令作成情報および搬送パターンシナリオを用いて、搬送テストを行うことができる。
【0013】
搬送指令作成情報には、複数の搬送先と、各搬送先への振り分け確率情報とが含まれており、搬送指令作成部は、振り分け確率情報を利用して振り分け先を選択してから搬送指令を作成してもよい。
このシステムでは、複数のルートを取り得るシステムの場合、振り分け確率情報にしたがった割合で、各ルートへの搬送テストを行うことができる。
【0014】
搬送パターンシナリオの搬送指令作成情報は、上位のコントローラを搬送車システムに組み込む前の試験運転時に複数のコントローラ同士を協働させて搬送動作を行わせる搬送指令のパターンを構成している。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る搬送車システムでは、搬送車システムを新たに導入する場合に下位のシステムが先に出来上がった場合に、上位コントローラの導入より前に下位のシステムのみで運用試験を可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一般的な搬送車システムの基本レイアウトを示す部分平面図。
【図2】一般的な搬送車システムの制御系を示すブロック図。
【図3】本発明の第1実施形態に係る搬送車システムのレイアウトを示す模式構成図。
【図4】第1搬送車コントローラの構成を示すブロック図。
【図5】第1ストッカコントローラの構成を示すブロック図。
【図6】搬送車コントローラまたはストッカコントローラの制御動作を示すフローチャート。
【図7】第1搬送パターンシナリオを示す図。
【図8】第1搬送パターンシナリオに従って行われる搬送の流れを示す模式構成図。
【図9】第2搬送パターンシナリオを示す図。
【図10】第2搬送パターンシナリオに従って行われる搬送の流れを示す模式構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(1)搬送車システム
本発明の一実施形態としての搬送車システムは、定められた搬送軌道上に複数の搬送車を走行させるためのシステムである。搬送車は、搬送軌道上を一方向に走行し、上位のコントローラによって割り付けられる搬送指令に従い、目的の場所から物品を積み込み、次に搬送先の場所まで走行して物品を搬送先の場所に積み出す。
【0018】
より具体的には、搬送車システムは、例えばクリーンルーム内の天井スペースを利用して配置され、半導体ウェハを収容したFOUPなどの物品を、処理装置や検査装置などのロードポート間で搬送する。搬送軌道は、処理装置を並べたベイ内のU字状のイントラベイルートと、イントラベイルートを相互に接続するインターベイルートの2種類で構成されている。
【0019】
(2)搬送車システムの基本レイアウト
図1を用いて、搬送車システム1の基本レイアウトを説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る搬送車システムの基本レイアウトを示す部分平面図である。
【0020】
搬送車システム1は、複数の周回走行路5と、複数の周回走行路5を結ぶ基幹走行路7とを有している。基幹走行路7は全体で1つの周回経路となっている。周回走行路5に沿って複数の処理装置9が設けられ、基幹走行路7に沿って複数のストッカ11が設けられている。ストッカ11は、周回走行路5における処理装置9群間でのバッファの機能を実現している。
【0021】
処理装置9およびストッカ11等の設備には、設備内に物品を搬入するための入庫ポート13と、設備から搬送車3に物品を荷つかみするための出庫ポート15とが設けてある。なお、入庫ポート13と出庫ポート15とは兼用されていてもよい。
図では示していないが、ストッカ11にはそれぞれ複数の入庫ポートおよび出庫ポートを設けてもよい。
また、ストッカ11は、図示しないが、複数の棚と、スタッカクレーンとを有している。スタッカクレーンは、棚に沿って走行可能であり、物品を入庫ポート13と棚との間で、さらに出庫ポートと棚との間で搬送可能である。
【0022】
(3)搬送車システムの制御系
図2を用いて、搬送車システム1の制御系20を説明する。図2は、搬送車システムの制御系を示すブロック図である。
【0023】
制御系20は、製造コントローラ21と、物流コントローラ23と、ストッカコントローラ25と、搬送車コントローラ27とを有している。
【0024】
物流コントローラ23は、ストッカコントローラ25および搬送車コントローラ27の上位のコントローラである。
【0025】
搬送車コントローラ27は、複数の搬送車3を管理し、これらに搬送指令を割り付ける割り付け機能を有している。なお、「搬送指令」は、走行に関する指令や、荷つかみ位置と荷おろし位置に関する指令を含んでいる。
【0026】
製造コントローラ21は、処理装置9との間で通信することができる。処理装置9は、処理が終了した物品の搬送要求(荷つかみ要求・荷おろし要求)を製造コントローラ21に送信する。
【0027】
製造コントローラ21は、処理装置9からの搬送要求を物流コントローラ23に送信し、物流コントローラ23は報告を製造コントローラ21に送信する。
【0028】
物流コントローラ23は、製造コントローラ21から搬送要求を受けると、ストッカ11での入庫や出庫が伴っている場合、所定のタイミングで入庫指令や出庫指令をストッカコントローラ25へ送信する。そして、ストッカコントローラ25は、これに応じて入庫指令や出庫指令をストッカ11へ送信する。物流コントローラ23は、さらに、製造コントローラ21から搬送要求を受け取ると、それを搬送指令に変換してさらに搬送指令を搬送車コントローラ27へ送信し、搬送車コントローラ27が搬送車3への搬送指令割り付け動作を行う。
【0029】
搬送車コントローラ27は、搬送車に送信する搬送指令を作成するために各搬送車3と連続的に通信して、各搬送車3から送信された位置データをもとにその位置情報を得ている。位置情報を取得する例としては、以下の2つの方法がある。第1の方法では、搬送軌道に複数のポイントを設定しておき、搬送車3がポイントを通過したときに通過信号を搬送車コントローラ27に送信させるようにする。その上で搬送車コントローラ27が、搬送車3が直近に通過したポイントと、ポイントを通過した時刻を記憶し、そのポイント区間の規定速度と時間をもとに搬送車3の位置を演算して求める。第2の方法では、例えばエンコーダを搬送車3に設けておいて、ポイントを通過してからの走行距離を搬送車3から搬送車コントローラ27へ位置データとして送信させ、搬送車コントローラ27がこれによって搬送車3の位置を把握する。
【0030】
(4)搬送車システムのレイアウト(第1実施形態)
図3を用いて、本発明の第1実施形態について説明する。図3は、本発明の第1実施形態に係る搬送車システムのレイアウトを示す模式構成図である。
【0031】
図3に示す搬送車システム30は、工場に組み込まれて通常に稼働するときには、図2に示した物流コントローラによって全体を制御される。しかし、図3は、物流コントローラが設置される前の搬送車システム30の状態を示している。
【0032】
搬送車システム30は、第1ルートシステム31と、第2ルートシステム32とを有している。第1ルートシステム31と第2ルートシステム32は、独立した搬送ルートを有しているが、両ルート間に配置されたストッカを介し物品を両ルート間で移動可能である。
【0033】
第1ルートシステム31は、ループ状の第1軌道41と、第1搬送車42と、第2搬送車43と、第1搬送車コントローラ44とを備えている。第1搬送車42と第2搬送車43は、第1軌道41を一方向に循環する。
【0034】
第2ルートシステム32は、ループ状の第2軌道45と、第3搬送車46と、第4搬送車47と、第2搬送車コントローラ48とを備えている。第3搬送車46と第4搬送車47は、第2軌道45を一方向に循環する。
【0035】
搬送車システム30は、さらに、第1ストッカシステム33と、第2ストッカシステム34と、第3ストッカシステム35と、第4ストッカシステム36とを有している。第1ストッカシステム33と、第2ストッカシステム34は、第1ルートシステム31のみに配置されている。第3ストッカシステム35と、第4ストッカシステム36は、第1ルートシステム31および第2ルートシステム32の間に配置され、第1ルートシステム31および第2ルートシステム32の間で物品を受け渡しする機能も有している。
【0036】
第1ストッカシステム33は、第1ストッカ51(STK_A)と、第1ストッカコントローラ52とを有している。第1ストッカ51は、棚51aと、入庫ポート71(P1)と、出庫ポート72(P2)とを有している。
【0037】
第2ストッカシステム34は、第2ストッカ53(STK_B)と、第2ストッカコントローラ54とを有している。第2ストッカ53は、棚53aと、入庫ポート73(P1)と、出庫ポート74(P2)とを有している。
【0038】
第3ストッカシステム35は、第3ストッカ55(STK_C)と、第3ストッカコントローラ56とを有している。第3ストッカ55は、棚55aと、第1入庫ポート75(P1)と、第1出庫ポート76(P2)と、第2入庫ポート77(P3)と、第2出庫ポート78(P4)とを有している。第1入庫ポート75(P1)と第1出庫ポート76(P2)とが、第1ルートシステム31の第1軌道41側に配置されている。第2入庫ポート77(P3)と第2出庫ポート78(P4)とが、第2ルートシステム32の第2軌道45側に配置されている。
【0039】
第4ストッカシステム36は、第4ストッカ57(STK_D)と、第4ストッカコントローラ58とを有している。第4ストッカ57は、棚57aと、第1入庫ポート79(P1)と、第1出庫ポート80(P2)と、第2入庫ポート81(P3)と、第2出庫ポート82(P4)とを有している。第1入庫ポート79(P1)と第1出庫ポート80(P2)とが、第1ルートシステム31の第1軌道41側に配置されている。第2入庫ポート81(P3)と第2出庫ポート82(P4)とが、第2ルートシステム32の第2軌道45側に配置されている。
【0040】
以上の構成により、第1搬送車42および第2搬送車43は、第1軌道41を走行しながら、第1ストッカ51、第2ストッカ53、第4ストッカ57、第3ストッカ55をこの順で通過または荷つかみ・荷おろし動作をできる。さらに、第3搬送車46および第4搬送車47は、第2軌道45を走行しながら、第3ストッカ55、第4ストッカ57を通過または荷つかみ・荷おろし動作をできる。
(5)搬送車コントローラ
図4を用いて、第1搬送車コントローラ44について説明する。図4は、搬送車コントローラの構成を示すブロック図である。
【0041】
第1搬送車コントローラ44は、CPU、RAM、ROM等からなりプログラムを実行するコンピュータであり、搬送制御部61と、搬送指令作成部62と、搬送パターンシナリオ記憶部63とを有している。搬送制御部61は、第1搬送車42および第2搬送車43と交信するとともに、第2搬送車コントローラ48、第1ストッカコントローラ52、第2ストッカコントローラ54、第3ストッカコントローラ56、第4ストッカコントローラ58とも交信可能である。
【0042】
図4には示していないが、第1搬送車コントローラ44は、ルートマップを保存するメモリを有している。ルートマップとは、走行ルートの配置、原点の位置、原点を基準とする基準位置や移載位置の座標を記載したマップである。座標は、原点からの走行距離を搬送車3のエンコーダの出力パルス数などに換算したものである。搬送制御部61は、メモリからルートマップを読み出し可能である。
【0043】
また、第1搬送車42および第2搬送車43は、図示していないが、制御部とメモリを有している。制御部は、CPU、RAM、ROM等からなりプログラムを実行するコンピュータであり、第1搬送車コントローラ44と交信可能である。さらに、第1搬送車42および第2搬送車43は、メモリ内にルートマップを有しており、ルートマップに記載の座標と自機の内部座標(エンコーダによって求めた座標)とを比較しながら走行を続ける。
【0044】
なお、第2搬送車コントローラ48の構成は、第1搬送車コントローラ44の構成と同様であるので、説明を省略する。
【0045】
第1搬送車コントローラ44が管理するシステムに所属するポートは、第1ストッカ51の入庫ポート71(P1)および出庫ポート72(P2)、第2ストッカ53の入庫ポート73(P1)および出庫ポート74(P2)、第3ストッカ55の第1入庫ポート75(P1)および第1出庫ポート76(P2)、第4ストッカ57の第1入庫ポート79(P1)および第1出庫ポート80(P2)である。第2搬送車コントローラ48が管理するシステムに所属するポートは、第3ストッカ55の第2入庫ポート77(P3)および第2出庫ポート78(P4)、第4ストッカ57の第2入庫ポート81(P3)および第2出庫ポート82(P4)である。
【0046】
(6)搬送指令および搬送パターンシナリオ
搬送指令作成部62は、搬送制御部61からの指令に基づいて、搬送指令を作成可能である。搬送指令とは、通常運転時に物流コントローラから各コントローラに送信されてくる搬送指令と同じ種類のものであり、複数のコントローラが制御する範囲内での「キャリアID」、「搬送元」、「搬送先」を含んでいる。搬送制御部61は、搬送指令作成部62から搬送指令が入力されると、その内容を実行する。
【0047】
搬送パターンシナリオ記憶部63は、搬送パターンシナリオを保存している。搬送パターンシナリオは、物流コントローラを組み込む前の試験運転時に各コントローラ同士を協働させて搬送動作を行わせる搬送パターンが記述されたものである。具体的には、搬送パターンシナリオは、複数のキーイベントが順番に記載されている。各キーイベントは、搬送指令を作成するための情報であり、物品ID、搬送元、搬送先を含んでいる。
【0048】
「イベントID」とは、1つ前の搬送指令作成情報に基づいて作成された搬送指令の実行後の物品状況を示しており、搬送指令を生成するキーとなる。「キャリアID」とは、受け渡し対象となる物品のIDであり、1つの搬送パターンシナリオには1つのキャリアIDが用いられる。「搬送元」は、搬送前の物品の位置を示しており、具体的にはストッカのポートまたは棚である。「搬送先」は、搬送後の物品の位置を示しており、具体的にはストッカのポートまたは棚である。このように、簡単な情報からなる搬送指令作成情報および搬送パターンシナリオを用いて、搬送テストを行うことができる。
【0049】
搬送指令作成部62は、搬送パターンシナリオに記載されたキーイベントに基づいて搬送指令を作成可能である。好ましくは、搬送パターンシナリオは、ある物品が特定のルート内をループするように設定される。それにより、所定ルートにおける搬送テストを連続して実行することができる。なお、キーイベントは、物流コントローラがシステムに組み込まれて通常動作をしている場合に、各コントローラが物流コントローラに送信する情報と同じである。
【0050】
搬送パターンシナリオは、搬送元が同じポートになっているキーイベントを複数記載しないように設定されている。つまり、キーイベントは搬送元が全て異なっているので、コントローラは、現在の動作が搬送パターンシナリオのどの部分に該当するかを判断する必要がない。反対に、そのようなキーイベントが複数記載されているような場合は、キーイベントを受信したコントローラがどちらのキーイベントにしたがって搬送指令を作成すべきかを判断できなくなる。
(7)ストッカコントローラ
図5を用いて、第1ストッカコントローラ52について説明する。図5は、第1ストッカコントローラの構成を示すブロック図である。
【0051】
第1ストッカコントローラ52は、CPU、RAM、ROM等からなりプログラムを実行するコンピュータであり、搬送制御部61と、搬送指令作成部62と、搬送パターンシナリオ記憶部63とを有している。搬送制御部61は、第1ストッカ51のスタッカクレーン59、入庫ポート71(P1)、出庫ポート72(P2)と交信する。搬送制御部61は、さらに、第2ストッカコントローラ54、第3ストッカコントローラ56、第4ストッカコントローラ58、第1搬送車コントローラ44、第2搬送車コントローラ48とも交信可能である。
なお、第1ストッカコントローラ52の搬送制御部61、搬送指令作成部62、搬送パターンシナリオ記憶部63は、第1搬送車コントローラ44のものと同じ機能を有している。
【0052】
スタッカクレーン59は、図示していないが、搬送制御部61と通信可能なクレーンコントローラを有している。クレーンコントローラは、CPU、RAM、ROM等からなりプログラムを実行するコンピュータである。
【0053】
なお、第2ストッカコントローラ54、第3ストッカコントローラ56、第4ストッカコントローラ58の構成は、第1ストッカコントローラ52の構成と同様であるので、説明を省略する。
【0054】
第1ストッカコントローラ52が管理するシステムに所属するポートは、第1ストッカ51の入庫ポート71(P1)、出庫ポート72(P2)、棚51aである。第2ストッカコントローラ54が管理するシステムに所属するポートは、第2ストッカ53の入庫ポート73(P1)、出庫ポート74(P2)、棚53aである。第3ストッカコントローラ56が管理するシステムに所属するポートは、第3ストッカ55の第1入庫ポート75(P1)、第1出庫ポート76(P2)、第2入庫ポート77(P3)、第2出庫ポート78(P4)、棚55aである。第4ストッカコントローラ58が管理するシステムに所属するポートは、第4ストッカ57の第1入庫ポート79(P1)、第1出庫ポート80(P2)、第2入庫ポート81(P3)、第2出庫ポート82(P4)、棚57aである。
なお、
(8)試験運転時の制御動作(第1実施例)
以下、図6〜図8を用いて、第1実施例として、搬送指令作成部62による搬送指令の作成、搬送制御部61による搬送指令の実行の繰り返しによる搬送パターンシナリオに基づく運転試験を説明する。図6は、搬送車コントローラまたはストッカコントローラの制御動作を示すフローチャートである。図7は、第1搬送パターンシナリオを示す図である。図8は、第1搬送パターンシナリオに従って行われる搬送の流れを示す模式構成図である。
【0055】
各コントローラの搬送パターンシナリオ記憶部63には、予め共通の搬送パターンシナリオが保存されている。この実施例では、図7に示す第1搬送パターンシナリオ91が用いられる。
第1搬送パターンシナリオ91は、複数のキーイベントによって構成されている。具体的には、第1搬送パターンは、キーイベント(1)〜(9)を有している。第1搬送パターンシナリオ91では、キャリアIDとしてカセット番号C0001が示されている。
【0056】
図6のステップS1では、搬送制御部61は、キーイベントが受信されるのを待つ。キーイベントの送信元は原則的に他の制御部である。
【0057】
ステップS2では、送信されてきたキーイベントについて、搬送パターンシナリオ記憶部63に保存された搬送パターンシナリオにおける「キャリアID」および「搬送元」が一致するキーイベントがあるか否かをチェックする。これらが一致する場合は、さらに、「搬送元」および「搬送先」が自ら管理するシステム内のポートであるか否か(実行可能であるか否か)を判断する。いずれか一方が「否」であれば処理不要であるとして、プロセスは終了する。両方が「正」であれば、処理が必要であるとしてステップS3に移行する。
【0058】
ステップS3では、搬送制御部61はキーイベントを搬送指令作成部62に送信して、それに基づいて自己が実行すべき搬送指令を作成する。搬送指令作成部62は、搬送指令を搬送制御部61に出力する。
【0059】
ステップS4では、搬送制御部61は、自己が作成した搬送指令を実行する。より具体的には、搬送車コントローラであれば搬送車を搬送させ、ストッカコントローラであればストッカを動作させる。搬送制御動作が終了すると、ステップS5に移行する。
【0060】
ステップS5では、搬送制御部61は、搬送パターンシナリオに記載された次のキーイベントを他のコントローラに対して一斉に送信して、処理は終了する。ここで、選ばれる次のキーイベントとは、実行した搬送指令に含まれる搬送先に一致する搬送元が記載されたキーイベントである。
【0061】
次に、実際に第1搬送パターンシナリオ91に基づく試験動作について説明する。第1搬送パターンシナリオ91では、キーイベント(1)〜(9)までが順番に実行され、キーイベント(9)が終了すると再びキーイベント(1)が実行されるようになっている。このようにして、一連の制御動作を連続して実行することができる。
【0062】
第1搬送パターンシナリオ91では、キーイベント(1)において、イベントIDはCarrierWaitOutであり、これはストッカの出庫ポートにおいて搬送準備が完了したことを意味する。搬送準備の完了の認識は、出庫ポートに配置されたIDリーダが物品のIDを読み取ることで行われる。また、キーイベント(1)において、搬送元がSTK_B_P2、搬送先がSTK_C_P1であるので、これは物品を第2ストッカ53の出庫ポート74(P2)から第3ストッカ55の第1入庫ポート75(P1)に搬送することを意味している。キーイベント(1)を全てのコントローラが受信すると(ステップS1)、第1搬送車コントローラ44のみが処理必要であると判断して(ステップS2のYes)、第1搬送車コントローラ44が搬送指令を作成する(ステップS3)。第1搬送車コントローラ44は、さらに搬送指令を実行する(ステップS4)。具体的には、第1搬送車コントローラ44は、第1搬送車42または第2搬送車43に搬送指令を割り付ける。その結果、搬送車が物品を第2ストッカ53の出庫ポート74(P2)から第3ストッカ55の第1入庫ポート75(P1)に搬送する。搬送が終了すると、第1搬送車コントローラ44は他の全てのコントローラにキーイベント(2)を送信する。
【0063】
キーイベント(2)において、イベントIDはVehicleDepositCompletedであり、これは搬送車が物品をストッカの入庫ポートに下ろしたことを意味する。物品が入庫ポートに下ろされたことの認識は、入庫ポートに配置されたIDリーダが物品のIDを読み取ることで行われる。また、キーイベント(2)において、搬送元がSTK_C_P1、搬送先がSTK_C_P4であるので、これは物品を第3ストッカ55の第1入庫ポート75(P1)から第3ストッカ55の第2出庫ポート78(P4)に搬送することを意味している。キーイベント(2)を全てのコントローラが受信すると(ステップS1)、第3ストッカコントローラ56のみが処理必要であると判断して(ステップS2のYes)、第3ストッカコントローラ56が搬送指令を作成する(ステップS3)。第3ストッカコントローラ56は、さらに搬送指令を実行する(ステップS4)。具体的には、第3ストッカコントローラ56は、スタッカクレーン(図示せず)に搬送指令を送信する。その結果、スタッカクレーン(図示せず)が物品を第3ストッカ55の第1入庫ポート75(P1)から第2出庫ポート78(P4)に搬送する。搬送が終了すると、第3ストッカコントローラ56は他の全てのコントローラにキーイベント(3)を送信する。
なお、物品が入庫ポートに下ろされたことの認識は、IDリーダが物品のIDを読み取るのではなく、搬送車が物品を下ろしたことを搬送車コントローラが送信することで行ってもよい。
【0064】
キーイベント(3)において、イベントIDはCarrierWaitOutである。また、キーイベント(3)において、搬送元がSTK_C_P4、搬送先がSTK_D_P3であるので、これは物品を第3ストッカ55の第2出庫ポート78(P4)から第4ストッカ57の第2入庫ポート81(P3)に搬送することを意味している。キーイベント(3)を全てのコントローラが受信すると(ステップS1)、第2搬送車コントローラ48のみが処理必要であると判断して(ステップS2のYes)、第2搬送車コントローラ48が搬送指令を作成する(ステップS3)。第2搬送車コントローラ48は、さらに搬送指令を実行する(ステップS4)。具体的には、第2搬送車コントローラ48は、第3搬送車46または第4搬送車47に搬送指令を割り付ける。その結果、搬送車が物品を第3ストッカ55の第2出庫ポート78(P4)から第4ストッカ57の第2入庫ポート81(P3)に搬送する。搬送が終了すると、第2搬送車コントローラ48は他の全てのコントローラにキーイベント(4)を送信する。
【0065】
キーイベント(4)において、イベントIDはVehicleDepositCompletedである。また、キーイベント(4)において、搬送元がSTK_D_P3、搬送先がSTK_D_STORAGEであるので、これは物品を第4ストッカ57の第2入庫ポート81(P3)から第4ストッカ57の棚57aに搬送することを意味している。物品が棚57aに載置されたことの認識は、ストッカクレーンが自らの移載動作の完了を判断することで行われる。キーイベント(4)を全てのコントローラが受信すると(ステップS1)、第4ストッカコントローラ58のみが処理必要であると判断して(ステップS2のYes)、第4ストッカコントローラ58が搬送指令を作成する(ステップS3)。第4ストッカコントローラ58は、さらに搬送指令を実行する(ステップS4)。具体的には、第4ストッカコントローラ58は、スタッカクレーン(図示せず)に搬送指令を送信する。その結果、スタッカクレーン(図示せず)が物品を第4ストッカ57の第2入庫ポート81(P3)から第4ストッカ57の棚57aに搬送する。搬送が終了すると、第4ストッカコントローラ58は他の全てのコントローラにキーイベント(5)を送信する。
【0066】
キーイベント(5)において、イベントIDはTransferCompletedであり、これはスタッカクレーンによる入庫が完了したことを意味する信号である。また、キーイベント(5)において、搬送元がSTK_D_STORAGE、搬送先がSTK_D_P4であるので、これは物品を棚57aから第4ストッカ57の第2出庫ポート82(P4)に搬送することを意味している。キーイベント(5)は第4ストッカ57内部で発生したイベントを意味しており(ステップS1)、第4ストッカコントローラ58は処理必要であると判断して(ステップS2のYes)、第4ストッカコントローラ58が搬送指令を作成する(ステップS3)。第4ストッカコントローラ58は、さらに搬送指令を実行する(ステップS4)。具体的には、第4ストッカコントローラ58は、スタッカクレーン(図示せず)に搬送指令を送信する。その結果、スタッカクレーン(図示せず)が物品を第4ストッカ57の棚57aから第4ストッカ57の第2出庫ポート82(P4)に搬送する。搬送が終了すると、第4ストッカコントローラ58は他の全てのコントローラにキーイベント(6)を送信する。
【0067】
キーイベント(6)において、イベントIDはCarrierWaitOutである。また、キーイベント(6)において、搬送元がSTK_D_P4、搬送先がSTK_C_P3であるので、これは物品を第4ストッカ57の第2出庫ポート82(P4)から第3ストッカ55の第2入庫ポート77(P3)に搬送することを意味している。キーイベント(6)を全てのコントローラが受信すると(ステップS1)、第2搬送車コントローラ48のみが処理必要であると判断して(ステップS2のYes)、第2搬送車コントローラ48が搬送指令を作成する(ステップS3)。第2搬送車コントローラ48は、さらに搬送指令を実行する(ステップS4)。具体的には、第2搬送車コントローラ48は、第3搬送車46または第4搬送車47に搬送指令を割り付ける。その結果、搬送車が物品を第4ストッカ57の第2出庫ポート82(P4)から第3ストッカ55の第2入庫ポート77(P3)に搬送する。搬送が終了すると、第2搬送車コントローラ48は他の全てのコントローラにキーイベント(7)を送信する。
【0068】
キーイベント(7)において、イベントIDはVehicleDepositCompletedである。また、キーイベント(7)において、搬送元がSTK_C_P3、搬送先がSTK_C_P2であるので、これは物品を第3ストッカ55の第2入庫ポート77(P3)から第3ストッカ55の第1出庫ポート76(P2)に搬送することを意味している。キーイベント(7)を全てのコントローラが受信すると(ステップS1)、第3ストッカコントローラ56のみが処理必要であると判断して(ステップS2のYes)、第3ストッカコントローラ56が搬送指令を作成する(ステップS3)。第3ストッカコントローラ56は、さらに搬送指令を実行する(ステップS4)。具体的には、第3ストッカコントローラ56は、スタッカクレーン(図示せず)に搬送指令を送信する。その結果、スタッカクレーン(図示せず)が物品を第3ストッカ55の第2入庫ポート77(P3)から第1出庫ポート76(P2)に搬送する。搬送が終了すると、第3ストッカコントローラ56は他の全てのコントローラにキーイベント(8)を送信する。
【0069】
キーイベント(8)において、イベントIDはCarrierWaitOutである。また、キーイベント(8)において、搬送元がSTK_C_P2、搬送先がSTK_B_P1であるので、これは物品を第3ストッカ55の第1出庫ポート76(P2)から第2ストッカ53の入庫ポート73(P1)に搬送することを意味している。キーイベント(8)を全てのコントローラが受信すると(ステップS1)、第1搬送車コントローラ44のみが処理必要であると判断して(ステップS2のYes)、第1搬送車コントローラ44が搬送指令を作成する(ステップS3)。第1搬送車コントローラ44は、さらに搬送指令を実行する(ステップS4)。具体的には、第1搬送車コントローラ44は、第1搬送車42または第2搬送車43に搬送指令を割り付ける。その結果、搬送車が物品を第3ストッカ55の第1出庫ポート76(P2)から第2ストッカ53の入庫ポート73(P1)に搬送する。搬送が終了すると、第2搬送車コントローラ48は他の全てのコントローラにキーイベント(9)を送信する。
【0070】
キーイベント(9)において、イベントIDはVehicleDepositCompletedである。また、キーイベント(9)において、搬送元がSTK_B_P1、搬送先がSTK_B_P2であるので、これは物品を第2ストッカ53の入庫ポート73(P1)から第2ストッカ53の出庫ポート74(P2)に搬送することを意味している。キーイベント(9)を全てのコントローラが受信すると(ステップS1)、第2ストッカコントローラ54のみが処理必要であると判断して(ステップS2のYes)、第2ストッカコントローラ54が搬送指令を作成する(ステップS3)。第2ストッカコントローラ54は、さらに搬送指令を実行する(ステップS4)。具体的には、第2ストッカコントローラ54は、スタッカクレーン(図示せず)に搬送指令を送信する。その結果、スタッカクレーン(図示せず)が物品を第2ストッカ53の入庫ポート73(P1)から第2ストッカ53の出庫ポート74(P2)に搬送する。搬送が終了すると、第2ストッカコントローラ54は他の全てのコントローラにキーイベント(1)を送信する。
【0071】
以上の動作により、キーイベント(1)〜(9)の内容が繰り返し実行され、運転試験が行われる。具体的には、各コントローラには搬送パターンシナリオが設定されており、コントローラは搬送元と搬送先の情報に基づいてコントローラ自らが搬送指令を作成する。この結果、コントローラ間で通信を行い、自動で物品の受け渡しが行われる。以上より、システム立ち上げ初期段階でもコントローラ間の物品の受け渡しを自動で行い、搬送システムテストを効率よく行うことができ、そのために工場導入時の搬送システム立ち上げを効率よくできるようになる。
【0072】
(9)試験運転時の制御動作(第2実施例)
以下、図9および図10を用いて、第2実施例として、搬送指令作成部62による搬送指令の作成、搬送制御部61による搬送指令の実行の繰り返しによる搬送パターンシナリオに基づく運転試験を説明する。図9は、第2搬送パターンシナリオを示す図である。図10は、第2搬送パターンシナリオに従って行われる搬送の流れを示す模式構成図である。
【0073】
各コントローラの搬送パターンシナリオ記憶部63には、予め共通の搬送パターンシナリオが保存されている。この実施例では、図9に示す第2搬送パターンシナリオ92が用いられる。第2搬送パターンシナリオ92は、複数のキーイベントによって構成されている。具体的には、第1搬送パターンは、キーイベント(11)〜(18)を有している。各キーイベントは、情報として、イベントID、キャリアID、搬送ポート、搬送先を有している。キャリアIDは、カセット番号C0002となっている。
【0074】
次に、実際に第2搬送パターンシナリオ92に基づく試験動作について説明する。
第2搬送パターンシナリオ92では、キーイベント(11)〜(12)までが順番に実行され、キーイベント(12)を分岐ポイントとして第1ルートと第2ルートに分かれるようになっている。第1ルートでは、キーイベント(13)〜(16)が実行され、その後キーイベント(11)に戻るようになっている。第2ルートでは、キーイベント(17)〜(18)が実行され、その後キーイベント(15)に合流するようになっている。このように一連の制御動作を連続して実行することができる。
具体的には、キーイベント(12)には、複数の搬送先と、各搬送先への振り分け確率情報とが含まれており、搬送指令作成部62は、振り分け確率情報を利用して振り分け先を選択してから搬送指令を作成する。このシステムでは、複数のルートを取り得るシステムの場合、振り分け確率情報にしたがった割合で、各ルートへの搬送テストを行うことができる。
【0075】
次に、実際に第2搬送パターンシナリオ92に基づく試験動作について説明する。第2搬送パターンシナリオ92では、キーイベント(11)において、キーイベントはCarrierWaitOutである。また、キーイベント(11)において、搬送元がSTK_A_P2、搬送先がSTK_D_P1であるので、これは物品を第1ストッカ51の出庫ポート72(P2)から第4ストッカ57の第1入庫ポート79(P1)に搬送することを意味している。キーイベント(11)を全てのコントローラが受信すると(ステップS1)、第1搬送車コントローラ44のみが処理必要であると判断して(ステップS2のYes)、第1搬送車コントローラ44が搬送指令を作成する(ステップS3)。第1搬送車コントローラ44は、さらに搬送指令を実行する(ステップS4)。具体的には、第1搬送車コントローラ44は、第1搬送車42または第2搬送車43に搬送指令を割り付ける。その結果、搬送車が物品を第1ストッカ51の出庫ポート72(P2)から第4ストッカ57の第1入庫ポート79(P1)に搬送する。搬送が終了すると、第1搬送車コントローラ44は他の全てのコントローラにキーイベント(12)を送信する。
【0076】
キーイベント(12)において、キーイベントはVehicleDepositCompletedである。また、キーイベント(12)において、搬送元がSTK_D_P1であるので、これは物品を第4ストッカ57の第1入庫ポート79(P1)から物品を搬出することを意味する。一方、キーイベント(12)において、搬送先がSTK_D_P4(80%)とSTK_D_P2(20%)と記載されている。これは、キーイベント(12)を元に作られる搬送指令が、80%の割合で搬送先が第4ストッカ57の第2出庫ポート82(P4)になり、20%の割合で搬送先が第4ストッカ57の第1出庫ポート80(P2)になることを意味する。
【0077】
キーイベント(12)を全てのコントローラが受信すると(ステップS1)、第4ストッカコントローラ58のみが処理必要であると判断して(ステップS2のYes)、第4ストッカコントローラ58が搬送指令を作成する(ステップS3)。第4ストッカコントローラ58は、さらに搬送指令を実行する(ステップS4)。具体的には、第4ストッカコントローラ58は、スタッカクレーン(図示せず)に搬送指令を送信する。その結果、スタッカクレーン(図示せず)が物品を第4ストッカ57の第1入庫ポート79(P1)から第2出庫ポート82(P4)または第1出庫ポート80(P2)に搬送する。搬送が終了すると、第4ストッカコントローラ58は他の全てのコントローラにキーイベント(13)またはキーイベント(17)を送信する。
【0078】
(9−1)第1分岐ルート
キーイベント(13)において、イベントIDはCarrierWaitOutである。また、キーイベント(13)において、搬送元がSTK_D_P4、搬送先がSTK_C_P3であるので、これは物品を第4ストッカ57の第2出庫ポート82(P4)から第3ストッカ55の第2入庫ポート77(P3)に搬送することを意味している。キーイベント(13)を全てのコントローラが受信すると(ステップS1)、第2搬送車コントローラ48のみが処理必要であると判断して(ステップS2のYes)、第2搬送車コントローラ48が搬送指令を作成する(ステップS3)。第2搬送車コントローラ48は、さらに搬送指令を実行する(ステップS4)。具体的には、第2搬送車コントローラ48は、第3搬送車46または第4搬送車47に搬送指令を割り付ける。その結果、搬送車が物品を第4ストッカ57の第2出庫ポート82(P4)から第3ストッカ55の第2入庫ポート77(P3)に搬送する。搬送が終了すると、第2搬送車コントローラ48は他の全てのコントローラにキーイベント(14)を送信する。
【0079】
キーイベント(14)において、イベントIDはVehicleDepositCompletedである。また、キーイベント(14)において、搬送元がSTK_C_P3、搬送先がSTK_C_P2であるので、これは物品を第3ストッカ55の第2入庫ポート77(P3)から第3ストッカ55の第1出庫ポート76(P2)に搬送することを意味している。キーイベント(14)を全てのコントローラが受信すると(ステップS1)、第3ストッカコントローラ56のみが処理必要であると判断して(ステップS2のYes)、第3ストッカコントローラ56が搬送指令を作成する(ステップS3)。第3ストッカコントローラ56は、さらに搬送指令を実行する(ステップS4)。具体的には、第3ストッカコントローラ56は、スタッカクレーン(図示せず)に搬送指令を送信する。その結果、スタッカクレーン(図示せず)が物品を第3ストッカ55の第2入庫ポート77(P3)から第3ストッカ55の第1出庫ポート76(P2)に搬送する。搬送が終了すると、第3ストッカコントローラ56は他の全てのコントローラにキーイベント(15)を送信する。
【0080】
キーイベント(15)において、イベントIDはCarrierWaitOutである。また、キーイベント(15)において、搬送元がSTK_C_P2、搬送先がSTK_A_P1であるので、これは物品を第3ストッカ55の第1出庫ポート76(P2)から第1ストッカ51の入庫ポート71(P1)に搬送することを意味している。キーイベント(15)を全てのコントローラが受信すると(ステップS1)、第1搬送車コントローラ44のみが処理必要であると判断して(ステップS2のYes)、第1搬送車コントローラ44が搬送指令を作成する(ステップS3)。第1搬送車コントローラ44は、さらに搬送指令を実行する(ステップS4)。具体的には、第1搬送車コントローラ44は、第1搬送車42または第2搬送車43に搬送指令を割り付ける。その結果、搬送車が物品を第3ストッカ55の第1出庫ポート76(P2)から第1ストッカ51の入庫ポート71(P1)に搬送する。搬送が終了すると、第2搬送車コントローラ48は他の全てのコントローラにキーイベント(16)を送信する。
【0081】
キーイベント(16)において、イベントIDはVehicleDepositCompletedである。また、キーイベント(16)において、搬送元がSTK_A_P1、搬送先がSTK_A_P2であるので、これは物品を第1ストッカ51の入庫ポート71(P1)から第1ストッカ51の出庫ポート72(P2)に搬送することを意味している。キーイベント(16)を全てのコントローラが受信すると(ステップS1)、第1ストッカコントローラ52のみが処理必要であると判断して(ステップS2のYes)、第1ストッカコントローラ52が搬送指令を作成する(ステップS3)。第1ストッカコントローラ52は、さらに搬送指令を実行する(ステップS4)。具体的には、第1ストッカコントローラ52は、スタッカクレーン(図示せず)に搬送指令を送信する。その結果、スタッカクレーン(図示せず)が物品を第1ストッカ51の入庫ポート71(P1)から第1ストッカ51の出庫ポート72(P2)に搬送する。搬送が終了すると、第1ストッカコントローラ52は他の全てのコントローラにキーイベント(11)を送信する。
このようにして、キーイベント(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)が連続して行われる。
【0082】
(9−2)第2分岐ルート
キーイベント(17)において、イベントIDはCarrierWaitOutである。また、キーイベント(17)において、搬送元がSTK_D_P2、搬送先がSTK_C_P1であるので、これは物品を第4ストッカ57の第1出庫ポート80(P2)から第3ストッカ55の第1入庫ポート75(P1)に搬送することを意味している。キーイベント(17)を全てのコントローラが受信すると(ステップS1)、第1搬送車コントローラ44のみが処理必要であると判断して(ステップS2のYes)、第1搬送車コントローラ44が搬送指令を作成する(ステップS3)。第1搬送車コントローラ44は、さらに搬送指令を実行する(ステップS4)。具体的には、第1搬送車コントローラ44は、第1搬送車42または第2搬送車43に搬送指令を割り付ける。その結果、搬送車が物品を第4ストッカ57の第1出庫ポート80(P2)から第3ストッカ55の第1入庫ポート75(P1)に搬送する。搬送が終了すると、第2搬送車コントローラ48は他の全てのコントローラにキーイベント(18)を送信する。
【0083】
キーイベント(18)において、イベントIDはVehicleDepositCompletedである。また、キーイベント(18)において、搬送元がSTK_C_P1、搬送先がSTK_C_P2であるので、これは物品を第3ストッカ55の第1入庫ポート75(P1)から第3ストッカ55の第1出庫ポート76(P2)に搬送することを意味している。キーイベント(18)を全てのコントローラが受信すると(ステップS1)、第3ストッカコントローラ56のみが処理必要であると判断して(ステップS2のYes)、第3ストッカコントローラ56が搬送指令を作成する(ステップS3)。第3ストッカコントローラ56は、さらに搬送指令を実行する(ステップS4)。具体的には、第3ストッカコントローラ56は、スタッカクレーン(図示せず)に搬送指令を送信する。その結果、スタッカクレーン(図示せず)が物品を第3ストッカ55の第1入庫ポート75(P1)から第3ストッカ55の第1出庫ポート76(P2)に搬送する。
搬送が終了すると、第1ストッカコントローラ52は他の全てのコントローラにキーイベント(15)を送信する。この結果、第2分岐ルートが第1分岐ルートに合流する。
【0084】
以上の動作により、キーイベント(11)〜(18)の内容が繰り返し実行され、運転試験が行われる。
(10)特徴
このシステムでは、コントローラの搬送制御部61が他の搬送制御部61にキーイベント(搬送指令作成情報)を送信する。キーイベントを受信すれば、搬送制御部61は、受信したキーイベントが搬送パターンシナリオに記憶されたキーイベントに一致してかつキーイベントの内容を実行可能であると判断すれば、搬送指令作成部62に搬送指令を作成させる。次に、搬送制御部61は、作成された搬送指令を実行する。このようにして、搬送パターンシナリオにしたがって、搬送制御部61が順番に物品搬送を実行していく。
このようにして、ストッカおよび搬送車を制御するコントローラ自らが搬送パターンシナリオに従って搬送指令を作成して、さらに搬送指令を実行する。つまり、上位コントローラが組み込まれる前に、ストッカおよび搬送車を制御するコントローラ同士を協働させて、搬送テストを行うことができる。
【0085】
(11)他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0086】
前記実施形態では1つのストッカコントローラが1つのストッカを制御していたが、本発明はそのような実施形態に限定されない。つまり、1つのストッカコントローラが複数のストッカを制御してもよい。
【0087】
前記実施形態ではコントローラは他の全てのコントローラにキーイベントを送信していたが、本発明はそのような実施形態に限定されない。コントローラは次の搬送動作を実行するコントローラにのみキーイベントを送信してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、搬送車に物品を搬送させる搬送車システムに広く適用できる。
【符号の説明】
【0089】
1 搬送車システム
3 搬送車
5 周回走行路
7 基幹走行路
9 処理装置
11 ストッカ
13 入庫ポート
15 出庫ポート
20 制御系
21 製造コントローラ
23 物流コントローラ
25 ストッカコントローラ
27 搬送車コントローラ
30 搬送車システム
31 第1ルートシステム
32 第2ルートシステム
33 第1ストッカシステム
34 第2ストッカシステム
35 第3ストッカシステム
36 第4ストッカシステム
41 第1軌道
42 第1搬送車
43 第2搬送車
44 第1搬送車コントローラ
45 第2軌道
46 第3搬送車
47 第4搬送車
48 第2搬送車コントローラ
51 第1ストッカ
51a 棚
52 第1ストッカコントローラ
53 第2ストッカ
53a 棚
54 第2ストッカコントローラ
55 第3ストッカ
55a 棚
56 第3ストッカコントローラ
57 第4ストッカ
57a 棚
58 第4ストッカコントローラ
59 スタッカクレーン
61 搬送制御部
62 搬送指令作成部
63 搬送パターンシナリオ記憶部
71 入庫ポート(P1)
72 出庫ポート(P2)
73 入庫ポート(P1)
74 出庫ポート(P2)
75 第1入庫ポート(P1)
76 第1出庫ポート(P2)
77 第2入庫ポート(P3)
78 第2出庫ポート(P4)
79 第1入庫ポート(P1)
80 第1出庫ポート(P2)
81 第2入庫ポート(P3)
82 第2出庫ポート(P4)
91 第1搬送パターンシナリオ
92 第2搬送パターンシナリオ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送車を用いて物品を搬送させるための搬送車システムであって、
内部で物品を搬送可能な複数のストッカと、
前記複数のストッカ間で物品を搬送可能な搬送車と、
互いに通信可能であり、前記複数のストッカおよび前記搬送車を制御するための複数のコントローラとを備え、
前記コントローラは、
搬送指令を実行することで、搬送制御を行う搬送制御部と、
複数の搬送指令作成情報を含む搬送パターンシナリオを記憶するシナリオ記憶部と、
前記搬送指令作成情報に対応する搬送指令を作成する搬送指令作成部と、
搬送車システム。
【請求項2】
前記搬送制御部は、前記搬送指令を実行した後に、前記搬送パターンシナリオにある次の搬送指令作成情報を他のコントローラに送信し、
前記搬送制御部は、受信した搬送指令作成情報が前記搬送パターンシナリオに記憶された搬送指令作成情報に一致するか否かを判断し、一致する場合はさらに搬送指令作成情報の内容を実行可能か否かを判断し、実行可能な場合には受信した搬送指令作成情報に対応する搬送指令を前記搬送指令作成部に作成させる、請求項1に記載の搬送車システム。
【請求項3】
前記搬送指令作成情報には、1つ前の搬送指令作成情報に基づいて作成された搬送指令の実行後の物品状況、物品ID、搬送元、搬送先の情報が含まれている、請求項1または2に記載の搬送車システム。
【請求項4】
前記搬送指令作成情報には、複数の搬送先と、各搬送先への振り分け確率情報が含まれており、
前記搬送指令作成部は、前記振り分け確率情報を利用して振り分け先を選択してから前記搬送指令を作成する、請求項1〜3のいずれかに記載の搬送車システム。
【請求項5】
前記搬送パターンシナリオの前記搬送指令作成情報は、上位のコントローラを前記搬送車システムに組み込む前の試験運転時に前記複数のコントローラ同士を協働させて搬送動作を行わせる搬送指令のパターンを構成している、請求項1〜4のいずれかに記載の搬送車システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−121656(P2011−121656A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278364(P2009−278364)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】