説明

改質ガス還流装置

【課題】改質触媒の温度を適切に制御でき、改質ガスを安定供給可能な改質ガス還流装置を提供する。
【解決手段】改質ガスを吸気系に還流する改質ガス還流装置100において、第1排気通路31と、第1排気通路31に合流する第2排気通路32と、第1排気通路31に設けられる排気浄化ユニット40と、第2排気通路32内に燃料を供給する燃料供給部53と、排気を浄化可能な浄化触媒及び第2排気通路32を流れる排気と燃料供給部53から供給された燃料から改質ガスを生成可能な改質触媒を有する排気改質ユニット50と、排気改質ユニット50より下流側の第2排気通路32から分岐し吸気系に連通する連通路55と、第2排気通路32を流れる排気の流量を調整可能な調整弁54と、第2排気通路32のガス経路を第1排気通路31側又は連通路55側に切り換え可能な切換弁56と、調整弁54及び切換弁56を制御する制御部60とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの吸気系に改質ガスを還流可能な改質ガス還流装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンから排出された排気に燃料を供給し、排気と燃料の混合気を改質触媒によって水素を含む改質ガスに改質して、この改質ガスを吸気通路に還流する改質ガス還流装置が開示されている。このように改質ガスを吸気系に還流することによって、エンジンでの混合気の燃焼性を高めることができる。その他、関連する公知文献発明としては、特許文献2に記載の発明等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−37879号公報
【特許文献2】特開2007−332891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の改質ガス還流装置では、エンジンと排気浄化触媒との間の排気通路に排気改質ユニットが設置され、エンジンから排出された排気のほぼ全量が排気改質ユニットを通過する構成となっており、排気改質ユニットに設けられる改質触媒の温度がエンジン運転状態に応じて変動しやすいという問題がある。例えば、全負荷時等においてエンジンから高温の排気が排出される場合には、改質触媒が高くなり過ぎて熱劣化するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、改質触媒の温度を適切に制御でき、改質ガスを安定供給可能な改質ガス還流装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の改質ガス還流装置は、エンジンから排出されて排気通路を流れる排気から水素を含む改質ガスを生成し、当該改質ガスを吸気系に還流するように構成される。改質ガス還流装置は、エンジンから排出された排気を流す第1排気通路と、エンジンから排出された排気を流すとともに、下流側において第1排気通路に合流する第2排気通路と、第2排気通路が合流する合流部より上流側の第1排気通路に設けられ、排気を浄化可能な浄化触媒を有する排気浄化ユニットと、第2排気通路内に燃料を供給する燃料供給部と、第2排気通路に設けられ、排気を浄化可能な浄化触媒及び第2排気通路を流れる排気と燃料供給部から供給された燃料から改質ガスを生成可能な改質触媒を有する排気改質ユニットと、排気改質ユニットより下流側の第2排気通路から分岐し、吸気系に連通する連通路とを備える。さらに、改質ガス還流装置は、第2排気通路を流れる排気の排気流量を調整可能な調整弁と、第2排気通路のガス経路を第1排気通路側又は連通路側に切り換え可能な切換弁と、調整弁及び切換弁を制御する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第2排気通路の排気流量を調整する調整弁及び第2排気通路のガス経路を切り換える切換弁を制御部によって制御するので、改質触媒の温度を適切に制御でき、改質ガスをエンジンに安定供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態によるエンジンの改質ガス還流装置の概略構成図である。
【図2】コントローラが実行する改質ガス還流制御を示すフローチャートである。
【図3】改質触媒温度と切換弁及び調整弁の開度との関係を示す図である。
【図4】改質ガスの還流に関するエンジン回転速度−負荷マップである。
【図5】本発明の第2実施形態によるエンジンの改質ガス還流装置の概略構成図である。
【図6】コントローラが実行する改質ガス還流制御を説明するフローチャートである。
【図7】第2実施形態の変形例に係る改質ガス還流装置の概略構成図である。
【図8】第2実施形態の変形例に係る改質ガス還流装置において使用される改質ガスの還流に関するエンジン回転速度−負荷マップである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
(第1実施形態)
図1を参照して、本発明の第1実施形態による改質ガス還流装置100の構成を説明する。図1は、車両用のエンジン10の吸気系に改質ガスを還流する改質ガス還流装置100の概略構成図である。
【0011】
図1に示すように、改質ガス還流装置100は、直列4気筒のエンジン10と、外部から取り込んだ吸気をエンジン10に導く吸気通路20と、エンジン10から排出された排気を外部に導く排気通路30と、を備える。
【0012】
エンジン10は、シリンダブロックの上部に配置されるシリンダヘッド11を備える。シリンダヘッド11には、気筒毎に、吸気ポート12及び排気ポート13が形成される。吸気ポート12は一つの気筒に対して二つ設けられ、これら二つの吸気ポート12は吸気流れ方向の上流側で合流するように形成される。また、排気ポート13は一つの気筒に対して二つ設けられ、これら二つの排気ポート13は排気流れ方向の下流側で合流するように形成される。
【0013】
各吸気ポート12には吸気弁14が設置され、各排気ポート13には排気弁15が設置される。吸気弁14は、吸気カムシャフトに形成された吸気カムによって駆動され、ピストンの上下動に応じて所定タイミングで吸気ポート12を開閉する。排気弁15は、排気カムシャフトに形成された排気カムによって駆動され、ピストンの上下動に応じて所定タイミングで排気ポート13を開閉する。
【0014】
吸気通路20は、外部から取り込んだ吸気を吸気マニホールド21を介して気筒毎に分配し、各気筒の吸気ポート12に吸気を導く。吸気マニホールド21には、吸気通路20内に燃料を噴射する燃料噴射弁(図示省略)が設置されている。
【0015】
エンジン10の気筒内で吸気と燃料の混合気が燃焼すると、エンジン10から排気が排出される。排気は、排気ポート13及び排気通路30を介して外部に排出される。排気通路30は、排気ポート13から排出された排気を合流させ下流に導く排気マニホールド33と、排気マニホールド33の下流端に接続される第1排気通路31と、第1排気通路の上流位置で分岐して下流位置で合流する第2排気通路32と、を備える。
【0016】
第1排気通路31は、エンジン10から排出された排気を外部に導く通路である。第1排気通路31には、排気を浄化可能な排気浄化ユニット40が設置される。排気浄化ユニット40は、担体に三元触媒を担持させた触媒コンバータである。排気浄化ユニット40の三元触媒は、第1排気通路31内を流れる排気に含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)を浄化する。
【0017】
第2排気通路32は、排気浄化ユニット40よりも上流側の第1排気通路31から分岐し、排気浄化ユニット40よりも下流側の第1排気通路31に合流する通路である。第2排気通路32には、排気を浄化及び改質可能な排気改質ユニット50が設置される。また、排気改質ユニット50よりも上流側の第2排気通路32には、第2排気通路32内にガソリン等の燃料を供給可能な燃料供給部53が設置される。
【0018】
排気改質ユニット50は、排気を浄化可能な浄化部51と、排気を改質可能な改質部52と、から構成されている。浄化部51は担体に三元触媒を担持させた触媒コンバータであり、改質部52は担体に改質触媒を担持させた触媒コンバータである。なお、本実施形態では、浄化部51を改質部52の上流側に配置したが、改質部52を浄化部51の上流側に配置してもよい。
【0019】
浄化部51の三元触媒は、第2排気通路を流れる排気に含まれるHC、CO、及びNOxを浄化する。
【0020】
改質部52の改質触媒は、第2排気通路32を流れる排気と燃料供給部53によって供給される燃料から形成された混合気を、水素を含む改質ガスに改質する。改質部52には、改質触媒の温度を検出するための温度センサ52Aが設けられる。改質触媒温度を直接検出することは困難であるため、温度センサ52Aは改質触媒を担持する担体の温度を検出する。なお、改質触媒温度は、エンジン運転状態や排気温度等から推定してもよい。
【0021】
燃料供給部53よりも上流側の第2排気通路32には、第2排気通路32に流入する排気の流量を調整するための調整弁54が設置される。調整弁54の開度を変化させることで、第2排気通路32を流れる排気の流量が調整される。
【0022】
排気改質ユニット50よりも下流側の第2排気通路32には、第2排気通路32と吸気通路20とを連通する連通路55が設けられる。この連通路55には、連通路55を流れる改質ガスを冷却可能な冷却器を設置してもよい。
【0023】
連通路55が分岐する第2排気通路32の分岐部には、切換弁56が設置される。切換弁56は、第2排気通路32のガス経路を第1排気通路31側又は連通路55側に切り換え可能な弁である。
【0024】
調整弁54、切換弁56、及び燃料供給部53等は、コントローラ60によって制御される。コントローラ60は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ60は、複数のマイクロコンピュータで構成するようにしてもよい。
【0025】
コントローラ60には、改質触媒温度を検出する温度センサ52Aのほか、エンジン10の所定クランク角度ごとにクランク角度信号を生成するクランク角センサ61や車両が備えるアクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダルセンサ62等からの検出データがそれぞれ信号として入力する。クランク角度信号は、エンジン10のエンジン回転速度を代表する信号として用いられる。アクセルペダルの踏み込み量は、エンジン10の負荷を代表する信号として用いられる。
【0026】
コントローラ60は、上記した入力信号等に基づいて、調整弁54及び切換弁56の開度を調整したり、燃料供給部53による燃料の供給量を調整したりする。
【0027】
次に、図2を参照して、コントローラ60による改質ガス還流制御について説明する。図2は、コントローラ60が実行する改質ガス還流制御を説明するフローチャートである。この制御は、エンジン運転開始ともに実施され、一定間隔例えば10ミリ秒周期で繰り返し実行される。
【0028】
S101では、コントローラ60は、温度センサ52Aによって検出された改質触媒温度Tが予め設定された基準温度T1よりも大きいか否かを判定する。基準温度T1は、改質部52の改質触媒が活性化する温度に設定されている。
【0029】
コントローラ60は、改質触媒温度Tが基準温度T1よりも低い場合にS102の処理を実行し、改質触媒温度Tが基準温度T1よりも高い場合にS104の処理を実行する。
【0030】
S102では、コントローラ60は、連通路55を閉じるように切換弁56を制御する。改質触媒温度Tが基準温度T1よりも低い場合には、図3(A)に示すように切換弁56によって連通路55が閉じられ、第2排気通路32のガス経路が第1排気通路31側に設定される。
【0031】
S103では、コントローラ60は、温度センサ52Aによって検出された改質触媒温度Tに基づいて調整弁54の開度を設定する。改質触媒温度Tが基準温度T1よりも低い場合には、図3(B)に示すように調整弁54の開度は改質触媒温度が低くなるほど大きくなるように設定される。
【0032】
改質触媒温度Tが基準温度T1よりも低い場合には、改質触媒温度が低くなるほど第2排気通路32内の排気流量が増加するように調整弁54が制御され、第2排気通路32のガス経路が第1排気通路31側となるように切換弁56が制御される。これにより、第1排気通路31から第2排気通路32へ排気が流入しやすくなり、第2排気通路32を流れる排気は浄化部51で浄化され、改質部52の改質触媒を昇温させた後に再び第1排気通路31に流れ込む。このように第2排気通路32内の排気流量を増加させることで、エンジン10の始動後に、改質部52の改質触媒を早期に活性化させることができる。
【0033】
なお、第2排気通路32から第1排気通路31に流入した排気は、第1排気通路31の排気浄化ユニット40によって浄化された排気とともに外部に排出される。
【0034】
一方、S101で改質触媒温度Tが基準温度T1よりも高いと判定された場合には、コントローラ60は、S104において現在のエンジン運転状態が改質ガスの還流を実施する運転状態(改質EGR実施運転状態)であるか否かを判定する。この判定は、クランク角センサ61によって検出されるエンジン回転速度とアクセルペダルセンサ62によって検出される負荷とに基づいて、図4のエンジン回転速度−負荷マップを参照することで行われる。
【0035】
図4は、エンジン回転速度−負荷マップの一例を示す図である。図4に示すように、低負荷運転領域Aは、改質ガスの還流を実施し、吸気中に占める改質ガスの割合として算出される改質EGR率が最も大きくなるように設定される領域である。中負荷運転領域Bは、改質ガスの還流を実施し、改質EGR率が運転領域Aよりも小さく設定される領域である。高負荷運転領域Cは、改質ガスの還流を実施し、改質EGR率が運転領域Bよりも小さく設定される領域である。なお、最高負荷運転領域Dは、改質ガスの還流を実施しない領域である。
【0036】
図2のS104において、エンジン10が運転領域A〜Cで作動しており改質EGR実施運転状態であると判定された場合には、コントローラ60はS105の処理を実行する。これに対して、エンジン10が運転領域Dで作動しており改質EGR実施運転状態でないと判定された場合には、コントローラ60はS107の処理を実行する。
【0037】
S105では、コントローラ60は、連通路55を開くように切換弁56を制御する。改質ガスを還流する場合には、図3(A)に示すように切換弁56によって連通路55が開かれ、第2排気通路32のガス経路が連通路55側に設定される。
【0038】
S106では、コントローラ60は、図4の運転領域A〜C毎に設定される改質EGR率に基づいて、調整弁54の開度が所定開度に設定される。改質EGR率が大きくなるほど、調整弁54の開度は大きく設定される。
【0039】
改質触媒温度Tが基準温度T1よりも高く、改質ガスの還流を実施する場合には、第2排気通路32内の排気中に改質EGR率に応じた量の燃料が供給されるように燃料供給部53が制御され、改質EGR率に応じた排気流量となるように調整弁54の開度が設定され、第2排気通路32のガス経路が連通路55側に設定される。これにより、排気と燃料との混合気が改質部52で水素を含む改質ガスに改質され、改質ガスが連通路55を通って吸気通路20に還流される。このようにガソリン等の燃料よりも燃焼速度の速い水素を含む改質ガスを吸気系に還流することで、エンジン10における混合気の燃焼性を改善でき、希薄燃焼限界等を拡大することが可能となる。
【0040】
S104で改質EGR実施運転状態ではないと判定された場合には、コントローラ60は、S107において連通路55を閉じるように切換弁56を制御する。切換弁56によって連通路55を閉じることで、第2排気通路32のガス経路が第1排気通路31側に設定される。そして、S108では、コントローラ60は、調整弁54の開度を予め設定された所定開度に設定する。
【0041】
エンジン10が運転領域Dで作動しており、改質ガスの還流が実施されない場合には、第2排気通路32内に流入した排気は、浄化部51及び改質部52を通って再び第1排気通路31に流れ込み、第1排気通路31の排気浄化ユニット40によって浄化された排気とともに外部に排出される。
【0042】
S106又はS108の処理後、コントローラ60はS109の処理を実行する。S109では、コントローラ60は、改質触媒温度Tが上限温度T2よりも高いか否かを判定する。上限温度T2は、改質触媒の熱劣化防止の観点から設定される温度であり、基準温度T1よりも高い値に設定されている。
【0043】
改質触媒温度Tが上限温度T2よりも低い場合には、コントローラ60は改質ガス還流制御を終了する。これに対して、改質触媒温度Tが上限温度T2よりも高い場合には、コントローラ60はS110以降の処理を実行する。
【0044】
S110では、コントローラ60は、温度センサ52Aによって検出された改質触媒温度Tに基づいて調整弁54の開度を設定する。改質触媒温度Tが上限温度T2よりも高い場合には、図3(B)に示すように調整弁54の開度は改質触媒温度が高くなるほど小さくなるように設定される。
【0045】
S111では、コントローラ60は、連通路55を閉じるように切換弁56を制御して、改質ガス還流制御を終了する。改質触媒温度Tが上限温度T2よりも高い場合には、図3(A)に示すように切換弁56によって連通路55が閉じられ、第2排気通路32のガス経路が第1排気通路31側に設定される。
【0046】
改質触媒温度Tが上限温度T2よりも高い場合には、改質触媒温度が高くなるほど第2排気通路32内の排気流量が減少するように調整弁54が制御され、第2排気通路32のガス経路が第1排気通路31側となるように切換弁56が制御される。これにより第1排気通路31から第2排気通路32へ排気が流入しにくくなり、改質部52の改質触媒の温度が上昇しすぎることを抑制でき、改質触媒の熱劣化を防止することが可能となる。なお、第2排気通路32から第1排気通路31に流入した排気は、第1排気通路31の排気浄化ユニット40によって浄化された排気とともに外部に排出される。
【0047】
上記した第1実施形態による改質ガス還流装置100では、以下の効果を得ることができる。
【0048】
改質ガス還流装置100では、排気改質ユニット50よりも上流の第2排気通路32に調整弁54を設け、連通路55が分岐する第2排気通路32の分岐部に切換弁56を設け、これら調整弁54及び切換弁56を制御することで、改質触媒の温度を適切に制御でき、改質ガスをエンジン10に安定供給することが可能となる。
【0049】
改質ガスを還流する場合にのみ切換弁56を開いて第2排気通路32のガス経路を連通路55側に設定するので、連通路55内には改質ガスが常時存在し、改質ガス還流制御の応答性を高めることができる。
【0050】
(第2実施形態)
図5を参照して、本発明の第2実施形態による改質ガス還流装置100について説明する。図5は、第2実施形態による改質ガス還流装置100の概略構成図である。
【0051】
第2実施形態による改質ガス還流装置100は、第1実施形態による改質ガス還流装置とほぼ同様の構成であるが、第1排気通路31及び第2排気通路32の構成及び排気弁15によって第2排気通路32内の排気流量を調整するようにした点において相違する。以下、その相違点を中心に説明する。
【0052】
一気筒毎に二つ設けられる排気ポート13は、それぞれ独立して排気を流すように構成されている。一つの気筒に設けられる一対の排気ポート13のうち、図5において上側に位置する排気ポート13には、可変動弁装置70によって開閉タイミング及びリフト量を変更可能な排気弁15が設けられる。可変動弁装置70は、特開2010−275932号公報等において開示される公知の可変動弁装置である。
【0053】
第1排気通路31は、リフト状態を変更不能な排気弁15が設けられた各排気ポート13から排出される排気を集合させる排気マニホールド33Aの下流端に接続される。
【0054】
第2排気通路32は、リフト状態を変更可能な排気弁15が設けられた各排気ポート13から排出される排気を集合させる排気マニホールド33Bの下流端に接続される。第2排気通路32の下流端は、排気浄化ユニット40よりも下流側の第1排気通路31に接続する。
【0055】
なお、第2実施形態では、第2排気通路32に調整弁は設置されておらず、排気弁15の開弁タイミングを可変動弁装置70によって制御することで第2排気通路32内の排気流量を調整するようになっている。このように、可変動弁装置70によって制御される排気弁15が第1実施形態の調整弁としての役割を果たす。
【0056】
次に、図6を参照して、コントローラ60による改質ガス還流制御について説明する。図6は、コントローラ60が実行する改質ガス還流制御を説明するフローチャートである。この制御は、エンジン運転開始ともに実施され、一定間隔例えば10ミリ秒周期で繰り返し実行される。
【0057】
S201では、コントローラ60は、温度センサ52Aによって検出された改質触媒温度Tが予め設定された基準温度T1よりも大きいか否かを判定する。基準温度T1は、改質部52の改質触媒が活性化する温度に設定されている。
【0058】
コントローラ60は、改質触媒温度Tが基準温度T1よりも低い場合にS202の処理を実行し、改質触媒温度Tが基準温度T1よりも高い場合にS204の処理を実行する。
【0059】
S202では、コントローラ60は、連通路55を閉じるように切換弁56を制御する。これにより、第2排気通路32のガス経路が第1排気通路31側に設定される。
【0060】
S203では、コントローラ60は、改質触媒温度Tに基づき、可変動弁装置70により制御される排気弁15の開弁タイミング(EVO時期)を所定タイミングに設定する。改質触媒温度Tが基準温度T1よりも低い場合には、排気弁15の開弁タイミングは改質触媒温度が低くなるほど進角するように制御される。なお、排気弁15の閉弁タイミングは、改質触媒温度Tによらず所定のタイミングに設定されている。
【0061】
改質触媒温度Tが基準温度T1よりも低い場合には、改質触媒温度が低くなるほど第2排気通路32内の排気流量が増加するように排気弁15が制御され、第2排気通路32のガス経路が第1排気通路31側となるように切換弁56が制御される。これにより、エンジン10の始動後に、改質部52の改質触媒を早期に活性化させることができる。
【0062】
一方、S201で改質触媒温度Tが基準温度T1よりも高いと判定された場合には、コントローラ60は、S204において現在のエンジン運転状態が改質EGR実施運転状態であるか否かを判定する。S204の処理は、第1実施形態における図2のS104の処理と同じである。
【0063】
改質EGR実施運転状態であると判定した場合には、コントローラ60はS205の処理を実行する。これに対して、改質EGR実施運転状態でないと判定した場合には、コントローラ60はS207の処理を実行する。
【0064】
S205では、コントローラ60は、連通路55を開くように切換弁56を制御する。これにより、第2排気通路32のガス経路が連通路55側に設定される。
【0065】
S206では、コントローラ60は、図4の運転領域A〜C毎に設定される改質EGR率に基づいて、可変動弁装置70によって制御される排気弁15の開弁タイミングを所定タイミングに設定する。改質EGR率が大きくなるほど、排気弁15の開弁タイミングが進角するように設定される。
【0066】
エンジン10が図4の運転領域A〜Cで作動しており、改質ガスの還流を実施する場合には、第2排気通路32内の排気中に改質EGR率に応じた量の燃料が供給されるように燃料供給部53が制御され、改質EGR率に応じた排気流量となるように排気弁15の開弁タイミングが制御され、第2排気通路32のガス経路が連通路55側に設定される。これにより、改質ガスを吸気系に還流することができ、エンジン10における混合気の燃焼性を改善することができる。
【0067】
S204で改質EGR実施運転状態ではないと判定された場合には、コントローラ60は、S207において連通路55を閉じるように切換弁56を制御する。その後、S208において、コントローラ60は、排気弁15の開弁タイミングを所定のタイミングに設定する。
【0068】
エンジン10が図4の運転領域Dで作動しており、改質ガスの還流が実施されない場合には、第2排気通路32を流入した排気は、浄化部51及び改質部52を通って再び第1排気通路31に流れ込み、第1排気通路31の排気浄化ユニット40によって浄化された排気とともに外部に排出される。
【0069】
S206又はS208の処理後、コントローラ60はS209の処理を実行する。S209では、コントローラ60は、改質触媒温度Tが上限温度T2よりも高いか否かを判定する。上限温度T2は、改質触媒の熱劣化防止の観点から設定される温度であり、基準温度T1よりも高い値に設定されている。
【0070】
改質触媒温度Tが上限温度T2よりも低い場合には、コントローラ60は改質ガス還流制御を終了する。これに対して、改質触媒温度Tが上限温度T2よりも高い場合には、コントローラ60はS210以降の処理を実行する。
【0071】
S210では、コントローラ60は、改質触媒温度Tに基づいて可変動弁装置70によって制御される排気弁15の開弁タイミングを所定タイミングに設定する。改質触媒温度Tが上限温度T2よりも高い場合には、排気弁15の開弁タイミングは改質触媒温度が高くなるほど遅角するように制御される。そして、S211において、コントローラ60は連通路55を閉じるように切換弁56を制御し、改質ガス還流制御を終了する。
【0072】
改質触媒温度Tが上限温度T2よりも高い場合には、改質触媒温度が高くなるほど第2排気通路32内の排気流量が減少するように排気弁15が制御され、第2排気通路32のガス経路が第1排気通路31側となるように切換弁56が制御される。これにより第1排気通路31から第2排気通路32へ排気が流入しにくくなり、改質部52の改質触媒の温度が上昇しすぎることを抑制でき、改質触媒の熱劣化を防止することが可能となる。
【0073】
上記した第2実施形態による改質ガス還流装置100によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
改質ガス還流装置100では、可変動弁装置70によって排気弁15の開弁タイミングを調整することで第2排気通路32内の排気流量を制御するので、第2排気通路32に第1実施形態における調整弁を別途設ける必要がない。そのため、排気改質ユニット50をエンジン10に近づけることができ、排気改質ユニット50の改質触媒や三元触媒を早期に活性化させることが可能となる。
【0075】
次に、図7及び図8を参照して、第2実施形態による改質ガス還流装置100の変形例について説明する。図7は変形例に係る改質ガス還流装置100の概略構成図であり、図8は改質ガスの還流に関するエンジン回転速度−負荷マップである。
【0076】
図7に示すように、変形例による改質ガス還流装置100は、第1排気通路31を流れる排気の一部を吸気系に還流可能な還流通路80を備える。還流通路80は、排気浄化ユニット40よりも下流側の第1排気通路31から分岐し、吸気通路20に連通する。還流通路80には、還流通路80内に流入する排気の流量を調整するための制御弁81が設置される。
【0077】
図8に示すように、変形例による改質ガス還流装置100では、低回転速度低負荷運転領域Eにおいて、第2排気通路32で改質した改質ガスを吸気系に還流するのではなく、第1排気通路31を流れる排気の一部を外部EGRガスとして吸気系に還流する。このように外部EGRを実施する場合には、制御弁81の開度によって還流通路80内の排気流量を調整することで、吸気系に還流される排気の量が制御される。
【0078】
上記の通り、変形例による改質ガス還流装置100では、低回転速度低負荷領域Aにおいて第1排気通路31を流れる排気の一部を吸気系に還流するので、燃料供給部53から改質ガス生成用の燃料を供給することがなく、第2実施形態よりも燃費を改善することが可能となる。
【0079】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなし得ることは明白である。
【0080】
第2実施形態では、排気弁15の開弁タイミングによって第2排気通路32内の排気流量を制御するが、排気弁15のリフト量によって第2排気通路32内の排気流量を制御してもよい。この場合には、排気弁15のリフト量を大きくすることで排気流量を増加させ、排気弁15のリフト量を小さくすることで排気流量を減少させる。なお、排気弁15の開閉タイミング及びリフト量の両方を調整して排気流量を制御してもよい。
【0081】
また、第2実施形態では、一気筒に対し排気ポート13を二つ設けたが、一気筒に対し排気ポート13を三つ以上設けてもよい。この場合には、改質ガス還流装置100は、可変動弁装置70によって制御される排気弁15が設置される排気ポート以外の排気ポートから排出される排気を第1排気通路31に流すように構成される。
【符号の説明】
【0082】
100 改質ガス還流装置
10 エンジン
13 排気ポート
15 排気弁
20 吸気通路
30 排気通路
31 第1排気通路
32 第2排気通路
33 排気マニホールド
40 排気浄化ユニット
50 排気改質ユニット
51 浄化部
52 改質部
52A 温度センサ(温度検出部)
53 燃料供給部
54 調整弁
55 連通路
56 切換弁
60 コントローラ(制御部)
61 クランク角センサ
62 アクセルペダルセンサ
70 可変動弁装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから排出されて排気通路を流れる排気から水素を含む改質ガスを生成し、当該改質ガスを吸気系に還流するように構成された改質ガス還流装置において、
エンジンから排出された排気を流す第1排気通路と、
エンジンから排出された排気を流すとともに、下流側において前記第1排気通路に合流する第2排気通路と、
前記第2排気通路が合流する合流部より上流側の前記第1排気通路に設けられ、排気を浄化可能な浄化触媒を有する排気浄化ユニットと、
前記第2排気通路内に燃料を供給する燃料供給部と、
前記第2排気通路に設けられ、排気を浄化可能な浄化触媒及び前記第2排気通路を流れる排気と前記燃料供給部から供給された燃料から前記改質ガスを生成可能な改質触媒を有する排気改質ユニットと、
前記排気改質ユニットより下流側の前記第2排気通路から分岐し、前記吸気系に連通する連通路と、
前記第2排気通路を流れる排気の排気流量を調整可能な調整弁と、
前記第2排気通路のガス経路を前記第1排気通路側又は前記連通路側に切り換え可能な切換弁と、
前記調整弁及び前記切換弁を制御する制御部と、を備えることを特徴とする改質ガス還流装置。
【請求項2】
前記第2排気通路は、前記排気浄化ユニットより上流側の前記第1排気通路から分岐し、前記排気浄化ユニットより下流側の前記第1排気通路に合流するように構成され、
前記調整弁は、前記排気改質ユニットより上流側の前記第2排気通路に設けられ、
前記切換弁は、前記連通路が分岐する前記第2排気通路の分岐部に設けられることを特徴とする請求項1に記載の改質ガス還流装置。
【請求項3】
前記エンジンは、
複数の気筒と、
各気筒に対して少なくとも二以上設けられる排気ポートと、
前記排気ポートに設けられる排気弁と、
各気筒の一つの前記排気弁における開閉タイミング及びリフト量の少なくとも一方を変更可能な可変動弁装置と、を備え、
前記第2排気通路は、前記可変動弁装置によって制御される排気弁が設けられる前記排気ポートから排出された排気を流すように構成され、
前記第1排気通路は、残りの前記排気ポートから排出された排気を流すように構成され、
前記調整弁は、前記可変動弁装置によって制御される排気弁であり、
前記切換弁は、前記連通路が分岐する前記第2排気通路の分岐部に設けられることを特徴とする請求項1に記載の改質ガス還流装置。
【請求項4】
前記改質触媒の触媒温度を検出する温度検出部を備え、
前記制御部は、前記触媒温度が基準温度より高い場合には、前記第2排気通路の排気流量が所定流量となるように前記調整弁を制御し、前記第2排気通路のガス経路が前記連通路側となるように前記切換弁を制御することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の改質ガス還流装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記触媒温度が前記基準温度より低い場合には、前記触媒温度が低くなるほど前記第2排気通路の排気流量が大きくなるように前記調整弁を制御し、前記第2排気通路のガス経路が前記第1排気通路側となるように前記切換弁を制御することを特徴とする請求項4に記載の改質ガス還流装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記触媒温度が前記基準温度よりも高く設定された上限温度より高い場合には、前記触媒温度が高くなるほど前記第2排気通路の排気流量が小さくなるように前記調整弁を制御し、前記第2排気通路のガス経路が前記第1排気通路側となるように前記切換弁を制御することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の改質ガス還流装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−7336(P2013−7336A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140856(P2011−140856)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】