説明

樹脂成形品の成形方法及び成形装置

【課題】ブロー成形体の膨張が妨げられることを抑制することができる樹脂成形品の成形方法及び成形装置を提供する。
【解決手段】パリソンをブロー成形して形成される中空のブロー成形体23の内部に発泡性樹脂31を注入した後に、成形型10のキャビティの容積を拡大させるように成形型のコア部13を型開き方向に所定量移動し、前記発泡性樹脂の発泡を促進させて前記ブロー成形体を膨張させるようにした樹脂成形品の成形において、前記発泡性樹脂を前記ブロー成形体内に注入する際に、前記ブロー成形体内に注入された前記発泡性樹脂が発泡することを抑制するように前記ブロー成形体内の圧力が制御されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の成形方法及び成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用部品など種々の工業用部品においては、軽量性や断熱性等の優れた特性を有する発泡樹脂成形品が広く使用されている。この発泡樹脂成形品として、例えば特許文献1には、軽量性、剛性に優れた表皮付発泡成形体を得ることを企図し、熱可塑性樹脂発泡層を有するパリソンをブロー成形してなる中空成形体の内部に熱可塑性樹脂発泡体片を充填して、該発泡体片を加熱して該発泡体片を相互に融着させた表皮付発泡成形体が開示されている。
【特許文献1】特開2004ー284149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、樹脂に発泡剤を含有させた発泡性樹脂からなる樹脂成形品の成形方法としては、成形型のキャビティの容積より少ない発泡性樹脂をキャビティ内に注入した後に、かかる発泡性樹脂をキャビティ内で発泡させるようにした成形方法(所謂ショートショット法)や、発泡性樹脂を固定型と可動型とでなる一対の成形型のキャビティ内に注入した後に、可動型を型開き方向に移動させてキャビティの容積を拡大することにより発泡性樹脂の発泡を促進させるようにした成形方法(所謂コアバック法)が知られており、例えば大型の樹脂成形品や発泡倍率の高い樹脂成形品を得る場合にはコアバック法が好適に用いられている。
【0004】
このように、発泡性樹脂を固定型と可動型とでなる成形型のキャビティ内に注入した後に、可動型を型開き方向に移動させてキャビティの容積を拡大して発泡性樹脂の発泡を促進させた樹脂成形品においては、発泡性樹脂の発泡によって形成された気泡が成形品の最表面であるスキン層において破泡して、外観不良等の問題を引き起こす場合がある。
【0005】
これに対し、発泡性樹脂からなる樹脂成形品の表面性を向上させるものとして、成形型内に溶融状態の樹脂からなるパリソンを垂下させた後に、パリソンを成形型で挟み込んで空気等の気体を吹き込み成形させるようにした中空成形(所謂ブロー成形)と発泡成形とを組み合わせた樹脂成形品の成形方法が知られている。
【0006】
しかしながら、パリソンをブロー成形してなるブロー成形体の内部に発泡性樹脂を注入し、該発泡性樹脂の発泡をコアバック法によって促進させるようにした樹脂成形品の成形においては、成形型のキャビティの容積を拡大させるように成形型のコア部を移動し、発泡性樹脂の発泡を促進させてブロー成形体を膨張させる際に、ブロー成形体の延伸される部分が成形型によって冷却されて伸びず、ブロー成形体の膨張が妨げられる場合がある。かかる場合には、例えばコア部のキャビティ面周縁部に位置するコーナ部などにおいて、コア部の移動に完全に追従して樹脂成形品が成形されず、外観不良等の問題を引き起こし得る。
【0007】
そこで、この発明は、前記技術的課題に鑑みてなされたものであり、発泡性樹脂の発泡を促進させてブロー成形体を膨張させることができるとともに、ブロー成形体の膨張に伴ってブロー成形体の延伸される部分が成形型によって冷却されブロー成形体の膨張が妨げられることを抑制することができる樹脂成形品の成形方法及び成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、本願の請求項1に係る樹脂成形品の成形方法は、ソリッド樹脂からなるパリソンを型開きした成形型内に押し出し、前記パリソンを挟んで前記成形型を型閉めした後に前記パリソンをブロー成形して中空のブロー成形体を形成し、該ブロー成形体の形成後に前記ブロー成形体内に発泡性樹脂を注入し、該発泡性樹脂の注入開始後に、前記成形型のキャビティの容積を拡大させるように前記成形型のコア部を所定量移動させることにより、前記発泡性樹脂の発泡を促進させて前記ブロー成形体を膨張させるようにした樹脂成形品の成形方法であって、前記発泡性樹脂を前記ブロー成形体内に注入する際に、前記ブロー成形体内に注入された前記発泡性樹脂が発泡することを抑制するように前記ブロー成形体内の圧力が制御されていることを特徴としたものである。
【0009】
また、本願の請求項2に係る発明方法は、請求項1に係る発明方法において、前記ブロー成形体内に前記発泡性樹脂を注入する際に、前記パリソンをブロー成形するためのブロー成形用孔部を通じて、前記ブロー成形体内の気体が排出されるとともに、前記ブロー成形体内に注入された前記発泡性樹脂が発泡することを抑制するように前記ブロー成形体内の圧力が制御されていることを特徴としたものである。
【0010】
更に、本願の請求項3に係る発明方法は、請求項1又は2に係る発明方法において、前記発泡性樹脂に、該発泡性樹脂を補強する補強繊維が含有されていることを特徴としたものである。
【0011】
また更に、本願の請求項4に係る発明方法は、請求項1〜3の何れか一に係る発明方法において、前記発泡性樹脂に、物理発泡剤が含有されていることを特徴としたものである。
【0012】
また更に、本願の請求項5に係る発明方法は、請求項4に係る発明方法において、前記物理発泡剤が、超臨界状態の流体であることを特徴としたものである。
【0013】
また更に、本願の請求項6に係る樹脂成形品の成形装置は、開閉可能な成形型と、型開きされた前記成形型内にソリッド樹脂からなるパリソンを押し出す押出ヘッドと、前記パリソンを挟んで前記成形型を型閉めした後に前記パリソン内に加圧流体を供給し中空のブロー成形体を形成する加圧流体供給手段と、前記ブロー成形体内に発泡性樹脂を注入する注入手段と、前記成形型のキャビティの容積を拡大させるように前記成形型のコア部を移動させるコア移動手段とを備え、前記ブロー成形体内に前記発泡性樹脂の注入を開始した後に、前記成形型のキャビティの容積を拡大させるように前記コア部を移動し、前記発泡性樹脂の発泡を促進させて前記ブロー成形体を膨張させる樹脂成形品の成形装置であって、前記ブロー成形体内の圧力を制御する圧力制御手段を備え、前記圧力制御手段は、前記ブロー成形体内に前記発泡性樹脂を注入する際に、前記ブロー成形体内に注入された前記発泡性樹脂が発泡することを抑制するように前記ブロー成形体内の圧力を制御することを特徴としたものである。
【0014】
また更に、本願の請求項7に係る発明は、請求項6に係る発明において、前記成形型は、固定型と可動型とを有し、前記固定型及び前記可動型の何れか一方の型は、前記成形型を型閉めする際に前記固定型及び前記可動型の他方の型と型閉めするとともに前記成形型の前記コア部の外周に位置する外周部と、前記成形型のキャビティの容積を拡大させるように前記外周部に対し移動可能な前記コア部とを備えていることを特徴としたものである。
【0015】
また更に、本願の請求項8に係る発明は、請求項6又は7に係る発明において、前記注入手段は、物理発泡剤を含有する発泡性樹脂を注入することを特徴としたものである。
【0016】
また更に、本願の請求項9に係る発明は、請求項8に係る発明において、前記注入手段は、前記物理発泡剤として超臨界状態の流体を含有する発泡性樹脂を注入することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0017】
本願の請求項1に係る樹脂成形品の成形方法によれば、ブロー成形体内に発泡性樹脂を注入する際にカウンタープレッシャーをかけることでブロー成形体内に注入された発泡性樹脂が発泡することを抑制することができるので、コア部を移動してブロー成形体を膨張させる際に、発泡性樹脂の発泡を促進させてブロー成形体を膨張させることができるとともに、ブロー成形体の膨張に伴ってブロー成形体の延伸される部分が成形型によって冷却されブロー成形体の膨張が妨げられることを抑制することができ、表面性及び物性に優れた樹脂成形品を容易に且つ確実に成形することができる。
【0018】
また、本願の請求項2に係る発明方法によれば、ブロー成形用孔部を通じてブロー成形体内の圧力が制御されることにより、ブロー成形用孔部を、ブロー成形体内の圧力を制御するための圧力制御用孔部として用いることができ、比較的容易に前記効果を得ることができる。
【0019】
更に、本願の請求項3に係る発明方法によれば、発泡性樹脂に含有された補強繊維のスプリングバック現象によって発泡性樹脂の発泡をさらに促進させることが可能である。補強繊維が含有された発泡性樹脂を用いて成形される樹脂成形品において、樹脂成形品の表面に補強繊維が露出して表面外観を悪化させることがなく、前記効果をより有効に奏することができる。
【0020】
また更に、本願の請求項4に係る発明方法によれば、発泡性樹脂に、物理発泡剤が含有されていることにより、発泡セル径の微細な樹脂成形品を成形することができ、樹脂成形品において曲げ剛性等の物性をさらに向上させることができる。
【0021】
また更に、本願の請求項5に係る発明方法によれば、物理発泡剤が、超臨界状態の流体であることにより、さらに微細な発泡セルを有する樹脂成形品を成形することができ、前記効果をさらに有効に奏することができる。
【0022】
また更に、本願の請求項6に係る樹脂成形品の成形装置によれば、ブロー成形体内に発泡性樹脂を注入する際に発泡性樹脂にカウンタープレッシャーをかけることでブロー成形体内に注入された発泡性樹脂が発泡することを抑制することができるので、コア部を移動してブロー成形体を膨張させる際に、発泡性樹脂の発泡を促進させてブロー成形体を膨張させることができるとともに、ブロー成形体の膨張に伴ってブロー成形体の延伸される部分が成形型によって冷却されブロー成形体の膨張が妨げられることを抑制することができ、表面性及び物性に優れた樹脂成形品を容易に且つ確実に成形することができる。
【0023】
また更に、本願の請求項7に係る発明によれば、成形型の構造やその駆動機構等を複雑化させることなく、比較的簡単な構造によって、前記効果を得ることができる。
【0024】
また更に、本願の請求項8に係る発明によれば、注入手段は、物理発泡剤を含有する発泡性樹脂を注入することにより、発泡セル径の微細な樹脂成形品を成形することができ、樹脂成形品において曲げ剛性等の物性をさらに向上させることができる。
【0025】
また更に、本願の請求項9に係る発明によれば、注入手段は、物理発泡剤として超臨界状態の流体を含有する発泡性樹脂を注入することにより、さらに微細な発泡セルを有する樹脂成形品を成形することができ、前記効果をさらに有効に奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る樹脂成形品の成形装置を示す概略説明図である。この図に示すように、前記成形装置1は、開閉可能に設けられる成形型10と、加熱溶融した第1の樹脂をパリソン20として押し出す押出ヘッド21と、成形型10内に加圧流体を供給する加圧流体供給手段としてのブロー成形用ピン25と、成形型10内に第2の樹脂に発泡剤を含有させた発泡性樹脂を注入する注入手段としての射出装置30とを備えている。
【0027】
成形型10は、固定型11と可動型12とによって構成され、型開閉機構(不図示)によって固定型11と可動型12とを型閉めすることにより、成形型10内に樹脂成形品の所望形状に応じたキャビティ16が形成される。可動型12は、キャビティ16の一部を規定するコア部13と、コア部13と組み合わせられる外周部14とを備えている。
【0028】
図2は、前記成形装置の可動型を模式的に示す斜視図であり、図2では、外周部14に対してコア部13が型開き方向に移動された状態を示している。図2に示すように、可動型12のコア部13は、略平板状に形成される板状部13aから四角状に突出する突出部13bを備えており、成形型10の型開閉方向に垂直な方向において突出部13bの外周には、該突出部13bの外周形状に応じて四角枠状に形成された外周部14が嵌め合わせられている。
【0029】
可動型12は、固定型11に対してコア部13と外周部14とが一体的に型開閉方向に移動可能に構成されるとともに、固定型11と可動型12とを型閉めした後に、可動型12の外周部14と固定型11とを型閉めした状態において、コア部13のみを型開閉方向に移動させるコア部移動機構(不図示)によって成形型10のキャビティ16の容積を拡大させるように可動型12のコア部13のみを型開き方向に移動可能に構成されている。
【0030】
ブロー成形用ピン25は、加圧流体供給源(不図示)から供給される加圧流体として圧縮空気などの加圧気体を、圧力調整弁(不図示)を介して成形型10内に供給し、成形型10内を所定の圧力に保持することができるようになっている。また、ブロー成形用ピン25は、該ブロー成形用ピン25を成形型10内に挿入した状態で成形型10内の空気を排気できるようになっている。成形型10の固定型11には、ブロー成形用ピン25を挿通させるための挿通孔26が設けられ、ブロー成形用ピン25は、挿通孔26内で進退動可能に構成されている。
【0031】
射出装置30は、発泡性樹脂31を成形型10内に注入するものであり、第2の樹脂32を混錬溶融させるシリンダ33を備えている。シリンダ33の内部にはスクリュー34が備えられ、スクリュー34の後端には、スクリュー駆動機構及び射出機構(共に不図示)が連結されている。
【0032】
射出装置30では、シリンダ33の周囲に設けられた加熱ヒータ(不図示)とスクリュー34とによって、シリンダ33に投入された第2の樹脂32を順次加熱するとともに混錬溶融させる。そして、混錬溶融された第2の樹脂32に対し、二酸化炭素又は窒素等の不活性ガスを含むボンベ35から超臨界流体発生装置36を介して超臨界状態にされた前記不活性ガスが、超臨界流体注入装置37によって注入される。これにより、第2の樹脂32に発泡剤を含有させた発泡性樹脂31が形成される。
【0033】
発泡性樹脂31は、スクリュー34が前記スクリュー駆動機構によって回転されるとともに前記射出機構によって射出されることによって成形型10内に注入される。成形型10、具体的には固定型11には、射出装置30のノズル38に連通され、発泡性樹脂31を成形型10内に注入するための注入経路17が設けられている。
【0034】
前記成形装置1には、該成形装置1を総合的に制御する制御ユニット(不図示)が備えられており、該制御ユニットは、成形型10の開閉駆動、成形型10のコア部13の型開き方向への移動機構、押出ヘッド21のパリソン押出機構、ブロー成形用ピン25の作動機構、ブロー成形用ピン25からの加圧流体供給機構、射出装置30の発泡性樹脂31の注入機構等の各種制御を行う。また、前記制御ユニットには、タイマ(不図示)が備えられており、後述する図8に示すように、前記制御ユニットは、パリソン20が押し出される押出開始時からの時間に応じて、ブロー成形用ピン25に接続される前記圧力調整弁の作動を制御してブロー成形体23内の圧力を所定の圧力に制御する。なお、前記制御ユニットは、例えばマイクロコンピュータを主要部として構成されている。
【0035】
次に、前記成形装置1を用いた樹脂成形品の成形について説明する。
先ず、成形型10が型開きされた状態において、押出ヘッド21から成形型10内に、具体的には固定型11のキャビティ面11aと可動型12のコア部13のキャビティ面13cとの間に加熱溶融された第1の樹脂からなるパリソン20が円筒状に垂下される。なお、第1の樹脂としては、例えば熱可塑性樹脂等の非発泡のソリッド樹脂を用いることができる。
【0036】
そして、固定型11に対して可動型12のコア部13と外周部14とが一体的に型閉め方向に移動されて成形型10が型閉めされ、パリソン20の上端側及び下端側が固定型11と可動型12の外周部14とによって挟み込まれる。これにより、パリソン20の内部の空間が閉じられてパリソン20の内部に空間部22が形成される。そして、その後にパリソン20の空間部22内に加圧気体が供給される。
【0037】
図3は、前記成形装置の成形型内に位置するパリソンに加圧気体が供給された状態を示す概略説明図である。ブロー成形用ピン25が前進させられてパリソン20にブロー成形用孔部27が形成され、ブロー成形用ピン25によってパリソン20の内部の空間部22に加圧気体が供給され、パリソン20がブロー成形される。これにより、パリソン20は、その内部の空間が膨張してキャビティ面11a、13cに押し付けられ、キャビティ面11a、13cに応じた中空のブロー成形体23が成形される。
【0038】
図4は、前記成形型内に発泡性樹脂が注入される状態を示す概略説明図である。成形型10内に垂下されたパリソン20がブロー成形されると、次に、ブロー成形体23内の空間部22に、射出装置30から第2の樹脂32に超臨界状態の流体を含有させた発泡性樹脂31が注入される。なお、第2の樹脂としては、例えばポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂などを用いることができる。
【0039】
射出装置30からブロー成形体23内の空間部22への発泡性樹脂31の注入機構について、図5〜図7を参照して説明する。
図5〜図7は、射出装置30からブロー成形体23内の空間部22へ発泡性樹脂31が注入される工程を順に表しており、図4のA部について拡大して示している。図5は、前記注入経路に設けられた第1の弁体及び第2の弁体が閉じた状態を示す説明図、図6は、前記注入経路に設けられた前記第1の弁体が開き前記第2の弁体が閉じた状態を示す説明図、図7は、前記注入経路に設けられた前記第1の弁体及び前記第2の弁体が開いた状態を示す説明図である。
【0040】
図5に示すように、固定型11に設けられる注入経路17は、キャビティ面11aに形成される凹部11bと連通され、該凹部11bの底側に第1の弁体51が備えられている。第1の弁体51は、ロッド52を介して駆動シリンダ53に連結され、駆動シリンダ53を作動させることにより上下方向に移動可能に構成されている。注入経路17は、この第1の弁体51が上方へ移動されることで閉じられる。また、注入経路17には、該注入経路17を開閉し、水平方向に移動可能に構成される第2の弁体54が備えられている。これにより、注入経路17では、第1の弁体51及び第2の弁体54が開いた状態において、発泡性樹脂31が成形型10内に注入可能となる。
【0041】
図5に示すように、第1の弁体51及び第2の弁体54がそれぞれ注入経路17を閉じた状態で、パリソン20内の空間部22に加圧気体が供給されてパリソン20がキャビティ面11aに押し付けられる際には、凹部11bにおいても、その表面にパリソン20が断面コ字状に押し付けられるが、この部分ではパリソン20の厚さが薄く成形される。
【0042】
そして、図6に示すように、駆動シリンダ53を作動させて第1の弁体51を下方側へ移動させた後に、ブロー成形用ピン25を介して加圧気体が供給され空間部22の圧力が高められると、凹部11b内に断面コ字状に成形されたパリソン20が、その底部20aにおいて開口させられる。
【0043】
次に、第2の弁体54が注入経路17を開くように移動され、空間部22と注入経路17とが連通された後に、図7に示すように、発泡性樹脂31が、射出装置30から空間部22内に注入される。なお、図5〜図7は、パリソン20がブロー成形されて形成される中空のブロー成形体23の内部への発泡性樹脂の注入の一例を示したものであり、その他の好適な手段によって発泡性樹脂31を注入するようにしてもよい。
【0044】
本実施形態では、発泡性樹脂31がブロー成形体23内に注入される際に、発泡性樹脂31の注入に伴ってブロー成形体23の空間部22内の空気がブロー成形用ピン25を通じて排出されるとともに、ブロー成形体23内に注入された発泡性樹脂31が発泡することを抑制するようにブロー成形体23内の圧力が制御されている。ブロー成形体23では、パリソン20をブロー成形するためにブロー成形用ピン25によってパリソン20に形成されたブロー成形用孔部27を通じて、ブロー成形体23内の気体が排出されるとともにブロー成形体23内の圧力が制御されている。
【0045】
図8は、本発明の実施形態に係るブロー成形体内の圧力の制御パターンを示すグラフである。図8では、パリソン20が垂下されてからの時間を横軸にとり、ブロー成形体23内の圧力を縦軸にとって表示し、発泡性樹脂31の発泡が開始される発泡圧力を二点鎖線S1で表している。なお、ブロー成形体23内の圧力は、パリソン20の空間部22内に加圧気体が供給されるブロー成形開始時T1からパリソン20がブロー成形されブロー成形体が形成されるブロー成形終了時T2までは、パリソン20内の空間部22の圧力を表している。
【0046】
図8に示すように、時間T2においてブロー成形体23が形成されると、ブロー成形体23内の圧力は、発泡性樹脂31の発泡圧力S1より高い圧力P1に制御された状態で時間T3まで保持される。次に、ブロー成形体23内への発泡性樹脂31の注入開始時T3からブロー成形体23内に発泡性樹脂31が注入され、この発泡性樹脂31の注入に伴ってブロー成形体23内の気体は、ブロー成形用孔部27、具体的にはブロー成形用ピン25を通じて排出されるが、ブロー成形体23内の圧力は、発泡性樹脂31の注入に伴って高くなるように制御され、発泡性樹脂31の発泡圧力S1より高い圧力に制御されている。なお、ブロー成形用ピン25を通じて排出されるブロー成形体23内の気体は、真空ポンプを用いて強制的に排出させるようにしても、あるいは開閉弁を開くことによって自然に排出させるようにしてもよい。
【0047】
ブロー成形体23内への発泡性樹脂31の注入終了時T4においてブロー成形体23内に発泡性樹脂31が充填されると、ブロー成形体23内の圧力は、発泡性樹脂31の発泡圧力S1より高い圧力P2に制御された状態で時間T5まで保持される。その後に、ブロー成形用ピン25が後退させられ、固定型11と可動型12の外周部14とを型閉めした状態で、成形型10のキャビティ16の容積を拡大させるように成形型10のコア部13のみを型開き方向に移動(コアバック)させる。これにより、発泡性樹脂31の発泡を促進させ、ブロー成形体23を膨張させる。
【0048】
成型型10のコア部13の型開き方向への移動を開始すると、ブロー成形体23内の圧力が低下し、ブロー成形体23内の圧力が発泡性樹脂31の発泡圧力以下になる時間T5aから発泡性樹脂31が発泡し始める。そして、コア部13が型開き方向に所定量移動されたコアバック終了時T6では、ブロー成形体23内の圧力は圧力P3となり、この状態で時間T7まで保持され、ブロー成形体23の内部に発泡性樹脂31を注入して発泡させた樹脂成形品24が成形型10によって冷却される。
【0049】
図9は、前記成形型内に注入された発泡性樹脂が発泡成形された状態を示す概略説明図である。前記のように、成形装置1では、成形型10のキャビティ16の容積を拡大するように、成形型10のコア部13が型開き方向に、すなわち矢印X1の方向に所定量移動されることにより、発泡性樹脂31の発泡が促進されブロー成形体23が膨張される。そして、溶融状態にある発泡性樹脂31が冷却されて固化し、ブロー成形体23の内部に発泡性樹脂31を注入して発泡させるようにした樹脂成形品24が成形される。
【0050】
図10は、図9のB部を拡大して示した断面説明図である。この図に示すように、成形型10のキャビティ16の容積を増大させるように成形型10のコア部13を型開き方向に移動させると、ブロー成形体23が型開き方向に膨張され、コア部13のキャビティ面13cに、具体的にはキャビティ面13cの周縁部13d近傍に位置するブロー成形体23が延伸させられる。
【0051】
このようにして、ブロー成形体23の内部に発泡性樹脂31を注入した後に、成形型10のキャビティ16の容積を拡大するように成形型10のコア部13を型開き方向に移動させて樹脂成形品24を成形する場合、ブロー成形体23が成形型10のコア部13のキャビティ面13cや外周部14の型面部14aによって冷却され、コア部13を型開き方向に移動させる際にブロー成形体23が型開き方向に延伸されず、ブロー成形体23の膨張が妨げられて、例えばコーナ部のダレなどの外観不良等の問題が生じる場合があるが、本実施形態では、ブロー成形体23内に発泡性樹脂31を注入する際にブロー成形体23内に注入された発泡性樹脂31が発泡することを抑制するようにカウンタープレッシャーをかけることで、コア部13が型開き方向へ移動を開始する前に発泡性樹脂31の発泡圧力が低下することを抑制し、コア部13を移動してブロー成形体23を膨張させる際に、発泡性樹脂31の発泡を促進させてブロー成形体23を膨張させることができるとともに、ブロー成形体23の膨張に伴ってブロー成形体23の延伸される部分23aが成形型10によって冷却されブロー成形体23の膨張が妨げられることを抑制することができる。
【0052】
本実施形態では、コア部13と外周部14とを備えた可動型12を有する成形型10を用い、コア部13を移動させてブロー成形体23を膨張させているが、成形型のキャビティを形成する固定型が、成形型を型閉めする際に可動型と型閉めするとともに成形型のコア部の外周に位置する外周部と、成形型のキャビティの容積を拡大させるように外周部に対し移動可能なコア部とを備えた成形型を使用し、固定型のコア部を型開き方向に移動させてブロー成形体を膨張させるようにしてもよい。
【0053】
また、成形装置1では、パリソン20の空間部22に発泡性樹脂31を注入する際に、空間部22内の空気がブロー成形用ピン25を通じて排出されているが、空間部22を規定するパリソン20に、空間部22内の気体を排出する気体排出用穴を設けるようにしてもよい。
【0054】
図11は、本発明の第2の実施形態に係る樹脂成形品の成形装置において、該成形装置の成形型内に位置するパリソンに加圧気体が供給された状態を示す概略説明図であり、図12は、前記成形装置の成形型内に発泡性樹脂が注入される状態を示す概略説明図である。なお、これらの図では、前述した成形装置1と同様の構成を備え、同様の作用をなすものについては同一符号を付し、それ以上の説明は省略する。
【0055】
第2の実施形態に係る成形装置では、図11に示すように、成形型60が型閉じされた状態において、キャビティ面11a、13cによって形成される空間内に突出するようにピン61が固定型11に設けられている。このピン61は、その先端側が先細り形状に形成され、その後端側が可動プレート62に取り付けられている。該可動プレート62は、例えば駆動シリンダ等によって、キャビティ面11a、13cによって形成される空間に対して進退動可能に構成されている。
【0056】
また、成形型60では、キャビティ面11a、13cによって形成される空間内の気体を排出するための排気経路64が固定型11に形成されており、排気経路64は、可動プレート62を前進させることで閉じられ、可動プレート62を後退させることで開かれるようになっている。また、排気経路64には、前記制御ユニットによって制御される圧力調整弁(不図示)が接続されており、成形型10内の圧力を所定の圧力に保持した状態で排気経路64を通じてブロー成形体23内の気体を排出することができるようになっている。
【0057】
前記のように、パリソン20の空間部22に加圧気体が供給されてパリソン20がキャビティ面11aに押し付けられる際には、図11に示すように、パリソン20にピン61が刺さった状態でパリソン20がキャビティ面11aに押し付けられ、パリソン20には、ピン61によって気体排出穴20bが形成される。
【0058】
そして、発泡性樹脂31が空間部22内に注入される際には、図12に示すように、ブロー成形用ピン25を後退させるとともに可動プレート62を後退させる。これにより、発泡性樹脂31の注入に伴って、空間部22内の気体は気体排出穴20bから排気経路64を通じて排出される。
【0059】
第2の実施形態に係る成形装置においても、図8に示す制御パターンに従ってブロー成形体23内の圧力が制御され、ブロー成形体23内に発泡性樹脂31が注入される際には、ブロー成形体23内の圧力は、発泡性樹脂31の発泡圧力より高い圧力に制御されている。これにより、コア部13を移動してブロー成形体23を膨張させる際に、発泡性樹脂31の発泡圧力を確保することができ、発泡性樹脂31の発泡を促進させてブロー成形体23を膨張させることができるとともに、ブロー成形体23の膨張に伴ってブロー成形体23の延伸される部分23aが成形型10によって冷却されブロー成形体23の膨張が妨げられることを抑制することができる。
【0060】
図13は、本発明の第3の実施形態に係る樹脂成形品の成形装置を示す概略説明図であり、前記成形装置70の成形型10内に発泡性樹脂31が注入される状態を示している。成形装置70は、ブロー成形体23内の圧力を制御する圧力制御手段がブロー成形用ピン25と別に設けられていること以外は、成形装置1と同様の構成を備えているので、成形装置1と同様の構成を備えて同様の作用をなすものについては同一符号を付して説明は省略する。
【0061】
成形装置70では、ブロー成形用ピン25は、パリソン20をブロー成形するためにのみ用いられ、前記加圧流体供給源から加圧気体をパリソン20内の空間部22に供給し、パリソン20をブロー成形してブロー成形体23内を所定の圧力に保持することができるようになっている。
【0062】
また、成形装置70では、成形型10のコア部13に成形型10内に加圧気体を供給するためのガス注入用ピン75が設けられ、このガス注入用ピン75は、コア部13において成形型10のキャビティ16に対し進退動可能に構成されている。ガス注入用ピン75は、成形型10、具合的にはブロー成形体23内にガス注入用ピン77を挿入した状態で、加圧気体供給源76から供給される加圧気体を、前記制御ユニットによって制御される圧力調整弁77を介してブロー成形体23内に供給し、ブロー成形体23内を所定の圧力に保持することができるようになっている。また、ガス注入用ピン75は、ブロー成形体23内にガス注入用ピン75を挿入した状態でブロー成形体23内の気体を排気できるようになっている。
【0063】
成形装置70においても、ブロー成形体23内に発泡性樹脂31が注入される際には、図8に示す制御パターンに従ってブロー成形体23内の圧力が制御されており、ブロー成形体23内の圧力は、圧力調整弁77によって発泡性樹脂31の発泡圧力より高い圧力に制御されている。なお、ガス注入用ピン75を通じて排出されるブロー成形体23内の気体は、真空ポンプを用いて強制的に排出させるようにしても、あるいは開閉弁を開くによって自然に排出させるようにしてもよい。
【0064】
このように、ブロー成形体23内に発泡性樹脂31を注入する際に、発泡性樹脂31の発泡を抑制するようにカウンタープレッシャーをかけることで、ブロー成形体内に注入された発泡性樹脂が発泡することを抑えることができ、第1の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。成形装置70では、ガス注入用ピン75を成形型10のコア部13に設けることより、比較的簡単な構造によって前記効果を得ることができる。
【0065】
成形装置1では、ブロー成形用ピン25を通じてブロー成形体23内に注入された発泡性樹脂31が発泡することを抑制するようにブロー成形体23内の圧力が制御され、成形装置70では、ガス注入用ピン75を通じてブロー成形体23内に注入された発泡性樹脂31が発泡することを抑制するようにブロー成形体23内の圧力が制御されているが、ブロー成形用ピンとガス注入用ピンを併用して、ブロー成形体23内に注入された発泡性樹脂31が発泡することを抑制するようにブロー成形体23内の圧力を制御するようにしてもよい。
【0066】
かかる場合においても、ブロー成形体23内に発泡性樹脂31が注入される際に、ブロー成形体23内に発泡性樹脂31の発泡を抑制するカウンタープレッシャーを付与するようにブロー成形体23内の圧力が制御されることで、前記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、ブロー成形用ピンとガス注入用ピンを用いてブロー成形体内の圧力を制御するので、ブロー成形体の圧力を応答性良く均一化させることが可能である。
【0067】
次に、本発明の実施形態に係るブロー成形体23内の圧力制御パターンの変形例について、図14〜図17を参照して説明する。
【0068】
図14は、図8に示す圧力制御パターンの第1の変形例を示すグラフである。図14に示す圧力制御パターンは、図8に示す圧力制御パターンにおいて、ブロー成形終了時T2から発泡性樹脂の注入開始時T3までのブロー成形体23内の圧力P11が、発泡性樹脂31の発泡圧力S11と同じ圧力に設定されたものである。なお、図14〜図17ではそれぞれ、ブロー成形開始時をT1、ブロー成形終了時をT2、発泡性樹脂31の注入開始時をT3、発泡性樹脂31の注入終了時をT4、コアバック開始時をT5、コアバック終了時をT6、コアバック終了後の所定時間経過後の時間をT7とする。
【0069】
図14に示す圧力制御パターンに従ってブロー成形体23内の圧力が制御される場合、ブロー成形体23内に発泡性樹脂31が注入される際には、ブロー成形体23内の圧力は発泡性樹脂31の発泡圧力S11より高い圧力に制御され、発泡性樹脂31の発泡が抑制されている。また、発泡性樹脂31の注入終了時T4からコア部13の移動が開始されるコアバック開始時T5までにおいても、ブロー成形体23内の圧力はP12に保持され、発泡性樹脂31の発泡が抑制されている。その後に、コアバック開始時T5においてコア部13の移動が開始されてブロー成形体23内の圧力が低下し、ブロー成形体23内の圧力が発泡性樹脂31の発泡圧力S11より低くなる時間T5bから発泡性樹脂31の発泡が開始される。そして、コアバック終了後には、コアバック終了時T6から時間T7までブロー成形体23内の圧力はP13に制御される。
【0070】
第1の変形例においても、ブロー成形体23内へ発泡性樹脂31が注入される際に、発泡性樹脂31の発泡が抑制され、コア部13が型開き方向へ移動を開始する前に発泡性樹脂31の発泡圧力が低下することを抑制することができ、前記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0071】
図15は、図8に示す圧力制御パターンの第2の変形例を示すグラフである。図15に示す圧力制御パターンは、図8に示す圧力制御パターンにおいて、発泡性樹脂31の注入開始時T3におけるブロー成形体23内の圧力が発泡性樹脂31の発泡圧力S21より低い圧力に設定され、発泡性樹脂31の注入終了時T4におけるブロー成形体23内の圧力が発泡性樹脂31の発泡圧力S21より高い圧力に設定されたものである。
【0072】
図15に示す圧力制御パターンに従ってブロー成形体23内の圧力が制御される場合、ブロー成形体23内に発泡性樹脂31が注入される際には、発泡性樹脂31の注入開始時T3にはブロー成形体23内の圧力P21は発泡性樹脂31の発泡圧力S21より低いので、注入開始時にブロー成形体23内に注入された発泡性樹脂31は発泡し始めるものの、発泡性樹脂31の注入に伴ってブロー成形体23内の圧力が上昇し、ブロー成形体23内の圧力が発泡圧力S21より高い圧力になる時間T3a以降では、ブロー成形体23内に注入される発泡性樹脂31の発泡が抑制されている。また、発泡性樹脂31の注入終了時T4からコアバック開始時T5までにおいても、ブロー成形体23内の圧力はP22に保持され、発泡性樹脂31の発泡が抑制されている。その後に、コアバック開始時T5においてコア部13の移動が開始されてブロー成形体23内の圧力が低下し、ブロー成形体23内の圧力が発泡性樹脂31の発泡圧力S21より低くなる時間T5cから発泡性樹脂31の発泡が開始される。そして、コアバック終了後には、コアバック終了時T6から時間T7までブロー成形体23内の圧力はP23に制御される。
【0073】
第2の変形例においても、ブロー成形体23内へ発泡性樹脂31が注入される際に、発泡性樹脂31の発泡が抑制され、コア部13が型開き方向へ移動を開始する前に発泡性樹脂31の発泡圧力が低下することを抑制することができ、前記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0074】
図16は、図8に示す圧力制御パターンの第3の変形例を示すグラフである。図16に示す圧力制御パターンは、図8に示す圧力制御パターンにおいて、発泡性樹脂31の注入開始時T3におけるブロー成形体23内の圧力P31が発泡性樹脂31の発泡圧力S31より低い圧力に設定され、発泡性樹脂31の注入終了時T4におけるブロー成形体23内の圧力P32が発泡性樹脂31の発泡圧力S31より低い圧力に設定されるものの、ブロー成形体23内の圧力P31、P32と発泡圧力S31との圧力差が比較的小さい圧力に設定されたものである。
【0075】
図16に示す圧力制御パターンに従ってブロー成形体23内の圧力が制御される場合、ブロー成形体23内に発泡性樹脂31が注入される際には、ブロー成形体23内の圧力は発泡性樹脂31の発泡圧力S31より低いので、ブロー成形体23内に注入された発泡性樹脂31は発泡し始めるものの、ブロー成形体23内の圧力と発泡性樹脂31の発泡圧力S31との圧力差が比較的小さく、ブロー成形体23内に注入された発泡性樹脂31の発泡が抑制されている。また、発泡性樹脂31の注入終了時T4からコアバック開始時T5までにおいても、ブロー成形体23内の圧力はP32に保持され、ブロー成形体23内の圧力P32と発泡性樹脂31の発泡圧力S31との圧力差が比較的小さく、ブロー成形体23内に注入された発泡性樹脂31の発泡が抑制されている。その後に、コアバック開始時T5においてコア部13の移動が開始されてブロー成形体23内の圧力が低下し、ブロー成形体23内の圧力、すなわち発泡性樹脂31の発泡圧に応じて発泡性樹脂31の発泡が行われる。そして、コアバック終了後には、コアバック終了時T6から時間T7までブロー成形体23内の圧力はP33に制御される。
【0076】
第3の変形例においても、ブロー成形体23内へ発泡性樹脂31が注入される際に、発泡性樹脂31の発泡が抑制され、コア部13が型開き方向へ移動を開始する前に発泡性樹脂31の発泡圧力が低下することを抑制することができ、前記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0077】
図17は、図8に示す圧力制御パターンの第4の変形例を示すグラフである。図17に示す圧力制御パターンは、コアバック終了時T6にブロー成形体23内の圧力が取り除かれてゼロに設定されること以外は、図8に示す圧力制御パターンと同様の圧力制御パターンであるので、前記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。また、この圧力制御パターンに従ってブロー成形体23内の圧力が制御される場合には、樹脂成形品24の成形と同時に樹脂成形品24の冷却を終了することができるので、樹脂成形品24を成形する成形サイクルタイムを短縮させることが可能である。
【0078】
なお、本実施形態では、発泡剤として超臨界状態にある流体を用いているが、その他の物理発泡材、あるいは化学発泡剤を使用することも可能である。
【0079】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、樹脂成形品24を成形する上で、ブロー成形体23内に発泡性樹脂31を注入する際にカウンタープレッシャーをかけることでブロー成形体23内に注入された発泡性樹脂31が発泡することを抑制することができるので、コア部13を移動してブロー成形体23を膨張させる際に、発泡性樹脂31の発泡を促進させてブロー成形体23を膨張させることができるとともに、ブロー成形体23の膨張に伴ってブロー成形体23の延伸される部分23aが成形型10によって冷却されブロー成形体23の膨張が妨げられることを抑制することができ、表面性及び物性に優れた樹脂成形品24を容易に且つ確実に成形することができる。
【0080】
また、パリソン20をブロー成形するためのブロー成形用孔部27を通じてブロー成形体23内の圧力が制御されることにより、ブロー成形用孔部23を、ブロー成形体23内の圧力を制御するための圧力制御用孔部として用いることができ、比較的容易に前記効果を得ることができる。
【0081】
更に、発泡性樹脂31に、物理発泡剤が含有されていることにより、発泡セル径の微細な樹脂成形品を成形することができ、樹脂成形品において曲げ剛性等の物性をさらに向上させることができる。
【0082】
また更に、物理発泡剤が、超臨界状態の流体であることにより、さらに微細な発泡セルを有する樹脂成形品を成形することができ、前記効果をさらに有効に奏することができる。
【0083】
また更に、本実施形態に係る成形装置1では、固定型11と可動型12とを有し、該可動型12が外周部14とコア部13とを備えた成形型10を使用することにより、成形型の構造やその駆動機構等を複雑化させることなく、比較的簡単な構造によって、前記効果を得ることができる。
【0084】
また、樹脂成形品24の成形に際し、発泡性樹脂31にさらに、該発泡性樹脂31を補強する補強繊維を含有させるようにしてもよい。このように、発泡性樹脂31に補強繊維を含有させることで、繊維のスプリングバック現象によって発泡性樹脂の発泡をさらに促進させることが可能である。補強繊維が含有された発泡性樹脂を用いて成形する場合においても、樹脂成形品の表面に補強繊維が露出して表面外観を悪化させることがなく、表面性の良好な樹脂成形品を得ることができる。
【0085】
なお、本発明は、例示された実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、ブロー成形体の内部に発泡性樹脂を注入し発泡させるようにした樹脂成形品の成形に関するものであり、例えば車体に組み付けられるトランクボードなどの樹脂成形品の成形に好適に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る樹脂成形品の成形装置を示す概略説明図である。
【図2】前記成形装置の可動型を模式的に示す斜視図である。
【図3】前記成形装置の成形型内に位置するパリソンに加圧気体が供給された状態を示す概略説明図である。
【図4】前記成形型内に発泡性樹脂が注入される状態を示す概略説明図である。
【図5】前記注入経路に設けられた第1の弁体及び第2の弁体が閉じた状態を示す説明図である。
【図6】前記注入経路に設けられた前記第1の弁体が開き前記第2の弁体が閉じた状態を示す説明図である。
【図7】前記注入経路に設けられた前記第1の弁体及び前記第2の弁体が開いた状態を示す説明図である。
【図8】本発明の実施形態に係るブロー成形体内の圧力の制御パターンを示すグラフである。
【図9】前記成形型内に注入された発泡性樹脂が発泡成形された状態を示す概略説明図である。
【図10】図9のB部を拡大して示した断面説明図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る樹脂成形品の成形装置において、該成形装置の成形型内に発泡性樹脂が注入される状態を示す概略説明図である。
【図12】前記成形型内に注入された発泡性樹脂が発泡成形された状態を示す概略説明図である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る樹脂成形品の成形装置を示す概略説明図である。
【図14】図8に示す圧力制御パターンの第1の変形例を示すグラフである。
【図15】図8に示す圧力制御パターンの第2の変形例を示すグラフである。
【図16】図8に示す圧力制御パターンの第3の変形例を示すグラフである。
【図17】図8に示す圧力制御パターンの第4の変形例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0088】
1、70 成形装置
10、60 成形型
11 固定型
12 可動型
13 コア部
14 外周部
16 キャビティ
20 パリソン
21 押出ヘッド
23 ブロー成形体
24 樹脂成形品
25 ブロー成形用ピン
27 ブロー成形用孔部
30 射出装置
31 発泡性樹脂
75 ガス注入用ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソリッド樹脂からなるパリソンを型開きした成形型内に押し出し、前記パリソンを挟んで前記成形型を型閉めした後に前記パリソンをブロー成形して中空のブロー成形体を形成し、該ブロー成形体の形成後に前記ブロー成形体内に発泡性樹脂を注入し、該発泡性樹脂の注入開始後に、前記成形型のキャビティの容積を拡大させるように前記成形型のコア部を所定量移動させることにより、前記発泡性樹脂の発泡を促進させて前記ブロー成形体を膨張させるようにした樹脂成形品の成形方法であって、
前記発泡性樹脂を前記ブロー成形体内に注入する際に、前記ブロー成形体内に注入された前記発泡性樹脂が発泡することを抑制するように前記ブロー成形体内の圧力が制御されている、
ことを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項2】
前記ブロー成形体内に前記発泡性樹脂を注入する際に、前記パリソンをブロー成形するためのブロー成形用孔部を通じて、前記ブロー成形体内の気体が排出されるとともに、前記ブロー成形体内に注入された前記発泡性樹脂が発泡することを抑制するように前記ブロー成形体内の圧力が制御されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項3】
前記発泡性樹脂に、該発泡性樹脂を補強する補強繊維が含有されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項4】
前記発泡性樹脂に、物理発泡剤が含有されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項5】
前記物理発泡剤が、超臨界状態の流体であることを特徴とする請求項4に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項6】
開閉可能な成形型と、型開きされた前記成形型内にソリッド樹脂からなるパリソンを押し出す押出ヘッドと、前記パリソンを挟んで前記成形型を型閉めした後に前記パリソン内に加圧流体を供給し中空のブロー成形体を形成する加圧流体供給手段と、前記ブロー成形体内に発泡性樹脂を注入する注入手段と、前記成形型のキャビティの容積を拡大させるように前記成形型のコア部を移動させるコア移動手段とを備え、前記ブロー成形体内に前記発泡性樹脂の注入を開始した後に、前記成形型のキャビティの容積を拡大させるように前記コア部を移動し、前記発泡性樹脂の発泡を促進させて前記ブロー成形体を膨張させる樹脂成形品の成形装置であって、
前記ブロー成形体内の圧力を制御する圧力制御手段を備え、
前記圧力制御手段は、前記ブロー成形体内に前記発泡性樹脂を注入する際に、前記ブロー成形体内に注入された前記発泡性樹脂が発泡することを抑制するように前記ブロー成形体内の圧力を制御する、
ことを特徴とする樹脂成形品の成形装置。
【請求項7】
前記成形型は、固定型と可動型とを有し、
前記固定型及び前記可動型の何れか一方の型は、前記成形型を型閉めする際に前記固定型及び前記可動型の他方の型と型閉めするとともに前記成形型の前記コア部の外周に位置する外周部と、前記成形型のキャビティの容積を拡大させるように前記外周部に対し移動可能な前記コア部とを備えている、
ことを特徴とする請求項6に記載の樹脂成形品の成形装置。
【請求項8】
前記注入手段は、物理発泡剤を含有する発泡性樹脂を注入することを特徴とする請求項6又は7に記載の樹脂成形品の成形装置。
【請求項9】
前記注入手段は、前記物理発泡剤として超臨界状態の流体を含有する発泡性樹脂を注入することを特徴とする請求項8に記載の樹脂成形品の成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−230189(P2008−230189A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76779(P2007−76779)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】