説明

欠陥検出装置及び方法

【課題】検査対象の搬送速度に変動が生じても、欠陥を確実に検出する。
【解決手段】搬送中のフイルムを受光器により撮像する。撮像により得られるフレーム画像60にハフ変換を施し、直線62を検出する。直線62のうち、フレーム画像の中心C1に最も近い中心直線62aを特定する。中心直線62aと交差する直線の交点67を求める。求めた交点67の座標を用いて、X軸方向の隣接交点間距離P1〜P15及びY軸方向の隣接交点間距離Q1〜Q15を求める。隣接交点間距離P1〜P15及びQ1〜Q15に基づいて、比較ピッチXp,Ypを求める。フレーム画像60上の指定画素とその指定画素から比較ピッチ分Xp,Ypだけ離れた比較画素を特定する。指定画素及び比較画素の濃度値に基づき、指定画素について差分処理を行う。フレーム画像60の画素の全てに対して差分処理を行うことにより、フレーム画像60からメッシュ部63が除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッシュパターンなどの規則的パターンを有する検査対象上の欠陥を検出する欠陥検出装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型で大画面の画像表示装置として、プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel: 以下「PDP」という)が普及している。PDPには、パネル本体から発生する電磁波を防ぐために、パネルの前面に電磁波シールドが設けられている。電磁波シールドとしては金属薄膜などが用いられてきたが、現在では、高い電磁波シールド特性及び光透過率を備える電磁波シールドフイルムが主流となっている。電磁波シールドフイルムは、透明フイルムと、そのフイルム上に形成されるメッシュ状の金属細線とから構成される。
【0003】
この電磁波シールドフイルムの製造方法の一つとしては、写真フイルムなどの銀塩感光材料を露光及び現像処理することによりメッシュ状の銀細線を形成した上で、そのメッシュ状の銀細線に対してめっき又は物理現象処理を施す方法がある。この製造方法によれば、メッシュの細線パターンを精密に形成できるとともに、高い導電性及び透明性を得ることができる。また、透明フイルムを連続搬送させながら露光することが可能(特許文献1参照)であり、また、銀メッシュが予め形成されたフイルムを連続搬送させながら複数の電解槽に浸漬させるめっき処理を行うことが可能(特許文献2参照)であるため、低コストで大量生産することができる。
【0004】
銀塩感光材料を用いて電磁波シールドフイルムを製造する際には、製造工程において、露光ムラ、めっき欠陥、メッシュ欠陥などの欠陥が発生することがある。このような欠陥がある電磁波シールドフイルムをPDPに組み込んだ場合には、透明性や導電性が低下したり、ディスプレイ画面にムラが生じるおそれがある。そのため、電磁波シールドフイルムをPDPに組み込む前に、欠陥検査を行う必要がある。
【0005】
これまで、メッシュパターンのような規則的パターンを有する検査対象の欠陥を検出する方法の一つとして、検査対象を撮像手段により撮像し、その撮像により得られた画像の濃度値を用いて差分処理を行うことにより、撮像画像上の規則的パターンを除去して、欠陥のみを抽出する方法が提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2007−72171号公報
【特許文献2】特開2007−162118号公報
【特許文献3】特開2001−209793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、透明フイルムや銀メッシュが形成されたフイルムを連続搬送させながら電磁波シールドフイルムを製造する際には、製造工程における各種要因によって搬送速度に変動が生じることがある。搬送速度に変動が生じたフイルムを撮像すると、その撮像画像上のメッシュパターンが変形するようになる。例えば、メッシュパターンが正方形状に形成されている場合には、搬送速度の変動により、撮像画像上のメッシュパターンがひし形状に変形するようになる(図3又は図4参照)。このように、撮像画像上のメッシュパターンが変形してまうと、特許文献3記載の欠陥検出方法では差分処理が確実に行われず、撮像画像上のメッシュパターンを完全に除去することができない。
【0007】
したがって、これまで、撮像画像上のメッシュパターンを完全に除去するためには、搬送速度の変動を基準搬送速度、例えば20m/分に対して±1%の範囲内に抑える必要があった。しかしながら、搬送速度の変動を±1%の範囲内に抑制するためには、速度変動がしにくいモータや減速機などを使用する必要があるため、現実的には困難な場合が多い。
【0008】
本発明は、検査対象の搬送速度に変動が生じても、検査対象上の欠陥を確実に検出する欠陥検出装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の欠陥検出装置は、複数の直線が規則的に配置される規則的パターンを有する検査対象を搬送させる搬送手段と、前記検査対象を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により得られる撮像画像から、前記検査対象の搬送速度の変動に応じて変形する前記規則的パターンの画像を除去する除去手段と、前記規則的パターンの画像が除去された撮像画像に基づいて、前記検査対象の欠陥を検出する欠陥検出手段とを有することを特徴とする。
【0010】
前記除去手段は、前記撮像画像において指定される指定画素と前記指定画素に対して比較対象となる比較画素との間のピッチを示す比較ピッチを算出する比較ピッチ算出手段と、前記指定画素の濃度値と前記比較画素の濃度値とに基づき、前記指定画素に対して差分処理を行う差分処理手段と、前記撮像画像の画素の全てに対して前記差分処理を行うことにより、前記撮像画像から前記規則的パターンの画像を除去する規則的パターン除去手段とを有することが好ましい。
【0011】
前記比較ピッチ算出手段は、前記撮像画像から前記複数の直線を検出する直線検出部と、前記直線検出部により検出された前記複数の直線から所定の直線を特定直線として特定し、前記特定直線に交差する直線の交点を求める交点算出部と、前記交点算出部により求めた交点に基づいて、隣接する交点間の距離を示す隣接交点間距離を求める隣接交点間距離算出部と、前記隣接交点間距離に基づいて、前記比較ピッチを算出する比較ピッチ算出部とを有することが好ましい。
【0012】
前記交点算出部は、前記撮像画像の中心に最も近い直線を特定直線として特定することが好ましい。前記比較ピッチ算出部は、予め設定した比較ステップ値(整数値)に対して前記隣接交点間距離の平均値を乗することにより、前記比較ピッチを算出することが好ましい。前記比較ピッチ算出部は、前記隣接交点間距離のうち予め設定した基準距離の範囲から外れるものを除外して、前記比較ピッチを算出することが好ましい。
【0013】
前記差分処理手段は、前記指定画素の濃度値から前記比較画素の濃度値を差し引いて差分値を算出する差分値算出部と、前記差分値に基づいて、前記指定画素の濃度値を更新する濃度値更新部とを有することが好ましい。前記規則的パターンはメッシュパターンであり、前記メッシュパターンは直線の一部がその他の直線に対して一定の間隔で交差することが好ましい。前記検査対象はメッシュパターンが形成された電磁波シールドフイルムであり、前記欠陥は前記電磁波シールドフイルム上の露光ムラ、めっきムラ、メッシュ欠陥であることが好ましい。
【0014】
本発明の欠陥検出方法は、複数の直線が規則的に配置される規則的パターンを有する検査対象を搬送させ、前記検査対象を撮像手段により撮像し、前記撮像手段により得られる撮像画像から、前記検査対象の搬送速度の変動に応じて変形する前記規則的パターンの画像を除去し、前記規則的パターンの画像が除去された撮像画像に基づいて、前記検査対象の欠陥を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、検査対象の搬送速度に変動が生じても、検査対象上の欠陥を確実に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1に示すように、電解めっき設備10は、フイルムロール11からフイルム12を巻き出す巻き出しエリア13、フイルム12に対して電解めっきを施すめっきエリア14、めっきされたフイルム12に対して水洗・黒化処理や乾燥処理等を施す後処理エリア15、フイルム12上の欠陥を検出する欠陥検出エリア16、フイルム12を巻芯に巻き取る巻き取りエリア17が順に配置されている。
【0017】
巻き出しエリア13からのフイルム12は、めっきエリア14、後処理エリア15、欠陥検出エリア16を経て、巻き取りエリア17まで搬送される。以下、このフイルム12の搬送方向をA方向とする。フイルム12は銀塩写真フイルムから構成され、このフイルム12の表面には銀メッシュが形成されている。銀メッシュは、銀塩写真フイルムに対するメッシュパターンの露光及び現像処理により形成される。
【0018】
めっきエリア14には、7つのめっき槽20,21が連続して配置されている。これら7のめっき槽20,21には、それぞれめっき液23が貯留されている。めっき液としては特に限定されず、公知の電解液を用いることができる。A方向上流側にある4つのめっき槽20の容量は、前半のめっき処理時間が短くなるように、A方向下流側にある3つのめっき槽21の容量よりも小さく設計されている。なお、図1では、図が複雑になるのを避けるために、複数のめっき槽、後述する複数の給電ローラ、アノード電極板、ガイドローラのうちの一部のみに、それらの符号を付している。
【0019】
また、めっき槽20,21の上方には、フイルム12の走行を案内するとともにフイルム12の銀メッシュに対して電流を供給する給電ローラ25(カソード)が設置されている。また、めっき槽20,21内には、アノード電極板27がフイルム12と向かい合うようにして設置されている。これら給電ローラ25及びアノード電極板27は、それぞれ電源装置(図示省略)のプラス端子及びマイナス端子に接続されている。フイルム12の銀メッシュに対して給電ローラ25及びアノード電極板27から電流が供給されると、そのフイルム12の銀メッシュが帯電する。このフイルム12がめっき槽20,21内に浸漬することで、銀メッシュにめっき付けが施される。
【0020】
また、めっき槽20,21内には、フイルム12を反転させるためのガイドローラ30が設置されている。ガイドローラ30はめっき槽20,21の深さ方向に移動可能であり、このガイドローラ30が移動することで、フイルム12のめっき処理時間、すなわちフイルム12がめっき液23に浸漬している時間を微調整することができる。
【0021】
後処理エリア15には、第1水洗槽32、黒化処理槽33、第2水洗槽34、乾燥部35が順に配置されている。黒化処理槽33の上方には給電ローラ37(カソード)が、また、黒化処理槽33内にはアノード電極板38が設けられている。黒化処理槽33には黒化処理液39が貯留されている。黒化処理液39としては、例えば、黒化銅、黒化ニッケル、黒化スズ、黒化ニッケル−スズ、黒化ニッケル−亜鉛等の電解液がある。また、第1水洗槽32、黒化処理槽33、及び第2水洗槽34の内部には、ガイドローラ40が設けられている。
【0022】
めっきエリア14を経たフイルム12は、第1水洗槽32に浸漬され水洗いされる。第1水洗槽32を経たフイルム12は、黒化処理槽33に浸漬され黒化処理される。黒化処理槽33を経たフイルム12は、第2水洗槽34で再度水洗いされた後に、乾燥部35において乾燥される。これにより、電磁波シールドフイルムが得られる。なお、電磁波シールドフイルムについては、以下においても、単に「フイルム」と表記する。
【0023】
欠陥検出エリア16では、欠陥検出装置42によりフイルム12上に発生した欠陥を検出する。欠陥としては、例えば、露光ムラ、めっき欠陥、メッシュ欠陥などが挙げられる。
【0024】
図2に示すように、欠陥検出装置42は、ガイドローラ45,46、投光器47、受光器48、システムコントローラ50を備えている。ガイドローラ45,46は、フイルム12の搬送路に所定の間隔で離間して配置されている。ガイドローラ45,46は回動自在であり、フイルム12の搬送に従動して回転する。また、ガイドローラ45,46に対してフイルム12を掛け渡すことで、フイルム12は平面状に保持される。ガイドローラ46にはエンコーダ52が接続されており、このエンコーダ52はフイルム12が一定長搬送されるごとにエンコーダパルス信号を発生する。このエンコーダパルス信号はシステムコントローラ50に送信され、欠陥位置を特定する際に用いられる。
【0025】
投光器47は複数の線状又は面状光源から構成され、フイルム12の搬送路の下方であってフイルム12の幅方向(B方向)に対して千鳥配置となるように設けられている。投光器47は光量調整機能を備えており、この光量調整機能により、フイルム12に照明される光の光量が一定に保持される。なお、投光器としては輝度が高いものが好ましく、例えば、ハロゲンランプ、メタルハライドランプなどが挙げられる。
【0026】
受光器48は複数のラインCCDカメラから構成され、フイルム12の搬送路の上方であってB方向に対して千鳥配置となるように設けられている。各受光器48はB方向に沿ってライン状に並べられた多数の受光素子を備えている。このような受光器48を用いることで、フイルム12の全幅にわたって欠陥を検出することができる。受光器48はフイルム12が一定長搬送されるごとに1ラインずつ撮像して、その撮像信号をシステムコントローラ50に送信する。
【0027】
システムコントローラ50は、測長部55、画像処理部56、判定部57、メモリ58を備えている。測長部55は、エンコーダ52からのエンコーダパルスに基づいて、フイルム12の先端からの測長データを求める。この測長データは判定部57に送られる。
【0028】
画像処理部56では、受光器48から送信される1ライン毎の撮像信号に対して、微分処理などの強調処理やゲイン補正処理などを施す。そして、撮像信号を1ライン毎にA方向に集積して、欠陥検出処理のためのフレーム画像を作成する。図3に示すように、フレーム画像60には、複数の直線62が格子状に交わって形成されるメッシュ部63、メッシュ部63の背後にあるフイルム12を示す背景部64、フイルム12上の欠陥を示す欠陥部65などが記録されている。なお、本実施形態におけるフレーム画像の画素数は縦×横で4096×4096であるが、これに限る必要はなく適宜変更してもよい。また、図3では、図が複雑になるのを避けるために、複数の直線及び背景部のうちの一部のみに符号62、64を付している。
【0029】
また、画像処理部56では、フレーム画像60からメッシュ部63を除去して、背景部64及び欠陥部65のみ画像とする。メッシュ部63の除去は、フレーム画像60に対する差分処理により行われる。差分処理は、フレーム画像60において所定の画素を指定した上で、その指定した画素(以下「指定画素」という)の濃度値と、指定画素から所定ピッチ分だけ離れた比較対象の画素(以下「比較画素」という)の濃度値との差分値を用いて行われる(図4参照)。
【0030】
まず、指定画素と比較画素との間のピッチを示す比較ピッチを求める。フレーム画像60に対して、ハフ変換や最小二乗法などの公知の図形検出処理を施し、直線62の式を求める。次に、複数の直線62のうち、フレーム画像の中心C1との距離が最も小さい直線を中心直線62aとして特定する。次に、この中心直線62aに交わる直線の交点67を求める。次に、X軸方向に隣接する交点67間の距離(以下「X方向隣接交点間距離」とする)P1,P2,・・・,P15を求める。同様にして、Y軸方向に隣接する交点67間の距離(以下「Y方向隣接交点間距離」とする)Q1,Q2,・・・,Q15を求める。なお、図3では、図が複雑になるのを避けるために、複数の交点のうちの一部のみに符号67を付している。
【0031】
なお、ハフ変換などにより求めた直線の式については、傾きが正のものを「Y=aX+b」と、傾きが負のものを「Y=αX+β」とし、傾きと切片の組み合わせ(a,b)、(α)を作っても良い。その際、切片bが大きいものから順に、組み合わせを作ることが好ましい。
【0032】
また、フイルム上の線状欠陥などが誤ってメッシュの直線と認識され、その誤って認識された直線と中心直線との交点から極めて大きい又は小さいX方向隣接交点間距離及びY方向隣接交点間距離が算出されることがある。このような極めて大きい又は小さいX方向隣接交点間距離及びY方向隣接交点間距離については、予め設定した基準距離の範囲から外れるものは、後述の平均値Pave,Qaveの算出から除外することが好ましい。
【0033】
次に、X方向隣接交点間距離P1,P2,・・・,P15の平均値Paveと、Y方向隣接交点間距離Q1,Q2,・・・,Q15の平均値Qaveを求める。そして、予め設定した比較ステップ値Nに平均値Paveを乗ずることにより、X軸方向の比較ピッチXpを求める。同様にして、比較ステップ値Nに平均値Qaveを乗ずることにより、Y軸方向の比較ピッチYpを求める。比較ステップ値Nは整数値であり、3以上7以下であることが好ましい。比較ステップ値Nが2以下の場合には、後述の差分処理により、メッシュ部だけでなく欠陥部も除去するおそれがある。また、比較ステップ値Nが8以上の場合には、指定画素がフイルム12の端に近いときに比較画素をとれないおそれがある。
【0034】
次に、図4に示すように、フレーム画像60内の所定の画素を指定画素70として指定し、この指定画素70について差分処理を行う。ここで、フレーム画像60におけるメッシュ部(直線)63の濃度値を「150」、背景部64の濃度値を「200」、欠陥部65の濃度値を「80」とする。まず、指定画素70からX軸方向に比較ピッチXp分、Y軸方向に比較ピッチYp分だけ離れた画素を比較画素72として特定する。次に、指定画素70の濃度値「200」から比較画素72の濃度値「200」を差し引いて、差分値「0」を得る。そして、指定画素70の濃度値は、差分値「0」に対して所定の濃度値「128」が加算された濃度値「128」に更新される。この差分値「0」に対して加えられる所定の濃度値「128」は、後述する二値化処理を実行する際、背景部64の濃度値を中心濃度である「128」とするために加算される。尚、加算後の濃度値が「0」より小さい場合は「0」とし、「255」より大きい場合は「255」とする。以上により、指定画素70についての差分処理が完了する。
【0035】
次に、指定画素70に対して斜め45°に位置する画素、即ち斜め線75上にある画素を新たな指定画素とし、同様の差分処理を行う。ここで、新たな指定画素76が欠陥部65上にあり、かつ直線62上にある場合には、その指定画素76に対応する比較画素78は直線62上にある。この場合には、差分処理の結果、指定画素76の濃度値が「58」に更新される。また、新たな指定画素80が欠陥部65上にあり、かつ背景部64にある場合には、その指定画素80に対応する比較画素82は背景部64にある。この場合には、差分処理の結果、指定画素80の濃度値は「8」に更新される。なお、新たな指定画素を指定画素に対して斜め45°に位置する画素としたが、これに限らず、指定画素に対して所定の角度で斜め方向に位置する画素を新たな指定画素としてもよい。
【0036】
斜め線75上の画素について差分処理が完了したら、新たな斜め線84を設定する。そして、新たな斜め線84上の画素について、上記と同様の差分処理を行う。以上の差分処理をフレーム画像60の画素のすべてについて行うことにより、フレーム画像60からメッシュ部63が除去され、フレーム画像60は背景部64及び欠陥部65のみの画像となる。メッシュ部63が除去されたフレーム画像60では、背景部54の濃度値は「128」であり、欠陥部65の濃度値は「8」または「58」である。画像処理後のフレーム画像60は、判定部57に送られる。
【0037】
判定部57は二値化処理部(図示省略)を備えており、画像処理部56からのフレーム画像に対して二値化処理を施す。この二値化処理により、フレーム画像60の画素の濃度値が例えば「78」以下の場合には、その画素の濃度値が「0」に置き換えられる。一方、濃度値が例えば「178」を超える場合には、その画素の濃度値が「255」に置き換えられる。この二値化処理をフレーム画像60の画素の全てに対して施す。これにより、欠陥部65の濃度値は「0」に置き換えられる。そして、フレーム画像60において、濃度値「0」または「255」の画素が一定領域以上占めている場合には、その領域が欠陥と判定される。ここで、欠陥部65は、濃度値「0」の画素を一定領域以上有していることから、欠陥と判定される。この判定部57の判定結果は、前述の測長データと組み合わされて、メモリ58に記憶される。
【0038】
次に、欠陥検出装置42の作用について、図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。図2に示すように、フイルム12は、受光器48により所定の周期で撮像される。受光器48からの1ライン毎の撮像信号は、システムコントローラの画像処理部56に送られる。この画像処理部56において、撮像信号に対して微分処理などの強調処理やゲイン補正処理などの処理が施される。そして、撮像信号が1ライン毎にA方向に集積されて、フレーム画像60が得られる。
【0039】
画像処理部56では、図3に示すように、フレーム画像60に対して図形検出処理を施し、直線62を検出する。次に、直線62のうち、フレーム画像の中心C1と距離が最も小さい直線を中心直線62aとして特定する。次に、この中心直線62aに交わる直線の交点67を求める。次に、求めた交点67に基づいて、X方向隣接交点間距離P1〜P15及びY方向隣接交点間距離Q1〜Q15を求める。
【0040】
次に、X方向隣接交点間距離P1〜P15の平均値Paveと、Y方向隣接交点間距離Q1〜Q15とを求める。この求めた平均値Paveに比較ステップ値Nを乗ずることにより、比較ピッチXpが算出される。同様にして、平均値Qaveに比較ステップ値Nを乗ずることにより、比較ピッチYpが算出される。
【0041】
次に、図4に示すように、フレーム画像60内の所定の画素を指定画素70として指定し、この指定画素70について差分処理を行う。この指定画素70からX軸方向に比較ピッチXp分、Y軸方向に比較ピッチYp分だけ離れた画素を比較画素72として特定する。次に、指定画素70の濃度値「200」から比較画素72の濃度値「200」を差し引いて、差分値「0」を得る。指定画素70の濃度値は、差分値「0」に対して所定の濃度値「128」が加算された濃度値「128」に更新される。
【0042】
次に、指定画素70に対して斜め45°に位置する画素、即ち斜め線75上にある画素を新たな指定画素とし、同様の差分処理を行う。斜め線75上の画素について差分処理が完了したら、新たな斜め線84を設定する。そして、新たな斜め線84上の画素について、同様の差分処理を行う。以上の差分処理をフレーム画像60の画素のすべてについて行うことにより、フレーム画像60は背景部64及び欠陥部65のみの画像となる。画像処理後のフレーム画像60は、判定部57に送られる。
【0043】
次に、フレーム画像60の二値化処理が行われる。この二値化処理により、フレーム画像60の画素の濃度値が例えば「78」以下の場合には、その画素の濃度値が「0」に置き換えられる。一方、フレーム画像60の画素の濃度値が例えば「178」を超える場合には、その画素の濃度値が「255」に置き換えられる。この二値化処理をフレーム画像60の画素の全てに対して施す。これにより、欠陥部65の濃度値は「0」に置き換えられる。そして、欠陥部65は濃度値「0」の画素を一定領域以上有していることから、欠陥と判定される。この判定部57の判定結果は、測長部55からの測長データと組み合わされて、メモリに記憶される。
【0044】
以上のように、フレーム画像の取得ごとに比較ピッチを変更することで、フイルムの搬送速度の変動によりフレーム画像上のメッシュパターンが変形しても、確実に差分処理を行うことができる。
【0045】
例えば、特許文献3のような従来の差分処理を用いた欠陥検出方法では、フイルム12の搬送速度の変動を基準搬送速度(20m/分)に対して±1%の範囲内にしないと、フレーム画像のメッシュに歪みが生じて、メッシュ除去処理ができなくなっていた。これに対して、本発明によれば、搬送速度の変動が基準搬送速度に対して±10%程度あってもメッシュを除去することができるため、欠陥検出を確実に行うことが可能である。
【0046】
なお、上記実施形態で示した画素の濃度値、即ち、フレーム画像におけるメッシュ部、背景部、及び欠陥部の濃度値、指定画素の濃度値と比較画素の濃度値の差分値に対して加えた濃度値、二値化処理における濃度値は一例であり、これに限る必要はない。
【0047】
また、上記実施形態では、検査対象を電磁波シールドフイルムとしたが、これに限る必要はなく、ウェブなどであってもよい。また、メッシュパターンが形成された検査対象に対して本発明を適用したが、これに限る必要はなく、メッシュパターン以外の規則的パターンを有する検査対象、例えば液晶パネル等の構造体に対しても本発明を適用することができる。
【0048】
また、上記実施形態では、検査対象のフイルムに対して受光器と反対側に投光器を配置し、その投光器からの光のうちフイルムを透過した光を受光器により受光したが、これに限る必要はない。例えば、検査対象のフイルムに対して受光器と同じ側に投光器を配置し、その投光器からの光のうちフイルム上で反射した光を受光器により受光してもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、フレーム画像からメッシュパターンを検出し、この検出されたメッシュパターンの直線に基づいて比較ピッチを求めたが、これに限る必要はない。例えば、フイルムの搬送路にラインパルス発生器を設置し、このラインパルス発生器からのラインパルスによりフイルムの搬送速度の変動を検出し、この検出した搬送速度の変動に基づいて比較ピッチを求めてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】電解めっき設備を示す概略図である。
【図2】本発明の欠陥検出装置を示す斜視図である。
【図3】比較ピッチを算出するために用いられるフレーム画像を示す説明図である。
【図4】差分処理を行うために用いられるフレーム画像を示す説明図である。
【図5】本発明の欠陥検出装置の作用を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
12 フイルム
42 欠陥検出装置
48 受光器
56 画像処理部
57 判定部
60 フレーム画像
62 (メッシュ部)の直線
62a 中心直線
63 メッシュ部
64 背景部
65 欠陥部
67 交点
70,76,80 指定画素
72,78,82 比較画素
Xp,Yp 比較ピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の直線が規則的に配置される規則的パターンを有する検査対象を搬送させる搬送手段と、
前記検査対象を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により得られる撮像画像から、前記検査対象の搬送速度の変動に応じて変形する前記規則的パターンの画像を除去する除去手段と、
前記規則的パターンの画像が除去された撮像画像に基づいて、前記検査対象の欠陥を検出する欠陥検出手段とを有することを特徴とする欠陥検出装置。
【請求項2】
前記除去手段は、
前記撮像画像において指定される指定画素と前記指定画素に対して比較対象となる比較画素との間のピッチを示す比較ピッチを算出する比較ピッチ算出手段と、
前記指定画素の濃度値と前記比較画素の濃度値とに基づき、前記指定画素に対して差分処理を行う差分処理手段と、
前記撮像画像の画素の全てに対して前記差分処理を行うことにより、前記撮像画像から前記規則的パターンの画像を除去する規則的パターン除去手段とを有することを特徴とする請求項1記載の欠陥検出装置。
【請求項3】
前記比較ピッチ算出手段は、
前記撮像画像から前記複数の直線を検出する直線検出部と、
前記直線検出部により検出された前記複数の直線から所定の直線を特定直線として特定し、前記特定直線に交差する直線の交点を求める交点算出部と、
前記交点算出部により求めた交点に基づいて、隣接する交点間の距離を示す隣接交点間距離を求める隣接交点間距離算出部と、
前記隣接交点間距離に基づいて、前記比較ピッチを算出する比較ピッチ算出部とを有することを特徴とする請求項2記載の欠陥検出装置。
【請求項4】
前記交点算出部は、前記撮像画像の中心に最も近い直線を特定直線として特定することを特徴とする請求項3記載の欠陥検出装置。
【請求項5】
前記比較ピッチ算出部は、予め設定した比較ステップ値(整数値)に対して前記隣接交点間距離の平均値を乗ずることにより、前記比較ピッチを算出することを特徴とする請求項3または4記載の欠陥検出装置。
【請求項6】
前記比較ピッチ算出部は、前記隣接交点間距離のうち予め設定した基準距離の範囲から外れるものを除外して、前記比較ピッチを算出することを特徴とする請求項3ないし5いずれか1項記載の欠陥検出装置。
【請求項7】
前記差分処理手段は、
前記指定画素の濃度値から前記比較画素の濃度値を差し引いて差分値を算出する差分値算出部と、
前記差分値に基づいて、前記指定画素の濃度値を更新する濃度値更新部とを有することを特徴とする請求項2ないし6いずれか1項記載の欠陥検出装置。
【請求項8】
前記規則的パターンはメッシュパターンであり、前記メッシュパターンは直線の一部がその他の直線に対して一定の間隔で交差することを特徴とする請求項1ないし7いずれか1項記載の欠陥検出装置。
【請求項9】
前記検査対象はメッシュパターンが形成された電磁波シールドフイルムであり、前記欠陥は前記電磁波シールドフイルム上の露光ムラ、めっきムラ、メッシュ欠陥であることを特徴とする請求項1ないし8いずれか1項記載の欠陥検出装置。
【請求項10】
複数の直線が規則的に配置される規則的パターンを有する検査対象を搬送させ、
前記検査対象を撮像手段により撮像し、
前記撮像手段により得られる撮像画像から、前記検査対象の搬送速度の変動に応じて変形する前記規則的パターンの画像を除去し、
前記規則的パターンの画像が除去された撮像画像に基づいて、前記検査対象の欠陥を検出することを特徴とする欠陥検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−2307(P2010−2307A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−161640(P2008−161640)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【出願人】(000108627)タカノ株式会社 (250)
【Fターム(参考)】