説明

残存容量不足警告装置

【課題】警告を受けた場合により高い選択自由度を持ってユーザが対処することができる車両の電源の残存容量不足警告装置を提供すること。
【解決手段】本発明による残存容量不足警告装置1は、
内燃機関により駆動される車両に搭載される電源の残存容量の不足をユーザに警告する残存容量不足警告装置であって、
渋滞区間を検出する渋滞区間検出手段4と、前記渋滞区間を走行した場合の前記電源の残存容量を予測する残存容量予測手段3と、当該残存容量予測手段3により予測された前記渋滞区間を走行した場合の前記電源の残存容量が、前記車両が前記渋滞区間を脱出する前に所定値以下となる場合にユーザに警告を発する警告手段3とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関により駆動される車両に搭載される電源の残存容量の不足を警告する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に車両は、スタータモータ制御装置、灯具制御装置、エンジン制御装置等の安全走行に必須の車載機器と、エアコン装置やカーオーディオ装置あるいはカーナビゲーション装置などの快適性あるいは利便性のために供せられる車載機器とを搭載しており、これらの車載機器は、ともにバッテリ等の電源に接続され、当該バッテリは内燃機関により駆動される発電機つまりはオルタネータにより充電されている。
【0003】
ところが、車両が渋滞区間を走行する場合には、オルタネータによる発電量が減り、バッテリから車載機器への放電量が多くなるため、バッテリの残存容量の不足が発生する。
【0004】
このため、例えば、特許文献1に記載されたような車載電源監視装置が提案されている。この車載電源監視装置では、電源であるバッテリの電圧を監視して基準となる電圧と比較して、基準電圧よりもバッテリの電圧が低下する場合に、安全走行に必須でない車載機器つまりは重要度の低い負荷をユーザがオフすることを促すために警告を発することにより、バッテリの残存容量の不足を防止している。
【特許文献1】特開2003−246246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、このような車載電源監視装置においては、ユーザに警告を発するタイミングが、バッテリの電圧が現実に低下してからであるため、バッテリの残存容量が不足した場合に、安全走行に必須でない車載機器つまりは重要度の低い負荷をオフすることしかユーザが採り得る選択肢がなく、警告を受けた場合の対処に対してユーザの選択自由度が低いという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑み、警告を受けた場合により高い選択自由度を持ってユーザが対処することができる車両の電源の残存容量不足警告装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の問題を解決するため、本発明による残存容量不足警告装置は、
内燃機関により駆動される車両に搭載される電源の残存容量の不足をユーザに警告する残存容量不足警告装置であって、
渋滞区間を検出する渋滞区間検出手段と、前記渋滞区間を走行した場合の前記電源の残存容量を予測する残存容量予測手段と、当該残存容量予測手段により予測された前記渋滞区間を走行した場合の前記電源の残存容量が、前記車両が前記渋滞区間を脱出する前に所定値以下となる場合にユーザに警告を発する警告手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
ここで、前記電源の前記渋滞区間進入直前若しくは直後の残存容量及び放電電流を検出する状態検出手段と、前記渋滞区間走行中の車速を検出する車速検出手段を備えるとともに、当該残存容量予測手段が、前記渋滞区間を走行した場合の前記電源の残存容量を、前記状態検出手段が検出した前記渋滞区間進入直前若しくは直後の残存容量から、前記渋滞区間を走行する時間に前記放電電流を乗じた値を減算することにより予測することが好ましい。これにより、より簡易な手法で前記渋滞区間を走行した場合の前記電源の残存容量を予測することができる。
【0009】
さらに、前記警告手段がユーザに警告を発する場合に、ユーザが採り得る選択肢として、前記電源の負荷のうち所定の負荷のオフ若しくは消費電力の低減、または、前記渋滞区間の回避することをユーザに提示する提示手段を備えることが好ましい。これにより警告を発するだけでなく、ユーザに適切な対処方法を提示することができる。
【0010】
加えて、前記提示手段が、前記電源の残存容量が所定値以下となる地点若しくは時間を提示することが好ましい。これにより、ユーザが前記オフ若しくは前記低減のいずれも行わなかった場合に、前記渋滞区間中のどこから前記所定の負荷のオフ若しくは低減を行えばよいかひいては当該渋滞区間中のどの区間で不便な状態を継続すればよいかを提示することができる。
【0011】
さらに、前記提示手段が、ユーザが前記オフ若しくは前記低減のいずれかを行って前記渋滞区間を走行した場合の前記電源の残存容量が所定値以下となる地点若しくは時間を提示することが好ましい。これにより、ユーザに前記オフ若しくは前記低減による前記電源の残存容量不足の防止効果を認識させることができる。
【0012】
加えて、前記警告手段がユーザに警告を発する場合に、前記渋滞区間の回避ルートを探索する探索手段を備えるとともに、前記渋滞区間の回避ルートをユーザに表示する表示手段を備えることが好ましい。これにより、ユーザが前記渋滞区間を回避する選択を行う場合に、具体的にどの回避ルートを選択すればよいかを表示することができる。
【0013】
ここで、前記表示手段が前記回避ルートは前記電源の残存容量不足を回避するためのものであることを明示することが好ましい。これにより当該回避ルートが単なる渋滞区間回避ではないことをユーザに認識させることができる。
【0014】
さらに、前記警告手段がユーザに警告を発する場合に、前記電源の負荷のうち所定の負荷のオフを行うオフ手段を備えることが好ましい。これにより、ユーザの操作の煩雑さを廃することができる。
【0015】
ここで、前記オフ手段が前記所定の負荷のオフを行う前に、ユーザに当該オフの可否の判定を促す報知を行う報知手段と、当該報知に基づきユーザが前記オフ手段を機能させるか否かを選択可能な選択手段を備えることが好ましい。これにより、自動的に当該負荷をオフするかどうかについてユーザに選択肢を持たせてユーザの意思を尊重することができる。
【0016】
あるいは、前記警告手段がユーザに警告を発する場合に、前記電源の負荷のうち所定の負荷の消費電力の低減を行う低減手段を備えることが好ましい。これによってもユーザの操作の煩雑さを廃することができる。
【0017】
ここで、前記低減手段が前記所定の負荷の消費電力の低減を行う前に、ユーザに当該低減の可否の判定を促す報知を行う付加報知手段と、当該報知に基づきユーザが前記低減手段を機能させるか否かを選択可能な付加選択手段を備えることが好ましい。これによっても自動的に当該負荷の消費電力の低減を行うかどうかについてユーザに選択肢を持たせてユーザの意思を尊重することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電源の残存容量の不足についての警告を現実に当該残存容量が不足する前にユーザが受けることができるので、当該警告をユーザが受けた場合により高い選択自由度の対処を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明に係る残存容量不足警告装置の一実施形態を示すブロック図であり、図2は本発明に係わる残存容量不足警告装置を適用可能な車両用電源システムを示す模式図である。
【0021】
残存容量不足警告装置1は、図示しないエンジンにより駆動される車両に搭載されるバッテリの残存容量の不足をユーザに警告する残存容量不足警告装置であり、渋滞区間を検出する渋滞区間検出手段であるカーナビゲーションECU2と、渋滞区間を走行した場合の前記電源の残存容量を予測する残存容量予測手段としての警告ECU3とを備え、警告ECU3は予測された渋滞区間を走行した場合のバッテリの残存容量が、車両が渋滞区間を脱出する前に所定値以下となる場合にユーザに警告を発する警告手段としても機能する。
【0022】
カーナビゲーションECU2にはGPS受信アンテナ4と、IMU(イナーシャメジャメントユニット)5と、ステアリングセンサ6と、ディスプレイ7と、スピーカ8と、タッチパネル9と、受信器10と、データベース11が接続され、さらに、ABS(アンチロックブレーキシステム)12がCANあるいはFrexRay等の通信規格により接続される。
【0023】
警告ECU3はCANあるいはFrexRay等の通信規格により前述したカーナビゲーションECU2に接続され、図示しないバッテリの状態(電圧、充放電電流、温度、残存容量)を検出する状態検出センサ13が接続される。
【0024】
状態検出センサ13は、図2に示すような車両用電源システム14を構成するバッテリ15に設けられ、バッテリ15の正極側には図示しないエンジンにより駆動されるオルタネータ16が接続され、さらに、バッテリ15の正極側には、負荷となる車載機器、例えば、エンジン制御装置17、ヘッドライトやテールライト等の灯具制御装置18、スタータモータ制御装置19、カーオーディオ装置20、エアコン装置21、カーナビゲーション装置22が接続される。なお各装置の接地側の図示は省略している。
【0025】
GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)受信アンテナ4は、地球上空に打ち上げられた複数の軍事衛星の内三個の軍事衛星からの電波を受信し、これらの電波をもとに、カーナビゲーションECU2は、三角測量の原理で自車の位置つまりは経度と緯度を測定する。なお、経度と緯度に加え高度も測定する場合には四個の軍事衛星を用いる。
【0026】
ここで、IMU5は車両のヨーレートを検出するものであり、ステアリングセンサ6は車両の操舵装置に設けられて操舵角を検出するものである。タッチパネル9はユーザが目的地等の探索条件を入力する入力装置であり、データベース11はCD−ROMやDVD−ROM等の記憶媒体により構成され、表示用の地図情報と、探索用の地図情報を格納し記憶している。ディスプレイ7は入力された目的地をもとにカーナビゲーションECU2が探索した探索ルートを表示用の地図情報とともに表示するものである。また、ABS12は制動時の車輪のロックを防止する装置であり、その制御に用いるための車速を図示しない車輪速センサから取得している。
【0027】
さらに、受信器10は光あるいは電波ビーコンに準拠したものであり、VICS(Vehicle Information & Communication System:道路交通情報システム)からの道路情報を受信する。つまり受信器10は渋滞区間検出手段として機能する。VICSは、警察が収集した一般路の情報と道路公団が収集した高速道路の情報がVICSセンターに送られて、そこで編集された情報がFM多重放送、電波ビーコンあるいは光ビーコンにより発信されるものである。VICSの発信する情報は渋滞情報(渋滞区間とその距離)が主であるが、自車の現在地からの所要時間、交通規制、速度規制、チェーン規制、駐車場情報、地震・津波などの緊急情報も含む。送信の方式としては、FM多重放送(NHKのFMを利用した広域通信方法)、電波ビーコン(主に高速道路に設置された通信方法)、光ビーコン(赤外線を利用した通信方法で主要一般道路に設置)という三つがあり、情報送信方法それぞれに異なる受信器が必要となるが、光あるいは電波ビーコンに準拠した受信器がないと、DRG(Dynamic Route Guidance)という渋滞区間回避ルートの探索はできないため、受信器10は前述したように光あるいは電波ビーコンに準拠したものとする。なお、VICSの発信する情報は、文字表示、簡易図形表示、地図表示の三方法により表示される。
【0028】
上述したGPS受信アンテナ4を用いた自車の位置の測定は、軍事衛星からの電波を利用する特性上、高層ビルの谷間に自車が位置する場合やトンネル内を自車が走行している場合、あるいは、高架橋の下を自車が走行している場合などでは電波をGPS受信アンテナ4が受信できないため、自車の位置が測定できないという問題が生じる。このため、上述したようなGPS受信アンテナ4が電波を受信できない場合には、カーナビゲーションECU2は、ABS12が検出した車速とIMU5が検出したヨーレート、ステアリングセンサ6が検出した操舵角をもとにして、自車の移動距離と方向を計算して自車の位置を測定し、GPS受信アンテナ4を用いた自車の位置の測定と併せて、トータルの自車位置の測定の精度を高めている。なお、車速はABS12から取得することに限られず、例えばVSC(Vehicle Dynamic Control)やECB(電子制御ブレーキ)などを搭載した車両であればそれらの装置から取得することも可能である。
【0029】
そして、カーナビゲーションECU2は、データベース11内の表示用の地図情報と、上述した方法により測定した自車の位置と、タッチパネル9により入力された目的地と、受信器10により受信した渋滞区間とを併せてディスプレイ7に表示する。
【0030】
以上のように構成される残存容量不足警告装置1において、状態検出センサ13がバッテリ15の渋滞区間進入直前(図3(a))若しくは直後(図3(b))の残存容量b(Ah)及び放電電流c(A)を検出し、ABS12が渋滞区間進入直前若しくは直後の車速v(km/h)を渋滞区間走行中の車速と見なして検出して、警告ECU3が、渋滞区間を走行した場合のバッテリ15の残存容量d(Ah)を、状態検出センサ13が検出した渋滞区間進入直前若しくは直後の残存容量b(Ah)と放電電流c(A)から予測する。図4に示すように、車両が渋滞区間に進入する時刻をt1、車両が渋滞区間から脱出する時刻をt2、時刻をtとすると、残存容量d(Ah)はd=b−c×(t−t1)で表される。ここで、残存容量d(Ah)が所定値e(Ah)となる時刻をteとすると、te−t1=(b−e)/cとなる。渋滞区間の走行時間t2−t1(h)は受信器10が受信した渋滞区間長k(km)を車速v(km/h)で除した値k/v(h)で計算される。つまり、t2−t1=k/vとなる。この二つの式からt1を消去すると、te=t2+((b−e)/c−k/v)となる。もちろん、予測方法はこれに限られず、残存容量b(Ah)の微分値により残存容量d(Ah)を予測してもよい。さらに渋滞区間走行中の車速は受信器10から受信した渋滞情報に含まれる渋滞区間中に位置する他車の平均速度から推定してもよい。
【0031】
こうして予測された時刻teが図4に示すように、時刻t2以下となる場合、つまりは、渋滞区間を走行した場合のバッテリ15の残存容量d(Ah)が、車両が渋滞区間を脱出する前に所定値e(Ah)以下となる場合には、警告手段としての警告ECU3がカーナビゲーションECU2を介して、スピーカ8から警報音を出力させて、ユーザに警告を発する。もちろん、時刻teが図5に示すように、時刻t2より大きくなる場合は、渋滞区間を走行した場合のバッテリ15の残存容量d(Ah)が、車両が渋滞区間を脱出する前に所定値e(Ah)以下とはならないので、警告ECU3はユーザに対して警告は行わない。
【0032】
加えて、警告ECU3がスピーカ8によりユーザに警告を発する場合に、提示手段としてのカーナビゲーションECU2が警告ECU3の指令に基づき、ユーザが採り得る選択肢として、バッテリ15の負荷のうち重要度の低い所定の負荷(例えば、カーオーディオ装置20、エアコン装置21、カーナビゲーション装置22)のオフ若しくは消費電力の低減、渋滞区間の回避することをディスプレイ7による画像またはスピーカ8による音声を用いてユーザに提示する。
【0033】
さらに、本実施例では以下のような制御を行う。これらを具体的なノード(地点)とリンク(経路)からなる経路図であるディスプレイ7の画面図6を用いて説明する。
【0034】
図6中黒丸はノードを示し、実線はリンクを示す。図6に示すように、自車の測定した位置が地点Aで、前述したタッチパネル9により入力した目的地が地点Bであるとした場合に、カーナビゲーションECU2が最短距離あるいは最短時間の経路として経路ACDEFGHIBを探索して、ディスプレイ7に表示してユーザがそれに従って運転しており、受信器10により受信した渋滞情報によれば当該最短経路の地点Aから地点Iまでが渋滞区間であり、その渋滞区間をカーナビゲーションECU2はディスプレイ7に例えば斜線にて表示している。
【0035】
この場合において前述したように、警告ECU3がユーザに警告を出しており、なおかつ、ユーザが前記オフあるいは前記低減のいずれも行わずに渋滞区間を走行しようとする場合に、カーナビゲーションECU2が、バッテリ15の残存容量が所定値e(Ah)以下となる地点R(あるいは現在時刻からの時間t3)を予測して提示する。
【0036】
例えば、状態検出センサ13が検出したバッテリ15の渋滞区間進入直前若しくは直後の残存容量がb(Ah)で放電電流がc(A)であり、ABS12が検出した渋滞区間進入直前若しくは直後の車速がv(km/h)である場合には、t3=(b−e)/c(h)となり、地点Rは自車位置からv×t3(km)進んだ地点として予測できる。
【0037】
さらに、カーナビゲーションECU2が、ユーザが前記オフ若しくは前記低減のいずれかを行って渋滞区間を走行しようとする場合に、バッテリ15の残存容量が所定値e(Ah)以下となる地点S(あるいは現在時刻からの時間t4)を提示する。
【0038】
例えば、状態検出センサ13が検出したバッテリ15の渋滞区間進入直前若しくは直後の残存容量がb(Ah)で、ユーザが前記オフ若しくは前記低減のいずれかを行った場合の状態検出センサ13が検出した放電電流がf(A)(つまりf<c)であり、ABS12が検出した渋滞区間進入直前若しくは直後の車速がv(km/h)である場合には、t4=(b−e)/f(h)となり、地点Rは自車位置からV×t4(km)進んだ地点として予測できる。
【0039】
上述したことに加えて、警告ECU3がユーザに警告を発する場合に、探索手段としてのカーナビゲーションECU2が渋滞区間の回避ルートACJKLOPQBを探索するとともに、カーナビゲーションECU2が表示手段としても機能して、ディスプレイ7により渋滞区間の回避ルートACJKLOPQBをユーザに例えば二重線にて表示する。
【0040】
さらに、カーナビゲーションECU2はディスプレイ7の画像あるいはスピーカ8による音声を用いて、前記回避ルートACJKLOPQBが前記電源の残存容量不足を回避するためのものであることを明示する。
【0041】
以上述べた本発明による残存容量不足警告装置の制御内容を図7に示すフローチャートを用いて説明する。
【0042】
S1において、警告ECU3が車速を検出し、S2においてカーナビゲーションECU2が渋滞区間を検出し、S3においてカーナビゲーションECU2が自車の位置を測定する。S4において自車の位置と渋滞区間および車速から、自車が渋滞区間を走行中であるかを判定し、走行中であればS5にすすみ、走行中でなければ制御を終了する。S5において、警告ECU3がバッテリ15の残存容量を検出し、S6においてバッテリ15の放電電流を検出した後、S7において警告ECU3が上述した方法を用いて渋滞区間走行中のバッテリ15の残存容量を予測する。S8において渋滞区間走行中のバッテリ15の残存容量が、車両が渋滞区間を脱出する前に所定値以下となると判定される場合には、S9にすすんで警告ECU3はスピーカ8により警報音を出してユーザに対して警告を行い、S8において所定値以下にならないと判定される場合には制御を終了する。
【0043】
S9において警告を行った後は、S10においてナビゲーションECU2がディスプレイ8によりユーザが採り得る対処の選択肢を提示し、S11においてナビゲーションECU2がディスプレイ8により、ユーザが重要度の低い所定の負荷のオフ若しくは消費電力の低減を行わずに渋滞区間を走行した場合に、バッテリ15の残存容量が所定値以下となる地点を提示し、S12においてナビゲーションECU2がディスプレイ8によりユーザが重要度の低い所定の負荷のオフ若しくは消費電力の低減を行って渋滞区間を走行した場合に、バッテリ15の残存容量が所定値以下となる地点を提示する。さらに、ナビゲーションECU2が渋滞区間の回避ルートを探索して、ディスプレイ7により回避ルートをユーザに表示し、S14において、当該回避ルートがバッテリ15の残存容量不足を回避するためのものであることを、ディスプレイ7を用いて例えば、図6に示すように「経路ACJKLOPQBはバッテリの残存容量不足を回避するための回避ルートです」というテキストを表示することにより明示する。
【0044】
これらのことにより、ユーザは、バッテリ15の残存容量の不足についての警告を現実に当該残存容量が不足する前に受けることができるので、当該警告をユーザが受けた場合により高い選択自由度の対処を行うことができる。
【0045】
これとともに、残存容量不足警告装置1の提示、表示に基づき、バッテリ15の残存容量の不足に対して適切な対処を行うことができるので、よりユーザフレンドリーな車両とすることができる。さらに、重要度の低い所定の負荷のオフ若しくは消費電力の低減についての効果も確認できるとともに、回避ルートについても単なる渋滞区間回避のものではなく、バッテリ15の残存容量不足に対応するものであることが明示されるので、ユーザが運転するに当たっての違和感や不快感を極力抑制することができる。
【0046】
なお、本実施例では残存容量不足警告装置1をカーナビゲーションECU2と警告ECU3を組み合わせて構成したが、カーナビゲーションECU2にすべての機能、つまりは残存容量予測手段、警告手段、探索手段、提示手段、表示手段を持たせて、警告ECU3を廃した構成とすることもできる。
【0047】
また本実施例では、カーナビゲーションECU2により最短時間あるいは最短距離の経路を探索した後、バッテリ15の残存容量の不足を予測しているが、本発明に係わる残存容量不足警告装置1の適用はこのケースに限られるものではなく、カーナビゲーションECU2の探索機能をオフとした状態でユーザが車両を運転していて、その前方に渋滞区間が存在して進入した場合にも適用することができる。つまり、カーナビゲーションECU2により常に渋滞区間の回避ルートを探索してユーザが渋滞区間を回避することを行わない場合には適用可能である。
【実施例2】
【0048】
図8は、本発明に係る残存容量不足警告装置の一実施形態を示すブロック図であり、図9は本発明に係わる残存容量不足警告装置を適用可能な車両用電源システムを示す模式図である。
【0049】
残存容量不足警告装置31は、図示しないエンジンにより駆動される車両に搭載されるバッテリの残存容量の不足をユーザに警告する残存容量不足警告装置であり、渋滞区間を検出する渋滞区間検出手段であるカーナビゲーションECU2と、渋滞区間を走行した場合の前記電源の残存容量を予測する残存容量予測手段としての警告ECU3とを備え、警告ECU3は予測された渋滞区間を走行した場合のバッテリの残存容量が、車両が渋滞区間を脱出する前に所定値以下となる場合にユーザに警告を発する警告手段としても機能する。
【0050】
カーナビゲーションECU2にはGPS受信アンテナ4と、IMU(イナーシャメジャメントユニット)5と、ステアリングセンサ6と、ディスプレイ7と、スピーカ8と、タッチパネル9と、受信器10と、データベース11が接続され、さらに、ABS(アンチロックブレーキシステム)12がCANあるいはFrexRay等の通信規格により接続される。
【0051】
警告ECU3はCANあるいはFrexRay等の通信規格により前述したカーナビゲーションECU2に接続され、図示しないバッテリの状態(電圧、充放電電流、温度、残存容量)を検出する状態検出センサ13が接続され、重要度の低い所定の負荷のオフを行うオフ手段および消費電力の低減を行う低減手段としての負荷制御ECU23が同じくCANあるいはFrexRay等の通信規格により接続される。
【0052】
状態検出センサ13は、図9に示すような車両用電源システム14を構成するバッテリ15に設けられ、バッテリ15の正極側には図示しないエンジンにより駆動されるオルタネータ16が接続され、さらに、バッテリ15の正極側には、負荷となる車載機器、例えば、エンジン制御装置17、ヘッドライトやテールライト等の灯具制御装置18、スタータモータ制御装置19、カーオーディオ装置20、エアコン装置21、カーナビゲーション装置22が接続される。なお各装置の接地側の図示は省略している。
【0053】
さらに、エンジン制御装置17、ヘッドライトやテールライト等の灯具制御装置18、スタータモータ制御装置19、カーオーディオ装置20、エアコン装置21、カーナビゲーション装置22はそれぞれ、負荷制御ECU23にCANあるいはFrexRay等の通信規格により接続され、カーオーディオ装置20、エアコン装置21およびカーナビゲーション装置のバッテリ15側にはそれぞれリレーCR1、CR2、CR3が設けられる。
【0054】
なお、それぞれの構成要素の機能については図1に示したものと同一のものについては同じ番号を付して説明は省略する。また、車速、渋滞区間を検出し、自車位置を測定して、渋滞区間を走行中であるかを判定し、バッテリ15の残存容量と放電電流を検出して、渋滞区間走行中のバッテリ15の残存容量を予測し、予測した残存容量が、車両が渋滞区間を脱出する前に所定値以下となる場合にはユーザに警告を発するところまでは、図1に示した残存容量不足警告装置1と同一であるのでその説明も省略する。
【0055】
ここでは、警告ECU3がユーザに警告を発した場合に、負荷制御ECU23を動作させて、重要度の低い所定の負荷(ここではカーオーディオ装置20、エアコン装置21およびカーナビゲーション装置22)のオフ若しくは消費電力の低減を自動的に行うかどうかをユーザに報知する報知手段(付加報知手段)としてディスプレイ7あるいはスピーカ8が用いられ、当該報知に対してユーザが負荷制御ECU23の動作の選択を行う選択手段(付加選択手段)としてタッチパネル9が用いられる。
【0056】
そして、ユーザが負荷制御ECU23の動作の可否つまり重要度の低い所定の負荷のオフ若しくは消費電力の低減を自動的に行うことを可であると判断して、ディスプレイ7あるいはスピーカ8からの報知に対応して、タッチパネル9により負荷制御ECU23の動作を選択すると、負荷制御ECU23からの指令に基づき、重要度の低い所定の負荷の消費電力の低減を行うか、負荷制御ECU23内のスイッチング素子の動作に基づき、重要度の低い所定の負荷であるカーオーディオ装置20、エアコン装置21、カーナビゲーション装置22のオフを行う。ここで、重要度の低い所定の負荷のオフ若しくは消費電力の低減のいずれかを行うかは、渋滞区間走行中のどの位置でバッテリ15の残存容量が所定値以下になるかにより決定する。つまり、渋滞区間を脱出する地点に近い地点で残存容量が所定値以下になる場合にはオフではなく消費電力の低減を選択すればよい。これは負荷制御ECU23が自動的に判定してもよいし、ユーザが判定してもよい。
【0057】
以上述べた本発明による残存容量不足警告装置の制御内容を図10に示すフローチャートを用いて説明する。
【0058】
S21において、警告ECU3が車速を検出し、S22においてカーナビゲーションECU2が渋滞区間を検出し、S23においてカーナビゲーションECU2が自車の位置を測定する。S24において自車の位置と渋滞区間および車速から、自車が渋滞区間を走行中であるかを判定し、走行中であればS25にすすみ、走行中でなければ制御を終了する。S25において、警告ECU3がバッテリ15の残存容量を検出し、S26においてバッテリ15の放電電流を検出した後、S27において警告ECU3が上述した方法を用いて渋滞区間走行中のバッテリ15の残存容量を予測する。S28において渋滞区間走行中のバッテリ15の残存容量が、車両が渋滞区間を脱出する前に所定値以下となると判定される場合には、S29にすすんで警告ECU3はスピーカ8により警報音を出してユーザに対して警告を行い、S28において所定値以下にならないと判定される場合には制御を終了する。
【0059】
S30において、重要度の低い所定の負荷のオフ若しくは消費電力の低減を負荷制御ECU23が自動的に行うことに対する可否の判断を促す報知をディスプレイ7またはスピーカ8により行い、S31にこの報知に応じてユーザがタッチパネル9により負荷制御ECU23の動作を選択すると、S32においてユーザの判断が可であると判定されて、S33において、重要度の低い所定の負荷のオフ若しくは消費電力の低減が、負荷制御ECU23の動作に基づき自動的に行われる。
【0060】
本実施例によれば、渋滞区間走行中のバッテリ15の残存容量が、車両が渋滞区間を脱出する前に所定値以下になる場合に、警告を行うのみならず、ユーザの了解のもとに、重要度の低い所定の負荷のオフ若しくは消費電力の低減を自動的に行うことができるので、ユーザの労力を極力低減することができる。
【0061】
なお、本実施例においても残存容量不足警告装置31をカーナビゲーションECU2と警告ECU3を組み合わせて構成したが、カーナビゲーションECU2にすべての機能、つまりは残存容量予測手段、警告手段、探索手段、提示手段、表示手段を持たせて、警告ECU3を廃した構成とすることもできる。
【0062】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、内燃機関により駆動される車両の電源の残存容量の不足を検出してユーザに警告する装置に関するものであり、特には渋滞区間を走行している場合に、残存容量が現実に不足する前にユーザに警告することができるので、乗用車、トラック、バス等の様々な車両に適用して有益なものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る残存容量不足警告装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る残存容量不足警告装置を適用し得る車両用電源システムの一例を示す模式図である。
【図3】渋滞区間と自車との位置関係を示す模式図である。
【図4】本発明に係る残存容量不足警告装置の残存容量の予測方法を示す模式図である。
【図5】本発明に係る残存容量不足警告装置の残存容量の予測方法を示す模式図である。
【図6】本発明に係る残存容量不足警告装置の一実施形態を示す模式図である。
【図7】本発明に係る残存容量不足警告装置の一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係わる残存容量不足警告装置の他の実施形態を示すブロック図である。
【図9】本発明に係る残存容量不足警告装置を適用し得る車両用電源システムの一例を示す模式図である。
【図10】本発明に係る残存容量不足警告装置の一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
1 残存容量不足警告装置案内装置
2 カーナビゲーションECU
3 警告ECU
4 GPSアンテナ
5 IMU
6 ステアリングセンサ
7 ディスプレイ
8 スピーカ
9 タッチパネル
10 受信器
11 データベース
12 ABS
13 状態検出センサ
14 車両用電源システム
15 バッテリ
16 オルタネータ
17 エンジン制御装置
18 灯具制御装置
19 スタータモータ制御装置
20 カーオーディオ装置
21 エアコン装置
22 カーナビゲーション装置
23 負荷制御ECU
31 残存容量不足警告装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関により駆動される車両に搭載される電源の残存容量の不足をユーザに警告する残存容量不足警告装置であって、
渋滞区間を検出する渋滞区間検出手段と、前記渋滞区間を走行した場合の前記電源の残存容量を予測する残存容量予測手段と、当該残存容量予測手段により予測された前記渋滞区間を走行した場合の前記電源の残存容量が、前記車両が前記渋滞区間を脱出する前に所定値以下となる場合にユーザに警告を発する警告手段とを備えることを特徴とする残存容量不足警告装置。
【請求項2】
前記電源の前記渋滞区間進入直前若しくは直後の残存容量及び放電電流を検出する状態検出手段と、前記渋滞区間走行中の車速を検出する車速検出手段を備えるとともに、当該残存容量予測手段が、前記渋滞区間を走行した場合の前記電源の残存容量を、前記状態検出手段が検出した前記渋滞区間進入直前若しくは直後の残存容量から、前記渋滞区間を走行する時間に前記放電電流を乗じた値を減算することにより予測することを特徴とする請求項1に記載の残存容量不足警告装置。
【請求項3】
前記警告手段がユーザに警告を発する場合に、ユーザが採り得る選択肢として、前記電源の負荷のうち所定の負荷のオフ若しくは消費電力の低減、または、前記渋滞区間の回避することをユーザに提示する提示手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の残存容量不足警告装置。
【請求項4】
前記提示手段が、前記電源の残存容量が所定値以下となる地点若しくは時間を提示することを特徴とする請求項1に記載の残存容量不足警告装置。
【請求項5】
前記提示手段が、ユーザが前記オフ若しくは前記低減のいずれかを行って前記渋滞区間を走行した場合の、前記電源の残存容量が所定値以下となる地点若しくは時間を提示することを特徴とする請求項3に記載の残存容量不足警告装置。
【請求項6】
前記警告手段がユーザに警告を発する場合に、前記渋滞区間の回避ルートを探索する探索手段を備えるとともに、前記渋滞区間の回避ルートをユーザに表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の残存容量不足警告装置。
【請求項7】
前記表示手段が前記回避ルートは前記電源の残存容量不足を回避するためのものであることを明示することを特徴とする請求項6に記載の残存容量不足警告装置。
【請求項8】
前記警告手段がユーザに警告を発する場合に、前記電源の負荷のうち所定の負荷のオフを行うオフ手段を備えることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の残存容量不足警告装置。
【請求項9】
前記オフ手段が前記所定の負荷のオフを行う前に、ユーザに当該オフの可否の判定を促す報知を行う報知手段と、当該報知に基づきユーザが前記オフ手段を機能させるか否かを選択可能な選択手段を備えることを特徴とする請求項8に記載の残存容量不足警告装置。
【請求項10】
前記警告手段がユーザに警告を発する場合に、前記電源の負荷のうち所定の負荷の消費電力の低減を行う低減手段を備えることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一項に記載の残存容量不足警告装置。
【請求項11】
前記低減手段が前記所定の負荷の消費電力の低減を行う前に、ユーザに当該低減の可否の判定を促す報知を行う付加報知手段と、当該報知に基づきユーザが前記低減手段を機能させるか否かを選択可能な付加選択手段を備えることを特徴とする請求項10に記載の残存容量不足警告装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−276665(P2007−276665A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−106461(P2006−106461)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】