説明

液処理装置および液処理方法

【課題】異なる温度の二つの液を、それぞれ、所望の温度で吐出することができる処理装置を提供する。
【解決手段】処理装置10は、第1の液を吐出する吐出開口30aを有した第1供給ライン30と、第2の液を吐出する吐出開口45aを有した第2供給ライン45と、第1および第2の供給ラインの吐出開口を支持する支持部材60を有した処理ユニット50と、を有する。支持部材は、前記仕切り部材63を有する。第1および第2供給ラインの一方が仕切り部材の一側を延び、他方が仕切り部材の他側を延びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに温度の異なる第1の液および第2の液を用いて被処理体を処理する液処理装置および液処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液を用いて被処理体を処理する液処理装置および液処理方法が広く知られている。液を用いた処理においては、多くの場合、複数種類の液が被処理体に向けて吐出される。また、処理に用いられる液を加熱することもよく行われている(例えば、特許文献1)。そして、一つの被処理体の処理に、例えば加熱された液と加熱されていない液とのように、異なる温度の液が用いられるようになることもある。
【0003】
昨今においては、被処理体を処理する液処理装置の多くが、複数の液供給ラインを設けられており、且つ、この液供給ラインを介して供給される液の温度が種々の温度に設定され得るようになっている。また、異なる液を用いた処理を被処理体に対して連続的に行っていくことを可能とするため、通常、複数の供給ラインは並行した経路をとり、且つ、各液供給ラインの液を吐出するための吐出開口は並べて配置されている。
【0004】
ところで、一般的に、処理に用いられる液の温度が高いと、当該液による反応が活性化され、処理が進行しやすくなる。したがって、処理に用いられる液を加熱することによって、処理時間を短時間化させるといった利点を期待することができる。その一方で、処理に用いられる液の温度を一定に保つことが、被処理体間における処理の均一化を確保する上で非常に重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−123393
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、多くの液処理装置において、複数の液供給ラインは、概ね並行して延びている。このため、この複数の供給ラインに互いに異なる温度の液が供給されると、異なる温度の液間で熱交換が行われてしまう。この結果、所望の温度に調節した液を供給ラインに送り込むことができていたとしても、実際に吐出開口から吐出され処理に用いられる液は、期待した温度とは異なる温度をとるようになる。このように処理に用いられる液体の温度が変動すると、被処理体に対する処理の進行度合いを安定させることができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による液処理装置は、液を用いて被処理体を処理する液処理装置において、
第1の液を供給する第1の供給ラインであって、前記第1の液を吐出する吐出開口を有した第1の供給ラインと、
前記第1の液とは異なる温度の第2の液を供給する第2の供給ラインであって、前記第2の液を吐出する吐出開口を有した第2の供給ラインと、
前記第1の供給ラインおよび前記第2の供給ラインを支持する支持部材を有し、前記第1の液および前記第2の液を用いて被処理体を処理し得るように構成された処理ユニットと、を有し、
前記支持部材は仕切り部材を有し、前記第1の供給ラインおよび前記第2の供給ラインの一方が、前記仕切り部材の一側を延び、前記第1の供給ラインおよび前記第2の供給ラインの他方が、前記仕切り部材の他側を延びている。
【0008】
本発明の一態様による液処理方法は、液を用いて被処理体を処理する方法であって、
第1の供給ラインから供給される第1の液を用いて被処理体を処理する工程と、
前記第1の液を用いて被処理体を処理する工程の前または後に実施される工程であって、第2の供給ラインから供給される前記第1の液とは温度の異なる第2の液を用いて被処理体を処理する工程と、を有し、
前記第1の液を用いて前記被処理体を処理する際、前記第1の液は、支持部材によって支持された第1の供給ラインの吐出開口から吐出され、
前記第2の液を用いて前記被処理体を処理する際、前記第2の液は、前記第1の供給ラインの前記吐出開口を支持する前記支持部材によって支持された前記第2の供給ラインの吐出開口から吐出され、
前記第1の供給ラインおよび第2の供給ラインの一方は、前記支持部材の少なくとも一部分を構成する仕切り部材の一側を延び、前記第1の供給ラインおよび第2の供給ラインの他方は前記仕切り部材の他側を延びている。
【0009】
本発明によれば、第1供給ラインおよび第2供給ラインの一方が、仕切り部材の一側を延び、第1供給ラインおよび第2供給ラインの他方が、仕切り部材の他側を延びている。したがって、第1供給ライン内の第1液と、第2供給ライン45内の第2液と、の間で熱の移動が生じてしまうことを効果的に抑制することができる。この結果、第1液および第2液の少なくとも一方を用いた被処理体の処理の進行度合いを安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態による液処理装置の全体構成を概略的に示す図である。
【図2】図2は、図1の液処理装置の処理ユニット近傍における配管類を示す図である。
【図3】図3は、図1の液処理装置の処理ユニットを示す縦断面図である。
【図4】図4は、図1の処理ユニットの支持部材を上方から示す図である。
【図5】図5は、図1の液処理装置を用いて実施され得る液処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【図6】図6は、被処理体の液処理を実施している際における図1の液処理装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】図7は、支持部材のアーム(仕切り部材)の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0012】
図1〜図6は、本発明の一実施の形態を説明するための図であり、さらに図7および図8は、図1〜図6に示された実施の形態に対する変形例を説明するための図である。このうち図1は、液処理装置の全体構成を概略的に示す図である。図2は、図1の点線で囲まれた領域を拡大してより詳細に示す図である。図3および図4は、それぞれ、液処理装置に組み込まれた処理ユニットの一つを示す縦断面図および上面図である。
【0013】
なお、以下の実施の形態においては、本発明を、半導体ウエハ(被処理体の一例)の洗浄処理に適用した例を示している。そして、洗浄処理として、薬液を用いた処理、純水を用いた処理および乾燥用液を用いた処理が、被処理体である円板状のウエハに施されていく。このうち、乾燥用液が、薬液および純水よりも高温となるように加熱されて用いられる。しかしながら、当然に、本発明は、ウエハの洗浄への適用に限定されるものではない。
【0014】
図1〜図4に示すように、液処理装置10は、第1の液を供給する第1の液供給機構15と、第2の液を供給する第2の液供給機構40と、その一端が第1の液供給機構15に接続された第1の供給ライン30と、その一端が第2の液供給機構40に接続された第2の供給ライン45と、第1の液および第2の液を用いてウエハWを処理するように構成された処理ユニット50と、を有している。また、液処理装置10は、一端を循環ライン20に接続され、第1の供給ライン30に供給された第1の液を第1の液供給機構15へ戻す戻しライン35を、有している。さらに、液処理装置10は、液処理装置10の各構成要素の動作や液の流路を制御する制御装置12も有している。図示する例において、液処理装置10には、多数(例えば8機)の処理ユニット50が設けられ、各処理ユニット50内に、第1供給ライン30および第2供給ライン45が延び入っている。
【0015】
このうちまず、第1液を処理ユニット50に対して供給する供給系統について説明する。なお、以下の例では、乾燥用液、より具体的にはIPA(イソプロピルアルコール)が、第1液として、供給される。
【0016】
図1に示すように、第1液供給機構15は、環状に形成された循環ライン20と、循環ライン20上に設けられた送出機構(例えば、ポンプ)26と、を有している。このうち循環ライン20は、温度調節された第1液を供給する第1液供給源22と、第1液供給源22から供給された温度調節された第1液が循環し得る循環路24と、を有している。
【0017】
第1液供給源22は、第1液を貯留し得る、例えばタンクからなる、貯留装置22aと、貯留装置22aに温度調節された第1液を補給する補給機構(図示せず)と、を有している。循環路24は、第1液供給源22から供給された第1液が循環し得るように、貯留装置22aに管路の両端を接続することによって、構成されている。
【0018】
なお、第1液供給機構15は、第1供給ライン30を介し、多数の処理ユニット50の各々へ第1液を供給するようになる。そして、第1液供給源22の補給機構は、第1液供給機構15の循環ライン20からの第1液の消費にともなって、循環ライン20に第1液を補給するようになる。一例として、補給機構は、貯留装置22a内の液量に応じて、貯留装置22内へ第1液を自動的に補給するように構成され得る。
【0019】
図示する例において、第1液供給源22は、貯留装置22a内の第1液を温度調節する温度調節機構22bを、さらに有している。すなわち、第1液供給源22は、温度調節した第1液を循環ライン20に補給するだけでなく、循環路24を循環中の第1液を必要に応じて温度調節して再び循環路24に供給するように構成されている。なお、上述したように、本実施の形態においては、温度調節機構22bは、加熱機構として構成され、第1液の温度調節として、第1液を加熱するようになっている。したがって、以下に説明する本実施の形態においては、温度調節機構22bを加熱機構22bとも呼ぶ。
【0020】
送出機構26は、例えばポンプからなり、循環路24上に取り付けられている。送出機構26は、第1液供給源22から循環路24に供給された加熱された第1液が循環路24内を循環するように、第1液を駆動する。したがって、送出機構26によって送り出された第1液は、循環ライン20内を周回して、再び送出機構26まで戻ってくることができる。
【0021】
次に、第1供給ライン30および戻しライン35について説明する。図1に示すように、多数の第1供給ライン30が、循環ライン20から分岐して、対応する処理ユニット50まで延びている。戻しライン35は、各第1供給ライン30に対応して複数設けられている。各戻しライン35は、循環ライン20から対応する第1供給ライン30に流れ込んだ第1液を循環ライン20に戻し得るように構成されている。
【0022】
図2および図3に示されているように、第1供給ライン30は、第1液を吐出する吐出開口30aを有している。吐出開口30aは、処理ユニット50のアーム62に支持されたノズルとして構成されており、後述するように、加熱された第1液が被処理体であるウエハWに向けて吐出開口30aから吐出され得る。
【0023】
図2に示すように、第1供給ライン30は、戻しライン35との接続位置よりも上流側における少なくとも一区間において、複数の管路に分かれて延びている。制御装置12は、複数の管路の開閉を操作することによって、循環ライン20から第1供給ライン30に流れ込む第1液の量を制御するように、構成されている。
【0024】
図2に示す例では、第1供給ライン30は、第1管路31aと、第1管路31aと並行して延びる第2管路31bと、の二つの管路に分けられている。第1管路31aには、開度を手動で予め調節することができる流量調節弁(例えば、ニードル弁)32が、設けられている。また、第1供給ライン30上における、複数の管路31a,31bに分割される区間外の位置であって、戻しライン35との接続位置よりも上流側の位置にも、開度を手動で予め調節することができる流量調節弁37が、設けられている。さらに、図2に示すように、流量調節弁37の近傍における第1供給ライン30上に、第1供給ライン内30内を流れる第1液の量を測定する流量計36が、設けられている。
【0025】
一方、第2管路31bには、流体圧駆動により開閉動作を駆動され得る開閉弁33が設けられている。開閉弁33は、例えば空気圧で開閉動作を駆動されるエアオペバルブから構成されている。この開閉弁33の開閉動作は、制御装置12によって、制御されるようになっている。
【0026】
このような構成によれば、開閉弁33を開閉させることのみによって、二つの異なる流量で第1液が第1供給ライン30を流れるようにすることができる。具体的には、流量調節弁32によって第1管路31aの最大流量がA(l/min)に設定され、流量調節弁37によって第1供給ライン30の最大流量がB(l/min)に設定されているとする。また、第2管路31bが、(B−A)(l/min)以上の流量で液を流し得るように設計されているとする。この例においては、開閉弁33が開いている間、第1供給ライン30をB(l/min)の第1液が流れるようにすることができる。また、開閉弁33が閉じている間、第1液が第1供給ライン30をA(l/min)の流量で流れるようにすることができる。
【0027】
一方、図2および図3に示すように、各戻しライン35の上流側の端部は、流路制御機構38を介して、対応する供給ライン30の途中に接続している。つまり、各戻しライン35は、対応する供給ライン30の循環ライン20との接続する側の端部と、対応する供給ライン30の吐出開口30aと、の間のある位置において、対応する供給ライン30に接続している。制御装置12は、流路制御機構38(より詳細には、後述する流路制御機構38の液供給切り替え弁38a)を制御することにより、第1供給ライン30の吐出開口30aから第1液を吐出するか否かを制御するように構成されている。
【0028】
図示する例では、流路制御機構38は、循環ライン20から第1供給ライン30に流れ込んできた液が、第1供給ライン30をさらに流れて吐出開口30aへ向かう状態と、吐出開口30aに向かうことなく戻しライン35へ向かう状態と、のいずれかの状態を選択的に維持するように構成されている。このような流路制御機構の一具体例として、図示する流路制御機構38は、第1供給ライン30上に設けられ且つ戻しライン35の一端とも接続された三方弁38aと、戻しライン35上に設けられた開閉弁38bと、を有している。三方弁38aおよび開閉弁38bは、共に、流体圧駆動により開閉動作を駆動され得る弁として、例えば空気圧で開閉動作を駆動されるエアオペバルブから構成されている。
【0029】
三方弁38aは、上流側(循環ライン20の側)の第1供給ライン30と、戻しライン35と、を連通させる状態、並びに、上流側の第1供給ライン30と、戻しライン35および下流側(処理ユニット50の側)の第1供給ライン30の両方と、を連通させる状態のいずれかに、維持されるようになっている。すなわち、図示する例において、三方弁38aは、処理ユニット内での被処理体の処理に用いられる液の供給および供給停止を切り替える液供給切り替え弁として、機能する。したがって、流路制御機構38を構成する三方弁38aを、液供給切り替え弁38aとも呼ぶ。
【0030】
制御装置12は、液供給切り替え弁(三方弁)38aの二つの状態の切り替え動作と、開閉弁38bの開閉動作と、を制御する。具体的には、以下のように、液供給切り替え弁38aおよび開閉弁38bの動作は制御される。循環ライン20から第1供給ライン30に流れ込んできた液が第1供給ライン30をさらに流れて吐出開口30aへ向かう状態に流路制御機構38を維持する場合には、液供給切り替え弁38aは三方を開いた状態に保持されるとともに、開閉弁38bは閉鎖した状態に保持される。すなわち、液供給切り替え弁38aが三方を開いた状態に保持されることによって、液供給切り替え弁38aよりも上流側の第1供給ライン30と液供給切り替え弁38aよりも下流側の第1供給ライン30とを結ぶ流路が確保され、被処理体Wの処理に用いられる第1液が処理ユニット50へ供給され得る状態となる。
【0031】
なお、開閉弁38bは、液供給切り替え弁38aと近接して配置されていることが好ましい。液供給切り替え弁38aは三方を開いた状態に保持されるとともに、開閉弁38bは閉鎖した状態において、三方弁38aと開閉弁38bとの間に、第1液が停滞してしまうことがないからである。
【0032】
一方、循環ライン20から第1供給ライン30に流れ込んできた液が戻しライン35へ向かう状態に流路制御機構38を維持する場合には、液供給切り替え弁38aは二方のみを開いた状態に保持されるとともに、開閉弁38bは開放された状態に保持される。すなわち、液供給切り替え弁38aが、液供給切り替え弁38aよりも上流側の第1供給ライン30を戻しライン35のみに接続する状態に維持されることによって、液供給切り替え弁38aよりも上流側の第1供給ライン30と液供給切り替え弁38aよりも下流側の第1供給ライン30とを結ぶ流路が閉鎖され、被処理体Wの処理に用いられる第1液が処理ユニット50へ供給され得ない状態となる。
【0033】
また、図1に示す例では、複数の戻しライン35は、互いに合流して、第1液供給機構15の循環ライン20に接続している。より具体的には、戻しライン35の端部は、循環ライン20の循環路24に接続している。このように複数の戻しライン35は、互いに合流して、循環ライン20に接続している場合、複数の戻しライン35を設置するために必要となるスペースを効果的に節約することが可能となる。ただし、このような例に限られず、複数の戻しライン35が、別個に、第1液供給機構15に接続するようにしてもよいし、また、戻しライン35が、循環路24以外において、例えば貯留装置22において第1液供給機構15に接続し、貯留装置22に第1液を戻すようにしてもよい。
【0034】
図1に示すように、戻しライン35と循環ライン20との接続位置は、複数の第1供給ライン30のうちの循環ライン20の最下流側の第1供給ライン30と、循環ライン20と、の接続位置よりも、下流側に位置している。戻しライン35と循環ライン20との接続位置と、循環ライン20と最下流側の第1供給ライン30との接続位置と、の間における循環ライン20上に、第1リリーフ弁39aが設けられている。また、戻しライン35上、好ましくは、循環ライン20との接続位置近傍における戻しライン35上に、第2リリーフ弁39bが設けられている。そして、第1リリーフ弁39aの設定圧力は、第2リリーフ弁39bの設定圧力よりも高くなっている。すなわち、戻しライン35内の第1液の圧力は、第1供給ライン30と接続している領域における循環ライン20内の第1液の圧力よりも低くなるように、設定される。
【0035】
なお、循環ライン20における上流側および下流側とは、加熱された第1液の循環ライン20内における液流を基準として、判断される。すなわち、第1液供給源22から循環路24に供給された第1液の循環ライン20内での液流を基準とし、貯留装置22と循環路24をなす管路との接続位置が、循環ライン20における最上流側となり、当該接続位置(最上流側位置)から第1液の液流に沿った向きが、下流に向かう向きとなる。
【0036】
次に、第2の液を処理ユニット50に対して供給する供給系統について説明する。上述したように、第2液は、第2液供給機構40から供給される。第2液供給機構40と各処理ユニット50の間には、第2供給ライン45がそれぞれ設けられている。図3および図4に示されているように、第2供給ライン45は、第2液を吐出する吐出開口45aを有している。吐出開口45aは、処理ユニット50のアーム62に支持されたノズルとして構成されている。
【0037】
ウエハWの洗浄装置として構成された本実施の形態において、第2液供給機構40は、例えば、ウエハWの薬液処理に用いられる薬液(希フッ酸、アンモニア過水(SC1)、塩酸過水(SC2))、並びに、ウエハWのリンス処理に用いられる水、とりわけ純水(DIW)を、第2液として供給し得るようになっている。
【0038】
なお、第2液を処理ユニット50に対して供給する供給系統については、既知の供給系統を用いることができ、ここでは、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0039】
次に、第1液および第2液を用いてウエハWを処理する処理ユニット50について説明する。図3および図4に示すように、各処理ユニット50は、ウエハWを保持する保持機構52と、第1供給ライン30の吐出開口30aおよび第2供給ライン45の吐出開口45aを支持する支持部材60と、被処理体に対する処理を行うための処理チャンバーを画定する隔壁54と、有している。
【0040】
図3に示すように、保持機構52は、ウエハWの表面が略水平方向に沿うようにしてウエハWを保持し、円板状の形状からなるウエハWの中心を軸として保持したウエハWを回転させることができるように、構成されている。
【0041】
図3および図4に示すように、支持部材60は、支持した吐出開口30a,45aが、保持機構52に保持されたウエハWに液を供給し得る処理位置(図4において実線で示す位置)と、処理位置からずれた非処理位置(図4において二点鎖線で示す位置)と、の間を移動し得るように、構成されている。
【0042】
図示した例において、支持部材60は、回転可能な筒状の軸部材64と、筒状軸部材64に接続され筒状軸部材64の回転にともなって揺動することができるアーム62と、を有している。第1供給ライン30の吐出開口30aおよび第2供給ライン45の吐出開口45aは、アーム62の一方の端部の領域(先端部の領域)62aに支持されている。アーム62は、他方の端部の領域(基端部の領域)62bにおいて、隔壁54を貫通して延びる筒状軸部材64の一端と接続されている。筒状軸部材64は、円筒状に形成され、その中心軸線を中心として回転可能に保持されている。このような構成によれば、図4に示すように、支持部材60に支持された吐出開口30a,45aは、処理位置として、ウエハWの中心に上方から対面する位置に配置され得る。また、吐出開口30a,45aは、非処理位置として、ウエハWの上方領域から横方向にずれた位置に配置され得る。
【0043】
供給ライン30,45の吐出開口30a,45aが、処理中にウエハWの上方に配置されるようになるアーム62の先端部領域62aに支持されている。このため、図3および図4に示すように、供給ライン30,45の、少なくとも吐出開口30a,45a近傍の一部分は、支持部材60をつたって延びるようになる。本実施の形態において、第1供給ライン30および第2供給ライン45は、概ね並行して、アーム62に沿って延びている。ただし、図3に示すように、第1供給ライン30はアーム62の一側を延び、第2供給ライン45はアーム62の他側を延びている。すなわち、支持部材60のアーム62は、第1供給ライン30および第2供給ライン45の間を延びる仕切り部材63として構成され、第1供給ライン30の経路および第2供給ライン45の通過経路を仕切っている。具体的には、第1供給ライン30は仕切り部材63に支持されながら仕切り部材63の上側を延び、第2供給ライン45は仕切り部材63に支持されながら仕切り部材63の下側を延びている。
【0044】
さらに、図3および図4に示すように、支持部材60は、その一部分を、筒状に形成された筒状部66として構成されている。そして、第1供給ライン30および第2供給ライン45の一方が、支持部材60の筒状部66の内部を通過して対応する液供給機構15,40まで延び、第1供給ライン30および第2供給ライン45の他方が、支持部材60の筒状部66の外部を通って対応する液供給機構15,40まで延びている。
【0045】
具体的には、支持部材60の筒状軸部材64が、筒状部66の部位として形成されている。加えて、筒状軸部材64と接続されたアーム62の基端部領域62bが、すなわち、仕切り部材63の一部分が、筒状部66の部位として形成されている。そして、この筒状部66内を、第2供給ライン45が通過している。詳細には、図3に示すように、第2供給ライン45は、その吐出開口45aが支持されたアーム62の先端部領域62aから基端部領域62bまで、アーム62に形成された筒状部66の内部を通過して延びている。そして、図3に示すように、アーム62の一部分からなる筒状部66の内部と、筒状軸部材64からなる筒状部66内部と、は連通しており、第2供給ライン45は、アーム62の一部分からなる筒状部66の内部から、筒状軸部材64からなる筒状部66の内部に延び入る。その後、図3に示すように、第2供給ライン45は、筒状軸部材64からなる筒状部66の内部を通過して、処理ユニット50の隔壁54を横切っている。
【0046】
一方、図3および図4に示すように、第1供給ライン30は、アーム62の一部分からなる筒状部66の外部を通って、アーム62の先端部領域62aから基端部領域62bまで延びている。第1供給ライン30は、アーム62の基端部領域62bにおいて支持部材60から離間し、隔壁54を貫通している。なお、アーム62(仕切り部材63)の筒状部66として構成されていない部分は、板状に形成されている。上述したように、アーム62(仕切り部材63)の板状に形成されている領域においても、第1供給ライン30および第2供給ライン45は、アーム62(仕切り部材63)を間に挟んで、離間して配置されている。
【0047】
なお、制御装置12には、工程管理者等が液処理装置10を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、液処理装置10の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなる入出力装置が接続されている。また、制御装置12は、液処理装置10で実行される処理を実現するためのプログラム等が記録された記録媒体13にアクセス可能となっている。記録媒体13は、ROMおよびRAM等のメモリ、ハードディスク、CD−ROM、DVD−ROMおよびフレキシブルディスク等のディスク状記録媒体等、既知のプログラム記録媒体から構成され得る。
【0048】
次に、以上のような構成からなる液処理装置10を用いて実行され得る液処理方法の一例について、説明する。以下に説明する液処理方法においては、図5に示すようにして、被処理体としてのウエハWが、一つの処理ユニット50内において、洗浄処理を施される。そして、図5に示す一連の液処理方法のうちの第1液を用いた処理工程S3において、ウエハWは、上述した液処理装置10の第1液供給機構15から供給される加熱された第1液を用いて、処理される。以下においては、まず、図5に示すフローチャートを参照しながら、一つの処理ユニット50内においてウエハWに対して施される液処理方法の概略を説明し、その後に、第1液を用いた処理工程S3を行うことに関連した液処理装置10の動作について説明する。
【0049】
なお、以下に説明する液処理方法を実行するための各構成要素の動作は、予めプログラム記録媒体13に格納されたプログラムに従った制御装置12からの制御信号によって、制御される。
【0050】
図5に示すように、まず、洗浄処理を施されるウエハWが、液処理装置10の各処理ユニット50内へ持ち込まれ、各処理ユニット50内で保持機構52によって保持される(工程S1)。
【0051】
次に、第2液を用いて、ウエハWを処理する工程S2が実施される。第2液を用いた処理の具体例として、以下の処理が行われる。まず、希フッ酸(DHF)が第2液供給機構40から第2液として供給され、ウエハWがエッチング処理される。次に、純水(DIW)が第2液供給機構40から第2液として供給され、ウエハWがリンス処理される。このようにして、二種類の第2液を用いたウエハWの処理が実施される。なお、本例では、第2液供給機構45から供給される第2液は、加熱されることなく処理ユニット50内でのウエハWの処理に用いられる。
【0052】
その後、加熱された第1液用いて、ウエハWを処理する工程S3が実施される(工程S3)。第3液を用いた処理の具体例として、希フッ酸(DHF)によるエッチング処理および純水によるリンス処理がなされたウエハWに対し、45〜60℃程度に加熱されたIPAが供給される。これにより、ウエハW上に残留していた純水がIPAによって置換され、さらに、ウエハW上からIPAが蒸発する。すなわち、加熱されたIPAを用いて、ウエハWの乾燥処理が実施される。IPAを加熱して用いることによって、IPAがウエハW上から蒸発する際に、ウエハWから吸収される熱量を低減することができる。したがって、ウエハWの温度低下を抑制し、ウォーターマークの原因となるウエハW上への結露を生じにくくさせることができる。
【0053】
以上のようにして、一つの処理ユニット50内におけるウエハWの洗浄処理が終了し、処理が終了したウエハWが処理ユニット50から搬出される(工程S4)。
【0054】
次に、加熱された第1液を用いてウエハWを処理する工程S3に関連した液処理装置10の動作について説明する。
【0055】
まず、図6に示すように、加熱された第1液を用いて、処理ユニット内でウエハWを処理する上述の工程S3に先立ち、第1液を準備する工程Sp1および加熱された第1液を用いて予熱する工程Sp2の二つの準備的な工程が、実施される。
【0056】
なお、後述の説明から明らかとなるように、第1液を準備する工程Sp1および加熱された第1液を用いて予熱する工程Sp2の二つの工程は、上述した第2液を用いたウエハWの処理工程S2やウエハWの搬入工程S1に影響を与えるものではない。その一方で、二つの準備工程Sp1,Sp2は、処理ユニット50内で第1液を用いてウエハWを処理する工程S3の前に完了していなければならない。したがって、第1液を準備する工程Sp1および加熱された第1液を用いて予熱する工程Sp2の二つの工程は、上述したウエハWを搬入する工程S1や第2液を用いてウエハWを処理する工程S2に先だって行われてもよいし、これらの工程S1,S2と並行して行われてもよい。
【0057】
まず、第1液を準備する工程Sp1について説明する。この工程Sp1では、別個の処理ユニット50へそれぞれ通じている第1供給ライン30が複数延び出している循環ライン20に、第1液が充填される。具体的には、第1液供給源22の図示しない補給機構から貯留装置22a内に第1液が供給される。貯留装置22aに補給機構から供給される第1液は、好ましくは予め所定の温度に加熱されている。さらに、加熱機構22bが貯留装置22a内に供給された第1液を加熱する。このようにして、循環ライン20の貯留装置22および循環路24に加熱された第1液が充填される。さらに、本例では、第1液の充填の後に又は第1液の充填と並行して、送出機構26が作動し、第1液が循環ライン20内を循環するようになる。
【0058】
なお、以降の工程においては、加熱された第1液が送出機構26の駆動によって第1液供給機構15の循環ライン20内を循環している状態で、第1液供給機構15の循環ライン20から複数の第1供給ライン30のそれぞれへ加熱された第1液が流れ込むようになる。そして、第1液が、第1供給ライン30の吐出開口30aから吐出されて、消費されていく。この間、第1液供給機構15に組み込まれた第1液供給源22の図示しない補給機構が循環ライン20に第1液を補給するとともに、加熱機構22bが循環ライン20内の第1液を加熱して、第1液の温度を所望の温度域内の温度となるように調節し続ける。
【0059】
次に、加熱された第1液を用いて、第1液の処理ユニット50への供給系統が加熱される(工程Sp2)。具体的には、加熱された第1液が第1液供給機構15の循環ライン20内を循環している状態で、第1液を循環ライン20から第1供給ライン30に流し込む。そして、加熱された第1液によって、第1液の流路が、第1液の温度と同じ温度になるまで予熱されるようになる。
【0060】
上述したように、液処理装置10は、第1供給ライン30に流れ込んだ第1液を循環ライン20に戻す戻しライン35を有している。そして、この工程Sp2および上述した直前の工程Sp1の間、第1供給ライン30と戻しライン35との間に設けられた流路制御機構38は、第1供給ライン30の上流側を戻しライン35と連通させている。さらに、第1リリーフ弁39aおよび第2リリーフ弁39bによって、戻しライン35内の第1液の圧力は、循環ライン20内の圧力よりも低くなるように調節されている。この結果、循環ライン20から第1供給ライン30に流れ込んだ第1液は、戻しライン35を介し、再び循環ライン20へ戻される。すなわち、循環ライン20によって構成される第1液の循環経路とは別途に、循環ライン20の一部、第1供給ライン30の一部および戻しライン35を含んで加熱用(本実施の形態では、予熱用)の第2の循環経路が形成され、加熱された第1液がこの第2の循環経路を安定して循環するようになる。
【0061】
加熱された第1液が予熱用循環路を循環することにより、第1液の処理ユニット50への供給系統のうち予熱用の循環経路を構成する部分が、加熱された第1の液の温度と同一の温度まで加熱されるようになる。すなわち、第1供給ライン30の一部および戻しライン35が、加熱された第1の液の温度と同一の温度まで加熱されるようになる。また、流路制御機構38の液供給切り替え弁(三方弁)38aおよび開閉弁38bも、予熱用循環経路上に設けられている。すなわち、この工程Sp2において、熱容量が大きい弁類を予熱することができる。
【0062】
また、この予熱工程Sp2中、第1供給ライン30の第2管路31bに設けられた開閉弁33は開いている。したがって、第1液は、第1管路31aおよび第2管路31bの両方を通過して流れる。循環ライン20から第1供給ライン30に流れ込む第1液の流量は、手動式の流量調節弁37を予め調節しておくことにより、設定され、流量計36で監視される。
【0063】
ところで、本例では、上述した充填工程Sp1においても、液供給切り替え弁(三方弁)38aは、処理ユニット50への第1液の供給を停止するため、第1供給ライン30の上流側を戻しライン35と連通させている。したがって、充填工程Sp1においても、第1供給ライン30の一部および弁38a,38bは、充填されつつある加熱された第1液によって、加熱されることになる。この点において、第1液を準備する工程Sp1と、第1液を用いて第1供給ライン30を予熱する工程Sp2と、は並行して実施されてもよい。
【0064】
予熱工程Sp2の次に、弁38a,38bを切り替えて、第1供給ライン30の吐出開口30aから加熱された第1液を吐出し、上述したウエハWを処理する工程S3が実施される。具体的には、流路制御機構38の液供給切り替え弁38aが、第1供給ライン30の上流側を、戻しライン35とではなく、第1供給ライン30の下流側と連通させるようになる。このとき、処理ユニット50内のウエハWは、保持機構52に保持されるとともに、保持機構52の駆動により回転している。そして、回転中のウエハWに対面する処理位置に支持部材60によって支持された吐出開口30aから、加熱された第1液がウエハWに向けて吐出される。
【0065】
なお、吐出開口30aから第1液が吐出されている間、吐出開口30aがウエハWの中心部に対面する位置からウエハWの周縁部に対面する位置へ走査するように、支持部材60を揺動させてもよい。また、吐出開口30aの近傍に不活性ガス(例えば、窒素)を吐出するための吐出口が設けられ、第1液の吐出とともに不活性ガスが吐出され、さらに、第1液の乾燥が促進されるようにしてもよい。
【0066】
上述したように、第1供給ライン30および液供給切り替え弁38aは、事前に行われた予熱工程Sp2において、加熱された第1液と略同一の温度にまで予熱されている。そして、図3に示すように、予熱用循環路を形成する戻しライン35は、吐出開口30aの近傍において、第1供給ライン30に接続している。
【0067】
なお、この処理工程S3中、第1供給ライン30の第2管路31bに設けられた開閉弁33は閉じている。したがって、第1液は、第1管路31aおよび第2管路31bのうちの第1管路31aのみを通過して流れる。そして、循環ライン20から第1供給ライン30に流れ込む第1液の流量は、手動式の流量調節弁32を予め調節することにより設定され、流量計36で監視される。
【0068】
すなわち、処理ユニット50内においてウエハWの処理が行われていない場合に、第1液は、第1供給ライン30の一区間を構成して並行に延びる複数の管路のうちの、二以上の管路31a,31bを通過して流れる。その一方で、処理ユニット50内においてウエハWの処理が行われている場合には、第1液が、第1供給ライン30の一区間を構成して並行に延びる複数の管路のうちの、前記二以上の管路31a,31bに含まれる一部の管路31aのみを通過して流れる。この結果、第1供給ライン30を予熱している際に各戻しライン35内を流れている第1液の単位時間あたりの量が、ウエハWを処理している際に対応する第1供給ライン30の吐出開口30aから吐出されている第1液の単位時間あたりの量よりも多くなる。
【0069】
このような方法によれば、適切な量の第1液でウエハWを処理することができる。また、予熱時には、第1供給ライン30および戻しライン35を含んで構成される予熱用循環経路に、加熱された第1液を大流量で流し込むことができ、これにより、予熱用循環経路を、第1液の温度と同一の温度まで、短時間で加熱することができる。
【0070】
加えて、第1液を用いてウエハWを処理する際に第1液が通過するようになる管路31aは、予熱時に予熱用循環路を構成する管路であり、処理を開始する際には、第1液と同一の温度まで加熱されている。したがって、第1液を用いたウエハWの処理時における第1液の温度変動を抑制することができ、これにより、ウエハWの処理の程度にバラツキが生じてしまうことを効果的に抑制することができる。
【0071】
ところで、各処理ユニット50には、加熱された第1液が流れる第1供給ライン30と、第1液とは異なる温度の第2供給ライン45と、が延び入っている。そして、第1供給ライン30および第2供給ライン45は、ともに支持部材60によって支持され、概ね並行して延びている。ただし、本実施の形態では、第2供給ライン45が支持部材60の筒状部66の内部を通過して延び、第1供給ライン30が支持部材60の筒状部66の外部を通って延びている。とりわけ、第2供給ライン45は、筒状部66の内部を通過して処理チャンバーを画定する隔壁54を横切り、供給ライン30,45についての経路設定の自由度が処理チャンバー内と比較して格段に高くなる処理チャンバー外へ延び出している。またそもそも、第1供給ライン30および第2供給ライン45の間には、アーム62によって構成された仕切り部材63が延びており、第1供給ライン30の経路と第2供給ライン45の経路とが仕切り部材63によって仕切られている。すなわち、支持部材60のうちの筒状部66が形成されていないアーム62の先端部領域62aにおいて、第1供給ライン30および第2供給ライン45は、アーム62からなる仕切り部材63を挟んで、仕切り部材63の互いに異なる側を延びている。これらのことから、第1供給ライン30内の第1液と、第2供給ライン45内の第2液と、の間での熱移動を極めて効果的に抑制することができる。したがって、第1供給ライン30の吐出開口30aから第1液を期待した温度で吐出することができるとともに、第2供給ライン45の吐出開口45aから第2液を期待した温度で吐出することができる。
【0072】
以上のような第1液を用いたウエハWの処理工程S3は、第1供給ライン30上に設けられた液供給切り替え弁38aが、上流側の第1供給ライン30を戻しライン35に接続し、処理ユニット50への加熱された第1液の供給を停止することによって、終了する。この際、液供給切り替え弁38aの動作に伴い、戻しライン35上の開閉弁38bが閉じる。この結果、第1供給ライン30および戻しライン35を含んだ温度調節用の循環経路(加熱用の循環経路)が再び形成され、循環ライン20から第1供給ライン30に流れ込んだ第1液は、この加熱用の循環経路を流れるようになる。
【0073】
すなわち、図6に示すように、再び、温度調節工程(加熱工程)Sp2が開始される。この加熱工程Sp2は、次に処理されるべきウエハが処理ユニット50へ搬送されるとともに、このウエハWに対する第2液を用いた処理が終了して、次に処理されるべきウエハWに対する第1液を用いて処理(工程S3)が開始されるまで、実施され得る。このように、加熱工程Sp2および第1液を用いた処理工程S3を繰り返すことにより、第1液を用いた処理工程S3間に、第1供給ライン30および液供給切り替え弁38aの温度を維持することができ、この結果、第1液を用いた処理工程S3において、ウエハWに対して供給される第1液の温度変動は効果的に抑制されるようになる。
【0074】
以上のような本実施の形態によれば、循環ライン20から第1供給ライン30に流れ込んだ第1液を循環ライン20に戻す戻しライン35が設けられている。このため、加熱された第1液は、循環ライン20内を循環するだけでなく、第1供給ライン30および戻しライン35を含んで構成される循環経路内も循環することができる。したがって、処理ユニット50で第1液を用いた処理が開始される前に、加熱された第1液を用いて、第1供給ライン30の少なくとも一部を加熱された第1液と同じ温度まで予熱することができる。とりわけ、戻しライン35は、各処理ユニットに通じる第1供給ライン30に対応させて、循環ライン20とは別途に設けられているため、対応する第1供給ライン30の吐出開口30a近傍において当該第1供給ライン30に接続させることができる。これにより、当該処理ユニット50での処理開始時における、第1液の温度低下を効果的に抑制することができる。また、加熱に用いられる液は、第1供給ライン30および戻しライン35を含んで構成される循環経路を循環しているため、第1液の消費量を増加させてしまうことはない。
【0075】
またとりわけ、戻しライン35は、複数の分岐管30のうちの、液供給源22から循環路に供給された液の循環ライン20内での液流を基準とした最下流側の分岐管30と循環ライン20との接続位置よりも下流側の位置において循環ライン20に接続している。したがって、予熱工程Sp2中、温度が低下している可能性がある予熱に用いられた第1液は、直接他の処理ユニット50へ送り込まれて当該処理ユニット50内でのウエハWの処理に用いられることはない。予熱に用いられた第1液は、加熱された液が補給され且つ加熱機構22bが設けられている液供給源22を経由して、再び、循環ライン20からいずれかの第1供給ライン30に流れ込むようになる。このため、液処理装置50には多数の処理ユニット50が設けられ、各処理ユニット50内でウエハWの処理が別々のタイミングで進行していくが、循環ライン20から各第1供給ライン30に供給される第1液の温度を安定させることができる。すなわち、一つの処理ユニット50でのウエハWに対する処理が、他の処理ユニット50で実施されているウエハWの処理に影響を及ぼしてしまうことを抑制することができる。これにより、各処理ユニット50において、加熱された第1液を用いて安定した処理を行うことができ、加熱された第1液を用いたウエハWの処理の程度の変動を、処理ユニット50間で、効果的に抑制することができる。
【0076】
さらに加えて、処理ユニット50でのウエハWの処理に用いられる第1液の供給および供給停止を切り替える液供給切り替え弁38aが、第1供給ライン30から戻しライン35を介して第1液供給機構15へ戻る第1液の予熱用の循環経路上に位置している。処理ユニット50内へ延びていく第1供給ライン30の液供給切り替え弁38aよりも下流側には、通常、弁類をさらに設ける必要はない。したがって、本実施の形態のように、液供給切り替え弁38aは、処理ユニット50への第1供給ライン30上において、最下流側に設けられた弁類となる。このため、処理ユニット50でウエハWの処理が開始する前、および、処理ユニット50でウエハWが処理される合間に、処理ユニット50へ加熱された第1液を供給する第1供給ライン30上のすべての弁類を加熱(予熱)しておくことができる。一般的に弁類は、第1供給ライン30をなす管類と比較して、格段に大きい熱容量を有する。したがって、このような弁類の温度を安定させることができる本実施の形態によれば、従来の装置および方法と比較して、処理ユニット50内での処理に用いられる加熱第1液の温度変動を極めて効果的に抑制することができる。
【0077】
以上のことから、本実施の形態によれば、一つのウエハWを処理している間における加熱された第1液の温度変動を抑制することができるとともに、同一の処理ユニット50内または異なる処理ユニット50内において異なるウエハWを処理する際に用いられる第1液の温度バラツキを抑制することもできる。この結果、ウエハWに対して程度ばらつきの少ない処理を安定して施すことができる。
【0078】
また、本実施の形態によれば、処理ユニット50内でウエハWの処理が行われていない場合に、戻しライン35内を流れる第1液の単位時間あたりの量が、処理ユニット50内でウエハWの処理が行われている場合に第1供給ライン30の吐出開口30aから吐出される第1液の単位時間あたりの量よりも多くなる。したがって、第1供給ライン30および戻しライン35を含んで構成される循環路の予熱を短時間で実施することができる。すなわち、処理ユニット50内において処理が短時間で間欠的に行われるような場合であっても、第1供給ライン30および戻しライン35を含んで構成される循環路を十分に予熱することができ、処理開始時における、第1液の温度低下を効果的に抑制することができる。
【0079】
さらに、本実施の形態によれば、第1供給ライン30および第2供給ライン45の一方が、支持部材60の仕切り部材63の一側を通過して対応する液供給機構15,40まで延び、第1供給ライン30および第2供給ライン45の他方が、支持部材60の仕切り部材63の他側を通過して対応する液供給機構15,40まで延びている。したがって、第1供給ライン30内の第1液と、第2供給ライン45内の第2液と、の間で熱の移動が生じてしまうことを効果的に抑制することができる。この結果、所望の温度で第1液を供給することができるとともに、所望の温度で第2液を供給することができる。
【0080】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、変形の一例について説明する。
【0081】
例えば、上述した実施の形態において、第2供給ライン45が、仕切り部材63によって一部分を構成される筒状部66の内部を延び、第1供給ライン30が当該筒状部66の外部を延びる例を示したが、これ限られない。第1供給ライン30が筒状部66の内部を延び、第2供給ライン45が当該筒状部66の外部を延びるようにしてもよい。さらには、図7に示すように、第1供給ライン30が、第1の筒状部66aの内部を延び、第2供給ライン45が、第1の筒状部66aとは異なる第2の筒状部66bの内部を延びるようにしてもよい。図7に示す変形例においては、第1筒状部66aおよび第2筒状部66bの境界部が仕切り部材63によって形成されている。なお、図7は、支持部材60のアーム62(仕切り部材)の変形例を説明するための図であって、アーム62の長手方向に直交する断面において支持部材60を示す図である。
【0082】
また、上述した実施の形態において、手動で開度を調節し得る流量調節弁37が、第1管路31aと第2管路31bとに分岐する前の第1供給ライン30上に設けられている例を示したが、これに限られず、一例として、図2に二点鎖線で示すように、第2管路31b上に設けてもよい。このような変形例においては、第1管路31aに設けられた流量調節弁32によって、第1管路31aを通過しうる液量が決定され、第2管路31bに設けられた流量調節弁によって、第2管路31bを通過し得る液量が決定される。
【0083】
さらに、上述した実施の形態において、第1供給ライン30の一区間が二つの管路31a,31bに分けられている例を示したが、これに限られない。例えば、第1供給ライン30の一区間が三以上の管路に分けられていてもよい。また同様に、第1供給ライン30の二以上の区間が複数の管路に分かれて延びるようにしてもよい。これらの変形例によれば、閉鎖する又は開放する管路の組み合わせを適宜変更することにより、循環ライン20から第1供給ライン30に流れ込み得る第1液の流量を種々の値に変更することが可能となる。
【0084】
さらに、上述した実施の形態において、第2液が加熱されない例を示したが、これに限られない。第2液が加熱されるようにしても上述した有用な作用効果を期待することができる。
【0085】
さらに、上述した実施の形態において、加熱機構22bが、第1液供給機構15に組み込まれ、貯留装置22内の第1液を加熱する例を示したが、これに限られない。例えば、循環ライン20の循環路24を加熱する、加熱機構がさらに設けられてもよい。また、第1供給ライン30や戻しライン35を加熱する加熱装置がさらに設けられてもよい。
【0086】
さらに、上述した実施の形態において、第2液による処理が最初に行われ、加熱された第1液による処理がその後に行われる例を示したが、これに限られず、加熱された第1液による処理が第2液による処理の前に実施されるようにしてもよい。
【0087】
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
【0088】
さらに、冒頭にも述べたように、本発明を、ウエハの洗浄処理以外の処理にも適用することができ、また、加熱されるべき第1液は乾燥用液以外の液とすることもできる。
【符号の説明】
【0089】
10 液処理装置
12 制御装置
13 記録媒体
15 液供給機構(第1液供給機構)
20 循環ライン
22 液供給機構
22a 貯留装置
22b 温度調節機構(加熱機構)
24 循環路
26 送出機構
30 供給ライン(第1供給ライン)
30a 吐出開口
31a,31b 管路
35 戻しライン
34 開閉弁(液供給切り替え弁)
35a 端部
38 流路制御機構
38a 三方弁(液供給切り替え弁)
38b 開閉弁
38c 流量制御弁
39a 第1リリーフ弁
39b 第2リリーフ弁
40 液供給機構(第2液供給機構)
45 供給ライン(第2供給ライン)
45a 吐出開口
50 処理ユニット
52 保持機構
54 隔壁
60 支持部材
62 アーム
62a 先端部流域
62b 基端部流域
63 仕切り部材
64 軸部材
66 筒状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液を用いて被処理体を処理する液処理装置において、
第1の液を供給する第1の供給ラインであって、前記第1の液を吐出する吐出開口を有した第1の供給ラインと、
前記第1の液とは異なる温度の第2の液を供給する第2の供給ラインであって、前記第2の液を吐出する吐出開口を有した第2の供給ラインと、
前記第1の供給ラインおよび前記第2の供給ラインを支持する支持部材を有し、前記第1の液および前記第2の液を用いて被処理体を処理し得るように構成された処理ユニットと、を有し、
前記支持部材は仕切り部材を有し、前記第1の供給ラインおよび前記第2の供給ラインの一方が、前記仕切り部材の一側を延び、前記第1の供給ラインおよび前記第2の供給ラインの他方が、前記仕切り部材の他側を延びている、液処理装置。
【請求項2】
前記支持部材は、筒状に形成された筒状部を含んでおり、
前記第1の供給ラインおよび前記第2の供給ラインの前記一方が、当該筒状部の内部を延び、前記第1の供給ラインおよび前記第2の供給ラインの前記他方が、前記支持部材の当該筒状部の外部を延びている、請求項1に記載の液処理装置。
【請求項3】
前記処理ユニットは、被処理体の処理チャンバーを画定する隔壁をさらに有し、
前記支持部材の前記筒状部は、前記隔壁を貫通して延び、
前記第1の供給ラインおよび前記第2の供給ラインの前記一方は、当該筒状部の内部を通過して、前記隔壁を横切っている、請求項2に記載の液処理装置。
【請求項4】
前記支持部材は、前記筒状部を構成する回転可能な軸部材と、前記軸部材に接続され前記軸部材の回転にともなって揺動可能なアームと、を有し、前記第1の供給ラインの前記吐出開口および前記第2の供給ラインの前記吐出開口は、前記アームの先端部の領域に位置し、
前記第1の供給ラインおよび前記第2の供給ラインの前記一方は、前記軸部材の内部を通過して、前記隔壁を横切っている、請求項3に記載の液処理装置。
【請求項5】
前記支持部材は、前記第1の供給ラインおよび前記第2の供給ラインを支持するアームを有し、
前記アームの基端部の領域が、前記筒状部を構成する筒状の部位として形成され、
前記第1の供給ラインの前記吐出開口および前記第2の供給ラインの前記吐出開口は、前記アームの前記基端部とは反対側の先端部の領域に位置し、
前記第1の供給ラインおよび前記第2の供給ラインの前記一方は、前記アームの当該筒状の部位の内部を通過して前記アームの前記基端部領域と前記先端部領域との間を延び、
前記第1の供給ラインおよび前記第2の供給ラインの前記他方は、前記アームの当該筒状の部位の外部を通って前記アームの前記基端部領域と前記先端部領域との間を延びている、請求項2に記載の液処理装置。
【請求項6】
前記仕切り部材は、前記筒状部の少なくとも一部分を構成する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液処理装置。
【請求項7】
前記支持部材は、回転可能な軸部材と、前記軸部材に接続され前記軸部材の回転にともなって揺動可能なアームと、を有し、前記第1の供給ラインの前記吐出開口および前記第2の供給ラインの前記吐出開口は、前記アームの先端部の領域に位置し、
前記アームは前記仕切り部材を構成する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液処理装置。
【請求項8】
前記第1の供給ラインと接続され前記第1の供給ラインに第1の液を供給する第1液供給機構と、
前記第1液供給機構から前記第1の供給ラインに供給された第1の液を前記第1の液供給機構へ戻す戻しラインと、
前記第1の供給ライン上に設けられ、前記処理ユニットでの被処理体の処理に用いられる第1の液の前記吐出開口への供給および供給停止を切り替える液供給切り替え弁と、をさらに有し、
前記液供給切り替え弁は、前記供給ラインから前記戻しラインを介して前記第1の液供給機構へ戻る液の経路上に、位置している、請求項1〜7のいずれか一項に記載の液処理装置。
【請求項9】
温度調節された液を供給する液供給源と、前記液供給源からの液が循環し得る循環路と、を有する循環ラインを有する第1の液供給機構と、
前記第1の液供給機構から前記第1の供給ラインに供給された液を前記第1の液供給機構へ戻す戻しラインと、をさらに有し、
前記供給ラインは、前記循環ラインの前記循環路から分岐して複数設けられ、
前記複数の供給ラインのそれぞれに対応して処理ユニットおよび戻しラインが設けられ、
各戻しラインは、前記複数の供給ラインのうちの最下流側の供給ラインと前記循環ラインとの接続位置よりも下流側の位置において前記循環ラインに接続している、請求項1〜7のいずれか一項に記載の液処理装置。
【請求項10】
液を用いて被処理体を処理する方法であって、
第1の供給ラインから供給される第1の液を用いて被処理体を処理する工程と、
前記第1の液を用いて被処理体を処理する工程の前または後に実施される工程であって、第2の供給ラインから供給される前記第1の液とは温度の異なる第2の液を用いて被処理体を処理する工程と、を有し、
前記第1の液を用いて前記被処理体を処理する際、前記第1の液は、支持部材によって支持された第1の供給ラインの吐出開口から吐出され、
前記第2の液を用いて前記被処理体を処理する際、前記第2の液は、前記第1の供給ラインを支持する前記支持部材によって支持された前記第2の供給ラインの吐出開口から吐出され、
前記第1の供給ラインおよび第2の供給ラインの一方は、前記支持部材の少なくとも一部分を構成する仕切り部材の一側を延び、前記第1の供給ラインおよび第2の供給ラインの他方は前記仕切り部材の他側を延びている、液処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−35133(P2011−35133A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179456(P2009−179456)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】