説明

温度制御装置及び同装置のバルブ制御部

【課題】 低温の循環流体をランプヒータで加熱して流体の温度制御を行う場合、制御の応答性と精度を高める。
【解決手段】 流体循環供給系31を循環する流体は、チラー32で冷却され、熱交換器33内のランプヒータで加熱される。ランプ制御部41は、ランプ出力を制御することで、流体の温度を設定温度に制御する。バルブ制御部43は、ヒータ出力が、制御に適した出力設定範囲内に入るように、チラー通路37の流量制御弁34とバイパス通路35の流量制御弁36の混合比を調節する。更に、バルブ制御部43は、開度と流量との関係が、開度の分解能が高温域で細かく低温域で粗くなるような重み付けを線形関係に加味した関係となるように、且つ、2つの流量制御弁34、36の流量を合計した循環流量が常に一定になるように、開度と2つの弁34、36の操作量(パルス数)との対応関係を定める。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、制御された流量で流れる流体を用いて対象の温度を制御する温度制御装置に関し、特に、目標温度を達成するために流体の流量制御を行う技術の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の温度制御が利用されている一つの用途に、半導体製造装置で用いられる真空チャンバの温度制御がある。例えば図1に示すようなエッチング装置の真空チャンバ20の場合、一般に、その外壁21は80℃以上の高温域に、蓋22は−15℃程度の低温に、ウェハ23がセットされる電極24は−20℃〜80℃程度の低温域に制御される。電極24のための低温域での温度制御には、例えば図2に示すような温度制御装置(以下、「低温機」という)30を用いることができ、また、外壁21のための高温域での温度制御には例えば図4に示すような温度制御装置(以下、「高温機」という)50を用いることができる。
【0003】尚、図2、図4に示した低温機30及び高温機50は、この「従来の技術」の欄で説明のために用いてはいるが、これらは公知ではなく、本発明の実施形態で用いられるものである。因みに、低温機30は、特願平10−14133号で本件出願人が提案したものである。
【0004】さて、図2に示す低温機30は流体循環供給系31を持ち、また、図4に示す高温機50は流体循環供給系51を持つ。これらの流体循環供給系31、51はそれぞれ、水、エチレングリコール或いはフロリナート(登録商標)のような熱媒体流体(以下、「流体」と略称する)を設定温度に調節して真空チャンバ20の電極又は外壁などの目的場所に供給することにより、その目的場所を所望温度に制御する。
【0005】図2に示す低温機30の流体循環供給系31では、チラー(冷却機)32に流体を通すチラー通路37と、チラー32をバイパスするバイパス通路35とがある。そして、それぞれの通路37、35に設けられた流量制御弁34、36により制御された混合比で、冷却された低温流体と冷却されていない高温流体とを混合させる。その混合した流体をハロゲンランプヒータ内蔵の熱交換器33(その構成は図3に示す)に通し、そこでハロゲンランプヒータにより流体を加熱して設定温度に調整する。ここでは、2つの流量制御弁34、36の開度制御とハロゲンランプヒータの出力制御によって、流体温度が調節される。
【0006】図4に示す高温機50では、流体循環供給系51の他に、冷却水循環系61があり、そこでは流量制御弁62によって冷却水流量が調節される。これら2つの循環系51と61の流体通路と冷却水通路の双方が、ハロゲンランプヒータ内蔵の熱交換器52(その構成は図5に示す)に通っている。この熱交換器52において、ハロゲンヒータランプにより流体を加熱し、また、冷却水により流体を冷却することにより、流体温度を設定温度に調節する。ここでは、冷却水の流量制御弁62の開度制御とハロゲンランプヒータの出力制御により、流体温度が調節される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述した低温機30や高温機50で流体温度を制御する場合、流体の流量又は冷却水の流量を調節するために流量制御弁の開度制御が必要である。流量制御弁の開閉操作はモータによって行われ、そのモータドライバに加える操作パルスの個数により、開閉量が制御できるようになっている。しかし、一般の流量制御弁では、操作パルス数と流量変化量との関係が非線形であるため、単純な線形特性を前提とした制御方法が適用できないという問題がある。また、図2に示した低温機30のように、2つの流量制御弁34,36(又は、三方弁でもよい)の開度制御によって低温流体と高温流体の混合比を調節しようとする場合、流量制御弁の開度を変わると、全体の循環流量が変わって系全体の圧損が変わり、混合比に無用の変動を与えてしまう。そのため、所望の混合比を得るための2つの流量制御弁の開度の決定が難しいという問題もある。
【0008】また、本件出願人は特願平10−14133号にて、(例えば図2に示した低温機30において)、通常は2つの流量制御弁(又は三方弁)は動かさずに専らランプヒータの出力制御によって流体温度を調節し、また、制御に適した一定のランプ出力範囲を設定しておき、そのランプ出力設定範囲からランプ出力が外れた場合に、ランプ出力をそのランプ出力設定範囲内に戻すように2つの流量制御弁(又は三方弁)の開度を調節することを提案している。この方法によれば、ランプ出力制御がもつ高い熱応答性と高い制御精度という利点を活かせるので、流体温度を正確に制御することができる。それに加え、流量制御弁を操作する頻度が少ないため、流量制御弁の寿命が長くなり、また、流量制御弁の操作が流体温度に無用の変動を与えてしまう機会も少なくて済む。
【0009】しかし、この方法を用いた場合であっても、上述した流量制御弁のもつ操作量(操作パルス数)と流量との非線形特性のために、次のような問題が生じる。
【0010】第1に、流量制御弁の操作量(操作パルス数)を一定幅づつ変化させていったとしても、その一定幅の弁操作に対するランプ出力の変動幅が一定ではないために、所望のランプ出力を得るための弁制御が難しい。
【0011】第2に、ランプ出力が上記ランプ出力設定範囲から外れた場合、それをランプ出力設定範囲に戻すために流量制御弁に与えるべき操作量が、その時の各流量制御弁の流量により異なってくる、つまり、その時の制御しようとする温度(例えば、高温時にはバイパス通路側の流量が大きい)により異なってくる。そのため、ランプ出力設定範囲に到達するまでに流量制御弁に加えるべき操作量(操作パルス数)が多いときには、ランプ出力設定範囲に到達するまでの時間が長くなって応答性が悪化する。また、その間に外乱が発生したりすると、流体温度を設定温度に追従させることができなくなる場合もある。
【0012】更に、上記非線形特性のために、流量制御弁開度(又は、混合比)を1段階操作したことによって生じるランプ出力の変動幅が、制御しようとする温度によって異なってくる。一般には高温時には低温時より上記ランプ出力変動幅が大きくなるが、特に、この変動幅が上記ランプ出力設定範囲より大きくなってしまうと、流量制御弁を1段階増減させただけでランプ出力がランプ出力設定範囲を飛び越えてしまうために、ランプ出力設定範囲を挟んでハンチングが起きることがある。逆に、低温時には、上記ランプ出力の変動幅が小さいため、既に述べたように、流量制御弁を操作してランプ出力をランプ出力設定範囲に到達させるまでに長い時間がかってしまう。このように、流量操作の分解能が、ランプ制御の観点から見て、高温時には粗すぎ、一方、低温時には細かすぎるために、制御精度が悪いという問題がある。
【0013】更に、流量制御弁を頻繁に操作しなくても、ある程度ラフに操作するだけで、制御目的を達成できるようにしたいという、流量制御弁の寿命の観点からの一般的な要求もある。
【0014】また更に、図2に示した低温機30では、冷媒回路で流体を冷却するチラー32を用いているが、高温時に高温の流体を大量のチラー32に通したりすると、チラー32が過大負荷になって圧縮機の圧力又は温度が上がりすぎたり、逆に、低温時に低温の流体を少量しかチラー32に通さないと、チラー32が過小負荷になって蒸発しない液体のままの冷媒が圧縮機に入っるなどして、故障が生じる場合がある。そのため、チラー32の負荷を常に適正範囲に保つように流量制御を行う必要もある。
【0015】従って、本発明の目的は、上述した諸問題を解決して、応答性及び制御精度の高い温度制御装置を提供することにある。
【0016】本発明の別の目的は、上記目的を達成するために、温度制御装置における流量調節弁の制御方法を改良することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の観点に従う温度制御装置は、流体を循環させつつ設定温度に調整した流体を温度制御対象に供給する流体循環供給系と、流体循環供給系において温度制御対象から出てきた流体と熱交換する第1の熱交換手段と、流体循環供給系において温度制御対象に供給される流体と熱交換する第2の熱交換手段と、第1の熱交換手段を通る流体の流量を制御する流量制御弁と、第2の熱交換手段の熱交換量を所定の設定範囲内に入れるために、流量調節弁を制御して第1の熱交換手段を通る流量を調節するバルブ制御部と、温度制御対象に供給される流体の温度を設定温度に調整するために、第2の熱交換手段の熱交換量を制御する熱交換制御部とを備える。バルブ制御部は、流量制御弁の開度を決定する開度決定部と、開度から流量制御弁の操作量を決定する操作量決定部と、操作量を用いて流量制御弁を操作する弁操作部とを有する。そして、操作量決定部は、流量制御弁がもつ操作量と流量との非線形な関係を補償して、開度と流量との関係が所定の理想的関係になるように、開度を操作量に変換するための開度−操作量変換手段を有する。
【0018】この温度制御装置によれば、バルブ制御部が流量制御弁の開度を決定する場合に、流量制御弁のもつ非線形な特性を考慮する必要がなくなるため、制御が容易となり制御精度が向上する。
【0019】上記の開度と流量の所定の理想的な関係とは、例えば線形な関係である。好適な実施形態では、開度の変化に対する第2の熱交換手段の熱交換量の変化の割合が全ての開度範囲で均等に近づけるための重み付けを、線形な関係に加えた関係を、上記理想的な関係として採用している。これにより、温度域によって開度の分解能が粗すぎたり細かすぎたりして制御精度や同等性が悪化するという従来技術での問題が解決される。
【0020】好適な実施形態は、温度制御対象から出た流体を第1の熱交換手段をバイパスして第2の熱交換手段へ送るバイパス通路と、バイパス通路に設けられたバイパス流量調節弁とを更に備える。そして、バルブ制御部は、第2の熱交換手段の熱交換量を所定の設定範囲内に入れるために、流量制御弁とバイパス流量制御弁の双方を制御する。その際、バルブ制御部の開度−操作量変換手段は、開度を流量制御弁の操作量とバイパス流量制御弁の操作量の双方に変換する。流量制御弁の操作量とバイパス流量制御弁の操作量は、両者を合計した循環流量が常に一定となるように定められる。これにより、流量制御弁が2個になっても、1個の場合と同様に、開度という1つの尺度で制御ができる。また、循環流量が一定に維持されるので、圧損の変動によって2つの流量制御弁を流れる高温流体と低温流体との混合比が変動するという従来の問題が解決される。
【0021】好適な実施形態では、バルブ制御部の開度決定手段は、温度制御対象へ供給される流体を急冷却又は急加熱するための最大又は最小の開度を決定する最大・最小開度決定手段と、温度制御対象へ供給される流体の現在温度と設定温度との偏差が所定の整定幅以上あるときに、最大・最小開度決定手段から最大又は最小の開度を得て操作量決定手段に与える急加熱・冷却手段とを有する。これにより、流体温度を必要に応じて急加熱又は急冷却できるので、応答性が向上する。
【0022】好適な実施形態では、バルブ制御部の開度決定手段は、第2の熱交換手段の熱交換量を設定範囲内に入れるのに適した標準開度を決定する標準開度決定手段と、温度制御対象へ供給される流体の現在温度と設定温度との偏差が所定の整定幅未満であるときに、標準開度決定手段から標準開度を得て操作量決定手段に与える整定手段とを有する。これにより、更に応答性が向上する。
【0023】本発明の第2の観点に従う温度制御装置は、流体を循環させつつ設定温度に調整した流体を温度制御対象に供給する流体循環供給系と、冷却液及びヒータを用いて、流体循環供給系を循環する流体と熱交換する熱交換手段と、熱交換手段を流れる冷却液の流量を制御する流量制御弁と、熱交換手段のヒータの出力を所定の設定範囲内に入れるために、流量調節弁を制御して冷却液の流量を調節するバルブ制御部と、温度制御対象に供給される流体の温度を設定温度に調整するために、ヒータの出力を制御するヒータ制御部とを備える。バルブ制御部は、流量制御弁の開度を決定する開度決定部と、開度から流量制御弁の操作量を決定する操作量決定部と、操作量を用いて流量制御弁を操作する弁操作部とを有する。そして、操作量決定部は、流量制御弁がもつ操作量と流量との非線形な関係を補償して、開度と流量との関係が所定の理想的関係になるように、開度を操作量に変換するための開度−操作量変換手段を有する。
【0024】この温度制御装置においても、本発明の第1の観点に従う温度制御装置と同様の利点が得られる。
【0025】上記した開度と流量の関係とは、例えば線形な関係であるが、好適な実施形態では、開度の変化に対するヒータ出力の変化の割合を全開度範囲で均等に近づけるための重み付けを、線形な関係に加えた関係を、上記理想的な関係として採用する。
【0026】好適な実施形態では、バルブ制御部の開度決定手段は、温度制御対象へ供給される流体を急冷却又は急加熱するための最大又は最小の開度を決定する最大・最小開度決定手段と、温度制御対象へ供給される流体の現在温度と設定温度との偏差が所定の整定幅以上あるときに、最大・最小開度決定手段から最大又は最小の開度を得て操作量決定手段に与える急加熱・冷却手段とを有する。
【0027】好適な実施形態では、バルブ制御部の開度決定手段は、更に、ヒータ出力を設定範囲内に入れるのに適した標準開度を決定する標準開度決定手段と、温度制御対象へ供給される流体の現在温度と設定温度との偏差が所定の整定幅未満であるときに、標準開度決定手段から標準開度を得て操作量決定手段に与える整定手段とを有する。
【0028】
【発明の実施の形態】図2及び図4は、既に述べたとおり、図1に示すような真空チャンバ20の温度制御に用いられる本発明の温度制御装置の実施形態である低温機30及び高温機50の全体構成をそれぞれ示している。
【0029】図2に示す低温機30は、既に説明した通り、熱交換器33内のハロゲンランプヒータの出力を制御することによって、及び、流体循環供給系31のチラー通路37とバイパス通路35に設けられた2つの流量制御弁34、36の開度を制御して低温流体と高温流体の混合比を調節することによって、真空チャンバ20に供給する流体の温度を設定温度(例えば、−20℃〜80度程度)に制御する。これらの制御はランプ制御部41とバルブ制御部43によって実行される(これらは、典型的には、コンピュータのプログラムである)。ランプ制御部41は、設定温度と、温度センサ42が検出した熱交換器33から出て真空チャンバ20に入る流体の現在温度とに基づいて、ハロゲンランプヒータの出力を制御する。また、バルブ制御部43は、設定温度と、温度センサ42からの流体の現在温度と、ランプ制御部41が出力するランプ操作量(ランプ出力値)と、流量センサ44が検出した流体の循環流量(2つの流量制御弁34,36の流量の合計)とに基づいて、2つの流量制御弁34,36の開度を制御する。
【0030】図3は、この低温機30の熱交換器33の横断面(A)と縦断面(B)を示している。
【0031】この熱交換器33は、細長い円柱形のハロゲンランプヒータ51を、円筒形の透明な石英製の内筒52内に収め、これを外筒53内に収め、内筒52と外筒53との間の空間を流体通路54としたものである。流体がその通路54内を矢印で示すように流れる間に、ハロゲンランプヒータ51からの放射熱で流体が加熱される。
【0032】図4に示す高温機50は、既に説明したように、熱交換器52のハロゲンランプヒータの出力を制御することにより、及び冷却水の流量制御弁62の開度を制御して熱交換器52に流れる冷却水流量を調節することにより、流体の温度を設定温度(例えば、80℃〜120℃程度)に制御する。これらの制御はランプ制御部71とバルブ制御部73によって実行される(これらは、典型的には、コンピュータのプログラムである)。ランプ制御部71は、設定温度と、温度センサ72が検出した熱交換器52から出て真空チャンバ20に入る流体の現在温度とに基づいて、ハロゲンランプヒータの出力を制御する。また、バルブ制御部73は、設定温度と、温度センサ42からの流体の現在温度と、ランプ制御部41が出力するランプ操作量(ランプ出力値)とに基づいて、流量制御弁62の開度を制御する。
【0033】尚、冷却水循環系61には、冷却水の全体の循環流量を一定にするための定流量弁64と、熱交換器52をバイパスして冷却水を流すバイパス通路63とが設けられている。この定流量弁64バイパス通路63とは、流量制御弁62にかかる冷却水圧力を軽減し、流量制御弁62の小流量域での流量特性を改善し、かつ冷却水供給圧力が変動した場合でも安定した流量特性を維持するという作用がある。
【0034】図5は、この高温機50の熱交換器52の横断面(A)と縦断面(B)を示している。
【0035】この熱交換器52は、図3に示した熱交換器33と基本的に同様の構成のハロゲンランプヒータ81、内筒82及び中間筒83のセット(内筒81と中間筒83との間の空間が流体通路84である)を、更に外筒85内に収め、中間筒83と外筒85との間の空間を冷却水通路86としたものである。流体がその流体通路84内を矢印方向に流れ、冷却水が冷却水通路86内の矢印方向(例えば流体と逆方向に)流れる。流体は、冷却水によって冷却され、同時にハロゲンランプヒータ51からの放射熱で加熱される。
【0036】低温機30及び高温機50の双方において、前述の特願平10−14133号で提案された制御方法が採用される。すなわち、ランプ制御部41、71が、流体温度を設定温度に一致させるように、熱交換器33、52のランプ出力をPID制御する。また、バルブ制御部43,73は、ランプ出力が予め設定された出力範囲から外れたときに、ランプ出力をそのランプ出力設定範囲内に戻すように流量制御弁34、36、62の開度を調節する。
【0037】図6は、低温機30のバルブ制御部43及び高温機50のバルブ制御部73として用いられる、本発明の原理に従うバルブ制御部90の構成を示す。
【0038】このバルブ制御部90は、開度決定部91と操作パルス数決定部92を備える。また、このバルブ制御部90は、図2に示した低温機30の2つの流量制御弁34、36を駆動するための2つのモータドライバ93、94を備えるが、図4に示した高温機50に適用する場合には、高温機50の1つの流量制御弁62を駆動するための1つのモータドライバを備えることになる(又は、図示の2つのモータドライバ93、94のうちの一方だけを使用する)。
【0039】操作パルス数決定部92は、「開度」をという尺度の値を入力して、モータドライバ93、94に加えるべき「操作パルス数」を決定するものである。この開度から操作パルス数への変換のために、操作パルス数決定部92は、開度の各値に対して操作パス数の各値を対応付けた開度−パルス数テーブル101を有している。この開度−パルス数テーブル101に記述された開度と操作パルス数との対応関係は、後に図7及び図8を参照して詳述するように、流量制御弁のもつパルス数−流量の非線形関係を吸収し、それにより、開度−流量の関係を温度制御に適した理想的な関係(後述するように、単純な線形の関係に、開度の分解能を温度に応じて適切なものに調整するための重み付けを加味した関係)にするものである。この点で、以下の説明で用いる「開度」という用語は、「弁の開き具合」という通常の開度の意味で用るものではなく、「流量に対し上記理想的な関係をもった尺度」という特別の意味で用いるものであることに注意されたい。
【0040】低温機30に適用する場合、開度−パルス数テーブル101には、各開度に対して、2つの流量制御弁34、36用の2つの操作パルス数の組が記述されている。この2つの操作パルス数の組は、後に図9及び図10を参照して詳述するように、2つの流量制御弁34、36の流量を合計した全体の循環流量が一定に保たれるように工夫されている。この循環流量を一定にする機能のおかげで、ランプ制御部は常に同じ制御アルゴリズムで最適な制御を行うことができる(因みに、循環流量が変動すると、ランプ制御形のPID定数が変わり、同じ制御アルゴリズムでは最適な制御ができなくなる)。他方、高温機50に適用する場合には、開度−パルス数テーブル101には、各開度に対して、1つの流量制御弁62用の1つの操作パルス数が記述されている。
【0041】開度決定部91は、設定温度、流体の現在温度、及びランプ出力(ランプ制御部から出力されるランプ操作量)に基づいて、ランプ出力を上記設定力範囲内に入れるための開度を決定し、その開度を操作パルス数決定部92に与える。上述した開度−パルス数テーブル101がもつ非線形特性を吸収する機能や開度の分解能を最適化する機能のおかげで、開度決定部91が開度を決定する処理は、かなり単純化される。更に、低温機30に適用する場合には1つの開度を2つの流量調節弁34,36の操作パルス数に変換する開度−パルス数テーブル101を用い、高温機50に適用する場合には1つの開度を1つの流量調節弁62の操作パルス数に変換する開度−パルス数テーブル101を用いることにより、低温機30でも高温機50でも、開度決定部91は同じ開度決定アルゴリズムを用いることができる。
【0042】開度決定部91は、最大開度テーブル102、最小開度テーブル103及び標準開度テーブル104を有しており、流体のい現在温度と設定温度との偏差に応じてこれらの開度テーブル102〜104を使い分けて、開度を決定する。後の図11及び図12を参照して詳述するように、最大開度テーブル102には流体を急冷却するための最大開度が、また、最小開度テーブル103には流体を急加熱するための最小開度が、各現在温度に応じて規定されている。流体の現在温度と設定温度とが大きく離れている場合に、開度決定部91は、最大又は最小開度テーブル102又は103を参照して最大又は最小開度を選択して、操作パルス数決定部92に与える。これにより、ランプヒータやチラ−の能力を最大限に利用して、早くに設定温度に到達することが可能となる。低温機30と高温機50では別の開度テーブル102〜104のセットを用いる。理想的には最大開度は全開(100%)、最小開度は全閉(0%)であるが、低温機30用の最大及び最小開度テーブル102、103では、チラ−32が高温時に過大負荷になったり低温時に過小負荷になったりしないよう、高温時の最大開度及び低温時の最小開度に制限を加えている。
【0043】標準開度テーブル104には、現在温度が設定温度に近いときにランプ出力をランプ出力設定範囲内で調節して現在温度を設定温度に整定させるのに最適な標準開度が、各設定温度に対応して規定されている。開度決定部91は、急加熱や急冷却後、現在温度が設定温度にある程度近づいた段階で、標準開度テーブル104から設定温度に応じた標準開度を選択して、これを操作パルス決定部92へ与える。これにより、急加熱又は急冷却後、いち早く流量制御弁を移動させて、少ない弁作動回数で、ランプ出力をランプ出力設定範囲に入れることができる。また、これにより、流体温度が設定温度に到達する時間も短縮する。
【0044】図7は、開度−パルス数テーブルの原理と内容を示す。尚、図7に示す開度とは、低温機30の場合はチラー通路の流量制御弁34の開度、高温機50の場合は冷却水の流量制御弁62の開度を指す。
【0045】図7において、曲線110は流量制御弁がもつ非線形なパルス数―流量特性を示している。この非線形なパルス数―流量特性に対して、曲線112に示すような内容の開度−パルス数テーブルを適用すると、開度−流量特性は直線111に示すような線形特性になる。本実施形態では、この直線111のような線形の開度−流量特性に開度に関する重み付けを加えた、曲線113のような理想的な開度−流量特性を用いる。この曲線113で示す理想的な開度−流量特性は、直線111の線形特性に比較して、開度に対する流量の変化率が小流量領域では小さく大流量領域では大きくなるように、つまり、流量調節のための開度の分解能が小流量領域では細かく大流量領域では粗くなるように、開度について重み付けがなされている。このような開度の重み付けを加えた理想的な開度−流量特性113を得るには、曲線114のような内容の開度−パルス数テーブルを用意する。
【0046】図8は、上述した開度の重み付けの原理を示している。
【0047】図8において、曲線121〜124は、流体の温度を特定の設定温度T1〜T4に維持するのに必要な流体流量とランプ出力との関係を示している。ここで、T1>T2>T3>T4である。設定温度が高くなるほど、特性曲線121〜124の傾斜が急になる、つまり、流量(低温機30の場合は、チラー通路の流量、高温機50の場合は冷却水流量である。)に対するランプ出力の変化率が大きくなることが分かる。
【0048】範囲120は、ランプ出力の調節に適したランプ出力設定範囲を示す。ランプ出力をランプ出力設定範囲120内にするための流量の可変範囲の幅は、設定温度が高くなるほど狭くなることがわかる。そこで、曲線113で示す開度の重み付けをもつ理想的な開度―流量特性を導入すると、ランプ出力をランプ出力設定範囲120内にするための開度の可変範囲の幅は、範囲131〜134に示すように、どの設定温度でもほぼ一定(又は、一定に近く)なる。つまり、高温域でも、ランプ出力をランプ出力設定範囲120内にするための開度の可変幅が過小になることはなく、開度可変幅を適度な大きさで確保することができる。このことは、従来技術における高温域での制御分解能の低下によるハンチングという問題を解決する。また、低温域でも、ランプ出力をランプ出力設定範囲120内にするための開度の可変幅が過大になることはなく、開度可変幅を適度な大きさで確保することができる。このことは、従来技術における低温域での応答性又は追従性の悪化という問題点を解決する。
【0049】図9及び図10は、低温機30に適用される2つの流量制御弁34、36のパルス数を同時に規定した開度−パルス数テーブルの原理と内容を示す。
【0050】図9において、曲線141は、チラー通路の流量制御弁34に適用される開度―流量特性を示し、これは、図7及び図8に曲線113で示したような理想的な特性である。曲線142は、バイパス通路の流量制御弁36に適用される開度―流量特性を示し、これは、このバイパス通路の流量制御弁36の流量とチラー通路の流量制御弁34の流量とを合計した全体の循環流量140が開度に関わらず常に一定に維持されるように設定したものである。このような2つの開度―流量特性141、142を得るためには、図10に2つの曲線151、152で示すような内容の開度−パルス数テーブルを用意すれば良い。
【0051】このような方法で、循環流量140を常に一定に維持することによって、開度を変えても流体循環供給系31全体の圧損は一定であるので、圧損の変化による高温流体と低温流体の混合比の変動という問題が生ぜず、弁開度調節により混合比を正確に制御することができる。また、開度という一つの尺度に対し、チラ−側とバイパス側の2つの流量制御弁の操作量をテーブルで同時に規定することにより、開度を算出するまでの処理(図6の開度決定部91)は流量制御弁の個数に関わらず同じものを用いることができる。
【0052】図11は、低温機30に適用される最大、最小及び標準開度テーブルの内容を示し、図12は、高温機50に適用される最大、最小及び標準開度テーブルの内容を示す。
【0053】図12の高温機50用のテーブルセットでは、最大開度171は常に全開(100%)、最小開度172は常に全閉(0%)に設定されており、急冷却及び急加熱を最も高速に行うためにはこれが望ましい。一方、図11の低温機30用のテーブルセットでは、高温域でのチラー32の過大負荷を防止するために、高温域では最大開度161は温度が上がるほど全開からより小さくなるように制限される。また、低温域でのチラー32の過小負荷を防止するために、低温域では最小開度162は温度が下がるほど全閉からより大きくなるように制限される。これらのテーブルセットでは、例えば10%刻みで開度が記憶されており、その間の区間の開度は直線補完で算出される。
【0054】図13は、上記構成の下でのバルブ制御部90の動作フローを示す。図14は、この制御動作の背後にある制御規則を示す。
【0055】図13に示すように、温度調節の開始命令が入るか又は設定温度TSの変更が入ると(ステップS1)、まず、流体の現在温度TPと設定温度TSとを取得し、両温度TP、TS間の偏差を求め、その偏差と所定の整定幅T1とを比較する(S2)。ここで、整定幅T1とは、後述する図15のタイムチャートに例示すように、比較的に狭い温度偏差範囲であって、現在温度TPと設定温度TSとの偏差が整定幅T1程度以下ならば、ランプ出力の制御だけで十分に短時間で現在温度TPを設定温度TSに整定させることができる。上記比較の結果、現在温度TPが設定温度TSよりも低くて、その偏差の絶対値が整定幅T1以上の場合には、急加熱モードに入る(S3)。現在温度TPが設定温度TSよりも高くて、その偏差の絶対値が整定幅T1以上の場合には、急冷却モードに入る(S4)。また、現在温度TPと設定温度TSとの偏差の絶対値が整定幅T1未満の場合には、整定モードに入る(S5)。
【0056】急加熱モードに入ると、最大開度テーブルTBMAXから現在温度TPに対応した最大開度TBMAX[TP]を読み出し、この最大開度TBMAX[TP]を目標の開度Vとする(S6)。次に、開度−パルス数テーブルTBL1、TBL2から、目標の開度Vに対応するパルス数TBL1[V]、TBL2[V]を読出し、これらのパルス数TBL1[V]、TBL2[V]を流量制御弁に対する目標のパルス数P1、P2とし、この目標パルス数P1、P2を達成するように操作パルス数を決定してモータドライバに出力する(S7)(この例は、2つの流量制御弁を制御する低温機30の場合であるため2つの目標パルス数P1、P2を求めるが、高温機50の場合は1つの流量調節弁を制御すればいいので、目標開度Vから1つの目標パルス数を求める)。次に、再び、現在温度TPと設定温度TSとを取得し、現在温度TPが設定温度TSに対し整定幅T1未満の近さになったかを判断し(S8)、まだ設定温度TSより整定幅T1以上低ければ、急加熱モードを継続してステップS6以下の動作を繰り返し、整定幅T1未満に近づいたならば、整定モードへ移行してステップS12以下の動作に進む。
【0057】急冷却モードに入った場合は、最小開度テーブルTBMINから現在温度TPに対応した最小開度TBMIN[TP]を読み出し、この最小開度TBMIN[TP]を目標の開度Vとする(S9)。次に、開度−パルス数テーブルTBL1、TBL2から、目標の開度Vに対応するパルス数TBL1[V]、TBL2[V]を読出し、これらのパルス数TBL1[V]、TBL2[V]を流量制御弁に対する目標のパルス数P1、P2とし、この目標パルス数P1、P2を達成するように操作パルス数を決定してモータドライバに出力する(S10)(この例は、2つの流量制御弁を制御する低温機30の場合であるため2つの目標パルス数P1、P2を求めるが、高温機50の場合は1つの流量調節弁を制御すればいいので、目標開度Vから1つの目標パルス数を求める)。次に、再び、現在温度TPと設定温度TSとを取得し、現在温度TPが設定温度TSに対し整定幅T1未満の近さに達したかを判断し(S11)、まだ設定温度TSより整定幅T1以上に高ければば、急冷却モードを継続してステップS9以下の動作を繰り返し、整定幅T1未満に近づいたならば、整定モードへ移行してステップS12以下の動作に進む。
【0058】整定モードに入ると、最初に、標準開度テーブルTBSTDから、設定温度TSに対応した標準開度TBSTD[TS]を読出し、この標準開度TBSTD[TS]を目標の開度Vに設定する(S12)。次に、現在のランプ出力Uを取得してそれがランプ出力設定範囲内にあるか否かをチェックする(S13)。その結果、現在のランプ出力Uがランプ出力設定範囲の下限値UL未満であるならば、上記目標開度Vを1段階増やしてランプ出力Uの増大を促進させ(S14,15)、現在のランプ出力Uがランプ出力設定範囲の上限値UHを上回っているならば、上記目標開度Vを1段階減らしてランプ出力Uの減少を促進させ(S16,17)、また、現在のランプ出力Uがランプ出力設定範囲内にあるならば、目標開度Vを変更しない(S18)。そして、開度−パルス数テーブルTBL1、TBL2から、その目標開度Vに対応するパルス数TBL1[V]、TBL2[V]を読出し、これらのパルス数TBL1[V]、TBL2[V]を流量制御弁に対する目標のパルス数P1、P2とし、この目標パルス数P1、P2を達成するように操作パルス数を決定してモータドライバに出力する(S19)(この例は、2つの流量制御弁を制御する低温機30の場合であるため2つの目標パルス数P1、P2を求めるが、高温機50の場合は1つの流量調節弁を制御すればいいので、目標開度Vから1つの目標パルス数を求める)。以下、設定温度が変更されない限り、ステップS13〜S19の動作を繰り返す(つまり、ランプ出力がランプ出力設定範囲から外れている場合にのみ、ランプ出力設定範囲内に入れるように目標開度Vを変更し、ランプ出力設定範囲内に入ると目標開度Vを一定に保つ)。
【0059】図15は、上述の制御動作を行った場合の流体温度、ランプ出力および流量制御弁開度(低温機30の場合は、チラー通路の流量制御弁34の開度、高温機50の場合は冷却水の流量制御弁62の開度である。)の変化の様子を例示したタイムチャートである。
【0060】図示のように、運転開始直後の区間■では、流体の現在温度TPが設定温度TSより大幅に低いため、バルブ制御部は急加熱モードに入り、開度Vを現在温度TPに対応した最小開度にセットする。このとき、ランプ制御部は、現在温度TPが設定温度TSになるようにフィードバック制御を行っているので、ランプ出力Uは最高出力(又はそれに近い大出力)に制御される。これにより、現在温度TPは急速に上昇する。続く区間■では、現在温度TPが設定温度TSの整定幅T1以内の範囲に入り、これに呼応してバルブ制御部は整定モードに入り、開度Vを設定温度TSに対応した標準開度にセットする。開度Vが標準開度にセットされると、ランプ制御部は速やかにランプ出力Uを低下させてランプ出力設定範囲UH〜HL内に入れ、そしてランプ出力Uを微調節して、現在温度TPを設定温度TSに整定させる。
【0061】続く区間■では、設定温度TSがステップ状に低温に変更される。すると、現在温度TPが設定温度TSより大幅に高くなるため、バルブ制御部は急冷却モードに入り、開度Vを現在温度TPに対応した最大開度にセットする。このとき、ランプ制御部は、現在温度TPが設定温度TSになるようにフィードバック制御を行っているので、ランプ出力Uは最低出力(又はそれに近い小出力)に制御される。これにより、現在温度TPは急速に降下する。続く区間■では、現在温度TPが設定温度TSの整定幅T1以内の範囲に入り、これに呼応してバルブ制御部は整定モードに入り、開度Vを設定温度TSに対応した標準開度にセットする。開度Vが標準開度にセットされると、ランプ制御部は速やかにランプ出力Uを上昇させてランプ出力設定範囲UH〜HL内に入れ、そしてランプ出力Uを微調節して、現在温度TPを設定温度TSに整定させる。
【0062】このようにして、応答性が良く且つ精度の高い温度制御が行われる。尚、図15に示した例では、整定モード(区間■、■)に入った直後にランプ出力が速やかにランプ出力設定範囲UH〜HL内に入ったため、開度Vを段階的に増減する動作(図13のステップS14、15、16、17)は行われなかったが、ランプ出力がランプ出力設定範囲UH〜HL内に入るのに多少時間がかかった場合には、開度Vが段階的に増減して、より速やかにランプ出力をランプ出力設定範囲UH〜HL内に入れるような動作が行われる。
【0063】図16は、図13に示した制御フロー中から標準開度テーブルを使用するステップS12を省略した制御動作を行った場合の、流体温度、ランプ出力および流量制御弁開度(低温機30の場合は、チラー通路の流量制御弁34の開度、高温機50の場合は冷却水の流量制御弁62の開度である。)の変化の様子を例示したタイムチャートである。尚、このように標準開度テーブルを使用しない制御動作も、本発明の範囲に含まれるものである。
【0064】図16に示すように、バルブ制御部は、運転開始直後の区間■で急加熱モードに入って開度Vを現在温度TPに対応した最小開度にセットする。次に整定モードに入ると、まず区間■の前半では、ランプ出力Uがランプ出力設定範囲の上限値UHを上回っているため、開度Vを現在温度TPに対応した最小開度に維持し(図13のステップS17で開度Vを減少させたいところだが、最小開度以下にはできない)、区間■の後半ではランプ出力Uがランプ出力設定範囲内に入ったので、現在の開度V(最小開度)に維持し、その後、区間■でランプ出力Uがランプ出力設定範囲の下限値ULを下回ると、開度Vを段階的に増加させてランプ出力Uをランプ出力設定範囲内に戻そうとする。次の区間■でランプ出力Uをランプ出力設定範囲内に入ると、現在の開度Vを維持する。
【0065】その後、区間■で設定温度TSがステップ状に低温に変更されると、バルブ制御部は急冷却モードに入って開度Vを現在温度TPに対応した最大開度にセットする。次に、整定モードに入ると、区間■でランプ出力Uがランプ出力設定範囲の下限値ULを下回っているので、現在温度TPに対応した最大開度を維持する(図13のステップS15で開度Vを増加させたいところだが、最大開度以上にはできない(但し、最大開度は現在温度TPの降下に伴って上昇する))。続く区間■でランプ出力Uがランプ出力設定範囲内に入るので、現在の開度Vを維持し、続く区間■でランプ出力Uがランプ出力設定範囲の上限値UHを上回るので、開度Vを段階的に降下させ、続く区間■でランプ出力Uが再びランプ出力設定範囲内に入るので、現在の開度Vを維持する。
【0066】この標準開度を使用しない制御では、図15R>5に示した標準開度を使用する制御に比べると応答速度で劣るが、従来技術よりは優れた温度制御能力が得られる。また、接続系の放熱が極端に大きい場合には、固定の標準開度を使用するとハンチングを起こしたり整定時間がかかりすぎるなどの問題があるため、この場合に上記の標準開度を使用しない制御を使うと優れた温度制御能力が得られる。
【0067】以上、本発明の一実施形態を説明したが、上記の実施形態はあくまで本発明の説明のための例示であり、本発明を上記実施形態にのみ限定する趣旨ではない。従って、本発明は、上記実施形態以外の様々な形態でも実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】半導体ウェハ・エッチング装置の真空チャンバを示す断面図。
【図2】本発明の温度制御装置の実施形態である低温機30の全体構成を示すブロック図。
【図3】低温機30の熱交換器33の横断面図(A)と縦断面図(B)。
【図4】本発明の温度制御装置の実施形態である高温機50の全体構成を示すブロック図。
【図5】高温機50の熱交換器52の横断面図(A)と縦断面図(B)。
【図6】低温機30のバルブ制御部43及び高温機50のバルブ制御部73として用いられる、本発明の原理に従うバルブ制御部90の構成を示すブロック図。
【図7】開度−パルス数テーブルの原理と内容を示す説明図。
【図8】開度−パルス数テーブルに加味されている重み付けの原理を示す説明図。
【図9】低温機30用の2つの流量制御弁を同時に制御するための開度−パルス数テーブルの原理を示す説明図。
【図10】低温機30用の2つの流量制御弁を同時に制御するための開度−パルス数テーブルの内容を示す説明図。
【図11】低温機30用の最大、標準及び最小開度テーブルの内容を示す説明図。
【図12】高温機50用の最大、標準及び最小開度テーブルの内容を示す説明図。
【図13】図6に示したバルブ制御部90の制御動作を示すフローチャート。
【図14】図13に示した動作の背後にある制御規則を示す説明図。
【図15】図13のフローに従って流量制御を行った場合の流体温度、ランプ出力および流量制御弁開度の変化の様子を例示したタイムチャート。
【図16】図13のフローに従って(但し、標準開度テーブルを使用せずに)流量制御を行った場合の流体温度、ランプ出力および流量制御弁開度の変化の様子を例示したタイムチャート。
【符号の説明】
30 温度制御装置(低温機)
50 温度制御装置(高温機)
33 熱交換器33
31 流体循環供給系
34、36 流量制御弁
37 チラー通路
35 バイパス通路
41 ランプ制御部
43 バルブ制御部
51 ハロゲンランプヒータ
52 熱交換器
62 流量制御弁
71 ランプ制御部
73 バルブ制御部
61 冷却水循環系
63 バイパス通路
64 定流量弁
81 ハロゲンランプヒータ
90 バルブ制御部
91 開度決定部
92 操作パルス数決定部
93、94 モータドライバ
101 開度−パルス数テーブル
102 最大開度テーブル
103 最小開度テーブル
104 標準開度テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】 流体を循環させつつ設定温度に調整した流体を温度制御対象に供給する流体循環供給系と、前記流体循環供給系において、前記温度制御対象から出てきた流体と熱交換する第1の熱交換手段と、前記流体循環供給系において、前記温度制御対象に供給される流体と熱交換する第2の熱交換手段と、前記第1の熱交換手段を通る流体の流量を制御する流量制御弁と、前記第2の熱交換手段の熱交換量を所定の設定範囲内に入れるために、前記流量調節弁を制御して前記第1熱交換手段を通る流量を調節するバルブ制御部と、前記温度制御対象に供給される流体の温度を前記設定温度に調整するために、前記第2の熱交換手段の熱交換量を制御する熱交換制御部と、を備え、前記バルブ制御部は、前記流量制御弁の開度を決定する開度決定部と、前記開度から前記流量制御弁の操作量を決定する操作量決定部と、前記操作量を用いて前記流量制御弁を操作する弁操作部とを有し、前記操作量決定部は、前記流量制御弁がもつ前記操作量と流量との非線形な関係を補償して、前記開度と前記流量との関係が所定の理想的関係になるように、前記開度を前記操作量に変換するための開度−操作量変換手段を有する、温度制御装置。
【請求項2】 前記理想的な関係とは、線形な関係である請求項1記載の温度制御装置。
【請求項3】 前記理想的な関係とは、前記開度の変化に対する前記第2の熱交換手段の熱交換量の変化の割合が全ての開度範囲で均等に近づけるための重み付けを、線形な関係に加えた関係である請求項1記載の温度制御装置。
【請求項4】 前記温度制御対象から出た流体を、前記第1の熱交換手段をバイパスして前記第2の熱交換手段へ送るバイパス通路と、前記バイパス通路に設けられたバイパス流量調節弁と、を更に備え、前記バルブ制御部は、前記第2の熱交換手段の熱交換量を所定の設定範囲内に入れるために、前記流量制御弁と前記バイパス流量制御弁の双方を制御し、前記バルブ制御部の開度−操作量変換手段は、前記開度を前記流量制御弁の操作量と前記バイパス流量制御弁の操作量の双方に変換し、前記流量制御弁の操作量と前記バイパス流量制御弁の操作量とは、両者を合計した循環流量が常に一定となるように定められる、請求項1記載の温度制御装置。
【請求項5】 前記バルブ制御部の開度決定手段は、前記温度制御対象へ供給される流体を急冷却又は急加熱するための最大又は最小の開度を決定する最大・最小開度決定手段と、前記温度制御対象へ供給される流体の現在温度と前記設定温度との偏差が所定の整定幅以上あるときに、前記最大・最小開度決定手段から前記最大又は最小の開度を得て前記操作量決定手段に与える急加熱・冷却手段と、を有する請求項1記載の温度制御装置。
【請求項6】 前記バルブ制御部の開度決定手段は、前記第2の熱交換手段の熱交換量を前記設定範囲内に入れるのに適した標準開度を決定する標準開度決定手段と、前記温度制御対象へ供給される流体の現在温度と前記設定温度との偏差が所定の整定幅未満であるときに、前記標準開度決定手段から前記標準開度を得て前記操作量決定手段に与える整定手段と、を有する請求項1又は5記載の温度制御装置。
【請求項7】 流体を循環させつつ設定温度に調整した流体を温度制御対象に供給する流体循環供給系と、冷却液及びヒータを用いて、前記流体循環供給系を循環する流体と熱交換する熱交換手段と、前記熱交換手段を流れる前記冷却液の流量を制御する流量制御弁と、前記熱交換手段のヒータの出力を所定の設定範囲内に入れるために、前記流量調節弁を制御して前記冷却液の流量を調節するバルブ制御部と、前記温度制御対象に供給される流体の温度を前記設定温度に調整するために、前記ヒータの出力を制御するヒータ制御部と、を備え、前記バルブ制御部は、前記流量制御弁の開度を決定する開度決定部と、前記開度から前記流量制御弁の操作量を決定する操作量決定部と、前記操作量を用いて前記流量制御弁を操作する弁操作部とを有し、前記操作量決定部は、前記流量制御弁がもつ前記操作量と流量との非線形な関係を補償して、前記開度と前記流量との関係が所定の理想的関係になるように、前記開度を前記操作量に変換するための開度−操作量変換手段を有する、温度制御装置。
【請求項8】 前記理想的な関係とは、線形な関係である請求項7記載の温度制御装置。
【請求項9】 前記理想的な関係とは、前記開度の変化に対する前記ヒータ出力の変化の割合を全開度範囲で均等に近づけるための重み付けを、線形な関係に加えた関係である請求項7記載の温度制御装置。
【請求項10】 前記バルブ制御部の開度決定手段は、前記温度制御対象へ供給される流体を急冷却又は急加熱するための最大又は最小の開度を決定する最大・最小開度決定手段と、前記温度制御対象へ供給される流体の現在温度と前記設定温度との偏差が所定の整定幅以上あるときに、前記最大・最小開度決定手段から前記最大又は最小の開度を得て前記操作量決定手段に与える急加熱・冷却手段と、を有する請求項7記載の温度制御装置。
【請求項11】 前記バルブ制御部の開度決定手段は、前記ヒータ出力を前記設定範囲内に入れるのに適した標準開度を決定する標準開度決定手段と、前記温度制御対象へ供給される流体の現在温度と前記設定温度との偏差が所定の整定幅未満であるときに、前記標準開度決定手段から前記標準開度を得て前記操作量決定手段に与える整定手段と、を有する請求項7又は10記載の温度制御装置。
【請求項12】 流体を循環させつつ設定温度に調整した流体を温度制御対象に供給する流体循環供給系と、前記流体循環供給系において、前記温度制御対象から出てきた流体と熱交換する第1の熱交換手段と、前記流体循環供給系において、前記温度制御対象に供給される流体と熱交換する第2の熱交換手段と、前記第1の熱交換手段を通る流体の流量を制御する流量制御弁と、前記第2の熱交換手段の熱交換量を所定の設定範囲内に入れるために、前記流量調節弁を制御して前記第1熱交換手段を通る流量を調節するバルブ制御部と、前記温度制御対象に供給される流体の温度を前記設定温度に調整するために、前記第2の熱交換手段の熱交換量を制御する熱交換制御部と、を備えた温度制御装置の前記バルブ制御部であって、前記流量制御弁の開度を決定する開度決定部と、前記開度から前記流量制御弁の操作量を決定する操作量決定部と、前記操作量を用いて前記流量制御弁を操作する弁操作部とを有し、前記操作量決定部は、前記流量制御弁がもつ前記操作量と流量との非線形な関係を補償して、前記開度と前記流量との関係が所定の理想的関係になるように、前記開度を前記操作量に変換するための開度−操作量変換手段を有する、温度制御装置のバルブ制御部。
【請求項13】 流体を循環させつつ設定温度に調整した流体を温度制御対象に供給する流体循環供給系と、冷却液及びヒータを用いて、前記流体循環供給系を循環する流体と熱交換する熱交換手段と、前記熱交換手段を流れる前記冷却液の流量を制御する流量制御弁と、前記熱交換手段のヒータの出力を所定の設定範囲内に入れるために、前記流量調節弁を制御して前記冷却液の流量を調節するバルブ制御部と、前記温度制御対象に供給される流体の温度を前記設定温度に調整するために、前記ヒータの出力を制御するヒータ制御部と、を備えた温度制御装置の前記バルブ制御部であって、前記流量制御弁の開度を決定する開度決定部と、前記開度から前記流量制御弁の操作量を決定する操作量決定部と、前記操作量を用いて前記流量制御弁を操作する弁操作部とを有し、前記操作量決定部は、前記流量制御弁がもつ前記操作量と流量との非線形な関係を補償して、前記開度と前記流量との関係が所定の理想的関係になるように、前記開度を前記操作量に変換するための開度−操作量変換手段を有する、温度制御装置のバルブ制御部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図7】
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【図12】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2000−284832(P2000−284832A)
【公開日】平成12年10月13日(2000.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−91556
【出願日】平成11年3月31日(1999.3.31)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】