説明

災害情報受信装置及び災害情報放送装置

【課題】本発明は、実際の走行状況に即して交差点、急カーブや峠等の見通しの悪い場所を避けて車両を停止させることができ、各車両が必要とする情報を各車両に提供することができる災害情報受信装置及び災害情報放送装置を提供することを目的とする。
【解決手段】災害情報を受信する災害情報受信手段12〜16と、移動体の位置情報及び地図情報を出力するナビゲーション手段10と、災害情報受信手段で災害情報を受信したとき前記ナビゲーション手段からの地図情報から前記移動体を停止させるのに適した位置を選択して案内する案内手段20〜22を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害情報受信装置及び災害情報放送装置に係り、移動体に災害情報を伝達する災害情報受信装置及び災害情報放送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から緊急警報放送とナビゲーションシステムを組み合わせることで、緊急警報放送の受信時に適切な地図情報を表示させるシステムが開発されている。特許文献1には、緊急警報放送による地域情報と車両の現在位置から危険地域内か否かを判定し、危険地域内であれば避難地域を検索するナビゲーションシステムが記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、車載ナビゲーション装置は現在位置における局地的な環境情報をナビゲーション本部装置に送信し、ユーザの指令に応じて暫定的な誘導経路を探索してナビゲーション本部装置に質問し、暫定的な誘導経路を探索するための回答情報を受信して出力することが記載されている。
【0004】
また、特許文献3には、災害時に該当地域の震度に応じた危険地域を検索し、危険地域を回避する迂回路を決定して車両に伝達する避難方法が記載されている。
【0005】
また、特許文献4には、デジタル放送の双方向通信機能によって被災地域内の被災情報を収集することが記載されている。
【0006】
特許文献5には、地震発生時に車両に取付けられた電気磁石により車両と線路間に吸引力を発生させて脱線を防止する耐震脱線防止装置が記載されている。
【特許文献1】特開平7−220196号公報
【特許文献2】特開2003−329472号公報
【特許文献3】特開2004−156941号公報
【特許文献4】特開2003−288658号公報
【特許文献5】特開平11−105710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のシステムでは、受信した緊急警報放送に基づいて避難地域を検索するようにしているが、交差点、急カーブや峠等の見通しの悪い場所に停止することがあり、実際の走行状況における適切な案内を行うことが困難な場合があるという問題があった。
【0008】
また、従来の災害時の放送では広範囲の被害状況が報告されるものの、各車両が走行している地域だけの被災状況を提供するものはなく、各車両で必要とする有用な情報が少ないという問題があった。
【0009】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、実際の走行状況に即して交差点、急カーブや峠等の見通しの悪い場所を避けて車両を停止させることができ、各車両が必要とする情報を各車両に提供することができる災害情報受信装置及び災害情報放送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の災害情報受信装置は、災害情報を受信する災害情報受信手段と、
移動体の位置情報及び地図情報を出力するナビゲーション手段と、
前記災害情報受信手段で災害情報を受信したとき前記ナビゲーション手段からの地図情報から前記移動体を停止させるのに適した位置を選択して案内する案内手段を有することにより、実際の走行状況に即して交差点、急カーブや峠等の見通しの悪い場所を避けて車両を停止させることができる。
【0011】
前記災害情報受信装置において、
前記災害情報は、道路の寸断や崖崩れ箇所を含む被災箇所の被災情報を含むことができる。
【0012】
前記災害情報受信装置において、
前記災害情報受信手段と双方向通信を行う通信システムの輻輳を検出する通信状況検知手段を有することができる。
【0013】
本発明の災害情報放送装置は、災害情報を送信する災害情報放送装置であって、
移動体から送信された災害の被災状況及び位置を含む被災情報を取得する被災情報取得手段と、
前記被災情報取得手段で取得した被災情報のうち自装置の放送範囲内の被災情報を含む災害情報を選択して災害放送用の情報を作成し災害情報として送信する災害放送情報作成手段を有することにより、各車両が必要とする災害情報を各車両に提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、実際の走行状況に即して交差点、急カーブや峠等の見通しの悪い場所を避けて車両を停止させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。
【0016】
<災害情報受信装置の構成>
図1は、本発明の災害情報受信装置の一実施形態の構成図を示す。この災害情報受信装置は車載用の装置である。図1において、ナビゲーション装置10は、車両の位置情報及び地図情報を災害情報処理部20に通知する。車両制御ECU(電子制御装置)11は車速等の車両情報を災害情報処理部20に通知する。
【0017】
デジタルTV受信機12はデジタルテレビジョン放送を受信し、緊急警報放送を含む災害情報を受信すると災害情報処理部20に通知する。デジタルラジオ受信機13はデジタルラジオ放送を受信し、緊急警報放送を含む災害情報を受信すると災害情報処理部20に通知する。
【0018】
DSRC(専用狭帯域通信)装置14は、路側に設置された通信機と車載器側との間で無線通信を行う路車間通信システムであり、受信した災害情報を災害情報処理部20に通知すると共に、災害情報処理部20からの送信データを、路車間通信システムを通して災害情報放送装置に送信する。
【0019】
無線LAN装置15は、路車間通信システムのアクセスポイントとの間で双方向の無線LAN通信を行って、受信した災害情報を災害情報処理部20に通知すると共に、災害情報処理部20からの送信データを、路車間通信システムを通して災害情報放送装置に送信する。
【0020】
携帯電話機16は、携帯電話システムの無線基地局との間で双方向の無線通信を行って、受信した災害情報を災害情報処理部20に通知すると共に、災害情報処理部20からの送信データを携帯電話システムと通して災害情報放送装置に送信する。
【0021】
DSRC装置14、無線LAN装置15または携帯電話機16と災害情報処理部20との間に設けられた通信状況検知回路17は、災害時における路車間通信システムや携帯電話システムの輻輳を検出して災害情報処理部20に通知する。
【0022】
ディスプレイ21は災害情報処理部20の制御によりナビゲーション画像を表示すると共に、自車の停車位置及び被災位置を表示する。スピーカ22は災害情報処理部20の制御により警報音や指示メッセージの音声を発する。
【0023】
データ共有I/F(インタフェース)23は例えばメモリカードスロットであり、災害現場等の画像データを格納したメモリカードを災害情報処理部20と接続する。入力装置24は例えばキーボードであり、運転者が災害情報を入力する。
【0024】
<災害情報処理部の動作>
図2は、災害情報処理部20が実行する処理のフローチャートを示す。同図中、ステップS1でデジタルTV受信機12、デジタルラジオ受信機13、DSRC装置14、無線LAN装置15、携帯電話機16で受信した地震や台風等の災害情報を取得し、ステップS2で取得した災害情報から災害が自車の現在位置付近で自車に大きな影響があるか否かを判別し、自車に影響がある場合にはステップS3に進み、取得した災害情報から道路の寸断や崖崩れ箇所を含む被災情報をナビゲーションの地図情報と組み合わせて、地図上に被災箇所を重ねてディスプレイ21に表示すると共に音声で警告する。
【0025】
また、ステップS4でナビゲーション装置10からのナビゲーション情報と車両制御ECU12からの車速を基に、自車が停止または減速しても良い場所を選定し、最適な停車位置をナビゲーション画像と重ねてディスプレイ21に表示すると共に音声で案内する。
【0026】
例えば、被災箇所を除外すると共に、ナビゲーション情報を基に実際の走行状況に即して交差点、急カーブや峠等の見通しの悪い場所から所定距離の範囲を停車位置から除外し、車速を基に余裕を持って停止できる安全な場所を停車位置として案内する。
【0027】
次に、ステップS5で停止したか否かを判別し、まだ停止していなければステップS3に進む。停止した場合にはステップS6に進み、通信状況検知回路17で路車間通信システムや携帯電話システムの輻輳が検出されたか否かを判別し、輻輳が検出された場合には、ステップS7で路車間通信システムや携帯電話システムが混雑して通信が繋がらないことをディスプレイ21に表示すると共に音声で案内してステップS6に進む。
【0028】
一方、上記輻輳が無ければステップS8で通信が繋がったことをディスプレイ21に表示すると共に音声で案内する。
【0029】
ここで、運転者が道路の寸断や崖崩れ箇所を含む災害の被災状況を報告できる状況にあれば、ステップS9で、被災状況をカメラで撮影するなどして最新の災害情報を取得すると共に、災害情報放送装置に対し被災情報を送信して登録する。ステップS9の実行後はステップS6に進む。
【0030】
上記被災情報には運転者の識別情報と位置情報を付加する。この際、災害現場等の画像データを格納したメモリカードをデータ共有I/F23のメモリカードスロットに装着して画像データを災害情報放送装置に伝送し登録することができる。
【0031】
なお、被災情報を災害情報放送装置に登録する際には、有効な被災情報を提供した場合には賞金が獲得でき、偽の被災情報を提供した場合には罰せられる等のメッセージを送信側に通知することで有効な被災情報を多数収集することができる。
【0032】
ところで、ソフトウェア無線の再構築性を利用し、通常使用しているAMラジオ、FMラジオ等のチューナを、災害時にデジタルTV受信機、デジタルラジオ受信機、DSRC装置、無線LAN装置、携帯電話機等のチューナに再構築して災害情報処理部20に接続することができる。この場合には、図3に示すように、自車から所定距離範囲の情報収集したいエリアが異なる放送局(例えばデジタルTV)A,Bの放送範囲A,Bにまたがる場合であっても、デジタルTV受信機12と再構築したデジタルTVのチューナを用いて放送局A,Bの放送を同時に受信することができる。
【0033】
<災害情報放送装置の構成>
図4は、本発明の災害情報放送装置の一実施形態の構成図を示す。この災害情報放送装置は例えばデジタルラジオで緊急警報放送を含む災害情報を送信する。同図中、災害情報受信部30は、気象庁等から地震や台風等の災害情報を受信して災害放送情報作成部31に通知する。被災情報受信部32は、路車間通信システムや携帯電話システムから例えばネットワークを介して、道路の寸断や崖崩れ箇所を含む被災情報を受信して災害放送情報作成部31に通知する。
【0034】
災害放送情報作成部31は、地震や台風等の緊急警報放送を含む災害情報を受信すると、この災害情報から放送用の緊急警報放送を含む災害放送用の情報を作成し、また、被災情報から道路の寸断や崖崩れ箇所等の位置及び規模を放送する災害放送用の情報を作成する。入力装置33からは管理者が作成した災害放送用の情報が入力されると共に、送信塔の指示入力が行われる。上記の災害放送情報作成部31で作成された災害放送用の情報は送信機34から災害情報として送信される。
【0035】
<災害情報放送装置の動作>
図5は、災害情報放送装置が実行する処理の一実施形態のフローチャートを示す。同図中、ステップS11で災害情報受信部30にて地震や台風等の災害情報を受信すると、災害放送情報作成部31はステップS12で災害情報から災害が一定レベルを超える災害であるか、または、入力装置33から放送指示が入力されたか否かを判別する。ここで、一定レベルを超える災害とは、例えば地震の場合は震度7以上の地震の発生である。
【0036】
一定レベルを超える災害の場合、または、放送指示が入力された場合にはステップS13に進み、災害放送情報作成部31で災害放送用の情報を作成し、これを災害情報として一定時間だけ送信する。
【0037】
次に、ステップS14で被災情報受信部32にて道路の寸断や崖崩れ箇所を含む被災情報を受信する。次に、ステップS15で、各被災情報について被災位置が自装置の放送範囲内であるか否かを判別し、被災位置が自装置の放送範囲外の被災情報については無視し、被災位置が自装置の放送範囲内の被災情報について災害放送情報作成部31が道路の寸断や崖崩れ箇所等の位置及び規模を放送する災害放送用の情報を作成し、送信機34から送信する。こののち、ステップS14に進んで処理を継続する。
【0038】
このようにして、自装置の放送範囲内の被災情報を放送することで、各車両が必要とする情報を各車両に提供することができる。
【0039】
なお、デジタルTV受信機12,デジタルラジオ受信機13,DSRC装置14,無線LAN装置15,携帯電話機16が請求項記載の災害情報受信手段に相当し、ナビゲーション装置10がナビゲーション手段に相当し、災害情報処理部20,ディスプレイ21,スピーカ22が案内手段に相当し、通信状況検知回路17が通信状況検知手段に相当し、被災情報受信部32が被災情報取得手段に相当し、災害放送情報作成部31が災害放送情報作成手段に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の災害情報受信装置の一実施形態の構成図である。
【図2】災害情報処理部が実行する処理のフローチャートである。
【図3】情報収集エリアを説明するための図である。
【図4】本発明の災害情報放送装置の一実施形態の構成図である。
【図5】災害情報放送装置が実行する処理の一実施形態のフローチャートである。
【符号の説明】
【0041】
10 ナビゲーション装置
11 車両制御ECU
12 デジタルTV受信機
13 デジタルラジオ受信機
15 無線LAN装置
14 DSRC装置
16 携帯電話機
17 通信状況検知回路
20 災害情報処理部
21 ディスプレイ
22 スピーカ
23 データ共有I/F
24 入力装置
30 災害情報受信部
31 災害放送情報作成部
32 被災情報受信部
33 入力装置
34 送信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
災害情報を受信する災害情報受信手段と、
移動体の位置情報及び地図情報を出力するナビゲーション手段と、
前記災害情報受信手段で災害情報を受信したとき前記ナビゲーション手段からの地図情報から前記移動体を停止させるのに適した位置を選択して案内する案内手段を
有することを特徴とする災害情報受信装置。
【請求項2】
請求項1記載の災害情報受信装置において、
前記災害情報は、道路の寸断や崖崩れ箇所を含む被災箇所の被災情報を含むことを特徴とする災害情報受信装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の災害情報受信装置において、
前記災害情報受信手段と双方向通信を行う通信システムの輻輳を検出する通信状況検知手段を
有することを特徴とする災害情報受信装置。
【請求項4】
災害情報を送信する災害情報放送装置であって、
移動体から送信された災害の被災状況及び位置を含む被災情報を取得する被災情報取得手段と、
前記被災情報取得手段で取得した被災情報のうち自装置の放送範囲内の被災情報を含む災害情報を選択して災害放送用の情報を作成し災害情報として送信する災害放送情報作成手段を
有することを特徴とする災害情報放送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−241471(P2007−241471A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−60229(P2006−60229)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】