説明

物体検出装置および情報取得装置

【課題】簡素な構成にて目標領域の情報を精度よく取得できる情報取得装置およびこれを搭載する物体検出装置を提供する。
【解決手段】情報取得装置1は、波長830nm程度のレーザ光を出射するレーザ光源111と、レーザ光を前記目標領域に向けて投射する投射光学系10と、前記目標領域からの反射光を受光して信号を出力するCMOSイメージセンサ125とを有する。レーザ光が出射されたときにCMOSイメージセンサ125から出力される第1の撮像データから、レーザ光が出射されていないときにCMOSイメージセンサ125から出力される第2の撮像データが減算され、減算結果が、メモリ25に記憶される。3次元距離演算部21cは、メモリ25に記憶された減算結果に基づいて、3次元距離情報を演算し取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目標領域に光を投射したときの反射光の状態に基づいて目標領域内の物体を検出する物体検出装置およびこれに用い好適な情報取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光を用いた物体検出装置が種々の分野で開発されている。いわゆる距離画像センサを用いた物体検出装置では、2次元平面上の平面的な画像のみならず、検出対象物体の奥行き方向の形状や動きを検出することができる。かかる物体検出装置では、レーザ光源やLED(Light Emitting Device)から、予め決められた波長帯域の光が目標領域に投
射され、その反射光がCMOSイメージセンサ等の受光素子により受光される。距離画像センサとして、種々のタイプのものが知られている。
【0003】
目標領域においてレーザ光を走査するタイプの距離画像センサでは、各走査位置におけるレーザ光の出射タイミングと受光タイミングとの間の時間差に基づいて、検出対象物体の各部(各走査位置)までの距離が検出される(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
また、所定のドットパターンを持つレーザ光を目標領域に照射するタイプの距離画像センサでは、ドットパターン上の各ドット位置におけるレーザ光の目標領域からの反射光が受光素子によって受光される。そして、各ドット位置のレーザ光の受光素子上の受光位置に基づいて、三角測量法を用いて、検出対象物体の各部(ドットパターン上の各ドット位置)までの距離が検出される(たとえば、非特許文献1)。
【0005】
この他、アングルの異なる複数のカメラで目標領域を両眼立体視することで検出対象物体の各部までの距離を検出する、いわゆる、ステレオカメラ法による距離画像センサも知られている(たとえば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−70157号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】第19回日本ロボット学会学術講演会(2001年9月18−20日)予稿集、P1279−1280
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記物体検出装置では、レーザ光源等から出射された波長帯域の光のみを受光素子に導くフィルタを配することにより、物体検出の精度が高められる。かかるフィルタとして、当該波長帯域を透過帯域とする狭帯域フィルタが用いられ得る。
【0009】
しかし、このようなフィルタを用いても、レーザ光源等の出射波長帯域には個々に公差があるため、フィルタの透過帯域をレーザ光源の出射波長帯域に完全に整合させることはできない。この場合、たとえば、反射光に対するフィルタの傾き角を変化させることで、フィルタの透過波長帯域を調節することができる。しかし、このためには、フィルタの傾き角を調節する作業が必要となる。また、フィルタを傾けることにより、フィルタ表面で反射される光の量が増加し、その結果、受光素子にて受光される光の量が減少する。さらに、狭帯域フィルタは高価である。
【0010】
また、レーザ光源から出射される光の波長は、レーザ光源の温度変化によって変化する。このため、実動作時に出射波長を一定にするには、光源の温度変化を抑制するために、ペルチェ素子等の温度調節素子が必要となる。
【0011】
本発明は、これらの問題を解消するためになされたものであり、簡素な構成にて目標領域の情報を精度よく取得できる情報取得装置およびこれを搭載する物体検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様は、光を用いて目標領域の情報を取得する情報取得装置に関する。本態様に係る情報取得装置は、所定波長帯域の光を出射する光源と、前記光源を制御する光源制御部と、前記光源から出射された前記光を前記目標領域に向けて投射する投射光学系と、前記目標領域から反射された反射光を受光して信号を出力する受光素子と、前記受光素子から出力された信号の値に関する信号値情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された信号値情報に基づいて前記目標領域に存在する物体の3次元情報を取得する情報取得部とを備える。ここで、前記光源制御部は、前記光の出射と非出射が繰り返されるように前記光源を制御する。また、前記記憶部は、前記光源から前記光が出射されている間に前記受光素子から出力された信号の値に関する第1の信号値情報と、前記光源から前記光が出射されていない間に前記受光素子から出力された信号の値に関する第2の信号値情報とをそれぞれ記憶する。そうして、前記情報取得部は、前記記憶部に記憶された前記第1の信号値情報から前記第2の信号値情報を減算した減算結果に基づいて、前記目標領域に存在する物体の3次元情報を取得する。
【0013】
本発明の第2の態様は、物体検出装置に関する。この態様に係る物体検出装置は、上記第1の態様に係る情報取得装置を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡素な構成にて目標領域の情報を精度よく取得できる情報取得装置およびこれを搭載する物体検出装置を提供することができる。
【0015】
本発明の特徴は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明の一つの実施形態であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以下の実施の形態に記載されたものに制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態に係る物体検出装置の構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係る情報取得装置と情報処理装置の構成を示す図である。
【図3】実施の形態に係る目標領域に対するレーザ光の照射状態とイメージセンサ上のレーザ光の受光状態を示す図である。
【図4】実施の形態に係るレーザ光の発光タイミングと、イメージセンサに対する露光タイミングおよび撮像データの記憶タイミングを示すタイミングチャートである。
【図5】実施の形態に係る撮像データの記憶処理を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態に係る撮像データの減算処理を示すフローチャートである。
【図7】実施の形態に係る撮像データの処理過程を模式的に示す図である。
【図8】実施の形態の変更例に係るレーザ光の発光タイミングと、イメージセンサに対する露光タイミングおよび撮像データの記憶タイミングを示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。本実施の形態は、所定のドットパターンを持つレーザ光を目標領域に照射するタイプの情報取得装置に本発明を適用したものである。
【0018】
まず、図1に本実施の形態に係る物体検出装置の概略構成を示す。図示の如く、物体検出装置は、情報取得装置1と、情報処理装置2とを備えている。テレビ3は、情報処理装置2からの信号によって制御される。
【0019】
情報取得装置1は、目標領域全体に赤外光を投射し、その反射光をCMOSイメージセンサにて受光することにより、目標領域にある物体各部の距離(以下、「3次元距離情報」という)を取得する。取得された3次元距離情報は、ケーブル4を介して情報処理装置2に送られる。
【0020】
情報処理装置2は、たとえば、テレビ制御用のコントローラやゲーム機、パーソナルコンピュータ等である。情報処理装置2は、情報取得装置1から受信した3次元距離情報に基づき、目標領域における物体を検出し、検出結果に基づきテレビ3を制御する。
【0021】
たとえば、情報処理装置2は、受信した3次元距離情報に基づき人を検出するとともに、3次元距離情報の変化から、その人の動きを検出する。たとえば、情報処理装置2がテレビ制御用のコントローラである場合、情報処理装置2には、受信した3次元距離情報からその人のジャスチャーを検出するとともに、ジェスチャに応じてテレビ3に制御信号を出力するアプリケーションプログラムがインストールされている。この場合、ユーザは、テレビ3を見ながら所定のジェスチャをすることにより、チャンネル切り替えやボリュームのUp/Down等、所定の機能をテレビ3に実行させることができる。
【0022】
また、たとえば、情報処理装置2がゲーム機である場合、情報処理装置2には、受信した3次元距離情報からその人の動きを検出するとともに、検出した動きに応じてテレビ画面上のキャラクタを動作させ、ゲームの対戦状況を変化させるアプリケーションプログラムがインストールされている。この場合、ユーザは、テレビ3を見ながら所定の動きをすることにより、自身がテレビ画面上のキャラクタとしてゲームの対戦を行う臨場感を味わうことができる。
【0023】
図2は、情報取得装置1と情報処理装置2の構成を示す図である。
【0024】
情報取得装置1は、光学部の構成として、投射光学系11と受光光学系12とを備えている。投射光学系11は、レーザ光源111と、コリメータレンズ112と、アパーチャ113と、回折光学素子(DOE:Diffractive Optical Element)114を備えている
。また、受光光学系12は、アパーチャ121と、撮像レンズ122と、フィルタ123と、シャッター124と、CMOSイメージセンサ125とを備えている。この他、情報取得装置1は、回路部の構成として、CPU(Central Processing Unit)21と、レー
ザ駆動回路22と、撮像信号処理回路23と、入出力回路24と、メモリ25を備えている。
【0025】
レーザ光源111は、波長830nm程度の狭波長帯域のレーザ光を出力する。コリメータレンズ112は、レーザ光源111から出射されたレーザ光を平行光に変換する。アパーチャ113は、レーザ光の光束断面を所定の形状に調整する。DOE114は、入射面に回折パターンを有する。この回折パターンによる回折作用により、アパーチャ113からDOE114に入射したレーザ光は、ドットマトリックスパターンのレーザ光に変換されて、目標領域に照射される。
【0026】
目標領域からにより反射されたレーザ光は、アパーチャ121を介して撮像レンズ122に入射する。アパーチャ121は、撮像レンズ122のFナンバーに合うように、外部からの光に絞りを掛ける。撮像レンズ122は、アパーチャ121を介して入射された光をCMOSイメージセンサ125上に集光する。
【0027】
フィルタ123は、レーザ光源111の出射波長(830nm程度)を含む波長帯域の光を透過し、可視光の波長帯域をカットするバンドパスフィルタである。フィルタ123は、830nm近傍の波長帯域のみを透過する狭帯域のフィルタではなく、830nmを含む比較的広い波長帯域の光を透過させる安価なフィルタからなっている。
【0028】
シャッター124は、CPU21からの制御信号に応じて、フィルタ123からの光を遮光または通過させる。シャッター124は、たとえば、メカニカルシャッターや電子シャッターである。CMOSイメージセンサ125は、撮像レンズ122にて集光された光を受光して、画素毎に、受光光量に応じた信号(電荷)を撮像信号処理回路23に出力する。ここで、CMOSイメージセンサ125は、各画素における受光から高レスポンスでその画素の信号(電荷)を撮像信号処理回路23に出力できるよう、信号の出力速度が高速化されている。
【0029】
CPU21は、メモリ25に格納された制御プログラムに従って各部を制御する。かかる制御プログラムによって、CPU21には、レーザ光源111を制御するためのレーザ制御部21aと、後述するデータ減算部21bと、3次元距離情報を生成するための3次元距離演算部21cと、シャッター124を制御するためのシャッター制御部21dの機能が付与される。
【0030】
レーザ駆動回路22は、CPU21からの制御信号に応じてレーザ光源111を駆動する。撮像信号処理回路23は、CMOSイメージセンサ125を制御して、CMOSイメージセンサ125で生成された各画素の信号(電荷)をライン毎に順次取り込む。そして、取り込んだ信号を順次CPU21に出力する。CPU21は、撮像信号処理回路23から供給される信号(撮像信号)をもとに、情報取得装置1から検出対象物の各部までの距離を、3次元距離演算部21cによる処理によって算出する。入出力回路24は、情報処理装置2とのデータ通信を制御する。
【0031】
情報処理装置2は、CPU31と、入出力回路32と、メモリ33を備えている。なお、情報処理装置2には、同図に示す構成の他、テレビ3との通信を行うための構成や、CD−ROM等の外部メモリに格納された情報を読み取ってメモリ33にインストールするためのドライブ装置等が配されるが、便宜上、これら周辺回路の構成は図示省略されている。
【0032】
CPU31は、メモリ33に格納された制御プログラム(アプリケーションプログラム)に従って各部を制御する。かかる制御プログラムによって、CPU31には、画像中の物体を検出するための物体検出部31aの機能が付与される。かかる制御プログラムは、たとえば、図示しないドライブ装置によってCD−ROMから読み取られ、メモリ33にインストールされる。
【0033】
たとえば、制御プログラムがゲームプログラムである場合、物体検出部31aは、情報取得装置1から供給される3次元距離情報から画像中の人およびその動きを検出する。そして、検出された動きに応じてテレビ画面上のキャラクタを動作させるための処理が制御プログラムにより実行される。
【0034】
また、制御プログラムがテレビ3の機能を制御するためのプログラムである場合、物体
検出部31aは、情報取得装置1から供給される3次元距離情報から画像中の人およびその動き(ジェスチャ)を検出する。そして、検出された動き(ジェスチャ)に応じて、テレビ1の機能(チャンネル切り替えやボリューム調整、等)を制御するための処理が制御プログラムにより実行される。
【0035】
入出力回路32は、情報取得装置1とのデータ通信を制御する。
【0036】
図3(a)は、目標領域に対するレーザ光の照射状態を模式的に示す図、図3(b)は、CMOSイメージセンサ125におけるレーザ光の受光状態を模式的に示す図である。なお、同図(b)には、便宜上、目標領域に平坦な面(スクリーン)が存在するときの受光状態が示されている。
【0037】
同図(a)に示すように、投射光学系11からは、ドットマトリックスパターンを持ったレーザ光(以下、このパターンを持つレーザ光の全体を「DMP光」という)が、目標領域に向けて照射される。同図(a)には、DMP光の光束断面が破線の枠によって示されている。DMP光内の各ドットは、DOE114による回折作用によってレーザ光の強度が点在的に高められた領域を模式的に示している。DMP光の光束中には、レーザ光の強度が高められた領域が、所定のドットマトリックスパターンに従って点在している。
【0038】
目標領域に平坦な面(スクリーン)が存在すると、これにより反射されたDML光の各ドット位置の光は、同図(b)のように、CMOSイメージセンサ124上で分布する。たとえば、目標領域上におけるP0のドット位置の光は、CMOSイメージセンサ124上では、Ppのドット位置の光に対応する。
【0039】
上記3次元距離演算部21cでは、各ドットに対応する光がCMOSイメージセンサ124上のどの位置に入射したかが検出され、その受光位置から、三角測量法に基づいて、検出対象物体の各部(ドットマトリックスパターン上の各ドット位置)までの距離が検出される。かかる検出手法の詳細は、たとえば、上記非特許文献1(第19回日本ロボット学会学術講演会(2001年9月18−20日)予稿集、P1279−1280)に示されている。
【0040】
かかる距離検出では、CMOSイメージセンサ124上におけるDMP光(各ドット位置の光)の分布状態を正確に検出する必要がある。しかしながら、本実施の形態では、透過帯域幅が比較的広い安価なフィルタ123が用いられているため、DMP光以外の光がCMOSイメージセンサ124に入射し、この光が外乱光となる。たとえば、目標領域に蛍光灯等の発光体があると、この発光体の像がCMOSイメージセンサ124の撮像画像に写り込み、これにより、DMP光の分布状態を正確に検出できないことが起こり得る。
【0041】
そこで、本実施の形態では、以下の処理により、DMP光の分布状態の検出の適正化が図られている。
【0042】
図4および図5を参照して、CMOSイメージセンサ124によるDLP光の撮像処理について説明する。 図4は、レーザ光源111におけるレーザ光の発光タイミングと、
CMOSイメージセンサ125に対する露光タイミングおよびこの露光によりCMOSイメージセンサ125により得られた撮像データの記憶タイミングを示すタイミングチャートである。図5は、撮像データの記憶処理を示すフローチャートである。
【0043】
図4を参照して、CPU21は、2つのファンクションジェネレータの機能を持っており、これらの機能により、パルスFG1、FG2を生成する。パルスFG1は、期間T1毎にHighとLowを繰り返す。パルスFG2は、FG1の立ち上がりタイミングと立
下りタイミングに出力される。たとえば、パルスFG2は、パルスFG1を微分することにより生成される。
【0044】
パルスFG1がHighの間、レーザ制御部21aは、レーザ光源111を点灯させる。また、パルスFG2がHighとなってから期間T2の間、シャッター制御部21dはシャッター124を開き、CMOSイメージセンサ125に対する露光を行う。かかる露光が終わった後、CPU21は、各露光によりCMOSイメージセンサ125により取得された撮像データをメモリ25に記憶させる。
【0045】
図5を参照して、CPU21は、パルスFG1がHighになると(S101:YES)、メモリフラグMFを1にセットし(S102)、レーザ光源111を点灯させる(S103)。そして、パルスFG2がHighになると(S106:YES)、シャッター制御部21dはシャッター124を開き、CMOSイメージセンサ125に対する露光を行う(S107)。この露光は、露光開始から期間T2が経過するまで行われる(S108)。
【0046】
露光開始から期間T2が経過すると(S108:YES)、シャッター制御部21dによりシャッター124が閉じられ(S109)、CMOSイメージセンサ125により撮像された撮像データがCPU125に出力される(S110)。CPU21は、メモリフラグMFが1であるかを判別する(S111)。ここでは、ステップS102においてメモリフラグMFが1にセットされているので(S111:YES)、CPU21は、CMOSイメージセンサ125から出力された撮像データを、メモリ25のメモリ領域Aに記憶する(S112)。
【0047】
その後、目標領域の情報を取得するための動作が終了されていなければ(S114:NO)、S101に戻って、CPU21は、パルスFG1がHighであるかを判定する。引き続きパルスFG1がHighであると、CPU21は、メモリフラグMFを1にセットしたまま(S102)、レーザ光源111を点灯させ続ける(S103)。ただし、このタイミングでは、パルスFG2が出力されていないため(図4参照)、S106における判定がNOとなって、処理がS101に戻る。こうして、CPU21は、パルスFG1がLowになるまで、レーザ光源111を点灯させ続ける。
【0048】
その後、パルスFG1がLowになると、CPU21は、メモリフラグMFを0にセットし(S104)、レーザ光源111を消灯する(S105)。そして、パルスFG2がHighになると(S106:YES)、シャッター制御部21dによりシャッター124が開かれ、CMOSイメージセンサ125に対する露光が行われる(S107)。この露光は、上記と同様、露光開始から期間T2が経過するまで行われる(S108)。
【0049】
露光開始から期間T2が経過すると(S108:YES)、シャッター制御部21dによりシャッター124が閉じられ(S109)、CMOSイメージセンサ125により撮像された撮像データがCPU125に出力される(S110)。CPU21は、メモリフラグMFが1であるかを判別する(S111)。ここでは、ステップS104においてメモリフラグMFが0にセットされているので(S111:NO)、CPU21は、CMOSイメージセンサ125から出力された撮像データを、メモリ25のメモリ領域Bに記憶する(S113)。
【0050】
以上の処理が、情報取得動作の終了まで繰り返される。この処理により、レーザ光源111が点灯しているときにCMOSイメージセンサ125により取得された撮像データと、レーザ光源111が点灯していないときにCMOSイメージセンサ125により取得された撮像データが、それぞれ、メモリ25のメモリ領域Aとメモリ領域Bに記憶される。
【0051】
図6(a)は、CPU21のデータ減算部21bによる処理を示すフローチャートである。
【0052】
メモリ領域Bに撮像データが更新記憶されると(S201:YES)、データ減算部21bは、メモリ領域Aに記憶された撮像データからメモリ領域Bに記憶された撮像データを減算する処理を行う(S202)。ここでは、メモリ領域Aに記憶された各画素の受光光量に応じた信号(電荷)の値から、メモリ領域Bに記憶された対応する画素の受光光量に応じた信号(電荷)の値が減算される。この減算結果が、メモリ25のメモリ領域Cに記憶される(S203)。目標領域の情報を取得するための動作が終了していなければ(S204:NO)、S201に戻って、同様の処理が繰り返される。
【0053】
図6(a)の処理により、メモリ領域Cには、レーザ光源111の点灯時に取得された撮像データ(第1の撮像データ)から、その直後のレーザ光源111の消灯時に取得された撮像データ(第2の撮像データ)が減算された減算結果が更新記憶される。ここで、第1の撮像データと第2の撮像データは、図4、5を参照して説明したように、共に、同じ時間T2だけCMOSイメージセンサ125が露光されて取得されるため、第2の撮像データは、第1の撮像データ中に含まれるレーザ光源111からのレーザ光以外の光によるノイズ成分に等しくなる。よって、メモリ領域Cには、レーザ光源111からのレーザ光以外の光によるノイズ成分が除去された撮像データが記憶されることになる。
【0054】
図7は、図6(a)に処理による効果を模式的に例示する図である。
【0055】
図7(a)のように、撮像領域内に、蛍光灯LDが含まれている場合、上記実施の形態に示す投射光学系10からDMP光を照射しつつ、受光光学系20により撮像領域を撮像すると、撮像画像は、同図(b)のようになる。この撮像画像に基づく撮像データが、メモリ25のメモリ領域Aに記憶される。また、投射光学系10からDMP光を照射させずに、受光光学系20により撮像領域を撮像すると、撮像画像は、同図(c)のようになる。この撮像画像に基づく撮像データが、メモリ25のメモリ領域Bに記憶される。同図(b)の撮像画像から同図(c)の撮像画像を除くと、撮像画像は、同図(d)のようになる。この撮像画像に基づく撮像データが、メモリ25のメモリ領域Cに記憶される。よって、メモリ領域Cには、DMP光以外の光(蛍光灯)によるノイズ成分が除去された撮像データが記憶される。
【0056】
本実施の形態では、メモリCに記憶された撮像データを用いて、CPU21の3次元距離演算部21cによる演算処理が行われる。よって、これにより取得された3次元距離情報(検出対象物の各部までの距離に関する情報)は、精度の高いものとなり得る。
【0057】
以上、本実施の形態によれば、安価なフィルタ123を用いることができるため、コストの低減を図ることができる。さらに、レーザ光源111の波長にずれが生じても、上記減算処理により、DMP光以外の光によるノイズ成分が除去された撮像データが取得されるため、フィルタ123を傾けて透過波長帯域を調節したり、あるいは、レーザ光源111の波長変動を抑えるためにペルチェ素子等の温度調節素子を配したりする必要もない。
【0058】
このように、本実施の形態によれば、簡素な構成にて目標領域の検出対象物体に対する3次元距離情報を精度よく取得することができる。
【0059】
なお、上記のように減算処理を行ってノイズ成分を除去する場合、理論上は、フィルタ123を用いなくても、DMP光による撮像データを取得することができる。しかしながら、一般に、可視光帯域の光の光量レベルは、通常、DMP光の光量レベルよりも数段高
いため、可視光帯域が混ざった光からDMP光のみを上記減算処理により正確に導き出すのは困難である。よって、本実施の形態では、上記のように、可視光を除去するために、フィルタ123が配されている。フィルタ123は、CMOSイメージセンサ125に入射する可視光の光量レベルを十分に低下させ得るものであれば良い。また、フィルタ123の透過波長帯域は、レーザ光源111の温度変化によりレーザ光の波長が変動し得る範囲をカバーできれば良い。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も上記の他に種々の変更が可能である。
【0061】
たとえば、上記実施の形態の図6(a)では、メモリ領域Bが更新されると減算処理が行われるようにしたが、図6(b)のように、メモリ領域Aが更新されると減算処理が行われるようにしても良い。この場合、メモリ領域Aが更新されると(S211:YES)、その直前にメモリ領域Bに記憶された第2の撮像データを用いて、メモリ領域Aに更新記憶された第1の撮像データから第2の撮像データを減算する処理が行われ(S212)、減算結果がメモリ領域Cに記憶される(S203)。
【0062】
また、上記実施の形態では、図4のタイミングチャートに示すように、第1の撮像データの取得と第2の撮像データの取得が交互に行われたが、図8に示すように、第1の撮像データの取得が数回((図8では3回)行われる毎に、第2の撮像データの取得(図8に矢印で示す)が行われるようにしても良い。この場合、取得された第2の撮像データを用いて、その後3回取得された第1の撮像データに対する減算処理が、第1の撮像データの取得の度に行われ、減算結果がメモリ領域Cに記憶される。ここでの減算処理は、図6(b)に従って行われる。
【0063】
また、上記実施の形態では、ドットマトリックスパターンのレーザ光を目標領域に照射するタイプの距離画像センサを用いた情報取得装置に本発明を適用した例を示したが、この他、目標領域においてレーザ光を走査させ、各走査位置におけるレーザ光の出射タイミングと受光タイミングとの間の時間差に基づいて、検出対象物体の各部(各走査位置)までの距離を検出する方式(TOF:Time of Flight)の距離画像センサや、ステレオカメラ方式の距離画像センサを用いる情報取得装置に本発明を適用することも可能である。TOF方式の距離画像センサでは、受光素子に画素がなく、受光面全体の受光量を検出するタイプの受光素子を用いることもできる。
【0064】
さらに、上記実施の形態では、受光素子として、CMOSイメージセンサ125を用いたが、これに替えて、CCDイメージセンサを用いることもできる。
【0065】
本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 情報取得装置
10 投射光学系
111 レーザ光源(光源)
124 シャッター
125 CMOSイメージセンサ(受光素子)
21 CPU
21a レーザ制御部(光源制御部)
21b データ減算部(情報取得部)
21c 3次元距離演算部(情報取得部)
21d シャッター制御部
25 メモリ(記憶部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を用いて目標領域の情報を取得する情報取得装置において、
所定波長帯域の光を出射する光源と、
前記光源を制御する光源制御部と、
前記光源から出射された前記光を前記目標領域に向けて投射する投射光学系と、
前記目標領域から反射された反射光を受光して信号を出力する受光素子と、
前記受光素子から出力された信号の値に関する信号値情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された信号値情報に基づいて前記目標領域に存在する物体の3次元情報を取得する情報取得部と、を備え、
前記光源制御部は、前記光の出射と非出射が繰り返されるように前記光源を制御し、
前記記憶部は、前記光源から前記光が出射されている間に前記受光素子から出力された信号の値に関する第1の信号値情報と、前記光源から前記光が出射されていない間に前記受光素子から出力された信号の値に関する第2の信号値情報とをそれぞれ記憶し、
前記情報取得部は、前記記憶部に記憶された前記第1の信号値情報から前記第2の信号値情報を減算した減算結果に基づいて、前記目標領域に存在する物体の3次元情報を取得する、
ことを特徴とする情報取得装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報取得装置において、
前記記憶部は、前記光が非出射となる度毎に、前記前記第2の信号値情報を記憶し、
前記情報取得部は、前記第1の信号値情報が前記記憶部に記憶される直前または直後に前記記憶部に記憶された前記第2の信号値情報を、当該第1の信号情報から減算した減算結果に基づいて、前記目標領域に存在する物体の3次元情報を取得する、
ことを特徴とする情報取得装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の情報取得装置において、
前記受光素子は、受光量に応じた電荷を貯めて電荷に応じた信号を出力する素子からなり、
前記受光素子に対する露光を制御するシャッターと、前記シャッターを制御するシャッター制御部とを備え、
前記シャッター制御部は、前記第1信号情報を取得する際の前記受光素子に対する露光の時間と、前記第2信号情報を取得する際の前記受光素子に対する露光の時間とが同じとなるように、前記シャッターを制御する、
ことを特徴とする情報取得装置。
【請求項4】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の情報取得装置において、
前記投射光学系は、前記光源から出射された光をドットマトリックス状のパターンで前記目標領域に投射し、
前記受光素子は、画素毎に受光量に応じた信号を出力可能なイメージセンサからなっている、
ことを特徴とする情報取得装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の情報取得装置を有する物体検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−169701(P2011−169701A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32845(P2010−32845)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】