説明

画像処理装置及びその方法

【課題】 従来は、画像信号の全てのエッジ部分でフィルタリング処理が行われるため、モスキートノイズが発生していない部分では画像を劣化させてしまう。
【解決手段】 画像の輝度信号ブロックの水平及び垂直エッジの強度を測定し、水平及び垂直エッジ強度データを1フレーム分、エッジ強度マップメモリ102に記憶する。このエッジ強度データに基づいて、フィルタリング対象のブロックを特定する除去フラグを算出して除去フラグマップメモリ104に記憶する。フィルタ制御器105は、この除去フラグにより特定されるブロックに対して、現フレームに対する水平及び垂直エッジ強度データと、直前フレームの水平及び垂直エッジ強度データとに基づいて、画像の現フレームの対応する色差信号ブロックに2Dフィルタ106によるフィルタリング処理を行って出力するか否かを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばMPEG(Moving Picture Experts Group)方式などにより、周波数変換及び非可逆圧縮符号化された画像データを復号した画像に含まれるノイズ部分を検出して除去する画像処理装置及びその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像の符号化方式として、フレーム内符号化方式であるMotion JPEGやデジタルビデオ等の符号化方式や、フレーム間予測符号化を用いたH.261,H.263,MPEG−1,MPEG−2がある。また近年では、H.264等の符号化方式が知られている。これらの符号化方式は、ISO(International Organization for Standardization:国際標準化機構)やITU(International Telecommunication Union:国際電気通信連合)によって国際標準化されている。
【0003】
符号化方式で代表的なMPEG−2は非可逆符号化と呼ばれ、符号化画像データを復号しても完全に元の画像データに戻らない。これは符号化時に、DCT変換の後に量子化を行うことに起因している。これら符号化方式は、画像信号の統計的な性質を利用し、その信号に含まれる冗長性を取り除くことで情報量の削減を図っている。即ち、人間の視覚は画像の高周波成分に鈍感であるため、その高周波成分を粗く量子化して冗長性を削除し、高い符号化効率を得るようにしている。
【0004】
しかし、この種のDCT変換を行なう非可逆符号化では、高周波成分を制限することによってデータ圧縮を行っているために、画像のエッジ部、或は移動物体の周囲でモスキートノイズと呼ばれるノイズが発生し、復元した画像の画質劣化の原因となっている。このモスキートノイズを低減する方法が提案されており、例えば、入力画像信号のエッジ部を検出し、ノイズ除去フィルタによって画像信号のエッジ部をフィルタリング処理して、モスキートノイズを低減した画像信号を得る方法が提案されている。尚、その他のMPEG等の詳細内容については、ISO/IECによる国際標準を参照されたい。
【0005】
また、このようなノイズ除去を実行する技術として特許文献1には、色成分のノイズ除去に輝度成分の非相関成分を抽出した後、フィルタ処理し、その結果を動き検出信号としてノイズを除去することが記載されている。
【特許文献1】特開平09−051546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上述の従来技術では、画像信号中のモスキートノイズの有無に関係無く、画像信号のエッジ部分でモスキートノイズ除去のフィルタリング処理が行われるため、モスキートノイズが発生していない部分では画像を劣化させてしまう。また、細かなエッジが含まれるテクスチャの領域があった場合、この領域をエッジと誤って判断してテクスチャの情報を削除していた。このため画質を劣化させる結果となっていた。
【0007】
これらの問題点は、周波数変換及び非可逆圧縮符号化された画像データを復号した画像に含まれるモスキートノイズなどのノイズ部分を正確に検出することなく、画像信号のエッジ部にノイズ除去処理を施することに起因して生じていた。また画像信号の細かなエッジを含むテクスチャ領域をノイズ部分とみなしてノイズ除去処理を施していたことにも起因している。
【0008】
更に、ノイズ除去処理の後にインターレース信号をプログレシブ信号へ変換するIP変換等の処理がある場合、その処理へ悪影響を与えないようにノイズを除去する必要がある。言い換えれば、インターレースの情報を維持しつつノイズを除去する必要がある。
【0009】
また色差信号においては、符号化歪みにより、色相が大きく変動することで別の色が発生することがあり、画質の大きな劣化要因となっていた。
【0010】
本発明の目的は、上述した従来の問題点を解決することにある。
【0011】
本願発明の特徴は、画像データに含まれるノイズの発生部分を的確に検出して、画像が持つテクスチャを保持しつつ、ノイズ発生部分に対してのみノイズ除去処理を施すことができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る画像処理装置は以下のような構成を備える。即ち、
画像の輝度信号ブロックにおける水平エッジ及び垂直エッジの強度を測定して水平及び垂直エッジ強度データを取得するエッジ強度測定手段と、
前記水平及び垂直エッジ強度データを前記ブロック単位に少なくとも1フレーム分記憶するエッジ強度記憶手段と、
前記エッジ強度記憶手段に記憶された各ブロック単位のエッジ強度データに基づいて、フィルタリング対象のブロックを特定する特定情報を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された前記特定情報を少なくとも1フレーム分記憶する記憶手段と、
前記画像の前記輝度信号ブロックに対応する色差信号ブロックにフィルタリング処理を行うフィルタ手段と、
前記記憶手段に記憶した前記特定情報により特定される前記フィルタリング対象のブロックに対して、前記エッジ強度測定手段により取得した現フレームに対する水平及び垂直エッジ強度データと、前記エッジ強度記憶手段に記憶された前記現フレームの直前フレームの水平及び垂直エッジ強度データとに基づいて、前記画像の現フレームの対応する色差信号ブロックに前記フィルタ手段によるフィルタリング処理を行って出力するか否かを制御するフィルタ制御手段と、を有することを特徴とする。
【0013】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る画像処理方法は以下のような工程を備える。即ち、
画像の輝度信号ブロックにおける水平エッジ及び垂直エッジの強度を測定して水平及び垂直エッジ強度データを取得するエッジ強度測定工程と、
前記エッジ強度測定工程で取得した水平及び垂直エッジ強度データを前記ブロック単位に少なくとも1フレーム分第1メモリに記憶するエッジ強度記憶工程と、
前記第1メモリに記憶された各ブロック単位のエッジ強度データに基づいて、フィルタリング対象のブロックを特定する特定情報を算出する算出工程と、
前記算出工程で算出された前記特定情報を少なくとも1フレーム分第2メモリに記憶する記憶工程と、
前記画像の前記輝度信号ブロックに対応する色差信号ブロックにフィルタリング処理を行うフィルタ工程と、
前記第2メモリに記憶した前記特定情報により特定される前記フィルタリング対象のブロックに対して、前記エッジ強度測定工程で取得した現フレームに対する水平及び垂直エッジ強度データと、前記第1メモリに記憶された前記現フレームの直前フレームの水平及び垂直エッジ強度データとに基づいて、前記画像の現フレームの対応する色差信号ブロックに前記フィルタ工程によるフィルタリング処理を行って出力するか否かを制御するフィルタ制御工程と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、画像データに含まれるノイズの発生部分を的確に検出して、画像が持つテクスチャを保持しつつノイズ発生部分に対してのみノイズ除去処理を施すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳しく説明する。尚、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものでなく、また本実施の形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像処理装置の主要部の構成を示すブロック図である。尚、本実施の形態では、画像データの処理の単位を、画像の輝度信号の8×8画素サイズ、及び色差信号の4×4画素サイズとし、これを対象ブロックと称す。
【0017】
図1において、水平エッジ強度測定器100は、画像の輝度信号の1ブロックを入力し、水平方向のエッジ強度を測定する。垂直エッジ強度測定器101は、その画像の輝度信号の1ブロックを入力し、垂直方向のエッジ強度を測定する。本実施の形態では、処理単位の対象ブロックの画素に対するエッジ強度をSobelフィルタの累積値で表す。
【0018】
図8(A)(B)は、本実施の形態で用いるSobelフィルタのオペレータの一例を示す図である。図8(A)は、水平エッジ強度測定器100で使用される3×3の水平Sobelフィルタを示し、図8(B)は、垂直エッジ強度測定器101で使用される3×3の垂直Sobelフィルタの一例を示している。
【0019】
エッジ強度マップメモリ(エッジ強度記憶部)102は、水平及び垂直エッジ強度測定器100,101で測定した水平及び垂直方向のエッジ強度データを入力して、各ブロック単位に1フレーム分だけ格納する。尚、このエッジ強度マップメモリ102は2バンク構成であり、一方のメモリバンクに現フレームのエッジ強度データを格納しながら、他方のメモリバンクから、格納されている直前のフレームのエッジ強度データを読み出すことが可能である。このメモリバンクの切替は1フレーム処理毎に行う。除去フラグ算出器103は、エッジ強度マップメモリ102に格納された各ブロック毎のエッジ強度データから、ノイズ除去の対象ブロックかどうかを示すフラグ(特定情報)を算出する。除去フラグマップメモリ104は、この除去フラグ算出器103で算出された除去フラグを、各ブロック単位で1フレーム分だけ格納する。尚、この除去フラグマップメモリ104も2バンク構成であり、一方のメモリバンクに除去フラグを格納しながら他方のメモリバンクから、格納されている直前のフレームの除去フラグを読み出すことが可能である。このメモリバンクの切替は1フレーム処理毎に行う。
【0020】
フィルタ制御器105は、現フレームの水平及び垂直エッジ強度データ、及び直前のフレームのエッジ強度データと、直前のフレームの除去フラグから、後述する2Dフィルタ106を適用するか否かを制御している。ここで、現フレームの水平及び垂直エッジ強度データはそれぞれ、水平エッジ強度測定器100と垂直エッジ強度測定器101により測定された結果である。また直前のフレームのエッジ強度データは、エッジ強度マップメモリ102から読み出され、また直前のフレームの除去フラグは除去フラグマップメモリ104から読み出される。
【0021】
2Dフィルタ106は、フィルタ制御器105からの制御信号110により、対象とする色差信号のブロックを入力し、フレーム内の二次元(以降、2D)フィルタ処理を実行する。
【0022】
尚、本実施の形態では、この2Dフィルタ106にεフィルタを用いる。
【0023】
図9は、このεフィルタ処理を説明する図である。
【0024】
このフィルタ処理では、中心画素の画素値f(x,y)とその近傍画素の画素値f(x+i,y+j),(x,y=−M,...,0,1,...,M)の差分値を計算する。そして、その差分値の絶対値がεよりも大きい場合は、その近傍の画素の画素値を中心画素の画素値に置き換えて平滑化処理を行う。その結果、図9の数式で得られるg(x,y)では、エッジ成分を保護し、小振幅の高調波であるノイズを平滑化して抑制することができる。ここでMは、εフィルタの画素の範囲を規定する値で、通常は「1」或は「2」(この実施の形態では「1」とする)である。またε0は、フィルタ値の範囲(平滑化対象レベル)を規定する値で、保存したエッジのレベル差よりも小さい値とし、通常は「10」以下、本実施の形態では「5」とする。尚、このεフィルタ処理の詳細は下記文献1を参照されたい。(文献1.原島博ほか「ε−分離非線形ディジタルフィルタとその応用」電子情報通信学会、昭57−論146〔A−36〕、昭和57年4月)
セレクタ107は、フィルタ制御器105からの制御信号111により、2Dフィルタ106からの出力、及びフィルタ無しの信号(入力したブロックの色差信号)を選択する。
【0025】
以上の構成を備える装置における動作を図2、図3,図5、図6のフローチャートを参照して説明する。尚、本実施の形態では、先頭フレームとそれ以外のフレームで処理を切り替えるものとする。
【0026】
図2は、本実施の形態に係る画像処理装置における、入力した画像の先頭フレームに対する処理を説明するフローチャートである。
【0027】
図3は、本実施の形態に係る画像処理装置における、入力した画像の先頭フレーム以降のフレームに対する処理を説明するフローチャートである。
【0028】
まず先頭フレームの処理を図2を参照して説明する。
【0029】
まずステップS100で、入力した輝度信号のブロック(ここでは8×8画素)に対して、水平エッジ強度測定器100で水平エッジの強度を測定する。これと並行してステップS101で、入力した輝度信号のブロックに対して垂直エッジ強度測定器101にて、垂直エッジの強度を測定する。そしてステップS102で、それぞれの測定値(エッジ強度データ)をエッジ強度マップメモリ102へ格納する。こうして先頭フレームに対する除去フラグマップを除去フラグマップメモリ104に格納した後、エッジ強度マップメモリ102のバンク切り替えを行って、ステップS102で格納したエッジ強度マップメモリ102からのデータを読み出し可能にする。
【0030】
次にステップS103に進み、エッジ強度マップメモリ102に格納されたエッジ強度データに基づき、除去フラグ算出器103にて除去フラグマップを作成する。この処理は図5のフローチャートを参照して詳しく説明する。次にステップS104で、除去フラグマップメモリ104のバンクを切り替える。これにより、次のフレームでは、エッジ強度マップメモリ102及び除去フラグマップメモリ104の格納済みのバンクからエッジ強度データや除去フラグマップを読み出す。そして、次のフレームに対する処理では、測定したエッジ強度データや、計算した除去フラグマップが、各対応するメモリの他方のバンクに格納されることになる。
【0031】
以上の処理により、入力した画像の先頭フレームでは、エッジ強度マップメモリ102及び除去フラグマップメモリ104への格納処理のみを行い、ノイズ除去のためのフィルタ制御は行わない。
【0032】
次に先頭フレーム以降のフレームに対する処理について、図3を参照して説明する。このフレームでは、前述の図2の先頭フレームに対する処理(S100〜S104)に、ステップS200〜S203で示す処理が追加されたものとなる。従って、ここではこれら追加されたステップS200〜S203について説明する。
【0033】
ステップS102で、現フレームのエッジ強度をエッジ強度マップメモリ102へ格納した後、ステップS200で、エッジ強度マップメモリ102に格納された直前のフレームのブロック毎のエッジ強度データを読み出す。またステップS201で、除去フラグマップメモリ104に格納された直前のフレームのブロック毎の除去フラグマップ(ノイズ除去対象ブロック)を読み出す。次にステップS202に進み、これら直前のフレームのエッジ強度データと除去フラグマップから、2Dフィルタ106の制御信号110及びセレクタ107の制御信号111を生成する。そしてステップS203で、これら制御信号110,111によりノイズ除去フィルタ処理を実行する。次にステップS103で、エッジ強度マップメモリ102に記憶された現フレームのエッジ強度データに基づいて、現フレームに対する除去フラグマップを生成する。そしてこれ以降の処理は図2と同様であるため、その説明を省略する。
【0034】
図4(A)〜(C)は、本実施の形態に係るエッジ強度マップメモリ102及び除去フラグマップメモリ104のデータ構成を説明する図である。
【0035】
図4(A)は、強度データ或は除去フラグを記憶する1フレーム分のメモリエリアを示し、400は、1ブロックに対応するデータエリアを示している。図4(B)は、エッジ強度マップメモリ102のデータエリア400に記憶されるデータ構成を示す。ここには水平エッジ強度測定器100で求められた水平エッジ強度データと、垂直エッジ強度測定器101で求められた垂直エッジ強度データとが対で記憶されている。図4(C)は、除去フラグマップメモリ104に記憶されるノイズ除去対象のブロックであるか否かを示すノイズ除去対象フラグと、後述する拡張したブロックのエッジ強度データと拡張元のブロックのエッジ強度データとの差分値とが記憶される。尚、この差分値は、後述する拡張したブロックでのみ格納される。
【0036】
図5は、図2及び図3のステップS103の除去フラグマップの生成処理を説明するフローチャートである。
【0037】
ステップS300で、エッジ強度マップメモリ102に格納された現フレームの水平及び垂直エッジ強度データを読み出して加算し、その現フレームの各ブロック毎のエッジ強度データを算出する。次にステップS301で、これら測定し格納した現フレームの各ブロックのエッジ強度データのうち、閾値EP1よりもエッジ強度が高い(エッジ強度データが大きい)ブロックを抽出する。そして、その抽出したブロックに対応するイズ除去対象フラグをオンにする。次にステップS302で、その抽出したブロックの周辺(隣接)8ブロックのエッジ強度を計算する。次にステップS303で、その周囲8ブロックに対し、閾値EP2(EP2<EP1)よりもエッジ強度が低くなる(エッジ強度データが小さい)場合に、ステップS301で求めたエッジ強度の高いブロックを含めた拡張ブロックと判定する。そしてステップS304で、この処理により得られた拡張ブロックに対するノイズ除去対象フラグをオンにし、それ以外のブロックに対してはノイズ除去対象フラグをオフにして除去フラグを除去フラグマップメモリ104へ格納する。また、その拡張ブロックに対しては、拡張したブロックのエッジ強度データと、拡張元のブロックのエッジ強度データとの差分値を格納する(図4(C)参照)。
【0038】
図6は、図3のフローチャートのステップS202のフィルタ制御処理(制御信号110,111の生成処理)を説明するフローチャートである。ここでの処理の対象は、前述したノイズ除去対象フラグがオンであるブロックである。
【0039】
まずステップS300で、前述の図5のステップS300と同様に、エッジ強度マップメモリ102に格納された現フレームの水平、垂直エッジ強度データを加算して現フレームのエッジ強度データを算出する。次にステップS401で、エッジ強度マップメモリ102の別のメモリバンクに記憶されている直前フレームの水平、垂直エッジ強度データを読み出して加算し、直前フレームのエッジ強度データを算出する。次にステップS402に進み、ステップS300で算出した現フレームのエッジ強度データと、ステップS401で求めた直前フレームのエッジ強度データとの差分を求める。この結果、{(直前のフレームのエッジ強度データ)−(現フレームのエッジ強度データ)}の差分値の絶対値が閾値TH1以下かどうかを判定する。閾値TH1以下の場合は、そのブロックがノイズ除去対象ブロックであると判断してステップS403に進む。そうでない場合は、フィルタ処理の必要がないと判断してステップS405に進み、制御信号111によりセレクタ107が入力した画像のブロックをそのまま出力するように制御する。尚、この閾値TH1は、水平及び/或は垂直エッジが存在しているが、例えば細かい網目のようなブロックに対するフィルタリング処理を除外するための閾値である。
【0040】
ノイズ除去対象ブロックに対するステップS403の処理では、フィルタの種類を選択するため、現フレームの垂直エッジ強度データから水平エッジ強度データを減算し、その差分値が閾値TH2以下かどうかを判定する。ここで閾値TH2(TH2<TH1)以下の場合は、水平及び垂直方向のエッジ強度差が少ないためステップS404に進み、2Dフィルタ106を実行するための制御信号110を生成する。その他の場合は、垂直方向のエッジが強いためステップS405に進み、フィルタ処理をパスしてフィルタ106が、入力したブロックの画像信号を選択するように制御信号111を生成する。この閾値TH2は、インターレースに特有の水平方向のノイズに対するフィルタリング処理を除外するための値である。
【0041】
図7は、具体的な直前フレームのエッジ領域の拡張例と、現フレームのノイズ除去対象ブロックを決定するまでの例を説明する図である。尚、図7において、各桝目は、前述のブロックに対応している。
【0042】
まず直前のフレーム700では、閾値EP1よりもエッジ強度データが大きいブロック710を選定する(S301)。そしてエッジ強度データが極度に小さい閾値EP2以下のブロック711へ、そのブロック710の領域を拡張し(S303)、以降の処理のノイズ除去対象ブロックとする(S304)。図7の例では、直前フレーム700の太線で示すブロック712が、これら拡張された領域である。
【0043】
次に、直前のフレーム700のエッジ強度データと現フレーム701のエッジ強度データとの差分値を求める。そして、その差分値が閾値TH1(S402)以下、または現フレーム701のエッジ強度データが閾値EP1以上となった場合(S301)はノイズ除去対象のブロック領域とする。その他の場合は、ノイズ除去対象ブロックから除外する。図7の現フレーム701において、714は現フレーム701のエッジ強度データが閾値EP1以下でノイズ除去対象ブロックから除外されたブロックを示している。また715は、現フレーム701のエッジ強度データが閾値EP1以上になって拡張ブロックからノイズ除去対象領域に変更した領域を示している。
【0044】
図10は、本発明の実施の形態に係る画像処理装置を実現するコンピュータ機器のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0045】
CPU1000は、このコンピュータ機器(画像処理装置)の全体の制御、及び種々の処理を行う。メモリ1001は、このコンピュータ機器の制御に必要なオペレーティングシステム(OS)、ソフトウエア(前述のフローチャートに示すプログラム)やデータを記憶するとともに、演算等の処理に必要な記憶領域を提供している。また、このメモリ1001は、CPU1000が各種の処理を行う際のワークエリアとしても用いられる。システムバス1002は、CPU1000と各部とを接続し、データや制御信号をやりとりする。記憶部1003は、前述のフローチャートに示すプログラム等の各種のソフトウエアを蓄積する大容量のハードディスク等の記憶部である。記憶部1004は動画像データを蓄積する記憶部(ハードディスク、MO,CD,DVD等)である。モニタ(表示部)1005は、画像やコンピュータからのシステムメッセージなどを表示する。
【0046】
通信インターフェース(I/F)1007は、通信回路1008に符号化データを送信する通信インターフェースであり、装置外部のLAN、公衆回線、無線回線、放送電波等と接続されている。端末1006は、このコンピュータ機器を起動したり、各種条件を設定したりする。またメモリ1001には、このコンピュータ機器全体を制御し、各種ソフトウエアを動作させるためのOSや動作させるソフトウエアを格納し、画像データを読み込むエリア、各種演算のパラメータ等を格納しておくワーキングエリアが存在する。
【0047】
以上の構成において、処理に先立ち、端末1006から記憶部1004に蓄積されている動画像データから符号化する動画像データを選択して、このコンピュータ機器の起動が指示される。これにより記憶部1003に格納されているプログラムがシステムバス1002を介してメモリ1001のプログラム格納エリアに展開され、この展開されたプログラムが起動される。
【0048】
そして、CPU1000による記憶部1004に格納されている動画像データの符号化処理が開始されると、前述の図2,図3、図5、図6に示すフローチャートに従ったプログラムコードが実行されることになる。
【0049】
以上説明したように本実施の形態に係るコンピュータ機器は、本実施の形態に係るノイズ除去を実現する装置として機能する。
【0050】
[実施の形態のその他の構成]
本実施の形態では、色信号の処理対象ブロックのサイズを4×4画素としたが、8×4,4×8,8×8などのサイズでもかまわない。
【0051】
またエッジ強度測定器100,101の処理では図8(A)(B)に示すSobelフィルタを用いたが、そのほかの微分フィルタでもかまわない。
【0052】
また2Dフィルタ106は、図9(A)(B)に示すオペレータを用いたがその他のものでもかまわない。
【0053】
更に、フレームメモリはフレーム画像を格納するものとしたが、フィールド画像を格納するフィールドメモリでもかまわない。
【0054】
除去フラグ算出器103における閾値EP1,EP2は固定ではなく、フレーム毎に可変に設定してもかまわない。
【0055】
2Dフィルタにεフィルタを用いたが、そのほかの簡便なローパスフィルタでもかまわない。
【0056】
以上説明したように本実施の形態によれば、インターレース信号を含む動画像符号化装置及びその方法において、画像データに含まれるモスキートノイズのような符号化ノイズの発生部分を的確に検出できる。またインターレース信号の状態を維持しつつ、色差信号のノイズ除去処理を施すことができる。
【0057】
以上説明したように本実施の形態によれば、画像データに含まれるモスキートノイズのような符号化ノイズの発生部分を的確に検出することが可能になる。また本来の画像が持つテクスチャを保持しつつ、ノイズ発生部分に対してのみノイズ除去処理を施すことができる。
【0058】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても良いし、また一つの機器からなる装置に適用しても良い。
【0059】
なお、本発明は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムを、システム或いは装置に直接或いは遠隔から供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータが該供給されたプログラムを読み出して実行することによっても達成され得る。その場合、プログラムの機能を有していれば、形態は、プログラムである必要はない。
【0060】
従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明のクレームでは、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も含まれる。その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等、プログラムの形態を問わない。
【0061】
プログラムを供給するための記録媒体としては、様々なものが使用できる。例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、MO、CD−ROM、CD−R、CD−RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD−ROM,DVD−R)などである。
【0062】
その他、プログラムの供給方法としては、クライアントコンピュータのブラウザを用いてインターネットのホームページに接続し、該ホームページからハードディスク等の記録媒体にダウンロードすることによっても供給できる。その場合、ダウンロードされるのは、本発明のコンピュータプログラムそのもの、もしくは圧縮され自動インストール機能を含むファイルであってもよい。また、本発明のプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明のクレームに含まれるものである。
【0063】
また、本発明のプログラムを暗号化してCD−ROM等の記憶媒体に格納してユーザに配布する形態としても良い。その場合、所定の条件をクリアしたユーザに対し、インターネットを介してホームページから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせ、その鍵情報を使用することにより暗号化されたプログラムが実行可能な形式でコンピュータにインストールされるようにする。
【0064】
また、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって、前述した実施形態の機能が実現される形態以外の形態でも実現可能である。例えば、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部または全部を行ない、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
【0065】
更に、記録媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれるようにしてもよい。この場合、その後で、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行ない、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像処理装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施の形態に係る画像処理装置における先頭フレームの処理を説明するフローチャートである。
【図3】本実施の形態に係る画像処理装置における先頭フレーム以降のフレームの処理を説明するフローチャートである。
【図4】本実施の形態に係るエッジ強度マップメモリ及び除去フラグマップメモリのデータ構成を説明する図である。
【図5】図2及び図3のステップS103の除去フラグマップの生成処理を説明するフローチャートである。
【図6】図3のフローチャートのステップS202のフィルタ制御処理(制御信号110〜111の生成処理)を説明するフローチャートである。
【図7】具体的な直前フレームのエッジ領域の拡張例と、現フレームのノイズ除去対象ブロックを決定するまでの例を説明する図である。
【図8】本実施の形態で用いるSobelフィルタのオペレータの一例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係るεフィルタ処理を説明する図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る画像処理装置を実現するコンピュータ機器のハードウェア構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0067】
100 水平エッジ強度測定器
101 垂直エッジ強度測定器
102 エッジ強度マップメモリ
103 除去フラグ算出器
104 除去フラグマップメモリ
105 フィルタ制御器
106 2Dフィルタ
107 セレクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像の輝度信号ブロックにおける水平エッジ及び垂直エッジの強度を測定して水平及び垂直エッジ強度データを取得するエッジ強度測定手段と、
前記水平及び垂直エッジ強度データを前記ブロック単位に少なくとも1フレーム分記憶するエッジ強度記憶手段と、
前記エッジ強度記憶手段に記憶された各ブロック単位のエッジ強度データに基づいて、フィルタリング対象のブロックを特定する特定情報を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された前記特定情報を少なくとも1フレーム分記憶する記憶手段と、
前記画像の前記輝度信号ブロックに対応する色差信号ブロックにフィルタリング処理を行うフィルタ手段と、
前記記憶手段に記憶した前記特定情報により特定される前記フィルタリング対象のブロックに対して、前記エッジ強度測定手段により取得した現フレームに対する水平及び垂直エッジ強度データと、前記エッジ強度記憶手段に記憶された前記現フレームの直前フレームの水平及び垂直エッジ強度データとに基づいて、前記画像の現フレームの対応する色差信号ブロックに前記フィルタ手段によるフィルタリング処理を行って出力するか否かを制御するフィルタ制御手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記算出手段は、前記エッジ強度記憶手段に記憶された前記水平及び垂直のエッジ強度データを各ブロックごとに加算して各ブロックのエッジ強度を算出し、前記算出されたエッジ強度が第1の閾値よりも大きいブロックと、当該ブロックに隣接し、当該ブロックよりも第2の閾値以上小さいエッジ強度を有するブロックとを特定する特定情報を決定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記フィルタ制御手段は、
前記エッジ強度記憶手段に記憶された前記水平及び垂直のエッジ強度データを各ブロックごとに加算して、直前フレームの各ブロックのエッジ強度を算出する手段と、
前記エッジ強度測定手段により測定された現フレームの水平及び垂直のエッジ強度データを、対応する各ブロックごとに加算して、現フレームの各ブロックのエッジ強度を算出する手段とを有し、
前記直前フレームと現フレームの各対応するブロックのエッジ強度に基づいて、前記フィルタ手段によりフィルタリング処理した色差信号ブロックを採用するか否かを決定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記エッジ強度記憶手段及び前記記憶手段は、複数のメモリバンクで構成され、各フレームの画像処理ごとにバンクが切り替えられることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記フィルタ手段は、二次元フィルタリング処理を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
画像の輝度信号ブロックにおける水平エッジ及び垂直エッジの強度を測定して水平及び垂直エッジ強度データを取得するエッジ強度測定工程と、
前記エッジ強度測定工程で取得した水平及び垂直エッジ強度データを前記ブロック単位に少なくとも1フレーム分第1メモリに記憶するエッジ強度記憶工程と、
前記第1メモリに記憶された各ブロック単位のエッジ強度データに基づいて、フィルタリング対象のブロックを特定する特定情報を算出する算出工程と、
前記算出工程で算出された前記特定情報を少なくとも1フレーム分第2メモリに記憶する記憶工程と、
前記画像の前記輝度信号ブロックに対応する色差信号ブロックにフィルタリング処理を行うフィルタ工程と、
前記第2メモリに記憶した前記特定情報により特定される前記フィルタリング対象のブロックに対して、前記エッジ強度測定工程で取得した現フレームに対する水平及び垂直エッジ強度データと、前記第1メモリに記憶された前記現フレームの直前フレームの水平及び垂直エッジ強度データとに基づいて、前記画像の現フレームの対応する色差信号ブロックに前記フィルタ工程によるフィルタリング処理を行って出力するか否かを制御するフィルタ制御工程と、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
前記算出工程は、前記第1メモリに記憶された前記水平及び垂直のエッジ強度データを各ブロックごとに加算して各ブロックのエッジ強度を算出し、前記算出されたエッジ強度が第1の閾値よりも大きいブロックと、当該ブロックに隣接し、当該ブロックよりも第2の閾値以上小さいエッジ強度を有するブロックとを特定する特定情報を決定することを特徴とする請求項6に記載の画像処理方法。
【請求項8】
前記フィルタ制御工程は、
前記第1メモリに記憶された前記水平及び垂直のエッジ強度データを各ブロックごとに加算して、直前フレームの各ブロックのエッジ強度を算出する工程と、
前記エッジ強度測定工程で測定された現フレームの水平及び垂直のエッジ強度データを、対応する各ブロックごとに加算して、現フレームの各ブロックのエッジ強度を算出する工程とを有し、
前記直前フレームと現フレームの各対応するブロックのエッジ強度に基づいて、前記フィルタ工程によりフィルタリング処理した色差信号ブロックを採用するか否かを決定することを特徴とする請求項6に記載の画像処理方法。
【請求項9】
前記第1及び第2メモリはそれぞれ複数のメモリバンクで構成され、各フレームの画像処理ごとにバンクが切り替えられることを特徴とする請求項6に記載の画像処理方法。
【請求項10】
前記フィルタ工程は、二次元フィルタリング処理を行うことを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−182478(P2008−182478A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14200(P2007−14200)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】