説明

画像形成装置および背面投影型表示装置

【課題】実質的に透明なスクリーンを用いて観察者の興味を効果的に引き付けることのできる画像形成装置および背面投影型表示装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置1は、表示面11aを有するスクリーン11と、表示面11aに光を走査することにより画像を描画するプロジェクター12とを有している。スクリーン11は、表示面11aの各部位にて独立して、光を透過する光透過状態と光を拡散する光拡散状態とを選択でき、アドレス光が照射された部位が光拡散状態となる。プロジェクター12は、表示面11aの当該表示面11aに表示する画像に対応した領域が光拡散状態となるようにアドレス光LL’を表示面11aにベクター走査するベクター走査部と、画像を表示するための表示光LL”をラスター走査するラスター走査部とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および背面投影型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、スクリーンに所望の画像(特にCM等の宣伝広告)を表示する装置として、光源から出射されたレーザー光を光スキャナーおよびガルバノミラーによってスクリーンの横方向および縦方向にそれぞれ走査するよう構成された装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、このような特許文献1では、スクリーンが常に光拡散性を有しているため、次のような問題が生じる。第1に、スクリーンに画像を形成しない場合には、スクリーンが視覚的に邪魔となる。第2に、必ずしもスクリーン全域に画像を表示するとは限られず、場合によっては、スクリーンの一部(例えば中央部)のみに画像を表示することもある。このような場合には、スクリーンの画像が表示されていない部分が視覚的に邪魔となる。第3に、広く知られているスクリーンに画像を表示したのでは、観察者の目を引き付けることが困難である。言い換えれば、スクリーンであることが明らかなスクリーンに画像を表示しても、それは当り前のことであって観察者は何の目新しさも感じず、表示されている画像にも特段の興味、関心を持つことがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−134194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、実質的に透明なスクリーンを用いて観察者の興味を効果的に引き付けることのできる画像形成装置および背面投影型表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の画像形成装置は、表示面を有するスクリーンと、前記表示面に光を走査することにより画像を描画するプロジェクターとを有し、
前記スクリーンは、前記表示面の各部位にて独立して、光を透過する光透過状態と光を拡散する光拡散状態とを選択でき、アドレス光が照射された前記部位が前記光拡散状態となり、前記アドレス光が照射されない前記部位が前記光透過状態となるように構成され、
前記プロジェクターは、前記表示面の該表示面に表示する画像に対応した領域が前記光拡散状態となるように前記アドレス光を前記表示面にベクター走査するベクター走査部と、前記画像を表示するための表示光を前記アドレス光の照射によって前記光拡散状態となった領域にラスター走査するラスター走査部とを有することを特徴とする。
【0006】
これにより、実質的に透明なスクリーンを用いて観察者の興味を効果的に引き付けることのできる画像形成装置を提供することができる。特に、観察者は、スクリーンに表示された画像が浮き出て見えるような感覚となり、その画像に一段の興味を持つこととなる。また、使用しないときは透明であるため、まるでガラス板のようであり視覚的に邪魔ともならない。
【0007】
本発明の画像形成装置では、前記アドレス光は、赤外線であることが好ましい。
これにより、アドレス光が観察者に視認されるのを防止することができるとともに、アドレス光が表示面に表示された画像の色合い等に影響を与えるのを防止でき、表示面に所望の画像を表示することができる。
本発明の画像形成装置では、前記ラスター走査部は、前記表示光を出射する表示光出射部および前記表示光を反射し前記表示面へ走査する表示光走査部を有し、
前記ベクター走査部は、前記アドレス光を出射するアドレス光出射部および前記アドレス光を反射し前記表示面へ走査するアドレス光走査部を有していることが好ましい。
これにより、プロジェクターの構成が簡単となる。
【0008】
本発明の画像形成装置では、前記表示光走査部および前記アドレス光走査部は、それぞれ、光反射性を有する光反射部を備えた可動板が少なくとも一方向または互いに直交する二方向へ回動可能に設けられ、当該回動によって前記光反射部で反射した光を前記表示面に走査する光スキャナーを有していることが好ましい。
これにより、表示光走査部およびアドレス光走査部の装置構成が簡単となる。
【0009】
本発明の画像形成装置では、前記アドレス光走査部が有する前記光スキャナーは、前記可動板と、前記可動板を支持する支持部と、前記可動板と前記支持部とを連結する4つの連結部とを有し、前記4つの連結部は、前記可動板の平面視にて、前記可動板の外周に、周方向に沿って90度間隔で設けられていることが好ましい。
これにより、互いに直交する2つの軸のうちの一方の軸まわりの可動板の回動と、他方の軸まわりの可動板の回動とを独立して行うことができる。そのため、可動板を互いに直交する2つの軸のそれぞれの軸まわりに安定して回動させることができる。
【0010】
本発明の画像形成装置では、前記可動板の平面視にて直交する2軸をX軸およびY軸としたとき、
前記4本の連結部のうちの前記可動板を介して対向する一対の連結部は、前記可動板とX軸方向に離間配置された駆動部と、前記可動板と前記駆動部とを連結しX軸方向に延在する第1の軸部と、前記駆動部と前記支持部とを連結しY軸方向に延在する第2の軸部とを有し、
前記4本の連結部のうちの他の一対の連結部は、前記可動板とY軸方向に離間配置された駆動部と、前記可動板と前記駆動部とを連結しY軸方向に延在する第1の軸部と、前記駆動部と前記支持部とを連結しX軸方向に延在する第2の軸部とを有し、
前記4本の連結部の前記第1の軸部は、それぞれ、該第1の軸部の長手方向の途中で屈曲することが好ましい。
これにより、各連結部の構成が簡単となるとともに、可動板の互いに対向する2軸のそれぞれの軸まわりの回動等をスムーズに行うことができる。
【0011】
本発明の画像形成装置では、前記4本の連結部の前記第1の軸部は、それぞれ、前記可動板と前記駆動部の間に設けられた応力緩和部と、前記応力緩和部と前記可動板とを連結し中心軸まわりに捩じり変形可能な可動板側軸部と、前記応力緩和部と前記駆動部とを連結する駆動部側軸部とを有し、前記応力緩和部で屈曲することが好ましい。
これにより、可動板側軸部が受ける応力を応力緩和部で緩和することができ、駆動部側軸部へ伝わるのを防止または抑制することができる。また、4本の連結部のうちの対向する一対の連結部を軸とした可動板の回動を他の一対の連結部の可動板側軸部が捩じり変形することにより許容することができる。そのため、可動板を互いに直交する2軸のそれぞれの軸まわりにスムーズに回動させることができる。
【0012】
本発明の画像形成装置では、前記4本の連結部の前記応力緩和部は、それぞれ、前記可動板の平面視にて、可動板側軸部および駆動部側軸部の延在方向に直交する方向に延在し、中心軸まわりに捩じり変形する一対の変形部を有し、前記一対の変形部のうちの一方の前記変形部は、前記可動板側軸部に連結され、他方の前記変形部は、前記駆動部側軸部に連結されていることが好ましい。
これにより、変形部が捩じり変形することにより第1の軸部に加わる応力を効果的に緩和することができる。
【0013】
本発明の画像形成装置では、前記4本の連結部の前記応力緩和部は、それぞれ、前記一対の変形部の間に設けられ、前記変形部の延在方向と平行な方向に延在し、中心軸まわりに捩じり変形しない非変形部を有していることが好ましい。
これにより、各連結部において、非変形部を軸にして第1の軸部を屈曲させることができる。そのため、各連結部の第1の軸部を簡単かつ確実に屈曲させることができ、可動板を安定して変位させることができる。
【0014】
本発明の画像形成装置では、前記可動板を前記支持部に対して変位させる変位手段を有し、
前記変位手段は、前記4本の連結部に対応して4つ設けられており、
4つの前記変位手段は、それぞれ、前記駆動部に設けられた永久磁石と、前記永久磁石に作用する磁界を発生するコイルとを有していることが好ましい。
これにより、各連結部の動きを独立して制御することができる。また、電磁駆動であるため大きな力を発生することができる。
【0015】
本発明の画像形成装置では、前記4つの変位手段において、前記永久磁石は、前記可動板の厚さ方向に両極が対向するように設けられており、前記コイルは、前記可動板の厚さ方向に直交する方向の磁界を発生させるように設けられていることが好ましい。
これにより、可動板を安定して変位させることができる。
本発明の画像形成装置では、前記プロジェクターは、前記表示面に表示する画像データから前記表示面の前記光拡散状態とする領域を決定し、決定された領域に前記アドレス光が照射されるとともに、前記表示光が前記アドレス光の照射によって前記光拡散状態となった領域に照射されるように、前記ラスター走査部および前記ベクター走査部の作動を制御する制御部を有していることが好ましい。
これにより、より確実に、表示面の画像を表示したい領域のみを光拡散状態とすることができ、表示面に所望の画像を表示することができる。
【0016】
本発明の画像形成装置では、前記表示面の平面視にて互いに直交する方向を第1の方向および第2の方向としたとき、
前記ラスター走査部は、前記表示光を前記第1の方向に走査しつつ前記第2の方向に走査することにより前記表示面に走査するよう構成されており、
前記制御部は、前記画像データに基づいて、前記表示光走査部によって前記表示面に走査される前記表示光の前記第1の方向における振れ幅および前記第2の方向における振れ幅をそれぞれ決定することが好ましい。
これにより、効率的に表示光を表示面に走査することができる。
【0017】
本発明の画像形成装置では、前記プロジェクターは、前記スクリーンの輪郭を前記表示面に直交する方向へ延長して形成される領域内に配置されないことが好ましい。
これにより、プロジェクターによって表示面に表示された画像の観察が阻害されるのを防止するができる。そのため、優れた宣伝広告機能を発揮することができる。
本発明の画像形成装置では、前記プロジェクターは、前記表示面の前記プロジェクターに最も近い部位から1m以内に設置されていることが好ましい。
これにより、プロジェクターから照射される光が例えば歩行者等の障害物によって遮られてしまうのを効果的に防止することができ、より確実に、表示面に所望の画像を表示することができる。
【0018】
本発明の画像形成装置では、前記スクリーンは、第1の電極が形成された光透過性を有する第1の基板と、前記アドレス光が照射された部位の電気抵抗が低下する光導電膜と、液晶が分散されている液晶層と、第2の電極が形成された光透過性を有する第2の基板とが前記表示面側からこの順で設けられていることが好ましい。
これにより、簡単に、光透過状態と光拡散状態とを切り替えることのできるスクリーンを得ることができる。
【0019】
本発明の画像形成装置では、前記液晶層は、前記液晶および高分子が層分離してなる液晶高分子複合層であり、前記液晶および前記高分子は、屈折率異方性を有し、前記第1の電極および前記第2の電極間に電圧を印加することにより前記液晶高分子複合層に印加される電圧の強さに応じて、前記液晶および前記高分子が揃って配向する前記光透過状態と、前記液晶および前記高分子が異なる方向に配向する前記光拡散状態とをとるよう構成されていることが好ましい。
これにより、電圧が印加されていないときは無色透明な光透過状態であり、電圧を印加することにより白濁した光拡散状態となる、画像形成装置の用途に適したスクリーンを得ることができる。
【0020】
本発明の画像形成装置では、前記光透過状態と前記光拡散状態とが切り替わる前記電圧の強さをVとしたとき、前記第1の電極および前記第2の電極間に、前記液晶高分子複合層に印加される電圧の強さが前記Vより大きくならないような電圧を印加した状態にて、前記表示面の前記光拡散状態とする部位に前記アドレス光を照射し、前記光導電膜の前記アドレス光が照射された部位の電気抵抗を低下させることにより、前記液晶高分子複合層の前記アドレス光が照射された部位に作用する電圧の強さを前記Vよりも大きくし、これにより、前記表示面の前記アドレス光が照射された部位を前記光透過状態から前記光拡散状態とすることが好ましい。
これにより、簡単な制御によって、スクリーンの表示面の画像が表示される領域のみを光拡散状態とし、その他の領域を光透過状態とすることができる。
【0021】
本発明の背面投影型表示装置は、筐体と、前記筐体に固定され、表示面を有するスクリーンと、前記筐体内に配置され、前記表示面に光を走査することにより画像を描画するプロジェクターとを有し、
前記スクリーンは、前記表示面の各部位にて独立して、光を透過する光透過状態と光を拡散する光拡散状態とを選択でき、アドレス光が照射された前記部位が前記光拡散状態となり、前記アドレス光が照射されない前記部位が前記光透過状態となるように構成され、
前記プロジェクターは、前記表示面の該表示面に表示する画像に対応した領域が前記光拡散状態となるように前記アドレス光を前記表示面にベクター走査するベクター走査部と、前記画像を表示するための表示光を前記アドレス光の照射によって前記光拡散状態となった領域にラスター走査するラスター走査部とを有することを特徴とする。
これにより、実質的に透明なスクリーンを用いて観察者の興味を効果的に引き付けることのできる背面投影型表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の画像形成装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】図1に示す画像形成装置が有するスクリーンの断面図である。
【図3】スクリーンの透過率と液晶高分子複合層に印加される電圧の強さの関係を示すグラフである。
【図4】スクリーンの等価回路を示す図である。
【図5】スクリーンの作動を示す図である。
【図6】図1に示す画像形成装置が有するプロジェクターの概略構成を示す図である。
【図7】図6に示すベクタースキャンモジュールの概略構成を示す図である。
【図8】図7に示すベクタースキャンモジュールが有する光スキャナーの平面図である。
【図9】図8に示す光スキャナーの断面図である。
【図10】図8に示す光スキャナーが有する連結部の斜視図である。
【図11】図8に示す光スキャナーが有する変位手段を示す断面図である。
【図12】図8に示す光スキャナーの作動を説明するための断面図である。
【図13】図8に示す光スキャナーの作動を説明するための断面図である。
【図14】図6に示すラスタースキャンモジュールの概略構成を示す図である。
【図15】図14に示すラスタースキャンモジュールが有する光スキャナーの斜視図である。
【図16】図15に示す光スキャナーの作動を説明する断面図である。
【図17】図1に示す画像形成装置の作動を説明する図である。
【図18】図14に示すラスタースキャンモジュールの駆動の一例を示す図である。
【図19】本発明に係る第2実施形態の画像形成装置が有する表示光走査部の構成を示す概略図である。
【図20】本発明に係る第3実施形態の画像形成装置の構成を示す概略図である。
【図21】本発明の第4実施形態に係る画像描画装置が備える表示光走査部の光スキャナーを示す平面図である。
【図22】図21中のC−C線断面図である。
【図23】図21に示す光スキャナーが備える駆動手段の電圧印加手段を示すブロック図である。
【図24】図23に示す第1の電圧発生部および第2の電圧発生部で発生する電圧の一例を示す図である。
【図25】本発明の第5実施形態に係る画像描画装置が備えるアドレス光走査部の光スキャナーを示す断面図。
【図26】本発明の背面投影型表示装置の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の画像形成装置および背面投影型表示装置の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の画像形成装置の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の画像形成装置の第1実施形態を示す図、図2は、図1に示す画像形成装置が有するスクリーンの断面図、図3は、スクリーンの透過率と液晶高分子複合層に印加される電圧の強さの関係を示すグラフ、図4は、スクリーンの等価回路を示す図、図5は、スクリーンの作動を示す図、図6は、図1に示す画像形成装置が有するプロジェクターの概略構成を示す図、図7は、図6に示すベクタースキャンモジュールの概略構成を示す図、図8は、図7に示すベクタースキャンモジュールが有する光スキャナーの平面図、図9は、図8に示す光スキャナーの断面図、図10は、図8に示す光スキャナーが有する連結部の斜視図、図11は、図8に示す光スキャナーが有する変位手段を示す断面図、図12および図13は、それぞれ、図8に示す光スキャナーの作動を説明するための断面図、図14は、図6に示すラスタースキャンモジュールの概略構成を示す図、図15は、図14に示すラスタースキャンモジュールが有する光スキャナーの斜視図、図16は、図15に示す光スキャナーの作動を説明する断面図、図17は、図1に示す画像形成装置の作動を説明する図、図18は、図14に示すラスタースキャンモジュールの駆動の一例を示す図である。
なお、以下では、説明の便宜上、図1、図2、図9、図12、図13、図15および図16中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0024】
図1に示す画像形成装置1は、例えばビル等の建物内また屋外に設置されたスクリーン(表示対象物)11と、スクリーン11の表示面11aに静止画や動画等の所定の画像を表示するプロジェクター12とを有している。
本実施形態では、スクリーン11は、ステージSによって支持されており、例えば、建物の壁等に固定されたり、立て懸けられたりすることなく設置されている。また、スクリーン11は、画像を表示しない時は、無色透明(光透過状態)であり、まるでガラス板のようにその背後を視認できるようになっている。
【0025】
そして、プロジェクター12によって、スクリーン11に画像を表示する際には、表示面11aの画像が表示される領域のみを白濁した状態(光拡散状態)とし、その白濁した状態の領域にプロジェクター12からレーザー光(表示光LL”)を照射することにより、スクリーン11に所望の画像を表示する。この際、画像が表示されていない領域は透明状態を保ったままである。
【0026】
このような構成の画像形成装置1によれば、第1に、非使用時(画像を表示しない時)にスクリーン11が視覚的に邪魔にならないという利点がある。第2に、使用時(画像を表示している時)には、透明な板に画像が表示されるため、観察者に画像が浮き出ているような感覚を与えることができ、表示されている画像への興味・関心を効果的に持たせることができる。
すなわち、画像形成装置1は、非使用時にスクリーン11が視覚的に邪魔になることがなく、使用時には優れた広告宣伝効果を発揮することができる。
【0027】
また、本実施形態のプロジェクター12は、スクリーン11の近傍に設けられておりスクリーン11に対して近接投影にて画像を表示するように構成されている。本実施形態では、プロジェクター12をスクリーン11の下前方に設けている。また、プロジェクター12は、スクリーン11の表示面11aの最もプロジェクター12に近い部位から1m以内に設けられている。このように、プロジェクター12をスクリーン11の近傍に設けることにより、プロジェクター12から照射されるレーザー光が例えば歩行者等の障害物によって遮られてしまうのを効果的に防止することができ、より確実に、表示面11aに所望の画像を表示することができる。
【0028】
さらに、本実施形態のプロジェクター12は、スクリーン11の輪郭を表示面11aに直交する方向へ延長して形成される領域内に配置されていない。すなわち、プロジェクター12は、図1中の点線で囲まれる領域外に設置されている。これにより、表示面11aに表示された画像の観察が、プロジェクター12によって阻害されるのを効果的に防止できる。そのため、表示面11aに表示された画像が観察者に観察され易くなり、優れた宣伝広告機能を発揮することができる。
【0029】
以下、画像形成装置1の構成要素たるスクリーン11およびプロジェクター12について順次詳細に説明する。
−スクリーン11−
図2に示すように、スクリーン11は、第1の電極111aが形成された第1の基板111、光導電膜112、配向膜113、液晶高分子複合層(液晶層)114、配向膜115および第2の電極116aが形成された第2の基板116が表示面11a側からこの順で積層することにより構成されたスクリーン本体118と、第1の電極111aおよび第2の電極116a間に電圧を印加する電圧印加手段117とを有している。このような構成とすることにより、簡単に、前述したような光透過状態と光拡散状態とを切り替えることのできるスクリーン11を得ることができる。
【0030】
第1の基板111および第2の基板116は、それぞれ、シート状(平板状)の部材で構成され、これらの間に配置される各部材を支持および保護する機能を有している。また、第1の基板111および第2の基板116は、それぞれ、光透過性を有しており実質的に無色透明である。第1の基板111および第2の基板116は、それぞれ、可撓性を有していてもよく、硬質であってもよい。
【0031】
第1の基板111および第2の基板116の構成材料としては、それぞれ、特に限定されず、例えば、ガラス、シリコン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネートなどの高分子フィルムを用いることができる。
第1の基板111の下面(液晶高分子複合層114側の面)には、膜状の第1の電極111aが形成されており、第2の基板116の上面(液晶高分子複合層114側の面)には、膜状の第2の電極116aが形成されている。第1の電極111aおよび第2の電極116aは、それぞれ、光透過性を有しており実質的に無色透明である。このような第1の電極111aおよび第2の電極116aは、電圧印加手段117に電気的に接続されており、電圧印加手段117によって、第1の電極111aおよび第2の電極116a間に電圧を印加するとこれらの間に電界が生じ、生じた電界が光導電膜112および液晶高分子複合層114に作用する。
【0032】
第1の電極111aおよび第2の電極116aの構成材料としては、それぞれ、実質的に導電性を有し、かつ実質的に無色透明であれば特に限定されず、例えば、金、銀、銅、アルミニウムまたはこれらを含む合金等の金属材料、カーボンブラック等の炭素系材料、ポリアセチレン、ポリフルオレンまたはこれらの誘導体等の電子導電性高分子材料、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート等のマトリックス樹脂中に、NaCl、Cu(CFSO等のイオン性物質を分散させたイオン導電性高分子材料、インジウム酸化物(IO)、インジウムスズ酸化物(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)等の導電性酸化物材料のような各種導電性材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
光導電膜112は、膜状をなし、第1の電極111aの下面(液晶高分子複合層114側の面)に形成されている。また、光導電膜112は、光透過性を有し実質的に無色透明である。このような光導電膜112は、光が照射されると、その光量に応じてインピーダンスが変化するものであればよく、電荷発生物質を蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、CVD法などによって成膜したもの、電荷発生物質を樹脂バインダーに分散し、バーコート法、スピンコート法、ロールコート法、ディップ法、キャスティング法などによって塗布したもの、あるいは、これらの電荷発生層に、電荷輸送層を積層したものなどを用いることができる。
電荷発生物質としては、特に限定されず、例えば、a−Si、ZnS、ZnO、CdS、CdSe、Se、SeTe、TiOなどの無機材料、フタロシアニン系、アゾ系、多環キノン系、インジゴ系、キナクリドン系、ペリレン系、スクエアリウム系、アズレニウム系、シアニン系、ピリリウム系などの有機材料を用いることができる。
【0034】
また、樹脂バインダーとしては、特に限定されず、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラール、アクリル、メタクリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、これらの共重合体などを用いることができる。電荷輸送物質として、カルバゾール系、トリアゾール系、オキサジアゾール系、イミダゾール系、ピラゾリン系、ヒドラゾン系、スチルベン系、アミン系、ニトロフルオレノン系などの有機材料を用いることができる。
【0035】
液晶高分子複合層114は、高分子114bの粒子が液晶114a中に分散して相分離した状態となっている。
高分子114bとしては、液晶相の状態において液晶114aと相溶して、その後、硬化する際に、液晶114aと相分離するものが使用される。このような高分子114bとしては、例えば、高分子主鎖にベンゼン骨格あるいはビフェニル骨格を有する側鎖をつけたものであれば、熱可塑性高分子、熱硬化型高分子、紫外線硬化型高分子の別を問わず、広く用いることができる。
【0036】
一方、液晶114aとしては、電界方向と平行方向に配向する正の誘電異方性を有するものが使用される。このような液晶114aとしては、例えば、フェニルシクロヘキサン誘導体液晶、ビフェニル誘導体液晶、ビフェニルシクロヘキサン誘導体液晶、テルフェニル誘導体液晶、フェニルエーテル誘導体液晶、フェニルエステル誘導体液晶、ビシクロヘキサン誘導体液晶、アゾメチン誘導体液晶、アゾキシ誘導体液晶、ピリミジン誘導体液晶、ジオキサン誘導体液晶、キュバン誘導体液晶等を用いることができる。また、液晶114aとしては、スクリーン11のコントラストを向上させる為に、屈折率異方性Δnのできるだけ大きいものを用いることが好ましい。
【0037】
配向膜113、115は、液晶高分子複合層114の液晶114aおよび高分子114bを第1の基板111および第2の基板116と平行な方向に配向させる配向処理が施されている。高分子114bは、配向する際は液晶相であるが、その後、硬化される為、その配向状態が保たれたまま固定されている。このため、高分子114bは、その後、電界が印加されても配向方向が電界方向に揃うことはない。一方、液晶114aは、配向状態が固定されていない為、電界を印加すると電界方向に揃うことになる。
【0038】
したがって、液晶高分子複合層114に電界を印加していない場合(後述するように電界の強さが例えばV1に達していない場合)には、高分子114bと液晶114aの配向方向は、第1の基板111および第2の基板116に対して平行方向に一致する状態(液晶114aと高分子114bが揃って配向する状態)となる。この状態において、両者の屈折率を一致させることにより、スクリーン11の表示面11aは、透明状態(光透過状態)となる。
【0039】
反対に、液晶高分子複合層114に電界を印加した場合には、液晶114aの配向方向が電界方向に揃うため(液晶114aと高分子114bが異なる方向へ配向する状態となるため)、電界方向において、液晶114aと高分子114bと界面で屈折率の不一致により光散乱状態となり、スクリーン11の表示面11aは、白濁状態(光拡散状態)となる。
【0040】
このような液晶高分子複合層114によれば、電圧が印加されていないときは、無色透明な光透過状態となり、電圧を印加することにより白濁した光拡散状態とすることができるため、画像形成装置1の用途に適したスクリーン11を得ることができる。なお、このような光透過状態と光拡散状態との切り替えは、表示面11aの各部位で独立して行うことができる。
【0041】
ここで、高分子114bとしては、液晶相の高分子前駆体を第1の基板111および第2の基板116間に封入した後、この高分子前駆体を重合したものでもよい。また、本実施形態の液晶高分子複合層114では、高分子114bの粒子が液晶114a中に分散しているが、これと逆に、液晶114aの粒子が高分子114b中に分散するようにしてもよい。
【0042】
次いで、スクリーン11の製造方法の一例を説明する。なお、スクリーン11の製造方法は、以下の方法に限定されない。
まず、第1の基板111の表面に第1の電極111aを形成すると共に、第2の基板116の表面に第2の電極116aを形成する。これら第1、第2の電極111a、116aは、例えば、蒸着法により形成することができる。次いで、第1の電極111aの表面に上述した方法で光導電膜112を形成する。さらに、光導電膜112の表面に例えばポリイミドをスピンコートすることにより配向膜113を形成すると共に、これと同様の方法により、第2の電極116aの表面にも配向膜115を形成する。その後、配向膜113が形成された第1の基板111および配向膜115が形成された第2の基板116を150℃にて焼成する。焼成後、配向膜113、115の表面にラビング処理(配向処理)を施す。なお、ラビング処理の際の擦る方向は、第1の基板111および第2の基板116を組み合わせたときに擦る方向が平行となるようする。
【0043】
次いで、第1の基板111および第2の基板116を、配向膜113、115が向かい合うように対向配置し、隙間が例えば10μmになるように固定する。そして、前記隙間中に高分子前駆体と液晶114aを例えば1:10の割合で相溶して混合した混合物を封入する。なお、高分子前駆体としてパラフェニルフェノールメタクリル酸エステルを使用し、液晶114aとしてPN001(商品名、ロディック社製)を使用することができる。次いで、高分子前駆体と液晶114aの混合物を徐冷し、室温にて紫外線を照射して高分子前駆体を重合して硬化させると共に、液晶114aと高分子114bとして相分離させる。
このようにしてスクリーン11が得られる。
【0044】
次いで、スクリーン11の動作について説明する。なお、説明の便宜上、上記製造方法によって製造されたスクリーン11を例に挙げて説明する。
図2に示す高分子114bおよび液晶114aは、同様の屈折率異方性を示し、配向方向と平行方向における屈折率は1.5程度あり、配向方向と垂直方向の屈折率は1.7程度である。液晶高分子複合層114に電界が印加されていない状態では、液晶114aが高分子114bと同方向に配向しているため、第1の基板111および第2の基板116と垂直な方向における液晶114aと高分子114bの屈折率が一致する。したがって、この状態では、スクリーン11は、透過率80%程度の実質的に無色透明な状態(光透過状態)となる。
【0045】
一方、電圧印加手段117によって、第1の電極111aおよび第2の電極116a間に電圧を印加し、液晶高分子複合層114に電界を作用させると、高分子114bの配向方向はそのままであるのに対し、液晶114aだけが電界方向、つまり第1の基板111および第2の基板116に対して垂直な方向に配向する。このため、第1の基板111および第2の基板116と垂直な電界方向において、高分子114bの屈折率は1.7程度のままであるのに対し、液晶114aの屈折率が1.5程度に変化する。したがって、電界方向における高分子114bと液晶114aの屈折率の差が0.2程度となり、第1の基板111および第2の基板116と垂直な方向から入射した光は、散乱することなる。その結果、この状態では、スクリーン11は、電界方向において白濁する状態(光拡散状態)となる。
【0046】
次いで、スクリーン11の透過率と液晶高分子複合層114に印加される電圧の強さの関係を図3に基づいて説明する。図3に示すように、スクリーン11は、液晶高分子複合層114に印加される電圧の強さがV1を超えるまでは80%程度の高い透過率を保ち、実質的に無色透明の状態を保っている。そして、電圧の強さがV1を超えてからV2に達するまでの間に急峻に透過率が低下し、V2を超えると透過率がほぼゼロになる。このように、スクリーン11では、液晶高分子複合層114に印加される電圧の大きさに対してリニアに透過率が低下するのではなく、所定の電圧値V1を超えたときに、急峻に透過率が低下することが分かる。
【0047】
ここで、電圧印加手段117によって第1の電極111aおよび第2の電極116a間に印加される電圧と、液晶高分子複合層114に実際に印加される電圧の関係を説明する。図4は、スクリーン11の等価回路を示す図である。なお、図4では、液晶高分子複合層114および光導電膜112以外の構成要素(例えば第1の電極111aおよび第2の電極116a)の等価静電容量および等価抵抗値を無視している。
【0048】
図4中、CAおよびRAは、液晶高分子複合層114の静電容量および抵抗値を示し、VAは、第1の電極111aおよび第2の電極116a間に電圧Vが印加された場合に液晶高分子複合層114に実際に印加される電圧を示す。また、図4中、COおよびROは、光導電膜112の静電容量および抵抗値を示し、VOは、第1の電極111aおよび第2の電極116a間に電圧Vが印加された場合に光導電膜112で発生する電圧降下を示す。
【0049】
抵抗値ROは、プロジェクター12から照射されるアドレス光LL’の光量に応じて変化する。アドレス光LL’が照射されていない場合(または、光量が小さい場合)には、光導電膜112の抵抗値ROは十分に大きく、液晶高分子複合層114に実際に印加される電圧VAは、静電容量CA、COの静電容量分圧によって以下のようになる。
VA=(C/CA)V……(1)
C=CA・CO/(CA・CO)……(2)
【0050】
一方、アドレス光LL’の光量が増加すると、内部光電効果によって光導電膜112の抵抗値ROが減少し、液晶高分子複合層114に実際に印加される電圧VAは、増加する。すなわち、画像形成装置1では、第1の電極111aおよび第2の電極116a間に電圧が印加されている状態で、プロジェクター12からスクリーン11に照射されるアドレス光LL’の光量を制御することによって、液晶高分子複合層114に実際に印加される電圧VAを制御することができる。
【0051】
次いで、このようなスクリーン11の使用方法について説明する。
まず、電圧印加手段117により、第1の電極111aおよび第2の電極116a間に電圧(交番電圧)を印加する(以下では、この状態を「スタンバイ状態」とも言う)。印加する電圧の強さは、液晶高分子複合層114に実際に印加される電圧がV1よりも若干低いかV1と等しくなるような強さであるのが好ましい。これにより、スタンバイ状態においてスクリーン11を実質的に無色透明に保つことができるとともに、スタンバイ状態から電圧を少し増加させることによってスクリーン11を光拡散状態に変化させることができる。なお、本実施形態では、スタンバイ状態でのスクリーン11の透過率が80%程度となるように、第1の電極111aおよび第2の電極116a間に印加する電圧の強さを決定しているが、スタンバイ状態でのスクリーン11の透過率は特に限定されず、例えば70%程度に設定してもよい。これは、スクリーン11のスタンバイ状態において求められる透過率に応じて適宜設定すればよい。
【0052】
次いで、スタンバイ状態のスクリーン11の表示面11aの所望の部位(微少領域)にプロジェクター12からアドレス光LL’を照射する。すると、アドレス光LL’が照射された部位では、アドレス光LL’が照射されたことにより光導電膜112の電気抵抗が低下し、液晶高分子複合層114に印加される実際の電圧が高くなる。これにより、この部位の透過率が低下して白濁し光拡散状態となる。一方、アドレス光LL’が照射されない部位については、液晶高分子複合層114に印加されている電圧の強さが変化しないため無色透明な状態を維持している。そして、白濁した状態の部位を、表示面11aに表示する画像に対応して、すなわち画像を表示する領域に形成することにより、例えば図5に示すように、表示面11aに画像の輪郭に対応した光拡散領域(実際にスクリーンとして機能する領域)11bが形成される。
【0053】
表示面11aに照射するアドレス光LL’の光量としては、アドレス光LL’を照射した部位の透過率を低下させることができれば特に限定されないが、スクリーン11の透過率が20%以下となるような光量であるのが好ましく、5%以下となるような光量であるのがより好ましい。これにより、優れた光拡散性を有する光拡散領域を形成することができる。
このように、スクリーン11は、スタンバイ状態では無色透明とし、画像が表示される領域のみを光拡散状態とするように使用される。これにより、前述のような優れた広告宣伝効果を発揮することができる。
以上、スクリーン11について詳細に説明した。
【0054】
−プロジェクター12−
次いで、プロジェクター12について説明する。
図6に示すように、プロジェクター12は、ベクタースキャンモジュール(ベクター走査部)12aと、ラスタースキャンモジュール(ラスター走査部)12bと、ベクタースキャンモジュール12aおよびラスタースキャンモジュール12bの作動を制御する制御部12cとで構成されている。ベクタースキャンモジュール12aは、表示面11aに所望の画像が表示できるように、表示面11aの前記画像に対応する領域を光拡散状態とするためのアドレス光LL’をベクター走査する。一方のラスタースキャンモジュール12bは、表示面11aのアドレス光LL’の照射によって光拡散状態となった領域に画像を表示するための表示光LL”をラスター走査する。このような構成のプロジェクター12によれば、スクリーン11の表示面11aの画像が表示される領域以外の領域を透明に保つことができるため、前述したように、表示面11aに、観察者に興味、関心を強く持たせるような画像を表示することができる。
【0055】
ここで、ベクター走査とは、レーザー光をスクリーン11の表示面11aの異なる2点を結ぶ線分を順次形成するように走査する手法であり、表示面11aに表示すべき画像に合わせて表示面11aの必要な部位(レーザー光を照射したい箇所)にのみレーザー光を不規則に走査する。一方のラスタースキャンとは、レーザー光を表示面11aの水平方向(第1の方向)に走査すると共に、垂直方向(第2の方向)に走査することで2次元的に走査する手法であり、レーザー光を規則的に走査する。
【0056】
[ベクタースキャンモジュール]
図7に示すように、ベクタースキャンモジュール12aは、アドレス光LL’を出射するアドレス光用光源ユニット(アドレス光出射部)21と、アドレス光LL’を反射し表示面11aへ走査するアドレス光走査部22とを有している。これにより、ベクタースキャンモジュール12aの装置構成が簡単となる。
【0057】
(アドレス光用光源ユニット)
アドレス光用光源ユニット21は、アドレス光LL’としての赤外レーザー(赤外線)を出射するレーザー光源211iと、レーザー光源211iに対応して設けられたコリメーターレンズ212iおよびダイクロイックミラー213iとを備えている。レーザー光源211iから出射されたアドレス光LL’は、コリメーターレンズ212iによって平行化されて細いビームとされた後、ダイクロイックミラー213iによって反射される。そして、反射されたアドレス光LL’がアドレス光用光源ユニット21から出射する。
【0058】
このように、アドレス光LL’として赤外レーザーを用いることにより、アドレス光LL’が観察者に視認されるのを防止することができるとともに、アドレス光LL’が表示面11aに表示される画像の色合い等に影響を与えるのを防止でき、表示面11aに所望の画像を表示することができる。
なお、アドレス光用光源ユニット21では、コリメーターレンズ212iに代えてコリメーターミラーを用いることができ、この場合も、平行光束の細いビームを形成することができる。また、レーザー光源211iから平行光束が出射される場合、コリメーターレンズ212iを省略することができる。
【0059】
(アドレス光走査部)
アドレス光走査部22は、アドレス光用光源ユニット21から出射したアドレス光LL’をスクリーン11の表示面11aにベクター走査する機能を有している。このような光走査部22は、アドレス光用光源ユニット21から出射したアドレス光LL’を表示面11aに対しベクター走査する1つの光スキャナー3を有している。このような構成により、アドレス光走査部22の装置構成が簡単となる。
【0060】
以下、図8〜図13に基づいて、光スキャナー3について説明するが、図8に示すように、互いに直交する3軸をX軸、Y軸およびZ軸とし、非駆動状態の可動板の面と、X軸およびY軸で形成される面とが一致し(平行であり)、可動板の厚さ方向とZ軸とが一致する。また、以下では、X軸に平行な方向を「X軸方向」と言い、Y軸に平行な方向を「Y軸方向」と言い、Z軸方向に平行な方向を「Z軸方向」と言う。
【0061】
図8および図9に示すように、光スキャナー3は、可動板31、可動板31を支持する支持部32および可動板31と支持部32を連結する4本の連結部4、5、6、7で構成された振動系3aと、振動系3aを支持する基台33と、可動板31を変位(回動)させる変位手段8とを有している。
本実施形態の振動系3aは、SOI基板の不要部位をウェットエッチング等の各種エッチング法により除去することにより形成されている。
【0062】
支持部32は、可動板31を支持する機能を有する。このような支持部32は、枠状をなしており、可動板31の周囲を囲むように設けられている。なお、支持部32の形状としては、可動板31を支持することができれば、特に限定されず、例えば、可動板31を介してX軸方向またはY軸方向に対向するように一対設けられていてもよい。
支持部32の内側には、可動板31が設けられている。可動板31は、平板状をなし、一方の面(基台33と反対側の面)311には、光反射性を有する光反射部312が形成されている。アドレス光用光源ユニット21から出射したアドレス光LL’は、この光反射部312にて反射され、表示面11aに走査される。光反射部312は、例えば、面311上にアルミニウム、ニッケル等の金属膜を蒸着等により形成することにより得られる。なお、本実施形態では、可動板31の平面視形状は円形であるが、可動板31の平面視形状としては、特に限定されず、例えば長方形、正方形等の多角形、楕円形等であってもよい。
【0063】
このような可動板31は、4本の連結部4、5、6、7によって支持部32に連結されている。4本の連結部4、5、6、7は、可動板31の平面視にて、可動板31の周方向に沿って等間隔すなわち90度間隔で配置されている。そして、4本の連結部4、5、6、7のうち、連結部4、6は、可動板31を介してX軸方向に対向しかつ可動板31に対して対称的に形成されており、連結部5、7は、可動板31を介してY軸方向に対向しかつ可動板31に対して対称的に形成されている。このような連結部4、5、6、7によって可動板31を支持することにより、可動板31を安定した状態で支持することができる。また、後述するように、可動板31のX軸まわりの回動と、Y軸まわりの回動とを独立して行うことができる。
【0064】
具体的には、連結部4は、駆動板(駆動部)41と、駆動板41と可動板31とを連結する第1の軸部42と、駆動板41と支持部32とを連結する一対の第2の軸部43とを有している。また、連結部5も、駆動板51と、駆動板51と可動板31とを連結する第1の軸部52と、駆動板51と支持部32とを連結する一対の第2の軸部53とを有している。また、連結部6も、駆動板61と、駆動板61と可動板31とを連結する第1の軸部62と、駆動板61と支持部32とを連結する一対の第2の軸部63とを有している。また、連結部7も、駆動板71と、駆動板71と可動板31とを連結する第1の軸部72と、駆動板71と支持部32とを連結する一対の第2の軸部73とを有している。なお、前記「同様の構成」とは、連結部を構成する要素が共通しているということである。したがって、外形形状については一致している必要はない。
各連結部4、5、6、7をこのような構成とすることにより、連結部の構成が簡単となるとともに、後述するように可動板2の回動中心軸X1、Y1まわりの回動等をスムーズに行うことができる。
【0065】
以下、連結部4、5、6、7について具体的に説明するが、連結部4、5、6、7の構成は、互いに同様であるため、連結部4について代表して説明し、他の連結部5、6、7については、その説明を省略する。なお、連結部5、7は、可動板31の平面視にて、連結部4に対して90度回転した状態で配置されている。そのため、連結部5、7については、下記の連結部4の説明中の「Y軸方向」を「X軸方向」とし、「X軸方向」を「Y軸方向」とすることで説明することもできる。
【0066】
図10に示すように、一対の第2の軸部43は、駆動板41を介してY軸方向に対向配置されており、駆動板41を両持ち支持している。また、一対の第2の軸部43は、それぞれ、Y軸方向に延在する棒状をなしている。また、一対の第2の軸部43は、中心軸まわりに捩じり変形可能となっている。このような一対の第2の軸部43は、同軸的に設けられており、この軸(以下、「回動中心軸Y2」とも言う)を中心として、一対の第2の軸部43が捩じり変形するとともに駆動板41が回動する。
【0067】
駆動板41は、可動板31に対してX軸方向に離間して設けられている。また、駆動板41は、前述したように一対の第2の軸部43によって両持ち支持されている。このような駆動板41には貫通孔411が形成されており、この貫通孔411に永久磁石811が挿通、固定されている。永久磁石811は、例えば、嵌合(圧入)や、接着剤によって、駆動板41に固定されている。永久磁石811は、変位手段8の構成の一部であるため、後に説明する。
【0068】
また、本実施形態では、駆動板41の平面視形状は、Y軸方向を長手とする長方形である。駆動板41をこのような形状とすることにより、永久磁石811を固定するスペースを確保しつつ、駆動板41の幅(X軸方向の長さ)を抑えることができる。駆動板41の幅を抑えることにより、駆動板41が回動中心軸Y2まわりに回動する際に発生する慣性モーメントを抑えることができ、駆動板41の反応性が高まり、より高速な回動が可能となる。また、駆動板41の反応性が高まると、駆動板41の回動(特に回動方向が切り替わる切り返しの時)によって、不本意な振動が発生するのを抑えることができる。そのため、光スキャナー3を安定して駆動することができる。
【0069】
なお、駆動板41の平面視形状としては、特に限定されず、例えば、正方形や五角形以上の多角形であってもよいし、円形であってもよい。
このような駆動板41は、第1の軸部42によって可動板31と連結している。第1の軸部42は、全体的にX軸方向に延在するように設けられている。このような第1の軸部42は、駆動板41と可動板31との間に設けられた応力緩和部421と、応力緩和部421と可動板31とを連結する可動板側軸部422と、応力緩和部421と駆動板41とを連結する駆動板側軸部(駆動部側軸部)423とを有している。
可動板側軸部422および駆動板側軸部423は、それぞれ、X軸方向に延在する棒状をなしている。また、可動板側軸部422および駆動板側軸部423は、同軸的に設けられている。
【0070】
これら2つの軸部のうちの駆動板側軸部423は、光スキャナー3の駆動時に実質的に変形しない硬さに設定されている。これに対して可動板側軸部422は、その中心軸まわりに捩じり変形可能となっている。このように、第1の軸部42が実質的に変形しない硬い部分およびその先端側に位置する捩じり変形可能な部位を有することにより、後述するように、可動板31をX軸およびY軸のそれぞれの軸まわりに安定して回動させることができる。なお、前記「変形しない」とは、Z軸方向への屈曲または湾曲および中心軸まわりの捩じり変形が実質的に起きないことを言う。
このような可動板側軸部422および駆動板側軸部423は、応力緩和部421を介して連結している。応力緩和部421は、第1の軸部42が屈曲変形する際の節となる機能と、可動板側軸部422の捩じり変形により発生するトルクを緩和(吸収)し、前記トルクが駆動板側軸部423に伝わるのを防止または抑制する機能とを有している。
【0071】
図10に示すように、応力緩和部421は、一対の変形部4211、4212と、これらの間に設けられた非変形部4213と、変形部4211を非変形部4213に接続する一対の接続部4214と、変形部4212を非変形部4213に接続する一対の接続部4215とを有している。
非変形部4213は、Y軸方向に延在する棒状をなしている。このような非変形部4213は、光スキャナー3の駆動時に実質的に変形しない硬さに設定されている。これにより、後述するように、非変形部4213の中心軸Y4を中心に第1の軸部42を屈曲させることができ、応力緩和部421に節としての機能を確実に発揮させることができ、光スキャナー3を安定して駆動させることができる。
【0072】
このような非変形部4213に対して対称的に一対の変形部4211、4212が配置されている。変形部4211、4212は、それぞれ、Y軸方向に延在する棒状をなしている。また、変形部4211、4212は、互いにX軸方向に離間して並設されている。このような変形部4211、4212は、それぞれ、その中心軸まわりに捩じり変形可能となっている。
【0073】
可動板31側に位置する変形部4211は、その長手方向のほぼ中央にて可動板側軸部422の一端と連結しているとともに、その両端部にて一対の接続部4214を介して非変形部4213に連結している。同様に、駆動板41側に位置する変形部4212は、その長手方向のほぼ中央にて駆動板側軸部423の一端と連結しているとともに、その両端部にて一対の接続部4215を介して非変形部4213に連結している。
【0074】
一対の接続部4214の一方の接続部は、変形部4211および非変形部4213の一端部同士を連結し、他方の接続部は、変形部4211および非変形部4213の他端部同士を連結している。また、一対の接続部4215の一方の接続部は、変形部4212および非変形部4213の一端部同士を連結し、他方の接続部は、変形部4212および非変形部4213の他端部同士を連結している。
このような各接続部4214、4215は、X軸方向に延在する棒状をなしている。また、各接続部4214、4215は、Z軸方向に湾曲可能でかつその中心軸まわりに捩じり変形可能となっている。
以上、振動系3aの構成について具体的に説明した。
【0075】
前述したように、振動系3aは、SOI基板から一体的に形成されている。これにより、振動系3aの形成が容易となる。具体的には、前述したように、振動系3aには、積極的に変形させる部位と、変形させない(変形させたくない)部位とが混在している。一方、SOI基板は、第1のSi層と、SiO層と、第2のSi層とがこの順に積層した基板である。そこで、変形させない部位を前記3つの層の全てで構成するとともに、積極的に変形させる部位を第2のSi層のみで構成することにより、すなわち各部で使用する層を選択することにより、変形させる部位と変形させない部位が混在する振動系3aを簡単に形成することができる。なお、積極的に変形させる部位は、第2のSi層とSiO層の2層で構成されていてもよい。
【0076】
ここで、前記「変形させる部位」には、第2の軸部43、53、63、73、可動板側軸部422、522、622、722、変形部4211、4212、5211、5212、6211、6212、7211、7212および接続部4214、4215、5214、5215、6214、6215、7214、7215が含まれる。一方、前記「変形させない部位」には、可動板31、支持部32、駆動板41、51、61、71、駆動板側軸部423、523、623、723および非変形部4213、5213、6213、7213が含まれる。
【0077】
図9に示すように、基台33は、平板状の基部331と、基部331の縁部に沿って設けられた枠部332とを有しており、箱状(枡状)をなしている。このような基台33は、枠部332にて振動系3aの支持部32の下面と接合されている。これにより、基台33によって振動系3aが支持される。このような基台33は、例えば、ガラスやシリコンを主材料として構成されている。なお、基台33と支持部32の接合方法としては、特に限定されず、例えば接着剤を用いて接合してもよく、陽極接合等の各種接合方法を用いてもよい。
【0078】
図8に示すように、変位手段8は、永久磁石811、コイル812および電源813を有する第1の変位手段81と、永久磁石821、コイル822および電源823を有する第2の変位手段82と、永久磁石831、コイル832および電源833を有する第3の変位手段83と、永久磁石841、コイル842および電源843を有する第4の変位手段84とを有している。
【0079】
そして、第1の変位手段81は、連結部4に対応して設けられており、第2の変位手段82は、連結部5に対応して設けられており、第3の変位手段83は、連結部6に対応して設けられており、第4の変位手段84は、連結部7に対応して設けられている。
このような構成によれば、変位手段8の構成が簡単となる。また、変位手段8を電磁駆動とすることにより、比較的大きな力を発生させることができ、可動板31をより確実に回動させることができる。また、各連結部4、5、6、7に1つの変位手段が設けられているため、各連結部4、5、6、7を独立して変形させることができる。
【0080】
以下、第1の変位手段81、第2の変位手段82、第3の変位手段83および第4の変位手段84について説明するが、これらはそれぞれ同様の構成であるため、以下では、第1の変位手段81について代表して説明し、第2の変位手段82、第3の変位手段83および第4の変位手段84については、その説明を省略する。なお、第2の変位手段82および第4の変位手段84は、可動板31の平面視にて、第1の変位手段81に対して90度回転した状態で配置されている。そのため、第2の変位手段82および第4の変位手段84については、下記の第1の変位手段81の説明中の「Y軸方向」を「X軸方向」とし、「X軸方向」を「Y軸方向」とすることで説明することもできる。
【0081】
図11に示すように、永久磁石811は、棒状をなしており、その長手方向に磁化している。すなわち、永久磁石811は、その長手方向の一端側がS極となっており、他端側がN極となっている。このような永久磁石811は、駆動板41に形成された貫通孔411に挿通されており、長手方向のほぼ中央で駆動板41に固定されている。そして、永久磁石811が、駆動板41の上下に同じ長さだけ突出し、かつ駆動板41(回動中心軸Y2)を介してS極とN極が対向する。これにより、後述するように、可動板31を安定して変位させることができる。
【0082】
また、永久磁石811は、その長手方向が駆動板41の面方向に直交するように設けられている。また、永久磁石811は、その中心軸が回動中心軸Y2と交わるように設けられている。
このような永久磁石811としては、特に限定されず、例えば、ネオジウム磁石、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石、ボンド磁石などの、硬磁性体を着磁したものを好適に用いることができる。
【0083】
なお、本実施形態では、永久磁石811は、棒状をなしているが、永久磁石811の形状としては、特に限定されず、例えば、板状をなしていてもよい。この場合には、永久磁石811を面方向に磁化し、その面方向がX軸方向と直交するように駆動板41に固定すればよい。これにより、永久磁石811のX軸方向長さを短くすることができるため、駆動板41の回動に伴って発生する慣性モーメントを抑えることができる。
【0084】
コイル812は、永久磁石811に作用する磁界を発生する。このようなコイル812は、振動系3aの外側近傍に、X軸方向にて永久磁石811と対向するように配置されている。また、コイル812は、X軸方向の磁界を発生させることができるように、すなわち、コイル812の永久磁石811側がN極となりその反対側がS極となる状態と、コイル812の永久磁石811側がS極となりその反対側がN極となる状態とを発生させることができるように設けられている。
【0085】
光スキャナー3は、振動系3aの外側に基台33と固定的に設けられたコイル固定部85を有しており、このコイル固定部85が有するX軸方向に延在する突出部851にコイル812が巻き付けられている。このような構成とすることにより、コイル812を振動系3aに対して固定でき、かつ、簡単に前述のような磁界を発生させることができる。また、突出部851を鉄などの軟磁性体で構成することにより、突出部851をコイル812の磁芯として用いることができ、前述のような磁界をより効率的に発生させることもできる。
【0086】
電源813は、コイル812に電気的に接続されている。そして、電源813からコイル812に所望の電圧を印加することにより、コイル812から前述したような磁界を発生させることができる。なお、以下では、説明の便宜上、永久磁石811、821、831、841が全てN極を上側にして配置された構成について代表して説明する。
以上、変位手段8について説明した。
【0087】
次いで、光スキャナー3の作動について説明する。
・Y軸まわりの変位
まず、図12に基づいて、可動板31のY軸まわりの変位について説明する。なお、図12は、図8中A−A線断面図に対応する断面図である。
図12(a)に示すように、コイル812の永久磁石811側がN極、コイル832の永久磁石831側がS極となるように、電源813、833からコイル812、832に電圧を印加する。
【0088】
この状態では、永久磁石811のS極がコイル812に引き付けられるとともにN極がコイル812から遠ざかるため、一対の第2の軸部43を捩じり変形させつつ、駆動板41がその上面を可動板31側に向けるように回動中心軸Y2まわりに傾斜する。これとともに、永久磁石831のN極がコイル832に引き付けられるとともにS極がコイル832から遠ざかるため、一対の第2の軸部63を捩じり変形させつつ、駆動板61がその下面を可動板31側に向けるように回動中心軸Y3まわりに傾斜する。すなわち、駆動板41、61がともに図12(a)中時計回りに傾斜する。
この駆動板41、61の傾斜とともに、駆動板側軸部423が可動板31側の端を下側に向けるように傾斜し、駆動板側軸部623が可動板31側の端を上側に向けるように傾斜する。これにより、駆動板側軸部423、623の可動板31側の端同士がZ軸方向にずれた状態となる。
【0089】
そして、駆動板側軸部423、623の可動板31側の端同士がZ軸方向にずれることによって、変形部4211、4212、6211、6212をその中心軸まわりに捩じり変形させるとともに各接続部4214、4215、6214、6215を湾曲変形させながら、可動板側軸部422、622および可動板31が一体的に図12(a)中反時計回りに傾斜する。
このように、第1の状態では、連結部4の第1の軸部42がその途中にある応力緩和部421で下側に凸のV字状に屈曲変形するとともに、連結部6の第1の軸部62がその途中にある応力緩和部621で上側に凸のV字状に屈曲変形することにより、回動中心軸Y1を中心として、可動板31が図12(a)中反時計回りに傾斜する。
【0090】
一方、図12(b)に示すように、コイル812の永久磁石811側がS極、コイル832の永久磁石831側がN極となる状態となるように、電源813、833からコイル812、832に電圧を印加すると、図12(a)の場合と逆の変形が起こる。すなわち、連結部4の第1の軸部42が応力緩和部421で上側に凸のV字状に屈曲変形するとともに、連結部6の第1の軸部62が応力緩和部621で下側に凸のV字状に屈曲変形する。これにより、回動中心軸Y1を中心として、可動板31が図12(b)中反時計回りに傾斜する。
【0091】
このような図12(a)、(b)の状態を規則的または不規則に交互に切り替えたり、図12(a)に示すような可動板31が反時計回りに傾いた状態のままで、その傾斜角(振れ角)を規則的または不規則に変化させたりすることにより、可動板31を回動中心軸Y1まわりに規則的または不規則に回動させることができる。また、コイル812、832に印加する電圧を一定に保つことにより、可動板31を所定の角度に傾いた姿勢に維持することもできる。これにより、ベクター走査に適した挙動で可動板31を回動中心軸Y1まわりに変位させることができる。
なお、可動板31の回動中心軸Y1まわりの回動は、連結部5、7が有する可動板側軸部522、722がその中心軸まわりに捩じり変形することによって許容される。
【0092】
・X軸まわりの変位
次いで、図13に基づいて、可動板31のX軸まわりの変位について説明する。なお、図13は、図8中B−B線断面図に対応する断面図である。
図13(a)に示すように、コイル822の永久磁石821側がN極、コイル842の永久磁石841側がS極となるように電源823、843からコイル822、842に電圧を印加する。すると、前述した可動板31の回動中心軸Y1まわりの回動と同様に、連結部5の第1の軸部52がその途中にある応力緩和部521で下側に凸のV字状に屈曲変形するとともに、連結部7の第1の軸部72がその途中にある応力緩和部721で上側に凸のV字状に屈曲変形することにより、回動中心軸X1を中心として、可動板31が図13(a)中反時計回りに傾斜する。
【0093】
一方、図13(b)に示すように、コイル822の永久磁石821側がS極、コイル842の永久磁石841側がN極となるように電源823、843からコイル822、842に電圧を印加すると、図13(a)の場合と逆の変形が起こる。すなわち、連結部5の第1の軸部52が応力緩和部521で上側に凸のV字状に屈曲変形するとともに、連結部7の第1の軸部72が応力緩和部721で下側に凸のV字状に屈曲変形する。これにより、回動中心軸X1を中心として、可動板31が図13(b)中反時計回りに傾斜する。
【0094】
図13(a)、(b)の状態を規則的または不規則に交互に切り替えたり、図13(a)に示すような可動板31が反時計回りに傾いた状態のままで、その傾斜角(振れ角)を規則的または不規則に変化させたりすることにより、可動板31を回動中心軸X1まわりに規則的または不規則に回動させることができる。また、コイル822、842に印加する電圧を一定に保つことにより、可動板31を所定の角度に傾いた姿勢に維持することもできる。これにより、ベクター走査に適した挙動で可動板31を回動中心軸X1まわりに変位させることができる。
なお、可動板31の回動中心軸X1まわりの回動は、連結部4、6が有する可動板側軸部422、622がその中心軸まわりに捩じり変形することによって許容される。
【0095】
・X軸およびY軸のそれぞれの軸まわりの変位
前述したようなX軸まわりの変位と、Y軸まわりの変位とを同時に行うことにより、可動板31を回動中心軸Y1および回動中心軸X1のそれぞれの軸まわりに2次元的に変位させることができる。ここで、光スキャナー3では、可動板31の回動中心軸Y1まわりの回動と回動中心軸X1まわりの回動とを独立して行うことができる。そのため、光スキャナー3では、回動中心軸Y1の回動が回動中心軸X1まわりの回動に影響を受けず、逆に、回動中心軸X1の回動も回動中心軸Y1まわりの回動に影響を受ない。したがって、光スキャナー3は、回動中心軸Y1および可動中心軸X1のそれぞれの軸まわりに可動板2を安定して回動させることができ、ベクター走査により適した装置構成であると言える。
【0096】
また、前述したように、光スキャナー3では、可動板31の回動中心軸Y1まわりの回動は、可動板側軸部522、722がその中心軸まわりに捩じり変形することによって許容され、可動板31の回動中心軸X1まわりの回動は、可動板側軸部422、622がその中心軸まわりに捩じり変形することにより許容される。このように、各連結部4、5、6、7が中心軸まわりに捩じり変形可能な可動板側軸部422、522、622、722を有しているため、可動板31を回動中心軸Y1、X1のそれぞれの軸まわりにスムーズに回動させることができる。さらには、光スキャナー3では、可動板側軸部422、522、622、722が直接、可動板31に接続されているため、上記効果がより顕著となる。
【0097】
また、光スキャナー3では、連結部4において、前述のように捩じり変形する可動板側軸部422と変形させたくない駆動板側軸部423との間に応力緩和部421を設けている。そのため、前述の捩じり変形により生じた応力は、応力緩和部421の変形部4211、4212や接続部4214、4215が変形することにより吸収・緩和され、駆動板側軸部423に伝わらない。すなわち、応力緩和部421を設けることにより、可動板31の回動中に駆動板側軸部423がその中心軸まわりに捩じり変形してしまうのを確実に防止することができる。このことは、連結部4以外の他の連結部5、6、7についても同様である。そのため、可動板31を回動中心軸Y1、X1のそれぞれの軸まわりにスムーズに変位させることができる。
【0098】
さらには、各駆動板側軸部423、523、623、723の破壊が効果的に防止される。すなわち、棒状の部材において、自然状態からZ軸方向の応力が加わったときの破壊強度よりも、中心軸まわりの捩じり変形が生じている状態からZ軸方向の応力が加わったときの破壊強度の方が低いことが技術的に明らかになっている。そのため、上述のように、応力緩和部421、521、621、721を設け、駆動板側軸部423、523、623、723に捩じり変形を生じさせないことにより、駆動板側軸部423、523、623、723の破壊を効果的に防止することができ。
【0099】
また、連結部4において、駆動板側軸部423が実質的に変形しないため、駆動板41の回動によって生じる応力を効率よく可動板31の回動に用いることができる。このことは連結部5、6、7についても同様である。そのため、可動板31を大きい回動角度でしかも省電力で変位させることができる。
また、連結部4において、応力緩和部421が非変形部4213を有しているため、この非変形部4213を軸にして第1の軸部42を屈曲させることができる。このことは、連結部5、6、7についても同様である。そのため、各連結部4、5、6、7の第1の軸部42、52、62、72を簡単かつ確実に屈曲させることができ、可動板31を安定して変位させることができる。
【0100】
また、連結部4において、応力緩和部421が可動板側軸部422と連結する変形部4211と、駆動板側軸部423と連結する変形部4212とを有し、第1の軸部42の屈曲時に、変形部4211、4212がその中心軸まわりに捩じり変形することにより、屈曲により発生する応力を効果的に緩和している。このことは、連結部5、6、7についても同様である。そのため、各連結部4、5、6、7の第1の軸部42、52、62、72を確実に屈曲させることができるとともに、第1の軸部42、52、62、72の破壊を防止することができる。
【0101】
また、連結部4において、応力緩和部421が一対の変形部4211、4212を有しているため、次のような効果も発揮することができる。すなわち、例えば、通電によりコイル812から発生する熱や光反射部312に照射される光によって生じる熱等による可動板側軸部422および駆動板側軸部423の熱膨張を、変形部4211、4212が変形することにより許容することができる。このことは、連結部5、6、7についても同様である。そのため、光スキャナー3は、振動系3aに応力が残留してしまうのを防止または抑制することができ、温度によらずに所望の振動特性を発揮することができる。
【0102】
[ラスタースキャンモジュール]
図14に示すように、ラスタースキャンモジュール12bは、表示光LL”(レーザー光)を出射する表示光用光源ユニット(表示光出射部)23と、表示面11aに対して表示光用光源ユニット23から出射した表示光LL”を走査する表示光走査部24とを有している。このような構成により、ラスタースキャンモジュール12bを比較的簡単に構成することができる。
【0103】
(表示光用光源ユニット)
表示光用光源ユニット23は、各色のレーザー光源231r、231g、231bと、各色のレーザー光源231r、231g、231bに対応して設けられたコリメーターレンズ232r、232g、232bおよびダイクロイックミラー233r、233g、233bとを備えている。各色のレーザー光源231r、231g、231bは、それぞれ、赤色、緑色および青色のレーザー光RR、GG、BBを出射する。レーザー光RR、GG、BBは、それぞれ、制御部12cから送信される駆動信号に対応して変調された状態で出射され、コリメーターレンズ232r、232g、232bによって平行化されて細いビームとされる。ダイクロイックミラー233r、233g、233bは、それぞれ、赤色レーザー光RR、緑色レーザー光GG、青色レーザー光BBを反射する特性を有し、各色のレーザー光RR、GG、BBを結合して表示光LL”を出射する。
【0104】
なお、コリメーターレンズ232r、232g、232bに代えてコリメーターミラーを用いることができ、この場合も、平行光束の細いビームを形成することができる。また、各色のレーザー光源231r、231g、231bから平行光束が出射される場合、コリメーターレンズ232r、232g、232bを省略してもよい。さらに、レーザー光源231r、231g、231bについては、同様の光束を発生する発光ダイオード等の光源に置換することができる。
【0105】
(表示光走査部)
表示光走査部24は、表示光用光源ユニット23から出射した表示光LL”を表示面11aに対し、水平方向(第1の方向)に走査(水平走査:主走査)すると共に、水平方向の走査速度よりも遅い走査速度で垂直方向(第2の方向:x方向に直交するy方向)に走査(垂直走査:副走査)することで2次元的に走査する。
【0106】
この表示光走査部24は、表示光用光源ユニット23から出射した表示光LL”を表示面11aに対し、水平方向に走査する水平走査用ミラーである光スキャナー25と、光スキャナー25の後述する可動板251aの角度(挙動)を検出する角度検出手段(挙動検出手段)26と、表示光用光源ユニット23から出射した表示光LL”を表示面11aに対し、垂直方向に走査する垂直走査用ミラーである光スキャナー27と、光スキャナー27の後述する可動板271aの角度(挙動)を検出する角度検出手段(挙動検出手段)28とを有している。
【0107】
以下、光スキャナー25、27の構成について説明するが、光スキャナー25、27は、互いに同様の構成であるため、以下では光スキャナー25について代表して説明し、光スキャナー27については、その説明を省略する。
図15に示すように、光スキャナー25は、いわゆる1自由度振動系のものであり、基体251と、基体251の下面に対向するよう設けられた対向基板253と、基体251と対向基板253との間に設けられたスペーサー部材252とを有している。
【0108】
基体251は、可動板251aと、可動板251aを回動可能に支持する支持部251bと、可動板251aと支持部251bとを連結する1対の連結部251c、251dとを有している。
可動板251aは、その平面視にて、略長方形状をなしている。このような可動板251aの上面には、光反射性を有する光反射部251eが設けられている。光反射部251eは、例えば、Al、Ni等の金属膜で構成されている。また、可動板251aの下面には、永久磁石254が設けられている。
【0109】
支持部251bは、可動板251aの平面視にて、可動板251aの外周を囲むように設けられている。すなわち、支持部251bは、枠状をなしていて、その内側に可動板251aが位置している。
連結部251cは、可動板251aの一方側にて、可動板251aと支持部251bとを連結し、連結部251dは、可動板251aの他方側にて、可動板251aと支持部251bとを連結している。このような連結部251c、251dは、それぞれ、長手形状をなしている。また、連結部251c、251dは、それぞれ、弾性変形可能である。このような1対の連結部251c、251dは、互いに同軸的に設けられており、この軸(以下「回動中心軸J1」と言う)を中心として、可動板251aが支持部251bに対して回動する。
【0110】
このような基体251は、例えば、シリコンを主材料として構成されていて、可動板251aと支持部251bと連結部251c、251dとが一体的に形成されている。このように、シリコンを主材料とすることにより、優れた回動特性を実現できるとともに、優れた耐久性を発揮することができる。また、微細な処理(加工)が可能であり、光スキャナー25の小型化を図ることができる。
【0111】
スペーサー部材252は、枠状をなしていて、その上面が基体251の下面と接合している。また、スペーサー部材252は、可動板251aの平面視にて、支持部251bの形状とほぼ等しくなっている。このようなスペーサー部材252は、例えば、各種ガラス、各種セラミックス、シリコン、SiOなどで構成されている。スペーサー部材252と基体251との接合方法としては、特に限定されず、例えば、接着剤等の別部材を介して接合してもよいし、スペーサー部材252の構成材料によっては陽極接合などを用いてもよい。
【0112】
対向基板253は、スペーサー部材252と同様に、例えば、各種ガラス、シリコン、SiOなどで構成されている。このような対向基板253の上面であって、可動板251aと対向する部位には、コイル255が設けられている。
永久磁石254は、板棒状をなしていて、可動板251aの下面に沿って設けられている。このような永久磁石254は、可動板251aの平面視にて、回動中心軸J1に対して直交する方向に磁化(着磁)されている。すなわち、永久磁石254は、両極が回動中心軸J1を介して対向するよう設けられている。このような永久磁石254としては、特に限定されず、例えば、ネオジウム磁石、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石などを用いることができる。
【0113】
コイル255は、可動板251aの平面視にて、永久磁石254の外周を囲むように設けられている。コイル255は、電圧印加手段256に接続されている。電圧印加手段256は、印加する電圧の電圧値や周波数等の各条件を調整(変更)し得るように構成されている。電圧印加手段256、コイル255および永久磁石254により、可動板251aを回動させる駆動手段257が構成される。
【0114】
コイル255には、制御部12cの制御により、電圧印加手段256から所定の電圧が印加され、所定の電流が流れる。制御部12cの制御により、電圧印加手段256からコイル255に交番電圧を印加すると、それに応じて電流が流れ、可動板251aの厚さ方向の磁界が発生し、かつ、その磁界の向きが周期的に切り換わる。すなわち、コイル255の上側付近がS極、下側付近がN極となる状態Aと、コイル255の上側付近がN極、下側付近がS極となる状態Bとが交互に切り換わる。
【0115】
状態Aでは、図16(a)に示すように、永久磁石254のS極が、コイル255への通電により発生する磁界との反発力により上側へ変位するとともに、永久磁石254のN極が、前記磁界との吸引力により下側へ変位する。これにより、可動板251aが反時計回りに回動して傾斜する。反対に、状態Bでは、図16(b)に示すように、永久磁石254のS極が下側へ変位するとともに、永久磁石254のN極が上側へ変位する。これにより、可動板251aが時計回りに回動して傾斜する。
【0116】
このような状態Aと状態Bとを交互に繰り返すことにより、連結部251c、251dを捩り変形させながら、可動板251aが回動中心軸J1まわりに回動する。また、制御部12cの制御により、電圧印加手段256からコイル255に印加する電圧を調整することにより、流れる電流を調整することができ、これにより、可動板251aの回動中心軸J1を中心とする振れ角を調整することができる。
【0117】
図14に示すように、上述のような構成の光スキャナー25、27は、互いの回動中心軸J1、J2が直交するように設けられている。光スキャナー25、27をこのように設けることにより、表示面11aに対し、表示光用光源ユニット23から出射した表示光LL”を2次元的に走査することができる。これにより、比較的簡単な構成で、表示面11aに2次元画像を描画することができる。
【0118】
具体的に説明すれば、表示光用光源ユニット23から出射した表示光LL”は、光スキャナー25の光反射部251eの反射面で反射し、次いで、光スキャナー27の光反射部271eの反射面で反射し、スクリーン11の表示面11aに投射される。そして、光スキャナー25の光反射部251eを回動させるとともに、その角速度(速度)よりも遅い角速度で光スキャナー27の光反射部271eを回動させることにより、表示光用光源ユニット23から出射した表示光LL”は、表示面11aに対し、水平方向に走査されるとともに、その水平方向の走査速度よりも遅い走査速度で垂直方向に走査される。これにより、表示光用光源ユニット23から出射した表示光LL”は、表示面11aに対し2次元的に走査され表示面11aに画像が描画される。
ここで、光スキャナー25の光反射部251eの角速度よりも遅い角速度で光スキャナー27の光反射部271eを回動させるために、例えば、光スキャナー25を共振を利用した共振駆動とし、光スキャナー27を共振を利用しない非共振駆動とするのが好ましい。
【0119】
次に、光スキャナー25の可動板251aの角度を検出する角度検出手段26について説明する。なお、光スキャナー27の可動板271aの角度を検出する角度検出手段28は、角度検出手段26と同様の構成であるため、その説明を省略する。
図15に示すように、角度検出手段26は、光スキャナー25の連結部251c上に設けられた圧電素子261と、圧電素子261から発生する起電力を検出する起電力検出部262と、起電力検出部262の検出結果に基づいて可動板251aの角度を求める(挙動を検知する)角度検知部263とを有している。
【0120】
圧電素子261は、可動板251aの回動に伴って連結部251cが捩り変形すると、それに伴って変形する。圧電素子261は、外力が付与されていない自然状態から変形すると、その変形量に応じた大きさの起電力を発生する性質を有しているため、角度検知部263は、起電力検出部262で検出された起電力の大きさに基づいて、連結部251cの捩れの程度を求め、さらに、その捩れの程度から可動板251a(光反射部251eの反射面)の角度を求める。また、角度検知部263は、可動板251aの回動中心軸J1を中心とする振れ角を求める。この可動板251aの角度および振れ角の情報を含む信号は、角度検知部263から制御部12cに送信される。
【0121】
[制御部]
制御部12cは、図示しないコンピュータ等から送信されたスクリーン11の表示面11aに表示する画像データDaから表示面11aの光拡散状態とする領域を決定する。この領域は、画像データDaに対応する画像を表示するために表示光LL”を照射する領域と等しい。そして、制御部12cは、決定した領域にアドレス光LL’が照射されるようにベクタースキャンモジュール12aの駆動を制御する。制御部12cは、表示面11aの各点の座標(x、y座標)と、各点にアドレス光LL’を照射するための光スキャナー3の可動板31の振れ角(傾き)の組み合わせを示すテーブル等の情報を予め記憶しており、この情報に基づいて、光スキャナー3を駆動することにより(すなわち、各コイル812、822、832、842に印加する電圧をそれぞれ変化させることにより)、決定された領域にアドレス光LL’を照射しその領域を光拡散状態とする。これにより、表示面11aに表示する画像の輪郭で囲まれる領域と一致する光拡散領域、例えば図17(a)に示すような光拡散領域11bが形成される。
【0122】
制御部12cは、光拡散領域11bを形成する工程と並行(同期)して、画像データDaに対応する表示光LL”が、表示面11aの光拡散領域11bに照射されるようにラスタースキャンモジュール12bの駆動を制御する。具体的には、制御部12cは、画像データDaに基づいて、表示光LL”が照射される表示面11aの領域の各部位における表示光LL”の色および光量を決定し、決定した色情報に基づいた表示光LL”を表示光用光源ユニット23から出射する。制御部12cは、表示光用光源ユニット23からの表示光LL”の出射を、角度検出手段26、28から送信される可動板251a、271aの挙動に対応させて行うことにより、表示面11aの光拡散領域11bに表示光LL”を照射する。これにより、図17(b)に示すように、表示光LL”が光拡散領域11bで反射、拡散され表示面11aに所望の画像が表示される。
【0123】
なお、スクリーン11は、メモリー性を有していないため、光透過状態からアドレス光LL’を照射させたことによって光拡散状態となった部位は、アドレス光LL’の照射がされなくなると速やかに光透過状態に戻る。そのため、表示面11aに表示する画像が静止画である場合には、アドレス光LL’および表示光LL”の走査を、例えば60フレーム/秒程度の比較的早い速度で続けることが好ましい。これにより、表示面11aにちらつきの無い静止画を表示することができる。また、表示面11aに表示する画像が動画である場合には、n回目のフレームを描画し終わり、次のフレームを描画する際には、前のフレームの画像がスクリーン11から消去されているため、表示面11aの全域を一端光透過状態に戻す等のリセット工程が不要である。なお、n回目のフレームを描画し終わってからn+1回目のフレームを描画し始めるまでの時間は、アドレス光LL’が照射されなくなることにより光拡散状態から光透過状態に戻る時間に等しいほど好ましい。これにより、フレーム間が良好に連続した動画を表示することができる。
【0124】
以上、画像形成装置1について説明した。
このような画像形成装置1によれば、前述したように、非使用時にスクリーン11が視覚的に邪魔にならず、使用時には、透明な板に画像が表示さているように認識されるため、観察者に画像が浮き出ているような感覚を与えることができ、表示されている画像への興味・関心を効果的に持たせることができる。
【0125】
また、画像形成装置1では、前述したように、ベクタースキャンモジュール12aによって表示面11aに光拡散領域を形成し、ラスタースキャンモジュール12bによって光拡散領域に画像を形成するように構成されている。ここで、ベクター走査は、ラスター走査に比べて単位面積当たりに照射される光の量(光量)を多くすることができる。一方、ラスター走査は、ベクター走査に比べて鮮明な画像を描画することができる。そのため、画像形成装置1のように、光拡散領域を形成するためにアドレス光LL’をベクター走査により表示面11aに走査し、画像を表示するために表示光LL”をラスター走査により表示面11aに走査することにより、ベクター走査およびラスター走査の有利な点を共に発揮することができる。
【0126】
ここで、ラスタースキャンモジュール12bにおいて、光スキャナー25の可動板251aの振れ角が一定の場合は、光出射状態での表示光LL”の振れ幅は、光スキャナー27の可動板271aの角度に応じて変化し、表示光LL”が走査される表示面11a上の垂直方向の位置がプロジェクター12から遠いほど大きくなる。そこで、プロジェクター12では、可動板271aの角度に応じて可動板251aの振れ角を調整してもよい。すなわち、表示面11a上の垂直方向の位置がプロジェクター12から遠いほど、可動板251aの振れ角を小さくすることにより、光出射状態での表示光LL”の振れ幅を垂直方向に沿って一定にする。このような補正を行うことにより、いわゆる「台形撓み」を補正することができる。なお、可動板251aの振れ幅を一定にすることは、例えば、コイル255へ印加する交番電圧の大きさを制御することにより達成することができる。
【0127】
また、ラスタースキャンモジュール12bは、光出射状態での表示光LL”の振れ幅の調整を用いて、次のような制御を行ってよい。すなわち、ラスタースキャンモジュール12b(制御部12c)は、表示面11aに表示する画像の輪郭(外形形状)に基づいて、可動板251a、271aの振れ角を変化させてもよい。具体的には、例えば、表示面11aに表示する画像の輪郭が図18に示すような形状であった場合、可動板271aの振れ角を、表示面11aの水平方向の各位置において、表示光LL”の垂直方向の振れ幅が輪郭の垂直方向の幅に一致するかそれよりも若干大きくなるように制御する。これとともに、可動板251aの振れ角を、表示面11aの垂直方向の各位置において、表示光LL”の水平方向の振れ幅が輪郭の水平方向の幅に一致するかそれよりも若干大きくなるように制御する。このような制御によれば、当該制御を行わない場合と比較して、効率的に表示光LL”を表示面11aに走査することができ、表示面11aに同じ画像を表示するのに要する時間が短くなる。これにより、表示面11aにより鮮明な画像を表示することができる。
【0128】
<第2実施形態>
次に、本発明の画像形成装置の第2実施形態について説明する。
図19は、本発明に係る第2実施形態の画像形成装置が有する表示光走査部の構成を示す概略図である。
以下、第2実施形態の画像形成装置について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0129】
第2実施形態の画像形成装置は、表示光走査部の構成が異なること、具体的には1対の光スキャナーのうちの一方の光スキャナーをガルバノミラーに置き換えたこと以外は、第1実施形態とほぼ同様である。なお、図19にて、前述した実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
図19に示すように、表示光走査部24Aは、光スキャナー25と、角度検出手段26と、表示光用光源ユニット23から出射した表示光LL”を表示面11aに対し垂直方向に走査する垂直走査用ミラーであるガルバノミラー29と、ガルバノミラーの反射面291の角度(挙動)を検出する角度検出手段28Aとを有している。
【0130】
ガルバノミラー29は、回転軸293を有するモーター294と、回転軸293に固定されたミラー部292とを有している。また、ミラー部292の表面は、反射面291となっている。このようなガルバノミラー29は、モーター294を駆動して反射面291を回転軸293まわりに回動させることにより、表示光LL”を垂直方向に走査する。角度検出手段28Aは、例えば、回転軸293の回転角度に基づいて反射面291の角度を検知するように構成されている。
このような第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0131】
<第3実施形態>
次に、本発明の画像形成装置の第3実施形態について説明する。
図20は、本発明に係る第3実施形態の画像形成装置の構成を示す概略図である。
以下、第3実施形態の画像形成装置について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0132】
第3実施形態の画像形成装置は、反射ミラーを有すること以外は、第1実施形態とほぼ同様である。なお、図20にて、前述した実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
図20に示すように、画像形成装置1は、スクリーン11と、プロジェクター12と、反射ミラー13とを有している。これらは互いに相対的位置関係が固定されている。
【0133】
このような画像形成装置1では、プロジェクター12から出射されたアドレス光LL’および表示光LL”は、それぞれ、反射ミラー13によって反射されてからスクリーン11の表示面11aに走査される。このように、アドレス光LL’および表示光LL”を一旦、反射ミラー13で反射することにより、アドレス光LL’および表示光LL”の光路長を長くすることができ、アドレス光LL’および表示光LL”を走査することのできる領域が大きくなる。このような構成は、プロジェクター12がスクリーン11の近傍に設けられている場合等に特に有効である。
【0134】
反射ミラー13は、スクリーン11の輪郭を表示面11aに直交する方向へ延長して形成される領域内に配置されていない。これにより、表示面11aに表示された画像の観察が、反射ミラー13によって阻害されるのを効果的に防止するができる。そのため、表示面11aに表示された画像が観察者に観察され易くなり、優れた宣伝広告機能を発揮することができる。
このような第3実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0135】
<第4実施形態>
次に、本発明の画像形成装置の第4実施形態について説明する。
図21は、本発明の第4実施形態に係る画像描画装置が備える表示光走査部の光スキャナーを示す平面図、図22は、図21中のC−C線断面図、図23は、図21に示す光スキャナーが備える駆動手段の電圧印加手段を示すブロック図、図24は、図23に示す第1の電圧発生部および第2の電圧発生部で発生する電圧の一例を示す図である。なお、以下では、説明の便宜上、図21中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言い、図22中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0136】
以下、第4実施形態の画像表示装置について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第4実施形態の画像形成装置は、表示光走査部が備える光スキャナーの構成が異なる以外、具体的には、2つの光スキャナーに変えて1つの光スキャナーを用いた以外は、第1実施形態とほぼ同様である。なお、図22にて、前述した実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0137】
表示光走査部24は、いわゆる2自由度振動系の1つの光スキャナー9を有している。
光スキャナー9は、図21に示すような第1の振動系91aと第2の振動系91bと支持部91cとを備える基体91と、基体91と対向配置された対向基板92と、基体91と対向基板92との間に設けられたスペーサー部材93と、永久磁石941と、コイル942とを備えている。
【0138】
第1の振動系91aは、枠状の支持部91cの内側に設けられた枠状の駆動部911aと、駆動部911aを支持部91cに両持ち支持する1対の第1の連結部912a、913aとで構成されている。一方の第2の振動系91bは、駆動部911aの内側に設けられた可動板911bと、可動板911bを駆動部911aに両持ち支持する1対の第2の連結部912b、913bとで構成されている。
【0139】
駆動部911aは、図21の平面視にて、円環状をなしている。なお、駆動部911aの形状は、枠状をなしていれば特に限定されず、例えば、図21の平面視にて、四角環状をなしていてもよい。このような駆動部911aの下面には、永久磁石941が接合されている。
第1の連結部912a、913aは、それぞれ、長手形状をなしており、弾性変形可能である。第1の連結部912a、913aは、それぞれ、駆動部911aを支持部91cに対して回動可能とするように、駆動部911aと支持部91cとを連結している。第1の連結部912a、913aは、互いに同軸的に設けられており、この軸(以下、「回動中心軸J3」という)を中心として、駆動部911aが支持部91cに対して回動するように構成されている。
【0140】
また、第1の連結部912aには、駆動部911aの角度(回動中心軸J3まわりの回動角)を検出するための圧電素子95aが設けられている。
可動板911bは、図21の平面視にて、円形状をなしている。なお、可動板911bの形状は、駆動部911aの内側に形成することができれば特に限定されず、例えば、図21の平面視にて、楕円形状をなしていてもよいし、四角形状をなしていてもよい。このような可動板911bの上面には光反射性を有する光反射部91dが形成されている。
【0141】
第2の連結部912b、913bは、それぞれ、長手形状をなしており、弾性変形可能である。第2の連結部912b、913bは、それぞれ、可動板911bを駆動部911aに対して回動可能とするように、可動板911bと駆動部911aとを連結している。第2の連結部912b、913bは、互いに同軸的に設けられており、この軸(以下、「回動中心軸J4」という)を中心として、可動板911bが駆動部911aに対して回動するように構成されている。
また、第2の連結部912bには、可動板911bの角度(回動中心軸J4まわりの回動角)を検出するための圧電素子95bが設けられている。
【0142】
図21に示すように、回動中心軸J3および回動中心軸J4は互いに直交している。また、駆動部911aおよび可動板911bの中心は、それぞれ、図21の平面視にて、回動中心軸J3、J4の交点上に位置している。なお、以下、説明の便宜上、回動中心軸J3と回動中心軸J4との交点を「交点G」ともいう。
図22に示すように、以上のような基体91は、スペーサー部材93を介して対向基板92と接合している。対向基板92の上面には、永久磁石941に作用する磁界を発生させるコイル942が設けられている。
【0143】
永久磁石941は、図21の平面視にて、交点Gを通り、回動中心軸J3および回動中心軸J4のそれぞれの軸に対して傾斜した線分(この線分を「線分M」とも言う)に沿って設けられている。このような永久磁石941は、交点Gに対して長手方向の一方側がS極、他方側がN極となっている。
図21の平面視にて、線分Mの回動中心軸J3に対する傾斜角θは、30〜60度であるのが好ましく、40〜50度であるのがより好ましく、ほぼ45度であるのがさらに好ましい。このように永久磁石941を設けることで、円滑に、可動板911bを回動中心軸J3および回動中心軸J4のそれぞれの軸まわりに回動させることができる。本実施形態では、線分Mは、回動中心軸J3および回動中心軸J4のそれぞれの軸に対して約45度傾斜している。
【0144】
また、図22に示すように、永久磁石941の上面には、凹部941aが形成されている。この凹部941aは、永久磁石941と可動板911bとの接触を防止するための逃げ部である。このような凹部941aを形成することにより、可動板911bが回動中心軸J3まわりに回動する際、永久磁石941と接触してしまうことを防止することができる。
【0145】
コイル942は、図21の平面視にて、駆動部911aの外周を囲むように形成されている。これにより、光スキャナー9の駆動の際、駆動部911aとコイル942との接触を確実に防止することができる。その結果、コイル942と永久磁石941の離間距離をより短くすることができ、コイル942から発生する磁界を効率的に永久磁石941に作用させることができる。
コイル942は、電圧印加手段943と電気的に接続されていて、電圧印加手段943によりコイル942に電圧が印加されると、コイル942から回動中心軸J3および回動中心軸J4のそれぞれの軸に直交する軸方向の磁界が発生する。
【0146】
図23に示すように、電圧印加手段943は、可動板911bを回動中心軸J3まわりに回動させるための第1の電圧V1を発生させる第1の電圧発生部943aと、可動板911bを回動中心軸J4まわりに回動させるための第2の電圧V2を発生させる第2の電圧発生部943bと、第1の電圧V1と第2の電圧V2とを重畳し、その電圧をコイル942に印加する電圧重畳部943cとを備えている。
【0147】
第1の電圧発生部943aは、図24(a)に示すように、周期T1で周期的に変化する第1の電圧V1(垂直走査用電圧)を発生させる。第1の電圧V1は、ノコギリ波のような波形をなしている。そのため、光スキャナー9は、効果的に光を垂直走査することができる。なお、第1の電圧V1の波形は、これに限定されない。ここで、第1の電圧V1の周波数(1/T1)は、垂直走査に適した周波数であれば、特に限定されないが、15〜40Hz(30Hz程度)であるのが好ましい。
本実施形態では、第1の電圧V1の周波数は、駆動部911aと1対の第1の連結部912a、913aとで構成された第1の振動系91aのねじり共振周波数と異なる周波数となるように調整されている。
【0148】
一方、第2の電圧発生部943bは、図24(b)に示すように、周期T1と異なる周期T2で周期的に変化する第2の電圧V2(水平走査用電圧)を発生させる。第2の電圧V2は、正弦波のような波形をなしている。そのため、光スキャナー9は、効果的に光を主走査することができる。なお、第2の電圧V2の波形はこれに限定されない。
また、第2の電圧V2の周波数は、第1の電圧V1の周波数より高く、かつ、水平走査に適した周波数であれば、特に限定されないが、10〜40kHzであるのが好ましい。このように、第2の電圧V2の周波数を10〜40kHzとし、前述したように第1の電圧V1の周波数を30Hz程度とすることで、スクリーンでの描画に適した周波数で、可動板911bを回動中心軸J3および回動中心軸J4のそれぞれの軸まわりに回動させることができる。ただし、可動板911bを回動中心軸J3および回動中心軸J4のそれぞれの軸まわりに回動させることができれば、第1の電圧V1の周波数と第2の電圧V2の周波数との組み合わせなどは、特に限定されない。
【0149】
本実施形態では、第2の電圧V2の周波数は、可動板911bと1対の第2の連結部912b、913bとで構成された第2の振動系91bのねじり共振周波数と等しくなるように調整されている。これにより、可動板911bの回動中心軸J3まわりの回動角を大きくすることができる。
また、第1の振動系91aの共振周波数をf[Hz]とし、第2の振動系91bの共振周波数をf[Hz]としたとき、fとfとが、f>fの関係を満たすことが好ましく、f≧10fの関係を満たすことがより好ましい。これにより、より円滑に、可動板911bを回動中心軸J3まわりに第1の電圧V1の周波数で回動させつつ、回動中心軸J4まわりに第2の電圧V2の周波数で回動させることができる。
【0150】
第1の電圧発生部943aおよび第2の電圧発生部943bは、それぞれ、制御部12cに接続され、制御部12cからの信号に基づき駆動する。このような第1の電圧発生部943aおよび第2の電圧発生部943bには、電圧重畳部943cが接続されている。
電圧重畳部943cは、コイル942に電圧を印加するための加算器943dを備えている。加算器943dは、第1の電圧発生部943aから第1の電圧V1を受けるとともに、第2の電圧発生部943bから第2の電圧V2を受け、これらの電圧を重畳しコイル942に印加するようになっている。
【0151】
以上のような構成の光スキャナー9は、次のようにして駆動する。
例えば、図24(a)に示すような第1の電圧V1と、図24(b)に示すような電圧V2とを電圧重畳部943cにて重畳し、重畳した電圧をコイル942に印加する(この重畳された電圧を「電圧V3」ともいう)。
すると、電圧V3中の第1の電圧V1成分によって、永久磁石941のS極側をコイル942に引き付けようとするとともに、N極側をコイル942から離間させようとする磁界と、永久磁石941のS極側をコイル942から離間させようとするとともに、N極側をコイル942に引き付けようとする磁界とが交互に切り換わる。これにより、第1の連結部912a、913aを捩れ変形させつつ、駆動部911aが可動板911bとともに、第1の電圧V1の周波数で回動中心軸J3まわりに回動する。
【0152】
なお、第1の電圧V1の周波数は、第2の電圧V2の周波数に比べて極めて低く設定されており、また、第1の振動系91aの共振周波数は、第2の振動系91bの共振周波数よりも低く設計されている。そのため、第1の振動系91aは、第2の振動系91bよりも振動しやすくなっており、第1の電圧V1成分によって、可動板911bが回動中心軸J4まわりに回動してしまうことを防止することができる。
【0153】
一方、電圧V3中の第2の電圧V2成分によって、永久磁石941のS極側をコイル942に引き付けようとするとともに、N極側をコイル942から離間させようとする磁界と、永久磁石941のS極側をコイル942から離間させようとするとともに、N極側をコイル942に引き付けようとする磁界とが交互に切り換わる。これにより、第2の連結部912b、913bを捩れ変形させつつ、可動板911bが第2の電圧V2の周波数で回動中心軸J4まわりに回動する。
なお、第2の電圧V2の周波数が第2の振動系91bのねじり共振周波数と等しいため、第2の電圧V2によって、支配的に可動板911bを回動中心軸J4まわりに回動させることができる。そのため、第2の電圧V2によって、可動板911bが駆動部911aとともに回動中心軸J3まわりに回動してしまうことを防止することができる。
【0154】
以上のような光スキャナー9によれば、1つの光スキャナーで2次元的に表示光LL”を走査でき、表示光走査部24の省スペース化を図ることができる。また、例えば、第1実施形態のように1対の光スキャナーを用いる場合には、これら光スキャナーの相対的位置関係を高精度に設定しなければならないが、本実施形態ではその必要がないため、製造の容易化を図ることができる。
このような第4実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0155】
<第5実施形態>
次に、本発明の画像形成装置の第5実施形態について説明する。
図25は、本発明の第5実施形態に係る画像描画装置が備えるアドレス光走査部の光スキャナーを示す断面図。なお、以下では、説明の便宜上、図25中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0156】
以下、第5実施形態の画像形成装置について、前述した実施形態の画像形成装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第5実施形態の画像形成装置は、アドレス光走査部が有する光スキャナーの構成が異なる以外は、前述した画像形成装置とほぼ同様である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
図25に示すように、本実施形態の光スキャナー3Dでは、振動系3aの向きが前述した第1実施形態に対して逆になっている。すなわち、前述した実施形態で基台33側に位置していた面が基台33と反対側に位置し、基台33と反対側に位置していた面が基台33側に位置するように設けられている。
【0157】
また、本実施形態の可動板31Dは、各連結部4、5、6、7と連結する基部313Dと、柱部314Dを介して基部313Dに固定された光反射板315Dとを有している。このような可動板31Dでは、光反射板315Dの上面に光反射部312が設けられている。可動板31Dをこのような構成とすることにより、光スキャナー3Dの大型化を防止しつつ、光反射部312の面積を大きくすることができる。これにより、光反射部312で、より光束の太いアドレス光LL’を反射することができる。そのため、アドレス光LL’を効率的に表示面11a上に走査することができる。また、光反射部312での光反射によって発生する熱を各連結部4、5、6、7に伝達し難くすることができ、連結部4、5、6、7の熱膨張を抑制することができる。各連結部4、5、6、7への熱の伝達を防止するという観点からすれば、柱部314Dを優れた断熱性を有する材料で構成してもよい。
【0158】
なお、光反射板315Dの形状および大きさとしては、光スキャナー3Dの駆動を阻害しない限り、如何なるものであってもよいが、例えば、X軸方向において一対の非変形部4213、6213間に収まり、Y軸方向において一対の非変形部5213、7213間に収まるような形状および大きさであるのが好ましい。これにより、各連結部4、5、6、7の第1の軸部42、52、62、72が屈曲した際の、駆動板側軸部423、523、623、723のいずれかと光反射板315Dとの接触を確実に防止することができる。
【0159】
具体的に、光反射板315Dの平面視形状としては、例えば、一対の非変形部4213、6213の離間距離よりも小さい直径の円形であることが好ましい。また、X軸方向の長さが一対の非変形部4213、6213の離間距離より短く、Y軸方向の長さが一対の非変形部5213、7213の離間距離より短い矩形でることも好ましい。
このような第5実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
以上説明したような画像形成装置は、例えば、背面投影型表示装置(リア型プロジェクター)に好適に適用することができる。その結果、優れた描画特性を有するリア型プロジェクターを提供することができる。
【0160】
図25に示すように、リア型プロジェクター100は、プロジェクター12と、導光ミラー110と、スクリーン11とが筐体120に配置された構成を有している。スクリーン11は、第1の基板111側を筐体120内に向けて配置されている。このようなリア型プロジェクター100は、プロジェクター12から出射されたアドレス光LL’および表示光LL”を導光ミラー110によって反射して、スクリーン11の表示面11aに走査するように構成されている。
なお、リア型プロジェクター100では、観察者は、スクリーン11を裏側(表示面11aと反対側)から視認するため、プロジェクター12は、表示面11aに、観察者に観察させたい画像の鏡像が表示されるようにアドレス光LL’および表示光LL”を走査することが好ましい。
【0161】
以上、本発明の画像形成装置および背面投影型表示装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、本発明は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【符号の説明】
【0162】
1‥‥画像形成装置 11‥‥スクリーン 11a‥‥表示面 11b‥‥光拡散領域 111‥‥第1の基板 111a‥‥第1の電極 112‥‥光導電膜 113、115‥‥配向膜 114‥‥液晶高分子複合層(液晶層) 114a‥‥液晶 114b‥‥高分子 116‥‥第2の基板 116a‥‥第2の電極 117‥‥電圧印加手段 118‥‥スクリーン本体 12‥‥プロジェクター 12a‥‥ベクタースキャンモジュール 12b‥‥ラスタースキャンモジュール 12c‥‥制御部 13‥‥反射ミラー 21‥‥アドレス光用光源ユニット(アドレス光出射部) 211i‥‥レーザー光源 212i‥‥コリメーターレンズ 213i‥‥ダイクロイックミラー 22‥‥アドレス光走査部 23‥‥表示光用光源ユニット(表示光出射部) 231r、231g、231b‥‥レーザー光源 232r、232g、232b‥‥コリメーターレンズ 233r、233g、233b‥‥ダイクロイックミラー 24、24A‥‥表示光走査部 25、27‥‥光スキャナー 26、28、28A‥‥角度検出手段 251‥‥基体 251a、271a‥‥可動板 251b‥‥支持部 251c、251d‥‥連結部 251e、271e‥‥光反射部 252‥‥スペーサー部材 253‥‥対向基板 254‥‥永久磁石 255‥‥コイル 256‥‥電圧印加手段 257‥‥駆動手段 261‥‥圧電素子 262‥‥起電力検出部 263‥‥角度検知部 29‥‥ガルバノミラー 291‥‥反射面 292‥‥ミラー部 293‥‥回転軸 294‥‥モーター 3、3D‥‥光スキャナー 3a‥‥振動系 31、31D‥‥可動板 311‥‥面 312‥‥光反射部 313D‥‥基部 314D‥‥柱部 315D‥‥光反射板 32‥‥支持部 33‥‥基台 331‥‥基部 332‥‥枠部 4、5、6、7‥‥連結部 41、51、61、71‥‥駆動板 411‥‥貫通孔 42、52、62、72‥‥第1の軸部 421、521、621、721‥‥応力緩和部 422、522、622、722‥‥可動板側軸部 423、523、623、723‥‥駆動板側軸部 4211、4212、5211、5212、6211、6212、7211、7212‥‥変形部 4213、5213、6213、7213‥‥非変形部 4214、4215、5214、5215、6214、6215、7214、7215‥‥接続部 43、53、63、73‥‥第2の軸部 8‥‥変位手段 81‥‥第1の変位手段 811、821、831、841‥‥永久磁石 812、822、832、842‥‥コイル 813、823、833、843‥‥電源 82‥‥第2の変位手段 83‥‥第3の変位手段 84‥‥第4の変位手段 85‥‥コイル固定部 851‥‥突出部 9‥‥光スキャナー 91‥‥基体 91a‥‥第1の振動系 91b‥‥第2の振動系 91c‥‥支持部 91d‥‥光反射部 92‥‥対向基板 93‥‥スペーサー部材 911a‥‥駆動部 912a、913a‥‥第1の連結部 911b‥‥可動板 912b、913b‥‥第2の連結部 941‥‥永久磁石 942‥‥コイル 943‥‥電圧印加手段 95a、95b‥‥圧電素子 941a‥‥凹部 943a‥‥第1の電圧発生部 943b‥‥第2の電圧発生部 943c‥‥電圧重畳部 943d‥‥加算器 100‥‥リア型プロジェクター 110‥‥導光ミラー 120‥‥筐体 S‥‥ステージ LL’‥‥アドレス光 LL”‥‥表示光 RR、GG、BB‥‥レーザー光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示面を有するスクリーンと、前記表示面に光を走査することにより画像を描画するプロジェクターとを有し、
前記スクリーンは、前記表示面の各部位にて独立して、光を透過する光透過状態と光を拡散する光拡散状態とを選択でき、アドレス光が照射された前記部位が前記光拡散状態となり、前記アドレス光が照射されない前記部位が前記光透過状態となるように構成され、
前記プロジェクターは、前記表示面の該表示面に表示する画像に対応した領域が前記光拡散状態となるように前記アドレス光を前記表示面にベクター走査するベクター走査部と、前記画像を表示するための表示光を前記アドレス光の照射によって前記光拡散状態となった領域にラスター走査するラスター走査部とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記アドレス光は、赤外線である請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ラスター走査部は、前記表示光を出射する表示光出射部および前記表示光を反射し前記表示面へ走査する表示光走査部を有し、
前記ベクター走査部は、前記アドレス光を出射するアドレス光出射部および前記アドレス光を反射し前記表示面へ走査するアドレス光走査部を有している請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記表示光走査部および前記アドレス光走査部は、それぞれ、光反射性を有する光反射部を備えた可動板が少なくとも一方向または互いに直交する二方向へ回動可能に設けられ、当該回動によって前記光反射部で反射した光を前記表示面に走査する光スキャナーを有している請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記アドレス光走査部が有する前記光スキャナーは、前記可動板と、前記可動板を支持する支持部と、前記可動板と前記支持部とを連結する4つの連結部とを有し、前記4つの連結部は、前記可動板の平面視にて、前記可動板の外周に、周方向に沿って90度間隔で設けられている請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記可動板の平面視にて直交する2軸をX軸およびY軸としたとき、
前記4本の連結部のうちの前記可動板を介して対向する一対の連結部は、前記可動板とX軸方向に離間配置された駆動部と、前記可動板と前記駆動部とを連結しX軸方向に延在する第1の軸部と、前記駆動部と前記支持部とを連結しY軸方向に延在する第2の軸部とを有し、
前記4本の連結部のうちの他の一対の連結部は、前記可動板とY軸方向に離間配置された駆動部と、前記可動板と前記駆動部とを連結しY軸方向に延在する第1の軸部と、前記駆動部と前記支持部とを連結しX軸方向に延在する第2の軸部とを有し、
前記4本の連結部の前記第1の軸部は、それぞれ、該第1の軸部の長手方向の途中で屈曲する請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記4本の連結部の前記第1の軸部は、それぞれ、前記可動板と前記駆動部の間に設けられた応力緩和部と、前記応力緩和部と前記可動板とを連結し中心軸まわりに捩じり変形可能な可動板側軸部と、前記応力緩和部と前記駆動部とを連結する駆動部側軸部とを有し、前記応力緩和部で屈曲する請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記4本の連結部の前記応力緩和部は、それぞれ、前記可動板の平面視にて、可動板側軸部および駆動部側軸部の延在方向に直交する方向に延在し、中心軸まわりに捩じり変形する一対の変形部を有し、前記一対の変形部のうちの一方の前記変形部は、前記可動板側軸部に連結され、他方の前記変形部は、前記駆動部側軸部に連結されている請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記4本の連結部の前記応力緩和部は、それぞれ、前記一対の変形部の間に設けられ、前記変形部の延在方向と平行な方向に延在し、中心軸まわりに捩じり変形しない非変形部を有している請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記可動板を前記支持部に対して変位させる変位手段を有し、
前記変位手段は、前記4本の連結部に対応して4つ設けられており、
4つの前記変位手段は、それぞれ、前記駆動部に設けられた永久磁石と、前記永久磁石に作用する磁界を発生するコイルとを有している請求項5ないし9のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記4つの変位手段において、前記永久磁石は、前記可動板の厚さ方向に両極が対向するように設けられており、前記コイルは、前記可動板の厚さ方向に直交する方向の磁界を発生させるように設けられている請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記プロジェクターは、前記表示面に表示する画像データから前記表示面の前記光拡散状態とする領域を決定し、決定された領域に前記アドレス光が照射されるとともに、前記表示光が前記アドレス光の照射によって前記光拡散状態となった領域に照射されるように、前記ラスター走査部および前記ベクター走査部の作動を制御する制御部を有している請求項3ないし11のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記表示面の平面視にて互いに直交する方向を第1の方向および第2の方向としたとき、
前記ラスター走査部は、前記表示光を前記第1の方向に走査しつつ前記第2の方向に走査することにより前記表示面に走査するよう構成されており、
前記制御部は、前記画像データに基づいて、前記表示光走査部によって前記表示面に走査される前記表示光の前記第1の方向における振れ幅および前記第2の方向における振れ幅をそれぞれ決定する請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記プロジェクターは、前記スクリーンの輪郭を前記表示面に直交する方向へ延長して形成される領域内に配置されない請求項1ないし13のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記プロジェクターは、前記表示面の前記プロジェクターに最も近い部位から1m以内に設置されている請求項1ないし14のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記スクリーンは、第1の電極が形成された光透過性を有する第1の基板と、前記アドレス光が照射された部位の電気抵抗が低下する光導電膜と、液晶が分散されている液晶層と、第2の電極が形成された光透過性を有する第2の基板とが前記表示面側からこの順で設けられている請求項1ないし15のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記液晶層は、前記液晶および高分子が層分離してなる液晶高分子複合層であり、前記液晶および前記高分子は、屈折率異方性を有し、前記第1の電極および前記第2の電極間に電圧を印加することにより前記液晶高分子複合層に印加される電圧の強さに応じて、前記液晶および前記高分子が揃って配向する前記光透過状態と、前記液晶および前記高分子が異なる方向に配向する前記光拡散状態とをとるよう構成されている請求項16に記載の画像形成装置。
【請求項18】
前記光透過状態と前記光拡散状態とが切り替わる前記電圧の強さをVとしたとき、前記第1の電極および前記第2の電極間に、前記液晶高分子複合層に印加される電圧の強さが前記Vより大きくならないような電圧を印加した状態にて、前記表示面の前記光拡散状態とする部位に前記アドレス光を照射し、前記光導電膜の前記アドレス光が照射された部位の電気抵抗を低下させることにより、前記液晶高分子複合層の前記アドレス光が照射された部位に作用する電圧の強さを前記Vよりも大きくし、これにより、前記表示面の前記アドレス光が照射された部位を前記光透過状態から前記光拡散状態とする請求項17に記載の画像形成装置。
【請求項19】
筐体と、前記筐体に固定され、表示面を有するスクリーンと、前記筐体内に配置され、前記表示面に光を走査することにより画像を描画するプロジェクターとを有し、
前記スクリーンは、前記表示面の各部位にて独立して、光を透過する光透過状態と光を拡散する光拡散状態とを選択でき、アドレス光が照射された前記部位が前記光拡散状態となり、前記アドレス光が照射されない前記部位が前記光透過状態となるように構成され、
前記プロジェクターは、前記表示面の該表示面に表示する画像に対応した領域が前記光拡散状態となるように前記アドレス光を前記表示面にベクター走査するベクター走査部と、前記画像を表示するための表示光を前記アドレス光の照射によって前記光拡散状態となった領域にラスター走査するラスター走査部とを有することを特徴とする背面投影型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2011−180462(P2011−180462A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45939(P2010−45939)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【公序良俗違反の表示】
特許法第64条第2項第4号の規定により図面の一部または全部を不掲載とする。
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】