説明

画像形成装置

【課題】反転現像を行う画像形成装置において、画像周辺部におけるトナー散りを低減でき、転写体全面にわたって良好な転写性を得る画像形成装置を提供することにある。
【解決手段】画像形成装置は、静電潜像を担持するための像担持体1Yと、該像担持体1Yを帯電する帯電手段2Yと、前記像担持体1Y上に画像情報に基づいて静電潜像を形成するための露光手段20と、前記静電潜像を現像してトナー像化するための現像手段4Yと、トナー像を被転写体上に転写するための転写手段80と、該転写手段にバイアスを印加する転写バイアス印加手段6Yと、転写前に前記像担持体1Yを露光する転写前露光手段7Yを有し、トナー帯電量に応じて、前記転写前露光手段7Yの露光量を調整する構成となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体上に形成されたトナー像を転写体に転写する前の転写前処理を行う、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した画像形成装置においては、現像方式として反転現像方式が多く用いられている。反転現像方式は、帯電ローラ、帯電チャージャ等の帯電手段によって一様に帯電した像担持体に対し、レーザビーム、LED等の露光手段により画像情報に対応した画像露光を行って静電潜像を形成し、その際に露光を受けて電位が低下した部分に像担持体の帯電極性と同極性に帯電したトナーを付着させてトナー像を形成する方法である。
反転現像方式では、トナーが付着する画像部は露光により帯電電位が低下し、背景部、すなわち、トナーを付着させない非画像部分は露光されないためトナー像形成後も電位が高いままである。
次いで、転写工程において転写材の背面にトナーと逆極性の電荷を付与し転写材の表面にトナーを転写した際、転写材がトナーと逆極性、すなわち、像担時体の非画像部と逆極性に帯電するため、像担持体と転写材間との電位差が非常に大きくなり画像に悪影響を及ぼす。
【0003】
この問題を解決するため、現像工程と転写工程との間で、トナー像の形成された像担持体をレーザビーム、LED等の露光手段によって一様に露光し、像担持体の電位を低下させ、転写工程における転写電流を効率良く転写材に作用させ、低い転写電流から高い転写電流まで安定した転写効率が得られるようにする転写前露光(Pre Transfer Lighting、以下PTLと略す)工程が良く知られている。
図15は一般的なPTL(転写前露光)の工程を示す概略図である。図15において、PTLによる露光状態(図15(a)参照)から像担時体1上の電荷を除電すると、非画像部の電位が減衰していく(図15(b)参照)が、条件によっては画像周辺部でトナー散りという現象が発生してしまう(図15(c)参照)。
これは像担時体1の帯電極性とトナーTとの帯電極性が同極性であるため、非画像部電荷が除電されると静電反発力によりトナーTが矢印のように散り易くなるためである。
静電反発力による画像周辺部でのトナー散りなどの問題を解決するため、従来から、各種の技術が提案されている(例えば、特許文献1乃至3参照)。
これらの問題を解決するため、例えば、特許文献1等に示されるように、転写前の露光量を背景部電位がトナー像部電位より低くならない所定光量に設定することが知られている。
【0004】
また、特許文献2におけるように露光後の背景部電位とトナー像部電位を検出し、露光後の背景部電位(絶対値)が露光後のトナー像部電位(絶対値)以上となるように前記露光手段の露光量を制御手段により制御し、背景部電位を低下させて転写材の分離を助けると同時に背景部電位とトナー像部電位に所定の電位差△Vを設け、飛び散りを防いでいる。
さらに、特許文献3では反転現像を行う画像形成装置において、転写ムラを防止するとともに、文字画像周辺部におけるトナー散りを低減でき、転写体全面にわたって良好な転写性を得るために、トナー像とトナー像が形成された像担持体とに、像担持体の帯電極性と同極性の電荷を付与する転写前電荷付与装置と、電荷を付与された像担持体を除電する転写前除電ランプとを設け、転写前電荷付与装置により像担持体に電荷を付与するともに像担持体上のトナー像の電荷量を増加させ、トナーと像担持体の導電性基体との鏡像力を増加させている。
【特許文献1】特開平01−191168号公報
【特許文献2】特開平10−186814号公報
【特許文献3】特開2002−055544公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、像担持体の帯電電位の継時変化や露光素子の劣化に伴う露光量の変動、あるいは、温湿度変化によるトナー帯電量の変動がもとで生じるトナー像部電位の変動等により、背景部電位及びトナー像部電位が所望電位とならず、トナー像の飛び散りや転写材の分離不良を生じていた。
これを解消するための特許文献2でも、画像部電位が高い場合に制御が困難であったり、電位差を設けるため、転写前帯電を用いる複雑な構成及び制御を実施しなければならない。
また、特許文献3では、電荷付与装置を新たに追加することによる構成の複雑化や、近年の流れである装置小型化に伴う配置スペース確保の困難、また、像担持体をさらに帯電させることにより像担持体の劣化を促進させてしまう等の課題がある。
そこで、本発明の目的は、上述した実情を考慮して、反転現像を行う画像形成装置において、画像周辺部におけるトナー散りを低減でき、転写体全面にわたって良好な転写性を得る画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、静電潜像を担持するための像担持体と、該像担持体を帯電する帯電手段と、前記像担持体上に画像情報に基づいて静電潜像を形成するための露光手段と、前記静電潜像を現像してトナー像化するための現像手段と、トナー像を被転写体上に転写するための転写手段と、転写手段にバイアスを印加する転写バイアス印加手段と、転写前に前記像担持体を露光する転写前露光手段と、を有する画像形成装置において、トナー帯電量に応じて、前記転写前露光手段の露光量を調整する画像形成装置を特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、前記転写前露光手段の露光量が、前記像担持体の帯電電位を残留電位に減衰させる必要露光量以上である請求項1記載の画像形成装置を特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、前記トナー帯電量とトナー色とに応じて、前記転写前露光手段の露光量を調整する請求項1又は2記載の画像形成装置を特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、前記トナー帯電量を検知する検知手段を有し、検知されたトナー帯電量に応じて、前記転写前露光手段の露光量を調整する請求項1又は2記載の画像形成装置を特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、トナー電荷に応じてPTL光量を最適な光量に調整することにより像担持体の疲労を低減することが可能であり、トナー散りの少ない、高画質、高安定な画像を形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明を適用している多色対応画像形成装置の第1の実施の形態を示す概略図である。次に、本発明を搭載した第1の実施の形態について説明を行う。
図1において、像担持体である感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kは矢印の方向に回転する。添え字の符号Y、M、C及びKは、それぞれイエロー、マゼンダ、シアン、及びブラックを示している。
各感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kの周りには、回転順に帯電手段である帯電部材2Y、2M、2C、2K、現像装置4Y、4M、4C、4K、転写用帯電手段6Y、6M、6C、6K、クリーニング手段5Y、5M、5C、5Kが配置されている。
帯電部材2Y、2M、2C、2Kは、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kの表面を均一に帯電するための帯電装置を構成している。この帯電部材2Y、2M、2C、2Kと現像装置4Y、4M、4C、4Kとの間の感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kの表面に書き込みユニット20によりビームが照射され、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kの表面上に静電潜像が形成されるようになっている。
【0009】
そして、静電潜像に基づき、現像装置4Y、4M、4C、4Kにより感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kの表面上にトナー像が形成される。さらに、転写手段である転写ベルト80にバイアスを印加する転写バイアス印加手段である転写用帯電手段6Y、6M、6C、6Kにより、図示してない給紙ユニットから送られる転写材である記録紙(図示せず)に、順次、各色トナー像が転写され、最終的に定着手段10により記録紙に画像が定着する。
転写用帯電手段6Y、6M、6C、6Kの上流側に転写前露光手段7Y、7M、7C、7Kを配置し、この転写前露光手段7Y、7M、7C、7Kによりトナー像の付着した感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kを露光する。転写前露光手段7Y、7M、7C、7Kは感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kを露光する手段であり、例えば、LEDのような光発光部材を使用したものである。
【0010】
図2は転写前露光手段の露光量制御を行う制御系を示すブロック図である。図2において、制御部30は現像電流を検知する現像電流検知手段31及び濃度センサ32の検知結果から得られた帯電量に基づいて、転写前露光手段7Y(7M、7C、7K)の露光量を制御する。
図1及び図2を参照してトナーの帯電量の検知をいかに行うかを説明する。書き込みユニット(露光装置)20を駆動するための画像データを出力する画像処理部33を制御して、書き込みユニット20を所定の画像データで駆動して感光体ドラム1Y(1M、1C、1K)上にベタ画像からなるパッチ画像の静電潜像を形成する。
次に、静電潜像を現像装置4Y(4M、4C、4K)で現像し、現像したトナー像を転写ベルト80に転写する前に、現像装置4Y(4M、4C、4K)で使用されるトナーの帯電量に応じて、転写前露光手段7Y(7M、7C、7K)の露光量を制御する。PTL露光量と散りランクとの関係においては、PTL露光により散りランクはいったん悪化するが、PTL露光量増加に伴い散りランクは向上する。
このように、トナー帯電量に応じて転写前露光手段7Y(7M、7C、7K)の露光量を調整する画像形成装置では、トナー電荷に応じてPTL露光量を最適な光量に調整することができ、これにより感光体ドラム(像担持体)1Y(1M、1C、1K)の疲労を低減することが可能であり、トナー散りの少ない、高画質、高安定な画像を形成することが可能となる。
【0011】
図3は散りランクと露光エネルギとの関係の実験結果をグラフで示す図である。まず、図3では、PTL工程を有する図1の画像形成装置において、PTL露光量を可変させ、画像部周辺の散り量を確認した。評価画像は文字画像とし、文字周辺の散り量を主観評価し、散りが有り悪い画像をランク1、散りがない良好な画像をランク5として評価を実施した。
PTLを点灯しない場合、散りは発生しないが、図1の感光体ドラム(像担持体)1Y(1M、1C、1K)と転写ベルト(転写材)80との間の電位差が非常に大きくなり、転写率低下等の画像への悪影響が懸念される。光量を増加させることにより、いったん散りランクは悪化するが、さらに光量を上げると散りランクが向上するという傾向が観察された。
【0012】
図4はPTL露光量を可変させて発生する画像部周辺の散り量を示すモデル図である。図3の実験結果の現象は以下のように説明できる。まず、非画像部電位(VD)と画像部電位(VL)との電位差(非画像部が負に大きい)によって散り発生は押さえ込まれている。PTL露光を行うと、感光体ドラム(像担持体)上の電荷の減衰が起こるが、減衰量はトナーによる光遮蔽のない非画像部でより大きい。
ただし、PTL露光エネルギが弱い場合には、非画像部には電荷が残されており、トナー散りの発生は起こらない(あるいは極めて小さい/図4(a)参照)。PTL露光エネルギが増加するにつれて、非画像部電荷の緩和が進み、画像部との電位差が散り発生を抑制するのに十分でなくなると、感光体ドラム上で散りが発生する(図2(b))。
さらに、PTL露光エネルギを増加させると、非画像部電荷は0Vに近づくが、画像部にはトナー電荷の存在により発生した正電荷が集まるため、再び、画像部と非画像部との電位差が発生し、散りが抑制される(図4(c)参照)。図4において、CGLはキャリア発生層、CTLはキャリア輸送層を示している。
このように、転写前露光工程の露光量を強くすることにより非画像部だけでなく、画像部の感光体ドラム上にトナー電荷と逆極性の正電荷が集まり、散りを抑制することが可能となる。
【0013】
従来から行われているように、非画像部電位の絶対値が画像部電位の絶対値以下にならないように露光量を制限することも可能であるが、近年、耐久性向上のための感光体ドラムの低帯電化が行われている。
このような場合には非画像部電位と画像部電位との電位差が小さく、ピンポイントでPTL光量を制御して非画像部の電位を画像部電位より小さくしないように制御しなければならず、制御が困難になってきている。
また、経時でも安定した画像を形成するために、感光体ドラム帯電電位を調整し、トナー付着量を制御する制御方式等を行っている画像形成装置が多く、このような場合には非画像部電位の変動に合わせて、随時、光量を調整しなければならない。
本発明では転写前露光工程の露光量を強くすることにより、感光体ドラム上の非画像部の電位減衰だけでなく、画像部にトナー電荷と逆極性の正電荷を集めて非画像部及び画像部電位差を発生させることにより安定に散りを抑制することが可能となる。しかしながら、強い露光は感光体ドラムの寿命を低下させる一因となる。
よって、最適な露光量制御を行うために、トナーの帯電量を分布させてトナー散り評価を実施した。この際に、非画像部及び画像部の電位は同じ値でトナー付着量がトナー帯電量によらず一定になるように現像工程の現像ポテンシャルを調整している。
【0014】
図5は散りランクとPTL光量との関係の実験結果をグラフで示す図である。図5の実験結果に示すように、トナー帯電量の絶対値が高い場合(−帯電の場合は−側に大きい)、光量増加に従い、早く散りランクが向上することを確認した。
この現象は次のように説明できる。PTL露光エネルギを増加させると、画像部のトナー電荷の存在により感光体ドラム表層にトナー電荷に対抗する正電荷が集まると考えられている。よって、トナー電荷が大きければ集まる正電荷が大きくなり、散りが抑制され易くなると考えられる。
従って、同じ散りランクを得るためには、トナー帯電量の絶対値が高い場合は少ない光量で同等の結果を得ることが可能であり、感光体ドラムの耐久性を向上することが可能となる。よって、トナー電荷に応じてPTL光量を最適な光量に調整することにより感光体ドラムの疲労を低減することが可能となる。
このように、転写前に感光体ドラムを露光する転写前露光手段を有する画像形成方法において、トナー帯電量に応じて転写前露光手段の露光量を調整することによりトナー散りの少ない、高画質、高安定な画像を形成することが可能となる。
【0015】
図6は各色の透過率測定結果の一例をグラフで示す図である。また、さらなる制御性向上及び高寿命のための制御方法について検討を行った。最近のカラー化に伴い、フルカラーの画像形成装置が増えてきている。
フルカラーの画像形成装置はシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のトナーの使用が一般的であるが、これらのトナーは各色によりトナー帯電量が異なり、また、同じ付着量において光を透過する透過率が異なることが解かっている。
図6に示すように、ここではOHP(オーバーヘッドプロジェクタ)上にトナー毎に付着量が約0.5mg/cm2のベタ画像を形成し、光パワーメータ(図示せず)を用いて透過光量を測定し、透過率を算出した。図6から解かるように、色により透過率が大きく異なっている。
図7はトナー色におけるトナー散り評価をグラフで示す図である。トナー色におけるトナー散り評価を実施した。この際に、トナー付着量、トナー帯電量が同じになるよう調整を行っている。
これにより、図7の実験結果に示すように、散りランクの光量に対する傾向は一度悪くなってから向上するという同等の傾向が見られるが、トナー色、すなわち、トナーの光透過率が大きくなると散りランク向上が早くなり、必要なPTL光量が低くなることが確認できた。
【0016】
図8は光透過率が5%のトナー色におけるトナー散り評価結果(トナー帯電量)の一例をグラフで示す図である。図9は光透過率が20%のトナー色におけるトナー散り評価結果(トナー帯電量)の一例をグラフで示す図である。
図8及び図9には、各々の光透過率の場合のトナー帯電量による散りランクの傾向を示してある。前述したのと同様に、トナー帯電量の絶対値が高い(−帯電の場合は−側に大きい)と、光量増加に伴い早く散りランクが向上していくことが確認できる。
トナー電荷、トナー色に応じてPTL光量を最適な光量に調整することにより、例えば、光透過率が高く、帯電量も高いトナーを使用した現像手段においては少ないPTL光量で同じ散り抑制をすることができ、感光体ドラムの疲労を低減することができる。
よって、トナー電荷、トナー色に応じてPTL光量を最適な光量に調整することにより感光体ドラムの疲労を低減することが可能であり、経時的かつ環境に対応したトナー散りの少ない、高画質、高安定な画像を形成することが可能となる。
また、トナー電荷は経時的に変化する。現像剤を経時的に使用すると、トナー帯電量が変動している。よって、トナー帯電量を検知する検知手段を有し、検知されたトナー帯電量に応じて転写前露光手段の露光量を調整すれば、経時的かつ環境に対応したトナー電荷に応じてPTL光量を最適な光量に調整することにより感光体ドラムの疲労を低減することが可能であり、トナー散りの少ない、高画質、高安定な画像を形成することが可能となる。
【0017】
図10はPTL光量とトナー散り量(散りランク)との関係を例としてグラフで示す図である。図11はトナー帯電量とPTL光量との関係を表として示す図である。
図10に示すように、使用するトナー帯電量におけるPTL光量とトナー散り量(散りランク)との関係を別途実験により求め、必要な散りランク以上を達成するPTL光量をトナー帯電量毎に導出する。導出した例が図11に示した表である。必要な散りランク以上を達成するトナー帯電量とPTL光量との関係に従い、PTL光量を制御させる。
また、このPTL光量は非画像部の電位を低下させ、かつトナー付着領域の感光体ドラムにトナー帯電と逆極性の電荷を集めるのに必要な光量であり、感光体ドラムの帯電電位を残留電位に減衰させる必要露光量以上であることが望ましい。例えば、前述の図11に示すトナー帯電量とPTL光量との例では感光体ドラムの残留電位に減衰させるための必要露光量の1〜10倍程度の光量が必要になっている。
【0018】
以上のように、トナー帯電量に応じて転写前露光手段の露光量を調整すれば、トナー電荷に応じてPTL光量を最適な光量に調整することにより感光体ドラムの疲労を低減することが可能であり、トナー散りの少ない、高画質で高安定な画像を形成することが可能となる。
なお、ここでは実施の形態としてフルカラー形成装置を使用して画像形成装置の説明を実施したが、単色の画像形成装置でもよい。また、転写材としては、転写ベルトで紙等の記録材を搬送し転写させる直接転写でも、一度転写ベルトにトナー像を担持させ、図示してない第2の転写手段を用いて記録材に転写させる中間転写方式を用いることも可能である。
前述したようにトナー色、すなわち、トナーの光透過率が大きくなると散りランク向上が早くなり必要な光量が低くなる。また、トナー帯電量の絶対値が高い(−帯電の場合は−側に大きい)とPTL光量増加に伴い早く散りランクが向上していくことが確認されている。
【0019】
図12はトナー透過率とトナー帯電量とPTL光量との関係を表として示す図である。必要な散りランク以上を達成するトナーの光透過率、トナー帯電量、PTL光量、トナー散り量(散りランク)の関係を別途実験により求める。図12は実験により導出された例を示している。これらの関係に基づき、使用トナーの露光量、帯電量に応じた必要な散りランク以上を達成するPTL光量を制御させる。
トナー電荷、トナー色に応じてPTL光量を最適な光量に調整することにより、例えば、光透過率が高く、帯電量も高いトナーを使用した現像装置においては、少ないPTL光量で同じ散り抑制をすることができ、感光体ドラムの疲労を低減することができる。
よって、トナー電荷、トナー色に応じてPTL光量を最適な光量に調整することにより感光体ドラムの疲労を低減することが可能であり、経時的かつ環境に対応したトナー散りの少ない、高画質で高安定な画像を形成することが可能となる。
【0020】
図13は本発明を適用している多色対応画像形成装置の第2の実施の形態を示す概略図である。次に、本発明を搭載した第2の実施の形態について説明を行う。図13において、像担持体である感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kは矢印の方向に回転する。添え字の符号Y、M、C及びKは、それぞれイエロー、マゼンダ、シアン、及びブラックを示している。
第1の実施の形態と同様であるが、各感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kの周りには、回転順に帯電器2Y、2M、2C、2K、現像装置4Y、4M、4C、4K、転写用帯電手段6Y、6M、6C、6K、クリーニング手段5Y、5M、5C、5Kが配置されている。
帯電部材2Y、2M、2C、2Kは、感光体ドラム1Y、1M、1C、1K表面を均一に帯電するための帯電装置を構成している。この帯電部材2Y、2M、2C、2Kと現像装置4Y、4M、4C、4Kとの間の感光体ドラム1Y、1M、1C、1K表面に書き込みユニット20によりビームが照射され、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kに静電潜像が形成されるようになっている。
【0021】
そして、静電潜像に基づき、現像装置4Y、4M、4C、4Kにより感光体ドラム1Y、1M、1C、1K面上にトナー像が形成される。さらに、転写用帯電手段6Y、6M、6C、6Kにより、転写材である転写ベルト80上にカラートナー像が形成される。
転写ベルト80に各色順次転写トナー像が転写され、カラートナー像は2次転写手段100により記録材に転写され、最終的に定着手段10により定着される。順次、各色トナー像が転写され、最終的に定着手段10により記録紙に画像が定着する。
転写用帯電手段6Y、6M、6C、6Kの上流側に転写前露光手段7Y、7M、7C、7Kを配置し、この転写前露光手段7Y、7M、7C、7Kによりトナー像の付着した感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kを露光する。転写前露光手段7Y、7M、7C、7Kは感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kを露光する手段であり、例えば、LEDのような光発光部材を使用したものである。
転写前露光手段7Y、7M、7C、7Kは現像装置4Y、4M、4C、4Kで使用されるトナーの帯電量に応じて、図示してない露光制御手段により露光量が制御される。
【0022】
図14は図13の第2の実施の形態に使用する転写前露光手段の光量制御を行う制御系を示すブロック図である。図14において、制御部40は現像電流を検知する現像電流検知手段41及び濃度センサ(トナー付着量計測手段)90の検知結果から得られた帯電量に基づいて、転写前露光手段7Y(7M、7C、7K)の露光量を制御する。
図13及び図14を参照してトナーの帯電量の検知を以下に説明する。書き込みユニット(露光装置)20を駆動するための画像データを出力する画像処理部43を制御して、書き込みユニット20を所定の画像データで駆動して感光体ドラム1Y(1M、1C、1K)上にベタ画像からなるパッチ画像の静電潜像を形成する。
また、トナー付着量計測手段90は、転写ベルト80の2次転写下流側で、かつ、転写材クリーニング手段101の上流側に配置し、トナー付着量の計測を適宜行う。このトナー付着量計測手段90は本説明では転写ベルト80の2次転写上流側に配置したが、感光体ドラム1Y(1M、1C、1K)の転写前位置に各々配置することも可能である。
【0023】
次に、トナー付着量計測手段90について説明を行う。トナー付着量計測手段90は感光体ドラム1Y(1M、1C、1K)から中間転写材である転写ベルト80に転写されたトナー像の濃度を、トナー付着量計測手段90を構成する濃度センサで検知することによりトナー付着量を検知する。
トナー付着量計測手段(濃度センサ)90は、転写ベルト80上のカラートナー像の濃度を検知するものであって、転写ベルト80に光を照射する発光素子と転写ベルト80からの反射光を受光する受光素子とで構成された反射型の濃度センサからなる。
次に、トナー帯電量の検知は次のようにして行われる。まず、露光装置である書き込みユニット20を駆動するための画像データを出力する画像処理部43を制御して、書き込みユニット20を所定の画像データで駆動して感光体ドラム1Y(1M、1C、1K)上にベタ画像からなるパッチ画像の静電潜像を形成する。
次に、静電潜像を現像装置4Y(4M、4C、4K)で現像し、現像したトナー像を転写ベルト80に転写し、この転写ベルト80上のトナー像の濃度をトナー付着量計測手段90で検知する。
【0024】
トナー付着量計測手段(濃度センサ)90の検知結果を現像装置4Y(4M、4C、4K)の現像バイアス電流にフィードバックして、トナー付着量計測手段90の出力が一定になるように、現像電流検知手段41で計測された値とメモリ42に記憶された値とから現像バイアス電流を制御し、所定濃度のトナー像が形成された時の現像電流を現像電流検知手段(電流計)41で計測する。
トナーの付着量は、すでにトナー付着量計測手段90により一定値の濃度としているので、解かっており、制御部40はトナー付着量と現像電流とからトナー帯電量を算出する。
制御部40では、トナー帯電量qは所定面積Sであり、単位面積当たりのトナー付着量Mのトナー像を形成した時の現像電流Iを検知することにより、次の式から算出される。I=dQ/dt
Q=q×M×S
【0025】
4個の現像装置4Y、4M、4C、4K全てを作動させて、前記パッチ画像を形成し、トナー帯電量を検知し、各色におけるトナー帯電量を導出し、トナー帯電量に応じてPTL光量を調整する。
また、4色のトナー帯電量のすべてではなく、トナー散りの目立ちやすいKトナーや、透過率の低いK、Cトナーについてのみ検知を行い、制御することも可能である。
以上から、トナー帯電量を検知するトナー付着量計測手段(検知手段)90を有し、検知されたトナー帯電量に応じて、転写前露光手段7Y(7M、7C、7K)の露光量を調整することを特徴とすることにより、トナー電荷に応じてPTL光量を最適な光量に調整すれば、感光体ドラム1Y(1M、1C、1K)の疲労を低減することが可能であり、経時的、環境に対応したトナー散りの少ない、高画質、高安定な画像を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を適用している多色対応画像形成装置の第1の実施の形態を示す概略図である。
【図2】転写前露光手段の露光量制御を行う制御系を示すブロック図である。
【図3】散りランクと露光エネルギとの関係の実験結果をグラフで示す図である。
【図4】PTL露光量を可変させて発生する画像部周辺の散り量を示すモデル図である。
【図5】散りランクとPTL光量との関係の実験結果をグラフで示す図である。
【図6】各色の透過率測定結果の一例をグラフで示す図である。
【図7】トナー色におけるトナー散り評価をグラフで示す図である。
【図8】光透過率が20%のトナー色におけるトナー散り評価結果(トナー帯電量)の一例をグラフで示す図である。
【図9】光透過率が5%のトナー色におけるトナー散り評価結果(トナー帯電量)の一例をグラフで示す図である。
【図10】PTL光量とトナー散り量(散りランク)との関係を例としてグラフで示す図である。
【図11】トナー帯電量とPTL光量との関係を表として示す図である。
【図12】トナー透過率とトナー帯電量とPTL光量との関係を表として示す図である。
【図13】本発明を適用している多色対応画像形成装置の第2の実施の形態を示す概略図である。
【図14】図13の第2の実施の形態に使用する転写前露光手段の露光量制御を行う制御系を示すブロック図である。
【図15】一般的なPTL(転写前露光)の工程を示す概略図である。
【符号の説明】
【0027】
A 画像形成装置(第1の実施の形態)、B 画像形成装置(第2の実施の形態)、1Y 像担持体(感光体ドラム)、2Y 帯電手段(帯電部材)、4Y 現像手段(現像装置)、5Y クリーニング手段、6Y 転写バイアス印加手段(転写用帯電手段)、7Y 転写前露光手段、10 定着手段、20 露光手段(露光装置、書き込みユニット)、80 転写材(中間転写材、転写ベルト)、90 検知手段(トナー付着量計測手段、濃度センサ)、100 2次転写手段、101 転写材クリーニング手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像を担持するための像担持体と、該像担持体を帯電する帯電手段と、前記像担持体上に画像情報に基づいて静電潜像を形成するための露光手段と、前記静電潜像を現像してトナー像化するための現像手段と、トナー像を被転写体上に転写するための転写手段と、該転写手段にバイアスを印加する転写バイアス印加手段と、転写前に前記像担持体を露光する転写前露光手段と、を有する画像形成装置において、
トナー帯電量に応じて、前記転写前露光手段の露光量を調整することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記転写前露光手段の露光量は、前記像担持体の帯電電位を残留電位に減衰させる必要露光量以上であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記トナー帯電量とトナー色とに応じて、前記転写前露光手段の露光量を調整することを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記トナー帯電量を検知する検知手段を有し、検知されたトナー帯電量に応じて、前記転写前露光手段の露光量を調整することを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−152108(P2010−152108A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330492(P2008−330492)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】