説明

発光装置の作製方法

【課題】不純物を含まない良質な薄膜を成膜することができるスパッタリング装置、前記スパッタリング装置を用いた良質な薄膜の作製方法の提供する。
【解決手段】半導体材料に代表されるターゲット材と、前記ターゲット材と同じ材質の溶射物に被覆された部品を具備するスパッタリング装置を用いて、希ガスを含む雰囲気中で高周波電力を印加して、前記ターゲット材を用いて半導体層の成膜を行う発光装置の作製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリング装置に関する。また、本発明はスパッタリング法による薄膜
の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、絶縁表面上に薄膜トランジスタ(TFT)に代表されるトランジスタを形成し、
該トランジスタとEL(エレクトロルミネッセンス)素子等と組み合わせた画素をマトリ
クス状に配列して、情報を表示する画面を構成する技術の開発が進められている。この画
素は、スパッタリング法やCVD法などを用いて成膜された薄膜や電極などを有する素子
により構成される。
【0003】
スパッタリング法を用いて良質な薄膜を成膜するために、反応室、水素ボンベ、真空ポ
ンプ、基板ホルダー及び半導体ターゲットを含み、前記半導体ターゲットと前記基板ホル
ダーが90mm以上の距離をおいて相対することを特徴とするスパッタ装置がある(例え
ば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-144017号公報(第2、3頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のプラズマCVD法やスパッタリング法など、プラズマを用いて、化学的又は物理
的な反応を利用すると、成膜工程中におけるダストの発生などの様々な原因により、特性
が良好ではない薄膜が成膜され、製品歩留まりの低下を招いていた。
【0006】
また、スパッタリング法により形成された膜を分析すると、鉄(Fe)、ニッケル(N
i)、クロム(Cr)などの不純物が検出された。この不純物が検出された原因として、
(1)ターゲットとターゲットシールド間、ターゲットと防着板間においてマイクロアーク
(プラズマ中の局在的・瞬間的な異常放電)が生じ、チャンバー内の壁面に堆積した薄膜
の剥離による微細なダスト(パーティクル)の発生、(2)ターゲットシールド、防着板付
近までプラズマが生じたことによる発生、(3)環境汚染による発生などが考えられる。特
にTFTにおいて活性層としての役割を担うシリコンは、TFTの特性を左右するため、
不純物を含まない良質の膜が求められていた。
【0007】
そこで本発明は、上述の実情を鑑み、不純物を含まない良質な薄膜を成膜することがで
きるスパッタリング装置を提供することを課題とする。また前記スパッタリング装置を用
いた良質な薄膜の作製方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ターゲットシールド、防着板(以下シールドと総称)の表面、バッキングプ
レート、基板ホルダー及びシャッターの表面、チャンバー内の壁面などから発生する不純
物を抑制するために、前記部品の表面や前記壁面をターゲット材と同じ材質、ターゲット
材の酸化物又は窒化物からなる溶射物で被覆したスパッタリング装置を提供する。例えば
、シリコンに代表される半導体材料をターゲット材とし、前記部品の表面や前記壁面を前
記半導体材料、前記半導体材料の酸化物又は窒化物からなる溶射物で被覆したスパッタリ
ング装置を提供する。
なお前記部品の表面を全て溶射物により被覆しなくてもよく、プラズマに晒される箇所
のみを溶射物により被覆してもよい。また、前記部品のうち、ターゲットシールドのみ、
防着板のみ、又はターゲットシールド及び防着板のみの表面を溶射物により被覆してもよ
い。
また本発明は、ターゲット材と、溶射物に被覆された部品を具備し、前記ターゲット材
と相対して設けられた基板上に形成される薄膜が前記溶射物と同じ材質、酸化物又は窒化
物であるスパッタリング装置を提供する。例えば、シリコンに代表される半導体材料をタ
ーゲット材とし、シールドの表面を前記半導体材料、前記半導体材料の酸化物又は窒化物
で被覆する。そして、ターゲット材と相対して設けられた基板上に形成される薄膜は、前
記半導体材料と同じ材質、前記半導体材料の酸化物又は窒化物であるスパッタリング装置
を提供する。
さらに本発明は、半導体材料に代表されるターゲット材と、前記ターゲット材と同じ材
質の溶射物に被覆された部品を具備するスパッタリング装置を用いて、希ガスを含む雰囲
気中で高周波電力を印加して、前記ターゲット材と同じ材質、前記ターゲット材の酸化物
又は前記ターゲット材の窒化物からなる薄膜の作製方法を提供する。
なお、成膜する薄膜が半導体の場合、ターゲット材と溶射物は同じ材質(半導体)であ
る必要がある。成膜する薄膜が半導体材料の酸化物である場合、ターゲット材と溶射物は
、半導体材料又は半導体材料の酸化物である必要がある。成膜する薄膜が半導体材料の窒
化物である場合、ターゲット材と溶射物は、半導体材料又は半導体材料の窒化物である必
要がある。
【0009】
上記のように、溶射物を設ける本発明では、シールドなどの部品の表面からシールド材
が飛散することを防止することができる。また、本発明では、成膜する薄膜にシールド材
が混入しても、当該薄膜には悪影響を及ぼさない。従って、本発明により、不純物を含ま
ない良質な薄膜を成膜するスパッタリング装置を提供することができる。また本発明のス
パッタリング装置を用いて、良質な薄膜の作製方法を提供することができる。さらに、本
発明によれば、良質の薄膜を歩留まりよく成膜することが可能であり、さらに当該薄膜を
用いた素子の生産性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、不純物元素を含まない良質な薄膜を成膜するスパッタリング装置を提供
することができる。また本発明のスパッタリング装置を用いて、良質な薄膜の作製方法を
提供することができる。さらに、本発明によれば、良質の薄膜を歩留まりよく成膜するこ
とが可能であり、さらに薄膜を用いた素子の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のスパッタリング装置を示す図。
【図2】マルチチャンバーを示す図。
【図3】実験データを示す図。
【図4】実験データを示す図。
【図5】本発明が適用される表示装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のスパッタリング装置の構成について、図1を用いて説明する。
【0013】
ターゲット19は、バッキングプレートを介して冷媒24により冷却(水冷)されてい
る。永久磁石18はターゲット面と平行な方向に円運動又は直線運動することにより対向
する基板表面に膜厚の均一性の良い被膜の形成を可能とする。シャッター14は成膜開始
前後に開閉し、放電初期のプラズマが不安定な状態のときにおける被膜の形成を防止する

基板保持手段11はホルダー25が上下して基板を載置並びに背面板13に固定する。
背面板13内には加熱手段12としてシーズヒーターが埋め込まれ、さらに加熱された希
ガスを基板22の裏側から導入して均熱性を高めている。ガス導入手段10からはガス導
入管26を介して、希ガスの他に成膜する膜に合わせたガスが導入され、室内の圧力はコ
ンダクタンスバルブ20により制御される。整流板21は室内でのスパッタガスの流れを
整流する目的で設けられている。ターゲット19は高周波電源に接続され、高周波電力を
印加することによりスパッタリングがなされる。仕切弁15は、複数の処理室を備えたマ
ルチタスク型の製造装置に組み込んだ際、他の成膜室と連結するときに用いられる。
【0014】
防着板16、ターゲットシールド17は、基板22とターゲット19の付近に配置され
、スパッタリングされたターゲット19のスパッタ粒子が飛散して、チャンバー内の内壁
が汚染されることを防止する。防着板16及びターゲットシールド17は、一般にステン
レス材などを用いることが多い。
本発明では、バッキングプレート、シャッター14、防着板16及びターゲットシール
ド17、チャンバーの内壁などの部品の表面を溶射物により被覆する。詳しくは、プラズ
マ溶射法などの公知の溶射法を用いて、10〜300μmの厚さ(好ましくは50〜15
0μm)に被覆する。なお前記部品の表面の全てを溶射物で被覆する必要はなく、プラズ
マに晒される箇所のみを溶射物により被覆してもよい。また、前記部品のうち、ターゲッ
トシールドのみ、防着板のみ、又はターゲットシールド及び防着板のみの表面を溶射物に
より被覆してもよい。
【0015】
そして本発明では、希ガスを含む雰囲気中で高周波電力を印加してスパッタリング法に
より成膜する。例えば、酸化シリコン膜は、シリコンをターゲットとし、シリコンの溶射
物で被覆されたシールドを用いて、酸素又は酸素と希ガスを含む雰囲気中で高周波電力を
印加して成膜する。窒化シリコン膜は、シリコンをターゲットとし、シリコンの溶射物で
被覆されたシールドを用いて、窒素又は窒素と希ガスを含む雰囲気中で高周波電力を印加
して形成する。
【0016】
なお、金属と比較して比抵抗の高いシリコンをターゲットとするので、低電圧で放電を
発生し維持するには高周波電力を印加することが望ましく、適用する電力周波数は1MH
z以上120MHz以下、好ましくは10MHz以上60MHz以下の周波数とする。周
波数の増加に従って成膜の機構はより化学的反応が優先的となり、緻密で下地へのダメー
ジが少ない膜形成が期待できる。基板22の加熱温度は、特に加熱せずに室温の状態で成
膜してもよいが、下地との密着性をより高めるには100〜300℃、好ましくは150
〜200℃に加熱すると良好な密着性が得られる。
【0017】
また図2には、第1〜第3の成膜室31〜33と、基板の取り出しを行う取出室34と
、ロード室36とが搬送室35を中心に配置されたマルチチャンバーを示す。図1に示し
たスパッタリング装置は、第1〜第3の成膜室31〜33のいずれかに配置される。各成
膜室31〜33及び取出室34と搬送室35とは、搬送口40a〜40eを介して設置さ
れている。成膜時にはマルチチャンバーは減圧状態に保たれる。
【0018】
なお本形態では、マグネトロンスパッタリング装置を一例としてあげたが、本発明はこ
れに限定されず、イオンビームスパッタ法を用いたスパッタリング装置等にも適用しても
よい。
【実施例1】
【0019】
本発明のシリコン溶射をしたシールドを有するスパッタリング装置を用いて成膜した窒
化シリコン膜と、シリコン溶射をしていないシールドを有するスパッタリング装置を用い
て成膜した窒化シリコン膜の各々に含有するFe濃度をSIMS(二次イオン質量分析法
)により調べた結果について図3、4を用いて説明する。
【0020】
本実験では、ターゲットシールドのみにシリコンを60〜80μmの厚さになるように
溶射した。溶射方法は、電極間にAr、He、H2ガスを流し、電圧をチャージすること
によりプラズマを発生させて、シリコンパウダーをターゲットシールドに吹き付けるとい
う方法を採用した。表面荒さはRa3.5〜4μm、Rz21〜24μmであった。
【0021】
図3、4は、データポイントを平滑線でつないだグラフであり、横軸が深さ(μm)、
左縦軸がFe濃度(atoms/cm3)、右縦軸がシリコンの二次イオン強度(cou
nts/sec)である。また図3が本発明であるシリコン溶射有り、図4がシリコン溶
射無しである。
【0022】
図3、4より、深さが0〜0.02μmの範囲においてFeの濃度が特に大きく異なっ
ている。つまり、シリコン溶射をしたシールドを有する本発明のスパッタリング装置を用
いて成膜した窒化シリコン膜の方がFeの濃度が低く、本発明による効果が特に顕著に表
れていることが分かる。
従って、本発明のスパッタリング装置を用いて薄膜を成膜すると、該薄膜中における不
純物の含有濃度が低減される。そのため、良質な薄膜を成膜することができる。
【実施例2】
【0023】
本発明の薄膜の作製方法は、液晶表示装置や発光素子を用いた表示装置の作成に適用さ
れる。図5には、一例として、本発明が適用された発光素子を用いた表示装置を示す。
【0024】
TFTは画素部302とその周辺部に形成される駆動回路部301に設けられる。TF
Tのチャネル形成領域を形成する半導体層は、非晶質珪素又は多結晶珪素などが選択可能
であり、本発明はどれを採用しても構わない。
本発明は、活性層として機能する半導体層の形成に適用される。
【0025】
基板101はガラス基板又は有機樹脂基板が採用される。有機樹脂材料はガラス材料と
比較して軽量であり、発光装置自体の軽量化に有効に作用する。発光装置を作製する上で
適用できるものとしては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエ
チレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、アラミド等の有機
樹脂材料を用いることができる。ガラス基板は無アルカリガラスと呼ばれる、バリウムホ
ウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスを用いることが望ましい。ガラス基板の厚さ
は0.5〜1.1mmのものが採用されるが、軽量化を目的とすると厚さは薄くする必要
がある。また、さらに軽量化を図るには密度が2.37g/cm3と小さいガラスを採用
することが望ましい。
【0026】
図5は駆動回路部301にnチャネル型TFT303とpチャネル型TFT304が形
成され、画素部302にはnチャネル型の第1TFT305とpチャネル型の第4TFT
306、容量部307が形成されている。そして、第4TFT306は発光素子309の
陽極層126と接続する構成となっている。
【0027】
これらのTFTは、窒化珪素又は酸化窒化珪素から成る第1無機絶縁体層102上に半
導体層103〜106、ゲート絶縁膜108、ゲート電極110〜113により構成され
るものである。ゲート電極の上層には、水素を含有する窒化珪素又は酸化窒化珪素からな
る第2無機絶縁体層114が形成され、第1無機絶縁体層102との組み合わせにより半
導体層に水分や金属などの不純物が拡散して汚染されないようにする保護膜として機能し
ている。
本発明は、第1無機絶縁体層102や、第2無機絶縁体層102の形成に適用される。
【0028】
第2無機絶縁体層114上には、平坦化膜としてポリイミド、ポリアミド、ポリイミド
アミド、アクリル、BCBから選択される第1有機絶縁体層115が0.5〜1μmの厚
さで形成されている。第1有機絶縁体層115は、スピン塗布法で当該有機化合物を塗布
した後焼成によって形成する。有機絶縁体材料は吸湿性があり、水分を吸蔵する性質を持
っている。その水分が再放出されると、この上層部に形成される発光素子の有機化合物に
酸素を供給して有機発光素子を劣化させる原因となる。水分の吸蔵及び再放出を防ぐため
、第1有機絶縁体層115の上に第3無機絶縁体層116を50〜200nmの厚さで形
成する。第3無機絶縁体層116は下地との密着性及びバリア性の観点から緻密な膜とす
る必要があり、好ましくはスパッタリング法で形成される窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化
窒化アルミニウム、窒化アルミニウム等から選択される無機絶縁材料で形成する。
【0029】
有機発光素子309は、第3無機絶縁体層116上に形成される。基板101を通して
発光する光を放射する構成の発光装置は、第3無機絶縁体層116上に陽極層126とし
てITO(酸化インジウム・スズ)層を形成する。ITOには平坦化や低抵抗化を目的と
して酸化亜鉛又はガリウムが添加されていても良い。配線117〜125は陽極層126
の前に形成し、第3無機絶縁体層116上で重ね合わせて電気的接続を形成している。
本発明は、第3無機絶縁体層116の形成に適用される。
【0030】
画素毎を分離する第2有機絶縁体層(隔壁層)128はポリイミド、ポリアミド、ポリ
イミドアミド、アクリル、ベンゾシクロブテン(BCB)から選択される材料により形成
する。これらは熱硬化型又は光硬化型の材料が適用可能である。第2有機絶縁体層(隔壁
層)128は当該有機絶縁体材料を0.5〜2μmの厚さで全面に形成した後、陽極層1
26に合わせて開口部を形成する。この場合、陽極層126の端部を覆うように形成し、
その側壁の傾斜角を35〜45度とする。第2有機絶縁体層(隔壁層)128は画素部3
02のみでなく、駆動回路部301に渡って延在して形成され、配線117〜124を覆
って形成することで層間絶縁膜としての機能も兼ね備えている。
【0031】
有機絶縁体材料は吸湿性があり、水分を吸蔵する性質を持っている。その水分が再放出
されると、発光素子309の有機化合物に水分を供給して有機発光素子を劣化させる原因
となる。水分の吸蔵及び再放出を防ぐため、第2有機絶縁体層128の上に第4無機絶縁
体層129を10〜100nmの厚さで形成する。第4無機絶縁体層129は窒化物で成
る無機絶縁物材料をもって形成する。具体的には、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化酸
化アルミニウムから選択される無機絶縁物材料により形成する。第4無機絶縁体層129
は、第2有機絶縁体層128の上面及び側面を覆って形成され、陽極層126に重なる端
部をテーパー形状となるように形成する。
【0032】
有機発光素子309は陽極層126と、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む陰極
層131と、その間に形成される発光体を含む有機化合物層130で形成される。発光体
を含む有機化合物層130は一層又は複数の層が積層されて形成されている。各層はその
目的と機能により、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層等と区別
して呼ばれている。これらは、低分子系有機化合物材料、中分子系有機化合物材料、又は
高分子系有機化合物材料のいずれか、或いは、両者を適宣組み合わせて形成することが可
能である。また、電子輸送性材料と正孔輸送性材料を適宜混合させた混合層、又はそれぞ
れの接合界面に混合領域を形成した混合接合を形成しても良い。
【0033】
陰極層131は仕事関数の小さいアルカリ金属又はアルカリ土類金属により形成され、
マグネシウム(Mg)、リチウム(Li)若しくはカルシウム(Ca)を含む材料を用い
る。好ましくはMgAg(MgとAgをMg:Ag=10:1で混合した材料)でなる電
極を用いれば良い。他にもMgAgAl電極、LiAl電極、また、LiFAl電極が挙
げられる。又は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物とアルミニウムなどの低
抵抗金属とを組み合わせて形成しても良い。陰極層131は共通電極として複数の画素に
渡って形成され、画素部302の外側、或いは画素部302と駆動回路部301との間で
配線120に接続され、外部端子に導かれる。
【0034】
さらにその上層には、窒化珪素、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、酸化窒化ア
ルミニウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどから選択される材料で第5無機絶
縁体層132を形成しても良い。特に、DLC膜は酸素、CO、CO2、H2O等のガスバ
リア性が高いことが知られている。第5無機絶縁体層132は、陰極131を形成した後
、大気解放しないで連続的に形成することが望ましい。第5無機絶縁体層132の下層に
は窒化珪素のバッファ層を設けて密着性を向上させても良い。
【0035】
また、図示しないが陽極層126と発光体を含む有機化合物層130との界面に0.5
〜5nmでトンネル電流が流れる程度の厚さの第6無機絶縁体層を形成しておいても良い
。これは陽極表面の凹凸に起因する短絡の防止と、陰極に用いるアルカリ金属等が下層側
に拡散するのを抑止する効果がある。
【0036】
画素部302に形成された第2有機絶縁体層128は駆動回路部301上に延在し、第
2有機絶縁体層128上に形成された第4無機絶縁体層129上にシールパターン133
が形成される。当該シールパターン133は駆動回路部301及び当該駆動回路部301
と入力端子とを接続する配線117と一部又は全部が重なって設けられ、発光装置の額縁
領域(画素部の周辺領域)の面積を縮小させている。
【0037】
このシールパターン133を介して封止板134を固着している。封止板134にはス
テンレス鋼やアルミニウムなどの金属を用いることができる。また、ガラス基板などを適
用しても良い。シールパターン133と封止板134で囲まれた内側には、酸化バリウム
などの乾燥剤135を封入して水分による劣化を防いでいる。封止板の厚さは30〜12
0μm程度の有機樹脂材料を使って可撓性を持たせても良い。その表面にはガスバリア層
としてDLCや窒化珪素など無機絶縁体から成る被膜を形成しておいても良い。シールパ
ターンに用いられる材料の一例はエポキシ系接着剤であり、その側面部も無機絶縁体から
成る被膜で覆うことによりその部分から浸透する水蒸気を防ぐことができる。
【0038】
入力端子部308はゲート電極と同一層で形成される配線又は第3無機絶縁体層116
上に形成される配線で形成される。図5ではゲート電極と同一層で形成する一例を示し、
導電層109と127で形成されている。導電層127は陽極層126と同時に形成され
るものであり、酸化物導電性材料で形成される。実際には表面に露出する部分をこの酸化
物導電性材料で覆うことにより、酸化反応による表面抵抗の増大を防いでいる。
【0039】
図5で示すように、半導体層105、106を挟み包むように第1無機絶縁体層102
と第2無機絶縁体層114とが形成されている。一方、有機発光素子309は、第3無機
絶縁体層116、第5無機絶縁体層132、第4無機絶縁体層129とに囲まれている。
即ち、TFTの半導体層と発光素子は、それぞれ無機絶縁体層で被覆された構造となって
いる。無機絶縁体層は窒化珪素や酸化窒化珪素膜であり、水蒸気やイオン性の不純物に対
してバリア性のある材料を用いている。
【0040】
第1TFT305や第4TFT306に対しナトリウム等のアルカリ金属の汚染源とし
て基板101や有機発光素子309が考えられるが、第1無機絶縁体層102と第2無機
絶縁体層114で囲むことによりそれを防ぐことができる。一方、有機発光素子309は
酸素や水分を最も嫌うため、それを防ぐために第3無機絶縁体層116、第4無機絶縁体
層129、第5無機絶縁体層132が無機絶縁体材料で形成されその汚染を防いでいる。
また、これらは有機発光素子309が有するアルカリ金属元素を外に出さないための機能
も備えている。
【0041】
上記のように、本発明は、活性層として機能する半導体層や、無機絶縁体層の形成に適
用される。本発明を適用すれば、良質の薄膜を歩留まりよく成膜することが可能であり、
さらに薄膜を用いた素子の生産性を向上させることができる。従って、上記の素子を用い
た表示装置の生産性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0042】
10・・・ガス導入手段、11・・・基板保持手段、12・・・加熱手段、13・・・背
面板、14・・・シャッター、15・・・仕切弁、16・・・防着板、17・・・ターゲ
ットシールド、18・・・永久磁石、19・・・ターゲット、20・・・コンダクタンス
バルブ、21・・・整流板、22・・・基板、23・・・溶射物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられた第1無機絶縁体層と、
前記第1無機絶縁体層上に設けられた半導体層を有する薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタ上に設けられた第2無機絶縁体層と、
前記第2無機絶縁体層上に設けられた第1有機絶縁体層と、
前記第1有機絶縁体層上に設けられた第3無機絶縁体層と、
前記第3無機絶縁体層上に設けられた第1電極層と、
前記第3無機絶縁体層上に設けられ、且つ前記第1電極層の端部を覆う第2有機絶縁体層と、
前記第2有機絶縁体層の上面及び側面を覆う第4無機絶縁体層と、
前記第1電極層上及び前記第4無機絶縁体層上に設けられた発光体を含む有機化合物層と、
前記有機化合物層上に設けられた第2電極層と、
前記第2電極層上に設けられた第5無機絶縁体層と、を有し、
前記半導体層の成膜は、チャンバー内の部品表面が半導体材料を含むターゲット材と同じ材質の溶射物により被覆されたスパッタリング装置において行われ、前記ターゲット材を用いて、希ガスを含む雰囲気中で高周波電力を印加することにより形成されることを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1乃至前記第5無機絶縁体層のいずれかは、前記半導体材料の酸化物または前記半導体材料の窒化物であり、
前記第1乃至前記第5無機絶縁体層のいずれかの成膜は、チャンバー内の部品表面が前記ターゲット材と同じ材質の溶射物により被覆されたスパッタリング装置において行われ、前記ターゲット材を用いて、希ガスを含む雰囲気中で高周波電力を印加することにより形成されることを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記部品は、ターゲットシールド、防着板、バッキングプレート、整流板、基板ホルダー、ガス導入管、または前記チャンバーの内壁であることを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記半導体材料はシリコンであることを特徴とする発光装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−124570(P2011−124570A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271088(P2010−271088)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【分割の表示】特願2003−363999(P2003−363999)の分割
【原出願日】平成15年10月24日(2003.10.24)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】