説明

硬化性組成物及び接続構造体

【課題】濡れ性が高く、従って接続対象部材の接続に用いられた場合に、接続後にボイドが生じ難い硬化性組成物、並びに該硬化性組成物を用いた接続構造体を提供する。
【解決手段】本発明に係る硬化性組成物は、熱硬化性化合物と、熱硬化剤と、ポリエーテル変性シロキサンとを含む。接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材4と、該第1,第2の接続対象部材2,4を接続している接続部3とを備える。接続部3は、上記硬化性組成物により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物に関し、より詳細には、濡れ性が高く、従って硬化後にボイドが生じ難い硬化性組成物、並びに該硬化性組成物を用いた接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂組成物は、硬化後の硬化物の接着力が高く、硬化物の耐水性及び耐熱性にも優れている。このため、エポキシ樹脂組成物は、電気、電子、建築及び車両等の各種用途に広く用いられている。
【0003】
上記エポキシ樹脂組成物の一例として、下記の特許文献1には、ナフタレン型エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂用熱硬化剤と、界面活性剤とを含むエポキシ樹脂組成物が開示されている。ここでは、25℃での表面張力が30.1〜39.6mN/mとなるように、上記界面活性剤が用いられている。また、上記界面活性剤の好ましい例として、具体的には、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、及びパーフルオロアルキル含有オリゴマーが挙げられており、実施例ではこれらの好ましい界面活性剤が用いられている。
【0004】
また、様々な接続対象部材を電気的に接続するために、上記エポキシ樹脂組成物に、導電性粒子が配合されることがある。導電性粒子を含むエポキシ樹脂組成物は、異方性導電材料と呼ばれている。
【0005】
上記異方性導電材料は、具体的には、ICチップとフレキシブルプリント回路基板との接続、及びICチップとITO電極を有する回路基板との接続等に使用されている。例えば、ICチップの電極と回路基板の電極との間に異方性導電材料を配置した後、加熱及び加圧することにより、これらの電極同士を接続できる。
【0006】
上記異方性導電材料の一例として、下記の特許文献2には、エポキシ樹脂と、ゴム状ポリマー粒子と、熱活性な潜在性エポキシ硬化剤と、高軟化点ポリマー粒子と、導電性粒子とを含有する異方性導電ペーストが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3478225号公報
【特許文献2】特開2000−345010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、精密電子機器の分野では、回路の高密度化が進んでおり、電極幅及び電極間隔が極めて狭くなっている。このような微細な電極が形成された回路基板を、特許文献1に記載のエポキシ樹脂組成物により接続した場合、該エポキシ樹脂組成物の濡れ性が充分ではないため、電極間のスペースにボイドが生じることがある。特許文献2に記載の異方性導電ペーストでも、濡れ性が充分ではないため、同様にボイドが生じやすい。
【0009】
本発明の目的は、濡れ性が高く、従って接続対象部材の接続に用いられた場合に、接続後にボイドが生じ難い硬化性組成物、及び該硬化性組成物を用いた接続構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の広い局面によれば、熱硬化性化合物と、熱硬化剤と、ポリエーテル変性シロキサンとを含む、硬化性組成物が提供される。
【0011】
本発明に係る硬化性組成物のある特定の局面では、上記熱硬化性化合物は、エポキシ基及びチイラン基の内の少なくとも1種を有する熱硬化性化合物である。上記熱硬化性化合物は、エポキシ基を有する化合物を含有することが好ましい。上記熱硬化性化合物は、チイラン基を有する化合物を含有することが好ましい。また、上記熱硬化性化合物は、エポキシ基を有する化合物とチイラン基を有する化合物とを含有することが好ましい。
【0012】
本発明に係る硬化性組成物の他の特定の局面では、(メタ)アクリル化合物と、光重合開始剤とがさらに含まれる。
【0013】
本発明に係る硬化性組成物の別の特定の局面では、硬化性組成物100重量%中、上記ポリエーテル変性シロキサンの含有量は0.01〜5重量%である。
【0014】
本発明に係る硬化性組成物の他の特定の局面では、導電性粒子がさらに含まれており、硬化性組成物は異方性導電材料である。
【0015】
本発明に係る硬化性組成物の他の特定の局面では、該硬化性組成物は、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続、又は半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続に用いられる異方性導電材料である。
【0016】
本発明に係る接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備えており、該接続部が、本発明に従って構成された硬化性組成物により形成されている。
【0017】
本発明に係る接続構造体のある特定の局面では、上記硬化性組成物は、導電性粒子を含む異方性導電材料であり、上記第1,第2の接続対象部材は、上記導電性粒子により電気的に接続されている。
【0018】
本発明に係る接続構造体の他の特定の局面では、フレキシブルプリント基板とガラス基板とを接続するか、又は半導体チップとガラス基板とを接続する接続構造体の製造方法であって、上記第2の接続対象部材及び上記第1の接続対象部材として、フレキシブルプリント基板とガラス基板とが用いられるか、又は半導体チップとガラス基板とが用いられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る硬化性組成物は、熱硬化性化合物、熱硬化剤及びポリエーテル変性シロキサンを含むので、濡れ性が高い。従って、本発明に係る硬化性組成物を硬化させて、様々な接続対象部材を接続した場合に、接続後にボイドが生じるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る硬化性組成物を用いた接続構造体を模式的に示す部分切欠断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
(硬化性組成物)
本発明に係る硬化性組成物は、熱硬化性化合物と、熱硬化剤と、ポリエーテル変性シロキサンとを含む。本発明に係る硬化性組成物は、このような組成を有するので、濡れ性が高い。従って、硬化性組成物により接続対象部材を接続した場合に、接続後に、硬化性組成物の硬化物と接続対象部材との間の界面などにボイドが生じ難くなる。ボイドを低減できるので、硬化物の剥離も生じ難くなり、接続信頼性を高めることができる。
【0023】
本発明に係る硬化性組成物は、25℃での表面張力が35〜45mN/mであることが好ましい。この場合には、硬化性組成物の濡れ性がより一層高くなり、接続後にボイドがより一層生じ難くなる。硬化性組成物の濡れ性が高いと、凹凸表面を有する回路基板などの接続対象部材に対して、硬化性組成物が均一に濡れ広がり、特に凹部に対する硬化性組成物の充填性が高くなる。本発明に係る硬化性組成物は、ポリエーテル変性シロキサンを含むため、上記表面張力を35〜45mN/mの範囲内に容易に制御できる。硬化性組成物の濡れ性をより一層高める観点からは、硬化性組成物の25℃での表面張力のより好ましい下限は37mN/mである。
【0024】
濡れ性をより一層高くし、ボイドをより一層生じ難くする観点からは、本発明に係る硬化性組成物は、電子素子を回路基板に接続するための硬化性組成物であり、25℃での表面張力が35〜45mN/mとなるように、上記ポリエーテル変性シロキサンを含むことが好ましい。
【0025】
〔熱硬化性化合物〕
本発明に係る硬化性組成物に含まれている熱硬化性化合物は、加熱により硬化するものであれば特に限定されない。熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0026】
上記熱硬化性化合物としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド化合物(チイラン基含有化合物)、ポリイミド化合物、フェノール化合物、メラミン化合物、不飽和ポリエステル化合物及びビスマレイミド化合物等が挙げられる。
【0027】
上記熱硬化性化合物は、エポキシ基及びチイラン基の内の少なくとも1種を有する熱硬化性化合物(以下、化合物Aと略記することがある)であることが好ましい。化合物Aは、エポキシ基を有する化合物と、チイラン基を有する化合物と、エポキシ基及びチイラン基を有する化合物とからなる群から選択された少なくとも1種である。上記エポキシ基を有する化合物は、エポキシ化合物である。上記チイラン基を有する化合物は、エピスルフィド化合物(チイラン基含有化合物)である。上記エポキシ基及びチイラン基を有する化合物は、チイラン基含有エポキシ化合物である。化合物Aの使用により、硬化性組成物の硬化速度を速くすることができる。さらに、硬化性組成物の硬化物の接着力を高くすることができる。上記化合物Aは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0028】
上記熱硬化性組成物は、エポキシ基を有する化合物を含有していてもよく、チイラン基を有する化合物を含有していてもよく、エポキシ基を有する化合物とチイラン基を有する化合物との双方を含有していてもよい。
【0029】
低温でより一層速やかに硬化させる観点からは、上記化合物Aは、チイラン基を有する化合物と、エポキシ基及びチイラン基を有する化合物との内の少なくとも1種を含有することが好ましく、チイラン基を有する化合物を含有することがより好ましい。硬化性組成物の保存安定性及び取扱い性を高める観点からは、上記化合物Aは、エポキシ基を有するエポキシ化合物と、チイラン基を有する化合物及びエポキシ基及びチイラン基を有する化合物の内の少なくとも1種とを含有することが好ましく、エポキシ基を有するエポキシ化合物とチイラン基を有する化合物とを含有することがより好ましい。
【0030】
上記化合物A100重量%中、チイラン基を有する化合物の含有量は0.01〜100重量%の範囲内であることが好ましい。上記化合物A100重量%中、上記チイラン基を有する化合物の含有量のより好ましい下限は5重量%、更に好ましい下限は10重量%、特に好ましい下限は20重量%である。上記チイラン基を有する化合物はチイラン基を有するので、エポキシ基を有する化合物と比べて、反応性が高い。従って、上記チイラン基を有する化合物の含有量が多いほど、硬化性組成物を低温でより一層速やかに硬化させることができる。
【0031】
上記熱硬化性化合物は、芳香族環を有することが好ましい。上記芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、クリセン環、トリフェニレン環、テトラフェン環、ピレン環、ペンタセン環、ピセン環及びペリレン環等が挙げられる。なかでも、上記芳香族環は、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環であることが好ましく、ベンゼン環又はナフタレン環であることがより好ましい。また、ナフタレン環は、平面構造を有するためにより一層速やかに硬化させることができるので好ましい。
【0032】
上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ樹脂、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0033】
上記エポキシ化合物の具体例としては、例えばエピクロルヒドリンと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂又はビスフェノールD型エポキシ樹脂等とから誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、並びにエピクロルヒドリンとフェノールノボラック又はクレゾールノボラックとから誘導されるエポキシノボラック樹脂が挙げられる。グリシジルアミン、グリシジルエステル、並びに脂環式又は複素環式等の1分子内に2個以上のオキシラン基を有する各種のエポキシ化合物を用いてもよい。
【0034】
さらに、上記エポキシ化合物として、例えば、後述する式(11−1)、(12−1)、(13)、(17)又は(18)で表される構造を有するエポキシ化合物を用いてもよい。
【0035】
上記化合物Aは、下記式(21)で表される構造を有するエポキシ化合物の単量体、該エポキシ化合物が少なくとも2個結合された多量体、又は該単量体と該多量体との混合物を含んでいてもよい。
【0036】
【化1】

【0037】
上記式(21)中、R1は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R2は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R3は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は下記式(22)で表される構造を表し、R4は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は下記式(23)で表される構造を表す。
【0038】
【化2】

【0039】
上記式(22)中、R5は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0040】
【化3】

【0041】
上記式(23)中、R6は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0042】
上記式(21)で表される構造を有するエポキシ化合物は、不飽和二重結合と、少なくとも2個のエポキシ基とを有することを特徴とする。上記式(21)で表される構造を有するエポキシ化合物の使用により、硬化性組成物を低温で速やかに硬化させることができる。
【0043】
上記化合物Aは、下記式(31)で表される構造を有する化合物の単量体、該化合物が少なくとも2個結合された多量体、又は該単量体と該多量体との混合物を含んでいてもよい。
【0044】
【化4】

【0045】
上記式(31)中、R1は水素原子もしくは炭素数1〜5のアルキル基又は下記式(32)で表される構造を表し、R2は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R3は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、X1は酸素原子又は硫黄原子を表し、X2は酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0046】
【化5】

【0047】
上記式(32)中、R4は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、X3は酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0048】
上記式(31)で表される構造を有する化合物に相当するエポキシ化合物は、例えば、以下のようにして合成できる。
【0049】
原料化合物である、水酸基を有するフルオレン化合物と、エピクロルヒドリンと、水酸化ナトリウムと、メタノールとを混合し、冷却し、反応させる。その後、水酸化ナトリウム水溶液を滴下する。滴下の後、さらに反応させ、反応液を得る。次に、反応液に水とトルエンとを加え、トルエン層を取り出す。トルエン層を水で洗浄した後、乾燥し、水と溶媒とを除去する。このようにして、上記式(31)で表される構造を有する化合物に相当するエポキシ化合物を容易に得ることができる。なお、原料化合物である、水酸基を有するフルオレン化合物は、例えばJFEケミカル社等から市販されている。
【0050】
また、上記式(31)で表される構造を有する化合物に相当するチイラン基含有化合物は、上記式(31)で表される構造を有する化合物に相当するエポキシ化合物のエポキシ基を、チイラン基に変換することにより合成できる。例えば、チオシアン酸塩を含む溶液に、原料化合物であるエポキシ化合物又は該エポキシ化合物を含む溶液を添加した後、チオシアン酸塩を含む溶液をさらに添加することにより、エポキシ基をチイラン基に容易に変換できる。
【0051】
上記化合物Aは、窒素原子を含む複素環を有するエポキシ化合物を含んでいてもよい。上記窒素原子を含む複素環を有するエポキシ化合物は、下記式(41)で表されるエポキシ化合物、又は下記式(42)で表されるエポキシ化合物であることが好ましい。このような化合物の使用により、硬化性組成物の硬化速度をより一層速くし、硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。
【0052】
【化6】

【0053】
上記式(41)中、R1〜R3はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、Zはエポキシ基又はヒドロキシメチル基を表す。R1〜R3は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0054】
【化7】

【0055】
上記式(42)中、R1〜R3はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を示し、p、q及びrはそれぞれ1〜5の整数を表し、R4〜R6はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R1〜R3は同一であってもよく、異なっていてもよい。p、q及びrは同一であってもよく、異なっていてもよい。R4〜R6は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0056】
上記窒素原子を含む複素環を有するエポキシ化合物は、トリグリシジルイソシアヌレート、又はトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートトリグリシジルエーテルであることが好ましい。これらの化合物の使用により、硬化性組成物の硬化速度をさらに一層速くすることができる。
【0057】
上記化合物Aは、芳香族環を有するエポキシ化合物を含むことが好ましい。芳香族環を有するエポキシ化合物の使用により、硬化性組成物の硬化速度をより一層速くし、硬化性組成物を塗布しやすくすることができる。硬化性組成物の塗布性をより一層高める観点からは、上記芳香族環は、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環であることが好ましい。上記芳香族環を有するエポキシ化合物としては、レゾルシノールジグリシジルエーテル又は1,6−ナフタレンジグリシジルエーテルが挙げられる。なかでも、レゾルシノールジグリシジルエーテルが特に好ましい。レゾルシノールジグリシジルエーテルの使用により、硬化性組成物の硬化速度を速くし、硬化性組成物を塗布しやすくすることができる。
【0058】
低温でより一層速やかに硬化させる観点からは、上記エピスルフィド化合物は、下記式(1−1)、(2−1)、(3)、(7)又は(8)で表される構造を有することが好ましい。下記式(1−1)において、ベンゼン環に結合している6つの基の結合部位は特に限定されない。下記式(2−1)において、ナフタレン環に結合している8つの基の結合部位は特に限定されない。下記式(7)において、ベンゼン環に結合している2つの基の結合部位は特に限定されない。下記式(8)において、シクロ環に結合している2つの基の結合部位は特に限定されない。
【0059】
【化8】

【0060】
上記式(1−1)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R3、R4、R5及びR6の4個の基の内の2〜4個の基は水素を表す。R3、R4、R5及びR6の内の水素ではない基は下記式(4)で表される基を表す。R3、R4、R5及びR6の4個の基の全てが水素であってもよい。R3、R4、R5及びR6の4個の基の内の1個又は2個が下記式(4)で表される基であり、かつR3、R4、R5及びR6の4個の基の内の下記式(4)で表される基ではない基は水素であってもよい。
【0061】
【化9】

【0062】
上記式(4)中、R7は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0063】
【化10】

【0064】
上記式(2−1)中、R51及びR52はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の内の4〜6個の基は水素を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の内の水素ではない基は、下記式(5)で表される基を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の全てが水素であってもよい。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の内の1個又は2個が下記式(5)で表される基であり、かつR53、R54、R55、R56、R57及びR58の内の下記式(5)で表される基ではない基は水素であってもよい。
【0065】
【化11】

【0066】
上記式(5)中、R59は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0067】
【化12】

【0068】
上記式(3)中、R101及びR102はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の内の6〜8個の基は水素を表す。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の内の水素ではない基は、下記式(6)で表される基を表す。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の全てが水素であってもよい。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の内の1個又は2個が下記式(6)で表される基であり、かつR103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の内の下記式(6)で表される基ではない基は水素であってもよい。
【0069】
【化13】

【0070】
上記式(6)中、R111は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0071】
【化14】

【0072】
上記式(7)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0073】
【化15】

【0074】
上記式(8)中、R3及びR4はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0075】
上記化合物Aは、下記式(11−1)、(12−1)、(13)、(17)又は(18)で表されるエポキシ化合物を含んでいてもよい。下記式(11−1)において、ベンゼン環に結合している6つの基の結合部位は特に限定されない。下記式(12−1)において、ナフタレン環に結合している8つの基の結合部位は特に限定されない。下記式(17)において、ベンゼン環に結合している2つの基の結合部位は特に限定されない。下記式(18)において、シクロ環に結合している2つの基の結合部位は特に限定されない。
【0076】
【化16】

【0077】
上記式(11−1)中、R11及びR12はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R13、R14、R15及びR16の4個の基の内の2〜4個の基は水素を表す。R13、R14、R15及びR16の内の水素ではない基は下記式(14)で表される基を表す。R13、R14、R15及びR16の4個の基の全てが水素であってもよい。R13、R14、R15及びR16の4個の基の内の1個又は2個が下記式(14)で表される基であり、かつR13、R14、R15及びR16の4個の基の内の下記式(14)で表される基ではない基は水素であってもよい。
【0078】
【化17】

【0079】
上記式(14)中、R17は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0080】
【化18】

【0081】
上記式(12−1)中、R61及びR62はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R63、R64、R65、R66、R67及びR68の6個の基の内の4〜6個の基は水素を表す。R63、R64、R65、R66、R67及びR68の内の水素ではない基は、下記式(15)で表される基を表す。R63、R64、R65、R66、R67及びR68の6個の基の全てが水素であってもよい。R63、R64、R65、R66、R67及びR68の6個の基の内の1個又は2個が下記式(15)で表される基であり、かつR63、R64、R65、R66、R67及びR68の6個の基の内の下記式(15)で表される基ではない基は水素であってもよい。
【0082】
【化19】

【0083】
上記式(15)中、R69は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0084】
【化20】

【0085】
上記式(13)中、R121及びR122はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129及びR130の8個の基の内の6〜8個の基は水素を表す。R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129及びR130の内の水素ではない基は、下記式(16)で表される基を表す。R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129及びR130の8個の基の全てが水素であってもよい。R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129及びR130の8個の基の内の1個又は2個が下記式(16)で表される基であり、かつR123、R124、R125、R126、R127及びR128の8個の基の内の下記式(16)で表される基ではない基は水素であってもよい。
【0086】
【化21】

【0087】
上記式(16)中、R131は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0088】
【化22】

【0089】
上記式(17)中、R5及びR6はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0090】
【化23】

【0091】
上記式(18)中、R7及びR8はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0092】
低温でより一層速やかに硬化させる観点からは、上記化合物Aは、上記式(1−1)、上記式(2−1)、上記式(3)、上記式(7)又は上記式(8)で表される化合物と、上記式(11−1)、上記式(12−1)、上記式(13)、上記式(17)又は上記式(18)で表されるエポキシ化合物とを含有することが好ましい。さらに、上記化合物Aは、上記式(3)、上記式(7)又は上記式(8)で表される化合物と、上記式(13)、上記式(17)又は上記式(18)で表されるエポキシ化合物とを含有することが好ましい。
【0093】
上記式(1−1)、(2−1)、(3)、(7)又は(8)で表される構造を有するエピスルフィド化合物の製造方法、並びに上記式(1−1)、(2−1)、(3)、(7)又は(8)で表される構造を有するエピスルフィド化合物と、上記式(11−1)、(12−1)、(13)、(17)又は(18)で表されるエポキシ化合物との混合物(以下、混合物Xと略記することがある)の製造方法は特に限定されない。この製造方法として、例えば、上記式(1−1)、(2−1)、(3)、(7)又は(8)で表されるエポキシ化合物を用意し、該エポキシ化合物の全部又は一部のエポキシ基をチイラン基に変換する製造方法が挙げられる。
【0094】
上記製造方法は、チオシアン酸塩を含む第1の溶液に、上記式(11−1)、(12−1)、(13)、(17)又は(18)で表されるエポキシ化合物又は該エポキシ化合物を含む溶液を連続的又は断続的に添加した後、チオシアン酸塩を含む第2の溶液を連続的又は断続的にさらに添加する方法が好ましい。この方法により、上記エポキシ化合物の全部又は一部のエポキシ基をチイラン基に変換できる。上記エポキシ化合物の一部のエポキシ基をチイラン基に変換した結果、上記混合物Xが得られる。
【0095】
上記硬化性組成物は、エピスルフィド化合物として、フェノキシ樹脂のエポキシ基がチイラン基に変換されたチイラン基を有する変性フェノキシ樹脂を含んでいてもよい。硫化剤を用いて、従来公知の方法により、フェノキシ樹脂のエポキシ基をチイラン基に変換できる。
【0096】
「フェノキシ樹脂」は、一般的には、例えばエピハロヒドリンと2価フェノール化合物とを反応させて得られる樹脂、又は2価のエポキシ化合物と2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂である。
【0097】
フェノキシ樹脂を得る上記反応において、フェノキシ樹脂の原料となるエポキシ基を有する化合物にかえて該エポキシ基を有する化合物のエポキシ基をチイラン基に変換したチイラン基を有する化合物を用いることにより、チイラン基を有するフェノキシ樹脂を得ることができる。さらに、エポキシ基を有するフェノキシ樹脂を用意し、該エポキシ基を有するフェノキシ樹脂のエポキシ基をチイラン基に変換することによっても、チイラン基を有するフェノキシ樹脂を得ることができる。
【0098】
硬化性組成物100重量%中、上記熱硬化性化合物の含有量は40〜95重量%であることが好ましい。硬化性組成物100重量%中、上記熱硬化性化合物の含有量のより好ましい下限は50重量%、より好ましい上限は70重量%である。上記熱硬化性化合物の含有量が上記下限及び上限を満たすと、硬化性組成物を充分に熱硬化させることができ、硬化性組成物の硬化物の接着力を充分に高くすることができる。
【0099】
〔熱硬化剤〕
本発明に係る硬化性組成物は、熱硬化剤を含むことが好ましい。上記硬化剤には、熱ラジカル開始剤が含まれる。熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0100】
上記熱硬化剤は特に限定されない。上記熱硬化剤としては、イミダゾール熱硬化剤、アミン熱硬化剤、フェノール熱硬化剤、ポリチオール熱硬化剤、酸無水物及び熱ラジカル開始剤等が挙げられる。なかでも、硬化性組成物を低温でより一層速やかに硬化させることができるので、イミダゾール熱硬化剤、ポリチオール熱硬化剤又はアミン熱硬化剤が好ましい。また、上記熱硬化性化合物と上記熱硬化剤とを混合したときに保存安定性を高めることができるので、潜在性の熱硬化剤が好ましい。潜在性の熱硬化剤は、潜在性イミダゾール熱硬化剤、潜在性ポリチオール熱硬化剤又は潜在性アミン熱硬化剤であることが好ましい。これらの熱硬化剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なお、上記熱硬化剤は、ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂等の高分子物質で被覆されていてもよい。
【0101】
上記イミダゾール熱硬化剤としては、特に限定されないが、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン及び2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
【0102】
上記ポリチオール熱硬化剤としては、特に限定されないが、トリメチロールプロパン トリス−3−メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトール テトラキス−3−メルカプトプロピオネート及びジペンタエリスリトール ヘキサ−3−メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
【0103】
上記アミン熱硬化剤としては、特に限定されないが、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、メタフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0104】
上記硬化剤の中でもポリチオール化合物又は酸無水物等が好ましく用いられる。硬化性組成物の硬化速度をより一層速くできるので、ポリチオール化合物がより好ましく用いられる。
【0105】
上記ポリチオール化合物の中でもペンタエリスリトール テトラキス−3−メルカプトプロピオネートがより好ましい。このポリチオール化合物の使用により、硬化性組成物の硬化速度をより一層速くできる。
【0106】
上記熱ラジカル開始剤としては、特に限定されず、アゾ化合物及び過酸化物等が挙げられる。上記過酸化物としては、ジアシルパーオキサイド化合物、パーオキシエステル化合物、ハイドロパーオキサイド化合物、パーオキシジカーボネート化合物、パーオキシケタール化合物、ジアルキルパーオキサイド化合物、及びケトンパーオキサイド化合物等が挙げられる。
【0107】
上記アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル−1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2−tert−ブチルアゾ−2−シアノプロパン、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)二水和物、及び2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が挙げられる。
【0108】
上記ジアシルパーオキサイド化合物としては、過酸化ベンゾイル、ジイソブチリルパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、及びDisuccinic acid peroxide等が挙げられる。上記パーオキシエステル化合物としては、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5―ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソフタレート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシオクトエート及びtert−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。上記ハイドロパーオキサイド化合物としては、キュメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。上記パーオキシジカーボネート化合物としては、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、及びジ(2−エチルヘキシル)パーオキシカーボネート等が挙げられる。また、上記過酸化物の他の例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、カリウムパーサルフェイト、及び1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0109】
上記熱ラジカル開始剤の10時間半減期を得るための分解温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、好ましく80℃以下、より好ましくは70℃以下である。上記熱ラジカル開始剤の10時間半減期を得るための分解温度が、30℃未満であると、硬化性組成物の貯蔵安定性が低下する傾向があり、80℃を超えると、硬化性組成物を充分に熱硬化させることが困難になる傾向がある。
【0110】
上記熱硬化剤の含有量は特に限定されない。上記硬化剤の含有量は、硬化剤の種類に応じて適宜調整される。上記熱硬化性化合物(熱硬化性化合物が化合物Aである場合には化合物A)100重量部に対して、上記熱硬化剤の含有量は0.01〜200重量部の範囲内であることが好ましい。
【0111】
上記硬化剤が熱ラジカル開始剤以外の硬化剤である場合に、上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記熱硬化剤の含有量の好ましい下限は0.01重量部、より好ましい下限は30重量部、好ましい上限は200重量部、より好ましい上限は100重量部、更に好ましい上限は75重量部、特に好ましい上限は40重量部である。熱硬化剤の含有量が上記下限を満たすと、硬化性組成物を充分に硬化させることが容易である。熱硬化剤の含有量が上記上限を満たすと、硬化後に硬化に関与しなかった余剰の熱硬化剤が残存し難くなり、かつ硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。
【0112】
なお、上記熱硬化剤がイミダゾール熱硬化剤又はフェノール熱硬化剤である場合、上記熱硬化性化合物100重量部に対して、イミダゾール熱硬化剤又はフェノール熱硬化剤の含有量は1〜15重量部の範囲内であることが好ましい。また、上記熱硬化剤がアミン熱硬化剤、ポリチオール熱硬化剤又は酸無水物である場合、上記熱硬化性化合物100重量部に対して、アミン熱硬化剤、ポリチオール熱硬化剤又は酸無水物の含有量は15〜40重量部の範囲内であることが好ましい。
【0113】
上記硬化剤が熱ラジカル開始剤である場合に、上記熱ラジカル開始剤の含有量は特に限定されない。上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記熱ラジカル開始剤の含有量は、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。上記熱ラジカル硬化剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化性組成物を充分に熱硬化させることができる。
【0114】
本発明に係る硬化性組成物は、硬化促進剤をさらに含むことが好ましい。硬化促進剤の使用により、硬化性組成物の硬化速度をより一層速くすることができる。硬化促進剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0115】
上記硬化促進剤の具体例としては、イミダゾール硬化促進剤又はアミン硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、イミダゾール硬化促進剤が好ましい。なお、イミダゾール硬化促進剤又はアミン硬化促進剤は、イミダゾール熱硬化剤又はアミン熱硬化剤としても用いることができる。
【0116】
上記イミダゾール硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン及び2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
【0117】
上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記硬化促進剤の含有量の好ましい下限は0.5重量部、より好ましい下限は1重量部、好ましい上限は6重量部、より好ましい上限は4重量部である。硬化促進剤の含有量が上記下限を満たすと、硬化性組成物を充分に硬化させることが容易である。硬化促進剤の含有量が上記上限を満たすと、硬化後に硬化に関与しなかった余剰の硬化促進剤が残存し難くなる。
【0118】
〔ポリエーテル変性シロキサン〕
本発明に係る硬化性組成物に含まれているポリエーテル変性シロキサンは、濡れ性調整剤として作用する。
【0119】
濡れ性をより一層高くし、ボイドをより一層生じ難くする観点からは、ポリエーテル変性シロキサンの重量平均分子量は、400〜5000の範囲内であることが好ましい。該重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での値である。濡れ性をより一層高くし、ボイドをより一層生じ難くする観点からは、ポリエーテル変性シロキサンの重量平均分子量のより好ましい下限は1000、より好ましい上限は4000である。
【0120】
硬化性組成物100重量%中、上記ポリエーテル変性シロキサンの含有量は0.01〜5重量%であることが好ましい。硬化性組成物100重量%中、上記ポリエーテル変性シロキサンの含有量のより好ましい上限は3.0重量%である。上記ポリエーテル変性シロキサンの含有量が上記下限及び上限を満たすと、硬化性組成物の濡れ性がより一層高くなり、接続後にボイドがより一層生じ難くなる。
【0121】
〔光硬化性組成物〕
本発明に係る硬化性組成物は、光照射によっても硬化するように、光硬化性化合物をさらに含んでいてもよい。また、光硬化性化合物が含まれる場合に、本発明に係る硬化性組成物は、光重合開始剤をさらに含んでいてもよい。上記光硬化性化合物と上記光重合開始剤との使用により、光の照射により硬化性組成物を硬化させることができる。さらに、硬化性組成物を半硬化させ、硬化性組成物の流動性を低下させることができる。
【0122】
上記光硬化性化合物は特に限定されない。該光硬化性化合物として、(メタ)アクリル樹脂又は環状エーテル基含有樹脂等が好適に用いられ、(メタ)アクリル樹脂がより好適に用いられる。上記(メタ)アクリル樹脂は、メタクリル樹脂とアクリル樹脂とを示す。上記(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリロイル基を有する。上記(メタ)アクリロイル基は、メタクリロイル基とアクリロイル基とを示す。
【0123】
上記(メタ)アクリル樹脂として、(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート、又はイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート等が好適に用いられる。
【0124】
上記(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物は特に限定されない。該エステル化合物として、単官能のエステル化合物、2官能のエステル化合物及び3官能以上のエステル化合物のいずれも用いることができる。
【0125】
上記光硬化性化合物は、エポキシ基及びチイラン基の内の少なくとも一種の基と、(メタ)アクリル基とを有する光及び熱硬化性化合物(以下、部分(メタ)アクリレート化エポキシ樹脂ともいう)を含むことが好ましい。上記エポキシ基及びチイラン基の内の少なくとも一種の基を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物の一部のエポキシ基又は一部のチイラン基を、(メタ)アクリロイル基に変換することにより得られた光硬化性化合物であることが好ましい。このような光硬化性化合物は、部分(メタ)アクリレート化エポキシ化合物又は部分(メタ)アクリレート化エピスルフィド化合物である。
【0126】
上記光硬化性化合物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物と、(メタ)アクリル酸との反応物であることが好ましい。この反応物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られる。エポキシ基又はチイラン基の20%以上が(メタ)アクリロイル基に変換(転化率)されていることが好ましい。該転化率は、より好ましくは30%以上、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。エポキシ基又はチイラン基の40%以上、60%以下が(メタ)アクリロイル基に変換されていることが最も好ましい。
【0127】
上記部分(メタ)アクリレート化エポキシ化合物としては、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、カルボン酸無水物変性エポキシ(メタ)アクリレート、及びフェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0128】
上記光硬化性化合物として、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有するフェノキシ樹脂の一部のエポキシ基又は一部のチイラン基を(メタ)アクリロイル基に変換した変性フェノキシ樹脂を用いてもよい。すなわち、エポキシ基又はチイラン基と(メタ)アクリロイル基とを有する変性フェノキシ樹脂を用いてもよい。
【0129】
上述した光硬化性化合物以外の光硬化性化合物が含まれる場合には、該光硬化性化合物は、架橋性化合物であってもよく、非架橋性化合物であってもよい。
【0130】
上記架橋性化合物の具体例としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジビニルベンゼン、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0131】
上記非架橋性化合物の具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、及びテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0132】
上記硬化性組成物を効率的に光硬化させる観点からは、上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記光硬化性化合物(上記光硬化性化合物が(メタ)アクリル樹脂である場合には(メタ)アクリル樹脂)の含有量の好ましい下限は0.1重量部、より好ましい下限は1重量部、更に好ましい下限は10重量部、特に好ましい下限は50重量部、好ましい上限は10000重量部、より好ましい上限は1000重量部、さらに好ましい上限は500重量部である。
【0133】
〔光重合開始剤〕
光硬化性化合物が含まれる場合に、本発明に係る硬化性組成物は、光重合開始剤をさらに含んでいてもよい。上記光重合開始剤は特に限定されない。上記光重合開始剤には、光ラジカル開始剤が含まれる。上記光重合開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0134】
上記光重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン光重合開始剤(アセトフェノン光ラジカル開始剤)、ベンゾフェノン光重合開始剤(ベンゾフェノン光ラジカル開始剤)、チオキサントン、ケタール光重合開始剤(ケタール光ラジカル開始剤)、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド及びアシルホスフォナート等が挙げられる。これら以外の光重合開始剤を用いてもよい。
【0135】
上記アセトフェノン光重合開始剤の具体例としては、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、及び2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン等が挙げられる。上記ケタール光重合開始剤の具体例としては、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
【0136】
上記光重合開始剤の含有量は特に限定されない。上記光硬化性化合物100重量部に対して、上記光重合開始剤の含有量の好ましい下限は0.1重量部、より好ましい下限は0.2重量部、更に好ましい下限は2重量部、好ましい上限は10重量部、より好ましい上限は5重量部である。光重合開始剤の含有量が上記下限を満たすと、光重合開始剤を添加した効果を充分に得ることが容易である。光重合開始剤の含有量が上記上限を満たすと、硬化性組成物の硬化物の接着力が充分に高くなる。
【0137】
本発明に係る硬化性組成物は、フィラーをさらに含むことが好ましい。フィラーの使用により、硬化性組成物の硬化物の潜熱膨張を抑制できる。フィラーは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0138】
上記フィラーの具体例としては、シリカ、窒化アルミニウム又はアルミナ等が挙げられる。上記フィラーはフィラー粒子であることが好ましい。フィラー粒子の平均粒子径は、0.1〜1.0μmの範囲内であることが好ましい。フィラー粒子の平均粒子径が上記範囲内であると、硬化性組成物の硬化物の潜熱膨張をより一層抑制できる。「平均粒子径」とは、動的レーザー散乱法によって測定される体積平均径を示す。
【0139】
上記化合物A100重量部に対して、上記フィラーの含有量は50〜900重量部の範囲内であることが好ましい。フィラーの含有量が上記範囲内であると、硬化性組成物の硬化物の潜熱膨張をより一層抑制できる。
【0140】
本発明に係る硬化性組成物は、溶剤を含んでいてもよい。該溶剤の使用により、硬化性組成物の粘度を容易に調整できる。さらに、例えば、上記化合物Aが固形である場合に、固形の上記化合物Aに溶剤を添加し、溶解させることにより、上記化合物Aの分散性を高めることができる。
【0141】
上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルセロソルブ、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、テトラヒドロフラン及びジエチルエーテル等が挙げられる。
【0142】
本発明に係る硬化性組成物は、必要に応じて、イオン捕捉剤又はシランカップリング剤をさらに含んでいてもよい。
【0143】
〔導電性粒子を含む硬化性組成物〕
本発明に係る硬化性組成物が導電性粒子をさらに含有する場合、硬化性組成物を異方性導電材料として用いることができる。
【0144】
上記導電性粒子は、例えば回路基板と半導体チップとの電極間を電気的に接続する。上記導電性粒子は、導電性を有する粒子であれば特に限定されない。上記導電性粒子としては、例えば、有機粒子、無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子もしくは金属粒子等の表面を金属層で被覆した導電性粒子、又は実質的に金属のみで構成される金属粒子等が挙げられる。上記金属層は特に限定されない。上記金属層としては、金層、銀層、銅層、ニッケル層、パラジウム層又は錫を含有する金属層等が挙げられる。
【0145】
電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に設けられた導電層とを有することが好ましい。
【0146】
上記導電性粒子の含有量は特に限定されない。硬化性組成物100重量%中、上記導電性粒子の含有量は0.1〜20重量%の範囲内であることが好ましい。硬化性組成物100重量%中、上記導電性粒子の含有量のより好ましい下限は0.5重量%、より好ましい上限は10重量%、更に好ましい上限は5重量%である。上記導電性粒子の含有量が上記範囲内にある場合には、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を容易に配置できる。さらに、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続され難くなる。すなわち、隣り合う電極間の短絡を防止できる。
【0147】
本発明に係る硬化性組成物は濡れ性が高いので、硬化性組成物は、液状又はペースト状であることが好ましい。硬化性組成物が液状又はペースト状である場合、硬化性組成物の粘度(25℃)は、1000〜300000mPa・sの範囲内にあることが好ましい。上記粘度が低すぎると、導電性粒子が沈降することがある。上記粘度が高すぎると、導電性粒子が充分に分散しないことがある。
【0148】
(硬化性組成物の用途)
本発明に係る硬化性組成物は、様々な接続対象部材を接着するために使用できる。
【0149】
本発明に係る硬化性組成物は、濡れ性が高いので、電子部品(電子素子)を回路基板に接続するための接続対象部材材料として好適に用いられる。
【0150】
本発明に係る硬化性組成物が、導電性粒子を含む異方性導電材料である場合、該異方性導電材料は、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電粘接着剤、異方性導電フィルム、又は異方性導電シート等として使用され得る。異方性導電材料が、異方性導電フィルムや異方性導電シート等のフィルム状の接着剤として使用される場合、該導電性粒子を含有するフィルム状の接着剤に、導電性粒子を含有しないフィルム状の接着剤が積層されていてもよい。本発明に係る硬化性組成物がフィルム状である場合にも、硬化性組成物の濡れ性が高いので、溶融時に効果的に濡れ広がり、ボイドが生じ難くなる。上記異方性導電材料は、液状又はペースト状の異方性導電材料であることが好ましい。
【0151】
上記異方性導電材料は、第1,第2の接続対象部材が電気的に接続されている接続構造体を得るために好適に用いられる。
【0152】
図1に、本発明の一実施形態に係る硬化性組成物を用いた接続構造体の一例を模式的に断面図で示す。
【0153】
図1に示す接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材4と、第1,第2の接続対象部材2,4を接続している接続部3とを備える。接続部3は、導電性粒子5を含む硬化性組成物、すなわち異方性導電材料を硬化させることにより形成されている。
【0154】
第1の接続対象部材2の上面2aには、複数の電極2bが設けられている。第2の接続対象部材4の下面4aには、複数の電極4bが設けられている。電極2bと電極4bとが、1つ又は複数の導電性粒子5により電気的に接続されている。従って、第1,第2の接続対象部材2,4が導電性粒子5により電気的に接続されている。
【0155】
本発明に係る硬化性組成物は、液状又はペースト状の異方性導電材料であり、液状又はペースト状の状態で第1の接続対象部材上に塗布される異方性導電材料であることが好ましい。
【0156】
上記接続構造体としては、具体的には、回路基板上に、半導体チップ、コンデンサチップ又はダイオードチップ等の電子部品チップが搭載されており、該電子部品チップの電極が、回路基板上の電極と電気的に接続されている接続構造体等が挙げられる。回路基板としては、フレキシブルプリント基板等の様々なプリント基板、ガラス基板、又は金属箔が積層された基板等の様々な回路基板が挙げられる。第1,第2の接続対象部材は、電子部品(電子素子)又は回路基板であることが好ましい。本発明に係る硬化性組成物は電子部品又は回路基板を接続するための硬化性組成物であることが好ましい。
【0157】
上記接続構造体の製造方法は特に限定されない。接続構造体の製造方法の一例として、電子部品又は回路基板等の第1の接続対象部材と、電子部品又は回路基板等の第2の接続対象部材との間に上記異方性導電材料を配置し、積層体を得た後、該積層体を加熱及び加圧する方法等が挙げられる。
【0158】
なお、上記硬化性組成物は、導電性粒子を含んでいなくてもよい。この場合には、第1,第2の接続対象部材を電気的に接続することなく、第1,第2の接続対象部材を接着して接続するために、上記硬化性組成物が用いられる。
【0159】
本発明に係る硬化性組成物が異方性導電材料である場合に、該異方性導電材料は、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))、又はフレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))等に使用できる。なかでも、上記異方性導電材料は、FOG用途又はCOG用途に好適であり、COG用途により好適である。本発明に係る硬化性組成物は、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続、又は半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続に用いられる異方性導電材料であることが好ましく、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続に用いられる異方性導電材料であることがより好ましい。
【0160】
本発明に係る接続構造体では、上記第2の接続対象部材及び上記第1の接続対象部材として、フレキシブルプリント基板とガラス基板とを用いるか、又は半導体チップとガラス基板とを用いることが好ましく、半導体チップとガラス基板とを用いることがより好ましい。
【0161】
FOG用途では、L/Sが比較的広いため、導電性粒子の粒径も大きく濃度も低いので、接続時の圧力が低く、充分な圧痕や樹脂充填性が得られず、電極間の導通信頼性、及び硬化物層における空隙(ボイド)の発生が問題となることが多い。これに対して、本発明に係る硬化性組成物の使用により、FOG用途において、電極間の導通信頼性を効果的に高めることができ、硬化物層における空隙(ボイド)の発生を効果的に抑制できる。
【0162】
COG用途では、L/Sが比較的狭ピッチなことから、異方導電性材料を加熱したときの流動性が不足すると、電極ライン間に異方導電性材料が十分充填されないため、電極間の導通信頼性、及び硬化物層におけるボイドの発生が問題となることが多い。これに対して、本発明に係る硬化性組成物の使用により、COG用途において、電極間の導通信頼性を効果的に高めることができ、硬化物層におけるボイドの発生を効果的に抑制できる。
【0163】
以下、本発明について、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0164】
(実施例1)
(1)硬化性組成物の調製
エピスルフィド化合物(YL7007、ジャパンエポキシレジン社製)33重量部に、熱硬化剤としてのペンタエリスリトール テトラキス−3−メルカプトプロピオネート20重量部と、ポリエーテル変性シロキサン(商品名「BYK−349」、BYK社製)0.05重量部と、硬化促進剤としての2−エチル−4−メチルイミダゾール1重量部と、フィラーとしての平均粒子径0.25μmのシリカ20重量部及び平均粒子径0.5μmのアルミナ20重量部と、平均粒子径3μmの導電性粒子2重量部とを添加し、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、異方性導電ペーストとしての硬化性組成物を得た。なお、用いた導電性粒子は、ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面にニッケルめっき層が形成されており、かつ該ニッケルめっき層の表面に金めっき層が形成されている金属層を有する導電性粒子である。
【0165】
(実施例2)
ポリエーテル変性シロキサン(商品名「BYK−349」、BYK社製)の配合量を0.05重量部から0.01重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0166】
(実施例3)
ポリエーテル変性シロキサン(商品名「BYK−349」、BYK社製)の配合量をポリエーテル変性シロキサン重量部から3.0重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0167】
(実施例4)
ポリエーテル変性シロキサン(商品名「BYK−349」、BYK社製)を、ポリエーテル変性シロキサン(商品名「BYK−345」、BYK社製)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0168】
(実施例5)
ポリエーテル変性シロキサン(商品名「BYK−349」、BYK社製)を、ポリエーテル変性シロキサン(商品名「BYK−348」、BYK社製)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0169】
(実施例6)
遊星式攪拌機を用いて撹拌する前に、光硬化性化合物としての(メタ)アクリル樹脂であるエポキシアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL3702」)5重量部と、光重合開始剤としてのアシルホスフィンオキサイド系化合物(チバ・ジャパン社製「DAROCUR TPO」)0.1重量部とをさらに添加したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0170】
(実施例7)
遊星式攪拌機を用いて撹拌する前に、光硬化性化合物としての(メタ)アクリル樹脂であるウレタンアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL8804」)5重量部と、光重合開始剤としてのアシルホスフィンオキサイド系化合物(チバ・ジャパン社製「DAROCUR TPO」)0.1重量部とをさらに添加したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0171】
(実施例8)
上記エピスルフィド化合物(YL7007、ジャパンエポキシレジン社製)33重量部にかえて、エポキシ化合物であるビスフェノールFジグリシジルエーテル(EXA−830CRP DIC社製)33重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0172】
(実施例9)
上記エピスルフィド化合物(YL7007、ジャパンエポキシレジン社製)33重量部にかえて、エポキシ化合物であるビスフェノールFジグリシジルエーテル(EXA−830CRP DIC社製)33重量部を用いたこと、並びに遊星式攪拌機を用いて撹拌する前に、光硬化性化合物としての(メタ)アクリル樹脂であるエポキシアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL3702」)5重量部と、光重合開始剤としてのアシルホスフィンオキサイド系化合物(チバ・ジャパン社製「DAROCUR TPO」)0.1重量部とをさらに添加したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0173】
(実施例10)
上記エピスルフィド化合物(YL7007、ジャパンエポキシレジン社製)33重量部にかえて、エポキシ化合物であるビスフェノールFジグリシジルエーテル(EXA−830CRP DIC社製)33重量部を用いたこと、並びに遊星式攪拌機を用いて撹拌する前に、光硬化性化合物としての(メタ)アクリル樹脂であるウレタンアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL8804」)5重量部と、光重合開始剤としてのアシルホスフィンオキサイド系化合物(チバ・ジャパン社製「DAROCUR TPO」)0.1重量部とをさらに添加したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0174】
(実施例11)
上記エピスルフィド化合物(YL7007、ジャパンエポキシレジン社製)33重量部にかえて、エポキシ化合物であるレゾルシノールジグリシジルエーテル33重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0175】
(実施例12)
上記エピスルフィド化合物(YL7007、ジャパンエポキシレジン社製)33重量部にかえて、エポキシ化合物であるレゾルシノールジグリシジルエーテル33重量部を用いたこと、並びに遊星式攪拌機を用いて撹拌する前に、光硬化性化合物としての(メタ)アクリル樹脂であるエポキシアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL3702」)5重量部と、光重合開始剤としてのアシルホスフィンオキサイド系化合物(チバ・ジャパン社製「DAROCUR TPO」)0.1重量部とをさらに添加したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0176】
(実施例13)
上記エピスルフィド化合物(YL7007、ジャパンエポキシレジン社製)33重量部にかえて、エポキシ化合物であるレゾルシノールジグリシジルエーテル33重量部を用いたこと、並びに遊星式攪拌機を用いて撹拌する前に、光硬化性化合物としての(メタ)アクリル樹脂であるウレタンアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL8804」)5重量部と、光重合開始剤としてのアシルホスフィンオキサイド系化合物(チバ・ジャパン社製「DAROCUR TPO」)0.1重量部とをさらに添加したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0177】
(実施例14)
熱硬化剤として、ペンタエリスリトール テトラキス−3−メルカプトプロピオネート20重量部にかえて、イミダゾール硬化剤(アミンアダクト型硬化剤(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」))10重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0178】
(実施例15)
熱硬化剤として、ペンタエリスリトール テトラキス−3−メルカプトプロピオネート20重量部にかえて、アミン硬化剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール5重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0179】
(比較例1)
上記ポリエーテル変性シロキサン(商品名「BYK−349」、BYK社製)を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0180】
(比較例2)
ポリエーテル変性シロキサン(商品名「BYK−349」、BYK社製)を、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(商品名「BYK−302」、BYK社製)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0181】
(比較例3)
ポリエーテル変性シロキサン(商品名「BYK−349」、BYK社製)を、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン(商品名「BYK−322」、BYK社製)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0182】
(評価)
ボイドの有無:
L/Sが10μm/10μmのITO電極パターンが上面に形成された透明ガラス基板を用意した。また、L/Sが10μm/10μmの金電極パターンが下面に形成された半導体チップを用意した。
【0183】
上記透明ガラス基板上に、得られた硬化性組成物を厚さ30μmとなるように塗工し、硬化性組成物層を形成した。次に、硬化性組成物層上に上記半導体チップを、電極同士が互いに対向し、接続するように積層した。その後、硬化性組成物層の温度が185℃となるように加熱ヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加熱ヘッドを載せ、硬化性組成物層を185℃で硬化させ、接続構造体を得た。
【0184】
得られた接続構造体において、硬化性組成物層により形成された硬化物層にボイドが生じているか否かを、透明ガラス基板の下面側から目視により観察した。
【0185】
結果を下記の表1に示す。
【0186】
【表1】

【符号の説明】
【0187】
1…接続構造体
2…第1の接続対象部材
2a…上面
2b…電極
3…接続部
4…第2の接続対象部材
4a…下面
4b…電極
5…導電性粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性化合物と、
熱硬化剤と、
ポリエーテル変性シロキサンとを含む、硬化性組成物。
【請求項2】
前記熱硬化性化合物が、エポキシ基及びチイラン基の内の少なくとも1種を有する熱硬化性化合物である、請求項1に記載の硬化性化合物。
【請求項3】
前記熱硬化性化合物が、エポキシ基を有する化合物を含有する、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記熱硬化性化合物が、チイラン基を有する化合物を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記熱硬化性化合物が、エポキシ基を有する化合物とチイラン基を有する化合物とを含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
(メタ)アクリル化合物と、
光重合開始剤とをさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
硬化性組成物100重量%中、前記ポリエーテル変性シロキサンの含有量が、0.01〜5重量%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
導電性粒子をさらに含み、
異方性導電材料である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続、又は半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続に用いられる異方性導電材料である、請求項8に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備え、
前記接続部が、請求項1〜9のいずれか1項に記載の硬化性組成物により形成されている、接続構造体。
【請求項11】
前記硬化性組成物が、導電性粒子を含む異方性導電材料であり、
前記第1,第2の接続対象部材が、前記導電性粒子により電気的に接続されている、請求項10に記載の接続構造体。
【請求項12】
フレキシブルプリント基板とガラス基板とを接続するか、又は半導体チップとガラス基板とを接続する接続構造体の製造方法であって、
前記第2の接続対象部材及び前記第1の接続対象部材として、フレキシブルプリント基板とガラス基板とを用いるか、又は半導体チップとガラス基板とを用いる、請求項11に記載の接続構造体。

【図1】
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【公開番号】特開2011−225831(P2011−225831A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65323(P2011−65323)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】