説明

磁気センサおよびその形成方法

【課題】高密度磁気記録に対応可能な磁気センサを提供する。
【解決手段】TMRセンサ1は、シード層14、AFM層15、ピンド層16、スペーサ層17、フリー層18およびキャップ層19が順に積層されたものである。ピンド層16は、AFM層15の側から、AP2層163と結合層162とAP1層161とが順に積層されたシンセティック反強磁性ピンド構造を有する。スペーサ層17は、例えば金属層と、低バンドギャップ絶縁層もしくは半導体層とが交互に形成された多層構造を有する。金属層は例えば銅層であり、低バンドギャップ絶縁層はMgO層である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗効果膜を有する磁気センサおよびその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル磁気抵抗効果(TMR:Tunneling Magnetoresisive)センサ、すなわち磁気トンネル接合(MTJ:Magnetic Tunneling Junction)センサは、磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM:Magnetic Random Access Memory)や磁気再生ヘッド等の磁気デバイスにおける重要な構成要素(記憶素子)として利用される。TMRセンサは、一般的に、2つの強磁性層が薄い非磁性絶縁体層によって分離された構造を含む積層体(TMR積層体)を有する。そのような積層体は、バイアスの観点から好ましい、いわゆるボトム型スピンバルブ構造を有し、一般的には基板上にシード(バッファ)層と、反強磁性(AFM)層と、ピンド層と、トンネルバリア層と、フリー層と、キャップ層とが順次形成されたものである。このうち、フリー層は外部磁界(媒体磁界)に反応するセンス層として機能する。ピンド層は、磁化が固定され、フリー層に対するリファレンス層として機能する。トンネルバリア層(絶縁体層)を介した電気抵抗は、フリー層の磁気モーメントとピンド層の磁気モーメントとの相対的な向きによって変化し、これにより磁気信号が電気信号に変換される。磁気再生ヘッドに用いられるTMRセンサは、電極としても機能する下部シールドと上部シールドとの間に形成されている(例えば特許文献1参照)。TMR積層体は、センス電流が上部シールドから下部シールドへ向かうように膜面に対して垂直方向に通過するCPP(Current-Perpendicular-to Plane)構造を有しており、フリー層およびピンド層の磁化方向が互いに平行な状態(すなわち「1」メモリ状態)の場合には低抵抗が検出され、それらの磁化方向が互いに反平行な状態(すなわち「0」メモリ状態)にある場合には高抵抗が検出される。CPPトランスジューサについては、例えば特許文献2などに開示されている。
【0003】
TMRセンサに類似した他の種類の記憶デバイスとしては、巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magnetoresistive)センサがある。このGMRセンサは、TMR積層体のピンド層とフリー層との間の絶縁体層(トンネルバリア層)を、銅などの非磁性導電性スペーサによって置き換えるようにしたGMR積層体を有するものである。
【0004】
TMR積層体のピンド層は、シンセティック反強磁性(SyAF:Synthetic Anti-Ferromagnetic)構造を有する場合がある。この構造では、アウター・ピンド層が、結合層を介して、トンネルバリア層に接するインナー・ピンド層と磁気的に結合している。アウター・ピンド層は、同一方向に磁化された隣接するAFM層との交換結合によって特定の方向に固定された磁気モーメントを有するものである。トンネルバリア層は、導電電子が量子力学的トンネル効果によって透過可能な程度に、すなわち、トンネル電流が流れる程度に薄いものである。
【0005】
TMRセンサは、来るべき磁気記録ヘッドの世代においてGMRセンサを置き換えるための、現在最も有望な候補である。高度なTMRセンサは、再生ヘッドのエアベアリング面(ABS:Air-Bearing Surface)において、例えば約0.1μm2 の断面積を有する。TMRセンサの利点は、GMRセンサと比較して、大幅に高いMR比を得ることができることにある。高性能なTMRセンサは、高MR比に加え、低い面積抵抗RA(面積と抵抗との積)値と、CoFe\NiFe等の約1×10-8から5×10-6程度の低い磁歪(λ)および10Oe未満の低い保磁力Hcを有するフリー層と、強力なピンド層と、トンネルバリア層を介した低い層間結合磁場Hinと、を必要とする。MR比(TMR比とも呼ばれる)は、dR/Rで表される。ここで、RはTMRセンサの最小抵抗、dRはフリー層の磁気的状態を変化させることで観測される抵抗変化である。dR/Rが高いことにより、読み出し速度が向上する。高記録密度用途または高周波用途に対しては、RAを約1から3Ω×μm2 にまで減少させる必要がある。
【0006】
トンネルバリア層として酸化マグネシウム(MgO)を採用したTMR技術は、主に高密度磁気記録に用いられている。これは、互いに隣接するCoFe層とMgO層とのバンド構造の波動関数の対称性に直接的に関連するいわゆるコヒーレント・トンネリングに由来して、固有の高いTMR比が得られるからである。現在では、10Ω×μm2 未満の面積抵抗RAと、100%を超える非常に高いTMR比とが室温において非常に簡単に得られることから、このTMR技術が磁気デバイス、とりわけ再生ヘッドセンサに対して容易に適用可能となっている
【0007】
記録密度がますます高くなるにつれて、MTJセンサの抵抗を他の電子機器と整合させるために、MgOからなるトンネルバリア層を可能な限り薄くすることが重要である。しかしながら、MgOからなるトンネルバリア層の厚さが薄くなり過ぎると、TMR比は急激に低下してしまう。そのうえ、MgOからなるトンネルバリア層が薄くなるほどインナー・ピンド(AP1)層とフリー層との間の層間結合磁場Hinが非常に高い値まで急上昇し、バイアス・ポイントの調整が非常に困難となり、性能低下を招くこととなる。したがって、極めて低いRA値を有しながら、より実用的なセンサが必要とされる。
【0008】
K. Belashchenko等は、MgOからなるトンネルバリア層の厚みが薄い場合に生じるTMR比の急激な低下を、少数スピンバンドにより制御される界面共鳴状態の発生と関連付けた(Phys. Review B、72、140404 R、2005年)。K. Belashchenko等は、CoFeからなるピンド層とMgOからなるトンネルバリアとの界面にエピタキシャルに成膜された単層のAg層が、少数バンドを介したトンネリングを抑制し、MgOからなるトンネルバリア層の厚みが薄い場合におけるTMR比を向上させると予測した。しかしながら、銀(Ag)は拡散性が高く、CoFeの表面上で良好に成長させるのは一般的には極めて難しい。したがって、Ag層を挿入することは、TMR比を飛躍的に向上させる上では成功していない。よって、極めて低いRA値を確保しつつ高いTMR比を得るには他の方法が必要である。
【0009】
F. Greullet等は、非特許文献1において、印加バイアスを変化させることにより、大きな負のTMR比を正の値に変えることができると報告している。さらにF. Greullet等は、非特許文献2において、Fe/MgO/Fe(001)接合の界面に挿入された極薄Crスペーサにわたるトンネリングについて記載されている。
【0010】
S. Yuasa等は、非特許文献3において、酸化アルミニウムからなるトンネルバリアと、(001)の結晶面を有するCoからなる強磁性層との間に薄い非磁性銅層を挿入することによる効果について報告している。
【0011】
F. Greullet等による非特許文献2では、隣接するFe層における量子井戸状態を促すため、極薄のCrスペーサがFe/MgO/Fe(001)接合に挿入されている。
【0012】
J. MathonおよびA. Umerskiによる非特許文献4に記載されているように、共鳴トンネリングについては、トンネルバリア層が2つの量子井戸間に挟まれた構造に対しても提案されている。
【0013】
A. Vedyayev等による非特許文献5では、Co\Al2 3 \Co接合における絶縁体内の不純物による効果が記載されている。
【0014】
また、本発明に関連する先行技術としては、さらに以下のものが挙げられる。例えば特許文献3〜5は、いずれも、MTJ積層体において、Cuパスを内部に含むMgO層が2つのCu層に挟まれた電流狭窄(CCP:Confining Current Path)構造からなるスペーサについて言及している。
【0015】
また、CuまたはMgOから作られたスペーサを有するスピンバルブ構造に関連する従来技術として、特許文献6〜9が挙げられる。
【0016】
特許文献10には、ナノ酸化層が、スペーサ層から一定の距離を保ちつつフリー層またはピンド層に挿入されたスピンバルブ積層体が開示されている。
【0017】
特許文献11は、CuスペーサとMgOトンネルバリアとの双方を含み、これらの2つの層がフリー層によって分離された、デュアルスピンバルブについて記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第5715121号明細書
【特許文献2】米国特許第5668688号明細書
【特許文献3】米国特許第7333306号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2006/0034022号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0188945号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2007/0091514号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2007/0242395号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2008/0032159号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2007/0176519号明細書
【特許文献10】米国特許第7301733号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2007/0164265号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】完全エピタキシャル「Fe層\Fe3 O4 層\MgO層\Co」磁気トンネル接合における大きな逆磁気抵抗効果(Large inverse magnetoresistance in fully epitaxial Fe/Fe3O4/MgO/Co magnetic tunnel junctions),Appl. Phys. Lett.,92,053508,2008年
【非特許文献2】完全エピタキシャルMgOベース磁気トンネル接合における対称性依存性金属バリアの証拠(Evidence of a Symmetry-Dependent Metallic Barrier in Fully Epitaxial MgO Based Magnetic Tunnel Junctions),Phys. Rev. Lett.、99 (18),187202,2007年11月2日
【非特許文献3】磁気トンネル接合におけるスピン偏極共鳴トンネル効果(Spin-Polarized Resonant Tunneling in Magnetic Tunnel Junctions),Science,Vol. 297,234-237,2002年
【非特許文献4】エピタキシャルFe/Au/MgO/Au/Fe(001)接合における共鳴トンネリング理論(Theory of resonant tunneling in an epitaxial Fe/Au/MgO/Au/Fe (001) junction),Phys. Rev. B,Vol. 71,220402(R),2005年
【非特許文献5】常磁性不純物存在下のスピンバルブ接合における共鳴スピン依存トンネリング(Resonant spin-dependent tunneling in spin-valve junctions in the presence of paramagnetic impurities),Phys. Rev. B,Vol. 63,064429,2001年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
このように、従来、種種の提案がなされているが、超高密度記録によりいっそう適した磁気センサを実現するには、さらなる改良が望まれる。
【0021】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、高密度磁気記録のために好ましいMR比を有しつつ約1μΩ×cm2未満の超低RA値を可能とする、「AP1層\スペーサ層\フリー層」の構造を有する磁気センサを提供することにある。
【0022】
本発明の第2の目的は、上記の性能に加え、好ましい層間結合磁場Hinを有する磁気センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
これらの目的は、本発明の新規な磁気センサにより達成される。本発明の一実施の形態としてのTMRセンサは、再生ヘッドにおける下部シールド層の上に設けられるものであり、例えば下部シールドの側から順次形成された、シード層、AFM層、ピンド層、スペーサ層、フリー層、およびキャップ層からなるボトム型スピンバルブ構造を有する。ここで、ピンド層はAFM層と接するAP2層と、結合層と、スペーサ層と接するAP1層との3層構造を有するシンセティック反強磁性構造であることが好ましい。AP2層は、例えば、いずれも面心立方(fcc)構造を有する3つの鉄コバルト合金層からなる3層構造、すなわち、CoZ Fe(1-Z)\FeY Co(1-Y) \CoZ Fe(1-Z)である。但し、Yは40at%以上100at%以下、Zは75at%以上100at%以下である。また、結合層は、Ru,RhまたはIrからなり、AP1層は、好ましくは、[CoFe\Cu]m\CoFe(但し、mは1〜3の整数)で表される積層構造を有する。
【0024】
上記のTMRセンサにおける最も重要な部分はスペーサ層である。スペーサ層は、金属層と、低バンドギャップ絶縁層もしくは半導体層とを有する複合体である。スペーサ層は、例えば、Cu\MgO\Cu,MgO\Cu\MgO,Cu\MgO\Cu\MgO\Cu,Cu\MgO,MgO\Cuまたは(Cu\MgO)n\Cuなどの積層構造を有するものである。但し、nは整数である。また、MgO層を、他の低バンドギャップ絶縁材料、半導体材料、または半金属に置き換えてもよい。低バンドギャップ絶縁材料または半導体材料は、ZnO,ZnXMg(1-X)O(xは、0原子百分率から99原子百分率),ZnCuO,ZnCdO,ZnAlO,ZnSe,ZnTe,ZnS,SrTiO3,SrOx,LaMnOx,Si,Ge,TiOx,AlN,GaN,InN,AlP,AlAs,AlSb,GaP,GaAs,GaSb,InP,InAs,CdS,CdTe,HgTe,PbS,PbSe,PbTe,SnTe,Cu2O,FeSi2,CrMnSi,Mg2Si,RuSi3もしくはIr3Si5を含むものである。半金属は、例えば、Sb,Bi,CoSi,FeSi,CoXFe(1-X)Si、CoXMn(1-X)Si,またはCoXCr(1-X)Siなどである。また、別の形態として、MgOからなるスペーサ層が、Zn,Mn,Al,Cu,Ni,Cd,Cr,Ti,Zr,Hf,Ru,Mo,Nb,CoおよびFeのうちの少なくとも1種を50原子%以下の割合で含むようにしてもよい。さらに他の形態として、スペーサ層が、Cu,Au,Zn,RuまたはAlから構成される金属層を含むようにしてもよい。
【0025】
TMRセンサのすべての層は、スパッタ成膜装置(例えばアネルバ社製のC−7100)のDCスパッタチャンバ内において成膜される。この装置は、複数のターゲットを有する超高真空のDCマグネトロンスパッタチャンバと、少なくとも1つの酸化チャンバとを含むものであるとよい。スペーサ層がMgO層を含む場合、そのMgO層は、上記の酸化チャンバにおいて自然酸化(NOX:Natural Oxidation)法またはラジカル酸化(ROX:Radical Oxidation)法を用いて形成される。TMRセンサは、すべての層が成膜されたのち、周知の手法でパターニングされ、所定形状とされる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の磁気センサおよびその形成方法によれば、SyAFピンド層と接する複合スペーサ層が、金属層と、低バンドギャップ絶縁層もしくは半導体層とを有するようにしたので、RA値を低減しつつ、高いMR比、小さな磁歪定数、および低い層間結合磁場を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態としての再生ヘッドを表す断面図である。
【図2】図1に示した再生ヘッドに搭載されたTMRセンサを拡大して表す断面図である。
【図3】図1に示した再生ヘッドを製造する際の一工程を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に実施の形態という。)について、図面を参照して詳細に説明する。本発明は、磁気再生ヘッドなどに搭載され、複合スペーサ層を有する磁気センサ(TMRセンサまたはCPP−GMRセンサ)、およびその形成方法に関するものである。この磁気センサにおける複合スペーサ層は、金属層と、低バンドギャップ絶縁材料層もしくは半導体材料層とを含んでいる。なお、本明細書に添付した図面は例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。例えば、図面ではボトム型スピンバルブ構造を示しているが、当業者により理解されるように、本発明はトップ型スピンバルブ構造やデュアルスピンバルブ構造をも包含する。
【0029】
図1は、本発明における一実施の形態としてのTMRセンサ1を備えた再生ヘッドの断面構成を表している。この図は、再生ヘッドのエアベアリング面(ABS)に沿った断面図である。この再生ヘッドは、下部シールド層10と上部シールド層25との間にTMRセンサ1を配置したものである。下部シールド層10および上部シールド層25は、例えばパーマロイ(NiFe)を構成材料として電気めっきによって形成されたものであり、例えば2μmの厚みを有する。また、下部シールド層10は、例えばAlTiCから作られたウェハ上に形成される。TMRセンサ1の側壁21および下部シールド層10の表面を連続的に覆うように、絶縁層22が設けられている。さらに、その絶縁層22の上には、TMRセンサ1をトラック幅方向(X軸方向)に挟むように一対の磁気バイアス層23が設けられている。磁気バイアス層23と上部シールド層25との間には絶縁層24が形成されている。
【0030】
図2に、TMRセンサ1の断面構成を拡大して表す。下部シールド層10の上に設けられたTMRセンサ1は、シード層14と、AFM層15と、ピンド層16と、スペーサ層17と、フリー層18と、キャップ層19とが下部シールド層10の側から順に積層されたボトム型スピンバルブ構造を有するものである。なお、ギャップ層(図示せず)を、下部シールド層10とシード層14との間に挿入してもよい。
【0031】
シード層14は、好ましくはTa層\Ru層の複合体であるが、代わりに単一のTa層,Ta層\NiCr層,Ta層\Cu層,Ta層\Cr層など、他の構造であってもよい。シード層14は、その上層に形成される層が滑らかで均質な粒状構造となるように促進する役割を果たす。
【0032】
AFM層15は、シード層14の上に形成され、その上層のピンド層16におけるアウター・ピンド層(AP2層)163(後出)の磁化方向をピン止めする機能を有する。AFM層15は、4.0nm(40Å)以上30.0nm(300Å)の厚さを有すると共に、IrMnから構成されることが好ましい。IrMnの代わりに、PtMn,NiMn,OsMn,RuMn,RhMn,PdMn,RuRhMn,またはMnPtPdを用いてもよい。
【0033】
ピンド層16は、シンセティック反強磁性(SyAF)ピンド構造を有しており、具体的には、AFM層15の側から、アウター・ピンド層(AP2層)163と、例えばRu,RhまたはIrからなる結合層162と、インナー・ピンド層(AP1層)161とが順に積層されたものである。AP2層163は、AFM層15と接するように形成されており、例えば約10原子%の鉄(Fe)を有するCoFeによって構成され、1nm(10Å)〜5nm(50Å)の厚さを有する。AP2層163の磁気モーメントは、AP1層161の磁気モーメントとは反対方向にピン止めされている。例えば、AP1層161が−X方向の磁気モーメントを有する場合、AP2層163は、+X方向に配向した磁気モーメントを有することとなる。AP2層163とAP1層161との厚さはわずかに異なっており、これによりピンド層16の全体において容易軸方向に沿った弱い磁気モーメントが発生する。
【0034】
AP2層163は、上記のような単一のCoFe層とする代わりに、3つの鉄含有合金層(便宜上、AFM層15と接する側から下部層、中間層、上部層と呼ぶ)からなる3層構造としてもよい。3つの鉄含有合金層は、いずれも面心立方(fcc)構造を有するものであることが最も望ましいが、中間層についてはfcc構造でなくともよい。下部層は、例えば0.6nm(6Å)以上1.5nm(15Å)以下の厚さを有し、上部層は、例えば1.0nm(10Å)以上5.0nm(50Å)以下の厚さを有することが望ましい。さらに、下部層は、上部層の厚さよりも薄くするとよい。これにより、AP2層163とAFM層15との交換結合の強度が向上するからである。また、3層構造のAP2層163の厚さを、AP1層161よりも大きくすることにより、TMRセンサ1の再生出力曲線(トランスファ曲線)におけるアシンメトリの調整を行うことができる。
【0035】
3層構造のAP2層163としては、具体的には「CoZ Fe(1-Z)\Fe(1-X) TaX\CoZ Fe(1-Z)」もしくは「CoZ Fe(1-Z)\FeY Co(1-Y) \CoZ Fe(1-Z)」で表される構造が例として挙げられる。但し、Xは3at%以上30at%以下、Yは40at%以上100at%以下、Zは75at%以上100at%以下である。所望により、上記の3層構造の中間層としてのFeTa層またはFeCo層を、FeCr,FeV,FeW,FeZr,FeNb,FeHf,またはFeMo等の、Feリッチな合金に置き換えてもよい。ここでいうFeリッチな合金とは、鉄の含有率が70at%以上の合金を意味する。Feリッチな合金からなる中間層は、AP2層163とAFM層15との交換結合の強度を高める役割を果たす。また、3層構造のAP2層163の上部層および下部層としてのCoZ Fe(1-Z)において、zは0.9であることが好ましい。これは、Co0.9 Fe0.1 は容易にfcc構造を形成するからである。特に、Co0.9 Fe0.1 層は、Ta層\Ru層\IrMn層から構成されたシード層14およびAFM層15の上で成長した場合、AFM層15との界面、および結合層162との界面に露出するのは(111)面となる。(111)面はfcc構造の中では最密面であるので、(111)面においては他の結晶面よりもエレクトロマイグレーション(EM:Electron Migration)が生じにくいものと考えられる。AP2層163を、fcc構造を有するFeCo層を用いて構成することにより、AP2層163とAFM層15とのピンニング強度の向上が期待できる。このように、AP2層163を、fcc構造を有する一対のCoFe層の間に鉄合金層を挟むようにした3層構造とすることにより、単一のCoFe層(例えばCo75 Fe25 層またはCo50 Fe50 層)からなる場合よりも有利な点が得られる。
【0036】
結合層162は、AP2層163とAP1層161との間の交換結合を促進させる。結合層162は、好ましくはルテニウム(Ru)から構成され、0.3nm(3Å)以上0.9nm(9Å)以下の厚さを有する。
【0037】
AP1層161は、CoFeまたはCoFeX合金(Xは、Ni,Cu,Cr,Mo,Zr等)等の複合層または単一層とすることができる。一形態では、AP1層161は、その上にスペーサ層17を形成するためのより均質な表面を得るため、CoFeB,CoBまたはFeB等のアモルファス層とすることができる。また、他の形態として、AP1層161は、[CoFe\Cu]m\CoFe(但し、mは1〜3の整数)で表される積層構造を有することが望ましい。このような積層構造からなるAP1層161とすることにより、TMRセンサ1の再生特性が向上するからである。この場合のAP1層161が全体として−X方向の磁気モーメントを発現する場合、その積層構造を構成する全てのCoFe層およびCu層は、いずれも−X方向の磁気モーメントを有している。
【0038】
ピンド層16のAP1層161と接するスペーサ層17は、複数の層からなる複合構造を有している。スペーサ層17は、例えば金属層(M)と、低バンドギャップ絶縁層もしくは半導体層(B)とが交互に形成され、M\B,B\M,(M\B)n\M,または(B\M)n\B等(nは整数)のように表すことができる。具体的には、金属層(M)として銅(Cu)層が挙げられ、低バンドギャップ絶縁層として酸化マグネシウム(MgO)が挙げられる。この場合、スペーサ層17は、Cu層\MgO層\Cu層,MgO層\Cu層\MgO層,Cu層\MgO層,MgO層\Cu層,Cu層\MgO層\Cu層\MgO層\Cu層,または(Cu層\MgO層)n\Cu層のように表される。各Cu層は、好ましくは0.01nm(0.1Å)以上1nm(10Å)以下の厚さを有し、各MgO層は、好ましくは0.5nm(5Å)以上2nm(20Å)以下の厚さを有する。このようなスペーサ層17を採用することにより、例えば0.4μΩ×cm2 未満のRA値が実現される。このメカニズムは、共鳴トンネル効果を伴っていると考えられる。
【0039】
スペーサ層17におけるMgO層は、0.6nm(6Å)以上1.0nm(10Å)以下の厚さを有する第1のMg層をCu層またはピンド層16の上に成膜したのち、その第1のMg層を自然酸化(NOX:Natural Oxidation)プロセスまたはラジカル酸化(ROX:Radical Oxidation)プロセスを用いて酸化させることにより形成される。さらに、0.05nm(0.5Å)以上0.7nm(7Å)以下の厚みを有する第2のMg層を、酸化させた第1のMg層の上に成膜してもよい。NOXプロセスを行った場合、MgO層の上面には過剰な酸素が蓄積し、この酸素がスペーサ層17のMgO層上に直接形成されたフリー層18を酸化させてしまうおそれがある。そこで第2のMg層をMgO層の上に形成することにより、フリー層18の酸化反応を防ぐことができる。なお、TMRセンサ1のRA値およびMR比は、スペーサ層17におけるMgO層の厚さを変え、NOXプロセスの時間および圧力を変えることで調整することができる。自然酸化の時間を長くしたり、圧力を高くしたりすることによって、より大きな厚さを有するMgO層が得られ、RA値が上昇し得る。
【0040】
スペーサ層17におけるMgO層は、Zn,Mn,Al,Cu,Ni,Cd,Cr,Ti,Zr,Hf,Ru,Mo,Nb,CoおよびFeのうちの少なくとも1種を50原子%以下の割合で含んでいるとよい。スペーサ層17が複数のMgO層を含む場合、全てのMgO層が同一組成であってもよいし、一部が異なった組成であってもよい。
【0041】
スペーサ層17における低バンドギャップ絶縁層もしくは半導体層として、MgOの代わりにZnO,ZnX Mg(1-X)O(但し、Xは0以上0.99以下),ZnCuO,ZnCdO,ZnAlO,ZnSe,ZnTe,ZnS,SrTiO3,SrOx ,LaMnOx ,Si,Ge,TiOx ,AlN,GaN,InN,AlP,AlAs,AlSb,GaP,GaAs,GaSb,InP,InAs,CdS,CdTe,HgTe,PbS,PbSe,PbTe,SnTe,Cu2 O,FeSi2 ,CrMnSi,Mg2 Si,RuSi3またはIr3 Si5 を用いるようにしてもよい。あるいは、スペーサ層17における低バンドギャップ絶縁層もしくは半導体層が、例えば、Sb,Bi,CoSi,FeSi,CoXFe(1-X)Si、CoXMn(1-X)Si,またはCoXCr(1-X)Siなどの半金属元素含有材料を含むようにしてもよい。また、スペーサ層17に複数の低バンドギャップ絶縁体層もしくは半導体層が含まれる場合、それらの低バンドギャップ絶縁体層もしくは半導体層が互いに異なる組成の材料からなるようにしてもよい。
【0042】
また、スペーサ層17は、金属層が、Cuの代わりにAu,Ag,Zn,RuまたはAl等の他の金属によって構成されていてもよい。この場合においても、スペーサ層17が複数の金属層を含む場合、全ての金属層が同一組成であってもよいし、一部が異なった組成であってもよい。
【0043】
フリー層18は、CoFe\NiFeで表される2層構造を有することができ、これにより低磁歪および低保磁力(Hc)が得られる。あるいは、フリー層18は、FeCo\CoB,CoFe\CoFeB,もしくはCoFe\CoFeB\NiFeで表される複合体、または当該技術分野において用いられる他の2層構造体または3層構造体としてもよい。
【0044】
キャップ層19は、Ru\Ta\RuまたはRu\Taで表される積層構造を有することが望ましい。
【0045】
このTMRセンサ1を含む再生ヘッドを製造するにあたっては、まず、ウェハ上に、全ての層、すなわちシード層14、AFM層15、ピンド層16、スペーサ層17、フリー層18、キャップ層19を、例えばアネルバC−7100スパッタ成膜装置等の、スパッタ装置のDCスパッタチャンバ内で順次成膜して多層膜を形成する。この装置は、複数のターゲットを有する超高真空のDCマグネトロンスパッタチャンバと、少なくとも1つの酸化チャンバとを含んでいる。スパッタ成膜プロセスは、例えばアルゴンガスを用い、ベースプレッシャーを6.65×10-6 〜6.65×10-7Pa(5×10-8 〜5×10-9 torr)に設定して行う。圧力が低いほど、より均質な膜の形成に有利となる。
【0046】
MgO層およびCu層を含む積層構造のスペーサ層17を形成する際には、例えば、RFスパッタ法または反応性スパッタ法を用いてMgO層をCu層またはピンド層16の上に成膜するようにしてもよい。当然のことながら、スパッタ法によって形成したMgO層を含むTMRセンサよりも、NOXプロセスを用いて形成したMgO層を含むTMRセンサのほうが良好な性能が得られる。例えば、本出願人は、0.6μmの円形のデバイスの最終的なRA値の均一性(1σ)についての比較を行ったところ、RFスパッタによって形成されたMgO層の場合には10%超となり、Mg層をDCスパッタしたのちNOXプロセスを行うことによって得たMgO層の場合には3%未満となることを観測した。
【0047】
NOXプロセスは、スパッタ成膜装置の内部の酸化チャンバ内で行ってもよい。NOXプロセスは、1.33×10-2 Pa(0.1mtorr)〜1.33×102 Pa(1torr)の酸素を約15秒間ないしは300秒間加えることによって行うことができる。NOXプロセスが行われている際、酸化チャンバに対する加熱や冷却はなされない。上述した酸化時間の場合、約1μΩ×cm2未満のRA値を実現するためには、1.33×10-4 Pa(10-6torr)〜1.33×102 Pa(1torr)の酸素圧が好ましい。酸化プロセスをより良好に制御するため、O2と、Ar,Kr,またはXe等の他の不活性ガスとの混合物を用いてもよい。
【0048】
多層膜が完成したのち、それを少なくとも2kOe、好ましくは8kOeの磁場を印加しつつ、真空オーブン内で240℃以上340℃以下の温度で約2時間から10時間に亘ってアニール処理する。これにより、ピンド層16およびフリー層18の磁化方向を設定することができる。ここで、アニール処理の条件(温度、時間)によっては、MgO\Mg構造を有するスペーサ層17が、均質なMgOを形成する場合がある。これは、MgO層における未反応の酸素が、隣接するMg層へと拡散するからである。
【0049】
アニール処理ののち、図3に示したように、多層膜をパターン化する。例えば、フォトレジスト層20を、キャップ層19を選択的に覆うように形成する。続いて、そのフォトレジスト層20をパターニングしたのち、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etch)、またはイオンビームエッチング(IBE:Ion Beam Etch)等を用いて、フォトレジスト層20によって覆われていない露出した領域のTMR積層体を除去する。このエッチングプロセスは、下部シールド層10の上面に到達した時点で終了することで、上面19aおよび側壁21を有するTMRセンサ1が形成される。
【0050】
そののち、図1に示したように、絶縁層22を、TMRセンサ1の側壁21および下部シールド層10の表面を連続的に覆うように成膜したのち、さらに、その絶縁層22の上に、磁気バイアス層23と絶縁層24とを順に形成する。次に、フォトレジスト層20を除去したのち、上部シールド層25を、TMRセンサ1の上面19aと接するように成膜する。なお、キャップ層19と上部シールド層25との間にギャップ層(図示せず)をさらに含んでもよい。
【0051】
このように、本実施の形態では、TMRセンサ1がシンセティック反強磁性ピンド構造のピンド層16と、複合構造のスペーサ層17とを備え、そのスペーサ層17が、金属層と、低バンドギャップ絶縁層もしくは半導体層との積層構造を有するようにしたので、RA値を低減しつつ、高いMR比、小さな磁歪定数、および低い層間結合磁場を実現することができる。したがって、この再生ヘッドによれば、超高密度記録に対応しつつ、より安定した再生動作が可能となる。
【0052】
また、本実施の形態のスペーサ層17を作製するにあたり、新たなスパッタターゲットまたは新たなスパッタチャンバを必要としないので、大幅な追加コストを伴うことなく作製することができる。さらに、低温アニールプロセスを用いることができ、これは、従来のGMRセンサを作製するプロセスと互換性を有している。したがって、現状の製造スキームに対し、プロセスフローや関連プロセスを変更する必要がない。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の実施例としていくつかの実験例を示し、考察を加える。
【0054】
(実験例1)
本発明の効果を確認するため、図1などに示したTMRセンサ1の構成に対応するTMR積層体を作製し、その特性の評価を行った。その結果を表1に表す。
【0055】
【表1】

【0056】
本実験例のTMR積層体は、シード層と、AFM層と、AP2層、結合層およびAP1層からなるSyAFピンド層と、スペーサ層と、フリー層と、キャップ層とを順に積層したものであり、具体的には以下の構成である。まず、シード層は、厚さ1nm(10Å)のタンタル層と厚さ2nm(20Å)のルテニウム層との2層構造とした。AFM層は、厚さ7nm(70Å)のIrMn層とした。SyAFピンド層のAP2層は、Fe10 Co90 からなる厚さ1.2nm(12Å)の下部層と、Fe70 Co30 からなる厚さ1.7nm(17Å)の中間層と、Fe10 Co90 からなる厚さ2.4nm(24Å)の上部層との3層構造とした。下部層、中間層、および上部層は、いずれもいずれもfcc構造を有する。SyAFピンド層の結合層は、厚さ0.75nm(7.5Å)のルテニウム層とした。SyAFピンド層のAP1層は、Fe70 Co30 からなる厚さ1.8nm(18Å)の下部層と、Cuからなる厚さ0.2nm(2Å)の中間層と、Fe70 Co30 からなる厚さ1.8nm(18Å)の上部層との3層構造とした。スペーサ層は、厚さ0.3nm(3Å)のCu層と、厚さ0.8nm(8Å)のMgO層との2層構造とした。MgO層は、MgOのターゲットを使用したRFスパッタリングにより成膜した。なお、Mg膜をNOXプロセスによって酸化させて作製したMgO層においても、本実験例とほぼ同様の結果が得られることを確認した。フリー層は、厚さ1nm(10Å)のCoFe層と厚さ3.5nm(35Å)のFeNi層との2層構造とした。キャップ層は、厚さ1nm(10Å)のルテニウム層と、厚さ6nm(60Å)のタンタル層と、厚さ3nm(30Å)のルテニウム層との3層構造とした。
【0057】
また、本実験例では、上記のTMR積層体をNiFeからなるシールド層の上に形成したのち、真空雰囲気中において250℃の温度下で5時間に亘って8kOeの磁場を印加することによりアニール処理を行った。その結果、表1に示したように、0.316Ω×cm2 という比較的低いRA値でありながら、14%を超える高い抵抗変化率dR/Rが得られた。その上、層間結合磁場Hinを23Oeまで低減することができた。従来構造では、RA値を1Ω×cm2 未満とするには、約200Oe程度の高い層間結合磁場Hinとする必要があったが、本実験例によれば、抵抗変化率dR/Rを向上させつつ、RA値および層間結合磁場Hinの低減が可能であることが確認された。
【0058】
(実験例2)
スペーサ層の構成を変更したことを除き、他は上記実験例1と同様の構成のTMR積層体を作製し、その特性の評価を行った。その結果を表2に表す。
【0059】
【表2】

【0060】
本実験例のTMR積層体は、スペーサ層を厚さ0.6nm(6Å)のMgO層と、厚さ0.3nm(3Å)のCu層と、厚さ0.6nm(6Å)のMgO層との3層構造とした。また、MgO層は、スパッタ成膜装置の酸化チャンバ内において自然酸化処理法(NOXプロセス)によって形成した。
【0061】
表2に示したように、本実験例では、MgO層を余分に設けるようにしたものの、実験例1と同様の傾向を維持することができた。
【0062】
(実験例3)
スペーサ層の構成を変更したことを除き、他は上記実験例1と同様の構成のTMR積層体を作製し、その特性の評価を行った。その結果を表3に表す。
【0063】
【表3】

【0064】
本実験例のTMR積層体は、スペーサ層を厚さ0.8nm(8Å)のMgO層と、厚さ0.3nm(3Å)のCu層との2層構造とした。また、MgO層は、スパッタ成膜装置の酸化チャンバ内において自然酸化処理法(NOXプロセス)によって形成した。
【0065】
表3に示したように、本実験例においても実験例1と同様の傾向を維持することができた。
【0066】
(実験例4)
スペーサ層の構成を変更したことを除き、他は上記実験例1と同様の構成のTMR積層体を作製し、その特性の評価を行った。その結果を表4に表す。
【0067】
【表4】

【0068】
本実験例のTMR積層体は、スペーサ層を厚さ0.2nm(2Å)のCu層と、厚さ0.8nm(8Å)のMgO層と、厚さ0.2nm(2Å)のCu層との3層構造とした。また、MgO層は、スパッタ成膜装置の酸化チャンバ内において自然酸化処理法(NOXプロセス)によって形成した。
【0069】
表4に示したように、本実験例においても実験例1と同様の傾向を維持することができた。
【0070】
このように、本発明によれば、RA値を0.5Ω×cm2 未満とし、かつ、層間結合磁場Hinを30Oe未満としつつ、14%を超える高い抵抗変化率dR/Rを得ることが可能であることが確認された。
【0071】
本発明をその好適な実施の形態を参照して具体的に示し説明したが、当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形式的な変更および詳細な変更をなし得ることを理解するであろう。
【符号の説明】
【0072】
1…TMRセンサ、10…下部シールド層、14…シード層、15…反強磁性(AFM)層、16…ピンド層、161…AP1層、162…結合層、163…AP2層、17…スペーサ層、18…フリー層、19…キャップ層、20…フォトレジスト層、25…上部シールド層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に、
シード層と、反強磁性(AFM)層と、結合層を介して第1および第2の強磁性層が結合してなるシンセティック反強磁性(SyAF)ピンド層とを順に有する積層体と、
金属層と、低バンドギャップ絶縁層もしくは半導体層とを有し、前記第1の強磁性層と接する複合スペーサ層と、
フリー層と、
キャップ層と
を順に備え、
前記シンセティック反強磁性ピンド層における第1の強磁性層は、CoFe,CoFeB,CoB,FeBおよびCoFeX(但し、XはNi,Cu,Mo,Cr,Zrを表す)の少なくとも1種からなる
磁気センサ。
【請求項2】
前記金属層は銅(Cu)からなり、
前記低バンドギャップ絶縁層は酸化マグネシウム(MgO)からなる
請求項1記載の磁気センサ。
【請求項3】
前記金属層は、0.01nm(0.1Å)以上1.0nm(10Å)以下の厚みを有し、
前記低バンドギャップ絶縁層は、0.5nm(5Å)以上2.0nm(20Å)以下の厚みを有する
請求項2記載の磁気センサ。
【請求項4】
前記低バンドギャップ絶縁層は、亜鉛(Zn),マンガン(Mn),アルミニウム(Al),Cu,ニッケル(Ni),カドミウム(Cd),クロム(Cr),チタン(Ti),ジルコニウム(Zr),ハフニウム(Hf),ルテニウム(Ru),モリブデン(Mo),ニオブ(Nb),コバルト(Co)および鉄(Fe)のうちの少なくとも1種を50原子%以下の割合で含んでいる
請求項2記載の磁気センサ。
【請求項5】
前記低バンドギャップ絶縁層もしくは半導体層は、
ZnO,ZnX Mg(1-X)O(但し、Xは0以上0.99以下),ZnCuO,ZnCdO,ZnAlO,ZnSe,ZnTe,ZnS,SrTiO3,SrOx ,LaMnOx ,Si,Ge,TiOx ,AlN,GaN,InN,AlP,AlAs,AlSb,GaP,GaAs,GaSb,InP,InAs,CdS,CdTe,HgTe,PbS,PbSe,PbTe,SnTe,Cu2 O,FeSi2 ,CrMnSi,Mg2 Si,RuSi3またはIr3 Si5から構成される
請求項1記載の磁気センサ。
【請求項6】
前記低バンドギャップ絶縁層もしくは半導体層は、Sb,Bi,CoSi,CoXFe(1-X)Si、CoXMn(1-X)Si,FeSiまたはCoXCr(1-X)Siから構成される
請求項1記載の磁気センサ。
【請求項7】
前記金属層は、銅(Cu),金(Au),亜鉛(Zn),ルテニウム(Ru)またはアルミニウム(Al)から構成される
請求項1記載の磁気センサ。
【請求項8】
前記第2の強磁性層は、面心立方構造を有する一対のCoFe層と、前記一対のCoFe層の間に挟まれた鉄合金層との3層構造からなり、
前記結合層は、Ru,RhまたはIrからなり、
前記第1の強磁性層は、[CoFe\Cu]m\CoFe(但し、mは1〜3の整数)で表される積層構造を有する
請求項1記載の磁気センサ。
【請求項9】
前記フリー層は、CoFe\NiFe,FeCo\CoB,CoFe\CoFeBまたはCoFe\CoFeB\NiFeで表される積層構造を有し、
前記キャップ層は、Ru\Ta\RuまたはRu\Taで表される積層構造を有する
請求項1記載の磁気センサ。
【請求項10】
基体上に、シード層と、反強磁性(AFM)層と、結合層を介して第1および第2の強磁性層が結合してなるシンセティック反強磁性(SyAF)ピンド層とを順に有する積層体を形成する工程と、
金属層と低バンドギャップ絶縁層もしくは半導体層とを有する複合スペーサ層を、前記第1の強磁性層と接するように形成する工程と、
前記複合スペーサ層の上にフリー層を形成する工程と、
前記フリー層の上にキャップ層を形成する工程と
を含む磁気センサの形成方法。
【請求項11】
前記金属層を銅(Cu)によって形成し、
前記低バンドギャップ絶縁層を酸化マグネシウム(MgO)によって形成する
請求項10記載の磁気センサの形成方法。
【請求項12】
前記金属層を、0.01nm(0.1Å)以上1.0nm(10Å)以下の厚みとし、
前記低バンドギャップ絶縁層を、0.5nm(5Å)以上2.0nm(20Å)以下の厚みとする
請求項11記載の磁気センサの形成方法。
【請求項13】
前記低バンドギャップ絶縁層を、亜鉛(Zn),マンガン(Mn),アルミニウム(Al),Cu,ニッケル(Ni),カドミウム(Cd),クロム(Cr),チタン(Ti),ジルコニウム(Zr),ハフニウム(Hf),ルテニウム(Ru),モリブデン(Mo),ニオブ(Nb),コバルト(Co)および鉄(Fe)のうちの少なくとも1種を50原子%以下の割合で含むように形成する
請求項11記載の磁気センサの形成方法。
【請求項14】
前記低バンドギャップ絶縁層もしくは半導体層を、
ZnO,ZnX Mg(1-X)O(但し、Xは0以上0.99以下),ZnCuO,ZnCdO,ZnAlO,ZnSe,ZnTe,ZnS,SrTiO3,SrOx ,LaMnOx ,Si,Ge,TiOx ,AlN,GaN,InN,AlP,AlAs,AlSb,GaP,GaAs,GaSb,InP,InAs,CdS,CdTe,HgTe,PbS,PbSe,PbTe,SnTe,Cu2 O,FeSi2 ,CrMnSi,Mg2 Si,RuSi3またはIr3 Si5 によって形成する
請求項10記載の磁気センサの形成方法。
【請求項15】
前記低バンドギャップ絶縁層もしくは半導体層を、Sb,Bi,CoSi,CoXFe(1-X)Si、CoXMn(1-X)Si,FeSiまたはCoXCr(1-X)Siによって形成する
請求項10記載の磁気センサの形成方法。
【請求項16】
前記金属層を、銅(Cu),金(Au),亜鉛(Zn),ルテニウム(Ru)またはアルミニウム(Al)によって形成する
請求項10記載の磁気センサの形成方法。
【請求項17】
前記第2の強磁性層として、面心立方構造を有する一対のCoFe層と前記一対のCoFe層の間に挟まれた鉄合金層との3層構造を形成し、
前記結合層を、Ru,RhまたはIrによって形成し、
前記第1の強磁性層を、[CoFe\Cu]m\CoFe(但し、mは1〜3の整数)で表される積層構造とする
請求項10記載の磁気センサの形成方法。
【請求項18】
前記フリー層を、CoFe\NiFe,FeCo\CoB,CoFe\CoFeBまたはCoFe\CoFeB\NiFeで表される積層構造とし、
前記キャップ層を、Ru\Ta\RuまたはRu\Taで表される積層構造とする
請求項10記載の磁気センサの形成方法。
【請求項19】
前記低バンドギャップ絶縁層を、前記金属層もしくは前記第1の強磁性層の上にマグネシウム層を形成したのち、自然酸化法もしくはラジカル酸化法を用いて前記マグネシウム層を酸化することにより形成する
請求項11記載の磁気センサの形成方法。
【請求項20】
前記積層体、複合スペーサ層、フリー層およびキャップ層を含む積層構造をアニール処理したのち、所定形状となるようにパターニングする
請求項11記載の磁気センサの形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−266369(P2009−266369A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107823(P2009−107823)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(500475649)ヘッドウェイテクノロジーズ インコーポレイテッド (251)
【Fターム(参考)】