説明

積層品の成形装置及び成形方法

【課題】成形装置が簡略化され安価で、成形サイクル時間が短く、樹脂漏れや樹脂の固化による成形不良を防止した積層品の成形装置及び成形方法を提供する。
【解決手段】固定型に間隔を置いて複数のキャビティ面を設けたスライド型を有する一対の金型と、金型を開閉する型締ユニットと、型締ユニットの軸線方向及び軸線方向と交差方向に配した型閉じして形成されるキャビティに溶融樹脂を充填する複数の射出ユニットとを備えた成形装置を用い、スライド型の成形用ノズル係止部に軸線方向と交差方向に配した射出ユニットとの着脱を可能とする係止手段を備え、スライド型と射出ユニットを係止して、スライド型の所定の成形位置への移動は射出ユニットの移動手段によって行われる積層品の成形装置と積層品の成形方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド型を用いて一次成形と二次成形とによって樹脂を積層状態に射出成形して積層品を得る成形装置及び成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スライド型を用いて一次成形と二次成形とによって樹脂を積層状態に射出成形して積層品を得る成形装置及び成形方法は、例えば特許文献1により提案されている。
この成形装置は、可動盤に取付けられた可動型と、固定盤に対し横方向へ並列且つ摺動自在に取付けられた一次成形型及び二次成形型と、可動型に対して一次及び二次成形型を選択的に対向させる移動手段と、成形装置の軸線方向に配置した二次成形用射出ユニットと、成形装置の軸線に交差方向に配置した一次成形用射出ユニットにより構成される。
【0003】
積層品の成形は、先ず一次成形型と可動型とを対向させて型締した後、一次成形用射出ユニットのノズルを一次成形型のスプルブッシュに当接させて溶融樹脂を充填して一次成形品を成形する。
次に、一次成形品を残した可動型を型開すると共に、移動手段を駆動して二次成形型を可動型に対向させて型締めする。
そして、二次成形用射出ユニットのノズルを二次成形型のスプルブッシュに当接させて溶融樹脂を充填して一次成形品と一体化して積層品を成形している。
【特許文献1】特開平7−144356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の多層品の成形装置は、固定盤に取付けられスライドする一次成形型及び二次成形型に設けたスプルブッシュとノズルが当接する構成であり、金型をスライドさせる毎にスプルブッシュからノズルを離間させなければならない。このため、ノズルやスプルブッシュから樹脂の漏れ出しや、樹脂が固化して樹脂の流路が閉塞すること等により成形不良が発生していた。
さらに、一次及び二次成形の毎にノズルを移動してスプルブッシュから離間させることから、無駄なサイクル時間を要し、成形サイクルが長くなるという問題を有している。
【0005】
また、一次成形型及び二次成形型をスライド型として固定盤に配し、スライド型には可動型に対向させるための移動手段を有していることから、成形装置の構造が複雑で価格的に高価となる。
本発明の課題は、上記従来の問題に鑑みてなされたもので、装置が簡略化され安価で、成形サイクル時間が短く、樹脂漏れや樹脂の固化による成形不良を防止した積層品の成形装置及び成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の積層品の成形装置は、固定型に間隔を置いて複数のキャビティ面を設けたスライド型を有する一対の金型と、該金型を開閉する型締ユニットと、型閉じして形成されるキャビティに溶融樹脂を充填する一次成形用及び二次成形用射出ユニットとを備え、一次成形と二次成形とによって積層品を成形する成形装置であって、前記射出ユニットのいずれか一方を前記成形装置の軸線方向に進退自在に配置し、他の一方を前記成形装置の軸線方向と交差方向に進退自在に配置するとともに、前記成形装置の軸線方向と交差方向に進退自在に配置した射出ユニットのノズルが係止する前記スライド型のノズル係止部に、該射出ユニットを着脱可能とするノズル係止手段を設けた。
本発明の請求項2に記載の積層品の成形装置は、請求項1に記載の発明において、前記成形装置の軸線方向に進退自在に配置した射出ユニットを一次成形用とし、軸線方向と交差方向に進退自在に配置した射出ユニットを二次成形用とした。
【0007】
本発明の請求項3に記載の積層品の成形装置は、請求項1に記載の発明において、前記成形装置の軸線方向と交差方向に配置した射出ユニットを一次成形用とし、軸線方向に進退自在に配置した射出ユニットを二次成形用とした。
本発明の請求項4に記載の積層品の成形装置は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の発明において、前記成形装置の軸線方向に進退自在に配置した射出ユニットと前記金型のキャビティを接続する溶融樹脂の流路は、固定型パーティング面に開口部を有して設けた第1流路と可動型パーティング面に設けた第2流路とで形成され、該形成した第1流路と第2流路とを連通するようにした。
【0008】
本発明の請求項5に記載の積層品の成形方法は、固定型に間隔を置いて複数のキャビティ面を設けたスライド型を有する一対の金型と、該金型を開閉する型締ユニットと、型閉じして形成されるキャビティに溶融樹脂を充填する一次成形用及び二次成形用射出ユニットとを用い、一次成形と二次成形とによって積層品を成形する成形方法であって、前記スライド型の所定の成形位置への移動は、前記スライド型が係止された前記いずれかの射出ユニットの移動手段により駆動されて行うこととした。
【0009】
本発明の請求項6に記載の積層品の成形方法は、請求項5に記載の発明において、前記一次成形用又は二次成形用何れか一方の射出ユニットに、発泡剤が混合された溶融樹脂を用いることとした。
本発明の請求項7に記載の積層品の成形方法は、請求項5又は請求項6のいずれかに記載の発明において、前記固定型の二次成形用キャビティに、金属又は樹脂若しくは天然素材等で予め所定の形状に形成された補用部品をインサートして積層成形することとした。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る積層品の成形装置は、前記射出ユニットのいずれか一方を前記成形装置の軸線方向に進退自在に配置し、他の一方を前記成形装置の軸線方向と交差方向に進退自在に配置するとともに、前記成形装置の軸線方向と交差方向に進退自在に配置した射出ユニットのノズルが係止する前記スライド型のノズル係止部に、該射出ユニットを着脱可能とするノズル係止手段を設け、スライド型が移動してもノズルとスライド型と離間しない構成とした。このため、ノズルや金型から樹脂漏れや樹脂の固化が発生することがなく、成形不良の防止と成形サイクルの短縮ができる。
【0011】
また、前記成形装置の軸線方向に進退自在に配置した射出ユニットと前記金型のキャビティを接続する溶融樹脂の流路を、スライド型を回避して固定型と可動型パーティング面に設けたので、ノズルを金型に当接した状態でスライド型の移動が行える。このため、ノズルや金型から樹脂漏れや樹脂の固化が発生することがなく、成形不良を防止することができる。
さらに、スライド型の移動手段を固定型に設けないことから、成形装置が簡略化され安価にすることができる。
【0012】
本発明に係る積層品の成形方法は、スライド型の所定の成形位置への移動は、前記スライド型と前記成形装置の軸線方向と交差方向に配置した射出ユニットが係止された状態で、前記成形装置の軸線方向と交差方向に配置した射出ユニットの移動手段により駆動されて行うこととしたので、従来方法に比べ大きな成形品が得られるという効果を発現し得る。
スライド型の移動に際していずれの射出ユニットのノズルも離間させることがないので、成形サイクルを短縮できる。
【0013】
また、積層する樹脂に発泡剤を混合した樹脂(発泡剤混合樹脂)を用いるようにしたので、発泡層を備え、ソフト感を有して軽量化され、断熱性や遮音性に優れた積層品を得ることができる。さらに、射出ユニットのノズルを金型から離間させないので、発泡剤混合樹脂の発泡成分が漏れることがなく、高品質な発泡層を備えた積層品を得ることができる。
さらに、金属又は樹脂若しくは天然素材等で予め所定の形状に形成された補用部品をインサートして積層成形するようにしたので、成形品表面が加飾され意匠性に優れた積層品や製品強度が向上した積層品を得ることができる。
ここで補用部品とは、主として成形品の意匠性や強度を向上させる等の目的で用いる加工品をいう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の積層品の成形装置及び成形方法について実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲において、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。例えば、図面は、好適な本発明の実施の形態を表わすものであるが、本発明は図面に示された情報により制限されない。本発明を実施し又は検証する上では、本明細書中に記述されたものと同様の手段若しくは均等な手段が適用され得るが、好適な手段は以下に記述される手段である。なお、以下の記載において、一般的な技術、公知の技術、汎用の技術は省略している。
【0015】
先ず、図面に基づいて本発明を実施するため形態について説明する。図1〜5は、本発明を実施するための形態に係り、図1は本実施形態による成形装置の全体構成を示す平面図である。 図2は成形装置の軸線方向と交差方向に配置した射出ユニットのノズルとスライド型との係止手段の構成図であり、(a)は係止状態を、(b)は係止を解放した状態を示す断面図である。図3はスライド型の移動状態を示す図であり、(a)は一次成形状態の正面図、(b)は二次成形状態の正面図である。
図4は一次成形状態を示す要部の断面図であり、図5は二次成形状態を示す要部の断面図である。なお、本実施の形態では成形装置の軸線方向に配置した射出ユニットを一次射出ユニットとし、軸線方向と交差方向に配置した射出ユニットを二次射出ユニットとしてある。以下、図1〜図5に従って説明する。
【0016】
図1に示すように、本発明の一実施例に使用される成形装置100は、型締ユニット10、一次成形用射出ユニット20、二次成形用射出ユニット30、金型40及び図示しない型締ユニット10と一次成形用射出ユニット20及び二次成形用射出ユニット30を制御する制御装置とを備えている。
図1に示す型締ユニット10は、固定盤1と可動盤2と油圧ポンプを駆動源とする型締シリンダ3とを備え、可動盤2は固定盤1と型締シリンダ3との間に架設されたタイバー4により案内されて、型締シリンダ3のピストンロッド5により固定盤1に対して前後進できる構成となっている。
【0017】
一次成形用射出ユニット20は成形装置100の軸線方向に摺動自在に、又、二次成形用射出ユニット30は成形装置100の軸線と交差方向に摺動自在に配され、それぞれの射出ユニット20、30は金型40に形成されたノズル係止部に接離可能とする移動手段を備えた構成となっている。ここで、成形装置100の軸線と交差方向は、前記軸線に水平且つ、固定盤1に対して平行な方向をいう。
前記いずれの射出ユニットも、スクリュの回転手段によりスクリュが回転されることで、ホッパから供給された樹脂成形材料がバレル内に供給されて加熱溶融され、所定量の溶融樹脂をノズル先端より金型40内へ射出充填することができる。
【0018】
金型40は、固定盤1に取付けられ成形装置100の軸線と交差方向に摺動自在に配され間隔を置いて複数のキャビティ面を設けたスライド型42を有する固定型41と、可動盤2に取付けられ前記複数のキャビティ面と対向して型締される一つのコア面を有する可動型43とで基本構成される。そして、スライド型42端面の二次成形用ノズル係止部に、二次成形用射出ユニット30との着脱を可能とする係止手段50を有している。
【0019】
図2に示すように係止手段50は、スライド型42端面の二次成形用射出ユニット30ノズル係止部に取付けられ、係止ブロック52と駆動シリンダ51により基本構成される。係止ブロック52は、駆動シリンダ51のピストンロッドに取付けられガイド穴に案内されて二次成形用射出ユニット30のノズル32を係止する図2(a)で示す係止位置と、ノズル32をとの係止を解放する図2(b)で示す解放位置との間を移動する。
ノズル32と係止ブロック52の係止部は傾斜面で当接する構成としたので、係止した状態でノズル32がスプルブッシュ47に押圧され、ノズル32とスプルブッシュ4の間に隙間が形成されることがない。そして、図2(a)で示す係止位置で二次成形用射出ユニット30を移動させることによって、スライド型42を所定の成形位置へ移動することができる。
【0020】
図3に示すように、スライド型42は、間隔を置いて一次成形用キャビティ面45と二次成形用キャビティ面46とを有し、可動型43と対向する所定の一次成形位置及び二次成形位置との間を二次成形用射出ユニット30の移動手段により移動される。
一次成形用キャビティ面45が成形装置の略中心位置で可動型43と対向する図3(a)に示す位置を一次成形位置とし、二次成形用キャビティ面46が成形装置の略中心位置で可動型43と対向する図3(b)に示す位置を二次成形位置とした。一次成形位置への移動は、二次成形用射出ユニット30をスクリュの後退方向へ移動させて行い、二次成形位置への移動は二次成形用射出ユニット30をスクリュの前進方向へ移動させて行う。
成形が終了して金型を交換する場合やノズル32を交換する場合には、係止手段50の係止ブロック52を移動してノズル32とスライド型42との係止を解放することで、二次成形用射出ユニット30のみを前後に移動させることができる。なお、図3では係止手段50の図示を省略している。
【0021】
図4に示すように、スライド型42と可動型43が対向して型締されて形成された一次成形用キャビティに溶融樹脂を充填する樹脂の第1流路71は、パーティング面に開口部74を有してスライド型42を回避して固定型41に形成されている。パーティング面の開口部74に対向する可動型43のパーティング面には第2流路73が形成され、ノズル22を介して一次成形用射出ユニット20と一次成形用キャビティとが連通した構成となっている。そして、開口部74の近傍には流路の開閉手段72が設けられている。
【0022】
図5に示すように、一次成形品を保持した可動型43とスライド型42が対向して型締されて形成された二次成形用キャビティに溶融樹脂を充填する樹脂流路76は、パーティング面に開口部75を有してスライド型42に形成されている。パーティング面の開口部75に対向する可動型43のパーティング面には樹脂流路78が形成され、ノズル32を介して二次成形用射出ユニット30と二次成形用キャビティとが連通した構成となっている。そして、開口部75の近傍には流路の開閉手段77が設けられている。
符号80は、補用部品であって慣用のロボット装置等の手段により二次成形用キャビティ46に供給され、例えば、吸引手段によりキャビティ面に固定されてインサート成形された状態を示している。
【0023】
前述した、固定型40及びスライド型42に設けた樹脂の流路71、76はホットランナで構成され、流路の開閉手段72、77はホットチップやバルブゲートが用いられることが好ましい。
また、二次成形用樹脂の充填を可動型43に設けた樹脂流路78を介して行い、ゲートの痕跡が成形品の裏面構成としたが、樹脂流路78の開口部75が二次成形用キャビティ面46に形成された構成であっても良い。
【0024】
次に、本発明に係る積層品の成形方法の一実施例について説明する。先ず、一次成形品の成形工程にて説明する。
まず、二次成形用射出ユニット30を前進移動させてスライド型42と当接させた状態で、係止手段50を駆動してノズル32とスライド型42とを係止状態とし、スライド型42の一次成形用キャビティ面45を二次成形用射出ユニット30の移動手段により可動型43と対向する一次成形位置へ移動させる。その後、型締ピストン5を作動させて可動型43を固定型41に型締、可動型43とスライド型42との間に一次成形用キャビティが形成される。
【0025】
次いで、一次成形用射出ユニット20から所定量の溶融樹脂がノズル22、スプルブッシュ48、樹脂の第1流路71、樹脂流路の開閉手段72、樹脂の第2流路73を通って一次成形用キャビティに充填される。この時、樹脂流路の開閉手段72は開かれている。これにより一次成形品61を得る。
一次成形後、型締ピストン5を作動させて一次成形品61を残した可動型43を固定型41から離間させる。そして、ノズル32とスライド型42とを係止状態のままで、スライド型42の二次成形用キャビティ面46を二次成形用射出ユニット30の移動手段により可動型43と対向する二次成形位置へ移動させる。この時、一次成形用射出ユニット20のノズル22はスプルブッシュ48に当接した状態を保持する。
【0026】
スライド型42が所定の二次成形位置へ移動した後、再び型締ピストン5を作動させて可動型43を固定型41に型締することで、可動型43の一次成形品61とスライド型42との間に二次成形用キャビティが形成される。この状態で、二次成形用射出ユニット30から所定量の溶融樹脂がノズル32、スプルブッシュ47、樹脂流路76、樹脂流路の開閉手段77、樹脂流路78を通って二次成形用キャビティに充填する。この時、樹脂流路の開閉手段77は開かれている。これにより一次成形品61に二次成形品62が積層された積層品60を得る。補用部品80をインサートして成形する場合には、一次成形後の型開の状態において二次成形用キャビティ面46に供給しておけば、補用部品80がインサートされた積層品60が得られる。
積層品60を成形した後、型締ピストン5を作動させて可動型43を固定型41から離間させ型開を行い、次いで、積層品60を図示しない押出手段により可動型43から押出すことで成形を完了する。
【0027】
次に、本発明の実施の形態における発泡成形について説明する。一次成形用射出ユニット20又は二次成形用射出ユニット30の何れか一方に発泡剤を混合してキャビティ内に充填することにより、発泡層を備えた積層品を得ることができる。例えば、図4に示す一次成形用射出ユニット20から発泡剤を混合した溶融樹脂が一次成形用キャビティに充填されると、基材が発泡層となった積層品が得られ、又、図5に示す二次成形用射出ユニット30から発泡剤を混合した溶融樹脂が二次成形用キャビティに充填されると、表層が発泡層となった積層品が得られる。
【0028】
そして、溶融樹脂に混合する発泡剤は、化学発泡剤や物理発泡剤が用いられる。発泡成形の形態は、キャビティ容積と同量の発泡剤を含む溶融樹脂を充填し、その後キャビティ容積を所定の量拡大して発泡させるフルショット法を用いることが好ましい。また、キャビティ内にガスを所定の圧力で充満させて樹脂を充填するガスカウンタープレッシャー法を前記フルショット法に併用することは発泡層の表面性を向上させる点において更に好ましい。
【0029】
本発明において、一次成形射出ユニットを成形機の軸線方向に配置し、二次成形射出ユニットを成形機の軸線方向と交差方向に配置する構成としたが、他の実施形態として、一次成形射出ユニットを成形機の軸線方向と交差方向に配置し、二次成形射出ユニットを成形機の軸線方向とに配置した。成形方法の詳細な説明は省略するが、前述した一次成形と二次成形が逆順となる。また、スライド型を用いない場合には何れか一方の射出ユニットを用いて、軸線方向に配置した射出ユニットによる通常の射出成形や軸線方向に配置した射出ユニットによるパーティング面よりの射出成形が可能である。
【0030】
本発明の実施の形態における金属又は樹脂若しくは天然素材等で予め所定の形状に形成された補用部品のインサート成形について説明する。金属又は樹脂若しくは天然素材等で予め所定の形状に形成された補用部品をキャビティ面にインサートして固定した後、キャビティに溶融樹脂を充填して積層成形する。補用部品をインサートすることにより、成形品の表面が加飾され意匠性に優れた積層品を得ることができる。例えば、図3(b)に示すキャビティ面46に補用部品を周知の態様で取付け、一次成形品61を保持した可動型43を型締する。一次成形品61と補用部品との間で形成される二次成形キャビティに、二次成形用射出ユニット30から溶融樹脂を充填することで表面を補用部品で加飾した積層品が得られる。そして、この補用部品のインサート成形において前述した発泡成形が用いられても良い。
【0031】
前述した補用部品の材料として、金属材料においては鉄鋼やステンレス等の鉄鋼材料、アルミニウム合金や銅合金等の非鉄金属材料が、樹脂材料においてはポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂やユリア樹脂等の熱硬化性樹脂が、また、天然素材においては綿や絹等の繊維、皮革、紙、木材及び石材等公知の素材が好適に用いられる。
また、補用部品の金型への供給は、汎用のロボット装置など慣用の手段を用いることで行うことができる。
【0032】
以上説明したように、成形装置の軸線に交差する横方向へ移動自在に配され、移動手段を備えたスライド型を用いた従来の成形装置では、金型をスライドさせる毎にスプルブッシュからノズルを離間させる。このため、ノズルやスプルブッシュから樹脂の漏れ出しや、樹脂が固化して樹脂の流路が閉塞すること等により成形不良や、一次及び二次成形毎にノズルを移動してスプルブッシュから離間させることから、無駄なサイクル時間を要し、成形サイクルが長くなる問題を有していた。
本発明による成形装置では、金型をスライドさせるに際してノズルを金型から離間させることのない構成としたので、成形サイクルが短縮できた。また、ノズルを金型から離間させることによる成形不良を防止して、成形コストを低減することができた。そして、スライド型の移動手段を固定型に設けない構成としたので、成形装置が小型化され、特に金型コストを低減することができた。
さらには、補用部品をインサートして成形品の表面が加飾され意匠性に優れた積層品や強度に優れた積層品を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の成形装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】本発明の軸線方向と交差方向に配置した射出ユニットのノズルとスライド型との係止手段の構成図であり、(a)は係止状態を、(b)は係止を解放した状態を示す断面図である。
【図3】本発明のスライド型の移動状態を示す図で、(a)は一次成形状態の正面図、(b)は二次成形状態の正面図である。
【図4】本発明の一次成形状態を示す要部の断面図である。
【図5】本発明の二次成形状態を示す要部の断面図である。
【符号の説明】
【0034】
10 型締ユニット
20 一次成形用射出ユニット(成形装置の軸線方向に配置)
30 二次成形用射出ユニット(成形装置の軸線方向と交差方向に配置)
40 金型
41 固定型
42 スライド型
43 可動型
45 一次成形用キャビティ面
46 二次成形用キャビティ面
50 係止手段
60 積層品
71 第1の樹脂流路
73 第2の樹脂流路
80 補用部品
100 成形装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定型に間隔を置いて複数のキャビティ面を設けたスライド型を有する一対の金型と、該金型を開閉する型締ユニットと、型閉じして形成されるキャビティに溶融樹脂を充填する一次成形用及び二次成形用射出ユニットとを備え、一次成形と二次成形とによって積層品を成形する成形装置であって、
前記射出ユニットのいずれか一方を前記成形装置の軸線方向に進退自在に配置し、他の一方を前記成形装置の軸線方向と交差方向に進退自在に配置するとともに、
前記成形装置の軸線方向と交差方向に進退自在に配置した射出ユニットのノズルが係止する前記スライド型のノズル係止部に、該射出ユニットを着脱可能とするノズル係止手段を設けたことを特徴とする積層品の成形装置。
【請求項2】
前記成形装置の軸線方向に進退自在に配置した射出ユニットを一次成形用とし、軸線方向と交差方向に進退自在に配置した射出ユニットを二次成形用としたことを特徴とする請求項1に記載の積層品の成形装置。
【請求項3】
前記成形装置の軸線方向と交差方向に配置した射出ユニットを一次成形用とし、軸線方向に進退自在に配置した射出ユニットを二次成形用としたことを特徴とする請求項1に記載の積層品の成形装置。
【請求項4】
前記成形装置の軸線方向に進退自在に配置した射出ユニットと前記金型のキャビティを接続する溶融樹脂の流路は、固定型パーティング面に開口部を有して設けた第1流路と可動型パーティング面に設けた第2流路とで形成され、該形成した第1流路と第2流路とを連通するようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の積層品の成形装置。
【請求項5】
固定型に間隔を置いて複数のキャビティ面を設けたスライド型を有する一対の金型と、該金型を開閉する型締ユニットと、型閉じして形成されるキャビティに溶融樹脂を充填する一次成形用及び二次成形用射出ユニットとを用い、一次成形と二次成形とによって積層品を成形する成形方法であって、
前記スライド型の所定の成形位置への移動は、前記スライド型が係止された前記いずれかの射出ユニットの移動手段により駆動されて行うことを特徴とする積層品の成形方法。
【請求項6】
前記一次成形用又は二次成形用何れか一方の射出ユニットに、発泡剤が混合された溶融樹脂を用いることを特徴とする請求項5に記載の積層品の成形方法。
【請求項7】
前記固定型の二次成形用キャビティに、金属又は樹脂若しくは天然素材等で予め所定の形状に形成された補用部品をインサートして積層成形することを特徴とする請求項5又は請求項6のいずれかに記載の積層品の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−255464(P2009−255464A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109714(P2008−109714)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】