結晶化膜の製造方法及び結晶化装置
【課題】基板上に形成されたアモルファス膜の結晶化を、基板表面に対して垂直方向(即ち下から上方向)ではなく略平行方向(即ち横方向)に進行させる結晶化膜の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一態様は、基板上にアモルファス膜1を形成し、前記アモルファス膜1にレーザ光を照射してレーザ光照射領域1aを結晶化し、前記アモルファス膜1に熱処理を施すことにより、前記レーザ光照射領域以外のアモルファス膜1を結晶化することを特徴とする。
【解決手段】本発明の一態様は、基板上にアモルファス膜1を形成し、前記アモルファス膜1にレーザ光を照射してレーザ光照射領域1aを結晶化し、前記アモルファス膜1に熱処理を施すことにより、前記レーザ光照射領域以外のアモルファス膜1を結晶化することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶化膜の製造方法及び結晶化装置に係わり、特に、基板上に形成されたアモルファス膜の結晶化を、基板表面に対して垂直方向(即ち下から上方向)ではなく略平行方向(即ち横方向)に進行させる結晶化膜の製造方法及び結晶化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のPb(Zr,Ti)O3(以下、「PZT」という。)強誘電体キャパシタを、加圧式ランプアニール装置を用いて作製する方法について図11を参照しつつ説明する。図11は、従来のPZT強誘電体膜の結晶成長過程を模式的に示す図である。
まず、6インチのシリコンウエハ上に熱酸化法によりシリコン酸化膜を形成し、このシリコン酸化膜上に図11に示すPt膜からなる下部電極101を形成する。Ptは成長すると自然に(111)を向きやすいため、下部電極101は(111)に配向する。次いで、この下部電極101上にゾルゲル法によりPZT膜102を塗布し、このPZT膜上に上部電極(図示せず)を形成する。
【0003】
この後、上記加圧式ランプアニール装置を用いて酸素雰囲気中で600℃、1分間のRTA(rapid thermal anneal)処理を行う。すなわち、PZT膜を600℃まで急速に加熱し、600℃の温度で1分間保持する。その結果、PZTと酸素が素早く反応され、PZT膜が結晶化され、図12及び図13に示すように、結晶化されたPZT膜102は、下部電極101の(111)配向に従って、(111)に配向される(例えば特許文献1参照)。
【0004】
上記のゾルゲル法によりPZT膜を塗布する際に、鉛成分が10〜20%程度過剰に含まれたPZT形成用ゾルゲル溶液を用い、このPZT形成用ゾルゲル溶液を複数回塗布して下部電極上に塗布膜を厚く形成している。その理由は、PZT結晶初期核の形成には、過剰鉛が必要であり、その鉛量をなるべく多くするためである。その後に、PZT膜を結晶化するRTA処理の際には、下部電極と塗布膜との界面近傍にPZT結晶初期核が形成され、下部電極側から上部電極の方向、即ち下から上に向かって結晶化が進行していくものと考えられる。
【0005】
これに対し、PZT膜の膜厚を比較的薄く形成したいという要求がある場合、PZT形成用ゾルゲル溶液の塗布回数を少なくすることが求められる。このような場合、塗布膜中の鉛量が少なくなり、PZT結晶初期核が形成されにくくなるおそれがある。
【0006】
図14は、他の従来のPZT強誘電体膜の結晶成長過程を模式的に示す図である。
(111)に配向したPt膜からなる下部電極101の上に、(100)方向に強く自己配向するLaNiO3(以下、「LNO」という。)膜103を形成する。このLNO膜103上にゾルゲル法によりPZT膜102を塗布し、このPZT膜上に上部電極(図示せず)を形成する。
【0007】
この後、高温で熱処理を行うことにより、PZT膜が結晶化される。この結晶化されたPZT膜102は、下部電極101の(111)配向に従わず、LNO膜103の(100)配向に従うため、(100)に配向される。しかし、LNOは高温加熱時にその組成成分のLaやNiをその上部のPZT膜中に容易に拡散させてしまい、PZTの特性を劣化させるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2006/087777(段落0040〜0043)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一態様は、基板上に形成されたアモルファス膜の結晶化を、基板表面に対して垂直方向(即ち下から上方向)ではなく略平行方向(即ち横方向)に進行させる結晶化膜の製造方法及び結晶化装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、基板上にアモルファス膜を形成し、
前記アモルファス膜にレーザ光を照射してレーザ光照射領域を結晶化し、
前記アモルファス膜に熱処理を施すことにより、前記レーザ光照射領域以外のアモルファス膜を結晶化することを特徴とする結晶化膜の製造方法である。
【0011】
また、本発明の一態様に係る結晶化膜の製造方法において、前記レーザ光照射領域以外のアモルファス膜を結晶化する際は、結晶化されたレーザ光照射領域の初期核から前記基板の表面と略平行方向に結晶化が進行することが好ましい。
【0012】
また、本発明の一態様に係る結晶化膜の製造方法において、前記アモルファス膜はPZTアモルファス膜であり、前記結晶化膜はPZT膜であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の一態様に係る結晶化膜の製造方法において、前記レーザ光照射領域以外のアモルファス膜を結晶化する際は、(110)、(011)及び(101)のいずれかに優先配向するように結晶化することも可能である。
【0014】
また、本発明の一態様に係る結晶化膜の製造方法において、前記レーザ光照射領域以外のアモルファス膜を結晶化する際は、(100)、(010)及び(001)のいずれかに優先配向するように結晶化することも可能である。
【0015】
本発明の一態様は、基板上にアモルファス膜を形成し、
前記基板の一方端側に位置する前記アモルファス膜にランプ光を照射し、前記ランプ光の照射領域を徐々に前記基板の中央側に移動させ、その後、前記ランプ光の照射領域を徐々に前記基板の他方端側に移動させることにより、前記アモルファス膜を結晶化することを特徴とする結晶化膜の製造方法である。
【0016】
本発明の一態様は、基板を移動させる移動機構と、
前記基板が移動する領域の上方に配置されたランプヒータと、
前記移動機構及び前記ランプヒータを制御する制御部と、
を具備し、
前記基板は、その表面にアモルファス膜が形成されていることを特徴とする結晶化装置である。
【0017】
また、本発明の一態様に係る結晶化装置において、前記制御部は、前記移動機構によって前記基板を移動させながら前記ランプヒータによって前記アモルファス膜にランプ光を照射するように制御することにより、前記ランプ光は前記基板の端側に照射された後に前記基板の中央側に照射されることも可能である。
【0018】
また、本発明の一態様に係る結晶化装置において、前記基板が移動する移動領域の上方に配置されたレーザ光照射機構を具備し、前記制御部は、前記レーザ光照射機構によって前記アモルファス膜にレーザ光を照射した後に前記ランプヒータによって前記アモルファス膜にランプ光を照射するように制御することも可能である。
【0019】
また、本発明の一態様に係る結晶化装置において、前記アモルファス膜がPZTアモルファス膜であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、基板上に形成されたアモルファス膜の結晶化を、基板表面に対して垂直方向ではなく略平行方向に進行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態1によるPZT膜の製造方法を説明するための平面図である。
【図2】図1に示す製造方法におけるPZT強誘電体膜の結晶成長過程を模式的に示す図である。
【図3】(A),(B)はサンプル1のPZT膜をXRD回折で結晶性を評価した結果を示す図である。
【図4】(A),(B)はサンプル3のPZT膜をXRD回折で結晶性を評価した結果を示す図である。
【図5】(A),(B)はサンプル4のPZT膜をXRD回折で結晶性を評価した結果を示す図である。
【図6】(A),(B)はサンプル5のPZT膜をXRD回折で結晶性を評価した結果を示す図である。
【図7】(A),(B)はサンプル6のPZT膜をXRD回折で結晶性を評価した結果を示す図である。
【図8】(A),(B)はサンプル7のPZT膜をXRD回折で結晶性を評価した結果を示す図である。
【図9】(A),(B)はサンプル8のPZT膜をXRD回折で結晶性を評価した結果を示す図である。
【図10】(A)は、実施形態2による結晶化装置を模式的に示す正面図であり、(B)は、(A)に示す結晶化装置の平面図である。
【図11】従来のPZT強誘電体膜の結晶成長過程を模式的に示す図である。
【図12】図11に示すPZT膜102及び下部電極101のPt膜をXRD回折で結晶性を評価した結果を示す図である。
【図13】図11に示すPZT膜102及び下部電極101のPt膜を平行ビーム光学系でPt(111)を弱くしPtピークを小さくして結晶性を評価した結果を示す図である。
【図14】他の従来のPZT強誘電体膜の結晶成長過程を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0023】
(実施形態1)
図1は、実施形態1によるPZT膜の製造方法を説明するための平面図である。図2は、図1に示す製造方法におけるPZT強誘電体膜の結晶成長過程を模式的に示す図である。
まず、図1に示すように、基板としてシリコンウエハを用意する。次いで、このシリコンウエハ上に熱酸化法によりシリコン酸化膜を形成し、このシリコン酸化膜上に図2に示すPt膜からなる電極101を形成する。次いで、この電極101上にゾルゲル法によりPZTアモルファス膜1を塗布する。
【0024】
次いで、このPZTアモルファス膜1にレーザ光を照射してレーザ光照射領域1aを結晶化する。これにより、レーザ光照射領域1aには矢印1cの方向に結晶されたPZT結晶初期核1bが形成される。このPZT結晶初期核1bは、レーザ光の強度や出力を調整することで、電極101であるPt膜の(111)配向に拘束されず、異なる配向性を有することが可能となる。
【0025】
次いで、PZTアモルファス膜1を例えば650℃程度の温度に加熱した熱処理を所定時間施すことにより、レーザ光照射領域1a以外のPZTアモルファス膜1を結晶化することができる。この結晶化は、レーザ光照射領域1aに形成されたPZT結晶初期核1bからシリコンウエハの表面と略平行方向(横方向)2に進行され、PZT結晶1dが形成される。
【0026】
上記実施形態によれば、PZTアモルファス膜1にレーザ光を照射してレーザ光照射領域1aにPZT結晶初期核を形成した後に熱処理を施すことにより、PZT結晶初期核からシリコンウエハの表面と略平行方向(横方向)2に結晶化を進行させることができる。このため、横方向2に連続したエピタキシャル成長を実現したPZT膜を形成することができる。従って、PZT膜の電流リークを低減させる効果が期待できる。
【0027】
これに対し、従来のPZT膜の結晶化方法では、レーザ光を照射することなく熱処理を施すことによりPZTアモルファス膜を結晶化しているため、その結晶化はシリコンウエハ表面に対して垂直方向(即ち下から上方向)に進行する。その結果、シリコンウエハ表面に対して略平行方向(横方向)に連続したエピタキシャル成長を実現することができない。従って、従来のPZT膜の結晶化方法では、PZT膜の電流リークを低減させる効果が期待できない。
【0028】
また、本実施形態では、PZTアモルファス膜1にレーザ光を照射してレーザ光照射領域1aにPZT結晶初期核1bを形成するため、PZTアモルファス膜1の厚さを薄くしても、従来のPZT膜の結晶化方法に比べてPZT結晶初期核が形成されにくくなるおそれを低減できる。従って、本実施形態によるPZT膜の製造方法は、PZT膜の膜厚を薄く形成した場合に有利である。
【0029】
また、従来のPZT膜の結晶化方法では、結晶化されたPZT膜は下地の電極の(111)配向に拘束されて(111)にしか優先配向させることができない。これに対し、本実施形態では、PZTアモルファス膜1に照射するレーザ光の強度や出力を比較的強く調整することにより、(110)、(011)及び(101)のいずれかに優先配向させることができ、またPZTアモルファス膜1に照射するレーザ光の強度や出力を比較的弱く調整することにより、(100)、(010)及び(001)のいずれかに優先配向させることができる。(110)、(011)及び(101)のいずれかに優先配向させたPZT膜はSAWデバイスなどに適用することが可能であり、(100)、(010)及び(001)のいずれかに優先配向させたPZT膜は圧電素子などに適用することが可能である。
【0030】
次に、本実施形態による製造方法を用いて製造されたPZT膜のサンプルを8枚作製し、それらのサンプルのPZT膜をXRD回折で結晶性を評価した結果を図3〜図9に示す。
【0031】
<8枚のサンプルの作製方法>
(1)PZTアモルファス膜の作製方法
PZT強誘電体薄膜形成用ゾルゲル溶液としては、三菱マテリアル株式会社製、ブタノールを溶媒とする鉛が15%過剰に添加された、濃度10重量%濃度のE1溶液を用いた。この市販ゾルゲル溶液に、ジメチルアミノエタノールというアルカリ性アルコールを、体積比で、E1ゾルゲル溶液:ジメチルアミノエタノール=7:3の割合で添加したところ、pH=12と強アルカリ性を示した。本溶液を用いて、PZT薄膜のスピンコート形成を行った。スピンコーターはミカサ株式会社製MS-A200を用いて行った。先ず800rpmで5秒、1500rpmで10秒回転させた後、徐々に10秒で3000rpmまで回転を上昇させた後、150℃のホットプレート(アズワン株式会社製セラミックホットプレートAHS-300)上に5min、大気中で放置した後、300℃のホットプレート(同AHS-300)上で5min、同じく大気中で放置した後、室温まで冷却した。これを5回繰り返すことで、15%過剰鉛を含んだ厚さ200nmのPZTアモルファス膜をPt電極薄膜被覆6インチSi基板上に形成した。
【0032】
(2)レーザ光の照射方法
レーザ平面加熱装置(EXLASER)(坂口電熱の商品名)を用いてSi基板の中央に位置するPZTアモルファス膜に表1に示す条件でレーザ光を照射した。なお、表1に示すサンプル2は、追加でレーザ光を照射したときにSi基板が割れた。
【0033】
【表1】
【0034】
(3)熱処理方法
加圧RTAにより120℃/秒の昇温速度で650℃-5min(9.9atm-O2-RTA)で結晶化を行って、PZT薄膜上に厚さ120nmのPt電極を形成し、725℃-5min(9.9atm-O2-RTA)のポストアニールを行った。このようにしてPZT膜のサンプルを作製した。
【0035】
<結晶性を評価した結果>
図3〜図9は、サンプル1、3〜8それぞれのPZT膜をXRD回折で結晶性を評価した結果を示すものであり、(A)はSi基板の中心部(中央)に位置するPZT膜の評価結果であり、(B)はSi基板の端部(外周側)に位置するPZT膜の評価結果である。図3〜図9に示す配向性をまとめたものを表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
サンプル1、3では、それぞれ50W、15秒と300W、10秒のパワーと照射時間でレーザ光を照射したが、これより長い照射時間とするとウエハが割れてしまう。従って、サンプル1、3のレーザ光照射条件は、レーザ光の強度や出力を上限に近くに調整したものであり、その結果、(110)に優先配向させることができた。
【0038】
これに対し、サンプル4、6〜8では、表1に示すように、レーザ光の強度や出力をサンプル1、3に比べて弱く調整したものであり、その結果、(100)に優先配向させることができた。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、アモルファス膜の小面積(例えば点状)の領域にレーザ光を照射してセラミックス結晶初期核を発生させ、その際のレーザ光の強度、出力、時間等でセラミックス結晶初期核の配向性を制御し、その後、ウエハの表面全体を加熱炉で加熱しても、セラミックス結晶初期核の配向性が保持され、ウエハの面内の横方向に結晶化を進行させることができる。従って、大面積の領域を照射するようなレーザ光を必要とせず、ウエハのサイズが大きくても小さくても良く、ウエハのサイズに左右されない量産化技術を確立することができる。
【0040】
(実施形態2)
図10(A)は、実施形態2による結晶化装置を模式的に示す正面図であり、図10(B)は、図10(A)に示す結晶化装置の平面図である。
【0041】
図10に示す結晶化装置は、基板3を矢印のように移動させる移動機構(図示せず)と、この基板3が移動する領域の上方に配置されたランプヒータ4と、基板3が移動する移動領域の上方に配置されたレーザ光照射機構5と、前記移動機構、ランプヒータ4及びレーザ光照射機構5を制御する制御部(図示せず)とを具備している。ランプヒータ4はランプ光を照射するものであり、ランプ光は例えば赤外線である。
【0042】
ランプヒータ4は、基板3が移動する方向に対して長手方向が垂直になるように配置されており、ランプヒータ4の下方を基板3の表面全体が通過するようになっている。
【0043】
次に、この結晶化装置を用いてアモルファス膜を結晶化する方法について説明する。
まず、基板3としてシリコンウエハを用意する。次いで、この基板3上に熱酸化法によりシリコン酸化膜を形成し、このシリコン酸化膜上に電極を形成する。次いで、この電極上にゾルゲル法によりPZTアモルファス膜を塗布する。
【0044】
次いで、PZTアモルファス膜が塗布された基板3を図10に示す結晶化装置に導入する。次いで、前記移動機構によって基板3を移動させ、レーザ光照射機構5によって基板3の端部又はその近傍に位置するPZTアモルファス膜のレーザ光照射領域3aにレーザ光を照射する。これにより、レーザ光照射領域3aにはPZT結晶初期核が形成される。
【0045】
次いで、前記移動機構によって基板3を移動させながら、ランプヒータ4によって基板3の一方端側に位置するPZTアモルファス膜にランプ光を照射し、このランプ光の照射領域を徐々に基板3の中央側に移動させ、その後、ランプ光の照射領域を徐々に基板3の他方端側に移動させる。このようにして基板3のPZTアモルファス膜全体にランプ光が照射されることにより、PZTアモルファス膜を結晶化する。この結晶化は、レーザ光照射領域3aに形成されたPZT結晶初期核から基板3の表面と略平行方向(横方向)に進行する。その結果、横方向に連続したエピタキシャル成長を実現したPZT膜を形成することができる。
【0046】
本実施形態においても実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0047】
なお、本実施形態では、レーザ光を照射した後にランプ光を照射しているが、レーザ光を照射せずにランプ光を照射するだけでPZTアモルファス膜を結晶化することも可能である。この場合は、レーザ光照射機構5が不要となる。
【0048】
詳細には、基板3の一方端側に位置するPZTアモルファス膜にランプ光を照射することにより、基板3の一方端側に位置するPZTアモルファス膜にPZT結晶初期核を形成することができる。そして、ランプ光の照射領域を徐々に基板3の中央側に移動させ、その後、ランプ光の照射領域を徐々に基板3の他方端側に移動させることにより、PZTアモルファス膜を結晶化する。この結晶化は、基板3の一方端側に形成されたPZT結晶初期核から基板3の表面と略平行方向(横方向)に進行する。その結果、横方向に連続したエピタキシャル成長を実現したPZT膜を形成することができる。
【0049】
また、上記実施形態1,2では、PZTアモルファス膜を結晶化することについて説明しているが、PZTアモルファス膜以外のアモルファス膜を、実施形態1,2の製造方法及び結晶化装置によって結晶化することも可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…PZTアモルファス膜
1a…レーザ光照射領域
1b…PZT結晶初期核
1c…矢印
1d…PZT結晶
2…シリコンウエハの表面と略平行方向(横方向)
3…基板
3a…レーザ光照射領域
4…ランプヒータ
5…レーザ光照射機構
101…Pt膜からなる下部電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶化膜の製造方法及び結晶化装置に係わり、特に、基板上に形成されたアモルファス膜の結晶化を、基板表面に対して垂直方向(即ち下から上方向)ではなく略平行方向(即ち横方向)に進行させる結晶化膜の製造方法及び結晶化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のPb(Zr,Ti)O3(以下、「PZT」という。)強誘電体キャパシタを、加圧式ランプアニール装置を用いて作製する方法について図11を参照しつつ説明する。図11は、従来のPZT強誘電体膜の結晶成長過程を模式的に示す図である。
まず、6インチのシリコンウエハ上に熱酸化法によりシリコン酸化膜を形成し、このシリコン酸化膜上に図11に示すPt膜からなる下部電極101を形成する。Ptは成長すると自然に(111)を向きやすいため、下部電極101は(111)に配向する。次いで、この下部電極101上にゾルゲル法によりPZT膜102を塗布し、このPZT膜上に上部電極(図示せず)を形成する。
【0003】
この後、上記加圧式ランプアニール装置を用いて酸素雰囲気中で600℃、1分間のRTA(rapid thermal anneal)処理を行う。すなわち、PZT膜を600℃まで急速に加熱し、600℃の温度で1分間保持する。その結果、PZTと酸素が素早く反応され、PZT膜が結晶化され、図12及び図13に示すように、結晶化されたPZT膜102は、下部電極101の(111)配向に従って、(111)に配向される(例えば特許文献1参照)。
【0004】
上記のゾルゲル法によりPZT膜を塗布する際に、鉛成分が10〜20%程度過剰に含まれたPZT形成用ゾルゲル溶液を用い、このPZT形成用ゾルゲル溶液を複数回塗布して下部電極上に塗布膜を厚く形成している。その理由は、PZT結晶初期核の形成には、過剰鉛が必要であり、その鉛量をなるべく多くするためである。その後に、PZT膜を結晶化するRTA処理の際には、下部電極と塗布膜との界面近傍にPZT結晶初期核が形成され、下部電極側から上部電極の方向、即ち下から上に向かって結晶化が進行していくものと考えられる。
【0005】
これに対し、PZT膜の膜厚を比較的薄く形成したいという要求がある場合、PZT形成用ゾルゲル溶液の塗布回数を少なくすることが求められる。このような場合、塗布膜中の鉛量が少なくなり、PZT結晶初期核が形成されにくくなるおそれがある。
【0006】
図14は、他の従来のPZT強誘電体膜の結晶成長過程を模式的に示す図である。
(111)に配向したPt膜からなる下部電極101の上に、(100)方向に強く自己配向するLaNiO3(以下、「LNO」という。)膜103を形成する。このLNO膜103上にゾルゲル法によりPZT膜102を塗布し、このPZT膜上に上部電極(図示せず)を形成する。
【0007】
この後、高温で熱処理を行うことにより、PZT膜が結晶化される。この結晶化されたPZT膜102は、下部電極101の(111)配向に従わず、LNO膜103の(100)配向に従うため、(100)に配向される。しかし、LNOは高温加熱時にその組成成分のLaやNiをその上部のPZT膜中に容易に拡散させてしまい、PZTの特性を劣化させるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2006/087777(段落0040〜0043)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一態様は、基板上に形成されたアモルファス膜の結晶化を、基板表面に対して垂直方向(即ち下から上方向)ではなく略平行方向(即ち横方向)に進行させる結晶化膜の製造方法及び結晶化装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、基板上にアモルファス膜を形成し、
前記アモルファス膜にレーザ光を照射してレーザ光照射領域を結晶化し、
前記アモルファス膜に熱処理を施すことにより、前記レーザ光照射領域以外のアモルファス膜を結晶化することを特徴とする結晶化膜の製造方法である。
【0011】
また、本発明の一態様に係る結晶化膜の製造方法において、前記レーザ光照射領域以外のアモルファス膜を結晶化する際は、結晶化されたレーザ光照射領域の初期核から前記基板の表面と略平行方向に結晶化が進行することが好ましい。
【0012】
また、本発明の一態様に係る結晶化膜の製造方法において、前記アモルファス膜はPZTアモルファス膜であり、前記結晶化膜はPZT膜であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の一態様に係る結晶化膜の製造方法において、前記レーザ光照射領域以外のアモルファス膜を結晶化する際は、(110)、(011)及び(101)のいずれかに優先配向するように結晶化することも可能である。
【0014】
また、本発明の一態様に係る結晶化膜の製造方法において、前記レーザ光照射領域以外のアモルファス膜を結晶化する際は、(100)、(010)及び(001)のいずれかに優先配向するように結晶化することも可能である。
【0015】
本発明の一態様は、基板上にアモルファス膜を形成し、
前記基板の一方端側に位置する前記アモルファス膜にランプ光を照射し、前記ランプ光の照射領域を徐々に前記基板の中央側に移動させ、その後、前記ランプ光の照射領域を徐々に前記基板の他方端側に移動させることにより、前記アモルファス膜を結晶化することを特徴とする結晶化膜の製造方法である。
【0016】
本発明の一態様は、基板を移動させる移動機構と、
前記基板が移動する領域の上方に配置されたランプヒータと、
前記移動機構及び前記ランプヒータを制御する制御部と、
を具備し、
前記基板は、その表面にアモルファス膜が形成されていることを特徴とする結晶化装置である。
【0017】
また、本発明の一態様に係る結晶化装置において、前記制御部は、前記移動機構によって前記基板を移動させながら前記ランプヒータによって前記アモルファス膜にランプ光を照射するように制御することにより、前記ランプ光は前記基板の端側に照射された後に前記基板の中央側に照射されることも可能である。
【0018】
また、本発明の一態様に係る結晶化装置において、前記基板が移動する移動領域の上方に配置されたレーザ光照射機構を具備し、前記制御部は、前記レーザ光照射機構によって前記アモルファス膜にレーザ光を照射した後に前記ランプヒータによって前記アモルファス膜にランプ光を照射するように制御することも可能である。
【0019】
また、本発明の一態様に係る結晶化装置において、前記アモルファス膜がPZTアモルファス膜であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、基板上に形成されたアモルファス膜の結晶化を、基板表面に対して垂直方向ではなく略平行方向に進行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態1によるPZT膜の製造方法を説明するための平面図である。
【図2】図1に示す製造方法におけるPZT強誘電体膜の結晶成長過程を模式的に示す図である。
【図3】(A),(B)はサンプル1のPZT膜をXRD回折で結晶性を評価した結果を示す図である。
【図4】(A),(B)はサンプル3のPZT膜をXRD回折で結晶性を評価した結果を示す図である。
【図5】(A),(B)はサンプル4のPZT膜をXRD回折で結晶性を評価した結果を示す図である。
【図6】(A),(B)はサンプル5のPZT膜をXRD回折で結晶性を評価した結果を示す図である。
【図7】(A),(B)はサンプル6のPZT膜をXRD回折で結晶性を評価した結果を示す図である。
【図8】(A),(B)はサンプル7のPZT膜をXRD回折で結晶性を評価した結果を示す図である。
【図9】(A),(B)はサンプル8のPZT膜をXRD回折で結晶性を評価した結果を示す図である。
【図10】(A)は、実施形態2による結晶化装置を模式的に示す正面図であり、(B)は、(A)に示す結晶化装置の平面図である。
【図11】従来のPZT強誘電体膜の結晶成長過程を模式的に示す図である。
【図12】図11に示すPZT膜102及び下部電極101のPt膜をXRD回折で結晶性を評価した結果を示す図である。
【図13】図11に示すPZT膜102及び下部電極101のPt膜を平行ビーム光学系でPt(111)を弱くしPtピークを小さくして結晶性を評価した結果を示す図である。
【図14】他の従来のPZT強誘電体膜の結晶成長過程を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0023】
(実施形態1)
図1は、実施形態1によるPZT膜の製造方法を説明するための平面図である。図2は、図1に示す製造方法におけるPZT強誘電体膜の結晶成長過程を模式的に示す図である。
まず、図1に示すように、基板としてシリコンウエハを用意する。次いで、このシリコンウエハ上に熱酸化法によりシリコン酸化膜を形成し、このシリコン酸化膜上に図2に示すPt膜からなる電極101を形成する。次いで、この電極101上にゾルゲル法によりPZTアモルファス膜1を塗布する。
【0024】
次いで、このPZTアモルファス膜1にレーザ光を照射してレーザ光照射領域1aを結晶化する。これにより、レーザ光照射領域1aには矢印1cの方向に結晶されたPZT結晶初期核1bが形成される。このPZT結晶初期核1bは、レーザ光の強度や出力を調整することで、電極101であるPt膜の(111)配向に拘束されず、異なる配向性を有することが可能となる。
【0025】
次いで、PZTアモルファス膜1を例えば650℃程度の温度に加熱した熱処理を所定時間施すことにより、レーザ光照射領域1a以外のPZTアモルファス膜1を結晶化することができる。この結晶化は、レーザ光照射領域1aに形成されたPZT結晶初期核1bからシリコンウエハの表面と略平行方向(横方向)2に進行され、PZT結晶1dが形成される。
【0026】
上記実施形態によれば、PZTアモルファス膜1にレーザ光を照射してレーザ光照射領域1aにPZT結晶初期核を形成した後に熱処理を施すことにより、PZT結晶初期核からシリコンウエハの表面と略平行方向(横方向)2に結晶化を進行させることができる。このため、横方向2に連続したエピタキシャル成長を実現したPZT膜を形成することができる。従って、PZT膜の電流リークを低減させる効果が期待できる。
【0027】
これに対し、従来のPZT膜の結晶化方法では、レーザ光を照射することなく熱処理を施すことによりPZTアモルファス膜を結晶化しているため、その結晶化はシリコンウエハ表面に対して垂直方向(即ち下から上方向)に進行する。その結果、シリコンウエハ表面に対して略平行方向(横方向)に連続したエピタキシャル成長を実現することができない。従って、従来のPZT膜の結晶化方法では、PZT膜の電流リークを低減させる効果が期待できない。
【0028】
また、本実施形態では、PZTアモルファス膜1にレーザ光を照射してレーザ光照射領域1aにPZT結晶初期核1bを形成するため、PZTアモルファス膜1の厚さを薄くしても、従来のPZT膜の結晶化方法に比べてPZT結晶初期核が形成されにくくなるおそれを低減できる。従って、本実施形態によるPZT膜の製造方法は、PZT膜の膜厚を薄く形成した場合に有利である。
【0029】
また、従来のPZT膜の結晶化方法では、結晶化されたPZT膜は下地の電極の(111)配向に拘束されて(111)にしか優先配向させることができない。これに対し、本実施形態では、PZTアモルファス膜1に照射するレーザ光の強度や出力を比較的強く調整することにより、(110)、(011)及び(101)のいずれかに優先配向させることができ、またPZTアモルファス膜1に照射するレーザ光の強度や出力を比較的弱く調整することにより、(100)、(010)及び(001)のいずれかに優先配向させることができる。(110)、(011)及び(101)のいずれかに優先配向させたPZT膜はSAWデバイスなどに適用することが可能であり、(100)、(010)及び(001)のいずれかに優先配向させたPZT膜は圧電素子などに適用することが可能である。
【0030】
次に、本実施形態による製造方法を用いて製造されたPZT膜のサンプルを8枚作製し、それらのサンプルのPZT膜をXRD回折で結晶性を評価した結果を図3〜図9に示す。
【0031】
<8枚のサンプルの作製方法>
(1)PZTアモルファス膜の作製方法
PZT強誘電体薄膜形成用ゾルゲル溶液としては、三菱マテリアル株式会社製、ブタノールを溶媒とする鉛が15%過剰に添加された、濃度10重量%濃度のE1溶液を用いた。この市販ゾルゲル溶液に、ジメチルアミノエタノールというアルカリ性アルコールを、体積比で、E1ゾルゲル溶液:ジメチルアミノエタノール=7:3の割合で添加したところ、pH=12と強アルカリ性を示した。本溶液を用いて、PZT薄膜のスピンコート形成を行った。スピンコーターはミカサ株式会社製MS-A200を用いて行った。先ず800rpmで5秒、1500rpmで10秒回転させた後、徐々に10秒で3000rpmまで回転を上昇させた後、150℃のホットプレート(アズワン株式会社製セラミックホットプレートAHS-300)上に5min、大気中で放置した後、300℃のホットプレート(同AHS-300)上で5min、同じく大気中で放置した後、室温まで冷却した。これを5回繰り返すことで、15%過剰鉛を含んだ厚さ200nmのPZTアモルファス膜をPt電極薄膜被覆6インチSi基板上に形成した。
【0032】
(2)レーザ光の照射方法
レーザ平面加熱装置(EXLASER)(坂口電熱の商品名)を用いてSi基板の中央に位置するPZTアモルファス膜に表1に示す条件でレーザ光を照射した。なお、表1に示すサンプル2は、追加でレーザ光を照射したときにSi基板が割れた。
【0033】
【表1】
【0034】
(3)熱処理方法
加圧RTAにより120℃/秒の昇温速度で650℃-5min(9.9atm-O2-RTA)で結晶化を行って、PZT薄膜上に厚さ120nmのPt電極を形成し、725℃-5min(9.9atm-O2-RTA)のポストアニールを行った。このようにしてPZT膜のサンプルを作製した。
【0035】
<結晶性を評価した結果>
図3〜図9は、サンプル1、3〜8それぞれのPZT膜をXRD回折で結晶性を評価した結果を示すものであり、(A)はSi基板の中心部(中央)に位置するPZT膜の評価結果であり、(B)はSi基板の端部(外周側)に位置するPZT膜の評価結果である。図3〜図9に示す配向性をまとめたものを表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
サンプル1、3では、それぞれ50W、15秒と300W、10秒のパワーと照射時間でレーザ光を照射したが、これより長い照射時間とするとウエハが割れてしまう。従って、サンプル1、3のレーザ光照射条件は、レーザ光の強度や出力を上限に近くに調整したものであり、その結果、(110)に優先配向させることができた。
【0038】
これに対し、サンプル4、6〜8では、表1に示すように、レーザ光の強度や出力をサンプル1、3に比べて弱く調整したものであり、その結果、(100)に優先配向させることができた。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、アモルファス膜の小面積(例えば点状)の領域にレーザ光を照射してセラミックス結晶初期核を発生させ、その際のレーザ光の強度、出力、時間等でセラミックス結晶初期核の配向性を制御し、その後、ウエハの表面全体を加熱炉で加熱しても、セラミックス結晶初期核の配向性が保持され、ウエハの面内の横方向に結晶化を進行させることができる。従って、大面積の領域を照射するようなレーザ光を必要とせず、ウエハのサイズが大きくても小さくても良く、ウエハのサイズに左右されない量産化技術を確立することができる。
【0040】
(実施形態2)
図10(A)は、実施形態2による結晶化装置を模式的に示す正面図であり、図10(B)は、図10(A)に示す結晶化装置の平面図である。
【0041】
図10に示す結晶化装置は、基板3を矢印のように移動させる移動機構(図示せず)と、この基板3が移動する領域の上方に配置されたランプヒータ4と、基板3が移動する移動領域の上方に配置されたレーザ光照射機構5と、前記移動機構、ランプヒータ4及びレーザ光照射機構5を制御する制御部(図示せず)とを具備している。ランプヒータ4はランプ光を照射するものであり、ランプ光は例えば赤外線である。
【0042】
ランプヒータ4は、基板3が移動する方向に対して長手方向が垂直になるように配置されており、ランプヒータ4の下方を基板3の表面全体が通過するようになっている。
【0043】
次に、この結晶化装置を用いてアモルファス膜を結晶化する方法について説明する。
まず、基板3としてシリコンウエハを用意する。次いで、この基板3上に熱酸化法によりシリコン酸化膜を形成し、このシリコン酸化膜上に電極を形成する。次いで、この電極上にゾルゲル法によりPZTアモルファス膜を塗布する。
【0044】
次いで、PZTアモルファス膜が塗布された基板3を図10に示す結晶化装置に導入する。次いで、前記移動機構によって基板3を移動させ、レーザ光照射機構5によって基板3の端部又はその近傍に位置するPZTアモルファス膜のレーザ光照射領域3aにレーザ光を照射する。これにより、レーザ光照射領域3aにはPZT結晶初期核が形成される。
【0045】
次いで、前記移動機構によって基板3を移動させながら、ランプヒータ4によって基板3の一方端側に位置するPZTアモルファス膜にランプ光を照射し、このランプ光の照射領域を徐々に基板3の中央側に移動させ、その後、ランプ光の照射領域を徐々に基板3の他方端側に移動させる。このようにして基板3のPZTアモルファス膜全体にランプ光が照射されることにより、PZTアモルファス膜を結晶化する。この結晶化は、レーザ光照射領域3aに形成されたPZT結晶初期核から基板3の表面と略平行方向(横方向)に進行する。その結果、横方向に連続したエピタキシャル成長を実現したPZT膜を形成することができる。
【0046】
本実施形態においても実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0047】
なお、本実施形態では、レーザ光を照射した後にランプ光を照射しているが、レーザ光を照射せずにランプ光を照射するだけでPZTアモルファス膜を結晶化することも可能である。この場合は、レーザ光照射機構5が不要となる。
【0048】
詳細には、基板3の一方端側に位置するPZTアモルファス膜にランプ光を照射することにより、基板3の一方端側に位置するPZTアモルファス膜にPZT結晶初期核を形成することができる。そして、ランプ光の照射領域を徐々に基板3の中央側に移動させ、その後、ランプ光の照射領域を徐々に基板3の他方端側に移動させることにより、PZTアモルファス膜を結晶化する。この結晶化は、基板3の一方端側に形成されたPZT結晶初期核から基板3の表面と略平行方向(横方向)に進行する。その結果、横方向に連続したエピタキシャル成長を実現したPZT膜を形成することができる。
【0049】
また、上記実施形態1,2では、PZTアモルファス膜を結晶化することについて説明しているが、PZTアモルファス膜以外のアモルファス膜を、実施形態1,2の製造方法及び結晶化装置によって結晶化することも可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…PZTアモルファス膜
1a…レーザ光照射領域
1b…PZT結晶初期核
1c…矢印
1d…PZT結晶
2…シリコンウエハの表面と略平行方向(横方向)
3…基板
3a…レーザ光照射領域
4…ランプヒータ
5…レーザ光照射機構
101…Pt膜からなる下部電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にアモルファス膜を形成し、
前記アモルファス膜にレーザ光を照射してレーザ光照射領域を結晶化し、
前記アモルファス膜に熱処理を施すことにより、前記レーザ光照射領域以外のアモルファス膜を結晶化することを特徴とする結晶化膜の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記レーザ光照射領域以外のアモルファス膜を結晶化する際は、結晶化されたレーザ光照射領域の初期核から前記基板の表面と略平行方向に結晶化が進行することを特徴とする結晶化膜の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記アモルファス膜はPZTアモルファス膜であり、前記結晶化膜はPZT膜であることを特徴とする結晶化膜の製造方法。
【請求項4】
請求項3において、前記レーザ光照射領域以外のアモルファス膜を結晶化する際は、(110)、(011)及び(101)のいずれかに優先配向するように結晶化することを特徴とする結晶化膜の製造方法。
【請求項5】
請求項3において、前記レーザ光照射領域以外のアモルファス膜を結晶化する際は、(100)、(010)及び(001)のいずれかに優先配向するように結晶化することを特徴とする結晶化膜の製造方法。
【請求項6】
基板上にアモルファス膜を形成し、
前記基板の一方端側に位置する前記アモルファス膜にランプ光を照射し、前記ランプ光の照射領域を徐々に前記基板の中央側に移動させ、その後、前記ランプ光の照射領域を徐々に前記基板の他方端側に移動させることにより、前記アモルファス膜を結晶化することを特徴とする結晶化膜の製造方法。
【請求項7】
基板を移動させる移動機構と、
前記基板が移動する領域の上方に配置されたランプヒータと、
前記移動機構及び前記ランプヒータを制御する制御部と、
を具備し、
前記基板は、その表面にアモルファス膜が形成されていることを特徴とする結晶化装置。
【請求項8】
請求項7において、前記制御部は、前記移動機構によって前記基板を移動させながら前記ランプヒータによって前記アモルファス膜にランプ光を照射するように制御することにより、前記ランプ光は前記基板の端側に照射された後に前記基板の中央側に照射されることを特徴とする結晶化装置。
【請求項9】
請求項7又は8において、前記基板が移動する移動領域の上方に配置されたレーザ光照射機構を具備し、前記制御部は、前記レーザ光照射機構によって前記アモルファス膜にレーザ光を照射した後に前記ランプヒータによって前記アモルファス膜にランプ光を照射するように制御することを特徴とする結晶化装置。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれか一項において、前記アモルファス膜がPZTアモルファス膜であることを特徴とする結晶化装置。
【請求項1】
基板上にアモルファス膜を形成し、
前記アモルファス膜にレーザ光を照射してレーザ光照射領域を結晶化し、
前記アモルファス膜に熱処理を施すことにより、前記レーザ光照射領域以外のアモルファス膜を結晶化することを特徴とする結晶化膜の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記レーザ光照射領域以外のアモルファス膜を結晶化する際は、結晶化されたレーザ光照射領域の初期核から前記基板の表面と略平行方向に結晶化が進行することを特徴とする結晶化膜の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記アモルファス膜はPZTアモルファス膜であり、前記結晶化膜はPZT膜であることを特徴とする結晶化膜の製造方法。
【請求項4】
請求項3において、前記レーザ光照射領域以外のアモルファス膜を結晶化する際は、(110)、(011)及び(101)のいずれかに優先配向するように結晶化することを特徴とする結晶化膜の製造方法。
【請求項5】
請求項3において、前記レーザ光照射領域以外のアモルファス膜を結晶化する際は、(100)、(010)及び(001)のいずれかに優先配向するように結晶化することを特徴とする結晶化膜の製造方法。
【請求項6】
基板上にアモルファス膜を形成し、
前記基板の一方端側に位置する前記アモルファス膜にランプ光を照射し、前記ランプ光の照射領域を徐々に前記基板の中央側に移動させ、その後、前記ランプ光の照射領域を徐々に前記基板の他方端側に移動させることにより、前記アモルファス膜を結晶化することを特徴とする結晶化膜の製造方法。
【請求項7】
基板を移動させる移動機構と、
前記基板が移動する領域の上方に配置されたランプヒータと、
前記移動機構及び前記ランプヒータを制御する制御部と、
を具備し、
前記基板は、その表面にアモルファス膜が形成されていることを特徴とする結晶化装置。
【請求項8】
請求項7において、前記制御部は、前記移動機構によって前記基板を移動させながら前記ランプヒータによって前記アモルファス膜にランプ光を照射するように制御することにより、前記ランプ光は前記基板の端側に照射された後に前記基板の中央側に照射されることを特徴とする結晶化装置。
【請求項9】
請求項7又は8において、前記基板が移動する移動領域の上方に配置されたレーザ光照射機構を具備し、前記制御部は、前記レーザ光照射機構によって前記アモルファス膜にレーザ光を照射した後に前記ランプヒータによって前記アモルファス膜にランプ光を照射するように制御することを特徴とする結晶化装置。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれか一項において、前記アモルファス膜がPZTアモルファス膜であることを特徴とする結晶化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−124441(P2011−124441A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281974(P2009−281974)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(595152438)株式会社ユーテック (59)
【出願人】(591023734)坂口電熱株式会社 (14)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(595152438)株式会社ユーテック (59)
【出願人】(591023734)坂口電熱株式会社 (14)
【Fターム(参考)】
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