説明

自動車の制御装置

【課題】メカニカルポンプによる発生油圧と電動ポンプの発生油圧が共に低い状態で、エンジンが再始動するのを禁止し、ショックの発生を防止できる自動車の制御装置を提供する。
【解決手段】自動停止始動装置付きのエンジン1と、自動変速機2と、エンジンにより駆動され、自動変速機2に油圧を供給するメカニカルポンプ8と、バッテリ27により駆動され、自動変速機2に油圧を供給する電動ポンプ28とを備えた自動車である。エンジン自動停止許可条件を満足した時、電動ポンプ28を駆動するように制御するとともに、エンジン再始動条件を満足した時、エンジン停止または電動ポンプの駆動開始から一定時間αだけエンジン再始動を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車の制御装置、特に自動停止始動装置付きのエンジンと、エンジンにより駆動される自動変速機と、エンジンにより駆動され、上記自動変速機に油圧を供給するメカニカルポンプと、バッテリにより駆動され、上記自動変速機に油圧を供給する電動ポンプとを備えた自動車の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、走行状態から車両が停止した際に、エンジンを自動停止させ、停車中の無駄な燃料消費や排出ガスの発生を抑える自動アイドルストップ制御装置(自動停止始動装置)を備えた自動車が提案されている。自動アイドルストップ制御装置では、エンジンの自動停止を許可する条件を満足すれば、エンジンが自動停止され、エンジンの再始動を許可する条件を満足すれば、エンジンが再始動される。
【0003】
アイドルストップ制御装置を備えた自動車では、エンジンが停止すると、自動変速機に搭載されたメカニカルポンプも止まるため、自動変速機に油圧が供給されなくなる。この状態でエンジンが再始動すると、自動変速機のクラッチに急速に油圧が供給されるため、ショックが発生したり、発進応答性が悪化するという問題がある。
【0004】
特許文献1には、エンジン再始動時のショックを防止するため、メカニカルポンプとは別に電動ポンプを装備することで、アイドルストップ中の自動変速機の油圧を確保する方法が提案されている。この場合、耐久性および消費電力低減のため、エンジン停止中のみ電動ポンプを駆動するのが通例である。
【0005】
しかしながら、エンジンの停止タイミング(メカニカルポンプの油圧発生範囲)と、電動ポンプの作動タイミング(電動ポンプの油圧発生範囲)によっては、自動変速機の必要油圧が確保できない時間が存在する可能性があり、この時間内にエンジンを再始動すると、ショックが発生する。
【0006】
図8はエンジン自動停止時におけるエンジン回転数、発進クラッチの油圧、および電動ポンプの作動の時間変化を示す。
時刻t1 でエンジン自動停止のためにエンジン回転数が降下すると、やや遅れて時刻t2 で発進クラッチの油圧が低下しはじめる。エンジン停止判定時、つまりエンジン回転数がほぼ0rpmになった時点t3 で電動ポンプが駆動され、破線で示すように電動ポンプによる発生油圧が立ち上がり、時刻t10 で発生油圧は定常状態となる。
ところが、図8の斜線Sで示される範囲では、メカニカルポンプによる発生油圧と電動ポンプの発生油圧が共に低く、発進クラッチはほぼ解放された状態にある。このような油圧の低い状態でエンジンが再始動すると、メカニカルポンプによってクラッチ係合油圧が一気に立ち上がるため、変速ショックを誘発するという問題がある。
【0007】
特許文献2では、自動変速機の油圧を検出する油圧センサを設け、走行レンジが選択され、かつ油圧センサの検出値が所定値未満のとき、アイドルストップからの復帰(エンジン再始動)を禁止する技術が提案されている。
この技術は、電動ポンプが故障して油圧不足になっている状態でのエンジン再始動を防止するものであるが、上述のようなメカニカルポンプによる発生油圧と電動ポンプの発生油圧が共に低い状態でエンジンが再始動した場合においても、ショックの発生を防止することが可能である。しかし、油圧センサを備えていない車両には適用できない。
【特許文献1】特開平8−14076号公報
【特許文献2】特開2003−286873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、メカニカルポンプによる発生油圧と電動ポンプの発生油圧が共に低い状態で、エンジンが再始動するのを禁止し、ショックの発生を防止できる自動車の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、請求項1または2に係る発明により達成される。
請求項1に係る発明は、自動停止始動装置付きのエンジンと、エンジンにより駆動される自動変速機と、エンジンにより駆動され、上記自動変速機に油圧を供給するメカニカルポンプと、バッテリにより駆動され、上記自動変速機に油圧を供給する電動ポンプとを備えた自動車において、前進走行レンジであって、かつ上記エンジン自動停止許可条件を満足してエンジンが停止した時、上記電動ポンプを駆動するように制御する電動ポンプ制御手段と、上記エンジン再始動条件を満足し、かつエンジン停止から一定時間が経過するまでの間、エンジン再始動を禁止するエンジン再始動禁止手段と、を設けたことを特徴とする自動車の制御装置である。
【0010】
請求項2に係る発明は、自動停止始動装置付きのエンジンと、エンジンにより駆動される自動変速機と、エンジンにより駆動され、上記自動変速機に油圧を供給するメカニカルポンプと、バッテリにより駆動され、上記自動変速機に油圧を供給する電動ポンプとを備え、上記自動停止始動装置はエンジン自動停止許可条件を満足した時にエンジンを停止し、エンジン再始動条件を満足した時にエンジンを再始動するように制御する自動車において、前進走行レンジであって、かつ上記エンジン自動停止許可条件を満足してエンジン回転数が所定回転数以下になった時、上記電動ポンプを駆動するように制御する電動ポンプ制御手段と、上記エンジン再始動条件を満足し、かつ電動ポンプの駆動開始から一定時間が経過するまでの間、エンジン再始動を禁止するエンジン再始動禁止手段と、を設けたことを特徴とする自動車の制御装置である。
【0011】
シフト位置が前進走行レンジであって、エンジンの自動停止許可条件を満足すれば、エンジンが自動停止され、エンジン回転数が低下するとともに、メカニカルポンプによって発生した自動変速機の油圧も低下する。そして、エンジン停止判定(エンジン回転数≒0rpm)がされた時点で、電動ポンプが駆動され、遅れて油圧が発生する。このようなメカニカルポンプによる発生油圧と電動ポンプによる発生油圧が共に低い状態で、エンジンの再始動許可条件を満足すると、エンジンが即座に再始動され、変速ショックが発生する。そこで、本発明では、エンジン停止判定と電動ポンプの駆動時間とから油圧低下状態を推定し、油圧が低い状態ではエンジン再始動条件を満足しても、エンジン停止から一定時間だけエンジン再始動を禁止する。この一定時間は、例えば電動ポンプによる発生油圧が定常状態になるまでの時間を基準にして設定することができる。
【0012】
このようにエンジン再始動を禁止している間に、電動ポンプによる発生油圧が定常状態まで上昇するので、禁止期間を経過した後にエンジン再始動を開始し、メカニカルポンプによる発生油圧が立ち上がっても、発進クラッチには既に油圧が供給された状態にあり、変速ショックを誘発することがない。また、油圧の過渡状態での変速を禁止することで、エンジン自動停止からの変速時に油圧を一気に切り替えることができるため、結果としてタイムラグを短縮することができる。
【0013】
請求項1のように、エンジンが停止してから電動ポンプの駆動を開始してもよいが、請求項2のように、エンジンの自動停止許可条件を満足し、かつエンジン回転数が所定回転数以下になった時に電動ポンプの駆動を開始し、その後でエンジン再始動条件を満足した時、電動ポンプの駆動開始から一定時間だけエンジン再始動を禁止してもよい。
つまり、エンジン停止を待つことなく、電動ポンプの駆動を開始することで、電動ポンプの駆動開始を早くし、メカニカルポンプによる発生油圧と電動ポンプによる発生油圧が共に低い期間を短くすることができる。そして、エンジン再始動禁止期間を、電動ポンプの駆動開始から一定時間としているので、変速ショックの発生を防止できると同時に、エンジン再始動禁止期間を実質的に短縮できる。
【0014】
本発明において、エンジン再始動時に油圧が供給される自動変速機のクラッチ、つまり発進用クラッチとは、発進のために変速段を構成する係合要素のことであり、通常は1速段を構成する係合要素であるが、2速発進する場合には2速段を構成する係合要素である。特に、油圧制御可能な係合要素を指す。
【発明の効果】
【0015】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、エンジンの自動停止時に電動ポンプを駆動するように制御するとともに、エンジンの自動停止中にエンジン再始動条件を満足した時、エンジン自動停止または電動ポンプの駆動開始から一定時間だけエンジン再始動を禁止するようにしたので、禁止期間を経過した後にエンジン再始動を開始し、メカニカルポンプによる発生油圧が立ち上がっても、発進クラッチには電動ポンプにより既に油圧が供給された状態にあり、変速ショックの発生を防止できる。しかも、時間制御でエンジン再始動を禁止しているので、油圧センサを備えていない車両にも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態を、実施例を参照して説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は本発明にかかる自動車の一例であるハイブリッド車のシステム構成を示す。
エンジン1の出力軸と自動変速機2の入力軸との間にモータジェネレータ7が設けられ、自動変速機2の出力軸5は駆動輪(図示せず)と接続されている。この例の自動変速機2は、トルクコンバータ3と、遊星歯車装置11および複数の摩擦係合要素C1〜C3,B1,B2を持つ変速機構4と、油圧制御装置6とを備えた有段式の自動変速機である。
【0018】
エンジン1はエンジン制御用コントローラ20によって制御され、自動変速機2はAT制御用コントローラ21によって制御され、モータジェネレータ7はモータ制御用コントローラ22によって制御される。各コントローラ20,21,22にはそれぞれ各種センサから信号が入力され、かつ相互に通信用バス23で接続されている。入力信号には、車速信号、スロットル開度(アクセル開度)信号、シフト位置信号、エアコン信号、イグニッション信号、アイドル信号、エンジン水温信号、吸入空気量信号、エンジン回転数信号、タービン回転数信号、スタート信号、ブレーキ信号、バッテリ容量などがある。
【0019】
エンジン制御用コントローラ20は、走行状態から車両が停止した際に、エンジン1を自動停止させ、停車中の無駄な燃料消費や排出ガスの発生を抑える自動アイドルストップ制御(自動停止始動制御)を実施する。
エンジン1の自動停止許可条件としては、一般にシフト位置がPであること、シフト位置がNまたはD位置でかつブレーキがONであることなどがある。本発明では、走行中であってもエンジンを自動停止させる場合を対象としており、シフト位置がD,Lなどの前進走行レンジで、ブレーキがONで、かつアクセルOFF状態の時にエンジンの自動停止(アイドルストップ)を行う。ただし、エンジン水温が低いとき、後述するバッテリ27の容量が少ないとき、電気負荷が大きいとき、アクセルペダルが踏まれているときなどの場合には、自動停止を許可しない。
一方、エンジン1の再始動条件(自動停止解除条件)としては、一般にブレーキがOFFになったこと、シフト位置をP,N,D以外の位置にシフトしたこと、もしくはシフト位置をN→DまたはLにシフトしたこと、アクセルペダルを踏んだこと、車速信号の入力があったことなどがある。本発明では、上記の3つの自動停止条件のいずれ1つでも外れたときに再始動を許可する。
【0020】
AT制御用コントローラ21は周知のように、走行状態に応じて予め設定された変速マップに従って変速段を決定し、油圧制御装置6に内蔵されたソレノイドバルブ24〜26を制御することによって、摩擦係合要素C1〜C3,B1,B2に選択的に油圧を供給し、決定された変速段へ変速する。この実施例では油圧制御装置6に変速制御用の3個のソレノイドバルブ24〜26を設けたが、この他にロックアップクラッチ制御用やライン圧制御用などのソレノイドバルブを設けてもよい。
【0021】
モータ制御用コントローラ22にはバッテリ27が接続され、適時モータジェネレータ7を駆動すると同時に、モータジェネレータ7の回生エネルギーをバッテリ27に蓄えるようになっている。モータ駆動用バッテリ27の他に、電動ポンプ駆動用バッテリ29が設けられており、このバッテリ29は、エンジン1の自動停止中に自動変速機2の油圧制御装置4へ油圧を供給するための電動ポンプ28と接続されている。電動ポンプ28はAT制御用コントローラ21によって制御される。
【0022】
図2は自動変速機2の変速機構4の一例を示す。
変速機構4は、トルクコンバータ3を介してエンジン動力が伝達されるタービン軸10、摩擦係合要素である3個のクラッチC1〜C3および2個のブレーキB1,B2、ワンウエイクラッチF、ラビニヨウ型遊星歯車装置11、差動装置14などを備えている。なお、自動変速機2には、トルクコンバータ3のポンプインペラと連結されたメカニカルポンプ8が設けられ、このメカニカルポンプ8の発生油圧は油圧制御装置6へ供給されている。
【0023】
遊星歯車装置11のフォワードサンギヤ11aとタービン軸10とはC1クラッチを介して連結されており、リヤサンギヤ11bとタービン軸10とはC2クラッチを介して連結されている。キャリヤ11cはセンターシャフト15と連結され、センターシャフト15はC3クラッチを介してタービン軸10と連結されている。また、キャリヤ11cはB2ブレーキとキャリヤ11cの正転(エンジン回転方向)のみを許容するワンウェイクラッチFとを介して変速機ケース16に連結されている。キャリヤ11cは2種類のピニオンギヤ11d,11eを支持しており、フォワードサンギヤ11aは軸長の長いロングピニオン11dと噛み合い、リヤサンギヤ11bは軸長の短いショートピニオン11eを介してロングピニオン11dと噛み合っている。ロングピニオン11dのみと噛み合うリングギヤ11fは出力ギヤ12に結合されている。出力ギヤ12は中間軸13を介して差動装置14と接続されている。
【0024】
変速機構4は、クラッチC1,C2,C3、ブレーキB1,B2およびワンウェイクラッチFの作動によって、図3のように前進4段、後退1段の変速段を実現している。図3において、●は油圧の作用状態を示している。なお、B2ブレーキは後退時とLレンジの第1速時に係合する。また、図3にはソレノイドバルブ(SOL1〜SOL3)24〜26の作動状態も示されている。○は通電状態、×は非通電状態を示す。なお、この作動表は定常状態の作動を示している。
Dレンジの1速段で係合されるクラッチC2がDレンジにおける発進用クラッチであり、Rレンジで係合されるB2ブレーキがRレンジにおける発進用クラッチとなる。
【0025】
第1ソレノイドバルブ24はB1ブレーキ制御用であり、第2ソレノイドバルブ25はC2クラッチ制御用であり、第3ソレノイドバルブ26はC3クラッチ制御用とB2ブレーキ制御用とを兼ねている。第3ソレノイドバルブ26がC3クラッチ制御用とB2ブレーキ制御用とを兼ねる理由は、B2ブレーキはDレンジでは作動せず、Lレンジのエンジンブレーキ制御とRレンジの過渡制御でのみ使用されるので、Dレンジで作動されるC3クラッチと干渉しないからである。第1〜第3ソレノイドバルブ24〜26は微妙な油圧制御を行なう必要があるため、デューティソレノイドバルブまたはリニアソレノイドバルブを用いるのが良い。
【0026】
図4は本発明における制御方法の一例のタイムチャートを示す。この制御は、エンジン運転中にエンジン自動停止を許可する条件が満たされた場合の発進クラッチの油圧(C2圧)、電動ポンプ28、およびエンジン再始動禁止信号との関係を示す。
時刻t1 でエンジン自動停止許可条件を満足すると、エンジン回転数が低下し始め、時刻t2 でメカニカルポンプ8によるC2圧が実線で示すように低下しはじめる。時刻t3 でエンジン回転数がほぼ0になると、電動ポンプ28が駆動され、電動ポンプ28によるC2圧は破線で示すように立ち上がる。時刻t3 からαの期間中だけエンジンの再始動が禁止される。つまり、メカニカルポンプ8による発生油圧と電動ポンプ28による発生油圧が共に低い斜線領域Sの間、エンジンの再始動を禁止している。そのため、この期間内にエンジン再始動条件を満足しても、エンジンは再始動されない。
時刻t4 でエンジン再始動禁止期間が終了する。そのため、その後の時刻t5 でエンジン再始動条件を満足すれば、エンジン回転数が上昇し、遅れて時刻t6 でメカニカルポンプ8によるC2圧が上昇し、C2圧が十分に立ち上がった後の時刻t7 で電動ポンプ28を停止する。エンジンが再始動した時(t5 )、発進クラッチC2には既に電動ポンプ28による油圧が供給されているので、トルクコンバータ3のタービンは発進用クラッチC2を介して駆動輪に連結された状態にあり、タービン回転の持ち上げショックが発生せず、直ぐに発進可能である。
【0027】
エンジン1の再始動の禁止期間αは、メカニカルポンプ8による発生油圧と電動ポンプ28による発生油圧が共に低い斜線領域Sを含むように決定され、暖機状態で電動ポンプ28の駆動開始から発生油圧が定常状態になるまでの時間に基づいて決定される。アイドルストップ制御は、油温が高い状態で実施されるので、電動ポンプ28による発生油圧の立ち上がりは速く、禁止期間αは数十〜数百msec程度の短時間とすることができる。
上記のように、エンジン回転が上昇している途中に発進用クラッチC2を徐々に係合させる必要がないので、複雑な制御を必要としない。また、エンジンが停止した状態で発進クラッチC2が係合されているので、クラッチC2を即座に締結してもショックが発生せず、クラッチ係合時間を短縮できる。そのため、アイドルストップ状態から走行状態へ円滑かつ迅速に移行できる。さらに、クラッチC2をすべり制御する必要がないので、クラッチ摩耗を低減できるという効果がある。
【0028】
図5は図4に示す制御方法を実施するためのフローチャートを示す。
スタートすると、エンジン停止判定を行う(ステップS1)。エンジン停止判定でエンジンが運転中であると判定された場合には、電動ポンプを停止した状態で制御を終了する(ステップS2)。エンジン停止判定でエンジンが停止していると判定された場合には、電動ポンプを駆動し(ステップS3)、続いて電動ポンプの駆動時間を設定値αと比較する(ステップS4)。電動ポンプの駆動時間が設定値α以下であれば、エンジン再始動の禁止期間中であるため、エンジンの再始動を禁止する(ステップS5)。一方、電動ポンプの駆動時間が設定値αより長ければ、エンジン再始動の禁止期間が終了しているため、エンジンの再始動を許可する(ステップS6)。
【実施例2】
【0029】
図6,図7は、本発明における制御方法の他の例のタイムチャートを示す。この制御では、エンジン自動停止時に、電動ポンプ28の駆動開始をエンジン回転数がほぼ0まで低下する前に行う例を示す。
図4,図5ではエンジン停止判定(エンジン回転数≒0rpm)によって電動ポンプ28の駆動を開始したが、図6,図7ではエンジン回転数を所定回転数N0 と比較(ステップS7)し、時刻t8 で所定回転数N0 以下になった時に電動ポンプ28の駆動を開始している。所定回転数N0 とは、例えばメカニカルポンプ8による発生油圧が発進クラッチC2が締結状態を維持できる最低油圧まで降下した時のエンジン回転数にほぼ相当する。
この場合には、エンジン停止判定(t3 )を待つことなく、いち早く電動ポンプ28の駆動を開始(t8 )することができる。そのため、メカニカルポンプ8による発生油圧と電動ポンプ28による発生油圧が共に低い領域Sを短くでき、変速ショックの発生を防止できると同時に、エンジン再始動を禁止している実質的な禁止期間(α−β,β:t8 〜t3 の期間)を短縮できる。
【0030】
本発明は上記実施例に限定されるものではない。
上記実施例では、エンジン1および自動変速機2の他にモータジェネレータ7を備えたハイブリッド車について説明したが、エンジンと自動変速機とを備えた一般車両にも適用できる。この場合、電動ポンプを駆動するバッテリは、電動ポンプ専用のバッテリである必要はなく、エンジン始動に用いられる通常の車載用バッテリでもよい。
本発明の自動変速機とは、遊星歯車装置と摩擦係合要素とを持つ有段式変速機のほか、無段変速機を含む。有段式の自動変速機の場合、図2に示すような前進4段、後退1段の変速機に限らないことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一例であるハイブリッド自動車のシステム構成図である。
【図2】図1に示すハイブリッド車に用いられる自動変速機の変速機構図である。
【図3】図2に示す変速機構の各摩擦係合要素およびソレノイドバルブの作動表である。
【図4】本発明にかかる制御方法によるエンジン回転数、クラッチ圧、電動ポンプの作動およびエンジン再始動禁止信号の一例のタイムチャート図である。
【図5】本発明にかかる制御方法の一例のフローチャート図である。
【図6】本発明にかかる制御方法によるエンジン回転数、クラッチ圧、電動ポンプの作動およびエンジン再始動禁止信号の他の例のタイムチャート図である。
【図7】本発明にかかる制御方法の他の例のフローチャート図である。
【図8】従来の制御方法によるエンジン回転数、クラッチ圧、電動ポンプの作動の例のタイムチャート図である。
【符号の説明】
【0032】
1 エンジン
2 自動変速機
3 トルクコンバータ
7 モータジェネレータ
8 メカニカルポンプ
20 エンジン制御用コントローラ
21 AT制御用コントローラ
22 モータ制御用コントローラ
27 モータ駆動用バッテリ
28 電動ポンプ
29 ポンプ駆動用バッテリ
C2 発進用クラッチ(Dレンジ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動停止始動装置付きのエンジンと、エンジンにより駆動される自動変速機と、エンジンにより駆動され、上記自動変速機に油圧を供給するメカニカルポンプと、バッテリにより駆動され、上記自動変速機に油圧を供給する電動ポンプとを備え、上記自動停止始動装置はエンジン自動停止許可条件を満足した時にエンジンを停止し、エンジン再始動条件を満足した時にエンジンを再始動するように制御する自動車において、
前進走行レンジであって、かつ上記エンジン自動停止許可条件を満足してエンジンが停止した時、上記電動ポンプを駆動するように制御する電動ポンプ制御手段と、
上記エンジン再始動条件を満足し、かつエンジン停止から一定時間が経過するまでの間、エンジン再始動を禁止するエンジン再始動禁止手段と、を設けたことを特徴とする自動車の制御装置。
【請求項2】
自動停止始動装置付きのエンジンと、エンジンにより駆動される自動変速機と、エンジンにより駆動され、上記自動変速機に油圧を供給するメカニカルポンプと、バッテリにより駆動され、上記自動変速機に油圧を供給する電動ポンプとを備え、上記自動停止始動装置はエンジン自動停止許可条件を満足した時にエンジンを停止し、エンジン再始動条件を満足した時にエンジンを再始動するように制御する自動車において、
前進走行レンジであって、かつ上記エンジン自動停止許可条件を満足してエンジン回転数が所定回転数以下になった時、上記電動ポンプを駆動するように制御する電動ポンプ制御手段と、
上記エンジン再始動条件を満足し、かつ電動ポンプの駆動開始から一定時間が経過するまでの間、エンジン再始動を禁止するエンジン再始動禁止手段と、を設けたことを特徴とする自動車の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−23978(P2007−23978A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210738(P2005−210738)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】