説明

薄膜トランジスタの製造方法

【課題】 蒸着リフトオフという高価な工程を使用せずに、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の位置合わせ精度を向上させ、ゲート電極に対するソース電極およびドレイン電極の重なりを小さい薄膜トランジスタ製造方法の提供。
【解決手段】本発明の薄膜トランジスタの製造方法は、透明絶縁基板上にゲート電極を形成する工程と、前記透明絶縁基板と前記ゲート電極を覆うようにゲート絶縁膜を形成する工程と、半導体層を形成する工程と、レジストを塗布する工程と、裏露光によって前記ゲート電極に自己整合したレジストパターンを形成する工程と、ソース電極とドレイン電極を形成する工程と、レジストを除去する工程とを少なくとも有する薄膜トランジスタの製造方法であって、前記ソース電極とドレイン電極を形成する工程が、金属ナノ粒子を含む液体を塗布する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜トランジスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体自体を基板としたトランジスタや集積回路などの技術を基礎として、ガラス基板上にアモルファスシリコンやポリシリコンなどを成膜した薄膜トランジスタ(TFT)が製造され、液晶ディスプレイや電子ブックに応用されている。このような薄膜トランジスタにおいては、アモルファスシリコン等を400〜500度程度の比較的低い成膜温度で成膜できることにより、基板として石英よりも融点の低い安価なガラスが使用されている。
また、電子ペーパーやRFIDタグなどに対応させるため、フレキシブル化、低コスト化、さらに軽量化などの観点から、電子回路を形成する薄膜トランジスタをフレキシブル基板上に形成する、有機半導体を用いたデバイスの開発が行われている。
この有機半導体や酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタにおいては、成膜温度を室温から200度程度に低減できることから、プラスチック基板を用いた薄膜トランジスタが製造可能になり、軽量かつフレキシブルな論理回路の製造が期待されている。
【0003】
一般に、有機半導体をデバイスの構成として用いる場合、液体でのプロセスが可能となるため、大面積化、印刷法の適用、さらにプラスチック基板の利用が可能となり、フレキシブル化、低コスト化及び軽量化の目的を達成できる利点がある(例えば、非特許文献1)。また、低コスト化やフレキシブル化を実現する上においては、半導体のみでなく、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極やゲート絶縁膜も印刷法などにより形成されることが望ましい。
また、印刷法を用いた電極の形成においては、導電性高分子や金属コロイド溶液などを用いた電極パターンの形成に関する開発も行われている(非特許文献2)。
【0004】
例えば、図9に示すように、プラスチックからなる基板1の上面に長方形状のゲート電極2が形成され、その上にゲート絶縁膜3を挟んでソース電極4およびドレイン電極5が形成され、さらにその上に有機半導体6が形成された薄膜トランジスタ40が知られている。このような薄膜トランジスタ40においては、ソース電極4とドレイン電極5がスクリーン印刷によって形成される。一般に、スクリーン印刷においては、ソース電極4とドレイン電極5およびゲート電極2の位置合わせ精度が悪いことを考慮し、電極の重なりが大きく設計される。そのため、電極間の静電容量が大きく、薄膜トランジスタの応答速度が悪くなる虞があった。
【0005】
このような問題を解決する方法として、透明絶縁基板上にゲート電極が形成され、その上にゲート絶縁膜が形成され、さらにその上にフォトレジストが塗布された後、裏露光によってゲート電極に自己整合したレジストパターンを残し、ソース電極とドレイン電極が形成される位置とレジストパターンを覆うように蒸着した後、レジストパターンをその上の蒸着物ごとリフトオフしてソース電極とドレイン電極を形成し、ゲート電極に対するソース電極およびドレイン電極の位置合わせ精度を向上させる方法がある(非特許文献3)。
ところが、このような方法においては、蒸着という真空プロセスが必要であり、生産コストが上がるという問題があった。また、レジストパターンを逆テーパ状に形成しないと、ソース電極やドレイン電極となる膜と除去する膜が連結してしまい、リフトオフが困難になるという問題があった。
【非特許文献1】Science vo1.265、1684(1994)
【非特許文献2】Thin Solid Films Vol.438、279(2003)
【非特許文献3】Japanese Journal of Applied Physics Vol.43,No.4B,2323(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、蒸着やリフトオフという高価な工程を使用せずに、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の位置合わせ精度を向上させ、ゲート電極に対するソース電極およびドレイン電極の重なりを小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
本発明の薄膜トランジスタの製造方法は、透明絶縁基板上にゲート電極を形成する工程と、前記透明絶縁基板と前記ゲート電極を覆うようにゲート絶縁膜を形成する工程と、半導体層を形成する工程と、レジストを塗布する工程と、裏露光によって前記ゲート電極に自己整合したレジストパターンを形成する工程と、ソース電極とドレイン電極を形成する工程と、レジストを除去する工程とを少なくとも有する薄膜トランジスタの製造方法であって、前記ソース電極とドレイン電極を形成する工程が、金属ナノ粒子を含む液体を塗布する工程を含むことを特徴とする。
【0008】
かかる方法によれば、裏露光した際にゲート電極が遮光部として作用するため、ゲート電極で遮光される部分のレジストがゲート電極と平面視的配置において同一の形状になり、露光された部分のレジストを除去することによって、ゲート電極に精度良く位置合わせされたレジストが形成される。このレジストに金属ナノ粒子を含む液体を塗布することにより、この液体がゲート絶縁膜上に流出し、レジストの端面を一端面とするソース電極とドレイン電極がゲート絶縁膜上に形成される。これにより、ソース電極とドレイン電極の一端面はゲート電極の端面と同位置に精度良く形成されることになる。
【0009】
本発明の薄膜トランジスタの製造方法は、前記ソース電極と前記ドレイン電極を形成する工程が、フレキソ印刷する工程を含むことが好ましい。
また、本発明の薄膜トランジスタの製造方法は、前記裏露光によってソース電極形成部とドレイン電極形成部とを作成する工程と、前記ソース電極形成部と前記ドレイン電極形成部に前記金属ナノ粒子を含む液体を塗布する工程とを含むことを特徴とする。
かかる方法によれば、表露光を使用せずに、裏露光のみでソース電極形成部とドレイン電極形成部とを製造することができる。
【0010】
本発明の薄膜トランジスタの製造方法は、前記金属ナノ粒子を含む液体を塗布する工程が、ディスペンス工程またはインクジェット工程であることが好ましい。
また、本発明の薄膜トランジスタの製造方法は、前記金属ナノ粒子を含む液体の溶媒の主成分が水であることを特徴とする。
かかる方法によれば、レジスト上に塗布された金属ナノ粒子を含む液体がより確実にゲート絶縁膜上に流出する。この場合、疎水性のレジストを用いることが好ましい。
【0011】
本発明の薄膜トランジスタの製造方法は、ソース電極形成部とドレイン電極形成部との境界部分にレジストパターンを形成し、その上から前記金属ナノ粒子を含む液体を前記ソース電極形成部と前記ドレイン電極形成部を含むように塗布し、前記レジストパターンの前記液体を弾く力を利用して前記液体を前記ソース電極形成部と前記ドレイン電極形成部に区分けしてソース電極とドレイン電極を形成することを特徴とする。
かかる方法によれば、レジストパターン上に塗布された金属ナノ粒子を含む液体がより確実にソース電極形成部とドレイン電極形成部に流出し、ソース電極とドレイン電極を形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明の薄膜トランジスタの製造方法によれば、裏露光した際にゲート電極が遮光部として作用するため、ゲート電極で遮光される部分のレジストがゲート電極と平面視的配置においてほぼ同一の形状になり、露光された部分のレジストを除去することによって、ゲート電極に精度良く位置合わせされたレジストが形成される。このレジストを含む試料上に金属ナノ粒子を含む液体を塗布することにより、この液体がゲート絶縁膜上に流出し、レジストの端面を一端面とするソース電極とドレイン電極がゲート絶縁膜上に形成される。これにより、ソース電極とドレイン電極の一端面はゲート電極の端面と同位置に精度良く形成することができる。
また、蒸着のような高コストなプロセスを用いずに、しかも、レジストを逆テーパ形状にしなくても、蒸着リフトオフと同様にゲートに自己整合したソース電極およびドレイン電極を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図1〜8を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、以下に使用する図面においては、説明を分かり易くするために縮尺は実際のものと異ならせてある。
【0014】
(第1の実施形態)
図1の薄膜トランジスタを製造するための本発明の第1の実施形態を、以下に説明する。
尚、図1の薄膜トランジスタ30は、透明絶縁基板1の上面に長方形状のゲート電極2が形成され、絶縁基板1とゲート電極2がゲート絶縁膜3で覆われている。ゲート絶縁膜3の上面には、長方形状のソース電極4およびドレイン電極5が形成され、ソース電極4とドレイン電極5の間隙が半導体層6で覆われている。
【0015】
図2に示すように、第1の実施形態の製造方法は、透明絶縁基板1の上面に長方形状のゲート電極2を形成し(図2(a))、透明絶縁基板1とゲート電極2を覆うようにゲート絶縁膜3を形成し、ゲート絶縁膜3の上面にポジレジスト20を形成する(図2(b))。ここで、透明絶縁基板1の背面側からの露光(裏露光)(図2(c))および現像によって、ゲート電極2に自己整合したレジストパターン21を残す(図2(d))。
次に、金属ナノ粒子を含有する液体を、ソース電極形成部4aとチャネル部8とドレイン電極形成部5aを包含するパターンを用いてフレキソ印刷すると、液体はレジストパターン21に弾かれてゲート絶縁層上に流出する(図2(e))。ここで、低温(100℃程度)で仮焼成してソース電極4とドレイン電極5を仮形成した後、剥離液に浸けてレジストパターン21を除去する(図2(f))。その後、150℃程度の本焼成を行うことにより、ソース電極4とドレイン電極5を低抵抗化する。最後に、半導体層6を形成する(図2(g))。
【0016】
尚、レジストパターン21の形状(順テーパまたは逆テーパ)や幅の広狭などは、露光条件や現像条件によって制御することが可能である。
本発明の製造方法では、レジストパターン21が順テーパであってもソース電極およびドレイン電極を形成できる。
ソース電極形成部とはソース電極が形成される領域であり、ドレイン電極形成部とはドレイン電極が形成される領域である。また、チャネル部とは、平面視的配置においてソース電極4とドレイン電極5の間の領域であって、半導体層が形成される領域である。
【0017】
(第2の実施形態)
図1の薄膜トランジスタを製造するための本発明の第2の実施形態を、以下に説明する。
図3に示すように、第2の実施形態の製造方法は、透明絶縁基板1の上面に長方形状のゲート電極2を形成し(図3(a))、透明絶縁基板1とゲート電極2を覆うようにゲート絶縁膜3を形成し、ゲート絶縁膜3の上面にポジレジスト20を形成する(図3(b))。ここで、マスク10を用いた表パターン露光とマスク11を用いた裏パターン露光(図3(c))および現像によって、ゲート電極2に自己整合したレジストパターン21およびソース電極形成部4aとドレイン電極形成部5aを囲うレジストパターン22,23を残す(図3(d))。
【0018】
このように露光するためには、裏露光としては、ゲート電極2を遮光部として露光する。これにより、平面視的配置においてゲート電極2と同一形状のレジストパターン21を形成する。また、表露光によるレジストパターン22,23の形成を阻害しないように、表露光のマスク10の遮光部13より若干大きな遮光部14を有するマスク11を用いる。表露光としては、ソース電極形成部4aとドレイン電極形成部5aを囲うレジストパターン22,23を形成するようにマスク10に遮光部13を形成しておく。また、裏露光によるレジストパターン21の形成を阻害しないように、ゲート電極2を囲うとともにゲート電極2より若干大きな遮光部13を有するマスク10を用いる。
【0019】
続いて、ソース電極形成部4aとドレイン電極形成部5aに、金属ナノ粒子を含有する液体をディスペンサ等によって塗布する。このとき、液体がレジストパターン21上に塗布されることがあっても、レジストパターン21に弾かれてソース電極形成部4aとドレイン電極形成部5aに分離する(図3(e))。ここで、低温(100℃程度)で金属ナノ粒子を含む液体を仮焼成してソース電極4とドレイン電極5を仮形成した後、剥離液に浸けてレジストパターン21〜23を除去する(図3(f))。その後、150℃程度の本焼成を行うことにより、ソース電極4とドレイン電極5を低抵抗化する。最後に、半導体層6を形成する(図3(g))。
【0020】
尚、レジストパターン21の形状(順テーパまたは逆テーパ)や幅の広狭などは、露光条件や現像条件によって制御することが可能である。
また、レジストパターン22,23は、表露光パターンで形成する方が精度良く形成できるが、裏露光の遮光部のみで形成してもよい。
【0021】
(第3の実施形態)
図4の薄膜トランジスタを製造するための本発明の第3の実施形態を、以下に説明する。
尚、図4の薄膜トランジスタ31は、透明絶縁基板1の上面にゲート電極2およびゲート配線7が形成され、透明絶縁基板1とゲート電極2とゲート配線7がゲート絶縁膜3で覆われている。ゲート絶縁膜3の上面には、半導体層6が形成され、半導体層6の上面には、ソース電極4およびドレイン電極5が形成されている。ソース電極4は円形に形成され、ドレイン電極5は、長方形の中心を円形にくり抜いた形状に形成されている。ゲート電極2は、等幅リング状に形成され、外周円上の一部にゲート配線7が連結されている。平面視的配置において、ソース電極4とドレイン電極5の間にゲート電極2が形成されているとともに、各電極の中心位置は略一致するように形成されている。
【0022】
図5に示すように、第3の実施形態の製造方法は、透明絶縁基板1の上面に、等幅リング状のゲート電極2およびゲート配線7を形成し(図5(a))、透明絶縁基板1とゲート電極2とゲート配線7を覆うようにゲート絶縁膜3を形成する。また、ゲート絶縁膜3の上面には半導体層6とポジレジスト20を順次形成する(図5(b))。次に、マスク10を用いた表パターン露光と裏露光(図5(c))および現像によって、ゲート配線上のポジレジストを除去し、ゲート電極2に自己整合したレジストパターン21のみを残す(図5(d))。
【0023】
このように露光するためには、裏露光としては、ゲート電極2を遮光部として露光する。これにより、平面視的配置においてゲート電極2と同一形状のレジストパターン21を形成する。また、表露光としては、裏露光によるレジストパターン21の形成を阻害しないように、ゲート電極2を囲うとともにゲート電極2より若干大きな遮光部13を有するマスク10を用いる。
【0024】
次に、金属ナノ粒子を含有する液体を、ソース電極形成部4aとチャネル部8とドレイン電極形成部5aを包含するパターンを用いてフレキソ印刷すると、液体はレジストパターン21に弾かれてソース電極形成部4aとドレイン電極形成部5aに分離する(図5(e))。ここで、低温(100℃程度)で仮焼成してソース電極4とドレイン電極5を仮形成した後、剥離液に浸けてレジストパターン21を除去する(図5(f))。その後、150℃程度の本焼成を行うことにより、ソース電極4とドレイン電極5を低抵抗化する。
尚、レジストパターン21の形状(順テーパまたは逆テーパ)や幅の広狭などは、露光条件や現像条件によって制御することが可能である。
【0025】
(第4の実施形態)
図4の薄膜トランジスタを製造するための本発明の第4の実施形態を、以下に説明する。
図6に示すように、透明絶縁基板1の上面に、等幅リング状のゲート電極2およびゲート配線7を形成し(図6(a))、その上にゲート絶縁膜3、半導体層6およびポジレジスト20を順次形成する(図6(b))。ここで、マスク10を用いた表パターン露光とマスク11を用いた裏パターン露光(図6(c))および現像によって、ゲート電極2に自己整合したレジストパターン21およびレジストパターン23を残す(図6(d))。
【0026】
このように露光するためには、裏露光としては、ゲート電極2を遮光部として露光する。これにより、平面視的配置においてゲート電極2と同一形状のレジストパターン21を形成する。また、表露光によるレジストパターン23の形成を阻害しないように、形成するレジストパターン23を囲うとともにそれらより若干大きな遮光部14を有するマスク11を用いる。表露光としては、ソース電極形成部4aとドレイン電極形成部5aを囲うレジストパターン21,23を形成するようにマスク10を作成する。また、裏露光によるレジストパターン21の形成を阻害しないように、ゲート電極2を囲うとともにゲート電極2より若干大きな遮光部13を有するマスク10を用いる。
【0027】
次に、ソース電極形成部4aおよびドレイン電極形成部5aに、金属ナノ粒子を含有する液体をディスペンサ等によって塗布する。このとき、液体がレジストパターン21上に塗布されることがあっても、レジストパターン21に弾かれてソース電極形成部4aとドレイン電極形成部5aに分離する(図6(e))。ここで、低温(100℃程度)で仮焼成してソース電極4とドレイン電極5を仮形成した後、剥離液に浸けてレジストパターン21,23を除去する(図6(f))。その後、150℃程度の本焼成を行うことにより、ソース電極4とドレイン電極5を低抵抗化する。
尚、レジストパターン21の形状(順テーパまたは逆テーパ)や幅の広狭などは、露光条件や現像条件によって制御することが可能である。
【0028】
(第5の実施形態)
図7の薄膜トランジスタを製造するための本発明の第5の実施形態を、以下に説明する。
尚、図7の薄膜トランジスタ32は、透明絶縁基板1の上面にゲート電極2およびゲート配線7が形成され、絶縁基板1とゲート電極2とゲート配線7がゲート絶縁膜3で覆われている。ゲート絶縁膜3の上面には、ソース電極4とドレイン電極5と半導体層6が形成されている。ソース電極4は円形に形成され、ドレイン電極5は、長方形の中心を円形にくり抜いた形状に形成されている。ゲート電極2は、等幅リング状に形成され、外周円上の一部にゲート配線7が連結されている。ソース電極4とドレイン電極5の間には半導体層6が形成されている。半導体層6はゲート電極2と重なるように配置されている。すなわち、平面視的配置において、ソース電極4とドレイン電極5の間にゲート電極2が形成されていることになり、各電極の中心位置は略一致するように形成されている。
【0029】
図8に示すように、第5の実施形態の製造方法は、透明絶縁基板1の上面に、等幅リング状のゲート電極2およびゲート配線7を形成し(図8(a))、その上にゲート絶縁膜3、半導体層6およびポジレジスト20を順次形成する(図8(b))。ここで、マスク10を用いた表パターン露光と裏露光(図8(c))および現像によって、ゲート電極2に自己整合したレジストパターン21のみを残す(図8(d))。
【0030】
このように露光するためには、裏露光としては、ゲート電極2を遮光部として露光する。これにより、平面視的配置においてゲート電極2と同一形状のレジストパターン21を形成する。表露光としては、裏露光によるレジストパターン21の形成を阻害しないように、ゲート電極2を囲うとともにゲート電極2より若干大きな遮光部13を有するマスク10を用いる。
【0031】
次に、半導体層6をエッチングすることによって、レジストパターン21の下部のみにチャネル部8となる半導体層6を残す(図8(e))。その上に、金属ナノ粒子を含有する液体を、ソース電極形成部4aとチャネル部8とドレイン電極形成部5aを包含するパターンを用いてフレキソ印刷すると、液体はレジストパターン21に弾かれてソース電極形成部4aとドレイン電極形成部5aに分離する(図8(f))。ここで、低温(100℃程度)で仮焼成してソース電極4とドレイン電極5を仮形成した後、剥離液に浸けてレジストパターン21を除去する(図8(g))。その後、150℃程度の本焼成を行うことにより、ソース電極4とドレイン電極5を低抵抗化する。
尚、レジストパターン21の形状(順テーパまたは逆テーパ)や幅の広狭などは、露光条件や現像条件によって制御することが可能である。
【0032】
以上のように、本発明では、透明絶縁基板上にゲート電極を形成する工程と、前記透明絶縁基板と前記ゲート電極を覆うようにゲート絶縁膜を形成する工程と、半導体層を形成する工程と、レジストを塗布する工程と、裏露光によって前記ゲート電極に自己整合したレジストパターンを形成する工程と、ソース電極とドレイン電極を形成する工程と、レジストを除去する工程とを少なくとも有する薄膜トランジスタの製造方法であって、前記ソース電極とドレイン電極を形成する工程が、金属ナノ粒子を含む液体を塗布する工程を含むことを特徴とする。ただし、半導体層の形成は、ゲート絶縁膜の形成の次の工程であってもよいし、ソース電極4およびドレイン電極5を形成した後の工程であってもよい。半導体層6が酸化物である場合には前者が、有機物である場合には後者が好適に使用できるが、それに限定されるものではない。ゲート電極2の形状としては長方形状とリング状を示したが、これらに限定されるものではない。
【0033】
上記の液体を塗布する工程は、ソース電極4とチャネル部8とドレイン電極5を包含するパターンを用いてフレキソ印刷し、チャネル部8の液体がレジストパターンに弾かれてソース電極4とドレイン電極5に分離する工程であることが好ましい。
また、レジストとしては、疎水性を有するものが好ましく、水による接触角が大きければ大きいほど良いが、30°以上のものが使用可能である。例えばノボラック系ポジレジストは、水による接触角が40°〜80°程度であり、充分使用可能である。撥水剤(例えばシリコーン系やフッ素系)を混合して、接触角を90°以上にすると、さらに望ましい。また、下地層の水による接触角がレジスト20の水による接触角よりも小さいことが必要である。
【0034】
上記の裏露光は、ゲート電極以外に遮光部を有するマスクを用いたパターン露光であって、チャネル部8のレジストパターン21とともにソース電極形成部とドレイン電極形成部を形成するレジストパターン22,23も残し、ディスペンサ等によって液体を塗布してもよい。この場合、この二種類のレジストパターンの露光は、一括に同時に行ってもよく、又、別々に行ってもよい。
【0035】
金属ナノ粒子とは、粒径が1μm未満の金属粒子である。上記の金属ナノ粒子を含む液体の主成分は水であることが好ましい。ここで主成分が水であるとは、溶媒(即ち金属ナノ粒子は含まない)の50wt%以上が水であることを意味する。金属ナノ粒子としては、Ag、Ni、Au、Pt、Pd等が使用可能である。液体の主成分が水であることにより、レジスト21〜23を溶かすことなく、レジスト21に弾かれて良好な塗布形状が得られる。一方、有機溶剤が主成分であると、レジスト21を溶かしてしまい、良好な塗布が困難である。
【0036】
半導体としては、酸化物半導体や有機半導体を用いることができる。酸化物半導体としては、InGaZnO系、InZnO系、ZnGaO系、InGaO系、ZnO系、SnO系、あるいはこれらの混合物等が好適に使用され、有機半導体としては、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリアリルアミン誘導体、ポリアセチレン誘導体、アセン誘導体、オリゴチオフェン誘導体等が好適に使用される。
【0037】
酸化物半導体を用いて半導体層を形成する場合には、スパッタやレーザアブレーションによる成膜が好適に使用できる。また、有機金属化学気相成長や、原料の塗布・焼成も使用できる。有機半導体を用いて半導体層を形成する場合には、原料の塗布・焼成が好適に使用できる。
【0038】
酸化物半導体や有機半導体は、室温あるいは200℃以下での低温成膜が可能なので、透明絶縁基板1としてプラスチック材料(ポリエチレンテレフタレート(PET)等)が使用できる。
【0039】
ゲート電極2としては、Al、Cr、Au、Ag、Cu、Ti、Ni等の金属が使用できる。ゲート絶縁層3としては、SiO、Al、SiN、Ta、Y等の無機物や、エポキシ等の有機物を用いることができる。
【実施例】
【0040】
(実施例1)
本発明の第1の実施例について、図2を用いて説明する。基板1として、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)を用意し、Alをスパッタ成膜、フォトリソおよびエッチングによって長方形のゲート電極2を作製した(図2(a))。厚さは100nm、ゲート長さは300μm、幅は5μmとした。次に、スピンコートおよび焼成によってエポキシからなるゲート絶縁膜3およびポジレジスト20を成膜した(図2(b))。ゲート絶縁膜3の厚さは500nm、ポジレジスト20の厚さは5μmとした。
【0041】
次に、裏露光(図2(c))および現像によって、ゲート電極2に自己整合したレジストパターン21を残した(図2(d))。その後、Agナノ粒子を含有する液体のフレキソ印刷によって、ソース電極4とドレイン電極5を形成した(図2(e))。100℃での仮焼成の後、レジストパターン21を剥離液で除去し(図2(f))、150℃の本焼成によって厚さ300nmのソース電極4とドレイン電極5を形成した。最後に、ポリチオフェン誘導体溶液をディスペンスおよび焼成によって半導体層6を形成した(図2(g))。
【0042】
(実施例2)
本発明の第2の実施例について、図3を用いて説明する。基板1として、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)を用意し、Alをスパッタ成膜、フォトリソおよびエッチングによって長方形のゲート電極2を作製した(図3(a))。厚さは100nm、ゲート長さは300μm、幅は5μmとした。次に、スピンコートおよび焼成によってエポキシからなるゲート絶縁膜3およびポジレジスト20を成膜した(図3(b))。ゲート絶縁膜3の厚さは500nm、ポジレジスト20の厚さは5μmとした。
【0043】
次に、表パターン露光と裏パターン露光(図3(c))および現像によって、ゲート電極2に自己整合したレジストパターン21およびソース電極形成部4aとドレイン電極形成部5aを形成するレジストパターン22,23を残した(図3(d))。その後、Agナノ粒子を含有する液体のディスペンスによって、ソース電極4とドレイン電極5を形成した(図3(e))。100℃での仮焼成の後、レジストパターン21〜23を剥離液で除去し(図3(f))、150℃の本焼成によって厚さ300nmのソース電極4とドレイン電極5を形成した。最後に、ポリチオフェン誘導体溶液をディスペンスおよび焼成によって半導体層6を形成した(図3(g))。
【0044】
(実施例3)
本発明の第3の実施例について、図5を用いて説明する。基板1として、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)を用意し、Alをスパッタ成膜、フォトリソおよびエッチングによってリング状のゲート電極2およびゲート配線7を作製した(図5(a))。ゲート電極の厚さは100nm、外径は300μm、内径は290μmとした。次に、スパッタによってゲート絶縁膜3としてSiO、半導体層6としてInGaZnOを成膜し、スピンコートによってポジレジスト20を成膜した(図5(b))。ゲート絶縁膜3の厚さは500nm、半導体層6の厚さは200nm、およびレジスト20の厚さは5μmとした。
【0045】
次に、表パターン露光と裏露光(図5(c))および現像によって、ゲート電極2に自己整合したレジストパターン21を残した(図5(d))。そして、Agナノ粒子を含有する液体のフレキソ印刷によって、ソース電極4とドレイン電極5を形成した(図5(e))。100℃での仮焼成の後、レジストパターン21を剥離液で除去し(図5(f))、150℃の本焼成によって厚さ300nmのソース電極4とドレイン電極5を形成した。
【0046】
(実施例4)
本発明の第4の実施例について、図6を用いて説明する。基板1として、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)を用意し、Alをスパッタ成膜、フォトリソおよびエッチングによってリング状のゲート電極2を作製した(図7(a))。ゲート電極の厚さは100nm、外径は300μm、内径は290μmとした。
次に、スパッタによってゲート絶縁膜3としてSiO、半導体層6としてInGaZnOを成膜し、スピンコートによってポジレジスト20を成膜した(図7(b))。ゲート絶縁膜3の厚さは500nm、半導体層6の厚さは200nm、レジスト20の厚さは5μmとした。
【0047】
次に、表パターン露光と裏パターン露光(図7(c))および現像によって、ゲート電極2に自己整合したレジストパターン21およびドレイン電極形成部を形成するレジストパターン23を残した(図7(d))。そして、Agナノ粒子を含有する液体のディスペンスによって、ソース電極4とドレイン電極5を形成した(図7(e))。100℃での仮焼成の後、レジストパターン21,23を剥離液で除去し(図7(f))、150℃の本焼成によって厚さ300nmのソース電極4とドレイン電極5を形成した。
【0048】
(実施例5)
本発明の第5の実施例について、図8を用いて説明する。基板1として、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)を用意し、Alをスパッタ成膜、フォトリソおよびエッチングによってリング状のゲート電極2およびゲート配線7を作製した(図8(a))。ゲート電極の厚さは100nm、外径は300μm、内径は290μmである。
【0049】
次に、スパッタによってゲート絶縁膜3としてSiO、半導体層6としてInGaZnOを成膜し、スピンコートによってレジスト20を成膜した(図8(b))。ゲート絶縁膜3の厚さは500nm、半導体層6の厚さは200nm、ポジレジスト20の厚さは5μmとした。次に、表パターン露光と裏露光(図8(c))および現像によって、ゲート電極2に自己整合したレジストパターン21を残した(図8(d))。ここで、ウェットエッチングによって半導体層6をエッチングした(図8(e))。そして、Agナノ粒子を含有する液体のフレキソ印刷によって、ソース電極4とドレイン電極5を形成した(図8(f))。100℃での仮焼成の後、レジストパターン21を剥離液で除去し(図8(g))、150℃の本焼成によって厚さ300nmのソース電極4とドレイン電極5を形成した。
【0050】
上記の実施例1〜5の製造方法で作製した薄膜トランジスタにおいて、ゲート電極とソース電極およびドレイン電極との平面視的配置における重なり幅を測定したところ、いずれの実施例においても1μm以下であった。また、ゲート電極とソース電極およびドレイン電極とが重ならず、離れている場合においても、その離間距離は1μm以下であった。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】薄膜トランジスタを示す図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る薄膜トランジスタの製造方法を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る薄膜トランジスタの製造方法を示す図である。
【図4】薄膜トランジスタを示す図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る薄膜トランジスタの製造方法を示す図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る薄膜トランジスタの製造方法を示す図である。
【図7】薄膜トランジスタを示す図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図8】本発明の第5の実施形態に係る薄膜トランジスタの製造方法を示す図である。
【図9】従来の薄膜トランジスタを示す図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1・・・透明絶縁基板、2・・・ゲート電極、3・・・ゲート絶縁膜、4・・・ソース電極、4a・・・ソース電極形成部、5・・・ドレイン電極、5a・・・ドレイン電極形成部、6・・・半導体層、7・・・ゲート配線、8・・・チャネル部、10,11・・・フォトマスク、12・・・紫外線、13,14・・・遮光部、20・・・ポジレジスト、21〜23・・・レジストパターン、30,31,32,40・・・薄膜トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明絶縁基板上にゲート電極を形成する工程と、前記透明絶縁基板と前記ゲート電極を覆うようにゲート絶縁膜を形成する工程と、半導体層を形成する工程と、レジストを塗布する工程と、裏露光によって前記ゲート電極に自己整合したレジストパターンを形成する工程と、ソース電極とドレイン電極を形成する工程と、レジストを除去する工程とを少なくとも有する薄膜トランジスタの製造方法であって、
前記ソース電極とドレイン電極を形成する工程が、金属ナノ粒子を含む液体を塗布する工程を含むことを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項2】
前記ソース電極と前記ドレイン電極を形成する工程が、フレキソ印刷する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項3】
前記裏露光によってソース電極形成部とドレイン電極形成部とを作成する工程と、前記ソース電極形成部と前記ドレイン電極形成部に前記金属ナノ粒子を含む液体を塗布する工程とを含むことを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項4】
前記金属ナノ粒子を含む液体を塗布する工程が、ディスペンス工程またはインクジェット工程であることを特徴とする請求項3に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項5】
前記金属ナノ粒子を含む液体の溶媒の主成分が水であることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項6】
ソース電極形成部とドレイン電極形成部との境界部分にレジストパターンを形成し、その上から前記金属ナノ粒子を含む液体を前記ソース電極形成部と前記ドレイン電極形成部を含むように塗布し、前記レジストパターンの前記液体を弾く力を利用して前記液体を前記ソース電極形成部と前記ドレイン電極形成部に区分けしてソース電極とドレイン電極を形成することを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−286719(P2006−286719A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−101404(P2005−101404)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】