説明

薄膜トランジスタ基板

【課題】本発明は、簡便なプロセスで製造可能であり、スイッチング特性に優れたTFT基板を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、基板と、上記基板上に形成され、酸化物半導体からなる酸化物半導体層および上記酸化物半導体層と接するように形成された半導体層接触絶縁層を有する薄膜トランジスタと、を有し、上記薄膜トランジスタに含まれる半導体層接触絶縁層の少なくとも一つが、感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成された感光性ポリイミド絶縁層であることを特徴とする薄膜トランジスタ基板を提供することにより、上記目的を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡便なプロセスで製造可能であり、スイッチング特性に優れた薄膜トランジスタ基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタ(以下、TFTとする場合がある。)に代表される半導体トランジスタは、近年、ディスプレイ装置の発展に伴ってその用途を拡大する傾向にある。このような半導体トランジスタは、半導体材料を介して電極が接続されていることにより、スイッチング素子としての機能を果たすものである。
【0003】
TFTに用いられるゲート絶縁層やパッシベーション層といった絶縁層としては、一般的には、酸化ケイ素等の無機化合物を用い、これらを蒸着法により形成されたものが用いられている(特許文献1等)。
しかしながら、このような蒸着法を用いて絶縁層を形成した場合には、蒸着に必要な真空設備や、パターン状の絶縁層を形成するために、レジストのパターニング、無機化合物のエッチング、レジストの剥離といった煩雑なプロセスが必要となり、コストが高くなるといった問題があった。また、無機化合物を用いた絶縁層は、フレキシブル基板用途に用いた場合に、クラックが入り易いといった問題があった。さらに、無機化合物を用いた絶縁層では、厚みを厚くすることが難しく、ゲート電極およびソース・ドレイン電極、または画素電極等にゴミ等の異物がある場合に短絡するおそれがあるといった問題があった。
【0004】
このような問題に対して、樹脂を用いた樹脂製絶縁層を用いた場合には、無機化合物製絶縁層と比較し、簡便なプロセスで製造可能なものとすることができる。また、蒸着に必要な真空設備も不要とすることができることから、コストを低くすることができる。また、フレキ巣ぶる基板用途に用いた場合に、クラックが入り難いものとすることができる。さらに、このような樹脂製の絶縁層とした場合には、上述の無機化合物からなる絶縁層と異なり、その厚みを容易に厚くすることができる。したがって、異物等が混入した場合であっても、短絡等の不具合の発生を抑制することができる。
しかしながら、このような樹脂製絶縁層を用いてTFTとした場合には、スイッチング特性が低下する等、TFTに要求される特性を十分に満たすことができないといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−324368公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、簡便なプロセスで製造可能であり、スイッチング特性に優れたTFT基板を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、基板と、上記基板上に形成され、酸化物半導体からなる酸化物半導体層および上記酸化物半導体層と接するように形成された半導体層接触絶縁層を有するTFTと、を有し、上記TFTに含まれる半導体層接触絶縁層の少なくとも一つが、感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成された感光性ポリイミド絶縁層であることを特徴とするTFT基板を提供する。
【0008】
本発明によれば、上記TFTに含まれる半導体層接触絶縁層の少なくとも一つが、上記感光性ポリイミド絶縁層であること、すなわち、感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成されたものであることにより、加工性、耐熱性および絶縁性に優れたものとすることができ、簡便なプロセスで製造可能であり、スイッチング特性に優れたものとすることができる。
また、上記酸化物半導体は半導体材料のなかでも半導体特性に優れるものであることから、上記酸化物半導体層とすることにより、半導体特性に優れたものとすることができる。
さらに、上記感光性ポリイミド絶縁層が、ポリイミド前駆体を含む感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成されてなるものである場合、アニール処理により上記ポリイミド前駆体を脱水閉環反応させイミド化する必要がある。また、このイミド化と同時に水が発生する。このような水存在下のアニール処理、すなわち、水蒸気アニール処理を行った場合には、上記ポリイミド前駆体をイミド化すると同時に上記酸化物半導体の半導体特性を向上させることができ、スイッチング特性により優れたものとすることができるからである。すなわち、上記酸化物半導体層と、上記感光性ポリイミド絶縁層との両者を有することにより、特に、簡便なプロセスで製造可能であり、スイッチング特性に優れたものとすることができる。
【0009】
本発明においては、上記感光性ポリイミド樹脂組成物が、ポリイミド成分および感光性成分を含有するものであり、上記ポリイミド成分が、ポリイミド前駆体を含むものであることが好ましい。上述のとおり、上記ポリイミド前駆体のイミド化と同時に上記酸化物半導体の水蒸気アニールを行うことができ、簡便なプロセスでスイッチング特性に優れたものとすることができるからである。
【0010】
本発明においては、上記感光性ポリイミド樹脂組成物の5%重量減少温度が450℃以上であることが好ましい。上記感光性ポリイミド絶縁層をアウトガスの少ないものとすることができ、スイッチング特性に優れたものとすることができるからである。
【0011】
本発明においては、上記感光性ポリイミド樹脂組成物が、ポリイミド成分および感光性成分を含有するものであり、上記感光性成分の含有量が、上記ポリイミド成分100重量部に対して、0.1重量部以上30重量部未満の範囲内であることが好ましい。上記感光性ポリイミド絶縁層をアウトガスのより少ないものとすることができ、スイッチング特性に優れたものとすることができるからである。
【0012】
本発明においては、上記感光性ポリイミド樹脂組成物が、ポリイミド成分および感光性成分を含有するものであり、上記感光性成分が光酸発生剤もしくは光塩基発生剤を主成分とするものであることが好ましい。アウトガスのより少ないものとすることができるからである。
【0013】
本発明においては、上記感光性成分が光塩基発生剤であることが好ましい。本発明のTFT基板に含まれる金属等への影響が小さいものとすることができるからである。
【0014】
本発明においては、上記光塩基発生剤において発生する塩基が脂肪族アミンまたはアミジンであることが好ましい。触媒効果等に優れたものとすることができるからである。
【0015】
本発明においては、上記光塩基発生剤の5%重量減少温度が150℃〜300℃の範囲内であることが好ましい。上記低アウトガスポリイミド絶縁層を形成容易なものとすることができ、アウトガス発生量の少ないものとすることができるからである。
【0016】
本発明においては、上記光塩基発生剤が下記式(a)で表されるものであることが好ましい。
【0017】
【化1】


【0018】
(式(a)中、R21及びR22は、それぞれ独立に、水素又は1価の有機基であり、同一であっても異なっていても良い。R21及びR22は、それらが結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。但し、R21及びR22の少なくとも1つは1価の有機基である。R23、R24、R25及びR26は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基又は1価の有機基であり、同一であっても異なっていても良い。R23、R24、R25及びR26は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。)
【0019】
本発明においては、上記半導体層接触絶縁層のうち、トップゲート型の上記TFTにおけるゲート絶縁層、または、ボトムゲート型の上記TFTにおけるゲート絶縁層およびパッシベーション層の少なくとも一方が、少なくとも上記感光性ポリイミド絶縁層であることが好ましい。スイッチング特性により優れたものとすることができるからである。
【0020】
本発明においては、上記半導体層接触絶縁層のうち、トップゲート型の上記TFTにおけるゲート絶縁層、または、ボトムゲート型の上記TFTにおけるパッシベーション層が、少なくとも上記感光性ポリイミド絶縁層であることが好ましい。
トップゲート型TFTにおけるゲート絶縁層およびボトムゲート型TFTにおけるパッシベーション層は、通常、上記酸化物半導体層を覆うように形成されるものである。このため、上記感光性ポリイミド樹脂組成物がポリイミド前駆体を含む場合、上記感光性ポリイミド絶縁層は、上記酸化物半導体層の形成後に上記感光性ポリイミド樹脂組成物を塗布し、次いで、イミド化されることにより形成される。したがって、上記酸化物半導体層の水蒸気アニール処理を別途実施することなく、イミド化と同時に上記酸化物半導体層の水蒸気アニール処理を行うことができ、簡便にスイッチング特性により優れたものとすることができるからである。
【0021】
本発明においては、上記基板が、金属箔と、上記金属箔上に形成され、ポリイミドを含む平坦化層とを有するフレキシブル基板であることが好ましい。
上記平坦化層を有することにより、金属箔上にポリイミドを含む平坦化層が形成されているので、金属箔表面の凹凸を平坦化することができ、TFTの電気的性能の低下を防ぐことができるからである。また、上記感光性ポリイミド絶縁層は、無機物からなる絶縁層と異なり、上記基板をフレキシブル基板とした場合であってもクラックが入る等の不具合を生じないからである。
【0022】
本発明においては、上記フレキシブル基板が、上記平坦化層上に無機化合物を含む密着層を有することが好ましい。
上記密着層を有することにより、TFTとの密着性に優れたものとすることができ、TFT基板の製造時に水分や熱が加わってポリイミドを含む平坦化層の寸法が変化した場合であっても、TFTを構成する電極や酸化物半導体層に剥離やクラックが生じるのを防ぐことができるからである。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、簡便なプロセスで製造可能であり、スイッチング特性に優れたTFT基板を提供できるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のTFT基板の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明のTFT基板の他の例を示す概略断面図である。
【図3】本発明のTFT基板の他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明に用いられるフレキシブル基板の一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明に用いられるフレキシブル基板の他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、TFT基板に関するものである。
以下、本発明のTFT基板について詳細に説明する。
【0026】
本発明のTFT基板は、基板と、上記基板上に形成され、酸化物半導体からなる酸化物半導体層および上記酸化物半導体層と接するように形成された半導体層接触絶縁層を有するTFTと、を有し、上記TFTに含まれる半導体層接触絶縁層の少なくとも一つが、感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成された感光性ポリイミド絶縁層であることを特徴とするものである。
【0027】
このような本発明のTFT基板について図を参照して説明する。図1は、本発明のTFT基板の一例を示す概略断面図である。図1(a)に例示するように、本発明のTFT基板20は、金属箔1、上記金属箔1上に形成され、ポリイミドを含む平坦化層2、および上記平坦化層2上に形成された無機化合物を含む密着層3を有するフレキシブル基板10と、上記フレキシブル基板10の密着層3上に形成されたソース電極12Sおよびドレイン電極12Dならびに酸化物半導体層11と、上記ソース電極12Sおよびドレイン電極12Dならびに酸化物半導体層11上に、上記感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成されたゲート絶縁層14と、上記ゲート絶縁層14上に形成されたゲート電極13Gとを有するものであり、トップゲート・ボトムコンタクト構造を有するものである。
また、図1(b)に例示するTFT基板20は、トップゲート・トップコンタクト構造を有するTFTを備えており、フレキシブル基板10の密着層3上に形成された酸化物半導体層11ならびにソース電極12Sおよびドレイン電極12Dと、酸化物半導体層11ならびにソース電極12Sおよびドレイン電極12D上に上記感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成されたゲート絶縁層14と、ゲート絶縁層14上に形成されたゲート電極13Gとを有している。
【0028】
また、本発明のTFT基板の他の例として、図2(a)に例示するように、TFT基板20は、ボトムゲート・ボトムコンタクト構造を有するTFTを備えており、フレキシブル基板10の密着層3上に形成されたゲート電極13Gと、ゲート電極13Gを覆うように、上記感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成されたゲート絶縁層14と、上記ゲート絶縁層14上に形成されたソース電極12Sおよびドレイン電極12Dならびに酸化物半導体層11と、ソース電極12Sおよびドレイン電極12Dならびに酸化物半導体層11上に、上記感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成されたパッシベーション層15とを有している。
また、図2(b)に例示するTFT基板20は、ボトムゲート・トップコンタクト構造を有するTFTを備えており、フレキシブル基板10の密着層3上に形成されたゲート電極13Gと、ゲート電極13Gを覆うように、上記感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成されたゲート絶縁層14と、ゲート絶縁層14上に形成された酸化物半導体層11ならびにソース電極12Sおよびドレイン電極12Dと、酸化物半導体層11ならびにソース電極12Sおよびドレイン電極12D上に、上記感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成されたパッシベーション層15と、を有している。
【0029】
さらに本発明のTFT基板の他の例として、図3(a)に例示するように、TFT基板20は、トップゲート型のコプレーナ型構造を有するTFTを備えており、フレキシブル基板10の密着層3上に形成された酸化物半導体層11と、酸化物半導体層11上に形成されたソース電極12Sおよびドレイン電極12Dと、酸化物半導体層11上に、上記感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成されたゲート絶縁層14と、上記ゲート絶縁層14上に形成されたゲート電極13Gとを有している。
また、図3(b)に例示するTFT基板20は、ボトムゲート型のコプレーナ型構造を有するTFTを備えており、フレキシブル基板10の密着層3上に形成されたゲート電極13Gと、ゲート電極13G上に、上記感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成されたゲート絶縁層14と、上記ゲート絶縁層14上に形成された酸化物半導体層11と、上記酸化物半導体層11上に形成されたソース電極12Sおよびドレイン電極12Dと、酸化物半導体層11上に、上記感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成されたパッシベーション層15と、を有している。
また、図1および図3(a)に例示されるトップゲート型TFTにおける半導体層接触絶縁層はゲート絶縁層であり、図2および図3(b)に例示されるボトムゲート型TFTにおける半導体層接触絶縁層はゲート絶縁層およびパッシベーション層(図2)であり、この例においては、これら全ての半導体層接触絶縁層が上記感光性ポリイミド絶縁層である。
【0030】
本発明によれば、上記TFTに含まれる半導体層接触絶縁層の少なくとも一つが、上記感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成された感光性ポリイミド絶縁層であること、すなわち、感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成されたものであることにより、無機化合物からなる絶縁層形成に必要とされる真空設備を用いた蒸着工程を行うことなく、上記感光性ポリイミド樹脂組成物を塗布・パターニングすることにより絶縁層を形成することができるため、簡便なプロセスとすることができる。
また、上記感光性ポリイミド絶縁層が、ポリイミドを含むものであることにより耐熱性に優れた絶縁層とすることができ、上記酸化物半導体層や他の部材の製造時に高温雰囲気下に曝された場合であっても絶縁性能の低下の少ないものとすることができることから、スイッチング特性に優れたものとすることができる。また、樹脂製であるため、例えば、上記基板としてフレキシブル基板を用い、フレキシブルTFT基板とした場合であっても、上記非感光性ポリイミド絶縁層にクラックが生じにくいものとすることができる。
さらに、上記酸化物半導体が半導体材料のなかでも半導体特性に優れるものであることから、上記酸化物半導体層とすることにより、本発明のTFT基板を半導体特性に優れたものとすることができる。
ここで、上記酸化物半導体は、水の存在下でのアニール処理(水蒸気アニール処理)することにより、その半導体特性をさらに向上させることができることが知られている(Appl. Phys. Lett. 93, 192107 (2008)等)。
一方、上記感光性ポリイミド絶縁層を、ポリイミド成分としてポリイミド前駆体を含む感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成する場合には、アニール処理により上記ポリイミド前駆体を脱水閉環反応させイミド化する必要がある。また、このイミド化と同時に水が発生する。このような水存在下のアニール処理、すなわち、水蒸気アニール処理を行った場合には、上記ポリイミド前駆体をイミド化すると同時に上記酸化物半導体の半導体特性を向上させることができ、スイッチング特性により優れたものとすることができるからである。したがって、別途水蒸気アニール工程を追加することなく、上記酸化物半導体層の半導体特性を向上させることができる。
このように、上記酸化物半導体層と、上記感光性ポリイミド絶縁層との両者を有することにより、特に、簡便なプロセスで製造可能であり、スイッチング特性に優れたものとすることができるのである。
【0031】
本発明のTFT基板は、基板およびTFTを少なくとも有するものである。
以下、本発明のTFT基板の各構成について詳細に説明する。
【0032】
1.TFT
本発明に用いられるTFTは、上記酸化物半導体層および半導体層接触絶縁層を少なくとも有するものである。
【0033】
(1)半導体層接触絶縁層
本発明に用いられ半導体層接触絶縁層は、上記酸化物半導体層と接触するものであり、そのうちの少なくとも一つが上記感光性ポリイミド絶縁層である。
【0034】
(a)感光性ポリイミド絶縁層
本発明に用いられる感光性ポリイミド絶縁層は、感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成されたものである。
【0035】
(i)感光性ポリイミド樹脂組成物
本発明に用いられる感光性ポリイミド樹脂組成物は、所望の絶縁性を有する感光性ポリイミド絶縁層を精度良く形成することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、a)ポリイミド成分、b)感光性成分、c)溶媒、d)その他を含むものを挙げることができる。
【0036】
具体的には、ポリイミド成分であるポリアミック酸のカルボキシル基に、感光性成分として上記ポリイミド成分にエステル結合やイオン結合でエチレン性二重結合を導入し、さらに光ラジカル開始剤を混合した溶剤現像ネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物、ポリイミド成分であるポリアミック酸やその部分エステル化物に、感光性成分としてナフトキノンジアジド化合物を添加したアルカリ現像ポジ型感光性ポリイミド樹脂組成物、ポリイミド成分である酸架橋性の置換基を導入したポリイミドもしくはポリイミド前駆体に、感光性成分として光酸発生剤を添加したネガ型の感光性ポリイミド樹脂組成物、ポリイミド成分である酸分解性の置換基を導入したポリイミドもしくはポリイミド前駆体に、感光性成分として光酸発生剤を添加したポジ型の感光性ポリイミド樹脂組成物、ポリイミド成分であるポリアミック酸に、感光性成分として光酸発生剤を添加したアルカリ現像ネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物あるいは、ポリイミド成分であるポリアミック酸に、感光性成分としてニフェジピン系化合物等を添加したアルカリ現像ネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物ならびに、ポリイミド成分であるポリアミック酸に感光性成分として光塩基発生剤を添加したアルカリ現像ネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物などが挙げられる。
【0037】
本発明に用いられる感光性ポリイミド樹脂組成物は、5%重量減少温度が450℃以上であることが好ましい。
ここで、5%重量減少温度が450℃以上の感光性ポリイミド樹脂組成物とは、上記感光性ポリイミド樹脂組成物のキュア後のポリイミド樹脂を含むポリイミド膜について、熱重量分析装置を用いて重量減少を測定する際に、窒素雰囲気下で、昇温速度10℃/minで100℃まで上昇させた後、100℃で60分加熱した後、15分以上窒素雰囲気下で放冷した後、昇温速度10℃/minで測定した際の放冷後の重量を基準として測定した5%重量減少温度が450℃以上のものをいう。
なお、5%重量減少温度とは、熱重量分析装置を用いて重量減少を測定した場合に、サンプルの重量が初期重量から5%減少した時点(すなわち、サンプル重量が初期の95%となった時点)の温度である。
【0038】
本発明においては、なかでも、上記感光性ポリイミド樹脂組成物の5%重量減少温度が480℃以上であることが好ましく、特に、500℃以上であることが好ましい。上記5%重量減少温度が上述の範囲内であることにより、上記酸化物半導体層や他の部材を形成する際の高温雰囲気下や真空雰囲気下にける重量減少の少ないもの、すなわち、アウトガスの少ないものとすることができ、スイッチング特性に優れたTFT基板とすることができるからである。特に、上記酸化物半導体層は、通常、高温,真空雰囲気下で形成されるため、多量のアウトガスが発生し得る環境下で上記酸化物半導体層を形成した場合には、上記アウトガスが不純物として上記酸化物半導体層に取り込まれる可能性が高い。これに対して、上述の5%重量減少温度の感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて感光性ポリイミド絶縁層を形成した場合には、高温,真空雰囲気下であっても上記感光性ポリイミド絶縁層からのアウトガスの発生が少ないため、上記酸化物半導体層を上記不純物の少ないものとすることができるからである。
また、このような感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成された感光性ポリイミド絶縁層に含まれるアウトガス成分は、通常、一般的なTFTの製造条件やTFTの使用環境では、大幅に増加することはない。したがって、上記感光性ポリイミド絶縁層の5%重量減少温度は、上記感光性ポリイミド樹脂組成物の5%重量減少温度と同程度となる。
【0039】
a.ポリイミド成分
本発明に用いられるポリイミド成分とは、感光性ポリイミド樹脂組成物のうち、キュア(硬化)後にポリイミド樹脂となる成分のことをいう。
具体的には、下記式(1)で表される構造を有するポリイミド、および下記式(2)、(3)で表される構造を有するポリイミド前駆体が挙げられる。
【0040】
本発明におけるポリイミド成分としては、上記式(1)、式(2)および式(3)のそれぞれの構造のみを有するポリマーのみ用いても、上記式(1)、式(2)および式(3)のそれぞれの構造のみを有するポリマーを混ぜて使っても、1つのポリマー分子鎖中に上記式(1)、式(2)および式(3)の構造が混ざったものを用いることもできる。
本発明においては、上記ポリイミド成分が上記ポリイミド前駆体を少なくとも含むものであることが好ましい。イミド化のためのアニール処理時に水を発生するため、イミド化と同時に上記酸化物半導体層に対して水蒸気アニールを行うことができ、半導体特性を向上させることができるからである。
本発明においては、なかでも、酸無水物由来のカルボキシル基(もしくはそのエステル化物などの誘導体)が全体の50%以上あることが望ましく、75%以上であることがさらに好ましく、全て、下記式(2)で示されるポリアミック酸およびその誘導体であることが好ましい。上述の水蒸気アニールを効果的に行うことができるからである。
また、式(2)からなるポリアミック酸(および)その誘導体については、合成の容易さおよびアルカリ現像液に対する溶解性の高さから、Rが全て水素原子であるポリアミック酸であることが特に好ましい。
なお、酸無水物由来のカルボキシル基(もしくはそのエステル)の含有率は、100%−イミド化率(%)で求めることができる。したがって、酸無水物由来のカルボキシル基(もしくはそのエステル)が全体の50%である場合には、イミド化率が50%であることを示す。
なお、イミド化率は、例えば、赤外線吸収スペクトルを用いて確認することができる。具体的には、上記ポリイミド樹脂に含まれるイミド結合由来のC=O二重結合のピーク面積から定量することにより求めることができる。
【0041】
【化2】


【0042】
【化3】


【0043】
【化4】


【0044】
(式(1)から(3)中、R1は4価の有機基、Rは2価の有機基であり、Rは水素原子もしくは1価の有機基繰り返されるR1同士およびR同士、R同士はそれぞれ同じであってもよく異なっていてもよい。nは1以上の自然数である。)
【0045】
また、式(3)については、左右非対称であるが、1つのポリマー分子鎖中に左右の向きが異なるものが含まれていてもよい。
【0046】
また、ポリアミック酸のカルボキシル基にエステル結合でエチレン性二重結合を導入し、さらに光ラジカル開始剤を混合した溶剤現像ネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物のように、ポリアミック酸のカルボキシル基を介して、共有結合により感光性部位を導入した化合物に関しては、ポリアミック酸のカルボキシル基のC(=O)−Oまでをポリイミド成分とみなし、その先の導入された感光性部位を含む置換基部分を感光性成分とみなす。
【0047】
また、ポリアミック酸のカルボキシル基にイオン結合でエチレン性二重結合を導入し、さらに光ラジカル開始剤を混合した溶剤現像ネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物においては、ポリアミック酸をポリイミド成分とし、イオン結合により結合しているエチレン性二重結合を有するアミンは感光性成分とする。
【0048】
上記式(1)から(3)において、一般に、Rはテトラカルボン酸二無水物由来の構造であり、Rはジアミン由来の構造である。
【0049】
本発明に用いられるポリイミド成分を製造する方法としては、従来公知の手法を適用することができる。例えば、上記(2)で表される構造を有するポリイミド前駆体の形成方法としては、(i)酸二無水物とジアミンからポリアミック酸を合成する手法や、(ii)酸二無水物に1価のアルコールやアミノ化合物、エポキシ化合物等を反応させ合成したエステル酸やアミド酸モノマーのカルボン酸に、ジアミノ化合物やその誘導体を反応させて形成する手法などが挙げられるがこれに限定されない。
また、上記(3)で表される構造を有するポリイミド前駆体または上記(1)で表されるポリイミドの形成方法としては、上記(2)で表されるポリイミド前駆体を加熱によりイミド化する方法が挙げられる。
【0050】
本発明において上記ポリイミド成分に適用可能なテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物;ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’−ビス〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’−ビス〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、ピリジンテトラカルボン酸二無水物、スルホニルジフタル酸無水物、m−ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス−(トリフルオロメチル)キサンテンテトラカルボン酸二無水物、9−フェニル−9−(トリフルオロメチル)キサンテンテトラカルボン酸二無水物、12,14−ジフェニル−12,14−ビス(トリフルオロメチル)−12H,14H−5,7−ジオキサペンタセン−2,3,9,10−テトラカルボン酸二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物、1,4−ビス(トリフルオロメチル)−2,3,5,6−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、1−(トリフルオロメチル)−2,3,5,6−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物,p−フェニレンビストリメリット酸モノエステル酸二無水物、p−ビフェニレンビストリメリット酸モノエステル酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
これらは単独あるいは2種以上混合して用いられる。
【0051】
一方、上記ポリイミド成分に適用可能なジアミン成分も、1種類のジアミン単独で、または2種類以上のジアミンを併用して用いることができる。用いられるジアミン成分は、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンのような芳香族アミン;1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2−アミノエチル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス(2−アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(3−アミノプロトキシ)エチル]エーテル、1,2−ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、1,2−ビス[2−(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2−ビス[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカンのような脂肪族アミン;1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,3−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロへキシル)メタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンのような脂環式ジアミンなどが挙げられる。グアナミン類としては、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンなどを挙げることができ、また、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部若しくは全てをフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、又はトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換したジアミンも使用することができる。
さらに目的に応じ、架橋点となるエチニル基、ベンゾシクロブテン−4’−イル基、ビニル基、アリル基、シアノ基、イソシアネート基、及びイソプロペニル基のいずれか1種又は2種以上を、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部若しくは全てに置換基として導入しても使用することができる。
【0052】
本発明における感光性ポリイミド樹脂組成物としては、絶縁層の5%重量減少温度を所定の範囲とし、絶縁層の5%重量減少温度を本発明のTFT基板に好適なものとする観点から、上記ポリイミド成分が、芳香族骨格を含むことが好ましい。芳香族骨格を含有するポリイミド成分を加熱硬化することにより得られるポリイミド樹脂は、その剛直で平面性の高い骨格に由来して、耐熱性や薄膜での絶縁性に優れ、5%重量減少温度が高く、低アウトガスであることから、本発明のTFT基板の絶縁層に好ましく用いられるからである。
また、5%重量減少温度が高く、低アウトガスである感光性ポリイミド樹脂組成物のポリイミド成分は、酸二無水物由来の部分が芳香族構造を有し、さらにジアミン由来の部分も芳香族構造を含むことが望ましい。それゆえジアミン成分由来の構造も芳香族ジアミンから誘導される構造であることが好ましい。特に、酸二無水物由来の部分およびジアミン由来の部分のすべてが芳香族構造を含む全芳香族ポリイミドもしくは全芳香族ポリイミド前駆体であることが好ましい。
【0053】
ここで、全芳香族ポリイミド前駆体とは、芳香族酸成分と芳香族アミン成分の共重合、又は、芳香族酸/アミノ成分の重合により得られるポリイミド前駆体及びその誘導体である。また、芳香族酸成分とは、ポリイミド骨格を形成する4つの酸基が全て芳香族環上に置換している化合物であり、芳香族アミン成分とは、ポリイミド骨格を形成する2つのアミノ基が両方とも芳香族環上に置換している化合物であり、芳香族酸/アミノ成分とはポリイミド骨格を形成する酸基とアミノ基がいずれも芳香族環上に置換している化合物である。ただし、前述した原料の芳香族酸二無水物および芳香族ジアミンの具体例から明らかなように、全ての酸基又はアミノ基が同じ芳香環上に存在する必要はない。
以上の理由から、ポリイミド前駆体は、最終的に得られるポリイミド樹脂に耐熱性及び寸法安定性を求める場合には、芳香族酸成分及び/又は芳香族アミン成分の共重合割合ができるだけ大きいことが好ましい。具体的には、イミド構造の繰り返し単位を構成する酸成分に占める芳香族酸成分の割合が50モル%以上、特に70モル%以上であることが好ましく、イミド構造の繰り返し単位を構成するアミン成分に占める芳香族アミン成分の割合が40モル%以上、特に60モル%以上であることが好ましく、全芳香族ポリイミドもしくは全芳香族ポリイミド前駆体であることが好ましい。
【0054】
本発明においては、なかでも、上記(1)〜(3)で表される構造を有するポリイミド成分におけるRのうち33モル%以上が、下記式で表わされるいずれかの構造であることが好ましい。耐熱性に優れ、低線熱膨張係数を示すポリイミド樹脂となるというメリットがあるからである。
【0055】
【化5】


【0056】
(式(11)中、aは0または1以上の自然数、Aは単結合(ビフェニル構造)、酸素原子(エーテル結合)、エステル結合のいずれかであり、全てが同じであっても、各々異なっていてもよい。結合基は、芳香環の結合部位から見て、芳香環の2,3位もしくは3,4位に結合する。)
【0057】
本発明においては、特に、上記(1)〜(3)で表される構造を有するポリイミド成分が上記式(11)で表される構造を含むと、上記ポリイミド樹脂が低吸湿膨張を示す。さらには、市販で入手が容易であり、低コストであるというメリットもある。
【0058】
上記のような構造を有するポリイミド成分は、高耐熱性、低線熱膨張係数を示すポリイミド樹脂を形成可能である。そのため、上記式で表わされる構造の含有量は上記式(1)〜(3)中のRのうち100モル%に近ければ近いほど好ましいが、少なくとも上記式(1)〜(3)中のRのうち33%以上含有すればよい。中でも、上記式で表わされる構造の含有量は上記式(1)〜(3)中のRのうち50モル%以上であることが好ましく、さらに70モル%以上であることが好ましい。
【0059】
本発明において、ポリイミド樹脂を低吸湿にする酸二無水物の構造としては、下記式(12)で表わされるものが挙げられる。
【0060】
【化6】


【0061】
(式(12)中、aは0または1以上の自然数、Aは単結合(ビフェニル構造)、酸素原子(エーテル結合)、エステル結合のいずれかであり、全てが同じであっても、各々異なっていてもよい。酸無水物骨格(―CO−O−CO−)は、隣接する芳香環の結合部位から見て、芳香環の2,3位もしくは、3,4位に結合する。)
【0062】
上記式(12)において、Aが単結合(ビフェニル構造)、酸素原子(エーテル結合)である酸二無水物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物などが挙げられる。これらは、吸湿膨張係数を低減させる観点ならびに、ジアミンの選択性を広げる観点から、好ましい。
【0063】
上記式(12)において、Aがエステル結合であるフェニルエステル系の酸二無水物は、ポリイミド樹脂を低吸湿にする観点から、特に好ましい。例えば、下記式で表わされる酸二無水物が挙げられる。具体的には、p−フェニレンビストリメリット酸モノエステル酸二無水物、p−ビフェニレンビストリメリット酸モノエステル酸二無水物などが挙げられる。これらは、吸湿膨張係数を低減させる観点ならびに、ジアミンの選択性を広げる観点から、特に好ましい。
【0064】
【化7】


【0065】
(式中、aは0または1以上の自然数である。酸無水物骨格(―CO−O−CO−)は、隣接する芳香環の結合部位から見て、芳香環の2,3位もしくは3,4位に結合する。)
【0066】
上述の吸湿膨張係数が小さいテトラカルボン酸二無水物の場合、後述するジアミンとしては幅広く選択することができる。
【0067】
併用するテトラカルボン酸二無水物として、下記式で表わされるような少なくとも1つのフッ素原子を有するテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。フッ素が導入されたテトラカルボン酸二無水物を用いると、最終的に得られるポリイミド樹脂の吸湿膨張係数が低下する。少なくとも1つのフッ素原子を有するテトラカルボン酸二無水物としては、中でも、フルオロ基、トリフルオロメチル基、またはトリフルオロメトキシ基を有することが好ましい。具体的には、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物などが挙げられる。しかしながら、上記ポリイミド成分として含まれるポリイミド前駆体がフッ素を含んだ骨格を有する場合、上記ポリイミド前駆体が、塩基性水溶液に溶解しづらい傾向にあり、上記ポリイミド前駆体の状態で、レジスト等を用いてパターニングを行う際には、アルコール等の有機溶媒と塩基性水溶液との混合溶液によって現像を行う必要がある場合がある。
【0068】
【化8】


【0069】
ここで、選択されるジアミンは耐熱性、すなわち、低アウトガス化の観点より芳香族ジアミンが好ましいが、目的の物性に応じてジアミンの全体の60モル%、好ましくは40モル%を超えない範囲で、脂肪族ジアミンやシロキサン系ジアミン等の芳香族以外のジアミンを用いてもよい。
【0070】
また、上記ポリイミド成分においては、上記式(1)〜(3)中のRのうち33モル%以上が下記式で表わされるいずれかの構造であることが好ましい。
【0071】
【化9】


【0072】
(R11は2価の有機基、酸素原子、硫黄原子、またはスルホン基であり、R12およびR13は1価の有機基、またはハロゲン原子である。)
【0073】
上記ポリイミド成分が上記式のいずれかの構造を含むと、これら剛直な骨格に由来し、低線熱膨張および低吸湿膨張を示す。さらには、市販で入手が容易であり、低コストであるというメリットもある。
上記のような構造を有する場合、上記ポリイミド樹脂の耐熱性が向上し、線熱膨張係数が小さくなる。そのため、上記式(1)〜(3)中のRのうち100モル%に近ければ近いほど好ましいが、上記式(1)〜(3)中のRのうち少なくとも33%以上含有すればよい。中でも上記式で表わされる構造の含有量は上記式(1)中のRのうち50モル%以上であることが好ましく、さらに70モル%以上であることが好ましい。
【0074】
上記ポリイミド樹脂をより低吸湿膨張とする観点からは、ジアミンの構造としては、下記式(13)、(14)で表わされるものが好ましい。
【0075】
【化10】


【0076】
(式(13)中、同一の芳香環に2つアミノ基が結合していてもよい。
式(14)中、aは0または1以上の自然数、アミノ基はベンゼン環同士の結合に対して、メタ位またはパラ位に結合する。また、芳香環上の水素原子の一部若しくは全てをフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、またはトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換されていてもよい。)
【0077】
上記式(13)で表されるジアミンとしては、具体的には、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2、6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノアントラセンなどが挙げられる。
【0078】
上記式(14)で表わされるジアミンとしては、具体的には、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
【0079】
また、芳香環の置換基としてフッ素を導入すると、上記ポリイミド樹脂の吸湿膨張係数を低減させることができる。例えば、上記式(14)で表わされるジアミンの中でフッ素が導入された構造としては、下記式で表わされるものが挙げられる。しかしながら、フッ素を含むポリイミド前駆体、特にポリアミック酸は、塩基性水溶液に溶解しにくく、基板上に感光性ポリイミド絶縁層を部分的に形成する場合には、上記絶縁層の加工の際に、アルコールなどの有機溶媒との混合溶液で現像する必要がある場合がある。
【0080】
【化11】


【0081】
本発明に用いられるポリイミド成分は、上記感光性ポリイミド樹脂組成物とした際の感度を高め、マスクパターンを正確に再現するパターン形状を得るために、1μmの膜厚のときに、露光波長に対して少なくとも5%以上の透過率を示すことが好ましく、15%以上の透過率を示すことが更に好ましい。
【0082】
また、一般的な露光光源である高圧水銀灯を用いて露光を行う場合には、少なくとも436nm、405nm、365nmの波長の電磁波のうち1つの波長の電磁波に対する透過率が、厚み1μmのフィルムに成膜した時で好ましくは5%以上、更に好ましくは15%、より更に好ましくは50%以上である。
露光波長に対してポリイミド成分の透過率が高いということは、それだけ、光のロスが少ないということであり、高感度の感光性ポリイミド樹脂組成物を得ることができる。
【0083】
ポリイミド成分として、透過率をあげるためには、酸二無水物としてフッ素が導入された酸二無水物や、脂環骨格を有する酸二無水物を用いることが望ましい。しかし、脂環骨格を有する酸二無水物を用いると、耐熱性が低下し、低アウトガス性を損なう恐れがあるので、共重合割合に注意しながら併用してもよい。
本発明においては、透過率をあげるためには酸二無水物としてフッ素が導入された芳香族の酸二無水物を用いることが、耐熱性を維持しつつ(芳香族なので)、吸湿膨張も低減することが可能である点からさらに好ましい。
【0084】
本発明において用いられる少なくとも1つのフッ素原子を有するテトラカルボン酸二無水物としては、上述のフッ素原子を有するテトラカルボン酸二無水物を用いることができ、なかでも、フルオロ基、トリフルオロメチル基、またはトリフルオロメトキシ基を有することが好ましい。具体的には、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物などが挙げられる。
しかしながら、フッ素を含んだ骨格を有するポリイミド前駆体は、塩基性水溶液に溶解しづらい傾向にあり、ポリイミド前駆体の状態で、レジスト等を用いてパターニングを行う際には、アルコール等の有機溶媒と塩基性水溶液との混合溶液によって現像を行う必要がある場合がある。
【0085】
また、ピロメリット酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などの剛直な酸二無水物を用いると、最終的に得られるポリイミド樹脂の線熱膨張係数が小さくなるが、透明性の向上を阻害する傾向があるので、共重合割合に注意しながら併用してもよい。
【0086】
ポリイミド成分として、透過率をあげるためには、ジアミンとしてフッ素が導入されたジアミンや、脂環骨格を有するジアミンを用いることが望ましい。しかし、脂環骨格を有するジアミンを用いると、耐熱性が低下し、低アウトガス性を損なう恐れがあるので、共重合割合に注意しながら併用してもよい。
透過率をあげるためにはジアミンとしてフッ素が導入された芳香族のジアミンを用いることが、耐熱性を維持しつつ(芳香族なので)、吸湿膨張も低減することが可能である点からさらに好ましい。
【0087】
フッ素が導入された芳香族のジアミンとしては、具体的には、上述のフッ素が導入された構造を有するものを挙げることができ、より具体的には、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
しかしながら、フッ素を含むポリイミド前駆体、特にポリアミック酸は、塩基性水溶液に溶解しにくく、基板上に感光性ポリイミド絶縁層を部分的に形成する場合には、上記絶縁層の加工の際に、アルコールなどの有機溶媒との混合溶液で現像する必要がある場合がある。
【0088】
また、上記式(1)および(3)に含まれるイミド化後の環構造の割合は、それぞれ、上記式(3)および(2)で示されるポリイミド前駆体に含まれるイミド化前のカルボン酸部分よりも、透過率が低い傾向にあるため、イミド化前の構造を多く含む、透明性が高いポリイミド前駆体を用いることが望ましい。酸無水物由来のカルボキシル基(もしくはそのエステル)が全体の50%以上あることが望ましく、75%以上であることがさらに好ましく、全て、上記式(2)で示されるポリイミド前駆体、すなわち、ポリアミック酸(および)その誘導体であることが好ましい。
また、アルカリ現像液を用いて現像する際には、上記式(2)および(3)に含まれるイミド化前のカルボン酸部分の残存量によりアルカリ現像液に対する溶解性を変えることができる。現像速度を速める観点からは、イミド化前の構造を多く含む、溶解性が高いポリイミド前駆体を用いることが望ましく、上記式(2)および(3)におけるRが全て水素原子であるポリアミック酸であることが好ましい。しかし、現像速度が速すぎて、パターン残存部の溶解性が高すぎる場合には、イミド化が進行したものを用いるもしくは、上記(2)および(3)におけるRに1価の有機基を導入して溶解速度を下げることができる。
【0089】
一方、ジアミンとして、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンなどのシロキサン骨格を有するジアミンを用いると、基板との密着性を改善したり、上記ポリイミド樹脂の弾性率が低下し、ガラス転移温度を低下させたりすることができる。
【0090】
本発明に用いられるポリイミド成分の重量平均分子量は、その用途にもよるが、3,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、5,000〜500,000の範囲であることがさらに好ましく、10,000〜500,000の範囲であることがさらに好ましい。重量平均分子量が3,000未満であると、塗膜又はフィルムとした場合に十分な強度が得られにくい。また、加熱処理等を施しポリイミド樹脂などの高分子とした際の膜の強度も低くなる。一方、重量平均分子量が1,000,000を超えると粘度が上昇し、溶解性も落ちてくるため、表面が平滑で膜厚が均一な塗膜又はフィルムが得られにくい。
ここで用いている分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の値のことをいい、ポリイミド前駆体そのものの分子量でも良いし、無水酢酸等で化学的イミド化処理を行った後のものでも良い。
【0091】
本発明に用いられるポリイミド成分の含有量としては、得られるパターンの膜物性、特に膜強度や耐熱性の点から、上記感光性ポリイミド樹脂組成物の固形分全体に対し、50重量%以上であることが好ましく、なかでも、70重量%以上であることが好ましい。
なお、感光性ポリイミド樹脂組成物の固形分とは溶剤以外の全成分であり、液状のモノマー成分も固形分に含まれる。
【0092】
b.感光性成分
本発明における感光性成分は、上記ポリイミド成分を硬化させるために含まれるものであり、上述した感光性ポリイミド樹脂組成物に含まれる光ラジカル発生剤、光酸発生剤、光塩基発生剤のような光開始剤、ナフトキノンジアジド化合物のような光照射にともない、化合物自体の溶解性が変化するような成分とともに、ポリアミック酸のカルボキシル基にエステル結合やイオン結合で導入されたエチレン性二重結合部位のように、ラジカルによって架橋するような成分や、ラジカル架橋性のモノマー、酸架橋性のモノマー、ポリアミック酸のカルボキシル基に導入された酸分解性の置換基等の感光性主成分や、このような感光性主成分と共に用いられる増感剤等の感光性補助成分などが挙げられる。
【0093】
より具体的には、ポリアミック酸のカルボキシル基にエステル結合やイオン結合でエチレン性二重結合を導入し、さらに光ラジカル開始剤を混合した溶剤現像ネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物においては、二重結合部位と光ラジカル発生剤、ポリアミック酸やその部分エステル化物にナフトキノンジアジド化合物を添加したアルカリ現像ポジ型感光性ポリイミド樹脂組成物においてはナフトキノンジアジド化合物、酸架橋性の置換基を導入したポリイミドもしくはポリイミド前駆体に光酸発生剤を添加したネガ型の感光性ポリイミド樹脂組成物では、光酸発生剤と酸架橋性の置換基、酸分解性の置換基を導入したポリイミドもしくはポリイミド前駆体に光酸発生剤を添加したポジ型の感光性ポリイミド樹脂組成物においては、光酸発生剤と酸分解性の置換基、ポリアミック酸に光酸発生剤を添加したアルカリ現像ネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物においては光酸発生剤が、あるいは、ポリアミック酸にニフェジピン系化合物等を添加したアルカリ現像ネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物においてはニフェジピン系化合物が、ならびに、ポリアミック酸に光塩基発生剤を添加したアルカリ現像ネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物においては、光塩基発生剤が感光性成分に相当する。
【0094】
本発明に用いられる感光性成分の含有量としては、所望のパターンの感光性ポリイミド絶縁層を形成できるものであれば特に限定されるものではなく、一般的な含有量とすることができる。
一般的にポリイミド樹脂は高耐熱性の樹脂として知られており、高い耐熱性を有することから、ポリイミド成分よりも、感光性成分の方が耐熱性が低い傾向にあるので、ポリイミド成分に対する感光性成分の割合を減らした方が、低アウトガス性となる。
このようなことから上記感光性成分の含有量は少ない方が好ましく、本発明においては、上記感光性成分が、上記ポリイミド成分100重量部に対して、0.1重量部以上30重量部未満の範囲内であることが好ましく、なかでも、0.5重量部〜20重量部の範囲内であることが好ましく、特に、0.5重量部〜15重量部の範囲内であることが好ましい。
【0095】
本発明に用いられる感光性成分のなかでも、光酸発生剤もしくは光塩基発生剤を主成分とするものであることが好ましい。上記光酸発生剤もしくは光塩基発生剤は、発生化学種が触媒的に働き、ポリイミド樹脂の構成成分となるポリイミド成分および溶剤以外の添加剤の含有量の削減が可能であることから好ましく用いることができるからである。
特に、ポリアミック酸などのポリイミド前駆体に光酸発生剤もしくは光塩基発生剤を添加し、光照射において、発生する酸もしくは塩基によりイミド化反応を触媒的に促進し、露光部を選択的に不溶化する系では、光酸発生剤もしくは光塩基発生剤のみの添加でパターニング可能であり。架橋成分や分解性の置換基を導入する必要がないため、添加剤量をさらに削減することが可能であるからである。
このようなことから、一般的な感光性ポリイミド樹脂組成物に含まれる感光性成分の含有量が、上記ポリイミド成分100重量部に対して30重量部以上のものが多いのに対して、上記酸発生剤または光塩基発生剤は、上述のように発生化学種が触媒的に働くため、上記含有量を上述した範囲内とした場合であっても十分に硬化可能な露光感度を有するからである。また、上記感光性成分は、ポリイミド成分に比べて耐熱性が低く、アウトガスの主成分であると考えられることから、上記含有量を上述した範囲内とすることにより、上記感光性ポリイミド絶縁層の重量減少の少ないもの、すなわち、アウトガス発生量が十分に少ないものとすることができるからである。
本発明においては、特に、上記感光性成分が上記光塩基発生剤を主成分とするものであることが好ましく、なかでも特に、上記光塩基発生剤であること、すなわち、上記感光性成分が上記光塩基発生剤のみを含むものであることが好ましい。発生化学種である塩基が酸と比較し、金属等への影響が小さいことから望ましい。
なお、主成分とするとは、上記感光性成分中の上記光塩基発生剤等の含有量が、50質量%以上であることをいうものである。
【0096】
本発明に用いられる光塩基発生剤としては、常温常圧の通常の条件下では活性を示さないが、外部刺激として電磁波の照射と加熱が行なわれると、塩基(塩基性物質)を発生するものであれば特に限定されるものではない。
なお、本発明において、電磁波とは、波長を特定した場合を除き、可視及び非可視領域の波長の電磁波だけでなく、電子線のような粒子線、及び、電磁波と粒子線を総称する放射線又は電離放射線が含まれる。本明細書では、電磁波の照射を露光ともいう。
【0097】
本発明においては、光塩基発生剤として公知のものを用いることが出来る。例えば、M. Shirai, and M Tsunooka, Prog. Polym. Sci., 21, 1 (1996)や、角岡正弘, 高分子加工, 46, 2 (1997)、C. Kutal, Coord. Chem. Rev., 211, 353 (2001)、Y. Kaneko, A. Sarker, and D. Neckers, Chem. Mater., 11, 170 (1999)、H. Tachi, M. Shirai, and M. Tsunooka, J. Photopolym. Sci. Technol., 13, 153 (2000)、M. Winkle, and K. Graziano, J. Photopolym. Sci. Technol., 3, 419 (1990)、M. Tsunooka, H. Tachi, and S. Yoshitaka, J. Photopolym. Sci. Technol., 9, 13 (1996)、K. Suyama, H. Araki, M. Shirai, J. Photopolym. Sci. Technol., 19, 81 (2006)に記載するように、遷移金属化合物錯体や、アンモニウム塩などの構造を有するものやアミジン部分がカルボン酸と塩形成することで潜在化されたもののように、塩基成分が塩を形成することにより中和されたイオン性の化合物と、カルバマート誘導体、オキシムエステル誘導体、アシル化合物などのウレタン結合やオキシム結合などにより潜在化された非イオン性のものを挙げることができる。
【0098】
ここで、光塩基発生剤としてのイオン性化合物としては、具体的には、下記式で示される化合物を挙げることができる。
【0099】
【化12】


【0100】
また、光塩基発生剤としてのオキシムエステル誘導体としては、例えば、下記式で示される化合物を挙げることができる。
【0101】
【化13】


【0102】
アシル化合物としては、例えば、下記式に示すような化合物が挙げられる。
【0103】
【化14】


【0104】
また、光塩基発生剤としてのカルバメート化合物としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0105】
【化15】


【0106】
【化16】


【0107】
また、光塩基発生剤としては、例えば、下記に示すような化合物が挙げられる。
【0108】
【化17】


【0109】
(式(a)中、R21及びR22は、それぞれ独立に、水素又は1価の有機基であり、同一であっても異なっていても良い。R21及びR22は、それらが結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。但し、R21及びR22の少なくとも1つは1価の有機基である。R23、R24、R25及びR26は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基又は1価の有機基であり、同一であっても異なっていても良い。R23、R24、R25及びR26、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。)
【0110】
上記式(a)で示す光塩基発生剤は、上記のような特定の構造を有するため、紫外線などの光線が照射されることにより、上記式(a)中の(−CH=CH−C(=O)−)部分がシス体へと異性化し、さらに加熱によって環化し、塩基(NHR2122)を生成する。すなわち、上記式(a)で示す光線塩基発生剤は、その構造に応じて、塩基として、第1級アミン、第2級アミン、アミジン系化合物を生成しうる。
【0111】
上述の光塩基発生剤は単独種類で使用することも、複数種類を組み合わせて使用することもできる。
【0112】
本発明に用いられる光塩基発生剤は、上述のポリイミド成分と組み合わせて用いられる。ポリイミド成分はポリイミド、ポリイミド前駆体とも350nm未満の波長領域に強い吸収を有するため、光塩基発生剤は、350nm以上の波長領域に感度を有することが望ましい。上記ポリイミド成分が最終生成物となるための塩基発生の機能を十分に発揮させるために、露光波長の少なくとも一部に対して吸収を有する必要がある。一般的な露光光源である高圧水銀灯の波長としては、365nm、405nm、436nmがある。このため、本発明における塩基発生剤は、少なくとも365nm、405nm、436nmの波長の電磁波のうち少なくとも1つの波長の電磁波に対して吸収を有することが好ましい。このような場合、適用可能なポリイミド成分の種類がさらに増える点から好ましい。
【0113】
本発明に係る光塩基発生剤において発生する塩基性物質としては、下記式Aで表されるアミンや下記式Bで表されるアミジンが挙げられる。
【0114】
【化18】


【0115】
(R、それぞれ独立に、水素又は1価の有機基であり、同一であっても異なっていても良い。Rは、それらが結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。但し、Rの少なくとも1つは1価の有機基である。また、Rは、それぞれ独立に、水素又は1価の有機基であり、同一であっても異なっていても良い。Rは、それらが結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。)
【0116】
なお、上記式(A)のRにおいて、式(B)に含まれるようなアミジン構造を有していている場合は、発生塩基としては上記式(A)のアミンではなく、上記式(B)のアミジンに属することとする。
【0117】
上記のような触媒効果等の、発生した塩基性物質が与える効果が大きい点から、発生する塩基性物質が脂肪族アミンもしくはアミジンであることが、塩基性の高いアミンである点から好ましい。その中でも、塩基性の観点からは、2級や3級の脂肪族アミンもしくはアミジンが好ましい。しかしながら脂肪族1級アミンを用いた場合でも、芳香族アミンを用いた場合に比べて、十分な触媒効果を得ることができる。そのため、脂肪族アミンの中でも、更に、5%重量減少温度や50%重量減少温度、熱分解温度といった熱物性や、溶解性といった他の物性面や、合成の簡便性やコストといった観点から、アミンやアミジンを適宜選択することが望ましい。
【0118】
本発明においては、上記脂肪族アミンを発生させ、高感度を達成し、さらには、露光部未露光部の溶解性コントラストを大きくする観点から、式(A)中のRの窒素原子と直接結合している全ての原子が、水素原子もしくはSP3軌道を有する炭素原子である(但し、Rの全てが水素原子である場合を除く。)ことが好ましい。
このような窒素原子と直接結合している原子がSP3軌道を有する炭素原子となるような置換基としては、直鎖脂肪族炭化水素基、分岐脂肪族炭化水素基、及び、環状脂肪族炭化水素基、又はこれらの組み合わせからなる脂肪族炭化水素基が挙げられる。なお、当該脂肪族炭化水素基は、芳香族基等の置換基を有していても良く、或いは、炭化水素鎖中にヘテロ原子等の炭化水素以外の結合を含んでいても良い。好適なものとして、炭素数1〜20の直鎖又は分岐の飽和又は不飽和アルキル基、炭素数4〜13のシクロアルキル基、炭素数7〜26のフェノキシアルキル基、炭素数7〜26のアリールアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基が挙げられる。
ここでRが上記環状脂肪族炭化水素基又は上記シクロアルキル基を有する場合には、Rの2つが連結して環状になって、Rが結合している窒素原子を含む複素環構造を形成している場合を含む。
【0119】
上記脂肪族炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、エチニル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、イソボルニル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、ベンジル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、Rの2つが連結して環状になって、Rが結合している窒素原子を含む複素環構造を形成している場合の複素環構造としては、例えば、アジリジン(3員環)、アゼチジン(4員環)、ピロリジン(5員環)、ピペリジン(6員環)、アゼパン(7員環)、アゾカン(8員環)等が挙げられる。これら複素環構造には直鎖又は分岐のアルキル基等の置換基を有していても良く、例えば、アルキル置換体として、メチルアジリジンなどのモノアルキルアジリジン、ジメチルアジリジンなどのジアルキルアジリジン、メチルアゼチジンなどのモノアルキルアゼチジン、ジメチルアゼチジンなどのジアルキルアゼチジン、トリメチルアゼチジンなどのトリアルキルアゼチジン、メチルピロリジンなどのモノアルキルピロリジン、ジメチルピロリジンなどのジアルキルピロリジン、トリメチルピロリジンなどのトリアルキルピロリジン、テトラメチルピロリジンなどのテトラアルキルピロリジン、メチルピペリジンなどのモノアルキルピペリジン、ジメチルピペリジンなどのジアルキルピペリジン、トリメチルピペリジンなどのトリアルキルピペリジン、テトラメチルピペリジンなどのテトラアルキルピペリジン、ペンタメチルピペリジンなどのペンタアルキルピペリジン等が挙げられる。
【0120】
本発明において、上記Rの有機基中の炭化水素原子基以外の結合としては、本発明の効果が損なわれない限り、特に限定されず、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(−N=C(−R)−、−C(=NR)−、ここでRは水素原子又は1価の有機基)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合、アゾ結合等が挙げられる。耐熱性の点から、有機基中の炭化水素原子基以外の結合としては、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(−N=C(−R)−、−C(=NR)−:ここでRは水素原子又は1価の有機基)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合が好ましい。
【0121】
本発明において、上記Rの有機基中の炭化水素原子基以外の置換基としては、本発明の効果が損なわれない限り、特に限定されず、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシル基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ヒドロキシイミノ基、飽和又は不飽和アルキルエーテル基、飽和又は不飽和アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、及びアリールチオエーテル基、アミノ基(−NH2, −NHR, −NRR’:ここで、R及びR'はそれぞれ独立に炭化水素原子基)等が挙げられる。上記置換基に含まれる水素原子は、炭化水素原子基によって置換されていても良い。また、上記置換基に含まれる炭化水素原子基は、直鎖、分岐、及び環状のいずれでも良い。
【0122】
本発明に係る光塩基発生剤の分解時に発生するアミンとしては、具体的には、n−ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、オクチルアミン、ベンジルアミンなどの第1級アミン類、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、などの直鎖状2級アミン類、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、アゼパン、アゾカンなどの環状2級アミンおよびこれらのアルキル置換体のような第2級アミン類、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、キヌクリジンおよび、3−キヌクリジノールのような脂肪族第3級アミン、ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン、およびイソキノリン、ピリジン、コリジン、ベータピコリンなどの複素環第3級アミンなどが挙げられる。
【0123】
本発明に係る光塩基発生剤の分解時に発生するアミジンとしては、具体的には、イミダゾール、プリン、トリアゾール、グアニジンなどの2級アミジン及びこれらの誘導体、ピリミジン、トリアジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)及び1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)などの3級アミジンおよびこれらの誘導体などが挙げられる。
【0124】
本発明における光塩基発生剤は、加熱して初期の重量から5%重量が減少したときの温度(5%重量減少温度)が150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることを好ましい。光塩基発生剤を感光性成分として含む低アウトガス感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて低アウトガス感光性ポリイミド絶縁層を形成する場合には、露光後現像前に行う加熱工程が、通常150〜200℃程度で行われるため、未露光部の光塩基発生剤が分解し難くなる点から好ましい。また、ポリイミド前駆体やポリイミドの場合、塗膜を形成する際にN−メチル−2−ピロリドンなどの高沸点溶媒を用いる必要があるが、このように5%重量減少温度が高い場合には残留溶媒の影響が少なくなるような乾燥条件で塗膜を形成することができる。これにより、残留溶媒の影響による露光部と未露光部での溶解性コントラストの減少を抑制することができる。
【0125】
一方で、本発明における感光性ポリイミド絶縁層中に上記塩基発生剤に由来する不純物が残存しないことが好ましいため、本発明における塩基発生剤は、現像後に行う加熱のプロセス(例えば、組み合わせる高分子がポリイミド前駆体の場合、イミド化のプロセス)で分解、又は揮発してしまうことが好ましい。具体的には、本発明における塩基発生剤は5%重量減少温度が300℃以下であることが好ましく、なかでも280℃以下であることが好ましく、特に、260℃以下であることが好ましい。
また、本発明においては、25%重量減少温度が300℃以下であることが好ましく、なかでも特に、50%重量減少温度が300℃以下であることが好ましい。
さらに、本発明においては、300℃における重量減少率が50%以上であることが好ましく、なかでも、70%以上、特に85%以上であることが好ましい。
【0126】
本発明においては、上述の塩基発生剤のなかでも、上記式(a)で表わされるものであることが好ましい。現像後に行う加熱のプロセスで分解、又は揮発しやすいものであるため、酸化物半導体層等を形成するようなその後のプロセスで、高温雰囲気下や真空雰囲気下に曝された場合であっても、揮発しアウトガスとなる成分の少ないものとすることができるからである。したがって、得られる低アウトガスポリイミド絶縁層をアウトガスの少ないものとすることができるからである。
【0127】
上記式(a)で表される塩基発生剤は、電磁波の照射と加熱を組み合わせることにより、少ない電磁波照射量で、効率的に塩基を発生することが可能であり、従来の所謂光塩基発生剤と比べて高い感度を有する。
上記式(a)で表される塩基発生剤は、上記特定構造を有するため、電磁波が照射されることにより、下記式で示されるように、式(a)中の(−CH=CH−C(=O)−)部分がシス体へと異性化し、さらに加熱によって環化し、塩基(NHR2122)を生成する。アミンの触媒作用によって、上記ポリイミド成分が最終生成物となる際の反応が開始される温度を下げたり、上記ポリイミド成分が最終生成物となる硬化反応を開始することができる。
上記式(a)で表される塩基発生剤は、電磁波が照射されるだけでも塩基を発生するが、適宜加熱をすることにより、塩基の発生が促進される。
【0128】
【化19】


【0129】
化学式(a)で表される塩基発生剤は、環化することで、フェノール性水酸基を消失し、溶解性が変化し、塩基性水溶液等の場合には溶解性が低下する。これにより、上記ポリイミド成分の最終生成物への反応による溶解性の低下を更に補助する機能を有し、露光部と未露光部の溶解性コントラストを大きくすることが可能となる。
【0130】
21及びR22は、それぞれ、独立に水素原子又は1価の有機基であるが、R21及びR22のうち少なくとも1つは1価の有機基である。また、NHR2122は、塩基(塩基性物質)であるが、R21及びR22は、それぞれ、アミノ基を含まない有機基であることが好ましい。R21及びR22に、アミノ基が含まれてしまうと、塩基発生剤自体が塩基性物質となり、上記ポリイミド成分の反応を促進してしまい、露光部と未露光部での溶解性コントラストの差が小さくなってしまう恐れがある。但し、例えば、R21及びR22の有機基中に存在する芳香環にアミノ基が結合している場合のように、電磁波の照射と加熱後に発生する塩基との塩基性と差が生じる場合には、R21及びR22の有機基にアミノ基を含まれていても用いることができる場合もある。
1価の有機基としては、飽和又は不飽和アルキル基、飽和又は不飽和シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び飽和又は不飽和ハロゲン化アルキル基等が挙げられる。これらの有機基は、当該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでよく、これらは、直鎖状でも分岐状でも良い。
【0131】
また、R21及びR22は、それらが結合して環状構造になっていても良い。
環状構造は、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素、複素環、及び縮合環、並びに当該脂環式炭化水素、複素環、及び縮合環よりなる群から選ばれる2種以上が組み合されてなる構造であっても良い。
【0132】
上記R21及びR22の有機基中の炭化水素基以外の結合としては、本発明の効果が損なわれない限り、特に限定されず、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(−N=C(−R)−、−C(=NR)−:ここでRは水素原子又は1価の有機基)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合、アゾ結合等が挙げられる。
耐熱性の点から、有機基中の炭化水素基以外の結合としては、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(−N=C(−R)−、−C(=NR)−:ここでRは水素原子又は1価の有機基)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合が好ましい。
【0133】
上記R21及びR22の有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、本発明の効果が損なわれない限り、特に限定されず、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシル基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ヒドロキシイミノ基、飽和又は不飽和アルキルエーテル基、飽和又は不飽和アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、及びアリールチオエーテル基、アミノ基(−NH2, −NHR, −NRR':ここで、R及びR'はそれぞれ独立に炭化水素基)、アンモニオ基等が挙げられる。上記置換基に含まれる水素は、炭化水素基によって置換されていても良い。また、上記置換基に含まれる炭化水素基は、直鎖、分岐、及び環状のいずれでも良い。
上記R21及びR22の有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシル基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ヒドロキシイミノ基、飽和又は不飽和アルキルエーテル基、飽和又は不飽和アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、及びアリールチオエーテル基が好ましい。
【0134】
生成する塩基性物質はNHR2122であるため、1級アミン、2級アミン、又は複素環式化合物が挙げられる。またアミンには、それぞれ、脂肪族アミン及び芳香族アミンがある。なお、ここでの複素環式化合物は、NHR2122が環状構造を有し且つ芳香族性を有しているものをいう。芳香族複素環式化合物ではない、非芳香族複素環式化合物は、ここでは脂環式アミンとして脂肪族アミンに含まれる。
【0135】
更に、生成するNHR2122は、アミド結合を形成可能なNH基を1つだけ有するモノアミン等の塩基性物質だけでなく、ジアミン、トリアミン、テトラアミン等のアミド結合を形成可能なNH基を2つ以上有する塩基性物質であってもよい。生成するNHR2122がNH基を2つ以上有する塩基性物質の場合、上記式(a)のR21及び/又はR22の1つ以上の末端に、アミド結合を形成可能なNH基を有する塩基を電磁波の照射と加熱により発生するような光潜在性部位が更に結合している構造が挙げられる。上記光潜在性部位としては、上記式(a)のR21及び/又はR22の1つ以上の末端に、式(a)のR21及び/又はR22を除いた残基が更に結合している構造が挙げられる。
【0136】
脂肪族1級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、イソアミルアミン、tert−ペンチルアミン、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、シクロヘプタンアミン、オクチルアミン、2−オクタンアミン、2,4,4−トリメチルペンタン−2−アミン、シクロオクチルアミン等が挙げられる。
【0137】
芳香族1級アミンとしては、アニリン、2−アミノフェノール、3−アミノフェノール、及び4−アミノフェノール等が挙げられる。
【0138】
脂肪族2級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、エチルメチルアミン、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、アゼパン、アゾカン、メチルアジリジン、ジメチルアジリジン、メチルアゼチジン、ジメチルアゼチジン、トリメチルアゼチジン、メチルピロリジン、ジメチルピロリジン、トリメチルピロリジン、テトラメチルピロリジン、メチルピペリジン、ジメチルピペリジン、トリメチルピペリジン、テトラメチルピペリジン、ペンタメチルピペリジン等が挙げられ、中でも脂環式アミンが好ましい。
【0139】
芳香族2級アミンとしては、メチルアニリン、ジフェニルアミン、及びN−フェニル−1−ナフチルアミンが挙げられる。また、アミド結合を形成可能なNH基を有する芳香族複素環式化合物としては、塩基性の点から分子内にイミノ結合(−N=C(−R)−、−C(=NR)−:ここでRは水素原子又は1価の有機基)を有することが好ましく、イミダゾール、プリン、トリアゾール、及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0140】
ジアミン以上のアミンとしてはエチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン等の直鎖状脂肪族アルキレンジアミン;1−ブチル−1,2−エタンジアミン、1,1−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1−エチル−1,4−ブタンジアミン、1,2−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,4−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、2,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン等の分岐状脂肪族アルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の一般式NH(CHCHNH)Hで示されるポリエチレンアミン類;シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン、メンセンジアミン等の脂環式ジアミン;p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ジアミン;ベンゼントリアミン、メラミン、2,4,6−トリアミノピリミジン等のトリアミン;2,4,5,6−テトラアミノピリミジン等のテトラアミンを挙げることができる。
【0141】
21及びR22の位置に導入される置換基によって、生成する塩基性物質の熱物性や塩基性度が異なる。
上記ポリイミド成分から最終生成物への反応に対する反応開始温度を低下させる等の触媒作用は、塩基性の大きい塩基性物質の方が触媒としての効果が大きく、より少量の添加で、より低い温度での最終生成物への反応が可能となる。一般に1級アミンよりは2級アミンの方が塩基性は高く、その触媒効果が大きい。
また、芳香族アミンよりも脂肪族アミンの方が塩基性が強いため好ましい。
【0142】
また、本発明で発生する塩基が、2級アミン及び/又は複素環式化合物である場合には、塩基発生剤としての感度が高くなる点から好ましい。これは、2級アミンや複素環式化合物を用いることで、アミド結合部位の活性水素がなくなり、このことにより、電子密度が変化し、異性化の感度が向上するからではないかと推定される。
【0143】
また、脱離する塩基の熱物性、及び塩基性度の点から、R21及びR22の有機基は、それぞれ独立に炭素数1〜20が好ましく、更に炭素数1〜12が好ましく、特に炭素数1〜8であることが好ましい。
【0144】
また、化学式(a)で表される塩基発生剤から生ずる塩基は、アミド結合を形成可能なNH基を1つ有するものであることが好ましい。発生する塩基がアミド結合を形成可能なNH基を2つ以上有する場合には、塩基発生剤において、電磁波の照射と加熱により切断されるアミド結合を2つ以上有することになり、例えば桂皮酸誘導体残基のような吸光団が1分子に2つ以上存在することになる。このような場合には、通常分子量が大きくなるため、溶剤溶解性が悪くなるという問題がある。また、吸光団を1分子内に2つ以上有する場合、吸光団と塩基が結合しているアミド結合が1つ切断されれば塩基になるが、吸光団を未だ含むような塩基は分子量が大きいため、拡散性が悪くなり、塩基発生剤として用いる場合の感度が悪くなってしまう。更に、塩基発生剤を合成する際、吸光団が1つの場合には、相対的に安価な塩基を過剰量加えて合成するが、吸光団が2つ以上の場合には、相対的に高価な吸光団部分の原料を過剰量加える必要がある。また、アミド結合を形成可能なNH基を2つ以上有するような塩基の場合、合成後の精製が困難であるという問題もある。中でも特に、ポリイミド前駆体と組み合わせる場合には、アミド結合を形成可能なNH基を1つ有するものであることが好ましい。
【0145】
発生する2級アミン及び/又は複素環式化合物の構造としては、中でも、下記式(b)で表されることが好ましい。
【0146】
【化20】


【0147】
(式(b)中、R21及びR22は、それぞれ独立に、1価の有機基であり、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数4〜22のシクロアルキル基である。R21及びR22は、同一であっても異なっていても良い。R21及びR22は、それらが結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。)
【0148】
式(b)のR21及びR22において、アルキル基は直鎖でも分岐でも良い。アルキル基としては更に炭素数1〜12であることが好ましく、シクロアルキル基としては更に炭素数4〜14であることが好ましい。また、R21及びR22が結合して置換基を有しても良い炭素数4〜12の環状構造となっている脂環式アミンも好ましい。また、R21及びR22が結合して置換基を有しても良い炭素数2〜12の環状構造となっている複素環式化合物も好ましい。
【0149】
23、R24、R25及びR26、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基又は1価の有機基であり、同一であっても異なっていても良い。R23、R24、R25及びR26、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。
ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素などが挙げられる。
1価の有機基としては、特に制限がなく、飽和又は不飽和アルキル基、飽和又は不飽和シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び飽和又は不飽和ハロゲン化アルキル基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、カルボキシル基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、ヒドロキシイミノ基等が挙げられる。これらの有機基は、当該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでよく、これらは、直鎖状でも分岐状でも良い。
【0150】
上記R23〜R26の有機基中の炭化水素基以外の結合としては、本発明の効果が損なわれない限り、特に限定されず、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合、アゾ結合等が挙げられる。
耐熱性の点から、有機基中の炭化水素基以外の結合としては、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(−N=C(−R)−、−C(=NR)−:ここでRは水素原子又は1価の有機基)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合が好ましい。
【0151】
上記R23〜R26の有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、本発明の効果が損なわれない限り、特に限定されず、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシル基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ヒドロキシイミノ基、飽和又は不飽和アルキルエーテル基、飽和又は不飽和アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、及びアリールチオエーテル基、アミノ基(−NH2, −NHR, −NRR':ここで、R及びR'はそれぞれ独立に炭化水素基)、アンモニオ基等が挙げられる。上記置換基に含まれる水素は、炭化水素基によって置換されていても良い。また、上記置換基に含まれる炭化水素基は、直鎖、分岐、及び環状のいずれでも良い。
中でも、R23〜R26の有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシル基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ヒドロキシイミノ基、飽和又は不飽和アルキルエーテル基、飽和又は不飽和アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、及びアリールチオエーテル基が好ましい。
【0152】
1価の有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜20のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数4〜23のシクロアルキル基;シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の炭素数4〜23のシクロアルケニル基;フェノキシメチル基、2−フェノキシエチル基、4−フェノキシブチル基等の炭素数7〜26のアリールオキシアルキル基(−ROAr基);ベンジル基、3−フェニルプロピル基等の炭素数7〜20のアラルキル基;シアノメチル基、β−シアノエチル基等のシアノ基をもつ炭素数2〜21のアルキル基;ヒドロキシメチル基等の水酸基をもつ炭素数1〜20のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基、アセトアミド基、ベンゼンスルホナミド基(CHSONH−)等の炭素数2〜21のアミド基、メチルチオ基、エチルチオ基等の炭素数1〜20のアルキルチオ基(−SR基)、アセチル基、ベンゾイル基等の炭素数1〜20のアシル基、メトキシカルボニル基、アセトキシ基等の炭素数2〜21のエステル基(−COOR基及び−OCOR基)、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、トリル基等の炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換した炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したベンジル基、シアノ基、及びメチルチオ基(−SCH)であることが好ましい。また、上記のアルキル部分は直鎖でも分岐状でも環状でも良い。
【0153】
また、R23〜R26は、それらのうち2つ以上が結合して環状構造になっていても良い。
環状構造は、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素、複素環、及び縮合環、並びに当該脂環式炭化水素、複素環、及び縮合環よりなる群から選ばれる2種以上が組み合されてなる構造であっても良い。例えば、R23〜R26は、それらの2つ以上が結合して、R23〜R26が結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成している場合も、吸収波長が長波長化する点から好ましい。
【0154】
本発明においては、R23、R24、R25及びR26の少なくとも1つが、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、又はアンモニオ基であることが望ましい。置換基R23〜R26に、上記のような置換基を少なくとも1つ導入することにより、吸収する光の波長を調整することが可能であり、置換基を導入することで所望の波長を吸収させるようにすることもできる。また、溶解性や組み合わせる高分子前駆体との相溶性が向上するようにすることもできる。これにより、組み合わせる上記ポリイミド成分の吸収波長も考慮しながら、感度を向上させることが可能である。
【0155】
所望の波長に対して吸収波長をシフトさせる為に、どのような置換基を導入したら良いかという指針として、Interpretation of the Ultraviolet Spectra of Natural Products(A.I.Scott 1964)や、有機化合物のスペクトルによる同定法第5版(R.M.Silverstein 1993)に記載の表を参考にすることができる。
【0156】
中でも、本発明における塩基発生剤において、R23、R24、R25及びR26の少なくとも1つが水酸基である場合、R23、R24、R25及びR26に水酸基を含まない化合物と比べ、塩基性水溶液等に対する溶解性の向上、および吸収波長の長波長化が可能な点から好ましい。また、特にR26がフェノール性水酸基である場合、シス体に異性化した化合物が環化する際の反応サイトが増えるため、環化しやすくなる点から好ましい。
【0157】
化学式(a)で表される構造は、(−CH=CH−C(=O)−)部分で幾何異性体が存在するが、トランス体のみを用いることが好ましい。しかし、合成および精製工程および保管時などにおいて幾何異性体であるシス体が混ざる可能性もあり、この場合トランス体とシス体の混合物を用いても良いが、溶解性コントラストを高められる点から、シス体の割合が10%未満であることが好ましい。
【0158】
なお、上記化学式(a)で表される塩基発生剤の重量減少温度は、上記置換基R23〜R26を適宜選択することにより、調整することができる。
【0159】
上記式(a)で表される塩基発生剤を用いる際の、塩基を発生させるための加熱温度としては、組み合わせるポリイミド成分や目的により適宜選択され、特に限定されない。塩基発生剤が置かれた環境の温度(例えば、室温)による加熱であっても良く、その場合、徐々に塩基が発生する。また、電磁波の照射時に副生される熱によっても塩基が発生するため、電磁波の照射時に副生される熱により実質的に加熱も同時に行われても良い。反応速度を高くし、効率よく塩基を発生させる点から、塩基を発生させるための加熱温度としては、30℃以上であることが好ましく、更に好ましくは60℃以上、より更に好ましくは100℃以上、特に好ましくは120℃以上である。しかしながら、組み合わせて用いられるポリイミド成分によっては、例えば60℃以上の加熱で未露光部についても硬化するものもあるので、好適な加熱温度は、上記に限定されない。
また、上記式(a)で表される塩基発生剤の塩基発生以外の分解を防ぐために、300℃以下で加熱することが好ましい。
【0160】
上記式(a)で表される塩基発生剤は電磁波の照射のみでも塩基を発生するが、適宜加熱することにより塩基の発生が促進される。従って、効率的に塩基を発生させるために、上記式(a)で表される塩基発生剤を用いる際には、露光後又は露光と同時に加熱を行うことにより塩基を発生する。露光と加熱を交互に行ってもよい。最も効率が良い方法は、露光と同時に加熱する方法である。
【0161】
本発明における化学式(a)で表される塩基発生剤の合成方法を、2−ヒドロキシ桂皮酸アミドを例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明における塩基発生剤は、複数の従来公知の合成ルートで合成することができる。
【0162】
2−ヒドロキシ桂皮酸アミドは、例えば、2−ヒドロキシ桂皮酸とシクロヘキシルアミンを反応させることにより合成できる。1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等の縮合剤存在下、2−ヒドロキシ桂皮酸とシクロヘキシルアミンをテトラヒドロフランに溶解し、撹拌することで目的物を得ることができる。
各置換基を導入した桂皮酸の合成は、対応する置換基を有するヒドロキシベンズアルデヒドにwittig反応または、Knoevenagel反応、又はPerkin反応を行うことで合成できる。中でも、wittig反応はトランス体が選択的に得られやすい点から好ましい。尚、例えば、上記対応する置換基を有するアルデヒドの合成は、対応する置換基を有するフェノール等にDuff反応やVilsmeier−Haack反応を行うことで合成できる。
【0163】
本発明における化学式(a)で表される塩基発生剤は、ポリイミド成分が最終生成物となるための塩基発生の機能を十分に発揮させるために、露光波長の少なくとも一部に対して吸収を有する必要がある。一般的な露光光源である高圧水銀灯の波長としては、365nm、405nm、436nmがある。このため、本発明における化学式(a)で表される塩基発生剤は、少なくとも365nm、405nm、436nmの波長の電磁波のうち少なくとも1つの波長の電磁波に対して吸収を有することが好ましい。このような場合、適用可能なポリイミド成分の種類がさらに増える点から好ましい。
【0164】
上記化学式(a)で表される塩基発生剤は、そのモル吸光係数が、電磁波の波長365nmにおいて100以上、又は405nmにおいて1以上であることが、適用可能なポリイミド成分の種類がさらに増える点から好ましい。
【0165】
なお、本発明における化学式(a)で表される塩基発生剤が上記波長領域に吸収を有することは、当該波長領域に吸収をもたない溶媒(例えば、アセトニトリル)に、化学式(a)で表される塩基発生剤を1×10−4mol/L以下の濃度(通常、1×10−4mol/L〜1×10−5mol/L程度。適度な吸収強度となるように、適宜、調節してもよい。)で溶解し、紫外可視分光光度計(例えば、UV−2550(株)島津製作所製)により吸光度を測定することにより明らかにすることができる。
【0166】
また、本発明に用いられるラジカル架橋性のモノマーとしては、例えば、エチレン性不飽和結合を1つ又は2つ以上有する化合物を用いることができ、より具体的には、アミド系モノマー、(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート、及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、スチレン等の芳香族ビニル化合物を挙げることができる。また、ポリイミド成分が、ポリアミック酸等のカルボン酸成分を構造内に有する場合には、3級アミノ基を有するエチレン性不飽和結合含有化合物を用いると、ポリイミド成分のカルボン酸とイオン結合を形成し、感光性ポリイミド樹脂組成物としたときの露光部、未露光部の溶解速度のコントラストが大きくなる。
【0167】
本発明に用いられる酸架橋性のモノマーとしては、例えば、4,4’−メチレンビス[2,6−ビス(ヒドロキシメチル)]フェノール(MBHP)、4,4’−メチレンビス[2,6−ビス(メトキシメチル)]フェノール(MBMP)、2,3−ジヒドロキシ−5−ヒドロキシメチルノルボルナン、2−ヒドロキシ−5,6−ビス(ヒドロキシメチル)ノルボルナン、シクロヘキサンジメタノール、3,4,8(又は9)−トリヒドロキシトリシクロデカン、2−メチル−2−アダマンタノール、1,4−ジオキサン−2,3−ジオール、1,3,5−トリヒドロキシシクロヘキサン等のヒドロキシル基又はヒドロキシアルキル基あるいはその両方を有する脂肪族環状炭化水素又はその含酸素誘導体が挙げられる。
【0168】
また、上記酸架橋性のモノマーとしては、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、尿素、エチレン尿素、プロピレン尿素、グリコールウリル等のアミノ基含有化合物にホルムアルデヒド又はホルムアルデヒドと低級アルコールを反応させ、当該アミノ基の水素原子をヒドロキシメチル基又は低級アルコキシメチル基で置換した化合物を用いることもできる。これらのうち、メラミンを用いたものをメラミン系架橋剤、尿素を用いたものを尿素系架橋剤、エチレン尿素、プロピレン尿素等のアルキレン尿素を用いたものをアルキレン尿素系架橋剤、グリコールウリルを用いたものをグリコールウリル系架橋剤という。
【0169】
メラミン系架橋剤としては、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサブトキシブチルメラミン等が挙げられる。
【0170】
尿素系架橋剤としては、例えば、ビスメトキシメチル尿素、ビスエトキシメチル尿素、ビスプロポキシメチル尿素、ビスブトキシメチル尿素等が挙げられる。
【0171】
アルキレン尿素系架橋剤としては、例えば、モノ及び/又はジヒドロキシメチル化エチレン尿素、モノ及び/又はジメトキシメチル化エチレン尿素、モノ及び/又はジエトキシメチル化エチレン尿素、モノ及び/又はジプロポキシメチル化エチレン尿素、モノ及び/又はジブトキシメチル化エチレン尿素等のエチレン尿素系架橋剤;モノ及び/又はジヒドロキシメチル化プロピレン尿素、モノ及び/又はジメトキシメチル化プロピレン尿素、モノ及び/又はジエトキシメチル化プロピレン尿素、モノ及び/又はジプロポキシメチル化プロピレン尿素、モノ及び/又はジブトキシメチル化プロピレン尿素等のプロピレン尿素系架橋剤;1,3−ジ(メトキシメチル)4,5−ジヒドロキシ−2−イミダゾリジノン、1,3−ジ(メトキシメチル)4,5−ジメトキシ−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。
【0172】
グリコールウリル系架橋剤としては、例えば、モノ,ジ,トリ及び/又はテトラヒドロキシメチル化グリコールウリル、モノ,ジ,トリ及び/又はテトラメトキシメチル化グリコールウリル、モノ,ジ,トリ及び/又はテトラエトキシメチル化グリコールウリル、モノ,ジ,トリ及び/又はテトラブトキシメチル化グリコールウリル等が挙げられる。
【0173】
本発明に用いられる光ラジカル発生剤、光酸発生剤のような光開始剤、ナフトキノンジアジド化合物や、エチレン性二重結合部位等の架橋するような成分等については、一般的な感光性ポリイミド樹脂組成物に用いられるものを使用することができる。
【0174】
本発明においては、上記光塩基発生剤の吸収波長がポリイミド成分の吸収波長と重なる部分があり、十分な感度が得られない場合において、感度向上の手段として、増感剤の添加が効果を発揮する場合がある。また、ポリイミド成分を透過する電磁波の波長帯に上記光塩基発生剤が吸収波長を有する場合においても、感度向上の手段として、増感剤を添加することができる。ただし、増感剤の添加によるポリイミド成分の含有率の減少に伴う、得られるパターンの膜物性、特に膜強度や耐熱性の低下に関して考慮に入れる必要がある。
【0175】
増感剤と呼ばれる化合物の具体例としては、チオキサントン及び、ジエチルチオキサントンなどのその誘導体、シアニン及び、その誘導体、メロシアニン及び、その誘導体、クマリン系及び、その誘導体、ケトクマリン及び、その誘導体、ケトビスクマリン、及びその誘導体、シクロペンタノン及び、その誘導体、シクロヘキサノン及び、その誘導体、チオピリリウム塩及び、その誘導体、キノリン系及び、その誘導体、スチリルキノリン系及び、その誘導体、チオキサンテン系、キサンテン系及び、その誘導体、オキソノール系及び、その誘導体、ローダミン系及び、その誘導体、ピリリウム塩及び、その誘導体等が挙げられる。
【0176】
シアニン、メロシアニン及び、その誘導体の具体例としては、3,3’−ジカルボキシエチル−2,2’チオシアニンブロミド、1−カルボキシメチル−1’−カルボキシエチル−2,2’−キノシアニンブロミド、1,3’−ジエチル−2,2’−キノチアシアニンヨ−ジド、3−エチル−5−[(3−エチル−2(3H)−ベンゾチアゾリデン)エチリデン]−2−チオキソ−4−オキサゾリジン等が挙げられる。
クマリン、ケトクマリン及び、その誘導体の具体例としては、3−(2’−ベンゾイミダゾール)−7−ジエチルアミノクマリン、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3,3’−カルボニルビスクマリン、3,3’−カルボニルビス(5,7−ジメトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−アセトキシクマリン)等が挙げられる。
チオキサントン及び、その誘導体の具体例としては、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。
【0177】
さらに他にはベンゾフェノン、アセトフェノン、アントロン、p,p’−テトラメチルジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、フェナントレン、2−ニトロフルオレン、5−ニトロアセナフテン、ベンゾキノン、N−アセチル−p−ニトロアニリン、p−ニトロアニリン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、N−アセチル−4−ニトロ−1−ナフチルアミン、ピクラミド、1,2−ベンズアンスラキノン、3−メチル−1,3−ジアザ−1,9−ベンズアンスロン、p,p’−テトラエチルジアミノベンゾフェノン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、ジベンザルアセトン、1,2−ナフトキノン、2,5−ビス−(4’−ジエチルアミノベンザル)−シクロペンタン、2,6−ビス−(4’−ジエチルアミノベンザル)−シクロヘキサノン、2,6−ビス−(4’−ジメチルアミノベンザル)−4−メチル−シクロヘキサノン、2,6−ビス−(4’−ジエチルアミノベンザル)−4−メチル−シクロヘキサノン、4,4’−ビス−(ジメチルアミノ)−カルコン、4,4’−ビス−(ジエチルアミノ)−カルコン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、1,3−ビス−(4’−ジメチルアミノベンザル)−アセトン、1,3−ビス−(4’−ジエチルアミノベンザル)−アセトン、N−フェニル−ジエタノールアミン、N−p−トリル−ジエチルアミン、などが挙げられる。
本発明ではこれらの増感剤を1種または2種以上使用することができる。
【0178】
c.溶媒
本発明に用いられる溶媒としては、上記ポリイミド成分や感光性成分を均一に分散または溶解することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールモノエーテル類(いわゆるセロソルブ類);メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、前記グリコールモノエーテル類の酢酸エステル(例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート)、メトキシプロピルアセテート、エトキシプロピルアセテート、蓚酸ジメチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類;エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;塩化メチレン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、1−クロロプロパン、1−クロロブタン、1−クロロペンタン、クロロベンゼン、ブロムベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドンなどのピロリドン類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、その他の有機極性溶媒類等が挙げられ、更には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及び、その他の有機非極性溶媒類等も挙げられる。これらの溶媒は単独若しくは組み合わせて用いられる。
中でも、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルフォスホアミド、N−アセチル−2−ピロリドン、ピリジン、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン等の極性溶媒が好適なものとして挙げられる。
【0179】
また、ポリイミド成分としてポリイミド前駆体であるポリアミック酸を用いる場合には、ポリアミック酸の合成反応により得られた溶液をそのまま溶媒として用い、そこに必要に応じて他の成分を混合しても良い。
【0180】
d.その他
本発明における感光性ポリイミド樹脂組成物は、少なくとも上記ポリイミド成分、感光性成分、および溶剤を含むものであるが、必要に応じて他の成分を含むものであっても良い。
このような他の成分としては、熱硬化性成分、ポリイミド前駆体以外の非重合性バインダー樹脂、その他の添加剤を配合して、感光性ポリイミド樹脂組成物を調製してもよい。
【0181】
本発明においては、上記感光性ポリイミド樹脂組成物に加工特性や各種機能性を付与するために、その他に様々な有機又は無機の低分子又は高分子化合物を配合してもよい。例えば、染料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子等を用いることができる。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、コロイダルシリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子等が含まれ、それらは多孔質や中空構造であってもよい。また、その機能又は形態としては顔料、フィラー、繊維等がある。
【0182】
また、本発明における他の任意成分の配合割合は、上記感光性ポリイミド樹脂組成物の固形分全体に対し、0.1重量%〜20重量%の範囲が好ましい。0.1重量%未満だと、添加物を添加した効果が発揮されにくく、20重量%を超えると、最終的に得られる樹脂硬化物の特性が最終生成物に反映されにくいからである。
【0183】
(ii)感光性ポリイミド絶縁層
本発明に用いられる感光性ポリイミド絶縁層は、上記感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成されたものである。
【0184】
本発明における感光性ポリイミド絶縁層は、上記半導体層接触絶縁層の少なくとも一つであれば良く、既に説明した図1〜3に示すように、トップゲート型TFTにおけるゲート絶縁層や、ボトムゲート型TFTにおけるゲート絶縁層、パッシベーション層として用いられるものである。
本発明においては、なかでも、上記半導体層接触絶縁層のうち、トップゲート型TFTにおけるゲート絶縁層、または、ボトムゲート型TFTにおけるゲート絶縁層およびパッシベーション層の少なくとも一方、として少なくとも用いられることが好ましく、特に、上記半導体層接触絶縁層のうち、トップゲート型TFTにおけるゲート絶縁層、または、ボトムゲート型TFTにおけるパッシベーション層として少なくとも用いられることが好ましく、なかでも特に、上記半導体層接触絶縁層のうち、トップゲート型TFTにおけるゲート絶縁層、または、ボトムゲート型TFTにおけるゲート絶縁層およびパッシベーション層の両者として少なくとも用いられることが好ましく、さらに好ましくは、上記半導体層接触絶縁層の全てとして用いられることが好ましい。上記ゲート絶縁層およびパッシベーション層は、上記半導体層接触絶縁層のなかでも酸化物半導体層との接触面積が広く、上記半導体層接触絶縁層からのアウトガスの影響を受け易いものである。このため、これらの半導体層接触絶縁層を感光性ポリイミド絶縁層とすることにより、上記酸化物半導体層をより不純物の少ないものとすることができ、本発明の効果をより効果的に発揮することができるからである。また、簡便なプロセスとすることができるからである。
また、トップゲート型TFTにおけるゲート絶縁層およびボトムゲート型TFTにおけるパッシベーション層は、通常、上記酸化物半導体層を覆うように形成されるものである。このため、上記感光性ポリイミド樹脂組成物がポリイミド前駆体を含む場合、上記感光性ポリイミド絶縁層は、上記酸化物半導体層の形成後に上記感光性ポリイミド樹脂組成物を塗布し、次いで、イミド化されることにより形成される。したがって、上記酸化物半導体層の水蒸気アニール処理を別途実施することなく、イミド化と同時に上記酸化物半導体層の水蒸気アニール処理を行うことができ、簡便にスイッチング特性により優れたものとすることができるからである。
さらに、上記半導体層接触絶縁層の全てを上記感光性ポリイミド絶縁層とすることにより、本発明の効果をより効果的に発揮することができるからである。
【0185】
本発明における感光性ポリイミド絶縁層は絶縁性を備えるものである。具体的には、上記感光性ポリイミド絶縁層の体積抵抗は、1.0×109Ω・m以上であることが好ましく、なかでも、1.0×1010Ω・m以上であることがより好ましく、特に、1.0×1011Ω・m以上であることが好ましい。
なお、体積抵抗は、JIS K6911、JIS C2318、ASTM D257 などの規格に準拠する手法で測定することが可能である。
【0186】
本発明における感光性ポリイミド絶縁層の膜厚としては、用いられる半導体層接触絶縁層に応じて適宜設定されるものであり、一般的な半導体層接触絶縁層と同様とすることができる。
【0187】
本発明における感光性ポリイミド絶縁層は、少なくとも上記ポリイミド樹脂を含むものであるが、アウトガス発生量を所望の範囲内とできる範囲において、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、増感剤等の添加剤や、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、カルド系樹脂、ビニル系樹脂、イミド系樹脂、ノボラック系樹脂等の絶縁性有機材料等を含むものであっても良い。
【0188】
本発明の感光性ポリイミド絶縁層に含まれるポリイミド樹脂のイミド化率としては、所望の絶縁性、耐熱性、低アウトガス性等の特性を発揮できるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、90%以上であることが好ましく、なかでも、95%以上であることが好ましく、特に100%、すなわち、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸を含まないものであることが好ましい。上記イミド化率が上記範囲であることにより、耐熱性、低アウトガス性に特に優れたものとすることができるからである。
【0189】
本発明における感光性ポリイミド絶縁層の形成方法としては、上記感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、フォトリソグラフィー法、印刷法等を用いることができる。
フォトリソグラフィー法としては、例えば、上記感光性ポリイミド樹脂組成物を上記基板上に塗布することにより感光性ポリイミド樹脂膜を形成した後、マスクを介したパターン露光、および現像を行う方法を挙げることができる。
上記塗布方法としては、スピンコート法、ダイコート法、ディップコート法、バーコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法を用いることができる。
また、印刷法としては、グラビア印刷やフレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット法など公知の印刷技術を用いた方法を例示することができる。
【0190】
また、上記感光性ポリイミド樹脂組成物が、上記ポリイミド成分としてポリイミド前駆体を含む場合には、上記ポリイミド前駆体のイミド化が行われる。
上記ポリイミド前駆体をイミド化する方法としては、上記ポリイミド前駆体に含まれるポリアミック酸を脱水閉環反応によりイミド化できる方法であれば特に限定されるものではないが、通常、アニール処理(加熱処理)を用いる方法を用いることができる。
このようなアニール温度(加熱温度)としては、用いるポリイミド前駆体の種類や、本発明のTFT基板を構成する部材の耐熱性等を考慮して適宜設定されるものであるが、通常、200℃〜500℃の範囲内で行われ、なかでも、250℃〜400℃の範囲内であることが好ましく、特に、上記ポリイミド前駆体の硬化後の物性および低アウトガス性の観点からは280℃〜400℃の範囲内であることが好ましい。上述した温度範囲であることによりイミド化を十分に進行させることができ、他の部材の熱劣化を抑制することができるからである。
【0191】
本発明において、上記イミド化を行うタイミングとしては、上記感光性ポリイミド絶縁層を安定的に形成できるものであれば特に限定されるものではないが、上記酸化物半導体層が形成された後であること、すなわち、上記感光性ポリイミド絶縁層が、上記ポリイミド前駆体を含む感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成されるものである場合、上記酸化物半導体層の形成後に上記ポリイミド前駆体をイミド化して形成されるものであることが好ましい。上記酸化物半導体の水蒸気アニール処理を同時に行うことができるからである。
したがって、上記感光性ポリイミド絶縁層上に上記酸化物半導体層が形成される場合には、上記感光性ポリイミド絶縁層の塗膜をパターニングし、イミド化前または後のプロセスに耐えられるように、上記ポリイミド前駆体の一部をイミド化(部分イミド化)した後に上記酸化物半導体層を形成し、その後、残りのポリイミド前駆体のイミド化を行い、その際に副生する水を用いて、上記酸化物半導体層の水蒸気アニールを行うことが好ましい。
【0192】
(b)半導体層接触絶縁層
本発明に用いられる半導体層接触絶縁層は、少なくとも一つが上記感光性ポリイミド絶縁層であれば良い。
本発明においては、他の上記半導体層接触絶縁層が、上記感光性ポリイミド絶縁層以外の他の絶縁層であっても良い。
このような他の絶縁層としては、所望の絶縁性能を発揮することができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的なTFTにおける絶縁層と同様のものを用いることができ、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の絶縁性無機材料や、上記絶縁性有機材料を用いてなるものを挙げることができる。
【0193】
(2)酸化物半導体層
本発明に用いられる酸化物半導体層は、酸化物半導体からなるものである。
このような酸化物半導体としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO)、酸化マグネシウム亜鉛(MgZn1−xO)、酸化カドミウム亜鉛(CdZn1−xO)、酸化カドミウム(CdO)、酸化インジウム(In)、酸化ガリウム(Ga)、酸化スズ(SnO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化タングステン(WO)、InGaZnO系、InGaSnO系、InGaZnMgO系、InAlZnO系、InFeZnO系、InGaO系、ZnGaO系、InZnO系を用いることができる。
【0194】
本発明に用いられる酸化物半導体層の形成方法および厚みとしては、一般的なものと同様とすることができる。
【0195】
(3)TFT
本発明に用いられるTFTの構造としては、上記酸化物半導体層および半導体層接触絶縁層を有するものであれば特に限定されるものではなく、トップゲート構造(正スタガ型、コプレーナ型構造)、ボトムゲート構造(逆スタガ型、コプレーナ型構造)を挙げることができる。トップゲート構造(正スタガ型)およびボトムゲート構造(逆スタガ型)の場合には、さらにトップコンタクト構造、ボトムコンタクト構造を挙げることができる。これらの構造は、TFTを構成する酸化物半導体層の種類に応じて適宜選択される。
【0196】
本発明に用いられるTFTは、上記酸化物半導体層および半導体層接触絶縁層以外に、通常、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極を有するものである。
また、必要に応じて、上記半導体層接触絶縁層以外に半導体層非接触絶縁層を有するものであっても良い。
【0197】
本発明におけるゲート電極、ソース電極およびドレイン電極としては、所望の導電性を備えるものであれば特に限定されるものではなく、一般的にTFTに用いられる導電性材料を用いることができる。このような材料の例としては、Ta、Ti、Al、Zr、Cr、Nb、Hf、Mo、Au、Ag、Pt、Mo−Ta合金、W−Mo合金、ITO、IZO等の無機材料、および、PEDOT/PSS等の導電性を有する有機材料を挙げることができる。
ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の形成方法および厚みとしては、一般的なものと同様とすることができる。
【0198】
本発明における半導体層非接触絶縁層としては、所望の絶縁性を有するものであれば特に限定されるものではなく、上記「(1)半導体層接触絶縁層」の項に記載の材料を含むものとすることができる。
本発明においては、なかでも、上記感光性ポリイミド樹脂組成物からなるものであることが好ましい。簡便なプロセスとすることができ、低コスト化を図るとともに、スイッチング特性に優れたものとすることができるからである。
【0199】
2.基板
本発明に用いられる基板としては、上記TFTを支持することができる基板であれば特に限定されるものではなく、例えば、非可撓性の基板や、可撓性を有するフレキシブル基板を用いることができる。
本発明においては、なかでも、上記フレキシブル基板であることが好ましい。大面積での製造が容易であり、耐衝撃性に優れたフレキシブルTFT基板とすることができるからである。また、上記感光性ポリイミド絶縁層は、無機物からなる絶縁層と異なり、上記基板をフレキシブル基板とした場合であってもクラックが入る等の不具合を生じないからである。
【0200】
本発明における非可撓性基板の材料としては、例えば、ガラス、シリコン、金属板等を挙げることができる。
【0201】
また、上記フレキシブル基板としては、樹脂からなるフィルムや、金属箔上にフィルムが積層されたものを用いることができる。
本発明においては、なかでも、上記金属箔と、上記金属箔上に形成され、ポリイミドを含む平坦化層とを有するフレキシブル基板であることが好ましく、特に、上記平坦化層上に無機化合物を含む密着層を有するものであることが好ましい。
上記平坦化層を有することにより、金属箔上にポリイミドを含む平坦化層が形成されているので、金属箔表面の凹凸を平坦化することができ、TFTの電気的性能の低下を防ぐことができるからである。
また、上記密着層を有することにより、TFTとの密着性に優れており、フレキシブルTFT基板の製造時に水分や熱が加わってポリイミドを含む平坦化層の寸法が変化した場合であっても、TFTを構成する電極や酸化物半導体層に剥離やクラックが生じるのを防ぐことができるからである。
以下、このような金属箔、平坦化層および密着層について詳細に説明する。
【0202】
(1)密着層
本発明における密着層は、平坦化層上に形成され、無機化合物を含むものであり、ポリイミドを含む平坦化層とフレキシブル基板上に作製されるTFTとの間で十分な密着力を得るために設けられる層である。
【0203】
密着層は平滑性を有することが好ましい。密着層の表面粗さRaは、金属箔の表面粗さRaよりも小さければよく、具体的に、25nm以下であることが好ましく、より好ましくは10nm以下である。密着層の表面粗さRaが大きすぎると、TFTの電気的性能が劣化するおそれがあるからである。
【0204】
なお、上記表面粗さRaは、原子間力顕微鏡(AFM)もしくは走査型白色干渉計を用いて測定した値である。例えば、AFMを用いて測定する場合は、Nanoscope V multimode(Veeco社製)を用いて、タッピングモードで、カンチレバー:MPP11100、走査範囲:50μm×50μm、走査速度:0.5Hzにて、表面形状を撮像し、得られた像から算出した粗さ曲線の中心線からの平均のずれを算出することよりRaを求めることができる。また、走査型白色干渉計を用いて測定する場合は、New View 5000(Zygo社製)を用いて、対物レンズ:100倍、ズームレンズ:2倍、Scan Length:15μmにて、50μm×50μmの範囲の表面形状を撮像し、得られた像から算出した粗さ曲線の中心線からの平均のずれを算出することよりRaを求めることができる。
【0205】
また、密着層は耐熱性を有することが好ましい。TFTの作製時には通常、高温処理が施されるからである。密着層の耐熱性としては、密着層の5%重量減少温度が300℃以上であることが好ましい。
なお、5%重量減少温度の測定については、熱分析装置(DTG−60((株)島津製作所製))を用いて、雰囲気:窒素雰囲気、温度範囲:30℃〜600℃、昇温速度:10℃/minにて、熱重量・示差熱(TG−DTA)測定を行い、試料の重量が5%減る温度を5%重量減少温度(℃)とした。
【0206】
密着層は、通常、絶縁性を有する。フレキシブル基板上にTFTを作製するためには絶縁性が求められるからである。
【0207】
また、密着層は、ポリイミドを含む平坦化層に含まれる不純物イオンなどがTFTの酸化物半導体層に拡散するのを防ぐものであることが好ましい。具体的に、密着層のイオン透過性としては、鉄(Fe)イオン濃度が0.1ppm以下であることが好ましく、あるいはナトリウム(Na)イオン濃度が50ppb以下であることが好ましい。なお、Feイオン、Naイオンの濃度の測定方法としては、密着層上に形成された層をサンプリングして抽出した後、イオンクロマトグラフィー法により分析する方法が用いられる。
【0208】
密着層を構成する無機化合物としては、上述の特性を満たすものであれば特に限定されるものではなく、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、酸化クロム、酸化チタンを挙げることができる。これらは1種であってもよく2種以上であってもよい。
【0209】
密着層は、単層であってもよく多層であってもよい。
密着層が多層膜である場合、上述の無機化合物からなる層が複数層積層されていてもよく、上述の無機化合物からなる層と金属からなる層とが積層されていてもよい。この場合に用いられる金属としては、上述の特性を満たす密着層を得ることができれば特に限定されるものではなく、例えば、クロム、チタン、アルミニウム、ケイ素を挙げることができる。
また、密着層が多層膜である場合、密着層の最表層は酸化ケイ素膜であることが好ましい。酸化ケイ素膜は上述の特性を十分に満たすからである。この場合の酸化ケイ素はSiO(Xは1.5〜2.0の範囲内)であることが好ましい。
【0210】
本発明においては、なかでも、密着層3は、図4に例示するように、平坦化層2上に形成され、クロム、チタン、アルミニウム、ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、酸化クロムおよび酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1種からなる第1密着層3aと、第1密着層3a上に形成され、酸化ケイ素からなる第2密着層3bとを有することが好ましい。第1密着層により平坦化層と第2密着層との密着性を高めることができ、第2密着層により平坦化層とフレキシブル基板上に作製されるTFTとの密着性を高めることができるからである。また、酸化ケイ素からなる第2密着層は上述の特性を十分に満たすからである。
【0211】
密着層の厚みは、上述の特性を満たすことができる厚みであれば特に限定されないが、具体的には、1nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。なかでも、密着層が上述したように第1密着層および第2密着層を有する場合、第2密着層の厚みは第1密着層よりも厚く、第1密着層は比較的薄く、第2密着層は比較的厚いことが好ましい。この場合、第1密着層の厚みは、0.1nm〜50nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5nm〜20nmの範囲内、さらに好ましくは1nm〜10nmの範囲内である。また、第2密着層の厚みは、10nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは50nm〜300nmの範囲内、さらに好ましくは80nm〜120nmの範囲内である。厚みが薄すぎると、十分な密着性が得られないおそれがあり、厚みが厚すぎると、密着層にクラックが生じるおそれがあるからである。
【0212】
密着層は、金属箔上に全面に形成されていてもよく、金属箔上に部分的に形成されていてもよい。なかでも、後述するように平坦化層が金属箔上に部分的に形成されている場合には、図5(a)に例示するように、密着層3も平坦化層2と同様に金属箔1上に部分的に形成されていることが好ましい。金属箔上に直に無機化合物を含む密着層が形成されていると、密着層にクラックなどが生じる場合があるからである。すなわち、密着層および平坦化層は同様の形状であることが好ましい。
【0213】
密着層の形成方法としては、上述の無機化合物からなる層や上述の金属からなる層を形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、DC(直流)スパッタリング法、RF(高周波)マグネトロンスパッタリング法、プラズマCVD(化学気相蒸着)法等を挙げることができる。なかでも、上述の無機化合物からなる層を形成する場合であって、アルミニウムやケイ素を含む層を形成する場合には、反応性スパッタリング法を用いることが好ましい。平坦化層との密着性に優れる膜が得られるからである。
【0214】
(2)平坦化層
本発明における平坦化層は、金属箔上に形成され、ポリイミドを含むものであり、金属箔表面の凹凸を平坦化するために設けられる層である。
【0215】
平坦化層の表面粗さRaとしては、金属箔の表面粗さRaよりも小さければよいが、具体的には、25nm以下であることが好ましく、より好ましくは10nm以下である。なお、上記表面粗さの測定方法については、上記密着層の表面粗さの測定方法と同様である。
【0216】
平坦化層はポリイミドを含むものであり、好ましくはポリイミドを主成分とする。一般にポリイミドは吸水性を有する。TFTに用いられる半導体材料には水分に弱いものが多いことから、素子内部の水分を低減し、湿気存在下において高い信頼性を実現するために、平坦化層は吸水性が比較的小さいことが好ましい。吸水性の指標の一つとして、吸湿膨張係数があり、吸湿膨張係数が小さいほど、吸水性が小さくなる。したがって、平坦化層の吸湿膨張係数は小さければ小さいほど好ましく、具体的には0ppm/%RH〜15ppm/%RHの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0ppm/%RH〜12ppm/%RHの範囲内、さらに好ましくは0ppm/%RH〜10ppm/%RHの範囲内である。平坦化層の吸湿膨張係数が上記範囲であれば、平坦化層の吸水性を十分小さくすることができ、フレキシブル基板の保管が容易であり、フレキシブルTFT基板を作製する場合の工程が簡便になる。さらに、吸湿膨張係数が小さいほど、寸法安定性が向上する。平坦化層の吸湿膨張係数が大きいと、吸湿膨張係数がほとんどゼロに近い金属箔との膨張率の差によって、湿度の上昇とともにフレキシブル基板が反ったり、平坦化層および金属箔の密着性が低下したりする場合がある。したがって、製造過程においてウェットプロセスが行われる場合にも、吸湿膨張係数が小さいことが好ましい。
【0217】
なお、吸湿膨張係数は、次のように測定する。まず、平坦化層のみのフィルムを作製する。平坦化層フィルムの作成方法は、耐熱フィルム(ユーピレックス S 50S(宇部興産(株)製))やガラス基板上に平坦化層フィルムを作製した後、平坦化層フィルムを剥離する方法や金属基板上に平坦化層フィルムを作製した後、金属をエッチングで除去し平坦化層フィルムを得る方法などがある。次いで、得られた平坦化層フィルムを幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとする。吸湿膨張係数は、湿度可変機械的分析装置(Thermo Plus TMA8310(リガク社製))によって測定する。例えば、温度を25℃で一定とし、まず、湿度を15%RHの環境下でサンプルが安定となった状態とし、概ね30分〜2時間その状態を保持した後、測定部位の湿度を20%RHとし、さらにサンプルが安定になるまで30分〜2時間その状態を保持する。その後、湿度を50%RHに変化させ、それが安定となった際のサンプル長と20%RHで安定となった状態でのサンプル長との違いを、湿度の変化(この場合50−20の30)で割り、その値をサンプル長で割った値を吸湿膨張係数(C.H.E.)とする。測定の際、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重は1g/25000μm2とする。
【0218】
また、平坦化層の線熱膨張係数は、寸法安定性の観点から、金属箔の線熱膨張係数との差が15ppm/℃以下であることが好ましく、より好ましくは10ppm/℃以下、さらに好ましくは5ppm/℃以下である。平坦化層と金属箔との線熱膨張係数が近いほど、フレキシブル基板の反りが抑制されるとともに、フレキシブル基板の熱環境が変化した際に、平坦化層と金属箔との界面の応力が小さくなり密着性が向上する。また、フレキシブル基板は、取り扱い上、0℃〜100℃の範囲の温度環境下では反らないことが好ましいのであるが、平坦化層の線熱膨張係数が大きいために平坦化層および金属箔の線熱膨張係数が大きく異なると、フレキシブル基板が熱環境の変化により反ってしまう。
なお、フレキシブル基板に反りが発生していないとは、フレキシブル基板を幅10mm、長さ50mmの短冊状に切り出し、得られたサンプルの一方の短辺を水平で平滑な台上に固定した際に、サンプルのもう一方の短辺の台表面からの浮上距離が1.0mm以下であることをいう。
【0219】
具体的に、平坦化層の線熱膨張係数は、寸法安定性の観点から、0ppm/℃〜30ppm/℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0ppm/℃〜25ppm/℃の範囲内、さらに好ましくは0ppm/℃〜18ppm/℃の範囲内、特に好ましくは0ppm/℃〜12ppm/℃の範囲内、最も好ましくは0ppm/℃〜7ppm/℃の範囲内である。
【0220】
なお、線熱膨張係数は、次のように測定する。まず、平坦化層のみのフィルムを作製する。平坦化層フィルムの作成方法は、上述したとおりである。次いで、得られた平坦化層を幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとする。線熱膨張係数は、熱機械分析装置(例えばThermo Plus TMA8310(リガク社製))によって測定する。測定条件は、昇温速度を10℃/min、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2とし、100℃〜200℃の範囲内の平均の線熱膨張係数を線熱膨張係数(C.T.E.)とする。
【0221】
平坦化層は絶縁性を備えるものである。具体的に、上記感光性ポリイミド絶縁層と同様とすることができる。
【0222】
平坦化層を構成するポリイミドとしては、上述の特性を満たすものであれば特に限定されるものではない。例えば、ポリイミドの構造を適宜選択することで、吸湿膨張係数や線熱膨張係数を制御することが可能である。
【0223】
ポリイミドとしては、平坦化層の線熱膨張係数や吸湿膨張係数をフレキシブル基板に好適なものとする観点から、芳香族骨格を含むポリイミドであることが好ましい。ポリイミドのなかでも芳香族骨格を含有するポリイミドは、その剛直で平面性の高い骨格に由来して、耐熱性や薄膜での絶縁性に優れ、線熱膨張係数も低いことから、フレキシブル基板の平坦化層に好ましく用いられる。
【0224】
ポリイミドは、低吸湿膨張、低線熱膨張であることが求められるため、下記式(21)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。このようなポリイミドは、その剛直な骨格に由来する高い耐熱性や絶縁性を示すとともに、金属と同等の線熱膨張を示す。さらには、吸湿膨張係数も小さくすることが可能である。
【0225】
【化21】

【0226】
(式(21)中、R31は4価の有機基、R32は2価の有機基であり、繰り返されるR31同士およびR32同士はそれぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。mは1以上の自然数である。)
【0227】
式(21)において、一般に、R31はテトラカルボン酸二無水物由来の構造であり、R32はジアミン由来の構造である。
【0228】
本発明における平坦化層に含まれるポリイミドに適用可能なテトラカルボン酸二無水物としては、上述の特性を有するポリイミドを形成可能なものであれば特に限定されるものではなく、具体的には、上記「1.TFT」の項に記載のポリイミド成分に適用可能なテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。
【0229】
本発明における平坦化層に含まれるポリイミドの耐熱性、線熱膨張係数などの観点から好ましく用いられるテトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物である。特に好ましく用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、メロファン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物が挙げられる。
なかでも、吸湿膨張係数を低減させる観点から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物が特に好ましい。
【0230】
併用するテトラカルボン酸二無水物としてフッ素が導入されたテトラカルボン酸二無水物を用いると、ポリイミドの吸湿膨張係数が低下する。しかしながら、フッ素を含んだ骨格を有するポリイミド前駆体は、塩基性水溶液に溶解しにくく、アルコール等の有機溶媒と塩基性水溶液との混合溶液によって現像を行う必要がある。
また、ピロメリット酸二無水物、メロファン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などの剛直なテトラカルボン酸二無水物を用いると、ポリイミドの線熱膨張係数が小さくなるので好ましい。なかでも、線熱膨張係数と吸湿膨張係数とのバランスの観点から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が特に好ましい。
【0231】
テトラカルボン酸二無水物として脂環骨格を有する場合、ポリイミド前駆体の透明性が向上するため、高感度となる。一方で、ポリイミドの耐熱性や絶縁性が芳香族ポリイミドと比較して劣る傾向にある。
【0232】
芳香族のテトラカルボン酸二無水物を用いた場合、耐熱性に優れ、低線熱膨張係数を示すポリイミドとなるというメリットがある。したがって、ポリイミドにおいて、上記式(21)中のR31のうち33モル%以上が、下記式で表わされるいずれかの構造であることが好ましい。
【0233】
【化22】


【0234】
本発明における平坦化層に含まれるポリイミドが上記式のいずれかの構造を含むと、これら剛直な骨格に由来し、低線熱膨張および低吸湿膨張を示す。さらには、市販で入手が容易であり、低コストであるというメリットもある。
上記のような構造を有するポリイミドは、高耐熱性、低線熱膨張係数を示すポリイミドである。そのため、上記式で表わされる構造の含有量は上記式(21)中のR31のうち100モル%に近ければ近いほど好ましいが、少なくとも上記式(21)中のR31のうち33%以上含有すればよい。なかでも、上記式で表わされる構造の含有量は上記式(21)中のR31のうち50モル%以上であることが好ましく、さらに70モル%以上であることが好ましい。
【0235】
一方、本発明における平坦化層に含まれるポリイミドに適用可能なジアミン成分も、1種類のジアミン単独で、または2種類以上のジアミンを併用して用いることができる。用いられるジアミン成分は特に限定されるものではなく、例えば、上記「1.TFT」の項に記載のポリイミド成分に適用可能なジアミン成分を用いることができる。
【0236】
ジアミンは、目的の物性によって選択することができ、p−フェニレンジアミンなどの剛直なジアミンを用いれば、ポリイミドは低膨張係数となる。剛直なジアミンとしては、同一の芳香環に2つアミノ基が結合しているジアミンとして、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2、6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノアントラセンなどが挙げられる。
さらに、2つ以上の芳香族環が単結合により結合し、2つ以上のアミノ基がそれぞれ別々の芳香族環上に直接または置換基の一部として結合しているジアミンが挙げられ、例えば、下記式(22)により表されるものがある。具体例としては、ベンジジン等が挙げられる。
【0237】
【化23】


【0238】
(式(22)中、bは0または1以上の自然数、アミノ基はベンゼン環同士の結合に対して、メタ位または、パラ位に結合する。)
【0239】
さらに、上記式(22)において、他のベンゼン環との結合に関与せず、ベンゼン環上のアミノ基が置換していない位置に置換基を有するジアミンも用いることができる。これら置換基は、1価の有機基であるがそれらは互いに結合していてもよい。具体例としては、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
また、芳香環の置換基としてフッ素を導入すると吸湿膨張係数を低減させることができる。しかしながら、フッ素を含むポリイミド前駆体、特にポリアミック酸は、塩基性水溶液に溶解しにくく、金属箔上に平坦化層を部分的に形成する場合には、平坦化層の加工の際に、アルコールなどの有機溶媒との混合溶液で現像する必要がある場合がある。
【0240】
一方、ジアミンとして、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンなどのシロキサン骨格を有するジアミンを用いると、金属箔との密着性を改善したり、ポリイミドの弾性率が低下し、ガラス転移温度を低下させたりすることができる。
【0241】
ここで、選択されるジアミンは耐熱性の観点より芳香族ジアミンが好ましいが、目的の物性に応じてジアミンの全体の60モル%、好ましくは40モル%を超えない範囲で、脂肪族ジアミンやシロキサン系ジアミン等の芳香族以外のジアミンを用いてもよい。
【0242】
また、本発明における平坦化層に含まれるポリイミドにおいては、上記式(21)中のR32のうち33モル%以上が下記式で表わされるいずれかの構造であることが好ましい。
【0243】
【化24】


【0244】
(R41は2価の有機基、酸素原子、硫黄原子、またはスルホン基であり、R42およびR43は1価の有機基、またはハロゲン原子である。)
【0245】
本発明における平坦化層に含まれるポリイミドが上記式のいずれかの構造を含むと、これら剛直な骨格に由来し、低線熱膨張および低吸湿膨張を示す。さらには、市販で入手が容易であり、低コストであるというメリットもある。
上記のような構造を有する場合、ポリイミドの耐熱性が向上し、線熱膨張係数が小さくなる。そのため、上記式で表される構造の含有量は上記式(21)中のR32のうち100モル%に近ければ近いほど好ましいが、上記式(21)中のR32のうち少なくとも33%以上含有すればよい。なかでも、上記式で表わされる構造の含有量は上記式(21)中のR32のうち50モル%以上であることが好ましく、さらに70モル%以上であることが好ましい。
【0246】
一般に金属箔の線熱膨張係数、すなわち金属の線熱膨張係数はある程度定まっているため、使用する金属箔の線熱膨張係数に応じて平坦化層の線熱膨張係数を決定し、ポリイミドの構造を適宜選択することが好ましい。
具体的には、TFTの線熱膨張係数に応じて金属箔の線熱膨張係数を決定し、その金属箔の線熱膨張係数に応じて平坦化層の線熱膨張係数を決定し、ポリイミドの構造を適宜選択することが好ましい。
【0247】
本発明においては、平坦化層が上述の式(21)で表される繰り返し単位を有するポリイミドを含有していることが好ましく、必要に応じて適宜、このポリイミドと他のポリイミドとを積層したり組み合わせたりして、平坦化層として用いてもよい。
【0248】
また、上記式(21)で表される繰り返し単位を有するポリイミドは、ポリイミド成分および感光性成分を有する感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて得ることができる。このような感光性の材料を用いることにより、簡便なプロセスで製造することができるからである。
このような感光性ポリイミド樹脂組成物の5%重量減少温度等の特性や、用いられる感光性成分等の各成分については、上記「1.TFT」の「(1)半導体層接触絶縁層」の項に記載したものと同様とすることができる。
【0249】
本発明におけるポリイミドが、ポリイミド成分としてポリイミド前駆体を含む感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成されるものである場合、上記ポリイミド前駆体は、塩基性水溶液によって現像可能であることが、金属箔上に平坦化層を部分的に形成する際に、作業環境の安全性確保およびプロセスコストの低減の観点から好ましい。塩基性水溶液は、安価に入手でき、廃液処理費用や作業安全性確保のための設備費用が安価であるため、より低コストでの生産が可能となるからである。
【0250】
一般に金属箔の線熱膨張係数、すなわち金属の線熱膨張係数はある程度定まっているため、使用する金属箔の線熱膨張係数に応じて平坦化層の線熱膨張係数を決定し、ポリイミドの構造を適宜選択することが好ましい。
具体的には、TFTの線熱膨張係数に応じて金属箔の線熱膨張係数を決定し、その金属箔の線熱膨張係数に応じて平坦化層の線熱膨張係数を決定し、ポリイミドの構造を適宜選択することが好ましい。
【0251】
本発明においては、平坦化層が上述の式(21)で表される繰り返し単位を有するポリイミドを含有していることが好ましいが、必要に応じて適宜、このポリイミドと他のポリイミドとを積層したり組み合わせたりして、平坦化層として用いてもよい。
【0252】
平坦化層はポリイミドを含むものであればよいが、なかでもポリイミドを主成分とすることが好ましい。ポリイミドを主成分とすることにより、絶縁性、耐熱性に優れた平坦化層とすることが可能となる。また、ポリイミドを主成分とすることにより、平坦化層の薄膜化が可能となり平坦化層の熱伝導性が向上し、熱伝導性に優れたフレキシブル基板とすることができる。
なお、平坦化層がポリイミドを主成分とするとは、上述の特性を満たす程度に、平坦化層がポリイミドを含有することをいう。具体的には、平坦化層中のポリイミドの含有量が75質量%以上の場合をいい、好ましくは90質量%以上であり、特に平坦化層がポリイミドのみからなることが好ましい。平坦化層中のポリイミドの含有量が上記範囲であれば、本発明の目的を達成するのに十分な特性を示すことが可能であり、ポリイミドの含有量が多いほど、ポリイミド本来の耐熱性や絶縁性などの特性が良好となる。
【0253】
平坦化層には、必要に応じて、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤等の添加剤が含有されていてもよい。
【0254】
平坦化層は、金属箔上に全面に形成されていてもよく、金属箔上に部分的に形成されていてもよい。すなわち、金属箔の平坦化層および密着層が形成されている面に、平坦化層および密着層が存在せず、金属箔が露出している金属箔露出領域が設けられていてもよい。
【0255】
平坦化層が金属箔上に部分的に形成されている場合、図5(a)、(b)に例示するように、平坦化層2は、少なくとも金属箔1の外縁部を除いて形成されていてもよい。なお、図5(a)は図5(b)のA−A線断面図であり、図5(b)において密着層は省略されている。金属箔の全面に平坦化層が形成されており平坦化層の端部が露出していると、一般にポリイミドは吸湿性を示すため、製造時や駆動時に平坦化層の端面から素子内部に水分が浸入するおそれがある。この水分によって、素子性能が劣化したり、平坦化層の寸法が変化したりする。そのため、金属箔の外縁部には平坦化層が形成されておらず、直接外気にポリイミドを含有する平坦化層が曝される部分をできる限り少なくすることが好ましい。
【0256】
なお、本発明において、平坦化層が金属箔上に部分的に形成されているとは、平坦化層が金属箔の全面に形成されていないことを意味する。
平坦化層は、金属箔の外縁部を除いて金属箔上に一面に形成されていてもよく、金属箔の外縁部を除いて金属箔上にさらにパターン状に形成されていてもよい。
【0257】
平坦化層の厚みは、上述の特性を満たすことができる厚みであれば特に限定されないが、具体的には、1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1μm〜200μmの範囲内、さらに好ましくは1μm〜100μmの範囲内である。平坦化層の厚みが薄すぎると、絶縁性が維持できなかったり、金属箔表面の凹凸を平坦化することが困難であったりするからである。また、平坦化層の厚みが厚すぎると、フレキシブル性が低下したり、過重になったり、製膜時の乾燥が困難になったり、材料使用量が増えるためにコストが高くなったりするからである。さらには、フレキシブル基板に放熱機能を付与する場合には、平坦化層の厚みが厚いとポリイミドは金属よりも熱伝導率が低いために熱伝導性が低下する。
【0258】
平坦化層の形成方法としては、平滑性の良好な平坦化層が得られる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、金属箔上にポリイミド溶液またはポリイミド前駆体溶液を塗布する方法、金属箔とポリイミドフィルムとを接着剤を介して貼り合せる方法、金属箔とポリイミドフィルムとを加熱圧着する方法を用いることができる。なかでも、ポリイミド溶液またはポリイミド前駆体溶液を塗布する方法が好ましい。平滑性に優れる平坦化層が得られるからである。特に、ポリイミド前駆体溶液を塗布する方法が好適である。一般にポリイミドは溶媒への溶解性に乏しいからである。また、溶媒への溶解性が高いポリイミドは、耐熱性、線熱膨張係数、吸湿膨張係数などの物性に劣るからである。
【0259】
塗布方法としては、平滑性の良好な平坦化層を得ることができる方法であれば特に限定されるものではなく、上記「1.TFT」の「(1)半導体層接触絶縁層」の項に記載の方法を用いることができる。
ポリイミド溶液またはポリイミド前駆体溶液を塗布する場合、塗布後にポリイミドまたはポリイミド前駆体のガラス転移温度以上に加熱することで、膜の流動性を高め、平滑性を良くすることもできる。
【0260】
また、平坦化層を金属箔上に部分的に形成する場合、その形成方法としては、印刷法、フォトリソグラフィー法、レーザー等で直接加工する方法を用いることができる。フォトリソグラフィー法としては、例えば、上記「1.TFT」の「(1)半導体層接触絶縁層」の項に記載の方法;ポリイミド前駆体であるポリアミック酸を金属箔上に製膜後、ポリアミック酸膜上に感光性樹脂膜を形成し、フォトリソグラフィー法により感光性樹脂膜パターンを形成し、その後、そのパターンをマスクとして、パターン開口部のポリアミック酸膜を除去した後、感光性樹脂膜パターンを除去し、ポリアミック酸をイミド化する方法;上記感光性樹脂膜パターンの形成時に同時にポリアミック酸膜も現像し、その後、感光性樹脂膜パターンを除去し、ポリアミック酸をイミド化する方法;金属箔および平坦化層の積層体の状態で、平坦化層上に感光性樹脂膜パターンを形成し、そのパターンに沿って平坦化層をウェットエッチング法またはドライエッチング法によりエッチングした後、感光性樹脂パターンを除去する方法;金属箔と平坦化層と金属箔とが積層された積層体の一方の金属箔をパターニングし、そのパターンをマスクとして平坦化層をエッチングした後、金属パターンを除去する方法;感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて、金属箔上に直接、平坦化層のパターンを形成する方法が挙げられる。印刷法としては、上記「1.TFT」の「(1)半導体層接触絶縁層」の項に記載の方法を用いることができる。
【0261】
(3)金属箔
本発明における金属箔は、上記の平坦化層および密着層を支持するものである。
【0262】
金属箔の線熱膨張係数としては、寸法安定性の観点から、0ppm/℃〜25ppm/℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0ppm/℃〜18ppm/℃の範囲内、さらに好ましくは0ppm/℃〜12ppm/℃の範囲内、特に好ましくは0ppm/℃〜7ppm/℃の範囲内である。なお、上記線熱膨張係数の測定方法については、金属箔を幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとする以外は、上記平坦化層の線熱膨張係数の測定方法と同様である。
【0263】
また、金属箔は耐酸化性を有することが好ましい。TFTの作製時に高温処理が施されるからである。特に、TFTが酸化物半導体層を有する場合には、酸素の存在下、高温でアニール処理が行なわれることから、金属箔は耐酸化性を有することが好ましい。
【0264】
金属箔を構成する金属材料としては、箔になり得るものであり、上述の特性を満たすものであれば特に限定されるものではなく、例えば、アルミニウム、銅、銅合金、リン青銅、ステンレス鋼(SUS)、金、金合金、ニッケル、ニッケル合金、銀、銀合金、スズ、スズ合金、チタン、鉄、鉄合金、亜鉛、モリブデン等が挙げられる。なかでも、金属箔およびTFTの線熱膨張係数を考慮すると、線熱膨張係数の観点からは、SUS430よりさらに低線熱膨張係数のチタンやインバーが好ましい。ただし、線熱膨張係数のみでなく、耐酸化性、耐熱性、金属箔の展性および延性などに起因する箔の加工性や、コストも考慮に入れて選択するのが望ましい。
【0265】
金属箔の厚みとしては、上述の特性を満たすことができる厚みであれば特に限定されないが、具体的には、1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1μm〜200μmの範囲内、さらに好ましくは1μm〜100μmの範囲内である。金属箔の厚みが薄すぎると、酸素や水蒸気に対するガスバリア性が低下したり、フレキシブル基板の強度が低下したりするおそれがある。また、金属箔の厚みが厚すぎると、フレキシブル性が低下したり、過重になったり、コスト高になったりする。
【0266】
金属箔は、圧延箔であってもよく電解箔であってもよく、金属材料の種類に応じて適宜選択される。通常、金属箔は圧延により作製される。
【0267】
金属箔の表面粗さRaとしては、上記の密着層および平坦化層の表面粗さRaよりも大きいものであり、例えば50nm〜200nm程度である。なお、上記表面粗さの測定方法については、上記密着層の表面粗さの測定方法と同様である。
【0268】
(d)その他の構成
本発明においては、金属箔と平坦化層との間に中間層が形成されていてもよい。例えば、金属箔および平坦化層の間に、金属箔を構成する金属が酸化された酸化膜からなる中間層が形成されていてもよい。これにより、金属箔と平坦化層との密着性を高めることができる。この酸化膜は、金属箔表面が酸化されることで形成される。
また、金属箔の平坦化層が形成されている面とは反対側の面にも上記酸化膜が形成されていてもよい。
【0269】
3.TFT基板
本発明のTFT基板は、上記TFTおよび基板を少なくとも有するものであるが、必要に応じて他の部材を有するものであっても良い。
【0270】
本発明のTFT基板の製造方法としては、上記TFTおよび基板を有するものを精度良く形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、一般的な方法を用いることができる。
【0271】
本発明のTFT基板の用途としては、TFT方式を用いるディスプレイ装置のTFTアレイ基板として用いることができ、なかでも、優れたスイッチング特性が要求されるTFTアレイ基板に用いられることが好ましい。
このようなディスプレイ装置としては例えば、液晶表示ディスプレイ装置、有機ELディスプレイ装置、電子ペーパー等を挙げることができる。また、ディスプレイ装置以外には、RFIDなどの回路、およびセンサーを例示することができる。
【0272】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0273】
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
【0274】
[製造例]
1.ポリミドワニス(ポリイミド前駆体溶液)の調製
(製造例1)
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA) 4.0g(20mmol)とパラフェニレンジアミン(PPD) 8.65g(80mmol)とを500mlのセパラブルフラスコに投入し、200gの脱水されたN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させ、窒素気流下、オイルバスによって液温が50℃になるように熱電対でモニターし加熱しながら撹拌した。それらが完全に溶解したことを確認した後、そこへ、少しずつ30分かけて3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸2無水物(BPDA) 29.1g(99mmol)を添加し、添加終了後、50℃で5時間撹拌した。その後室温まで冷却し、ポリイミド前駆体溶液1を得た。
【0275】
(製造例2)
反応温度および溶液の濃度が、17重量%〜19重量%になるようにNMPの量を調整した以外は、製造例1と同様の方法で、下記表1に示す配合比でポリイミド前駆体溶液2〜17を合成した。
酸二無水物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)またはピロメリット酸二無水物(PMDA)、p−フェニレンビストリメリット酸モノエステル酸二無水物(TAHQ)、p−ビフェニレンビストリメリット酸モノエステル酸二無水物(BPTME)を用いた。ジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、パラフェニレンジアミン(PPD)、1,4-Bis(4-aminophenoxy)benzene(4APB)、2,2′-Dimethyl-4,4′-diaminobiphenyl(TBHG)、2,2′-Bis(trifluoromethyl)-4,4′-diaminobiphenyl(TFMB)の1種または2種を用いた。
【0276】
【表1】

【0277】
(線熱膨張係数および吸湿膨張係数の評価)
上記ポリイミド前駆体溶液1〜17を、ガラス上に貼り付けた耐熱フィルム(ユーピレックスS 50S:宇部興産(株)製)に塗布し、80℃のホットプレート上で10分乾燥させた後、耐熱フィルムから剥離し、膜厚15μm〜20μmのフィルムを得た。その後、そのフィルムを金属製の枠に固定し、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、膜厚9μm〜15μmのポリイミド樹脂1〜17のフィルムを得た。
【0278】
<線熱膨張係数>
上記の手法により作製したフィルムを幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとして用いた。線熱膨張係数は、熱機械的分析装置Thermo Plus TMA8310(リガク社製)によって測定した。測定条件は、評価サンプルの観測長を15mm、昇温速度を10℃/min、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2とし、100℃〜200℃の範囲の平均の線熱膨張係数を線熱膨張係数(C.T.E.)とした。
【0279】
<湿度膨張係数>
上記の手法により作製したフィルムを幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとして用いた。湿度膨張係数は、湿度可変機械的分析装置Thermo Plus TMA8310改(リガク社製)によって測定した。温度を25℃で一定とし、まず、湿度を15%RHの環境下でサンプルが安定となった状態とし、概ね30分〜2時間その状態を保持した後、測定部位の湿度を20%RHとし、さらにサンプルが安定になるまで30分〜2時間その状態を保持した。その後、湿度を50%RHに変化させ、それが安定となった際のサンプル長と20%RHで安定となった状態でのサンプル長との違いを、湿度の変化(この場合50−20の30)で割り、その値をサンプル長で割った値を湿度膨張係数(C.H.E.)とした。この際、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2とした。
【0280】
(基板反り評価)
厚さ18μmのSUS304−HTA箔(東洋精箔製)上に、上記のポリイミド前駆体溶液1〜17を塗布し、イミド化後の膜厚が10μm±1μmになるように線熱膨張係数評価のサンプル作成と同様のプロセス条件で、ポリイミド樹脂1〜17のポリイミド膜を形成した。その後、SUS304箔およびポリイミド膜の積層体を幅10mm×長さ50mmに切断し、基板反り評価用のサンプルとした。
【0281】
このサンプルを、SUS板表面にサンプルの短辺の片方のみをカプトンテープにより固定し、100℃のオーブンで1時間加熱した後、100℃に加熱されたオーブン内で、サンプルの反対側の短辺のSUS板からの距離を測定した。そのときの距離が、0mm以上0.5mm以下のサンプルを○、0.5mm超1.0mm以下のサンプルを△、1.0mm超のサンプルを×と判断した。
同様にこのサンプルを、SUS板表面にサンプルの短辺の片方のみをカプトンテープにより固定し、23℃85%Rhの状態の恒温恒湿槽に1時間静置したときの、サンプルの反対側の短辺のSUS板からの距離を測定した。そのときの距離が、0mm以上0.5mm以下のサンプルを○、0.5mm超1.0mm以下のサンプルを△、1.0mm超のサンプルを×と判断した。
これらの評価結果を表2に示す。
【0282】
【表2】


【0283】
SUS304箔の線熱膨張係数は17ppm/℃であることから、ポリイミド膜と金属箔との線熱膨張係数の差が大きいと積層体の反りが大きいことが確認された。
また、表2より、ポリイミド膜の吸湿膨張係数が小さいほど高湿環境下での積層体の反りが小さいことがわかる。
【0284】
2.光塩基発生剤の合成
(光塩基発生剤1の合成)
窒素雰囲気下、ディーン・スターク装置を装着した200mL三口フラスコ中、4,5-ジメトキシー2-ニトロベンズアルデヒド8.2g(39mmol)を脱水2-プロパノール100mLに溶解し、アルミニウムイソプロポキシド2.0g(10mmol,0.25eq.)を加え105℃で7時間加熱攪拌を行った。途中溶媒の蒸発減少に伴い、2-プロパノール40mLを4回追加した。0.2N塩酸150mLにて反応を停止した後、クロロホルムにより抽出を行い、溶媒を減圧留去することにより6-ニトロベラトリルアルコール7.2gを得た。
窒素雰囲気下、200mL三口フラスコ中、6-ニトロベラトリルアルコール5.3g(25mmol)を脱水ジメチルアセトアミド100mLに溶解しトリエチルアミン7.0mL(50mmol,2.0eq)を加えた。氷浴下で、p-ニトロフェニルクロロフォルメイト5.5g(27mmol,1.1eq)を加えた後、室温で16時間攪拌した。反応液を水2Lに注ぎ込み、生じた沈殿をろ過した後、シリカゲルカラムクマトグラフィーにより精製することにより、4,5-ジメトキシ-2-ニトロベンジル-p-ニトロフェニルカルボネートを6.4gを得た。
窒素雰囲気下、100mL三口フラスコ中、4,5-ジメトキシ-2-ニトロベンジル-p-ニトロフェニルカルボネート3.6g(9.5mmol)を脱水ジメチルアセトアミド50mLに溶解し、2,6-ジメチルピペリジン5 mL(37mmol,3.9eq)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール0.36g(0.3eq)を加え90℃で18時間加熱攪拌した。反応溶液を1%炭酸水素ナトリウム水溶液1Lに注ぎ込み、生じた沈殿をろ過した後、水にて洗浄することにより、下記式で表される光塩基発生剤1N-{[(4,5-ジメトキシ-2-ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}-2,6-ジメチルピペリジン2.7gを得た。
【0285】
【化25】


【0286】
(光塩基発生剤2の合成)
窒素雰囲気下、100mL三口フラスコ中、o−クマリン酸(東京化成工業(株)製)0.50g(3.1mmol)を脱水テトラヒドロキシフラン40mLに溶解し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(東京化成工業(株)製)0.59g(3.1mmol,1.0eq)を加えた。氷浴下で、ピペリジン(東京化成(株)製)0.3ml(3.1mmol,1.0eq)を加えた後、室温で一晩攪拌した。反応液を濃縮し、クロロホルムで抽出、希塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水で洗浄し、ろ過することにより、下記式で表される光塩基発生剤2を450mg得た。
【0287】
【化26】


【0288】
(光塩基発生剤3の合成)
100mLフラスコ中、炭酸カリウム2.00gをメタノール15mLに加えた。50mLフラスコ中、エトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウムブロミド2.67g(6.2mmol)、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンズアルデヒド945mg(6.2mmol)をメタノール10mLに溶解し、よく撹拌した炭酸カリウム溶液にゆっくり滴下した。3時間撹拌した後、TLCにより反応の終了を確認したうえでろ過を行い炭酸カリウムを除き、減圧濃縮した。濃縮後、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を50mL加え1時間撹拌した。反応終了後、ろ過によりトリフェニルホスフィンオキシドを除いた後、濃塩酸を滴下し反応液を酸性にした。沈殿物をろ過により集め、少量のクロロホルムにより洗浄することで2-ヒドロキシ-4-メトキシ桂皮酸を1.00g得た。続いて、100mL三口フラスコ中、2-ヒドロキシ-4-メトキシ桂皮酸500mg(3.0mmol)を脱水テトラヒドロキシフラン40mLに溶解し、EDC0.586g(3.0mmol)を加えた。30分後、ピペリジン0.3ml(3.0mmol)を加えた。反応終了後、反応溶液を濃縮し、水に溶解した。ジエチルエーテルで抽出した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、1N塩酸、飽和食塩水で洗浄した。その後、シリカゲルカラムクマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/メタノール100/1〜10/1)により精製することにより、下記式で表される光塩基発生剤3を64mg得た。
【0289】
【化27】


【0290】
(光塩基発生剤4の合成)
光塩基発生剤3の合成において、ピペリジンの代わりに、シクロヘキシルアミンを用いた以外は、光塩基発生剤3の合成と同様にして、下記式で表される光塩基発生剤4を80mg得た。
【0291】
【化28】

【0292】
(光塩基発生剤5の合成)
光塩基発生剤3の合成において、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンズアルデヒドの代わりに、1-ヒドロキシ-2-ナフトアルデヒドを用いた以外は、光塩基発生剤3の合成と同様にして、下記式で表される光塩基発生剤5を75mg得た。
【0293】
【化29】

【0294】
(光塩基発生剤6の合成)
光塩基発生剤3の合成において、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンズアルデヒドの代わりに、2-ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒドを用いた以外は、光塩基発生剤3の合成と同様にして、下記式で表される光塩基発生剤6を90mg得た。
【0295】
【化30】

【0296】
[塩基発生剤の評価]
合成した塩基発生剤1〜6について、以下の測定を行い、評価した。モル吸光係数及び塩基発生能の結果を表3に示す。なお、表3において、光反応率とは、用いた塩基発生剤のモル数に対する光反応したモル数の百分率である。また、5%重量減少温度の結果を表4に示す。
【0297】
(1)モル吸光係数
塩基発生剤1〜6をそれぞれ、アセトニトリルに1×10−4mol/Lの濃度で溶解し、石英セル(光路長10mm)に溶液を満たし、吸光度を測定した。なお、モル吸光係数εは、溶液の吸光度を吸収層の厚さと溶質のモル濃度で割った値(L/(mol・cm))である。
【0298】
(2)光反応率評価
塩基発生剤1〜6についてそれぞれ、1mgの試料を3つ用意し、それぞれを石英製NMR菅中で重アセトニトリルに溶解させた。350nm以下の波長の光をカットし、i線を20%透過するフィルタと高圧水銀灯を用いて、1本には2J/cmで光照射を行い、他の1本には20J/cmで光照射を行った。残り1本には光照射を行わなかった。各サンプルの1H NMRを測定し、光反応の割合を求めた。
なお、光反応率については、NMRにより、塩基発生剤と、光反応生成物をともに定量し、その割合から以下の式により光反応率(%)を算出した。
光反応率=光反応生成物量/(未分解の塩基発生剤量+光反応生成物量)×100
【0299】
【表3】

【0300】
表3より、塩基発生剤1〜6は、20J/cm照射により光反応をすることが確認されたことから、i線に感度を有することが明らかとなった。塩基発生剤1は、2J/cmの照射では塩基の発生が確認されなかった。光塩基発生剤6が最も高い感度を示し、ついで、光塩基発生剤3が感度が高かった。
【0301】
3.熱重量測定
塩基発生剤1〜6およびニフェジピン(東京化成製)の耐熱性を評価するために、それぞれについて、30℃時の重量を基準として、昇温速度10℃/minの条件で熱重量測定を行った。結果を表4に示す。
【0302】
【表4】


【0303】
(調製例1)
上記ポリイミド前駆体溶液1に光塩基発生剤1を溶液の固形分の15重量%添加し、感光性ポリイミド樹脂組成物1とした。
【0304】
(調製例2)
上記ポリイミド前駆体溶液1に光塩基発生剤3を溶液の固形分の10重量%添加し、感光性ポリイミド樹脂組成物2とした。
【0305】
(調製例3)
上記ポリイミド前駆体溶液11に光塩基発生剤3を溶液の固形分の15重量%添加し、感光性ポリイミド樹脂組成物3とした。
【0306】
(調製例4)
上記ポリイミド前駆体溶液11に光塩基発生剤1を溶液の固形分の15重量%添加し、感光性ポリイミド樹脂組成物4とした。
【0307】
(調製例5)
上記ポリイミド前駆体溶液11に光塩基発生剤2を溶液の固形分の15重量%添加し、感光性ポリイミド樹脂組成物5とした。
【0308】
(調製例6)
上記ポリイミド前駆体溶液11に光塩基発生剤4を溶液の固形分の15重量%添加し、感光性ポリイミド樹脂組成物6とした。
【0309】
(調製例7)
上記ポリイミド前駆体溶液11に光塩基発生剤5を溶液の固形分の15重量%添加し、感光性ポリイミド樹脂組成物7とした。
【0310】
(調製例8)
上記ポリイミド前駆体溶液11に光塩基発生剤6を溶液の固形分の15重量%添加し、感光性ポリイミド樹脂組成物8とした。
【0311】
(調製例9)
上記ポリイミド前駆体溶液11にニフェジピン(東京化成製)を溶液の固形分の30重量%添加し、感光性ポリイミド樹脂組成物9とした。
【0312】
3.感光性樹脂組成物の評価:パターン形成能評価
調製例で調製した感光性ポリイミド樹脂組成物1、及び感光性ポリイミド樹脂組成物2を、それぞれ、クロムめっきされたガラス上に最終膜厚4μmになるようにスピンコートし、80℃のホットプレート上で15分間乾燥させて、感光性ポリイミド樹脂組成物1及び感光性ポリイミド樹脂組成物2の塗膜を作製した。フォトマスクを介して手動露光機を用いて高圧水銀灯により、パターン状に感光性ポリイミド樹脂組成物1の塗膜には2000mJ/cm、感光性ポリイミド樹脂組成物2の塗膜には100mJ/cm露光を行った。その後、それぞれの塗膜について、155℃で10分間加熱した。
【0313】
それぞれの塗膜について、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド2.38重量%水溶液とイソプロパノールを9:1で混合した溶液に浸漬した。その結果、露光部が現像液に溶解せず残存したパターンを得ることができた。さらに、それを350℃で1時間加熱しイミド化を行った。このように上記感光性ポリイミド樹脂組成物1および2を用いることにより、良好なパターンを形成できることが明らかとなった。
【0314】
調製例で調製した感光性ポリイミド樹脂組成物3〜8を、それぞれ、クロムめっきされたガラス上に最終膜厚4μmになるようにスピンコートし、100℃のホットプレート上で15分間乾燥させて、感光性ポリイミド樹脂組成物3〜8の塗膜を作製した。フォトマスクを介して手動露光機を用いて高圧水銀灯により、パターン状に感光性ポリイミド樹脂組成物3は80mJ/cm、感光性ポリイミド樹脂組成物4は1500mJ/cm、感光性ポリイミド樹脂組成物5は500mJ/cm、感光性ポリイミド樹脂組成物6は400mJ/cm、感光性ポリイミド樹脂組成物7は200mJ/cm、感光性ポリイミド樹脂組成物8は80mJ/cm露光を行った。その後、それぞれの塗膜について、170℃で10分間加熱した。
【0315】
それぞれの塗膜について、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド2.38重量%水溶液とイソプロパノールを8:2で混合した溶液に浸漬した。その結果、露光部が現像液に溶解せず残存したパターンを得ることができた。
【0316】
4.線熱膨張係数および吸湿膨張係数の評価
また、上記感光性ポリイミド樹脂組成物1、2および3を、ガラス上に貼り付けた耐熱フィルム(ユーピレックスS 50S:宇部興産(株)製)に塗布し、100℃のホットプレート上で10分乾燥させた後、高圧水銀灯により365nmの波長の照度換算で2000mJ/cm露光後、ホットプレート上で170℃10分加熱した後、耐熱フィルムより剥離し、膜厚10μmのフィルムを得た。その後、そのフィルムを金属製の枠に固定し、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、膜厚6μmの感光性ポリイミド1、感光性ポリイミド2および感光性ポリイミド3のフィルムを得た。
【0317】
上記記載の方法と同様にして線熱膨張係数、吸湿膨張係数、基板反り評価を行った。結果を表5に示す。
【0318】
【表5】


【0319】
表5に示すように、SUS304箔の線熱膨張係数は17ppm/℃であることから、ポリイミド膜と金属箔との線熱膨張係数の差が大きいと積層体の反りが大きいことが確認された。
また、表5より、ポリイミド膜の吸湿膨張係数が小さいほど高湿環境下での積層体の反りが小さいことがわかった。
【0320】
5.アウトガス試験
調製例で調製した感光性ポリイミド樹脂組成物3および感光性ポリイミド樹脂組成物4、を、それぞれ、ガラス上に最終膜厚10μmになるようにスピンコートし、100℃のホットプレート上で15分間乾燥させて、感光性ポリイミド樹脂組成物3、感光性ポリイミド樹脂組成物4の塗膜を作製した。フォトマスクを介して手動露光機を用いて高圧水銀灯により、感光性ポリイミド樹脂組成物3は500mJ/cm、感光性ポリイミド樹脂組成物4は2000mJ/cm、露光を行った。その後、それぞれの塗膜について、170℃で10分間加熱した。それぞれの塗膜について、350℃で1時間加熱しイミド化を行い、アウトガス測定サンプル1および2を得た。
【0321】
また、ポリイミド前駆体溶液11を、ガラス上に最終膜厚10μmになるようにスピンコートし、100℃のホットプレート上で15分間乾燥させて、ポリイミド溶液11の塗膜を作製した。それぞれの塗膜について、350℃で1時間加熱しイミド化を行い、アウトガス測定サンプル3を得た。
調製例9で調製した感光性ポリイミド樹脂組成物9をガラス上に最終膜厚10μmになるようにスピンコートし、100℃のホットプレート上で15分間乾燥させて、比較感光性ポリイミド樹脂組成物1の塗膜を作製した。フォトマスクを介して手動露光機を用いて高圧水銀灯により、1000mJ/cm露光を行った。その後、185℃で10分間加熱した後、350℃で1時間加熱しイミド化を行い、アウトガス測定サンプル4を得た。
【0322】
UR−5100FX(東レ製)を、ガラス上に最終膜厚10μmになるようにスピンコートし、95℃のホットプレート上で8分間乾燥させて、UR−5100FXの塗膜を作製した。フォトマスクを介して手動露光機を用いて高圧水銀灯により、70mJ/cm露光を行った。その後、80℃で1分間加熱した後、140℃で30分、350℃で1時間加熱しイミド化を行い、アウトガス測定サンプル5を得た。
【0323】
XP−1530(HDマイクロシステムズ製)を、ガラス上に最終膜厚10μmになるようにスピンコートし、70℃のホットプレート上で2分間、85℃のホットプレート上で2分間乾燥させて、XP−1530の塗膜を作製した。フォトマスクを介して手動露光機を用いて高圧水銀灯により、300mJ/cm露光を行った。その後、105℃で1分間加熱した後、200℃で30分、350℃で1時間加熱しイミド化を行い、アウトガス測定サンプル6を得た。
【0324】
作製したアウトガス測定サンプル1〜6について、ガラス上からサンプルを削り取り、窒素雰囲気下で、昇温速度10℃/minで100℃まで上昇させた後、100℃で60分加熱した後、15分以上窒素雰囲気下で放冷した後、昇温速度10℃/minで測定した際の放冷後の重量を基準とした際の、5%重量減少温度の測定を行った。結果を表6に示す。
【0325】
【表6】


【0326】
表6に示すように、光塩基発生剤を用いたサンプル(アウトガス測定サンプル1、2)はともに450℃以上の5%重量減少温度を有していた。アウトガス測定サンプル1に関しては、ポリアミック酸単体(アウトガス測定サンプル3)と同程度の非常に低い低アウトガス性を有していた(光塩基発生剤の50%重量減少温度が低いため、感光性成分由来の残渣が少ないため)。その他の測定サンプルは、いずれも5%重量減少温度が450℃未満であった。
【0327】
[実施例1]
厚さ100μmのSUS304−HTA基材(小山鋼材社製)上に、上記ポリイミド前駆体溶液1を用いて、イミド化後の膜厚が7μm±1μmになるようにスピンコーターでコーティングし、100℃のオーブン中、大気下で60分乾燥させた後、窒素雰囲気下、350℃1時間、熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、絶縁層を形成した。
次に、絶縁層上に、第1密着層としてのアルミニウム膜をDCスパッタリング法(成膜圧力0.2Pa(アルゴン)、投入電力1kW、成膜時間10秒)により厚さ5nmで形成した。次いで、第2密着層としての酸化シリコン膜をRFマグネトロンスパッタリング法(成膜圧力0.3Pa(アルゴン:酸素=3:1)、投入電力2kW、成膜時間30分)により厚さ100nmで形成した。これにより、TFT用基板を得た。
【0328】
ボトムゲート・ボトムコンタクト構造のTFTを上記TFT用基板上に作製した。まず、厚さ100nmのアルミニウム膜をゲート電極膜として成膜した後、レジストパターンをフォトリソグラフィー法で形成した後に燐酸溶液でウェットエッチングし、アルミニウム膜を所定パターンにパターニングしてゲート電極を形成した。次に、そのゲート電極を覆うように厚さ300nmの酸化ケイ素をゲート絶縁膜として全面に形成した。このゲート絶縁膜は、RFマグネトロンスパッタリング装置を用い、6インチのSiOターゲットに投入電力:1.0kW(=3W/cm)、圧力:1.0Pa、ガス:アルゴン+O(50%)の成膜条件で形成した。この後、レジストパターンをフォトリソグラフィー法で形成した後にドライエッチングを施し、コンタクトホールを形成した。次に、ゲート絶縁膜上の全面に厚さ100nmのチタン膜、アルミニウム膜、IZO膜をソース電極及びドレイン電極とするために蒸着した後、レジストパターンをフォトリソグラフィー法で形成した後に過酸化水素水溶液、燐酸溶液で連続的にウェットエッチングし、チタン膜を所定パターンにパターニングしてソース電極及びドレイン電極を形成した。このとき、ソース電極及びドレイン電極は、ゲート絶縁膜上であってゲート電極の中央部直上以外に離間したパターンとなるように形成した。
【0329】
次に、ソース電極及びドレイン電極を覆うように、全面に、In:Ga:Znが1:1:1のInGaZnO系アモルファス酸化物薄膜(InGaZnO)を厚さ25nmとなるように形成した。アモルファス酸化物薄膜は、RFマグネトロンスパッタリング装置を用い、室温(25℃)、Ar:Oを30:50とした条件下で、4インチのInGaZnO(In:Ga:Zn=1:1:1)ターゲットを用いて形成した。その後、アモルファス酸化物薄膜上にレジストパターンをフォトリソグラフィーで形成した後、シュウ酸溶液でウェットエッチングし、そのアモルファス酸化物薄膜をパターニングし、所定パターンからなるアモルファス酸化物薄膜を形成した。こうして得られたアモルファス酸化物薄膜は、ゲート絶縁膜上であってソース電極及びドレイン電極に両側で接触するとともに該ソース電極及びドレイン電極を跨ぐように形成されていた。
【0330】
続いて全体を覆うように、感光性ポリイミド樹脂組成物3を最終膜厚0.1μmになるようにスピンコートし、100℃で15分間乾燥させた後。フォトマスクを介して手動露光機を用いて高圧水銀灯により、パターン状に80mJ/cm露光を行った。その後、170℃で10分間加熱した後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド2.38重量%水溶液とイソプロパノールを8:2で混合した溶液で現像しさらに、それを窒素雰囲気下で350℃で1時間加熱しイミド化を行った。
次いで、大気中300℃1時間のアニールを施すことにより、TFTを作製した。
【0331】
得られたTFTを駆動させたところ良好に作動した。
【0332】
[比較例1]
上記のTFT作製方法において実施例1と同様に、アモルファス酸化物薄膜まで形成した。続いて全体を覆うように、厚さ100nmの酸化ケイ素を保護膜としてRFマグネトロンスパッタリング法で形成した後、レジストパターンをフォトリソグラフィー法で形成した後にドライエッチングを施した。大気中300℃1時間のアニールを施し、TFT基板を作製した。
【0333】
[評価結果]
実施例にて作製したTFTは、比較例のものに比べ、TFTのトランスファー特性におけるS値の減少が見られた。これは水蒸気アニールにより、酸化物半導体とゲート絶縁膜との界面におけるトラップ密度が減少したためと考えられる。
【符号の説明】
【0334】
1 … 金属箔
2 … 平坦化層
3 … 密着層
10 … 基板
11 … 酸化物半導体層
12S … ソース電極
12D … ドレイン電極
13G … ゲート電極
14 … ゲート絶縁層
15 … パッシベーション層
20 … TFT基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成され、酸化物半導体からなる酸化物半導体層および前記酸化物半導体層と接するように形成された半導体層接触絶縁層を有する薄膜トランジスタと、
を有し、
前記薄膜トランジスタに含まれる半導体層接触絶縁層の少なくとも一つが、感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成された感光性ポリイミド絶縁層であることを特徴とする薄膜トランジスタ基板。
【請求項2】
前記感光性ポリイミド樹脂組成物が、ポリイミド成分および感光性成分を含有するものであり、
前記ポリイミド成分が、ポリイミド前駆体を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項3】
前記感光性ポリイミド樹脂組成物の5%重量減少温度が450℃以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項4】
前記感光性ポリイミド樹脂組成物が、ポリイミド成分および感光性成分を含有するものであり、
前記感光性成分の含有量が、前記ポリイミド成分100重量部に対して、0.1重量部以上30重量部未満の範囲内であることを特徴とする請求項3に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項5】
前記感光性成分が光酸発生剤もしくは光塩基発生剤を主成分とするものであることを特徴とする請求項4に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項6】
前記感光性成分が光塩基発生剤であることを特徴とする請求項5に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項7】
前記光塩基発生剤において発生する塩基が脂肪族アミンまたはアミジンであることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項8】
前記光塩基発生剤の5%重量減少温度が150℃〜300℃の範囲内であることを特徴とする請求項5から請求項7までのいずれかの請求項に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項9】
前記光塩基発生剤が下記式で表されることを特徴とする請求項5から請求項8までのいずれかの請求項に記載の薄膜トランジスタ基板。
【化1】

(式(a)中、R21及びR22は、それぞれ独立に、水素又は1価の有機基であり、同一であっても異なっていても良い。R21及びR22は、それらが結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。但し、R21及びR22の少なくとも1つは1価の有機基である。R23、R24、R25及びR26、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基又は1価の有機基であり、同一であっても異なっていても良い。R23、R24、R25及びR26、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。)
【請求項10】
前記半導体層接触絶縁層のうち、トップゲート型の前記薄膜トランジスタにおけるゲート絶縁層、または、ボトムゲート型の前記薄膜トランジスタにおけるゲート絶縁層およびパッシベーション層の少なくとも一方が、少なくとも前記感光性ポリイミド絶縁層であることを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれかの請求項に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項11】
前記半導体層接触絶縁層のうち、トップゲート型の前記薄膜トランジスタにおけるゲート絶縁層、または、ボトムゲート型の前記薄膜トランジスタにおけるパッシベーション層が、少なくとも前記感光性ポリイミド絶縁層であることを特徴とする請求項10に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項12】
前記基板が、金属箔と、前記金属箔上に形成され、ポリイミドを含む平坦化層とを有するフレキシブル基板であることを特徴とする請求項1から請求項11までのいずれかの請求項に記載の薄膜トランジスタ基板。
【請求項13】
前記フレキシブル基板が、前記平坦化層上に無機化合物を含む密着層を有することを特徴とする請求項12に記載の薄膜トランジスタ基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−222788(P2011−222788A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90989(P2010−90989)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】