説明

薄膜形成方法、薄膜形成装置及びプログラム

【課題】低温下で、面間方向での膜厚均一性の良好な薄膜を形成することができる薄膜形成方法、薄膜形成装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】制御部100は、昇温用ヒータ16を制御して反応管2内をロード温度に加熱した後に反応管2内に半導体ウエハWを収容する。次に、制御部100は、昇温用ヒータ16を制御して半導体ウエハWを収容した反応管2内を成膜温度に加熱した後、処理ガス導入管17から反応管2内に成膜用ガスを供給して半導体ウエハWに薄膜を形成する。また、制御部100は、ロード温度を成膜温度よりも高い温度に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜形成方法、薄膜形成装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被処理体、例えば、半導体ウエハに薄膜を形成する場合、低温下で処理を行うことが求められており、例えば、ALD(Atomic Layer Deposition)法を用いた薄膜の形成方法が検討されている。
【0003】
このようなALD法を用いた薄膜の形成方法として様々な方法が提案されており、例えば、特許文献1には、有機Siソースを用い、300℃〜600℃のような低温で薄膜を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−281853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、ALD法を用いたシリコン酸化膜の形成方法では、その成膜温度を低温にするため、有機Siソースに低温になるほど吸着力の強い材料が用いられることがある。しかし、そのような有機Siソースを用いると、半導体ウエハを収容する処理室の開口部(炉口部分)付近の温度が低いところでの成膜レートが早くなり、形成される薄膜の面間方向での膜厚均一性が悪くなってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、低温下で、面間方向での膜厚均一性の良好な薄膜を形成することができる薄膜形成方法、薄膜形成装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点にかかる薄膜形成方法は、
ロード温度に加熱された反応室内に被処理体を収容するロード工程と、
前記ロード工程で被処理体を収容した反応室内を成膜温度に加熱した後、該反応室内に成膜用ガスを供給して被処理体に薄膜を形成する薄膜形成工程と、を備え、
前記ロード工程では、前記ロード温度を前記成膜温度よりも高い温度に設定する、ことを特徴とする。
【0008】
前記薄膜形成工程では、例えば、被処理体にシリコン酸化膜を形成する。
前記シリコン酸化膜形成工程は、例えば、
前記反応室内にシリコンソースガスを供給し、前記被処理体にシリコンを吸着させるシリコン吸着工程と、
前記反応室内に酸化ガスを供給して、前記シリコン吸着工程で吸着されたシリコンを酸化し、前記被処理体にシリコン酸化膜を形成する酸化膜形成工程と、
を備え、
前記シリコン吸着工程と前記酸化膜形成工程とを複数回繰り返し、被処理体にシリコン酸化膜を形成する。
【0009】
前記シリコン吸着工程では、前記反応室内を第1の成膜温度に加熱し、
前記酸化膜形成工程では、前記反応室内を第2の成膜温度に加熱し、
前記ロード工程では、ロード温度を前記第1の成膜温度よりも高い温度に設定してもよい。
【0010】
前記シリコン吸着工程では、前記シリコンソースガスに1価または2価のアミノシランガスを用いることが好ましい。
【0011】
本発明の第2の観点にかかる薄膜形成装置は、
被処理体を収容する反応室と、
前記反応室内を所定の温度に加熱する加熱手段と、
前記反応室内に成膜用ガスを供給する成膜用ガス供給手段と、
装置の各部を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記加熱手段を制御して前記反応室内をロード温度に加熱した後に当該反応室内に被処理体を収容し、
前記加熱手段を制御して前記反応室内を成膜温度に加熱した後、前記成膜用ガス供給手段を制御して当該反応室内に成膜用ガスを供給して被処理体に薄膜を形成し、
前記ロード温度を前記成膜温度よりも高い温度に設定する、ことを特徴とする。
【0012】
本発明の第3の観点にかかるプログラムは、
コンピュータを、
被処理体を収容する反応室内を所定の温度に加熱する加熱手段、
前記反応室内に成膜用ガスを供給する成膜用ガス供給手段、
前記加熱手段を制御して前記反応室内をロード温度に加熱した後に当該反応室内に被処理体を収容し、前記加熱手段を制御して前記反応室内を成膜温度に加熱した後、前記成膜用ガス供給手段を制御して当該反応室内に成膜用ガスを供給して被処理体に薄膜を形成し、前記ロード温度を前記成膜温度よりも高い温度に設定する成膜手段、
として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低温下で、面間方向での膜厚均一性の良好な薄膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態の熱処理装置を示す図である。
【図2】図1の制御部の構成を示す図である。
【図3】シリコン酸化膜の形成方法を説明する図である。
【図4】シリコン酸化膜の膜厚、面内均一性、面間均一性と、ボート位置との関係を示す図である。
【図5】他の実施の形態の熱処理装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の薄膜形成方法、薄膜形成装置及びプログラムについて説明する。本実施の形態では、本発明の薄膜形成装置に図1に示すバッチ式の縦型熱処理装置を用い、半導体ウエハにシリコン酸化膜を形成する場合を例に本発明を説明する。
【0016】
図1に示すように、熱処理装置1は、反応室を形成する反応管2を備えている。反応管2は、例えば、長手方向が垂直方向に向けられた略円筒状に形成されている。反応管2は、耐熱及び耐腐食性に優れた材料、例えば、石英により形成されている。
【0017】
反応管2の上端には、上端側に向かって縮径するように略円錐状に形成された頂部3が設けられている。頂部3の中央には反応管2内のガスを排気するための排気口4が設けられ、排気口4には排気管5が気密に接続されている。排気管5には、図示しないバルブ、後述する真空ポンプ127などの圧力調整機構が設けられ、反応管2内を所望の圧力(真空度)に制御する。
【0018】
反応管2の下方には、蓋体6が配置されている。蓋体6は、耐熱及び耐腐食性に優れた材料、例えば、石英により形成されている。また、蓋体6は、後述するボートエレベータ128により上下動可能に構成されている。そして、ボートエレベータ128により蓋体6が上昇すると、反応管2の下方側(炉口部分)が閉鎖され、ボートエレベータ128により蓋体6が下降すると、反応管2の下方側(炉口部分)が開口される。
【0019】
蓋体6の上部には、保温筒7が設けられている。保温筒7は、反応管2の炉口部分からの放熱による反応管2内の温度低下を防止する抵抗発熱体からなる平面状のヒータ8と、このヒータ8を蓋体6の上面から所定の高さに支持する筒状の支持体9とから主に構成されている。
【0020】
また、保温筒7の上方には、回転テーブル10が設けられている。回転テーブル10は、被処理体、例えば、半導体ウエハWを収容するウエハボート11を回転可能に載置する載置台として機能する。具体的には、回転テーブル10の下部には回転支柱12が設けられ、回転支柱12はヒータ8の中央部を貫通して回転テーブル10を回転させる回転機構13に接続されている。回転機構13は図示しないモータと、蓋体6の下面側から上面側に気密状態で貫通導入された回転軸14を備える回転導入部15とから主に構成されている。回転軸14は回転テーブル10の回転支柱12に連結され、モータの回転力を回転支柱12を介して回転テーブル10に伝える。このため、回転機構13のモータにより回転軸14が回転すると、回転軸14の回転力が回転支柱12に伝えられて回転テーブル10が回転する。
【0021】
回転テーブル10上には、ウエハボート11が載置されている。ウエハボート11は、半導体ウエハWが垂直方向に所定の間隔をおいて複数枚収容可能に構成されている。このため、回転テーブル10を回転させるとウエハボート11が回転し、この回転により、ウエハボート11内に収容された半導体ウエハWが回転する。ウエハボート11は、耐熱及び耐腐食性に優れた材料、例えば、石英により形成されている。
【0022】
また、反応管2の周囲には、反応管2を取り囲むように、例えば、抵抗発熱体からなる昇温用ヒータ16が設けられている。この昇温用ヒータ16により反応管2の内部が所定の温度に加熱され、この結果、半導体ウエハWが所定の温度に加熱される。
【0023】
反応管2の下端近傍の側壁には、複数の処理ガス導入管17が挿通(接続)されている。なお、図1では処理ガス導入管17を1つだけ描いている。処理ガス導入管17には、図示しない処理ガス供給源が接続されており、処理ガス供給源から処理ガス導入管17を介して所望量の処理ガスが反応管2内に供給される。このような処理ガスとしては、シリコンソースガス(有機Siソースガス)、酸化ガス等がある。
【0024】
有機Siソースガスは、被処理体にソース(Si)を吸着させるガスであり、後述する吸着ステップで用いられる。有機Siソースガスとしては、例えば、DIPAS(ジイソプロピルアミノシラン)、TDMAS(トリジメチルアミノシラン)、BTBAS(ビスターシャリブチルアミノシラン)、BDMAS(ビスジメチルアミノシラン)、BDEAS(ビスジエチルアミノシラン)、DMAS(ジメチルアミノシラン)、DEAS(ジエチルアミノシラン)、DPAS(ジプロピルアミノシラン)、およびBAS(ブチルアミノシラン)などのアミノシランガスが挙げられる。
【0025】
酸化ガスは、吸着されたソース(Si)を酸化させるガスであり、後述する酸化ステップで用いられる。酸化ガスとしては、酸素(O)、オゾン(O)、水蒸気などが用いられる。なお、酸化ガスにオゾンが用いられる場合、オゾンを供給する処理ガス導入管17には、例えば、酸素を基としてオゾンを生成するオゾン生成装置が接続され、オゾン生成装置により生成されたオゾンが処理ガス導入管17を介して反応管2内に供給される。
【0026】
反応管2の下端近傍の側面には、パージガス供給管18が挿通されている。パージガス供給管18には、図示しないパージガス供給源が接続されており、パージガス供給源からパージガス供給管18を介して所望量のパージガス、例えば、窒素(N)が反応管2内に供給される。
【0027】
また、熱処理装置1は、装置各部の制御を行う制御部100を備えている。図2に制御部100の構成を示す。図2に示すように、制御部100には、操作パネル121、温度センサ(群)122、圧力計(群)123、ヒータコントローラ124、MFC制御部125、バルブ制御部126、真空ポンプ127、ボートエレベータ128等が接続されている。
【0028】
操作パネル121は、表示画面と操作ボタンとを備え、オペレータの操作指示を制御部100に伝え、また、制御部100からの様々な情報を表示画面に表示する。
【0029】
温度センサ(群)122は、反応管2内部の各ゾーンに設けられたT/C(サーモカップル)温度、又は、昇温用ヒータ16に設けられた各ゾーンのT/C温度、排気管5内部の温度等を測定し、その測定値を制御部100に通知する。
圧力計(群)123は、反応管2内、排気管5内等の各部の圧力を測定し、その測定値を制御部100に通知する。
【0030】
ヒータコントローラ124は、ヒータ8、及び、昇温用ヒータ16を個別に制御するためのものであり、制御部100からの指示に応答して、これらに通電してこれらを加熱し、また、これらの消費電力を個別に測定して、制御部100に通知する。
【0031】
MFC制御部125は、処理ガス導入管17、及び、パージガス供給管18に設けられた図示しないマスフローコントローラ(MFC)を制御して、これらに流れるガスの流量を制御部100から指示された量にするとともに、実際に流れたガスの流量を測定して、制御部100に通知する。
【0032】
バルブ制御部126は、各管に配置されたバルブの開度を制御部100から指示された値に制御する。真空ポンプ127は、排気管5に接続され、反応管2内のガスを排気する。
【0033】
ボートエレベータ128は、蓋体6を上昇させることにより、回転テーブル10上に載置されたウエハボート11(半導体ウエハW)を反応管2内にロードし、蓋体6を下降させることにより、回転テーブル10上に載置されたウエハボート11(半導体ウエハW)を反応管2内からアンロードする。
【0034】
制御部100は、レシピ記憶部111と、ROM112と、RAM113と、I/Oポート114と、CPU115と、これらを相互に接続するバス116とから構成されている。
【0035】
レシピ記憶部111には、セットアップ用レシピと複数のプロセス用レシピとが記憶されている。熱処理装置1の製造当初は、セットアップ用レシピのみが格納される。セットアップ用レシピは、各熱処理装置に応じた熱モデル等を生成する際に実行されるものである。プロセス用レシピは、ユーザが実際に行う熱処理(プロセス)毎に用意されるレシピであり、例えば、反応管2への半導体ウエハWのロードから、処理済みのウエハWをアンロードするまでの、各部の温度の変化、反応管2内の圧力変化、処理ガスの供給の開始及び停止のタイミングと供給量などを規定する。
【0036】
ROM112は、EEPROM、フラッシュメモリ、ハードディスクなどから構成され、CPU115の動作プログラム等を記憶する記録媒体である。
RAM113は、CPU115のワークエリアなどとして機能する。
【0037】
I/Oポート114は、操作パネル121、温度センサ122、圧力計123、ヒータコントローラ124、MFC制御部125、バルブ制御部126、真空ポンプ127、ボートエレベータ128等に接続され、データや信号の入出力を制御する。
【0038】
CPU(Central Processing Unit)115は、制御部100の中枢を構成し、ROM112に記憶された制御プログラムを実行し、操作パネル121からの指示に従って、レシピ記憶部111に記憶されているレシピ(プロセス用レシピ)に沿って、熱処理装置1の動作を制御する。すなわち、CPU115は、温度センサ(群)122、圧力計(群)123、MFC制御部125等に反応管2内、処理ガス導入管17内、及び、排気管5内の各部の温度、圧力、流量等を測定させ、この測定データに基づいて、ヒータコントローラ124、MFC制御部125、バルブ制御部126、真空ポンプ127等に制御信号等を出力し、上記各部がプロセス用レシピに従うように制御する。
バス116は、各部の間で情報を伝達する。
【0039】
次に、以上のように構成された熱処理装置1を用いたシリコン酸化膜の形成方法について、図3に示すレシピ(タイムシーケンス)を参照して説明する。本実施の形態では、図3に示すように、半導体ウエハWの表面にシリコン(Si)を吸着する吸着ステップと、吸着されたSiを酸化する酸化ステップとを備えており、これらのステップを1サイクルとしたとき、複数サイクル、例えば、100サイクル実行する(繰り返す)ことにより、半導体ウエハW上に所望のシリコン酸化膜が形成される。また、図3に示すように、本実施の形態では、有機SiソースガスとしてDIPAS(ジイソプロピルアミノシラン)、酸化ガスとしてオゾン、希釈ガスとして窒素を用いた場合を例に本発明を説明する。
【0040】
まず、被処理体としての半導体ウエハWを反応管2内に収容(ロード)するロードステップを実行する。具体的には、ボートエレベータ128により蓋体6が下降された状態で、図3(c)に示すように、パージガス供給管18から反応管2内に所定量の窒素を供給するとともに、昇温用ヒータ16により反応管2内を所定のロード温度に設定する。
【0041】
ここで、ロード温度を後述する成膜温度よりも高い温度に設定する。ロード温度は、成膜温度より20℃〜80℃高い温度に設定することが好ましい。ロード温度が成膜温度よりも20℃以上高くないと、縦型炉で下方からロードする装置の場合、反応管2内の底部のような温度が不安定になりやすい箇所で、反応管2内の温度が不安定となるおそれがあるためである。具体的には、反応管2内に早く入ったボートエレベータ128の上部(TOP部)に収容された半導体ウエハWは温まりやすいが、反応管2内に遅く入ったボートエレベータ128の下部(BTM部)に収容された半導体ウエハWは温度が上がりにくいためである。一方、ロード温度が成膜温度よりも80℃よりさらに高いと、温度のハンチングが発生したりする。時間を充分にかければ温度は安定するが、それでは、スループットが低下してしまうおそれがあるため実用的な生産性が得られない。成膜温度よりあらかじめ高いロード温度に設定した場合には、BTM部に収容された半導体ウエハWの温度の低下が抑えられ、かつ、温度の安定化も早いため、半導体ウエハW間での温度が均一になりやすい。ロード温度は、成膜温度よりも30℃〜70℃高い温度に設定することがより好ましく、40℃〜60℃高い温度に設定するが最も好ましい。本例では、図3(a)に示すように、ロード温度を成膜温度(400℃)よりも50℃高い450℃に設定する。
【0042】
次に、シリコン酸化膜を形成する半導体ウエハWが収容されているウエハボート11を蓋体6上に載置する。そして、ボートエレベータ128により蓋体6を上昇させ、半導体ウエハW(ウエハボート11)を反応管2内にロードする(ロード工程)。
【0043】
ロード完了後、反応管2内のガスを排出し、反応管2を所定のベース圧力、例えば、0.266〜0.4Pa(2〜3×10−3Torr)に減圧する。本例では、0.4Pa(3×10−3Torr)に減圧する。その後、パージガス供給管18から反応管2内に、図3(c)に示すように、所定量の窒素を供給し、反応管2内を13.3〜665Pa(0.1〜5Torr)、例えば、図3(b)に示すように、66.5Pa(0.5Torr)に設定するとともに、昇温用ヒータ16により反応管2内を所定の成膜温度、例えば、図3(a)に示すように、400℃に設定する(安定化工程)。
【0044】
安定化工程により反応管2内が成膜温度に設定されると、反応管2内では成膜温度よりも高いロード温度から成膜温度に冷却される。このように、反応管2が開放されたロード工程で、反応管2内がロード温度まで一旦加熱した後、反応管2が閉鎖された安定化工程で反応管2内の温度が成膜温度に冷却しているので、反応管2内の温度を成膜温度で安定した状態に維持しやすくなる。特に、温度が低くなりやすい反応管2内の底部(BTM部)であっても、反応管2内の温度を他の領域と同じ成膜温度で安定した状態に維持することができる。
【0045】
反応管2内がこの成膜温度及び圧力で安定すると、半導体ウエハWの表面にSiを吸着させる吸着ステップを実行する。吸着ステップは、半導体ウエハWに有機Siソースガスを供給して、その表面にSiを吸着させる工程である。
【0046】
吸着ステップでは、パージガス供給管18から反応管2内に、図3(c)に示すように、所定量の窒素を供給するとともに、処理ガス導入管17から反応管2内に、図3(d)に示すように、SiソースとしてのDIPASを所定量供給する(フロー工程)。
【0047】
反応管2内に供給されたSiソースは、反応管2内で加熱されて活性化する。このため、反応管2内にSiソースが供給されると、半導体ウエハWの表面と活性化されたSiが反応し、半導体ウエハWの表面にSiが吸着する。
【0048】
半導体ウエハWの表面に所定量のSiが吸着すると、処理ガス導入管17からのDIPASの供給を停止するとともに、パージガス供給管18からの窒素の供給を停止する。そして、反応管2内のガスを排出するとともに、例えば、図3(c)に示すように、パージガス供給管18から反応管2内に所定量の窒素を供給して反応管2内のガスを反応管2外に排出する(パージ、Vacuum工程)。
【0049】
次に、半導体ウエハWの表面を酸化する酸化ステップを実行する。酸化ステップは、Siが吸着された半導体ウエハW上に酸化ガスを供給して、吸着されたSiを酸化する工程である。本実施の形態では、半導体ウエハW上にオゾンを供給することにより吸着されたSiを酸化している。
【0050】
酸化ステップでは、昇温用ヒータ18により反応管2内を所定の成膜温度、例えば、図3(a)に示すように、400℃に設定する。また、パージガス供給管18から反応管2内に、図3(c)に示すように、所定量の窒素を供給するとともに、反応管2内のガスを排出し、反応管2を所定の圧力、例えば、図3(b)に示すように、66.5Pa(0.5Torr)に設定する。そして、処理ガス導入管17から反応管2内に所定量の酸化ガス、例えば図3(e)に示すように、オゾンを供給する。また、図3(c)に示すように、パージガス供給管18から希釈ガスとしての所定量の窒素を反応管2内に供給する(フロー工程)。
【0051】
ここで、反応管2内が成膜温度に加熱されているので、反応管2内に供給されたオゾンは、反応管2内で失活することなく活性化された状態が維持される。この活性化された状態のオゾンが反応管2内に供給されると、半導体ウエハW上に吸着されたSiが酸化され、半導体ウエハW上にシリコン酸化膜が形成される。
【0052】
半導体ウエハW上に所望のシリコン酸化膜が形成されると、処理ガス導入管17からのオゾンの供給を停止する。また、パージガス供給管18からの窒素の供給を停止する。そして、反応管2内のガスを排出するとともに、図3(c)に示すように、パージガス供給管18から反応管2内に所定量の窒素を供給して反応管2内のガスを反応管2外に排出する(パージ、Vacuum工程)。
【0053】
これにより、吸着ステップと、酸化ステップとからなる、1サイクルが終了する。
続いて、再び、吸着ステップから始まる1サイクルを開始する。そして、このサイクルを所定回、例えば、100サイクル実行する(繰り返す)ことにより、半導体ウエハW上に所望厚のシリコン酸化膜が形成される。
【0054】
半導体ウエハW上に所望厚のシリコン酸化膜が形成されると、半導体ウエハWをアンロードする。具体的には、パージガス供給管18から反応管2内に、図3(c)に示すように、所定量の窒素を供給して、反応管2内の圧力を常圧に戻すとともに、昇温用ヒータ16により反応管2内を所定の温度、例えば、ロード温度に維持する。そして、ボートエレベータ128により蓋体6を下降させることにより、半導体ウエハWがアンロードされる。
【0055】
次に、本実施の形態の効果を確認するため、本実施の形態の方法(ロード温度が成膜温度(400℃)よりも50℃高い450℃の場合)で成膜したシリコン酸化膜の膜厚、面内方向での膜厚均一性、及び、面間方向での膜厚均一性を測定した(実施例)。この実施例では、ウエハボート11の上端からの距離(ボート位置)が異なる4箇所の位置で成膜したシリコン酸化膜について測定した。なお、比較のため、ロード温度が成膜温度(400℃)と同じ温度である400℃の場合についても、同様の方法で成膜したシリコン酸化膜の膜厚、面内方向での膜厚均一性、及び、面間方向での膜厚均一性を測定した(比較例)。この結果を図4に示す。
【0056】
図4に示すように、実施例では、全てのボート位置でほぼ均一の膜厚に成膜できることが確認できた。特に、温度が不安定になりやすい反応管2内の底部(BTM部)でも、他の位置とほぼ同様の膜厚に成膜できることが確認できた。一方、比較例では、反応管2内の上部、中央部では実施例とほぼ同様の膜厚に成膜できたが、BTM部では、実施例より他の位置と膜厚にバラツキが生じることが確認できた。このため、実施例は比較例に比べて、面間方向での膜厚均一性に優れていることが確認できた。なお、面内方向での膜厚均一性については、実施例、比較例に大きな差はなかった。このように、本実施の形態のシリコン酸化膜の形成方法を実施することにより、低温下で、面間方向での膜厚均一性の良好なシリコン酸化膜が形成されることが確認できた。
【0057】
また、ロード温度が成膜温度よりも20℃、40℃、60℃、80℃高い場合についても同様の測定を行ったところ、全てのボート位置でほぼ均一の膜厚に成膜でき、面間方向での膜厚均一性に優れていることが確認できた。
【0058】
以上説明したように、本実施の形態によれば、ロード温度が成膜温度よりも高い温度に設定されているので、低温下で、面間方向での膜厚均一性の良好なシリコン酸化膜を形成することができる。
【0059】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限られず、種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な他の実施の形態について説明する。
【0060】
上記実施の形態では、半導体ウエハW上にシリコン酸化膜を形成した場合を例に本発明を説明したが、形成する薄膜はシリコン酸化膜に限定されるものではなく、シリコン窒化膜等の各種の薄膜であってもよい。
【0061】
上記実施の形態では、シリコンソースガス(有機Siソースガス)としてDIPAS、酸化ガスとしてオゾンを用いた場合を例に本発明を説明したが、有機SiソースガスはDIPASに限定されるものでなく、低温において吸着力の強いガスであれば各種のガスを用いることができる。半導体ウエハW上にシリコン酸化膜を形成する場合には、有機Siソースガスとして、1価または2価のアミノシランガスを用いることが好ましい。
【0062】
酸化ガスは、オゾンに限定されるものでなく、酸素、水蒸気を用いてもよい。この場合、オゾンを生成するオゾン生成装置を用いる必要がなく、装置の構造を簡単にすることができる。一方、酸化ガスにオゾンを用いた場合には、成膜温度を低温にすることができる。
【0063】
上記実施の形態では、成膜温度が400℃の場合を例に本発明を説明したが、成膜温度は400℃に限定されるものではなく、例えば、室温〜600℃程度であることが好ましい。ただし、使用する有機Siソースガスの種類によって好ましい温度範囲があり、例えば、有機SiソースガスにTDMASを用いた場合には成膜温度が室温〜550℃、BTBASを用いた場合には成膜温度が室温〜600℃に設定することが好ましい。
【0064】
また、上記実施の形態では、吸着ステップの成膜温度と酸化ステップの成膜温度がともに400℃の場合を例に本発明を説明したが、吸着ステップの成膜温度と酸化ステップの成膜温度とを異なる温度に設定してもよい。この場合、ロード温度を吸着ステップの成膜温度よりも高い温度、特に、20℃〜80℃高い温度に設定することにより、低温下で、面間方向での膜厚均一性の良好なシリコン酸化膜を形成することができる。
【0065】
上記実施の形態では、熱処理装置として、単管構造のバッチ式熱処理装置の場合を例に本発明を説明したが、例えば、反応管2が内管と外管とから構成された二重管構造のバッチ式縦型熱処理装置に本発明を適用することも可能である。また、図5に示すように、装置内部にプラズマ発生器22を配置した熱処理装置21であってもよい。熱処理装置21では、処理ガス導入管17から酸素等を供給してプラズマ発生器22を通過させることにより酸素を基とした酸素ラジカルを生成し、生成した酸素ラジカルが反応管2内に供給される。
【0066】
本発明の実施の形態にかかる制御部100は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、汎用コンピュータに、上述の処理を実行するためのプログラムを格納した記録媒体(フレキシブルディスク、CD−ROMなど)から当該プログラムをインストールすることにより、上述の処理を実行する制御部100を構成することができる。
【0067】
そして、これらのプログラムを供給するための手段は任意である。上述のように所定の記録媒体を介して供給できる他、例えば、通信回線、通信ネットワーク、通信システムなどを介して供給してもよい。この場合、例えば、通信ネットワークの掲示板(BBS)に当該プログラムを掲示し、これをネットワークを介して搬送波に重畳して提供してもよい。そして、このように提供されたプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上述の処理を実行することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、低温下での薄膜の形成に有用である。
【符号の説明】
【0069】
1 熱処理装置
2 反応管
3 頂部
4 排気口
5 排気管
6 蓋体
7 保温筒
8 ヒータ
9 支持体
10 回転テーブル
11 ウエハボート
12 回転支柱
13 回転機構
14 回転軸
15 回転導入部
16 昇温用ヒータ
17 処理ガス導入管
18 パージガス供給管
100 制御部
111 レシピ記憶部
112 ROM
113 RAM
114 I/Oポート
115 CPU
116 バス
121 操作パネル
122 温度センサ
123 圧力計
124 ヒータコントローラ
125 MFC制御部
126 バルブ制御部
127 真空ポンプ
128 ボートエレベータ
W 半導体ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロード温度に加熱された反応室内に被処理体を収容するロード工程と、
前記ロード工程で被処理体を収容した反応室内を成膜温度に加熱した後、該反応室内に成膜用ガスを供給して被処理体に薄膜を形成する薄膜形成工程と、を備え、
前記ロード工程では、前記ロード温度を前記成膜温度よりも高い温度に設定する、ことを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項2】
前記薄膜形成工程では、被処理体にシリコン酸化膜を形成する、ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成方法。
【請求項3】
前記シリコン酸化膜形成工程は、
前記反応室内にシリコンソースガスを供給し、前記被処理体にシリコンを吸着させるシリコン吸着工程と、
前記反応室内に酸化ガスを供給して、前記シリコン吸着工程で吸着されたシリコンを酸化し、前記被処理体にシリコン酸化膜を形成する酸化膜形成工程と、
を備え、
前記シリコン吸着工程と前記酸化膜形成工程とを複数回繰り返し、被処理体にシリコン酸化膜を形成する、ことを特徴とする請求項2に記載の薄膜形成方法。
【請求項4】
前記シリコン吸着工程では、前記反応室内を第1の成膜温度に加熱し、
前記酸化膜形成工程では、前記反応室内を第2の成膜温度に加熱し、
前記ロード工程では、ロード温度を前記第1の成膜温度よりも高い温度に設定する、ことを特徴とする請求項3に記載の薄膜形成方法。
【請求項5】
前記シリコン吸着工程では、前記シリコンソースガスに1価または2価のアミノシランガスを用いる、ことを特徴とする請求項3または4に記載の薄膜形成方法。
【請求項6】
被処理体を収容する反応室と、
前記反応室内を所定の温度に加熱する加熱手段と、
前記反応室内に成膜用ガスを供給する成膜用ガス供給手段と、
装置の各部を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記加熱手段を制御して前記反応室内をロード温度に加熱した後に当該反応室内に被処理体を収容し、
前記加熱手段を制御して前記反応室内を成膜温度に加熱した後、前記成膜用ガス供給手段を制御して当該反応室内に成膜用ガスを供給して被処理体に薄膜を形成し、
前記ロード温度を前記成膜温度よりも高い温度に設定する、ことを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項7】
コンピュータを、
被処理体を収容する反応室内を所定の温度に加熱する加熱手段、
前記反応室内に成膜用ガスを供給する成膜用ガス供給手段、
前記加熱手段を制御して前記反応室内をロード温度に加熱した後に当該反応室内に被処理体を収容し、前記加熱手段を制御して前記反応室内を成膜温度に加熱した後、前記成膜用ガス供給手段を制御して当該反応室内に成膜用ガスを供給して被処理体に薄膜を形成し、前記ロード温度を前記成膜温度よりも高い温度に設定する成膜手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−142421(P2012−142421A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293816(P2010−293816)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】