薄膜形成装置、方法
【課題】CVD装置において効率良く成膜処理を実現可能な技術が望まれている。
【解決手段】外周縁部に切り欠き部10TN,10BNが設けられた2枚のウェハ10T、10Bを裏面同士が対向した状態でウェハ保持用の溝部に保持可能にするボート31と、前記ボート31を収納して前記2枚のウェハ10T、10Bのそれぞれの表面に気相成長反応により被膜を形成する反応炉とを備える。前記溝部の前記2枚のウェハを保持するそれぞれの位置は、前記ウェハの表面と平行な方向においてずれている。
【解決手段】外周縁部に切り欠き部10TN,10BNが設けられた2枚のウェハ10T、10Bを裏面同士が対向した状態でウェハ保持用の溝部に保持可能にするボート31と、前記ボート31を収納して前記2枚のウェハ10T、10Bのそれぞれの表面に気相成長反応により被膜を形成する反応炉とを備える。前記溝部の前記2枚のウェハを保持するそれぞれの位置は、前記ウェハの表面と平行な方向においてずれている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、薄膜形成装置、方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程においては、例えば減圧CVD(Chemical Vapor Deposition)装置などの化学反応による成膜処理を施す装置を用いて半導体ウェハ上への成膜が行われている。減圧CVD装置は、反応容器内に導入した原料ガスに熱やプラズマなどの反応エネルギーを与えることで減圧下の気相中において化学反応を起こし、この反応生成物を半導体ウェハの表面に堆積させることで薄膜を形成する。
【0003】
このような減圧CVD装置では、生産性の高さの観点から、一度に多数枚のウェハの処理が可能なバッチ式の縦型CVD装置が広く用いられている。バッチ式の縦型CVD装置では、多数枚のウェハがウェハ保持部であるボートに所定間隔で上下方向に多段に収納される。そして、該ボートが装置内に導入された状態で成膜処理が行われる。
【0004】
また、更なる生産性の向上のために、2枚のウェハを裏面同士が接触するように重ねて保持した状態でボートに収納して成膜することが考えられている。しかしながら、このような成膜を実現するためには、ウェハのボートへの収納およびボートからの搬出に課題がある。すなわち、ウェハに傷や割れを発生させることなく2枚のウェハを重ねることは、現状の技術では困難である。同様に、重なった2枚のウェハのボートからの剥離、搬出についても同様に現状の技術では困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−124091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、薄膜形成装置および薄膜形成方法において効率良く成膜処理を実現可能な技術が望まれている。
【0007】
本発明の実施形態は、上記に鑑みてなされたものであって、効率良く成膜処理を実現可能な薄膜形成装置、方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の薄膜形成装置は、外周縁部に切り欠き部が設けられた2枚のウェハを裏面同士が対向した状態でウェハ保持用の溝部に保持可能にするボートと、前記ボートを収納して前記2枚のウェハのそれぞれの表面に気相成長反応により被膜を形成する反応炉と、を備え、前記溝部の前記2枚のウェハを保持するそれぞれの位置が前記ウェハの表面と平行な方向においてずれていること、を特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施の形態にかかるバッチ式の減圧縦型CVD装置の構成を示す模式図である。
【図2】図2は、実施の形態にかかるボートにおけるウェハの保持方法を模式的に示す図である。
【図3】図3は、実施の形態にかかるボートの支柱の溝部を示す要部断面図である。
【図4−1】図4−1は、実施の形態にかかるウェハ保持部の構造を模式的に示す図である。
【図4−2】図4−2は、ウェハを保持したウェハ保持部を示す図である。
【図5】図5は、実施の形態にかかるボートの溝部へのウェハの収納方法を模式的に説明する平面図である。
【図6】図6は、実施の形態にかかるボートの溝部へのウェハの収納方法を模式的に説明する断面図である。
【図7】図7は、実施の形態にかかるウェハ保持部によるトップウェハの保持方法を模式的に説明する模式図である。
【図8】図8は、連結された5つのウェハ保持部によるボートの溝部へのボトムウェハの収納方法を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、薄膜形成装置、方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す図面においては、理解の容易のため、各部材の縮尺が実際とは異なる場合がある。各図面間においても同様である。
【0011】
図1は、実施の形態にかかるバッチ式の減圧縦型CVD装置20(以下、単にCVD装置と呼ぶ)の構成を示す模式図である。同図に示すCVD装置20は、アウターチューブ1およびインナーチューブ6を有する二重構造の反応炉を有し、インナーチューブ6の内側に被処理ウェハである半導体ウェハ10(以下、単にウェハ10と呼ぶ)を収納するボート4を備えている。半導体ウェハ10としては例えばシリコンウェハが用いられる。ボート4は、例えば石英、シリコン、炭化シリコンなどの材料により構成される。
【0012】
インナーチューブ6の底部近傍からは、反応ガスを導入するノズル2およびノズル3がインナーチューブ6内に延在して配設されている。反応ガスは、ノズル2およびノズル3内を通ってインナーチューブ6内に導入される。使用済みの反応ガスは、インナーチューブ6とアウターチューブ1とに挟まれた領域を通過して装置下部に設けられた排気口12および排気口13から排出される。ウェハ10の加熱は、反応炉の周囲に設けられたヒータ5により行われる。また、CVD装置20の底部に設けられた減圧口15には、真空ポンプ11が接続され、これにより反応炉内の気圧が調整される。
【0013】
図2は、ボート4におけるウェハ10の保持方法を模式的に示す図である。図2(a)は、ボート4におけるウェハ10の保持方法を示す平面図である。図2(b)は、ボート4におけるウェハ10の保持方法を示す断面図であり、図2(a)におけるA−A断面を示す。図2(c)は、ボート4におけるウェハ10の保持方法を示す断面図であり、図2(a)におけるB−B断面を示す。
【0014】
ボート4は、図2(a)に示されるようにボート4を構成する直立した複数の支柱として支柱31、支柱32、支柱33を備え、例えば直径300mmの複数のウェハ10を載置して保持するように形成されている。これらの支柱は、ウェハ10の直径より僅かに大きい直径を有する円の半円周に沿って等間隔に配置される。本実施の形態では、支柱32と支柱33とが上記円の径方向において対向して配置され、上記円の半円周上における支柱32と支柱33との中間位置に支柱31が配置されている。また、支柱31は、上記円の半円周よりもわずかに外側に配置されている。支柱31、支柱32、支柱33は、それぞれ底板4aに固定されている。なお、支柱31、支柱31、支柱32、支柱33の位置関係は、実施の形態の趣旨においてウェハ10の搬送に問題が無く、またウェハ10を確実に保持できる位置であればよい。
【0015】
支柱31、支柱32、支柱33におけるウェハ10を保持する側の側面には、ウェハ10を保持するための溝部が同じ高さ位置に設けられている。この溝部においては、裏面同士が対向するように同寸法の2枚のウェハ10が重ねられて保持される。すなわち、図2(b)および図2(c)に示されるように、1つの溝部内では、上側のトップウェハ10Tと下側のボトムウェハ10Bとが、裏面同士が対向するように重ねられて保持される。このときのトップウェハ10Tとボトムウェハ10Bとの裏面同士の間隔は、0〜数mm程度とされる。ここでウェハ10の裏面とは、ウェハ10におけるデバイス面と反対側の面であって成膜が不要な面である。
【0016】
また、上下方向において隣接する溝部においては、下の溝部において上側に保持されたトップウェハ10Tと、上の溝部において下側に保持されたボトムウェハ10Bとは、おもて面同士が対向するように収納される。このときのトップウェハ10Tとボトムウェハ10Bとのおもて面同士の間隔は、所定の一定間隔とされる。ここでウェハ10のおもて面とは、ウェハ10におけるデバイス面であり、所望の膜の成膜を行う被成膜面である。
【0017】
そして、このような配列で複数のウェハ10がボート4に配置される。以上の構成により、ボート4では、1つの溝部に1枚ずつウェハ10を保持する場合と比較して2倍の枚数のウェハ10を収納することができる。そして、このような配列でボート4にウェハ10を収納することにより、1つの溝部に保持されたウェハ10は、成膜時には裏面同士が接触した状態または裏面同士間にわずかな隙間が空いた状態で反応ガスに触れる状態とされる。したがって、ボート4を反応炉内へ導入して成膜を行うことにより、1回の成膜処理で、1つの溝部に保持されたウェハ10のおもて面に被膜を形成することができる。
【0018】
ここで、1つの溝部に保持される2枚のウェハ10は、溝部における下側のウェハ10および上側のウェハ10を保持するそれぞれの位置を下側のウェハ10の表面と平行な方向においてずらして、上側のウェハ10の一部を下側のウェハ10からはみ出させた状態で重ねられる。そして、下側のウェハ10の切り欠き部の一部が上側のウェハ10によって部分的に覆われるように重ねられる。すなわち、それぞれのウェハの外周位置が下側のウェハ10の外周縁部に設けられた切り欠き部が露出するように切り欠き部におけるウェハの半径方向の長さ以下のずれ量で面内方向において異なり、且つ2枚のウェハの切り欠き部の位置が円周方向において異なる状態で重ねられる。また、2枚のウェハ10のずれ方向は、下側のウェハの切り欠き部が露出される方向とされる。切り欠き部の一例としては、例えばウェハに設けられたノッチ部が挙げられる。
【0019】
例えば図2(a)に示されるように、1つの溝部に保持されるウェハ10は、径方向において外周の位置がずれた状態、且つそれぞれのウェハ10の外周縁部に設けられた切り欠き部であるノッチ部の位置が円周方向においてずれた状態で重ねられる。すなわち、1つの溝部において上側に保持されるボトムウェハ10Bと該溝部において下側に保持されるトップウェハ10Tとは、外周縁部の位置が、ボトムウェハ10Bの外周縁部に設けられたノッチ部10BNを含むボトムウェハ10Bの直径方向にずれた状態で重ねられる。そして、ずれ方向は、ボトムウェハ10Bのノッチ部10BNが露出される方向とされる。また、ボトムウェハ10Bとトップウェハ10Tとは、ボトムウェハ10Bの外周縁部に設けられたノッチ部10BNの位置と、トップウェハ10Tの外周縁部に設けられたノッチ部10TNの位置とが円周方向においてずれた状態で重ねられる。
【0020】
このようなウェハの保持状態においては、ボトムウェハ10Bの面内方向における中心位置Oと、トップウェハ10Tの面内方向における中心位置O’と、支柱31の中心位置31cおよびボトムウェハ10Bのノッチ部10BNとは仮想の直線の上に並んでいる。すなわち、ボート4では、ウェハ10の中心位置がずれた状態、外周の位置がずれた状態を正常位置として2枚のウェハを保持することができる。
【0021】
このようにウェハの中心位置が面内方向において異なり、且つウェハの外周縁部に設けられた切り欠き部の位置が円周方向において異なる状態で重ねて2枚のウェハ10を保持することにより、後述するようにウェハ10を傷や割れを発生させることなくボート4の溝部へ重ねて収納することができる。また、重なった2枚のウェハ10のボート4からの搬出、および重なったウェハ10の剥離を、ウェハ10に傷や割れを発生させることなく行うことができる。
【0022】
つぎに、支柱31の溝部におけるウェハ10の保持方法について説明する。図3は、ボート4の支柱31の溝部を示す要部断面図である。支柱31の溝部内には、第1保持面31aと第2保持面31bとからなる段差が設けられている。第1保持面31aは、1つの溝部内に重ねて保持されるウェハ10のうち、下側のボトムウェハ10Bを保持する。第2保持面31bは、第1保持面31aよりも上部に設けられて、1つの溝部内に重ねて保持されるウェハ10のうち、上側のトップウェハ10Tを保持する。第2保持面31bは、第1保持面31aよりも溝部の奥行き方向に深く形成されているおり、ボトムウェハ10Bよりも溝部の奥行き方向において深い位置でトップウェハ10Tを保持する。すなわち、第2保持面31bにおけるトップウェハ10Tの外周の位置は、第1保持面31aにおけるボトムウェハ10Bの外周の位置よりも、溝部の奥行き方向に深い位置とされる。段差寸法H、すなわち第1保持面31aと第2保持面31bとの高さの差は、ウェハ10の厚み以上とされる。段差寸法Hがウェハ10の厚み未満の場合は、第2保持面31bがトップウェハ10Tを保持できない。
【0023】
一方、段差寸法Hがウェハ10の厚みと等しい場合は、ボトムウェハ10Bとトップウェハ10Tとの裏面が当接した状態で、第2保持面31bがトップウェハ10Tを保持する。また、段差寸法Hがウェハ10の厚みよりも大である場合は、支柱31ではボトムウェハ10Bの裏面とトップウェハ10Tの裏面との間に間隙を有する状態で第2保持面31bがトップウェハ10Tを保持する。ここで、段差寸法Hは、ウェハ10の厚みよりも大であることが好ましい。ボトムウェハ10Bの裏面とトップウェハ10Tの裏面との間に間隙を有することにより、トップウェハ10Tをボート4から取り出す場合にボトムウェハ10Bから剥がし易くなる。この場合のトップウェハ10Tとボトムウェハ10Bとの裏面同士の間隔は、数mm程度とされる。このように、トップウェハ10Tとボトムウェハ10Bとの裏面同士は、接触していてもよいが、少し間隔があいている方が好ましい。
【0024】
一方、支柱32、33の溝部は、図2(a)に示されるように支柱31のような段差構造とはされていない。そして、支柱32、33の溝部では、ウェハ10の面内方向において略同じ位置でボトムウェハ10B上にトップウェハ10Tが重ねられる。
【0025】
なお、支柱31、32、33の形状は円柱状に限らず、ウェハ10を確実に保持できれば形状は限定されない。また、溝部内の構造も上述した段差構造に限定されない。
【0026】
ボート4へのウェハ10の収納は、例えば図示しないウェハ搬送部により行われる。ウェハ搬送部は、被処理ウェハであるウェハ10が複数収納された図示しないウェハカセットからウェハ10を取り出し、ボート4へ搬送、収納する。ウェハ搬送部は、例えば図4−1および図4−2に示されるような略Y字形状のウェハ保持部41を有する。図4−1はウェハ保持部41の構造を模式的に示す図であり、図4−1(a)はボトムウェハ10Bを保持したウェハ保持部41を上側(ウェハ保持部41側)から見た図、図4−1(b)はボトムウェハ10Bを保持したウェハ保持部41を下側(ボトムウェハ10B側)から見た図である。図4−2はウェハ10を保持したウェハ保持部41を示す図であり、図4−2(a)はウェハ保持部41の第2アーム部の側面図、図4−2(b)はウェハ保持部41の側面図である。
【0027】
ウェハ保持部41は、図4−1および図4−2に示されるように第1アーム部42と、該第1アーム部42の一端部から二股に分岐して第1アーム部42と同一平面内に延在する第2アーム部43および第3アーム部44とから構成される。第1アーム部42は、ウェハ10を保持する下面側に、第1アーム部42の長手方向において可動とされた可動チャック42aを有する。第2アーム部43は、ウェハ10を保持する下面側に固定された固定チャック43aを先端部に有する。第3アーム部44は、ウェハ10を保持する下面側に固定された固定チャック44aを先端部に有する。そして、2つの固定チャック43a、44aと可動チャック42aとの内側面をウェハ10の外周縁部に圧接させることにより3つのチャックでウェハ10を挟んでウェハ10を保持する。
【0028】
つぎに、CVD装置20による成膜処理方法について説明する。まず成膜処理前のウェハ10がウェハカセットから取り出されてボート4に収納される。ボート4においては、例えば100枚〜150枚程度のウェハ10が、裏面同士が対向するように2枚ずつ重ねて等間隔に収納される。
【0029】
成膜処理前のウェハ10をボート4へ収納する方法について図5〜図7を参照して説明する。図5は、ボート4の溝部へのウェハ10の収納方法を説明する模式図である。図5(a)はボトムウェハ10Bの収納方法を説明する図である。図5(b)はトップウェハ10Tの収納方法を説明する図であり、ウェハ保持部41により保持されたトップウェハ10Tを上側(ウェハ保持部41側)から見た図である。図5(c)はトップウェハ10Tの収納方法を模式的に説明する平面図であり、ウェハ保持部41により保持されたトップウェハ10Tを下側(トップウェハ10T)から見た図である。図6は、ボート4の溝部へのウェハ10の収納方法を模式的に説明する断面図であり、図6(a)はボトムウェハ10Bの収納方法を説明する図、図6(b)はトップウェハ10Tの収納方法を説明する図である。図6(a)は、図5(a)におけるC−C断面を示す。図6(b)は、図5(b)におけるD−D断面を示す。なお、図6(a)(b)においては、第2アーム43および固定チャック43aを重ねて示している。図7は、ウェハ保持部41によるトップウェハ10Tの保持方法を模式的に説明する平面図であり、図7(a)はウェハ保持部41により保持されたトップウェハ10Tを上側(ウェハ保持部41側)から見た図、図7(b)はウェハ保持部41により保持されたトップウェハ10Tを下側(トップウェハ10T)から見た図である。
【0030】
まず、ウェハ搬送部がウェハカセットにアクセスし、おもて面が下を向いた状態で成膜処理前のボトムウェハ10Bをウェハ保持部41により保持する。ウェハ保持部41によりボトムウェハ10Bを保持する際は、第1アーム部42をボトムウェハ10Bのノッチ部10BNの位置に合わせ、可動チャック42aを外方に開いた状態で固定チャック43a、44aのウェハ保持面をボトムウェハ10Bの外周部に当接させる。外方とは、保持するウェハ10から離れる方向である。
【0031】
その後、可動チャック42aを内方に閉めることで可動チャック42aのウェハ保持面をノッチ部10BN内に押し込んで固定、圧接して、ボトムウェハ10Bを3つのチャックで狭持する。外方とは、保持するウェハ10から離れる方向である。内方とは、保持するウェハ10の中心方向である。これにより、図4−1(a)および図4−1(b)に示されるようにボトムウェハ10Bを保持することができる。このようにウェハ保持部41に保持されたボトムウェハ10Bをウェハカセットから取り出し、ボート4に搬送する。
【0032】
つぎに、ウェハ搬送部は、ウェハ保持部41に保持したボトムウェハ10Bをボート4の溝部に挿入する。ボトムウェハ10Bは、図5(a)に示されるようにボトムウェハ10Bのノッチ部10BNと支柱31とがボトムウェハ10Bの中心位置Oを挟んで対向するように第1アーム部42の延在方向に挿入される。このとき、支柱31の中心位置と、ボトムウェハ10Bの面内方向における中心位置Oと、ボトムウェハ10Bのノッチ部10BNとは仮想の直線の上に並んでいる。
【0033】
図6(a)に示されるようにボトムウェハ10Bを所定の保持位置まで挿入した後、可動チャック42aを外方に開いてボトムウェハ10Bの保持状態を解除し、ボトムウェハ10Bをボート4に移載する。このとき、支柱31の溝部においては、ボトムウェハ10Bはおもて面が下を向いた状態で第1保持面31aで保持される。また、支柱32、支柱33において、ボトムウェハ10Bはおもて面が下を向いた状態で溝部の底面で保持される。そして、ウェハ搬送部は、ウェハ保持部41をボート4から戻す。
【0034】
つぎに、ウェハ搬送部が再度ウェハカセットにアクセスし、裏面が開放された状態で、すなわちおもて面が上を向いた状態でおもて面をウェハ保持部41のアーム部が覆うように成膜処理前のトップウェハ10Tをウェハ保持部41により保持する。このとき、トップウェハ10Tにおけるノッチ部10TN以外の外周を狭持する。
【0035】
ウェハ保持部41でトップウェハ10Tを保持する場合は、固定チャック43a、44aと可動チャック42aとの位置を円周方向においてトップウェハ10Tのノッチ部10TNの位置と異ならせ、可動チャック42aを外方に開いた状態で固定チャック43a、44aのウェハ保持面をボトムウェハ10Bの外周部に当接させる。その後、可動チャック42aを内方に閉めることで可動チャック42aのウェハ保持面をボトムウェハ10Bの外周部に当接させて固定、圧接し、トップウェハ10Tを3つのチャックで狭持する。これにより、図7−1(a)および図7−1(b)に示されるようにトップウェハ10Tを保持することができる。このようにウェハ保持部41に保持されたトップウェハ10Tをウェハカセットから取り出し、ボート4に搬送する。
【0036】
つぎに、ウェハ保持部41に保持したトップウェハ10Tを、ボート4において先にボトムウェハ10Bが収納された溝部に挿入する。この際、溝部におけるボトムウェハ10Bおよびトップウェハ10Tを保持するそれぞれの位置をボトムウェハ10の表面と平行な方向においてずらして、トップウェハ10Tの一部をボトムウェハ10からはみ出させる。そして、ボトムウェハ10Bのノッチ部10BNの一部がトップウェハ10Tによって部分的に覆われるようにトップウェハ10Tの保持位置の1つをボトムウェハ10Bのノッチ部10BNに合わせておもて面が上側を向くようにトップウェハ10Tを溝部に挿入する。例えばトップウェハ10Tは、図5(b)に示されるようにボトムウェハ10Bのノッチ部10BNと支柱31とがトップウェハ10Tの中心位置O’を挟んで対向するように、可動チャック42aをボトムウェハ10Bのノッチ部10BN内に入れて第1アーム部42の延在方向に挿入される。このとき、支柱31の中心位置と、トップウェハ10Tの面内方向における中心位置O’と、ボトムウェハ10Bの面内方向における中心位置Oと、ボトムウェハ10Bのノッチ部10BNとは仮想の直線の上に並んでいる。
【0037】
図6(b)に示されるようにトップウェハ10Tを所定の保持位置まで挿入した後、可動チャック42aを外方に開いてトップウェハ10Tの保持状態を解除し、トップウェハ10Tをボート4に移載する。このとき、支柱31の溝部においては、トップウェハ10Tはおもて面が上を向いた状態で第2保持面31bで保持される。また、支柱32、支柱33において、トップウェハ10Tはおもて面が上を向いた状態でボトムウェハ10B上に保持される。そして、上記のように、可動チャック42aをボトムウェハ10Bのノッチ部10BN内に入れることにより、ボトムウェハ10Bとトップウェハ10Tとの外周位置をずらすことができ、ボトムウェハ10Bのノッチ部10BNが露出する。その後、ウェハ搬送部は、ウェハ保持部41をボート4から戻す。
【0038】
これらの一連の移載作業を繰り返し行うことにより、ボトムウェハ10Bとトップウェハ10Tとが、それぞれのウェハ10の中心位置O、O’が面内方向において異なり、且つそれぞれのウェハの外周縁部に設けられたノッチ部10BN、10TNの位置が円周方向において異なる状態とされ、裏面同士が対向した状態で重ねられて、ボート4の1つの溝部内に収納される。上述したボート4へのウェハ10の収納は、常圧下で行われる。なお、ボート4へウェハ10を収納する際、上述したように溝部毎にボトムウェハ10Bとトップウェハ10Tとを順次収納してもよく、全てのボトムウェハ10Bを先に各溝部に収納した後にトップウェハ10Tを各溝部内に収納してもよい。
【0039】
また、ボトムウェハ10Bとトップウェハ10Tとは1つのウェハカセットに収納されていてもよく、それぞれ専用のウェハカセットに収納されていてもよい。
【0040】
また、ボトムウェハ10Bおよびトップウェハ10Tにおけるノッチ部10Nの位置は、例えばウェハカセットに収納されている時点で既に所定の規則に従って揃えられている。例えばボトムウェハ10Bは、ノッチ部10Nの位置を手前側に揃えてウェハカセットに収納されている。そして、トップウェハ10Tは、ノッチ部10Nの位置が手前側から円周方向に少しずらされてウェハカセットに収納されている。ここで、手前側とは、ウェハ保持部41がウェハカセットからウェハ10を取り出す側である。これにより、ウェハカセットから取り出されたウェハ10は、ノッチの位置をそのままの状態でボート4に収納すればよい。
【0041】
また、ボトムウェハ10Bおよびトップウェハ10Tにおけるノッチ部10Nの位置は、ウェハカセットからウェハ10が取り出された後に、ボートに収納するまでの間に調整されてもよい。すなわち、ウェハ搬送部は、ウェハ保持部41でウェハ10を保持した後にウェハ10におけるノッチ部10Nの位置を調整する調整機構を備えていてもよい。
【0042】
ウェハ10が収納されたボート4は、フランジ8上に載置された状態で反応炉内へ導入される。ボート4の導入後、ヒータ5により反応炉内が加熱され、真空ポンプ11を用いて反応炉内が高真空状態にされることにより、反応炉内の温度および圧力が制御される。その後、ノズル2およびノズル3から反応炉内に原料ガスが導入されることで、反応炉内で原料ガスの化学反応が起き、ウェハ10の表面へ薄膜が堆積して成膜が行われる。ウェハ10は、裏面同士が対向するように2枚ずつ重ねてボート4に収納されているため、ウェハ10におもて面のみが成膜され、裏面には成膜されない。成膜後、ボート4が反応炉から引き出され、ボート4から成膜処理済みのウェハ10がウェハカセットに搬送され、収納される。
【0043】
成膜処理済みのウェハ10をボート4からウェハカセットへ搬出する場合は、上記のボート4への移載作業と逆の手順で作業を行う。まず、成膜処理済みのトップウェハ10Tをボート4からウェハカセットに移載する。ウェハ搬送部がボート4の溝部にアクセスし、2枚重なったウェハ10のうち、おもて面が上を向いたトップウェハ10Tをウェハ保持部41で保持する。このとき、トップウェハ10Tにおけるボトムウェハ10Bのノッチ部10BNに対応する領域に重なる外周部およびボトムウェハ10Bからはみ出た領域の外周部で狭持することによりトップウェハ10Tを保持する。トップウェハ10Tの外周位置は、ボトムウェハ10Bの外周位置から支柱31側にずれており、またボトムウェハ10Bのノッチ部10BNに可動チャック42aを入れることができるため、ウェハ保持部41は容易にトップウェハ10Tの外周部を狭持して保持することができる。
【0044】
つぎに、ウェハ搬送部は、ウェハ保持部41に保持したトップウェハ10Tをボート4から取り出し、ウェハカセットにアクセスしてトップウェハ10Tを収納する。そして、これらの一連の移載作業を繰り返し行う。
【0045】
つぎに、溝部に残っている成膜処理済みのボトムウェハ10Bをボート4からウェハカセットに移載する。ウェハ搬送部がボート4の溝部にアクセスし、おもて面が下を向いたボトムウェハ10Bをウェハ保持部41で保持する。ボトムウェハ10Bの保持方法は、成膜処理前のボトムウェハ10Bをボート4へ収納する場合と同様である。
【0046】
つぎに、ウェハ搬送部は、ウェハ保持部41に保持したボトムウェハ10Bをボート4から取り出し、ウェハカセットにアクセスしてボトムウェハ10Bを収納する。そして、これらの一連の移載作業を繰り返し行うことで、ボート4からウェハカセットに成膜処理済みのウェハ10を移載することができる。上述したウェハカセットへのウェハ10の収納は、常圧下で行われる。
【0047】
なお、ウェハカセットへウェハ10を移載する際、上述したように全てのトップウェハ10Tをボート4からウェハカセットに移載した後にボトムウェハ10Bをボート4からウェハカセットに移載してもよく、溝部毎にトップウェハ10Tとボトムウェハ10Bとを順次移載してもよい。
【0048】
また、上記においては、ウェハ搬送部が1つのウェハ保持部41を有する場合について説明したが、連結された複数のウェハ保持部41を用いることも可能である。この場合は1度の移載処理において複数のウェハ10をウェハカセットからボート4に移載し、またはボート4からウェハカセットに移載することができる。図8は、連結部45により連結された5つのウェハ保持部41によるボート4の溝部へのボトムウェハ10Bの収納方法を模式的に示す断面図である。
【0049】
また、上記のようなウェハの移載方法を可能とするために、支柱は溝部へのウェハ10の挿入の際に第2アーム43、44が侵入可能な構成とされる。
【0050】
上述した実施の形態にかかるCVD装置20においては、ウェハを裏面同士が対向するように重ねてボート4の溝部に保持した状態で成膜できる。これにより、CVD装置20では、1つの溝部に1枚ずつウェハ10を保持する場合と比較して1度の成膜処理において2倍の枚数のウェハ10を成膜処理することができ、生産性の高い成膜処理が可能である。また、1つの溝部に1枚ずつウェハ10を保持する場合における1度の成膜処理分の反応ガスで2倍の枚数のウェハ10を成膜処理することができるため、低コストでの成膜処理が可能である。
【0051】
また、CVD装置20ではウェハ10は、ボート4の1つの溝部に保持される際に、それぞれのウェハ10の外周位置が下側のウェハ10のノッチ部10Nの一部が露出するとともに一部が隠れるように重ねられる。このような位置関係の条件を満たせば、2枚のウェハ10のずれ方向およびずれ量は任意の方向および任意の量でよい。
【0052】
これにより、トップウェハ10Tをボトムウェハ10Bに重ねる際にウェハ保持部41のアーム部がボトムウェハ10Bに接触して傷を付けることを抑制することができる。また、重なったウェハ10をボート4から搬出する際に、ウェハ保持部41のアーム部がボトムウェハ10bに接触することなく確実にトップウェハ10Tを狭持して保持することができる。すなわち、ウェハ10にアーム部の接触に起因した傷や割れを発生させることなくウェハ10を重ねてボート4に保持することができ、また剥離して、搬出することができる。
【0053】
したがって、実施の形態にかかるCVD装置20によれば、搬送に起因したウェハ10の傷や割れを防止することができる、2枚のウェハを裏面同士が対向するように重ねて保持した状態での成膜が実現可能であり、高い生産性および低コストでの成膜が可能である。
【0054】
なお、上記の実施の形態ではバッチ式の減圧縦型CVD装置について説明したが、上述したボートは平行平板型の対向電極を用いるCVD装置を除いた縦型CVD装置に広く適用可能である。また、ウェハを1枚ずつ処理する枚葉式に適用することも可能である。
【0055】
また、上記の実施の形態では1つの溝にウェハを重ねて保持する場合について説明したが、ボート4の上下方向において隣接する溝部に上記と同様な位置関係でウェハを保持してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 アウターチューブ、2 ノズル、3 ノズル、4 ボート、4a 底板、5 ヒータ、6 インナーチューブ、10 半導体ウェハ(ウェハ)、10B ボトムウェハ、10BN ノッチ部、10N ノッチ部、10T トップウェハ、10TN ノッチ部、11 真空ポンプ、12 排気口、13 排気口、15 減圧口、20 減圧縦型CVD装置、31 支柱、31a 第1保持面、31b 第2保持面、32 支柱、33 支柱、41 ウェハ保持部、42 第1アーム部、42a 可動チャック、43 第2アーム部、43a 固定チャック、44 第3アーム部、44a 固定チャック、H 段差寸法、O 中心位置、O’ 中心位置。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、薄膜形成装置、方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程においては、例えば減圧CVD(Chemical Vapor Deposition)装置などの化学反応による成膜処理を施す装置を用いて半導体ウェハ上への成膜が行われている。減圧CVD装置は、反応容器内に導入した原料ガスに熱やプラズマなどの反応エネルギーを与えることで減圧下の気相中において化学反応を起こし、この反応生成物を半導体ウェハの表面に堆積させることで薄膜を形成する。
【0003】
このような減圧CVD装置では、生産性の高さの観点から、一度に多数枚のウェハの処理が可能なバッチ式の縦型CVD装置が広く用いられている。バッチ式の縦型CVD装置では、多数枚のウェハがウェハ保持部であるボートに所定間隔で上下方向に多段に収納される。そして、該ボートが装置内に導入された状態で成膜処理が行われる。
【0004】
また、更なる生産性の向上のために、2枚のウェハを裏面同士が接触するように重ねて保持した状態でボートに収納して成膜することが考えられている。しかしながら、このような成膜を実現するためには、ウェハのボートへの収納およびボートからの搬出に課題がある。すなわち、ウェハに傷や割れを発生させることなく2枚のウェハを重ねることは、現状の技術では困難である。同様に、重なった2枚のウェハのボートからの剥離、搬出についても同様に現状の技術では困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−124091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、薄膜形成装置および薄膜形成方法において効率良く成膜処理を実現可能な技術が望まれている。
【0007】
本発明の実施形態は、上記に鑑みてなされたものであって、効率良く成膜処理を実現可能な薄膜形成装置、方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の薄膜形成装置は、外周縁部に切り欠き部が設けられた2枚のウェハを裏面同士が対向した状態でウェハ保持用の溝部に保持可能にするボートと、前記ボートを収納して前記2枚のウェハのそれぞれの表面に気相成長反応により被膜を形成する反応炉と、を備え、前記溝部の前記2枚のウェハを保持するそれぞれの位置が前記ウェハの表面と平行な方向においてずれていること、を特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施の形態にかかるバッチ式の減圧縦型CVD装置の構成を示す模式図である。
【図2】図2は、実施の形態にかかるボートにおけるウェハの保持方法を模式的に示す図である。
【図3】図3は、実施の形態にかかるボートの支柱の溝部を示す要部断面図である。
【図4−1】図4−1は、実施の形態にかかるウェハ保持部の構造を模式的に示す図である。
【図4−2】図4−2は、ウェハを保持したウェハ保持部を示す図である。
【図5】図5は、実施の形態にかかるボートの溝部へのウェハの収納方法を模式的に説明する平面図である。
【図6】図6は、実施の形態にかかるボートの溝部へのウェハの収納方法を模式的に説明する断面図である。
【図7】図7は、実施の形態にかかるウェハ保持部によるトップウェハの保持方法を模式的に説明する模式図である。
【図8】図8は、連結された5つのウェハ保持部によるボートの溝部へのボトムウェハの収納方法を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、薄膜形成装置、方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す図面においては、理解の容易のため、各部材の縮尺が実際とは異なる場合がある。各図面間においても同様である。
【0011】
図1は、実施の形態にかかるバッチ式の減圧縦型CVD装置20(以下、単にCVD装置と呼ぶ)の構成を示す模式図である。同図に示すCVD装置20は、アウターチューブ1およびインナーチューブ6を有する二重構造の反応炉を有し、インナーチューブ6の内側に被処理ウェハである半導体ウェハ10(以下、単にウェハ10と呼ぶ)を収納するボート4を備えている。半導体ウェハ10としては例えばシリコンウェハが用いられる。ボート4は、例えば石英、シリコン、炭化シリコンなどの材料により構成される。
【0012】
インナーチューブ6の底部近傍からは、反応ガスを導入するノズル2およびノズル3がインナーチューブ6内に延在して配設されている。反応ガスは、ノズル2およびノズル3内を通ってインナーチューブ6内に導入される。使用済みの反応ガスは、インナーチューブ6とアウターチューブ1とに挟まれた領域を通過して装置下部に設けられた排気口12および排気口13から排出される。ウェハ10の加熱は、反応炉の周囲に設けられたヒータ5により行われる。また、CVD装置20の底部に設けられた減圧口15には、真空ポンプ11が接続され、これにより反応炉内の気圧が調整される。
【0013】
図2は、ボート4におけるウェハ10の保持方法を模式的に示す図である。図2(a)は、ボート4におけるウェハ10の保持方法を示す平面図である。図2(b)は、ボート4におけるウェハ10の保持方法を示す断面図であり、図2(a)におけるA−A断面を示す。図2(c)は、ボート4におけるウェハ10の保持方法を示す断面図であり、図2(a)におけるB−B断面を示す。
【0014】
ボート4は、図2(a)に示されるようにボート4を構成する直立した複数の支柱として支柱31、支柱32、支柱33を備え、例えば直径300mmの複数のウェハ10を載置して保持するように形成されている。これらの支柱は、ウェハ10の直径より僅かに大きい直径を有する円の半円周に沿って等間隔に配置される。本実施の形態では、支柱32と支柱33とが上記円の径方向において対向して配置され、上記円の半円周上における支柱32と支柱33との中間位置に支柱31が配置されている。また、支柱31は、上記円の半円周よりもわずかに外側に配置されている。支柱31、支柱32、支柱33は、それぞれ底板4aに固定されている。なお、支柱31、支柱31、支柱32、支柱33の位置関係は、実施の形態の趣旨においてウェハ10の搬送に問題が無く、またウェハ10を確実に保持できる位置であればよい。
【0015】
支柱31、支柱32、支柱33におけるウェハ10を保持する側の側面には、ウェハ10を保持するための溝部が同じ高さ位置に設けられている。この溝部においては、裏面同士が対向するように同寸法の2枚のウェハ10が重ねられて保持される。すなわち、図2(b)および図2(c)に示されるように、1つの溝部内では、上側のトップウェハ10Tと下側のボトムウェハ10Bとが、裏面同士が対向するように重ねられて保持される。このときのトップウェハ10Tとボトムウェハ10Bとの裏面同士の間隔は、0〜数mm程度とされる。ここでウェハ10の裏面とは、ウェハ10におけるデバイス面と反対側の面であって成膜が不要な面である。
【0016】
また、上下方向において隣接する溝部においては、下の溝部において上側に保持されたトップウェハ10Tと、上の溝部において下側に保持されたボトムウェハ10Bとは、おもて面同士が対向するように収納される。このときのトップウェハ10Tとボトムウェハ10Bとのおもて面同士の間隔は、所定の一定間隔とされる。ここでウェハ10のおもて面とは、ウェハ10におけるデバイス面であり、所望の膜の成膜を行う被成膜面である。
【0017】
そして、このような配列で複数のウェハ10がボート4に配置される。以上の構成により、ボート4では、1つの溝部に1枚ずつウェハ10を保持する場合と比較して2倍の枚数のウェハ10を収納することができる。そして、このような配列でボート4にウェハ10を収納することにより、1つの溝部に保持されたウェハ10は、成膜時には裏面同士が接触した状態または裏面同士間にわずかな隙間が空いた状態で反応ガスに触れる状態とされる。したがって、ボート4を反応炉内へ導入して成膜を行うことにより、1回の成膜処理で、1つの溝部に保持されたウェハ10のおもて面に被膜を形成することができる。
【0018】
ここで、1つの溝部に保持される2枚のウェハ10は、溝部における下側のウェハ10および上側のウェハ10を保持するそれぞれの位置を下側のウェハ10の表面と平行な方向においてずらして、上側のウェハ10の一部を下側のウェハ10からはみ出させた状態で重ねられる。そして、下側のウェハ10の切り欠き部の一部が上側のウェハ10によって部分的に覆われるように重ねられる。すなわち、それぞれのウェハの外周位置が下側のウェハ10の外周縁部に設けられた切り欠き部が露出するように切り欠き部におけるウェハの半径方向の長さ以下のずれ量で面内方向において異なり、且つ2枚のウェハの切り欠き部の位置が円周方向において異なる状態で重ねられる。また、2枚のウェハ10のずれ方向は、下側のウェハの切り欠き部が露出される方向とされる。切り欠き部の一例としては、例えばウェハに設けられたノッチ部が挙げられる。
【0019】
例えば図2(a)に示されるように、1つの溝部に保持されるウェハ10は、径方向において外周の位置がずれた状態、且つそれぞれのウェハ10の外周縁部に設けられた切り欠き部であるノッチ部の位置が円周方向においてずれた状態で重ねられる。すなわち、1つの溝部において上側に保持されるボトムウェハ10Bと該溝部において下側に保持されるトップウェハ10Tとは、外周縁部の位置が、ボトムウェハ10Bの外周縁部に設けられたノッチ部10BNを含むボトムウェハ10Bの直径方向にずれた状態で重ねられる。そして、ずれ方向は、ボトムウェハ10Bのノッチ部10BNが露出される方向とされる。また、ボトムウェハ10Bとトップウェハ10Tとは、ボトムウェハ10Bの外周縁部に設けられたノッチ部10BNの位置と、トップウェハ10Tの外周縁部に設けられたノッチ部10TNの位置とが円周方向においてずれた状態で重ねられる。
【0020】
このようなウェハの保持状態においては、ボトムウェハ10Bの面内方向における中心位置Oと、トップウェハ10Tの面内方向における中心位置O’と、支柱31の中心位置31cおよびボトムウェハ10Bのノッチ部10BNとは仮想の直線の上に並んでいる。すなわち、ボート4では、ウェハ10の中心位置がずれた状態、外周の位置がずれた状態を正常位置として2枚のウェハを保持することができる。
【0021】
このようにウェハの中心位置が面内方向において異なり、且つウェハの外周縁部に設けられた切り欠き部の位置が円周方向において異なる状態で重ねて2枚のウェハ10を保持することにより、後述するようにウェハ10を傷や割れを発生させることなくボート4の溝部へ重ねて収納することができる。また、重なった2枚のウェハ10のボート4からの搬出、および重なったウェハ10の剥離を、ウェハ10に傷や割れを発生させることなく行うことができる。
【0022】
つぎに、支柱31の溝部におけるウェハ10の保持方法について説明する。図3は、ボート4の支柱31の溝部を示す要部断面図である。支柱31の溝部内には、第1保持面31aと第2保持面31bとからなる段差が設けられている。第1保持面31aは、1つの溝部内に重ねて保持されるウェハ10のうち、下側のボトムウェハ10Bを保持する。第2保持面31bは、第1保持面31aよりも上部に設けられて、1つの溝部内に重ねて保持されるウェハ10のうち、上側のトップウェハ10Tを保持する。第2保持面31bは、第1保持面31aよりも溝部の奥行き方向に深く形成されているおり、ボトムウェハ10Bよりも溝部の奥行き方向において深い位置でトップウェハ10Tを保持する。すなわち、第2保持面31bにおけるトップウェハ10Tの外周の位置は、第1保持面31aにおけるボトムウェハ10Bの外周の位置よりも、溝部の奥行き方向に深い位置とされる。段差寸法H、すなわち第1保持面31aと第2保持面31bとの高さの差は、ウェハ10の厚み以上とされる。段差寸法Hがウェハ10の厚み未満の場合は、第2保持面31bがトップウェハ10Tを保持できない。
【0023】
一方、段差寸法Hがウェハ10の厚みと等しい場合は、ボトムウェハ10Bとトップウェハ10Tとの裏面が当接した状態で、第2保持面31bがトップウェハ10Tを保持する。また、段差寸法Hがウェハ10の厚みよりも大である場合は、支柱31ではボトムウェハ10Bの裏面とトップウェハ10Tの裏面との間に間隙を有する状態で第2保持面31bがトップウェハ10Tを保持する。ここで、段差寸法Hは、ウェハ10の厚みよりも大であることが好ましい。ボトムウェハ10Bの裏面とトップウェハ10Tの裏面との間に間隙を有することにより、トップウェハ10Tをボート4から取り出す場合にボトムウェハ10Bから剥がし易くなる。この場合のトップウェハ10Tとボトムウェハ10Bとの裏面同士の間隔は、数mm程度とされる。このように、トップウェハ10Tとボトムウェハ10Bとの裏面同士は、接触していてもよいが、少し間隔があいている方が好ましい。
【0024】
一方、支柱32、33の溝部は、図2(a)に示されるように支柱31のような段差構造とはされていない。そして、支柱32、33の溝部では、ウェハ10の面内方向において略同じ位置でボトムウェハ10B上にトップウェハ10Tが重ねられる。
【0025】
なお、支柱31、32、33の形状は円柱状に限らず、ウェハ10を確実に保持できれば形状は限定されない。また、溝部内の構造も上述した段差構造に限定されない。
【0026】
ボート4へのウェハ10の収納は、例えば図示しないウェハ搬送部により行われる。ウェハ搬送部は、被処理ウェハであるウェハ10が複数収納された図示しないウェハカセットからウェハ10を取り出し、ボート4へ搬送、収納する。ウェハ搬送部は、例えば図4−1および図4−2に示されるような略Y字形状のウェハ保持部41を有する。図4−1はウェハ保持部41の構造を模式的に示す図であり、図4−1(a)はボトムウェハ10Bを保持したウェハ保持部41を上側(ウェハ保持部41側)から見た図、図4−1(b)はボトムウェハ10Bを保持したウェハ保持部41を下側(ボトムウェハ10B側)から見た図である。図4−2はウェハ10を保持したウェハ保持部41を示す図であり、図4−2(a)はウェハ保持部41の第2アーム部の側面図、図4−2(b)はウェハ保持部41の側面図である。
【0027】
ウェハ保持部41は、図4−1および図4−2に示されるように第1アーム部42と、該第1アーム部42の一端部から二股に分岐して第1アーム部42と同一平面内に延在する第2アーム部43および第3アーム部44とから構成される。第1アーム部42は、ウェハ10を保持する下面側に、第1アーム部42の長手方向において可動とされた可動チャック42aを有する。第2アーム部43は、ウェハ10を保持する下面側に固定された固定チャック43aを先端部に有する。第3アーム部44は、ウェハ10を保持する下面側に固定された固定チャック44aを先端部に有する。そして、2つの固定チャック43a、44aと可動チャック42aとの内側面をウェハ10の外周縁部に圧接させることにより3つのチャックでウェハ10を挟んでウェハ10を保持する。
【0028】
つぎに、CVD装置20による成膜処理方法について説明する。まず成膜処理前のウェハ10がウェハカセットから取り出されてボート4に収納される。ボート4においては、例えば100枚〜150枚程度のウェハ10が、裏面同士が対向するように2枚ずつ重ねて等間隔に収納される。
【0029】
成膜処理前のウェハ10をボート4へ収納する方法について図5〜図7を参照して説明する。図5は、ボート4の溝部へのウェハ10の収納方法を説明する模式図である。図5(a)はボトムウェハ10Bの収納方法を説明する図である。図5(b)はトップウェハ10Tの収納方法を説明する図であり、ウェハ保持部41により保持されたトップウェハ10Tを上側(ウェハ保持部41側)から見た図である。図5(c)はトップウェハ10Tの収納方法を模式的に説明する平面図であり、ウェハ保持部41により保持されたトップウェハ10Tを下側(トップウェハ10T)から見た図である。図6は、ボート4の溝部へのウェハ10の収納方法を模式的に説明する断面図であり、図6(a)はボトムウェハ10Bの収納方法を説明する図、図6(b)はトップウェハ10Tの収納方法を説明する図である。図6(a)は、図5(a)におけるC−C断面を示す。図6(b)は、図5(b)におけるD−D断面を示す。なお、図6(a)(b)においては、第2アーム43および固定チャック43aを重ねて示している。図7は、ウェハ保持部41によるトップウェハ10Tの保持方法を模式的に説明する平面図であり、図7(a)はウェハ保持部41により保持されたトップウェハ10Tを上側(ウェハ保持部41側)から見た図、図7(b)はウェハ保持部41により保持されたトップウェハ10Tを下側(トップウェハ10T)から見た図である。
【0030】
まず、ウェハ搬送部がウェハカセットにアクセスし、おもて面が下を向いた状態で成膜処理前のボトムウェハ10Bをウェハ保持部41により保持する。ウェハ保持部41によりボトムウェハ10Bを保持する際は、第1アーム部42をボトムウェハ10Bのノッチ部10BNの位置に合わせ、可動チャック42aを外方に開いた状態で固定チャック43a、44aのウェハ保持面をボトムウェハ10Bの外周部に当接させる。外方とは、保持するウェハ10から離れる方向である。
【0031】
その後、可動チャック42aを内方に閉めることで可動チャック42aのウェハ保持面をノッチ部10BN内に押し込んで固定、圧接して、ボトムウェハ10Bを3つのチャックで狭持する。外方とは、保持するウェハ10から離れる方向である。内方とは、保持するウェハ10の中心方向である。これにより、図4−1(a)および図4−1(b)に示されるようにボトムウェハ10Bを保持することができる。このようにウェハ保持部41に保持されたボトムウェハ10Bをウェハカセットから取り出し、ボート4に搬送する。
【0032】
つぎに、ウェハ搬送部は、ウェハ保持部41に保持したボトムウェハ10Bをボート4の溝部に挿入する。ボトムウェハ10Bは、図5(a)に示されるようにボトムウェハ10Bのノッチ部10BNと支柱31とがボトムウェハ10Bの中心位置Oを挟んで対向するように第1アーム部42の延在方向に挿入される。このとき、支柱31の中心位置と、ボトムウェハ10Bの面内方向における中心位置Oと、ボトムウェハ10Bのノッチ部10BNとは仮想の直線の上に並んでいる。
【0033】
図6(a)に示されるようにボトムウェハ10Bを所定の保持位置まで挿入した後、可動チャック42aを外方に開いてボトムウェハ10Bの保持状態を解除し、ボトムウェハ10Bをボート4に移載する。このとき、支柱31の溝部においては、ボトムウェハ10Bはおもて面が下を向いた状態で第1保持面31aで保持される。また、支柱32、支柱33において、ボトムウェハ10Bはおもて面が下を向いた状態で溝部の底面で保持される。そして、ウェハ搬送部は、ウェハ保持部41をボート4から戻す。
【0034】
つぎに、ウェハ搬送部が再度ウェハカセットにアクセスし、裏面が開放された状態で、すなわちおもて面が上を向いた状態でおもて面をウェハ保持部41のアーム部が覆うように成膜処理前のトップウェハ10Tをウェハ保持部41により保持する。このとき、トップウェハ10Tにおけるノッチ部10TN以外の外周を狭持する。
【0035】
ウェハ保持部41でトップウェハ10Tを保持する場合は、固定チャック43a、44aと可動チャック42aとの位置を円周方向においてトップウェハ10Tのノッチ部10TNの位置と異ならせ、可動チャック42aを外方に開いた状態で固定チャック43a、44aのウェハ保持面をボトムウェハ10Bの外周部に当接させる。その後、可動チャック42aを内方に閉めることで可動チャック42aのウェハ保持面をボトムウェハ10Bの外周部に当接させて固定、圧接し、トップウェハ10Tを3つのチャックで狭持する。これにより、図7−1(a)および図7−1(b)に示されるようにトップウェハ10Tを保持することができる。このようにウェハ保持部41に保持されたトップウェハ10Tをウェハカセットから取り出し、ボート4に搬送する。
【0036】
つぎに、ウェハ保持部41に保持したトップウェハ10Tを、ボート4において先にボトムウェハ10Bが収納された溝部に挿入する。この際、溝部におけるボトムウェハ10Bおよびトップウェハ10Tを保持するそれぞれの位置をボトムウェハ10の表面と平行な方向においてずらして、トップウェハ10Tの一部をボトムウェハ10からはみ出させる。そして、ボトムウェハ10Bのノッチ部10BNの一部がトップウェハ10Tによって部分的に覆われるようにトップウェハ10Tの保持位置の1つをボトムウェハ10Bのノッチ部10BNに合わせておもて面が上側を向くようにトップウェハ10Tを溝部に挿入する。例えばトップウェハ10Tは、図5(b)に示されるようにボトムウェハ10Bのノッチ部10BNと支柱31とがトップウェハ10Tの中心位置O’を挟んで対向するように、可動チャック42aをボトムウェハ10Bのノッチ部10BN内に入れて第1アーム部42の延在方向に挿入される。このとき、支柱31の中心位置と、トップウェハ10Tの面内方向における中心位置O’と、ボトムウェハ10Bの面内方向における中心位置Oと、ボトムウェハ10Bのノッチ部10BNとは仮想の直線の上に並んでいる。
【0037】
図6(b)に示されるようにトップウェハ10Tを所定の保持位置まで挿入した後、可動チャック42aを外方に開いてトップウェハ10Tの保持状態を解除し、トップウェハ10Tをボート4に移載する。このとき、支柱31の溝部においては、トップウェハ10Tはおもて面が上を向いた状態で第2保持面31bで保持される。また、支柱32、支柱33において、トップウェハ10Tはおもて面が上を向いた状態でボトムウェハ10B上に保持される。そして、上記のように、可動チャック42aをボトムウェハ10Bのノッチ部10BN内に入れることにより、ボトムウェハ10Bとトップウェハ10Tとの外周位置をずらすことができ、ボトムウェハ10Bのノッチ部10BNが露出する。その後、ウェハ搬送部は、ウェハ保持部41をボート4から戻す。
【0038】
これらの一連の移載作業を繰り返し行うことにより、ボトムウェハ10Bとトップウェハ10Tとが、それぞれのウェハ10の中心位置O、O’が面内方向において異なり、且つそれぞれのウェハの外周縁部に設けられたノッチ部10BN、10TNの位置が円周方向において異なる状態とされ、裏面同士が対向した状態で重ねられて、ボート4の1つの溝部内に収納される。上述したボート4へのウェハ10の収納は、常圧下で行われる。なお、ボート4へウェハ10を収納する際、上述したように溝部毎にボトムウェハ10Bとトップウェハ10Tとを順次収納してもよく、全てのボトムウェハ10Bを先に各溝部に収納した後にトップウェハ10Tを各溝部内に収納してもよい。
【0039】
また、ボトムウェハ10Bとトップウェハ10Tとは1つのウェハカセットに収納されていてもよく、それぞれ専用のウェハカセットに収納されていてもよい。
【0040】
また、ボトムウェハ10Bおよびトップウェハ10Tにおけるノッチ部10Nの位置は、例えばウェハカセットに収納されている時点で既に所定の規則に従って揃えられている。例えばボトムウェハ10Bは、ノッチ部10Nの位置を手前側に揃えてウェハカセットに収納されている。そして、トップウェハ10Tは、ノッチ部10Nの位置が手前側から円周方向に少しずらされてウェハカセットに収納されている。ここで、手前側とは、ウェハ保持部41がウェハカセットからウェハ10を取り出す側である。これにより、ウェハカセットから取り出されたウェハ10は、ノッチの位置をそのままの状態でボート4に収納すればよい。
【0041】
また、ボトムウェハ10Bおよびトップウェハ10Tにおけるノッチ部10Nの位置は、ウェハカセットからウェハ10が取り出された後に、ボートに収納するまでの間に調整されてもよい。すなわち、ウェハ搬送部は、ウェハ保持部41でウェハ10を保持した後にウェハ10におけるノッチ部10Nの位置を調整する調整機構を備えていてもよい。
【0042】
ウェハ10が収納されたボート4は、フランジ8上に載置された状態で反応炉内へ導入される。ボート4の導入後、ヒータ5により反応炉内が加熱され、真空ポンプ11を用いて反応炉内が高真空状態にされることにより、反応炉内の温度および圧力が制御される。その後、ノズル2およびノズル3から反応炉内に原料ガスが導入されることで、反応炉内で原料ガスの化学反応が起き、ウェハ10の表面へ薄膜が堆積して成膜が行われる。ウェハ10は、裏面同士が対向するように2枚ずつ重ねてボート4に収納されているため、ウェハ10におもて面のみが成膜され、裏面には成膜されない。成膜後、ボート4が反応炉から引き出され、ボート4から成膜処理済みのウェハ10がウェハカセットに搬送され、収納される。
【0043】
成膜処理済みのウェハ10をボート4からウェハカセットへ搬出する場合は、上記のボート4への移載作業と逆の手順で作業を行う。まず、成膜処理済みのトップウェハ10Tをボート4からウェハカセットに移載する。ウェハ搬送部がボート4の溝部にアクセスし、2枚重なったウェハ10のうち、おもて面が上を向いたトップウェハ10Tをウェハ保持部41で保持する。このとき、トップウェハ10Tにおけるボトムウェハ10Bのノッチ部10BNに対応する領域に重なる外周部およびボトムウェハ10Bからはみ出た領域の外周部で狭持することによりトップウェハ10Tを保持する。トップウェハ10Tの外周位置は、ボトムウェハ10Bの外周位置から支柱31側にずれており、またボトムウェハ10Bのノッチ部10BNに可動チャック42aを入れることができるため、ウェハ保持部41は容易にトップウェハ10Tの外周部を狭持して保持することができる。
【0044】
つぎに、ウェハ搬送部は、ウェハ保持部41に保持したトップウェハ10Tをボート4から取り出し、ウェハカセットにアクセスしてトップウェハ10Tを収納する。そして、これらの一連の移載作業を繰り返し行う。
【0045】
つぎに、溝部に残っている成膜処理済みのボトムウェハ10Bをボート4からウェハカセットに移載する。ウェハ搬送部がボート4の溝部にアクセスし、おもて面が下を向いたボトムウェハ10Bをウェハ保持部41で保持する。ボトムウェハ10Bの保持方法は、成膜処理前のボトムウェハ10Bをボート4へ収納する場合と同様である。
【0046】
つぎに、ウェハ搬送部は、ウェハ保持部41に保持したボトムウェハ10Bをボート4から取り出し、ウェハカセットにアクセスしてボトムウェハ10Bを収納する。そして、これらの一連の移載作業を繰り返し行うことで、ボート4からウェハカセットに成膜処理済みのウェハ10を移載することができる。上述したウェハカセットへのウェハ10の収納は、常圧下で行われる。
【0047】
なお、ウェハカセットへウェハ10を移載する際、上述したように全てのトップウェハ10Tをボート4からウェハカセットに移載した後にボトムウェハ10Bをボート4からウェハカセットに移載してもよく、溝部毎にトップウェハ10Tとボトムウェハ10Bとを順次移載してもよい。
【0048】
また、上記においては、ウェハ搬送部が1つのウェハ保持部41を有する場合について説明したが、連結された複数のウェハ保持部41を用いることも可能である。この場合は1度の移載処理において複数のウェハ10をウェハカセットからボート4に移載し、またはボート4からウェハカセットに移載することができる。図8は、連結部45により連結された5つのウェハ保持部41によるボート4の溝部へのボトムウェハ10Bの収納方法を模式的に示す断面図である。
【0049】
また、上記のようなウェハの移載方法を可能とするために、支柱は溝部へのウェハ10の挿入の際に第2アーム43、44が侵入可能な構成とされる。
【0050】
上述した実施の形態にかかるCVD装置20においては、ウェハを裏面同士が対向するように重ねてボート4の溝部に保持した状態で成膜できる。これにより、CVD装置20では、1つの溝部に1枚ずつウェハ10を保持する場合と比較して1度の成膜処理において2倍の枚数のウェハ10を成膜処理することができ、生産性の高い成膜処理が可能である。また、1つの溝部に1枚ずつウェハ10を保持する場合における1度の成膜処理分の反応ガスで2倍の枚数のウェハ10を成膜処理することができるため、低コストでの成膜処理が可能である。
【0051】
また、CVD装置20ではウェハ10は、ボート4の1つの溝部に保持される際に、それぞれのウェハ10の外周位置が下側のウェハ10のノッチ部10Nの一部が露出するとともに一部が隠れるように重ねられる。このような位置関係の条件を満たせば、2枚のウェハ10のずれ方向およびずれ量は任意の方向および任意の量でよい。
【0052】
これにより、トップウェハ10Tをボトムウェハ10Bに重ねる際にウェハ保持部41のアーム部がボトムウェハ10Bに接触して傷を付けることを抑制することができる。また、重なったウェハ10をボート4から搬出する際に、ウェハ保持部41のアーム部がボトムウェハ10bに接触することなく確実にトップウェハ10Tを狭持して保持することができる。すなわち、ウェハ10にアーム部の接触に起因した傷や割れを発生させることなくウェハ10を重ねてボート4に保持することができ、また剥離して、搬出することができる。
【0053】
したがって、実施の形態にかかるCVD装置20によれば、搬送に起因したウェハ10の傷や割れを防止することができる、2枚のウェハを裏面同士が対向するように重ねて保持した状態での成膜が実現可能であり、高い生産性および低コストでの成膜が可能である。
【0054】
なお、上記の実施の形態ではバッチ式の減圧縦型CVD装置について説明したが、上述したボートは平行平板型の対向電極を用いるCVD装置を除いた縦型CVD装置に広く適用可能である。また、ウェハを1枚ずつ処理する枚葉式に適用することも可能である。
【0055】
また、上記の実施の形態では1つの溝にウェハを重ねて保持する場合について説明したが、ボート4の上下方向において隣接する溝部に上記と同様な位置関係でウェハを保持してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 アウターチューブ、2 ノズル、3 ノズル、4 ボート、4a 底板、5 ヒータ、6 インナーチューブ、10 半導体ウェハ(ウェハ)、10B ボトムウェハ、10BN ノッチ部、10N ノッチ部、10T トップウェハ、10TN ノッチ部、11 真空ポンプ、12 排気口、13 排気口、15 減圧口、20 減圧縦型CVD装置、31 支柱、31a 第1保持面、31b 第2保持面、32 支柱、33 支柱、41 ウェハ保持部、42 第1アーム部、42a 可動チャック、43 第2アーム部、43a 固定チャック、44 第3アーム部、44a 固定チャック、H 段差寸法、O 中心位置、O’ 中心位置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周縁部に切り欠き部が設けられた2枚のウェハを裏面同士が対向した状態でウェハ保持用の溝部に保持可能にするボートと、
前記ボートを収納して前記2枚のウェハのそれぞれの表面に気相成長反応により被膜を形成する反応炉と、
を備え、
前記溝部の前記2枚のウェハを保持するそれぞれの位置が、前記ウェハの表面と平行な方向においてずれていること、
を特徴とする薄膜形成装置。
【請求項2】
前記溝部は、前記2枚のウェハのうち下側に保持される第1ウェハを保持する第1保持面と、前記第1保持面よりも上部において前記第1保持面よりも前記溝部の奥行き方向に深く設けられて前記2枚のウェハのうち上側に保持される第2ウェハを保持する第2保持面とを一部に有すること、
を特徴とする請求項1に記載の薄膜形成装置。
【請求項3】
前記第2保持面では、前記第1ウェハの切り欠き部の一部が前記第2ウェハによって部分的に覆われるように、前記第2ウェハを保持すること、
を特徴とする請求項2に記載の薄膜形成装置。
【請求項4】
前記2枚のウェハの切り欠き部が重ならないように調整する調整機構を有すること、
を特徴とする請求項2又は3に記載の薄膜形成装置。
【請求項5】
前記溝部は、前記2枚のウェハの裏面同士が接触するように前記2枚のウェハを保持する保持部を有していること、
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の薄膜形成装置。
【請求項6】
前記2枚のウェハが、一つの前記溝部に、保持されること
を特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の薄膜形成装置。
【請求項7】
前記薄膜形成装置が、バッチ式の減圧縦型CVD装置であること、
を特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の薄膜形成装置。
【請求項8】
外周縁部に切り欠き部が設けられた第1ウェハを保持してボートに搬送し、前記ボートに設けられたウェハ保持用の溝部に被成膜面が下側を向くように移載する工程と、
第2ウェハを保持してボートに搬送し、前記溝部の前記第1ウェハおよび前記第2ウェハを保持するそれぞれの位置を前記第1ウェハの表面と平行な方向においてずらして前記第2ウェハの一部を前記第1ウェハからはみ出させ、被成膜面が上側を向くように前記第2ウェハを前記第1ウェハの裏面上に移載する工程と、
気相成長反応により前記第1ウェハおよび前記第2ウェハの被成膜面に被膜を形成する工程と、
前記被膜が形成された前記第2ウェハにおける前記第1ウェハの切り欠き部に対応する領域に重なる外周部および前記第1ウェハからはみ出た領域の外周部で前記第2ウェハを挟んで保持し、前記第2ウェハを前記ボートから搬出する工程と、
前記第1ウェハを前記ボートから搬出する工程と、
を含むことを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項9】
前記第1ウェハの切り欠き部の一部が前記第2ウェハによって部分的に覆われるように、前記第2ウェハを前記第1ウェハの裏面上に重ねること、
を特徴とする請求項8に記載の薄膜形成方法。
【請求項10】
前記第2ウェハは外周縁部に切り欠き部を有し、前記第1ウェハと前記第2ウェハとに形成された切り欠き部が重ならないように前記第1ウェハと前記第2ウェハとを重ねること、
を特徴とする請求項8又は9に記載の薄膜形成方法。
【請求項11】
前記第1ウェハと前記第2ウェハとの裏面同士が接触するように前記第1ウェハと前記第2ウェハとを重ねること、
を特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の薄膜形成方法。
【請求項12】
前記第1ウェハと前記第2ウェハとを、一つの前記溝部に保持すること、
を特徴とする請求項8乃至11のいずれか一項に記載の薄膜形成方法。
【請求項13】
前記溝部は、前記第1ウェハを保持する第1保持面と、前記第1保持面よりも上部において前記第1保持面よりも前記第1ウェハの表面と平行な方向に深く設けられて前記第2ウェハを保持する第2保持面とを一部に有すること、
を特徴とする請求項8乃至12のいずれか一項に記載の薄膜形成方法。
【請求項14】
前記被膜が形成された前記第2ウェハは、外周部の三点で挟まれて保持され、
前記三点のうち一点は、前記第2ウェハにおける前記第1ウェハの切り欠き部に対応する領域に重なる外周部であり、
前記三点のうち二点は、前記第2ウェハにおける前記第1ウェハからはみ出た領域の外周部であること、
を特徴とする請求項8乃至13のいずれか一項に記載の薄膜形成方法。
【請求項15】
前記第1ウェハと前記第2ウェハの対を前記ボートに複数配置すること、
を特徴とする請求項8乃至14のいずれか一項に記載の薄膜形成方法。
【請求項1】
外周縁部に切り欠き部が設けられた2枚のウェハを裏面同士が対向した状態でウェハ保持用の溝部に保持可能にするボートと、
前記ボートを収納して前記2枚のウェハのそれぞれの表面に気相成長反応により被膜を形成する反応炉と、
を備え、
前記溝部の前記2枚のウェハを保持するそれぞれの位置が、前記ウェハの表面と平行な方向においてずれていること、
を特徴とする薄膜形成装置。
【請求項2】
前記溝部は、前記2枚のウェハのうち下側に保持される第1ウェハを保持する第1保持面と、前記第1保持面よりも上部において前記第1保持面よりも前記溝部の奥行き方向に深く設けられて前記2枚のウェハのうち上側に保持される第2ウェハを保持する第2保持面とを一部に有すること、
を特徴とする請求項1に記載の薄膜形成装置。
【請求項3】
前記第2保持面では、前記第1ウェハの切り欠き部の一部が前記第2ウェハによって部分的に覆われるように、前記第2ウェハを保持すること、
を特徴とする請求項2に記載の薄膜形成装置。
【請求項4】
前記2枚のウェハの切り欠き部が重ならないように調整する調整機構を有すること、
を特徴とする請求項2又は3に記載の薄膜形成装置。
【請求項5】
前記溝部は、前記2枚のウェハの裏面同士が接触するように前記2枚のウェハを保持する保持部を有していること、
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の薄膜形成装置。
【請求項6】
前記2枚のウェハが、一つの前記溝部に、保持されること
を特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の薄膜形成装置。
【請求項7】
前記薄膜形成装置が、バッチ式の減圧縦型CVD装置であること、
を特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の薄膜形成装置。
【請求項8】
外周縁部に切り欠き部が設けられた第1ウェハを保持してボートに搬送し、前記ボートに設けられたウェハ保持用の溝部に被成膜面が下側を向くように移載する工程と、
第2ウェハを保持してボートに搬送し、前記溝部の前記第1ウェハおよび前記第2ウェハを保持するそれぞれの位置を前記第1ウェハの表面と平行な方向においてずらして前記第2ウェハの一部を前記第1ウェハからはみ出させ、被成膜面が上側を向くように前記第2ウェハを前記第1ウェハの裏面上に移載する工程と、
気相成長反応により前記第1ウェハおよび前記第2ウェハの被成膜面に被膜を形成する工程と、
前記被膜が形成された前記第2ウェハにおける前記第1ウェハの切り欠き部に対応する領域に重なる外周部および前記第1ウェハからはみ出た領域の外周部で前記第2ウェハを挟んで保持し、前記第2ウェハを前記ボートから搬出する工程と、
前記第1ウェハを前記ボートから搬出する工程と、
を含むことを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項9】
前記第1ウェハの切り欠き部の一部が前記第2ウェハによって部分的に覆われるように、前記第2ウェハを前記第1ウェハの裏面上に重ねること、
を特徴とする請求項8に記載の薄膜形成方法。
【請求項10】
前記第2ウェハは外周縁部に切り欠き部を有し、前記第1ウェハと前記第2ウェハとに形成された切り欠き部が重ならないように前記第1ウェハと前記第2ウェハとを重ねること、
を特徴とする請求項8又は9に記載の薄膜形成方法。
【請求項11】
前記第1ウェハと前記第2ウェハとの裏面同士が接触するように前記第1ウェハと前記第2ウェハとを重ねること、
を特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の薄膜形成方法。
【請求項12】
前記第1ウェハと前記第2ウェハとを、一つの前記溝部に保持すること、
を特徴とする請求項8乃至11のいずれか一項に記載の薄膜形成方法。
【請求項13】
前記溝部は、前記第1ウェハを保持する第1保持面と、前記第1保持面よりも上部において前記第1保持面よりも前記第1ウェハの表面と平行な方向に深く設けられて前記第2ウェハを保持する第2保持面とを一部に有すること、
を特徴とする請求項8乃至12のいずれか一項に記載の薄膜形成方法。
【請求項14】
前記被膜が形成された前記第2ウェハは、外周部の三点で挟まれて保持され、
前記三点のうち一点は、前記第2ウェハにおける前記第1ウェハの切り欠き部に対応する領域に重なる外周部であり、
前記三点のうち二点は、前記第2ウェハにおける前記第1ウェハからはみ出た領域の外周部であること、
を特徴とする請求項8乃至13のいずれか一項に記載の薄膜形成方法。
【請求項15】
前記第1ウェハと前記第2ウェハの対を前記ボートに複数配置すること、
を特徴とする請求項8乃至14のいずれか一項に記載の薄膜形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4−1】
【図4−2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4−1】
【図4−2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2011−258890(P2011−258890A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134297(P2010−134297)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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