説明

薄膜形成装置及び薄膜形成方法

本発明の薄膜形成装置(1)は、真空容器(11)内に反応性ガスを導入するガス導入手段と、真空容器(11)内に反応性ガスのプラズマを発生させるプラズマ発生手段(61)を備える。プラズマ発生手段(61)は、誘電体壁(63)と渦状のアンテナ(65a,65b)を有して構成されている。アンテナ(65a,65b)は、高周波電源(69)に対して並列に接続され、アンテナ(65a,65b)の渦を成す面に対する垂線に垂直な方向に隣り合った状態で設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学薄膜や光学デバイス、オプトエレクトロニクス用デバイス、半導体デバイス等に用いる薄膜を製造するための薄膜形成装置及び薄膜形成方法に係り、特にプラズマ発生手段や真空容器を改良して、薄膜と化学反応する活性種の密度を向上させる薄膜形成装置及び当該薄膜形成装置を用いた薄膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から真空容器内でプラズマ化させた反応性ガスを用いて基板上への薄膜の形成、形成した薄膜の表面改質、エッチング等のプラズマ処理が行われている。例えば、スパッタ技術を用いて基板上に金属の不完全反応物からなる薄膜を形成し、この不完全反応物からなる薄膜にプラズマ化した反応性ガスを接触させ、金属化合物からなる薄膜を形成する技術が知られている(例えば、特開2001−234338号公報)。
【0003】
この技術では、薄膜形成装置が備える真空容器内で反応性ガスをプラズマ化するためにプラズマ発生手段が用いられている。プラズマ発生手段でプラズマ化したガスには、イオン、ラジカル等の活性種が含まれる。プラズマ化したガスに含まれる電子,イオンは薄膜へ損傷を与えるおそれがある一方で、電気的に中性な反応性ガスのラジカルは薄膜の形成に寄与する場合が多い。このため、この従来の技術では、電子,イオンが基板上の薄膜へ向かうのを阻止して、ラジカルを選択的に薄膜に接触させるためにグリッドが用いられていた。このように、グリッドを用いることで、薄膜の形成に寄与するラジカルのプラズマガス中における相対的な密度を向上させて、プラズマ処理の効率化が図られていた。
【0004】
しかし、ラジカルの相対的な密度を向上させるためにグリッドを用いると、薄膜形成装置の構造が複雑になるという問題点や、真空容器内のラジカルの分布領域がグリッドの寸法,形状,配置によって制限を受けるという問題点があった。このような問題点は、広範囲にプラズマ処理を行うことを妨げ、プラズマ処理の非効率化の要因となり、結果として薄膜の生産効率を向上させることの妨げとなっていた。また、ラジカルの分布領域を広くするためにグリッドを大きくすると、コストがかかるという問題点も生じる。
【0005】
ところで、プラズマを発生させるためのプラズマ発生手段としては、従来から平行平板型,ECR型,誘導結合型等の装置が知られている。誘導結合型の装置としては、円筒型と平板型の装置が知られている。
【0006】
図12は、平板型の従来のプラズマ発生装置161を説明する図である。図12のAで示す図は、薄膜形成装置の一部を示した断面図である。図12のAに示すように、平板型の従来のプラズマ発生手段は、真空容器111の一部を石英等の誘電体からなる誘電板163で構成し、誘電板163の大気側に位置する外壁に沿ってアンテナ165を配置する。
【0007】
図12のBに、アンテナ165の形状を示す。アンテナ165は、同一平面内で渦状となっている。平板型の従来のプラズマ発生装置161では、アンテナ165にマッチング回路を備えたマッチングボックス167を介して高周波電源169によって100kHz〜50MHzの周波数の電力を印加して真空容器111内にプラズマを発生させるものである。
【0008】
アンテナ165に対する高周波電力の印加は、図12のマッチングボックス167で示すような、インピーダンスマッチングを行うためのマッチング回路を介して行なわれる。図12に示すように、アンテナ165と高周波電源169の間に接続されるマッチング回路は、可変コンデンサ167a,167bとマッチング用コイル167cとを備えている。
【0009】
従来のプラズマ発生手段で、真空容器内で広範囲に対してプラズマ処理を行う場合には、アンテナ165を大きくすることが行なわれていたが、そうするとアンテナ165や、マッチング用コイル167cでの電力損失が大きくなるとともに、インピーダンスのマッチングがとりにくくなるという問題もあった。また、広範囲にプラズマ処理を行う場合には、場所によってプラズマの密度にむらが生じる等の問題も生じていた。
【0010】
以上の問題点に鑑みて、本発明の目的は、効率よく広範囲でプラズマ処理を行うことができる薄膜形成装置及び薄膜形成方法を提供することにある。
【発明の開示】
【0011】
本発明に係る薄膜形成装置は、真空容器と、該真空容器内に反応性ガスを導入するガス導入手段と、前記真空容器内に前記反応性ガスのプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、を備える薄膜形成装置であって、前記プラズマ発生手段が、前記真空容器の外壁に設けた誘電体壁と、渦状の第1のアンテナ及び第2のアンテナと、前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナを高周波電源と接続するための導線と、を有して構成され、前記真空容器の外側で前記誘電体壁に対応する位置に前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナを固定するアンテナ固定手段を備え、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナは、前記高周波電源に対して並列に接続され、第1のアンテナ及び前記第2のアンテナの渦を成す面に対する垂線に垂直な方向に隣り合った状態で設けられたことを特徴とする。
【0012】
このように、本発明の薄膜形成装置は、第1のアンテナと第2のアンテナを備えているので、第1のアンテナと第2のアンテナの太さ、形状、大きさ或いは径等を独立に調整することで、プラズマの分布を容易に調整することができる。また、第1のアンテナと第2のアンテナを並列に接続することで、第1のアンテナ及び第2のアンテナにマッチング回路を接続する場合でも、マッチング回路でのインピーダンスマチングをとりやすくするとともに、マッチング回路における電力損失を低減させて、電力をプラズマの発生のために有効に活用することが可能となる。さらに、第1のアンテナ及び第2のアンテナの渦を成す面に対する垂線に垂直な方向に隣り合った状態で、第1のアンテナ及び第2のアンテナが設けられることで広範囲にプラズマ処理を行うことが可能となる。
【0013】
このとき、前記導線に接続される部分で前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとを繋ぐ箇所に前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとの間隔を調整するための位置調整手段を設けると好適である。
このように構成することで、第1のアンテナと第2のアンテナとの間隔を調整して、プラズマの分布を容易に調整することができる。
【0014】
また、前記真空容器の中に基板を搬送するための基板搬送手段を備え、該基板搬送手段が、基板を前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナの渦を成す面と対向するように搬送し、前記基板搬送手段によって基板が搬送される向きと交差する方向に隣り合った状態で前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナが固定されると好適である。
このように構成することで、基板の搬送方向に垂直な向きでのプラズマの密度分布を容易に調整することができる。したがって、基板の搬送方向に垂直な向きで広範囲にプラズマ処理を行うことで、一度に多量の薄膜に対してプラズマ処理を行うことが可能となる。
【0015】
また、前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナが、第1の材料で形成した円管状の本体部と、該本体部の表面を前記第1の材料よりも電気抵抗が低い第2の材料で被覆した被覆層と、で構成されると好適である。
このように構成することで、第1のアンテナ及び第2のアンテナの本体部を安価で加工のしやすい第1の材料で形成し、電流が集中する被覆層を電気抵抗の低い第2の材料で形成することで、アンテナの高周波のインピーダンスを低下することができ、効率的な薄膜形成を行うことが可能となる。
【0016】
また、前記ガス導入手段は、前記プラズマ発生手段によってプラズマが発生する領域に反応性ガスと不活性ガスを導入する手段であると好適である。
このように構成することで、プラズマが発生する領域に反応性ガスと不活性ガスを導入することが可能となる。
【0017】
また、前記真空容器内の壁面に絶縁体が被覆されていると好適である。
このように構成することで、プラズマ発生手段で発生させたプラズマ中のラジカル又は励起状態のラジカル等の活性種が、真空容器内の壁面と反応して消滅することを抑制することが可能となる。
【0018】
本発明に係る薄膜形成装置は、内部を真空に維持する真空容器と、該真空容器内に反応性ガスを導入するガス導入手段と、前記真空容器内に前記反応性ガスのプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、を備える薄膜形成装置であって、前記真空容器内の壁面に絶縁体が被覆され、前記ガス導入手段は、前記プラズマ発生手段によってプラズマが発生する領域に反応性ガスと不活性ガスを導入する手段であることを特徴とする。
【0019】
このように、真空容器内の壁面に絶縁体が被覆された構成にすることで、プラズマ発生手段で発生させたプラズマ中のラジカル又は励起状態のラジカル等の活性種が、真空容器内の壁面と反応して消滅することを抑制することが可能となる。また、反応性ガスと不活性ガスを導入するガス導入手段を備えることで、プラズマが発生する領域に反応性ガスと不活性ガスを導入することが可能となる。
【0020】
このとき、前記プラズマ発生手段は、高周波電源に接続され、同一平面上で渦を成すアンテナを有して構成されると好適である。
【0021】
また、前記不活性ガスが、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス、クリプトンガス、キセノンガスからなる群から選択されるガスであると好適である。
【0022】
また、絶縁体が被覆される前記真空容器内の壁面が、前記プラズマ発生手段によってプラズマが発生する領域に面した前記真空容器の内壁面であると好適である。
このように、プラズマが発生する領域に面した真空容器の内壁面に絶縁体が被覆されることで、プラズマ中のラジカル又は励起状態のラジカル等の活性種が、真空容器と反応して消滅することを抑制することが可能となる。
【0023】
また、前記プラズマ発生手段によってプラズマが発生する領域に面して前記真空容器の内壁面から立設するプラズマ収束壁を備え、絶縁体が被覆される前記真空容器内の壁面は、前記プラズマ収束壁の壁面であると好適である。
このように、絶縁体がプラズマ収束壁に被覆されていることによって、プラズマ発生手段で発生させたプラズマ中のラジカル又は励起状態のラジカル等の活性種が、プラズマ収束壁の壁面と反応して消滅することを抑制することが可能となる。また、プラズマ収束壁を備えているため、プラズマ収束壁でプラズマの分布をコントロールすることが可能となる。
【0024】
また、前記絶縁体が、熱分解窒化硼素、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素からなる群から選択される絶縁体であると好適である。
【0025】
本発明に係る薄膜形成方法は、真空容器内のプラズマを発生させる領域に面する壁面に絶縁体を被覆した薄膜形成装置を用いて薄膜に対してプラズマ処理を行う薄膜形成方法であって、前記プラズマを発生させる領域に反応性ガスと不活性ガスを混合して導入する工程と、前記反応性ガスのプラズマを発生させる工程と、を備えることを特徴とする。
【0026】
このとき、前記絶縁体が、熱分解窒化硼素、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素からなる群から選択される絶縁体であると好適である。
【0027】
さらに、前記不活性ガスが、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス、クリプトンガス、キセノンガスからなる群から選択されるガスであると好適である。
【0028】
また、前記プラズマを発生させる工程は、同一平面上で渦を成すアンテナに高周波電源から電力を供給して前記真空容器内のプラズマを発生させる領域にプラズマを発生させる工程であると好適である。
【0029】
このように、プラズマを発生させる領域に面する壁面に絶縁体を被覆した真空容器を用いることで、発生させたプラズマ中のラジカル又は励起状態のラジカル等の活性種が、真空容器の内壁面と反応して消滅することを抑制して、高効率のプラズマ処理を行うことが可能となる。また、プラズマが発生する領域に反応性ガスと不活性ガスを混合して導入することで、プラズマ中における反応性ガスのラジカルの密度を向上させることができ、高効率のプラズマ処理を行うことが可能となる。
【0030】
本発明の他の利点等は、以下の記述により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
[図1]本発明の薄膜形成装置について説明する一部断面をとった上面の説明図である。
[図2]本発明の薄膜形成装置について説明する一部断面をとった側面の説明図である。
[図3]プラズマ発生手段を説明する説明図である。
[図4]アンテナの断面図である。
[図5]プラズマ中の酸素原子と酸素イオンの割合を測定した実験結果の一例を示す図である。
[図6]プラズマ中に存在する励起状態の酸素ラジカルと、酸素イオンの発光強度を測定した実験結果の一例を示す。
[図7]プラズマ中に存在する励起状態の酸素ラジカルと、酸素イオンの発光強度を測定した実験結果の一例を示す。
[図8]プラズマ中に存在する励起状態の酸素ラジカルの発光強度を測定した実験結果の一例を示す。
[図9]プラズマ中の酸素ラジカルの流量密度を測定した実験結果の一例を示す図である。
[図10]従来のプラズマ発生手段を用いて酸化ケイ素と酸化ニオブの多層薄膜を形成した場合の薄膜の透過率を測定した実験結果の一例を示す図である。
[図11]本発明のプラズマ発生手段を用いて酸化ニオブと酸化ケイ素の多層薄膜を形成した場合の薄膜の透過率を測定した実験結果の一例を示す図である。
[図12]平板型の従来のプラズマ発生手段を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する部材,配置等は本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
【0033】
図1,図2は、スパッタ装置1について説明する説明図である。図1が理解の容易のために一部断面をとった上面の説明図、図2が、図1の線A−B−Cに沿って一部断面をとった側面の説明図である。スパッタ装置1は本発明の薄膜形成装置の一例である。
【0034】
本例では、スパッタの一例であるマグネトロンスパッタを行うスパッタ装置1を用いているが、これに限定されるものでなく、マグネトロン放電を用いない2極スパッタ等、他の公知のスパッタを行うスパッタ装置を用いることもできる。
【0035】
本例のスパッタ装置1によれば、目的の膜厚よりもかなり薄い薄膜をスパッタで作成し、プラズマ処理を行うことを繰り返すことで目的の膜厚の薄膜を基板上に形成できる。本例では、スパッタとプラズマ処理によって平均0.01〜1.5nmの膜厚の薄膜を形成する工程を繰り返すことで、目的とする数〜数百nm程度の膜厚の薄膜を形成する。
【0036】
本例のスパッタ装置1は、真空容器11と、薄膜を形成させる基板を真空容器11内で保持するための基板ホルダ13と、基板ホルダ13を駆動するためのモータ17と、仕切壁12,16と、マグネトロンスパッタ電極21a,21bと、中周波交流電源23と、プラズマを発生するためのプラズマ発生装置61と、を主要な構成要素としている。仕切板16は、本発明のプラズマ収束壁に相当し、プラズマ発生装置61は、本発明のプラズマ発生手段に相当し、基板ホルダ13及びモータ17は本発明の基板搬送手段に相当する。
【0037】
真空容器11は、公知のスパッタ装置で通常用いられるようなステンレススチール製で、略直方体形状を備える中空体である。真空容器11は、アースされている。真空容器11の形状は中空の円柱状であってもよい。
【0038】
基板ホルダ13は、真空容器11内の略中央に配置されている。基板ホルダ13の形状は円筒状であり、その外周面に複数の基板(不図示)を保持する。なお、基板ホルダ13の形状は円筒状ではなく、中空の多角柱状や、円錐状であってもよい。基板ホルダ13は、真空容器11から電気的に絶縁され、電位的にフローティングされた状態となっている。基板ホルダ13は、円筒の筒方向の中心軸線Z(図2参照)が真空容器11の上下方向になるように真空容器11内に配設される。基板ホルダ13は、真空容器11内の真空状態を維持した状態で、真空容器11の上部に設けられたモータ17によって中心軸線Zを中心に回転駆動される。
【0039】
基板ホルダ13の外周面には、多数の基板(不図示)が、基板ホルダ13の中心軸線Zに沿った方向(上下方向)に所定間隔を保ちながら整列させた状態で保持される。本例では、基板の薄膜を形成させる面(以下「膜形成面」という)が、基板ホルダ13の中心軸線Zと垂直な方向を向くように、基板が基板ホルダ13に保持されている。
【0040】
仕切板12,16は、真空容器11の内壁面から基板ホルダ13へ向けて立設して設けられている。本例における仕切壁12,16は、向かい合う1対の面が開口した筒状の略直方体をした、ステンレス製の部材である。仕切壁12,16は、真空容器11の側内壁と基板ホルダ13との間に、真空容器11の側壁から基板ホルダ13の方向へ立設した状態で固定される。このとき仕切壁12,16の開口した一方側が真空容器11の側内壁側に、他方側が基板ホルダ13に面する向きで、仕切壁12,16は固定される。また、仕切壁12,16の基板ホルダ13側に位置する端部は、基板ホルダ13の外周形状に沿った形状になっている。
【0041】
真空容器11の内壁面,仕切板12,基板ホルダ13の外周面に囲繞されて、スパッタを行うための成膜プロセスゾーン20が形成されている。また、真空容器11の内壁面,後述のプラズマ発生装置61,仕切板16,基板ホルダ13の外周面に囲繞されて、プラズマを発生させて基板上の薄膜に対してプラズマ処理を行うための反応プロセスゾーン60が形成されている。本例では、真空容器11の仕切壁12が固定されている位置から、基板ホルダ13の中心軸線Zを中心にして約90度回転させた位置に仕切壁16が固定されている。このため、成膜プロセスゾーン20と反応プロセスゾーン60が、基板ホルダ13の中心軸線Zに対して約90度ずれた位置に形成される。したがって、モータ17によって基板ホルダ13が回転駆動されると、基板ホルダ13の外周面に保持された基板が、成膜プロセスゾーン20に面する位置と反応プロセスゾーン60に面する位置との間で搬送されることになる。
【0042】
真空容器11の成膜プロセスゾーン20と反応プロセスゾーン60との間の位置には、排気用の配管が接続され、この配管には真空容器11内を排気するための真空ポンプ15が接続されている。この真空ポンプ15と図示しないコントローラとにより、真空容器11内の真空度が調整できるように構成されている。
【0043】
仕切壁16の反応プロセスゾーン60に面する壁面には、絶縁体からなる保護層Pが被覆されている。さらに、真空容器11の内壁面の反応プロセスゾーン60に面する部分にも絶縁体からなる保護層Pが被覆されている。保護層Pを構成する絶縁体としては、例えば、熱分解窒化硼素(PBN:Pyrolytic Boron Nitride)や、酸化アルミニウム(Al)や、酸化ケイ素(SiO)や、窒化ホウ素(BN)を用いることができる。保護層Pは、化学的気相成長法(Chemical Vapor Deposition)や、蒸着法、溶射法等によって、仕切壁16や真空容器11の内壁面へ被覆される。熱分解窒化硼素の場合には、化学的気相成長法を利用した熱分解法によって仕切壁16や真空容器11の内壁面へ被覆するとよい。
【0044】
成膜プロセスゾーン20には、マスフローコントローラ25,26が配管を介して連結されている。マスフローコントローラ25は、不活性ガスを貯留するスパッタガスボンベ27に接続されている。マスフローコントローラ26は、反応性ガスを貯留する反応性ガスボンベ28に接続されている。不活性ガスと反応性ガスは、マスフローコントローラ25,26で制御されて成膜プロセスゾーン20に導入される。成膜プロセスゾーン20に導入する不活性ガスとしては、例えばアルゴンガスや、ヘリウムガスや、ネオンガスや、クリプトンガスや、キセノンガスを用いることができる。また、成膜プロセスゾーン20に導入する反応性ガスとしては、例えば酸素ガス,窒素ガス,弗素ガス,オゾンガス等を用いることができる。
【0045】
成膜プロセスゾーン20には、基板ホルダ13の外周面に対向するように、真空容器11の壁面にマグネトロンスパッタ電極21a,21bが配置されている。このマグネトロンスパッタ電極21a,21bは、不図示の絶縁部材を介して接地電位にある真空容器11に固定されている。マグネトロンスパッタ電極21a,21bは、トランス24を介して、中周波交流電源23に接続され、交番電界が印加可能に構成されている。本例の中周波交流電源23は、1k〜100kHzの交番電界を印加するものである。マグネトロンスパッタ電極21a,21bには、ターゲット29a,29bが保持される。ターゲット29a,29bの形状は平板状であり、ターゲット29a,29bの基板ホルダ13の外周面と対向する面が、基板ホルダ13の中心軸線Zと垂直な方向を向くように保持される。
【0046】
なお、スパッタを行う成膜プロセスゾーンを一箇所だけではなく、複数箇所設けることもできる。すなわち、図1の破線で示すように、真空容器11に成膜プロセスゾーン20と同様の成膜プロセスゾーン40を設けることもできる。例えば、真空容器11に仕切壁14を設けて、成膜プロセスゾーン20に対して基板ホルダ13を挟んで対象の位置に、成膜プロセスゾーン40を形成することができる。成膜プロセスゾーン40には、成膜プロセスゾーン20と同様に、マグネトロンスパッタ電極41a,41bが配置されている。マグネトロンスパッタ電極41a,41bは、トランス44を介して、中周波交流電源43に接続され、交番電界が印加可能に構成されている。マグネトロンスパッタ電極41a,41bには、ターゲット49a,49bが保持される。成膜プロセスゾーン40には、マスフローコントローラ45,46が配管を介して連結されている。マスフローコントローラ45は不活性ガスを貯留するスパッタガスボンベ47に、マスフローコントローラ46は反応性ガスを貯留する反応性ガスボンベ48に接続されている。真空容器11の成膜プロセスゾーン40と反応プロセスゾーン60との間の位置には、排気用の配管が接続され、この配管には真空容器11内を排気するための真空ポンプ15’が接続される。真空ポンプ15’を真空ポンプ15と共通に使用してもよい。
【0047】
反応プロセスゾーン60に対応する真空容器11の内壁面には、開口が形成され、この開口には、プラズマ発生手段としてのプラズマ発生装置61が連結されている。また、反応プロセスゾーン60には、本発明のガス導入手段として、マスフローコントローラ75を介して不活性ガスボンベ77内の不活性ガスを導入するための配管や、マスフローコントローラ76を介して反応性ガスボンベ78内の反応性ガスを導入するための配管が接続されている。反応プロセスゾーン60に導入する不活性ガスとして、例えばアルゴンガスや、ヘリウムガスや、ネオンガスや、クリプトンガスや、キセノンガスを用いることができる。また、反応プロセスゾーン60に導入する反応性ガスとして、例えば酸素ガス,窒素ガス,弗素ガス,オゾンガス等を用いることができる。
【0048】
図3は、プラズマ発生装置61を説明する説明図であり、プラズマ発生装置61を正面から見た説明図である。図3には、マッチングボックス67と、高周波電源69も示している。
【0049】
プラズマ発生装置61は、誘電体で板状に形成された誘電体壁63と、同一平面上で渦を成すアンテナ65a,65bと、アンテナ65a,65bを高周波電源69と接続するための導線66と、アンテナ65a,65bを誘電体壁63に対して固定するための固定具68を有して構成されている。アンテナ65aは、本発明の第1のアンテナに相当し、アンテナ65bは、本発明の第2のアンテナに相当し、固定具68は本発明のアンテナ固定手段に相当する。
【0050】
本例の誘電体壁63は、石英で形成されている。なお、誘電体壁63は石英ではなくAl等の他のセラミックス材料で形成されたものでもよい。誘電体壁63は、真空容器11に形成されたフランジ11aと、矩形枠状をした蓋体11bとによって挟まれるようにして、反応プロセスゾーン60に対応して真空容器11の内壁に形成された開口を塞ぐ位置に設けられる。アンテナ65aとアンテナ65bとは、真空容器11の外側で誘電体壁63に対応する位置に、渦を成す面が真空容器11の内側を向くように上下(中心軸線Zと平行な方向)に隣り合った状態で、固定具68によって固定される(図2,図3参照)。すなわち、図2,図3に示したように、アンテナ65aとアンテナ65bの渦を成す面(誘電体壁63)に対する垂線に垂直な方向に所定の間隔Dを保って、アンテナ65aとアンテナ65bが固定されている。
【0051】
したがって、モータ17が基板ホルダ13を中心軸線Z周りに回転させることにより、基板ホルダ13の外周に保持された基板は、基板の膜形成面がアンテナ65a,65bの渦を成す面と対向するように搬送される。すなわち、本例では、アンテナ65aとアンテナ65bとが上下に隣り合った状態で固定されているため、アンテナ65aとアンテナ65bとは、基板が搬送される向きと交差する方向(中心軸線Zと平行な方向、本例では上下方向)に隣り合った状態で固定されることになる。
【0052】
本例の固定具68は、固定板68a,68bと、ボルト68c,68dで構成される。固定板68aと誘電体壁63とでアンテナ65aを挟み、固定板68bと誘電体壁63とでアンテナ65bを挟み、固定板68a,68bを蓋体11bに対してボルト68c,68dを締め付けることによって、アンテナ65a,65bは固定される。
【0053】
アンテナ65aとアンテナ65bは、高周波電源からアンテナ65a,65bに至る導線66の先に、高周波電源69に対して並列に接続される。アンテナ65a,65bは、マッチング回路を収容するマッチングボックス67を介して高周波電源69に接続される。マッチングボックス67内には、図3に示すように、可変コンデンサ67a,67bが設けられている。本例では、アンテナ65aに対してアンテナ65bが並列に接続されているため、従来のマッチング回路(図12参照)でマッチング用コイル167cが果たす役目の全部又は一部を、アンテナ65bが果たす。したがって、マッチングボックス内での電力損失を軽減し、高周波電源69から供給される電力をアンテナ65a,65bでプラズマの発生に有効に活用することができる。また、インピーダンスマッチングもとりやすくなる。
【0054】
導線66の先に接続された部分で、アンテナ65aとアンテナ65bとの間を繋ぐ箇所には、アンテナ65aとアンテナ65bとの間隔Dを調整できるように、たるみ部66a,66bを設けている。たるみ部66a,66bは本発明の位置調整手段に相当する。本例のスパッタ装置1では、アンテナ65a,65bを固定具68によって固定する際に、たるみ部66a,66bを伸縮させることで、アンテナ65aとアンテナ65bの上下方向の間隔Dを調整することができる。すなわち、固定板68a,68bと誘電体壁63とによって、アンテナ65a,65bを挟む位置を変えることで、間隔Dを調整することが可能となる。
【0055】
図4は、アンテナ65aの断面図である。本例のアンテナ65aは、銅で形成された円管状の本体部65aと、本体部の表面を被覆する銀で形成された被覆層65aから構成される。アンテナ65aのインピーダンスを低下するためには、電気抵抗の低い材料でアンテナ65aを形成するのが好ましい。そこで、高周波の電流がアンテナの表面に集中するという特性を利用して、本体部65aを安価で加工が容易な、しかも電気抵抗も低い銅で円管状に形成し、本体部65aの外側の表面を銅よりも電気抵抗の低い銀で被覆した被覆層65aを備える構成とした。このように構成することで、高周波に対するアンテナ65a,65bのインピーダンスを低減して、アンテナ65aに電流を効率よく流して、プラズマを発生させる効率を高めている。アンテナ65bの構成も、アンテナ65aと同様に銅製の本体部65bと銀で形成された被覆層65bを備えている。勿論、アンテナ65aと、アンテナ65bの断面の大きさ(太さ)を変えることもできる。なお、本例では、たるみ部66a,66bも、銅で円管状に形成され、表面に銀を被覆している。
【0056】
本例のプラズマ発生装置61では、アンテナ65aとアンテナ65bの上下方向の間隔Dや、アンテナ65aの径Raや、アンテナ65bの径Rb等を調整してアンテナ65a,65bを固定し、反応性ガスボンベ78内の反応性ガスを、マスフローコントローラ75を介して0.1Pa〜10Pa程度の真空に保った反応プロセスゾーン60へ導入する。そして、高周波電源69からアンテナ65a,65bに13.56MHzの電圧を印加することで、反応プロセスゾーン60に反応性ガスのプラズマを所望の分布で発生させ、基板ホルダ13に配置される基板に対してプラズマ処理を行うことができる。
【0057】
本例では、並列に接続した2つのアンテナ65a,65bと、たるみ部66a,66bを備える構成により、1つのアンテナを大きくする場合に比べて、マッチングボックス67内のマッチング回路での電力損失を低減できるとともに、インピーダンスマッチングをとりやすくして、効率的なプラズマ処理を広範囲で行うことができる。
【0058】
さらに、アンテナ65a,65bの本体部65a,65bを安価で加工が容易な、しかも電気抵抗も低い銅で円管状に形成し、さらに、被覆層65a,65bを銅よりも電気抵抗の低い材料である銀で形成することで、アンテナ65a,65bの高周波のインピーダンスを低下することができ、電力損失を低減した効率的なプラズマ処理を行うことができる。
【0059】
さらに、本例では、アンテナ65aとアンテナ65bの上下方向の間隔Dを調整することで、基板ホルダ13に配置される基板に対するプラズマの分布を調整することができる。また、アンテナ65aの径Raや、アンテナ65bの径Rb、又はアンテナ65a,65bの太さ等を独立に変更することができるため、アンテナ65aの径Raや、アンテナ65bの径Rb又は太さ等を調整することでも、プラズマの分布を調整することができる。また、本例では、図3に示すように、アンテナ65aやアンテナ65bが大小の半円から構成される全体形状を備えているが、アンテナ65aやアンテナ65bの全体形状を、矩形などの形状に変更して、プラズマの分布を調整することも可能である。
【0060】
特に、基板の搬送方向に交差する方向(中心軸線Zと平行な方向)にアンテナ65aとアンテナ65bを並べて、両者の間隔も調整することができるため、基板の搬送方向に交差する方向(中心軸線Zと平行な方向)で広範囲にプラズマ処理を行う必要がある場合に、プラズマの密度分布を容易に調整することができる。例えば、本例のようなカルーセル型のスパッタ装置1を用いてプラズマ処理を行う場合には、基板ホルダ13での基板の配置,スパッタ条件等により、基板ホルダ13の上方に位置する薄膜と、中間に位置する薄膜の膜厚に違いが生じている場合がある。このような場合でも、本例のプラズマ発生装置61を用いれば、膜厚の違いに対応してプラズマの密度分布を適宜調整することができるという利点がある。
【0061】
そして、本例では、上述のように、仕切壁16の反応プロセスゾーン60に面する壁面や、真空容器11の内壁面の反応プロセスゾーン60に面する部分に熱分解窒化硼素が被覆することで、反応プロセスゾーン60のラジカルの密度を高く維持して、より多くのラジカルを基板上の薄膜と接触させてプラズマ処理の効率化を図っている。すなわち、仕切壁16や真空容器11の内壁面に化学的に安定な熱分解窒化硼素を被覆することで、プラズマ発生装置61によって反応プロセスゾーン60に発生したラジカル又は励起状態のラジカルが仕切壁16や真空容器11の内壁面と反応して消滅することを抑制している。また、仕切壁16で反応プロセスゾーン60に発生するラジカルが基板ホルダ13の方向へ向くようにコントロールできる。
【0062】
以下に、上述のスパッタ装置1を用いたプラズマ処理の方法として、基板上にスパッタで形成した不完全酸化ケイ素(SiOx1(x1<2))の薄膜に対してプラズマ処理を行い、その不完全酸化ケイ素よりも酸化が進んだ酸化ケイ素(SiOx2(x1<x2≦2))の薄膜を形成する方法について例示する。なお、不完全酸化ケイ素とは、酸化ケイ素SiOの構成元素である酸素が欠乏した不完全な酸化ケイ素SiO(x<2)のことである。
【0063】
まず、基板及びターゲット29a,29bをスパッタ装置1に配置する。基板は基板ホルダ13に保持させる。ターゲット29a,29bは、それぞれマグネトロンスパッタ電極21a,21bに保持させる。ターゲット29a,29bの材料としてケイ素(Si)を用いる。
【0064】
次に、真空容器11内を所定の圧力に減圧し、モータ17を作動させて、基板ホルダ13を回転させる。その後、真空容器11内の圧力が安定した後に、成膜プロセスゾーン20内の圧力を、0.1Pa〜1.3Paに調整する。
【0065】
次に、成膜プロセスゾーン20内に、スパッタ用の不活性ガスであるアルゴンガスと、反応性ガスである酸素ガスを、スパッタガスボンベ27、反応性ガスボンベ28からマスフローコントローラ25,26で流量を調整しながら導き、成膜プロセスゾーン20内のスパッタを行うための雰囲気を調整する。
【0066】
次に、中周波交流電源23からトランス24を介して、マグネトロンスパッタ電極21a,21bに周波数1〜100KHzの交流電圧を印加し、ターゲット29a,29bに、交番電界が掛かるようにする。これにより、ある時点においてはターゲット29aがカソード(マイナス極)となり、その時ターゲット29bは必ずアノード(プラス極)となる。次の時点において交流の向きが変化すると、今度はターゲット29bがカソード(マイナス極)となり、ターゲット29aがアノード(プラス極)となる。このように一対のターゲット29a,29bが、交互にアノードとカソードとなることにより、プラズマが形成され、カソード上のターゲットに対してスパッタを行う。
【0067】
スパッタを行っている最中には、アノード上には非導電性あるいは導電性の低い酸化ケイ素(SiO(x≦2))が付着する場合もあるが、このアノードが交番電界によりカソードに変換された時に、これら酸化ケイ素(SiO(x≦2))がスパッタされ、ターゲット表面は元の清浄な状態となる。
【0068】
そして、一対のターゲット29a,29bが、交互にアノードとカソードとなることを繰り返すことにより、常に安定なアノード電位状態が得られ、プラズマ電位(通常アノード電位とほぼ等しい)の変化が防止され、基板の膜形成面に安定してケイ素或いは不完全酸化ケイ素(SiOx1(x1<2))からなる薄膜が形成される。
なお、成膜プロセスゾーン20で形成する薄膜の組成は、成膜プロセスゾーン20に導入する酸素ガスの流量を調整することや、基板ホルダ13の回転速度を制御することで、ケイ素(Si)にしたり、酸化ケイ素(SiO)にしたり、成いは不完全酸化ケイ素(SiOx1(x1<2))にしたりできる。
【0069】
成膜プロセスゾーン20で、基板の膜形成面にケイ素或いは不完全酸化ケイ素(SiOx1(x<2))からなる薄膜を形成させた後には、基板ホルダ13の回転駆動によって基板を、成膜プロセスゾーン20に面する位置から反応プロセスゾーン60に面する位置に搬送する。
【0070】
反応プロセスゾーン60には、反応性ガスボンベ78から反応性ガスとして酸素ガスを導入するとともに、不活性ガスボンベ77から不活性ガス(例えば、アルゴンガス)を導入する。次に、アンテナ65a,65bに、13.56MHzの高周波電圧を印加して、プラズマ発生装置61によって反応プロセスゾーン60にプラズマを発生させる。反応プロセスゾーン60の圧力は、0.7Pa〜1Paに維持する。
【0071】
次に、基板ホルダ13が回転して、ケイ素或いは不完全酸化ケイ素(SiOx1(x1<2))からなる薄膜が形成された基板が反応プロセスゾーン60に面する位置に搬送されてくると、反応プロセスゾーン60では、ケイ素成いは不完全酸化ケイ素(SiOx1(x1<2))からなる薄膜をプラズマ処理によって酸化反応させる工程を行う。すなわち、プラズマ発生装置61によって反応プロセスゾーン60に発生させた酸素ガスのプラズマでケイ素或いは不完全酸化ケイ素(SiOx1(x1<2))を酸化反応させて、所望の組成の不完全酸化ケイ素(SiOx2(x1<x<2))或いは酸化ケイ素に変換させる。
【0072】
以上の工程によって、本例では、所望の組成の酸化ケイ素(SiO(x≦2))薄膜を作成することができる。さらに、以上の工程を繰り返すことで、薄膜を積層させて所望の膜厚の薄膜を作成することができる。
【0073】
特に、本例では、反応プロセスゾーン60に反応性ガスだけではなく、不活性ガスを導入している。反応プロセスゾーン60に導入する不活性ガスの割合は、反応プロセスゾーン60の形状や、反応プロセスゾーン60の圧力や、アンテナ65a,65bによる放電条件や、不活性ガス,反応性ガスの種類によって、最適な割合が決定される。例えば、反応性ガスの流量と不活性ガスの流量の合計の流量に対して、不活性ガスを27%程度の流量で導入する。
【0074】
このように、反応プロセスゾーン60に反応性ガスだけではなく、不活性ガスを導入することで、プラズマ中における反応性ガスのラジカルの相対的な密度を向上させることができる。この効果を図5ないし図7で示す。図5ないし図7は、反応性ガスとして酸素を、不活性ガスとしてアルゴンガスを導入して実験した場合の実験結果を説明するものである。
【0075】
図5は、反応プロセスゾーン60に発生したプラズマ中の酸素原子と酸素イオンの割合を示す図であり、反応プロセスゾーン60に酸素ガスだけを導入した場合と、酸素ガスとアルゴンガスを混合して導入した場合とを比較した実験結果を示している。図5の横軸が高周波電源69で印加する電力を、縦軸が発光強度比を示している。なお、発光強度比は、発光分光法(Optical Emission Spectroscopy)でプラズマ中に存在する励起状態の酸素ラジカルと、酸素イオンの発光強度を測定することで求めている。図5から、反応プロセスゾーン60に酸素ガスだけを150sccmで導入した場合よりも、酸素ガスとアルゴンガスを混合して導入した場合(酸素ガスを110sccmで、アルゴンガスを40sccmで導入した場合、すなわち、酸素ガスの流量とアルゴンガスの流量の合計の流量に対して、アルゴンガスを27%程度の流量で導入した場合)に、励起状態の酸素ラジカルの密度が高いことがわかる。なお、流量の単位としてのsccmは、0℃,1atmにおける、1分間あたりの流量を表すもので、cm/minに等しい。
【0076】
図6は、反応プロセスゾーン60に酸素ガスとアルゴンガスを混合して導入(酸素ガスを110sccmで、アルゴンガスを40sccmで導入)した場合における、プラズマ中に存在する励起状態の酸素ラジカルと、酸素イオンの発光強度を発光分光法で測定した実験結果を示す。図7は、図6の結果との比較例を示すものであり、反応プロセスゾーン60にアルゴンガスを導入せずに酸素ガスを導入(酸素ガスを150sccmで導入)した場合における、プラズマ中に存在する励起状態の酸素ラジカルと、酸素イオンの発光強度を発光分光法で測定した実験結果を示す。
【0077】
図6,図7の横軸が高周波電源69で印加する電力を、縦軸が発光強度比を示している。図6,図7の結果を比較すると、アルゴンガスを導入せずに酸素ガスを導入した場合に比べて、酸素ガスとアルゴンガスを混合して導入した場合に、酸素ラジカルの発光強度が強く、酸素ラジカルの密度が高いことがわかる。
【0078】
さらに、本例では、上述のように仕切壁16や、真空容器11の内壁面の反応プロセスゾーン60に面する部分に絶縁体が被覆されているため、反応プロセスゾーン60におけるプラズマ中の酸素ラジカルの密度を高く維持することができる。
【0079】
図8は、仕切壁16や、真空容器11の内壁面の反応プロセスゾーン60に面する部分を被覆する保護層Pの構成成分を変えた場合における、プラズマ中に存在する励起状態の酸素ラジカルの発光強度を発光分光法で測定した実験結果を示す。図8の横軸が高周波電源69で印加する電力を、縦軸が発光強度比を示している。
【0080】
図8に示したように、保護層Pを設けない場合(図8で、「ステンレススチール」と表記している実験結果)に比べて、熱分解窒化硼素(PBN)や、酸化アルミニウム(Al)や、酸化ケイ素(SiO)からなる保護層Pで、仕切壁16を被覆した場合に、酸素ラジカルの発光強度が強く、酸素ラジカルの密度が高いことがわかる。特に、熱分解窒化硼素(PBN)からなる保護層Pで仕切壁16を被覆した場合に、酸素ラジカルの発光強度が強いことがわかる。
【0081】
図9は、反応プロセスゾーン60に発生したプラズマ中の酸素ラジカルの流量密度を示す図であり、仕切壁16や真空容器11に熱分解窒化硼素(PBN)を被覆した場合と、被覆しない場合とを比較した実験結果の一例を示している。本実験例では、仕切壁16や真空容器11に熱分解窒化硼素を被覆した場合として、仕切壁16の反応プロセスゾーン60側に面する側や、真空容器11の内壁面で仕切壁16によって囲繞される反応プロセスゾーン60に面する部分に熱分解窒化硼素を被覆している。
【0082】
図9の横軸が反応プロセスゾーン60に導入する酸素ガスの流量を、縦軸が反応プロセスゾーン60に発生したプラズマ中の酸素ラジカルの流量密度を示している。なお、図9の縦軸に示す酸素ラジカルの流量密度の値は、絶対流量密度の値を示している。絶対流量密度の値は、銀薄膜の酸化度合いから求める。すなわち、基板ホルダ13に銀薄膜を形成させた基板を保持させておいて、反応プロセスゾーン60でのプラズマ処理前後の薄膜の重量変化から銀の酸化度合いを計測し、この酸化度合いから絶対流量密度の値を計算して求めている。図9から、仕切壁16や真空容器11に熱分解窒化硼素を被覆した場合に、酸素ラジカルの流量密度が高いことがわかる。
【0083】
以上は、所望の組成の酸化ケイ素(SiO(x≦2))薄膜を作成する場合を説明したが、スパッタを行う成膜プロセスゾーンを一箇所だけではなく複数箇所設けてスパッタを行うことで、異なる組成の薄膜を繰り返し積層させた薄膜を形成することもできる。
例えば、上述のように、スパッタ装置1に成膜プロセスゾーン40を設けて、ターゲット49a,49bとしてニオブ(Nb)を用いる。そして、酸化ケイ素薄膜を作成した場合と同様の方法で、酸化ケイ素薄膜の上に所望の組成の酸化ニオブ(NbO(y<2.5))薄膜を作成する。そして、成膜プロセスゾーン20でのスパッタ,反応プロセスゾーン60でのプラズマ処理による酸化,成膜プロセスゾーン40でのスパッタ,反応プロセスゾーン60でのプラズマ処理による酸化という工程を繰り返すことで、所望の組成の酸化ケイ素(SiO(x≦2))薄膜と酸化ニオブ(NbO(y≦2.5))薄膜を繰り返し積層させた薄膜を形成することができる。
【0084】
特に、本例では、プラズマ発生装置61を備えたスパッタ装置1を用いることで、緻密で膜質のよい高機能の薄膜を作成することができる。この効果を図10,図11で示す。
【0085】
図10,図11は、酸化ケイ素(SiO)と酸化ニオブ(Nb)の多層薄膜を形成した場合の薄膜の透過率を示す図である。図10が、スパッタ装置1のプラズマ発生装置61に代えて図12に示す従来のプラズマ発生装置161を用いて酸化ニオブと酸化ケイ素の多層薄膜を形成した場合の実験結果であり、図11が本例のプラズマ発生装置61を用いて酸化ニオブと酸化ケイ素の多層薄膜を形成した場合の実験結果である。図10,図11の横軸が測定波長、縦軸が透過率を示している。
【0086】
従来型のプラズマ発生装置161を用いた場合では、高周波電源169で5.5kWの電圧を印加し、SiOを0.3nm/s、Nbを0.2nm/sのレートで成膜した。そして、SiO層とNb層を順番に17回繰り返して積層し、総物理膜厚940nmの薄膜を作成した。その結果、測定波長を650nmとしたときに減衰係数kが100×10−5である薄膜が作成された(図10)。
【0087】
一方、本例のプラズマ発生装置61を備えたスパッタ装置1を用いた場合では、高周波電源69で4.0kWの電圧を印加し、SiOを0.5nm/s、Nbを0.4nm/sのレートで成膜した。そして、SiO層とNb層を順番に38回繰り返して積層し、総物理膜厚3242nmの薄膜を作成した。その結果、測定波長を650nmとしたときに減衰係数kが5×10−5である薄膜が作成された(図11)。
【0088】
このように、本例のプラズマ発生装置61を備えたスパッタ装置1を用いて酸化ケイ素と酸化ニオブの多層薄膜を形成した結果をみても判るように、本例のスパッタ装置1を用いてプラズマ処理を行うことで薄膜を作成すれば、減衰係数(吸収係数)の小さい良好な薄膜を作成することができる。
なお、減衰係数kは、光学常数(複素屈折率)をN、屈折率をn、とした場合に、N=n+ikの関係で表される値である。
【0089】
以上に説明した実施の形態は、例えば、次の(a)〜(i)のように、改変することもできる。また、(a)〜(i)を適宜組合せて改変することもできる。
【0090】
(a)上記の実施の形態では、プラズマ発生手段として、図1乃至図3に示すような、板状の誘電体壁63に対してアンテナ65a,65bを固定した誘導結合型(平板型)のプラズマ発生手段を用いているが、本発明は、他のタイプのプラズマ発生手段を備えた薄膜形成装置にも適用される。すなわち、誘導結合型(平板型)以外のタイプのプラズマ発生手段を備えた薄膜形成装置を用いた場合でも、絶縁体を真空容器11の内壁面の反応プロセスゾーン60に面する部分や、プラズマ収束壁に被覆することで、上記の実施形態と同様に、プラズマ発生手段で発生させたプラズマ中のラジカル又は励起状態のラジカルが、真空容器の内壁面やプラズマ収束壁の壁面と反応して消滅することを抑制することができる。誘導結合型(平板型)以外のタイプのプラズマ発生手段としては、例えば、平行平板型(二極放電型)や、ECR(Electron Cyclotron Resonance)型や、マグネトロン型や、ヘリコン波型や、誘導結合型(円筒型)等の種々のものが考えられる。
【0091】
(b)上記の実施の形態では、薄膜形成装置の一例として、スパッタ装置について説明したが、本発明は、他のタイプの薄膜形成装置にも適用できる。薄膜形成装置としては、例えば、プラズマを用いたエッチングを行うエッチング装置、プラズマを用いたCVDを行うCVD装置等でもよい。また、プラスチックの表面処理をプラズマを用いて行う表面処理装置にも適用できる。
【0092】
(c)上記の実施の形態では、所謂カルーセル型のスパッタ装置を用いているが、これに限定されるものではない。本発明は、基板がプラズマを発生させる領域に面して搬送される他のスパッタ装置にも適用できる。
【0093】
(d)上記の実施の形態では、仕切壁16の反応プロセスゾーン60に面する壁面や、真空容器11の内壁面の反応プロセスゾーン60に面に絶縁体からなる保護層Pを形成したが、他の部分にも絶縁体からなる保護層Pを形成してもよい。例えば、仕切壁16の反応プロセスゾーン60に面する壁面だけではなく、仕切壁16の他の部分にも絶縁体を被覆してもよい。これにより、ラジカルが仕切壁16と反応して、ラジカルが減少するのを最大限回避することができる。また、例えば、真空容器11の内壁面の反応プロセスゾーン60に面する部分だけではなく、真空容器11の内壁面における他の部分、例えば内壁面の全体に絶縁体を被覆してもよい。これにより、ラジカルが真空容器11の内壁面と反応して、ラジカルが減少するのを最大限回避することができる。仕切壁12に絶縁体を被覆してもよい。
【0094】
(e)上記の実施の形態では、固定板68a,68bと誘電体壁63とでアンテナ65a,65bを挟み、ボルト68c,68dで固定板68a,68bを蓋体11bに固定することで、アンテナ65a,65bを固定したが、要は、間隔Dを調整してアンテナ65a,65bを固定できれば他の方法でもよい。例えば、固定板68aに対してアンテナ65aを、固定板68bに対してアンテナ65bを予め固定しておき、蓋体11bにボルト68c,68dを上下にスライドさせる長穴を設けておく。そして、固定板68a,68bを上下方向にスライドさせて間隔Dを選び、所望の間隔Dでボルト68c,68dを締め付けることで、蓋体11bに対する固定板68a,68bの上下方向の固定位置を決めてもよい。
【0095】
(f)上記の実施の形態では、アンテナ65aの本体部65aを銅で、被覆層65aを銀で形成したが、本体部65aを安価で加工が容易な、しかも電気抵抗も低い材料で形成し、電流が集中する被覆層65aを本体部65aよりも電気抵抗の低い材料で形成すればよいため、他の材料の組合せでもよい。例えば、本体部65aをアルミニウム又はアルミニウム−銅合金で形成したり、被覆層65aを銅,金で形成したりしてもよい。アンテナ65bの本体部65b,被覆層65bも同様に改変できる。また、アンテナ65aと、アンテナ65bを、異なる材料で形成してもよい。
【0096】
(g)上記の実施の形態では、反応プロセスゾーン60に反応性ガスとして酸素を導入しているが、その他に、オゾン,一酸化二窒素(NO)等の酸化性ガス、窒素等の窒化性ガス、メタン等の炭化性ガス、弗素,四弗化炭素(CF)等の弗化性ガスなどを導入することで、本発明を酸化処理以外のプラズマ処理にも適用することができる。
【0097】
(h)上記の実施の形態では、ターゲット29a,29bの材料としてケイ素を、ターゲット49a,49bの材料としてニオブを用いているが、これに限定されるものでなく、これらの酸化物を用いることもできる。また、アルミニウム(Al),チタン(Ti),ジルコニウム(Zr),スズ(Sn),クロム(Cr),タンタル(Ta),テルル(Te),鉄(Fe),マグネシウム(Mg),ハフニウム(Hf),ニッケル・クロム(Ni−Cr),インジウム・スズ(In−Sn)などの金属を用いることができる。また、これらの金属の化合物,例えば、Al,TiO,ZrO,Ta,HfO等を用いることもできる。勿論、ターゲット29a,29b,49a,49bの材料を全て同じにしてもよい。
【0098】
これらのターゲットを用いた場合、反応プロセスゾーン60におけるプラズマ処理により、Al,TiO,ZrO,Ta,SiO,Nb,HfO,MgFの光学膜ないし絶縁膜、ITO等の導電膜、Feなどの磁性膜、TiN,CrN,TiCなどの超硬膜を作成できる。TiO,ZrO,SiO,Nb,Taのような絶縁性の金属化合物は、金属(Ti,Zr,Si)に比べスパッタ速度が極端に遅く生産性が悪いので、特に本発明の薄膜形成装置を用いてプラズマ処理すると有効である。
【0099】
(i)上記の実施の形態では、ターゲット29aとターゲット29b、ターゲット49aとターゲット49bは同一の材料で構成されているが、異種の材料で構成してもよい。同一の金属ターゲットを用いた場合は、上述のように、スパッタを行うことによって単一金属の不完全反応物が基板に形成され、異種の金属ターゲットを用いた場合は合金の不完全反応物が基板に形成される。
産業上の利用性
【0100】
以上のように本発明の薄膜形成装置及び薄膜形成方法においては、効率よく広範囲でプラズマ処理を行うことができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器と、該真空容器内に反応性ガスを導入するガス導入手段と、前記真空容器内に前記反応性ガスのプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、を備える薄膜形成装置であって、
前記プラズマ発生手段が、前記真空容器の外壁に設けた誘電体壁と、渦状の第1のアンテナ及び第2のアンテナと、前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナを高周波電源と接続するための導線と、を有して構成され、
前記真空容器の外側で前記誘電体壁に対応する位置に前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナを固定するアンテナ固定手段を備え、
前記第1のアンテナと前記第2のアンテナは、前記高周波電源に対して並列に接続され、第1のアンテナ及び前記第2のアンテナの渦を成す面に対する垂線に垂直な方向に隣り合った状態で設けられたことを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項2】
前記導線に接続される部分で前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとを繋ぐ箇所に前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとの間隔を調整するための位置調整手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成装置。
【請求項3】
前記真空容器に基板を搬送するための基板搬送手段を備え、
該基板搬送手段は、前記基板を前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナの渦を成す面と対向するように搬送し、
前記基板搬送手段によって基板が搬送される向きと交差する方向に隣り合った状態で前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナが固定されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の薄膜形成装置。
【請求項4】
前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナが、第1の材料で形成した円管状の本体部と、該本体部の表面を前記第1の材料よりも電気抵抗が低い第2の材料で被覆した被覆層と、で構成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1つに記載の薄膜形成装置。
【請求項5】
前記ガス導入手段は、前記プラズマ発生手段によってプラズマが発生する領域に反応性ガスと不活性ガスを導入する手段であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1つに記載の薄膜形成装置。
【請求項6】
前記真空容器内の壁面に絶縁体が被覆されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちいずれか1つに記載の薄膜形成装置。
【請求項7】
内部を真空に維持する真空容器と、該真空容器内に反応性ガスを導入するガス導入手段と、前記真空容器内に前記反応性ガスのプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、を備える薄膜形成装置であって、
前記真空容器内の壁面に絶縁体が被覆され、
前記ガス導入手段は、前記プラズマ発生手段によってプラズマが発生する領域に反応性ガスと不活性ガスを導入する手段であることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項8】
前記プラズマ発生手段は、高周波電源に接続され、同一平面上で渦を成すアンテナを有して構成されたことを特徴とする請求項7に記載の薄膜形成装置。
【請求項9】
前記不活性ガスが、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス、クリプトンガス、キセノンガスからなる群から選択されるガスであることを特徴とする請求項5乃至請求項8のうちいずれか1つに記載の薄膜形成装置。
【請求項10】
絶縁体が被覆される前記真空容器内の壁面が、前記真空容器の内壁面であることを特徴とする請求項6乃至請求項9のうちいずれか1つに記載の薄膜形成装置。
【請求項11】
前記プラズマ発生手段によってプラズマが発生する領域に面して前記真空容器の内壁面から立設するプラズマ収束壁を備え、
絶縁体が被覆される前記真空容器内の壁面は、前記プラズマ収束壁の壁面であることを特徴とする請求項6乃至請求項9のうちいずれか1つに記載の薄膜形成装置。
【請求項12】
前記絶縁体が、熱分解窒化硼素、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素からなる群から選択される絶縁体であることを特徴とする請求項6乃至請求項11のうちいずれか1つに記載の薄膜形成装置。
【請求項13】
真空容器内のプラズマを発生させる領域に面する壁面に絶縁体を被覆した薄膜形成装置を用いて薄膜に対してプラズマ処理を行う薄膜形成方法であって、
前記プラズマを発生させる領域に反応性ガスと不活性ガスを混合して導入する工程と、
前記反応性ガスのプラズマを発生させる工程と、を備えることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項14】
前記絶縁体が、熱分解窒化硼素、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素からなる群から選択される絶縁体であることを特徴とする請求項13に記載の薄膜形成方法。
【請求項15】
前記不活性ガスが、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス、クリプトンガス、キセノンガスからなる群から選択されるガスであることを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の薄膜形成方法。
【請求項16】
前記プラズマを発生させる工程は、同一平面上で渦を成すアンテナに高周波電源から電力を供給して前記真空容器内のプラズマを発生させる領域にプラズマを発生させる工程であることを特徴とする請求項13乃至請求項15のうちいずれか1つに記載の薄膜形成方法。

【国際公開番号】WO2004/108980
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506749(P2005−506749)
【国際出願番号】PCT/JP2004/007483
【国際出願日】平成16年5月31日(2004.5.31)
【出願人】(390007216)株式会社シンクロン (52)
【Fターム(参考)】